説明

付設部材を取付けレールに固定するためのシステム

【課題】付設部材を保持部材に固定することができるシステムであって、工具の使用を必要とせず、技術的に簡単な構成とすることができ、しかも容易かつ安全な操作を可能にするシステムを得る。
【解決手段】少なくとも1個の弾性素子9により構成した少なくとも1個の保持素子8を取り付けた固定装置2を、保持部材5の開口19を有する溝21として構成した内部空間20における係止面22の前部係止位置から後部係止位置にむけて変位可能にし、係止面22の後部係止位置において、少なくとも1個の保持素子8が形状密着で係止することによって固定装置2を保持部材5に固定する。固定装置2には、ファサード素子、ソーラーモジュール、配管等の付設部材を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の付設部材を保持部材に取り付けるためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築技術においては、付設部材を保持部材に固定するシステムを使用して、付設部材を保持部材に固定する。付設部材としては、例えば、太陽電池モジュール、ファサード(外装)素子、または温水暖房設備もしくは電気設備の構成要素としての導管が想定される。保持部材としては、一般に、保持レールまたは取付けレールを使用する。
【0003】
特許文献1(独国出願公開第10313564号)には、構造部材用の結合素子が記載されている。構造部材には長手方向に延在する切欠きを設け、これら切欠きは結合素子を取り付けるため、互いに整列させる。本文献に記載の結合素子は、一体的なばねクリップとして構成し、直径方向に距離をとって対向するばねアームを有する。これらばねアームの幅は、上述の長手方向に延びる切欠きに挿通できるものとする。この場合、ばねクリップには、軸線方向に所定間隔をとって、各ばねアームの自由端とは反対側に1つの支持部を設け、これら支持部は、ばねクリップを変形して、取付け工具係止部とする。
【0004】
特許文献2(独国特許第102006011836号)からは、ベースプレートを含む固定素子が知られている。このベースプレートから互いに対向する第1アームの対を有し、各第1アームは、ベースプレートに対し第1の間隔をとって、かつ第1当接部を有する。さらに、少なくとも2個の互いに対向する第2アームをベースプレートから垂直方向に延在させ、これら各第2アームはベースプレートに対し第2の間隔をとって、第2当接部を有する。この場合、各第1アームには操作部を設け、この操作部はそれぞれアイレットを有する面として構成する。
【0005】
特許文献3(独国特許第102007042484号)には、付設部材を保持部材に固定するための装置が記載されている。この装置は、付設部材または保持部材を特徴付けるヘッド部分を有し、このヘッド部分は側方に張出す支持部を有する。さらに、ばね弾性を有する前壁部には2個のバリアウィングを設け、これらのバリアウィングは、前壁部に対しほぼ直交するよう設ける。該バリアウィングは係止用の段差を有し、該段差は、固定装置が係止状態で、保持部材の背後に係合する。
【0006】
特許文献4(独国実用新案出願公開第202005003224号)には、挿入部材であって、輪郭枠縁にアンダーカット形成した輪郭溝にねじ付きナットを固定するための挿入部材が記載されている。この挿入部材は、挿入状態において、輪郭溝の軸線に対しほぼ平行となる長手方向軸線を有し、この場合、挿入部材には、挿入部材の軸線方向の両側に配置した着座境界面によりねじナット用の着座部を設け、これら着座境界面間にねじナットを固定可能とし、かつ着座境界面間に配置するねじナットを載置するための載置面をさらに設ける。これに加え、挿入部材には第1支持面を設け、この第1支持面により、挿入部材を挿入した状態において、輪郭溝におけるアンダーカット面に支持することができる。この場合、少なくとも第1支持面の一部が可撓的に転向可能に配置されるため、挿入部材を輪郭溝の溝開口から輪郭溝内に挿入することができる。
【0007】
特許文献5(独国実用新案出願公開第202006018426号)には、取付けレールシステムであって、特に平面状物体、例えば、ソーラーモジュールまたはソーラーアレイを固定するための取付けレールシステムが記載されている。該システムは、少なくとも1個のレール状輪郭部において長手方向に延在する少なくとも2個の輪郭部と、上記レール状輪郭部を素地構造に固定するため、および/またはレール状輪郭部に物体を固定するため、少なくとも1個のばね弾性を有するクランプ素子とを有し、このクランプ素子は、輪郭部の互いに対向する側面に当接する少なくとも2個のばね脚部を有し、これらばね脚部は輪郭枠縁に連係して係合し、この場合、ばね弾性を有するクランプ素子はレール状輪郭部をばね弾性的に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国出願公開第10313564号明細書
【特許文献2】独国特許第102006011836号明細書
【特許文献3】独国特許第102007042484号明細書
【特許文献4】独国実用新案出願公開第202005003224号明細書
【特許文献5】独国実用新案出願公開第202006018426号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、付設部材を保持部材に固定することができるシステムであって、工具の使用を必要とせず、しかも技術的に簡単な構成とすることができるシステムを提供することにある。さらに、本発明のシステムは安価に製造することができ、容易かつ安全な操作を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、少なくとも1個の固定装置によって、付設部材を、少なくとも1個の保持部材に固定するためのシステムを使用することで解決することができる。本発明のシステムは、前記少なくとも1個の固定装置は少なくとも1個の変位可能な保持素子を有し、該少なくとも1個の変位可能な保持素子を前記保持部材の開口に嵌合させる際、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子と前記保持部材との間における接触に基づき、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子を前記保持部材の前部係止位置に変位させることができ、しかも前記少なくとも1個の変位可能な保持素子を前記開口に嵌合させた後、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子による後部側への変位によって、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子を後部係止位置に変位させることができるため、前記保持部材が前記少なくとも1個の変位可能な保持素子によって係止面の後部係止位置において係止可能であり、これにより、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子と、前記保持部材と、前記付設部材を前記少なくとも1個の固定装置に固定する固定手段との間における結合を、形状密着で生ずることができるようにした、前記少なくとも1個の固定装置と、前記少なくとも1個の保持部材とを備えたシステムにおいて、前記固定装置は少なくとも1個の弾性素子を有し、また前記少なくとも1個の変位可能な保持素子は前記少なくとも1個の弾性素子により、前部係止位置から後部係止位置に変位可能とする、及び/又は、前記保持部材は、前記保持部材によって包囲される内部空間、特に溝の端部に連続する前記開口を有し、及び/又は、前記保持部材に前記係止面を形成し、且つ、後部係止位置において、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子によって形状密着して係止するよう構成する。
【0011】
特に、上記の少なくとも1個の保持素子は、弾性素子として形成する。この少なくとも1個の保持素子および弾性素子、または少なくとも1個の弾性素子は1個の構造部材として構成し、これにより保持素子および弾性素子は1個の構造部材のみを製造または使用すればよくなる。
【0012】
他の好適な一形態では、弾性素子は板ばねとして形成する。板ばねは安価に製造することができ、しかも本発明における固定装置のレールに容易に固定することができる。
【0013】
代替的な一実施形態では、係止面に係止するため、板ばねに少なくとも1個の係止アームを形成する、および/または、係止面に上記の少なくとも1個の係止アームを係止する。
【0014】
好適には、少なくとも1個の保持素子、特に板ばねが、形状密着および/または力密着により、少なくとも1個の固定装置に固定されるようにする。
【0015】
他の好適な一実施形態では、上記少なくとも1個の固定装置は、レールまたは枠縁を有する、および/または、上記少なくとも1個の固定装置は、付設部材を少なくとも1個の固定装置に固定する固定手段として、保持プレートまたはグリッドを有する構成とする。レールまたは枠縁は、ダイキャストによるアルミニウムまたは亜鉛よりなる成形体として形成することができるが、好適には、押出成形による成形体として形成すると、特に製造が安価となる。本明細書における用語「レール」または「枠縁」は、これらの部材がその幅よりも長くなければならないことを意味するものではなく、むしろ長さよりも幅広の部材として形成することもできる。
【0016】
本発明の目的に鑑み、レールはその長手方向に、少なくとも1つの中空領域を有するものとする。
【0017】
本発明の目的に鑑み、少なくとも1個の固定装置、特に保持プレートの下方に、隆起部を有するウェブを形成する。さらに、板ばねは支持タングを有し、該支持タングはその後端面で固定装置の隆起部に係合する、および/または、上記の少なくとも1個の固定装置には、その支持プレートとウェブとの間に溝部を形成する、および/または、上記の少なくとも1個の固定装置のウェブには、スリットを形成し、板ばねをこのスリットに係止させる。
【0018】
他の好適な一実施形態では、少なくとも1個の保持素子は、固定装置の長手方向に複数個を固定する、および/または、少なくとも1個の保持素子を、後部係止位置において、少なくとも部分的、好適には、完全に保持部材が包囲する内部空間、特に溝に配置する、および/または、上記の少なくとも1個の保持素子と保持部材との間に、形状密着および/または力密着による結合を生ずることができ、または予め結合する。
【0019】
特に係止面は、ほぼ平坦な面として形成する。
【0020】
他の好適な一実施形態では、保持部材に保持ウェブを形成し、この保持ウェブが内部空間、特に溝を部分的に画定し、かつ後部係止位置において、固定装置の溝部に配置されるようにする。
【0021】
他の代替的な一実施形態では、後部係止位置において、保持ウェブが固定装置、特に、保持プレートに載置する。
【0022】
他の好適な一実施形態では、保持部材を保持レールまたは取付けレールとして形成する。
【0023】
他の好適な一実施形態では、システムは2個の同一の保持部材を有し、この2個の保持部材は互いにほぼ平行に延在させる。さらに、好適には、上記2個の保持部材における内部空間の開口は、同一方向に延在させる。
【0024】
特に、2個の保持部材の両方にそれぞれ少なくとも1個の固定装置を固定し、好適には、この2個の保持部材の両方に少なくとも2個の固定装置が固定するが、3個またはそれ以上の保持部材を使用する実施形態も可能である。
【0025】
他の好適な一実施形態では、後部係止位置において、弾性素子に押圧(バイアス)力が加わるようにする。
【0026】
他の好適な一実施形態では、少なくとも1つの固定のための固定手段は、好適には、装置を直接付設部材に固定するため、保持プレートまたはグリッドを有する構成とする。
【0027】
他の好適な一実施形態では、保持部材、および/または、固定装置。および/または、レール、および/または、保持プレート、および/または、少なくとも1個の保持素子、および/または、少なくとも1個の弾性素子が、少なくとも部分的、好適には完全に、アルミニウム、鋼または特殊鋼等の金属および/または合成樹脂で形成する。
【0028】
他の好適な一実施形態では、固定装置は、例えば、弾性素子等のスナップおよび/または係止機構によって、保持部材に固定することができる。
【0029】
他の代替的な一実施形態では、前部係止位置において、少なくとも1個の弾性素子に押圧力(バイアス)が加わらないようにする。
【0030】
他の好適な一実施形態では、付設部材を固定装置、特に保持プレートに固定する固定手段は、接着、係止、リベットおよび/またはねじによる結合のうち少なくとも1つをとした。
【0031】
他の代替的な一実施形態では、開口は、固定装置を保持部材に固定するための取付け開口として形成する。
以下、本発明の実施形態を、添付図面につき、詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるシステムの最終的な取付け状態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態における保持部材の断面図である。
【図3】第2実施形態における保持部材の断面図である。
【図4】固定装置におけるレールの断面図である。
【図5】固定装置における板ばねの第1斜視図である。
【図6】固定装置における板ばねの第2斜視図である。
【図7】固定装置に2個の板ばねを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図8】付設部材および保持部材を備える固定装置の、第1予組み付け状態示す断面図である。
【図9】付設部材および保持部材を備える固定装置の、第2予組み付け状態を示す断面図である。
【図10】付設部材および保持部材を取り外した固定装置の、板ばねが後部係止位置にある、最終組み付け状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
建築技術または建設業界では、固定装置2を有するシステム1が、付設部材3を保持部材5に固定するのに使用される。ここで付設部材3とは、例えば、太陽電池モジュール4、ファサード(外装)素子または配管(図示せず)等であり、保持部材5は、より具体的には、保持レール6または取付けレール7である。図1が示す2個の取付けレール7は、取付け面29に対して互いに平行に固定する。システム1により、付設部材3を間接的に保持部材5に固定することができる。
【0034】
これに関連し、固定装置2は、レール31、または付設部材3を固定装置2に固定するための固定手段25として形成する保持プレート26を有する固定枠縁(桟)を有する。保持プレート26は、固定面30が付設部材3に材料が密着するよう(図1、図8および図9参照)、例えば接着もしくは溶接により、または、形状が密着するよう、例えばねじもしくはリベット(図示せず)により結合する。保持プレート26における傾斜(ランプ)部28の高さは、付設部材3をレール31(図示せず)に固定するため、必要に応じて使用する接着剤の厚さによる高さよりも低くする。
【0035】
レール31の保持プレート26における固定面30側とは反対側の面に、ウェブ15を設ける(図4、図7および図8参照)。ウェブ15は、保持プレート26とともに溝部17を包囲する。ウェブ15の端部に隆起部16を形成し、またウェブ15の下側にスリット18を設ける(図4および図7参照)。保持プレート26の端部における傾斜部28は、レール31を取付けレール7に押し込むことによる取付けの補助を行うよう機能する。レール31は一体的、かつ、好適には、押出し成形により安価に製造する(図4および図7参照)。レール31のウェブ15に、2個の保持素子8を固定する(図7参照)。ここで保持素子8は、板ばね10により構成した弾性素子9として形成する(図5および図6参照)。板ばね10は、保持タング12を設けた隙間13、および係止アーム11を有する。さらに、板ばね10には面取り部14を形成する。板ばね10をウェブ15に固定するため、板ばね10は係止アーム11における内面側の端部をウェブ15に押し込む。これにより、保持タング12がウェブ15の隆起部16の背後に係合し、かつ板ばね10の面取り部14が、スリット18に配置される(図7参照)。この結果、板ばね10は、形状的に嵌合および力によって密着し、レール31のウェブ15に固定される。
【0036】
取付けレール7(図2および図3参照)にも、やはり押出し成形による輪郭部、および保持ウェブ23を設ける。保持ウェブ23の上側には、保持プレート26用の載置面24を設ける。この場合、載置面24は、平坦状(図2参照)または曲面状(図3参照)に形成することができる。保持ウェブ23の載置面24を曲面状または円弧状に形成する場合、保持プレート26を弾性的に載置面24に保持する。これにより、構成誤差を調整し、また付設部材3と固定装置2との間の付着における応力を、よりよく分散させることができる。これは特に、割れやすい太陽電池モジュール4を使用する場合に好適に作用する。保持ウェブ23は、取付けレール7とともに、内部空間20を包囲し、内部空間20は開口19を有する。このとき、内部空間20は溝21として形成され、取付けレールの長手方向軸線27に対し平行な方向が、長手軸線27に対し直交する方向よりも大きな範囲にわたり延在させ、例えば、少なくとも2,5または10倍の範囲にわたり延在させる。この場合、長手方向軸線27は、図2および図3の図面の平面に対し、直交する。保持ウェブ23には、その内部空間20側の側面に、係止面22を形成する。係止面22には、長手方向軸線27に対し平行な方向に延在する切欠きを設ける。したがって、係止面22は鋸歯状部または係止鼻状部を有し、この鋸歯状部または係止鼻状部に、板ばね10の係止アーム11がその外面側で係止することができる。その際、内部空間20側に見て、図2および図3が示す、左から1番目の鋸歯状部または係止鼻状部が、他の鋸歯状部または係止鼻状部よりも高く形成する。
【0037】
図8は、固定装置2を取付けレール7に第1予組み付け状態を示し、図9は、第2予組み付け状態を示す。さらに、図10は、最終組み付け状態を示す。第1予組み付け状態では、太陽電池モジュール4としての付設部材3を、保持ウェブ23の載置面24に載置し、保持プレート26の傾斜部28を、保持ウェブ23に対し間隔をとって配置する。第1予組み付け状態では、前部係止位置に係合する前の状態で板ばね10の係止アーム11に、押圧(バイアス)力が加わらない。付設部材3を設けた固定装置2をさらに右方の取付けレール7側に変位させると、保持プレート26における傾斜部28の側面が、取付けレール7の保持ウェブ23上に当接する(図示せず)。さらに、傾斜部28の形状により、保持プレート26が保持ウェブ23の上方に変位されるため、保持プレート26が保持ウェブ23上に乗り上がり、しかも保持ウェブ23がレール31の溝部17に嵌合することにより、保持ウェブ23が溝部17に進入する。すなわち、保持プレート26が保持ウェブ23上の載置面24に載置され、板ばね10の係止アーム11が、保持ウェブ23に形成される係止面22の前部における最大の鋸歯状部または係止鼻状部の前面に休止する(図9参照)。この第2予組み付け状態では、固定装置2を図9の紙面に対し直交する方向に変位させることができる。すなわち、長手方向軸線27に対し平行に動かすことができる。これにより、付設部材3を2個の取付けレール7上において、後調整または微調整を行うことができる。2個の取付けレール7に対し付設部材3に微調整を行った後、初めて固定装置2および/または付設部材3に十分大きな応力を加える。これにより、図9における板ばね10の係止アーム11を、押圧(バイアス)力により必要な距離だけ下方に変位する。その結果、係止アーム11の外面側が、係止面22における最外側の鋸歯状部に係止する。付設部材3を取り付けた固定装置2をさらに取付けレール7の内部空間20側に変位させると、係止アーム11が係止面22の後続の鋸歯状部に係止する。これにより、固定装置2は、形状密着および力密着に基づく結合によって、取付けレール7に固定される。すなわち、図10に従う最終組み付け状態では、板ばね10の係止アーム11が後部係止位置に在し、しかもその際、押圧(バイアス)力が加わっている。この段階で、係止アーム11は係止面22における異なる歯に係止させることができるため、例えば、製造誤差や組み付け上のずれがある場合、2個の取付けレール7間の間隔を調整することができる。
【0038】
図5および図6に示す板ばね10の係止アーム11は継ぎ目板を設けないため、固定装置2を最終組み付け状態に変位させ、板ばね10における係止アーム11の外面側を係止面22の後部と係止させた後には、係止アーム11を再び後部係止位置から解除し、これにより付設部材3を備える固定装置2を2個の取付けレール7から取り外すことができなくなる。したがって、盗難を防止することができる。他方で、板ばね10における係止アーム11の側面に、それぞれ1つの継ぎ目板を設けることもできる(図示せず)。これにより、補助工具または特殊工具を使用することで、係止アーム11を係止面22との係止状態から解除することができ、付設部材3を取り付けた固定装置2を再び取付けレール7から取り外すことができる。
【0039】
上述したとおり、本発明のシステムによって、例えば、ほぼ矩形形状の太陽電池モジュール4における隅角領域で、4個またはそれ以上の固定装置2により固定することができる。すなわち、太陽電池モジュール4における上側の両側の隅角部にそれぞれ1個の固定装置2を配置し、これらを上方の取付けレール7(図1参照)に固定し、また、太陽電池モジュール4における下側の両側の隅角部に、それぞれ1個の固定装置2を配置し、これらを下方の取付けレール7(図1参照)に取り付ける。
【0040】
本発明によるシステム1を総合的に評価した場合、種々の利点を得ることができる。付設部材3の保持部材5に対する固定が、簡単な構造で行うことができるため、固定装置2およびシステム1における製造コストを節減することができる。さらに、予組み付け状態では、板ばね10に押圧(バイアス)力が加わらないため、板ばね10として形成する保持素子8の不慮の変位または解離が生じてしまうといったことがない。すなわち、予組み付け状態では、固定装置2に作用する力が僅かであることによって、固定装置2またはシステム1に破損が生じるといったこともない。
【符号の説明】
【0041】
1 システム
2 固定装置
3 付設部材
4 付設部材(ファサード素子、ソーラーモジュール、配管等)
5 保持部材
6 保持レール
7 取付けレール
8 保持素子
9 弾性素子
10 板ばね
11 係止アーム
12 保持タング
13 隙間
14 面取り部
15 ウェブ
16 隆起部
17 溝部
18 スリット
19 開口
20 内部空間
21 溝
22 係止面
23 保持ウェブ
24 載置面
25 手段
26 保持プレート
27 長手方向軸線
28 傾斜(ランプ)部
29 取付け面
30 固定面
31 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の固定装置(2)によって、付設部材(3)を少なくとも1個の保持部材(5)に固定するためのシステムであって、
前記少なくとも1個の固定装置(2)は少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)を有し、該少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)を前記保持部材(5)の開口(19)に嵌合させる際、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)と前記保持部材(5)との間における接触に基づき、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)を前記保持部材(5)の前部係止位置に変位させることができ、しかも前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)を前記開口(19)に嵌合させた後、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)による後部側への変位によって、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)を後部係止位置に変位させることができるため、前記保持部材(5)が前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)によって係止面(22)の後部係止位置において係止可能であり、これにより、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)と、前記保持部材(5)と、前記付設部材(3)を前記少なくとも1個の固定装置(2)に固定する固定手段(25)との間における結合を、形状密着で生ずることができるようにした、前記少なくとも1個の固定装置(2)と、
前記少なくとも1個の保持部材(5)と
を備えたシステムにおいて、
前記固定装置(2)は少なくとも1個の弾性素子(9)を有し、また前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)は前記少なくとも1個の弾性素子(9)により、前部係止位置から後部係止位置に変位可能とする、及び/又は、
前記保持部材(5)は、前記保持部材(5)によって包囲される内部空間(20)、特に溝(21)に連続する端部に前記開口(19)を有し、及び/又は、
前記保持部材(5)に前記係止面(22)を形成し、且つ、後部係止位置において、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)によって形状密着して係止するよう構成した
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)を、前記弾性素子(9)として形成したことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシステムにおいて、前記弾性素子(9)を、板ばね(10)として形成したことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記板ばね(10)が前記係止面(22)に係止させるための1個の係止アーム(11)を有する、及び/又は、
該少なくとも1個の係止アーム(11)を前記係止面(22)に係止させたことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)、特に前記板ばね(10)を、形状密着及び/又は力密着によって、前記少なくとも1個の固定装置(2)に固定することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1個の固定装置(2)は、レール(31)又は枠縁を有する、及び/又は、
前記少なくとも1個の固定装置(2)は、前記付設部材(3)を前記少なくとも1個の固定装置(2)に固定するための前記固定手段(25)として、保持プレート(26)又はグリッドを有する構成としたことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1個の固定装置(2)、特に前記保持プレート(26)の下方に、隆起部(16)を有するウェブ(15)を形成し、前記板ばね(10)が保持タング(12)を有し、該保持タング(12)がその後端面部によって、前記固定装置(2)の前記隆起部(16)に係合する、及び/又は、
前記少なくとも1個の固定装置(2)には、特に前記保持プレート(26)とウェブ(15)との間に溝部(17)を形成する、及び/又は、
前記少なくとも1個の固定装置(2)には、特に前記ウェブ(15)にスリット(18)を形成し、前記板ばね(10)を該スリット(18)に係止させることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)は、前記固定装置(2)の長手方向に複数個を固定する、及び/又は、
前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)を、後部係止位置において、少なくとも部分的に、好適には完全に、前記保持部材(5)によって包囲される前記内部空間(20)、特に前記溝(21)に配置する、及び/又は、
形状密着及び/又は力密着によって、前記少なくとも1個の変位可能な保持素子(8)と前記保持部材(5)とを結合することができ又は予め結合したことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記係止面(22)を、ほぼ平坦な面として形成したことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記保持部材(5)に1個の保持ウェブ(23)を形成し、好適には、該保持ウェブ(23)が前記内部空間(20)、特に前記溝(21)を部分的に画定し、且つ、後部係止位置において、前記溝部(17)に配置されることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記固定装置(2)、特に前記保持プレート(26)が、後部係止位置において、前記保持ウェブ(23)に載置されることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記保持部材(5)を、保持レール(6)又は取付けレール(7)として形成したことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記システム(1)は、2個の同一保持部材(5)を有し、該2個の保持部材(5)を互いにほぼ平行に延在させ、しかも好適には、前記2個の保持部材(5)における前記内部空間(20)の前記開口(19)を、同一方向に延在させたことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記2個の保持部材(5)の両方にそれぞれ前記少なくとも1個の固定装置(2)を固定し、好適には、前記2個の保持部材(5)の両方に前記固定装置(2)を少なくとも2個固定したことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のシステムにおいて、後部係止位置では、前記弾性素子(9)に、押圧力が加わるようにしたことを特徴とするシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−237030(P2011−237030A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103031(P2011−103031)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
【Fターム(参考)】