説明

付香成分としてのアセタール

本発明は、香料業の分野に関する。より特に、本発明は、式(I)の2,2,3,6−テトラメチル−1−シクロヘキサン/エン−カルバルデヒドに関し、その際一方の点線は、炭素−炭素の単結合又は二重結合の存在を示し、かつ他方の点線は、炭素−炭素の単結合の存在を示し、R1は、水素原子もしくはメチル又はエチル基を示し、かつそれぞれのRは、単独で、同時に又は独立して、C1-3アルキル又はアルケニル基を示し、もしくはR基は、共に、場合により酸素原子を含むC2-6炭化水素基を示す。本発明は、香料工業における該化合物の使用、及び該化合物を含有する組成物又は物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料業の分野に関する。より特に、本発明は、2,2,3,6−テトラメチル−1−シクロヘキサン/エン−カルバルデヒドのいくつかのアセタール誘導体に関する。本発明は、香料工業における前記化合物の使用、及び前記化合物を含有する組成物又は物品に関する。
【0002】
先行技術
我々の知識の及ぶ限りでは、以下に記載されている式(I)の化合物(その際R1はメチル基である)は、全て新しい化合物である。しかしながら、いくつかの式(I)の化合物(その際R1は水素原子である)は、文献(例えばUS 4594456又はFR 2338241を参照)に記載されているが、しかし化学プロセスにおける中間体又は出発物質として記載されている。本発明の化合物を報告している文献は、本発明の化合物が、それらの特徴的なにおい(さらに以下に報告されているような)を有すること又は全くにおいすら示唆していない。
【0003】
発明の説明
驚くべきことに、式
【化1】

[式中、一方の点線は、炭素−炭素の単結合又は二重結合の存在を示し、かつ他方の点線は、炭素−炭素の単結合の存在を示し、
1は、水素原子もしくはメチル又はエチル基を示し、かつ
それぞれのRは、単独で、同時に又は独立して、C1-3アルキル又はアルケニル基を示し、もしくはR基は、共に、場合により酸素原子を含むC2-6炭化水素基を示す]の化合物が、例えばウッディー及び/又はアーシー、樟脳様タイプのにおいノートを付与するための付香成分として使用されうることが発見されている。
【0004】
本発明の特定の一実施態様によって、該化合物(I)は、式
【化2】

[式中、点線は、炭素−炭素の単結合又は二重結合の存在を示し、
1は水素原子又はメチル基を示し、かつ
それぞれRは、単独で、同時に又は独立して、C1-2アルキル基を示し、又は該Rは、単独で、C2-5炭化水素基を示す]の化合物である。
【0005】
前記実施態様のいずれかによって、R1はメチル基を示す。前記実施態様のいずれかによって、点線は、炭素−炭素単結合を示す。
【0006】
前記実施態様のいずれかによって、前記R基は、C2-4炭化水素基、例えばCH2CH2、CH2CH2CH2、CHMeCH2、CHMeCHMe、CH2CHMeCH2、CH2CHEt又はCH2CMe2CH2を示す。
【0007】
前記実施態様のいずれかによって、本発明の化合物は、その立体異性体又はエナンチオマーのいずれかの形で、もしくはそれらの混合物の形であってよく、例えばラセミ化合物又は場合により活性化合物であってよい。
【0008】
特定の一実施態様によって、及び特に全ての点線が単結合を示す場合に、前記化合物は、50%(w/w)より多くの立体異性体を含む立体異性体の混合物の形であり、その際シクロヘキサン環の1位及び6位での置換が、トランス相対配置であり、かつ有利にはR1がメチル基である場合に、シクロヘキサン環の3位及び6位での置換が、トランス相対配置である。
【0009】
明確化のために、"一方の点線は、炭素−炭素単結合又は二重結合の存在を示し、かつ他方の点線は、単s−炭素単結合の存在を示す"の表現又は同様の表現は、当業者によって理解される通常の意味を意味し、すなわち該点線によって連結されている炭素原子間の全体の結合(実線及び点線)は、炭素−炭素単結合又は二重結合であってよい。
【0010】
本発明の化合物は、R1がメチル基を示す場合に、新しい化合物であり、かつしたがって本発明の他の目的である。
【0011】
本発明の化合物の典型的な例として、以下の表(I)において記載されているもの及びそれらのにおいと共に挙げられる:
【表1−1】

【表1−2】

【0012】
特定の一実施態様によって、トランス−2−(2,5,6,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−1,3−ジオキソラン、2−[(1RS,3RS,6RS)−2,2,3,6−テトラメチルシクロヘキシル]−1,3−ジオキソラン、2−[(1RS,3RS,6SR)−2,2,3,6−テトラメチルシクロヘキシル]−1,3−ジオキソラン又は2−(2,2,c−3,t−6−テトラメチル−r−1−シクロヘキシル)−1,3−ジオキソランが特に評価される。
【0013】
前記の通り、本発明は、付香成分としての式(I)の化合物の使用に関する。言い換えれば、付香組成物又は着香物品のにおい特性を付与し、高め、改良又は改質うるための方法に関し、その際、該方法は、該組成物又は物品に式(I)の少なくとも1つの化合物の有効量を付加することを含む。"式(I)の化合物の使用"に関して、ここで、化合物(I)を含有し、かつ有利には香料工業において有効成分として使用されうるあらゆる組成物の使用と解するべきである。
【0014】
実際に、付香成分として有利に使用されうる前記組成物は、本発明の対象でもある。
【0015】
従って、本発明の他の目的は、以下を含む付香組成物である:
i)付香成分として、前記の定義された少なくとも1つの本発明の化合物;
ii)香料キャリアー及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分;並びに
iii)場合により少なくとも1つの香料助剤。
【0016】
"香料キャリアー"に関して、ここで、実質的に香料の観点から中性である、すなわち、付香成分の官能特性を著しく変更しない材料を意味する。該キャリアーは、液体又は固体であってよい。
【0017】
液体キャリアーとして、制限されない例として、乳化系、すなわち、溶剤及び界面活性剤系、又は香料において通常使用される溶剤を挙げてよい。通常、香料において使用される溶剤の性質及びタイプの詳細な説明は、網羅できない。しかしながら、制限されない例として、最も一般的に使用されている溶剤、例えばジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、安息香酸ベンジル、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノール又はクエン酸エチルを挙げることができる。
【0018】
固体キャリアーとして、制限されない例として、吸収ゴム又はポリマー、もしくはさらにカプセル化された材料を挙げてよい。かかる材料の例は、壁形成材料及び可塑化材料、例えば単糖類、二糖類又は三糖類、天然又は化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質又はペクチン、もしくはさらに参考文献、例えばH. Scherz, Hydrokolloids :Stabilisatoren, Dickungs− und Gehermittel in Lebensmittel, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitat, Behr's VerlagGmbH & Co., Hamburg, 1996において挙げられている材料を含んでよい。前記カプセル化は、当業者によく知られた方法であり、かつ例えば、噴霧乾燥、凝塊形成又はさらに押出しのような技術を使用して実施されてよく、もしくは例えば、コアセルベーション及び複合コアセルベーション技術を含む、被覆カプセル化からなる。
【0019】
"香料ベース"に関して、ここでは、少なくとも1つの付香共成分を含む組成物を意味する。
【0020】
前記付香共成分は、式(I)のものではない。さらに、"付香共成分"に関して、ここでは、付香配合物又は組成物中で快い効果を付与するために使用される化合物を意味する。言い換えれば、付香性のものであると見なされるかかる共成分は、当業者によって、ポジティブ又は心地よい方法で、組成物のにおいを付与又は改質することができ、かつ単ににおいを有するだけ出はないと認識されるべきである。
【0021】
前記ベース中に存在する付香共成分の性質及びタイプは、あらゆる場合において網羅的ではないより詳細な説明を保証せず、その際当業者は、その一般的な知識に基づいて、並びに意図した使用又は適用及び所望された官能的効果によってそれらを選択することができる。一般的な用語において、これらの付香共成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素複素環式化合物又は硫黄複素環式化合物及び精油と同様に広範な化学分類に属し、かつ該付香共成分は、天然源又は合成源であってよい。これらの共成分の多くは、場合により、参考文献、例えばS. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAによる本又はその最新版において、もしくは他の同様の性質の研究において、及び香料の分野における豊富な特許文献において挙げられている。前記共成分が、制御された方法で種々のタイプの付香化合物を放出することが公知である化合物であってもよいことも理解する。
【0022】
香料キャリアー及び香料ベースを含有する組成物のために、他の適した香料キャリヤーは、以前に明記されたよりも、エタノール、水/エタノール混合物、リモネン又は他のテルペン、イソパラフィン、例えば商標名Isopar(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)で公知のもの、又はグリコールエーテル及びグリコールエーテルエステル、例えばDowanol(登録商標)(製造元:Dow Chemical Company)で公知のものであってもよい。
【0023】
"香料助剤"に関して、本願明細書では、更なる付加された利点、例えば色、特定の光耐性、化学的安定性その他を付与することができる成分を意味する。香料ベース中で一般的に使用される助剤の性質及び種類の詳細な説明は包括的であることができないが、しかしながら前記成分は当分野の当業者にとっては良く知られていることを言及すべきである。
【0024】
式(I)の少なくとも1つの化合物及び少なくとも1つの香料担体からなる本発明の組成物は、本発明の特定の一実施態様、並びに少なくとも1つの式(I)の化合物、少なくとも1つの香料キャリアー、少なくとも1つの香料ベース、及び場合により少なくとも1つの香料助剤を含む付香組成物を示す。
【0025】
前記組成物において、式(I)の1つより多くの化合物を有する可能性が重要であることに言及することが有用である。それというのも、それは調香師が本発明の様々な化合物の香気の調性を有する調和物、香料を調製することを可能にし、従って彼らの仕事のための新規のツールを創出するからである。
【0026】
明確化のために、化学合成、例えば十分に精製していない反応媒体から直接得るあらゆる混合物は、その中で本発明の化合物が出発生成物、中間生成物又は最終生成物として含まれ、該混合物が香料のために好適な形で本発明の化合物を提供しない限りは本発明による付香組成物と見なされることができない。従って、未精製の反応混合物は、一般に、明記されない限り本発明から除かれる。さらに、本発明の化合物は、該化合物(I)が添加される消費者製品のにおいを明確に付与又は改質するために、現代の香料、すなわち優れた又は機能的な香料の全ての分野においても有利に使用されることができる。その結果、
i)付香成分として、前記で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物;及び
ii)優れた又は機能的な香料ベース;
を含む付香消費者製品も、本発明の対象である。
【0027】
明確化のために、"優れた又は機能的な香料ベース"に関して、ここでは、付香成分と相容性であり、かつ快いにおいを適用される表面(皮膚、髪、織物、又は家の表面)に提供することが期待されている消費者製品を意味することを言及すべきである。言い換えれば、本発明による付香の目的のための消費者製品は、機能性調合物、並びに場合によりさらに所望の消費者製品、例えば洗剤又はエアフレッシュナーに対応する利益剤(benefit agent)、及び少なくとも1つの本発明の化合物の嗅覚的有効量を含有する。優れた又は機能的な香料ベースの成分の性質及びタイプは、ここではあらゆる場合において網羅的ではないより詳細な説明を保証せず、その際当業者は、当業者の一般的知識に基づいて、並びに該製品の性質及び所望の効果によって、性質及びタイプを選択することができる。
【0028】
適した優れた又は機能的香料ベースの制限されない例として、香料、例えば優れた香料、コロン又はアフターシェーブローション;織物保護製品、例えば液体又は固体洗剤、織物柔軟剤、織物回復剤、アイロン水、紙、又は漂白剤;ボディーケア製品、例えばヘアケア製品(例えばシャンプー、カラーリング配合物又はヘアスプレー)、化粧品配合物(例えばバニシングクリーム又はデオドラント又は制汗剤)、又はスキンケア配合物(例えば着香石鹸、シャワー又はバスムース、オイル又はジェル、又は衛生製品);エアケア製品、例えばエアフレッシュナー又は"すぐ使用できる"粉末化エアフレッシュナー;もしくはホームケア製品、例えばワイプ、皿用洗剤又は硬質表面洗剤であってよい。
【0029】
前記消費者製品ベースのいくつかは、本発明の化合物のための攻撃的な媒体を示してよく、この結果これは、未熟な分解から後者の物品を、例えばカプセル化によって、又は本発明の成分を、適した外部刺激、例えば酵素、光、熱又はpHの変化に対して放出するのに適している他の化学物質への化学的結合によって保護するために必要であってよい。
【0030】
本発明による化合物を種々の前記物品又は組成物中に取り込むことができる割合は、広範の値に及ぶ。それらの値は着香される物品の性質、及び所望の官能効果、並びに、本発明による化合物が当該技術分野で通常使用される付香共成分、溶剤または添加剤と混合される場合、所定のベース中での該共成分の性質に依存する。
【0031】
例えば、芳香組成物の場合、典型的な濃度は、0.01質量%〜20質量%の程度であるか、又はさらに、本発明の化合物が混合される組成物の質量に対する本発明の化合物の程度である。それらより低い、例えば0.01質量%〜10質量%の程度での濃度は、それらの化合物が着香物品に対応する場合に、該物品の質量に対するパーセンテージで使用されうる。
【0032】
本発明の化合物は、公知のアルデヒド
【化3】

[式中、点線及びR1は、式(I)中と同様の意味を有する]の立体異性体、又はそれらの混合物から、該出発材料を適したアルコール又はジオールと反応することによって製造されうる。典型的な例を、以下の実施例において提供する。
【0033】
実施例
本発明を、以下の実施例を用いてさらに詳細に説明し、ここで、省略形は当該技術分野における通常の意味を有し、温度は摂氏度(℃)で示される;NMRスペクトルのデータは(特段述べられない限り)CDCl3において、360または400MHz機を用いて1Hおよび13Cについて記録され、ケミカルシフトδは標準としてのTMSに対するppmで示され、結合定数JはHzで表される。
【0034】
実施例1
a)トランス−2−(2,5,6,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−1,3−ジオキソラン、及びシス−2−(2,5,6,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−1,3−ジオキソランと2−(2,5,6,6−テトラメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−1,3−ジオキソランとの混合物の製造
2,5,6,6−テトラメチル−シクロヘキセンカルバルデヒド(64/7/29 トランス 2−エン/シス 2−エン/1−エン異性体混合物)(1660g、10mol、1当量)、エチレングリコール(1240g、20mol、2当量)、シクロヘキサン(1660g)及びp−トルエンスルホン酸一水和物(7.6g、0.04mol、0.004当量)を、加熱サーキュレーター、温度計、機械的撹拌装置及びDean−stark装置を備えた10リットルのschmizoタイプの反応器に全て装入した。その二相混合物を加熱して、激しい撹拌下で、共沸水を反応混合物から除去しながら還流した。還流の8時間後に、その反応を室温まで冷却した。過剰なエチレングリコール及びp−トルエンスルホン酸を含有する底部相のデカンテーション後に、その上相を、真空下で、シクロヘキサンを除去するために濃縮し、そして粗2−(2,5,6,6−テトラメチル−シクロヘキセニル)−1,3−ジオキソランを、80% GC純度で、80/7/13 トランス 2−エニル/シス 2−エン/1−エニル異性体混合物として得た。フラッシュ蒸留は、2−(2,5,6,6−テトラメチル−シクロヘキセニル)−1,3−ジオキソラン1940gに加えて反応中に形成した残りの重い副生成物60gを得た。
【0035】
さらに精製を、温度計、磁気撹拌装置及び可変の還流率を使用して0.5mbarの減圧下で90〜110℃の混合物を蒸留する充填蒸留塔(3M(Sulzer−タイプ)当量)を備えた3リットルの3つ首フラスコを使用して実施した。この最終蒸留は、以下を提供した
− 回収した最初の主画分は、残りの出発材料である;
− トランス2−(2,5,6,6−テトラメチル−シクロへクス−2−エニル)−1,3−ジオキソランの第二の主画分(1200g)を98.5%のGC純度(57%モーラー収率)で得た;及び
− 第三の主画分は、全体で98%のGC純度(13%モーラー収率)での1/1 シス 2−(2,5,6,6−テトラメチル−シクロへクス−2−エニル)−[1,3]ジオキソランと2−(2,5,6,6−テトラメチル−シクロへクス−1−エニル)−[1,3]ジオキソランとの混合物280gからなる。


【0036】
b)2−(2,2,c,3,t−6−テトラメチル−r−1−シクロヘキシル)−1,3−ジオキソランの製造
トルエン(50ml)中で、2,2,c−3,t−6−テトラメチル−シクロヘキサンカルバルデヒド(5.0g、30mmol)、エチレングリコール(7.3ml、45mmol)、p−トルエンスルホン酸(0.3g)の混合物を、25時間、Dean−stark装置で還流で加熱した。真空下で濃縮後に、その残りを、バルブ−トゥ−バルブ(bulb−to−bulb)蒸留して、55%収率で純粋なアセタールを得た。沸点:73℃/0.95mbar。

【0037】
c)6−(ジメトキシメチル)−1,5,5−トリメチル−1−シクロヘキセンの製造
この化合物を、トランスアセタール化反応によって得た。MeOH(125ml)中で2−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−[1,3]−ジオキソラン(24.48g、純度89%、111mmol)及び2,2−ジメトキシプロパン(125ml)に、Filtrol G24(4.90g)を添加し、そしてその混合物を室温で24時間撹拌した。その固形物を濾過し、その濾過物をエーテルで希釈し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し(2回)、乾燥し(K2CO3)、そして黄色の液体まで濃縮した(23.5g)。真空(沸点36〜39℃/0.3mbar)下の蒸留(10cm−Widmerカラム)は、87%の純度のジメチルアセタール(17.97g、71%)を得た。その生成物を、K2CO3(1.57g、11.4mmol)上で、室温で2.5日間液体を介して空気を泡立たせながら撹拌した。その生成物をエーテルで希釈し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、乾燥し(K2CO3)、そして黄色の液体まで濃縮した(17.14g)。真空下の蒸留(10cm−ビグリューカラム)は、93%の純度のジメチルアセタール(14.85g、63%)を得た。沸点94〜97℃/12mbar。

【0038】
d)2−[1lRS,3RS,6RS)−2,2,3,6−テトラメチルシクロヘキシル]−1,3−ジオキソラン及び2−[(1RS,3RS,6SR)−2,2,3,6−テトラメンチルシクロヘキシル]−1,3−ジオキソラン混合物の製造
2−(2,t−5,6,6−テトラメチル−シクロへクス−2−エニル)−[1,3]−ジオキソラン(630g、3mol、1当量)及びアルミナに対して5質量%ルテニウム(ルテニウム0.38g、3.75mmol、0.00125当量)を、11オートクレーブ中に全て装入した。密閉したオートクレーブを、撹拌下で窒素でパージし(3回、1bar)、そして水素でパージした(3回、1bar)。そして、そのオートクレーブを、40bar(水素)まで加圧し、そして十分な機械的撹拌下で120℃まで累進的に加熱した。転化の達成完了後(一般に6〜8時間)に、そのオートクレーブを室温まで冷却し、減圧し、窒素でパージし、そして開放した。不均一触媒濾過後に、所望の生成物を、3/1〜4/1の2−(2,2,t−3,c−6−テトラメチル−シクロヘキシル)−[1,3]−ジオキソラン/2−(2,2,t−3,t−6−テトラメチル−シクロヘキシル)−[1,3]−ジオキソラン混合物として、量的収率(635g)で得た。

【0039】
2,2,6−トリメチル−シクロヘキサンカルバルデヒドの一般的なアセタール化製造
2,2,6−トリメチル−シクロヘキサンカルバルデヒド(15.4g、0.1mol、1当量)、1,2又は1,3−ジオール(0.15mol、1.5当量)、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.1g、0.5mmol、0.005当量)及びヘプタン(100ml)を、Dean−stark装置を備えた250mlフラスコに全て装入し、そしてその混合物を7時間還流した。そして前記混合物を冷却し、水で洗浄し、そして真空下で濃縮した。そして得られた粗生成物を蒸留によって精製した。
【0040】
e)4,5−ジメチル−2−(2,2,6−トリメチル−1−シクロヘキシル)−1,3−ジオキソランの製造
前記の一般的な手法によって、対応するジオールを使用して、表題の化合物を89%の収率で得た。

【0041】
f)4−エチル−2−(2,2,6−トリメチル−1−シクロヘキシル)−1,3−ジオキソランの製造
前記の一般的な手法によって、対応するジオールを使用して、表題の化合物を85%の収率で得た。

【0042】
g)4,4,6−トリメチル−2−(2,2,6−トリメチル−1−シクロヘキシル)−1,3−ジオキソランの製造
前記の一般的な手法によって、対応するジオールを使用して、表題の化合物を82%の収率で得た。

【0043】
実施例2
付香組成物の配合
オレンジローズのコノテーション(connotation)を有する香料を、次の成分を混合することによって製造した:
【表2−1】

【表2−2】

【0044】
6−(ジメトキシメチル)−1,5,5−トリメチル−1−シクロヘキサン300質量部の前記付香組成物への添加は、優れた方法で、最初の白バラ香料をローズ−ティーに転換し、この効果は、調香師により利用可能ではない化合物1,3−ジブロモ−2−メトキシ−4−メチル−5−ニトロベンゼンを使用してのみ得ることができた。
【0045】
2−(2,2,c−3,t−6−テトラメチル−r−1−シクロヘキシルl)−1,3−ジオキソラン100質量部の前記付香組成物への添加は、優れた方法で、最初の白バラ香料を、新鮮なさわやかさ(green−dew)の側面、及びウッディー、ステムノートを付与することによって転換した。
【0046】
トランス−2−(2,5,6,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−1,3−ジオキソラン100質量部の添加は、前記組成物のイオノンオートを増強し、かつローズフレグランスにオリス特性を付与し、その際シス−2−(2,5,6,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−1,3−ジオキソランと2−(2,5,6,6−テトラメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−1,3−ジオキソランとの混合物の同量の添加は、前記白バラを赤バラに、バルサムノート及びBenjoinノートを付与することによって転換した。
【0047】
実施例3
付香組成物の配合
洗剤基剤のための香料を、以下の成分を混合することによって製造した:
【表3】

【0048】
6−(ジメトキシメチル)−1,5,5−トリメチル−1−シクロヘキサン100質量部の前記付香組成物への添加は、ダマスコンの、スパイシーの側面を付与した一方で、Vetrofix(登録商標)によって提供されたウッディーノートを増強した。
【0049】
2−(2,2,c−3,t−6−テトラメチル−r−1−シクロヘキシル)−1,3−ジオキソラン300質量部の前記付香組成物への添加は、よりウッディーな、ほとんどフローラルではなくなり、かつコロンの側面を増強した。
【0050】
トランス−2−(2,5,6,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−1,3−ジオキソラン300質量部の添加は、前記組成物のイオノンオートを増強し、かつアンバーなボトムノートを有するオリス特性を付与し、その際シス−2−(2,5,6,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−1,3−ジオキソランと2−(2,5,6,6−テトラメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−1,3−ジオキソランとの混合物の同量の添加は、オリスノートを有する、明らかなアンバーなウッディー特性を付与した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、一方の点線は、炭素−炭素の単結合又は二重結合の存在を示し、かつ他方の点線は、炭素−炭素の単結合の存在を示し、
1は、水素原子もしくはメチル又はエチル基を示し、かつ
それぞれのRは、単独で、同時に又は独立して、C1-3アルキル又はアルケニル基を示し、もしくは該R基は、共に、場合により酸素原子を含むC2-6炭化水素基を示す]の化合物の、該化合物の立体異性体のいずれか1つの形で、又はそれらの混合物の形での、付香成分としての使用。
【請求項2】
前記化合物(I)が、式
【化2】

[式中、点線は、炭素−炭素の単結合又は二重結合の存在を示し、
1は水素原子又はメチル基を示し、かつ
それぞれRは、単独で、同時に又は独立して、C1-2アルキル基を示し、又は該R基は、共に、C2-5炭化水素基を示す]の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物(II)において、点線が炭素−炭素単結合の存在を示し、かつ該化合物(II)が、50%(w/w)より多くの立体異性体を含む立体異性体の混合物の形であり、その際シクロヘキサン環の1位及び6位での置換が、トランス相対配置であり、かつR1がメチル基である場合に、シクロヘキサン環の3位及び6位での置換が、トランス相対配置であることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】

【化3】

[式中、一方の点線は、炭素−炭素の単結合又は二重結合の存在を示し、かつ他方の点線は、炭素−炭素の単結合の存在を示し、
1は、メチル又はエチル基を示し、かつ
それぞれのRは、単独で、同時に又は独立して、C1-3アルキル又はアルケニル基を示し、もしくは該R基は、共に、場合により酸素原子を含むC2-6炭化水素基を示す]の化合物であって、該化合物の立体異性体のいずれか1つの形、又はそれらの混合物の形である化合物。
【請求項5】
50%(w/w)より多くの立体異性体を含む立体異性体の混合物の形であり、その際シクロヘキサン環の1位及び6位での置換が、シス相対配置であり、かつR1がメチル基である場合に、シクロヘキサン環の3位及び6位での置換が、トランス相対配置であることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
トランス−2−(2,5,6,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−1,3−ジオキソラン、2−[(1RS,3RS,6RS)−2,2,3,6−テトラメチルシクロヘキシル]−1,3−ジオキソラン、2−[(1RS,3RS,6SR)−2,2,3,6−テトラメチルシクロヘキシル]−1,3−ジオキソラン又は2−(2,2,c−3,t−6−テトラメチル−r−1−シクロヘキシル)−1,3−ジオキソランであることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
以下、
i)請求項1から3までのいずれか1項で定義された少なくとも1つの化合物;
ii)香料キャリアー及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分;並びに
iii)場合により少なくとも1つの香料助剤
を含む付香組成物。
【請求項8】
以下、
i)請求項1から3までのいずれか1項で定義された式(I)の少なくとも1つの化合物;及び
ii)優れた又は機能的な香料ベース
を含む、着香物品。
【請求項9】
前記優れた又は機能的な香料ベースが、香料、織物ケア製品、ボディーケア製品、空気ケア製品又はホームケア製品であることを特徴とする、請求項8に記載の着香物品。
【請求項10】
前記優れた又は機能的香料ベースが、優れた香料、コロン、アフターシェーブローション、液体又は固体洗剤、織物柔軟剤、織物回復剤、アイロン水、紙、漂白剤、シャンプー、カラーリング配合物、ヘアスプレー、バニシングクリーム、デオドラント又は制汗剤、着香石鹸、シャワー又はバスムース、オイル又はジェル、衛生製品、エアフレッシュナー、"すぐ使用できる"粉末化エアフレッシュナー、ワイプ、皿用洗剤又は硬質表面洗剤であることを特徴とする、請求項8に記載の着香物品。

【公表番号】特表2012−524827(P2012−524827A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506611(P2012−506611)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051608
【国際公開番号】WO2010/122451
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】