説明

代謝性障害の処置のための化合物

【課題】インスリン抵抗性および膵島不全という主要な欠点を有効に処置する新規の経口活性治療剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症などの種々の代謝疾患の処置に有用な薬剤を開示する。本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、悪液質、高脂血症、脂肪肝疾患、肥満、動脈硬化症、またはアテローム性動脈硬化症を有する哺乳動物対象を処置する方法であって、上記生物活性薬剤の有効量を前記対象に投与する工程を包含する方法を提供する。本発明は、上記生物活性薬剤および製薬的に薬学的に受容可能なキャリアを含有する製薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
真性糖尿病は、罹患率および死亡率の主要原因である。慢性的高血糖は、消耗性の合併症、すなわち、しばしば透析または腎移植を必要とする腎障害;末梢神経障害;失明に至る網膜症;切断に至る肢および脚部の潰瘍形成;時には肝硬変に進行する脂肪肝病;および冠動脈疾患および心筋梗塞に対する脆弱性へと至る。
【0002】
糖尿病には2つの主要な型がある。I型、またはインスリン依存真性糖尿病(IDDM)は、膵島内のインスリン産生ベータ細胞の自己免疫破壊による。この疾患の発症は、通常小児期または思春期にある。過剰のインスリンは低血糖を引き起こし、その結果、脳障害および他の機能障害を引き起こし得るので、処置は、インスリン投与量を調整するための血糖値の頻繁な試験と組合わせて、主としてインスリンの毎日の複数注射からなる。
【0003】
II型、または非インスリン依存真性糖尿病(NIDDM)は、典型的には成人期に発現する。NIDDMは、脂肪組織、筋肉、および肝臓のようなグルコース利用組織の、インスリン作用に対する抵抗性に関連している。最初、膵島のベータ細胞は、過剰のインスリンを分泌することにより埋め合わせをする。その結果、膵島不全により、代償不全および慢性高血糖症となる。逆に、中等度の膵島機能不全が、末梢インスリン抵抗性に先行し得るか、または同時に発生し得る。NIDDMの治療に有用である薬物には幾つかのクラスがある、すなわち、1)低血糖症の危険を有する、インスリン放出を直接的に刺激するインスリン放出剤;2)グルコース誘導インスリン分泌を増強させ、各食事前に服用しなければならない食事インスリン放出剤;3)肝臓のグルコース新生を減衰させる(糖尿病においては逆説的に上昇する)メトホルミンなどのビグアニド類;4)インスリンに対する末梢応答を改善するが、体重増加、浮腫および時には肝毒性のような副作用を有するインスリン増感剤、例えば、チアゾリジンジオン誘導体ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン;5)膵島が、慢性的過刺激下で衰弱した場合、NIDDMの後期段階でしばしば必要となるインスリン注射。
【0004】
インスリン抵抗性はまた、顕著な高血糖なしでも発生することがあり、一般にアテローム性動脈硬化症、肥満、高脂血症、および本態性高血圧と関連している。この一群の異常性は、「代謝症候群」または「インスリン抵抗性症候群」を構成する。インスリン抵抗性はまた、慢性炎症(NASH;「非アルコール性脂肪肝炎」)、線維症、および肝硬変へと進行し得る脂肪肝と関連している。限定はしないが、糖尿病などのインスリン抵抗性症候群は累積すると、40才以上の人々の罹患および死亡の主要原因の多くのものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような薬物の存在にもかかわらず、糖尿病は、依然として主要かつ増加しつつある公衆衛生問題である。糖尿病の後期段階では、高比率の国民保険医療財源を消費する。現存の薬物よりも副作用が少ないか、または緩和であるインスリン抵抗性および膵島不全という主要な欠点を有効に処置する新規の経口活性治療剤に対する必要性が存在している。
【0006】
現在、脂肪肝疾患に対する安全かつ有効な処置法はない。したがって、このような処置は、この病態を処置する上で価値があると考えられる。
【0007】
WO02/100341(Wellstat Therapeutics社)は、4−(3−2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)酪酸を開示している。国際公開第02/100341号は、mが、0、1、2、4、または5である、下記に示されている式Iの範囲内のいずれの化合物も開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、下記のとおり生物活性薬剤を提供する。本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、悪液質、高脂血症、脂肪肝疾患、肥満、動脈硬化症、またはアテローム性動脈硬化症の処置用の医薬品製造において下記の生物活性薬剤の使用を提供する。本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病、悪液質、高脂血症、脂肪肝疾患、肥満、動脈硬化症、またはアテローム性動脈硬化症を有する哺乳動物対象を処置する方法であって、下記の生物活性薬剤の有効量を前記対象に投与することを含んでなる方法を提供する。本発明は、下記の生物活性薬剤および製薬的に許容できる担体を含んでなる製薬組成物を提供する。
【0009】
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
インスリン抵抗性症候群ならびにI型糖尿病およびII型糖尿病を含む糖尿病からなる群より選択される状態の処置用;または糖尿病に関連するアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、ネフロパシー、神経障害、網膜症、脚部潰瘍形成もしくは白内障の発症時の処置用または発症率の軽減用;または高脂血症、悪液質および肥満からなる群より選択される状態の処置用の医薬の製造における生物活性薬剤の使用であって;
ここで、該薬剤は、式:
【化1】

の化合物であって、
ここで、
nは、1または2であり;
mは、0、1、2、4または5であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルキル、または1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
Aは、非置換フェニル、またはハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される1個もしくは2個の基によって置換されているフェニルであるか;または、
3個から6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、該シクロアルキルは、非置換であるか、または1つもしくは2つの環炭素が、メチルもしくはエチルにより独立して一置換されているシクロアルキルであるか;または、
N、SおよびOから選択される1個もしくは2個の環ヘテロ原子を有する5員環もしくは6員環のヘテロ芳香族環であって、該ヘテロ芳香族環は、環炭素により式Iの化合物の残部に共有結合しているヘテロ芳香族環であり;そして、
は、水素、または1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキルである、化合物、
あるいは、Rが水素である場合、該化合物の薬学的に受容可能な塩である、
生物活性薬剤の使用。
(項目2)
項目1に記載の使用であって、ここで、nは1であり;qは0であり;tは0であり;Rは水素であり;そして、Aは、非置換フェニル、またはハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される1個もしくは2個の基によって置換されているフェニルである、使用。
(項目3)
Aが、2,6−ジメチルフェニルである、項目2に記載の使用。
(項目4)
前記生物活性薬剤が:
3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸;
3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)安息香酸;
エチル3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンゾエート;
6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサン酸;
エチル6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサノエート;5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタン酸;
エチル5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタノエート;3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロピオン酸;および
エチル3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロパノエート;
からなる群より選択される、項目3に記載の使用。
(項目5)
前記医薬が、経口投与用に処方されている、項目1〜4のいずれか一項に記載の使用。
(項目6)
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症および動脈硬化症からなる群より選択される状態を有する哺乳動物の被験体を処置するための方法であって、該方法は、生物活性剤の一定量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、該薬剤が、式:
【化2】


の化合物であって、
ここで、
nは、1または2であり;
mは、0、1、2、4または5であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルキル、または1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
Aは、非置換フェニル、またはハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される1個もしくは2個の基によって置換されているフェニルであるか;または、
3個から6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、非置換であるか、または1つもしくは2つの環炭素が、メチルもしくはエチルにより独立して一置換されているシクロアルキルであるか;または
N、SおよびOから選択される1個もしくは2個の環ヘテロ原子を有する5員環もしくは6員環のヘテロ芳香族環であって、該ヘテロ芳香族環は、環炭素により式Iの化合物の残部に共有結合しているヘテロ芳香族環であり;そして、
は、水素、または1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキルである、化合物;
あるいは、Rが水素である場合、該化合物の薬学的に受容可能な塩である、
哺乳動物被験体を処置するための方法。
(項目7)
項目6に記載の方法であって、ここで、nは1であり;qは0であり;tは0であり;Rは水素であり;そしてAは、非置換フェニル、またはハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される1個もしくは2個の基によって置換されているフェニルである、方法。
(項目8)
Aが、2,6−ジメチルフェニルである、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記生物活性薬剤が、以下:
3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸;
3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)安息香酸;
エチル3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンゾエート;
6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサン酸;
エチル6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサノエート;5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタン酸;
エチル5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタノエート;3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロピオン酸;および、
エチル3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロパノエート;
からなる群より選択される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記被験体が、ヒトである、項目6〜9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記薬剤が、1日当たり1ミリグラムから400ミリグラムまでの量で経口投与される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記状態が、インスリン抵抗性症候群またはII型糖尿病である、項目6〜11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記処置が、糖尿病の症状または糖尿病の症状の発症率を軽減し、ここで、該症状が、糖尿病に関連したアテローム性動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、ネフロパシー、神経障害、網膜症、脚部潰瘍形成または白内障からなる群より選択される、項目6〜12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症からなる群より選択される状態の処置に使用し、経口投与に適合するための薬学的組成物であって、かつ薬学的に受容可能なキャリアおよび1ミリグラムから400ミリグラムの生物活性剤を含有する薬学的組成物であって、
ここで、該薬剤は、式:
【化3】


の化合物であって、
ここで、
nは、1または2であり;
mは、0、1、2、4または5であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルキル、または1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
Aは、非置換フェニル、またはハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される1個もしくは2個の基によって置換されているフェニルであるか;または、
3個から6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、該シクロアルキルは、非置換であるか、または1個もしくは2個の環炭素が、メチルもしくはエチルにより独立して一置換されているシクロアルキルであるか;または、
N、SおよびOから選択される1個または2個の環ヘテロ原子を有する5員環または6員環のヘテロ芳香族環であって、該ヘテロ芳香族環は、環炭素により式Iの化合物の残部に共有結合しているヘテロ芳香族環であり;そして、
は、水素、または1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキルである、化合物;
あるいは、Rが水素である場合、該化合物の薬学的に受容可能な塩である、薬学的組成物。
(項目15)
nが1であり;qが0であり;tが0であり;Rが水素であり;そして、
Aは、非置換フェニル、またはハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される1個もしくは2個の基によって置換されているフェニルである、項目14に記載の薬学的組成物。
(項目16)
Aが、2,6−ジメチルフェニルである、項目15に記載の薬学的組成物。
(項目17)
前記生物活性薬剤が、以下:
3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸;および
3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)安息香酸;
エチル3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンゾエート;
6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサン酸;
エチル6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサノエート;5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタン酸;
エチル5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタノエート;3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロピオン酸;および
エチル3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロパノエートからなる群より選択される、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目18)
経口投薬剤形である、項目14〜17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
(項目19)
生物活性薬剤であって、該薬剤が、式:
【化4】


の化合物であって、
ここで、
nは、1または2であり;
mは、0、1、2、4または5であり;
qは、0または1であり;
tは、0または1であり;
は、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり;
は、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルキル、または1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり;
Aは、非置換フェニル、またはハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される1個もしくは2個の基によって置換されているフェニルであるか;または
3個から6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであって、該シクロアルキルは、非置換であるか、または1個もしくは2個の環炭素が、メチルもしくはエチルにより独立して一置換されているシクロアルキルであるか;または、
N、SおよびOから選択される1個または2個の環ヘテロ原子を有する5員環または6員環のヘテロ芳香族環であって、該ヘテロ芳香族環は、環炭素により式Iの化合物の残部に共有結合しているヘテロ芳香族環であり;そして、
は、水素、または1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキルである、化合物;
あるいは、Rが水素である場合、該化合物の薬学的に受容可能な塩である、
薬学的組成物。
(項目20)
nが1であり;qが0であり;tが0であり;Rが水素であり;そして、
Aは、非置換フェニル、またはハロ、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個もしくは2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される1個もしくは2個の基によって置換されているフェニルである、
項目19に記載の生物活性薬剤。
(項目21)
Aが、2,6−ジメチルフェニルである、項目19に記載の生物活性薬剤。
(項目22)
前記生物活性薬剤が、以下:
3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸;および、
3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)安息香酸;
エチル3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンゾエート;
6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサン酸;
エチル6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサノエート;5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタン酸;
エチル5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタノエート;3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロピオン酸;および、
エチル3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロパノエートからなる群より選択される、項目21に記載の生物活性薬剤。
(項目23)
実質的に上記の発明。
【0010】
本発明による生物活性薬剤は、式I:
【0011】
【化5】


式中、nは、1または2であり、mは、0、1、2、4または5であり、qは、0または1であり、tは、0または1であり、Rは、1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rは、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルキル、または1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり、Aは、非置換フェニル、またはハロ、1個から2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個から2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される1つまた2つの基によって置換されているフェニルであるか、またはシクロアルキルが非置換であるか、または1つもしくは2つの環炭素が、メチルまたはエチルにより独立してモノ置換されている3個から6個の環炭素原子を有するシクロアルキルであるか、またはN、SおよびOから選択される1個または2個の環ヘテロ原子を有する5員環または6員環のヘテロ芳香族環であって、前記ヘテロ芳香族環は、環炭素により式Iの化合物の残部に共有結合しており、Rは、水素または1個から2個の炭素原子を有するアルキルである化合物である。あるいは、Rが水素である場合、生物活性薬剤は、式I)の化合物の製薬的に許容できる塩であり得る。
【0012】
上記の生物活性薬剤は、ヒト糖尿病およびインスリン抵抗性症候群の動物モデルが確立されている下記の1つ以上の生物活性アッセイにおいて活性を有する。したがって、このような薬剤は、糖尿病およびインスリン抵抗性症候群の処置に有用であると考えられる。試験された全ての例示化合物は、試験された少なくとも1つの生物活性アッセイにおいて活性を証明した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書に用いられる用語の「アルキル」とは、直鎖または分枝鎖アルキル基を意味する。ある一定数の炭素原子を有するものとして同定されたアルキル基は、特定数の炭素を有する任意のアルキル基を意味する。例えば、3個の炭素原子を有するアルキルは、プロピルまたはイソプロピルであり得、4個の炭素原子を有するアルキルは、n−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピルまたはt−ブチルであり得る。
【0014】
本明細書に用いられる用語の「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードの1つ以上を称す。
【0015】
本明細書に用いられるペルフルオロメチルまたはペルフルオロメトキシにおける用語の「ペルフルオロ」とは、問題となる基が、全ての水素原子の代わりにフッ素原子を有することを意味する。
【0016】
本明細書に用いられる「Ac」とは、基CHC(O)−を称す。
【0017】
ある一定の化学化合物は、本明細書においてそれらの化学名または下記に示される2文字のコードによって称される。CF〜CMの化合物は、上記式Iの範囲内に含まれる。
BI 4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸
BT 4−[[4−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−3−メトキシ]フェニル]−4−オキソ酪酸
BU 4−[3−[[N−(4−トリフルオロメチルベンジル)アミノカルボニル]−4−メトキシ]フェニル]−4−オキソ酪酸
BV 4−[3−[[N−(2,6−ジメチルベンジル)アミノカルボニル]−4−メトキシ]フェニル]−4−オキソ酪酸
CA (2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンゼン
CB メチル3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−3−オキソプロピオネート
CC 3−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソブチルアミド
CD 5−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−5−オキソペンタン酸
CE 4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)酪酸
CF 3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸
CG 3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)安息香酸
CH エチル3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンゾエート
CI 6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサン酸
CJ エチル6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサノエート
CK 5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタン酸
CL エチル5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタノエート
CM 3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロピオン酸
CN エチル3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロパノエート。
【0018】
本明細書に用いられる移行性の用語「含んでなる」は、拡張可能である。この用語を利用する請求項は、このような請求項に列挙されたものに加えて特定の要素を含むことができる。
【0019】
(本発明の化合物)
上記の薬剤、使用、方法または製薬組成物の実施形態において、nは、1であり、qは、0であり、tは0であり、Rは、水素であり、Aは、非置換フェニル、またはハロ、1個から2個の炭素原子を有するアルキル、ペルフルオロメチル、1個から2個の炭素原子を有するアルコキシ、およびペルフルオロメトキシから選択される1つまた2つの基によって置換されているフェニルである。より具体的な実施形態において、Aは2,6−ジメチルフェニルである。このような化合物の例としては、3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸;3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)安息香酸;エチル3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンゾエート;6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサン酸;エチル6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサノエート;5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタン酸;エチル5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタノエート;3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロピオン酸;およびエチル3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]−プロパノエートが挙げられる。
【0020】
本発明の生物活性薬剤の好ましい実施形態において、薬剤は実質的に(少なくとも98%)純粋形態である。
【0021】
(反応スキーム)
本発明の生物活性剤は、以下の反応スキームに従って製造できる。
【0022】
式Iの化合物において、mは、0から2であり、qは、0であり、tは、0または1であり、nは、1または2であり、Rは、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシ、または1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rは、水素または1個から2個の炭素原子を有するアルキルである、すなわち式:
【0023】
【化6】


の化合物であり、
式中、Aは、上記のとおりであり、スキーム1の反応を経由して調製できる。
【0024】
スキーム1の反応スキームにおいて、A、t、n、m、およびRは、上記のとおりである。Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキルであり、Yは、脱離基である。
【0025】
式IIの化合物は、トリフェニルホスフィンおよびジエチルアゾジカルボキシレートまたはジイソプロピルアゾジカルボキシレートを用いてIIとIIIとのMitsunobu縮合反応を用いた工程(a)の反応を経由して式Vの化合物に変換される。本反応は、好適な溶媒、例えばテトラヒドロフラン中で実施される。Mitsunobu反応において従来から用いられているいずれの条件も、工程(a)の反応を実施するために利用できる。
【0026】
式Vの化合物はまた、工程(a)の反応として、式IIの化合物を式IVの化合物とのエーテル化またはアルキル化により調製できる。式IVの化合物において、Yとしては、限定はしないが、メシルオキシ、トシルオキシ、クロロ、ブロモ、ヨードなどが挙げられる。脱離基との反応によるヒドロキシル基における通常の任意のエーテル化法は、工程(a)の反応を実施するために利用できる。
【0027】
式Vの化合物は、Rが、1個から2個の炭素原子を有するアルキルである式Iの化合物である。式Vの化合物は、遊離酸、すなわち、Rが、エステル加水分解によるHである式Iの化合物に変換できる。通常の任意のエステル加水分解法は、Rが、Hである式Iの化合物を生成する。
【0028】
(反応スキーム1)
【0029】
【化7】


式Iの化合物において、mは、3から5であり、qは、0であり、tは、0または1であり、nは、1または2であり、Rは、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rは、水素または1個から2個の炭素原子を有するアルキルである化合物、すなわちAが、上記のとおりである式:
【0030】
【化8】


の化合物はスキーム2の反応を経由して調製できる。
【0031】
スキーム2の反応スキームにおいて、A、t、n、m、RおよびRは、上記のとおりである。Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキルであり、pは、1から3であり、Yは、脱離基である。
【0032】
式VIの化合物は、トリフェニルホスフィンおよびジエチルアゾジカルボキシレートまたはジイソプロピルアゾジカルボキシレートを用いてVIとIIIとのMitsunobu縮合反応を用いた工程(b)の反応を経由して式VIIの化合物に変換される。本反応は、好適な溶媒、例えばテトラヒドロフラン中で実施される。Mitsunobu反応において従来から用いられているいずれの条件も、工程(b)の反応を実施するために利用できる。
【0033】
式VIIの化合物はまた、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジンなどの好適な塩基を用いることによる工程(c)の反応を経由して、式VIの化合物の式IVの化合物でのエーテル化またはアルキル化により調製できる。式IVの化合物において、Yとしては、限定はしないが、メシルオキシ、トシルオキシ、クロロ、ブロモ、ヨードなどが挙げられる。ハロゲン化物または脱離基との反応によりヒドロキシル基をアルキル化する通常の任意の条件は、工程(c)の反応を実施するために利用できる。工程(c)の反応は、式IVの化合物が容易に入手できる場合、工程(b)以上に好ましい。
【0034】
式VIIの化合物は、式VIIの化合物を式VIIIの化合物によりアルキル化することにより工程(d)の反応を経由して化合物IXに変換される。本反応は、アセトフェノンを3−ケトエステル(すなわち、ガンマ−ケトエステル)に変換する、ほぼ1モル当量の従来の塩基存在下で実施する。この反応を実施する際に、限定はしないが、リチウムビス−(トリメチルシリル)アミドなどのヘキサメチルジシランのアルカリ金属塩を利用することが一般に好ましい。一般に本反応は、テトラヒドロフランなどの不活性溶媒中で実施される:1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン。一般にこの反応は、−65℃から25℃の温度で実施される。このようなアルキル化反応における通常の任意の条件は、工程(d)の反応を実施するために利用できる。
【0035】
式IXの化合物は、エステル加水分解により遊離酸に変換される。エステル加水分解の任意の従来法により、Rが、Hである式IXの化合物を生成する。
【0036】
式IXの化合物は、ケトン基をCH基に還元することにより工程(e)の反応を経由して化合物Xに変換される。本反応は、式IXの化合物を、エチレングリコールなどの好適な溶媒中、ヒドラジン水和物およびKOHまたはNaOHなどの塩基により加熱することにより実施される。本反応を実施する際に、限定はしないが、塩基としてKOHを利用することが一般に好ましい。Wolff−Kishner還元反応に従来から用いられている任意の条件は、工程(e)の反応を実施するために利用できる。式Xの化合物は、Rが、Hである式Iの化合物である。
【0037】
式Xの化合物において、酸は、エタノールまたはメタノール中、触媒、例えばHSO、TsOHなどを用いることによる、または脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドを用いることによる酸のエステル化により、エステル、すなわち、Rが、1個から2個の炭素原子を有するアルキルである式Iの化合物に変換できる。このようなエステル化反応における通常の任意の条件は、Rが、1個から2個の炭素原子を有するアルキルである式Iの化合物を生成するために利用できる。
【0038】
(反応スキーム2)
【0039】
【化9】


式Iにおいて、qは、1であり、Rは、1個から3個の炭素原子を有するアルキル基であり、mは、3から5であり、tは、0または1であり、nは、1または2である化合物、すなわち、Aが、上記のとおりであり、Rが、水素または1個から2個の炭素原子を有するアルキルであり、Rが、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルである式:
【0040】
【化10】


の化合物は、スキーム3の反応スキームを経由して調製できる。
【0041】
スキーム3の反応スキームにおいて、t、n、A、R、RおよびRは、上記のとおりである。Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキル基であり、Yは、クロロまたはブロモであり、pは、1から3である。
【0042】
式XIの化合物は、メシル化して、工程(f)の反応を経て式XIIの化合物を供給することができる。ヒドロキシル基のメシル化反応を実施するために通常の任意の条件は、工程(f)を実施するために利用できる。次に、式XIIの化合物は、式XIIIの化合物と加熱して式XIVの化合物を生成する。アミノアルコールを生成する通常の任意の方法は、工程(g)の反応を実施するために利用できる。
【0043】
式XIVの化合物において、アルコールを、式XIVの化合物を、塩化チオニル、臭素、および三臭化リンなどで処理することによりクロロまたはブロモで置き換えた式XVの化合物を生成できる。アルコールをクロロまたはブロモで置き換える任意の従来法は、工程(h)の反応を実施するために利用できる。
【0044】
式XVの化合物を、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミンなどの好適な塩基存在下で工程(i)の反応を経由して、式VIの化合物と反応できる。本反応は、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなどの従来の溶媒中で実施して、式XVIに対応する化合物を生成する。塩基(塩基が炭酸カリウムであることが好ましい)存在下でヒドロキシ基とクロロまたはブロモとのエーテル化の任意の従来法は、工程(i)の反応を実施するために利用できる。
【0045】
式XVIの化合物は、式XVIの化合物を式VIIIの化合物によりアルキル化することにより、工程(j)の反応を経由して式XVIIの化合物に変換できる。本反応は、ほぼ1モル当量のリチウムヘキサメチルジシランなどの好適な塩基存在下で実施する。本反応は、スキーム2の工程(d)の反応に関連して記載されたものと同じ様式で実施される。
【0046】
式XVIIの化合物は、エステル加水分解により遊離酸に変換できる。エステル加水分解の任意の従来法により、Rが、Hである式XVIIの化合物を生成する。
【0047】
式XVIIの化合物は、ケトン基をCH基に還元することにより工程(k)の反応を経由して化合物XVIIIに変換され得る。本反応は、式XVIIの化合物を、エチレングリコールなどの好適な溶媒中、ヒドラジン水和物およびKOHまたはNaOHなどの塩基により加熱することにより実施される。本反応を実施する際に、限定はしないが、塩基としてKOHを利用することが一般に好ましい。Wolff−Kishner還元反応に従来から用いられている任意の条件は、工程(k)の反応を実施するために利用できる。
【0048】
式XVIIIの化合物は、Rが、Hである式Iの化合物である。
【0049】
式XVIIIの化合物において、酸は、エタノールまたはメタノール中、触媒、例えばHSO、TsOHなどを用いることによる、または脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドを用いることによる酸のエステル化により、エステル、すなわち、Rが、1個から2個の炭素原子を有するアルキルである式Iの化合物に変換できる。このようなエステル化反応における通常の任意の条件は、Rが、1個から2個の炭素原子を有するアルキルである式Iの化合物を生成するために利用できる。
【0050】
(反応スキーム3)
【0051】
【化11】


式Iにおいて、mは、0から2であり、qは、1であり、tは、0または1であり、nは、1または2であり、Rは、水素、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rは、水素または1個から2個の炭素原子を有するアルキルである化合物、すなわち、Aが、上記のとおりである式:
【0052】
【化12】


の化合物は、スキーム4の反応スキームを経由して調製できる。
【0053】
スキーム4の反応において、t、n、A、RおよびRは、上記のとおりである。Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキル基であり、Yは、クロロまたはブロモである。
【0054】
式XVの化合物(スキーム3の反応記載されたものと同じ様式で調製された)を、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミンなどの好適な塩基存在下で工程(1)の反応を経由して、式IIの化合物と反応できる。本反応は、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンなどの通常の溶媒中で実施して、式XIXに対応する化合物を生成する。塩基(塩基が炭酸カリウムであることが好ましい)存在下でヒドロキシ基とクロロまたはブロモとのエーテル化における通常の任意の条件は、工程(1)の反応を実施するために利用できる。
【0055】
式XIXの化合物は、Rが、1個から2個の炭素原子を有するアルキルである式Iの化合物である。式XIXの化合物は、遊離酸、すなわち、Rが、エステル加水分解によりHである式Iの化合物に変換できる。エステル加水分解の任意の従来法は、RがHである式Iの化合物を生成する。
【0056】
(反応スキーム4)
【0057】
【化13】


式IIIにおいて、tが0または1であり、nが1または2である化合物、すなわち、
A(CHt+n−OH
(Aが上記のとおりである)式の化合物は、スキーム5の反応を経て調製できる。
【0058】
スキーム5の反応において、Aは上記のとおりであり、Yは脱離基である。式XXの化合物は、工程(m)の反応を経由して式XXIの化合物に還元できる。本反応は、通常の還元剤、例えば水素化リチウムアルミニウムなどの水素化アルカリ金属を利用して実施する。本反応は、テトラヒドロフランなどの好適な溶媒中で実施される。このような還元反応における従来の条件のいずれも、工程(m)の反応を実施するために利用できる。
【0059】
式XXIの化合物は、tが0であり、nが1である式IIIの化合物である。
【0060】
式XXIの化合物は、ヒドロキシル基を、ハロゲンがブロモまたはクロロであることが好ましいハロゲン基で置換することにより式XXIIの化合物に変換できる。適切なハロゲン化剤としては、限定はしないが、塩化チオニル、臭素、三臭化リン、四臭化炭素などが挙げられる。このようなハロゲン化反応における従来からの任意の条件は、工程(n)の反応を実施するために利用できる。
【0061】
式XXIIの化合物は、tが0であり、nが1である式IVの化合物である。式XXIIの化合物は、XXIIを、シアン化アルカリ金属、例えばシアン化ナトリウムまたはシアン化カリウムと反応させることにより式XXIIIの化合物に変換できる。本反応は、ジメチルスルホキシドなどの好適な溶媒中で実施される。ニトリルの調製に従来から使用されている任意の条件は、工程(o)の反応を実施するために利用できる。
【0062】
式XXIIIの化合物は、酸または塩基加水分解により反応工程(p)を経由して式XXIVの化合物に変換できる。本反応を実施する際、塩基加水分解、例えば水性水酸化ナトリウムを利用することは一般に好ましい。ニトリルの加水分解に従来から使用されている任意の条件は、工程(p)の反応を実施するために利用できる。
【0063】
式XXIVの化合物は、工程(q)の反応を経て式XXVの化合物を得るために還元できる。この反応は、工程(m)の反応において先に記載されたものと同じ様式で実施できる。
【0064】
式XXVの化合物は、tが1であり、nが1である式IIIの化合物である。
【0065】
式XXVの化合物は、工程(n)と関連して先に記載されたものと同じ様式で工程(r)の反応を経て式XXVIの化合物に変換できる。
【0066】
式XXVIの化合物は、tが1であり、nが1である式IVの化合物である。
【0067】
式XXVIの化合物は、好適な塩基、例えば水素化ナトリウムを利用してマロン酸ジエチルと反応させて、式XXVIIの化合物を得ることができる。本反応は、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなどの好適な溶媒中で実施される。このようなアルキル化反応における通常の任意の条件は、工程(s)の反応を実施するために利用できる。
【0068】
式XXVIIの化合物は、酸または塩基により加水分解して、工程(t)の反応を経て式XVIIIの化合物を得ることができる。
【0069】
式XXVIIIの化合物は、工程(m)と関連して先に記載されたものと同じ様式で工程(u)の反応を経て式XXIXの化合物に変換できる。
式XXIXの化合物は、tが1であり、nが2である式IIIの化合物である。
【0070】
式XXIXの化合物は、工程(n)の反応と関連して先に記載されたものと同じ様式で工程(v)の反応を経て式XXXの化合物に変換できる。式XXXの化合物は、tが1であり、nが2である式IVの化合物である。
【0071】
(反応スキーム5)
【0072】
【化14】


式IIにおいて、mは、0であり、Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルである化合物、すなわち、式:
【0073】
【化15】


の化合物は、スキーム6の反応を経由して調製できる。
【0074】
スキーム6の反応において、RはHである。RおよびRは上記のとおりである。
【0075】
式XXXIの化合物において、RはHである。式XXXIの化合物は、式XXXIの化合物とメタノールまたはエタノールとによるエステル化により工程(w)の反応を経て式IIの化合物に変換できる。本反応は、触媒、例えばHSO、TsOHなどを用いることによる、または脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドなどを用いることにより実施できる。このようなエステル化反応における通常の任意の条件は、工程(w)の反応を実施するために利用できる。
【0076】
(反応スキーム6)
【0077】
【化16】


式VIにおいて、Rは、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルである化合物、すなわち、式:
【0078】
【化17】


の化合物は、スキーム7の反応を経由して調製できる。
【0079】
スキーム7の反応において、mは、0であり、Rは、Hであり、Rは、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルである。
【0080】
反応スキーム7において、mは、0である。反応スキーム7は、George M Rubottomら、J.Org.Chem.1983年、48、p.1550−1552の方法に類似している。
【0081】
(反応スキーム7)
【0082】
【化18】


式IIにおいて、mは、1から2であり、Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルである化合物、すなわち、式:
【0083】
【化19】


の化合物は、スキーム8の反応を経由して調製できる。
【0084】
スキーム8の反応において、Rは、Hであり、Rは、ハロ、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシまたは1個から3個の炭素原子を有するアルキルであり、Rは、1個から2個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、ヒドロキシの保護基である。
【0085】
mが0である式IIの化合物は、最初にT.GreeneによるProtecting Groups in Organic Synthesisに記載されたものなど好適な保護基を利用することによるヒドロキシ基を保護し、次にエステル加水分解によるエステル基を脱保護することにより、工程(y)の反応を経て式XXXIIの化合物に変換できる。エステル加水分解の任意の従来法は、RがHである式XXXIIの化合物を生じる。
【0086】
式XXXIIの化合物は、工程(z)の反応を経由して酸をアルコールに変換する従来の還元剤を利用することにより式XXXIIIの化合物に還元できる。この反応を実施する際、限定はしないが、水素化リチウムアルミニウムを利用することが一般に好ましい。本反応は、テトラヒドロフランなどの好適な溶媒中で実施される。このような還元反応における通常の任意の条件は、工程(z)の反応を実施するために利用できる。
【0087】
式XXXIIIの化合物は、ヒドロキシル基を、ハロゲンがブロモまたはクロロであることが好ましいハロゲンで置換することにより式XXXIVの化合物に変換できる。適切なハロゲン化剤としては、限定はしないが、塩化チオニル、臭素、三臭化リン、四臭化炭素などが挙げられる。このようなハロゲン化反応における通常の任意の条件は、工程(a’)の反応を実施するために利用できる。
【0088】
式XXXIVの化合物は、XXXIVを、シアン化アルカリ金属、例えばシアン化ナトリウムまたはシアン化カリウムと反応させることにより式XXXVの化合物に変換できる。ニトリルの調製に従来から使用されている任意の条件は、工程(b’)の反応を実施するために利用できる。
【0089】
式XXXVの化合物は、酸または塩基加水分解により反応工程(c’)を経由して式XXXVIの化合物に変換できる。本反応を実施する際、塩基加水分解、例えば水性水酸化ナトリウムを利用することは一般に好ましい。ニトリルの加水分解のために通常の任意の条件は、工程(c’)の反応を実施するために利用できる。
【0090】
式XXXVIの化合物は、T.GreeneによるProtecting Groups in Organic Synthesisに記載されたものなど好適な脱保護化剤を利用してヒドロキシの保護基の除去により工程(d’)の反応を経て式XXXVIIの化合物に変換できる。
【0091】
式XXXVIIの化合物は、式XXXVIIの化合物をメタノールまたはエタノールを用いたエステル化により、mが1であり、Rが1個から2個の炭素原子を有するアルキル基である式IIの化合物に変換できる。本反応は、触媒、例えばHSO、TsOHなどを用いることによる、または脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドなどを用いることにより実施できる。このようなエステル化反応における通常の任意の条件は、本反応を実施するために利用できる。
【0092】
式XXXIVの化合物は、好適な塩基、例えば水素化ナトリウムを利用してマロン酸ジエチルと反応させて、式XXXVIIIの化合物を得ることができる。本反応は、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなどの好適な溶媒中で実施される。このようなアルキル化反応における通常の任意の条件は、工程(e’)の反応を実施するために利用できる。
【0093】
式XXXVIIIの化合物は、酸または塩基により加水分解でき、また、T.GreeneによるProtecting Groups in Organic Synthesisに記載されたものなど好適な脱保護化剤を利用してヒドロキシの保護基の除去により、工程(f’)の反応を経て式XXXIXの化合物を得ることができる。
【0094】
式XXXIXの化合物は、式XXXIXの化合物をメタノールまたはエタノールを用いたエステル化により、mが2であり、Rが1個から2個の炭素原子を有するアルキル基である式IIの化合物に変換できる。本反応は、触媒、例えばHSO、TsOHなどを用いることによる、または脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドなどを用いることにより実施できる。このようなエステル化反応における通常の任意の条件は、本反応を実施するために利用できる。
【0095】
(反応スキーム8)
【0096】
【化20】


式XXXIにおいて、mは、0であり、Rは、Hであり、Rは、ハロである化合物、すなわち、式:
【0097】
【化21】


の化合物は、商品として入手できるか、または以下の文献に記載された方法に従って調製できる:
1.3−BrまたはF−2−OHCCOH、Canadian Journal of Chemistry(2001)、79(11)p.1541−1545
2.4−Br−2−OHCCO
国際公開第9916747号または特開平04−154773号
3.2−Br−6−OHCCO
特開昭47−039101号
4.2−Br−3−OHCCO
国際公開第9628423号
5.4−Br−3−OHCCO
国際公開第2001002388号
6.3−Br−5−OHCCO
Journal of labelled Compounds and Radiopharmaceuticals(1992)、31(3)、p.175−82
7.2−Br−5−OHCCOHおよび3−Cl−4−OHCCO
国際公開第9405153号および米国特許第5519133号
8.2−Br−4−OHCCOHおよび3−Br−4−OHCCO
国際公開第20022018323号
9.2−Cl−6−OHCCO
特開平06−293700号
10.2−Cl−3−OHCCO
Proceedings of the Indiana Academy of Science(1983)、巻日付1982年、92、p.145−51
11.3−Cl−5−OHCCO
国際公開第2002000633号および国際公開第2002044145号
12.2−Cl−5−OHCCO
国際公開第9745400号
13.5−I−2−OHCCOHおよび3−I,2−OHCCO
Z.Chem.(1976)、16(8)、p.319−320
14.4−I−2−OHCCO
Journal of Chemical Research,Synop−ses(1994)、(11)、p.405
15.6−I−2−OHCCO
米国特許第4932999号
16.2−I−3−OHCCOHおよび4−I−3−OHCCO
国際公開第9912928号
17.5−I−3−OHCCO
J.Med.Chem.(1973)、16(6)、p.684−7
18.2−I−4−OHCCO
Collection of Czechoslovak Chemical Communications、(1991)、56(2)、p.459−77
19.3−I−4−OHCCO
J.O.C.(1990)、55(18)、p.5287−91。
【0098】
式XXXIにおいて、mが、0であり、Rが、Hであり、Rが、1個から3個の炭素原子を有するアルコキシであり、フェニル環が、下記に示されるとおり:
【0099】
【化22】


に置換されている化合物は、スキーム9の反応を経由して合成できる。
【0100】
スキーム9の反応において、RおよびRは上記のとおりであり、Rは1個から2個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0101】
式XLの化合物は、アルデヒドを第一級アルコールに還元することにより式XLIの化合物に変換できる。本反応を実施する際、限定はしないが、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用することが好ましい。このような還元反応に好適な任意の条件は、工程(g’)の反応を実施するために利用できる。
【0102】
式XLIの化合物は、1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサンを用いて1−3ジオール類を保護することにより工程(h’)の反応を経て式XLIIの化合物に変換できる。この保護基に好適な条件は、T.GreeneによるProtecting Groups in Organic Synthesisに記載され得る。
【0103】
式XLIIの化合物は、臭化ベンジルを用いてフェノール基を保護することにより工程(i’)の反応を経て式XLIIIの化合物に変換できる。この保護基に好適な条件は、T.GreeneによるProtecting Groups in Organic Synthesisに記載され得る。
【0104】
式XLIIIの化合物は、工程(j’)の反応を経てフッ化テトラブチルアンモニウムを用いた脱保護により式XLIVの化合物に変換できる。この好適な脱保護条件は、T.GreeneによるProtecting Groups in Organic Synthesisに記載され得る。
【0105】
式XLIVの化合物は、酸化により工程(k’)の反応を経て式XLVの化合物に変換できる。例えば酸化クロムなど、第一級アルコールを酸に変換する任意の通常の酸化基は、工程(k’)の反応を実施するために利用できる。
【0106】
式XLVの化合物は、式XLVの化合物の、メタノールまたはエタノールとのエステル化により式XLVIの化合物に変換できる。本反応は、触媒、例えばHSO、TsOHなどを用いることによるか、または脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドなどを用いることによるかのいずれかで実施できる。このようなエステル化反応における従来からの任意の条件は、工程(l’)の反応を実施するために利用できる。
【0107】
式XLVIの化合物は、好適な塩基、例えば炭酸カリウム、水素化ナトリウムなどを用いて、ハロゲン化メチルまたはハロゲン化エチルまたはハロゲン化プロピルによる式XLVIの化合物のエーテル化またはアルキル化により式XLVIIの化合物に変換できる。本反応は、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどの通常の溶媒中で実施される。本反応は、一般に、0℃から40℃の温度で実施される。このようなアルキル化反応に好適な任意の反応条件は、工程(m’)の反応を実施するために利用できる。
【0108】
式XLVIIの化合物は、エステル基およびベンジル基の脱保護により式XLVIIIの化合物に変換できる。この好適な脱保護条件は、T.GreeneによるProtecting Groups in Organic Synthesisに記載され得る。
【0109】
(反応スキーム9)
【0110】
【化23】


式XXXIにおいて、mは、0であり、Rは、Hであり、Rは、1個から3個の炭素原子を有するアルキルである他の化合物、すなわち、式:
【0111】
【化24】


の化合物は、商品として入手できるか、または以下の文献に記載された方法に従って調製できる:
1.2−OMe−4−OHCCO
米国特許出願公開第2001034343号または国際公開第9725992号
2.5−OMe−3−OHCCO
J.O.C.(2001)、66(23)、p.7883−88
3.2−OMe−5−OHCCO
米国特許第6194406号(p.96)およびJournal of the American Chemical Society(1985)、107(8)、p.2571−3
4.3−OEt−5−OHCCO
Taiwan Kexue(1996)、49(1)、p.51−56
5.4−OEt−3−OHCCO
国際公開第9626176号
6.2−OEt−4−OHCCO
Takeda Kenkyusho Nempo(1965)、24、p.221−8
特開平07−070025号
7.3−OEt−4−OHCCO
国際公開第9626176号
8.3−OPr−2−OHCCO
特開平07−206658号、独国特許第2749518号
9.4−OPr−2−OHCCO
Farmacia(Bucharest)(1970)、18(8)、p.461−6
特開平08−119959号
10.2−OPr−5−OHCCOHおよび2−OEt−5−OHCCO
ヨウ化プロピルおよびヨウ化エチルを用いて米国特許第6194406号(p.96)の応用合成
11.4−OPr−3−OHCCO
国際公開第9626176号の応用合成
12.2−OPr−4−OHCCO
ハロゲン化プロピルを用いてTakeda Kenkyusho Nempo(1965)、24、p.221−8の応用合成
13.4−OEt−3−OHCCO
Biomedical Mass Spectrometry(1985)、12(4)、p.163−9
14.3−OPr−5−OHCCO
ハロゲン化プロピルを用いてTaiwan Kexue(1996)、49(1)、p.51−56の応用合成。
【0112】
式XXXIにおいて、mは、0であり、Rは、Hであり、Rは、1個から3個の炭素原子を有するアルキルである化合物、すなわち、式:
【0113】
【化25】


の化合物は、商品として入手できるか、または以下の文献に記載された方法に従って調製できる:
1.5−Me−3−OHCCOHおよび2−Me−5−OHCCO
国際公開第9619437号
J.O.C.2001年、66、p.7883−88
2.2−Me−4−OHCCO
国際公開第8503701号
3.3−Et−2−OHCCOHおよび5−Et−2−OHCCO
J.Med.Chem.(1971)、14(3)、p.265
4.4−Et−2−OHCCO
Yaoxue Xuebao(1998),33(1)、p.67−71
5.2−Et−6−OHCCOHおよび2−n−Pr−6−OHCCO
J.Chem.Soc.Perkin Trans 1(1979)、(8)、p.2069−78
6.2−Et−3−OHCCO
特開平10−087489号および国際公開第9628423号
7.4−Et−3−OHCCO
J.O.C.2001年、66、p.7883−88。
国際公開第9504046号
8.2−Et−5−OHCCO
J.A.C.S.(1974)、96(7)、p.2121−9
9.2−Et−4−OHCCOHおよび3−Et−4−OHCCO
特開平04−282345号
10.3−n−Pr−2−OHCCO
J.O.C(1991)、56(14)、p.4525−29
11.4−n−Pr−2−OHCCO
欧州特許出願公開第279630号
12.5−n−Pr−2−OHCCO
J.Med.Chem.(1981)、24(10)、p.1245−49
13.2−n−Pr−3−OHCCO
国際公開第9509843号および国際公開第9628423号
14.4−n−Pr−3−OHCCO
国際公開第9504046号
15.2−n−Pr−5−OHCCO
合成は、エチルアルファホルミルバレレートを用いてJ.A.C.S.(1974)、96(7)、p.2121−9から応用できる。
16.3−n−Pr−4−OHCCO
Polymer(1991)、32(11)p.2096−105
17.2−n−Pr−4−OHCCO
3−プロピルフェノールは、3−プロピルアニソールにメチル化でき、次いで4−メトキシ−3−ベンズアルデヒドにホルミル化された。このアルデヒドを、ジョーン(Jone)試薬により酸化して対応する酸を得ることができ、BBrによるメチル基の脱保護により標題化合物を得る。
18.1.3−Et−5−OHCCOHおよび3−Pr−n−5−OHCCO
2−エチルアクロレインおよび2−プロピルアクロレインを用いてJ.O.C.2001年、66、p.7883−88の応用合成。
【0114】
(処置法における使用)
本発明は、インスリン抵抗性症候群および糖尿病(I型糖尿病またはII型糖尿病などの原発性本態性糖尿病および続発性非本態性糖尿病の双方)よりなる群から選択される病態の哺乳動物対象を処置する方法であって、前記病態を処置するために有効な、本明細書に記載されるような生物活性薬剤のある量を前記対象に投与することを含んでなる方法を提供する。本発明の方法によれば、アテローム性動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎障害、神経障害、網膜症、脚部潰瘍形成、および白内障などの糖尿病症状、または糖尿病症状の発症率(このような症状は、糖尿病に関連する)の各々を軽減することができる。本発明はまた、前記病態を処置するために有効な、本明細書に記載されるような生物活性薬剤のある量を前記対象に投与することを含んでなる高脂血症を処置する方法を提供する。実施例に示されるように、化合物は、高脂血動物における血清中トリグリセリドおよび遊離脂肪酸を減少させる。本発明はまた、悪液質を処置するために有効な、本明細書に記載されるような生物活性薬剤のある量を前記対象に投与することを含んでなる悪液質を処置する方法を提供する。本発明はまた、前記病態を処置するために有効な、本明細書に記載されるような生物活性剤のある量を前記対象に投与することを含んでなる肥満を処置する方法を提供する。本発明はまた、前記病態を処置するために有効な、本明細書に記載されるような生物活性薬剤のある量を前記対象に投与することを含んでなる、アテローム性動脈硬化症または動脈硬化症から選択された病態を処置する方法を提供する。本発明の有効な薬剤は、前記対象が糖尿病またはインスリン抵抗性症候群を有していても、または有していなくても、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム性動脈硬化症または動脈硬化症を治療するのに有効である。本薬剤は、通常の任意の全身投与経路により投与できる。本薬剤は、経口投与されることが好ましい。したがって、この医薬は、経口投与用に製剤化されることが好ましい。本発明により使用され得る他の投与経路としては、直腸内的投与、非経口的投与、注射(例えば、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射または腹腔内注射)による投与、または経鼻的投与が挙げられる。
【0115】
本発明の各使用および各処置法のさらなる実施形態は、上記の生物活性薬剤の実施形態のいずれか1つを投与することを含んでなる。不必要な冗長性を避けるために、このような各薬剤および薬剤群は繰り返されないが、これらが繰り返されるかのように、使用および処置法の記載に組み込まれている。
【0116】
本発明の化合物により扱われる疾患または障害の多くは、2つの大きなカテゴリに分けられる。すなわち、インスリン抵抗性症候群および慢性的高血糖の結果である。糖尿病それ自体が無い状態(持続性高血糖)で生じ得る燃料代謝の調節不全、特にインスリン抵抗性は、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、肥満、本態性高血圧、脂肪肝疾患(NASH;非アルコール性脂肪肝炎)、および特に癌または全身性炎症疾患に関しては、悪液質が挙げられる、種々の症状に関連している。悪液質は、I型糖尿病または後期段階II型糖尿病に関連しても発生し得る。組織燃料代謝を改善することにより、本発明の活性薬剤は、実施例で動物において立証されているようにインスリン抵抗性に関連する疾患および症状を予防または改善するために有用である。インスリン抵抗性に関連する一群の徴候および症状は、個々の患者に共存し得るが、インスリン抵抗性によって影響を受けた多くの生理系の脆弱性における個々の相違のため、多くの場合、1つの症状のみが優位であり得る。それにもかかわらず、インスリン抵抗性は、多くの疾患状態に対して主として寄与するものであるため、この細胞欠陥および分子欠陥に対処する薬物は、インスリン抵抗性による、またはそれにより悪化し得るいずれの器官系においても実際にいずれの症状の予防にも改善にも有用である。
【0117】
インスリン抵抗性およびそれに伴う膵島による不十分なインスリン産生が極めて厳しい場合、慢性高血糖が生じ、II型真性糖尿病(NIDDM)の発症を明らかにする。上記に示されたインスリン抵抗性に関連する代謝障害に加えて、高血糖に二次的な疾患症状もまた、NIDDM患者に生じる。これらとしては、腎障害、末梢神経障害、網膜症、微小血管疾患、四肢の潰瘍、蛋白質の非酵素化グリコシル化の結果、例えば、コラーゲンおよび他の結合組織に対する損傷が挙げられる。高血糖の減衰により、これら糖尿病の結果の発症率および重症度が減じる。なぜならば、実施例に立証されるように、本発明の有効剤および組成物は、糖尿病における高血糖の減少を助け、慢性高血糖合併症の予防および改善に有用であるからである。
【0118】
ヒトおよび非ヒト双方の哺乳類対象は、本発明の処置法に従って処置できる。特定の対象のための本発明の特定の活性薬剤の最適用量は、熟練医師により、臨床設定において決定できる。インスリン抵抗性、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質または肥満に関連する障害の処置のためのヒトへの経口投与の場合、前記薬剤は、一般に、1日当たり1回または2回投与され、毎日の用量は1mgから400mgで投与される。マウスへの経口投与の場合、前記薬剤は、1キログラム体重当たり、毎日の用量は1mgから300mgの薬剤で一般に投与される。本発明の活性薬剤は、糖尿病またはインスリン抵抗性症候群における単独療法として、あるいはこれらのタイプの疾患に有用性のある1種以上の他の薬物、例えば、インスリン放出剤、食事のインスリン放出剤、ビグアニド類、またはインスリンそれ自体と組合わせて使用される。このようなさらなる薬物は、標準的な臨床実施に従って投与される。幾つかの場合において、本発明の薬剤は、他のクラスの薬物の有効性を改善し、これらの薬物が、満足のいく処置成績で低用量(したがって低毒性)で患者に投与されることを可能にする。
【0119】
代表的な化合物に関するヒトにおける確立した安全かつ有効な用量範囲は:500mg/日から2550mg/日のメトホルミン;1.25mg/日から20mg/日のグリブリド;1.25mg/日から20mg/日のグリブリドおよび250mg/日から2000mg/日のメトホルミンのGLUCOVANCE(メトホルミンおよびグリブリドの組合わせ製剤);10mg/日から80mg/日のアトルバスタチン;10mg/日から80mg/日のロバスタチン;10mg/日から40mg/日のプラバスタチン;および5〜80mg/日のシンバスタチン;2000mg/日のクロフィブラート(clofibrate);1200mg/日から2400mg/日のゲンフィブロジル(gemfibrozil);4mg/日から8mg/日のロシグリタゾン(rosiglitazone);15mg/日から45mg/日のピオグリタゾン;75〜300mg/日のアカルボース;0.5mg/日から16mg/日のレパグリニド(repaglinide)である。
【0120】
I型真性糖尿病:I型糖尿病患者は、適切な用量調整およびインスリン投与のタイミングを可能にするために、頻繁に血糖をモニターし、1日当たりインスリンの1回用量から数回用量の主として自己投与によりこれらの疾患を管理する。慢性高血糖は、腎症、神経障害、網膜症、四肢の潰瘍などの合併症、および早期死亡に至り;過剰のインスリン投与による低血糖は、認知機能障害または意識喪失を引き起し得る。I型糖尿病患者は、1mg/日から400mg/日の本発明の有効剤を、単独用量または分割用量として錠剤またはカプセル形態を用いて処置を受ける。期待される効果は、満足のいく範囲に血糖を維持するために必要なインスリンの投与量または投与頻度の減少、ならびに低血糖エピソードの発生率および重症度の減少である。臨床結果は、血糖およびグリコシル化ヘモグロビン(数ヵ月間にわたり積算された血糖症コントロールの妥当性指数)の測定、ならびに典型的な糖尿病合併症の発生率および重症度の減少によりモニターされる。本発明の生物活性剤は、膵島移植に関連して投与でき、膵島移植の抗糖尿病有効性の維持を助ける。
【0121】
II型真性糖尿病:典型的なII型糖尿病(NIDDM)患者は、食事および運動のプログラムならびにメトホルミン、グリブリド、レパグリニド、ロシグリタゾン、またはアカルボースなどの薬物を服用することにより彼らの疾患を管理し、ある患者においてはこれらの全てが、血糖コントロールのかなりの改善を提供するが、これらはいずれも、副作用または疾患進行による結果的に治療不成功を免れることはできない。膵島不全はNIDDM患者に経時的に発生し、大部分の患者においてインスリン注射を必要とする。本発明の有効剤による毎日の処置(追加のクラスの抗糖尿病薬と共にまたは無しで)が、血糖コントロールを改善し、膵島不全率を減少させ、糖尿病の典型的な症状の発生率および重症度を減少させることが期待される。さらに、本発明の有効剤は、血清中高トリグリセリドおよび脂肪酸を減少させ、それによって糖尿病患者の主要死亡原因である心血管疾患の危険性を低下させる。糖尿病に関する他の全ての治療剤の場合のように、投与量の最適化は、必要性、臨床効果、および副作用に対する感受性によって個々の患者においてなされる。
【0122】
高脂血症:集団の相当大きな割合がトリグリセリドおよび遊離脂肪酸の高血中濃度を患っており、これは、アテローム性動脈硬化症および心筋梗塞の重要な危険因子である。本発明の有効剤は、高脂血症患者における循環トリグリセリド類および遊離脂肪酸類を減少させるために有用である。高脂血症患者は、しばしば心血管疾患の危険性をも増加させる血中高コレステロール濃度も有していることが多い。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(「スタチン類」)などのコレステロール低下薬を、本発明の薬剤に加えて、必要に応じて同一の製薬組成物に組み込んで高脂血症患者に投与できる。
【0123】
脂肪肝疾患:集団の相当大きな割合が、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)としても知られている脂肪肝疾患を患っており;NASHは、しばしば肥満および糖尿病に関連する。肝臓脂肪症、肝細胞に伴うトリグリセリド類の液滴の存在は、肝臓を慢性炎症(炎症白血球の浸潤として生検サンプルにて検出される)に罹りやすくさせ、これは、線維症および肝硬変に至り得る。脂肪肝疾患は、最終的診断には生検が必要とされることは多いが、肝細胞損傷の指標として役立つトランスアミナーゼALTおよびASTなどの肝特異的酵素の高血清濃度の観察により、ならびに肝臓領域の疲労および疼痛を含む症状の提示により、一般に検出される。期待される利益は、肝炎症および脂肪含量の減少であり、線維症および肝硬変へと向かうNASHの進行の減衰、停止、または反転をもたらす。
【0124】
(製薬組成物)
本発明は、本明細書に記載された生物活性薬剤および製薬的に許容できる担体を含む製薬組成物を提供する。本発明の製薬組成物のさらなる実施形態は、上記の生物活性薬剤の実施形態のうちいずれか1つを含む。不必要な冗長性を避けるために、このような各薬剤および薬剤群は繰り返されていないが、これらは、繰り返されたかの如く、製薬組成物の記載に組み込まれている。
【0125】
好ましくは、経口投与、例えば、錠剤、コーティング錠剤、糖衣丸、硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセル、液剤、乳剤または懸濁剤の形態で前記組成物を適合させる。一般に、経口用組成物は、このような薬剤の1mgから400mgを含む。対象が、1日当たり1錠か2錠の錠剤、コーティング錠剤、糖衣丸、またはゼラチンカプセルを飲むことが好都合である。しかしながら、前記組成物はまた、直腸内(例えば座薬の形態で)、非経口的に(例えば注射溶液の形態で)、または経鼻的を含む、他の任意の通常の全身投与の手段による投与に適合させ得る。
【0126】
生物活性化合物は、製薬組成物の製造のために製薬上不活性な無機または有機担体と共に加工できる。ラクトース、トウモロコシ澱粉またはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩類などが、例えば、錠剤、コーティング錠剤、糖衣丸および硬ゼラチンカプセルのためのこのような担体として使用され得る。軟ゼラチンカプセルに好適な担体は、例えば、植物油類、ワックス類、脂肪類、半固体ポリオール類および液体ポリオール類などである。しかしながら、軟ゼラチンカプセルの場合有効成分の性質に依って、軟ゼラチン自体以外の担体を通常必要としない。液剤およびシロップ剤の製造に好適な担体は、例えば、水、ポリオール類、グリセロール、植物油などである。座薬に好適な担体は、例えば、天然油類または硬化油類、ワックス類、脂肪類、半固体ポリオール類または液体ポリオール類などである。
【0127】
前記製薬組成物は、さらに防腐剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、風味剤、浸透圧を変える塩類、緩衝剤、コーティング剤または抗酸化剤を含有できる。前記製薬組成物はまた、本発明の化合物の効果の基礎となっている機構以外の機構を通して作用する他の治療的に価値のある物質、特に抗糖尿病剤または抗脂血症剤をさらに含有できる。単独製剤における本発明の化合物と有利に組合わせることができる薬剤としては、限定はしないが、メトホルミンなどのビグアニド類、インスリン放出剤(グリブリドおよび他のスルホニル尿素インスリン放出剤などの、スルホニル尿素インスリン放出剤)、アトロバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンおよびシンバスタチンなどの「スタチン」HMG−CoAレダクターゼ阻害剤などのコレステロール低下薬、クロフィブラートおよびゲンフィブロジルなどのPPAR−αアゴニスト類、チアゾリジンジオン類(例えば、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン)などのPPAR−γアゴニスト類、アカルボース(澱粉消化を阻害する)などのα−グルコシダーゼ阻害剤、およびレパグリニドなどの食事インスリン放出剤が挙げられる。単独製剤における本発明の化合物と組合わせられた補助剤量は、標準的臨床実践に使用される用量に従っている。ある一定の代表的化合物に関して確立された安全かつ有効な用量範囲は、上記のとおりである。
【0128】
本明細書に記載された発明を例示するが限定はしない以下の実施例を参照して、本発明はより良く理解されるであろう。
【実施例】
【0129】
(化学合成の実施例)
(実施例1)
【0130】
【化26】


(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸)
(工程A:エチル3−ヒドロキシフェニルアセテートの調製:)
DMF(30ml)中、3−ヒドロキシフェニル酢酸(10g、65.7mmol)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、16.27g、78.8mmol)の攪拌溶液に、ピリジン(2.5ml)に続いて無水エタノール(15ml、255.5mmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間攪拌し、ろ過、濃縮し、シリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル2:1)により精製して標題化合物を得た。
【0131】
H NMR(270 MHz、CDCl):1.2(t、3H);3.5(s、2H);4.1(q、2H);6.6〜7.2(m、4H)。
【0132】
(工程B:エチル3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸の調製:)
2,6−ジメチルベンジルアルコール(5.25g、38.6mmol)およびジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD、8.49g、42mmol)のTHF(30ml)およびDMF(13ml)溶液を、エチル3−ヒドロキシフェニルアセテート(工程A、6.66g、37mmol)およびトリフェニルホスフィン(11g、42mmol)のTHF(100ml)溶液に滴下しながら加えた。反応混合物を室温で4時間攪拌し、エーテルで希釈、水洗した。その有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮し、シリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル1:1)により精製して標題化合物を得た。
【0133】
H NMR(270 MHz、CDCl):1.2(t、3H);2.4(s、6H);3.5(s、2H);4.1(q、2H);5.1(s、2H);6.9(m、2H);7.15〜7.35(m、5H)。
【0134】
(工程C:3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸の調製:)
無水エタノール(30ml)中、エチル3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニルアセテート(工程B、4g、13.6mmol)の攪拌溶液に、1N NaOH(20ml)を室温で加えた。反応混合物を3時間攪拌し、1N HClにより酸性にし、濃縮した。残渣をクロロホルムに溶かし、0.1N HClで洗浄、NaSOで乾燥、ろ過、濃縮し、シリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル1:1)により精製して標題化合物を得た。
【0135】
H NMR(270 MHz、CDCl):2.4(s、6H);3.65(s、2H);5.1(s、2H);6.9(m、2H);7.15〜7.35(m、5H)。
【0136】
(実施例2)
【0137】
【化27】


(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)安息香酸)
(工程A:エチル3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンゾエートの調製:)
エチル3−ヒドロキシベンゾエート(12.21g、73.47mmol)およびトリフェニルホスフィン(21.01g、80.13mmol)の乾燥THF(100ml)の攪拌溶液に、2,6−ジメチルベンジルアルコール(10g、73.5mmol)およびジイソプロピルアゾジカルボキシレート(16.19g、80.13mmol)の乾燥THF(35ml)および乾燥DMF(15ml)溶液を、周囲温度で滴下しながら加えた。室温で3時間攪拌後、反応混合物をジエチルエーテルで希釈、水とブラインで2回洗浄した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥、ろ過、濃縮し、溶出液として酢酸エチル:ヘキサン(1:3)を用いてシリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィにより精製した。
【0138】
H NMR(270 MHz、CDCl):1.4(t、3H);2.4(s、6H);4.4(q、2H);5.1(s、2H);7.1(m、2H);7.2(m,2H);7.4(t、1H);7.9(m、2H)。
【0139】
(工程B:3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)安息香酸の調製:)
1N NaOH(86ml)を、無水エタノール(150ml)中、エチル3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンゾエート(工程A、16.31g、57.4mmol)の攪拌溶液に加えた。室温で3時間攪拌後、反応混合物を1M HClにより酸性にし、減圧濃縮した。有機残渣をクロロホルムに溶かし、0.1N HClで洗浄、NaSOで乾燥、ろ過、濃縮し、溶出液としてクロロホルム:メタノール(95:5、酢酸によりスパイクされた)を用いてフラッシュクロマトグラフィにより精製した。
【0140】
H NMR(270 MHz、CDCl):2.4(s、6H);5.1(s、2H);7.15〜7.35(m、4H);7.4(t、1H);7.8(m、2H)。
【0141】
(実施例3:3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)安息香酸)
(工程A:Mitsunobuカップリング−エチル3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンゾエート)
【0142】
【化28】


(表1)
【0143】
【表1】


理論収量25.7g;実際の収量19.85g;分取収率0.773。
質量=g;容量=mL。
【0144】
エチル3−ヒドロキシベンゾエートおよびトリフェニルホスフィンの無水THF溶液を、窒素下、氷浴中5℃に冷却した。別のフラスコに、2,6−ジメチルベンジルアルコールおよびDIADの無水THF溶液を調製し、カニューレを経由して第1のフラスコに移した。この添加は、非常に発熱的であり、添加(数mL)の最初の2分以内で5℃から18℃まで上昇した。この添加は、24℃の最大温度で22分かけて完了した。30分間の攪拌後、形成された沈殿物および氷浴を取り除いた。2.5時間後のtlc(ヘキサン類:エーテル1:1、UV)は、微量の出発物質が残っていることを示した。
【0145】
種々の溶媒系を、生成物からTPPをより良好に分離する試みに用いた。これらには、以下が挙げられた:10:3ヘキサン類:エーテル;4:1ヘキサン類:EtOAc;CHCl;1:1CHCl;ヘキサン類ヘキサン類中の10%CHCl;およびヘキサン類中の5%エーテル。最終溶媒系は、生成物およびTPPを一緒にかつ非常に速く溶出する傾向があるti中CHClを含む溶媒で最良の分離を得た。
【0146】
(表2 tlcデータ)
【0147】
【表2】


H=ヘキサン類 E=エチルエーテル
7時間後、反応混合物をろ過して固体(14.3g、tlcは、それがTPPオキシドであることを示した)を除き、このフィルターケークをヘキサン類:エーテル1:1(60mL)で濯いだ。ろ液を濃縮して油および固体の黄色混合物を得た。これを100mLエーテルおよび100mLヘキサン類に溶かし、約1時間放置した。固体を減圧ろ過により採取(24.0g、tlcはTPPオキシドのみを示し、除去された全固体は38.3gを示した)し、ろ液を濃縮してクリーム色固体を得た。
【0148】
この固体を100mL CHClに溶解し、シリカゲルのパッド(直径9.5cm×高さ6cm、約325g)に適用した。これをCHClで溶出し、2X500mLおよび2x250mLフラスコに採取した。生成物およびTPPを最初の2つのフラスコに共に溶出し、TPPオキシドを残した。最初の2つのフラクションを濃縮して23.6gの白色粉末を得た。LC/MS(標識M02130−01)は、主要不純物として11%TPPと共に78%純度の所望の生成物を示した。
【0149】
粗製物を、約100mLエーテルに加熱して溶解し、冷却した。少量の固体が沈殿した。70gのシリカゲルを加え濃縮した。これを、シリカゲルのパッド(260g、Biotage 75Sに対して等量よりも多い)に適用し、1Lのヘキサン類中5%エーテルで溶出し、約200mLのフラクション(4つのフラクション)を採取した。最初のフラクションはTPPを含有し、第4のフラクションは、ほとんど純粋な生成物であり、第2および第3は、交差フラクションであった。シリカゲルを、1Lのヘキサン類中30%エーテルで溶出し、3つのフラクションに採取した。フラクション5および6は、生成物を有し、濃縮して19.85g(77%収率)の白色固体を得た。
【0150】
H NMRスペクトルおよび13C NMRスペクトルは、所望の生成物と一致した。
LC/MSは、M+H=285.1および250nmでのUVにより97.7%純度を示した。
【0151】
H NMR(270 MHz、CDCl):1.4(t、3H);2.4(s、6H);4.4(q.2H);5.1(s、2H);7.1(m、2H);7.2(m、2H);7.4(t、1H);7.7(m、2H)。
【0152】
(工程B:鹸化)
【0153】
【化29】


(表3)
【0154】
【表3】


理論収量9.01g;実際の収量5.0g;分取収率0.55。
【0155】
工程Aのエステル(10g)を、50mL無水EtOHに溶かした。これは、それほど溶解性がよくはなく、さらにEtOHを50mLずつ、250mLになるまで添加した。さらに幾らかの固体が存在し、溶液を形成するために加熱した(46℃)。10mLの水で希釈した7.5mLの10N NaOH溶液を加え、この溶液を1時間攪拌した。tlc(ヘキサン類:エーテル、UV)は、エステルが消費され、ベースライン上に強いスポットが現れたことを示した。
【0156】
(処理)
本反応を、50℃でロータリーエバポレータ上で濃縮し、白色固体を得た。この固体を250mLの脱イオン水中に懸濁液とし、不溶物をろ過により採取した。このろ液を当分の間取って置いた。
【0157】
ろ液ケークを、2x200mLエーテルで濯ぎ、各洗浄後にLC/MSにより調べた。純度は、それぞれ98.4%および98.7%であった。この固体を、200mLエーテル中で15分間攪拌し、ろ過により採取した。LC/MSは、99.5%純度であることを示した。この固体を100mLの脱イオン水中に懸濁液とし、2.5mLの濃HClで処理した。pH紙によるチェックによりpH1を示した。このスラリーを22分間攪拌し、減圧ろ過により採取した。フィルタケークを、数回に分けた水(全量約100mL)で濯いだ。Pと共に45℃で減圧乾燥した。
【0158】
1H NMRスペクトルは、所望の生成物と一致し、幅広のOHの中心は約6ppmであった。
【0159】
H NMR(270 MHz、CDCl):2.4(s、6H);5.1(s、2H);7.1(m、2H);7.15〜7.3(m、2H);7.4(t、1H);7.8(m、2H)。
【0160】
(実施例4:6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサン酸)
【0161】
【化30】


(工程A: トリフェニルエチルバレレートホスホニウムブロミドの合成)
【0162】
【化31】


(表4)
【0163】
【表4】


攪拌バー、熱電対および窒素導入口付き還流冷却器で具備された3頚100ml丸底フラスコ中、窒素下で11.80gのトリフェニルホスフィンを25mlのトルエンに溶解した。12.54gのエチル−5−ブロモバレレートを、この溶液に加え、還流加熱(110℃)し、2時間攪拌した。本反応を、1時間後および2時間後に分析した。反応液を室温(<25℃)に冷却し、トルエンを油性固体からデカントして除いた。残渣を100mlのヘキサン類で3回懸濁液とし、各回ヘキサン類をデカントした。油性残渣を、40℃、0.1トルで30分間Kugelrohr装置で加熱し、19.0g(89.6%)の白色液性固体を得た。NMR(32P)およびNMR(13C)は、所望の生成物を示した。
【0164】
(工程B:6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサ−5−エン酸エチルエステルの調製)
【0165】
【化32】


(表5)
【0166】
【表5】


40mlのDMSO中、13.29gのトリフェニルエチルバレレートホスホニウムブロミドおよび0.745gの水素化ナトリウムの混合物を、攪拌バー、窒素導入口付き還流冷却器および熱電対で具備された3頚100ml丸底フラスコ中、窒素下で30分間攪拌した。この混合物は、淡黄色から褐色に変化し、23.2℃から40.2℃に加熱した。5.00gの3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを20mlのDMSOに溶解し、反応混合物に4分かけて滴下しながら加えた。この混合物を、21.8℃から26.8℃に加熱した。反応混合物を攪拌し、室温に冷却した。反応は1時間後に分析し、LC−MSは、ほとんど全ての出発アルデヒドが残っていること、および約3%の所望の生成物を示した。反応混合物を50℃に加熱し、3時間攪拌した。反応は2時間後および3時間後に分析した。LC−MSは、約20%の出発アルデヒドが残っていること、および約17%の所望の生成物を示した。反応液を室温に冷却し、冷蔵庫に一晩置いた。
【0167】
反応混合物を室温に温めて攪拌した。15.0mlのDMSO中、5.56g(118mM)のトリフェニルエチルバレレートホスホニウムブロミドおよび0.312gの水素化ナトリウムの混合物を、窒素下で30分間攪拌した。前記混合物を一塊で反応液に加え、50℃に加熱し、6時間攪拌した。
【0168】
H NMR(270 MHz、CDCl):1.2(t、3H);1.8(m、2H);2.2〜2.4(m、10H);4.2(q、2H);5.1(s、2H);5.6〜6.2(m、1H);6.4(t、1H);6.9〜7.3(m、7H)。
【0169】
(工程C:6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−エチルへキサン酸の調製)
参考文献:Journal of Org.Chemistry、34巻、11号、p.3684〜85、1969年11月。
【0170】
【化33】


(表6)
【0171】
【表6】


2.71gの6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサ−5−エン酸エチルエステルを、300mlステンレススチールParr圧力反応器中、ベンゼンおよび無水エタノールの1:1脱気混液、120mlに溶解した。0.259gのトリス(トリフェニルホスフィン)クロロロジウム(I)(Wilkinson触媒)を溶液に加えた。反応混合物を水素で5回掃流し、60℃に加熱し、水素で80psiにし、一晩攪拌した。
【0172】
反応液を室温に冷却し、ガス抜きをした。LC−MSによる分析は、出発オレフィンが無いことを示した。反応溶液を窒素で掃流し、セライト床を通してろ過した。ろ液を減圧濃縮して3.40gの褐色油を得た。この油を、12mlの1:1ヘキサン類:クロロホルムに溶解し、1:1ヘキサン類:クロロホルムで平衡化したシリカゲル上に配置した。シリカゲルを、100mlの1:1ヘキサン類:クロロホルムおよび200mlの95:5ヘキサン類:酢酸エチルで溶出し、50mlのフラクションを採取した。純粋なフラクションを合わせ、減圧濃縮して2.70g(99.0%)の暗黄色油を得た。LC−MSは、約72%の所望の生成物を示した。この生成物をさらに精製することなく使用した。
【0173】
(工程D:6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−へキサン酸の調製)
【0174】
【化34】


(表7)
【0175】
【表7】


2.69gの6−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]エチルへキサノエートを、攪拌バーおよび還流冷却器で具備された100ml丸底フラスコ中、35mlの無水エタノールおよび10mlの1N水性水酸化ナトリウムに溶解した。黄色溶液を加熱還流し、2時間攪拌した。この反応液を分析し、LC−MSは、出発のエチルエステルを示さなかった。反応液を室温に冷却し、放置すると大部分が固化した黄色油にまで減圧濃縮した。50mlの水を残渣に加え、10分攪拌した。水溶液を50mlの酢酸エチルで3回抽出した。この水層を、3mlの6N HCl水溶液で酸性にし、50mlの酢酸エチルで3回抽出した。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、および減圧濃縮して約2.2gのゴム様黄色固体を得た。残渣を75mlの水中で30分間攪拌した。固体をろ過により採取し、真空オーブン中40℃で乾燥して1.62g(90.5%)のベージュ色固体を得た。LC−MSおよびNMRは、>98%の所望の生成物を示した。
【0176】
H NMR(270 MHz、CDCl):1.4(m、2H);1.7(m、4H);2.3〜2.4(m、8H);2.6(t、2H);5.0(s、2H);6.8(m、3H);7.0〜7.3(m、4H)。
【0177】
(実施例5:5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタン酸)
【0178】
【化35】


(工程A:5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタ−4−エン酸エチルエステルの調製)
【0179】
【化36】


(表8)
【0180】
【表8】


30.0mlのDMSO中、10.06gのトリフェニルエチルブチレートホスホニウムブロミドおよび0.581gの水素化ナトリウムの混合物を、攪拌バー、窒素導入口付き還流冷却器、熱電対で具備された3頚100ml丸底フラスコ中、窒素下で30分間攪拌した。この混合物は、黄色から橙色に変化し、19.8℃から26.7℃に加熱した。3.89gの3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを15.0mlのDMSOに溶解し、反応混合物に3分かけて滴下しながら加えた。この混合物は、橙色から黄色に変化し、26.7℃から34.0℃に加熱した。反応混合物を攪拌し、3時間室温に冷却した。反応は1時間後および3時間後に分析した。LCは、残りの出発アルデヒドが約15%から約13%となった反応進行を示した。反応混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。反応は1時間後および2時間後に分析した。LC−MSは、約12%の出発アルデヒドが残っており、先のサンプルから殆ど変化を示さなかった。この反応混合物を室温に冷却し、冷蔵庫に一晩置いた。
【0181】
反応混合物を室温に温めて攪拌した。10.0mlのDMSO中、3.20g(70mM)のトリフェニルエチルブチレートホスホニウムブロミドおよび0.185gの水素化ナトリウムの混合物を、窒素下で30分間攪拌した。前記混合物を一塊で反応液に加え、室温で2時間攪拌した。
【0182】
反応は1時間後および2時間後に分析した。LCは、残りの出発アルデヒドが約13%から約4%となった反応進行を示した。反応混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌した。反応液を室温に冷却し、50mlの水を有する50gの氷上に注いだ。水性混合物を125mlの酢酸エチルで3回抽出し、有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、減圧濃縮して約12.9gの褐色油を得た。LCは、約40%の所望の生成物を示した。
【0183】
この油を、30mlの95:5、ヘキサン類:酢酸エチルに溶解し、5リットルの95:5、ヘキサン類:酢酸エチルを用いて、BIOTAGE 75Sシリカゲルカラムでクロマトグラフを行った。所望の生成物は、おそらく処理による残留DMSOに起因して、迅速に溶出した。所望の生成物を含有するフラクションを合わせて減圧濃縮し、4.9gの黄色油を得た。この油を、10mlの1:1、ヘキサン類:クロロホルムに溶解し、1:1、ヘキサン類:クロロホルムで平衡化した30gシリカゲル上に載せた。このシリカゲルを、200mlの1:1、ヘキサン類:クロロホルムおよび200mlの9:1、ヘキサン類:酢酸エチルで溶出し、50mlのフラクションを採取した。純粋なフラクションを合わせて減圧濃縮し、放置すると大部分が固化する3.40g(62.0%)の淡黄色油を得た。LC−MSおよびNMRは、主としてトランス異性体を生成するWittig反応に基づいて、約30:70のシス対トランス異性体比を有する>98%の所望の生成物を示す。
【0184】
H NMR(270 MHz、CDCl):1.2(t、3H);2.4〜2.7(m、10H);4.1(q、2H);5.1(s、2H);5.6〜6.2(m、1H);6.5(t、1H);6.8(m、7H)。
【0185】
(工程B:5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−エチルペンタノエートの調製)
参考文献:Journal of Org.Chemistry、34巻、11号、p.3684〜85、1969年11月。
【0186】
【化37】


(表9)
【0187】
【表9】


2.50gの5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタ−4−エン酸エチルエステルを、300mlステンレススチールParr圧力反応器中、ベンゼンおよび無水エタノールの1:1脱気混液、110mlに溶解した。0.222gのトリス(トリフェニルホスフィン)クロロロジウム(I)(Wilkinson触媒)を溶液に加えた。反応混合物を水素で5回掃流し、60℃に加熱し、水素で80psiにし、一晩攪拌した。
【0188】
反応液を室温に冷却し、ガス抜きをした。LC−MSによる分析は、出発オレフィンが無いことを示した。反応溶液を窒素で掃流し、セライト床を通してろ過した。ろ液を減圧濃縮して3.20gの褐色油を得た。この油を、12mlの1:1ヘキサン類:クロロホルムに溶解し、1:1ヘキサン類:クロロホルムで平衡化された30gのシリカゲル上に乗せた。このシリカゲルを100mlの1:1ヘキサン類:クロロホルム、200mlの95:5ヘキサン類:酢酸エチルで溶出し、50mlのフラクションを採取した。純粋なフラクションを合わせ、減圧濃縮して2.30g(99.0%)の淡黄色油を得た。LC−MSは、約93%の所望の生成物を示した。この生成物をさらに精製することなく使用した。
【0189】
H NMR(270 MHz、CDCl):1(t、3H);1.4(m、4H);2.0(t、2H);2.1(s、6H);2.4(m、2H);3.8(q、2H);4.7(s、2H);6.5(m、3H);6.8〜7.0(m、4H)。
【0190】
(工程C:5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−ペンタン酸の調製)
【0191】
【化38】


(表10)
【0192】
【表10】


2.72gの5−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]エチルペンタノエートを、攪拌バーおよび還流冷却器で具備された100ml丸底フラスコ中、35mlの無水エタノールおよび10mlの1N水性水酸化ナトリウムに溶解した。変化した淡黄色溶液を加熱還流し、1時間攪拌した。この反応液を分析し、LC−MSは、出発のエチルエステルを示さなかった。反応液を室温に冷却し、白色固体にまで減圧濃縮した。50mlの水を加えて固体を溶解した。この水溶液を50mlの酢酸エチルで3回抽出した。この水層を、3mlの6N HCl水溶液で酸性にし、50mlの酢酸エチルで3回抽出した。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、減圧濃縮し、約2.5gの白色ゴム様固体を得た。この固体を25mlのヘキサン類中で30分間攪拌し、ろ過により採取し、真空オーブン中40℃で乾燥して2.12g(84.8%)の白色固体を得た。LC−MSおよびNMRは、>99%の所望の生成物を示した。
【0193】
H NMR(270 MHz、CDCl):1.7(m、4H);2.4(m、8H);2.6(m、2H);5.0(s、2H);6.8(m、3H);7.0〜7.3(m、4H)。
【0194】
(実施例6:3−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル]−プロピオン酸)
【0195】
【化39】


(工程A:エチル−3−ヒドロキシフェニルプロピオネートの合成)
【0196】
【化40】


(表11)
【0197】
【表11】


5.00gの3−(3−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸を、攪拌バー、還流冷却器、熱電対で具備された3頚100ml丸底フラスコ中、50mlの無水エタノールに溶解した。0.5mlの濃硫酸を溶液に加え、加熱(80℃)灌流し、2時間攪拌した。反応液を分析し、LC−MSは、出発物質のない所望の生成物を示した。この反応液を、氷浴中<5℃に冷却し、10mlの10%炭酸ナトリウム水溶液でpH約7に中和した。中和溶液を、約10mlに減圧濃縮し、25mlの水で希釈した。この溶液を、25mlの酢酸エチルで3回抽出した。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮して、5.06g(86.5%)の暗琥珀色油を得た。LC−MSおよびNMR MFGは、>99.5%の所望の生成物を示した。
【0198】
H NMR(270 MHz、CDCl):1.2(t、3H);2.6(t、2H);2.8(t、2H);4.2(q、2H);6.7〜6.8(m、3H);7.2(m、1H)。
【0199】
(工程B:エチル−3−(2,6 ジメチルベンジルオキシ)フェニルプロピオネートの合成)
【0200】
【化41】


(表12)
【0201】
【表12】


3.69gの2,6−ジメチルベンジルアルコールおよび5.99gのジイソプロピルアゾジカルボキシレートの24mlTHF溶液を、5.05gのエチル−3−ヒドロキシフェニルプロピオネートおよび7.76gのトリフェニルホスフィンの76mlTHF溶液に、<25℃の反応温度(Tmax=22.3℃)を維持するような速度で滴下しながら加えた。反応液は、攪拌バー、添加ロートおよび熱電対で具備された3頚250ml丸底フラスコ中、室温で4時間攪拌した。反応は、室温で3時間後および4時間後に分析した。LC−MSは、約4.5%の出発物質を含む、ほぼ所望の生成物を示した。反応液を減圧濃縮し、暗黄色油を得た。200mlヘキサン類をこの油に加え、この溶液を氷浴(<5℃)中で1時間攪拌した。固体をろ過により採取し、40mlのヘキサン類で3回洗浄した。固体を分析し、NMRは、トリフェニルホスフィンオキシドと還元DIADとの混合物であることを示した。LC−MSは、約58%の所望の生成物を含有するヘキサン類ろ液を示した。ろ液を減圧濃縮し、10.2gの黄色油を得た。この油を、5mlの無水エタノールに溶解し、75mlのヘキサン類を加え、この溶液をフリーザーに一晩置いた。固体をろ過により採取し、乾燥した。NMRは、4.3gの白色固体が約80%であることを示した。この固体をヘキサン類/エタノールろ液と合わせ、減圧濃縮し、9.3gの淡黄色油を得、これをさらに精製することなくけん化した。
【0202】
H NMR(270 MHz、CDCl):1.2(t、3H);2.4(s、6H);2.6(t、2H);3.0(t、2H);4.2(q、2H);5.1(s、2H);6.8(m、3H);7.2〜7.4(m、4H)。
【0203】
(工程C:3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニルプロピオン酸の合成)
【0204】
【化42】


(表13)
【0205】
【表13】


約60%の3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニルプロピオネートを含有する9.3gの油を、攪拌バーおよび還流冷却器を備えた一首の250ml丸底フラスコ中、75mlの無水エタノールに溶解した。4.0mlの7.5N水酸化ナトリウムをこの溶液に加えた。この淡黄色溶液を、加熱(80℃)還流し、1時間攪拌した。この反応液を分析し、LC−MSは、所望の生成物を示し、出発エステルを示さなかった。反応液を室温に冷却し、減圧濃縮し、黄色油を得た。この油を25mlの水に溶解し、25mlのエーテルで3回抽出した。水層を氷浴中、<5℃に冷却し、15mlの6N HCl水溶液を徐々に加えることによりpH=1まで酸性にした。沈殿した固体をろ過により回収し、25mlの水で3回洗浄し、風乾した。この固体を100mlのヘキサン類でスラリー化し、ろ過により回収し、25mlのヘキサン類で3回洗浄し、風乾した。LC−MSは、固体が約80%の所望の生成物であることを示した。この固体を44mlの3:1無水エタノール:水の混合物中で70℃に加熱した。この溶液を攪拌し、水道水浴中で室温に冷却させた。固体をろ過により回収し、20mlの3:1無水エタノール:水の混合物で洗浄し、風乾した。LC−MSは、固体が、約98.5%の所望の生成物であることを示した。この固体を36mlの3:1無水エタノール:水の混合物中で70℃に加熱した。この溶液を攪拌し、水道水浴中で室温に冷却した。固体をろ過により回収し、20mlの3:1無水エタノール:水の混合物で洗浄し、風乾した。LC−MSおよびNMRは、固体が、>99.5%の所望の生成物であることを示した。この白色固体を、減圧オーブン中、40℃で2時間乾燥して3.91g(52.9%)を得た。
【0206】
H NMR(270 MHz、CDCl):2.4(s、6H);2.2(m、2H);3.0(m、2H);5.1(s、2H);6.8(m、3H);7.1〜7.3(m、4H)。
【0207】
(生物活性の実施例)
以下の生物活性の全ての実施例に関して、化合物CFを、化学合成実施例1に従って製造した。インビボ活性実験に関して、化合物CGを、合成実施例3に従って製造した。インビトロ活性実験に関して、化合物CGを、合成実施例2に従って製造した。
【0208】
(実施例A:ob/obマウスにおける抗糖尿病作用)
肥満(ob/ob)マウスは、タンパク質レプチン、食欲制御因子および燃料代謝における欠陥を有することから、過食症、肥満および糖尿病に至る。
【0209】
ほぼ8週齢のオス肥満(ob/obホモ接合体)C57BL/6Jマウスを、Jackson Labs(Bar Harbor、ME)から入手し、体重(45〜50g)および血清中血糖値(給餌状態で≧300mg/dl)が、群間で同様になるように各5匹ずつの動物の群に無作為に割り当てた。到着後、最低7日は、順応させた。全ての動物を、制御温度(23℃)、相対湿度(50±5%)およびライト(7:00〜19:00)下で維持し、標準的固形飼料(Formulab Diet 5020 Quality Lab Products、Elkridge、MD)および水を自由にとらせた。
【0210】
処置集団に、ビヒクル(1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、化合物BI、CF、CA、CB、CC、またはCDを毎日経口投与で2週間与えた。処置期間の最後に、100μlの静脈血を、血清化学分析用にob/obマウスの逆軌道血脈洞からヘパリン化毛細管に取り出した。
【0211】
毎日の経口投与の2週間後、化合物BI(100mg/kg)および化合物CF(60mg/kg)は、下記のとおり、血糖値(表14)、トリグリセリドおよび遊離脂肪酸(表15)において有意な減少を誘発した。
【0212】
(表14:II型糖尿病のオスob/obマウスモデルにおける化合物BI、CF、CA、CB、CC、およびCDの効果)
【0213】
【表14】


p<0.05 ビヒクルコントロールと比較して有意に異なる
(表15:肥満(ob/ob)マウスにおけるプラズマ血清中グルコース、トリグリセリド類、および遊離脂肪酸類に対する化合物BI、CF、CA、CB、CC、およびCDの効果)
【0214】
【表15】


(実施例B:db/dbマウスにおける抗糖尿病効果)
db/dbマウスは、レプチンシグナル伝達における欠陥を有し、このことが過食症、肥満および糖尿病につながる。さらに、C57BL/6Jバックグラウンドに対するob/obマウスとは違って、C57BL/KSバックグラウンドに対するdb/dbマウスは、インスリン産生膵島細胞の不全を受けて、高インスリン血症(末梢インスリン抵抗性と関連する)から低インスリン糖尿病への進行をもたらす。
【0215】
およそ8週齢のオス肥満(db/dbホモ接合体)C57BL/Ksolaマウスを、ジャクソン・ラブス(Jackson Labs)(メイン州バーハーバー所在)から入手し、体重(50〜55g)および血清中血糖値(給餌状態で≧300mg/dl)が、群間;集団コントロールとして供されるオスの痩せた(db/+ヘテロ接合体)マウス間で同様になるように5匹〜7匹の群に無作為に割り当てた。到着後、最低7日は、順応させた。全ての動物を、制御温度(23℃)、相対湿度(50±5%)および照明(7:00〜19:00)下で維持し、標準的固形飼料(Formulab Diet 5008クオリティ・ラブ・プロダクツ(Quality Lab Products)、メリーランド州エルクリッジ所在)および水を自由にとらせた。
【0216】
処置集団に、ビヒクル(1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、化合物BI、CE、BT、BV、BV、またはフェノフィブレートを毎日経口投与で2週間与えた。処置期間の最後に、100μlの静脈血を、血清化学分析用にdb/dbマウスの逆軌道血脈洞からヘパリン化毛細管に取り出した。
【0217】
非空腹時の血糖値に対する本発明の化合物効果は、表16に示されており;血清中トリグリセリド類および遊離脂肪酸類に対する効果は、表17に示されている。
【0218】
(表16:db/dbマウスにおける化合物BI、CE、BT、BU、BV、およびフェノフィブレートの効果)
【0219】
【表16】


痩せた非糖尿病db/+ヘテロ接合体マウスにおける血糖値は、208.5±6.6mg/dLであった。
【0220】
(表17:db/dbマウスにおける血清中トリグリセリド類および遊離脂肪酸類に対する化合物BI、CE、BT、BU、BV、およびフェノフィブレートの効果)
【0221】
【表17】


(実施例C:db/dbマウスにおける抗糖尿病効果)
C57BL/Ksola(db/db)マウスは、レプチンシグナル伝達における欠陥を有し、このことが過食症、肥満および糖尿病につながる。さらに、C57BL/6Jバックグラウンドに対するob/obマウスとは違って、C57BLKSバックグラウンドに対するdb/dbマウスは、インスリン産生膵島細胞の不全を受けて、高インスリン血症(末梢インスリン抵抗性と関連する)から低インスリン糖尿病への進行をもたらす。
【0222】
およそ8週齢のオス肥満(db/dbホモ接合体)C57BL/Ksolaマウスを、ジャクソン・ラブス(Jackson Labs)(メイン州バーハーバー所在)から入手し、体重(40〜45g)および血清中血糖値(給餌状態で≧300mg/dl)が、群間で同様になるように各7匹の群に無作為に分類した。到着後、最低7日は、順応させた。全ての動物は、制御温度(23℃)、相対湿度(50±5%)および照明(7:00〜19:00)下で維持し、標準的固形飼料(Formulab Diet 5008、クオリティ・ラブ・プロダクツ(Quality Lab Products)、メリーランド州エルクリッジ所在)および水を自由にとらせた。
【0223】
処置集団に、ビヒクル(1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、化合物BI、CF、CG、またはフェニルアセテートを毎日経口投与で17日間与えた。処置期間の最後に、血液サンプルを採血し、血清中グルコースおよびトリグリセリド類を測定した。経口用ビヒクルで処置した動物に対する血中グルコースまたはトリグリセリド類において統計的に有意な減少は、薬物についてポジティブなスクリーニング結果であると考えられる。
【0224】
(表18:I型糖尿病のdb/dbマウスモデルにおける化合物BI、CF、CG、およびフェニルアセテートの効果)
【0225】
【表18】


p<0.05 ビヒクルコントロールと比較して有意に異なる
(実施例D:ヒトおよびマウスPPARαおよびPPARγに対する化合物の潜在的な転写活性化)
(材料および方法:)
細胞を、細胞型に応じて、5x10〜2x10細胞/ウェルでトランスフェクション前日に、24ウェルプレートに接種した。細胞を、インビトロゲン(Invitrogen)のLipofectamine 2000試剤を用いて形質移入した。合計で0.8μg DNA/ウェルを、50μLのOptimem Reduced Serum培地(血清なし;ギブコ(Gibco))に添加した。Lipofectamine 2000を、50μLのOptimem培地を含有する別のチューブに加えた(2.5μL/ウェル)。プラスミドDNAを、4:3(レポーター:アクチベータ)の比で加え;適切なサケ精子DNAを、アクチベータ発現プラスミドの代わりに用いた。使用したレポータープラスミドは、プロモーターを含有するGAL4 UAS(STRATAGENE)の制御下でホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するpFR−Lucであった。アクチベータ発現プラスミドは、ヒトPPARαリガンド結合ドメイン(LBD;a.a.167−468)またはヒトPPARγ LBD(a.a.176−479)のいずれかの酵母GAL4 DNA結合ドメイン(dbd)融合を含有する。GAL4 DNA結合ドメインに融合されたマウスPPARαまたはPPARγ LBDを含有するDNA構築物も使用した。この2つの溶液を室温で5分間温置し、次いで組合わせた。組合わされた溶液を、室温でほぼ30分間温置した。細胞をPBSで1回洗浄し、100μLのトランスフェクション混合物を各ウェルに加えた。プレートを、5%COインキュベータ中、37℃で4.5時間温置し、次いでEMEM完全培地(10%FBS、1Xグルタミンを補充した)を用いて再流加されたプレートと共にトランスフェクション混合物を吸引した。トランスフェクション24時間後、プレートをEMEM完全培地中の適切な化合物で処理し、次いでPBSで1回洗浄し、処理の24時間後に100μLの1Xレポーター溶解緩衝液/ウェル(プロメガ(Promega))を添加した。プレートを、分析前に1回の凍結/解凍サイクルを行った。凡そ10μLの溶解液を、100μLのホタルルシフェラーゼ基質に加え、ピペット操作により混合し、積分関数(相対ルシフェラーゼ単位/RLU)を用いて10秒間ルミノメータで、またはMicrobeta Trilux(1秒当たりのルシフェラーゼカウント/LCPS)で分析した。各処理は、三連で、そして多重での別個の実験により実施した。
【0226】
(結果:)
(表19.マウスPPARγ LBD融合蛋白質:Hepa1.6細胞(マウス肝癌細胞株)における潜在的転写活性化)
値は、相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)±標準偏差である。
【0227】
【表19】


na=適用できず;nd=実施せず
(表20aおよび20b.マウスPPARαおよびPPARγ LBD融合蛋白質:C3A細胞(ヒト肝癌細胞系)における潜在的転写活性化)
値は、1秒当たりのルシフェラーゼカウント(LCPS)±標準偏差である。
【0228】
(20a.マウスPPARα)
【0229】
【表20a】


na=適用できず
(20b.マウスPPARγ)
【0230】
【表20b】


na=適用できず;nd=実施せず
注:先の表に掲げた濃度は、試験化合物に関するものである。ロシグリタゾンの濃度は、試験化合物濃度の五分の一であり;したがって、1μMの試験化合物を、0.2μMのロシグリタゾンなどに対して比較した。
【0231】
(表21.マウスPPARαおよびPPARγ LBD融合蛋白質:C3A細胞における潜在的転写活性化)
値は、RLU±標準偏差である。
【0232】
(21a.マウスPPARα)
【0233】
【表21a】


(21b.マウスPPARγ)
【0234】
【表21b】


na=適用できず;nd=実施せず
(表22 ヒトPPARαおよびPPARγ LBD融合蛋白質:C3A細胞における潜在的転写活性化)
値は、LCPS±標準偏差である。
【0235】
(22a.ヒトPPARα)
【0236】
【表22a】


na=適用できず;nd=実施せず
(22b.ヒトPPARγ)
【0237】
【表22b】


na=適用できず;nd=実施せず
注:先の表に掲げた濃度は、試験化合物に関するものである。ロシグリタゾンの濃度は、試験化合物濃度の五分の一であり;したがって、1μMの試験化合物を、0.2μMのロシグリタゾンなどに対して比較した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の生物活性薬剤。

【公開番号】特開2009−242434(P2009−242434A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173719(P2009−173719)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【分割の表示】特願2005−518490(P2005−518490)の分割
【原出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【出願人】(501056821)ウェルスタット セラピューティクス コーポレイション (32)
【Fターム(参考)】