説明

代謝物の定量方法

【課題】
本発明の課題は、生体内における代謝物の網羅的な定量方法を見出すことにある。
【解決手段】
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を調製し、サンプルと混合して質量分析装置で測定することにより、サンプル(例えば、組織、生体液、細胞など)中の複数の代謝物を精度よく定量することが可能となった。また、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群中の代謝物を定量しておくことにより、代謝物の網羅的な絶対定量が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内における代謝物の網羅的な定量方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞機能を解明するためには遺伝子やタンパク質の発現のみならず、酵素が産生する全代謝物質を網羅的に測定し、遺伝子発現や酵素活性との関係を明確にすることが必要であると報告されている(非特許文献1、2)。
【0003】
代謝物の定量方法は、質量分析装置を用いたいくつかの方法が知られている(非特許文献3−10)。しかしながら、これらの方法では、すべてのサンプル、例えば、組織、生体液などに対して、代謝物を精度の高く、かつ網羅的に定量することは困難である。
【非特許文献1】Ideker T, Thorsson V, Ranish JA, Christmas R, Buhler J, Eng JK, Bumgarner R, Goodlett DR, Aebersold R, Hood L. Integrated genomic and proteomic analyses of a systematically perturbed metabolic network. Science. 2001;292(5518):929-34.
【非特許文献2】Raamsdonk LM, Teusink B, Broadhurst D, Zhang N, Hayes A, Walsh MC, Berden JA, Brindle KM, Kell DB, Rowland JJ, Westerhoff HV, van Dam K, Oliver SG. A functional genomics strategy that uses metabolome data to reveal the phenotype of silent mutations. Nature Biotechnology. 2001 ;19(1):45-50.
【非特許文献3】Marin S, Lee WN, Bassilian S, Lim S, Boros LG, Centelles JJ, FernAndez-Novell JM, Guinovart JJ, Cascante M. Dynamic profiling of the glucose metabolic network in fasted rat hepatocytes using [1,2-13C2]glucose. Biochem J. 2004 ;381(Pt 1):287-94.
【非特許文献4】Boren J, Lee WN, Bassilian S, Centelles JJ, Lim S, Ahmed S, Boros LG, Cascante M. The stable isotope-based dynamic metabolic profile of butyrate-induced HT29 cell differentiation. J Biol Chem. 2003;278(31):28395-402.
【非特許文献5】Lafaye A, Labarre J, Tabet JC, Ezan E, Junot C. Liquid chromatography-mass spectrometry and 15N metabolic labeling for quantitative metabolic profiling. Anal Chem. 2005 ;77(7):2026-33.
【非特許文献6】Soga T, Ohashi Y, Ueno Y, Naraoka H, Tomita M, Nishioka T. Quantitative metabolome analysis using capillary electrophoresis mass spectrometry. J Proteome Res. 2003 ;2(5):488-94.
【非特許文献7】Wilson ID, Nicholson JK, Castro-Perez J, Granger JH, Johnson KA, Smith BW, Plumb RS. High resolution "ultra performance" liquid chromatography coupled to oa-TOF mass spectrometry as a tool for differential metabolic pathway profiling in functional genomic studies. J Proteome Res. 2005 ;4(2):591-8.
【非特許文献8】Kita Y, Takahashi T, Uozumi N, Nallan L, Gelb MH, Shimizu T. Pathway-oriented profiling of lipid mediators in macrophages. Biochem Biophys Res Commun. 2005 ;330(3):898-906.
【非特許文献9】Oldiges M, Kunze M, Degenring D, Sprenger GA, Takors R. Stimulation, monitoring, and analysis of pathway dynamics by metabolic profiling in the aromatic amino acid pathway. Biotechnol Prog. 2004 ;20(6):1623-33.
【非特許文献10】Saghatelian A, Cravatt BF. Global strategies to integrate the proteome and metabolome. Curr Opin Chem Biol. 2005 ;9(1):62-8.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、生体内における代謝物の網羅的な定量方法を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、代謝的に同位体標識された代謝物群を調製し、サンプルと混合して質量分析装置で測定することにより、サンプル(例えば、組織、生体液、細胞など)中の1又は複数の代謝物を精度よく定量することを見出した。また、代謝的に同位体標識された代謝物群中の代謝物を定量しておくことにより、代謝物の網羅的な絶対定量をも可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下に関する。
(1)代謝物を定量する方法であって、
(a1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析する工程と、
(a2)標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、代謝物を定量する工程と、
を含む前記方法。
(2)第二の代謝物群が、代謝的に標識できないサンプルから得られた代謝物群である、(1)に記載の方法。
(3)第二の代謝物群が、細胞培養によって標識できないサンプルから得られた代謝物群である、(1)に記載の方法。
(4)第二の代謝物群が、組織または生体液から得られた代謝物群である、(1)に記載の方法。
(5)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群が、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加されたサンプルから代謝物を抽出することによって得られたものである、(1)に記載の方法。
(6)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群が、
(b1)サンプルに代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加する工程と、
(b2)工程(b1)で得られたサンプルから代謝物を抽出する工程と、
を含む方法によって得られたものである、(1)に記載の方法。
(7)サンプルが、代謝的に標識できないサンプルである、(5)または(6)に記載の方法。
(8)サンプルが、細胞培養によって標識できないサンプルである、(5)または(6)に記載の方法。
(9)サンプルが、組織または生体液である、(5)または(6)に記載の方法。
(10)同位体標識された代謝物の前駆体を加えて培養し、第一の代謝物群を代謝的に同位体標識する工程と、
をさらに含む、(1)〜(9)のいずれか一項に記載の方法。
(11)複数のサンプルについて行い、各サンプル間の各代謝物のピーク強度比を比較する工程をさらに含む、(1)〜(10)のいずれか一項に記載の方法。
(12)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群中に存在する代謝物が既知量である、(1)〜(11)のいずれか一項に記載の方法。
(13)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群中に存在する代謝物を定量する工程と、
をさらに含む、(1)〜(12)のいずれか一項に記載の方法。
(14)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群に存在する代謝物を定量する工程が、
(c1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群に既知量の同位体非標識の代謝物を添加する工程と、
(c2)各代謝物を質量分析する工程と、
(c3)各代謝物の標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、各代謝物を定量する工程と、
を含む工程である、(13)に記載の方法。
(15)代謝物のデータベースと照合する工程と、
をさらに含む、(1)〜(14)のいずれか一項に記載の方法。
(16)定量される代謝物が、糖、有機酸、アミノ酸および脂質からなる群から選択される少なくとも一つである、(1)〜(15)のいずれか一項に記載の方法。
(17)定量される代謝物が、分子量1000以下の代謝物である、(1)〜(16)のいずれか一項に記載の方法。
(18)定量される代謝物が、タンパク質以外の代謝物である、(1)〜(17)のいずれか一項に記載の方法。
(19)質量分析により得られたマスクロマトグラムおよび/またはエレクトログラムを波形分離する工程と、
をさらに含む、(1)〜(18)のいずれか一項に記載の方法。
(20)波形分離処理により得られた固有の代謝物に由来する波形の面積を算出する工程と、
同位体標識された代謝物のm/zの値における固有の代謝物に由来する第一の波形の面積の値と同位体非標識の代謝物のm/zの値における固有の代謝物に由来する第二の波形の面積の値とから、(前記第一の波形面積)/(前記第二の波形面積)の比を算出する工程と、
をさらに含む、(19)に記載の方法。
(21)(1)〜(20)のいずれか一項に記載の方法に使用するための代謝的に同位体標識された代謝物群。
(22)(1)〜(20)のいずれか一項に記載の方法に使用するための代謝的に同位体標識された代謝物群からなる試薬。
(23)代謝物を定量するシステムであって、
(d1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析することによって得られたデータを取得する入力部と、
(d2)標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、代謝物を定量する制御部と、
を含む、前記システム。
(24)質量分析により得られたマスクロマトグラムおよび/またはエレクトログラムを波形分離する制御部と、
をさらに含む、(23)に記載のシステム。
(25)代謝物を定量するためのプログラムであって、
(e1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析することによって得られたデータを取得する手段と、
(e2)標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、代謝物を定量する手段と、
を含む、前記プログラム。
(26)質量分析により得られたマスクロマトグラムおよび/またはエレクトログラムを波形分離する手段と、
をさらに含む、(25)に記載のプログラム。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、生体内における代謝物の網羅的な定量方法が提供される。
すなわち、これまでの代謝物の定量方法は、既知量の同位体標識された代謝物の標準品を添加して、ピーク強度を比較することによりサンプル中の代謝物を定量していた。そのため、これらの方法では、実験ごとに測定対象となる代謝物の標準品を準備しなければならず、網羅的な定量は困難であった。一方、本発明は、代謝的に同位体標識された代謝物群を使用するため、サンプルに含まれるほとんどすべての代謝物について定量することが可能となった。
【0008】
本発明により、三種以上のサンプル間の比較が容易になった。また、これまでの代謝物の網羅的な定量方法は、同位体標識された代謝物群と同位体標識されていない代謝物群とを直接比較していたため、測定のたびに代謝物群を同位体標識する必要があった。また、サンプルが変わるたび、標識についての条件検討を行う必要があり、実験間の比較もできなかった。一方、本発明にかかる方法は、代謝的に同位体標識された代謝物群を保存し、適宜、用いることにより、実験間のデータ比較、例えばある実験データに対し、一定期間経過後(例えば、1ヶ月後、1年後等)に比較データを得て解析することが可能となる。さらには、使用した代謝的に同位体標識された代謝物群を譲渡又は貸し渡しすることにより、今まで不可能であった研究者間のデータ比較が可能となる。
【0009】
本発明により、代謝的に同位体標識された代謝物群中の代謝物の濃度を算出しておくことにより、代謝物の網羅的な絶対定量が可能となった。また、代謝的に同位体標識された代謝物群を譲渡又は貸し渡しすることにより、研究者間のデータ共有化が可能となる。さらに、代謝的に同位体標識された代謝物群中の代謝物の絶対量を求めておけば、実験ごとに定量する必要がなく、その後の各種実験に応用できる。
【0010】
さらには、代謝物標準品の合成は、10倍から100倍程度の過剰量の試薬を用い、しかも合成スケールがマイクログラムからミリグラム単位となる。一方、質量分析に必要な代謝物標準品の量は、微量(通常、数pg〜数ng程度)であるため、質量分析に必要な百万倍以上の量を合成することになる。そのため、同位体標識された代謝物標準品の合成は、無駄が多く、非常に高価となり、従来の方法で網羅的に定量することはコストの面で難しい。一方、本発明の方法では、代謝物群の同位体標識は、細胞培養によって行うので、ごく微量でも効率がよく調製することができる。また、代謝的に同位体標識された代謝物群中の代謝物を定量するための代謝物標準品は、同位体を必要としない通常の代謝物標準品で対応できるので、同位体を必要とする代謝物標準品に比べて安価となり、網羅的な定量方法として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
【0012】
1.定義
本発明において用いる用語「代謝物」とは、生体内外に存在する酵素反応などを介した代謝反応によって作り出された代謝物質をいい、例えば、糖、有機酸、ペプチド、アミノ酸、脂質などがあげられる。生体外に存在する酵素反応などを介した代謝反応によって作り出された代謝物質は、例えば、チャネル、トランスポーターなどを介して生体外から取り込まれた代謝物があげられ、例えば、ビタミン類、リノレン酸などがあげられる。
代謝物は、好ましくは分子量2000以下の代謝物があげられ、より好ましくは分子量1000以下の代謝物があげられる。
【0013】
本発明において用いる用語「サンプル」とは、代謝物を含む測定対象物をいい、好ましくは、組織、生体液、細胞などがあげられる。組織としては、例えば、脳、脳の各部位(例えば、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、十二指腸、小腸、大腸、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、耳下腺、舌下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などがあげられる。生体液としては、例えば、血液(血漿、血清を含む)、尿、糞、唾液、涙液、髄液、浸潤液(腹水、組織液を含む)などがあげられる。細胞としては、例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例えば、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好酸球、好塩基球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、間質細胞もしくはこれらの前駆細胞、幹細胞、癌細胞などがあげられる。ここにあげたものは具体例であって、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明において用いる用語「タンパク質」とは、二以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合したペプチドを含む。また、タンパク質には、生理的な修飾を受けているもの(例えば、リン酸化タンパク質等)も含まれる。
【0015】
本発明において用いる用語「同位体標識された代謝物」とは、代謝物を構成する分子の全部または一部を同位体で標識された代謝物をいう。また、本発明において用いる用語「同位体標識された代謝物群」とは、二種以上の同位体標識された代謝物の集合をいう。
【0016】
本発明において用いる用語「代謝的に同位体標識された代謝物」とは、同位体標識された当該代謝物の前駆体を加えることにより、代謝的に代謝物を構成する分子の全部または一部を同位体で標識された代謝物をいう。また、本発明において用いる用語「代謝的に同位体標識された代謝物群」とは、二種以上の代謝的に同位体標識された代謝物の集合をいう。前記「代謝的に」とは、酵素反応などを介した生理的条件を示し、好ましくは培養細胞における代謝反応を示す。
【0017】
本発明において用いる用語「代謝的に標識できないサンプル」とは、代謝的に標識できるサンプル以外のサンプルを指す。代謝的に標識できるサンプルとは、培養することによる同位体標識された当該代謝物の前駆体の影響を受けることなく代謝的に標識できるサンプルをいう。「代謝的に標識できないサンプル」には、たとえば、培養することによる同位体標識された当該代謝物の前駆体の影響を受けつつ代謝的に標識できるサンプル及び生体への投与、組織培養、その他の方法により標識できるサンプルが含まれるものとする。
【0018】
本発明において用いる用語「細胞培養によって標識できないサンプル」とは、細胞を培養することができないサンプルを指す。つまり、細胞培養できず、生体への投与、組織培養、その他の細胞培養以外の方法により標識できるサンプルは、「細胞培養によって標識できないサンプル」に含まれるものとする。細胞培養によって標識できないサンプルは、例えば、組織、生体液などがあげられる。
【0019】
2.代謝物の定量方法
本発明は、代謝物の定量方法であって、
(a1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析する工程と、
(a2)標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、代謝物を定量する工程と、
を含む、前記方法を提供する(図1)。図1は、本発明の代謝物の定量方法の一例を概念的に示したフローチャートである。
【0020】
(1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析する工程
(A)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群は、代謝物群を構成する分子の全部又は一部を同位体で標識されていればよく、その調製方法については、特に限定されない。
【0021】
以下、具体的な調製方法の一例について記載する。
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群は、代謝物群を代謝的に同位体標識することによって調製することができる。代謝的に同位体標識された第一の代謝物群は、例えば、培養可能な細胞を同位体標識された代謝物の前駆体を含む培地で培養することによって、細胞中の代謝物が代謝的に同位体標識されることにより調製することができる。細胞は、好ましくは大腸菌、酵母などがあげられる。
本発明において用いる用語「前駆体」とは、代謝物の構成成分になりうる分子を指す。前駆体は、炭素源としては、例えば、グルコース、マルトースおよびガラクトースなどの糖類などがあげられ、窒素源としては、例えば、塩化アンモニウムおよび硫酸アンモニウムなどの無機塩類などがあげられる。また、前駆体は、例えば、グルタミン酸、クエン酸などがあげられる。さらには、前駆体は、ビタミン類として、例えば、チミン、アデノシン、グアノシン、シチジン、チアミン、ビオチンなどがあげられる。さらには、前駆体は、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン、バリンなどのアミノ酸など、リノレン酸、パルミチン酸などの脂肪酸などがあげられる。
培地は、例えば、液体培地および固体培地などがあげられ、好ましくは液体培地があげられる。大腸菌を選択した場合には、液体培地および固体培地は、例えば、LB寒天培地(カタログ番号240110:日本ベクトンディッキンソン株式会社)やBGLB培地 (カタログ番号MB0030:栄研器材株式会社)などがあげられ、動物細胞を選択した場合には、液体培地は、例えば、DMEM、MEM、RPMI1640およびIMDMなどがあげられ、必要に応じてウシ胎児血清(FCS)などの血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンなどを添加することができ、pH約6〜8、30〜40℃において15〜200時間前後の培養を行うことができる。また、必要に応じて培地の交換を行ったり、通気及び攪拌を行ったりすることができる。
また、代謝的に同位体標識された代謝物群の調製は、市販の同位体標識用キットを用いることもできる。キットは、例えば、バクテリア用としてCambridge Isotope laboratory社(アンドーバー、MA)(http://www.isotope.com/)のBIO-EXPRESS-MIN (CGM-3000-CN)およびBIO-EPRESS-1000 (CGM-1000-CN)、酵母用としてBIO-EXPRESS YBN (CGM-5000-N)などがあげられる。
【0022】
このようにして得られた細胞は、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群として使用でき、また、破砕した後、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群として使用することもできる。破砕する方法は、例えば、ダウンス型テフロン(登録商標)・ホモジナイザー、ポリトロン、ワーリング・ブレンダー、ポッター型ガラス・ホモジナイザー、超音波破砕装置、細胞溶解液(例えば、PIERCE社のM-PER: cat no. 78501, T-PER: cat no. 78510など)を用いる方法、凍結融解法および冷メタノールを加える方法などがあげられ、好ましくは冷メタノールを加える方法があげられる。破砕した細胞は、遠心分離操作により、不溶性物質を除去することが好ましい。このようにして、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を調製することができる。
さらに、クロロホルムおよび水を加えて抽出を行うことができる。極性代謝物を抽出する場合には水層(上層)を、脂質などの低極性代謝物を抽出する場合にはクロロホルム層(下層)を選択することができる。
【0023】
本発明で用いる同位体は、例えば、放射性同位体、安定同位体などがあげられ、好ましくは安定同位体があげられる。安定同位体は、例えば、2H、13C、15N、17O、18O、33Pおよび34S並びにこれらの組み合わせなどがあげられ、好ましくは2H、13C、15Nおよび18O並びにこれらの組み合わせなどがあげられ、より好ましくは13Cがあげられる。
【0024】
なお、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群は、適当な条件、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−80℃以下で保存することができる。
【0025】
(B)第二の代謝物群の調製
第二の代謝物群は、サンプルを破砕することで調製することができる。サンプルは、例えば、組織、生体液、細胞などがあげられ、好ましくは組織があげられる。破砕する方法は、例えば、ダウンス型テフロン(登録商標)・ホモジナイザー、ポリトロン、ワーリング・ブレンダー、ポッター型ガラス・ホモジナイザー、超音波破砕装置、細胞溶解液(例えば、PIERCE社のM-PER: cat no. 78501, T-PER: cat no. 78510など)を用いる方法、凍結融解法および冷メタノールを加える方法などがあげられ、好ましくは冷メタノールを加える方法があげられる。破砕した細胞は、遠心分離操作により、不溶性物質を除去することが好ましい。このようにして、第二の代謝物群を調製することができる。
さらに、クロロホルムおよび水を加えて抽出を行うことができる。極性代謝物を抽出する場合には水層(上層)を、脂質などの低極性代謝物を抽出する場合にはクロロホルム層(下層)を選択することができる。
【0026】
また、必要に応じて、前記第二の代謝物群を精製することができる。精製する方法は、例えば、群特異的アフィニティーカラム精製、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーを利用する方法などがあげられ、好ましくはカチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーを利用する方法があげられる。
【0027】
さらに、必要に応じて、前記第二の代謝物群について分離を行うことができる。分離方法は、例えば、フリーゾーン電気泳動(例えば、キャピラリー電気泳動、等速電気泳動など)および各種クロマトグラフィー(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィーなど)等があげられる。
【0028】
なお、第二の代謝物群は、適当な条件、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−80℃以下で保存することができる。
【0029】
(C)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群
ここで、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群は、第二の代謝物群に代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加してもよく、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加されたサンプルから代謝物を抽出することによって得られたものであってもよい。
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加されたサンプルから代謝物を抽出することによって代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を得る方法は、例えば、以下の工程により行うことができる。
【0030】
(i)(b1)サンプルに代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加する工程
サンプルに代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加することができる。サンプルは、例えば、組織、生体液、細胞などがあげられ、好ましくは組織があげられる。代謝的に同位体標識された第一の代謝物群は、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を含む細胞としてサンプルに添加することが好ましい。
【0031】
(ii)(b2)工程(b1)で得られたサンプルから代謝物を抽出する工程
工程(b1)で得られたサンプルから代謝物を抽出することによって、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を調製することができる。代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群は、工程(b1)で得られたサンプルを破砕することで調製することができる。破砕する方法は、例えば、ダウンス型テフロン(登録商標)・ホモジナイザー、ポリトロン、ワーリング・ブレンダー、ポッター型ガラス・ホモジナイザー、超音波破砕装置、細胞溶解液(例えば、PIERCE社のM-PER: cat no. 78501, T-PER: cat no. 78510など)を用いる方法、凍結融解法および冷メタノールを加える方法などがあげられ、好ましくは冷メタノールを加える方法があげられる。破砕した細胞は、遠心分離操作により、不溶性物質を除去することが好ましい。このようにして、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を調製することができる。
さらに、クロロホルムおよび水を加えて抽出を行うことができる。極性代謝物を抽出する場合には水層(上層)を、脂質などの低極性代謝物を抽出する場合にはクロロホルム層(下層)を選択することができる。
【0032】
また、必要に応じて、前記第二の代謝物群を精製することができる。精製する方法は、例えば、群特異的アフィニティーカラム精製、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーを利用する方法などがあげられ、好ましくはカチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーを利用する方法があげられる。
【0033】
さらに、必要に応じて、前記第二の代謝物群について分離を行うことができる。分離方法は、例えば、フリーゾーン電気泳動(例えば、キャピラリー電気泳動、等速電気泳動など)および各種クロマトグラフィー(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィーなど)等があげられる。
【0034】
なお、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群は、適当な条件、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−80℃以下で保存することができる。
【0035】
(D)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群の質量分析
前記代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析する。質量分析は、質量分析装置により測定することができる。前記代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群は、そのまま質量分析装置により分析してもよく、濃縮、分離などを行ってもよい。濃縮方法は、例えば、遠心濃縮器(Speed Vacなど)による溶媒を除去する方法などがあげられる。分離方法は、例えば、フリーゾーン電気泳動(例えば、キャピラリー電気泳動、等速電気泳動など)および各種クロマトグラフィー(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィーなど)等があげられる。
【0036】
また、前記代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離してもよい。HPLCに用いるカラムは、例えば、アフィニティーカラム、逆相カラム、アニオン交換カラムおよびカチオン交換カラムなどがあげられる。HPLCの諸条件(流速、検出器、移動相など)は、当業者における技術常識により、適宜選択できる。
【0037】
次に、前記の操作により得られた代謝物群を質量分析装置で測定することができる。質量分析装置は、例えば、マススペクトロメトリー(MS)、ガスクロマトグラフと結合された質量分析装置であるガスクロマトグラフィーマススペクトロメトリー(GC/MS)、液体クロマトグラフと結合された装置である液体クロマトグラフィーマススペクトロメトリー(LC/MS)、キャピラリー電気泳動と結合された質量分析装置であるキャピラリー電気泳動マススペクトロメトリー(CE/MS)などの汎用の装置があげられる。質量分析装置におけるイオン化方法は、例えば、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)、ESI(エレクトロスプレーイオン化法)、EI(電子イオン化法)、CI(化学イオン化法)、APCI(大気圧化学イオン化法)、FAB(高速原子衝撃法)、LD、FD、SIMSおよびTSPなどがあげられ、LC/MSおよびCE/MSの場合には、好ましくはESIおよびAPCIがあげられ、GC/MSの場合には、好ましくはEIおよびCIがあげられる。アナライザーは、例えば、TOF(飛行時間型)、イオントラップ、二重収束型、四重極型およびフーリエ変換型などがあげられる。
【0038】
(2)標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、代謝物を定量する工程
本発明において、「標識ピーク」とは、質量分析の測定から得られるm/zの値に対するシグナル強度の分布(以下、「質量分析スペクトル」という。)および/または時間に対するシグナル強度の分布において、同位体標識された代謝物群に由来するシグナル強度又はその総和(通常面積で表されることは当業者であれば理解できる)をいう。また、本発明において、「マスクロマトグラム」とは、GC/MSおよびLC/MSの測定から得られる時間に対するシグナル強度の分布をといい、「エレクトログラム」とは、CE/MSの測定から得られる時間に対するシグナル強度の分布をいう。
本発明において、「非標識ピーク」とは、質量分析スペクトル、マスクロマトグラムおよび/またはエレクトログラムにおいて、同位体標識されていない代謝物群に由来するシグナル強度又はその総和をいう。
【0039】
質量分析装置による測定から得られたデータを用いて、各代謝物について、標識ピークと非標識ピークとの強度比(=「非標識ピークの強度」/「標識ピークの強度」)(以下、単に「ピーク強度比」と称する場合がある)を求めることにより、各代謝物を定量することができる。
同位体標識された代謝物は、同位体標識されていない代謝物に比べ、同位体標識されている分子量の分、分子量が大きくなり質量分析スペクトル上でペアのピークとして観測される。同位体標識された代謝物の分子量は、同定された代謝物から計算によって求めることができる。
【0040】
より具体的には、例えば、サンプルAおよびサンプルBに含まれる代謝物量を比較する場合、サンプルAにおける各代謝物の非標識ピークを当該代謝物に対応する標識ピークで除することによって、当該代謝物における非標識ピーク/標識ピーク(ピーク強度比A)を求める。一方、サンプルBにおける各代謝物の非標識ピークを当該代謝物に対応する標識ピークで除することによって、当該代謝物における非標識ピーク/標識ピーク(ピーク強度比B)を求める。次に、ピーク強度比Aとピーク強度比Bとを比較することで、サンプルAおよびサンプルBにおける代謝物を相対的に定量することができる。
【0041】
なお、サンプル中では存在していて、代謝的に同位体標識された代謝物群には存在していない代謝物が存在することがある。この場合には、質量分析装置で測定した際に、近傍の標識ピーク、好ましくはGC/MSおよびLC/MSであればクロマトグラフィーでの溶出時間が近い標識ピーク、MALDI-MSであれば分子量が近い標識ピーク、CE/MSであれば電気泳動における泳動時間または溶出時間が近いピークを対象としてピーク強度比を求めて、サンプル間で当該ピーク強度比を比較することによっても定量することができる。したがって、サンプル中のすべての代謝物を測定することが可能である。
【0042】
より具体的には、サンプルAおよびサンプルBにおける代謝物Xを比較する場合、代謝的に同位体標識された代謝物群に代謝物Xが存在せず、近傍に代謝物Yが存在することがある。ここで、近傍とは、GC/MSおよびLC/MSであればクロマトグラフィーでの溶出時間が近いこと、MALDI-MSであれば分子量が近いこと、CE/MSであれば電気泳動における泳動時間または溶出時間が近いことが好ましい。この場合には、サンプルAにおける代謝物Xの非標識ピークを代謝物Yに対応する標識ピークで除することによって、代謝物Xにおける非標識ピーク/代謝物Yにおける標識ピーク(ピーク強度比C)を求める。一方、サンプルBにおける代謝物Xの非標識ピークを代謝物Yに対応する標識ピークで除することによって、代謝物Xにおける非標識ピーク/代謝物Yにおける標識ピーク(ピーク強度比D)を求める。次に、ピーク強度比Cとピーク強度比Dとを比較することで、サンプルAおよびサンプルBにおける代謝物を相対的に定量することができる。近傍の代謝物を複数選択することによって、測定の精度を上げることができる。
【0043】
また、本工程において、代謝物を絶対定量することもできる。ここで、本発明において用いる用語「絶対定量」とは、測定結果を量または濃度として得ることを目的とする定量方法である。
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群に存在する代謝物が既知量である場合には、質量分析装置による測定から得られたデータ用いて、各代謝物について、標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めることにより、各代謝物を絶対定量することができる。代謝的に同位体標識された第一の代謝物群に存在する代謝物の絶対量を求めておけば、その後、各種実験において当該代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を使用できるため、実験ごとに定量を行うことを余儀なくされていた従来の方法に比べて非常に有用である。
【0044】
(3)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群に存在する代謝物を定量する工程
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群に存在する代謝物の定量は、例えば、既知量の代謝物標準品を用いて質量分析により行うことができる。代謝的に同位体標識された第一の代謝物群に存在する代謝物を定量する方法は、例えば、以下の工程により行うことができる。
【0045】
(A)(c1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群に同位体非標識の代謝物を添加する工程
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群に既知量の同位体非標識の代謝物を添加する。代謝的に同位体標識された第一の代謝物群は、前記「(1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析する工程(A)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群」中に記載された方法により調製することができる。
【0046】
同位体非標識の代謝物は、例えば、化学的な合成法などにより製造することができる。化学的な合成法により製造された代謝物の量は、重量を測定することによって定量することができる。
同位体非標識の代謝物は、代謝的に同位体標識されただいい地の代謝物群を抽出する前に加えてもよく、抽出した後に加えてもよい。
【0047】
(B)(c2)各代謝物を質量分析する工程
前記工程(c1)で得られた同位体非標識の代謝物を添加された代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を質量分析する。質量分析は、前記「(1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析する工程(D)第二の代謝物群の質量分析」中に記載された方法により行うことができる。
【0048】
(C)(c4)各代謝物の標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、各代謝物を定量する工程
各代謝物の標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、各代謝物を定量する。定量は、前記「(2)(b4)標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、代謝物を定量する工程」中に記載された方法により行うことができる。
【0049】
(4)代謝物のデータベースと照合する工程
本発明は、質量分析装置による測定から得られたデータを、ソフトウェアを使用して、代謝物のデータベースと照合することにより、第二の代謝物群中の代謝物を同定することができる。ソフトウェアは、例えば、Mass Navigator(登録商標)(三井情報開発株式会社製)、MassLynx(Waters社製)、Lipid Search(http://lipidsearch.jp/)(東京大学大学院医科学研究科、メタボローム講座)などがあげられ、好ましくはMass Navigator(登録商標)があげられる。また、データベースは、例えば、http://www.wileyregistry.com、http://chemdata.nist.gov/、http://www.aist.go.jp/RIODB/SDBS/cgi-bin/cre_index.cgiなどの質量分析と化合物のデータベースおよびhttp://cactus.nci.nih.gov/、http://www.genome.ad.jp/ligand/、http://www.biocheminfo.org/klotho/、http://www.metabolome.jp/download.htmlなどの化合物構造に関するデータベースなどがあげられる。このとき、同定された代謝物について、新たに代謝的に同位体標識することによって調製し、正確に同定されたことを確認することができる。また、同定された代謝物について、新たに代謝物標準品を調製し、HPLCやCEの溶出時間やMS/MSスペクトルなどの物理化学的分析情報が一致するか否かを検討して確認することができる。さらに、NMR測定から構造を確認することも可能である。質量分析装置による測定データを用いて、代謝物のデータベースと照合することにより、代謝物を同定することは当業者にとって容易である(Anal Chem. 2002;74(10):2233-9; Anal Chem. 2002;74(24):6224-9; Electrophoresis. 2004 Jul;25(13):1996-2002; Anal Chem. 2005;77(1):78-84; J Chromatogr A. 2003;989(2):293-301;
Anal Chem. 2004;76(5):1419-28.)。
【0050】
(5)質量分析により得られたマスクロマトグラムおよび/またはエレクトログラムを波形分離する工程
本発明は、質量分析装置による測定から得られたマスクロマトグラムおよび/またはエレクトログラムを波形分離処理することにより、固有の代謝物に由来する標識ピークおよび非標識ピークを求めて、標識ピークと非標識ピークの強度比を求めることにより、より正確に代謝物の定量を行うことができる。本発明は、例えば、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析する工程と、質量分析により得られたマスクロマトグラムおよび/またはエレクトログラムを波形分離する工程と、標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、代謝物を定量する工程を含む方法により、代謝物を定量することができる。
【0051】
図2は、質量分析によって得られたデータを解析する方法のスキームの一例を示す。図2に示すように、本発明における代謝物の定量方法は、MS/MS処理による代謝物の構造式の決定(工程S111)、前記同位体標識された代謝物の第一のm/zの値の決定工程(工程S112)、前記構造式が決定された代謝物の第一のm/zの値から、前記代謝物に対応する同位体非標識の代謝物の第二のm/zの値の算出(工程S113)、前記第一及び第二のm/zの値におけるマスクロマトグラムの抽出(工程S114)、前記第一及び第二のm/zの値におけるマスクロマトグラムに対する波形分離処理(工程S115)、前記波形分離処理により得られた固有の代謝物由来の標識ピークおよび非標識ピークの算出(工程S116)、前記第一のm/zの値に対応する非標識ピークの値および前記第二のm/zの値に対応する標識ピークの値のピーク強度比の算出(工程S117)を含む。以下、各工程を詳述することにより、本発明に係る定量方法を説明する。
【0052】
図2に示す工程S111では、MS/MS処理から得られた質量分析スペクトルにより、代謝物の構造式を決定することができる(工程S111)。その後、解析対象とする代謝物の第一のm/zの値を定めることができる(工程S112)。
【0053】
その後、前記構造式が決定された代謝物の第一のm/zの値から、その代謝物に対応する同位体非標識の代謝物の第二のm/zの値を求めることができる。同位体標識された代謝物群を調製する際、例えば、前駆体として13C標識の前駆体を利用して細胞を培養した場合、第一の代謝物の分子量と第二の代謝物の分子量の差は、代謝物の構造式から算出することができる。そして、代謝物の電荷の値から、工程S113にて第二のm/zの値を算出することができる。
【0054】
前記第一のm/zの値における第一のマスクロマトグラムおよび前記第二のm/zの値における第二のマスクロマトグラムを質量分析装置による測定から得られたデータから抽出することができる(工程S114)。
【0055】
ところで、組織、生体液、細胞などの中には複数種の代謝物が存在しており、その多くの代謝物を一度に質量分析すると、一つのマスクロマトグラムであっても、異なる代謝物由来のピークが重なることがある。そこで、本発明では、前記第一のマスクロマトグラム及び第二のマスクロマトグラムに対して、波形分離処理を行い(工程S115)、固有の代謝物由来のマスクロマトグラムに分離することができる。
本発明で用いる波形分離処理とは、複雑な波形に対する曲線適合法を基本とする合成的分離法である。これは、最初に各ピーク成分が特定の解析関数で表現できると仮定する。この仮定に基づき、いくつかのピーク関数を生成・合成し、各ピーク関数に含まれるパラメータを調整して観測波形との偏差を最小化することができる。偏差の最小点におけるパラメータより、各ピーク波形を分解・分離することにより行うことができる。なお、本発明による波形分離処理に利用される波形パラメータには、ピークの個数、各ピークの形、ピーク位置、ピーク高さ、ベースラインの形などが挙げられる。本発明では、例えば、ガウシアン関数とローレンツ関数とを利用して波形分離することができる。
波形分離処理は、同位体非標識の代謝物とそれに対応する同位体標識された代謝物について実行することができる。このようにして得られたマスクロマトグラムは、固有の代謝物に由来するマスクロマトグラムである。
【0056】
そして、前記波形分離処理により得られた固有の代謝物由来の標識ピークおよび非標識ピークを算出することができる(工程S116)。また、標識ピークおよび非標識ピークは、前記波形分離処理により得られた固有の代謝物由来のマスクロマトグラムの面積から求めることが好ましい。次いで、前記第一のm/zの値に対応する標識ピークおよび前記第二のm/zの値に対応する非標識ピークのピーク強度比の算出することができる(工程S117)。また、当該ピーク強度比は、(第二の面積)/(第一の面積)の比から求めることが好ましい。このようにして、代謝物を定量することができる。
【0057】
なお、前記解析方法は、同位体標識された代謝物のマスクロマトグラムから、対応する同位体非標識の代謝物のマスクロマトグラムを求める方法に基づいて説明したが、先に、解析対象として同位体非標識の代謝物のマスクロマトグラムを決定した後で、対応する同位体標識された代謝物のマスクロマトグラムを求める方法でも、本発明に係る解析方法は実施可能である。
また、前記解析方法は、マスクロマトグラムについて説明したが、本発明に係る解析方法は、エレクトログラムについても同様の方法により実施可能である。
【0058】
3.代謝物の定量システム
本発明は、代謝物を定量するシステムであって、
(d1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析することによって得られたデータを取得する入力部と、
(d2)標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、代謝物を定量する制御部と、
を含む、前記システムを提供する。
【0059】
図3は、本発明の定量システムの構成の機能ブロック図の一例を示す。なお、図3では、前記構成のうち、本発明に関係する部分のみを概念的に示し、マイクロコンピュータから構成される。
【0060】
本発明に係る定量システム10は、概略的には、質量分析装置20にて得られた質量分析データを解析する解析装置部30と、代謝物の構造式決定および情報取得用の外部分析プログラム等を提供する外部装置部40とを、ネットワーク50を介して通信可能に接続して構成される。なお、図3に示すネットワーク50は、解析装置部30と外部装置部40とを相互に接続する機能を有し、たとえば、インターネット等である。
【0061】
本発明にて用いられる質量分析装置20は、特に限定されるものではなく、市販の質量分析装置であればよい。そして、前記質量分析装置20は、それ自体に当該装置にて測定して得られた結果を保存するデータ保存部25を備えていてもよい。また、本発明に用いられる質量分析装置20は、それ自体に装置を制御する制御部や入出力部を備えるものであってもよい。
【0062】
図3に示す外部装置部40は、ネットワークを介して、質量分析データを解析する解析装置部30と相互に接続され、利用者に対して代謝物の構造式および情報等に関する外部データベースの外部分析プログラムを実行するウェッブサイトを提供する機能を具有する。
【0063】
ここで、外部装置部40は、WEBサーバやASPサーバ等として構成してもよく、そのハードウェア構成は、一般に市販されるワークステーション、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置及びその付属装置により構成してもよい。また、外部装置部40の各機能は、外部装置部のハードウェア構成中のCPU、ディスク装置、メモリ装置、入力装置、出力装置、通信制御装置等およびそれらを制御するプログラム等により実現される。
本発明では外部装置部としてhttp://www.wileyregistry.com、http://chemdata.nist.gov/、http://www.aist.go.jp/RIODB/SDBS/cgi-bin/cre_index.cgiなどの質量分析と化合物のデータベースおよびhttp://cactus.nci.nih.gov/、http://www.genome.ad.jp/ligand/、http://www.biocheminfo.org/klotho/、http://www.metabolome.jp/download.htmlなどの化合物構造に関するデータベースなどのデータベースを利用することができる。
【0064】
図3に示す解析装置部30は、概略的には、質量分析装置20の全体を統括的に制御するCPU等の制御部60、通信回線等に接続されるルータ等の通信装置(不図示)に接続される通信制御インターフェース部70、質量分析装置20、およびディスプレイやプリンター等の出力装置90に接続される入出力制御インターフェース部80、および各種のデータベースを格納する記憶部100を備えて構成される。各部は任意の通信路を介して通信可能に接続される。さらに、本発明による解析装置部30は、ルータ等の通信装置及び専用線等の有線又は無線の通信回線を介して、ネットワークに通信可能に接続されている。
【0065】
記憶部100に格納される各種のデータベース(質量分析データや代謝物データベース等)は、固定ディスク装置等のストレージ手段であり、ファイルやデータ等を格納する。
【0066】
前記記憶部100の各構成要素のうち、質量分析データベースは、質量分析装置20にて得られたデータベースである。また、代謝物データベースは、質量分析装置にて得られた質量分析スペクトルおよび/またはマスクロマトグラムの代謝物データベースや、インターネットを経由してアクセス可能な外部の代謝物データベースであってもよい。さらに、これらのデータベースをコピーしたり、オリジナルの配列情報を格納したり、さらに独自の識別番号を付与し作成したインハウスデータベースであってもよい。
【0067】
制御部60は、本発明に係る解析方法を実行するプログラムを格納し、前記解析装置部30を、ひいては定量システム10の全体を制御する装置である。前記制御部60は、OS(operating system)等の制御プログラム、各種の処理手順等を規定したプログラム、および所要データを格納するための内部メモリ(不図示)を有し、これらのプログラム等により、種々の処理を実行するための情報処理を行うことができる。なお、本発明に係る解析方法を実行するプログラムは、前記記憶部100に格納されていてもよい。
【0068】
図4は、本発明の定量プログラムの一例を概念的に示したフローチャートである。制御部60は、質量分析装置20にて得られた質量分析データを取得することができる(手順S200)。そして、取得した質量分析データを記憶部100に保存するが、その際に、後述する解析の便宜のため、データ検索を容易にするように、各質量分析データに、スキャン番号等の識別番号を付与することができる(手順S201)。次に、通信制御インターフェース部を介したインターネット50を通じて、外部のデータベース、例えば、http://www.wileyregistry.com、http://chemdata.nist.gov/、http://www.aist.go.jp/RIODB/SDBS/cgi-bin/cre_index.cgiなどの質量分析と化合物のデータベースおよびhttp://cactus.nci.nih.gov/、http://www.genome.ad.jp/ligand/、http://www.biocheminfo.org/klotho/、http://www.metabolome.jp/download.htmlなどの化合物構造に関するデータベースなどのデータベースと照合させながら、MS/MS処理により、制御部60にて代謝物の構造式を決定することができる(手順S202)。前記質量分析データの中から、解析対象とする質量分析スペクトルを決定する(手順S203)。その際、前述のように決定した質量分析スペクトルのm/zの値を定め、これを第一のm/zの値とする。この第一のm/zの値は、同位体非標識の代謝物の質量分析スペクトル、または同位体標識された代謝物の質量分析スペクトルであってもよい。かかる決定は、前述のスキャン番号から容易に行うことができる。
【0069】
次に、前記構造式が決定された代謝物の第一のm/zの値から、その代謝物に対応する同位体非標識の代謝物の第二のm/zの値を求めることができる(手順S204)。同位体標識された代謝物群を調製する際、例えば、前駆体として13C標識の前駆体を利用して細胞を培養した場合、第一の代謝物の分子量と第二の代謝物の分子量の差は、代謝物の構造式から算出することができる。そして、代謝物の電荷の値から、第二のm/zの値を算出することができる(手順S205)。決定した第二のm/zの値から、その値のマスクロマトグラムを、記憶部100に格納された質量分析データから抽出することができる。
【0070】
次いで、第一のm/zの値における第一のマスクロマトグラムおよび第二のm/zの値における第二のマスクロマトグラムを波形分離処理することができる(手順S206)。本処理により、固有の代謝物に由来するマスクロマトグラムを分離し、記憶部100に格納することができる。
そして、前記波形分離処理により得られた固有の代謝物由来の標識ピークおよび非標識ピークを算出することができる(手順S207)。また、標識ピークおよび非標識ピークは、前記波形分離処理により得られた固有の代謝物由来のマスクロマトグラムの面積から求めることが好ましい。次いで、前記第一のm/zの値に対応する標識ピークおよび前記第二のm/zの値に対応する非標識ピークのピーク強度比の算出することができる(手順S208)。また、当該ピーク強度比は、(第二の面積)/(第一の面積)の比から求めることが好ましい。このようにして、代謝物を定量することができる。
【0071】
その後、必要に応じ、前記比の値を、ディスプレイ若しくはプリンター等の出力装置90に表示若しくは印字することができる。
【0072】
また、前記プログラムは、マスクロマトグラムについて説明したが、本発明に係るプログラムは、エレクトログラムについても同様の方法により実施可能である。
【0073】
4.代謝物の定量プログラム
本発明は、代謝物を定量するためのプログラムであって、
(e1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析することによって得られたデータを取得する手段と、
(e2)標識ピークと非標識ピークとのピーク強度比を求めて、代謝物を定量する手段と、
を含む、前記プログラムを提供する。
【0074】
本発明のプログラムは、例えば、質量分析データの取得(手段S200)、質量分析データに識別番号の付与(手段S201)、MS/MS処理による代謝物の構造の決定(手段S202)、解析対象の質量分析スペクトルの決定(第一のm/zの値の決定)(手段S203)、第二のm/zの値の決定(手段S204)、第一および第二のm/zの値におけるマスクロマトグラムの抽出(手段S205)、第一および第二のm/zの値におけるマスクロマトグラムに対する波形分離処理(手段S206)、波形分離処理により得られた固有の代謝物由来の標識ピークおよび非標識ピークの算出(手段S207)、非標識ピークと標識ピークとのピーク強度比の算出(手段S208)などを含む手段を有するプログラムがあげられる。
【0075】
また、前記プログラムは、マスクロマトグラムについて説明したが、本発明に係るプログラムは、エレクトログラムについても同様の方法により実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明により、生体内における代謝物の網羅的な定量方法が可能となった。
すなわち、これまでの代謝物の定量方法は、既知量の同位体標識された代謝物の標準品を添加して、ピーク強度を比較することによりサンプル中の代謝物を定量していた。そのため、これらの方法では、実験ごとに測定対象となる代謝物の標準品を準備しなければならず、網羅的な定量は困難であった。一方、本発明は、代謝的に同位体標識された代謝物群を使用するため、サンプルに含まれるほとんどすべての代謝物について定量することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、本発明の代謝物の定量方法の一例を概念的に示したフローチャートである。
【図2】図2は、質量分析によって得られたデータの解析方法のスキームの一例を示す。
【図3】図3は、本発明の定量システムの構成の機能ブロック図の一例を示す。
【図4】図4は、本発明の定量プログラムの一例を概念的に示したフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝物を定量する方法であって、
(a1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析する工程と、
(a2)標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、代謝物を定量する工程と、
を含む前記方法。
【請求項2】
第二の代謝物群が、代謝的に標識できないサンプルから得られた代謝物群である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第二の代謝物群が、細胞培養によって標識できないサンプルから得られた代謝物群である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第二の代謝物群が、組織または生体液から得られた代謝物群である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群が、代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加されたサンプルから代謝物を抽出することによって得られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群が、
(b1)サンプルに代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加する工程と、
(b2)工程(b1)で得られたサンプルから代謝物を抽出する工程と、
を含む方法によって得られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
サンプルが、代謝的に標識できないサンプルである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
サンプルが、細胞培養によって標識できないサンプルである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項9】
サンプルが、組織または生体液である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項10】
同位体標識された代謝物の前駆体を加えて培養し、第一の代謝物群を代謝的に同位体標識する工程と、
をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
複数のサンプルについて行い、各サンプル間の各代謝物のピーク強度比を比較する工程をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群中に存在する代謝物が既知量である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群中に存在する代謝物を定量する工程と、
をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
代謝的に同位体標識された第一の代謝物群に存在する代謝物を定量する工程が、
(c1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群に既知量の同位体非標識の代謝物を添加する工程と、
(c2)各代謝物を質量分析する工程と、
(c3)各代謝物の標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、各代謝物を定量する工程と、
を含む工程である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
代謝物のデータベースと照合する工程と、
をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
定量される代謝物が、糖、有機酸、アミノ酸および脂質からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
定量される代謝物が、分子量1000以下の代謝物である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
定量される代謝物が、タンパク質以外の代謝物である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
質量分析により得られたマスクロマトグラムおよび/またはエレクトログラムを波形分離する工程と、
をさらに含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
波形分離処理により得られた固有の代謝物に由来する波形の面積を算出する工程と、
同位体標識された代謝物のm/zの値における固有の代謝物に由来する第一の波形の面積の値と同位体非標識の代謝物のm/zの値における固有の代謝物に由来する第二の波形の面積の値とから、(前記第一の波形面積)/(前記第二の波形面積)の比を算出する工程と、
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法に使用するための代謝的に同位体標識された代謝物群。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法に使用するための代謝的に同位体標識された代謝物群からなる試薬。
【請求項23】
代謝物を定量するシステムであって、
(d1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析することによって得られたデータを取得する入力部と、
(d2)標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、代謝物を定量する制御部と、
を含む、前記システム。
【請求項24】
質量分析により得られたマスクロマトグラムおよび/またはエレクトログラムを波形分離する制御部と、
をさらに含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
代謝物を定量するためのプログラムであって、
(e1)代謝的に同位体標識された第一の代謝物群を添加された第二の代謝物群を質量分析することによって得られたデータを取得する手段と、
(e2)標識ピークと非標識ピークとの強度比を求めて、代謝物を定量する手段と、
を含む、前記プログラム。
【請求項26】
質量分析により得られたマスクロマトグラムおよび/またはエレクトログラムを波形分離する手段と、
をさらに含む、請求項25に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−337176(P2006−337176A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162313(P2005−162313)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】