説明

代謝症候群の特異的マーカー

【課題】内臓脂肪組織のレベルを測定、モニタリング、および追跡するための、比較的単純でありかつ費用効率の高い技法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定するためのマーカーとして使用できる、内臓脂肪組織において主に発現されるポリペプチドを提供する。本発明はまた、生体試料を得て、本明細書に開示する1つまたは複数のポリペプチドの増加を検出および/または測定することによる、内臓脂肪組織のレベルを測定する方法を提供する。本明細書に開示する特定のポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストに関連するスクリーニング法も提供する。代謝症候群に関連する共存症を検出および/または治療するために、これらのポリペプチドマーカーに対して抗体を産生させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代謝症候群の特異的マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
男女共に、内臓脂肪組織の蓄積は、インスリン非依存性糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、および他の動脈硬化性疾患の発症の危険性の増大、ならびにインスリン抵抗性、血中脂質、血糖の上昇、および高血圧を含むそれらに関連した危険因子に関連している。これらの危険因子の集積は「代謝症候群(Metabolic Syndrome)」と命名され、また「シンドロームX」、「インスリン抵抗性症候群」、または「死の四重奏」とも称される。この症候群は1つまたは複数の内分泌障害によっても特徴づけられ、したがって「神経内分泌症候群」とも称される(非特許文献1参照)。これらの障害には、性ステロイド(男性のテストステロン、女性のエストロゲン)の血清レベルの低下、成長ホルモンの作用の減少の徴候、およびコルチゾールの過剰分泌が含まれる。後者は、コルチゾール合成阻害剤ケトコナゾールを用いた治療による成功で実証されるように(特許文献1参照)、代謝症候群の発症の原因となる主要な過程であることが臨床的に示されている。
【0003】
代謝症候群に関連する病態には、II型糖尿病(IDDM)、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、心筋梗塞、脳卒中、および他の動脈硬化性疾患、ならびにこれらの疾患の危険因子、一般的なインスリン抵抗性、内臓脂肪組織の蓄積に起因する腹部肥満、血清脂質の上昇、および最小および/または最大血圧の増加が含まれる。
【0004】
内臓脂肪組織は、腹内脂肪、中心性肥満に関連する脂肪蓄積として知られている。この脂肪蓄積は、全身に位置する皮下脂肪蓄積と区別すべきである。疾患の危険性の増加および死亡率に関連しているのは、内臓脂肪組織である。内臓脂肪組織は、いまだ不明確な方法で全身の代謝を調節することにより、この過程において重要な役割を担っている。肥満症において、内臓脂肪組織の相対量は人によってばらつき得り、内臓脂肪組織のレベルを正確に決定する唯一の手段は、磁気共鳴映像法の使用およびコンピューター断層撮影法による。これらの複雑な技法により内臓脂肪組織のレベルの詳細な測定が提供され得るが、保健医療を目的として社会全体で測定するための日常的手段には利用できない。さらに、MRIおよびCTスキャンに伴う費用は非常に高く、したがって日常的スクリーニングには適用できない。
【0005】
【非特許文献1】Marin, P. Neuroendocrine News, 21(3) 1996, 2
【特許文献1】国際公開公報第96/04912号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、代謝症候群を診断し場合によっては治療する方法として、および代謝症候群を治療する可能性のある化合物を見出す方法として、内臓脂肪組織のレベルを測定、モニタリング、および追跡するための、比較的単純でありかつ費用効率の高い技法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る方法においては、(1)生体試料を得る段階;ならびに
配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含むポリペプチドマーカーのレベルを検出または測定する段階
を含む、内臓脂肪組織のレベルを測定する方法であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る方法においては、(2)生体試料中の、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含むポリペプチドマーカーのレベルを検出または測定する段階を含む、内臓脂肪組織のレベルを測定する方法であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る方法においては、(3)ポリペプチドマーカーが少なくとも2つのポリペプチドを含む、上記(1)または(2)記載の方法であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る方法においては、(4)生体試料が血清、血漿、および内臓脂肪組織の細胞からなる群に由来する、上記(1)〜(3)のいずれか一項記載の方法であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る方法においては、(5)内臓脂肪組織のレベルが高いことが分かっている個人のポリペプチドマーカーのレベルを、内臓脂肪組織のレベルが低いかまたは正常であることが分かっている個人の同じポリペプチドマーカーの発現レベルと比較する、上記(1)〜(4)のいずれか一項記載の方法であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る方法においては、(6)経時的なポリペプチドマーカーのレベルの増加が代謝症候群または代謝症候群に対する感受性を示す、上記(1)〜(5)のいずれか一項記載の方法であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る方法においては、(7)生体試料を得る段階;ならびに
配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、および37の核酸分子からなる群より選択される少なくとも1つの核酸分子を含む核酸マーカーのレベルを検出または測定する段階
を含む、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定する方法であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る方法においては、(8)生体試料中の、配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、および37の核酸分子からなる群より選択される少なくとも1つの核酸分子を含む核酸マーカーのレベルを検出または測定する段階
を含む、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定する方法であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る方法においては、(9)核酸マーカーがRNAである、上記(7)または(8)記載の方法であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る方法においては、(10)内臓脂肪組織のレベルが高いことが分かっている個人の核酸マーカーの発現レベルを、内臓脂肪組織のレベルが低いかまたは正常であることが分かっている個人の同じポリペプチドマーカーの発現レベルと比較する、上記(7)〜(9)のいずれか一項記載の方法であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る方法においては、(11)経時的な核酸マーカーの発現レベルの増加が代謝症候群または代謝症候群に対する感受性を示す、上記(7)〜(10)のいずれか一項記載の方法であることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るスクリーニング法においては、(12)以下の段階を含む、内臓脂肪組織において主に発現され、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドと相互作用する化合物を同定するスクリーニング法であることを特徴とする:
化合物がポリペプチドと相互作用し得る条件下で該ポリペプチドを1つの化合物または複数の化合物と接触させる段階;ならびに
1つの化合物または複数の化合物と該ポリペプチドとの相互作用を検出する段階。
【0019】
本発明に係るスクリーニング法においては、(13)以下の段階を含む、内臓脂肪組織において主に発現され、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストである化合物を同定するスクリーニング法であることを特徴とする:
化合物がポリペプチドと相互作用し得る条件下で該ポリペプチドを化合物と接触させる段階;
該ポリペプチドの第1の活性レベルを決定する段階;
化合物と接触させていない宿主で発現させた該ポリペプチドの第2の活性レベルを決定する段階;ならびに
第1の活性レベルを第2の活性レベルと定量的に関連づける段階であって、第1の活性レベルが第2の活性レベルよりも低い場合に化合物を該ポリペプチドのアンタゴニストであると同定する段階。
【0020】
本発明に係るスクリーニング法においては、(14)内臓脂肪組織において主に発現され、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドの発現の阻害剤である化合物を同定するスクリーニング法であることを特徴とする:
該ポリペプチドを発現する宿主を化合物と接触させる段階;
該ポリペプチドの第1の発現レベルまたは活性を決定する段階;
化合物と接触させていない宿主における該ポリペプチドの第2の発現レベルまたは活性を決定する段階;および
第1の発現レベルまたは活性を第2の発現レベルまたは活性と定量的に関連づける段階であって、第1の発現レベルまたは活性が第2の発現レベルまたは活性よりも低い場合に化合物を該ポリペプチドの発現の阻害剤であると同定する段階。
【0021】
本発明に係る抗体、まははその結合断片においては、(15)内臓脂肪組織のレベルを測定するインビトロ法で使用するための、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択されるタンパク質に対する抗体、またはその抗原結合断片であることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る方法においては、(16)配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質を選択する段階;
哺乳動物において該1つまたは複数のタンパク質のレベルを決定する段階;ならびに
内臓脂肪組織の基礎レベルを示唆する指数Yを作成する段階
を含む、哺乳動物のタンパク質レベルを内臓脂肪組織のレベルの診断と関連づける方法であることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る方法においては、(17)指数Yを特定レベルの内臓脂肪組織を有することが分かっている対象の指数と比較する段階をさらに含む、上記(16)記載の方法であることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る方法においては、(18)指数Yを経時的にモニタリングして内臓脂肪組織のレベルの進行を決定し、それにより代謝症候群の発症に対する感受性を予測する段階をさらに含む、上記(16)または(17)記載の方法であることを特徴とする。
【0025】
本発明に係るキットにおいては、(19)上記(13)記載の1つもしくは複数の抗体またはその抗原結合断片を含む、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定するためのキットであることを特徴とする。
【0026】
本発明に係るキットにおいては、(20)上記(1)記載のポリペプチドマーカーをコードする1つまたは複数の核酸を含む、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定するためのキットであることを特徴とする。
【0027】
本発明に係るキットにおいては、(21)配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドを活性化もしくは阻害する、または該ポリペプチドのいずれかの発現を促進もしくは阻害する化合物をスクリーニングするためのキットであることを特徴とする。
【0028】
本発明に係る方法においては、(22)1つまたは複数のタンパク質の抗体を産生させる段階;
該タンパク質の血清レベルを検出する段階;および
該血清レベルを特定レベルの内臓脂肪組織を有することが分かっている対象の血清レベルと比較する段階
を含む、1つまたは複数のタンパク質の血清レベルをモニタリングし、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定する方法であることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る使用においては、(23)代謝症候群を治療する医用薬剤を調製するための、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択される、少なくとも1つのタンパク質に対する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片の治療上有効な量の使用であることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る使用においては、(24)代謝症候群を治療する医用薬剤を調製するための、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質、タンパク質断片、またはペプチドの治療上有効な量の使用であることを特徴とする。
【0031】
本発明に係る使用においては、(25)内臓脂肪組織の蓄積の診断におけるマーカーとしての、配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、および37の核酸からなる群より選択される核酸の使用であることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る使用においては、(26)内臓脂肪組織の蓄積の診断におけるマーカーとしての、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38のタンパク質からなる群より選択されるポリペプチドの使用であることを特徴とする。
【0033】
本発明に係る方法使用、およびキットにおいては、(27)特に実施例に関連した、本明細書に記載の方法、使用、およびキットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、代謝症候群の特異的マーカーが提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の1つの局面によると、内臓脂肪組織のレベルを測定する方法は、生体試料を得る段階;ならびに配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含むポリペプチドマーカーのレベルを検出または測定する段階を含む。
【0036】
本発明の1つの局面によると、内臓脂肪組織のレベルを測定する方法は、生体試料中の、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含むポリペプチドマーカーのレベルを検出または測定する段階を含む。
【0037】
本発明の別の局面によると、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定する方法は、生体試料を得る段階;ならびに配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、および37の核酸分子からなる群より選択される少なくとも1つの核酸分子を含む核酸マーカーのレベルを検出または測定する段階を含む。
【0038】
本発明の別の局面によると、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定する方法は、生体試料中の、配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、および37の核酸分子からなる群より選択される少なくとも1つの核酸分子を含む核酸マーカーのレベルを検出または測定する段階を含む。
【0039】
本発明のさらなる局面により、化合物がポリペプチドと相互作用し得る条件下でポリペプチドを1つの化合物または複数の化合物と接触させる段階;ならびに1つの化合物または複数の化合物とポリペプチドとの相互作用を検出する段階を含む、内臓脂肪組織において主に発現され、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなるからなる群より選択されるポリペプチドと相互作用する化合物を同定するスクリーニング法が提供される。
【0040】
本発明のさらに別の局面により、化合物がポリペプチドと相互作用し得る条件下でポリペプチドを化合物と接触させる段階;ポリペプチドの第1の活性レベルを測定する段階;化合物と接触させていない宿主で発現させたポリペプチドの第2の活性レベルを測定する段階;および第1の活性レベルを第2の活性レベルと定量的に関連づける段階であって、第1の活性レベルが第2の活性レベルよりも低い場合に化合物をポリペプチドのアンタゴニストとして同定する段階を含む、内臓脂肪組織において主に発現され、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなるからなる群より選択されるポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストである化合物を同定するスクリーニング法を提供する。
【0041】
本発明のさらなる局面により、ポリペプチドを発現する宿主を化合物と接触させる段階;ポリペプチドの第1の発現レベルまたは活性を測定する段階;化合物と接触させていない宿主におけるポリペプチドの第2の発現レベルまたは活性を測定する段階;および第1の発現レベルまたは活性を第2の発現レベルまたは活性と定量的に関連づける段階であって、第1の発現レベルまたは活性が第2の発現レベルまたは活性よりも低い場合に化合物をポリペプチドの発現の阻害剤として同定する段階を含む、内臓脂肪組織において主に発現され、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなるからなる群より選択されるポリペプチドの発現の阻害剤である化合物を同定するスクリーニング法を提供する。
【0042】
本発明の別の局面により、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質を選択する段階;哺乳動物において1つまたは複数のタンパク質のレベルを測定する段階;ならびに内臓脂肪組織の基礎レベルを示す指数Yを作成する段階を含む、哺乳動物におけるタンパク質レベルを内臓脂肪組織のレベルの診断と関連づける方法を提供する。
【0043】
本発明のさらに別の局面により、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドを活性化もしくは阻害する、またはそのようなポリペプチドのいずれかの発現を促進もしくは阻害する化合物をスクリーニングするためのキットを提供する。
【0044】
本発明のさらなる局面により、1つまたは複数のタンパク質の抗体を産生させる段階;タンパク質の血清レベルを検出する段階;および血清レベルを特定レベルの内臓脂肪組織を有することが分かっている対象の血清レベルと比較する段階を含む、1つまたは複数のタンパク質の血清レベルをモニタリングし、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定する方法を提供する。
【0045】
本発明のさらに別の局面により、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択される、少なくとも1つのタンパク質に対する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片の治療上有効な量を、それを必要とする患者に投与する段階を含む、代謝症候群を治療する方法を提供する。
【0046】
本発明の別の局面により、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質、タンパク質断片、またはペプチドの治療上有効な量を、それを必要とする患者に投与する段階を含む、代謝症候群を治療する方法を提供する。
【0047】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点は、添付の図面および特許請求の範囲と併せて以下の説明を読むことにより明らかになると思われる。
【0048】
疾患を早期診断するための代謝症候群のマーカーとして適した遺伝子およびポリペプチドを同定する問題、ならびにそのようなマーカーに対する長い間の要望を、本発明により克服した。驚いたことに、特定の一組の遺伝子が内臓脂肪組織においてより選択的に分泌されることを見出した。異なって発現される遺伝子およびそれらがコードするポリペプチドを、それらのアクセッション番号とともに表1に収載する。
【0049】
(表1)内臓脂肪で分泌されるタンパク質


【0050】
表1に収載したポリペプチドに基づき、本発明は、対象に存在する内臓脂肪組織の相対量を測定するためのマーカーを提供する。次に、この測定値を代謝症候群または代謝症候群の初期段階の診断と関連づけることができる。これらのマーカーには、表1に収載したポリペプチド(配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38)からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドが含まれる。したがって、本明細書で用いる「マーカー」という用語は、内臓脂肪組織において主に発現され、内臓脂肪組織の量を測定するために用いることができる1つまたは複数のポリペプチドを指し、そのためこれを用いて代謝症候群、前代謝症候群状態、または代謝症候群発症に対する感受性を診断することができる。マーカーは、単独でまたは内臓脂肪組織で発現することが知られている複数のポリペプチドとの組み合わせとして用いることができる。
【0051】
本明細書で用いる「ポリペプチド」という用語はアミノ酸の重合体を指し、特異的長さは指すものではない。したがって、ポリペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質も、ポリペプチドの定義内に含まれる。
【0052】
本発明のマーカーは、表1に記載したポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含むマーカーであることが好ましい。
【0053】
本発明は、内臓脂肪組織において主に発現されるポリペプチドの同定とともに、個人における内臓由来分泌タンパク質のレベルを測定するインビトロ法を提供する。測定したタンパク質の量を個人の内臓脂肪組織の全量に外挿し、これにより個人の内臓脂肪組織のレベルを決定することができる。さらに、内臓由来分泌タンパク質のレベルを測定することにより、内臓脂肪組織が個人間で異なるか否かを判定することも可能であると考えられる。さらに、分泌タンパク質の相違を、様々な個人で見出される様々な共存症と関連づけることが可能である。
【0054】
本発明に従い、「異なって発現される」または「主に発現される」という用語は、主に内臓脂肪組織に由来する組織および/または細胞により分泌されるタンパク質を発現するマーカー遺伝子に関する。
【0055】
本発明に従って、本明細書で用いる「生体試料」という用語は、マーカー遺伝子の異なった発現が測定され得る物質を含み、かつ個体から得られうる試料を意味する。特に好ましい試料には、血液、血清、血漿、尿、滑液、髄液、脳脊髄液、精液、またはリンパ液等の体液、ならびに内臓および皮下の脂肪組織等の体組織が含まれる。
【0056】
異なって発現されるマーカー遺伝子の検出および/または測定には、例えばRNAまたはcDNA等の特定の核酸分子の増加、減少、および/または欠如の検出、発現されたポリペプチド/タンパク質の測定/検出、ならびに発現されたタンパク質/ポリペプチドの(生物)活性(またはその欠如)の測定/検出が含まれ得る。(生物)活性には、酵素活性、例えば抗原認識およびエフェクター事象といったシグナル伝達経路事象に関連する活性が含まれ得る。
【0057】
RNAおよび/またはcDNAレベルを検出/測定する方法は当技術分野で周知であり、添付の実施例に記載する方法を含む。そのような方法には、PCR技術、ノーザンブロット法、アフィメトリクスチップ(affymetrix chip)等が含まれるがそれらに限定されない。
【0058】
本明細書で用いる「検出」という用語は、ポリペプチドの非存在または存在の定性的決定を指す。本明細書で用いる「測定」という用語は、患者由来の生体試料中のポリペプチド発現の相違の定量的測定を指す。さらに、「測定」という用語は、内臓脂肪組織に由来する生体試料中のポリペプチド発現の相違の定量的決定を指す場合もある。
【0059】
生体試料中のポリペプチドを検出および/または測定する方法は当技術分野で周知であり、ウェスタンブロッティング法、ELISA法もしくはRIA法、または様々なプロテオミクス技法が含まれるが、これらに限定されない。ポリペプチドまたはペプチド断片を検出する目的で、例えば精製タンパク質をウサギに免疫することにより、表1に記載したポリペプチドもしくはそのペプチド断片を認識するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を作製するすることもでき、またはポリペプチドもしくはペプチド断片を認識する既知の抗体を用いることもできる。例えば、変性タンパク質に結合可能なポリクローナル抗体等の抗体は、ウェスタンブロット法において本発明のペプチドを検出するために用いることができる。マーカーを測定する方法の例はELISA法である。この種のタンパク質定量化は、特定の抗原を捕獲可能な抗体および捕獲した抗原を検出可能な二次抗体に基づく。内蔵脂肪組織レベルの測定のための診断マーカーを検出するさらなる方法は、本発明のマーカーの存在または非存在について生検試料を解析することによる。これらのマーカーを検出する方法は当技術分野で周知であり、本発明のマーカーポリペプチドの存在または非存在の免疫組織化学または免疫蛍光検出が含まれるが、これらに限定されない。抗体の調製および使用法、ならびに本明細書に上記したアッセイ法は、Harlow, E.およびLane, D. Antibodies: A Laboratory Manual, (1988), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0060】
表1に記載したポリペプチドの1つを解析することにより内臓脂肪組織のレベルを正確に診断し得るが、表1に記載した複数のポリペプチドの組み合わせを解析することにより診断の精度が増す可能性がある。したがって、本明細書に上記したインビトロ法は、表1に記載した少なくとも2つのポリペプチドを含むマーカーを含む。
【0061】
内臓脂肪組織のレベルを診断するには、適切な生体試料をマーカーの存在または非存在について解析する必要がある。生体試料は、血清、血漿、または脂肪組織の細胞を含む様々な組織であってよい。脂肪組織由来の細胞は、ERCP、セクレチン刺激、細針吸引、細胞学的ブラッシング、および大口径針生検のような任意の公知の方法によって採取することができる。
【0062】
本明細書に上記したマーカーをコードする核酸分子を検出および/または測定することにより、内臓脂肪組織のレベルを診断することも可能である。核酸分子はRNAまたはDNAであることが好ましい。
【0063】
本発明の1つの態様において、本明細書に上記したインビトロ法は、内臓脂肪組織のレベルが高いことが分かっている個人におけるポリペプチドマーカーをコードする核酸の少なくとも1つの発現レベルを、内臓脂肪組織のレベルが低いかまたは正常であることが分かっている個人における同じ核酸の発現レベルと比較する段階を含む。
【0064】
本発明の別の態様において、本明細書に上記したインビトロ法は、内臓脂肪組織のレベルが高いことが分かっている個人のマーカーの発現レベルを、内臓脂肪組織のレベルが低いかまたは正常であることが分かっている個人の同じ核酸の発現レベルと比較する段階を含む。本発明のより好ましい態様において、マーカーの発現レベルの増加が代謝症候群の発症に対する感受性を示す。
【0065】
さらに本発明の別の態様において、本発明のインビトロ法は、表1に記載した1つまたは複数の遺伝子によってコードされる1つもしくは複数のタンパク質/1つもしくは複数のポリペプチドまたはその断片を検出および/または測定することによって検出および/または測定段階を行う方法を含む。また、これらの検出/測定段階は、とりわけプロテオミクス、ウェスタンブロット法、ELISA法のような免疫化学的方法等の当技術分野で公知の方法を含む。
【0066】
本発明のインビトロ法においては、表1に記載した少なくとも2つのマーカー遺伝子の発現レベルを比較することが好ましい。
【0067】
本発明の方法はまた、化合物がポリペプチドと相互作用し得る条件下でポリペプチドを1つの化合物または複数の化合物と接触させる段階;および1つの化合物または複数の化合物とポリペプチドとの間の相互作用を検出する段階を含む、内臓脂肪組織において主に発現される表1に記載したポリペプチドと相互作用する化合物を同定するおよび/または得るスクリーニング法を提供する。
【0068】
細胞表面上で細胞膜と会合する、または膜貫通ポリペプチドもしくは内在性膜(integral membrane)ポリペプチドとして発現されるポリペプチドについて、化合物とポリペプチドとの相互作用は、本ポリペプチドを正常に発現するかまたは本ポリペプチドを過剰に発現する細胞を用いる方法を含むがこれに限定されない別の方法により、例えばスクリーニングする化合物により標識した既知リガンドの置換を検出することによって検出することができる。または、膜調製品を用いて、化合物とそのようなポリペプチドとの相互作用について試験してもよい。
【0069】
本明細書に開示する方法において用いる相互作用アッセイ法には、FRETアッセイ法(蛍光共鳴エネルギー転移;とりわけNg, Science 283 (1999), 2085-2089、またはUbarretxena-Blendia, Biochem. 38 (1999), 7398-7405に記載されるような)、TR-FRET法、および本明細書に記載する生化学的アッセイ法が含まれ得る。さらに、「Amplified Luminescent Proximity Homogenous Assay(商標)」(BioSignal Packard)のような市販のアッセイ法を用いてもよい。さらなる方法は当技術分野で周知であり、とりわけFernandez, Curr. Opin. Chem. Biol. 2 (1998), 547-603に記載されている。
【0070】
「相互作用についての試験」は、当技術分野で周知であり例えば本明細書で以下に記載するホモジニアスおよびヘテロジニアスアッセイ法を含む、特異的免疫学的アッセイ法および/または生化学的アッセイ法により行ってもよい。リードアウト系を利用した相互作用アッセイ法は当技術分野で周知であり、とりわけ二重ハイブリッドスクリーニング法(とりわけ欧州特許第0 963 376号、国際公開公報第98/25947号(前記特許文献1)、国際公開公報第00/02911号に記載されるような;および添付の実施例に例証するような)、GSTプルダウンカラム法、とりわけKasus-Jacobi, Oncogene 19 (2000), 2052-2059に記載されるような細胞抽出物による共沈殿アッセイ法、「相互作用-トラップ」系(とりわけ米国特許第6,004,746号に記載されるような)、発現クローニング法(例えばλgt11)、ファージディプレイ法(とりわけ米国特許第5,541,109号に記載されるような)、インビトロ結合アッセイ法等が含まれる。さらなる相互作用アッセイ法および対応するリードアウト系は、とりわけ米国特許第5,525,490号、国際公開公報第99/51741号、国際公開公報第00/17221号、国際公開公報第00/14271号、または国際公開公報第00/05410号に記載されている。VidalおよびLegrain (1999)はNucleic Acids Research 27, 919-929において、本発明に従って用い得る当技術分野で公知のさらなる相互作用アッセイ法を概説および要約している。
【0071】
ホモジニアス(相互作用)アッセイ法は結合パートナーが溶液中に残存するアッセイ法を含み、かつ凝集アッセイ法のようなアッセイ法を含む。ヘテロジニアスアッセイ法には、とりわけ免疫アッセイ法、例えば酵素結合免疫吸着測定法(ELISA法)、放射免疫アッセイ法(RIA法)、免疫放射測定アッセイ法(IRMA法)、フローインジェクション分析法(FIA法)、フロー活性化細胞ソーティング法(Flow Activated Cell Sorting)(FACS法)、化学発光免疫アッセイ法(CLIA法)、または電解化学発光(Electrogenerated Chemiluminescent)(ECL)レポーティングのようなアッセイ法が含まれる。
【0072】
本発明はさらに、内臓脂肪組織において主に発現される表1に記載したポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストである化合物を検出するおよび/または得るスクリーニング法であって、a) 化合物がポリペプチドと相互作用し得る条件下で、ポリペプチドを上記のスクリーニング法により同定されたおよび/または得られた化合物と接触させる段階;b) ポリペプチドの活性を決定する段階;c) 化合物と接触させていない(a)で定義した宿主において発現されたポリペプチドの活性を決定する段階;ならびにd) (b)および(c)で決定した活性を定量的に関連づけ、ここで(c)と比較した(b)で決定した活性の低下がアゴニストまたはアンタゴニストであることを示唆する段階を含むスクリーニング法を提供する。本スクリーニングアッセイ法は、インビトロアッセイ法または宿主に基づくアッセイ法として行うことができる。本発明のスクリーニング法に用いられ、表1に記載したポリペプチドを含むおよび/または発現する宿主には、原核細胞および真核細胞が含まれ得る。細胞には、細菌細胞、酵母細胞、およびとりわけ哺乳動物由来の培養(組織)細胞株が含まれ得る。さらに、宿主、例えば非ヒトトランスジェニック動物として動物を使用してもよい。したがって、本明細書に開示する内臓脂肪組織において異なって調節されるポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターで、宿主(細胞)を形質移入または形質転換させてもよい。よって、そのようなポリペプチドをコードする核酸分子またはそのような核酸分子を含むベクターで、宿主細胞または宿主を遺伝子改変してよい。「遺伝子改変」という用語は、宿主細胞または宿主が、天然のゲノムに加え、表1に記載したポリペプチドをコードする核酸分子もしくはベクター、または少なくともその断片を含むことを意味する。付加する遺伝子物質は、宿主(細胞)またはその祖先/親の1つに導入してよい。核酸分子またはベクターは、遺伝子改変した宿主細胞または宿主内にゲノム外の独立した分子として、好ましくは複製可能な分子として、または宿主細胞もしくは宿主のゲノム内に安定に組み込まれて存在する可能性がある。
【0073】
好ましくは、本発明はさらに、内臓脂肪組織において主に発現される表1に収載したポリペプチドのアンタゴニストである化合物を同定および/または取得するスクリーニング法を提供する。
【0074】
本明細書に上記したように、本発明の宿主細胞は任意の原核細胞または真核細胞であってよい。適切な原核細胞は大腸菌または枯草菌のように一般にクローニングに用いられる細胞である。また、これらの原核宿主細胞は、本明細書に開示するスクリーニング法においても想定される。さらに、真核生物は例えば真菌細胞または動物細胞を含む。適切な真菌細胞の例は酵母細胞であり、好ましくはサッカロミセス属の真菌細胞、最も好ましくはサッカロミセス・セレビシエ種の真菌細胞である。適切な動物細胞は、例えば、昆虫細胞、脊椎動物細胞、好ましくは例えばCHO、HeLa、NIH3T3、またはMOLT-4等の哺乳動物細胞である。当技術分野で公知のさらなる適切な細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)のような細胞株受託所から入手可能である。
【0075】
表1に記載するポリペプチドと相互作用する、およびそのポリペプチドを阻害またはアンタゴナイズする化合物は、化合物の存在下でポリペプチドの活性を決定することにより同定される。
【0076】
本明細書で用いる「活性」という用語は、特定のポリペプチドの1つまたは複数の機能特性に関連する。酵素に関しては、「活性」という用語は特定のポリペプチドの酵素活性に関連する。接着分子に関しては、「活性」という用語はポリペプチドの接着特性に関連し、接着アッセイ法、細胞伸展アッセイ法、または接着分子の公知リガンドとのインビトロ相互作用等の、しかしこれらに限定されないアッセイ法を用いて決定し得る。細胞骨格タンパク質に関しては、「活性」という用語は、そのようなポリペプチドによる細胞骨格の調節または細胞骨格内へのそれらの取り込みに関連する。非限定的な例として、インビトロアクチン重合アッセイ法により、ゲルソリンがアクチン重合を調節する能力、またはフィラミンAがアクチンフィラメントの直交性分枝形成を促進する能力を決定してもよい。細胞骨格構造の調節と関連した活性はさらに、非限定的な例として細胞伸展アッセイ法、細胞遊走アッセイ法、細胞増殖アッセイ法、もしくは免疫蛍光アッセイ法により、または蛍光標識ファロイジンによるアクチンフィラメントの染色等により決定してもよい。イオンチャネルに関しては、「活性」という用語は膜を通したイオン流出(塩素イオン流出)に関連する。転写因子に関しては、「活性」という用語は遺伝子の転写を調節するその能力に関連する。遺伝子の転写活性は、レポーター遺伝子アッセイ法のような一般に用いられるアッセイ法により決定することができる。増殖因子およびホルモンまたはそれらの受容体に関しては、「活性」という用語は、それぞれそれらの受容体またはリガンドに結合する能力、ならびに受容体の活性化およびそれに続くシグナル伝達カスケードを誘導するその能力に関連し、ならびに/または増殖因子もしくはホルモンが介する受容体の活性化によって最終的に起こる細胞の1つまたは複数の機能を媒介する因子もしくは受容体の能力に関連する。受容体に結合する増殖因子またはホルモンは、一般に公知であるリガンド結合アッセイ法により測定決定することができる。受容体の活性化は、受容体の自己リン酸化を試験することにより、または(シグナル複合体を免疫沈降およびウェスタンブロッティングすることによって)受容体の下流のシグナルメディエーターの修飾または補充をアッセイすることにより、測定決定することができる。増殖因子またはホルモンおよびそれらの受容体により調節される細胞機能は、細胞増殖(例えばチミジン取り込みまたは細胞計測により決定する)、細胞遊走アッセイ法(例えば改良型ボイデンチャンバーを用いて決定する)、細胞生存またはアポトーシスアッセイ法(例えばDAPI染色により決定する)、血管形成アッセイ法(例えば、市販の内皮管形成を測定するインビトロアッセイ法)であってよい。これらのアッセイ法に加え、他のアッセイ法を用いてこれらおよび他の細胞機能を決定してもよい。
【0077】
本発明の方法により同定されるおよび/または得られる阻害剤、アンタゴニスト、活性化因子、またはアゴニストは、代謝症候群関連共存症の治療的管理、予防、および/または治療において特に有用である。
【0078】
表1に記載するポリペプチドの阻害剤またはアンタゴニストは、スクリーニング法において化合物の非存在下と比較して低下した活性が化合物の存在下で測定される場合に(これは阻害剤またはアンタゴニストであることを示唆する)、上記のスクリーニング法により同定され得る。
【0079】
したがって、本発明の方法により同定される、スクリーニングされる、および/または得られる潜在的阻害剤またはアンタゴニストには分子、好ましくは内臓脂肪組織に主に存在するマーカー遺伝子に結合する、そのマーカー遺伝子を妨害する、および/またはそのマーカー遺伝子上の関連部位を占有する小分子が含まれる。
【0080】
そのような阻害剤が例えばアンチセンス構築物、リボザイムのような、(機能的に)上方制御されるマーカー遺伝子または遺伝子産物の合成/産生を妨害することがさらに想定される。本発明の方法に従ってスクリーニングしかつ得ることが可能な阻害剤および/またはアンタゴニストには、とりわけペプチド、タンパク質、DNA、RNA、RNAi、PNA、リボザイムを含む核酸、抗体、小有機化合物、小分子、リガンド等が含まれる。
【0081】
したがって、異なって発現されるマーカー遺伝子の阻害剤および/またはアンタゴニストには、1つまたは複数の抗体が含まれ得る。1つまたは複数の抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含んでよい。さらに、キメラ抗体、合成抗体、および(Fab、F(ab)2、Fv、scFVのような)抗体断片、または化学的に修飾した抗体の誘導体も想定される。抗体がマーカー遺伝子もしくはその遺伝子産物に結合する、および/またはその活性を妨げることも想定される。
【0082】
さらに、本明細書に定義するマーカー遺伝子に特異的に結合する、もしくはマーカー遺伝子の活性を妨げるオリゴヌクレオチドおよび/またはアプタマーもまた、阻害剤および/またはアンタゴニストとして想定される。本発明に従って用いる「オリゴヌクレオチド」という用語はコード配列および非コード配列を含み、DNAおよびRNAを含み、ならびに/または任意の可能な誘導体も含む。「オリゴヌクレオチド」という用語はさらに、アミド骨格結合を有するDNA類似体を含むペプチド核酸(PNA)を含む(Nielson, Science 274 (1991), 1497-1500)。マーカー遺伝子活性を阻害およびアンタゴナイズする可能性があり、かつ本発明の方法により同定するおよび/または得る事が可能なオリゴヌクレオチドは、特に当技術分野で周知であり、例えばABI 394 DNA-RNAシンセサイザーのように市販されているシンセサイザーを用いて容易に化学合成することができる。さらに、〜22 ntの合成的な小さな干渉dsRNA(siRNA)を遺伝子発現の抑制に用いてもよい。
【0083】
先に開示したスクリーニング法に加えて、本発明は、a) ポリペプチドを発現する宿主を化合物と接触させる段階;b) ポリペプチドの発現レベルおよび/または活性を決定する段階;c) 化合物と接触させていない(a)で定義した宿主におけるポリペプチドの発現レベルおよび/または活性を決定する段階;ならびにd) (b)および(c)で決定したポリペプチドの発現レベルを定量的に関連づける段階であって、(c)と比較した(b)で決定した発現レベルの低下がポリペプチドの発現の阻害剤であることを示唆する段階を含む、内臓脂肪組織において主に発現される表1に記載したポリペプチドの発現の阻害剤である化合物を同定するおよび/または得るスクリーニング法を提供する。
【0084】
表1に記載するポリペプチドの発現の阻害剤は、スクリーニング法において化合物の非存在下と比較して低下した発現が化合物の存在下で測定された場合に(これはポリペプチドの発現の阻害剤であることを示唆する)、本明細書に上記したスクリーニング法により同定され得る。
【0085】
本明細書で用いる「発現する」という用語は、内臓脂肪組織において主に発現される表1に記載したポリペプチドの発現レベルに関連する。発現レベルは、例えば皮下脂肪組織細胞よりも、内臓脂肪組織細胞において好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくと3倍、さらにより好ましくは少なくとも4倍、および最も好ましくは少なくとも5倍高い。
【0086】
さらに本発明は、本明細書で上記した任意のスクリーニング法により同定されるおよび/または得られる化合物を提供する。化合物は薬学的組成物中にさらに含まれ、任意の従来の担体物質を用いることができる。担体物質は、経腸、経皮、もしくは非経口投与に適した有機または無機の担体物質であってよい。適切な担体には、水、ゼラチン、アラビアゴム、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物性油脂、ポリアルキレングリコール、ワセリン等が含まれる。さらに、薬学的調製物は他の薬学的に活性のある薬剤を含んでもよい。香味剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤等のさらなる添加剤も、薬学的調合の慣例に従い添加してよい。
【0087】
本化合物を、代謝症候群を治療または予防する薬剤を調製するために用いることができる。さらに、本化合物は内臓脂肪組織のレベルを診断する診断組成物を調製するためにも用いることができる。好ましくは、本化合物は、抗体、抗体誘導体、抗体断片、ペプチド、またはアンチセンス構築物を含む。
【0088】
本発明の範囲内で、表1に記載したタンパク質に対する抗体またはその抗原結合断片を、内臓脂肪組織のレベルを測定するためのインビトロ法において用いることができる。
【0089】
診断スクリーニングを効率的に行うため、本発明は、上記の1つもしくは複数の抗体またはその抗原結合断片を含む、患者における内臓脂肪組織のレベルを診断するキットを提供する。本発明が提供する別のキットは、本明細書に上記したマーカーをコードする1つまたは複数の核酸を含む、患者における内臓脂肪組織のレベルを診断するキットである。本発明が提供するさらに別のキットは、表1に記載した任意のポリペプチドをアゴナイズもしくはアンタゴナイズする、または任意のポリペプチドの発現を阻害する化合物をスクリーニングするキットである。
【0090】
本明細書に上記したように、阻害剤および/またはアンタゴニストは小分子を含んでもよい。しかし、小分子はまた、本明細書に開示する方法により活性化因子またはアゴニストとしても同定され得る。「小分子」という用語は、小ペプチド、無機および/もしくは有機の物質、またはDアミノ酸を含むペプチド類似体のようなペプチド様分子に関連するが、これらに限定されない。
【0091】
さらに、本発明の方法において試験する候補化合物を得るために、ペプチド模倣体、および/または適切なアンタゴニスト、阻害剤、アゴニスト、もしくは活性化因子のコンピューターを利用した設計を用いてもよい。例えばタンパク質およびペプチドのコンピューターを利用した設計のための適切なコンピューターシステムは、先行技術において、例えばBerry, Biochem. Soc. Trans. 22 (1994), 1033-1036;Wodak, Ann. N.Y. Acad. Sci. 501 (1987), 1-13;Pabo, Biochemistry 25 (1986), 5987-5991に記載されている。例えば、公知の化合物、物質、または分子を最適化するために、上記のコンピューター解析により得られた結果を本発明の方法と併せて使用することができる。適切な化合物は、一連の化学修飾によりペプチド模倣体コンビナトリアルライブラリーを合成し、得られた化合物を例えば本明細書に記載の方法に従って試験することにより同定することもできる。ペプチド模倣体コンビナトリアルライブラリーを作製および使用する方法は、先行技術において、例えばOstresh, Methods in Enzymology 267 (1996), 220-234、およびDorner, Bioorg. Med. Chem. 4 (1996), 709-715に記載されている。さらに、本発明の方法において試験するペプチド模倣体阻害剤、アンタゴニスト、アゴニスト、または活性化因子を設計するために、本発明のマーカーの、または発現されたマーカーをコードする核酸分子の阻害剤、アンタゴニスト、アゴニスト、または活性化因子の三次元構造および/または結晶構造を用いることができる(Rose, Biochemistry 35 (1996), 12933-12944;Rutenber, Bioorg. Med. Chem. 4 (1996), 1545-1558)。
【0092】
本発明の1つのまたは複数の方法を用いてスクリーニングする化合物は、単一の単離された化合物を含むだけではない。本発明の方法により化合物の混合物をスクリーニングすることも想定される。とりわけ原核細胞もしくは真核細胞または生物体由来の細胞抽出物のような、抽出物を使用することも可能である。
【0093】
さらに、本発明の方法により同定または精製された化合物をリード化合物として使用して作用部位、活性スペクトル、器官特異性の改変、および/または作用強度の改良、および/または毒性の低減(治療係数の改良)、および/または副作用の低減、および/または治療効果の開始、効果の持続の改変、および/または薬物動態学的パラメータ(再吸収、分布、代謝、および排出)の改変、および/または物理化学的パラメータ(溶解性、吸湿性、色、味、匂い、安定性、状態)の改変、および/または一般的特異性、器官/組織特異性の改良、および/または適用形式の最適化を達成することができ、カルボキシル基のエステル化、または水酸基と炭素酸とのエステル化、または例えばリン酸、ピロリン酸、もしくは硫酸、もしくはヘミコハク酸への水酸基のエステル化、または薬学的に許容される塩の形成、または薬学的に許容される複合体の形成、または薬理学的に活性のある重合体の合成、または親水性成分の導入、またはアロメート(aromate)もしくは側鎖における置換基の導入/交換、置換基パターンの変更、または等価性もしくは生物学的等価性成分の導入による改変、または同族化合物の合成、または分枝側鎖の導入、またはアルキル置換基の環状類似体への変換、または水酸基のケタール、アセタールへの誘導体化、またはアミド、フェニルカルバメートのN-アセチル化、またはマンニッヒ(Mannich)塩基、イミンの合成、またはケトンもしくはアルデヒドのシッフ塩基、オキシム、アセタール、ケタール、エノールエステル、オキサゾリジン、チオゾリジン、もしくはそれらの組み合わせへの変質により、経路を変更してもよい。
【0094】
さらに本発明は、患者における内臓脂肪組織のレベルを診断する診断組成物を調製するための、本明細書に開示する方法により得られる1つまたは複数の化合物の使用を提供する。例えば、そのような診断組成物中に、本明細書に開示する異なって発現されるマーカー遺伝子産物を特異的に検出もしくは認識する特異的抗体、その断片、またはその誘導体を使用することが想定される。さらに、診断組成物中に、本発明のマーカー遺伝子を検出および/または増幅する特異的プライマー/プライマー対を使用してもよい。
【0095】
したがって、薬学的組成物および診断組成物において用いる化合物は、抗体、抗体誘導体、抗体断片、ペプチド、またはプライマー/プライマー対、およびアンチセンス構築物、RNAi、もしくはリボザイムのような核酸を含んでよい。したがって、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択される、少なくとも1つのタンパク質に対する少なくとも1つの抗体もしくはその抗原結合断片、または少なくとも1つのタンパク質、タンパク質断片、もしくはペプチドの治療上有効な量を、代謝症候群を治療するための医用薬剤の調製に用いることができる。
【0096】
診断組成物はまた、当技術分野で公知の適切な検出手段を含んでよい。
【0097】
本発明はまた、内臓脂肪組織の蓄積の診断におけるマーカーとしての、配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、および37の核酸からなる群より選択される核酸の使用;ならびに内臓脂肪組織の蓄積の診断におけるマーカーとしての、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38のタンパク質からなる群より選択されるポリペプチドの使用も提供する。
【0098】
以下の生物学的実施例を参照することにより本発明をさらに説明するが、以下の実施例は単に説明するためのものであり、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0099】
実施例
Ultraspec(登録商標)RNA(Biotecx、テキサス州、ヒューストン)を用い製造業者の手順に従って全RNAを抽出し、DNase処理と共にRNAeasyミニキット(Qiagen、カリフォルニア州、バレンシア)を用いて精製した。T7-T24プライマーを用いて、SuperScript(商標)二本鎖cDNA合成キット(Life Technology、メリーランド州、ロックビル)により全RNA 10ugから二本鎖cDNAを合成した。フェーズロックゲル(phase lock gel)(Eppendorf、ニューヨーク州、ウェストベリー)を用いて、フェノール/クロロホルム/イソアミル抽出により二本鎖cDNA産物を精製した。インビトロ転写(IVT)MEGAscript(商標)T7キット(Ambion 、テキサス州、オースティン)を用いて二本鎖cDNAをさらにcRNAに変換し、ビオチン化ヌクレオチド1で標識した。RNAeasyミニキット(Qiagen、カリフォルニア州、バレンシア)を用いてインビトロ転写産物を精製し、記載されているように断片化した(Wodicka L, Dong H, Mittmann M, Ho MH, Lockhart DJ. Genome-wide expression monitoring in Saccharomyces cerevisiae. Nat Biotechnol 1997;15:1359-67)。製造業者(Affymetrix、カリフォルニア州、サンタクララ)が推奨するように、断片化したインビトロ転写産物のヒトゲノムU95(HG-U95)Genechip(登録商標)アレイセットへのハイブリダイゼーションを行った。
【0100】
統計的手法
数値解析はすべて、AffymetrixのMASアルゴリズム(Affymetrix Technical Note:New Statistical Algorithms for Monitoring Gene Expression on GeneChip(登録商標) Probe Arrays (2001))によって報告されるようにシグナル強度について行った。実験におけるすべてのチップの全体的平均値に対してチップをそれぞれ標準化した。遺伝子は別々に標準化しなかった。
【0101】
データの解析は、BMI、由来組織(皮下 対 内臓脂肪)、インスリン抵抗性(HOMAにより測定)、空腹時血糖値、空腹時インスリン値、ならびに由来組織とそれぞれ空腹時血糖値、空腹時インスリン値、およびインスリン抵抗性との相互関係の因子を用いて、線形モデルとして構成した(Draper N., Smith H. Applied Regression Analysis, 第2版、John Wiley and Sons. ニューヨーク州、ニューヨーク(1966);Searle S.R. Linear Models, John Wiley and Sons ニューヨーク州、ニューヨーク(1971))。計算はSASバージョン8.1を用いて行った。モデルの方程式は以下のとおりである:
シグナル強度=BMI+組織+IR+血糖値+インスリン値+組織*IR+組織*血糖値+組織*インスリン値+誤差
【0102】
次に本モデルを用いて、9つの統計的検定(対比)を行った。1) 内臓脂肪における影響;2) 皮下脂肪における影響;3) 内臓脂肪と皮下脂肪との間の異なる影響。これらの3つの検定はそれぞれ、最終的に9つの検定となった3つの相互関係項を用いて行った。
【0103】
次に、モデル計算および統計的対比の結果をフィルターにかけ、最終的に関心対象の遺伝子を得た。有意性は、モデル全体に関しては0.001未満のP値、および特定の対比に関しては0.01未満のP値として定義した。真の陽性の大部分を見出しつつ偽陽性を制御するために、P値のカットオフ値を選択した(Sokal R.R., Rohlf F.J., Biometry, W.H. Freeman and Company. ニューヨーク州、ニューヨーク(1969))。
【0104】
最終的に、Affymetorixの提供するGenbankアクセッション番号をそのようなアクセッション番号に対するUnigene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=unigene)およびLocusLink(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/LocusLink/)の注釈に連関させ、遺伝子を注釈付けした。
【0105】
上記明細書を通して考察した参考文献はすべて、それらが含む主題に関してその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0106】
当然のことながら、上記は本発明の好ましい態様に関連するものであること、ならびに特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更が行われ得ることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図2】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図3】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図4】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図5】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図6】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図7】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図8】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図9】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図10】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図11】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図12】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図13】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図14】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図15】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図16】Affymetrix解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図17】STEP解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。
【図18】STEP解析により内臓および皮下の脂肪組織で測定した、RNAの様々な脂肪レベルに関する目盛り付けした強度 対 インスリン抵抗性の対数のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を得る段階;ならびに
配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含むポリペプチドマーカーのレベルを検出または測定する段階
を含む、内臓脂肪組織のレベルを測定する方法。
【請求項2】
生体試料中の、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドを含むポリペプチドマーカーのレベルを検出または測定する段階を含む、内臓脂肪組織のレベルを測定する方法。
【請求項3】
ポリペプチドマーカーが少なくとも2つのポリペプチドを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
生体試料が血清、血漿、および内臓脂肪組織の細胞からなる群に由来する、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
内臓脂肪組織のレベルが高いことが分かっている個人のポリペプチドマーカーのレベルを、内臓脂肪組織のレベルが低いかまたは正常であることが分かっている個人の同じポリペプチドマーカーの発現レベルと比較する、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
経時的なポリペプチドマーカーのレベルの増加が代謝症候群または代謝症候群に対する感受性を示す、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
生体試料を得る段階;ならびに
配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、および37の核酸分子からなる群より選択される少なくとも1つの核酸分子を含む核酸マーカーのレベルを検出または測定する段階
を含む、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定する方法。
【請求項8】
生体試料中の、配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、および37の核酸分子からなる群より選択される少なくとも1つの核酸分子を含む核酸マーカーのレベルを検出または測定する段階
を含む、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定する方法。
【請求項9】
核酸マーカーがRNAである、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
内臓脂肪組織のレベルが高いことが分かっている個人の核酸マーカーの発現レベルを、内臓脂肪組織のレベルが低いかまたは正常であることが分かっている個人の同じポリペプチドマーカーの発現レベルと比較する、請求項7〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
経時的な核酸マーカーの発現レベルの増加が代謝症候群または代謝症候群に対する感受性を示す、請求項7〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
以下の段階を含む、内臓脂肪組織において主に発現され、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドと相互作用する化合物を同定するスクリーニング法:
化合物がポリペプチドと相互作用し得る条件下で該ポリペプチドを1つの化合物または複数の化合物と接触させる段階;ならびに
1つの化合物または複数の化合物と該ポリペプチドとの相互作用を検出する段階。
【請求項13】
以下の段階を含む、内臓脂肪組織において主に発現され、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストである化合物を同定するスクリーニング法:
化合物がポリペプチドと相互作用し得る条件下で該ポリペプチドを化合物と接触させる段階;
該ポリペプチドの第1の活性レベルを決定する段階;
化合物と接触させていない宿主で発現させた該ポリペプチドの第2の活性レベルを決定する段階;ならびに
第1の活性レベルを第2の活性レベルと定量的に関連づける段階であって、第1の活性レベルが第2の活性レベルよりも低い場合に化合物を該ポリペプチドのアンタゴニストであると同定する段階。
【請求項14】
内臓脂肪組織において主に発現され、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドの発現の阻害剤である化合物を同定するスクリーニング法:
該ポリペプチドを発現する宿主を化合物と接触させる段階;
該ポリペプチドの第1の発現レベルまたは活性を決定する段階;
化合物と接触させていない宿主における該ポリペプチドの第2の発現レベルまたは活性を決定する段階;および
第1の発現レベルまたは活性を第2の発現レベルまたは活性と定量的に関連づける段階であって、第1の発現レベルまたは活性が第2の発現レベルまたは活性よりも低い場合に化合物を該ポリペプチドの発現の阻害剤であると同定する段階。
【請求項15】
内臓脂肪組織のレベルを測定するインビトロ法で使用するための、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択されるタンパク質に対する抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項16】
配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質を選択する段階;
哺乳動物において該1つまたは複数のタンパク質のレベルを決定する段階;ならびに
内臓脂肪組織の基礎レベルを示唆する指数Yを作成する段階
を含む、哺乳動物のタンパク質レベルを内臓脂肪組織のレベルの診断と関連づける方法。
【請求項17】
指数Yを特定レベルの内臓脂肪組織を有することが分かっている対象の指数と比較する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
指数Yを経時的にモニタリングして内臓脂肪組織のレベルの進行を決定し、それにより代謝症候群の発症に対する感受性を予測する段階をさらに含む、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
請求項13記載の1つもしくは複数の抗体またはその抗原結合断片を含む、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定するためのキット。
【請求項20】
請求項1記載のポリペプチドマーカーをコードする1つまたは複数の核酸を含む、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定するためのキット。
【請求項21】
配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドを活性化もしくは阻害する、または該ポリペプチドのいずれかの発現を促進もしくは阻害する化合物をスクリーニングするためのキット。
【請求項22】
1つまたは複数のタンパク質の抗体を産生させる段階;
該タンパク質の血清レベルを検出する段階;および
該血清レベルを特定レベルの内臓脂肪組織を有することが分かっている対象の血清レベルと比較する段階
を含む、1つまたは複数のタンパク質の血清レベルをモニタリングし、対象の内臓脂肪組織のレベルを測定する方法。
【請求項23】
代謝症候群を治療する医用薬剤を調製するための、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択される、少なくとも1つのタンパク質に対する少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片の治療上有効な量の使用。
【請求項24】
代謝症候群を治療する医用薬剤を調製するための、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38を有するタンパク質からなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質、タンパク質断片、またはペプチドの治療上有効な量の使用。
【請求項25】
内臓脂肪組織の蓄積の診断におけるマーカーとしての、配列番号:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、および37の核酸からなる群より選択される核酸の使用。
【請求項26】
内臓脂肪組織の蓄積の診断におけるマーカーとしての、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、および38のタンパク質からなる群より選択されるポリペプチドの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−275629(P2008−275629A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127774(P2008−127774)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【分割の表示】特願2004−335869(P2004−335869)の分割
【原出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】