説明

代謝症候群を処置するための医薬組成物

本発明は、少なくとも1つの代謝症候群及び/又はアテローム性硬化症、特に糖尿病、脂質異常症、肥満及び/又は脂肪過多症の処置のための、少なくとも1つのFGF−21(線維芽細胞増殖因子21)化合物、少なくとも1つのGLP−1R(グルカゴン様ペプチド−1受容体)アゴニスト、並びに場合により少なくとも1つの抗糖尿病薬及び/又は少なくとも1つのDPP−4(ジペプチジルペプチダーゼ−4)阻害剤を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのFGF−21(線維芽細胞増殖因子21)化合物、少なくとも1つのGLP−1R(グルカゴン様ペプチド−1受容体)アゴニスト、並びに場合により少なくとも1つの抗糖尿病薬及び/又は少なくとも1つのDPP−4(ジペプチジルペプチダーゼ−4)阻害剤を含む、少なくとも1つの代謝症候群及び/又はアテローム性硬化症、特に糖尿病、脂質異常症、肥満及び/又は脂肪過多症の処置のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病はその臨床症状により特徴付けられ、すなわち2型糖尿病としても知られる非インスリン依存性又は成人発症型の形態、及び1型糖尿病としても知られるインスリン依存性又は若年発症型の形態である。2型糖尿病及び根底にある肥満の臨床症状の顕在化は、通常40歳を超えた年齢で現れる。対照的に、1型糖尿病は、通常しばしば30歳前に疾患の急速な開始を示す。この疾患はヒトにおける代謝障害であり、一般集団において約1パーセントの有病率を有し、これらの四分の一は1型糖尿病であり、そしてこれらの四分の三は2型糖尿病である。2型糖尿病は、循環血糖、インスリン及びコルチコステロイドの高いレベルを特徴とする疾患である。
【0003】
現在では、2型糖尿病の処置のための様々な薬理学的アプローチがあり、これらは個別に利用されても、組み合わせて利用されてもよく、そして異なる作用様式で作用する:
1) スルホニルウレアはインスリン分泌を刺激する;
2) ビグアニド類(メトホルミン)は、グルコース利用を促進し、肝臓のグルコース産生を低減し、そして腸のグルコース排出を減少させることにより作用する;
3) oc−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース、ミグリトール)は、炭水化物消化を減速させ、そして結果として腸からの吸収を減速させて食後高血糖を低減する;
4) チアゾリジンジオン類(トログリタゾン)はインスリン作用を増強し、それ故末梢組織におけるグルコース利用を促進させる;及び
5) インスリンは組織グルコース利用を刺激し、そして肝臓グルコース排出を抑制する。
【0004】
しかし、薬物の大部分は限定された有効性を有し、最も重要な問題、低下したβ−細胞機能及び関連する肥満に対応していない。
【0005】
肥満は、現代社会に非常に多く広まった慢性疾患であり、糖尿病、インスリン抵抗性、高血圧、高コレステロール血症、及び冠動脈心疾患を含む多数の医学的問題に関連している。糖尿病及びインスリン抵抗性とはさらに高度に相関しており、これらのうち後者は、一般的に高インスリン血症又は高血糖、又はその両方を伴う。さらに、2型糖尿病は、冠動脈疾患の2〜4倍の危険性と関連する。
【0006】
1型糖尿病は、グルカゴンの上昇と共に非常に低いか計れないほどの血漿インスリンを特徴的に示す。β−細胞がインスリンを分泌するので、β−細胞に特異的に向けられた免疫応答は1型糖尿病をもたらす。
【0007】
1型糖尿病のための現在の治療法は、天然インスリンの欠乏から生じる高血糖を最少にしようとする。
【0008】
線維芽細胞増殖因子21(FGF21)は、主に肝臓により産生される新しい代謝調節因子であり、肥満及び2型糖尿病の動物モデルにおいて強力な抗糖尿病及び脂質低下の効果をもたらす。このホルモンは体重調節に寄与し、そしてマウスにおける栄養欠乏に対する応答及びケトン体生成状態に関与する。FGF21の代謝作用の主要部位は脂肪組織、肝臓及び膵臓である。実験研究は、糖尿病のマウス及び霊長類におけるFGF21投与後の糖尿病補償及び脂質異常症における改善を示した(Dostalovaら、2009年)。FGF21は、インスリンの存在下及び存在しない場合にマウス3T3−L1脂肪細胞におけるグルコース取り込みを刺激し、そしてob/ob及びdb/dbマウス並びに8週齢(olf)ZDFラットにおいて用量依存性の様式で食後及び空腹時の血中グルコース、トリグリセリド、及びグルカゴンのレベルを減少させることが示されており、従って糖尿病及び肥満を処置するための治療としてのFGF−21の使用についての基礎を提供する(例えば特許文献1を参照のこと)。
【0009】
線維芽細胞増殖因子(FGF)は、発達する組織及び成体組織において広く発現されるポリペプチドである。FGFファミリーは現在FGF−1〜FGF−23の22のメンバーからなる。FGFファミリーのメンバーは、脊椎動物種間で遺伝子構造及びアミノ酸配列の両方において高度に保存されている。18の哺乳動物線維芽細胞増殖因子があり(FGF1〜FGF10及びFGF16〜FGF23)、これらは配列相同性及び系統発生における差異に基づいて6つのサブファミリーにグループ分けされる。サブファミリーに割り当てられていない番号付けされた「FGF」 − FGF相同因子(以前にFGF11〜FGF14として知られる) − は、FGFファミリーと高い配列同一性を有するが、FGF受容体(FGFR)を活性化せず、従って一般的にはFGFファミリーのメンバーとはみなされない。
【0010】
大部分のFGFは細胞増殖及び分化の局所的調節因子として作用するが、最近の研究は、FGF15/19、FGF21及びFGF23を含むFGF19サブファミリーメンバーが内分泌様式で重要な代謝効果を及ぼすということを示した。FGF19サブファミリーのメンバーは、古典的なFGFにより影響を受けない様々な生理的プロセスを調節する。これらの内分泌因子の多種多様な代謝活性には、胆汁酸、炭水化物及び脂質代謝、さらにはリン酸、カルシウム及びビタミンDのホメオスタシスの調節が含まれる(Tomlinsonら2002年、Holtら2003年、Shimadaら2004年、Kharitonenkovら2005年、Inagakiら2005年、Lundasenら2006年)。
【0011】
FGF21は最初はマウス胎芽から単離された。FGF21 mRNAは肝臓において最も豊富に発現され、そしてより少ない程度で胸腺において発現された(Nishimuraら2000年)。ヒトFGF21はマウスFGF21に対して高度に同一である(約75%のアミノ酸同一性)。ヒトFGFファミリーメンバーの中で、FGF21はFGF19と最も類似している(約35%のアミノ酸同一性)(Nishimuraら2000年)。FGF21は増殖作用及び腫瘍形成性作用がなく(Kharitonenkovら2005年、Huangら2006年、Wenteら2006年)、これはFGFファミリーのメンバーの大部分に典型的である(Ornitz及びItoh2001年、Nicholesら2002年、Eswarakumarら2005年)。
【0012】
肥満レプチン欠損ob/obマウス及びレプチン受容体欠損db/dbマウス並びに肥満ZDFラットへのFGF21の投与は、血中グルコース及びトリグリセリドを有意に低下させ、空腹時インスリンレベルを減少させ、そして経口グルコース負荷試験の間のグルコースクリアランスを改善した。FGF21は、2週間の投与の間、糖尿病又は痩せたマウス及びラットの食物摂取にも体重/組成にも影響を及ぼさなかった。重要なことには、FGF21は、糖尿病若しくは健常な動物において、又はトランスジェニックマウスにおいて過剰発現された場合に試験されたいずれの用量でも、分裂促進も、低血糖も、体重増加も誘導しなかった(Kharitonenkovら2005年)。FGF21−過剰発現トランスジェニックマウスは食餌誘導肥満に対して抵抗性であった。
【0013】
糖尿病アカゲザルに対するFGF21の6週間の投与は、空腹時血漿グルコース、フルクトサミン、トリグリセリド、インスリン及びグルカゴンのレベルを減少させた。重要なことには、有意なグルコース低下効果にもかかわらず、研究の間に低血糖が観察されなかった。FGF21投与はまた、LDL−コレステロールを有意に低下させ、そしてHDL−コレステロールを増加させ、そしてマウス(Kharitonenkovら2005年)と対照的に、わずかではあるが有意に体重を減少させた(Kharitonenkovら2007年)。
【0014】
さらなる情報は以下の参考文献から得ることができる:
1.非特許文献1
2.非特許文献2
3.非特許文献3
4.非特許文献4
5.非特許文献5
6.非特許文献6
7.非特許文献7
8.非特許文献8
9.非特許文献9
10.非特許文献10
11.非特許文献11
12.非特許文献12
13.非特許文献13
14.非特許文献14
【0015】
消化管ペプチドのグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)はインクレチンホルモンであり、そして栄養依存性様式で分泌される。これはグルコース依存性インスリン分泌を刺激する。GLP−1はまたβ−細胞増殖を促進し、そしてグルコースセンサーに対するさらなる作用、胃排出の抑制、食物摂取及びグルカゴン分泌を介して血糖症を制御する。さらに、GLP−1は2型糖尿病を有するヒト被験体においてインスリン分泌を刺激し、そして血中グルコースを減少させる。生理的食後レベルの約3〜4倍に血漿濃度を上昇させる用量での生物活性GLP−1、GLP−1(7−27)又はGLP−1(7−36アミド)の外因的投与は、2型糖尿病患者における空腹時高血糖を完全に正常化する(非特許文献15)。ヒトGLP−1受容体(GLP−1R)は、膵島、腎臓、肺、心臓並びに末梢及び中枢神経系の多数の領域において広く発現される、463個のアミノ酸のヘプタヘリカルGタンパク質共役受容体である。島内で、GLP−1Rは主に島β−細胞に局在化している。GLP−1Rシグナル伝達の活性化は、より内分泌様の表現型への分化、特にヒトの島に由来する前駆細胞の機能的β−細胞への分化のプログラムを開始する(非特許文献16)。
【0016】
残念ながら、FGF−21及び生物活性GLP−1の両方とも、さらには他の公知の薬物は2型糖尿病又は他(othe)の代謝障害において観察され得る複雑で多因子性の代謝機能不全に対してそれ自体では限られた有効性を有する。このことは、上記の化合物自体で血中グルコースレベルを低下させる際の有効性にも当てはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO03/011213
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】DOSTALOVA I.et al.:Fibroblast Growth Factor 21:A Novel Metabolic Regulator With Potential Therapeutic Properties in Obesity/Type 2 Diabetes Mellitus.Physiol Res 58:1−7,2009
【非特許文献2】ESWARAKUMAR V.P.et al.:Cellular signaling by fibroblast growth factor receptors.Cytokine Growth Factor Rev 16:139−149,2005
【非特許文献3】HOLT J.A.et al.:Definition of a novel growth factor−dependent signal cascade for the suppression of bile acid biosynthesis.Genes Dev 17:1581−1591,2003
【非特許文献4】HUANG X.et al.:Forced expression of hepatocytespecific fibroblast growth factor 21 delays initiation of chemically induced hepatocarcinogenesis.Mol Carcinog 45:934−942,2006
【非特許文献5】INAGAKI T.et al.:Endocrine regulation of the fasting response by PPARα−mediated induction of fibroblast growth factor 21.Cell Metab 5:415−425,2007
【非特許文献6】KHARITONENKOV A.et al.:FGF−21 as a novel metabolic regulator.J Clin Invest 115:1627−1635,2005
【非特許文献7】KHARITONENKOV A.et al.:The metabolic state of diabetic monkeys is regulated by fibroblast growth factor−21.Endocrinology 148:774−781,2007
【非特許文献8】LUNDÅSEN T.et al.:Circulating intestinal fibroblast growth factor 19 has a pronounced diurnal variation and modulates hepatic bile acid synthesis in man.J Intern Med 260:530−536,2006
【非特許文献9】NICHOLES K.et al.:A mouse model of hepatocellular carcinoma:ectopic expression of fibroblast growth factor 19 in skeletal muscle of transgenic mice.Am J Pathol 160:2295−2307,2002
【非特許文献10】NISHIMURA T.et al.:Identification of a novel FGF,FGF−21,preferentially expressed in the liver.Biochim Biophys Acta 1492:203−206,2000
【非特許文献11】ORNITZ D.M.et al.:Fibroblast growth factors.Genome Biol 2:REVIEWS3005,2001
【非特許文献12】SHIMADA T.et al.:FGF−23 is a potent regulator of vitamin D metabolism and phosphate homeostasis.J Bone Miner Res 19:429−435,2004
【非特許文献13】TOMLINSON E.et al.:Transgenic mice expressing human fibroblast growth factor−19 display increased metabolic rate and decreased adiposity.Endocrinology 143:1741−1747,2002
【非特許文献14】WENTE W.et al.:Fibroblast growth factor−21 improves pancreatic beta−cell function and survival by activation of extracellular signal−regulated kinase 1/2 and Akt signaling pathways.Diabetes 55:2470−2478,2006
【非特許文献15】Nauck,M.A.et al.(1997) Exp Clin Endocrinol Diabetes,105,187−197
【非特許文献16】Drucker,D.J.(2006) Cell Metabolism,3,153−165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明によれば、驚くべきことに、FGF−21とGLP−1Rアゴニストとの組み合わせが、相乗的様式で血中グルコースレベルを正常血糖レベルまで有意に低下させるということが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、本発明の一実施態様は、少なくとも1つのFGF−21(線維芽細胞増殖因子21)化合物及び少なくとも1つのGLP−1R(グルカゴン様ペプチド−1受容体)アゴニストを含む医薬組成物に関する。
【0021】
「FGF−21化合物」は、FGF−21活性を示す化合物、特に(i) ネイティブFGF−21、特にヒトFGF−21、特に配列番号1で示されるヒトFGF−21、又は(ii) FGF−21活性を有するFGF−21模倣物を含む化合物として定義される。
【0022】
「FGF−21活性」は、当業者に一般的に知られているFGF−21活性アッセイで通常測定される。FGF−21活性アッセイは、例えばKharitonenkov,A.et al.(2005),115;1627,No.6に記載される「グルコース取り込みアッセイ」である。グルコース取り込みアッセイについての例として、脂肪細胞をDMEM/0.1%BSA中で3時間飢餓状態にし、FGF−21を用いて24時間刺激し、そしてKRP緩衝液(15mM HEPES、pH7.4、118mM NaCl、4.8mM KCl、1.2mM MgSO4、1.3mM CaCl2、1.2mM KH2PO4、0.1%BSA)で2回洗浄し、そして2−デオキシ−D−[14C]グルコース(2−DOG)(0.1μCi、100μM)を含有するKRP緩衝液100μlを各ウェルに加える。コントロールウェルは非特異性をモニタリングするために2−DOGを含むKRP緩衝液(0.1μCi、10mM)100μlを含む。取り込み反応を1時間37℃で行い、サイトカラシンB(20μM)を加えて終結させ、そしてWallac1450 MicroBetaカウンター(PerkinElmer、USA)を使用して測定する。
【0023】
FGF−21模倣物の例は、(a) 配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約96%、特に99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつFGF−21活性を有するタンパク質、(b) FGF−21融合タンパク質、又は(c) FGF−21接合体、例えばFGF−21ムテイン、FGF−21−Fc融合タンパク質、FGF−21−HSA融合タンパク質若しくはPEG化FGF−21である。
【0024】
FGF−21ムテインの例は、例えばWO2005/061712、WO2006/028595、WO2006/028714、WO2006/065582又はWO2008/121563に記載される。例となるムテインは、例えば酵母で発現された場合に、野生型ヒトFGF−21と比較してO−グリコシル化の減少した能力を有するムテインであり、例えば位置167(セリン)に置換を有するヒトFGF−21、例えば以下の置換のうち1つを有するヒトFGF−21である:Ser167Ala、Ser167Glu、Ser167Asp、Ser167Asn、Ser167Gln、Ser167Gly、Ser167Val、Ser167His、Ser167Lys又はSer167Tyr。別の例は、野生型ヒトFGF−21と比較して減少した脱アミドを示すムテインであり、例えばヒトFGF−21の位置121(アスパラギン)に置換を有するムテイン、例えばAsn121Ala、Asn121Val、Asn121Ser、Asn121Asp又はAsn121Gluである。代替のムテインは、1つ又はそれ以上の天然でコードされないアミノ酸を有するヒトFGF−21であり、例えばWO2008/121563の請求項29において一般式で記載されるものである。他のムテインは、例えば極性であるが非荷電のアミノ酸又は荷電したアミノ酸の、それぞれ荷電したアミノ酸(例えばアスパルテート、グルタメート)又は極性であるが非荷電のアミノ酸(例えばセリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン)での置換を含む。例は、Leu139Glu、Ala145Glu、Leu146Glu、Ile152Glu、Gln156Glu、Ser163Glu、Ile152Glu、Ser163Glu又はGln54GIuである。別のムテインは、例えば酵母で発現された場合にヒトFGF−21と比較してタンパク質分解に対する減少した感受性を示すムテイン、特にGIy、Ala、Val、Pro、Phe、Tyr、Trp、Ser、Thr、Asn、Asp、GIn、GIu、Cys又はMetから選択されるアミノ酸でのLeu153の置換を含むヒトFGF−21である。好ましいFGF−21ムテインは、配列番号2に従う変異FGF−21であり、これはヒトFGF−21(配列番号1)のアミノ酸1〜28の欠失を有し、そしてN末端に追加のグリシンを含む。
【0025】
FGF−21融合タンパク質の例は、例えばWO2004/110472又はWO2005/113606に記載され、例えばFGF−21−Fc融合タンパク質又はFGF−21−HAS融合タンパク質である。「Fc」は免疫グロブリンのFc部分、例えばIgG4のFc部分を意味する。「HSA」はヒト血清アルブミンを意味する。
【0026】
FGF−21接合体の例は、例えばWO2005/091944、WO2006/050247又はWO2009/089396に記載され、例えばグリコール連結FGF−21化合物である。このようなグリコール連結FGF21化合物は、通常ポリエチレングリコール(PEG)を、例えばシステイン若しくはリジンアミノ酸残基に有するか、又は導入されたN連結若しくはO連結グリコシル化部位に有する(本明細書では「PEG化FGF−21」と呼ぶ)。このようなPEG化FGF−21化合物は、一般的にヒトFGF−21と比較して延長された作用時間を示す。適切なPEGは約20,000〜40,000ダルトンの分子量を有する。
【0027】
「GLP−1Rアゴニスト」は、GLP−1(グルカゴン様ペプチド1)のような、GLP−1受容体に結合して活性化する化合物として定義される。GLP−1及び/又はGLP−1Rアゴニストの生理学的作用は、例えばNauck、M.A.et al.(1997)Exp.Clin.Endocrinol.Diabetes、105、187−195に記載される。正常被験体、特にヒトにおけるこれらの生理学的作用としては、例えばインスリン分泌のグルコース依存性刺激、グルカゴン分泌の抑制、(プロ)インスリン生合成の刺激、食物摂取の低減、胃排出の減速、及び/又は不定(equivocal)インスリン感受性が挙げられる。
【0028】
GLP−1Rアゴニストを発見するための適切なアッセイは、例えばThorkildsen、Chr.et al.(2003)、Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics、307、490−496;Knudsen、L.B.et al.(2007)、PNAS、104、937−942、No.3;Chen、D.et al.(2007)、PNAS、104、943−948、No.3;又はUS2006/0003417 A1(例えば実施例8を参照のこと)に記載される。手短には、「受容体結合アッセイ」において、例えばヒト組み換えGLP−1受容体を含む真核細胞、例えばCHO、BHK又はHEK293細胞の精製された膜画分を、例えば125I(例えば80kBq/pmol)で標識したヒトGLP−1、例えばGLP−1(7−36)アミドの存在下で試験化合物(単数又は複数)とともにインキュベートする。通常は様々な濃度の試験化合物(単数又は複数)を使用し、そしてIC50値をヒトGLP−1の特異的結合を減少させる濃度として決定する。「受容体機能的アッセイ」において、例えばヒトGLP−1受容体を発現している、上記のような真核細胞から単離された形質膜を用意し、試験化合物とともにインキュベートした。機能的アッセイは試験化合物による刺激に対する応答としてcAMPを測定することにより行う。「レポーター遺伝子アッセイ」において、ヒトGLP−1受容体を発現し、例えば多重応答エレメント/cAMP応答エレメント駆動ルシフェラーゼレポータープラスミドを含有する、例えば上記のような真核細胞を、試験化合物の存在下で培養する。cAMP応答エレメント駆動ルシフェラーゼ活性を、試験化合物による刺激に対する応答として測定する。
【0029】
適切なGLP−1Rアゴニストは、例えばDrucker、D.J.(2006) Cell Metabolism、3、153−165;Thorkildsen、Chr.(2003;supra);Chen、D.et al.(2007;supra);Knudsen、L.B.et al.(2007;supra);Liu、J.et al.(2007) Neurochem Int.、51、361−369、No.6−7;Christensen、M.et al.(2009)、Drugs、12、503−513;Maida、A.et al.(2008) Endocrinology、149、5670−5678、No.11及びUS2006/0003417に記載されるような、生物活性GLP−1、GLP−1アナログ又はGLP−1代用物から選択される。例となる化合物は、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)アミド、エキセンジン(extendin)−4、リラグルチド、CJC−1131、アルブゴン(albugon)、アルビグルチド(albiglutide)、エクセナチド、エクセナチド−LAR、オキシントモジュリン、リキシセナチド(lixisenatide)、ゲニプロシド(geniproside)、AVE−0010、GLP−1Rアゴニスト活性を有する短鎖ペプチド及び/又はGLP−1Rアゴニスト活性を有する小有機化合物である。
【0030】
詳細には、ヒトGLP−1(7−37)は配列番号3のアミノ酸配列を有する。ヒトGLP−1(7−36)アミドは配列番号4のアミノ酸配列を有する。エキセンジン(Extendin)−4は配列番号5のアミノ酸配列を有する。エクセナチドは配列番号6のアミノ酸配列を有し、そしてオキシントモジュリンは配列番号7のアミノ酸配列を有する。リキシセナチドのアミノ酸配列は配列番号8で示される。リキシセナチドの構造は、DPP−4(ジペプチジルペプチダーゼ−4)による即時の生理的分解に抵抗するために6つのさらなるリジン残基でC末端修飾されたエキセンジン−4(1−39)に基づく。AVE0010のアミノ酸配列を配列番号9に示す。
【0031】
リラグルチドの化学構造を図1に示す。リラグルチドは、GLP−1(7−37)のLys34をArgに置換し、そしてC16脂肪酸を位置26にγ−グルタミン酸スペーサーを使用して付加することにより得られた。化学名は[N−エプシロン(ガンマ−L−グルタモイル(N−アルファ−ヘキサデカノイル)−Lys26,Arg34−GLP−1(7−37)]である。
【0032】
CJC−1131の化学構造を図2に示す。アルブミンをGLP−1のC末端での位置8におけるd−アラニン置換により付加する。CJC−1131は安定性及び生物活性の非常に良好な組み合わせを示す。
【0033】
GLP−1Rアゴニスト活性を有する他のペプチドはUS 2006/0003417において例として開示されており、そしてGLP−1Rアゴニスト活性を有する小有機化合物は、Chen et al.2007、PNAS、104、943−948、No.3又はKnudsen et al.、2007、PNAS、104、937−942において例として開示される。
【0034】
本発明のさらなる実施態様において、医薬組成物は、少なくとも1つの抗糖尿病薬及び/又は少なくとも1つのDPP−4阻害剤をさらに含む。
【0035】
例となる抗糖尿病薬は、
a) インスリン、
b) チアゾリジンジオン、例えばロシグリタゾン又はピオグリタゾン(例えばWO2005/072769を参照のこと)、メトホルミン(N,N−ジメチルイミドジカルボンイミド−ジアミド(dimethylimidodicarbonimidic−diamide))、又は
c) スルホニルウレア、例えばクロルプロパミド(4−クロロ−N−(プロピルカルバモイル)−ベンゼンスルホンアミド)、トラザミド(N−[(アゼパン−1−イルアミノ)カルボニル]−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド)、グリクラジド(N−(ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール−2(1H)−イル−カルバモイル)−4−メチルベンゼンスルホンアミド)、又はグリメピリド(3−エチル−4−メチル−N−(4−[N−((1r,4r)−4−メチルシクロヘキシルカルバモイル)−スルファモイル]フェネチル)−2−オキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−カルボキサミド)である。
【0036】
本発明によれば、「インスリン」は天然に存在するインスリン、修飾インスリン又はインスリンアナログ、(それらの塩を含む)、及びそれらの組み合わせ、例えば修飾インスリンとインスリンアナログ、例えばアミノ酸交換/欠失/付加、さらにはアシル化又は他の化学的修飾のようなさらなる修飾を有するインスリンとの組み合わせを意味する。この種の化合物の一例はインスリンデテミル、すなわちLysB29−テトラデカノイル/des(B30)ヒトインスリンである。別の例は、非天然アミノ酸又は通常は真核生物においてコードされないアミノ酸、例えばD−アミノ酸が組み込まれているインスリンであり得る(Geiger、R.et al.、Hoppe Seylers Z.Physiol.Chem.(1976) 357、1267−1270;Geiger、R.et al.、Hoppe Seylers Z.Physiol.Chem.(1975) 356、1635−1649、No.10;Krail、G.et al.、Hoppe Seylers Z.Physiol.Chem.(1971)352、1595−1598、No.11)。さらに他の例は、A鎖若しくはB鎖のいずれか、又はその両方のC末端カルボン酸がアミドで置き換えられているインスリンアナログである。
【0037】
「修飾インスリン」は、好ましくはインスリン活性を有するアシル化インスリンから選択され、特にインスリンのA鎖及び/又はB鎖における1つ又はそれ以上のアミノ酸がアシル化されているもの、好ましくは位置B29においてアシル化されたヒトインスリンである(Tsai、Y.J.et al.(1997) Journal of Pharmaceutical Sciences、86、1264−1268、No.11)。他のアセチル化インスリンはdesB30ヒトインスリン又はB01ウシインスリンである(Tsai、Y.J.et al.、前出)。アシル化インスリンの他の例は、例えばUS5,750,497及びUS 6,011,007に開示される。修飾インスリンについての構造活性相関の概説は、Mayer、J.P.et al.(2007)Biopolymers、88、687−713、No.5に提供される。修飾インスリンは、典型的にはインスリン、又は適切なインスリン前駆体、例えばプレプロインスリン、プロインスリン又はそれらの短縮化アナログの化学的及び/又は酵素的操作により製造される。
【0038】
「インスリンアナログ」は、好ましくは1つ又はそれ以上の変異、置換、欠失及び/又は付加を有するインスリン活性を有するインスリン、特にA鎖及び/又はB鎖におけるC末端/又はN末端の短縮又は伸長を有するインスリン、好ましくはdes(B30)インスリン、PheB1インスリン、B1−4インスリン、AspB28ヒトインスリン(インスリンアスパルト)、LysB28/ProB29ヒトインスリン(インスリンリスプロ)、LysB03/GluB29ヒトインスリン(インスリングルリジン)又はGlyA21/ArgB31/ArgB32ヒトインスリン(インスリングラルギン)から選択される。インスリンアナログの唯一の条件は、それが十分なインスリン活性を有することである。アミノ酸交換、欠失及び/又は付加のうちどれが許容されるかという考察を含む、インスリンアナログについての構造活性相関の概説は、Mayer、J.P.et al.(2007;前出)に提供される。インスリンアナログは、好ましくは天然に存在するアミノ酸残基の1つ又はそれ以上、好ましくはそれらのうち1つ、2つ又は3つが別のアミノ酸残基で置換されているようなものである。インスリンアナログのさらなる例は、C末端短縮誘導体、例えばdes(B30)ヒトインスリン;B鎖N末端短縮インスリンアナログ、例えばdes PheB1インスリン又はdes B1−4インスリン;A鎖及び/又はB鎖がN末端伸長を有するインスリンアナログ、(B鎖がN末端伸長を有するいわゆる「プレイインスリン」を含む);並びにA鎖及び/又はB鎖がC末端伸長を有するインスリンアナログである。例えば、1つ又は2つのArgは位置B1に付加され得る。インスリンアナログの例は、以下の特許及びそれらの対応物に記載される:US5,618,913、EP 0 254 516 A2及びEP 0 280 534 A2。臨床用途におけるインスリンアナログの概説はMayer J.P.et al.(2007、前出)に提供される。インスリンアナログ又はそれらの前駆体は、典型的には当業者に周知の遺伝子工学技術を使用して、典型的には細菌又は酵母において、必要な場合はその後の酵素的又は合成的操作を用いて製造される。あるいは、インスリンアナログは化学的に製造され得る(Cao、Q.P.et al.(1986) Biol.Chem.Hoppe Seyler、367、135−140、No.2)。具体的なインスリンアナログの例は、インスリンアスパルト(すなわちAspB28ヒトインスリン);インスリンリスプロ(すなわちLysB28、ProB29ヒトインスリン);インスリングルリジン(すなわちLysB03、GluB29ヒトインスリン);及びインスリングラルギン(すなわち、GlyA21、ArgB31、ArgB32ヒトインスリン)である。
【0039】
例となるDPP−4阻害剤は、
シタグリプチン:(R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]−ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン、
ビルダグリプチン:(S)−1−[N−(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)グリシル]ピロリジン−2−カルボニトリル、
サクサグリプチン:(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)−アセチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル、
リナグリプチン(linagliptin) 8−[(3R)−3−アミノピペリジン−1−イル]−7−(ブタ−2−イン−1−イル)−3−メチル−1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン)アドグリプチン(adogliptin)(2−({6−[(3R)−3−アミノピペリジン−1−イル]−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル}メチル)−ベンゾニトリル、並びに
メギ、ヒドラスチス(Hydrastis canadensis)、及びオウレン(Coptis chinensis)のような植物の根、地下茎、茎及び樹皮において見られるイソキノリンアルカロイド群由来の第四級アンモニウム塩であるベルベリンである。
【0040】
本発明の医薬組成物の個々の化合物は、1つの製剤中に配合されても、例えば同時投与又は継続投与、すなわち連続投与、又はそれらの組み合わせのためのいくつかの製剤中に含まれていてもよい。
【0041】
本発明によれば、少なくとも1つのFGF−21化合物及び少なくとも1つのGLP−1Rアゴニストの組み合わせは、驚くべきことに、実施例において動物モデルを用いて示されるように、血漿グルコースレベルを低下させる際に相乗効果を生じた。動物モデルはob/ob又は肥満マウス及びdb/dbマウスである。ob/obマウスは、食欲を調節するホルモンレプチンを産生することができない変異マウスである。結果として、ob/obマウスは過剰に食べて重度の肥満になる。これは高血糖、インスリン抵抗性及び肥満についての標準的な動物モデルである。糖尿病についての別の標準的な動物モデルは、欠損したレプチン受容体活性を有するdb/dbマウスである。またこのマウスも、肥満、高血糖及びインスリン抵抗性を特徴とする。
【0042】
本発明の医薬組成物は、治療有効量の個々の化合物、及び一般的には、許容される医薬担体、希釈剤、又は添加剤、例えば滅菌水、生理食塩水、静菌性食塩水、すなわち約0.9%mg/mlベンジルアルコールを含有する食塩水、リン酸緩衝化食塩水、ハンクス液、乳酸リンゲル液、ラクトース、デキストロース、スクロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトールなどを含有する。組成物は、一般的に液剤又は懸濁剤である。これは経口、皮下、筋内、肺に、吸入により及び/又は徐放投与により投与され得る。好ましくは、組成物は皮下投与される。
【0043】
用語「治療有効量」は一般的に、容認できない副作用を引き起こすことなく、望ましい治療効果及び/又は予防効果を生じる化合物の量を意味する。典型的な投薬量範囲は、1日あたり約0.01mgから1日あたり約1000mgである。それぞれの治療有効化合物についての好ましい投薬量範囲は、1日あたり約0.1mgから1日あたり約100mgであり、そして最も好ましい投薬量範囲は、約1.0mg/日から約10mg/日、特に約1〜5mg/日である。
【0044】
継続投与の場合、医薬組成物の個々の化合物は、例えば実施例に示されるような、例えば「グルコース負荷試験」においてFGF−21化合物及びGLP−1Rアゴニストの相乗効果がまだ測定可能である期間の間に投与される。グルコース負荷試験は、グルコースの投与後に血液からどれだけ速くグルコースが排除されるかを決定する試験である。グルコースは、最も頻繁には経口投与される(「経口グルコース負荷試験」又は「OGTT」)。個々の化合物、特にFGF−21化合物及びGLP−1Rアゴニストの継続投与についての期間は、通常は1時間以内であり、好ましくは30分以内であり、最も好ましくは15分以内であり、特に5分以内である。
【0045】
一般に、医薬組成物の患者への適用は、1日あたり1回若しくは数回、又は週に1回若しくは数回、又は場合によってはより長い期間の間である。本発明の医薬組成物の最も好ましい適用は、組み合わせた用量で1日あたり1〜3回の皮下適用である。
【0046】
本発明の医薬組成物は、血中グルコースレベルを正常血糖レベルまで低下させ、そしてより速くより効率的なグルコース利用によりエネルギー消費を増加させ、従って少なくとも1つの代謝症候群及び/又はアテローム性硬化症、特に1型若しくは2型糖尿病、脂質異常症、肥満及び/又は脂肪過多症、特に2型糖尿病を処置するために有用である。
【0047】
結果として、本発明はまた、上述の疾患又は障害の少なくとも1つを処置するための医薬の製造のための、記載された医薬組成物の使用、及び患者において上述の疾患の少なくとも1つを処置するための方法に関する。患者は、特に、1型糖尿病患者、2型糖尿病患者、特に食餌療法を受ける2型糖尿病患者、スルホニルウレア処置を受ける2型糖尿病患者、極期2型糖尿病患者及び/又は長期インスリン処置を受ける2型糖尿病患者から選択される。医薬は、当業者に公知の方法により、例えば薬学的に有効な量の化合物(単数又は複数)を、上記のような許容しうる医薬担体、希釈剤又は添加剤と混合することにより製造され得る。
【0048】
以下の図面及び実施例は、説明の目的のみのためであり、本発明を限定することを意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】リラグルチドの化学構造を示す。
【図2】CJC−1131の化学構造を示す。
【図3】ob/obマウスにおいてAVE0010と共に10日間FGF−21を皮下注射した後の経口グルコース負荷試験(OGTT)の結果を示す。
【図4】ob/obマウスにおいてAVE0010と共にFGF−21を皮下注射した後の血漿グルコースレベルを時間とともに示す。
【図5】db/dbマウスにおいてAVE0010と共にFGF−21を21日間皮下注射した後(after after)のOGTTの結果を示す。
【図6】db/dbマウスにおいてAVE0010と共にFGF−21を皮下注射した後の血漿グルコースレベルを時間とともに示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
〔実施例〕
1.ob/obマウスの処置
雌性ob/obマウス(B6.V−LEP OB/J、6週齢)をCharles Rivers Laboratories (Sulzfeld、Germany)から入手した。マウスを無作為に処置グループ又はビヒクルグループに割り当て、そして無作為化を体重及び食後血中グルコースレベルによって階層化した。動物を6匹のグループで23℃にて12時間の明−暗サイクルで飼育した。全ての実験手順は独国動物保護法(German Animal Protection Law)に従って実施した。
【0051】
Ob/obマウスをビヒクル(PBS)、0.05mg・kg-1・日-1 AVE0010(配列番号9)、0.75mg・kg-1・日-1組み換えヒトFGF−21(配列番号2)又はFGF−21(配列番号2)及びAVE0010(配列番号9)の組み合わせ用量(0.75+0.05mg・kg-1・日-1)で1日に1回皮下で処置した。薬物処置の期間の間、マウスに標準的な齧歯動物飼料を自由に食べさせた。体重を1日おきに記録し、そして食物摂取を研究の間中、週に1回測定した。最初の処置の1日前でかつ研究10日目に、食後条件下で尾端を出血させることにより血中グルコースを測定した。図4に示されるように、処置されたマウスの血中グルコースレベルは正常血糖になった。研究8日目に、グルコース負荷試験(OGTT)を行った。絶食マウスに2g・kg-1グルコースを経口負荷した。血中グルコースを示された時点に麻酔なしで尾端出血により測定した。OGTTの結果を図3に示す。FGF−21のみ又はAVE0010のみの投与と比較して、耐糖能は組み合わせ処置により顕著により強く改善された。組み合わせ処置された肥満動物は、痩せたコントロール動物よりさらに高い耐糖能であった。
【0052】
2.db/dbマウスの処置
雌性db/dbマウス(BKS.Cg−m +/+ Leprdb/J、6週齢)を、ビヒクル(PBS)、0.05mg・kg-1・日-1 AVE0010、0.75mg・kg-1・日-1組み換えヒトFGF−21(配列番号2)又はFGF−21(配列番号2)及びAVE0010(配列番号9)の組み合わせ用量、(0.75+0.05mg・kg-1・日-1)で1日に1回皮下で処置した。マウスに自由に食事させた。最初の処置の前に、1週後及び4週後の血中グルコース及びHbA1cを食後条件下で測定した。21日の処置後に、経口グルコース負荷試験(OGTT)を開始した。絶食マウスに2g・kg-1グルコース溶液を経口負荷し、そして血中グルコースを示された時点で測定した。結果を図5及び6に示す。FGF21及びAVE0010の組み合わせの投与は、血中グルコースの正常化及びビヒクル処置された肥満コントロールと比較して劇的に改善された耐糖能を生じた。他方では、FGF21又はAVE0010の単一処置は、組み合わせと比較して血中グルコースの抑制及び耐糖能のわずかな改善しかもたらさなかった。
【0053】
配列
ヒトFGF−21 (配列番号1):
MDSDETGFEHSGLWVSVLAGLLLGACQAHPIPDSSPLLQPGGQVRQRYLYTDDAQQTEAHLEIREDGT
VGGAADQSPESLLQLKALKPGVIQILGVKTSRFLCQRPDGALYGSLHFDPEACSFRELLLEDGYNVYQ
SEAHGLPLHLPGNKSPHRDPAPRGPARFLPLPGLPPAPPEPPGILAPQPPDVGSSDPLSMVGPSQGRS
PSYAS

変異FGF−21 (G+FGF21 H29−S209;配列番号2):
GHPIPDSSPLLQFGGQVRQRYLYTDDAQQTEAHLEIREDGTVGGAADQSPESLLQLKALKPGVIQILG VKTSRFLCQRPDGALYGSLHFDPEACSFRELLLEDGYNVYQSEAHGLPLHLPGNKSPHRDPAPRGPAR FLPLPGLPPAPPEPPGILAPQPPDVGSSDPLSMVGPSQGRSPSYAS

ヒトGLP−1(7−37) (配列番号3):
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG−NH2

ヒトGLP−1(7−36)NH2 (配列番号4):
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR−NH2

エキセンジン−4 (配列番号5):
HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS−NH2

エクセナチド (配列番号6):
HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIETLKNGGPSSGAPPPS−NH2

オキシントモジュリン(配列番号7):
HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNTKRNRNNIA−NH2

リキシセナチド(配列番号8)
HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPSKKKKKK−NH2

AVE0010 (配列番号9):
HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPSKKKKKK−NH2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのFGF−21(線維芽細胞増殖因子21)化合物及び少なくとも1つのGLP−1R(グルカゴン様ペプチド−1受容体)アゴニストを含む医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの抗糖尿病薬及び/又は少なくとも1つのDPP−4(ジペプチジルペプチダーゼ−4)阻害剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
FGF−21化合物、GLP−1Rアゴニスト、場合により抗糖尿病薬及び場合によりDPP−4阻害剤が、1つの製剤中に配合されるか、又はいくつかの製剤中に含有される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
FGF−21化合物、GLP−1Rアゴニスト、場合により抗糖尿病薬及び場合によりDPP−4阻害剤が、同時投与又は継続投与に適したものである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
FGF−21化合物が、FGF−21又はFGF−21模倣物から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
FGF−21模倣物が、配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性を有し、かつFGF−21活性を有するタンパク質、FGF−21融合タンパク質及び/又はFGF−21接合体から選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
FGF−21模倣物が、FGF−21ムテイン、FGF−21−Fc融合タンパク質、FGF−21−HSA融合タンパク質及び/又はPEG化FGF−21から選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
GLP−1Rアゴニストが、生物活性GLP−1、GLP−1アナログ又はGLP−1代用物から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
GLP−1Rアゴニストが、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)アミド、エキセンジン−4、リラグルチド、CJC−1131、アルブゴン、アルビグルチド、エクセナチド、エクセナチド−LAR、オキシントモジュリン、リキシセナチド、ゲニプロシド、AVE−0010(配列番号9)、GLP−1Rアゴニスト活性を有する短鎖ペプチド及び/又はGLP−1Rアゴニスト活性を有する小有機化合物から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
抗糖尿病薬が、メトホルミン、チアゾリジンジオン、スルホニルウレア、及び/又はインスリンから選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
DPP−4阻害剤が、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン、リナグリプチン、アドグリプチン及び/又はベルベリンから選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの代謝症候群及び/又はアテローム性硬化症の処置における使用のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
代謝症候群が、糖尿病、脂質異常症、肥満及び/又は脂肪過多症、特に2型糖尿病から選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
患者において少なくとも1つの代謝症候群及び/又はアテローム性硬化症を処置するための医薬の製造のための、請求項1〜11のいずれか1項において定義される医薬組成物の使用。
【請求項15】
代謝症候群が、糖尿病、脂質異常症、肥満及び/又は脂肪過多症、特に2型糖尿病から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
患者が、1型糖尿病患者、2型糖尿病患者、特に食餌療法を受ける2型糖尿病患者、スルホニルウレア処置を受ける2型糖尿病患者、極期2型糖尿病患者及び/又は長期インスリン処置を受ける2型糖尿病患者から選択される、請求項14又は15に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−518035(P2013−518035A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549361(P2012−549361)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050793
【国際公開番号】WO2011/089203
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】