説明

代謝調節型グルタミン酸受容体のベンズアミドモジュレータ

本発明は、mGluR5受容体を含めて、代謝調節型グルタミン酸受容体のアロステリックモジュレータである化合物を対象とし、これらは、グルタミン酸機能障害に伴う神経および精神疾患と、代謝調節型グルタミン酸受容体が関与する疾病の治療および予防において有用である。本発明はまた、これらの化合物を含む医薬組成物と、代謝調節型グルタミン酸受容体が関与する疾病の防止および治療におけるこれらの化合物および組成物の使用も対象とする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
興奮性アミノ酸であるL−グルタミン酸(本明細書においては、簡単にグルタミン酸と呼ぶこともある)は、その多くの受容体を通じて、哺乳動物の中枢神経系(CNS)内で、ほとんどの興奮性神経伝達を媒介している。興奮性アミノ酸は、グルタミン酸を含めて、生理学的に非常に重要であり、長期増強(学習と記憶)、シナプスの可塑性の発達、運動制御、呼吸、心臓血管調節、および感覚知覚のような様々な生理学過程においてある役割を担っている。
【0002】
グルタミン酸は、少なくとも2種類の異なる受容体を通じて作用する。1つの種類は、リガンド依存性(ligand-gated)イオンチャネルとして作用するイオンチャネル調節型(ionotropic)グルタミン酸(iGlu)受容体からなる。iGlu受容体の活性化により、グルタミン酸は、CNSにおける2つの結合ニューロンのシナプス内の速い神経伝達を調節すると考えられている。第2の一般的なタイプの受容体は、G−タンパク質、または、セカンドメッセンジャー結合「代謝調節型(metabotropic)」グルタミン酸(mGluR)受容体である。両タイプの受容体は、興奮性経路に沿った通常のシナプス伝達を媒介するだけでなく、成長の間と全生涯を通してのシナプスの結合の修飾においても関与していると見られている。Schoepp, Bockaert, and Sladeczek, Trends in Pharmacol. Sci., 11, 508 (1990); McDonald and Johnson, Brain Research Reviews, 15, 41 (1990)。
【0003】
本発明は、mGlu受容体、特に、mGluR5受容体のアロステリックモジュレータに関する。mGluR受容体は、タイプIIIのGタンパク質共役型受容体(GPCR)スーパーファミリーに属する。このGPCRスーパーファミリーには、mGluR、ならびに、カルシウム感知受容体、GABAB受容体およびフェロモン受容体を含めて、いくつかの他の受容体が含まれる。ファミリーIIIのGPCRは、それらが、受容体タンパク質のアミノ末端部分へのエフェクタの結合により活性化されるという点で独特である。mGlu受容体は、細胞内情報(signal)伝達系を調節するグルタミン酸の実証された能力を媒介すると考えられている。Ozawa, Kamiya and Tsuzuski, Prog. Neurobio., 54, 581 (1998)。それらは、シナプス前およびシナプス後に局在しており、それらは、それぞれ、神経伝達物質(グルタミン酸または他の神経伝達物質)の放出を調節し、あるいは、神経伝達物質のシナプス後応答を修飾することができることが実証された。
【0004】
現在、mGluの異なる8つの受容体が明確に確認され、クローン化され、それらの配列が報告されている。これらは、それらのアミノ酸配列の相同性、特定の情報伝達機構に影響を与えるそれらの能力、および、それらの知られている薬理学的性質に基づいてグループ化されている。Ozawa, Kamiya and Tsuzuski, Prog. Neurobio., 54, 581 (1998)。例えば、グループIのmGluR受容体(これには、mGluR1およびmGluR5が含まれる)は、Gαqタンパク質を通じてホスホリパーゼC(PLC)を活性化することにより、ホスホイノシチドの加水分解と細胞内カルシウムの動員(moblization)を増加させることが知られている。通常のアゴニストであるグルタミン酸以外に、DHPG、(R/S)−3,5−ジヒドロキシフェニルグリシンを含めて、いくつかの化合物が、グループIのmGlu受容体を活性化することが報告されている。Schoepp, Goldworthy, Johnson, Salhoff and Baker, J. Neurochem., 63, 769 (1994); Ito, et al., keurorep., 3, 1013 (1992)。グループIIのmGlu受容体は、異なる2つの受容体、mGluR2およびmGluR3受容体からなる。両方とも、Gαiタンパク質の活性化を通じて、アデニル酸シクラーゼに負に共役していることが見出された。これらの受容体は、通常のアゴニストであるグルタミン酸により、また、1S,2S,SR,6S−2アミノビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボキシレートのような選択的化合物により活性化され得る。Mann, et al., J. Med. Chem., 40, 528 (1997); Schoepp, et al., Neuropharmacol., 36, 1 (1997)。同様に、グループIIIのmGlu受容体(mGluR4、mGIuR6、mGluR7およびmGIuR8が含まれる)は、Gaiを通じてアデニル酸シクラーゼに負に共役しており、通常のアゴニストであるグルタミン酸以外に、L−AP4(L−(+)−2−アミノ−4−ホスホノ酪酸)により強く活性化される。Schoepp, Neurochem. Int., 24, 439 (1994)。
【0005】
グルタミン酸放出の変化またはシナプス後受容体活性化の変化による興奮性アミノ酸受容体(グルタミン酸作動系が含まれる)の調節と、様々な神経および精神の疾患との間には関連があることが益々明らかになってきた。例えば、Monaghan, Bridges and Cotman, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 29, 365−402 (1989); Schoepp and Sacann, Neurobio. Aging, 15, 261−263 (1994); Meldrum and Garthwaite, Tr. Pharmacol. Sci., 11, 379−387 (1990)。このようなグルタミン酸機能障害の医療上の重要さにより、これらの神経学的過程の緩和が重要な治療目的となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、mGluR5を含めて、代謝調節型グルタミン酸受容体の増強剤(potentiator)であり、また、代謝調節型グルタミン酸受容体が関与する、グルタミン酸機能障害と疾病に付随する神経および精神の疾患の治療または防止において有用である化合物を対象とする。本発明はまた、これらの化合物を含む医薬組成物と、代謝調節型グルタミン酸受容体が関与するこのような疾病の防止または治療におけるこれらの化合物および組成物の使用も対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は式Iの化合物、ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々のジアステレオマーを対象とする:
【0008】
【化8】

式中、Rは以下からなる群から選択される:
(1)水素、
(2)ハロゲン
(3)C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、ハロゲン、ヒドロキシルまたはフェニルで置換されている)、
(4)−OC1〜6アルキル、
(5)−S(O)−C1〜6アルキル(mは0、1および2から選択される)、
(6)−CO(Rは独立に以下から選択される:
(a)水素、
(b)−C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、1〜6個のフルオロで置換されている)、
(c)ベンジル、および
(d)フェニル)、
(7)−NR1011(R10およびR11は独立に以下から選択される:
(a)水素、
(b)−C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、1〜6個のフルオロで置換されている)、
(c)−C5〜6シクロアルキル、
(d)ベンジル、
(e)フェニル、
(f)−S(O)−C1〜6アルキル、
(g)−S(O)−ベンジル、および
(h)−S(O)−フェニル)、
(8)−S(O)−NR1011
(9)フェニル(これは、無置換であるか、あるいは、以下から独立に選択される1個または複数の置換基で置換されている:
(a)−C1〜6アルキル、
(b)−O−C1〜6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)トリフルオロメチル、および
(f)−OCF);
は以下からなる群から選択される:
(1)C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、ハロゲン、ヒドロキシルまたはフェニルで置換されている)、
(2)C3〜7シクロアルキル(これは、無置換であるか、あるいは、ハロゲン、ヒドロキシルまたはフェニルで置換されている)および
(3)フェニル(これは、無置換であるか、あるいは、以下から選択される1個または複数の置換基で置換されている:
(a)C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、−NR1011で置換されている)、
(b)−O−C1〜6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)トリフルオロメチル、
(f)−OCF
(g)−CO
(h)−NR1011
(i)−C(O)NR1011、および
(j)−NO)、
(4)以下から選択される複素環:
ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾロニル(benzimidazolonyl)、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カラバゾリル、カルボニリル(carbolinyl)、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル(indolazinyl)、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オンイル(onyl)、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロチエニル、ならびに、これらのN−オキシド(前記複素環は、無置換であるか、あるいは、以下から独立に選択される1個または複数の置換基により置換されている:
(a)−C1〜6アルキル、
(b)−O−C1−6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)フェニル、
(f)トリフルオロメチル、
(g)−OCF
(h)−CO
(i)−NR1011、および
(j)−CONR1011);
は以下からなる群から選択される:
(1)C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、ハロゲン、ヒドロキシルまたはフェニルで置換されている)、
(2)C3〜7シクロアルキル(これは、無置換であるか、あるいは、ハロゲン、ヒドロキシルまたはフェニルで置換されている)および
(3)フェニル(これは、無置換であるか、あるいは、以下から選択される1個または複数の置換基で置換されている:
(a)C1〜6アルキル、
(b)−O−C1〜6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)トリフルオロメチル、
(f)−OCF
(g)−CO
(h)−NR1011
(i)−C(O)NR1011、および
(j)−NO)、
(4)以下から選択される複素環:
ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾロニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カラバゾリル、カルボニリル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オンイル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロチエニル、ならびに、これらのN−オキシド(前記複素環は、無置換であるか、あるいは、以下から独立に選択される1個または複数の置換基により置換されている:
(a)−C1〜6アルキル、
(b)−O−C1−6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)フェニル、
(f)トリフルオロメチル、
(g)−OCF
(h)−CO
(i)−NR1011、および
(j)−CONR1011)、
あるいは、RおよびRは一緒になって、フタルイミジル、サクシンイミジルまたはグルタミジル(glutamidyl)環をなす(これは、無置換であるか、あるいは、Rの定義から独立に選択される1個または複数の置換基により置換されている);
およびRは、以下からなる群から独立に選択される:
(1)ハロゲン、および
(2)C1〜6アルキル;
nは1、2および3から選択される整数である。
【0009】
本発明の実施形態は、式Iaの化合物、ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマーを含む:
【0010】
【化9】

式中、Rは以下からなる群から選択される:
(1)水素、
(2)−C1〜6アルキル、
(3)−O−C1〜6アルキル、
(4)ハロ、
(5)ヒドロキシ、
(6)−NO、および
(7)フェニル;
また、RおよびRは本明細書において定義されている。
【0011】
本発明の実施形態は、式Ibの化合物、ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマーを含む:
【0012】
【化10】

式中、Rは本明細書において定義されている。
【0013】
本発明の実施形態は、式Icの化合物、ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマーを含む:
【0014】
【化11】

式中、Rは本明細書において定義されている。
【0015】
本発明の実施形態は、式Idの化合物、ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマーを含む:
【0016】
【化12】

式中、R、R、RおよびRは本明細書において定義されている。
【0017】
本発明の実施形態は、式Ieの化合物、ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマーを含む:
【0018】
【化13】

式中、RおよびRは本明細書において定義されている。
【0019】
本発明の実施形態は、式Ifの化合物、ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマーを含む:
【0020】
【化14】

式中、RおよびRは本明細書において定義されている。
【0021】
本発明の実施形態は、Rが水素である化合物を含む。
【0022】
本発明の実施形態は、Rがハロゲンである化合物を含む。
【0023】
本発明の実施形態は、Rがフルオロである化合物を含む。
【0024】
本発明の実施形態は、Rがクロロである化合物を含む。
【0025】
本発明の実施形態は、Rがブロモである化合物を含む。
【0026】
本発明の実施形態は、Rがメチルである化合物を含む。
【0027】
本発明の実施形態は、Rがフェニルである化合物を含み、このフェニルは無置換であるか、あるいは以下から独立に選択される1個または複数の置換基により置換されている:
(a)−C1〜6アルキル、
(b)−O−C1−6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)トリフルオロメチル、
(f)−OCF
(g)−CO−C1〜6アルキル、
(h)−NH
(i)−NH−C1〜6アルキル、
(j)−CONH、および
(k)−CONH−C1〜6アルキル。
【0028】
本発明の実施形態は、Rがフェニルである化合物を含み、このフェニルは無置換であるか、あるいは、ヒドロキシ、ハロ、−CONHC1〜6アルキルまたは−CO1〜6アルキルで置換されている。
【0029】
本発明の実施形態は、Rがピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピペラジニル、フラニルまたはチエニルである化合物を含む。
【0030】
本発明の実施形態は、Rがピリジルである化合物を含む。
【0031】
本発明の実施形態は、Rがピリミジニルである化合物を含む。
【0032】
本発明の実施形態は、RおよびRが一緒になってフタルイミジル環をなす化合物を含む。
【0033】
本発明の実施形態は、Rが水素またはC1〜6アルキルである化合物を含む。
【0034】
本発明の実施形態は、Rが水素である化合物を含む。
【0035】
本発明の実施形態は、nが1である化合物を含む。
【0036】
本発明の具体的な実施形態は、本明細書における実施例の表題となっている化合物と、それらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物を含む。
【0037】
本発明の化合物は、代謝調節型グルタミン酸(mGluR)受容体機能のアロステリックモジュレータであり、特に、それらは、mGluR5受容体のアロステリックモジュレータである。アロステリックモジュレータは、正でも負でもあり得る。正のアロステリックモジュレータは「増強剤(potentiator)」と呼ばれ、負のアロステリックモジュレータは「非競合的拮抗薬(noncompetitive antagonist)」と呼ばれている。「増強剤」という用語は、アゴニストの活性を増す、または増大させる化合物を意味するが、それ自体は受容体を活性化しない。すなわち、本発明の化合物は、mGluR受容体のグルタミン酸認識部位に結合しないと思われるが、グルタミン酸またはグルタミン酸アゴニストの存在の下で、本発明の化合物はmGluR受容体の応答を増大させる。本発明の増強剤は、グルタミン酸またはグルタミン酸アゴニストに対するこのような受容体の応答を増大させ、受容体の機能を高めるそれらの能力により、mGluR受容体でそれらの効果を示すと期待される。本発明の増強剤は、mGluR5受容体についてのグルタミン酸またはグルタミン酸アゴニストの効果を増すと期待されることが認められた。本発明の非競合的拮抗薬は、グルタミン酸またはグルタミン酸アゴニストに対するこのような受容体の応答を低下させ、受容体の機能を低下させるそれらの能力によりmGluR受容体でそれらの効果を示すと期待される。本発明の非競合的拮抗薬は、mGluR5受容体についてのグルタミン酸またはグルタミン酸アゴニストの効果を低下させると期待されることが認められた。こうして、本発明の増強剤または非競合的拮抗薬は、本明細書において治療されると記載されている、グルタミン酸機能障害に付随する様々な神経および精神の疾患と、当業者により理解されるようにこのような増強剤により治療され得る他の疾患の治療において有用であると期待される。
【0038】
本発明の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含み得るので、ラセミ化合物およびラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして存在する。さらなる不斉中心が、分子内の様々な置換基の性質に応じて存在し得る。このような不斉中心の各々は独立に2つの光学異性体を生じ、混合物としての、また、純粋な、もしくは部分的に精製された化合物としての、可能な光学異性体およびジアステレオマーの全ては、本発明の範囲内に含まれると想定されている。本発明は、これらの化合物のこのような異性体の形態の全てを包含する。式Iは、立体化学的な優劣をつけずに、一群の化合物を示している。
【0039】
これらのジアステレオマーの個別の合成またはそれらのクロマトグラフィによる分離は、当技術分野において知られているように、本明細書に開示されるやり方を適切に変更することにより実施され得る。これらの絶対立体配置は、必要であれば絶対立体配置が知られている不斉中心を含む試薬を用いて誘導される生成物結晶または中間体結晶のX線結晶解析により決定され得る。
【0040】
望まれる場合、化合物のラセミ混合物は、個々の鏡像異性体が単離されるように分離され得る。この分離は、鏡像異性体として純粋な化合物にラセミ混合物をカップリングさせてジアステレオマーの混合物とし、次に、個々のジアステレオマーを標準的な方法(例えば分別結晶またはクロマトグラフィ)により分離することのような、当技術分野においてよく知られている方法により実施され得る。カップリング反応は、鏡像異性体として純粋な酸または塩基を用いる、塩の生成であることが多い。この場合には、付加されたキラル残基の開裂により、ジアステレオマー誘導体を純粋な鏡像異性体に変換することができる。当技術分野においてよく知られている、キラル固定相を用いるクラマトグラフィ法により、化合物のラセミ混合物を直接分離してもよい。
【0041】
別法として、ある化合物の鏡像異性体を、当技術分野においてよく知られている方法により、立体配置が知られている光学的に純粋な出発物質または試薬を用いる立体選択的合成により得ることができる。
【0042】
等業者により理解されるように、本明細書において、ハロまたはハロゲンには、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードが含まれると想定されている。同様に、C1〜6アルキルにおけるようなC1〜6は、線状または分岐状の、1、2、3、4、5または6個の炭素原子をもつ基であると定義されており、C1〜8アルキルには、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、およびヘキシルが含まれる。置換基により独立に置換されていると記されている基は、複数種のそのような置換基により独立に置換されていてよい。
【0043】
「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される無毒の塩基または酸(無機または有機塩基と無機または有機酸が含まれる)から調製される塩を表す。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガンの塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムの塩である。固体状の塩は、2種以上の結晶構造で存在することがあり、また水和物の形においても存在し得る。薬学的に許容される無毒の有機塩基から誘導される塩には、第1級、第2級、および第3級アミン、置換アミン(天然の置換アミンが含まれる)、環状アミン、ならびに塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノ−エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが含まれる。
【0044】
本発明の化合物が塩基性である場合、塩は、薬学的に許容される無毒の酸(無機および有機の酸が含まれる)から調製され得る。このような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンホスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが含まれる。特に好ましいのは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸、および酒石酸である。本明細書においては、式Iの化合物が参照される場合は、薬学的に許容されるそれらの塩も含められると了解されている。
【0045】
本発明の例示は、実施例および本明細書に開示される化合物の使用である。本発明内の具体的化合物には、後の実施例に開示される化合物と、薬学的に許容されるそれらの塩およびそれらの個々のジアステレオマーからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0046】
本発明の主題の化合物は、有効量のこの化合物の投与を含む、増強を必要としている哺乳動物のような患者における代謝調節型グルタミン酸受容体の活性を増強させる方法において有用である。本発明は、代謝調節型グルタミン酸受容体活性の増強剤としての、本明細書において開示される化合物の使用を対象とする。霊長目(特にヒト)以外に、様々な他の哺乳動物を本発明の方法により治療することができる。
【0047】
同様に、本発明の主題の非競合的拮抗薬化合物は、有効量のこの化合物の投与を含む、抑制を必要としている哺乳動物のような患者における代謝調節型グルタミン酸受容体活性を抑制する方法において有用である。本発明は、代謝調節型グルタミン酸受容体活性の非競合的拮抗薬としての、本明細書において開示される化合物の使用を対象とする。霊長目(特にヒト)以外に、様々な他の哺乳動物を本発明の方法により治療することができる。
【0048】
本発明は、さらに、本発明の化合物を医薬担体(carrier)または希釈剤と合わせることを含む、ヒトおよび動物における代謝調節型グルタミン酸受容体を増強または抑制するための薬剤の製造方法を対象とする。
【0049】
本発明において治療される対象は、代謝調節型グルタミン酸受容体活性の増強または抑制が望まれる、一般的には哺乳動物、好ましくは人類、男または女である。「治療に有効な量」という用語は、研究者、獣医、医者または他の臨床家により得ようとされている、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的反応を引き出す、本発明の主題の化合物の量を意味する。本発明の化合物の有効量を用いて、それらの疾患により現に悩まされている患者を治療することにより、あるいは、それらの疾患により悩まされている患者を予防的に治療することにより、当業者は、神経または精神の疾患に変化をもたらし得ることが理解される。本明細書において、「治療(treatment)」および「治療する」は、本明細書において記載されている神経および精神の疾患の進行を、遅くすること、妨げること、抑えること、制御すること、または、止めることがあり得る全ての過程を表すが、疾患の全ての症状を完全に無くすこと、ならびに、前記の病状の予防療法(prophylactic therapy)(特に、このような疾病または疾患にかかる傾向が元々ある患者における)を必ずしも示すわけではない。
【0050】
本明細書において、「組成物」という用語は、指定量で指定成分を含む製品、ならびに、指定量における指定成分の組合せから、直接または間接的に得られる製品を包含すると想定されている。医薬組成物に関連するこのような用語は、(複数の)活性成分と、担体をなす(複数の)不活性成分とを含む製品、ならびに、2種以上の成分の組合せ、複合化(complexation)または凝集により、あるいは、1種または複数の成分の解離により、あるいは、1種または複数の成分の他のタイプの反応または相互作用により、直接または間接的に得られる製品を包含すると想定されている。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体との混合により製造される全ての組成物を包含する。「薬学的に許容される」により、担体、希釈剤または賦形剤(excipient)がその処方の他の成分と共存できなければならず、その受給者に有害であってはならないことを意味する。
【0051】
化合物の「投与」および、または化合物を「投与する」という用語は、本発明の化合物あるいは本発明の化合物のプロドラッグを治療の必要な個体に与えることを意味すると理解されるべきである。
【0052】
代謝調節型グルタミン酸受容体活性、特にmGluR5活性の増強剤または非競合的拮抗薬としての、本発明による化合物の有用性は、当技術分野において知られているやり方により例示され得る。ヒトまたはラットのmGluR5をトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣細胞を、Fluorometric Plate Reader(FLIPR)でのアッセイ用の透明な底のアッセイプレートに付けて培養した。細胞にCa2+感受性蛍光染料(例えば、Fluo−4)を取り込ませ、プレートを洗浄し、FLIPR装置内に置いた。10秒間で蛍光基準線を確立した後、本発明の化合物を細胞に加え、細胞の反応を測定した。5分後、mGluR5アゴニスト(例えば、グルタミン酸、3,5−ジヒドロキシフェニルグリシン、またはキスカル酸(quisqualate))を細胞に加え、細胞の反応を測定した。mGluR5のアゴニスト応答の、本発明の化合物による増強を、化合物がない場合のアゴニストへの応答に比較して、化合物の存在下におけるアゴニスト(最大限の濃度ではない)への応答における増加として観察した。同様に、mGluR5のアゴニスト応答の、本発明における化合物による拮抗作用を、化合物がない場合のアゴニストへの応答に比較して、化合物の存在下におけるアゴニスト(最大限の濃度ではない)への応答における低下として観察した。
【0053】
前記のアッセイを、2つの方式において実施した。第1のものでは、ある範囲の濃度の本発明の化合物を細胞に加え、次に、一定濃度のアゴニストを加えた。化合物が増強剤として作用する場合、この濃度のアゴニストでの、増強に対するEC50値と、その化合物による最大の増強度合いを非線形カーブフィッティングにより求めた。化合物が非競合的拮抗薬として作用する場合、IC50値を非線形カーブフィッティングにより求めた。第2の方式においては、いくつかの固定された濃度の本発明の化合物をプレート上の様々なウェルに加え、次に、本発明の化合物の各濃度に対してある範囲の濃度のアゴニストを加えた。本発明の化合物の各濃度でのアゴニストに対するEC50値を非線形カーブフィッティングにより求めた。本発明の化合物の濃度増加によるアゴニストのEC50値における減少(アゴニスト濃度−応答・曲線の左方向への移動)は、本発明の化合物の所定濃度でのmGluR5増強の度合いの目安である。本発明の化合物の濃度増加によるアゴニストのEC50値における増加(アゴニスト濃度−応答・曲線の右方向への移動)は、本発明の化合物の所定濃度でのmGluR5抑制作用の度合いの目安である。この後者の方式はまた、本発明の化合物がアゴニストに対するmGluR5の最大応答にも影響を及ぼすかどうかを示す。
【0054】
特に、後の実施例の化合物は、前記アッセイにおいてmGluR5受容体を増強または抑制する活性をもっており、増強に対するEC50と抑制に対するIC50は約10μM未満であった。本発明内の好ましい化合物は、前記アッセイにおいてmGluR5受容体を増強または抑制する活性をもっており、増強に対するEC50と抑制に対するIC50は約1μM未満であった。好ましい化合物は、アゴニストEC50値における約3倍を超える変化(増加または減少)を引き起こした。これらの化合物はアゴニストの存在しない場合にmGluR5に応答を引き起こさず、また、これらは、アゴニストに対するmGluR5の最大限の応答をそれ程増大させなかった(但し、非競合的拮抗薬は、アゴニストに対する最大限の応答を実際に減少させた)。これらの化合物は、ラットmGluR5、ならびにヒトmGluR5の増強剤または非競合的拮抗薬として作用した。これらの化合物は、他の代謝調節型グルタミン酸受容体に比べて、mGluR5に対して選択的であった。このような結果は、mGluR5受容体活性の増強剤または非競合的拮抗薬としての使用におけるこれらの化合物の固有の活性を示している。
【0055】
mGluR5受容体を含めて、代謝調節型グルタミン酸受容体は、広範な生物学的機能に密接に関連付けられている。このことは、ヒトまたは他の動物種の様々な疾病の過程における、これらの受容体の潜在的な役割を示唆している。
【0056】
本発明の化合物は、以下の1つまたは複数の病状または疾病が含まれる、グルタミン酸機能障害に付随する様々な神経および精神の疾患の危険を、治療し、防止し、改善し、制御し、低下させるのに有用である:急性および慢性の神経および精神疾患、例えば、心臓バイパス手術および移植後の脳欠陥、脳卒中、脳虚血、脊髄損傷、頭部外傷、周産期低酸素症、心停止、低血糖性神経損傷、痴呆(AIDS誘発性痴呆が含まれる)、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、眼球損傷(ocular damage)、網膜症、認知障害、特発性および薬物性パーキンソン病、筋肉痙縮(spasticity)(振戦(tremor)が含まれる)に伴う筋肉痙攣(spasm)および障害、癲癇、痙攣(convulsion)、偏頭痛(migraine)(偏頭痛(migraine headache)が含まれる)、尿漏れ、化学物質に対する耐性、物質(アヘン剤、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン類、コカイン、鎮静剤、催眠薬など)への嗜癖が含まれる嗜癖行動、このような嗜癖物質(アヘン剤、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン類、コカイン、鎮静剤、催眠薬などが含まれる)による禁断症状(withdrawal)、肥満、精神病、精神分裂病、不安(全般性不安障害、パニック障害、および強迫性障害が含まれる)、気分障害(鬱病、躁病、双極性障害が含まれる)、三叉神経痛、聴力喪失、耳鳴り、目の黄斑変性症、嘔吐、脳浮腫、痛み(急性および慢性の疼痛、激痛、難治性の痛み、神経因性疼痛、および外傷後疼痛が含まれる)、遅発性ジスキネジア、睡眠障害(ナルコレプシーが含まれる)、注意欠陥/多動性障害、および行為障害。
【0057】
上の疾患の中で、認知障害、不安、精神分裂病または精神病、パーキンソン病、肥満および嗜癖行動の治療が、特に重要である。好ましい実施形態において、本発明は、それを必要としている患者に有効量の式Iの化合物を投与することを含む、認知障害を防止または治療する方法を提供する。別の好ましい実施形態において、本発明は、それを必要としている患者に有効量の式Iの化合物を投与することを含む、不安を防止または治療する方法を提供する。特に選択される不安障害は、全般性不安障害、パニック障害、および強迫性障害である。別の好ましい実施形態において、本発明は、それを必要としている患者に有効量の式Iの化合物を投与することを含む、精神分裂病または精神病を治療する方法を提供する。別の好ましい実施形態において、本発明は、それを必要としている患者に有効量の式Iの化合物を投与することを含む、パーキンソン病を治療する方法を提供する。別の好ましい実施形態において、本発明は、それを必要としている患者に有効量の式Iの化合物を投与することを含む、肥満を防止または治療する方法を提供する。さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、それを必要としている患者に有効量の式Iの化合物を投与することを含む、嗜癖行動を治療する方法を提供する。特に選択される嗜癖行動は、物質(アヘン剤、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン類、コカイン、鎮静剤、催眠薬など)に対する嗜癖、このような嗜癖物質(アヘン剤、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン類、コカイン、鎮静剤、催眠薬などが含まれる)による禁断症状、ならびに、化学物質への耐性である。
【0058】
本発明による治療されるグルタミン酸機能障害に伴う神経および精神の疾患の中で、認知障害、不安、精神分裂病または精神病、パーキンソン病、肥満および嗜癖行動が特に選択される。特に選択される不安障害は、全般性不安障害、パニック障害、および強迫性障害である。特に選択される嗜癖行動は、物質(アヘン剤、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン類、コカイン、鎮静剤、催眠薬など)に対する嗜癖、このような嗜癖物質(アヘン剤、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン類、コカイン、鎮静剤、催眠薬などが含まれる)による禁断症状、ならびに、化学物質への耐性である。
【0059】
別の好ましい実施形態において、本発明は、それを必要としている患者に有効量の式Iの化合物またはその医薬組成物を投与することを含む、精神分裂病を治療する方法を提供する。現在、「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(精神障害の診断と統計マニュアル(DSM−IV)) (1994, American Psychiatric Association(米国精神医学会), Washington, D.C.)の第4版が、精神分裂病および関連する他の障害を含めての診断ツールを提供している。
【0060】
本明細書において、「精神分裂病」という用語は、DSM−IVにおいて記載される精神病および関連する疾患の治療を含む。当業者は、神経および精神疾患(特に精神分裂病)の別の命名法、疾病分類、および分類システムがあること、また、これらのシステムは医療科学の進歩と共に発展することを認めるであろう。こうして、「精神分裂病」という用語は、別の診断典拠に記載されている同様の疾患を含むと想定されている。
【0061】
別の好ましい実施形態において、本発明は、必要としている患者に有効量の式Iの化合物またはその医薬組成物を投与することを含む、不安を治療する方法を提供する。現在、「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(精神障害の診断と統計マニュアル(DSM−IV)) (1994, American Psychiatric Association(米国精神医学会), Washington, D.C.)の第4版が、不安および関連する他の障害を含めての診断ツールを提供している。これらには、次のものが含まれる:広場恐怖を伴うまたは伴わないパニック障害、パニック障害の病歴がない広場恐怖、特定恐怖、社会恐怖、強迫性障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般性不安障害、一般身体疾患による不安障害、物質誘発性不安障害および、不特定不安障害。本明細書では、「不安」という用語は、DSM−IVにおいて記載される不安障害および関連する疾患の治療を含む。当業者は、神経および精神疾患(特に不安)の別の命名法、疾病分類、および分類システムがあること、また、これらのシステムは医療科学の進歩と共に発展することを認めるであろう。こうして、「不安」という用語は、別の診断典拠に記載されている同様の障害を含むと想定されている。
【0062】
本発明の主題の化合物は、さらに、本明細書に挙げられていない疾病、疾患および病状の危険を、防止、治療、制御、改善、または軽減するための方法において有用である。
【0063】
さらに、本発明の主題の化合物は、mGluRアゴニストを含めて、他の薬剤との組合せにおいて、前記の疾病、疾患および病状の危険を、防止、治療、制御、改善、または軽減するための方法において有用である。
【0064】
「強化量(potentiated amount)」という用語は、mGluRアゴニストの量、すなわち、本発明の増強剤化合物の有効量と組み合わせて投与される時に、本明細書に記載されている神経および精神疾患を治療するのに有効であるアゴニストの投薬量を表す。強化量は、有効量の本発明の増強剤化合物を用いないでmGluRアゴニストが投与された場合に同じ効果を発揮するのに必要とされる量より、少ないと予想される。
【0065】
通常の技術の利用、および、類似の状況の下で得られた結果の観察により、当業者として付き添っている診断専門医によって、強化量は容易に求められ得る。強化量(式Iの化合物と組み合わせて投与されるmGluRアゴニストの服用量)の決定において、付き添っている診断専門医により、以下が含まれるがそれらに限定されない、いくつかの要素が考慮される:投与のために選択されるmGluRアゴニスト(その効力と選択性を含む);投与のために選択される式Iの化合物;哺乳動物の種類;その大きさ、年齢、および全般的健康状態;関与する具体的疾患;疾患の関与の度合いまたは重篤度;患者個人の反応;投与形態;投与される製剤の生物学的利用能特性;選択される服用計画(dose regimen);他の併用薬の使用;ならびに他の関係のある状況。
【0066】
式Iの化合物の有効量と組み合わせて投与されるmGluRアゴニストの強化量は、1日あたり体重1キログラムあたり、約0.1ミリグラム(mg/kg/day)から約100mg/kg/dayまで変わると予想されており、有効量の式Iの化合物無しで投与される場合に同じ効果を発揮するのに必要とされる量より少ないと予想されている。併用されるmGluアゴニストの好ましい量は当業者により求められ得る。
【0067】
本発明の化合物は、薬剤を一緒にする組合せが各薬剤単独であるより安全で効果的である場合に、式Iの化合物または他の薬剤が有用であり得る疾病または病状の危険の治療、防止、制御、改善、または軽減において、1種または複数の他の薬剤と組み合わせて使用し得る。このような他の(単数または複数の)薬剤は、式Iの化合物と同時に、または逐次的に、それが通常使用されている経路により、またそのような量において投与され得る。式Iの化合物が1種または複数の他の薬剤と同時に使用される場合、このような他の薬剤と式Iの化合物を含む一体投薬形の医薬組成物が好ましい。しかし、併用療法には、式Iの化合物と1種または複数の他の薬剤とを、様々に重ねて計画的に投与する療法も含まれる。1種または複数の他の活性成分と組み合わせて使用される場合に、本発明の化合物と他の活性成分は、それぞれが単独で使用される場合より、少ない服用量で使用され得るということも想定されている。このように、本発明の医薬組成物には、式Iの化合物以外に、1種または複数の他の活性成分を含むものが含まれる。
【0068】
上の組合せには、本発明の化合物と1種の他の活性成分との組合せだけでなく、2種以上の他の活性成分との組合せが含まれる。
【0069】
同様に、本発明の化合物は、本発明の化合物が有用である疾病または病状の危険を防止、治療、制御、改善、または軽減するのに用いられる他の薬剤と組み合わせて使用され得る。このような他の薬剤は、本発明の化合物と同時に、または逐次的に、それが通常使用されている経路により、またそのような量において投与され得る。本発明の化合物が、1種または複数の他の薬剤と同時に使用される場合、本発明の化合物に加えてこのような他の薬剤を含む医薬組成物が好ましい。このように、本発明の医薬組成物には、式Iの化合物以外に、1種または複数の他の活性成分もまた含むものが含まれる。
【0070】
本発明の化合物と第2の活性成分との重量比は変動し、各成分の有効服用量に応じて決まるであろう。一般にそれぞれの有効服用量が用いられるであろう。こうして、例えば、本発明の化合物が別の薬剤と組み合わせられる場合、本発明の化合物と他の薬剤の重量比は、一般に、約1000:1から約1:1000、好ましくは約200:1から約1:200の範囲であろう。本発明の化合物と他の活性成分との組合せはまた、一般に、前記の範囲内にあるであろうが、それぞれの場合に、各活性成分の有効服用量が用いられるべきである。
【0071】
このような組合せにおいて、本発明の化合物と他の活性成分は、別々に、あるいは連携させて投与され得る。さらに、1つの要素の投与は、他の薬剤の投与の、前、同時、あるいは後であり得る。
【0072】
本発明の化合物を、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、脳槽内注射または注入、皮下注射、あるいは埋め込み(implant))により、吸入スプレ、鼻、膣、直腸、舌下、または局所投与経路により、投与することができ、また、単独で、または組み合わせて、各投与経路に適する、無毒で薬学的に許容される通常の担体、アジュバントおよびビヒクルを含む適当な投薬単位製剤として処方することができる。マウス、ラット、馬、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、モンキーなど温血動物の治療以外に、本発明の化合物は、ヒトに使用して効果的である。
【0073】
本発明の化合物の投与のための医薬組成物は、簡便には、投薬単位の形で提供され、調剤術の技術分野においてよく知られている方法により調製され得る。全ての方法は、活性成分と、1種または複数の補助的な成分をなす担体とを組合せるステップを含む。一般に、医薬組成物は、活性成分と、液体担体または細かく分割された固体担体、あるいはこれらの両方とを、一様に、または密接に組合せ、次に、必要であれば、その生成物を成型して望みの製剤とすることにより調製される。医薬組成物において、目的活性化合物は、疾病の経過または病状に望みの効果を生じるのに十分な量で、含められる。本明細書において、「組成物」という用語は、指定量で指定成分を含む製品、ならびに、指定量における指定成分の組合せから、直接または間接に得られる製品を包含すると想定されている。
【0074】
活性成分を含む薬剤組成物は、経口使用に適する形態、例えば、錠剤、トローチ、薬用ドロップ(lozenge)、水性または油性懸濁液、分散性粒子または顆粒、エマルジョン、ハードまたはソフトカプセル、あるいはシロップまたはエリキシル剤であり得る。経口使用を想定した組成物は、医薬組成物の製造のための、当技術分野において知られている方法により調製され、このような組成物は、製剤を薬として洗練されており口に合うようにするために、甘味剤、芳香剤、着色剤および保存剤からなる群から選択される1種または複数の作用剤を含み得る。錠剤は、錠剤の製造に適しており、無毒で薬学的に許容される賦形剤と混合された活性成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;顆粒化および崩壊剤、例えば、コーンスターチ、またはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシア;ならびに滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク;であり得る。錠剤は被覆されていなくても、あるいは、消化管における崩壊と吸収を遅らせることにより、作用を長期に渡り維持するために、それらは、知られている方法により被覆されていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような時間を遅らせる材料を用いることができる。制御放出のための浸透性治療錠剤とするために、それらを、米国特許第4256108号、米国特許第4166452号、および米国特許第4265874号に記載される方法により被覆してもよい。
【0075】
経口使用のための製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されたハードゼラチンカプセルとして、あるいは、活性成分が水またはオイル基材(medium)、例えば、ピーナッツオイル、液体パラフィン、またはオリーブオイルと混合されたソフトゼラチンカプセルとしても提供され得る。
【0076】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適する賦形剤と混合された活性材料を含む。このような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガムである;分散または湿潤剤は、天然のリン脂質、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。水性懸濁液は、1種または複数の保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、1種または複数の着色剤、1種または複数の芳香剤、ならびに、1種または複数の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンもまた含み得る。
【0077】
油性懸濁液は、植物オイル、例えば、ピーナッツ油、オリーブオイル、ゴマ油またはココナツオイル中に、あるいは、液体パラフィンのような鉱油中に、活性成分を懸濁させることにより処方され得る。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、ハードパラフィンまたはセチルアルコールを含み得る。前記のような甘味剤と、芳香剤は、製剤を口に合うようにするために添加され得る。これらの組成物は、アスコルビン酸のような酸化防止剤の添加により保存処理され得る。
【0078】
水を加えることにより水性懸濁液を調製するのに適する分散性の粉末および顆粒は、分散または湿潤剤、懸濁剤および1種または複数の保存剤と混合された活性成分を備える。適切な分散または湿潤剤および懸濁剤は、すでに上に記載されたものにより例示される。追加の賦形剤、例えば甘味剤、芳香剤および着色剤もまた含まれ得る。
【0079】
本発明の医薬組成物はまた、水中油エマルジョンの形態であってもよい。オイル相は、植物オイル、例えばオリーブオイルもしくはピーナッツ油、または鉱油、例えば液体パラフィン、あるいはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然ガム、例えばアカシアガムまたはトラガカントガム、天然リン脂質、例えば大豆、レシチン、ならびに、脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、および、前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。エマルジョンはまた、甘味剤および芳香剤を含み得る。
【0080】
シロップおよびエリキシル剤は、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースを用いて処方され得る。このような製剤はまた、粘滑薬(demulcent)、保存剤および芳香剤および着色剤も含み得る。
【0081】
本発明の医薬組成物は、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は上に記載された適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、知られている技術に従って処方され得る。無菌の注射可能な製剤はまた、例えば1,3−ブタンジオール溶液のような、無毒の薬学的に許容される希釈剤または溶剤の無菌の注射可能な溶液または懸濁液でもあり得る。許容され使用され得るビヒクルおよび溶剤の中には、水、リンゲル液および生理食塩水がある。さらに、無菌の不揮発性油(fixed oil)が、通常、溶剤または懸濁媒体(medium)として用いられる。この目的では、合成モノ−またはジグリセリドを含めて、刺激のない不揮発性油が使用され得る。さらに、オレイン酸のような脂肪酸が注射可能医薬品の調製に使用されている。
【0082】
本発明の化合物はまた、薬剤の直腸投与のための坐薬の形態において投与され得る。これらの組成物は、薬剤と、通常の温度では固体であるが直腸の温度では液体であるため直腸で溶けて薬剤を放出する適切な非刺激性賦形剤とを混合することにより調製され得る。このような材料はカカオ脂およびポリエチレングリコールである。
【0083】
局所使用には、本発明の化合物を含む、クリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液などが用いられる(この適用目的では、局所適用にマウスウォッシュおよびうがい液が含まれ得る)。
【0084】
本発明の医薬組成物と方法は、本明細書において言及されたように、前記の病理的状態の治療において通常適用される治療上活性のある他の成分をさらに含み得る。
【0085】
代謝調節型グルタミン酸受容体活性の増強を必要とする病状の危険の治療、防止、制御、改善、または軽減において、相応しい投薬レベルは、一般に、1日あたり、患者の体重1kgあたり約0.01から500mgであり、この量は1回または複数回に分けて投与され得る。好ましくは、投薬レベルは、1日あたり約0.1から約250mg/kg、より好ましくは、1日あたり約0.5から約100mg/kgであろう。適切な投薬レベルは、1日あたり約0.01から250mg/kg、1日あたり約0.05から100mg/kg、あるいは、1日あたり約0.1から50mg/kgであり得る。この範囲内で、投薬は、1日あたり0.05から0.5、0.5から5、あるいは、5から50mg/kgであり得る。経口投与では、本発明の組成物は、治療される患者へ症状に合わせて投薬するために、好ましくは、1.0から1000ミリグラムの活性成分、特に1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0、および1000.0ミリグラムの活性成分を含む錠剤の形態で提供される。本発明の化合物は、1日あたり1から4回、好ましくは、1日あたり1回または2回の服用計画で投与される。
【0086】
グルタミン酸機能障害伴う神経および精神の疾患または、本発明の化合物の必要性が指示される他の疾病の危険を治療、予防、制御、改善、または軽減する際に、一般に、満足な結果は、動物の体重1キログラムあたり、約0.1ミリグラムから約100ミリグラムの本発明の化合物を、好ましくは、毎日1回の服用として、あるいは、1日あたり2から6回の分割服用において、あるいは放出が持続する形態において、毎日投薬する場合に得られる。ほとんどの大型の哺乳動物では、毎日の全投薬量は、約1.0ミリグラムから約1000ミリグラム、好ましくは、約1ミリグラムから約50ミリグラムである。70kgの成人の場合には、毎日の全服用量は、一般に、約7ミリグラムから約350ミリグラムである。この投薬計画は、最適の治療効果が得られるように調節され得る。
【0087】
しかし、特定の患者に対する具体的な服用レベルと投薬頻度は変更され、用いられる具体的な化合物、代謝安定性およびその化合物の作用の長さ、年齢、体重、一般的健康状態、性、食事、投与形態および期間、排泄速度、薬剤の組合せ、特定の病状の重篤度、ならびに、治療を受けているホストを含めて、様々な要因に応じて決まるということが理解されるであろう。
【0088】
化学の記述と後の実施例において使用される省略形は次の通りである:
CHCl ジクロロメタン
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
CCl 四塩化炭素
Bz 過酸化ベンゾイル
NBS N−ブロモスクシンアミド
PS−DIEA ポリスチレンジイソプロピルエチルアミン
PS−DMAP ポリスチレン4−N,N−ジメチルアミノピリジン
THF テトラヒドロフラン
TFA トリフルオロ酢酸
MeOH メタノール
Ra−Ni ラネーニッケル
本発明の化合物を調製するいくつかの方法が、以下のスキームと実施例において示される。出発物質と必要な中間体は、いくつかの場合には市販されており、あるいは、文献の手順に従って、または本明細書に示されるようにして調製され得る。
【0089】
本発明の化合物は、文献において知られているか、実験手順において示される他の標準的な操作に加えて、以下のスキームにおいて示される反応を用いることにより調製され得る。スキームにおいて示される置換基番号は、請求範囲において用いられるものと必ずしも相関しておらず、しばしば、分かり易いように、前記の定義の下では複数の置換基が許される場合に、1個の置換基が化合物に付けられて示されている。
【0090】
本発明の化合物を生成させるのに用いられる反応は、文献において知られている、あるいは実験手順において例示される、エステル加水分解、保護基の開裂などのような他の標準的な操作に加えて、反応スキームI〜IVに示される反応を用いることにより調製される。
【0091】
これらの反応は、本発明の化合物を得るために順次用いられるか、あるいは、それらを、反応スキームにおいて記載されるアルキル化反応により次に結合されるフラグメントを合成するのに用いてもよい。
【0092】
いくつかの場合には、最終生成物を、例えば置換基を操作することにより、さらに修飾してもよい。これらの操作には、それらに限定されないが、当業者に広く知られている、還元、酸化、アルキル化、アシル化、および加水分解反応が含まれる。いくつかの場合には、前記の反応スキームを実施する順序を、反応を円滑にするために、あるいは、望ましくない反応生成物を避けるために、変更してもよい。以下の実施例は、本発明がより完全に理解されるように提供されている。これらの実施例は、例示であるにすぎず、如何なる仕方においても本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。
【0093】
【化15】

【0094】
反応スキームIにおいて示されるように、適切に置換されたオルト−メチルアニリンI−1が標準的な条件の下でアシル化されて、対応するアミドI−2が得られる。次に、中間体I−2は、標準的な臭素化反応を受けて、臭化ベンジル化合物(benzylic bromide)I−3を生成する。次に、様々な窒素求核剤により臭化ベンジル化合物が求核置換を受けて、中間体I−3は本発明のベンズアミド化合物I−4を生成する。
【0095】
【化16】

【0096】
反応スキームIIは、適切に置換されたオルト−シアノアニリンII−1から出発して、それを標準的な条件の下でアシル化してII−2を生成させる、本発明の化合物の調製を例示している。中間体II−2は水素雰囲気の下で不均一ニッケル触媒により還元されて対応するベンジルアミン化合物II−3を生成する。適切に置換された1,2−二酸ハライドとの反応は、対応する本発明のフタリド−ベンズアミド化合物、II−4を生成する。
【0097】
【化17】

【0098】
反応スキームIIIは、中間体II−3から出発する、本発明の化合物の調製を例示している。標準的な条件の下でのアシル化により、本発明のベンズアミド化合物、III−1が得られる。
【0099】
【化18】

【0100】
反応スキームIVは、中間体II−3から出発する、本発明の化合物の調製を例示している。官能基結合第1級アミン(HNR)による臭化ベンジル化合物の求核置換により、対応するベンジルアミン化合物IV−1が生成する。標準的な条件の下でのアシル化により本発明のベンズアミド化合物、IV−1が得られる。
【0101】
いくつかの場合には、前記の反応スキームを実施する順序は、反応を円滑にするために、あるいは、望ましくない反応生成物を避けるために、変更される。次の実施例は、本発明がより完全に理解されるように提供される。これらの実施例は、例示であるにすぎず、如何なる仕方においても本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。用いられる特定の物質、化学種および条件は、本発明のさらなる例示を意図したものであり、本発明の正当な範囲を限定するものではない。
【0102】
【化19】

【0103】
2−{[(4−クロロ−2−メチルフェニル)アミノ]カルボニル}フェニルアセテート(1−2)
4−クロロ−2−メチルアニリン、1−1(10.0g 0.071mol)のトルエン溶液を攪拌しながら、N,N−ジイソプロプルエチルアミン(24.7mL 0.014mol)を加え、次に、アセチルサリチロイル(acetylsalicyloyl)クロリドをゆっくりと添加した。TLCにより完了が確認されるまで混合物を攪拌した。反応物を濾過し、減圧下に乾燥して、9.4グラムの1−2を得た。LCMS分析:(CHCN/HO/1%TFA、4分 勾配)、純度88%、M+1ピーク m/e 304。
【0104】
2−({[2−(ブロモメチル)−4−クロロフェニル]アミノ}カルボニル)フェニルアセテート(1−3)
直ちに、1−2(9.4g 0.031mol)を、再結晶したN−ブロモスクシンイミド(5.5g 0.031mol)と過酸化ベンゾイル(0.75g 3.10mmol)と共にCCl溶液とした。反応物を90℃に加熱し光源を用い、TLCにより完了を確認した。完了すると、溶剤を2/3に減らし、シリカゲルの細かい詰物を通して濾過して、10.5gの1−3を得た。LCMS分析:(CHCN/HO/1%TFA、4分 勾配)、純度85%、M+1ピーク m/e 384。
【0105】
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}−2−ヒドロキシベンズアミド(1−4)
化合物1−3(6.0g 0.015mol)を50mLのDMFに溶かした。これに、フタルイミド(3.31g 0.023mol)、KCO(6.2g 0.045g)および触媒量のKIを加えて、50℃で一夜攪拌した。完了後、反応物を酢酸エチルで希釈し、次に、塩水(brine)(25mLで6回)で洗って、2.9gの1−4を粗混合物として得て、次に、それを順相クロマトグラフィで精製した。H NMR(300MHz,CDCl):4.83ppm(2H,S);7.05ppm(2H,m);7.36ppm(1H,dd,J=2.4Hz,8.6Hz);7.50ppm(1H,dt,J=1.5Hz,8.5Hz);7.59ppm(1H,d,J=2.4Hz);7.75ppm(3H,m);7.91ppm(2H,m);8.18ppm(1H,d,7.2Hz);10.17ppm(1H,s);12.27ppm(1H,s)分析LCMS:単一ピーク(214nm)が3.633分(CHCN/HO/1%TFA,4分勾配)、HRMS C2215Cl(M+H)の計算値、407.0799;実測値407.0793(M+H)。
【0106】
表1の化合物をスキーム1に示されるようにして合成したが、スキーム1におけるフタルイミドを適切に置換された窒素求核剤に、あるいは、反応スキーム1および2においては適切に置換された窒素求核剤または1,2−二酸クロリドに置き換えた。必要なものは、市販されていた、文献に記載されていた、あるいは、有機合成の習熟者により容易に合成された。
【0107】
【表1】











【0108】
【化20】

【0109】
N−(4−ブロモ−2−シアノフェニル)ピリジン−2−カルボキサミド(2−2)
2−アミノ−5−ブロモベンゾニトリル2−1(2.8g,0.014mol)のトルエン溶液を攪拌しながら、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(4.95mL、0.028mol)を加え、次に、ピコリノイルクロリド(2.74g、0.015mol)をゆっくりと加えた。TLCにより完了が確認されるまで混合物を攪拌した。反応物を濾過し、減圧下に乾燥して3グラムの2−2を得た。LCMS分析:(CHCN/HO/1%TFA、4分 勾配)、純度95%、M+1ピーク m/e 301。
【0110】
N−[2−(アミノメチル)−4−ブロモフェニル]ピリジン−2−カルボキサミド(2−3)
直ちに、2−2(3g、0.0099mol)を、2.0Mアンモニアのメタノール溶液に加えた。この溶液に、触媒としてラネーニッケルを加えた。TLCにより完了が確認されるまで、水素バルーンを取り付けて反応物を攪拌した。完了すると、反応物を濾過し、溶剤を除去して2.9グラムの2−3を得た。LCMS分析:(CHCN/HO/1%TFA、4分 勾配)、純度95%、M+1ピーク m/e 306。
【0111】
N−{5−ブロモ−2−[(ピリジン−2−イルカルボニル)アミノ]ベンジル}ピリジン−2−カルボキサミド(2−4)
化合物2−3(0.050g、0.16mmol)を6mLの塩化メチレンに溶かした。反応容器にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.06mL、0.32mmol)および(200mg,0.32mmol、1.49mmol/グラム)を加え、次に、ピコリノイルクロリド(0.057g、0.32mol)を加えた。TLCにより完了が確認されるまで混合物を攪拌した。次に、化合物を濾過し、次に、溶剤を除去し、次に、質量誘導(mass guided)LC/MSで精製して、46mg(70%)の表題の化合物を得た。H NMR(300MHz、CDCl):8.89ppm(s,2H)、8.43ppm(m,2H)、8.22ppm(m,2H)、8.13ppm(t,J=4Hz,1H)、8.0ppm(s,1H)、7.81ppm(m,2H)、7.41ppm(m,1H)、7.2ppm(m,2H)、4.22ppm(d,J=4Hz,2H);HRMS C1915BrN(M+1)の計算値 411.0451;測定値:411.0444。
【0112】
表2の化合物をスキーム2に示されるようにして合成したが、スキーム2におけるピコリノイルクロリドを適切に置換された窒素求核剤に、もしくは、反応スキーム3においては適切に置換された酸クロリドに、あるいは、反応スキーム4においては適切に置換された第1級アミン(RNH)および酸クロリドに置き換えた。必要なものは、市販されていた、文献に記載されていた、あるいは、有機合成の習熟者により容易に合成された。
【0113】
【表2】








【0114】
本発明がその特定の実施形態を参照して説明され例示されたが、当業者は、手順およびプロトコルの様々な適応、変更、修正、置換、削除、または追加が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、なされ得ることを理解するであろう。例えば、本明細書において上に記載された特定の投薬量以外の有効投薬量が、何らかの徴候に対して、上に示された本発明の化合物より治療されている哺乳動物の反応における変化の結果として適用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々のジアステレオマー:
【化1】

(式中、Rは以下からなる群から選択される:
(1)水素、
(2)ハロゲン
(3)C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、ハロゲン、ヒドロキシルまたはフェニルで置換されている)、
(4)−OC1〜6アルキル、
(5)−S(O)−C1〜6アルキル(mは0、1および2から選択される)、
(6)−CO(Rは独立に以下から選択される:
(a)水素、
(b)−C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、1〜6個のフルオロで置換されている)、
(c)ベンジル、および
(d)フェニル)、
(7)−NR1011(R10およびR11は独立に以下から選択される:
(a)水素、
(b)−C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、1〜6個のフルオロで置換されている)、
(c)−C5〜6シクロアルキル、
(d)ベンジル、
(e)フェニル、
(f)−S(O)−C1〜6アルキル、
(g)−S(O)−ベンジル、および
(h)−S(O)−フェニル)、
(8)−S(O)−NR1011
(9)フェニル(これは、無置換であるか、あるいは、以下から独立に選択される1個または複数の置換基で置換されている:
(a)−C1〜6アルキル、
(b)−O−C1〜6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)トリフルオロメチル、および
(f)−OCF);
は以下からなる群から選択される:
(1)C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、ハロゲン、ヒドロキシルまたはフェニルで置換されている)、
(2)C3〜7シクロアルキル(これは、無置換であるか、あるいは、ハロゲン、ヒドロキシルまたはフェニルで置換されている)、および
(3)フェニル(これは、無置換であるか、あるいは、以下から選択される1個または複数の置換基で置換されている:
(a)C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、−NR1011で置換されている)、
(b)−O−C1〜6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)トリフルオロメチル、
(f)−OCF
(g)−CO
(h)−NR1011
(i)−C(O)NR1011、および
(j)−NO)、
(4)以下から選択される複素環:
ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾロニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カラバゾリル、カルボニリル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オンイル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロチエニル、ならびに、これらのN−オキシド(前記複素環は、無置換であるか、あるいは、以下から独立に選択される1個または複数の置換基により置換されている:
(a)−C1〜6アルキル、
(b)−O−C1−6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)フェニル、
(f)トリフルオロメチル、
(g)−OCF
(h)−CO
(i)−NR1011、および
(j)−CONR1011);
は以下からなる群から選択される:
(1)C1〜6アルキル(これは、無置換であるか、あるいは、ハロゲン、ヒドロキシルまたはフェニルで置換されている)、
(2)C3〜7シクロアルキル(これは、無置換であるか、あるいは、ハロゲン、ヒドロキシルまたはフェニルで置換されている)および
(3)フェニル(これは、無置換であるか、あるいは、以下から選択される1個または複数の置換基で置換されている:
(a)C1〜6アルキル、
(b)−O−C1〜6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)トリフルオロメチル、
(f)−OCF
(g)−CO
(h)−NR1011
(i)−C(O)NR1011、および
(j)−NO)、
(4)以下から選択される複素環:
ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾロニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カラバゾリル、カルボニリル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オンイル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロチエニル、ならびに、これらのN−オキシド(前記複素環は、無置換であるか、あるいは、以下から独立に選択される1個または複数の置換基により置換されている:
(a)−C1〜6アルキル、
(b)−O−C1−6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)フェニル、
(f)トリフルオロメチル、
(g)−OCF
(h)−CO
(i)−NR1011、および
(j)−CONR1011)、
あるいは、RおよびRは一緒になって、フタルイミジル、サクシンイミジルまたはグルタミジル環をなす(これは、無置換であるか、あるいは、Rの定義から独立に選択される1個または複数の置換基により置換されている);
およびRは、以下からなる群から独立に選択される:
(1)ハロゲン、および
(2)C1〜6アルキル;
nは1、2および3から選択される整数である)。
【請求項2】
式Iaの請求項1に記載の化合物、ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマー:
【化2】

(式中、Rは以下からなる群から選択される:
(1)水素、
(2)−C1〜6アルキル、
(3)−O−C1〜6アルキル、
(4)ハロ、
(5)ヒドロキシ、
(6)−NO、および
(7)フェニル)。
【請求項3】
式Ibの請求項1に記載の化合物:
【化3】

ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマー。
【請求項4】
式Icの請求項1に記載の化合物:
【化4】

ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマー。
【請求項5】
式Idの請求項1に記載の化合物:
【化5】

ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマー。
【請求項6】
式Ieの請求項1に記載の化合物:
【化6】

ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマー。
【請求項7】
式Ifの請求項1に記載の化合物:
【化7】

ならびに薬学的に許容されるこれらの塩およびこれらの個々の鏡像異性体およびジアステレオマー。
【請求項8】
が水素である請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
がハロゲンである請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
がフルオロである請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
がクロロである請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
がブロモである請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
がメチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
がフェニルであり、該フェニルが無置換であるか、あるいは以下から独立に選択される1個または複数の置換基により置換されている請求項1に記載の化合物:
(a)−C1〜6アルキル、
(b)−O−C1−6アルキル、
(c)ハロ、
(d)ヒドロキシ、
(e)トリフルオロメチル、
(f)−OCF
(g)−CO−C1〜6アルキル、
(h)−NH
(i)−NH−C1〜6アルキル、
(j)−CONH、および
(k)−CONH−C1〜6アルキル。
【請求項15】
がフェニルであり、該フェニルが無置換であるか、あるいは、ヒドロキシ、ハロ、-CONHC1〜6アルキルまたは−CO1〜6アルキルより置換されている請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
が、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラダジニル、ピペラジニル、フラニルまたはチエニルである請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
およびRが一緒になってフタルイミジル環をなす請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
が水素またはC1〜6アルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
が水素である請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
nが1である請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
以下からなる群から選択される化合物:
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}−2−ヒドロキシベンズアミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリミジン−2−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}−2−ヒドロキシベンズアミド;
2−[({2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]−3−フルオロフェニル}アミノ)カルボニル]フェニル;
N−{2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]−3−フルオロフェニル}−2−ヒドロキシベンズアミド;
2−クロロ−N−{2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]−3−フルオロフェニル}ベンズアミド;
N−{2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]−3−フルオロフェニル}−2−フルオロベンズアミド;
N−{2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]−3−フルオロフェニル}ベンズアミド;
N−{2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]−3−フルオロフェニル}−3,5−ジフルオロベンズアミド;
N−{2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}−3−メトキシベンズアミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}−2−メチルベンズアミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}−2−フラミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}シクロヘキサンカルボキサミド;
N−{5−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}シクロヘキサンカルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}−1,3−チアゾール−4−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}−3−ヒドロキシピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}イミダゾ[2,1−b][1,3]チアゾール−6−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}−1,2,5−チアジアゾール−3−カルボキサミド;
N−{2−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]−4−メトキシフェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−ブロモ−2−[(4−フルオロ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(2,5−ジオキソ−3−フェニル−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)メチル]フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(4−フルオロ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(5,6−ジメチル−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(5−フルオロ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(5−エトキシ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{5−ブロモ−3−[(5,6−ジクロロ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]ピリジン−2−イル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−クロロ−2−[(5−ヒドロキシ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−ブロモ−2−[(5−フルオロ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−ブロモ−2−[(5−エトキシ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−ブロモ−2−[(5,6−ジクロロ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−ブロモ−2−[(4,6−ジクロロ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{2−[(4,6−ジクロロ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]−4−フルオロフェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{2−[(5,6−ジクロロ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]−4−フルオロフェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−フルオロ−2−[(5−ニトロ−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{4−ブロモ−2−[(4−メチル−1,3−ジオキソ−3,4,5,6−テトラヒドロシクロペンタ[c]−ピロール−2(1H)−イル)メチル]フェニル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{5−ブロモ−2−[(ピリジン−2−イルカルボニル)アミノ]ベンジル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−ブロモ−2−{[(2−フルオロベンゾイル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{5−ブロモ−2−[(ピリジン−2−イルカルボニル)アミノ]ベンジル}ピリジン−2−カルボキサミド;
N−[4−ブロモ−2−({[2−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}メチル)フェニル]−ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−クロロ−2−{[(3,5−ジクロロベンゾイル)(エチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(2−{[(4−ブトキシベンゾイル)(エチル)アミノ]メチル}−4−クロロフェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−クロロ−2−{[(3,5−ジメトキシベンゾイル)(エチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−クロロ−2−{{(3,4−ジクロロベンゾイル)(エチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−クロロ−2−{[(3,5−ジクロロベンゾイル)(イソブチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−クロロ−2−{[(3,5−ジメトキシベンゾイル)(イソブチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−{5−フルオロ−2−[(ピリジン−2−イルカルボニル)アミノ]ベンジル}キノキサリン−2−カルボキサミド;
N−(2−{[(4−ブトキシベンゾイル)アミノ]メチル}−4−フルオロフェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−ブロモ−2−{[(3−メトキシベンゾイル)(メチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−クロロ−2−{[(3,5−ジクロロベンゾイル)(メチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(2−{[[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル](メチル)アミノ]メチル}−4−クロロフェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−[4−クロロ−2−({(3,5−ジクロロベンゾイル)[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}メチル)フェニル]ピリジン−2−カルボキサミド;
N−[2−(ベンゾイルアミノ)−5−ブロモベンジル]−N,3,5−トリメチルベンズアミド;
N−(4−ブロモ−2−{[(3,5−ジクロロベンゾイル)(メチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−ブロモ−2−{[(3,4−ジフルオロベンゾイル)(メチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−ブロモ−2−{[(2,4−ジフルオロベンゾイル)(メチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−ブロモ−2−{[(3,4−ジクロロベンゾイル)(メチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−[4−クロロ−2−({メチル[2−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}メチル)フェニル]ピリジン−2−カルボキサミド;
N−(4−クロロ−2−{[(3,4−ジクロロベンゾイル)(メチル)アミノ]メチル}フェニル)ピリジン−2−カルボキサミド。
【請求項22】
不活性担体および請求項1の化合物を含む医薬組成物。
【請求項23】
有効量の請求項1の化合物の投与を含む、哺乳動物における代謝調節型グルタミン酸受容体活性の増強または抑制方法。
【請求項24】
請求項1の化合物と医薬担体または希釈剤とを合わせることを含む、哺乳動物における代謝調節型グルタミン酸受容体活性の増強または抑制のための薬剤製造方法。
【請求項25】
治療に有効な量の請求項1に記載の化合物を患者に投与することを含む、それを必要としている哺乳動物患者におけるグルタミン酸機能障害に伴う神経および精神疾患の危険を治療、制御、改善または軽減する方法。
【請求項26】
治療に有効な量の請求項1に記載の化合物を患者に投与することを含む、それを必要としている哺乳動物患者における精神分裂病の危険を治療、制御、改善または軽減する方法。
【請求項27】
治療に有効な量の請求項1に記載の化合物を患者に投与することを含む、それを必要としている哺乳動物患者における不安の危険を治療、制御、改善または軽減する方法。

【公表番号】特表2006−521358(P2006−521358A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507424(P2006−507424)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/008627
【国際公開番号】WO2004/087048
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】