代謝障害のための併用処置
【課題】代謝障害のための併用処置法の提供。
【解決手段】インスリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム硬化症および動脈硬化症などの種々の代謝障害は、式Iの化合物と組み合わせて、インクレチン模倣物およびジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターから選択される化合物によって処置され得る。式(I)R1、R2、R3、R4およびR5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシより選択され;mは、0、2、4。
【解決手段】インスリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム硬化症および動脈硬化症などの種々の代謝障害は、式Iの化合物と組み合わせて、インクレチン模倣物およびジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターから選択される化合物によって処置され得る。式(I)R1、R2、R3、R4およびR5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシより選択され;mは、0、2、4。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
糖尿病は、主要でありかつ高まりつつある公衆衛生上の懸案事項である。糖尿病の後期の合併症は、国家の医療資源の多くを消耗させる。
【0002】
糖尿病またはインスリン抵抗性症候群を処置するために特定の他の薬物と組み合わせて式Iの化合物を使用することは、特許文献1、WO/073611、特許文献2、特許文献3および国際特許出願第PCT/US07/60833号(これらの全ては、Wellstat Therapeutics Corp.に帰属する)に開示される。
【0003】
エキセンディン−4は、メトホルミン、抗糖尿病性スルホニル尿素、およびチアゾリジンジオンと組み合わせて試験されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第02/100341号パンフレット
【特許文献2】国際公開第04/091486号パンフレット
【特許文献3】国際公開第06/127133号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム硬化症および動脈硬化症からなる群より選択される状態を有する哺乳動物被験体を処置する方法であって、式I:
【化3】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を、該代謝状態を処置するために有効な合わせた量でインクレチン模倣物またはジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターと組み合わせて該被験体に投与する工程を包含し、式中、
Mは、0、2または4であり;そして
Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;
R6は、水素、Oまたはヒドロキシであり;そして
R1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択されるか;あるいは
Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルであり;
R6は、水素であり;そして
R1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択される;
方法。
(項目2)
R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである、項目1に記載の方法。
(項目3)
Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルである、項目1に記載の方法。
(項目4)
Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルである、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記化合物は、式IA:
【化4】
によって示される、項目1に記載の方法。
(項目6)
R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記化合物は、4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記化合物は、3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル酢酸である、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記化合物は、4−3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル)−4(R)−ヒドロキシブタン酸である、項目6に記載の方法。
(項目10)
前記化合物は、N−ヒドロキシ−2−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]アセトアミドである、項目6に記載の方法。
(項目11)
前記インクレチン模倣物は、エキセンディン、エキセンディンアゴニスト、非ペプチド低分子GLP−1レセプターアゴニスト、それらのポリマー改変形態およびアシル化形態ならびに薬学的に受容可能な塩、水和物、および溶媒化合物、ならびにこのような塩の水和物および溶媒化合物からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記エキセンディンは、エキセンディン−4またはエキセンディン−4アミドである、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターは、ビルダグリプチン、シタグリプチン、サクサグリプチン、アログリプチン、ABT−279、BI 1356、ALS 2−0426およびPT630からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記被験体は、ヒトである、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記インクレチン模倣物または前記ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターは、単独で投与される場合に通常の治療用量未満である量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記合わせた量は、前記処置が前記被験体における体重減少および食欲減退のうちの1つ以上をもたらすように選択される、項目1に記載の方法。
(項目17)
式Iの化合物は、経口投与され、そして前記インクレチン模倣物は、皮下注射によって投与される、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記状態は、前糖尿病またはII型糖尿病である、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記前糖尿病は、インスリン抵抗性およびグルコース寛容減損のうちの1つまたは両方を含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記処置は、II型糖尿病の症状またはII型糖尿病の症状を発症する機会を減少させ、該症状は、II型糖尿病に関連するアテローム硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍および白内障からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目21)
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、および多嚢胞性卵巣症候群からなる群より選択される状態の処置;あるいはII型糖尿病に関連するアテローム硬化症、動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍または白内障を発症する機会の処置または減少;あるいは高脂血症、悪液質、および肥満からなる群より選択される状態の処置のための医薬の製造における生物学的に活性な薬剤の使用であって、該薬剤が、式I:
【化5】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり;式中
Mは、0、2または4であり;そして
Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;
R6は、水素、Oまたはヒドロキシであり;そして
R1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択されるか;あるいは
Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルであり;
R6は、水素であり;そして
R1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択され;
該薬剤は、該代謝状態を処置するために有効な合わせた量でインクレチン模倣物またはジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターと組み合わせた投与のために処方される、使用。
(項目22)
R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである、項目21に記載の使用。
(項目23)
Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルである、項目21に記載の使用。
(項目24)
Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルである、項目21に記載の使用。
(項目25)
前記化合物は、式IA:
【化6】
によって示される、項目21に記載の使用。
(項目26)
R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである、項目25に記載の使用。
(項目27)
前記化合物は、4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸である、項目26に記載の使用。
(項目28)
前記化合物は、3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル酢酸である、項目26に記載の使用。
(項目29)
前記化合物は、4−3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル)−4(R)−ヒドロキシブタン酸である、項目26に記載の使用。
(項目30)
前記化合物は、N−ヒドロキシ−2−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]アセトアミドである、項目26に記載の使用。
(項目31)
前記インクレチン模倣物は、エキセンディン、エキセンディンアゴニスト、非ペプチド低分子GLP−1レセプターアゴニスト、それらのポリマー改変形態およびアシル化形態ならびに薬学的に受容可能な塩、水和物、および溶媒化合物、ならびにこのような塩の水和物および溶媒化合物からなる群より選択される、項目21に記載の使用。
(項目32)
前記エキセンディンは、エキセンディン−4またはエキセンディン−4アミドである、項目31に記載の使用。
(項目33)
前記ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターは、ビルダグリプチン、シタグリプチン、サクサグリプチン、アログリプチン、ABT−279、BI 1356、ALS 2−0426およびPT630からなる群より選択される、項目21に記載の使用。
(項目34)
前記医薬は、経口投与のために処方される、項目21〜33のいずれか1項に記載の使用。
(項目35)
前記インクレチン模倣物の量または前記ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターの量は、単独で投与される場合に通常の治療用量未満である、項目21に記載の使用。
(項目36)
前記合わせた量は、哺乳動物被験体に対する前記医薬の投与が該被験体において体重減少および食欲減退のうちの1つ以上をもたらすように選択される、項目21に記載の使用。
(項目37)
前記状態は、前糖尿病またはII型糖尿病である、項目21に記載の使用。
(項目38)
前記前糖尿病は、インスリン抵抗性およびグルコース寛容減損の一方または両方を含む、項目37に記載の使用。
本発明は、式I:
【0006】
【化1】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩と組み合わせた、インクレチン模倣物(mimetic)およびジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)インヒビターからなる群より選択される化合物の治療的使用に関する。
【0007】
式Iにおいて、mは、0、2または4である。Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;R6は、水素、Oまたはヒドロキシであり;そしてR1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択される。あるいは、Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルであり;R6は、水素であり;そしてR1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択される。
【0008】
本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病(I型糖尿病およびII型糖尿病の両方)、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム硬化症および動脈硬化症からなる群より選択される状態を有する哺乳動物被験体を処置する方法を提供し、その方法は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を、上記代謝状態を処置するために有効な合わせた量で式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩およびインクレチン模倣物を上記被験体に投与する工程を包含する。
【0009】
本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病(I型糖尿病およびII型糖尿病の両方)、および多嚢胞性卵巣症候群からなる群より選択される状態の処置;あるいは糖尿病に関連するアテローム硬化症、動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍または白内障を発症する機会の処置または減少;あるいは高脂血症、悪液質、および肥満からなる群より選択される状態の処置のための医薬の製造における生物学的に活性な薬剤の使用を提供し、その薬剤は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、そして上記代謝状態を処置するために有効な合わせた量でインクレチン模倣物と組み合わせた使用のために処方される。
【0010】
1以上の単位経口用量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩、1以上の単位注射用量のインクレチン模倣物、および上記インクレチン模倣物と組み合わせて式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を投与するための指示書を備えるキット。
【0011】
本発明は、式Iの化合物(例えば、化合物BI)と組み合わせたエキセンディン−4アミドなどのインクレチン模倣物(これはまた、グルカゴン様ペプチド−1アナログ(GLP−アナログ)である)が、実施例に示される通り、いずれかの化合物単独よりも優れた抗糖尿病活性を提供したという知見に基づく。GLP−1アナログおよびDPPIVインヒビターの両方は、概して、GLP−1レセプターの活性化を介して作用する。GLP−1アナログは、上記レセプターの直接結合によって作用する。DPPIVインヒビターは、GLP−1の内因性レベルを増大させることによって作用する。したがって、エキセンディン−4アミドの抗糖尿病活性を増幅し、そしてそれを可能にするという知見は、化合物BIと全範囲GLP−1アナログおよびDPPIVインヒビターとの組み合わせた使用を支持する。化合物BIの他の抗糖尿病アナログもまた、この構成において有用である。
【0012】
GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)に基づく抗糖尿病薬は、臨床的に有用な薬剤として出現している。GLP−1自体は、短い半減期を有するペプチドであり、そして治療剤としての使用に適していない。より長く持続するGLP−1アナログは、発見、考案および開発されている。エキセンディン−4(アメリカドクトカゲ(Gila−monster)(これは、1年に3回しか食べず、そしてそれらが食べる各回に機能的な膵臓をもたらすためにエキセンディンを使用する)に由来するペプチド)が、これらの間で顕著であり、エキセンディン−4は、GLP−1と相同性を有するが、インビボでかなり半減期を有する。別の出現しているストラテジーは、GLP−1を破壊する酵素(ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV))のインヒビターを含む。GLP−1アナログまたはGLP−1調節因子は、主に、膵島に対して作用し、高血糖の状態においてインスリン産出量を増大させ、そしてまた、グルカゴン生成を減少させる。正味の効果は、血糖が上昇する場合、血糖を低下させるが、グルコースが正常に近い場合、より小さい程度に低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1:化合物BI、エキセンディン−4アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける血清グルコース。
【図2】図2:化合物BI、エキセンディン−4アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける膵島インスリン(islet insulin)。
【図3】図3:化合物BI、エキセンディン−4アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける血清インスリン。
【図4】図4:化合物BI、エキセンディン−アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける血清グルコース。
【図5】図5:化合物BI、エキセンディン−アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける膵インスリン。
【図6】図6:化合物BI、エキセンディン−アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける血清グルコース。
【図7】図7:化合物BI、エキセンディン−アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける膵インスリン。
【図8】図8:化合物BIとエキセンディン−アミドとの組合せによって処置されたストレプトゾトシン処置C57Bl/6Jマウスにおける血清グルコース。
【図9】図9:化合物BIとエキセンディン−アミドとの組合せによって処置されたストレプトゾトシン処置C57Bl/6Jマウスにおける血清C−ペプチド。
【図10】図10:化合物BIとエキセンディン−アミドとの組合せによって処置されたストレプトゾトシン処置C57Bl/6Jマウスにおける膵インスリン。
【図11】図11:P32/98、化合物BI、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける血清グルコース。
【図12】図12:P32/98、化合物BI、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける膵インスリン。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書中で使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖アルキル基または分枝鎖アルキル基を意味する。特定の数の炭素原子を有すると同定されたアルキル基は、特定された数の炭素を有する任意のアルキル基を意味する。例えば、3個の炭素原子を有するアルキルは、プロピルまたはイソプロピルであり得;そして4個の炭素原子を有するアルキルは、n−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピルまたはt−ブチルであり得る。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードのうちの1つ以上をいう。
【0016】
本明細書中で使用される場合、ペルフルオロメチルまたはペルフルオロメトキシにおけるような用語「ペルフルオロ」は、目的の基が全ての水素原子の位置にフッ素原子を有していることを意味する。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「Ac」とは、基CH3C(O)−をいう。
【0018】
R6とそれが直接結合される炭素原子との間の結合は、破線を伴う実線によって上記の式Iにおいて示される。この表示は、目的の結合が単結合(R6が水素またはヒドロキシである場合)、または二重結合(R6がOである場合)のいずれかであり得ることを反映する。
【0019】
上記の式Iの表示におけるアスタリスクは、可能なキラル中心を示し、そしてその炭素は、R6がヒドロキシである場合、キラル中心である。このような場合において、本発明は、式Iの化合物の、ラセミ体、(R)鏡像異性体、および(S)鏡像異性体を提供し、それらの全ては、活性であると考えられる。これらの鏡像異性体の混合物は、例えば、Chirality 11:420−425(1999)に記載されるように、HPLCを使用することによって分離され得る。
【0020】
特定の化合物は、それらの化学名または以下に示される2文字コードによって本明細書中で言及される。化合物BI、CF、CRおよびCTは、上で示される式Iの範囲内に含まれる。
BI 4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸
CF 3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸
CR 4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル)−4(R)−ヒドロキシブタン酸
CT N−ヒドロキシ−2−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]アセトアミド
本明細書中で使用される場合、用語「インクレチン模倣物」は、インクレチンと称される天然に存在するホルモンの抗糖尿病作用を模倣する化合物を意味する。
【0021】
「エキセンディン」は、アメリカドクトカゲの毒液に由来するペプチドのクラス(このようなペプチドの切断されたバージョンを含む)である。「エキセンディンアゴニスト」は、エキセンディンのアミノ酸構造に基づき、そしてエキセンディンの活性のいくつかまたは全てを有する、ペプチドおよびペプチド模倣物である。本明細書中で使用される場合、用語「エキセンディン−4」は、文脈によって特に除外されない限り、エキセンディン−4およびエキセンディン−4アミドの両方を包含する。用語「エキセンディン−4アミド」および「エキセンディン−アミド」は、交換可能に使用される。
【0022】
ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)は、CD26としても公知である酵素であり、それは、GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)を破壊する。用語「ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター」または「DPPIVインヒビター」は、DPPIV活性を阻害する化合物を意味する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、略語「p.o.」は、経口(経口的)を意味する。略語「ip」または「i.p.」は、腹腔内を意味する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、移行語(transitional term)「含む(comprising)」は、変更可能である。この用語を利用する請求項は、このような請求項において列挙されたものに加えて要素を含み得る。
【0025】
(本発明の化合物)
上記の概要において記載される本発明の実施形態において、R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである。別の実施形態において、Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルである。別の実施形態において、Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルである。
【0026】
上記の概要において記載される本発明のさらなる実施形態において、上記インクレチン模倣物またはDPPIVインヒビターは、式IA:
【0027】
【化2】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩と組み合わせられる。
【0028】
式IAにおいて、変数は、式Iに関連して上に記載されるものと同じ値を有する。好ましくは、R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである。このような化合物の例としては、化合物BI、CF、CRおよびCTが挙げられる。
【0029】
式Iの化合物は、WO 02/100341、WO/073611、WO 04/091486、米国仮特許出願第60/667,457号(2005年4月1日出願)、および同第60/762,068号(2006年1月25日出願)(これらの内容は、本明細書に参考として援用される)に記載される方法に従って作製され得る。
【0030】
インクレチンの例としては、GLP−1が挙げられる。上に記載される本発明に従って、任意のインクレチン模倣物が、利用され得る。このようなインクレチン模倣物の例としては、エキセンディン、エキセンディンアゴニスト、GLP−1アナログ、非ペプチド低分子GLP−1レセプターアゴニスト、それらのポリマー改変形態およびアシル化形態および薬学的に受容可能な塩、ならびにこのような化合物およびこのような塩の水和物および溶媒化合物が挙げられる。このような化合物の例は、とりわけ、米国特許第6,989,366号、同第6,506,724号、および同第6,924,264号、ならびに欧州特許公開第EP01688148A1号(これらの全ては、本明細書に参考として援用される)に見出され得る。エキセンディン−4アミド(エクセナチド;BYETTA)は、現在、商標名BYETTA(Amylin Pharmaceuticals,Inc.およびEli Lilly and Co.)で市販されている。GLP−1アナログの例としては、持続性GLP−1アナログ(例えば、リラグルチド(Novo Nordisk)、脂肪酸鎖によってアクリル化されたGLP−1)、分解抵抗性GLP−1アナログ(例えば、タンパク質分解に対する抵抗性を改良するためのアミノ酸置換を有するGLP−1アナログ)、血清タンパク質(例えば、アルブミン)に結合体化されたGLP−1アナログ(例えば、CJC−1131およびCJC−1134、Conjuchem)、およびGLP−1レセプターに結合するGLP−1に由来するペプチドが挙げられる。
【0031】
エキセンディン−4は、以下のアミノ酸配列を有する39アミノ酸のペプチドである:His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser。エキセンディン−4アミドは、C末端における−NH2基の付加によってアミド化されたエキセンディン−4である:His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2。
【0032】
本発明に従って、任意のDPPIVインヒビターが、利用され得る。このような化合物の例としては、ビルダグリプチン(vildagliptin)(GALVUS、Novartis)(2S)−{[(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アミノ]アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル;シタグリプチン(sitagliptin)(JANUVIA、Merck)(2R)−4−オキソ−4−(3−[トリフルオロメチル]−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7[8H]−イル)−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン;サクサグリプチン(saxagliptin)(BMS 477118、Bristol−Myers
Squibb)(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アセチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル;2,2,2−トリフルオロ酢酸;アログリプチン(alogliptin)(Takeda)2−({6−[(3R)−3−アミノピペリジン−1−イル]−3−メチル−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリル;NN701(Novo−Nordisk);ABT−279(Abbott)2−(4−(2−((2S,5R)−2−シアノ−5−エチニルピロリジン−1−イル)−2−オキソエチルアミノ)−4−メチルピペリジン−1−イル)イソニコチン酸(CA Registry No.676559−83−4);BI 1356(Boehringer Ingleheim);SK−0403(Sanwa Kagaku Kenkyusho);ALS 2−0426(Amgen/Alantos)(S)−1−((S)−2−アミノ−3−((1S,4S)−5−(3−フルオロフェニルスルホニル)−3−オキソ−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパノイル)ピロリジン−2−カルボニトリル;およびPT630(Point Therapeutics)4−アミノ−5−((R)−2−ボロノピロリジン−1−イル)−5−オキソペンタン酸が挙げられる。DPPIVインヒビターについての用量は、代表的に、1日あたり1回または2回で1〜400ミリグラム、好ましくは、1日あたり1回または2回で25〜100ミリグラムである。ビルダグリプチンの治験において、上記用量は、1日1回で25ミリグラム〜1日2回でミリグラムの範囲であった。シタグリプチンの通常の用量は、患者が腎不全を有するか否かおよび腎不全の程度に依存して、1日1回で25mg〜1日1回で100mgの範囲である。
【0033】
(処置方法における使用)
本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病(I型糖尿病およびII型糖尿病の両方)、続発性の非本質的な糖尿病(secondary nonessential diabetes)、および多嚢胞性卵巣症候群からなる群より選択される状態を有する哺乳動物被験体を処置するための方法を提供し、その方法は、上記状態を処置するために有効な合わせた量で式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩ならびにインクレチン模倣物およびDPPIVインヒビターから選択される化合物を上記被験体に投与することを包含する。本発明の方法に従って、糖尿病の症状または糖尿病の症状(例えば、アテローム硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍および白内障(各々の症状は、糖尿病に関連する))を発症する機会は、減少し得る。本発明はまた、高脂血症を処置するための方法を提供し、その方法は、その状態を処置するために有効な本明細書に記載される生物学的に活性な薬剤の量を被験体に投与することを包含する。化合物は、高脂血症の動物において血清トリグリセリドおよび遊離脂肪酸を減少させる。本発明はまた、悪液質を処置するための方法を提供し、その方法は、悪液質を処置するために有効な本明細書に記載される生物学的に活性な薬剤の量を被験体に投与することを包含する。本発明はまた、肥満を処置するための方法を提供し、その方法は、その状態を処置するために有効な本明細書に記載される生物学的に活性な薬剤の量を被験体に投与することを包含する。本発明はまた、アテローム硬化症または動脈硬化症から選択される状態を処置するための方法を提供し、その方法は、その状態を処置するために有効な本明細書に記載される生物学的に活性な薬剤の量を被験体に投与することを包含する。本発明の活性な薬剤は、被験体が糖尿病またはインスリン抵抗性症候群を有するか否かにかかわらず、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム硬化症または動脈硬化症を処置するために有効である。式Iの化合物またはその塩および上記インクレチン模倣物またはDPPIVインヒビターは、全身投与の任意の従来経路によって投与され得る。好ましくは、式Iの化合物は、経口投与される。本発明に従って使用され得る他の投与経路は、直腸、注射(例えば、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射または腹腔内注射)による非経口、または鼻腔内である。エキセンディンは、好ましくは注射、最も好ましくは皮下注射によって投与される。
【0034】
本発明の使用および処置方法の各々のさらなる実施形態は、任意の実施形態の式Iの化合物またはその薬学的な塩および任意の上に記載されるインクレチン模倣物またはDPPIVインヒビターを投与することを含む。不必要な冗長性を回避する目的において、各々のこのような薬剤および薬剤の群は、繰り返されないが、それらは、あたかもそれらが繰り返されたかのように、使用および処置方法のこの説明に援用される。
【0035】
本発明によって取り組まれる疾患または障害の多くは、以下の2つの広い分類に分かれる:インスリン抵抗性症候群および慢性的な高血糖の結果。燃料代謝の調節不全(特に、インスリン抵抗性)(それ自体は糖尿病(持続的な高血糖)の欠如において存在し得る)は、高脂血症、アテローム硬化症、肥満、本態性高血圧、脂肪肝疾患(NASH;非アルコール性脂肪性肝炎)、および特に、癌または全身性炎症疾患の状況においては悪液質を含む種々の症状に関連する。悪液質はまた、I型糖尿病または後期のII型糖尿病の状況において起こり得る。組織の燃料代謝を改善することによって、本発明の活性な薬剤は、インスリン抵抗性に関連する疾患および症状の予防または寛解のために有用である。インスリン抵抗性に関連する徴候および症状の集団は、個々の患者において共存し得るが、多くの場合において、インスリン抵抗性に影響を受けた多くの生理系の脆弱性における個々の違いに起因して、1つの症状のみが、優勢であり得る。それにもかかわらず、インスリン抵抗性は多くの疾患状態に対する主要な寄与因子であるので、この細胞および分子の欠陥に取り組む薬物は、任意の器官系における実質的に任意の症状(インスリン抵抗性に起因し得るか、またはインスリン抵抗性によって増悪し得る)の予防または寛解のために有用である。
【0036】
インスリン抵抗性および膵島による同時発生的な不適切なインスリン生成が、十分に重篤である場合、慢性的な高血糖が、生じ、II型糖尿病(NIDDM)の発症を規定する。上に示されるインスリン抵抗性に関連する代謝障害に加えて、高血糖に続発する疾患症状はまた、NIDDMを有する患者において生ずる。これらとしては、腎症、末梢性ニューロパシー、網膜症、微小血管疾患、四肢の潰瘍、およびタンパク質の非酵素的なグリコシル化(例えば、コラーゲンおよび他の結合組織に対する損傷)の結果が挙げられる。高血糖の減弱は、糖尿病のこれらの結果の発症の割合および重篤度を減少させる。本発明の活性な薬剤および組成物は、糖尿病における高血糖を減少させることを補助するので、それらの活性な薬剤および組成物は、慢性的な高血糖の合併症の予防および寛解のために有用である。本発明の薬剤および組成物は、前糖尿病(インスリン抵抗性および/またはグルコース寛容減損)からII型糖尿病までの進行を予防するか、または遅延させるために有用である。
【0037】
ヒト被験体および非ヒト哺乳動物被験体の両方は、本発明の処置方法に従って処置され得る。特定の被験体に対する本発明の特定の活性な薬剤の至適用量は、臨床背景において熟練した臨床医によって決定され得る。インスリン抵抗性、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質または肥満に関連する障害の処置のためのヒトに対する経口投与の場合において、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩は、一般に、1mg〜400mg、より好ましくは200mg〜400mgの1日量で投与され、1日あたり1回または2回投与される。マウスに対する経口投与の場合において、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩は、一般に、1キログラムの体重あたり1〜300mgの薬剤の1日量で投与される。インクレチン模倣物およびDPPIVインヒビターは、標準的な診療に従って投与される。いくつかの場合において、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩との同時投与は、他のクラスの薬物の効力を改善し、患者に投与されるこのような薬剤のより低い(したがって、より少ない毒性の)用量を満足な治療結果を伴って可能にする。エキセンディン−4は、代表的に、5マイクログラムまたは10マイクログラムのいずれかの用量で1日2回、皮下注射で投与される。
【0038】
本発明の実施形態において、上記インクレチン模倣物または上記DPPIVインヒビターの用量は、その薬物が単独で使用される場合、治療用量未満である。代表的に、上記用量は、通常の用量の25%と75%との間まで減少し得る。本発明の実施形態において、式Iの化合物および上記インクレチン模倣物またはDPPIVインヒビターのいずれかまたは両方の用量は、体重減少および/または食欲減退が生じるように選択される。
【0039】
活性成分が一緒に混合されずに、単一の混合物または組成物を形成する場合、それらは、1以上の単位経口用量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩、1以上の単位用量のインクレチン模倣物またはDPPIVインヒビター、およびそれら組み合わせて投与するための指示書を備えるキットの形態で提供され得る。好ましくは、上記キットの成分は、箱またはブリスターパックなどの中に一緒に包装される。
【0040】
I型糖尿病:I型糖尿病を有する患者は、インスリン投与の用量およびタイミングの適切な調整を可能にするために血糖を頻繁にモニタリングしながら、主に1日あたり1用量〜いくつかの用量のインスリンを自己投与することによってそれらの疾患を管理する。慢性的な高血糖は、腎症、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍、および早期の死亡などの合併症をもたらす;過剰なインスリン投与に起因する低血糖は、認知機能障害または意識消失を引き起こし得る。I型糖尿病を有する患者は、インクレチン模倣物またはDPPIVインヒビターおよび1〜400mg/日の式Iの化合物またはその塩によって処置され、上記インクレチン模倣物または上記DPPIVインヒビターが式Iの化合物と組み合わせて使用される場合において、各薬物は、単一の1日量または分割された1日量として別個であるか、あるいは上記DPPIVインヒビターが式Iの化合物と組み合わせて使用される場合において、両方の薬物は、単一の1日量または分割された1日量として組み合わせられる。予測される効果は、満足な範囲の血糖、ならびに低血糖エピソードの発生率および重篤度の減少を維持するために必要とされるインスリンの投与の用量または頻度における減少である。臨床成績は、血糖およびグリコシル化されたヘモグロビン(数か月の期間にわたる統合された血糖制御の妥当性の指標)の測定、ならびに糖尿病の代表的な合併症の発生率および重篤度の減少によってモニタリングされる。本発明の処置は、膵島移植片の抗糖尿病効力を維持することを補助するために膵島移植とともに投与され得る。エクセナチド単独は、I型糖尿病に対して推奨されないが、式Iの化合物によって提供される膵臓の保護は、I型糖尿病の処置において有用な組合せをもたらす。
【0041】
II型糖尿病:II型糖尿病(NIDDM)を有する代表的な患者は、食事療法および運動の計画、ならびにメトホルミン、グリブリド、レパグリニド、ロシグリタゾン、またはアカルボース(これらの全ては、いくつかの患者における血糖制御のある程度の改善を提供するが、これらの全ては、副作用を有するか、または疾患の進行に起因する最終的な処置の失敗を有する)などの薬物を摂取することによってそれらの疾患を管理する。膵島不全は、NIDDMを有する患者において経時的に生じ、大部分の患者においてインスリン注射を必要とする。本発明に従う毎日の処置(さらなるクラスの抗糖尿病薬物を伴うかまたは伴わない)は血糖制御を改善し、膵島不全の割合を減少させ、そして糖尿病の代表的な症状の発生率および重篤度を減少させるが、予測される。さらに、上昇した血清トリグリセリドおよび脂肪酸は、減少し、それによって、循環器疾患(糖尿病患者の死亡の主因)の危険性を減少させる。糖尿病に対する全ての他の治療剤に関する場合におけるように、用量の最適化は、必要性、臨床効果、および副作用に対する感受性に従って、個々の患者において行われる。
【0042】
GLP−1アナログおよびGLP−1調節因子は、膵島の質量および機能が十分に低下していない場合(例えば、早期のII型糖尿病において)、より有効である。膵島不全の背景におけるより後期の糖尿病(患者は外因性インスリンに依存するようになる)において、これらの薬剤は、依然として活性であるが、より早期におけるものよりもかなり低い。以前の研究から、化合物BIはdb/dbマウス(インスリン抵抗性および膵島不全の両方を特徴とする糖尿病のモデル)において膵島インスリン含量を保存することが、公知であった。
【0043】
高脂血症:血中の上昇したトリグリセリドレベルおよび遊離脂肪酸レベルは、集団の実質的な割合に影響を及ぼし、そしてアテローム硬化症および心筋梗塞の重要な危険因子である。本発明に従う処置は、高脂血症の患者において循環するトリグリセリドおよび遊離脂肪酸を減少させるために有用である。高脂血症の患者はまた、しばしば、循環器疾患の危険性も増大させる上昇した血中コレステロールレベルを有する。HMG−CoAレダクターゼインヒビター(「スタチン」)などのコレステロール低下薬が、本発明の薬剤に加えて、高脂血症の患者に投与され得る(必要に応じて、同じ薬学的組成物中に組み込まれる)。
【0044】
脂肪肝疾患:集団の実質的な割合は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)としても公知である脂肪肝疾患によって影響を及ぼされる;NASHは、しばしば、肥満および糖尿病に関連する。脂肪肝(肝細胞に関するトリグリセリドの液滴の存在の存在)は、肝臓を慢性炎症(生検サンプルにおいて炎症性白血球の浸潤をして検出される)に罹患し易くし、その慢性炎症は、線維症および肝硬変をもたらし得る。脂肪肝疾患は、一般に、肝細胞の傷害の指標として機能する肝臓特異的酵素(例えば、トランスアミナーゼALTおよびAST)の上昇した血清レベルの観察、ならびに肝臓の領域における疲労および疼痛を含む症状の存在によって検出されるが、確定診断は、しばしば、生検を必要とする。予測される利点は、肝臓の炎症および脂肪含量の減少であり、NASHの線維症および肝硬変への進行の減弱、停止、または逆転をもたらす。
【0045】
(薬学的組成物)
本発明は、式Iの化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物のさらなる実施形態は、上に記載される生物学的に活性な薬剤の実施形態のうちの任意の1つを含む。不必要な冗長性を回避する目的において、各々のこのような薬剤および薬剤の群は、繰り返されないが、それらは、あたかもそれらが繰り返されたかのように、薬学的組成物のこの説明に援用される。
【0046】
好ましくは、上記組成物は、例えば、錠剤、コーティングされた錠剤、糖剤、ハードゼラチンカプセルまたはソフトゼラチンカプセル、溶液、乳剤または懸濁物の形態において経口投与に適合する。一般に、経口組成物は、1mg〜400mg、好ましくは200mg〜400mgの式Iの化合物またはその塩を含む。1日あたり1個または2個の錠剤、コーティングされた錠剤、糖剤、またはゼラチンカプセルを嚥下することは、被験体に好都合である。しかし、上記組成物はまた、全身投与の任意の他の従来手段(直腸(例えば、坐剤の形態)、非経口(例えば、注射溶液の形態)、または鼻腔内を含む)による投与に適合し得る。
【0047】
活性成分は、薬学的組成物の産生のために、薬学的に不活性な、無機キャリアまたは有機キャリアと一緒に加工され得る。ラクトース、トウモロコシデンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩などは、例えば、錠剤、コーティングされた錠剤、糖剤、およびハードゼラチンカプセルのためのこのようなキャリアとして使用され得る。ソフトゼラチンカプセルのための適切なキャリアは、例えば、植物油、蝋、脂肪、半固体ポリオールおよび液体ポリオールなどである。しかし、活性成分の性質に依存して、キャリアは、ソフトゼラチンカプセルにおいて、ソフトゼラチン自体以外に通常必要とされない。溶液およびシロップの産生のための適切なキャリアは、例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油などである。坐剤のための適切なキャリアは、例えば、天然の油または硬化油、蝋、脂肪、半液体ポリオールまたは液体ポリオールなどである。
【0048】
さらに、薬学的組成物は、保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、コーティング剤または酸化防止剤を含み得る。薬学的組成物はまた、さらに他の治療的に有益な物質(特に、他の機構によって作用する抗糖尿病剤または抗高脂血症剤)を含み得る。
【0049】
エキセンディン−4アミド(エクセナチド)は、エキセンディン−4アミド、メタクレゾール、マンニトール、氷酢酸、酢酸ナトリウム三水和物、および水を含む薬学的処方物において、商標名BYETTAでAmylin Pharmaceuticals,Inc.およびEli Lilly and Companyによって市販されている。
【0050】
本発明はまた、式Iの化合物と、DPPIVインヒビターと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物を提供する。DPPIVインヒビターは、経口的に活性であり、したがって、式Iの化合物と同じ処方物において合わせることができるか、あるいは両方の薬物は、別個の錠剤またはカプセルにおいて投与され得る。
【0051】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより十分に理解され、その実施例は、本明細書中に記載される本発明を例示するが、限定しない。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
後期db/dbマウスにおいて、化合物BIを、血糖を低下させ、膵島インスリン含量を保存することにおける効能についてエキセンディン−4アミド(Bachemから取得した)と比較した。さらに、これらの2つの薬物の組み合わせを試験した。
【0053】
群
・ビヒクル
・化合物BI(一日当たり100mg/kg p.o.)
・エキセンディン−4アミド(一日当たり10ミリグラム i.p.)
・一日当たり10ミリグラム エキセンディン−4アミド i.p.は、4.5週齢db/dbマウス(Greigら、1999 Diabetologia 42:45−50)において開始した場合、最大12週間にわたって高血糖を減弱した。
【0054】
・化合物BI(一日当たり100mg/kg+エキセンディン−4アミド 一日当たり10ミリグラム i.p.)。
【0055】
マウスを4週間にわたって毎日処置した。血清グルコースおよびインスリンおよび膵インスリンを測定した。
【0056】
ビヒクル処置したdb/dbマウスは、4週間の処置後に重度に高血糖性であった。化合物BIは血清グルコースを実質的に低下させたが、エキセンディン−4アミド単独ではわずかな効果しかなかった。しかしながら、化合物BIとエキセンディン−4アミドとの組み合わせは、血清血糖に強力な効果を有した(図1)。
【0057】
膵島インスリンは、ビヒクルまたはエキセンディン−4アミド単独のいずれかで処置した動物において低かった。化合物BIで処置したマウスは、これら2つの群のいずれかよりもインスリンが多く、化合物BIとエキセンディン−4アミドとで処置したマウスは、それらの膵島においてなおよりインスリンが多かった。このことは、エキセンディン−4アミドが膵島に作用し、エキセンディン−4アミドが、その薬理学的活性についての十分に機能的な標的をもつように膵島を保護することによって、化合物BIが、エキセンディン−4アミドの活性をより高くすることを可能にするという考えと一致する(図2)。
【0058】
血清インスリンもまた測定した。ビヒクルまたはエキセンディン−4アミドに対して化合物BIで達成したグルコースの低下は、血清インスリンが有意に上昇することなく達成し、このことは、化合物BIが、このモデルにおいてインスリン抵抗性を減少させたことを示した。化合物BIおよびエキセンディン−4アミドで処置したマウスにおける血清インスリンのわずかな上昇は、インスリン分泌を生じるエキセンディン−4の既知の効果と矛盾しない(図3)。
【0059】
(実施例2)
db/dbマウスの末梢血糖レベルをモニタリングした。グルコースレベルが400mg/dLを超えた場合、これらのマウスを各々6匹のマウスの群に分けた。各々の群のマウスに、以下に示されるように、ビヒクルまたは化合物BI(経口胃管栄養法によって100mg/kg)+/−エキセンディン−アミド(Bachem、King of Prussia、PA)のi.p.注射のいずれかを4週間にわたって与えた:
1)ビヒクル
2)ビヒクル+エキセンディン(3μg/kg)
3)ビヒクル+エキセンディン(10μg/kg)
4)化合物BI
5)化合物BI+エキセンディン(3μg/kg)
6)化合物BI+エキセンディン(10μg/kg)。
【0060】
4週間の処置後、マウスを、眼窩後部洞(retroorbital sinus)によって採血し、循環グルコースレベルの分析のために、血清をAnilytics,Inc.(Gaithersburg、MD)に送った。膵臓を集め、計量し、瞬間凍結(flash frozen)し、次に膵インスリンアッセイのために処理した。簡潔に述べると、膵臓を、膵臓抽出溶液(75%エタノールおよび25% 0.15N HCl)に置き、その容積を膵臓100mgあたり1mLに調整した。次に、膵臓を超音波処理し、―20oCで一晩保存した。次の日、サンプルを4℃で5分間2500rpmで遠心分離し、可溶化しない物質をペレットにした。1.5mLの上清をEppendorfチューブに置き、4℃で20分間1300rpmで微量遠心機内で遠心分離し、あらゆる残存する可溶化しない物質をペレットにした。次に、生じた上清を、マウスインスリンのために開発された電気化学発光(electrochemiluminescent)(ECL)アッセイを使用して、インスリンの存在についてアッセイした。このアッセイは、標準としてラットインスリン(Lincon Research Inc.,St.Charles,MO)を使用するが、マウスインスリンとも直線性を示す。このアッセイは、捕捉抗体としてビオチン化抗マウスインスリンモノクローナル抗体(Biogenesis(AbDSerotec、Raleigh、NCの一部門)製のクローン5E4/3)、そしてルテニウム標識された抗マウスインスリン抗体(Biogenesis製のクローン5B6/6)を使用する。これらの抗体は、インスリン分子上の異なるエピトープに対するものであり、ECLアッセイ試薬の製造者(BioVeris Corp.,Gaithersburg、MD)の指示にしたがって標識した。標準またはサンプルを、2つの抗体と混合し、振とうしながら室温で2時間インキュベートした。続いて、ストレプトアビジンでコーティングしたDynabead(BioVeris Corp.、Gaithersburg、MD)を添加し、振とうしながら室温でさらに30分間インキュベートした。次に、サンプルを、M384装置(BioVeris Corp.,Gaithersburg、MD)にロードした。サンプル中のインスリンの量は、放出された光の量と比例した。
【0061】
図4は、循環グルコースレベルに対する化合物BI、エキセンディンまたはこれら2つの薬物の組み合わせの効果を示す。正常なマウスの循環グルコースレベルは、124〜262mg/dLである(Anilytics、Inc.Gaithersburg、MD)。生理食塩水のみで処置したマウスは、高レベルの高血糖(図4)および低い膵インスリンレベル(図5)を示した。低い膵インスリンレベルは、これらのマウスにおけるインスリン抵抗性が明らかな糖尿病へ移行したことに起因する。4週間にわたる、3μg/kgまたは10μg/kgのいずれかでのエキセンディンによる処置は、循環グルコースレベルにわずかな低減を示したが、膵インスリンには有意な変化はなかった。4週間、化合物BIで処置したマウスは、循環グルコースレベルに有意な低減および膵インスリンにそれに対応した上昇を示した(図5)。4週間にわたって、化合物BIおよび3μg/kgまたは10μg/kgでのエキセンディンの組み合わせによって処置したマウスは、用量応答性の相乗的な、循環グルコースレベルの低減および膵インスリンレベルの上昇を示した。
【0062】
(実施例3)
別個の実験において、db/dbマウスを、実施例2のように処置した。再び、化合物BI(100mg/kg p.o.)およびエキセンディン−アミド(10μg/kg、i.p.)の組み合わせによる処置の相乗効果が、循環グルコース(図6)および膵インスリン(図7)の両方に対して示された。
【0063】
(実施例4)
1型糖尿病について広範に使用されるモデルは、ストレプトゾトシン処理したマウスである。ストレプトゾトシン(STZ)は、Streptomyces achromogenesによって産生される抗生物質である。STZの構造は、高反応性のニトロソ尿素側鎖を有するグルコース分子である;適切な投薬量で、STZは、膵β細胞に選択的に毒性である。循環グルコースレベル、循環C−ペプチドレベル(血流への膵インスリンの尺度)および総膵インスリンに対する化合物BIとエキセンディン−アミドとの組み合わせの効果を調べるために、このモデルを使用した。
【0064】
1日目の朝に、C57Bl/6Jマウスから食物を除去し、そして午後にこれらのマウスにSTZの注射(160mg/kg)を与えた。4日目に尾の採血によってグルコースを測定し、350mg/dLより高いグルコースの読み取り(reading)であるマウスを、各々10匹のマウスの群に分けた。処置(ビヒクル(生理食塩水)、または化合物BI(100mg/kg、p.o.)とエキセンディン−アミド(10μg/kg、i.p.)との組み合わせ)を、同日(すなわち、4日目)に開始した。18日目に再度、尾の採血によってグルコースを測定した。マウスを30日目に屠殺した。循環グルコースおよび膵インスリンを実施例2のように測定した;血清インスリンレベルを、膵インスリンについてのものと同じECLアッセイを使用して測定した。C−ペプチドの循環レベルを、市販のELISA(Babco、Richmond、CA)を使用して血清において測定し、正常(未処置)C57Bl/6Jマウスのレベルと比較した。
【0065】
化合物BIおよびエキセンディン−アミドの組み合わせで処置したマウスは、循環グルコースレベルの低減(図8)ならびに循環C−ペプチドの上昇(正常レベルへの、図9)および膵インスリンの上昇(図10)を示した。
【0066】
(実施例5)
P32/98は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病において活性であることが示されているDPPIVインヒビターである(Pospisilikら、Diabetes 52:741−750、2003)。10週齢のdb/dbマウスに、4週間にわたって示されるようにビヒクルまたは化合物BI(100mg/kg、p.o.)+/−P32/98(10mg/kg、一日二回胃管栄養法によって)を与えた。循環グルコースおよび膵インスリンについてのアッセイを、実施例3のように実施した。P32/98処置マウスは、循環グルコースレベルにわずかな低減を示したが、膵インスリンに上昇は示さなかった。化合物BIもまた循環グルコースレベルを低下させ、P32/98と組み合わせた場合にさらなる低減を示した(図11)。化合物BIは、単独で使用した場合、膵インスリンレベルを上昇させ;これらの条件下でP32/98と組み合わせた場合、膵インスリンにさらなる上昇は存在しなかった。このことは、これらの条件下での単剤療法としての化合物BIで見られる強力な効能に起因する可能性が強い(図12)。
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
糖尿病は、主要でありかつ高まりつつある公衆衛生上の懸案事項である。糖尿病の後期の合併症は、国家の医療資源の多くを消耗させる。
【0002】
糖尿病またはインスリン抵抗性症候群を処置するために特定の他の薬物と組み合わせて式Iの化合物を使用することは、特許文献1、WO/073611、特許文献2、特許文献3および国際特許出願第PCT/US07/60833号(これらの全ては、Wellstat Therapeutics Corp.に帰属する)に開示される。
【0003】
エキセンディン−4は、メトホルミン、抗糖尿病性スルホニル尿素、およびチアゾリジンジオンと組み合わせて試験されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第02/100341号パンフレット
【特許文献2】国際公開第04/091486号パンフレット
【特許文献3】国際公開第06/127133号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム硬化症および動脈硬化症からなる群より選択される状態を有する哺乳動物被験体を処置する方法であって、式I:
【化3】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を、該代謝状態を処置するために有効な合わせた量でインクレチン模倣物またはジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターと組み合わせて該被験体に投与する工程を包含し、式中、
Mは、0、2または4であり;そして
Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;
R6は、水素、Oまたはヒドロキシであり;そして
R1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択されるか;あるいは
Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルであり;
R6は、水素であり;そして
R1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択される;
方法。
(項目2)
R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである、項目1に記載の方法。
(項目3)
Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルである、項目1に記載の方法。
(項目4)
Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルである、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記化合物は、式IA:
【化4】
によって示される、項目1に記載の方法。
(項目6)
R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記化合物は、4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記化合物は、3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル酢酸である、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記化合物は、4−3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル)−4(R)−ヒドロキシブタン酸である、項目6に記載の方法。
(項目10)
前記化合物は、N−ヒドロキシ−2−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]アセトアミドである、項目6に記載の方法。
(項目11)
前記インクレチン模倣物は、エキセンディン、エキセンディンアゴニスト、非ペプチド低分子GLP−1レセプターアゴニスト、それらのポリマー改変形態およびアシル化形態ならびに薬学的に受容可能な塩、水和物、および溶媒化合物、ならびにこのような塩の水和物および溶媒化合物からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記エキセンディンは、エキセンディン−4またはエキセンディン−4アミドである、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターは、ビルダグリプチン、シタグリプチン、サクサグリプチン、アログリプチン、ABT−279、BI 1356、ALS 2−0426およびPT630からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記被験体は、ヒトである、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記インクレチン模倣物または前記ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターは、単独で投与される場合に通常の治療用量未満である量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記合わせた量は、前記処置が前記被験体における体重減少および食欲減退のうちの1つ以上をもたらすように選択される、項目1に記載の方法。
(項目17)
式Iの化合物は、経口投与され、そして前記インクレチン模倣物は、皮下注射によって投与される、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記状態は、前糖尿病またはII型糖尿病である、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記前糖尿病は、インスリン抵抗性およびグルコース寛容減損のうちの1つまたは両方を含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記処置は、II型糖尿病の症状またはII型糖尿病の症状を発症する機会を減少させ、該症状は、II型糖尿病に関連するアテローム硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍および白内障からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目21)
インスリン抵抗性症候群、糖尿病、および多嚢胞性卵巣症候群からなる群より選択される状態の処置;あるいはII型糖尿病に関連するアテローム硬化症、動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍または白内障を発症する機会の処置または減少;あるいは高脂血症、悪液質、および肥満からなる群より選択される状態の処置のための医薬の製造における生物学的に活性な薬剤の使用であって、該薬剤が、式I:
【化5】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり;式中
Mは、0、2または4であり;そして
Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;
R6は、水素、Oまたはヒドロキシであり;そして
R1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択されるか;あるいは
Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルであり;
R6は、水素であり;そして
R1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択され;
該薬剤は、該代謝状態を処置するために有効な合わせた量でインクレチン模倣物またはジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターと組み合わせた投与のために処方される、使用。
(項目22)
R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである、項目21に記載の使用。
(項目23)
Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルである、項目21に記載の使用。
(項目24)
Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルである、項目21に記載の使用。
(項目25)
前記化合物は、式IA:
【化6】
によって示される、項目21に記載の使用。
(項目26)
R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである、項目25に記載の使用。
(項目27)
前記化合物は、4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸である、項目26に記載の使用。
(項目28)
前記化合物は、3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル酢酸である、項目26に記載の使用。
(項目29)
前記化合物は、4−3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル)−4(R)−ヒドロキシブタン酸である、項目26に記載の使用。
(項目30)
前記化合物は、N−ヒドロキシ−2−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]アセトアミドである、項目26に記載の使用。
(項目31)
前記インクレチン模倣物は、エキセンディン、エキセンディンアゴニスト、非ペプチド低分子GLP−1レセプターアゴニスト、それらのポリマー改変形態およびアシル化形態ならびに薬学的に受容可能な塩、水和物、および溶媒化合物、ならびにこのような塩の水和物および溶媒化合物からなる群より選択される、項目21に記載の使用。
(項目32)
前記エキセンディンは、エキセンディン−4またはエキセンディン−4アミドである、項目31に記載の使用。
(項目33)
前記ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターは、ビルダグリプチン、シタグリプチン、サクサグリプチン、アログリプチン、ABT−279、BI 1356、ALS 2−0426およびPT630からなる群より選択される、項目21に記載の使用。
(項目34)
前記医薬は、経口投与のために処方される、項目21〜33のいずれか1項に記載の使用。
(項目35)
前記インクレチン模倣物の量または前記ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターの量は、単独で投与される場合に通常の治療用量未満である、項目21に記載の使用。
(項目36)
前記合わせた量は、哺乳動物被験体に対する前記医薬の投与が該被験体において体重減少および食欲減退のうちの1つ以上をもたらすように選択される、項目21に記載の使用。
(項目37)
前記状態は、前糖尿病またはII型糖尿病である、項目21に記載の使用。
(項目38)
前記前糖尿病は、インスリン抵抗性およびグルコース寛容減損の一方または両方を含む、項目37に記載の使用。
本発明は、式I:
【0006】
【化1】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩と組み合わせた、インクレチン模倣物(mimetic)およびジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)インヒビターからなる群より選択される化合物の治療的使用に関する。
【0007】
式Iにおいて、mは、0、2または4である。Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルであり;R6は、水素、Oまたはヒドロキシであり;そしてR1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択される。あるいは、Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルであり;R6は、水素であり;そしてR1、R2、R3、R4およびR5のうちの3つは、水素であり、そして残りは、独立して、水素、ハロ、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、およびペルフルオロメトキシからなる群より選択される。
【0008】
本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病(I型糖尿病およびII型糖尿病の両方)、多嚢胞性卵巣症候群、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム硬化症および動脈硬化症からなる群より選択される状態を有する哺乳動物被験体を処置する方法を提供し、その方法は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を、上記代謝状態を処置するために有効な合わせた量で式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩およびインクレチン模倣物を上記被験体に投与する工程を包含する。
【0009】
本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病(I型糖尿病およびII型糖尿病の両方)、および多嚢胞性卵巣症候群からなる群より選択される状態の処置;あるいは糖尿病に関連するアテローム硬化症、動脈硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍または白内障を発症する機会の処置または減少;あるいは高脂血症、悪液質、および肥満からなる群より選択される状態の処置のための医薬の製造における生物学的に活性な薬剤の使用を提供し、その薬剤は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、そして上記代謝状態を処置するために有効な合わせた量でインクレチン模倣物と組み合わせた使用のために処方される。
【0010】
1以上の単位経口用量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩、1以上の単位注射用量のインクレチン模倣物、および上記インクレチン模倣物と組み合わせて式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を投与するための指示書を備えるキット。
【0011】
本発明は、式Iの化合物(例えば、化合物BI)と組み合わせたエキセンディン−4アミドなどのインクレチン模倣物(これはまた、グルカゴン様ペプチド−1アナログ(GLP−アナログ)である)が、実施例に示される通り、いずれかの化合物単独よりも優れた抗糖尿病活性を提供したという知見に基づく。GLP−1アナログおよびDPPIVインヒビターの両方は、概して、GLP−1レセプターの活性化を介して作用する。GLP−1アナログは、上記レセプターの直接結合によって作用する。DPPIVインヒビターは、GLP−1の内因性レベルを増大させることによって作用する。したがって、エキセンディン−4アミドの抗糖尿病活性を増幅し、そしてそれを可能にするという知見は、化合物BIと全範囲GLP−1アナログおよびDPPIVインヒビターとの組み合わせた使用を支持する。化合物BIの他の抗糖尿病アナログもまた、この構成において有用である。
【0012】
GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)に基づく抗糖尿病薬は、臨床的に有用な薬剤として出現している。GLP−1自体は、短い半減期を有するペプチドであり、そして治療剤としての使用に適していない。より長く持続するGLP−1アナログは、発見、考案および開発されている。エキセンディン−4(アメリカドクトカゲ(Gila−monster)(これは、1年に3回しか食べず、そしてそれらが食べる各回に機能的な膵臓をもたらすためにエキセンディンを使用する)に由来するペプチド)が、これらの間で顕著であり、エキセンディン−4は、GLP−1と相同性を有するが、インビボでかなり半減期を有する。別の出現しているストラテジーは、GLP−1を破壊する酵素(ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV))のインヒビターを含む。GLP−1アナログまたはGLP−1調節因子は、主に、膵島に対して作用し、高血糖の状態においてインスリン産出量を増大させ、そしてまた、グルカゴン生成を減少させる。正味の効果は、血糖が上昇する場合、血糖を低下させるが、グルコースが正常に近い場合、より小さい程度に低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1:化合物BI、エキセンディン−4アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける血清グルコース。
【図2】図2:化合物BI、エキセンディン−4アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける膵島インスリン(islet insulin)。
【図3】図3:化合物BI、エキセンディン−4アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける血清インスリン。
【図4】図4:化合物BI、エキセンディン−アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける血清グルコース。
【図5】図5:化合物BI、エキセンディン−アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける膵インスリン。
【図6】図6:化合物BI、エキセンディン−アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける血清グルコース。
【図7】図7:化合物BI、エキセンディン−アミド、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける膵インスリン。
【図8】図8:化合物BIとエキセンディン−アミドとの組合せによって処置されたストレプトゾトシン処置C57Bl/6Jマウスにおける血清グルコース。
【図9】図9:化合物BIとエキセンディン−アミドとの組合せによって処置されたストレプトゾトシン処置C57Bl/6Jマウスにおける血清C−ペプチド。
【図10】図10:化合物BIとエキセンディン−アミドとの組合せによって処置されたストレプトゾトシン処置C57Bl/6Jマウスにおける膵インスリン。
【図11】図11:P32/98、化合物BI、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける血清グルコース。
【図12】図12:P32/98、化合物BI、またはその両方の化合物によって処置されたdb/dbマウスにおける膵インスリン。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書中で使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖アルキル基または分枝鎖アルキル基を意味する。特定の数の炭素原子を有すると同定されたアルキル基は、特定された数の炭素を有する任意のアルキル基を意味する。例えば、3個の炭素原子を有するアルキルは、プロピルまたはイソプロピルであり得;そして4個の炭素原子を有するアルキルは、n−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピルまたはt−ブチルであり得る。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードのうちの1つ以上をいう。
【0016】
本明細書中で使用される場合、ペルフルオロメチルまたはペルフルオロメトキシにおけるような用語「ペルフルオロ」は、目的の基が全ての水素原子の位置にフッ素原子を有していることを意味する。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「Ac」とは、基CH3C(O)−をいう。
【0018】
R6とそれが直接結合される炭素原子との間の結合は、破線を伴う実線によって上記の式Iにおいて示される。この表示は、目的の結合が単結合(R6が水素またはヒドロキシである場合)、または二重結合(R6がOである場合)のいずれかであり得ることを反映する。
【0019】
上記の式Iの表示におけるアスタリスクは、可能なキラル中心を示し、そしてその炭素は、R6がヒドロキシである場合、キラル中心である。このような場合において、本発明は、式Iの化合物の、ラセミ体、(R)鏡像異性体、および(S)鏡像異性体を提供し、それらの全ては、活性であると考えられる。これらの鏡像異性体の混合物は、例えば、Chirality 11:420−425(1999)に記載されるように、HPLCを使用することによって分離され得る。
【0020】
特定の化合物は、それらの化学名または以下に示される2文字コードによって本明細書中で言及される。化合物BI、CF、CRおよびCTは、上で示される式Iの範囲内に含まれる。
BI 4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソ酪酸
CF 3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル酢酸
CR 4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)−フェニル)−4(R)−ヒドロキシブタン酸
CT N−ヒドロキシ−2−[3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル]アセトアミド
本明細書中で使用される場合、用語「インクレチン模倣物」は、インクレチンと称される天然に存在するホルモンの抗糖尿病作用を模倣する化合物を意味する。
【0021】
「エキセンディン」は、アメリカドクトカゲの毒液に由来するペプチドのクラス(このようなペプチドの切断されたバージョンを含む)である。「エキセンディンアゴニスト」は、エキセンディンのアミノ酸構造に基づき、そしてエキセンディンの活性のいくつかまたは全てを有する、ペプチドおよびペプチド模倣物である。本明細書中で使用される場合、用語「エキセンディン−4」は、文脈によって特に除外されない限り、エキセンディン−4およびエキセンディン−4アミドの両方を包含する。用語「エキセンディン−4アミド」および「エキセンディン−アミド」は、交換可能に使用される。
【0022】
ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)は、CD26としても公知である酵素であり、それは、GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)を破壊する。用語「ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター」または「DPPIVインヒビター」は、DPPIV活性を阻害する化合物を意味する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、略語「p.o.」は、経口(経口的)を意味する。略語「ip」または「i.p.」は、腹腔内を意味する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、移行語(transitional term)「含む(comprising)」は、変更可能である。この用語を利用する請求項は、このような請求項において列挙されたものに加えて要素を含み得る。
【0025】
(本発明の化合物)
上記の概要において記載される本発明の実施形態において、R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである。別の実施形態において、Xは、−OR7であり、R7は、水素であるか、または1個〜3個の炭素原子を有するアルキルである。別の実施形態において、Xは、−NR8R9であり、R8は、水素またはヒドロキシであり、そしてR9は、水素、メチルまたはエチルである。
【0026】
上記の概要において記載される本発明のさらなる実施形態において、上記インクレチン模倣物またはDPPIVインヒビターは、式IA:
【0027】
【化2】
の化合物またはその薬学的に受容可能な塩と組み合わせられる。
【0028】
式IAにおいて、変数は、式Iに関連して上に記載されるものと同じ値を有する。好ましくは、R1は、メチルであり、そしてR5は、メチルである。このような化合物の例としては、化合物BI、CF、CRおよびCTが挙げられる。
【0029】
式Iの化合物は、WO 02/100341、WO/073611、WO 04/091486、米国仮特許出願第60/667,457号(2005年4月1日出願)、および同第60/762,068号(2006年1月25日出願)(これらの内容は、本明細書に参考として援用される)に記載される方法に従って作製され得る。
【0030】
インクレチンの例としては、GLP−1が挙げられる。上に記載される本発明に従って、任意のインクレチン模倣物が、利用され得る。このようなインクレチン模倣物の例としては、エキセンディン、エキセンディンアゴニスト、GLP−1アナログ、非ペプチド低分子GLP−1レセプターアゴニスト、それらのポリマー改変形態およびアシル化形態および薬学的に受容可能な塩、ならびにこのような化合物およびこのような塩の水和物および溶媒化合物が挙げられる。このような化合物の例は、とりわけ、米国特許第6,989,366号、同第6,506,724号、および同第6,924,264号、ならびに欧州特許公開第EP01688148A1号(これらの全ては、本明細書に参考として援用される)に見出され得る。エキセンディン−4アミド(エクセナチド;BYETTA)は、現在、商標名BYETTA(Amylin Pharmaceuticals,Inc.およびEli Lilly and Co.)で市販されている。GLP−1アナログの例としては、持続性GLP−1アナログ(例えば、リラグルチド(Novo Nordisk)、脂肪酸鎖によってアクリル化されたGLP−1)、分解抵抗性GLP−1アナログ(例えば、タンパク質分解に対する抵抗性を改良するためのアミノ酸置換を有するGLP−1アナログ)、血清タンパク質(例えば、アルブミン)に結合体化されたGLP−1アナログ(例えば、CJC−1131およびCJC−1134、Conjuchem)、およびGLP−1レセプターに結合するGLP−1に由来するペプチドが挙げられる。
【0031】
エキセンディン−4は、以下のアミノ酸配列を有する39アミノ酸のペプチドである:His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser。エキセンディン−4アミドは、C末端における−NH2基の付加によってアミド化されたエキセンディン−4である:His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2。
【0032】
本発明に従って、任意のDPPIVインヒビターが、利用され得る。このような化合物の例としては、ビルダグリプチン(vildagliptin)(GALVUS、Novartis)(2S)−{[(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アミノ]アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル;シタグリプチン(sitagliptin)(JANUVIA、Merck)(2R)−4−オキソ−4−(3−[トリフルオロメチル]−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7[8H]−イル)−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン;サクサグリプチン(saxagliptin)(BMS 477118、Bristol−Myers
Squibb)(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アセチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル;2,2,2−トリフルオロ酢酸;アログリプチン(alogliptin)(Takeda)2−({6−[(3R)−3−アミノピペリジン−1−イル]−3−メチル−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリル;NN701(Novo−Nordisk);ABT−279(Abbott)2−(4−(2−((2S,5R)−2−シアノ−5−エチニルピロリジン−1−イル)−2−オキソエチルアミノ)−4−メチルピペリジン−1−イル)イソニコチン酸(CA Registry No.676559−83−4);BI 1356(Boehringer Ingleheim);SK−0403(Sanwa Kagaku Kenkyusho);ALS 2−0426(Amgen/Alantos)(S)−1−((S)−2−アミノ−3−((1S,4S)−5−(3−フルオロフェニルスルホニル)−3−オキソ−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパノイル)ピロリジン−2−カルボニトリル;およびPT630(Point Therapeutics)4−アミノ−5−((R)−2−ボロノピロリジン−1−イル)−5−オキソペンタン酸が挙げられる。DPPIVインヒビターについての用量は、代表的に、1日あたり1回または2回で1〜400ミリグラム、好ましくは、1日あたり1回または2回で25〜100ミリグラムである。ビルダグリプチンの治験において、上記用量は、1日1回で25ミリグラム〜1日2回でミリグラムの範囲であった。シタグリプチンの通常の用量は、患者が腎不全を有するか否かおよび腎不全の程度に依存して、1日1回で25mg〜1日1回で100mgの範囲である。
【0033】
(処置方法における使用)
本発明は、インスリン抵抗性症候群、糖尿病(I型糖尿病およびII型糖尿病の両方)、続発性の非本質的な糖尿病(secondary nonessential diabetes)、および多嚢胞性卵巣症候群からなる群より選択される状態を有する哺乳動物被験体を処置するための方法を提供し、その方法は、上記状態を処置するために有効な合わせた量で式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩ならびにインクレチン模倣物およびDPPIVインヒビターから選択される化合物を上記被験体に投与することを包含する。本発明の方法に従って、糖尿病の症状または糖尿病の症状(例えば、アテローム硬化症、肥満、高血圧、高脂血症、脂肪肝疾患、腎症、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍および白内障(各々の症状は、糖尿病に関連する))を発症する機会は、減少し得る。本発明はまた、高脂血症を処置するための方法を提供し、その方法は、その状態を処置するために有効な本明細書に記載される生物学的に活性な薬剤の量を被験体に投与することを包含する。化合物は、高脂血症の動物において血清トリグリセリドおよび遊離脂肪酸を減少させる。本発明はまた、悪液質を処置するための方法を提供し、その方法は、悪液質を処置するために有効な本明細書に記載される生物学的に活性な薬剤の量を被験体に投与することを包含する。本発明はまた、肥満を処置するための方法を提供し、その方法は、その状態を処置するために有効な本明細書に記載される生物学的に活性な薬剤の量を被験体に投与することを包含する。本発明はまた、アテローム硬化症または動脈硬化症から選択される状態を処置するための方法を提供し、その方法は、その状態を処置するために有効な本明細書に記載される生物学的に活性な薬剤の量を被験体に投与することを包含する。本発明の活性な薬剤は、被験体が糖尿病またはインスリン抵抗性症候群を有するか否かにかかわらず、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質、肥満、アテローム硬化症または動脈硬化症を処置するために有効である。式Iの化合物またはその塩および上記インクレチン模倣物またはDPPIVインヒビターは、全身投与の任意の従来経路によって投与され得る。好ましくは、式Iの化合物は、経口投与される。本発明に従って使用され得る他の投与経路は、直腸、注射(例えば、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射または腹腔内注射)による非経口、または鼻腔内である。エキセンディンは、好ましくは注射、最も好ましくは皮下注射によって投与される。
【0034】
本発明の使用および処置方法の各々のさらなる実施形態は、任意の実施形態の式Iの化合物またはその薬学的な塩および任意の上に記載されるインクレチン模倣物またはDPPIVインヒビターを投与することを含む。不必要な冗長性を回避する目的において、各々のこのような薬剤および薬剤の群は、繰り返されないが、それらは、あたかもそれらが繰り返されたかのように、使用および処置方法のこの説明に援用される。
【0035】
本発明によって取り組まれる疾患または障害の多くは、以下の2つの広い分類に分かれる:インスリン抵抗性症候群および慢性的な高血糖の結果。燃料代謝の調節不全(特に、インスリン抵抗性)(それ自体は糖尿病(持続的な高血糖)の欠如において存在し得る)は、高脂血症、アテローム硬化症、肥満、本態性高血圧、脂肪肝疾患(NASH;非アルコール性脂肪性肝炎)、および特に、癌または全身性炎症疾患の状況においては悪液質を含む種々の症状に関連する。悪液質はまた、I型糖尿病または後期のII型糖尿病の状況において起こり得る。組織の燃料代謝を改善することによって、本発明の活性な薬剤は、インスリン抵抗性に関連する疾患および症状の予防または寛解のために有用である。インスリン抵抗性に関連する徴候および症状の集団は、個々の患者において共存し得るが、多くの場合において、インスリン抵抗性に影響を受けた多くの生理系の脆弱性における個々の違いに起因して、1つの症状のみが、優勢であり得る。それにもかかわらず、インスリン抵抗性は多くの疾患状態に対する主要な寄与因子であるので、この細胞および分子の欠陥に取り組む薬物は、任意の器官系における実質的に任意の症状(インスリン抵抗性に起因し得るか、またはインスリン抵抗性によって増悪し得る)の予防または寛解のために有用である。
【0036】
インスリン抵抗性および膵島による同時発生的な不適切なインスリン生成が、十分に重篤である場合、慢性的な高血糖が、生じ、II型糖尿病(NIDDM)の発症を規定する。上に示されるインスリン抵抗性に関連する代謝障害に加えて、高血糖に続発する疾患症状はまた、NIDDMを有する患者において生ずる。これらとしては、腎症、末梢性ニューロパシー、網膜症、微小血管疾患、四肢の潰瘍、およびタンパク質の非酵素的なグリコシル化(例えば、コラーゲンおよび他の結合組織に対する損傷)の結果が挙げられる。高血糖の減弱は、糖尿病のこれらの結果の発症の割合および重篤度を減少させる。本発明の活性な薬剤および組成物は、糖尿病における高血糖を減少させることを補助するので、それらの活性な薬剤および組成物は、慢性的な高血糖の合併症の予防および寛解のために有用である。本発明の薬剤および組成物は、前糖尿病(インスリン抵抗性および/またはグルコース寛容減損)からII型糖尿病までの進行を予防するか、または遅延させるために有用である。
【0037】
ヒト被験体および非ヒト哺乳動物被験体の両方は、本発明の処置方法に従って処置され得る。特定の被験体に対する本発明の特定の活性な薬剤の至適用量は、臨床背景において熟練した臨床医によって決定され得る。インスリン抵抗性、糖尿病、高脂血症、脂肪肝疾患、悪液質または肥満に関連する障害の処置のためのヒトに対する経口投与の場合において、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩は、一般に、1mg〜400mg、より好ましくは200mg〜400mgの1日量で投与され、1日あたり1回または2回投与される。マウスに対する経口投与の場合において、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩は、一般に、1キログラムの体重あたり1〜300mgの薬剤の1日量で投与される。インクレチン模倣物およびDPPIVインヒビターは、標準的な診療に従って投与される。いくつかの場合において、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩との同時投与は、他のクラスの薬物の効力を改善し、患者に投与されるこのような薬剤のより低い(したがって、より少ない毒性の)用量を満足な治療結果を伴って可能にする。エキセンディン−4は、代表的に、5マイクログラムまたは10マイクログラムのいずれかの用量で1日2回、皮下注射で投与される。
【0038】
本発明の実施形態において、上記インクレチン模倣物または上記DPPIVインヒビターの用量は、その薬物が単独で使用される場合、治療用量未満である。代表的に、上記用量は、通常の用量の25%と75%との間まで減少し得る。本発明の実施形態において、式Iの化合物および上記インクレチン模倣物またはDPPIVインヒビターのいずれかまたは両方の用量は、体重減少および/または食欲減退が生じるように選択される。
【0039】
活性成分が一緒に混合されずに、単一の混合物または組成物を形成する場合、それらは、1以上の単位経口用量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩、1以上の単位用量のインクレチン模倣物またはDPPIVインヒビター、およびそれら組み合わせて投与するための指示書を備えるキットの形態で提供され得る。好ましくは、上記キットの成分は、箱またはブリスターパックなどの中に一緒に包装される。
【0040】
I型糖尿病:I型糖尿病を有する患者は、インスリン投与の用量およびタイミングの適切な調整を可能にするために血糖を頻繁にモニタリングしながら、主に1日あたり1用量〜いくつかの用量のインスリンを自己投与することによってそれらの疾患を管理する。慢性的な高血糖は、腎症、ニューロパシー、網膜症、足の潰瘍、および早期の死亡などの合併症をもたらす;過剰なインスリン投与に起因する低血糖は、認知機能障害または意識消失を引き起こし得る。I型糖尿病を有する患者は、インクレチン模倣物またはDPPIVインヒビターおよび1〜400mg/日の式Iの化合物またはその塩によって処置され、上記インクレチン模倣物または上記DPPIVインヒビターが式Iの化合物と組み合わせて使用される場合において、各薬物は、単一の1日量または分割された1日量として別個であるか、あるいは上記DPPIVインヒビターが式Iの化合物と組み合わせて使用される場合において、両方の薬物は、単一の1日量または分割された1日量として組み合わせられる。予測される効果は、満足な範囲の血糖、ならびに低血糖エピソードの発生率および重篤度の減少を維持するために必要とされるインスリンの投与の用量または頻度における減少である。臨床成績は、血糖およびグリコシル化されたヘモグロビン(数か月の期間にわたる統合された血糖制御の妥当性の指標)の測定、ならびに糖尿病の代表的な合併症の発生率および重篤度の減少によってモニタリングされる。本発明の処置は、膵島移植片の抗糖尿病効力を維持することを補助するために膵島移植とともに投与され得る。エクセナチド単独は、I型糖尿病に対して推奨されないが、式Iの化合物によって提供される膵臓の保護は、I型糖尿病の処置において有用な組合せをもたらす。
【0041】
II型糖尿病:II型糖尿病(NIDDM)を有する代表的な患者は、食事療法および運動の計画、ならびにメトホルミン、グリブリド、レパグリニド、ロシグリタゾン、またはアカルボース(これらの全ては、いくつかの患者における血糖制御のある程度の改善を提供するが、これらの全ては、副作用を有するか、または疾患の進行に起因する最終的な処置の失敗を有する)などの薬物を摂取することによってそれらの疾患を管理する。膵島不全は、NIDDMを有する患者において経時的に生じ、大部分の患者においてインスリン注射を必要とする。本発明に従う毎日の処置(さらなるクラスの抗糖尿病薬物を伴うかまたは伴わない)は血糖制御を改善し、膵島不全の割合を減少させ、そして糖尿病の代表的な症状の発生率および重篤度を減少させるが、予測される。さらに、上昇した血清トリグリセリドおよび脂肪酸は、減少し、それによって、循環器疾患(糖尿病患者の死亡の主因)の危険性を減少させる。糖尿病に対する全ての他の治療剤に関する場合におけるように、用量の最適化は、必要性、臨床効果、および副作用に対する感受性に従って、個々の患者において行われる。
【0042】
GLP−1アナログおよびGLP−1調節因子は、膵島の質量および機能が十分に低下していない場合(例えば、早期のII型糖尿病において)、より有効である。膵島不全の背景におけるより後期の糖尿病(患者は外因性インスリンに依存するようになる)において、これらの薬剤は、依然として活性であるが、より早期におけるものよりもかなり低い。以前の研究から、化合物BIはdb/dbマウス(インスリン抵抗性および膵島不全の両方を特徴とする糖尿病のモデル)において膵島インスリン含量を保存することが、公知であった。
【0043】
高脂血症:血中の上昇したトリグリセリドレベルおよび遊離脂肪酸レベルは、集団の実質的な割合に影響を及ぼし、そしてアテローム硬化症および心筋梗塞の重要な危険因子である。本発明に従う処置は、高脂血症の患者において循環するトリグリセリドおよび遊離脂肪酸を減少させるために有用である。高脂血症の患者はまた、しばしば、循環器疾患の危険性も増大させる上昇した血中コレステロールレベルを有する。HMG−CoAレダクターゼインヒビター(「スタチン」)などのコレステロール低下薬が、本発明の薬剤に加えて、高脂血症の患者に投与され得る(必要に応じて、同じ薬学的組成物中に組み込まれる)。
【0044】
脂肪肝疾患:集団の実質的な割合は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)としても公知である脂肪肝疾患によって影響を及ぼされる;NASHは、しばしば、肥満および糖尿病に関連する。脂肪肝(肝細胞に関するトリグリセリドの液滴の存在の存在)は、肝臓を慢性炎症(生検サンプルにおいて炎症性白血球の浸潤をして検出される)に罹患し易くし、その慢性炎症は、線維症および肝硬変をもたらし得る。脂肪肝疾患は、一般に、肝細胞の傷害の指標として機能する肝臓特異的酵素(例えば、トランスアミナーゼALTおよびAST)の上昇した血清レベルの観察、ならびに肝臓の領域における疲労および疼痛を含む症状の存在によって検出されるが、確定診断は、しばしば、生検を必要とする。予測される利点は、肝臓の炎症および脂肪含量の減少であり、NASHの線維症および肝硬変への進行の減弱、停止、または逆転をもたらす。
【0045】
(薬学的組成物)
本発明は、式Iの化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物のさらなる実施形態は、上に記載される生物学的に活性な薬剤の実施形態のうちの任意の1つを含む。不必要な冗長性を回避する目的において、各々のこのような薬剤および薬剤の群は、繰り返されないが、それらは、あたかもそれらが繰り返されたかのように、薬学的組成物のこの説明に援用される。
【0046】
好ましくは、上記組成物は、例えば、錠剤、コーティングされた錠剤、糖剤、ハードゼラチンカプセルまたはソフトゼラチンカプセル、溶液、乳剤または懸濁物の形態において経口投与に適合する。一般に、経口組成物は、1mg〜400mg、好ましくは200mg〜400mgの式Iの化合物またはその塩を含む。1日あたり1個または2個の錠剤、コーティングされた錠剤、糖剤、またはゼラチンカプセルを嚥下することは、被験体に好都合である。しかし、上記組成物はまた、全身投与の任意の他の従来手段(直腸(例えば、坐剤の形態)、非経口(例えば、注射溶液の形態)、または鼻腔内を含む)による投与に適合し得る。
【0047】
活性成分は、薬学的組成物の産生のために、薬学的に不活性な、無機キャリアまたは有機キャリアと一緒に加工され得る。ラクトース、トウモロコシデンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩などは、例えば、錠剤、コーティングされた錠剤、糖剤、およびハードゼラチンカプセルのためのこのようなキャリアとして使用され得る。ソフトゼラチンカプセルのための適切なキャリアは、例えば、植物油、蝋、脂肪、半固体ポリオールおよび液体ポリオールなどである。しかし、活性成分の性質に依存して、キャリアは、ソフトゼラチンカプセルにおいて、ソフトゼラチン自体以外に通常必要とされない。溶液およびシロップの産生のための適切なキャリアは、例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油などである。坐剤のための適切なキャリアは、例えば、天然の油または硬化油、蝋、脂肪、半液体ポリオールまたは液体ポリオールなどである。
【0048】
さらに、薬学的組成物は、保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、コーティング剤または酸化防止剤を含み得る。薬学的組成物はまた、さらに他の治療的に有益な物質(特に、他の機構によって作用する抗糖尿病剤または抗高脂血症剤)を含み得る。
【0049】
エキセンディン−4アミド(エクセナチド)は、エキセンディン−4アミド、メタクレゾール、マンニトール、氷酢酸、酢酸ナトリウム三水和物、および水を含む薬学的処方物において、商標名BYETTAでAmylin Pharmaceuticals,Inc.およびEli Lilly and Companyによって市販されている。
【0050】
本発明はまた、式Iの化合物と、DPPIVインヒビターと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物を提供する。DPPIVインヒビターは、経口的に活性であり、したがって、式Iの化合物と同じ処方物において合わせることができるか、あるいは両方の薬物は、別個の錠剤またはカプセルにおいて投与され得る。
【0051】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより十分に理解され、その実施例は、本明細書中に記載される本発明を例示するが、限定しない。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
後期db/dbマウスにおいて、化合物BIを、血糖を低下させ、膵島インスリン含量を保存することにおける効能についてエキセンディン−4アミド(Bachemから取得した)と比較した。さらに、これらの2つの薬物の組み合わせを試験した。
【0053】
群
・ビヒクル
・化合物BI(一日当たり100mg/kg p.o.)
・エキセンディン−4アミド(一日当たり10ミリグラム i.p.)
・一日当たり10ミリグラム エキセンディン−4アミド i.p.は、4.5週齢db/dbマウス(Greigら、1999 Diabetologia 42:45−50)において開始した場合、最大12週間にわたって高血糖を減弱した。
【0054】
・化合物BI(一日当たり100mg/kg+エキセンディン−4アミド 一日当たり10ミリグラム i.p.)。
【0055】
マウスを4週間にわたって毎日処置した。血清グルコースおよびインスリンおよび膵インスリンを測定した。
【0056】
ビヒクル処置したdb/dbマウスは、4週間の処置後に重度に高血糖性であった。化合物BIは血清グルコースを実質的に低下させたが、エキセンディン−4アミド単独ではわずかな効果しかなかった。しかしながら、化合物BIとエキセンディン−4アミドとの組み合わせは、血清血糖に強力な効果を有した(図1)。
【0057】
膵島インスリンは、ビヒクルまたはエキセンディン−4アミド単独のいずれかで処置した動物において低かった。化合物BIで処置したマウスは、これら2つの群のいずれかよりもインスリンが多く、化合物BIとエキセンディン−4アミドとで処置したマウスは、それらの膵島においてなおよりインスリンが多かった。このことは、エキセンディン−4アミドが膵島に作用し、エキセンディン−4アミドが、その薬理学的活性についての十分に機能的な標的をもつように膵島を保護することによって、化合物BIが、エキセンディン−4アミドの活性をより高くすることを可能にするという考えと一致する(図2)。
【0058】
血清インスリンもまた測定した。ビヒクルまたはエキセンディン−4アミドに対して化合物BIで達成したグルコースの低下は、血清インスリンが有意に上昇することなく達成し、このことは、化合物BIが、このモデルにおいてインスリン抵抗性を減少させたことを示した。化合物BIおよびエキセンディン−4アミドで処置したマウスにおける血清インスリンのわずかな上昇は、インスリン分泌を生じるエキセンディン−4の既知の効果と矛盾しない(図3)。
【0059】
(実施例2)
db/dbマウスの末梢血糖レベルをモニタリングした。グルコースレベルが400mg/dLを超えた場合、これらのマウスを各々6匹のマウスの群に分けた。各々の群のマウスに、以下に示されるように、ビヒクルまたは化合物BI(経口胃管栄養法によって100mg/kg)+/−エキセンディン−アミド(Bachem、King of Prussia、PA)のi.p.注射のいずれかを4週間にわたって与えた:
1)ビヒクル
2)ビヒクル+エキセンディン(3μg/kg)
3)ビヒクル+エキセンディン(10μg/kg)
4)化合物BI
5)化合物BI+エキセンディン(3μg/kg)
6)化合物BI+エキセンディン(10μg/kg)。
【0060】
4週間の処置後、マウスを、眼窩後部洞(retroorbital sinus)によって採血し、循環グルコースレベルの分析のために、血清をAnilytics,Inc.(Gaithersburg、MD)に送った。膵臓を集め、計量し、瞬間凍結(flash frozen)し、次に膵インスリンアッセイのために処理した。簡潔に述べると、膵臓を、膵臓抽出溶液(75%エタノールおよび25% 0.15N HCl)に置き、その容積を膵臓100mgあたり1mLに調整した。次に、膵臓を超音波処理し、―20oCで一晩保存した。次の日、サンプルを4℃で5分間2500rpmで遠心分離し、可溶化しない物質をペレットにした。1.5mLの上清をEppendorfチューブに置き、4℃で20分間1300rpmで微量遠心機内で遠心分離し、あらゆる残存する可溶化しない物質をペレットにした。次に、生じた上清を、マウスインスリンのために開発された電気化学発光(electrochemiluminescent)(ECL)アッセイを使用して、インスリンの存在についてアッセイした。このアッセイは、標準としてラットインスリン(Lincon Research Inc.,St.Charles,MO)を使用するが、マウスインスリンとも直線性を示す。このアッセイは、捕捉抗体としてビオチン化抗マウスインスリンモノクローナル抗体(Biogenesis(AbDSerotec、Raleigh、NCの一部門)製のクローン5E4/3)、そしてルテニウム標識された抗マウスインスリン抗体(Biogenesis製のクローン5B6/6)を使用する。これらの抗体は、インスリン分子上の異なるエピトープに対するものであり、ECLアッセイ試薬の製造者(BioVeris Corp.,Gaithersburg、MD)の指示にしたがって標識した。標準またはサンプルを、2つの抗体と混合し、振とうしながら室温で2時間インキュベートした。続いて、ストレプトアビジンでコーティングしたDynabead(BioVeris Corp.、Gaithersburg、MD)を添加し、振とうしながら室温でさらに30分間インキュベートした。次に、サンプルを、M384装置(BioVeris Corp.,Gaithersburg、MD)にロードした。サンプル中のインスリンの量は、放出された光の量と比例した。
【0061】
図4は、循環グルコースレベルに対する化合物BI、エキセンディンまたはこれら2つの薬物の組み合わせの効果を示す。正常なマウスの循環グルコースレベルは、124〜262mg/dLである(Anilytics、Inc.Gaithersburg、MD)。生理食塩水のみで処置したマウスは、高レベルの高血糖(図4)および低い膵インスリンレベル(図5)を示した。低い膵インスリンレベルは、これらのマウスにおけるインスリン抵抗性が明らかな糖尿病へ移行したことに起因する。4週間にわたる、3μg/kgまたは10μg/kgのいずれかでのエキセンディンによる処置は、循環グルコースレベルにわずかな低減を示したが、膵インスリンには有意な変化はなかった。4週間、化合物BIで処置したマウスは、循環グルコースレベルに有意な低減および膵インスリンにそれに対応した上昇を示した(図5)。4週間にわたって、化合物BIおよび3μg/kgまたは10μg/kgでのエキセンディンの組み合わせによって処置したマウスは、用量応答性の相乗的な、循環グルコースレベルの低減および膵インスリンレベルの上昇を示した。
【0062】
(実施例3)
別個の実験において、db/dbマウスを、実施例2のように処置した。再び、化合物BI(100mg/kg p.o.)およびエキセンディン−アミド(10μg/kg、i.p.)の組み合わせによる処置の相乗効果が、循環グルコース(図6)および膵インスリン(図7)の両方に対して示された。
【0063】
(実施例4)
1型糖尿病について広範に使用されるモデルは、ストレプトゾトシン処理したマウスである。ストレプトゾトシン(STZ)は、Streptomyces achromogenesによって産生される抗生物質である。STZの構造は、高反応性のニトロソ尿素側鎖を有するグルコース分子である;適切な投薬量で、STZは、膵β細胞に選択的に毒性である。循環グルコースレベル、循環C−ペプチドレベル(血流への膵インスリンの尺度)および総膵インスリンに対する化合物BIとエキセンディン−アミドとの組み合わせの効果を調べるために、このモデルを使用した。
【0064】
1日目の朝に、C57Bl/6Jマウスから食物を除去し、そして午後にこれらのマウスにSTZの注射(160mg/kg)を与えた。4日目に尾の採血によってグルコースを測定し、350mg/dLより高いグルコースの読み取り(reading)であるマウスを、各々10匹のマウスの群に分けた。処置(ビヒクル(生理食塩水)、または化合物BI(100mg/kg、p.o.)とエキセンディン−アミド(10μg/kg、i.p.)との組み合わせ)を、同日(すなわち、4日目)に開始した。18日目に再度、尾の採血によってグルコースを測定した。マウスを30日目に屠殺した。循環グルコースおよび膵インスリンを実施例2のように測定した;血清インスリンレベルを、膵インスリンについてのものと同じECLアッセイを使用して測定した。C−ペプチドの循環レベルを、市販のELISA(Babco、Richmond、CA)を使用して血清において測定し、正常(未処置)C57Bl/6Jマウスのレベルと比較した。
【0065】
化合物BIおよびエキセンディン−アミドの組み合わせで処置したマウスは、循環グルコースレベルの低減(図8)ならびに循環C−ペプチドの上昇(正常レベルへの、図9)および膵インスリンの上昇(図10)を示した。
【0066】
(実施例5)
P32/98は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病において活性であることが示されているDPPIVインヒビターである(Pospisilikら、Diabetes 52:741−750、2003)。10週齢のdb/dbマウスに、4週間にわたって示されるようにビヒクルまたは化合物BI(100mg/kg、p.o.)+/−P32/98(10mg/kg、一日二回胃管栄養法によって)を与えた。循環グルコースおよび膵インスリンについてのアッセイを、実施例3のように実施した。P32/98処置マウスは、循環グルコースレベルにわずかな低減を示したが、膵インスリンに上昇は示さなかった。化合物BIもまた循環グルコースレベルを低下させ、P32/98と組み合わせた場合にさらなる低減を示した(図11)。化合物BIは、単独で使用した場合、膵インスリンレベルを上昇させ;これらの条件下でP32/98と組み合わせた場合、膵インスリンにさらなる上昇は存在しなかった。このことは、これらの条件下での単剤療法としての化合物BIで見られる強力な効能に起因する可能性が強い(図12)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−91662(P2013−91662A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−8939(P2013−8939)
【出願日】平成25年1月22日(2013.1.22)
【分割の表示】特願2009−524806(P2009−524806)の分割
【原出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(501056821)ウェルスタット セラピューティクス コーポレイション (32)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−8939(P2013−8939)
【出願日】平成25年1月22日(2013.1.22)
【分割の表示】特願2009−524806(P2009−524806)の分割
【原出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(501056821)ウェルスタット セラピューティクス コーポレイション (32)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]