説明

代謝障害の処置のための方法及び組成物

【課題】本発明は、高フェニルアラニン血症への治療介入のための新しい方法及び組成物に向けられる。
【解決手段】具体的には、本明細書は、種々のタイプのフェニルケトン尿症をBH4を含む組成物を用いて処置する方法及び組成物を記述する。BH4と他の治療方式との併用療法が考慮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本願は、35 U.S.C. §119(e)の下で2003年11月17日に出願された米国特許仮出願第60/520,767号の利益を主張するものであり、同仮出願の開示は引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般に代謝障害、特にアミノ酸代謝に関わる代謝障害の治療的介入に関する。詳しくは、本発明は、フェニルケトン尿症、血管疾患、虚血性疾患又は炎症性疾患、又はインシュリン抵抗性疾患、又は酸化窒素合成酵素活性の増強が利益である症状又は患者、の処置のための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
フェニルケトン尿症(PKU)は、遺伝的な代謝障害であり、1930年代に初めて確認された。たいていの場合、そして1990年代の半ばまで、これは肝臓の酵素フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)欠損から生ずるアミノ酸代謝の障害であると考えられていた。PAH欠損は、同様に脳と血漿中のフェニルアラニン(Phe)の過剰を生ずる。PAH欠損は最終的に神経伝達物質の前駆体であるチロシンの欠乏として現れる。
【0004】
幼児の早い時期に発見されず治療されないままになっていると、PKUは神経系の不可逆的な変化、重大な知能発達の遅れ、そして脳の発達不全につながる。処置されない患者の知能発達の遅れ以外の特徴は、脳の石灰化、軽い色素沈着、特異な歩行、スタンス、及び座位姿勢、湿疹、及びてんかん、などである。幼児は、乳児期の最初の一年以内に50IQポイントが低下することが報告されており、PKUは常に少なくともある程度のIQの低下を伴う。発見された場合、この障害は幼児に、後には子供に、低Phe食を与えることによって処置される。成人では、古典的なPKU患者が日常的に摂るタンパク質サプリメントはPheを含まないことがあり、これは、そのような成人が、全体としての食事が低Phe食になるような厳しい規律の下でコントロールされる残りの食事で十分な量のPheを摂取するという想定による。また、この病気の妊娠女性には、胎児の発達の障害と先天性奇形のリスク(母性PKU症候群)を回避するためにPheが少ない食事が推奨される。
【0005】
最近では、高フェニルアラニン血症(HPA)と総称される、過剰なPheという状態から現れる病理的症状は、複合的な解離性障害に分類され、それらは血漿Phe濃度とPAH補因子に対する応答性によって診断される。初期のレベルでは、PHAは、補因子6R-L-エリトロ-5, 6, 7, 8, テトラハイドロビオプテリンの欠乏の結果として生ずるPHA
(BH4; 悪性PKU)と、PAHの欠損によって生ずるPHAに分けられる。後者のカテゴリーはさらに、食事又はその他の治療的な介入がなされないときの血漿Phe濃度(本明細書では“無制限血漿Phe濃度”と称する)によって少なくとも三つのカテゴリーに細分される。
【0006】
正常な血漿Pheの恒常性は厳しくコントロールされて、血漿Phe濃度は60μmol/L±15μmol/Lとなっている。古典的PKU (OMIM No. 261600)は最も重いPKU形態であり、PAHのゼロ又は重大な突然変異から生じ、処置しないで放置した場合1200μmol/Lを超える無制限な高い血漿Phe濃度に至る。古典的(又は重度)PKUの人は、Phe濃度を安全な範囲まで減らすために非常に低Pheである食事に基づく厳しい食事療法で治療しなければならない。もっと軽い形態のPHAも特徴付けされている。それほど重くないPKUは、10-20mg/dL (600-1200μmol/L)という血漿Phe濃度で現れるものであり、一般に“軽度PKU”と呼ばれる。この中程度の形態のPKUは、中程度の食事制限、例えば低全タンパク質食であるが、必ずしもPheを含まないということは要求されない食事、によって管理できる。最後に、軽いHPAであるが、これは良性又は非PKU HPAとも呼ばれ、180-600μmol/Lという血漿Phe濃度で特徴付けられる。非PKU HPAの人は、Pheレベルが“安全”な範囲にあると考えられるので、日常的に処置されることはない。それでも、上述したように、このPheレベルも正常な非PKUの人のレベルに比べるとかなり高いので、少なくとも妊娠女性や非常に若い患者では有害な結果につながる可能性がある。PAH欠損から生ずるHPAについての詳しい概説については、当業者はScriver et al., 2001 (Hyperphenylalaninemia: Phenylalanine Hydroxylase Deficiency, In: Scriver CR, Beaudet AL, Sly WS, Valle D, Childs B, Vogelstein B, eds. Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed. New York: McGraw-Hill, 2001: 1667-1724)を参照されたい。NIHガイドラインは、PKUの子供では、血漿Phe濃度が360-420μmol/Lとなるように減らすことが好ましいと述べている。
【0007】
HPAは、また、BH4代謝の欠損からも生ずる。BH4は、チロシン及びトリプトファン・ヒドロキシラーゼの不可欠な補因子であり、これらは神経伝達物質ドーパミンとセロトニンの生合成の律速酵素である。ドーパミンとセロトニンの欠乏の影響は、まとめて“異型”又は“悪性”HPAと呼ばれる。したがって、従来のHPAの診断は、HPAがBH4欠損の結果であるか、それともPAH欠損の結果であるかという判定を含んでいる。普通、PKUの診断は血中Phe濃度の根強い上昇に基づいて確定される。血中Phe濃度のポジティブ・スクリーン(血漿Phe>120μmol/L: Weglage et al., J. Inherit. Metab. Dis., 25: 321-322, 2002)に続いて、ディファレンシャル・スクリーニングが行われて、高いPheがBH4欠損の結果であるか、それともPAH欠損の結果であるかということが判定される。このディファレンシャル診断は、BH4投与によって高いPhe濃度が低下するかどうかを決定することによって行われる(BH4負荷テスト)。BH4負荷テストは、普通、BH4の一時負荷を用いる、例えば、5-20 mg/kgを通常食(すなわち、無制限)を摂っている被験者に投与して被験者のPhe濃度が低下するかどうかを測定する(例えば、Penzone et al., Eur. J. Pediatr. 152: 655-661, 1993; Weglage et al., J. Inherit. Metab. Dis., 25: 321-322, 2002,を参照のこと)。
【0008】
普通、BH4負荷テストで血漿Pheレベルの減少で応答する人はBH4恒常性の欠損があると診断される。しかし、PAH欠損であってBH4応答するタイプの患者についていろいろな報告がある(Kure et al., J. Pediatr. 135: 375-378, 1999; Lassker et al., J. Inherit. Metabol. Dis. 25: 65-70, 2002; Linder et al., Mol. Genet. Metab. 73: 104-106, 2001; Spaapen et al., Mol. Genet. and Metabolism, 78: 93-99, 2003; Trefz et al., 2001)。これらの被験者は中程度の形態のPKUで典型的な血漿Pheレベル、すなわち、1000μmol/L未満、普通は600μmol/L未満、を有する。重度の古典的PKUの患者は典型的な24時間 BH4,負荷テストに応答しない(Ponzone et al., N. Engl. J. Med. 348(17): 1722-1723, 2003)。
【0009】
BH4に応答する人には食事治療は必要なく、BH4で処置すべきであると言われている。同様に、BH4負荷テストで応答しないと診断された被験者について逆のことが言われている、すなわち、これらの被験者はBH4療法ではなく食事制限によって処置すべきであるという。特にPonzone らは重度のフェニルケトン尿症の患者はBH4療法には応答しないので、BH4療法はこれらの患者で用いるべきではないと述べている(Ponzone et al., N. Engl. J. Med. 348(17): 1722-1723, 2003)。このように、現在、HPAの治療では、その人がBH4に応答するかどうかによって、治療方式が分かれる。さらに、BH4療法で良くなる患者は非常に少ないと言われている。実際、PAH欠損形態のHPAの人で、BH4療法で良くなるのは軽度PKUの人だけであると考えられる。これらの人たちは普通、Pheのレベルが安全範囲内(すなわち、600μM未満)にあるので、疾病の状態は中程度の食事制限によってコントロールできる(Hanley, N. Engl. J. Med. 348(17): 1723, 2003)。このように、BH4療法は、単独でも、他の治療的介入との組み合わせでも、HPAの患者の大多数で有効な治療法と考えられていない。
【0010】
BH4は、生物によって生成される天然に見られるプテリン・ファミリーのアミンである。プテリンは、生理液体及び組織に還元又は酸化された形態で存在しているが、5, 6, 7, 8,テトラヒドロビオプテリンだけが生物的に活性である。これはキラル分子であり、この補因子の6R鏡像異性体が生物的に活性な鏡像異性体であることが知られている。BH4の合成と障害についての詳しい概説はBlau et al., 2001,を参照のこと(Disorders of tetrahydrobiopterin and related biogenic amines. In: Scriver CR, Beaudet AL, Sly WS, Valle D, Childs B, Vogelstein B, eds. Metabolic and Inherited Disease. 8th ed. New York: McGraw-Hill, 2001:1275-1276)。HPAにおけるBH4欠損の役割が解明されたにも関わらず、BH4による治療は非常に高価で、青年又は成人で、フェニルアラニン制限食事療法の年間6,000ドルに対して年間30,000ドルと高いため、提案されていない(Hanley, N. Engl. J. Med. 348(17): 1723, 2003)。BH4に関するもう一つの大きな問題は、この化合物が室温で容易に好気的に酸化することであり(Davies et al., Eur. J. Biochem., Vol, 173, 345-351, 1988; 米国特許第4,701,455号)、室温で貯蔵寿命が8 時間未満であることである(Bernggar and Blau, Mol. Genet. Metabol. 77:304-313, 2002)。
【0011】
このように、これまでのところ食事療法が重度の古典的PKUのすべての患者及び中程度のPKUの多くの患者で用いられる典型的な治療法である。このような食事療法は、普通、Pheを含まない、又はPheが少ない天然の食物で構成される食材に患者を制限するものである。しかし、Pheを排除するだけでなく、このような食事療法は他の必須アミノ酸、ビタミン、及びミネラルの様々な供給源も排除する。その結果、サプリメントなしではそのような食事は正常な成長と発達を支えるためのタンパク質、エネルギー、ビタミン、及びミネラルを不十分にしか提供しない。PKUは、フェニルアラニンのヒドロキシル化の欠如から生ずるチロシンの欠乏の発現であるから、チロシンは必須のアミノ酸になり、PKUのための食事サプリメントはチロシン・サプリメントを含まなければならない。したがって、栄養製剤を用いてPKU患者の食事を補うことが普通である。また、乳児の場合、唯一の又は主な食物源として低Phe含有の乳児製剤を用いるのが普通である。
【0012】
しかし、食事のタンパク質制限は、多くの患者の部類でPKUをコントロールするための非効率的な方法である。例えば、高いPheレベルは子宮内での脳の発達を遅らせるので、妊娠時の治療はきわめて重要である。しかし、妊娠時の低タンパク質食は腎臓の発達を遅らせる結果になりかねないし、その後のネフロンの数を減らして成人したときに高血圧につながる恐れがある。(D’Agostino, N. Engl. J. Med. 348(17): 1723-1724, 2003)。
【0013】
タンパク質制限食に対する患者のコンプライアンスの悪さも問題である。利用できるPheを含まないタンパク質製剤は苦い味がして、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、などの必要な一日の摂取量を維持するに十分な量を患者が確実に消費するようにすることが難しい。これは特に、乾燥重量で70 gも摂る必要がある年長の子供たちの場合に問題になる。例えば、Schuett, V.E.; 1990; DHHS Publication No. HRS-MCH-89-5,は米国の8歳以上のPKU患者の40%以上が食事治療を守ろうとしないと報告している。(U. S. Patent No. 6,506,422)。多くの青年の患者は、仲間の目を恐れてタンパク質制限食に厳格に従うことができないでいる。
【0014】
したがって、PKU患者が置かれている食事制限の代わりとなる、又はそれを補い軽減する治療医薬が依然として必要とされている。本発明はそのような必要に応えるものである。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、代謝障害、特にアミノ酸代謝に関わる代謝障害の治療に関する。詳しくは、本発明は、高いフェニルアラニン・レベルを示す被験者、例えば高フェニルアラニン血症、軽度フェニルケトン尿症、又は古典的な重度フェニルケトン尿症の被験者を処置するための方法及び組成物;及び酸化窒素合成酵素活性の増強によって良くなる病状に罹患している被験者を処置するための方法及び組成物;及び血管疾患、虚血生又は炎症性疾患、糖尿病、又はインシュリン抵抗性疾患に罹患している被験者を処置するための方法及び組成物;に関する。
【0016】
ある様態では、本発明は被験者における古典的な重度フェニルケトン尿症(PKU)を処置する方法であって、その被験者にタンパク質制限食をテトラヒドロビオプテリン(BH4)又はその前駆体若しくは誘導体と併用して投与することを含んで成り、タンパク質制限食とBH4の併用投与が被験者の血漿中のフェニルアラニン濃度を、併用投与がなされない場合の濃度と比べて低下させるのに有効である方法を記載する。特定の実施態様では、被験者はBH4恒常性の欠損を示さない者である。被験者はL-ドーパ神経伝達物質の欠損という症候を発現していない者であってもよい。
【0017】
本発明の方法による処置で選ばれる被験者は、高い血漿Phe濃度を有し、その濃度は治療が行われない場合1800μM/Lを超えることがある。別の実施態様は、治療が行われない場合に1000μMを超える血漿Phe濃度を有するものを考慮している。好ましい実施態様では、本発明の併用投与方法は被験者の血漿Phe濃度を600μM未満に減少させる。さらに好ましくは、血漿Phe濃度は500μM未満に減少される。さらに好ましくは併用投与は被験者の血漿Phe濃度を360μM±15μMに減少させる。
【0018】
BH4は、好ましくは約1 mg/kg〜約30mg/kgという量、さらに好ましくは約5 mg/kg〜約30mg/kgという量で投与される。BH4は、一日に一回又は一日に数回投与することができる。ある実施の形態では、BH4治療は連続的でなく、被験者の血漿フェニルアラニン濃度が360μM未満に減少するまで毎日投与される。好ましくは、被験者の血漿フェニルアラニン濃度を毎日モニターし、血漿フェニルアラニン濃度の10%増加が観測されたときにBH4が投与される。好ましくは、投与されるBH4は、非結晶化され安定化されたBH4よりも安定性が高い結晶化されたBH4である。さらに好ましくは、安定化され、結晶化されたBH4は、少なくとも99.5%の純度の6R BH4である。ジヒドロビオプテリン(BH2)及びセピアプテリンなどの前駆体を投与することもできる。BH4は経口投与することができる。
【0019】
本発明の方法で投与されるタンパク質制限食は、被験者の全フェニルアラニン摂取を一日あたり600 mg未満に制限するフェニルアラニン制限食である。別の実施態様では、タンパク質制限食は、全フェニルアラニン摂取を一日あたり300 mg未満に制限するフェニルアラニン制限食である。さらに別の実施態様では、タンパク質制限食は、チロシン、バリン、及びロイシンなどのアミノ酸を補うものである。いくつかの実施態様では、タンパク質制限食は、プロテイン・サプリメントを含み、BH4はプロテイン・サプリメントと同じ組成で供給される。
【0020】
特定の実施態様では、被験者は突然変異型フェニルアラニン・ヒドロキシラーゼ(PAH)を有すると診断された者である。突然変異型PAHは、PAHの触媒領域に突然変異を含んで成る。そのような突然変異の例としては、F39L, L48S, 165T, R68S, A104D, S110C, D129G, E178G, V190A, P211T, R241C, R261Q, A300S, L308F, A313T, K320N, A373T, V388M, E390G, A395P, P407S, 及びY414C から成る群から選択される1又は複数の突然変異がある。
【0021】
本発明では、また、高フェニルアラニン血症(HPA)である妊娠している雌性を処置する方法であって、被験者にタンパク質制限食をテトラヒドロビオプテリン(BH4)又はその前駆体若しくは誘導体と併用して投与することを含んで成り、タンパク質制限食とBH4の併用投与が被験者の血漿中のフェニルアラニン濃度を、併用投与がなされない場合の濃度と比べて低下させるのに有効である方法が考えられている。いくつかの実施態様では、被験者は180μM超600μM未満の無制限血漿フェニルアラニン濃度を有する。別の実施態様では、被験者は500μM超1200μM未満の無制限血漿フェニルアラニン濃度を有する。さらに別の実施態様では、被験者は1000μM超の無制限血漿フェニルアラニン濃度を有する。
【0022】
本発明では、また、血漿フェニルアラニンの濃度が正常値を超える(例えば、180μM/Lを超える、さらに好ましくは360μM/Lを超える)患者を処置する方法であって、患者の血漿フェニルアラニンの濃度を減少させるのに有効な量で安定化されたBH4組成物を投与することを含んで成る方法が考えられている。好ましくは、安定化されたBH4組成物は8時間以上にわたって室温で安定である。患者は、BH4の投与の前に180μMを超える血漿フェニルアラニン濃度を有すると思われる。さらに詳しくは、患者の血漿フェニルアラニン濃度は120μMと200μMの間にある。別の実施態様では、患者の血漿フェニルアラニン濃度は200μMと600μMの間にある。さらに別の実施態様では、患者の血漿フェニルアラニン濃度は600μMと1200μMの間にある。処置される患者のさらに別の部類は、無制限血漿フェニルアラニン濃度が1200μMを超える。別の実施態様では、患者は妊娠しており妊娠している患者の血漿フェニルアラニン濃度は約200μMと約600μMの間にある。血漿フェニルアラニン濃度が1200μMを超える妊娠した患者は、このタイプの治療法の特に好適な対象であり、妊娠を考えている出産適齢期の雌性患者も好適な対象である。これらの実施態様で、患者の血漿フェニルアラニン濃度が1200μMを超える場合、この方法はさらにタンパク質制限食を患者に投与することを含んで成る。
【0023】
本発明はまた、フェニルケトン尿症の患者を処置する方法であって、患者は単回投与BH4負荷テストに応答しないと診断されていた場合に、患者に血漿フェニルアラニン濃度の減少を生ずるのに有効な量の安定化されたBH4を投与することを含んで成る方法を考えている。好ましくは、患者はBH4負荷から24時間以内に応答していない。
【0024】
本発明の別の関連様態は、一回よりも多くのBH4投与の投与を含む複数回投与負荷テストを用いる。本明細書に記載されているデータは、単回投与BH4負荷テストに“応答しない”と見なされた患者がBH4の複数回投与に対してフェニルアラニン・レベルの顕著な減少で応答する可能性があることをはっきりと示している。ある実施態様では、約5 mgから約40 mgまでの間にあるBH4の少なくとも二回の投与が、一日を超える期間、好ましくは7日間にわたって、被験者に投与される。
【0025】
本発明による処置方法は、約10 mg BH4/kg体重から約10 mg BH4/kg体重の間で投与することを含んで成る。BH4は実際に普通に用いられる経路で、例えば、経口的に、皮下に、舌下に、非経口的に、直腸に、経鼻的(per and nares)に、投与することができる。BH4は毎日、又は別の間隔で、例えば一日おきに、又は週に一回、投与することができる。好ましくは、BH4はタンパク質制限食と併用して、任意に、葉酸塩前駆体、葉酸、及び葉酸誘導体を含む葉酸塩と一緒に、投与される。
【0026】
BH4を治療用タンパク質製剤の成分の一部として投与することも考えられる。タンパク質制限食は、低タンパク質含有食材の正常食を含む。あるいはまた、タンパク質制限食は、フェニルアラニンを含まないタンパク質食であるタンパク質製剤の摂取を含み、被験者は非常に低タンパク質の食事の残りの成分から必須量のPheを得る。いくつかの実施態様では、タンパク質制限食はフェニルアラニンを含まないタンパク質サプリメントで補われる。さらに詳しく言うと、フェニルアラニンを含まないタンパク質サプリメントはチロシン、又はその他の必須アミノ酸を含む。別の実施態様では、タンパク質サプリメントはまた、葉酸塩前駆体、葉酸、及び葉酸誘導体を含む葉酸塩を含む。
【0027】
本発明は、フェニルケトン尿症の幼児を処置する方法であって、幼児が0から3歳の間にあり、幼児の血漿フェニルアラニン濃度が約360μMから約4800μMまでの間にある場合に、幼児の血漿フェニルアラニン濃度を減少させるのに有効な量の安定化されたBH4組成物を投与することを含んで成る方法を提案する。BH4の投与の前に、幼児のフェニルアラニン濃度は約1200μMであり、BH4の投与は血漿フェニルアラニン濃度を約1000μMに減少させる。別の実施態様では、BH4を投与する前、幼児のフェニルアラニン濃度は約800μMであり、BH4の投与は血漿フェニルアラニン濃度を約600μMに減少させる。さらに別の実施態様では、BH4を投与する前、幼児のフェニルアラニン濃度は約400μMであり、BH4の投与は血漿フェニルアラニン濃度を約300μMに減少させる。本発明で提案される処置方法は、好ましくは幼児の血漿フェニルアラニン濃度を360μM±15μMに減少させる。
【0028】
また、室温で8時間以上安定である安定化された結晶形態のBH4と、医薬として許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む組成物が提案されている。この組成物はさらに医療用タンパク質サプリメントを含むことができる。別の実施態様では、BH4組成物は幼児用調合乳の一部である。さらに別の実施態様では、タンパク質サプリメントがフェニルアラニンを含まない。タンパク質サプリメントは、好ましくは、L-チロシン、L-グルタミン、L-カルニチンが20 mg/100 gサプリメントという濃度で、L-タウリンが40 mg/100 gサプリメントという濃度で、そしてセレンが強化されている。サプリメントはさらに、L-ロイシン、L-プロリン、L-リシン・アセテート、L-バリン、L-イソロイシン、L-アルギニン、L-アラニン、グリシン、L-アスパラギン・モノハイドレート、L-トリプトファン、L-セリン、L-トレオニン、L-ヒスチジン、L-メチオニン、L-グルタミン酸、及びL-アスパラギン酸、から成る群から選択される1又は複数のアミノ酸の推奨日用量を含むことができる。さらに、サプリメントは、ビタミンA, D, 及びEの推奨日用量で強化することができる。サプリメントは、好ましくは脂肪成分を含み、それがサプリメントのエネルギーの少なくとも40%を占める。そのようなサプリメントは、粉末サプリメント、又はプロテイン・バーという形態で提供することができる。
【0029】
本発明のその他の特徴及び利点は以下の詳細な説明によって明らかになるであろう。しかしながら、それらの詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施態様を示しているが、単に本発明を例示的に示すものであって、本発明の精神と範囲内でいろいろな変更や変形が可能であることは以下の詳細な記述から当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のB型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図2】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のA型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図3】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のF型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図4】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のJ型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図5】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のK型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図6】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のC型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図7】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のD型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図8】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のE型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図9】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のH型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図10】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のO型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図11】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のG型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図12】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のI型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図13】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のL型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図14】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のM型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図15】(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のN型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフ。
【図16】毎日10及び20mg/kgのBH4を7日間投与した後の、患者20人中治療に応答した14人における平均血中フェニルアラニン・レベル。
【図17】10mg/kg BH4の複数回投与に対する11人の成人の個別の血中Pheレベル応答。
【図18】20mg/kg BH4の複数回投与に対する11人の成人の個別の血中Pheレベル応答。
【図19】10mg/kg BH4の複数回投与に対する9人の子供の個別の血中Pheレベル応答。
【図20】20mg/kg BH4の複数回投与に対する9人の子供の個別の血中Pheレベル応答。
【0031】
好ましい実施態様の説明
食事介入は、重度の古典的PKUのすべての患者及び多くの中程度のPKU患者に対して用いられる治療的介入である。しかし、このような食事のタンパク質制限は正常な成長と発達を支えるためのタンパク質、エネルギー、ビタミン、及びミネラルの不十分な供給につながる。すなわち、食事のタンパク質制限は、多くの部類の患者で、特に妊娠した女性と幼い子供という通常の成人に比べて多量のタンパク質を必要とする被験者のカテゴリーにおいて、最良でもPKUをコントロールするための非効率的なやり方である。食事制限は、また、タンパク質制限食に対する患者のコンプライアンスの悪さも障害になる。2000年10月、米国国立衛生研究所はPKUのスクリーニングと管理についてのコンセンサス・ステートメントを発表して、その中で、“PKUの治療のための食事以外の選択肢についての研究が強く推奨された”。すなわち、PKU患者が置かれている食事制限に代わる、及び/又はそれを補いそれを緩和する治療医薬の必要が当業者に認識されている。
【0032】
本発明は、安定化された形態のBH4の投与に基づくPKUの医薬的介入を初めて記載するものである。そのような安定化されたBH4組成物を生成するための方法及び組成物は実施例2で詳しく記述される。本発明の安定化されたBH4組成物は、室温で8時間より長く安定であるBH4結晶を含む。本発明の方法と組成物は、任意な常用の投与経路、例えば、限定しないが、経口投与、筋肉内注射、皮下注射、静脈注射等によって送達される安定化されたBH4だけを含む医薬組成物を考えている。本発明の組成物は、さらに、BH4組成物を、BH4組成物の安定性を引き延ばすのに役立つ抗酸化剤と併用して含むこともできる。さらに、以下で詳しく述べるように、本発明はさらにBH4を含む食材を含む。例えば、本発明は、通常のタンパク質粉末組成物、例えばPHENEX, LOFENALAC, PHENYL-FREE,などがBH4の添加によって修飾されたものを考えている。
【0033】
本発明はさらに、BH4をタンパク質制限食と併用することによるいろいろな表現型のPKUへの治療的介入を考えている。食事と併用して投与されるBH4は、本明細書に記載の安定化されたBH4組成物であってもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。室温で、及び光の中で不安定なBH4組成物を生成する方法は当業者には知られている。そのような組成物を用いる処置ではBH4組成物の不安定性が障害になるが、重度の古典的PKUに罹患しているBH4に応答しない患者をBH4治療と食事のタンパク質制限のコースで治療するいくつかの併用療法ではその利用が考えられる。
【0034】
PKUを含む代謝障害を処置するための方法及び組成物について以下でさらに詳しく説明する。
【0035】
1.処置される患者
本発明は、安定化されたBH4組成物、又は安定化されないBH4組成物を、単独で、又はHPA及び/又はPKUを管理する他の治療方式と併用して用いることによるいろいろなHPA患者集団の処置を対象とする。特に、安定化された、又はその他の形態のBH4を用いて、食事療法が通常用いられないほどフェニルアラニン濃度が低い患者集団(すなわち、軽度HPAの患者)を処置することができる。このようなBH4組成物によるあらゆる形態の処置で軽度HPAの影響を軽減できる患者としては、血清濃度が200μMより低い妊娠女性及び幼児が含まれる。いろいろな患者集団と、彼らの異なる治療ニーズについて本節でさらに詳しく説明する。
【0036】
本発明のいくつかの実施態様は、古典的な重度PKUを、被験者にタンパク質制限食と併用してBH4又はその前駆体若しくは誘導体を含む組成物を投与することによって処置する方法であって、タンパク質制限食とBH4の併用投与が被験者の血漿中のフェニルアラニン濃度を、併用投与がなされない場合の濃度と比べて低下させるのに有効である方法を対象とする。さらに、本発明はまた、HPAの妊娠雌性をその雌性にタンパク質制限食と併用してBH4又はその前駆体若しくは誘導体を含む組成物を投与することによって処置する方法であって、タンパク質制限食とBH4の併用投与が妊娠雌性の血漿中のフェニルアラニン濃度を、併用投与がなされない場合の濃度と比べて低下させるのに有効である方法を考慮している。特定の実施態様では、治療は420μMを超えるPheレベルを発現している患者が考慮される。
【0037】
本発明の別の実施態様は、安定化されたBH4組成物をHPAである人に投与することであって、BH4投与の前の血漿Phe濃度が180μMよりも高く、患者のそのような血漿Phe濃度の減少をもたらすのに有効な量で投与することを特徴とする。本発明の方法はまた、BH4負荷テストで応答しないと診断されたPKU患者の治療に用いることができる。本発明の方法は、300μMを超える高いPhe濃度によって特徴づけられるPKUの幼児を本明細書に記載のような安定化されたBH4組成物によって治療するのに用いることができる。“幼児”という用語で、本出願は0歳から約36ヶ月までの年齢の患者を指す。
【0038】
本明細書に記載のデータは、単回投与BH4負荷テストに“応答しない”と見なされた被験者が、実際にはBH4の複数回投与ではフェニルアラニン・レベルの顕著な減少によって応答することがあることを示している。すなわち、本発明の別の様態は、二回以上のBH4投与の投与を用いる複数回投与負荷テストを提供する。複数回投与負荷テストの例としては、5〜40 mg/kgのテトラヒドロビオプテリン、さらに好ましくは10〜20 mg/kgを、少なくとも1日、又は少なくとも2日、又は少なくとも3, 4, 5, 6, 7, 10又は14日、好ましくは2-14, 3-14, 又は5-10日、最も好ましくは7日、という期間にわたって投与するというものがある。
【0039】
本発明は、例えばフェニルアラニン・ヒドロキシラーゼ、チロシン・ヒドロキシラーゼ、又はトリプトファン・ヒドロキシラーゼの活性低下によって生ずるフェニルアラニン・レベルの上昇又はチロソン・レベルの低下に関連する病状の治療のために、本明細書に記載のテトラヒドロビオプテリン多形のいずれかを用いる方法、又はそのような多形のいずれかを含む安定な医薬製剤、を提供する。フェニルアラニン・レベルの上昇と関連した具体的な病状としては、軽度及び古典的なフェニルケトン尿症、及び本明細書の他のところで述べたような高フェニルアラニン血症、などがあり、患者集団の例としては、本明細書で述べた患者サブグループ、並びに正常よりも高いフェニルアラニン・レベルを示すその他の患者が含まれる。
【0040】
本発明はさらに、酸化窒素合成酵素活性の増強から恩恵を受ける病状に罹患している被験者及び血管疾患、虚血性又は炎症性疾患又はインシュリン抵抗に罹患している患者を治療するための本明細書に記載の多形のいずれかを用いる方法、又は多形のいずれかを含む安定な医薬製剤、を提供する。この治療は、例えば、酸化窒素合成酵素活性の低下を軽減する、又は酸化窒素合成酵素活性を正常レベルよりも増加させる。酸化窒素合成酵素活性の低下に罹患している患者は、葉酸塩前駆体、葉酸、及び葉酸塩誘導体を含む葉酸塩による治療が有効であると言われている。したがって、本明細書で開示する組成物及び方法は、葉酸塩前駆体、葉酸、及び葉酸塩誘導体を含む葉酸塩による併用療法を含む。葉酸塩の例は、米国特許第6,011,040号及び第6,544,994号に開示されており(これらはどちらも引用により本明細書に組み入れられる)、葉酸(プテロイルモノグルタメート)、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸、5-メチルテトラヒドロ葉酸、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、5,10-メテニルテトラヒドロ葉酸、5,10-フォルミミノテトラヒドロ葉酸、5-フォルミルテトラヒドロ葉酸(ロイコボリン)、10-フォルミルテトラヒドロ葉酸、10-メチルテトラヒドロ葉酸、1又は複数のフォリルポリグルタメート、葉酸又はフォリルポリグルタメートのプテリン部分のピラジン・リングが還元されてジヒドロフォレート又はテトラヒドロフォレートになった化合物、又はすべての前記化合物の誘導体であってN-5又はN-10位置にいろいろな酸化レベルの炭素単位を有するもの、又は医薬として適合するそれらの塩、あるいはこれらの二つ以上の組み合わせ、などである。テトラヒドロフォレートの例としては、5-フォルミル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-メチル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、10-フォルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5-フォルミミノ-(6S)-テトラヒドロ葉酸、又は(6S)-テトラヒドロ葉酸、及びそれらの塩、などがある。テトラヒドロプテリン多形と葉酸塩の両方を含む医薬組成物又は食材による処置も同様である。
【0041】
酸化窒素は、全身で血管の上皮細胞によって生成され、血圧と血管の緊張の調節における重要な生理的役割を果たす。酸化窒素生体活性の欠損が、血管の疾患、冠状動脈疾患及び冠状動脈、頸動脈、脳動脈、末梢血管動脈などすべての動脈のアテローム性動脈硬化、虚血-再灌流傷害、高血圧、糖尿病、糖尿性血管疾患、心臓血管疾患、末梢血管疾患、虚血及び/又は炎症から生ずる神経変性疾病、例えば卒中、などの病因に関与し、且つその病因としては上皮の損傷、器官と組織への酸素流量の不足、全身の血管の抵抗増加(高血圧)、血管平滑筋の増殖、血管狭窄(狭まり)の進行及び炎症などがあることが示唆されている。したがって、これらの病状の治療が本発明の方法により考慮される。
【0042】
また、酸化窒素合成酵素活性の増強はまた、引用により本明細書に組み入れられるU米国特許第6,410,535号に記載されているように、上昇したスーパーオキシド・レベルの低下、インシュリン感受性の増加、及びインシュリン抵抗性に関連した血管障害の減少をもたらすと言われている。したがって、本発明に従って、糖尿病(I型又はII型)、高インシュリン血症、又はインシュリン抵抗性の治療が考えられる。インシュリン抵抗性に関連した血管障害を有する疾病としては、インシュリン抵抗性によって生ずる又はインシュリン抵抗性によって悪化する疾病、又はインシュリン抵抗性によって治癒が遅れる疾病、例えば高血圧、高脂血症、動脈硬化、冠状血管狭窄アンギナ、労作性狭心症、脳血管狭窄症、脳血管機能不全、脳血管痙攣、末梢循環障害、経皮経肝的冠動脈血管形成術(PTCA)又は冠動脈バイパスグラフト術(CABG)の後の冠動脈再狭窄、肥満、インシュリン非依存性糖尿病、高インシュリン血症、脂質代謝異常、冠動脈硬化性心疾患、などでインシュリン抵抗性に関連するものがある。これらの疾患の患者に投与されたとき、BH4はNOSの機能を活性化し、NO産生を増加させ、活性酸素の生成を抑制することによって、血管内皮細胞の障害を改善してこれらの疾患を予防又は処置できると考えられる。
【0043】
A. 重度古典的PKUの特性と本発明によるその処置方法
背景についてのセクションで上述したように、重度PKUは1200μM/Lを超える血漿Phe濃度で現れ、4800μM/Lという高い濃度まで見られる。この疾病の患者は、Pheを含まない食事で治療してその血漿Phe濃度を臨床的に許容されるレベル(普通、600μM/L、好ましくは300μM/L未満)まで下げなければならない。患者たちは、一日の食事でのPheが最大250-350 mgしか許されない(Spaapen et al. Mol. Genet. and Metab. 78: 93-99, 2003)。したがって、患者たちは、出生後7-10日の間にPheを制限した調整食でスタートし、残りの生涯にわたってこの食事制限が課せられる。これらの人たちに課される厳しい食事制限を緩和するものはいかなるものでも有益であろう。
【0044】
古典的なPheの人たちの診断に用いられるテストは、以下のセクションIIIでさらに詳しく説明する。これらのテストから、古典的重度PKUの患者はBH4に応答せず、低フェニルアラニン食が必要であることが示された(Lucke et al., Pediatr. Neurol. 28: 228-230, 2003)。しかし、本発明では、厳しいフェニルアラニンを含まない食事の必要を緩和するために、この部類のPKU患者もBH4で処置すべきであると考えられている。
【0045】
このように、本発明の方法は、血漿Phe濃度をモニターすることによって患者が古典的PKUであることを決定するステップを含むと考えられる。その後、患者は、低タンパク質食とBH4の組み合わせで、患者の血漿Phe濃度に少なくとも25%の減少が生ずるような治療が施される。好ましくは、この方法で血漿Phe濃度に30%の減少が生ずる。
さらに好ましくは、この方法で血漿Phe濃度に40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上の減少が生ずる(例えば、患者が重度古典的PKUで血漿Phe濃度が4800μM/Lの場合、血漿Phe濃度の90%減少は480μM/Lの血漿Phe濃度を生ずるが、これは食事制限をほとんど必要としない低い濃度である)。当然ながら、本発明の処置方法は(重度古典的PKUを処置する場合であれ、本明細書に記載の他のHPAを処置する場合であれ)、患者の血漿Phe濃度を360μM/L±15μM/Lにできるだけ近いレベルまで下げるように努めるべきである。
【0046】
好ましい実施態様では、処置される古典的PKU患者の血漿Phe濃度は1000μM/Lを超える任意の量の無制限血漿Phe濃度から、600μM/L未満の血漿Phe濃度に減少する。当然ながら、BH4とタンパク質制限食による併用療法が血漿Phe濃度にもっと小さな減少しか生じない場合でも、例えば800μM/Lから1200μM/Lまでのレベルへの減少しか生じない場合でも、それはこの処置の臨床的に有用な結果であると見なされる。何故なら、血漿Phe濃度がこの範囲にある患者は、Phe制限された調合食を食べる代わりに食事におけるタンパク質の量を制限するだけでこの疾病を管理することができ、それによって生活の質が顕著に改善され、同時に食事制限に対する患者のコンプライアンスが高まることになるからである。
【0047】
前記処置の結果としての患者に許容される食事のPheレベルの量の増加は治療的に有効な結果であると見なされる。例えば、BH4をベースとする治療を施した結果として、患者は食事中のPheの摂取量を250-350 mg/日から350-400 mg/日に増加する(すなわち、患者のPhe許容表現型が古典的PKUの型から中程度PKU患者の型に変化する)ことが可能になると考えられる。当然ながら、本発明が教示する治療的介入によって患者が食事中のPheの摂取量を250-350 mg/日から400-600 mg/日に増加することができるようになる(すなわち、患者のPhe許容表現型が古典的PKUの型から軽度PKU患者の型に変化する)ことがさらに好ましく、患者が600 mg/日を超えるPhe(すなわち、正常な食事摂取量)を摂ることができるようになることがさらにもっと好ましい。
【0048】
B. BH4非応答PKU患者の特性及び本発明によるその処置方法
本発明の方法によって処置できる患者の第二のグループは、血漿Phe濃度が高いと判定された、すなわち、200μM/Lを超える血漿Phe濃度を有すると判定されたが、(以下で述べるBH4負荷テストによって判定して)BH4治療に応答しないと診断された人たちである。そのような患者としては、軽度PKU(すなわち、600μM/Lまでの血漿Phe濃度)、中程度PKU(すなわち、血漿Phe濃度が600μM/Lから約1200μM/Lまで)、並びに古典的重度PKU(すなわち、血漿Phe濃度が1200μM/Lを超える)の患者が含まれる。
【0049】
BH4治療に応答しない患者は、患者における血漿Phe濃度を減らすために、BH4をタンパク質の量を減らした食事と併用して与えられる。本発明の方法は、BH4治療の施行が、BH4治療なしで同じ食事プロトコルを実施した場合の血漿Phe濃度の減少に比べて大きな血漿Phe濃度の減少を生ずるようなものである。
【0050】
好ましい実施態様では、患者は、以下の実施例2に記載のような安定化された結晶形態BH4を含む組成物を投与される。このBH4組成物は、当業者に従来知られているもの、例えばBH4負荷キット(Schircks Laboratories, Jona, Switzerland)に入っていた製剤に比べて室温でより安定であるという点で従来この分野で利用されていたものと異なっている。したがって、このBH4組成物は室温又は冷蔵して貯蔵して、従来のBH4組成物よりも大きな力能を保持することができる。そのようなものとして、この形態のBH4は、同様の濃度で、従来利用されたBH4よりも大きな治療効力を有するであろうと考えられる。この大きな効能を用いて、従来BH4に対して応答しないとされた患者においても治療的に有効な結果を生み出すことができる。
【0051】
上のセクションIAに記載の患者の小集団と同様に、本セクションに記載のBH4非応答患者も安定化されたBH4組成物を、単独で、又は食事制限と併用して用いて治療できる。食事制限は、Pheの量を減らした合成医療用タンパク質製剤を提供してPhe摂取を制限する食事であっても、あるいはまた、患者に全体としてのタンパク質摂取を制限するように要求するが、患者が限られた量で正常な食材を食べることを許す食事制限であってもよい。
【0052】
上のセクションIAで古典的PKU患者について述べた好ましい治療結果が引用により本セクションに組み入れられる。中程度PKUの患者(すなわち、無制限血漿Phe濃度が600μM/Lから1200μM/Lまでの患者)に対する好ましい治療結果は、患者の血漿Phe濃度における少なくとも25%の減少を含む。この方法が血漿Phe濃度の30%の減少を生ずることが好ましい。より更に好ましくは、この方法は、血漿Phe濃度に40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上の減少を生ずる(例えば、患者が中程度古典的PKUで血漿Phe濃度が1000μM/Lの場合、血漿Phe濃度の90%減少は100μM/Lの血漿Phe濃度を生ずるが、これは食事制限をほとんど必要としない低い濃度である)。
【0053】
好ましい実施態様では、処置される中程度PKU患者の血漿Phe濃度は、600μM/Lから1200μM/Lの間の任意の量の無制限血漿Phe濃度から、300μM/L未満の血漿Phe濃度に減少する。BH4による(単独で、又は食事制限との併用で)特に好ましい治療は血漿Phe濃度に、例えば200μM/Lから約400μM/Lまでの間のレベルに、減少させる。これはこの治療の臨床的に有用な結果であると見なされる。何故なら、血漿Phe濃度がこの範囲にある患者は、Phe制限された調合食を食べる代わりに食事におけるタンパク質の量を制限するだけでこの疾病を管理することができるからである。実際、多くの研究で、このような患者は正常な食事を食べることもできると教示されている。
【0054】
処置の結果としての患者に許容される食事中Pheレベルの量の増加は治療的に有効な結果であると見なされる。例えば、BH4をベースとする治療を(単独で又は他の治療的介入と併用して)施した結果として、患者は食事中Pheの摂取量を350 -400mg/日から400-600mg/日に増加させる(すなわち、患者のPhe許容表現型が中程度PKUの型から軽度PKU患者の型に変化する)ことが可能になると考えられる。当然ながら、本発明が教示する治療的介入によって患者が食事中のPheの摂取量を350-400 mg/日から400に、患者が600 mg Phe/日を摂取(すなわち、正常な食事摂取)できるようになることが好ましい。
【0055】
処置される患者が軽度PKUを発現しているにすぎない、すなわち、食事における許容量が400-600 mg Phe摂取/日である場合でも、本発明のBH4をベースとする治療は有益である。何故なら、360μM/L±15μM/Lにできるだけ近い正常な血漿Phe濃度にすることが望ましいからである。このような患者の場合、好ましい治療的結果は、例えば、患者における血漿Phe濃度の少なくとも25%の増加であろう。好ましくは、この方法で血漿Phe濃度に30%の減少が生ずる。さらに好ましくは、この方法で血漿Phe濃度に40%、50%、60%、又はそれ以上の減少が生ずる(例えば、患者が軽度PKUで血漿Phe濃度が600μM/Lの場合、血漿Phe濃度の60%減少によって、360μM/Lの血漿Phe濃度が生ずる、すなわち、許容される正常な血漿Phe濃度である)。
【0056】
好ましい実施態様では、処置される軽度PKU患者の血漿Phe濃度は、400μM/Lから600μM/Lまでの間にある無制限血漿Phe濃度のある量から100μM/Lよりも低い血漿Phe濃度レベルに減少する。当然ながら、BH4による(単独での、又は食事制限との併用で)治療が血漿Phe濃度にそれよりも小さな減少しか生じない場合でも、例えば約200μM/Lから約400μM/Lまでの間のレベルへの減少であったとしても、これはこの治療の臨床的に有用な結果であると見なされる。
【0057】
処置の結果として患者に許容される食事中Pheレベルの量の増加は治療的に有効な結果であると見なされる。例えば、BH4をベースとする治療を(単独で又は他の治療的介入と併用して)施した結果として、患者は食事中Pheの摂取量を400-600mg/日から増加させる(すなわち、患者のPhe許容表現型が軽度PKU患者型から軽度HPA患者型に変化する)ことが可能になり、600 mg Phe/日超を摂取(すなわち、正常な食事摂取)できるようになることが考えられる。
【0058】
さらに、患者が非PKU HPAの症状しか発現していない患者、すなわち、600μM/Lまでの高い血漿Phe濃度を示すが、それ以外では正常タンパク質食を食べることが許されている場合でも、その患者は本発明のBH4治療で利益が得られる。何故なら、高いPhe濃度はそのような人のIQに顕著な影響を及ぼすことが示されているからである。さらに、下文で説明するように、特別なニーズを有する被験者、例えば妊娠雌性や幼児、へのBH4ベースの治療的介入は、その患者の血漿Pheレベルが“安全”と認識されている200μM/L未満というレベルに収まっているとしても、特に重要である。
【0059】
C. 母親のPKU及び本発明の処置方法
受胎を計画しているPKUの女性と妊娠しているPKUの女性における血漿Pheレベルの代謝コントロールは、あまり高くなくても上昇したPheレベルに子宮内で曝露された胎児への重大な影響を考えると、胎児のPAH状態に関わりなく重要である。血漿Phe濃度の治療コントロールは、妊娠初期に特に重要である。十分なコントロールが実現できないと、小頭症、精神薄弱、及び先天性心疾患などの障害を生ずるからである。
【0060】
例えば、フェニルケトン症に関するNIH Consensus Statement (vol 17 #3, 2000年10月) は、3-10mg/dLというレベルの母親のPheレベルに曝露された胎児は、小頭症の発生率が24%であり、20 mg/dLを超える(すなわち、1200μM/Lを超える)レベルで曝露された胎児は、小頭症の発生率が73%であると報告した。同様に、先天性心疾患は20 mg/dLを超える母親のPheレベルに曝露された子供の20%以上で明らかとなった。重要なことに、6 mg/dLを超えるPheのレベルは子供のIQを顕著に低下させるということが認められた。
したがって、最も軽度のHPAを発現している女性も含めてあらゆる形態のフェニルケトン尿症の女性の血漿Phe濃度を厳しくコントロールして母性PKU症候群のリスクを回避することが絶対必要である。しかし、米国のクリニックで用いられてきたPKU女性の血漿Phe濃度の許容される目標レベルは10 mg/dLから15 mg/dLの間にあり、これは妊娠女性に推奨される2-6 mg/dLというレベル、又はイギリスやドイツのクリニックで母性PKU症候群の発現ノリスクを減らすために用いられている1-4 mg/dLというレベルに比べてずっと高い。
【0061】
妊娠した女性についてのもう一つの重要な考慮事項は全体的なタンパク質摂取量である。妊娠時には、女性は十分なタンパク質を食べることが重要である、妊娠時の低タンパク質食は腎臓の発達を遅らせ、その後のネフロンの数の不足は成人したときの高血圧につながる可能性があると言われている(D’Agostino, N. Engl. J. Med. 348(17)1723-1724, 2003)。次の表は、いろいろな人に関して推奨される全食事タンパク質摂取量のガイドラインの例である。
【0062】
【表1】

【0063】
実際に摂取されるタンパク質の量はタンパク質のPhe含有量に依存する。植物タンパク質のアミノ酸プロファイルは動物タンパク質のアミノ酸プロファイルと異なる。例えば、デンプンと野菜に焦点をしぼると、タンパク質1gあたり45-50mg/Pheという一般則が通用する。しかし、タンパク質の構成アミノ酸を評価するための標準として受け入れられているものは卵白であり、これは3.5gのタンパク質を含み、そのうち204mgがPheである。
【0064】
上で例示されたガイドラインからわかるように、米国では、出産適齢期の(例えば、51歳未満)の女性に関して推奨されるタンパク質摂取量は約44〜50g/日であるが、妊娠している女性は約60g/日を摂取するように推奨される。カナダと英国では、妊娠女性に推奨されるタンパク質摂取量は約70g/日及び52g/日のオーダーである。このように、妊娠女性の血漿Phe濃度が厳しくコントロールされるようにする必要があるが、このグループのPKU患者は同程度の年齢の非妊娠PKU女性患者よりも多いタンパク質を必要とするために、それはさらに複雑になる。
【0065】
以上のようなことを考えると、本発明のBH4ベースの治療は妊娠女性において特に有用になると考えられる。何らかの形態のHPAに罹患している妊娠した又は妊娠を考えている女性は、その血漿Phe濃度レベルを180μM/Lから約360μM/Lという範囲にできるだけ近く維持するようにBH4治療のコースを施すことになると考えられる。このような治療コースによって女性が正常なタンパク質摂取レベルを増加できることが好ましい。
【0066】
血漿Phe濃度のレベルについての議論、及びそのPhe濃度をどこまで低下させるべきかについてのセクションIA及びIBで上述した議論は、妊娠女性に関する本セクションにも組み入れられる。
【0067】
D. 幼児におけるPKUの管理と本発明の処置方法
本明細書の全体にわたって説明されているように、幼児(ゼロから3歳まで)における血漿Phe濃度の上昇はその子供のIQの顕著な低下を生ずる。しかし、本明細書の他のところで述べたように、400μM/L程度までの血漿Phe濃度の上昇では患者は通常食事制限を受けない。したがって、ゼロから3歳までの幼児は、現在の治療からかなりの有害な影響を受ける。本発明は、無制限血漿Phe濃度が360μM/L±15μM/Lを超える幼児を、BH4を含む治療組成物によって処置してその被験者に有益な血漿Phe濃度の減少を生ずることを考慮している。
【0068】
好ましい実施態様では、幼児はゼロ歳から3歳までの年齢であり、BH4投与の前の無制限血漿Phe濃度が約1200μM/Lであり、この投与によって血漿Phe濃度が減少する。好ましくは、血漿Phe濃度は1800μM/L超から投与後に約1500μM/L、約1200μM/L、約1100μM/L、約1000μM/L、約900μM/L、約800μM/L、約700μM/L、約600μM/L、約550μM/L、約500μM/L、約450μM/L、約400μM/L、約350μM/L、約300μM/L、約275μM/L、約250μM/L、に減少する。別の実施態様では、幼児はゼロ歳から3歳までの年齢であり、BH4投与の前の無制限血漿Phe濃度が約1200μM/Lであり、好ましくは、BH4を単独で又は食事と併用して投与すると、この血漿Phe濃度が約800μM/Lに、さらに好ましくは約500μM/Lに、より更に好ましくは約360μM/Lに減少する。本発明が無制限血漿Phe濃度が360μM/Lを超える幼児をBH4で処置してその血漿Phe濃度を減少させることを考えていることは当業者には理解されるであろう。上のセクションIAとIBにおける血漿Phe濃度の治療による減少の議論は引用により本明細書に組み入れられる。さらに、最初の無制限血漿Phe濃度の10%を超える減少は幼児に対するこの治療方式の治療結果であると見なされる。これらの幼児における血漿Phe濃度に治療による減少をもたらすために、BH4治療を食事制限と併用することができることは言うまでもない。
【0069】
II. 処置に用いられる組成物
本発明は、PKU/HPAの治療的介入を考慮している。かかる介入は、最初はBH4に基づく。BH4は単独で用いても、食事制限と併用して用いてもよい。さらに、BH4及び/又は食事制限は、別の治療成分と併用することもできる、例えば、脳におけるPheの蓄積を防止するために大きな神経アミノ酸など、PKUの他の発現と闘うための他の治療組成物(Koch et al., Mol. Genet. Metabol. 79:110-113, 2003を参照のこと)又はチロシン補充など、と併用することができる。本セクションは本明細書で考慮する治療に用いることができる組成物について説明する。
【0070】
A. BH4組成物
BH4はPheヒドロキシル化の補因子であり、出生時にPheが高かった患者の2%未満がBH4合成に欠陥があることが本発明以前に示されていた。BH4に応答すると確認された人たちについて、患者は食事への介入に応答しないと言われており、したがって、これらの人たちには正常食を与えBH4治療を単独で施した。すなわち、本発明の前には、PKU/HPA患者に対するBH4投与の治療効果に関して当業者は非常に懐疑的であった。しかし、本明細書の全体にわたって論じられているように、BH4に対して非応答的と診断された患者に対する治療的介入としてBH4を投与することができる。さらに、本発明者たちは、BH4治療を食事制限と併用して、BH4負荷テストに応答する人たち並びにBH4負荷テストに応答しない人たちの両方で治療効果を生ずることができることを示している。
【0071】
米国特許第5,698,408号;第2,601,215号;第3505329号;第4,5440,783号;第4,550,109号;第4,587,340号;第4,595,752号;第4,649,197号;第4,665,182号;第4,701,455号;第4,713,454号;第4,937,342号;第5,037,981号;第5,198,547号;第5,350,851号;第5,401,844号;第5,698,408号及びカナダ出願CA 2420374(それぞれ引用により本明細書に組み入れられる)は、それぞれ、本発明のための組成物として用いることができるジヒドロビオプテリン、BH4及びその誘導体、を作る方法を記載している。これらの方法のいずれかを用いて本発明の処置方法で用いるBH4組成物を製造することができる。
【0072】
米国特許第4,752,573号;第4758,571号;第4,774,244号;第4,920,122号;第5,753,656号; 第5,922,713号;第5,874,433号;第5,945,452号;第6,274,581号;第6,410,535号;第6,441,038号;第6,544,994号及び米国特許公報US 20020187958; US 20020106645; US 2002/0076782: US 20030032616 (それぞれ引用により本明細書に組み入れられる)は、それぞれ、非PKU治療のためにBH4組成物を投与する方法を記載している。これらの特許はそれぞれ、本明細書に記載のPKU/HPAの治療に適合させることができる、当業者に公知のBH4を投与する方法の一般的な教示として引用により本明細書に組み入れられる。
【0073】
BH4を生成する上記の一般的方法の他に、本発明は特に安定化されたBH4組成物を生成して用いることを考慮する。好ましくは、この安定化されたBH4組成物は結晶形態である。本発明で用いられる安定化されたBH4組成物を作る方法は実施例2に記載される。このような結晶形態は、PKUの治療のための通常のタンパク質調合食への添加剤として有用になる可能性がある。結晶形態はまた、経口投与のために錠剤、粉末、又はその他の固形物に好適に成形することができる。BH4の形態及び投与経路は、以下の医薬組成物セクションでさらに詳しく説明する。
【0074】
好ましい実施態様では、本発明の方法はそれを必要とする患者に、約10mg/kg〜約20mg/kgのBH4という日用量を提供すると考えられる。当然ながら、当業者は投与によって得られる効力に応じて上又は下へこの投与量を調整することができる。日用量は、一回の投与で投与することも、適当に間隔をあけた何回かの投与で投与することもできる。例示的な実施態様では、日用量は5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、22mg/kg、24mg/kg、26mg/kg、28mg/kg、30mg/kg、32mg/kg、34mg/kg、36mg/kg、38mg/kg、40mg/kg、42mg/kg、44mg/kg、46mg/kg、48mg/kg、50mg/kg、又はそれ以上である。
【0075】
投与されるBH4の量に関わりなく、投与によって患者の血漿Phe濃度が、種々のタイプの患者についてセクションIで述べたような濃度に減少することが望ましい。
【0076】
B. 食事のタンパク質
BH4及び関連類似体をHPA/PKU患者に投与する他に、患者の食事のタンパク質を制限又は変更することも考えられている。当業者は、PKUの治療に用いられるいろいろな市販されているタンパク質調合食を知っているであろう。そのような調合食としては、MAXIMAID, PHENEX 1, PHENEX 2 (Ross Laboratories, Liverpool, UK), LOFENALAC, PHENYL-FREE (Mead Johnson), などがある。
【0077】
当業者は、一般にPhe濃度がゼロである参照されたタンパク質調合食を利用できるであろう。タンパク質調合食は、しばしば、PKU患者において欠乏するアミノ酸が補われる。そのようなアミノ酸としては、例えばL-チロシン、及びL-グルタミンがある。PKU患者の食事にバリン、イソロイシン、及びロイシンを補うことが望ましいと言われている(米国特許第4,252,822号を参照のこと)。いくつかの臨床実験で、PKUの毒性作用は脳が他のアミノ酸、例えばチロシンやトリプトファン、を摂取するのをPheがブロックすることによって生じている。PKU患者の食事にこれらの大きな中性アミノ酸を補うことによって脳のPhe取り込みがブロックされ脳のPheレベルが低下することが明らかとなっている。したがって、本発明の方法では、食事治療をさらにこれらのアミノ酸の一つ以上を含む組成物で補うことができると考えられている(Koch et al., Mol. Genet. Metabol. 79: 110-113,2003)。
【0078】
さらに、タンパク質制限に加えて、通常ヒトの乳や動物起源の他の食材に見られるL-カルニチンやタウリンも供給すべきであることが知られている。いくつかの実施態様では、L-カルニチンは20mg/100gのサプリメントタンパク質という割合で、タウリンは40mg/100gのサプリメントタンパク質という割合で供給されて、通常ヒトの乳や動物起源の他の食材に見られる量のこれらの因子を供給するようにできる。
【0079】
さらに、食事のタンパク質制限にも関わらず他のサプリメントを提供するようにして患者に供給しなければならない必須のビタミンやミネラルなどの他の成分のリストについて、当業者は、2000 National Academy of Science-National Research Council Dietary Referenceを参照されたい。
【0080】
全タンパク質量に関する上のセクションICで示された表、及び望ましい血漿Phe濃度に関して一般的にセクションIで示した数字を参照して、当業者は、必要とされる食事中のタンパク質制限の量を決定し、それに応じて患者の食事を調整することができる。例えば、約11-14歳の男性を取り上げると、この人は45gのタンパク質/日を摂ることが好ましい。この人が重度PKUの患者である場合、彼の無制限血漿Phe濃度は1200μM/Lを超えるであろうと思われ、この人の食事タンパク質源の全部ではなくても大部分は粉末のタンパク質サプリメントからになりそうであり、それによって彼の血漿Phe濃度が600μM/Lを下回ることが好ましい。この被験者にBH4を投与することによって、治療結果は患者の血漿Phe濃度をさらに大きく減少させるものになるか、又は治療結果として、血漿Phe濃度の低下は同程度であるが、その人が食事献立ではなく正常の食事からのタンパク質を許容されるようになる。
【0081】
同様に、約11-14歳の男性が中程度PKUの患者である場合、本発明の方法を用いて、彼に割り当てられた45gタンパク質/日を、制限された調合食ではなく通常のタンパク質摂取によって摂らせることが可能であろう。本発明の方法が有効であるかどうかを判定するためには、患者の血漿Phe濃度を定期的に測定して血漿Phe濃度が少なくとも400μM/Lよりも低いままであることを確認する必要がある。そのような濃度を測定するテストは後述する。約360μM/L以下の濃度が達成されることが好ましい。
【0082】
III. 患者集団の同定とモニタリング
本明細書の全体にわたって述べているように、本発明のいろいろな実施態様で、ある患者がBH4治療に応答するかどうかを決定すること、及びフェニルアラニン濃度を決定することが、最初に治療する患者のPKU部類を同定するために、そして進行している治療計画の間、その計画の有効性をモニターするために必要になる。そのような方法の例を下文で説明する。
【0083】
A. BH4負荷テスト
ある患者がBH4に応答すると同定するために、当業者は“BH4負荷”テストを行う。二つのタイプのテストが、HPAの鑑別診断を達成するために用いられている。第一のテストは簡単な経口BH4負荷テストであり、第二のテストはフェニルアラニン/BH4併用負荷テストである。
【0084】
最も簡単なBH4負荷テストは、外因的なBH4を投与して血漿Phe濃度の低下に対する投与の効果を決定するものである。最初は2mg/kgのBH4を静脈内に注入することがDanks et al., (Lancet 1:1236, 1976)によって提案されたが、純度が高いBH4が利用できるようになると、約2.5mg/kg体重という量でBH4の経口投与を用いることが可能になった。最終的に、7.5mg/kgのBH4の単回経口投与量を投与するという標準化されたやり方がNiederwieser et al.,によって提案された(Eur. J. Pediatr. 138:441, 1982)が、ラボによってはまだ20mg BH4/kg体重を上回る量を用いている。このテストは、BH4の欠損によるHPAの患者と、PAHの欠損によるHPAの患者とを区別することを可能にする。
【0085】
この簡単なBH4負荷テストで信頼できる結果を得るためには、患者の血中Pheレベルが400μM/Lよりも高いことが必要である。したがって、この負荷テストを行う前の2日間は患者をPKU食から外すのが普通である。BH4テスト・キットが利用でき、Dr. Schircks Laboratories (Jona, Switzerland)から配給されている。このキットは正常食を摂取した30分後に20mg BH4/kg体重を投与することを推奨している。
【0086】
上述のように、正確なBH4の測定値を得るためには患者のPhe濃度が理想的には400μM/Lよりも高い必要がある。フェニルアラニン/BH4併用テストでは、Phe(100mg/kg体重) プラスBH4 (20mg/kg体重) の経口投与によってすべてのBH4欠損の選択的スクリーニングが可能になる。普通、Pheを経口投与で投与してからほぼ1時間後にBH4が続いて投与される。血漿Pheレベルは、Phe投与の前、及びPhe投与後適当な時間間隔で(例えば、1, 3, 5, 9, 13, 及び25時間に)モニターされる。
【0087】
簡単なBH4負荷テストにおいても、Phe/BH4併用負荷テストにおいても、血漿Pheの値がBH4負荷後24時間以内にBH4投与以前の血漿Phe値の30%超減少した場合は、BH4に応答することを示すと言われている(Mol. Genet. Metabol. 78:93-99, 2003)。
【0088】
BH4負荷テストを行う別の方法も用いられる。そのような方法の例は、例えば、Muntau et al., (N. Engl. J. Med. 347(26): 2002) 及びBerneggar and Blau, (Mol. Genet. Metabol. 77:304-313, 2002)に記載されている。
【0089】
Berneggar and Blauでは、BH4負荷テストは20mg/kgのBH4を用い、フェニルアラニンとチロシンを調べるための血液採取が0, 4, 8, 及び24時間に行われ、BH4応答者とBH4非応答者を判別する。テストは少なくとも3時間の絶食の後に行われる。テストの前にネオプテリンとビオプテリンの尿サンプルが調べられる。6R BH4(20mg/kg体重)を経口投与した後、テスト期間全体にわたって正常な食事摂取が許される。0, 4, 8, 及び24時間における測定で、血液サンプルのPheとTyrが測定される。別の尿サンプルが4-8時間の間に採取される。ジヒドロプテリジン・レダクターゼ活性は、テストの間の任意時点で測定される。血漿フェニルアラニン・レベルが400μM/L未満の患者、又はすでに低フェニルアラニン食の治療を受けている患者の場合、Berneggar and Blauは、BH4投与の3時間前に100mg/kg体重のフェニルアラニンを経口投与するフェニルアラニン−BH4併用テストを推奨している。
【0090】
Berneggar and Blauは、BH4応答性を負荷から4及び8時間後の“フェニルアラニン・ヒドロキシル化”として計算し、排除されたフェニルアラニンのパーセンテージとして表した。0, 4, 及び8時間後の“ヒドロキシル化率”のグラフの傾き(S)が、異なるBH4製品及び異なる患者グループで比較される。傾きは、非応答者、遅応答者、及び応答者を区別する。遅応答者(Berneggar and Blauの図5を参照のこと)は360μM/Lというカットオフ値に達するのに長い時間を必要とし、投与されるBH4の有効性は最初のフェニルアラニン・レベルに依存する。彼らは、血漿Pheが800μM/Lよりも低い一部の患者及び血漿Pheが1200μM/Lよりも高いほとんどの患者について、Phe測定は21時間後に行うように推奨している。Phe/S vs. 時間のプロットを用いて、360μM/Lという治療的に“安全な”血漿Phe値に達するのに必要な時間を推定することができる。
【0091】
Muntau et al. (2002) も、BH4投与の時間と濃度を計算するために用いることができるBH4負荷テストの見本を提供している。彼らもやはりPHE/BH4併用テストを用いており、患者には100mg/kg体重のフェニルアラニンを含む食事が与えられる。食事の1時間後、患者に20mg/kgのBH4(Schirks Laboratories)が経口投与される。血中フェニルアラニン濃度はPhe負荷の前に、並びにBH4負荷の前及び4, 8, 及び15時間後に、電気スプレー・イオン化質量分析によって決定される。新生児は母乳を与えられ、もっと年長の患者はBH4負荷の6-8時間の間に標準化されたタンパク質摂取(10mg Phe/kg)を与えられる。Muntauはまた、Phe酸化の方法も記載している。4時間の絶食と一晩の絶食の後に全部で6mg/kgの13CラベルされたPheがデキストロース溶液に溶解されて経口投与される。次に、呼気サンプルが180分間にわたって採取され、排気されたガラス管に貯蔵される。サンプルはその後、同位体比質量分析によって分析され、炭素13の回収量が計算される(Treacy et al., Pediat. Res. 42: 430-5, 1997)。
【0092】
Muntau らは、BH4投与の15時間後の血中PheレベルがBH4投与の前に測定された値から30%以上減少したときに、患者をBH4応答的と分類している。180分間のテストの間に得られた二酸化炭素の測定によって決定されるPhe酸化速度の改善は、BH4を補うことによってPhe酸化の値が少なくとも15%増加したときに意味があると見なされた。
【0093】
当業者は、上で参照した方法のいずれかを用いてある人がBH4に応答するかどうかを判定することができる、しかし、BH4応答性を決定するための他の同等な方法及び関連した方法が当業者に知られている可能性もあり、上記の方法の代わりにそれを用いることもできる。
【0094】
B. Phe濃度の決定
血中のPheの濃度を決定する方法は多数ある(Shaw et al., Analytical Methods in Phenylketonuria-Clinical Biochemistry, In Bickett et al., Eds. Phenylketonuria and Some Other Inborn Errors of Amino Acid Metabolism, Stuttgart, Georg Thiem Verlag, 47-561971,)。普通、フェニルアラニンとチロシンの濃度は、患者の血清から蛍光分析を用いて決定される。この分析は、フェニルアラニンをロイシルアラニンの存在下でニンヒドリンと一緒に加熱したときの蛍光物質の形成に依存している(McCaman et al., J. Lab. Clin. Med. 59: 885-890, 1962)。
【0095】
Phe濃度を決定する最もポピュラーな方法は、患者の血液で飽和された濾紙からディスクを打ち抜くGuthrieテストである。一様なディスクはバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)を蒔いた、バチルス・サブチリス増殖の特異的阻害剤を含む寒天トレーでインキュベートされる。均一なディスクから寒天にフェニルアラニンが移るにつれて、Pheが細菌増殖の阻害を逆転させて細菌増殖の領域を生じ、既知の量のPheを含むディスクを用いて行われる同様の分析との比較によってそれがフェニルアラニン濃度と関連づけられる。
【0096】
Phe濃度を定量化する他の方法としては、HPLC、質量分析、薄層クロマトグラフィー、などがある。それらの方法を用いて患者の血漿Phe濃度を治療前に決定し、治療の間のPhe濃度をモニターしてその効力を決定することができる。
【0097】
患者の血漿Phe濃度レベルは治療の過程の全体にわたって適当な間隔で(例えば、毎日、一日おき、又は毎週)モニターされると考えられる。血漿Phe濃度レベルをこのように規則的にモニターすることにより、臨床医は治療の効力を評価し、それに応じてBH4及び/又は食事のタンパク質必要量を調整することができる。
【0098】
IV. 併用療法
本発明の方法によっては、BH4と食事のタンパク質制限を併用していろいろな形態のHPAの患者で治療効果を実現することを包含する。本明細書で考慮する併用療法で適当な治療効果を上げるために、一般に被験者に対してBH4組成物と食事制限が、所望の治療効果(例えば、血漿Phe濃度の低下、及び/又は血漿Phe濃度の上昇を伴うことなくPhe/タンパク質摂取の許容量を増やすことを可能にする)を生ずるために有効な併用量で投与される。このプロセスは、BH4組成物と食事タンパク質治療組成物を同時に投与することがある。これは、単一組成物を投与することによって、すなわち、すべての必要な食事タンパク質を含む医薬タンパク質調合物と、このタンパク質調合物中にBH4も含む単一組成物を投与することによって達成できる。あるいはまた、食事タンパク質(サプリメント又は通常のタンパク質食)はBH4の医薬製剤(錠剤、注射、又はドリンク)とほぼ同時に摂取される。BH4は、また、プロテイン・バーや、その他の食材、例えばチョコレートケーキ、パンケーキ、ケーキなど摂取するのに適した食材に製剤できる。
【0099】
別の選択肢として、BH4治療は食事タンパク質治療と数分から数時間の間隔をおいて先行又は追従することができる。タンパク質とBH4組成物が別々に投与される実施の形態では、一般に、それぞれの送達の間にあまり時間が経過しないで、BH4が患者に有利な作用を及ぼすことができるようにする。そのような場合、食事のタンパク質摂取の(前後)約2-6時間以内にBH4を投与すると考えられ、遅れは約1時間程度であることが最も好ましい。いくつかの実施態様では、BH4治療は連続治療であり、日用量のBH4が患者に無制限に投与されると考えられる。別の状況では、例えば軽度の形態のPKU及びHPAである妊娠女性では、BH4治療は女性が妊娠している及び/又は母乳を与えている期間に限って連続して投与される。
【0100】
さらに、BH4の送達と食事タンパク質の調節だけに基づく治療の他に、本発明の方法はまた、HPAの1又は複数の症状を特にターゲットとした第三の組成物による併用療法を考えている。例えば、HPAによって起こるチロシンの欠乏は、神経伝達物質ドーパミンとセロトニンに欠損を生ずることが知られている。したがって、本発明の文脈で、BH4と食事タンパク質に基づく方法をさらに、L-ドーパ、カルビドーパ、及び5-ヒドロキシトリプトファン神経伝達物質の投与と併用して食事中のチロシンの量の減少によって生ずる欠陥を矯正することができると考えられる。
【0101】
さらに、PAH(Christensen et al., Mol. Gent. And Metabol. 76:313-318, 2002; Christensen et al., Gene Therapy, 7:1971-1978, 2000)及びフェニルアラニン・アンモニアリアーゼ(PAL Liu et al., Arts. Cells. Blood. Subs. and Immob. Biotech. 30(4):243-257, 2002)による遺伝子治療が当業者により考慮される。このような遺伝子治療法を、本発明のBH4/食事タンパク質制限の併用に基づく治療と併用して用いることができる。さらに別の併用療法では、フェニラーゼを摂取できる酵素として患者における低いPhe濃度を破壊するために提供することも考えられる。フェニラーゼの投与は(PAHの投与と異なり)チロシンを生成しないので、この治療では依然としてチロシンがそのような患者にとって必須のアミノ酸であるという結果になる。したがって、食事によってチロシンを補うことが、治療と併用してフェニラーゼを受ける患者にとって望ましい。
【0102】
V. 医薬組成物
本発明による投与のための医薬組成物は、BH4を含む第一の組成物を、任意に医薬として許容される担体と併用して医薬として許容される形態で含むことができる。この組成物は意図した目的を達成できる任意の手段によって投与することができる。本発明の組成物の投与量及び投与計画は、PKUの治療に関する当業者には容易に決定できる。上で述べたように、当業者は、最初は医療の状況で現在提案されているBH4の量及び計画を採用することができるであろう、例えばNOS活性を修飾するために提案されている組成物、又は上のセクションIIであげた特許に記載されているような痛みと抑うつの治療に用いられるもの、を採用できるであろう。負荷テストのためにBH4を投与するために用いられている記述された手順、製剤、投与経路などを、本発明で用いるように容易に変更できる。
【0103】
本明細書に記載の組成物及び方法は、BH4の特定の形態、又はBH4の類似体又は誘導体の特定の形態、の使用に限定されない。実際、本発明の範囲内の組成物及び方法は、何らかの形態のBH4、及び何らかの形態のその類似体又は誘導体、を、意図した目的を達成するのに有効な量で含むすべての組成物を含む。本明細書に記載の組成物及び方法で用いられる類似体の非限定的な例としては、プテリジン、プテリン、ネオプテリン、ビオプテリン、7,8-ジヒドロビオプテリン、6-メチルテトラヒドロプテリン、及びその他の6-置換テトラヒドロプテリン及びその他の6-置換テトラヒドロプテリン、セピアプテリン、6,7-ジメチルテトラヒドロプテリン、6-メチル・ビオプテリン、及びその他の6-置換ビオプテリン、及びその他のこの分野で記載されている類似体、がある。ここに記載する組成物及び方法で用いられる誘導体の非限定的な例としては、米国特許第4,758,571号;第4,774,244号;第6,162,806号;第5,902,810号;第2,955,110号;第2,541,717号;第2,603,643号; 及び第4,371,514号に記載されている誘導体が含まれる。これらの特許の開示はここに組み入れられる。
【0104】
本発明の処置方法によっては、BH4ベースの組成物が、変更されたタンパク質食に加えて投与される併用療法を考慮しており、本発明の医薬組成物も、少なくともBH4ベースの治療物質、その類似体又は相同体、を改良したタンパク質食と併用して投与したときにPKUの1又は複数の症状の改善を達成するのに有効な量で含むすべての組成物を考慮している。当然ながら、軽減される最も明らかな症状は、併用療法が血漿Phe濃度に減少を生ずるということであるが、他の症状、例えばIQ、管理機能、集中力、ムード、行動安定性、ジョブパフォーマンス、などの変化もモニターされる。このような指標は当業者に公知の方法によってモニターされる。
【0105】
(6R)-L-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の結晶多形
BH4、特にBH4の二塩酸塩、は結晶多形を示すことが明らかとなっている。BH4の構造を下に示す:
【化1】

【0106】
BH4の(6R)形態は知られている生体活性形態であるが、BH4はまた、周囲温度で不安定であることも知られている。BH4のある結晶多形はより安定であり、周囲条件の下での分解に対して安定である。
【0107】
BH4は取扱いが難しく、したがって、吸湿性と酸化に対する感受性による劣化を防ぐために窒素の下で密封アンプルに入れた二塩酸塩(Schircks Laboratories, Jona, Switzerland)として製造され提供される。米国特許第4,649,197号は、(6R)-と(6S)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩をそのジアステレオマーに分離することは(6R,S)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の結晶性の悪さのために難しいと開示している。ヨーロッパ特許第0 079 574号はテトラヒドロビオプテリンの調製を記載しており、そこでは固体テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩が中間物質として得られる。S. Matsuura らはChemistry Letters 1984, 735-738ページとHeterocycles, Vol. 23, No. 12, 1985, 3115-3120ページで、(6R)- テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を無色の針状固体結晶として記載しており、これはJ. Biochem. 98, 1341-1348 (1985)で開示されたX線解析によって特徴付けられている。6.81°の光学回転が結晶生成物で明らかとなったが、これはEP-A2-0 191 335の実施例6の白色結晶の形態の固体結晶について報告された6.51°に非常に近い。
【0108】
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の開発で得られた結果は、この化合物が多形形態と溶媒和物を含む異なる結晶形で存在する可能性を示していた。この分野への関心の継続には、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の個々の結晶形態の調製のための効率的かつ信頼できる方法、及び好ましくは安定で製剤の製造と調製において取扱いと加工が容易な結晶形態を与える、そして物質の形及び製剤された製品として高い貯蔵安定性を与え、安定な形態の製造のためのコントロールされた結晶化のために中間物質として適当なそれほど安定でない形態を提供するコントロールされた結晶化条件が必要である。
【0109】
多形B型
最も安定であると認められた結晶多形は、本明細書では“B型”又は“多形B”と称する。(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の研究と開発の間に得られた結果は、いくつかの知られている固体結晶が調製されたことを明らかにしているが、誰もその多形について、そしてBH4結晶の安定性に及ぼす影響について認識していなかった。
【0110】
多形Bはわずかに吸湿性の無水物であり、約20℃より上で熱力学的安定性が最も高い。
さらにB型は、熱的な安定性、標的条件での調製の可能性、適当な形態と粒径、のために容易に加工し取り扱うことができる。融点は260℃に近い(△Hf>140J/g)が、融解の前及びその間に分解するためにはっきりした融点を見つけることができない。このような著しい性質によって、多形B型は高温で調製される製剤用途に特に実用的である。多形Bは、粒径が0.2μmから500μmまでにわたる微細粉末として得られる。
【0111】
B型は、d-値(Å):8.7 (vs), 6.9 (w), 5.90 (vw), 5.63 (m), 5.07 (m), 4.76 (m), 4.40 (m), 4.15 (w), 4.00 (s), 3.95 (m), 3.52 (m), 3.44 (w), 3.32 (m), 3.23 (s), 3.17 (w), 3.11 (vs), 3.06 (w), 2.99 (w), 2.96 (w), 2.94 (m), 2.87 (w), 2.84 (s), 2.82 (m), 2.69 (w), 2.59 (w), 2.44 (w)で表されるX線粉末回折パターンを示す。
図1は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のB型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフである。
【0112】
本明細書で用いる場合、かっこ内の略記は次のような意味である:(vs) = 非常に強い強度;(s) = 強い強度;(m) = 中程度の強度;(w) = 弱い強度;そして(vw) = 非常に弱い強度。特徴的なX線粉末回折パターンを図1に示す。
【0113】
BH4の他の多形が製造及び製剤化の際の安全な取扱いのために満足できる化学的及び物理的安定性を有し、純粋な形又は製剤で高い貯蔵安定性を与えることが明らかとなっている。さらに、B型及びBH4のその他の多形は非常に大量に(例えば、100キロ規模で)調製することができ、長時間にわたって貯蔵できることが明らかとなっている。
【0114】
結晶形B型を含めてすべての結晶形態(多形、水和物、溶媒和物)は、最も安定な多形Bの調製に使用できる。多形Bは、適当な極性の非水性溶媒中での、多形B型以外の無定形やその他の形態、例えば多形A、の懸濁液の相平衡によって得られる。すなわち、本明細書に記載される医薬製剤とは(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形Bの製剤を指す。
【0115】
BH4の他の形態は、そのBH4の他の形態を室温で溶媒に分散させ、多形B型を生ずるのに十分な時間周囲温度で懸濁液を攪拌し、その後結晶形B型を単離し、単離されたB型から溶媒を除去することによってB型に変換できる。本明細書で用いる場合、周囲温度とは、0℃から60℃までの範囲にある、好ましくは15℃から40℃までの範囲にある温度を意味する。適用される温度は、処理と攪拌の間、温度を段階的に又は連続的に減少させることによって変えることができる。他の形態をB型に変換するための適当な溶媒としては、限定しないが、タノール、エタノール、イソプロパノール、その他のC3-及びC4-アルコール、酢酸、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メチル-t-ブチル・エーテル、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、その他のC3-C6-アセテート、メチル・エチル・ケトン、及びその他のメチル-C3-C5-アルキル・ケトン、などがある。相平衡を完了するための時間は30時間に達し、好ましくは20時間に達することもあり、あるいは20時間未満であることもある。
【0116】
多形Bはまた、約5%までの水を含む溶媒混合物、特にエタノール、酢酸、及び水の混合物、からの結晶化によっても得られる。(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形B型は、エタノール、酢酸、及び水の溶媒混合物に、好ましくはB型より低エネルギーの固体形態、又は(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のB型を、任意に高い温度で、溶解し、溶液に種を加え、得られた懸濁液を冷却し、形成された結晶を単離することによって調製できることが明らかとなった。溶解は、室温で、又は70℃までの温度で、好ましくは50℃までの温度で行うことができる。溶解には最終の溶媒混合物を用いることも、又は出発物質を最初は水に溶解し、次に残りの溶媒を両方又は次々に加えることもできる。溶媒混合物の組成は、水:酢酸:テトラヒドロフランの体積比1:3:2から1:9:4まで、好ましくは1:5:4、を含むことができる。溶液は攪拌することが好ましい。冷却とは、-40℃から0℃までの温度へ、好ましくは10℃から30℃までの温度への冷却を意味する。適当な種は、別のバッチからのB型又は同様の又は同一の形態を有する結晶である。単離後、結晶形B型はアセトン又はテトラヒドロフランなどの非溶媒によって洗浄し、通常の様式で乾燥させることができる。
【0117】
多形Bは、また、水溶液から、メタノール、エタノール及び酢酸などの非溶媒を加えることによる結晶化によっても得ることができる。結晶化及び単離手順は室温で溶液を冷却することなく有利に実行できる。したがって、このプロセスは工業規模で行うのに非常に適している。
【0118】
本明細書に記載される組成物及び方法の1つの実施態様では、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形B型を含む組成物は、B型以外の固体形態又は(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を周囲温度で水に溶解し、非溶媒を懸濁液
を生ずるのに十分な量で加え、任意に懸濁液を一定時間攪拌し、その後形成された結晶を単離することによって調製される。
【0119】
水溶液中の(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の濃度は、溶液を基準にして、重量で10〜80パーセント、さらに好ましくは重量で20〜60パーセント、である。
好ましい非溶媒(すなわち、BH4の調製に使用できる溶媒)は、メタノール、エタノール、及び酢酸である。この非溶媒を水溶液に加えることができる。さらに好ましくは、水溶液が非溶媒に加えられる。懸濁液の形成後の攪拌時間は30時間までに達するか、好ましくは20時間までに達することもあり、あるいは20時間未満であることもある。濾過と乾燥による単離は上述のように知られている様式で行われる。
【0120】
多形B型は、非常に安定な結晶形態であり、容易に濾過し、乾燥させ、医薬製剤に望ましい粒子サイズに粉砕することができる。これらの著しい性質によって、多形B型は医薬用途に特に実用的になる。
【0121】
多形A型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の別の結晶多形が本明細書に記載の医薬製剤に使用するために好ましい、安定なBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“A型”又は“多形A”と称する。多形Aは、わずかに吸湿性であり、重量で約3パーセントまでの含有量で水を吸収し、10℃/minという速さで熱したときに50℃から200℃までの間にそれを連続的に放出する。多形Aは吸湿性の無水物であり、B型に対して準安定形態である;しかし、しっかりと封止された容器に保持すると、数ヶ月にわたって安定である。A型は、安定な多形形態を製造するための中間物質及び出発物質として特に適当である。多形A型は、1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0122】
A型は、特徴的なピークがd-値(Å):15.5 (vs),12.0 (m), 6.7 (m), 6.5 (m), 6.3 (w), 6.1 (w), 5.96 (w), 5.49 (m), 4.89 (m), 3.79 (m), 3.70 (s), 3.48 (m), 3.45(m), 3.33 (s), 3.26 (s), 3.22 (m), 3.18 (m), 3.08 (m), 3.02 (w), 2.95 (w), 2.87 (m), 2.79 (w), 2.70 (w) で表されるX線粉末回折パターンを示す。図2は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のA型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフである。
【0123】
多形Aは、波数(cm-1)で:2934(w), 2880(w), 1692(s), 1683(m), 1577(w), 1462(m), 1360(w), 1237(w), 1108(w), 1005(vw), 881(vw), 813(vw), 717(m), &878m), 673(m), 659(m), 550(w), 530(w), 492(m), 371(m), 258(w), 207(w), 101(s), 87(s) cm-1で表される特徴的なラマン・スペクトル・バンドを示す。
【0124】
多形A型は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の水溶液の凍結乾燥又は水分除去によって得られる。(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形A型は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を周囲温度で水に溶解し、(1)溶液を低温に冷却して固化させ、減圧下で水を除去し、又は(2)前記水溶液から水を除去することによって調製できる。
【0125】
結晶A型は、濾過し、次に乾燥して生成物から吸収した水を蒸発させて単離できる。乾燥の条件と方法は公知であり、単離された生成物の乾燥、又は本明細書に記載の変形例(2)による水の除去は高い温度、例えば80℃まで、好ましくは30℃から80℃までの範囲の高い温度を、真空下又は高い温度と真空下で加えて実行される。変形例(2)で得られた沈澱の単離の前に、懸濁液は相平衡のためにある一定時間攪拌される。水溶液中の(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の濃度は、溶液に対して重量で5から40%までである。
【0126】
出発物質として固体溶液を得るために速い冷却が好ましい。溶媒が完全に除去されるまで減圧を加えなければならない。凍結乾燥は当業者に周知の技術である。完全な溶媒除去までの時間は、加えられる真空(0.01から1 mbarまでの範囲にある)、用いる溶媒、及び凍結温度に依存する。
【0127】
多形A型は、実質的に水を含まない条件下で室温又は室温よりも下で安定であり、これはテトラヒドロフラン又は第三級ブチルメチルエーテル中の懸濁液を室温で窒素の下で、それぞれ5日及び18時間攪拌する相平衡テストによって実証される。濾過と室温での乾燥によって変化しない多形A型が得られる。
【0128】
多形F型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の別の結晶多形が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するために好ましい、安定なBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“F型”又は“多形F”と称する。多形Fは、わずかに吸湿性であり、重量で約3パーセントの含有量まで水を吸収し、10℃/minという速さで熱したときに50℃から200℃までの間にそれを連続的に放出する。多形Fは準安定形態であり、吸湿性の無水物で、低い周囲温度ではA型よりも安定で、高い温度ではB型より不安定である。F型は、安定な多形形態を製造するための中間物質及び出発物質として特に適当である。多形F型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0129】
多形Fは、d-値(Å):17.1(vs), 12.1(w), 8.6(vw), 7.0(w), 6.5(w), 6.4(w), 5.92(w), 5.72(w), 5.11(w), 4.92(m), 4.86(w), 4.68(m), 4.41(w), 4.12(w), 3.88(w), 3.83(w), 3.70(m), 3.64(w), 3.55(m), 3.49(s), 3.46(vs), 3.39(s), 3.33(m), 3.31(m), 3.27(m), 3.21(m), 3.19(m), 3.09(m), 3.02(m), 及び2.96(m)で表される特徴的なピークを有する特徴的なX線粉末回折パターンを示す。図3は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のF型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフである。
【0130】
多形Fは、多形A型の適当な極性の非水性溶媒で、前記低いエネルギー形態をほとんど溶解しない溶媒、特にメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールなどのアルコール、における懸濁液の相平衡によって得られる。(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形F型は、また、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の固体A型の粒子を、室温よりも下で前記(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩をほとんど溶解しない非水性溶媒に分散させ、この懸濁液を前記温度で多形F型を生ずるのに十分な時間攪拌し、その後結晶F型を単離し、単離された形態から溶媒を除去することによって調製できる。溶媒の除去と乾燥は、空気、乾燥空気、又は窒素又は希ガスなどの乾燥保護気体の下で、室温又はそれより低い温度、例えば0℃で行われる。相平衡の間の温度は、好ましくは5〜15℃、最も好ましくは約10℃である。
【0131】
多形J型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の別の結晶多形が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するために好ましい、安定なBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“J型”又は“多形J”と称する。多形Jは、わずかに吸湿性であり、空気湿度で取り扱ったときには水分を吸着する。多形Jは準安定形態であり、吸湿性の無水物で、以下に記載のE型に変換して戻すことができ、そこから、高い相対湿度、例えば75%より高い相対湿度、に曝露することによって得られる。J型は、安定な多形形態を製造するための中間物質及び出発物質として特に適当である。多形J型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0132】
J型は、d-値(Å):14.6(m), 6.6(w), 6.4(w), 5.47(w), 4.84(w), 3.29(vs), 及び3.21(vs)で表される特徴的なピークを有する特徴的なX線粉末回折パターンを示す。図4は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のJ型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフである。
【0133】
多形Jは、E型を真空下で普通の温度で脱水することによって得られる。詳しくは、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形J型は、E型を取り、真空ドライヤーでE型を処理してE型から水を除去して調製することができ、普通の温度でJ型が得られる。普通の温度とは、25〜70℃の範囲の温度を意味し、最も好ましくは30℃〜50℃の範囲の温度を意味する。
【0134】
多形K型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の別の結晶多形が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するための安定な、好ましいBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“K型”又は“多形K”と称する。多形Kは、わずかに吸湿性であり、重量で約2.0パーセントの含有量まで水を吸着し、10℃/minという速さで熱したときに50℃から100℃までの間にそれを連続的に放出する。多形Kは準安定形態であり、吸湿性の無水物で、高い温度ではB型よりも不安定である。K型は、安定な多形形態、特にB型、を製造するための中間物質及び出発物質として特に適当である。多形K型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0135】
K型は特徴的なX線粉末回折パターンを示し、特徴的なピークがd-値(Å):14.0(s), 9.4(w), 6.6(w), 6.4(w), 6.3(w), 6.1(w), 6.0(w), 5.66(w), 5.33(w), 5.13(w), 4.73(w), 4.64(m), 4.48(w), 4.32(vw), 4.22(w), 4.08(w), 3.88(w), 3.79(w), 3.54(m), 3.49(vs), 3.39(m), 3.33(vs), 3.13(s), 3.10(m), 3.05(m), 3.01(m), 2.99(m), 及び2.90(m)で表される。図5は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のK型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフである。
【0136】
多形Kは、少量の水を含む極性溶媒の混合物からの少量のアスコルビン酸の存在下での結晶化によって得られる。溶媒混合物のための溶媒は、酢酸とアルコール、例えばメタノール、エタノール、n-又はイソプロパノール、から選択される。詳しくは、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形K型は、少量の水と少量のアスコルビン酸を含む酢酸とアルコール又はテトラヒドロフランの混合物に高い温度で(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を溶解し、温度を室温よりも低く下げて前記二塩酸塩を結晶化させ、沈澱を単離し、単離された沈澱を高い温度で、任意に真空下で、乾燥させて調製することができる。適当なアルコールは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールであり、エタノールが好ましい。酢酸のアルコール又はテトラヒドロフランに対する比は、2 : 1から1 : 2までの範囲にあり、好ましくは約1 : 1である。(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の溶解は、高い含有量の水の存在下で行って、より多くの反溶媒混合物を加えて完全な沈澱を得ることができる。最終組成物における水の量は重量で0.5から5パーセントであり、アスコルビン酸の量は重量で0.01から0.5パーセントである。どちらも溶媒混合物に対する量である。溶解のための温度は30から50℃の範囲にある。沈澱は単離、例えば濾過、の後にエタノールなどのアルコールで洗浄される。多形Kは、例えばイソプロパノール中の相平衡によって、任意にB型の結晶を種として、室温より高い温度、例えば30から40℃までの温度で、最も安定なB型に容易に変換できる。
【0137】
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の水和物形態
以下で詳しく述べるように、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩はいくつかの結晶水和物として存在することが明らかとなった。これらを本明細書ではC型, D, E, 及びHと記載し定義する。これらの水和物形態は本明細書に記載の医薬製剤のためのBH4の安定な形態として及びBH4の安定な結晶多形を含む組成物の調製で有用である。
【0138】
水和物C型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のある水和物結晶形態が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するための安定な好ましいBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“C型”又は“水和物C”と称する。水和物C型は、わずかに吸湿性であり、重量で約5.5パーセントの水含有量を有し、これはC型が一水和物であることを示す。水和物Cは、融点が94℃に近く(△Hfは約31J/g)、水和物C型は安定な多形ィック形態を製造するための中間物質及び出発物質として特に適当である。多形C型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0139】
C型は、特徴的なX線粉末回折パターンを示し、特徴的なピークがd-値(Å):18.2(m), 15.4(w), 13.9(vs), 10.4(w), 9.6(w), 9.1(w), 8.8(w), 8.2(w), 8.0(w), 6.8(m), 6.5(w), 6.05(m), 5.77(w), 5.64(w), 5.44(w), 5.19(w), 4.89(w), 4.76(w), 4.70(w), 4.41(w), 4.25(m), 4.00(m), 3.88(m), 3.80(m), 3.59(s), 3.50(m), 3.44(m), 3.37(m), 3.26(s), 3.19(vs), 3.17(s), 3.11(m), 3.06(m), 3.02(m), 2.97(vs), 2.93(m), 2.89(m), 2.83(m), 及び2.43(m)で表される。図6は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の水和物C型が示す特徴的なX線回折パターンのグラフである。
【0140】
水和物C型は、多形形態、例えば多形B型の、好ましくは溶媒に対して重量で約5パーセントの量で水を含む非溶媒中の懸濁液の相平衡によって得られる。(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の水和物C型は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を非溶媒中に、例えば、ヘプタン、メタノール、エタノール、1-又は2-プロパノールなどのC1-C4アルコール、酢酸エチルなどのアセテート、アセトニトリル、酢酸、又は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、第三級ブチル・メチル・エーテルなどのエーテル、あるいはこれらの非溶媒の二元又は三元混合物中に懸濁させ、それに一水和物を形成するのに十分な水を加え、懸濁液を周囲温度以下(例えば、0から30℃)で一水和物を形成するのに十分な時間攪拌することによって調製することができる。十分な水とは、溶媒の量に対して重量で1から10、そして好ましくは3から8パーセントの水を意味する。
固体は濾過され、空気中でほぼ室温で乾燥される。固体は多少の水を吸収することができ、したがって、重量で5.5パーセントという理論値よりも高い水分含有量を有することがある。水和物C型はD型とBに比べて不安定であり、空気中及び低い相対湿度で約40℃という温度で多形B型に容易に変換される。水和物C型は室温での懸濁平衡によってより安定な水和物Dに変換できる。
【0141】
水和物D型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の別の水和物結晶形態が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するための安定な好ましいBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“D型”又は“水和物D”と称する。水和物D型は、わずかに吸湿性であり、重量で約5.0から7.0パーセントの水含有量を有し、これはD型が一水和物であることを示す。水和物Dは、融点が153℃に近く(△Hfは約111J/g)、C型よりもはるかに高い安定性を有し、周囲温度で空気の湿度に曝露されていても安定である。したがって、水和物D型は、製剤を調製するために、又は安定な多形形態を製造するための中間物質及び出発物質として使用できる。多形D型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0142】
D型は、特徴的なX線粉末回折パターンを示し、特徴的なピークがd-値(Å):8.6(s), 6.8(w), 5.56 (m), 4.99(m), 4.67(s), 4.32(m), 3.93(vs), 3.88(w), 3.64(w), 3.41(w), 3.25(w), 3.17(m), 3.05(s), 2.94(w), 2.92(w), 2.88(m), 2.85(w), 2.80(w), 2.79(m), 2.68(w), 2.65(w), 2.52(vw), 2.35(w), 2.34(w), 2.30(w), 及び2.29(w)で表される。図7は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の水和物D型を示すX線回折パターンのグラフである。
【0143】
水和物D型は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の濃縮水溶液をほぼ室温で過剰な非溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、1-又は2-プロパノール、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、酢酸、又はテトラヒドロフラン、ジオキサン、第三級ブチル・メチル・エーテルなどのエーテル、あるいはこれらの非溶媒の二元又は三元混合物、に加え、周囲温度でこの懸濁液を攪拌することによって得られる。結晶固体は濾過して、乾燥窒素の下でほぼ周囲温度で乾燥できる。好ましい非溶媒はイソプロパノールである。水溶液を加えるときに、急激な沈澱を避けるために一滴ずつ行うことができる。(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の水和物D型は、ほぼ室温で(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の濃縮された水溶液を過剰な非溶媒に加え、この懸濁液を周囲温度で攪拌することによって調製できる。過剰な非溶媒とは、水溶液の非溶媒に対する比が1 : 10〜1 : 1000であることを意味する。D型は、一水和物に対して水の小さな過剰を含み、それは、この結晶水和物のわずかな吸湿性のために吸収された水であると考えられる。水和物D型は、周囲温度及び70%未満の相対湿度で、知られている水和物の下で最も安定なものであると見なされる。水和物D型は、この水和物が安定である条件の下で調製される製剤に使用できる。周囲温度とは20から30℃までを意味する。
【0144】
水和物E型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の別の水和物結晶形態が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するための安定な好ましいBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“E型”又は“水和物E”と称する。水和物E型は、水含有量が重量で約10から14パーセントであり、これはE型が二水和物であることを示す。水和物Eは室温より低い温度で形成される。水和物E型は安定な多形形態を製造するための中間物質及び出発物質として特に適当である。それは特に、窒素下、及び任意に真空下で乾燥させて水を含まないJ型を生成させるのに適している。E型は非吸湿性であり、かなり高い相対湿度の下で,すなわち、約60%より高い、約85%までの相対湿度で安定である。多形E型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0145】
E型は、特徴的なX線粉末回折パターンを示し、特徴的なピークがd-値(Å):15.4(s), 6.6(w), 6.5 (w), 5.95(vw), 5.61(vw), 5.48(w), 5.24(w), 4.87(w), 4.50(vw), 4.27(w), 3.94(w), 3.78(w), 3.69(m), 3.60(w), 3.33(s), 3.26(vs), 3.16(w), 3.08(m), 2.98(w), 2.95(m), 2.91(w), 2.87(m), 2.79(w), 2.74(w), 2.69(w), 及び2.62(w)で表される。図8は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の水和物E型を示すX線回折パターンのグラフである。
【0146】
水和物E型は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の濃縮水溶液を、約10から-10℃の温度に、好ましくは0から10℃の温度に冷却された過剰な非溶媒に加えて、前記温度でこの懸濁液を攪拌することによって得られる。結晶固体を濾過して取りだし、周囲温度で乾燥窒素の下で乾燥させる。非溶媒は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、1-又は2-プロパノール、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、酢酸、又はテトラヒドロフラン、ジオキサン、第三級ブチル・メチル・エーテルなどのエーテル、あるいはこれらの非溶媒の混合物、である。好ましい非溶媒はイソプロパノールである。
水溶液を加えるときに、急激な沈澱を避けるために一滴ずつ行ってもよい。(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の水和物E型は、 (6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の濃縮水溶液を約10から-10℃に冷却された過剰な非溶媒に加え、この懸濁液を周囲温度で攪拌することによって調製できる。過剰な非溶媒とは、水溶液の非溶媒に対する比が1 : 10〜1 : 1000であることを意味する。好ましい非溶媒はテトラヒドロフランである。別の調製プロセスは多形B型を相対湿度が70から90%、好ましくは約80%、である空気大気に曝露することである。水和物E型は二水和物であり、それに少し余分な水が吸収されたものと考えられる。多形E型は、普通の温度(20℃から50℃までの間という意味である)で0から100 mbarまでの圧力の真空下で乾燥させて多形Jに変換できる。E型は、高い相対湿度での安定性により、半固体形態の製剤に特に適当である。
【0147】
水和物H型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の別の水和物結晶形態が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するための安定な好ましいBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“H型”又は“水和物H”と称する。水和物H型は、水含有量が重量で約5.0から7.0パーセントであり、これはH型が吸湿性の一水和物であることを示す。水和物Hは室温より低い温度で形成される。水和物H型は安定な多形形態を製造するための中間物質及び出発物質として特に適当である。多形H型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0148】
H型は、特徴的なX線粉末回折パターンを示し、特徴的なピークがd-値(Å):8.6 15.8(vs), 10.3(w), 8.0(w), 6.6 (w), 6.07(w), 4.81(w), 4.30(w), 3.87(m), 3.60(m), 3.27(m), 3.21(m), 3.13(w), 3.05(w), 2.96(m), 2.89(m), 2.82(w), 及び2.67(m)で表される。図9は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の水和物H型を示すX線回折パターンのグラフである。
【0149】
水和物H型は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を、周囲温度で酢酸と水の混合物に溶解し、次に非溶媒を加えて結晶固体を沈澱させ、得られた懸濁液を冷却し、冷却した懸濁液を一定時間攪拌することによって得られる。結晶固体を濾過して取りだし、周囲温度で真空下で乾燥させる。非溶媒は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、1-又は2-プロパノール、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、酢酸、又は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、第三級ブチル・メチル・エーテルなどのエーテル、あるいはこれらの非溶媒の混合物、である。好ましい非溶媒はテトラヒドロフランである。 (6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の水和物H型は、周囲温度で(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を酢酸と酢酸よりも少ない量の水の混合物に溶解し、非溶媒を加え、得られた懸濁液を-10から10℃までの範囲の温度、好ましくは-5から5℃までの範囲の温度に冷却し、前記温度で懸濁液を一定時間攪拌することによって調製できる。一定時間とは1〜20時間を意味する。酢酸の水に対する重量比は2 : 1から25 : 1までの範囲、好ましくは5 : 1から15 : 1までの範囲にある。酢酸/水の非溶媒に対する重量比は1 : 2から1 : 5までの範囲にある。水和物H型は、吸湿性のために吸収された水がわずかに過剰な一水和物であるように思われる。
【0150】
水和物O型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の別の水和物結晶形態が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するための安定な好ましいBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“O型”又は“水和物O”と称する。水和物O型は室温に近い温度で形成される。水和物O型は安定な多形形態を製造するための中間物質及び出発物質として特に適当である。多形O型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0151】
O型は、特徴的なX線粉末回折パターンを示し、特徴的なピークがd-値(Å):15.9(w), 14.0(w), 12.0(w), 8.8(m), 7.0(w), 6.5(w), 6.3(m), 6.00(w), 5.75(w), 5.65(m), 5.06(m), 4.98(m), 4.92(m), 4.84(w), 4.77(w), 4.42(w), 4.33(w), 4.00(m), 3.88(m), 3.78(w), 3.69(s), 3.64(s), 3.52(vs), 3.49(s), 3.46(s), 3.42(s), 3.32(m), 3.27(m), 3.23(s), 3.18(s), 3.15(vs), 3.12(m), 3.04(vs), 2.95(m), 2.81(s), 2.72(m), 2.67(m), 及び2.61(m)で表される。図10は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の水和物O型を示すX線回折パターンのグラフである。
【0152】
水和物O型は、多形F型を水蒸気を含み相対湿度が約52%になっている窒素雰囲気に約24時間曝露することによって調製できる。わずかに吸湿性の無水物であるF型を52%の相対湿度の下で用いてO型を調製できるということは、O型が水和物であり、それが周囲温度と湿度条件の下でF型よりも安定であることを示唆する。
【0153】
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の溶媒和物
以下で詳しく述べるように、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩はいくつかの結晶溶媒和物形態として存在することが明らかとなった。これらを本明細書ではG型, I, L, M, 及びNと記載し定義する。これらの溶媒和物形態は本明細書に記載の医薬製剤のためのBH4の安定な形態として及びBH4の安定な結晶多形を含む組成物の調製で有用である。
【0154】
溶媒和物G型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のあるエタノール溶媒和物結晶形態が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するための安定な好ましいBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“G型”又は“水和物G”と称する。エタノール溶媒和物G型はエタノール含有量が重量でほぼ8.0から12.5パーセントであり、このことはG型が吸湿性の一エタノール溶媒和物であることを示唆する。溶媒和物G型は、室温より低い温度で形成される。G型は安定な多形形態を製造するための中間物質及び出発物質として特に適当である。多形G型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0155】
G型は、特徴的なX線粉末回折パターンを示し、特徴的なピークがd-値(Å):14.5(w), 10.9(w), 9.8(w), 7.0(w), 6.3(w), 5.74(w), 5.24(vw), 5.04(vw), 4.79(w), 4.41(w), 4.02(w), 3.86(w), 3.77(w), 3.69(w), 3.63(m), 3.57(m), 3.49(m), 3.41(m), 3.26(m), 3.17(m), 3.07(m), 2.97(m), 2.95(m), 2.87(w), 及び2.61(w)で表される。図11は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の溶媒和物G型を示すX線回折パターンのグラフである。
【0156】
エタノール溶媒和物G型は、水に溶解されたL-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を結晶化させ、大きく過剰なエタノールを加え、得られた懸濁液を周囲温度以下で攪拌し、単離された固体を空気又は窒素の下でほぼ室温で乾燥させ流ことによって得られる。ここで、大きく過剰なエタノールとは、得られるエタノールと水の混合物で水が10%未満、好ましくは約3〜6%、であることを意味する。(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のエタノール和物G型は、ほぼ室温から75℃の温度まで、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を水、又は水とエタノールの混合物に溶解し、熱せられた溶液を室温、そしてさらに5から10℃までに冷却し、任意にエタノールを加えて沈澱を完了させ、得られた懸濁液を20から5℃までの温度で攪拌し、白色の結晶固体を濾過し、固体を空気又は窒素などの保護気体の下でほぼ室温で乾燥させて調製することができる。第一の変形例で、このプロセスは、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を少ない量の水に溶解し、その後過剰なエタノールを加え、得られた懸濁液を相平衡のために十分な時間攪拌する。第二の変形例では、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩をエタノールに懸濁させ、任意に少ない量の水を加え、懸濁液と溶質(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を加熱し、溶液を約5から15℃までの温度に冷却し、さらにエタノールを懸濁液に加え、得られた懸濁液を相平衡のために十分な時間攪拌する。
【0157】
溶媒和物I型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のある酢酸溶媒和物結晶形態が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するための安定な好ましいBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“I型”又は“水和物I”と称する。酢酸溶媒和物I型は酢酸含有量が重量でほぼ12.7パーセントであり、このことはI型が吸湿性の酢酸一溶媒和物であることを示唆する。溶媒和物I型は、室温より低い温度で形成される。酢酸溶媒和物G型は安定な多形形態を製造するための中間物質及び出発物質として特に適当である。多形I型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0158】
I型は、特徴的なX線粉末回折パターンを示し、特徴的なピークがd-値(Å):14.0(w), 11.0(w), 7.0(vw), 6.9(vw), 6.2(vw), 5.30(w), 4.79(w), 4.44(w), 4.29(w), 4.20(vw), 4.02(w), 3.84(w), 3.80(w), 3.67(vs), 3.61(m), 3.56(w), 3.44(m), 3.27(w), 3.19(w), 3.11(s), 3.00(m), 2.94(w), 2.87(w), 及び2.80(w)で表される。図12は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の溶媒和物I型が示すX線回折パターン
のグラフである。
【0159】
酢酸溶媒和物I型は、酢酸と水の混合物に高い温度でL-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を溶解し、溶液にさらに酢酸を加え、約10℃よりも低い温度まで冷却し、次に形成された懸濁液を約15℃の温度まで暖め、得られた懸濁液を相平衡のために十分な時間、それは3日までにわたることがあるが、攪拌することによって得られる。結晶固体を濾過して取りだし、空気又は窒素などの保護気体中でほぼ室温で乾燥させる。
【0160】
溶媒和物L型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のエタノール溶媒和物/水和物混合結晶形態が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するための安定な好ましいBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“L型”又は“水和物L”と称する。
L型は、4%から13%までのエタノールと0%から約6%までの水を含む。L型は、エタノール中で約0℃から20℃までの温度で処理したときにG型に変換される。さらに、L型は、周囲温度(10℃から60℃まで)において有機溶媒中で処理したときにB型に変換される。多形L型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0161】
L型は、特徴的なX線粉末回折パターンを示し、特徴的なピークがd-値(Å):14.1(vs), 10.4(w), 9.5(w), 9.0(vw), 6.9(w), 6.5(w), 6.1(w), 5.75(w), 5.61(w), 5.08(w), 4.71(w), 3.86(w), 3.78(w), 3.46(m), 3.36(m), 3.06(w), 2.90(w), 及び2.82(w)で表される。図13は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の溶媒和物L型が示すX線回折パターンのグラフである。
【0162】
L型は、エタノール中に室温で水和物E型を懸濁させ、懸濁液を0から10℃までの温度で、好ましくは5℃で、相平衡に十分な時間(10〜20時間)攪拌することによって得られる。結晶固体を濾過して取りだし、好ましくは減圧下、窒素の下で30℃で乾燥させる。TG-FTIRによる分析は、L型が変動量のエタノールと水を含むこと、すなわち、それが多形
(無水物)として、エタノール溶媒和物/水和物混合物として、又は水和物として存在することができることを示唆している。
【0163】
溶媒和物M型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩のエタノール溶媒和物結晶形態が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するための安定な好ましいBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“M型”又は“水和物M”と称する。M型は、4%から13%までのエタノールと0%から約6%までの水を含むことができ、それはM型がわずかに吸湿性のエタノール溶媒和物であることを示唆する。M型は室温で形成される。M型は、エタノール中で約-10℃から15℃までの温度で処理したときにG型に変換でき、エタノール、C3及びC4アルコール、又はTHF及びジオキサンなどの環式エーテルなどの有機溶媒中で処理したときにB型に変換できるので、安定な多形形態を生成するための中間物質及び出発物質として特に適当である。多形M型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0164】
M型は、特徴的なX線粉末回折パターンを示し、特徴的なピークがd-値(Å):18.9(s), 6.4(w), 6.06(w), 5.66(w), 5.28(w), 4.50(w), 4.23(w), 及び3.22(vs)で表される。
図14は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の溶媒和物M型が示すX線回折パターンのグラフである。
【0165】
エタノール溶媒和物M型は、L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩をエタノール中に溶解し、溶液を周囲温度、すなわち、10℃から40℃までの温度で、窒素の下で蒸発させ流ことによって得られる。M型は、また、G型を約20から100ml/minという流量での窒素のわずかな流れの下で乾燥させることによっても得られる。窒素の下での乾燥の程度によって、残留するエタノールの量は変動する、すなわち、約3%から13%まで変動する。
【0166】
溶媒和物N型
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の別の溶媒和物結晶形態が、本明細書に記載の医薬製剤で使用するための安定な好ましいBH4の形態であることが明らかとなった。これを本明細書では“N型”又は“水和物N”と称する。N型は、全部で10%までのイソプロパノールと水を含むことができ、それはN型がわずかに吸湿性のイソプロパノール溶媒和物であることを示す。N型は、D型をイソプロパノールで洗浄し、次に真空下で約30℃で乾燥させることによって得られる。N型は安定な多形形態を生成するための中間物質及び出発物質として特に適当である。多形N型は、普通1μmから約500μmまでの範囲にある所望の中間粒径範囲の固体粉末として調製することができる。
【0167】
N型は、特徴的なX線粉末回折パターンを示し、特徴的なピークがd-値(Å):19.5(m), 9.9(w), 6.7(w), 5.15(w), 4.83(w), 3.91(w), 3.56(m), 3.33(vs), 3.15(w), 2.89(w), 2.81(w), 2.56(w), 及び2.36(w)で表される。図15は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の溶媒和物N型が示すX線回折パターンのグラフである。
【0168】
イソプロパノールN型は、イソプロパノールと水の混合物(混合体積比が、例えば4 : 1)4.0mlにL-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩を溶解して得られる。この溶液にイソプロパノール(IPA、例えば約4.0ml)をゆっくりと加え、生じた懸濁液を0℃に冷却し、この温度で何時間か(例えば、約10から18時間)攪拌する。懸濁液を濾過し、固体残渣を室温でイソプロパノールによって洗浄する、得られた結晶物質を周囲温度(例えば、約20から30℃)において減圧で(約2から10mbar)何時間か(例えば、5から20時間)乾燥する。TG-FTIRは25から200℃の間でイソプロパノールと水の両方によるとされる9.0%の減量を示す。この結果は、N型がイソプロパノール溶媒和物の形、又はイソプロパノール溶媒和物/水和物の混合物、又は少量の水を含む非溶媒和物として存在できることを示唆する。
【0169】
多形形態の調製には、当業者に周知の結晶化の方法、例えば、懸濁液の攪拌(相平衡)、沈澱、再結晶化、蒸発、水などの溶媒吸着法、又は溶媒和物の分解、などが用いられる。結晶化には、希釈、飽和又は過飽和溶液が、適当な核生成物質による種晶添加と共に又は種晶添加なしで用いられる。100℃までの温度が溶液を形成するために加えられる。結晶化及び沈澱を開始させるための-100℃までの冷却、好ましくは-30℃までの冷却、が用いられる。準安定多形又は偽多形形態を用いてより安定な形態の調製のための溶液又は懸濁液を調製し、溶液で高い濃度を達成することができる。
【0170】
驚くべきことに、水和物D型は水和物のうちで最も安定な形態であり、B型とDは医薬調剤に用いるのに特に適当であることが明らかとなった。B型とD型は、目標に合った製造、好適な結晶サイズと形態による扱い易さ、種々のタイプの製剤の製造条件の下での非常に高い安定性、貯蔵安定性、高い溶解度、及び高い生物学的利用率、などいくつかの利点がある。したがって、本明細書で開示する方法及び/又は組成物で、混合物で存在するBH4の形態は、好ましくはBH4の安定化された結晶形態であり、結晶多形A型、結晶多形B型、結晶多形F型、結晶多形J型、結晶多形K型、結晶水和物C型、結晶水和物D型、結晶水和物E型、結晶水和物H型、結晶水和物O型、溶媒和物結晶G型、溶媒和物結晶I型、溶媒和物結晶L型、溶媒和物結晶M型、溶媒和物結晶N型、及びそれらの組み合わせ、から成る群から選択される。さらに好ましくは、本明細書で開示する組成物及び方法において用いるためのBH4の形態は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形B型及び/又は水和物D型及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物である。
【0171】
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の結晶形態は、葉酸又はテトラヒドロ葉酸あるいは医薬として許容されるそれらの塩、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、又はアンモニウム塩、と共に、それぞれ単独に又はアルギニンと合わせて用いることができる。結晶形態:葉酸あるいはこれらの塩:アルギニンの重量比は約1:10:10から約10:1:1までがあり得る。
【0172】
VI. 医薬製剤
本明細書に記載の製剤は好ましくは経口製剤として投与される。経口製剤は、好ましくは、カプセル、錠剤、ピル、及びトローチなどの固体製剤、水性懸濁液、エリキシル、及びシロップなどの液体製剤である。本明細書に記載のBH4のいろいろな形態を、直接、粉末(微細結晶)、顆粒、懸濁液又は溶液、として用いることもできるし、他の医薬として許容される成分と組み合わせ、任意に細かく分割し、例えばハード又はソフト・ゼラチンから作られたカプセルに充填し、錠剤、ピル、又はトローチに圧縮し、あるいは懸濁液、エリキシル及びシロップの担体に懸濁又は溶解することができる。圧縮してピルに成形した後にコーティングを施すことができる。
【0173】
医薬として許容される成分は種々のタイプの製剤に関して周知であり、例えば、天然又は合成ポリマーなどの結合剤、賦形剤、潤滑剤、界面活性剤、甘味及び風味物質、コーティング物質、防腐剤、色素、増粘剤、アジュバント、抗菌剤、抗酸化剤、及び種々のタイプの製剤の担体などである。本明細書に記載の組成物で用いることができる結合剤の非限定的な例としては、ガム・トラガカント、アカシア、スターチ、ゼラチン、及び生分解性ポリマー、例えば、ジカルボン酸、アルキレン・グリコール、ポリアルキレン・グリコール、及び/又は脂肪族ヒドロキシル・カルボン酸、のホモ-又はコ-ポリエステル;ジカルボン酸、アルキレン・ジアミン、及び/又は脂肪族アミノ・カルボン酸、のホモ-又はコ-ポリアミド;対応するポリエステル・ポリアミド・コ-ポリマー、ポリ無水物、ポリオルソエステル、ポリホスファゼン、及びポリカーボネート、などがある。生分解性ポリマーとしては、線形、枝分かれした、又は架橋したポリマーがある。具体的な例は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ-d,l-ラクチド/グリコリドである。その他のポリマーの例としては、ポリオキサアルキレン(ポリオキサエチレン、ポリオキサプロピレン、及びそれらの混合ポリマー、ポリアクリルアミド及びヒドロキシルアルキル化されたポリアクリルアミド、ポリマレイン酸及びそれらのエステル又はアミド、ポリアクリル酸及びそれらのエステル又はアミド、ポリビニルアルコール、及びそのエステル又はエーテル、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリドン、及びキトサンなどの天然ポリマー、がある。
【0174】
本明細書に記載の組成物で用いることができる賦形剤の非限定的な例としては、リン酸二カルシウムなどのリン酸塩などがある。本明細書に記載の組成物で用いることができる潤滑剤の非限定的な例としては、天然又は合成オイル、脂肪、ワックス、あるいはステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸塩がある。
【0175】
本明細書に記載の組成物で用いることができる界面活性剤は、アニオン、アニオン、両性、又は中性界面活性剤である。本明細書に記載の組成物で用いることができる界面活性剤の非限定的な例としては、レシチン、リン脂質、硫酸オクチル、硫酸デシル、硫酸ドデシル、硫酸テトラデシル、硫酸ヘキサデシル、及び硫酸オクタデシル、オレイン酸ナトリウム、又はカプリン酸ナトリウム、1-アシルアミノエタン-2-スルフォン酸、例えば1-オクタノイルアミノエタン-2-スルフォン酸、1-デカノイルアミノエタン-2-スルフォン酸、1-ドデカノイルアミノエタン-2-スルフォン酸、1-テトラデカノイルアミノエタン-2-スルフォン酸、1-ヘキサデカノイルアミノエタン-2-スルフォン酸、1-オクタデカノイルアミノエタン-2-スルフォン酸、及びタウロコール酸、及びタウロデオキシコール酸、胆汁酸、及びそれらの塩、例えばコール酸、デオキシコール酸、及びグリココール酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、又はラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ローリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、硫酸化ヒマシ油、及びジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン、及びローリルベタイン、脂肪アルコール、コレステロール、モノ-又はジ-ステアリン酸グリセロール、モノ-又はジ-オレイン酸グリセロール、及びモノ-又はジ-パルミチン酸グリセロール、及びポリオキシエチレン・ステアレート、などがある。
【0176】
本明細書に記載の組成物で用いることができる甘味物質の非限定的な例としては、スクロース、フラクトース、ラクトース、又はアスパルテームなどがある。本明細書に記載の組成物で用いることができる風味物質の非限定的な例としては、ペパーミント、ウインターグリーン、又はチェリー又はオレンジ・フレバーなどのフルーツ風味がある。本明細書に記載の組成物で用いることができるコーティング物質の非限定的な例としては、ゼラチン、ワックス、シェラック、砂糖、又はその他の生分解性ポリマーがある。本明細書に記載の組成物で用いることができる防腐剤の非限定的な例としては、メチル又はプロピル・パラベン、ソルビン酸、クロロブタノール、フェノール及びチメロサールなどがある。
【0177】
本明細書に記載の水和物D型はまた、水性環境で崩壊して飲料溶液になる発泡錠剤又は粉末として製剤することもできる。シロップ又はエリキシルは、本明細書に記載の多形、甘味物質としてのスクロース又はフラクトース、メチル・パラベンなどの防腐剤、色素、及び風味物質を含むことができる。
【0178】
本明細書に記載の多形から徐放性製剤を調製して、胃腸管で体液と接触する活性物質の制御放出を達成し、実質的に一定の有効なレベルの活性物質を血漿に供給することができる。このために、結晶形態を生分解性ポリマー、水溶性ポリマー、又は両者の混合物、及び任意に適当な界面活性剤、から成るポリマー・マトリックスに埋め込むことができる。
ここで埋め込むとは、微粒子をポリマーのマトリックスに組み込むことを意味する。放出制御製剤はまた、公知の分散又は乳化コーティング技術によって分散させた微粒子又は乳化された微小液滴をカプセルに封入することによっても得られる。
【0179】
個々のニーズは異なるが、各成分の有効量の最適範囲の決定は当業者の技術の範囲内にある。BH4の典型的な投与量は、約1〜約20mg/kg体重/日を含み、それは通常約5 (1mg/kg x 5kg体重)〜3000mg/日(30mg/kg x 100kg体重)となる。この投与量を一回の投与で投与しても、複数回の投与で投与してもよい。連続した、毎日の投与も考えられるが、Pheレベルの症状がある一定の閾値レベルよりも低くなったらBH4治療を停止することが望ましい。当然ながら、Pheレベルが再び上昇した場合、この治療を再開できる。
【0180】
本発明による組成物の適当な投与量は、レシピエントの年齢、健康、及び体重、併用療法(もしあれば)の種類、処置の頻度、及び所望とする効果の性質(すなわち、所望とする結晶Phe濃度低下の量)、に依存することは言うまでもない。投与の頻度はまた、Pheレベルに対する薬力学的効果に依存する。効果が一回の投与から24時間持続する場合。しかし、最も好ましい投与量は過度の実験をすることなしに個々の被験者に合わせることができ、当業者はそれを理解して決定できる。普通、それは、例えば患者の体重が少ない場合は投与量を減らすなど、標準投与量を調整するだけである。
【0181】
上文で述べたように、それぞれの処置に必要な全投与量は、複数回の投与で投与しても一回の投与で投与してもよい。BH4及びタンパク質組成物は、それだけで投与しても、その疾患に向けられた又はその疾患の他の症状に向けられた他の治療と合わせて投与してもよい。
【0182】
本明細書における開示から明らかなように、ある広い様態で、本発明は、結晶化したBH4製剤を含む第一の組成物と、医療用タンパク質製剤(例えば、PHENEXなど)を含む第二の組成物から成る併用療法の臨床的応用を考慮している。したがって、組成物は適当な医薬組成物に、すなわち、このような併用療法におけるin vivo応用に適した形態に製剤化しなければならない。一般に、このためには、発熱物質並びにヒト又は動物に有害である他の不純物を本質的に含まない組成物を調製することが必要になる。好ましくは、結晶化されたBH4組成物は、PKUの治療に用いられる既存のタンパク質製剤に直接加えることができるようなものである。
【0183】
一般に、BH4を摂取に適したものにするために適当な塩及び緩衝剤を用いることが望まれる。本発明の水性組成物は、医薬として許容される担体又は水性媒質に溶解又は分散された有効な量のBH4を含む。このような組成物は経口又は注射によって投与することができる。
【0184】
“医薬として又は薬理学的に許容される”というフレーズは、動物又はヒトに投与されたときに有害な、アレルギー性の、又はその他の不都合な反応を生じない分子及び組成物を指す。本明細書で用いる場合、“医薬として許容される担体”とは、すべての溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌及び抗カビ剤、等張性物質及び吸収遅延物質、などを含む。
医薬的に活性な物質に対してそのような媒質及び物質を使用することは当業者によく知られている。従来の媒質又は物質が治療組成物に適合しない場合を除き、治療組成物におけるその使用が考えられる。補助的な活性成分も組成物に組み込むことができる。例示的な実施態様では、医療用タンパク質製剤は、固体コーンシロップ、高オレイン・サフラワー油、ココナッツ油、ダイズ油、L-ロイシン、リン酸カルシウム第三、L-チロシン、L-プロリン、L-リジン・アセテート、DATEM(乳化剤)、L-グルタミン、L-バリン、第二リン酸カルシウム、L-イソロイシン、L-アルギニン、L-アラニン、L-グリシン、L-アスパラギン一水和物、L-セリン、クエン酸カリウム、L-スレオニン、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、L-ヒスチジン、L-メチオニン、アスコルビン酸、炭酸カルシウム、L-グルタミン酸、L-シスチン二塩酸塩、L-トリプトファン、L-アスパラギン酸、塩化コリン、タウリン、m-イノシトール、硫酸鉄、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、硫酸亜鉛、L-カルニチン、アルファ-トコフェリル・アセテート、塩化ナトリウム、ナイアシンアミド混合トコフェロール、パントテン酸カルシウム、硫酸銅、チアミン・クロリド塩酸塩、ビタミンAパルミテート、硫酸マンガン、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、葉酸、ベータ・カロチン、ヨウ化カリウム、フィロキノン、ビオチン、セレン酸ナトリウム、塩化クロム、モリブデン酸ナトリウム、ビタミンD3、及びシアノコバラミン、を含むことができる。
サプリメントにおけるアミノ酸、ミネラル及びビタミンは、各成分に推奨される日用量を与える量で含まれなければならない。
【0185】
本明細書で用いる場合、“医薬として許容される担体”は、すべての溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌及び抗カビ剤、等張性物質及び吸収遅延物質、などを含む。医薬的に活性な物質に対してそのような媒質及び物質を使用することは当業者によく知られている。従来の媒質又は物質が治療組成物に適合しない場合を除き、治療組成物におけるその使用が考えられる。補助的な活性成分も組成物に組み込むことができる。
【0186】
本発明の活性組成物は、ここで説明したようなBH4の古典的な医薬製剤、並びに当業者に公知のものを含む。タンパク質製剤、例えばPhenexなど、も当業者には公知である。
本発明によるこれらの組成物の投与は食事を補助するための任意の普通の経路によって行われる。タンパク質は好ましくは経口投与され、BH4も同様である。
【0187】
活性成分は、遊離塩基の溶液として投与するように調製することも、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤を適当に混合した水中の医薬として許容される塩として投与するように調製することもできる。グリセリン、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物、及びオイルにおける分散物を調製することもできる。通常の貯蔵と使用の条件で、これらの製剤は微生物の増殖を防止するための防腐剤を含む。
【0188】
BH4組成物は、注射で用いるのに適した医薬形態として調製することができる。そのような組成物としては、無菌の溶液又は分散液、及び無菌の注射可能な溶液又は分散液を即席で調製するための無菌粉末、などがある。あらゆる場合に、この医薬形態は無菌でなければならないし、注射器で容易に注射できる程度の流体でなければならない。製造と貯蔵の条件下で安定でなければならないし、細菌やカビなどの微生物の汚染作用に対して防腐されていなければならない。担体は、溶媒又は分散媒質であって、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール、など)、それらの適当な混合物及び植物油、を含む。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングを用いて、分散液の場合は必要な粒径を維持することによって、そして界面活性剤を用いて保つことができる。微生物の作用は、いろいろな抗菌及び抗カビ剤を用いて、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、などを用いて防止することができる。多くの場合、等張性物質、例えば、砂糖又は塩化ナトリウム、を含めることが好ましい。注射可能な組成物の長時間庭たる吸収は、吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物で用いることによって実現できる。
【0189】
無菌の注射可能な溶液は、適当な溶媒に必要な量の活性化合物を、必要に応じて上文で列挙したような他のいろいろな成分と共に取り込み、続いて濾過によって無菌化することによって調製される。一般に、分散液は、無菌化されたいろいろな活性成分を、基本の分散媒質と上で列挙したうちのその他の必要な成分を含む無菌のビヒクルに取り込んで調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥法及び凍結乾燥法であり、それによって活性成分プラス所望の追加成分の粉末が、予め無菌濾過された溶液から得られる。
【0190】
本明細書に記載される組成物で用いられるBH4は二塩酸塩として製剤されることが好ましいが、BH4の他の塩形態が望ましい生体活性を有することが考えられるので、他の塩形態も使用できると考えられる。
【0191】
医薬として許容される塩基付加塩は、アルカリ及びアルカリ土類金属又は有機アミンなどの金属又はアミンによって形成できる。化合物の医薬として許容される塩は、また、医薬として許容される陽イオンによって調製できる。適当な医薬として許容される陽イオンは当業者には周知であり、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、及び第四級アンモニウム・カチオンを含む。炭酸塩及び炭酸水素塩も可能である。陽イオンとして用いられる金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウム、カルシウム、又は鉄、などである。適当なアミンの例は、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、N,N’ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、Nメチルグルカミン、及びプロカインなどである。
【0192】
医薬として許容される酸付加塩は、無機又は有機の酸性塩を含む。適当な酸性塩の例は、塩酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩、リン酸塩などである。その他の適当な医薬として許容される酸性塩は当業者に周知であり、例えば酢酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、又はリン酸;有機で、カルボン酸、スルホン酸、スルフォ又はホスフォ・アシッド、又はN置換スルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4アミノサリチル酸、2フェノキシ安息香酸、2アセトキシ安息香酸、エンボニックアシッド、ニコチン酸又はイソニコチン酸;アミノ酸で、例えば自然のタンパク質合成に関わる20のアルファ・アミノ酸、例えばグルタミン酸又はアスパラギン酸、またフェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン、1,2ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン2スルホン酸、ナフタレン、1,5ジスルホン酸、2又は3ホスフォグリセレート、グルコース6ホスフェート、Nシクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成)、又は他の酸性有機化合物、例えばアスコルビン酸、による。
【0193】
具体的には、無機及び有機の酸によるBH4の塩が好ましい。別のBH4塩形態の非限定例は、酢酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、フマル酸、及びマンデル酸などのBH4塩である。
【0194】
BH4投与の頻度は、その物質の薬物動態学的パラメーター及び投与経路に依存する。
最適な医薬製剤の調合は、投与経路及び所望の投与量に応じて当業者によって決定される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990, Mack Publ. Co., Easton PA 18042) pp 1435 1712を参照のこと、これは引用により本明細書に組み入れられる。この調合は、投与された物質の物理的状態、安定性、in vivoでの放出速度、及びin vivoでのクリアランス速度に影響する。投与経路に応じて、適当な投与量を体重、体表面積、又は器官サイズによって計算することができる。適当な治療投与量を決定するために必要な計算の精密化は、過度の実験を行うことなく、特に本明細書で開示される投与情報と分析、並びに動物又はヒトの臨床試験で得られた薬物動態データ、を考慮して当業者によって日常的に行われる。
【0195】
適当な投与量は、血中Pheレベルを決定する確立された分析を関連する用量応答データと合わせて用いて確認できる。最終的な投与計画は、担当医師によって、薬の作用を修飾する諸因子を考慮して、例えば薬の比活性、患者の障害の重篤さと応答性、患者の年齢、症状、体重、性別、及び食事、感染の深刻さ、投与の時間、及びその他の臨床因子を考慮して決定される。研究が行われるにつれて、特定の疾患と症状に関して適当な投与量レベルと治療の持続期間に関する情報がさらに浮上する。
【0196】
本発明の医薬組成物と処置方法は、ヒトの医療と獣医学医療の分野で有用なものであることは理解されるであろう。したがって、処置される対象は哺乳動物、好ましくはヒト、又はその他の動物である。獣医学の場合、対象は、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、及びヤギなどの農場動物、イヌやネコなどのペット、珍しい及び/又は動物園の動物、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、及びハムスターなどの実験動物、及びニワトリ、七面鳥、ガチョウなどの家禽、を含む。
【0197】
VII. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を例示するためのものである。以下の実施例で開示された方法は、本発明の実施において良く機能することが本発明者によって明らかとなった方法であり、その実施のための好ましい様態を構成すると考えられるということは当業者には言うまでもない。しかし当業者は、本明細書の開示に照らして、開示された特定の実施態様には多くの変更を加えることが可能であり、それによっても本発明の精神と範囲を逸脱することなく同様の結果が得られることが理解されるであろう。
【0198】
実施例1
6R-テトラヒドロビオプテリンについての臨床評価
以下の実施例は、本発明の処置方法におけるBH4の臨床評価で用いられるパラメーターに関する手引きを与える。ここで全体にわたって述べるように、BH4はHPA、軽度フェニルケトン尿症(PKU)、及び古典的PKUを含むHPAの治療に用いられる。臨床試験が行われて、BH4の毎日の経口投与について、安全性、薬理動態学、及び代理(surrogate)及び確定(defined)臨床エンドポイントの初期応答が評価される。試験は、30人の評価可能な患者で十分な安全情報を集めるために、必ずしもそれに限定されないが、最小6週間にわたって行われる。
【0199】
試験の初期投与量は約10から約20mg/kgまで変化する。この投与量で患者における過剰な血漿フェニルアラニン(Phe)レベルの減少が生じない場合、又は血漿Pheレベルを増加させることなく一日の経口Phe摂取量を増加させることができる能力として測定される顕著な直接の臨床的利益を生ずる場合、投与量は必要に応じて増やし、必ずしもそれに限定されないが6週間という追加の最小期間にわたって維持して安全性を確立しさらに効力を評価する。もっと少ない投与量、例えば5から10mg/kgまでの間の投与量、も考えられる。
【0200】
安全性の測定は、有害な事象、アレルギー反応、完全な臨床化学検査(腎機能と肝機能)、尿分析、及びCBCとディフェレンシャル(differential)、を含む。さらに、血中Pheレベルの減少、神経心理的及び認知テスト、及びグローバル評価、を含む他のパラメーターもモニターされる。本実施例は、また、循環における薬の薬理動態学的パラメーター、及び血液中の6R−BH4の全般的分布及び半減期も考慮する。これらの測定量は投与量を臨床的応答と関連づけるのに役立つと予期される。
【0201】
方法
血漿Pheレベルが高い患者は、ベースラインとして、病歴と理学的検査、神経心理的及び認知テスト、標準セットの臨床検査室テスト(CBC、パネル20、CH50、UA)、尿プテリン・レベル、ジヒドロプテリジン・レダクターゼ(DHPR)レベル、及び血清アミノ酸の空腹時血中(血漿)パネルが測定される。提案される10から約20mg/kgまでのBH4が一日に1〜3回の投与に分けて投与される。患者は毎週クリニックに外来で来て細かく追跡される。患者は、治療期間が完了して1週間後にクリニックへ来て完全な検査を受ける。
投与量のエスカレーションが必要な場合、患者は上述した同じスケジュールに従う。試験の間ずっと安全性がモニターされる。
【0202】
登録された患者は、ランダム化されてBH4又はプラセボの投与を受ける。最初の2から4週間の後、すべての研究参加者はPhe摂取が制限されたコントロールされた食事を全部で4〜6週間受ける。食事制限の最初の2〜4週間が完了した後すべての研究参加者はそのランダム化で交差されて、さらに2〜4週間追跡される。血中Pheレベル及びその他の生化学パラメーターが各期間の終わりに細かく追跡される。神経心理的な結果の評価は、注意持続;作業記憶;及び複雑な作業を遂行する能力の測定を含む。試験を完了し、血漿Pheレベルの有益な減少を示して治療から利益を受けた患者には、安全性と効力条件が保証する限り、又はBLAが承認するまで、延長されたプロトコルによる継続的なBH4治療が提供される。
【0203】
診断と包含/除外規準
患者は、男性又は女性、年齢12歳以上で、記録されているHPA又は軽度PKUの診断が遺伝子検査及び血中の高いPheレベルの証拠によって確認された者である。研究は、食事コントロールに正確に従っていないHPA又はPKU患者を含む。妊娠の可能性がある女性患者は、各投与の直前に妊娠テスト(尿β-hCG)がマイナスでなければならず、研究の間ずっと医学的に受け入れられる避妊法を用いるように推奨しなければならない。患者が原発性BH4欠損の証拠を有する場合、以前にBH4の複数回投与を1週間を超える治療で受けていた場合;妊娠している又は授乳している場合;研究に登録される前30日以内に調査用の薬を受けていた場合、医学的症状、深刻な併発性疾患、又は研究コンプライアンスを顕著に低下させる可能性があるその他の酌量すべき状況がある場合、患者はこの研究から除外される。
【0204】
投与量、投与経路及び投与計画
患者は一日に5-10mg/kgという投与量でBH4を受ける。Phe血中レベルが目に見えるほどの減少を示さず、何も臨床的な利益が認められない場合、投与量を必要に応じて増加させる。投与量のエスカレーションは、すべての患者が少なくとも2週間の治療を受けた後に初めて行われる。毎日のBH4投与は、一回の投与で投与しても、一日2回又は3回に分けて投与してもよい。患者は、臨床的にモニターされると同時に、有害な反応がないか監視される。異常な症状が観測された場合、研究の薬投与を直ちにストップし、研究の続行について決定を下す。
【0205】
食事介入
最初のランダム化と2週間の治療期間の後、すべての研究参加者は食事カウンセリングを受け、全部で4〜6週間にわたって標準のPhe制限食をPhe特異的医療食品で補った食事をとる。食事は家で管理され、食事摂取は日誌に記録される。栄養成分の摂取と医療食品及びRecommended Dietary Intakes (RDI)のパーセントの分析が治療グループの間で比較される。
【0206】
BH4安全性
研究のコースで何も顕著な急性又は慢性の薬反応が起こらない場合、BH4治療は安全であると判定される。臨床試験、臨床検査、又はその他の適当な研究で何も顕著な異常が観測されない場合、この薬の長期投与が決定される。
【0207】
実施例2
BH4の安定化された結晶形態の調製
2003年11月17日に出願人Rudolf MOSER, Schaffhausen, Switzerland, and Viola GROEHN, Dachsen, Switzerlandの名のもと出願され、Merck-Eprovaに譲渡された、内部参照ナンバー216の、“(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形”という表題の米国特許仮出願番号第60/520,377号、及び2004年11月17日に出願人Rudolf MOSER, Schaffhausen, Switzerland, and Viol GROEHN, Dachsen, Switzerlandの名のもと、それと同時に出願され、Merck-Eprovaに譲渡された、内部参照ナンバー216/US CIPの、“(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形”という表題の米国特許出願:
、(Moser et al. の両方の出願は本明細書において一括して“Moser出願”と呼び、両方共引用により全体が本明細書に組み入れられる。その明細書の実施例は、BH4の多形の特性を調べるX線及びラマン・スペクトル研究を記載している。その出願の各BH4組成物は本明細書に記載される処置方法で使用することができる。以下は、それらの例示的な組成物のいくつかについて追加の背景と簡単な特性を記述する。
【0208】
(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の開発のさいに得られた結果(Moser出願を参照のこと)は、この化合物が多形形態を有することを示していた。この分野への継続的な関心は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の個々の多形を調製するための効率的で信頼できる方法と、好ましくは安定で、製剤の製造と調製における取扱と加工が容易な多形を得るためのコントロールされた結晶化条件が必要である。
【0209】
薬剤の結晶を生成するための当業者に周知の結晶化方法を用いて多形形態が調製される。そのような方法としては、限定しないが、懸濁、沈澱,再結晶化、蒸発、水などの溶媒吸収法、又は溶媒和物の分解、などがある。BH4の希釈、飽和、又は過飽和溶液を、適当な核生成物質による種晶添加と共に、又は種晶添加無しで結晶化に用いることができる。150℃までの温度を加えて薬の溶液を生成することができる。-100℃までの、好ましくは-30℃までの冷却によって結晶化と沈澱を開始させる。準安定多形又は偽多形形態を用いて、もっと安定な形態の調製のための溶液又は懸濁液を作り、溶液で高い濃度を実現することができる。
【0210】
Moser出願で述べたように、多形形態は極性溶媒混合物からのBH4の結晶化によって得られる。Moser出願は、また、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形形態を調製するプロセス、すなわち、極性溶媒混合物に(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の特許請求される形態より低いエネルギーの固体形態を溶解し、この溶液に種晶を加え、得られた懸濁液を冷却し、生じた結晶を単離するというプロセスを記述している。
【0211】
溶解は、室温で、又は70℃までの温度で行うことができる。さらに好ましくは、溶解は50℃までの温度で行われる。出発物質を最終溶媒混合物に加えて溶解する、又は出発物質をまず水に溶解し、次に他の溶媒を両方、又は一つずつ加えることもできる。BH4の溶液は攪拌されることが好ましい。冷却は、-80℃までの温度、好ましくは-40℃から0℃までの温度への冷却を意味する。実施態様によっては、BH4多形の結晶化を開始させるために、溶液に種晶添加が行われる。適当な種としては、結晶の別のバッチからのその多形形態の一部、又は同様の又は同一の形を有する結晶も含まれる。単離した後、結晶をアセトン又はテトラヒドロフランで洗浄し、薬結晶の乾燥でよく用いられる方法によって乾燥させることができる。
【0212】
Moser出願に記載のBH4の多形形態は、この薬の非常に安定な結晶形態である。この多形形態は容易に濾過して取りだし、乾燥し、医薬製剤に望ましい粒径の粉砕することができる。この著しい特性によってこの多形形態は医薬用途に特に実用的なものになる。このBH4の多形形態の安定性が、このBH4 x 2HCl(多形形態)を40℃及び75%相対湿度でミニグリップ・バッグ中に8ヶ月貯蔵した後に決定された。8ヶ月の間、品質はいろいろな間隔でHPLCによってチェックされた。8ヶ月後、この多形の品質と安定性は時刻ゼロで見られた安定性に驚くほど類似していた:
【表2】

【0213】
したがって、Moser出願は、(6R)-L-エリトロ-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩の多形形態、及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物を記載している。このような組成物は、本発明に記載の処置方法において有用になる。
【0214】
Moser出願の他に、当業者に対して、米国特許第6,596,721号;第6,441,168号; 及び第6271,374号を、参照としてあげておきたい。これらは、5-メチルテトラヒドロ葉酸の安定な結晶塩を生成するためのいろいろな方法及び組成物、6R テトラヒドロ葉酸の安定な形態を生成するための方法及び組成物、及び6S及び6R テトラヒドロ葉酸の安定な形態を生成するための方法及び組成物、を記載している。これらの特許の各々は、物質の結晶形態を生成する方法及びそれらの物質の特性を調べる方法を一般に教示するものとして、引用により全体が本明細書に組み入れられる。それらの方法は、本明細書で教示される処置方法で医薬組成物として用いられるBH4の安定な形態を生成するために用いることができる。
【0215】
本明細書で開示され特許が請求されるすべての組成物及び/又は方法は、本明細書の開示に基づいて過度の実験なしで作り実施することができる。本発明の組成物及び方法は好ましい実施態様に関して説明されたが、本明細書に記載の組成物及び/又は方法、及び本明細書に記載の方法のステップ又はステップの系列に、本発明のコンセプト、精神及び範囲を逸脱せずにいろいろな変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。
もっと具体的に、本明細書に記載の物質の代わりに化学的及び生理的に関連しているいくつかの物質を用いることができることは明らかであろう。当業者に明らかなこのような代用や変更は、添付の特許請求の範囲で定められる本発明の精神、範囲及びコンセプトの範囲内にあると見なされる。
【0216】
実施例3
高い血清Pheレベルの人に対するテトラヒドロビオプテリンの投与
高い血中フェニルアラニン・レベル(> 600μmol/L)の人におけるテトラヒドロビオプテリンの安全性と効力を実証するために、全部で20人の患者でオープン・ラベルの単一及び複数回投与研究が行われた。研究へ包含する規準は、(1)ベースライン血中Pheレベルが> 600μmol/Lであり、(2)年齢18歳以上、であった。研究から除外するための規準は、(1)妊娠している又は授乳している、(2)医薬又は治療を必要とする疾病又は症状が同時進行している、(3)葉酸塩合成を阻害することが知られている薬による治療が同時進行している、及び(4)30日以内に研究用の薬による治療を受けていること、であった。各患者はまた、フェニルアラニン・ヒドロキシラーゼ(PAH)遺伝子に突然変異を含んで成ると同定された。研究被験者は、フェニルケトン尿症(PKU)又は高フェニルアラニン血症(HPA)に関連した徴候及び症状を含めた病歴、理学的検査、生命徴候、血清アミノ酸(すなわち、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン)血中レベル、及び日常的な検査室テスト(化学、血液学、及び尿分析)を含むベースライン評価を受けてから研究に含められた。
【0217】
テストされた薬は、(6R)-5,6,7,8-テトラヒドロビオプテリンであったが、これはまた2-アミノ-6-(1,2-ジヒドロキシプロピル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-3H-プテリジン-4-one
テトラヒドロビオプテリン、又はサロプテリン(BH4又は6R−BH4としても知られている。この薬は、10mg又は50mgの経口錠剤としてSchircks Laboratories, Switzerlandから得られた(製品番号11.212 (6R)-5,6,7,8-テトラヒドロビオプテリン二塩酸塩)。Schircksの6R−BH4二塩酸塩の半減期はほぼ3.5時間である。
【0218】
バクトリム、メトトレキサート、又は5-FUなど、葉酸の合成を阻害することが知られている薬は、研究の間は投与することが許されなかった。6R−BH4投与を開始する前に葉酸の合成を阻害することが知られている薬に関して7日間のウォッシュアウト期間が必要だった。研究参加の間、又は研究への登録前30日以内は、研究用の薬を摂取することは許されなかった。
【0219】
ベースライン評価が完了した後最大4週以内に、適格被験者は研究の第一段階を開始した。増加する単一投与量10mg/kg、20mg/kg、及び40mg/kg、の6R−BH4が、各投与量の間に少なくとも7日のウォッシュアウト期間をおいて、経口投与され、被験者は各投与の24時間後にモニターされた。被験者は、各6R−BH4投与の前と24時間後に安全性評価と血中アミノ酸(すなわち、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン)レベル測定を受けた。血圧は、各投与の30分後及び1時間後に測定された。安全性評価は、理学的検査、生命徴候、PKU又はHPAに関連した徴候及び症状の連続評価、有害事象の記録、及び検査室パラメーター(化学、血液学、及び尿分析)の変化のモニタリング、を含む。被験者は、研究の間ずっと、通常の食事を変更せずに続け、毎日の食品と飲料の摂取を記録するように指示された。
【0220】
研究の第一段階が完了した後、被験者は研究の第二段階に進み、毎日10mg/kgの6R−BH4を経口投与で、全部で7日間、受けた。少なくとも7日のウォッシュアウト期間の後、各被験者は、毎日20mg/kgの6R−BH4を経口投与で、全部で7日間、受けた。研究の第二段階の間、被験者は投与の前、最初の投与の24及び72時間後に、及び二つの投与レベルのそれぞれで投与の7日目にモニターされた。モニタリングは、上で述べたような安全性評価、血清アミノ酸(すなわち、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン)レベルの測定、及びフェニルアラニンとチロシンの経口摂取の評価、などであった。被験者は、研究の間ずっと、通常の食事を変更せずに続け、毎日の食品と飲料の摂取を記録するように指示された。
【0221】
6R−BH4(10mg/kg)の単回投与の後、血中Pheはベースラインから10%±0.26%減少した。20mg/kg及び40mg/kgでの6R−BH4の単回投与は、それぞれ、17%±0.28%及び27%±0.25%の平均減少を示した。血中Pheレベルの減少は投与量に依存するように思われた。
【0222】
図16は、毎日10及び20mg/kgのBH4を7日間投与した後の、患者20人中治療に応答した14人における平均血中フェニルアラニン・レベルを示す。この研究の目的には、血中Pheレベルの30%の減少が“応答する”ものと見なされたが、もっと小さな減少を示す患者にもBH4治療は利益になる。7日間の試験は、20mg/kgを投与された患者の70%(14/20)で血中Phe濃度の持続的な減少を示した。この14人の患者のうち、10人(71%)は10mg/kg/日に好ましい形で応答した。血中チロシンは全部ではないが一部の患者で増加することが認められた;何人かはベースラインのチロシン・レベルから80%超の増加を示した。10mg/kg BH4の複数回投与に対する個別の血中Pheレベル応答が11人の成人(図17)と9人の子供(図19)について示されている。20mg/kg BH4の複数回投与に対する個別の血中Pheレベル応答が11人の成人(図18)と9人の子供(図20)について示されている。
【0223】
このように、単回投与負荷テストはBH4治療に血中Pheレベルの30%以上の減少で応答する患者を同定するためには不十分であった。7日間負荷テストは高いパーセンテージの応答する患者を同定することに成功した。6R−BH4による20mg/kgの7日間負荷テストは、20mg/kgのBH4に応答したPKU患者の70%を同定した。14人の応答者のうち、71%は、また、10mg/kgというもっと低い投与量で血中Pheレベルに30%以上の減少を示した。
【0224】
本明細書において引用された参考文献は、本明細書に示されたものを補足するような例示的な手順又はその他の詳細をそれらが提供する限りにおいて、すべて特定して参照することにより本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における古典的重度フェニルケトン尿症(PKU)を処置する方法であって、前記被験者にタンパク質制限食をテトラヒドロビオプテリン(BH4)又はその前駆体若しくは誘導体と併用して投与することを含んで成り、ここで、前記タンパク質制限食とBH4の併用投与が、前記被験者の血漿中のフェニルアラニン濃度を、前記併用投与がない場合の前記濃度と比較して低下させるのに有効である方法。
【請求項2】
前記被験者がBH4ホメオスタシスの欠損を有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験者の血漿フェニルアラニン濃度が治療計画のない場合に1000μMを超える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記併用投与が前記被験者の血漿フェニルアラニン濃度を600μM未満まで減少させる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記併用投与が前記被験者の血漿フェニルアラニン濃度を500μM未満まで減少させる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記併用投与が前記被験者の血漿フェニルアラニン濃度を360μM±15μMに減少させる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記BH4が約1mg/kgから約30mg/kgまでの間の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記BH4が約5mg/kgから約30mg/kgまでの間の量で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記BH4が1日1回の投与で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記BH4が毎日複数回投与で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記BH4が、前記被験者の血漿フェニルアラニン濃度が360μM未満に減少するまで、毎日投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記被験者の血漿フェニルアラニン濃度が毎日モニターされ、血漿フェニルアラニン濃度に10%の増加が観測されたときに前記BH4が投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記BH4が安定化された結晶形態で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記BH4の安定化された結晶形態が少なくとも99.5%純度の6R BH4を含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記BH4前駆体がジヒドロビオプテリン(BH2)である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記BH4前駆体がセピアプテリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質制限食が、全フェニルアラニンを一日600mg未満に制限しているフェニルアラニン制限食である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記タンパク質制限食が、全フェニルアラニンを一日300mg未満に制限しているフェニルアラニン制限食である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記タンパク質制限食にチロシンを追加している、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記タンパク質制限食が、バリン、イソロイシン、及びロイシンから選択される1又は複数のアミノ酸を高含有量で含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記BH4が経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記被験者は突然変異型フェニルアラニン・ヒドロキシラーゼ(PAH)を有すると診断されている、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記突然変異型PAHがPAHの触媒ドメインに突然変異を含んで成る、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記突然変異が、F39L, L48S, I65T, R68S, A104D, S110C, D129G, E178G, V190A, P211T, R241C, R261Q, A300S, L308F, A313T, K320N, A373T, V388M, E390G, A395P, P407S, 及びY414Cから成る群から選択される1又は複数の突然変異を含んで成る、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記被験者がL-ドーパ神経伝達物質欠損の症候を発現していない被験者である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記タンパク質制限食がタンパク質サプリメントを含んで成り、且つ前記BH4が前記タンパク質サプリメントと同じ組成物で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
高フェニルアラニン血症(HPA)の妊娠している雌性を処置する方法であって、前記被験者にタンパク質制限食をテトラヒドロビオプテリン(BH4)又はその前駆体若しくは誘導体と併用して投与することを含んで成り、ここで、タンパク質制限食とBH4の併用投与が前記被験者の血漿中のフェニルアラニン濃度を前記併用投与がない場合の前記濃度と比較して低下させるのに有効である方法。
【請求項28】
前記被験者の血漿フェニルアラニン濃度が180μM超で600μM未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記被験者の血漿フェニルアラニン濃度が600μM超で1200μM未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記被験者の血漿フェニルアラニン濃度が1200μM超である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物がさらに葉酸塩を含んで成る、請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記葉酸塩が、5-フォルミル-(6S)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、5-メチル-(6S)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、5,10-メテニル-(6R)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、10-フォルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5-フォルミミノ-(6S)-テトラヒドロ葉酸その塩、(6S)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、並びにこれらの組み合わせ、から成る群から選択されるテトラヒドロ葉酸塩を含んで成る、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物がさらにアルギニンを含んで成る、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
正常よりも高い血漿フェニルアラニン濃度を有する患者を処置する方法であって、前記患者の血漿フェニルアラニン濃度の減少をもたらすのに有効な量の安定化されたBH4組成物を前記患者に投与することを含んで成る方法。
【請求項35】
前記安定化されたBH4組成物が室温で8時間より長い時間安定である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記BH4の投与の前の前記患者の血漿フェニルアラニン濃度が180μM超である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記患者の血漿フェニルアラニン濃度が180μMと360μMの間にある、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記患者の血漿フェニルアラニン濃度が200μMと600μMの間にある、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記患者の血漿フェニルアラニン濃度が600μMと1200μMの間にある、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記患者の血漿フェニルアラニン濃度が600μMと1200μMの間にある、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記患者の血漿フェニルアラニン濃度が1200μM超である、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が幼児である、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記幼児の血漿フェニルアラニン濃度が1200μM超である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が妊娠している、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記患者の血漿フェニルアラニン濃度が約200μMと約600μMの間にある、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記患者の血漿フェニルアラニン濃度が1200μM超である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記患者が妊娠を考えている出産適齢期の雌性である、請求項34に記載の方法。
【請求項48】
前記患者の血漿フェニルアラニン濃度が約200μMと約600μMの間にある、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記患者の血漿フェニルアラニン濃度が1200μM超であり、前記方法がさらにタンパク質制限食を前記患者に投与することを含んで成る、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
フェニルケトン尿症の患者を処置する方法であって、前記患者の血漿フェニルアラニン濃度の減少をもたらすのに有効な量の安定化されたBH4組成物を前記患者に投与することを含んで成り、前記患者がBH4負荷テストに応答しないと診断されている、方法。
【請求項51】
約10mg BH4/kg体重〜約200mg BH4/kg体重を投与することを含んで成る、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記BH4が、経口的に、皮下に、舌下に、非経口的に、直腸に、経鼻的に(per and nares)投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記BH4が毎日投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記BH4が隔日投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記BH4が毎週投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記BH4がタンパク質制限食と併用して投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
前記BH4が治療用タンパク質製剤の一部として投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記タンパク質制限食が低タンパク質含有食材の通常食を含んで成る、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記タンパク質制限食はフェニルアラニンを含まないタンパク質食を含んで成る、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記タンパク質制限食がフェニルアラニンを含まないタンパク質サプリメントを追加される、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記フェニルアラニンを含まないタンパク質サプリメントがチロシンを含んで成る、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
フェニルケトン尿症の幼児を処置する方法であって、前記幼児の血漿フェニルアラニン濃度の減少をもたらすのに有効な量で前記幼児に安定化されたBH4組成物を投与することを含んで成り、ここで、前記幼児がゼロ歳から3歳までの間であり、前記幼児の血漿フェニルアラニン濃度が約360μMから約4800μMまでの間にある方法。
【請求項63】
前記BH4の投与の前の前記幼児の血漿フェニルアラニン濃度が約1200μMであり、前記BH4の投与が前記血漿フェニルアラニン濃度を約1000μMに減少させる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記BH4の投与の前の前記幼児の血漿フェニルアラニン濃度が約800μMであり、前記BH4の投与が前記血漿フェニルアラニン濃度を約600μMに減少させる、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記BH4の投与の前の前記幼児の血漿フェニルアラニン濃度が約400μMであり、前記BH4の投与が前記血漿フェニルアラニン濃度を約300μMに減少させる、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記BH4の投与が前記血漿フェニルアラニン濃度を360±15μM減少させる、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
さらに葉酸塩を投与することを含んで成る、請求項34〜66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記葉酸塩が、5-フォルミル-(6S)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、5-メチル-(6S)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、5,10-メテニル-(6R)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、10-フォルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5-フォルミミノ-(6S)-テトラヒドロ葉酸その塩、(6S)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、並びにこれらの組み合わせ、から成る群から選択されるテトラヒドロ葉酸塩を含んで成る、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
さらにアルギニンを投与することを含んで成る、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
室温で8時間より長く安定であるBH4の安定化された結晶形態、及び医薬として許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む組成物。
【請求項71】
前記組成物がさらに医療用タンパク質サプリメントを含んで成る、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記BH4組成物が幼児用調合乳(infant formula)の一部である、請求項70に記載の組成物。
【請求項73】
前記タンパク質サプリメントがフェニルアラニンを含まない、請求項71に記載の組成物。
【請求項74】
前記タンパク質サプリメントは、L-チロシン、L-グルタミン、L-カルニチンが20mg/100gサプリメントの濃度で強化され、L-タウリンが40mg/100gサプリメントの濃度で強化され、かつセレンが強化されている、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
前記タンパク質サプリメントがさらに、カルシウムとリンの推奨される日用量を含んで成る、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
前記タンパク質サプリメントがさらに、L-ロイシン、L-プロリン、L-リシン・アセテート、L-バリン、L-イソロイシン、L-アルギニン、L-アラニン、グリシン、L-アスパラギン一水和物、L-トリプトファン、L-セリン、L-トレオニン、L-ヒスチジン、L-メチオニン、L-グルタミン酸、及びL-アスパラギン酸、から成る群から選択される1又は複数のアミノ酸の推奨される日用量を含んで成る、請求項74に記載の組成物。
【請求項77】
前記タンパク質サプリメントがさらに、ビタミンA、D及びEの推奨される日用量を含んで成る、請求項74に記載の組成物。
【請求項78】
前記タンパク質サプリメントが前記サプリメントのエネルギーの少なくとも40%を与える脂肪含有量を含んで成る、請求項73に記載の組成物。
【請求項79】
前記組成物が粉末の形態である、請求項73に記載の組成物。
【請求項80】
前記組成物がプロテイン・バーの形態である、請求項71に記載の組成物。
【請求項81】
さらに葉酸塩を含んで成る、請求項70に記載の組成物。
【請求項82】
前記葉酸塩が、5-フォルミル-(6S)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、5-メチル-(6S)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、5,10-メテニル-(6R)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、10-フォルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5-フォルミミノ-(6S)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、(6S)-テトラヒドロ葉酸及びその塩、並びにこれらの組み合わせ、から成る群から選択されるテトラヒドロ葉酸を含んで成る、請求項81に記載の組成物。
【請求項83】
さらにアルギニンを含んで成る、請求項82に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−207029(P2012−207029A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−145046(P2012−145046)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【分割の表示】特願2006−539992(P2006−539992)の分割
【原出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(506136483)バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】