代謝障害治療のためのカルジオトロフィン1の使用
本発明は、肥満および関連する障害:高血糖、インスリン抵抗性、2型糖尿病の発生および異脂肪血症、並びにその食欲減退機能を利用した、脂肪酸化刺激剤、低血糖、骨格筋レベルに対するインスリンの感作剤および腸細胞によるグルコースの腸管輸送抑制剤に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルジオトロフィン1(CT−1)の肥満および関連する障害:高血糖、インスリン抵抗性、2型糖尿病の発生、および異脂肪血症の治療のための使用、並びにその食欲減退機能を利用した、脂肪酸化刺激剤、低血糖、骨格筋レベルに対するインスリンの感作剤、および腸細胞によるグルコースの腸管輸送抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、数多くの先進国において拡大している重大な公衆衛生上の問題である(Bellanger and Bray、2005、J The State Med Soc;157:S42−49;quiz 49)。我々先進国における食料摂取量の増加、不健康な食生活、座ることの多い生活様式は、肥満の急激な増加に疑いなく影響している(SteinおよびColditz等、2004、J. Clin. Endocrinol. Metab.89:2522−5)。数多くの研究により、肥満およびその代謝異常の罹患率の驚くべき増加は、ベータ細胞のインスリン抵抗性、異脂肪血症および膵臓における最終的な破綻と関連しており、いや応なく2型糖尿病を生じ、この疾患が引き起こす全ての結果をともなう(Rana等、2007、Diabetes Obes. Metab.、9:218−232)。
【0003】
肥満についての現在の治療法には以下のようなものがある:i)ゼニカル(Xenical、Orlistat)は、穏やかな体重減少を生じさせる胃腸リパーゼの抑制剤であるが、大腸癌を含む胃腸における副作用という主要な問題を有する。ii)シブトラミン(Sibutramine)は、前述の治療よりも大きな体重減少を生じさせるモノアミン補足抑制剤であるが、血圧の上昇および心拍出量の増加を伴う。iii)最後に、ヨーロッパで承認されている(FDAによっては承認されていないが)リモナバント(Rimonabant)は、内在性カンナビノイド受容体アンタゴニストであるが、鬱病などの情動行動における変化を生じる問題を有するため、市場から撤退した。
【0004】
インスリン抵抗性について現在の治療法では、一般的にチアゾリジンジオン(TZD)が、他の療法と併用して使用される。これらの薬物の問題は、とりわけインスリンとともに投与したときに、体重が増加することである。このことから、体重の減少の他に、インスリンの作用を増感または増加することのできる薬剤が、これらの病理学に対し非常に興味あるものとされるであろうことが分かる。さらに、腸グルコース抑制などの末梢作用を伴う治療が、肥満および真性糖尿病に対して非常に興味あるものとされるであろう。
【0005】
1994年の終わりのレプチンの発見が、エネルギーバランスを調節する際に脂肪細胞により分泌される因子の研究に新しい展望を切り開いた。このタンパク質は、主に脂肪の量に比例して、脂肪細胞により産生および分泌される。このタンパク質は、筋肉による脂肪の酸化およびグルコース補足を増す末梢作用の他に、食欲調節のための中枢神経系モジュレータとして確認された。しかしながら、まもなく、肥満は高レプチンレベルに関連していること、内因性レプチンは効果的ではなく、そのため、肥満体のヒトおよび齧歯類の大部分は耐レプチン性であり、したがって、この治療手段は、レプチン欠損(低割合の肥満人)により生じる疾患を患う個体に限定されることが判明した。
【0006】
レプチンは構造的にgp−130ファミリーのサイトカインと類似しており、またレプチン受容体(LRb)は構造的にgp−130Rbetaとして知られているgp130サイトカイン受容体と類似していることから、gp130サイトカインファミリーの別のメンバー、特にCNTFが、肥満者において観察されるレプチン耐性の問題を克服する肥満治療用治療剤としての能力について研究された。
【0007】
CNTFサイトカインは、肥満、インスリン抵抗性および脂肪肝を患うマウスに対して、これらすべてのパラメータを改善するので、可能性ある治療効果を有するものとして知られている(Sleeman等、2003、Proc Natl Acad. Sci.USA、100:14297−14302)。CNTFの食欲減退能(Stephens TW等、1995)、AMPK活性化能を介してインスリン抵抗性を戻すこのサイトカインの能力(Watt等、2006、Nat. Med.、12:541−548)、さらには筋肉によるグルコース補足を刺激するその能力(Steinberg等、2009、Diabetes、 Epub January、09、2009)が報告され、これによりこのサイトカインが肥満および関連疾患を治療できる可能性があるものとして提案された(Ahima等、2006、Nat.Med.、12:511−512)。それにもかかわらず、このサイトカインを治療剤として使用することは、高CNSによりおよび抗CNTF抗体の産生により、また脂肪および筋肉組織におけるCNTFRα受容体が低発現であることにより制限されている。体重約114キログラムの患者にこのサイトカインを1〜2マイクログラム/kgの用量で84日間投与した臨床試験では、3〜4kgの減少を導いた。これらの結果は有望であると思われるが、高CNTF用量で患者に吐き気が現れ、ついには抗CNTF抗体が生じて体重が増加した(EttingerM.P.等、JAMA、2003、289:1826−32)。
【0008】
したがって、当該技術分野においては、いままで知られているgp130系リガンドの欠点を有していない肥満の治療に有用である薬剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
第一の態様によれば、本発明は、代謝障害治療用のカルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物、さらには代謝障害治療用薬物の調製のためのカルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物の使用に関する。
【0010】
別の態様によれば、本発明は、カルジオトロフィン1活性を誘起する薬学的に活性な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、肥満治療用美容的方法に関する。
【0011】
別の態様によれば、本発明は、カルジオトロフィン活性を誘起する化合物と抗糖尿病化合物とを一緒または別個に含んでなる組成物に関する。引き続く態様によれば、本発明は、前記組成物を、同時、別個または順次投与する、代謝障害治療用の本発明による組成物に関し、さらには、前記組成物を、同時、別個または順次投与する、代謝障害治療用薬物の調製のための、本発明による組成物の使用に関する。
【0012】
別の態様によれば、本発明は、薬学的に活性な量の本発明による組成物を患者に投与することを含んでなる、肥満治療用美容的方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】カルジオトロフィン1は、高脂肪食物由来肥満のマウスの体重を減らす。(S:血清、rCT−1の投与ビヒクル)。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=8匹の動物。**p<0.01;***p<0.001。
【図2】CT−1が介在する高脂肪食物由来肥満のマウスの体重の減少は、少なくとも一部分は、食欲減退効果によるものである。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=8匹の動物。*p<0.05。
【図3】カルジオトロフィン1は、普通の食事(NCD)のマウスの体重を減らす。(S:血清、rCT−1の投与ビヒクル)。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=5匹の動物。**p<0.01;***p<0.001。
【図4】CT−1が介在する体重減少は、食欲減退効果以外の因子によるものである(結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=6匹の動物。*p<0.05)。ペアフィード(PF)群は、CT−1で処置したマウスと同じ日常摂取したマウス群である。
【図5】マウスC57BL/6(月齢3カ月)にrCT−1を単回投与(10μg)で急性静脈投与すると、ベースライン血糖レベルが減少する。血糖レベル、インスリンおよびウエスタンブロット(AKT(P−AKT)活性が筋肉にみられる)を、rCT−1の投与1時間後に測定する。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=5匹の動物。*p<0.05)。
【図6】rCT−1を単回投与(10μg)で急性投与すると、高糖食後の血中グルコースの増加を防止する。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=5匹の動物。*p<0.05)。
【図7】CT−1は、膵臓破壊(ストレプトゾトシンで)のマウスでの直接低血糖効果を有する。CT−1単独で投与すると血糖レベルが減少し、インスリンとともに投与すると効果が増大する。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=5匹の動物。*p<0.05;**p<0.01(対生理食塩水群)。x軸は、種々の処置の実施後の経過時間(分)を示す。
【図8】CT−1の低血糖効果は、少なくとも一部分は、筋肉によるグルコース消費の増加によるものである。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=5匹の動物。*p<0.05;**p<0.01(対生理食塩水群)。
【図9】高脂肪食物由来肥満のマウスにおいて、rCT−1による6日間の長期処置後のグルコースおよびインスリンレベル。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=7匹の動物。*p<0.05。
【図10】1週間のrCT−1による長期処置後またはカロリー制限(PF)後のグルコースおよびインスリンレベル。PF(ペアフィード)群は、CT−1で処置したマウスと同じ日常摂取したマウスである。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=6匹の動物。
【図11】カルジオトロフィン1は、腸のグルコース輸送を抑制する(生体外処置)。結果は、6種のマウスにおいて12回測定での平均±SEで表されている。**p<0.01。
【図12】カルジオトロフィン1は、CNTFよりも腸のグルコース輸送の抑制効果が大きい(生体外処置)。結果は、6種のマウスにおける24〜35回の測定での平均±SEで表されている。***p<0.001。
【図13】カルジオトロフィン1は、腸のグルコース輸送を抑制する(生体内急性処置)。結果は、30回測定での平均±SEで表されている。1実験群当たりのn=5匹のマウス。**p<0.01。
【図14】カルジオトロフィン1は、腸のグルコース輸送を抑制する(生体内長期処置)。結果は、30回測定での平均±SEで表されている。1実験群当たりのn=5匹のマウス。***p<0.01。
【図15】カルジオトロフィン1は、腸のグルコース輸送を抑制する(Caco−2細胞における研究)。結果は、1群当たり42〜44回測定での平均±SEで表されている。
【図16】カルジオトロフィン1は、脂肪細胞(CNTFではない)におけるレプチン放出を抑制する(脂肪細胞の一次培養における生体外実験)。結果は、6つの独立した実験について、平均±SEで表されている。**p<0.01;***p<0.001対対照;bp<0.01;cp<0.001対インスリン。
【図17】油脂分解に対するCT−1とCNTFの効果の差。24時間中のインスリンの有無におけるCT−1またはCNTFにより産生される一次ラット脂肪細胞におけるグリセロール放出(油脂分解の測定)。n=4−8;*P<0.05対対照細胞(100%);#P<0.05対インスリン処置細胞
【図18】典型的に脂肪細胞へ分化した3T3−L1脂肪細胞における褐色脂肪組織からの遺伝子導入に対するCT−1とCNTFの効果の差。細胞を、24時間中CT−1またはCNTF(20ng/ml)で処理した(n=5;*P<0.05対対照細胞)。遺伝子発現を、定量的PCRにより測定した。
【図19】rCT−1による6日間の長期処置後のIL−6の血清レベル。
【図20】血清、CT−1で処置またはCT−1で処置された動物と同じ食事で処置したマウス(C57BL/6、月齢4カ月)の3群における組織学的肝スライス(H&E100X)を表すイメージ。いずれの場合も炎症性浸潤は観察されなかった。
【図21】rCT−1は、高脂肪摂取後の血清およびトリグリセリド(TG)における遊離脂肪酸(FFA)の濃度の減少を生じる。
【図22】脂質内注射後の血清FFAの除去におけるrCT−1の効果。
【図23】骨格筋における単離ミトコンドリアでのベータ酸化に対する、rCT−1の急性投与の効果。データは、平均±SEで表されている(n=***、*P<0.05)。
【図24】定量的PCRにより測定される脂肪酸の酸化に関与する遺伝子の発現レベルに対するrCT−1の効果。
【図25】L6E9細胞(筋管へ分化した筋芽細胞)におけるインスリンによるグルコース(2−デオキシグルコース)摂取に対するrCT−1の効果の増加。CT−1での急性(1時間)および長期(24時間)の処置では、インスリンにより誘起されたグルコース摂取が顕著に増加する。*P<0.05対対照細胞;#P<0.05対インスリン処置細胞。
【図26】L6E9細胞(筋管へ分化した筋芽細胞)におけるインスリンシグナル伝達に対するrCT−1の効果の増加。(A)rCT−1での急性処置(15分間)および(B)rCT−1での長期処置(10時間および24時間)は、インスリンにより誘起されるAKTリン酸化を高める。
【図27】筋肉における「生体内」インスリンシグナル伝達に対するrCT−1(急性処置)の効果の増加。月齢4カ月のC57BL/6マウスに、洞静脈にインスリン注射する30分前にrCT−1(10μg/マウス)を注射した。5分後、腓腹筋を取り出し、均一化した。CT−1は筋肉においてインスリンにより誘起されるAKTリン酸化を高めることが判明した。デンシトメリー分析(n=5;*P<0.05)。
【図28】筋肉における「生体内」インスリンシグナル伝達に対するrCT−1(長期処置)の効果の増加。月齢4カ月のC57BL/6マウスに、6日中rCT−1(0、2mg/kg/日)を注射した。前の群と同じ日常摂取し、6日中生理食塩水血清を注射したマウス(ペアフィード群)を、対照として使用した。絶食16時間後、インスリンを動物の洞静脈に注射し、5分後、腓腹筋を取り出し、均一化した。CT−1は筋肉においてインスリンにより誘起されるAKTリン酸化を高めることが判明した。デンシトメリー分析(n=5;*P<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
CT−1の医学的および美容的用途
本発明者らは、驚くべきことに、CT−1は普通食のマウスおよび高脂肪食のマウスで体重減少を生じさせることを見出した。この効果は、少なくとも一部分は、CT−1の食欲減退効果(図2)、並びに高脂肪食後の血漿脂質の増加を下げる(図20および21)、高糖食後の血糖を減少させる(図5〜6)、筋肉によるグルコース消費の増加を生じさせる(図8)、および腸により補足されるグルコースを減らす(図11〜14)というCT−1の能力によるものである。さらに、本発明者らは、CT−1が脂肪細胞における基礎分泌およびインスリン刺激レプチン分泌を抑制すること、さらにはグリセロールの放出およびインスリンの抗脂肪分解活性の抑制を誘起できることを明らかにした(図16および17)。しかしながら、これらの効果は、CNTFを使用するときには観察されない。特定の理論にこだわるものではないが、前記効果がこの分子の筋肉に対する作用(低血糖を生じるグルコース捕捉の刺激)に加わり、脂肪細胞がトリグリセリドとなるのに利用できるグルコースの減少を生じるので、この効果の差異はCT−1の使用の利点となると思われる。
【0015】
第一の態様によれば、本発明は、代謝障害の治療のためのカルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物に関する。さらに、本発明は、代謝障害治療用薬物の調製のための、カルジオトロフィン1活性を誘起する化合物の使用、さらにはCT−1活性を誘起する化合物を被験者に投与することを含んでなる代謝障害の治療方法に関する。
【0016】
本明細書において使用される用語「カルジオトロフィン1活性を誘起する化合物」は、投与により、既に存在しているCT−1の特異的活性を増加させるか、あるいはカルジオトロフィンと同じ機能を実質的に有するCT−1または類似体の合成の増加によるかを問わず、カルジオトロフィン1活性(CT−1)の増加を生じる化合物である。したがって、好ましい態様によれば、CT−1活性を誘起する化学物質は、CT−1自体である。「CT−1」は、ヒトカルジオトロフィンのアイソフォーム1に対応する、アクセス番号CTF1_HUMANまたはQ16619(バージョン62、2008年12月16日)若しくはヒトカルジオトロフィンのアイソフォーム2に対応するアクセス番号Q5U5Y7(バージョン1、2009年1月20日)によるUniProtKBデータベースに記載の配列により定義されているタンパク質、さらには他の種における相同分子種、例えば、マウス(アクセス番号NP_031821またはQ60753(バージョン50、2008年12月16日)およびNP_942155またはP83714(バージョン42、2008年12月16日)のUniProtKBデータベースに定義されている配列)、ラット(UniProtKBデータベースで定義されている配列(アクセス番号NP_058825またはQ63086(バージョン50、2008年11月4日)およびNP_001129272またはQ6R2R3(バージョン30、2009年1月20日)並びにチンパンジー(アクセス番号NP_001009112またはQ6R2R2(バージョン30、2008年11月4日)のUniProtKBデータベースに定義されている配列)により定義されているタンパク質である。
【0017】
別の態様によれば、CT−1活性を誘起する化学物質は、CT−1の機能的に同等な変異体である。本明細書で使用されている表現「CT−1の機能的に同等の変異体」とは、CT−1と、生体外および生体内の両方で、CT−1と関連する本発明に記載の機能の一つ以上を共有し、アミノ酸配列において最少の同一性を有する分子である。したがって、本発明に使用するのに好適なCT−1の変異体は、一つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失によって上記配列から誘導されたものであり、天然対立遺伝子、代替処理から生じる変異体および自然に現れる分泌および切断型を含む。CT−1の変異体は、好ましくはCT−1と、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示す。同一性度は、当業者に周知の方法を用いて求める。2つのアミノ酸配列間の同一性は、好ましくはBLASTPアルゴリズム[BLASTManual、Altschul、S.等、NCBI NLM NIH Bethesda、Md. 20894、Altschul、S.等、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)]、好ましくはデフォルトパラメータを用いて求める。一方、想定されるCT−1の変異体は、CT−1の機能、例えば、以下の機能(これらには限定されない)、の少なくとも一つを示す:
−普通食を与えられたとき、および高脂肪食で肥満を誘起したときの両方で、マウスにおいて体重減少を生じさせる能力。体重の減少を生じる化合物の能力を測定する方法は、当該技術分野においてにおいて十分に記載されており、本発明の実施例1に記載の方法を含む。高脂肪食が与えられたマウスにおける体重減少を測定する場合において、例えば、脂肪の形態でのキロカロリーの10%であるD12450BまたはLFDと称される食事、脂肪の形態でのキロカロリーの45%であるD12451またはHFDと称される食事または脂肪の形態でのキロカロリー60%であるD12492またはVHFDと称される食事などの当該技術分野において知られている高脂肪食を使用することができる。
−本発明の実施例1に記載の方法またはWO2007093363に記載の方法を用いて求めることができる食欲減退効果を誘起する能力。
−VO2値とVCO2値との比として定義される呼吸率を減少させる能力。このパラメータは、当該技術分野において知られている方法を用いて求めることができる。
−高脂肪食後の脂質血症の増加を防止する能力(トリグリセリドと遊離脂肪酸の両方に関して)。標準的な方法を使用して、好ましくは市販のキットにより、血漿中の脂肪酸およびトリグリセリドの濃度を測定する。
−直接低血糖能、または高糖食後若しくは膵臓破壊後の低血糖能。これは、市販のグルコース検出キットを使用することにより測定できる。膵臓破壊は、本発明の実施例3に記載のストレプトゾトシンによるか、または炎症誘発性サイトカイン(Choi等、Transplant Immunol.、2004、13:43−53に記載のIL−1b、TNF−aおよびIFN−γにより形成されるカクテル)を使用することにより生じさせることができる。
−筋肉により補足されるグルコースの増加を生じさせる能力であって、この活性は、グルコースでマークした類似体を吸収する食筋の能力に基づく本願の実施例3に記載の方法を用いるか、またはUeyama等(Biol.Signals Recept 2000;9:267−274)により記載されているような非同位法を用いて測定される。
−脂肪細胞の一次培養、および脂肪細胞における分化を促進するように処理された線維芽細胞株の両方を使用できる、グルコース補足、および脂肪細胞によるレプチンの放出についてのインスリンの効果を抑制する能力。脂肪細胞によるグルコースの放出は、市販のグルコース検出キットを使用することによりおこなうことができる。レプチンの測定は、市販のキットを用いた免疫測定(ELISA、ラジオイムノアッセイ等)によりおこなうことができる。
【0018】
別の態様によれば、CT−1活性を誘起できる化学物質は、CT−1をコードするポリヌクレオチドまたは機能的に同等の変異体である。
【0019】
本明細書において使用されている用語「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドにより形成されるいずれかの長さの高分子型ヌクレオチドに関する。この用語は、一本鎖および二本鎖ポリヌクレオチドの両方を含むだけでなく、改変ポリヌクレオチド(メチル化ポリヌクレオチド、保護されたポリヌクレオチド等)を含む。
【0020】
CT−1活性を誘起することのできる化学物質として使用するのに好適なポリヌクレオチドには、その配列がヒトカルジオトロフィンの転写物の変異体1に対応するGenEMBLデータベース(アクセス番号BC064416、バージョン9、2008年10月15日)に記載のものに対応するポリヌクレオチド、ヒトカルジオトロフィンの転写物の変異体1に対応するアクセス番号BC036787(バージョン9、2009年8月12日)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(rat)のカルジオトロフィン1をコードするポリヌクレオチドに対応するGenEMBLデータベース(アクセス番号D78591、バージョン4、2009年1月12日)に記載の配列、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(rat)のカルジオトロフィン2をコードするポリヌクレオチドに対応するGenEMBLデータベース(アクセス番号AY518205、バージョン3、2009年1月12日)に記載の配列、ハツカネズミMus musculus(mouse)のカルジオトロフィン1をコードするポリヌクレオチドに対応するGenEMBLデータベース(アクセス番号U18366、バージョン4、2009年1月12日)に記載の配列、ハツカネズミMus musculus (mouse)のカルジオトロフィン2をコードするポリヌクレオチドに対応するGenEMBLデータベース(アクセス番号AB125661、バージョン2、2009年1月12日)に記載の配列などがあるが、これらには限定されない。
【0021】
あるいは、CT−1活性を誘起することができる化学物質には、それらの特異的配列により上記で定義されたポリヌクレオチドの機能的に同等の変異体が含まれる。「機能的に同等の変異体」は、本発明に関連して、上記で定義されたCT−1活性を有するポリペプチドをコードすることができ、上記した配列に対する1つまたはいくつかのヌクレオチドの挿入、欠失または置換により上記のポリヌクレオチドから得られる全てのポリヌクレオチドである。好ましくは、本発明の変異体ポリヌクレオチドは、配列により非常に制限された条件で上記したポリヌクレオチドとハイブリダイズできるポリヌクレオチドである。非常に制限されたハイブリダイゼーションの典型的な条件には、6XSSC(1XSSC:0.15MNaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム)および40%ホルムアミド中42℃で141時間のインキュベーション後、0.5XSSC、0.1%SDSを用いて60℃で1あるいは数サイクルの洗浄が含まれる。あるいは、非常に制限された条件には、6XSSC中概略50〜55℃の温度でのハイブリダイゼーションと、最後に1〜3XSSC中68℃の温度での洗浄を含んでなる。中程度に制限された条件は、0.2または0.3M NaCl中概略50〜65℃の温度でハイブリダイゼーション後、0.2XSSC、0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中概略50〜55℃で洗浄を含んでなる。
【0022】
好ましくは、CT−1活性を誘起することのできる化学物質がポリヌクレオチドであるとき、これは、操作的に発現の調節領域に関連付けられる。本発明に使用される調節配列は、核プロモーター配列またはエンハンサー配列および/または他の調節配列(非相同核酸配列の発現を増加する)であることができる。プロモーターは、構成的でも誘発性でもよい。非相同核酸配列の一定の発現が望まれる場合には、構成的プロモーターが使用される。周知の構成的プロモーターとしては、例えば、サイトメガロ・ウイルス(CMV)前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーターなどが挙げられる。構成的プロモーターの数多くの他の例は、当該技術分野において周知であり、本発明の実施に使用できる。非相同核酸配列の制御された発現が望まれる場合には、誘発性プロモーターを使用する必要がある。非誘発状態では、誘発性プロモーターは、「サイレント」である。「サイレント」は、誘導剤の不存在下で、非相同核酸配列の発現がほとんどまたは全く検出されないが、誘導剤の存在下では、非相同核酸配列の発現が生じる。しばしば、誘導剤濃度を変えることにより発現レベルを制御することができる。発現を制御すること、例えば、誘発性プロモーターをより強くまたはより弱く刺激するように誘導剤の濃度を変えることにより、非相同核酸配列の転写物の濃度に影響を及ぼすことができる。非相同核酸配列が遺伝子をコードする場合には、合成されたタンパク質の量を制御することができる。このように、治療薬の濃度を変化させることができる。周知の誘発性プロモーターとしては、以下のものがある:エストロゲン若しくはアンドロゲンプロモーター、メタロチオネインプロモーターまたはエクジソンに応答するプロモーター。数多くの他の例が、当該技術分野において周知であり、本発明を実施するのに使用できる。構成的および誘発性プロモーター(通常非常に多種多様な細胞または組織で機能する)の他に、特異的組織プロモーターを使用して、細胞または組織において特異的核酸の非相同配列の発現をさせることができる。特異的組織プロモーターの周知な例としては、以下の異なる特異的筋肉プロモーターなどが挙げられる:骨格α−アクチンプロモーター、心臓アクチンプロモーター、骨格トロポニンCプロモーター、心臓トロポニンCプロモーター(および遅収縮)並びにクレアチンキナーゼプロモーター/エンハンサー。当該技術分野において周知であり、本発明を実施するのに使用できる特異的筋肉プロモーターがある(特異的筋肉プロモーターについては、Miller等、(1993)Bioessays15:191−196参照)。
【0023】
別の態様によれば、CT−1活性を誘起することのできる化学物質は、上記で定義したポリヌクレオチドを含んでなるベクター、すなわち、CT−1またはその機能的に同等の変異体をコードするベクターである。前記ポリヌクレオチドの挿入に好適なベクターは、原核生物における発現ベクター、例えば、pUC18、pUC19、pBluescriptおよびそれらの誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCRl、RP4、ファージ、「シャトル」ベクター、例えば、pSA3およびpAT28、酵母発現ベクター、例えば、2ミクロンプラスミド型のベクター、インテグレーションプラスミド、YEPベクター、動源体プラスミド等、昆虫細胞における発現ベクター、例えば、pAC系ベクターおよびpVL系ベクター、植物における発現ベクター、例えば、pIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pORE系のベクター、並びにウイルスベクター(アデノウイルス、アデノウイルス関連ウイルス、さらにはレトロウイルスおよび特にレンチウイルス)に基づく真核生物細胞における発現ベクター、さらには非ウイルスベクター、例えば、pSilencer4.1−CMV(Ambion)、pcDNA3、pcDNA3.1/hygpHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAXl、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV−10、pBPV−1、pML2dおよびpTDT1由来のベクターである。
【0024】
別の態様によれば、CT−1活性の増加を生じさせることができる化学物質は、カルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体を培地に分泌することができる細胞である。カルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体の発現に好適な細胞には、心筋細胞、脂肪細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(BおよびT細胞)、肥満細胞、好酸球、血管内膜の細胞、種々の器官、好ましくはランゲルハンス島から単離した細胞から単離した細胞の一次培養液、肝細胞、単核細胞を含む白血球、間葉、臍帯若しくは成人白血球(皮膚、肺、腎臓および肝臓由来)、破骨細胞、軟骨細胞および他の結合組織細胞などがあげられるが、これらには限定されない。樹立細胞株、例えば、ジャーカットt細胞、NIH−3T3、CHO、Cos、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3細胞、C2C12筋芽細胞およびW138細胞も、好適である。
【0025】
当業者は、カルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体を培地に分泌することができる細胞は、微小粒子またはマイクロカプセルを形成することで、細胞は患者に使用される前、より大きな有用寿命を有するものとなることを理解する。本発明の目的である微小粒子を形成するのに好適な物質には、細胞支持体として作用する治療薬の連続分泌を可能にする生体適合高分子物質などがある。したがって、前記生体適合高分子物質は、例えば、熱可塑性ポリマーまたはヒドロゲルポリマーであることができる。熱可塑性ポリマーには、アクリル酸、アクリルアミド、2−アミノメチルメタクリレート、ポリ(テトラフルオロエチレン−共ヘキサフルオロプロピレン)、メタクリル−(7−クマロキシ)エチルエステル酸、N−イソプロピルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアミドアミン、ポリ(アミノ)−p−キシリレン、ポリ(クロロエチルビニルエーテル)、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリ(カーボネート尿素)ウレタン、ポリ(カーボネート)ウレタン、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体およびアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(乳酸−グリコール酸)、ポリ(L乳酸)、ポリ(ガンマ−メチル、L−グルタメート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリピロール、ポリスチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、超高分子量ポリエチレン、6−(p−ビニルベンズアミド)−ヘキサン酸およびN−p−ビニルベンジル−D−マルトンアミド並びに前記ポリマーの複数を含む共重合体(コポリマー)などがある。ヒドロゲル型ポリマーには、アルギネート、アガロース、コラーゲン、澱粉、ヒアルロン酸、ウシ血清アルブミン、セルロースおよびその誘導体、ペクチン、コンドロイチンスルフェート、フィブリンおよびフィブロイン型の天然物質、さらには合成ヒドロゲル、例えばセファロースおよびセファデックスなどがある。
【0026】
当該技術分野においては、前記ポリマーの一部は不安定であり、比較的多孔性であり、抗体が内部にアクセスする可能性があり細胞を損傷することに加えて、ゲル性を失う傾向がある。このため、任意に、本発明の微小粒子は、粒子を安定にする半透過性膜により包囲して、抗体不透過バリアを形成することもできる。半透過性膜は、細胞生存能力に必要な全ての溶質が入ることができ、微小粒子に含まれる細胞により産生される治療用タンパク質が出ることができるが、抗体が実質的に透過することができず、その結果、細胞が微小粒子を収容している生体により生じる免疫応答から保護される。半透過性膜を形成するのに好適な物質は、生体液に不溶の物質、好ましくはポリアミノ酸、例えば、ポリ−L−リジン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−L−アルギニン、ポリ−L−アスパラギン、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリベンジル−L−アスパーテート、ポリ−S−ベンジル−L−システイン、ポリ−ガンマ−ベンジル−L−グルタメート、ポリ−S−CBZ−L−システイン、ポリ−ε−CBZ−D−リジン、ポリ−δ−CBZ−DL−オルニチン、ポリ−O−CBZ−L−セリン、ポリ−O−CBZ−D−チロシン、ポリ(γ−エチル−L−グルタメート)、ポリ−D−グルタミン酸、ポリグリシン、ポリ−γ−N−ヘキシルL−グルタメート、ポリ−L−ヒスチジン、ポリ(α,β−[N−(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパートアミド])、ポリ−L−ヒドロキシプロリン、ポリ(α、β−[N−(3−ヒドロキシプロピル)−DL−アスパートアミド])、ポリ−L−イソロイシン、ポリ−L−ロイシン、ポリ−D−リジン、ポリ−L−フェニルアラニン、ポリ−L−プロリン、ポリ−L−セリン、ポリ−L−トレオニン、ポリ−DL−トリプトファン、ポリ−D−チロシンまたはそれらの組み合わせである。
【0027】
本明細書において使用されている用語「代謝障害」は、代謝における誤りおよびアンバランスを生じるだけでなく、準最適な形態で起きる代謝過程を生じる全ての種類の障害である。また、この表現は、それ自体の疾患は代謝障害によっては生じなかったかもしれないが、代謝調節により治療できる障害に関する。好ましい態様によれば、代謝障害は、肥満、高血糖、インスリン抵抗性、2型糖尿病および異脂肪血症からなる群から選択されるものである。
【0028】
本発明において使用される用語「肥満」は、ヒトの体重(kg)と身長(m)の二乗との間の比からなる、肥満度指数(BMI)に基づいてWHOにより示された肥満の定義に関する。この基準によれば、BMI18.5kg/m2未満は体重が不足または痩せ気味とみなし、BMI18.5〜24.9kg/m2は正常体重としてみなし、BMI25.0〜29.9kg/m2は過体重グレード1とみなし、BMI30.0〜39.0kg/m2は過体重グレード2とみなし、BMI40.0kg/m2以上は病的肥満とみなす。あるいは、個人の肥満度を定義するのには別の方法、例えば、助骨の下端と骨盤の上端との間の中点で測定したウエストの直径(単位:cm)、皮膚のひだの厚さ、および脂肪のない体は脂肪が多い体よりも電気をよく通すという原理に基づく生体インピーダンスがある。
【0029】
本発明において使用される用語「高血糖」は、空腹時ベースラインレベルに対して異常に高い血糖値となる状態に関する。特に、空腹時の血糖値が常に126mg/dL超であるとき、食後の血糖値が140mg/dL超であるとき、および/または体重の1キログラム当たり1.75グラムのグルコースを投与してから2時間後の静脈血漿の血糖値が200mg/dL超であるときに高血糖が起きる。
【0030】
本発明において使用される用語「インスリン抵抗性」は、細胞がインスリンに対して正しく応答しない障害に関する。その結果、体は、高血糖値に応答してより多くのインスリンを生じる。インスリン抵抗性を患う患者は、高血糖値および高循環インスリンレベルを示すことがしばしばある。インスリン抵抗性は、しばしば肥満、高血圧および脂質異常症と関連づけられている。さらに、インスリン抵抗性は、2型糖尿病を患う患者にしばしば現れる。
【0031】
本発明において使用される用語「2型糖尿病」は、大血管、小血管および神経に影響する慢性合併症を生じる、血糖値の異常な増加により特徴づけられる疾患に関する。この疾患における基礎障害は、インスリン抵抗性と称される、インスリン作用の困難(このホルモンに対する組織感受性の損失の形態)、および膵臓における産生に関与する細胞によるインスリンの不適切な分泌である。グルコース濃度の増加の他に、誤ったインスリン作用がしばしばコレステロールおよび/またはトリグレセリドレベルの増加を生じる。
【0032】
本発明において使用され用語「異脂肪血症」は、脂質代謝における障害でその結果脂質濃度(コレステロール、トリグリセリドなど)および血中リポタンパク質(高密度リポタンパク質)における障害を生じることにより特徴付けられる病的状態に関する。本発明の方法で治療することができる異脂肪血症として、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、I型、IIa型、IIb型、III型、IV型、V型高リポタンパク血症、高カイロミクロン血症、複合脂質異常症などがある。
【0033】
本発明による組成物は、本発明の方法が美容的目的を有する場合には、病的肥満の治療と過体重グレード1またはグレード2の治療の両方に有用である。したがって、別の態様によれば、本発明は、カルジオトロフィン1活性を誘起する化合を患者に投与することを含んでなる、肥満治療のための美容的方法に関する。この態様によれば、脂肪の面での過剰体重であり、本発明の美容的方法により処置されることができる患者は、視覚的または25kg/m2以上のBMI、好ましくは25〜30のBMIにより確認できる。これらの個人は肥満であるとみなされ、美容的理由で体重コントロールを必要とする。
【0034】
カルジオトロフィン1活性を誘起することができる化学物質として本発明による美容的方法の種々の態様は、肥満および他の代謝障害の治療方法に関連して上記されている。
【0035】
本発明による化合物は、急性および長期治療の両方で投与できる。本発明において使用される表現「長期投与」は、化合物を長期間にわたって連続的に患者に投与して前記期間の間、治療形態を維持する投与方法に関する。長期投与形態では、化合物を毎日複数回数、毎日2回、毎日3回程度あるいはその付近の回数程度投与される。長期投与は、1日を通して周期的に種々の静脈注射によりおこなうことができる。あるいは、長期投与は、ボーラスの形態または毎日、2日毎、3〜15日毎、10日以上毎に実施できる連続注入による投与を含む。典型的には長期投与は、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間、少なくとも144時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、少なくとも12週間、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも9カ月、少なくとも1年、少なくとも2年以上維持される。
【0036】
本明細書において使用されている表現「急性投与」は、患者に、化合物の単回投与または数回投与を、時間を減少して、例えば、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間若しくは24時間または2日間、3日間または4日間実施する投与方法に関する。
【0037】
当業者には、活性化合物の治療に有効な量および/または製剤を、投与の種類に応じて実施することが理解されるであろう。ここで使用される「治療に有効な量」は、代謝障害と関連する症状を完全または部分的に軽減するか、症状の進行または悪化を防止するか、疾患を患うリスクがある被験者において疾患の発症を防止するのを可能にする化合物の量である。
【0038】
本発明による化合物の長期投与が望ましい場合には、例えば、US5672659、US5595760、US5821221、US5916883およびWO9938536に開示されているような除放性組成物で投与することができる。このタイプの投与とは関係なく、急性投与が望ましい場合には即時放出での治療が好ましい。投与の種類とは無関係に、用量および間隔は、治療効果を維持するのに十分な化合物の血漿レベルとするために個々に調節できる。当業者は、過度の実験をおこなうことなく、治療に有効な局所用量を最適化することができる。
【0039】
本発明による化合物の投与は、本発明の別の態様を構成する医薬組成物における製剤化を必要とする。本発明の方法を実施するのに有用な医薬組成物は、治療に有効な量の活性剤と薬学的に許容しうる担体を含む。用語「薬学的に許容しうる」は、動物および特にヒトにおける使用のために、連邦政府若しくは州の監督官庁により、または米国薬局方若しくは他の一般的に認識されている薬局方を含めて承認されたことを意味する。用語「担体」は、治療化合物を投与する希釈剤、共アジュバント、賦形剤またはビヒクルに関する。前記医薬担体は、滅菌液、例えば、水および油、石油、動物または植物起源または合成油、例えば、ラッカセイ油、大豆油、鉱油、ごま油などを含む。好適な医薬賦形剤には、澱粉、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、ライス、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、スキムミルク粉、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。所望ならば、組成物は、少量の湿潤剤若しくは乳化剤またはpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、連続放出製剤などの形態をとってもよい。組成物は、結合剤および従来の担体、例えば、トリグリセリドを用いて坐剤として製剤化してもよい。経口製剤は、標準的な担体、例えば、医薬型マンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムを含むことができる。好適な医薬担体は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0040】
組成物は、ヒトに対して静脈、皮下または筋肉内投与するための医薬組成物として通常の手順に準じて製剤化できる。必要に応じて、組成物は、可溶化剤および局部麻酔、例えば、注射部位での痛みを軽減するためのリドカインを含んでいてもよい。組成物を浸潤により投与しようとするとき、薬学的品質の水または食塩水を含む浸潤ボトルで調剤することができる。組成物を注射投与するとき、水バイアルを注射液または無菌食塩水用として用意し、投与前に成分を混合できる。
【0041】
代謝障害の治療に有効である化合物を誘起するCT−1活性の量は、本明細書に記載の標準的な臨床法により求めることができる。さらに、生体外試験は、最適な用量範囲を確認しやすくするのに必要に応じて使用することもできる。製剤に使用するための正確な用量は、投与経路および重症度に依存し、医師の判断および各患者の状況に応じて決定する必要がある。しかしながら、静脈内投与に好適な用量範囲は、一般的に体重1キログラム当たり活性化合物50〜5000マイクログラムである。鼻内投与に好適な用量範囲は、一般的に概略0.01pg/kg(体重)〜1mg/kg(体重)である。有効用量は、生体外アッセイシステムまたは動物におけるモデルから得られた用量に対する一対の応答曲線から推定することができる。
【0042】
全身投与について、治療に有効な用量は、生体外アッセイから最初に推定できる。例えば、用量は、動物モデルにおいて、細胞培養において求めたIC50を含む血中濃度範囲を得ることにより公式化できる。前記情報を使用して、ヒトに有用な用量を正確に求めることができる。また、初期用量も、当該技術分野において周知の手法を用いて、生体内データ、例えば、動物モデルから推定することもできる。当業者は動物におけるデータに基づき、ヒトに対する投与を容易に最適化できる。
【0043】
同様に、本発明は、CT−1活性を誘起することができる化学物質と、食欲減退効果を有するか、または肥満防止効果を有する、生体における栄養の入手を減少することができる1つまたは数種の化合物とを併用することを想定している。したがって、本発明による代謝障害治療法は、CT−1活性を誘起する能力を有する化合物を、アミリン、アミリンアゴニスト、サケカルシトニン、コレシストキニン若しくはそのアゴニスト、レプチン(OBタンパク質)、エクセンジン若しくはエクセンジン類似体、GLP1若しくはそのアゴニスト、ポリペプチド(PYY)若しくはそのアゴニスト、神経伝達物質またはニューロンイオンチャンネルに影響する化学物質、例えば、抗抑鬱剤、ノルアドレナリン補足抑制剤、セロトニン2c受容体アゴニスト、一部のドーパミン作動アンタゴニスト、キャナビノイド1受容体アゴニスト類似体、レプチンを含むCNSにおけるレプチン/インスリンの経路を調節する化学物質、レプチン輸送のプロモーター若しくはレプチン受容体のプロモーター、CNTF、神経ペプチドY、アグチ関連ペプチドのアンタゴニスト、プロオピオメラノコルチン、コカイン、アンフェタミン、アルファメラニン細胞刺激ホルモン、メラノコルチン−4受容体アゴニスト、タンパク質チロシンホスフェート1ベータ阻害剤としてインスリン活性/代謝に影響する化学物質、ペルオキシソーム7増殖剤により活性化される受容体のアンタゴニスト、ブロモクリプチン、ソマトスタチンアゴニスト、安静時の新陳代謝率を増加する化学物質(アンカップリングタンパク質のアゴニスト、甲状腺ホルモン受容体のアゴニスト)およびメラニンなどの異なる種類の他の化学物質、フィトステロールの類似体、機能油、脂肪酸合成阻害剤、カルボキシペプチダーゼ、腸リパーゼ阻害薬などからなる群から選択される1つまたは数種の化合物と同時、順次または別個に投与することを想定している。
【0044】
本発明による組成物
本発明者らは、驚くべきことに、CT−1とインスリンの同時投与は、各成分を別個に投与することにより観察されるよりも高い、1型糖尿病のモデルおよび筋肉によるグルコース補足に対する低血糖効果を有することを見出した。したがって、図7は、どのようにCT−1とインスリンとの組み合わせで、ストレプトゾトシンでのベータ膵臓細胞の実験的破壊を受けたマウスの処置が、成分の各々を別個に投与した後に観察されるよりも高い低血糖効果を生じるかを示す。さらに、図8は、どのようにCT−1とインスリンの組み合わせが、化合物を別個に投与したときに観察されるよりも高い筋肉によるグルコース補足の増加を生じるかを示す。
【0045】
したがって、別の態様によれば、本発明は、カルジオトロフィン活性を誘起する化合物と抗糖尿病化合物を一緒または別個に含んでなる組成物(以下、本発明の組成物)に関する。
【0046】
「カルジオトロフィン活性を誘起する化合物」との表現は、代謝障害の治療法に関連して上記した通りであり、本発明の第一の方法におけるように、化合物が:
(i)カルジオトロフィン1(CT−1)、
(ii)CT−1の機能的に同等の変異体、
(iii)CT−1をコードするポリヌクレオチドまたはその機能的に同等の変異体、
(iv)(iii)のポリヌクレオチドを含んでなるベクター、および
(v)培地にカルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体を分泌することができる細胞からなる群から選択されるものである。ここで、種々の化合物は上記で詳細に述べたとおりである。
【0047】
本発明に用いられる表現「抗糖尿病化合物」は、その作用機構とは無関係に、高血糖を含む糖尿病の症状を少なくとも部分的に補償することができる化学物質である。好ましい態様によれば、抗糖尿病化合物は、インスリン活性を誘起する化合物、またはインスリンの低血糖活性を誘起する化合物、またはインスリン活性に対する感作物質である。
【0048】
インスリン活性を誘起することができる抗糖尿病化合物は、
(i)インスリン、
(ii)インスリンの機能的に同等の変異体、
(iii)インスリンをコードするポリヌクレオチドまたはその機能的に同等の変異体
(iv)(iii)のポリヌクレオチドを含んでなるベクター、および
(v)培地にインスリンまたはその機能的に同等の変異体を分泌することができる細胞
などがあるが、これらには限定されない。
【0049】
本発明において用いられる用語「インスリン」は、いずれかの種(霊長類、齧歯動物類またはウサギ)、好ましくはヒト由来のインスリンおよびより好ましくは天然配列(自然由来のインスリンと同じアミノ酸配列のポリペプチドを含んでなる)のインスリンに関する。自然配列の前記インスリンポリペプチドは、自然から単離できるか、または組み換えおよび/または合成培地により産生される。用語「天然配列インスリン」は、具体的には自然に生じる、切断または分泌形態および対立遺伝子変異体を網羅する。本発明の態様によれば、天然配列ヒトインスリンは、成熟天然配列インスリンまたは完全長型(ヒトプレプロインスリン(アクセス番号P01308、UniProtKBデーターベース、バージョン126、2009年1月20日)の配列のアミノ酸90〜110に対応するアルファまたはA鎖、およびアミノ酸25〜54(アクセス番号P01308、NCBIデーターベース、バージョン126、2009年1月20日)に対応するベータまたはB鎖)である。
【0050】
本発明において用いられる「インスリンの機能的に同等の変異体」は、インスリン配列に対する少なくとも1つのアミノ酸の除去、挿入または修正から生じ、且つ由来するインスリンと実質的に同じ性質を維持する全てのポリペプチドである。インスリン活性は、血清中の正常血糖クランピングまたは血清中のグリコシル化タンパク質の測定などの当業者に広く知られている方法により測定できる(Bunn等、Diabetes、1981、30:613−617)。
【0051】
インスリンの機能的に同等の変異体には、デス−ペンタペプチド(B26−B30)−PheB25−α−カルボキサミド]インスリン、AspB10インスリン(US4992417に開示されている)、LysB28−ProB29インスリンLysB28−ProB29およびその6量体変異体(US5474978およびUS5514646に開示されている)、インスリンおよびプロタミンの製剤(US5650486)、アシル化LysB28−ProB29インスリン(US5922675)、並びにUS5952297、US6034054およびUS6211144に開示されているものなどの安定化インスリンの組成物、インスリンの超活性類似体、単量体インスリン、肝臓特異的インスリン、インスリンリスプロ(Humalog(登録商標))、インスリンリスプロプロタミンで製剤化したインスリンリスプロ(Humalog(登録商標)50/50(商標)、Humalog(登録商標)75/25(商標)として市販されている)、NPHインスリンまたはインスリンイソファンヒト(Humulin(登録商標)で市販されている)、レギュラーインスリン、レギュラーインスリンと併用したNPHインスリン(US5547929)、インスリン亜鉛、インスリングラルギン、グルリシン(APidra)、インスリンアスパルト(Novomix)、インスリンデテミル(levemir)、生物相、LP−100、ノバラピッド、インスリン亜鉛懸濁液(遅および超遅)、GLP−I(1−36)アミド、GLP−I(73−7)(US5614492に開示されているインスリンオトロピン)、LY−315902(Lilly)、GLP−I(7−36)−NH2)、AL−401(自己免疫)、US4579730、US4849405、US4963526、US5642868、US5763396、US5824638、US5843866、US6153632、US6191105およびWO85/05029に開示されているものなどの組成物などがあるが、これらには限定されない。
【0052】
さらに、インスリンの機能的に同等の変異体には、(a)高脂肪食A鎖の残基1〜21と高脂肪食B鎖の残基1〜30との組み合わせ、または(b)前記配列に特異的に由来する別の断片のアミノ酸の配列とのアミノ酸配列同一度が少なくとも約80%であるポリペプチドなどがある。さらに、システイン残基A6〜Al1、A7〜B7およびA20〜B19間ジスルフィド結合により維持されるインスリンの二次構造は、活性に必要であると思われ、そのため、好ましくは機能的に同等の変異体はできるだけ前記二次構造を保存する。
【0053】
インスリンの機能的に同等の変異体には、例えば、インスリンのAおよびB鎖のN末端および/またはC末端で、または内部ドメインの1つ以上内で、1つ以上のアミノ酸残基が付加または欠失されたポリペプチドなどが含まれる。通常、インスリンのポリペプチド変異体は、アミノ酸配列と、高脂肪食のA鎖の残基1〜21と高脂肪食のB鎖の残基1〜30との組み合わせにより形成される配列または前記アミノ酸配列から特異的に由来の別の断片とのアミノ酸概略同一度は、少なくとも80%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である。ポリペプチド変異体の配列長さは、A鎖の少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34残基または35およびB鎖の少なくとも25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、27、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50残基である。
【0054】
インスリンをコードするポリヌクレオチドには、ヒトインスリン、その前駆体(プレプロインスリンおよびプロインスリン)をコードするポリヌクレオチドと、他の種のオルソログをコードするポリヌクレオチドなどがある。
【0055】
「インスリンの機能的に同等の変異体をコードするポリヌクレオチド」は、(a)上記で定義した活性インスリンのポリペプチドをコードし、(a)上記で定義した高脂肪食のA鎖の残基1〜21と上記で定義したヒトインスリンポリペプチドのB鎖の残基1〜30との組み合わせ、または(b)前記配列とアミノ酸配列同一度が少なくとも80%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を示す上記したアミノ酸配列に特異的に由来する別の断片をコードする核酸の1つをコードする核酸配列との核酸配列同一度が少なくとも約80%である核酸を示す。インスリンの変異体をコードするポリヌクレオチドは、少なくとも約45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、81、87、105ヌクレオチドのインスリンのA鎖をコードする核酸および/または少なくとも約75、78、81、84、87、90、93、96、99、102、105、108、111、114、117、120、123、126、129、132、135または150ヌクレオチドのインスリンのB鎖をコードする核酸を含む。
【0056】
ポリヌクレオチドは、単離された形態であるか、ベクターの一部分である。インスリンまたはその機能的に同等の変異体をコードするポリヌクレオチドの発現に好適なベクターは、CT−1により構成される組成物との関係で上記したものと実質的に同じである。
【0057】
あるいは、本発明に関連して使用することができる抗糖尿病化合物は、インスリンの抗血糖活性を有する化合物またはインスリン活性に対する感作物質を含み、インスリンの分泌促進剤、例えば、スルホニル尿素(トルブタミド、クロルプロパミド、グリピシド、グリベンクラミド、グリカジド、グリペンチド、グリメピリド、グリベンクラミド、グリピジド、グリキドン、グリセンチド、グリメピリド等)およびメチグリニド(レパグリニド、ナテグリニド、ミチグリニド等)、肝臓グルコース産生の還元剤(ビグアニドおよび特にメトホルミンおよびブホルミン)、炭水化物減少を生じる化学物質、例えば、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース、ミグリトールまたはボグリボース)、グルコースの末梢使用を増加する化学物質、例えば、チアゾリジンジオン(ロシグリタゾン、ピオグリタゾン等)、GLP−若しくはGLP−1模倣剤(Byetta−Exanatide、Liraglutinide、CJC−1131(ConjuChem、Exanatide−LAR(アミリン)、BIM−51077、ZP−10、WO00/07617に記載されている化合物等))、エクゼンジン、セクレチン、DPP−IV阻害剤(シタグリプチン、サクサグリプチン、デナグリプチン、ビルダグリプチン、ALS−2−0426、ARI−2243、BI−A、BI−B、SYR−322、MP−513、DP−893、RO−0730699等)、SGLT−2阻害剤(ダパグリフロジンおよびセリグリフロジン、AVE2268、T−1095等)、並びにグルコース産生の増加を生じるペプチド(アミリンチド、プラムリンチド、エキセンディン)、GLP−1活性を有する化合物(グルカゴン様ペプチド1)、タンパク質チロシンホスファターゼ1Bの阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤、インスリンの分泌促進物質;脂肪酸酸化阻害剤、A2アンタゴニスト、c−junターミナルキナーゼ阻害剤、インスリン;インスリン模倣剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、VPAC2受容体アゴニスト、グルコキナーゼ阻害剤等)などがあるが、これらには限定されない。
【0058】
本発明による組成物は、低血糖効果および筋肉によるグルコース補足を増加する能力を前提として、代謝障害の治療に使用できる(実施例2)。この組成物は、別の化合物の製剤と、同時、別個または順次投与に使用できる。したがって、別の態様によれば、本発明は、組成物が同時、別個または順次投与される代謝障害の治療のための、本発明による組成物に関する。別の態様によれば、本発明は、組成物が同時、別個または順次投与される代謝障害の治療用薬物の調製のための、本発明による組成物の使用に関する。別の態様によれば、本発明は、本発明による組成物の同時、別個または順次投与を含んでなる、代謝障害の治療方法に関する。
【0059】
本発明による組成物の治療剤、特にCT−1活性誘導剤および抗糖尿病剤は、単一製剤(例えば、成分の各々の一定量を含んでなる錠剤またはカプセルとして)提供してもよく、また別個の製剤として提供して、後で組み合わせて同時、順次または別個投与してもよい。また、本発明による組成物は、成分を別個に製剤化するが、同じ容器にパッケージ化する、キットオブパート(kit−of−parts)としての製剤を含む。当業者は、本発明による組成物の第一および第二成分の剤形は同様でよく、換言すれば、同様に製剤化でき(錠剤または丸薬)、同じ経路で投与することができることを理解できるであろう。本発明の異なる成分を別個に製剤化する場合には、2つの成分はブリスターで提供できる。各ブリスターは、その日の間に消費しなければならない。もし薬物を1日に数回投与しなければならない場合には、各投与に対応する薬物をブリスターの異なる部分に配置することができ、好ましくは投与しなければならない日の時間をブリスターの各部分に記録する。あるいは、本発明による組成物の成分は、異なる成分が異なって投与されるように、異なって製剤化できる。したがって、第一成分は経口投与用錠剤またはカプセルとして製剤化され、第二成分は静脈投与用に製剤化されることができる。
【0060】
本発明による組成物は、静脈内、経口、鼻内、非経口、局所的、経皮、直腸などの当業者に公知の方法により投与されるが、これらには限定されない。
【0061】
本発明による組成物の一部分である成分間の比は、各特定の場合に使用されるCT−1活性誘導剤および抗糖尿病剤、さらには所望の適用に依存する。したがって、本発明によれば、2つの成分の量の間の比が50:1〜1:50、特に20:1〜1:20、1:10〜10:1または5:1〜1:5であることができる組成物を想定できる。
【0062】
本発明の組成物で治療できる代謝障害には、本発明の第一の態様(CT−1の治療および美容用途)に関連して上記したような肥満、インスリン抵抗性、高血糖、異脂肪血症および2型糖尿病などがあるが、これらには限定されない。別の態様によれば、本発明は、純粋に美容的な理由での抗肥満治療の候補患者が本発明の第一態様に記載されたようにして確認される(CT−1の治療および美容用途)、本発明の組成物を患者に投与することを含んでなる、肥満治療のための美容的方法に関する。
【0063】
本発明は、以下の実施例により説明するが、これらの実施例は単に説明の目的のみであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0064】
実施例1
体重に対するCT−1の効果
3カ月の高脂肪食(HFD、60%脂肪)の摂取により、肥満マウスを得た。rCT−1(0.2mg/kg/日)を連続6日間静脈内投与したところ、高脂肪食(HFD)のC57BL/6マウス(月齢:5カ月)の体重が減少した(図1)。この実験で使用される用量は、発熱反応を生じなかった(直腸温度を処置の全ての日で測定した)。
【0065】
(図1に記載したHFDを与え)上記した用量0.2mg/kg/日で6日間連続してrCT−1で処置した肥満マウスにおいて観察された体重の減少は、このサイトカインの食欲減退効果によるものである(図2)。図は、rCT−1で処置した群および生理学的血清(S)で静脈内処置した対応の対照群の処置の6日間に摂取したキロカロリーを示す。
【0066】
同様に、rCT−1(0.2mg/kg/日)を6日間連続して静脈内投与したところ、普通食(NCD)を与えた非肥満C57BL/6マウス(月齢:5カ月)において体重が減少した(図3)。この実験で使用した用量は、発熱反応を生じなかった(直腸温度を処置の全ての日で測定した)。
【0067】
上記用量で且つ上記で述べたrCT−1で処置した間に観察された体重の減少が食欲減退効果によるものなのか、または他の効果が関与しているのかを測定する目的で、月齢4カ月のC57BL/6マウス3群を用いて実験を行った。第一群(生理食塩水群)には、生理学的血清を静脈内投与(rCT−1の投与に使用したのと同じ容積)し;第二群(rCT−1群)には、上記した用量(0.2mg/kg/日)でrCT−1を静脈内投与し、第三群(Pair−fed群)には、rCT−1処置したマウスにより摂取されたのと同じ量の食物を毎日与えるとともに、血清を同じ実験期間の間注射した。図4から明らかなように、rCT−1で処置したマウスは、エネルギー摂取が両方の群で同一であるにもかかわらず、Pair−fed群よりも体重減少が大きかった。このことは、上記で観察された食欲減退効果の他に、rCT−1は体重減少に関与する他の代謝効果を有することを示している。
【0068】
実施例2
CT−1の低血糖効果
rCT−1(10μg)のC57BL/6マウス(月齢3カ月)への急性静脈内投与(1回投与)がベースライン血糖レベルを減少させるかどうか判定する目的で、rCT−1および生理食塩水血清で処置後1時間後に、血中グルコースレベルを測定した。図5Aから明らかなように、rCT−1は、血糖レベルを顕著に減少させた。CT−1または生理食塩水で処置した動物のインスリンレベルにおいて顕著な差が観測されないので、血糖が減少した機構は血中インスリンレベルの増加に起因するとすることはできない(図5Bに示すように)。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりn=5匹の動物。*p<0.05。rCT−1での処置は、筋肉におけるAKTのリン酸化を誘起する。これは、このサイトカインの低血糖作用を説明するのに役立つ(図5Cは、代表的なウエスタンを示す)。
【0069】
rCT−1(10μg)を急性単回投与すると、高糖食後の血中グルコースの増加が防止される。rCT−1の食後の血糖に対する効果を検討するためのこの実験は、Fruebis等(Fruebis等、2001、Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、98:2005−2010)により公開されたものに準じて、胃への強制投与(体重の1%容積で)による高糖食を、マウス(C57BL/6、月齢3カ月)に投与することでおこなった。強制投与後、同じ容積の生理食塩水血清を静脈内投与した(生理食塩水)またはrCT−1(10μg)。血液はグラフに示した時間で採取し、血糖を測定したところ、rCT−1で処置した動物では血糖の増加は生じなかった(図6)。
【0070】
次に、rCT−1を単回急性投与でのマウス(C57BL/6、月齢3カ月)における血糖レベルの減少が、ストレプトゾトシンでの処置をおこなったベータ−膵臓細胞の破壊に続発する高血糖を減少させるかどうか判定した。したがって、ストレプトゾトシンを単回投与(200mg/kg)してから64時間後、ベースライン血糖を測定し、マウスの3群に対して種々の処置を実施した。第一群(生理食塩水群)を、生理食塩水血清で処置した。第二群(インスリン群)を、インスリン0.75U/kgで処置した。第三群(rCT−1群)を、rCT−110μgで処置した。第四群(インスリン群+rCT−1)を、インスリン0.75U/kgおよびrCT−110μgで処置した。種々の処置を実施してから、15分、30分、60分および120分後に血糖を測定した。図7から明らかなように、rCT−1は、投与後30分後の血糖を顕著に減少し、分析した全ての血液抽出点においてインスリンの効果を高めた。
【0071】
rCT−1での急性処置から生じる低血糖効果が筋肉によるグルコース捕捉の増加によるものかどうかを判定するために、18FDG(18FluoroDeoxyグルコース)の筋肉捕捉を、種々のマウス群におけるガンマカウンターにより測定した。この実験をおこなうために、マウス(C57BL/6、月齢3カ月)を、以下のように4群にわけた:生理食塩水群(生理食塩水血清で処置);インスリン群(インスリン0.75U/kgで処置)、rCT−1群(rCT−110μgで処置)およびインスリン群+rCT−1(インスリン0.75U/kg+rCT−110μgで処置)。種々の処置投与の15分後、18FDGを投与し、注射10分後、腓腹筋を取り出し、放出された放射活性を、ガンマカウンターにより定量化した。結果(図8)は、rCT−1は筋肉によるグルコース消費を増加および増進するであろう(しかし、インスリンで観察されるものほど著しくはない)ことを示している。
【0072】
次に、rCT−1での長期処置の低血糖および低インスリン血症効果を、3カ月間高脂肪食(HFD、60%脂肪)の摂取により誘起した肥満のC57BL/6マウス(月齢5カ月)で測定した。食事処置の終わりに、マウスを、6日間連続(長期処置)で、rCT−1(0.2mg/kg/日)を静脈内投与することで処置した。図9に示すように、血糖レベル(上パネル)とインスリン血症レベル(下パネル)はrCT−1での処置のため顕著に減少した。
【0073】
次に、rCT−1での長期処置の低血糖および低インスリン血症効果を、対応するPair−fed(PF)群と比較した。rCT−1群には、上記した用量(0.2mg/kg/日)で6日間、静脈内経路によりrCT−1を与えた。Pair−fed群には、rCT−1で処置したマウスにより摂取したのと同じ量の毎日の食物を与え、血清を同じ実験期間にそれらに注射した。図10に示すように、血糖のより大きな低下(上パネル)が、rCT−1で長期処置した動物において、同様のカロリー制限したものに対してみられた。このことは、低血糖効果は、rCT−1により誘起された食欲減退効果によるだけではなく、タンパク質自体の低血糖性によるものと思われる。
【0074】
次に、rCT−1(0〜100ng/ml)での生体外処置が、腸管リングにおける糖の輸送を阻害できるかどうかを判定した。したがって、グルコースの腸輸送を、37℃でのrCT−1の不存在下または存在下で15分間のインキュベーションに関して、反転空腸管リングによるα−メチルグルコシド(1mM)の捕捉を測定することにより判定した。α−メチルグルコシドは、SGLT1ナトリウム−糖コトランスキャリアによる腸細胞の頂端膜を横断するグルコースの類似物質である。このことは、輸送の変化は、前記トランスキャリアの活性の変化に起因するにちがいないことを意味する。図11は、観察される効果は用量依存ではないが、CT−1は、腸におけるグルコースの吸収を阻害することができることを示している。
【0075】
腸管リングにおけるα−メチルグルコシド(1mM)の捕捉に対するCT−1およびCNTFの作用を測定した。図11に示す実験方法に準じて測定したところ、グルコースの腸輸送に対するCT−1の阻害作用は、CNTF(試験した実験条件において顕著な効果が得られなかった)よりも大きいことが判明した。
【0076】
次に、グルコースの腸捕捉に対するCT−1の生体外効果が生体内で再現できるかどうかを判定した。これのために、rCT−1(10μg)を、静脈内に急性的にC57BL/6マウス(月齢2カ月)に投与した。CT−1の投与は、α−メチルグルグルコシド(1mM)の腸輸送における阻害を生じた(図13)。腸管リングの単離と、それによるα−メチルグルグルコシド(1mM)の輸送は、CT−1の投与3時間後におこなった。得られた結果は、CT−1の、動物に全身投与するときにグルコースの腸輸送を阻害する能力を示し、rCT−1が腸グルコースの輸送を阻害する能力を示した生体外においておこなった上記の実験結果を補強するものである。
【0077】
C57BL/6マウス(月齢5カ月)への6日間連続(長期処置)のrCT−1(0.2mg/kg/日)の静脈内投与が、生理食塩水血清で処置したマウスからのものと比較して腸環におけるα−メチルグルコシド(1mM)の腸捕捉を阻害することができたかどうかを次に判定した。結果は図14に示されるとおりであり、図14から、どのようにrCT−1が腸グルコース輸送を阻害することができるかが分かる(生体内長期処置)。
【0078】
次に、CACO−2のヒト細胞株の細胞によって、α−メチルグルコシド(0.1mM)の捕捉について、rCT−1の効果を判定した。結果(図15)から明らかなように、rCT−1での処置は、ヒト腸細胞として機能的に挙動するCACO−2ヒト細胞株におけるa−メチルグルコシド(0.1mM)の捕捉の濃度依存阻害を生じる。CT−1での処置を、1時間(図15A)および24時間(図15B)、頂縁からおこなったところ、検討した2つのプレインキュベーション時間における用量20ng/mlで顕著な差が観察された。結果は、1群当たり42〜44測定の平均±SEで表されている。
【0079】
実施例3
CT−1とCNTFとの効果の差
図16は、脂肪細胞によるレプチン分泌を調節するrCT−1およびCNTFの能力を測定するために、ラット脂肪細胞の一次培養において実施された実験の結果を示す。図16Aは、rCT−1(72時間)での処置が、どのようにレプチンのベースライン分泌とインスリン(1.6nM)により刺激されたものとの両方を阻害するかを示す。しかしながら、これらの効果は、CNTFの同様な濃度では観察されなかった(図16B)。
【0080】
図17は、CT−1およびCNTFの、インスリンの不存在下または存在下での脂肪分解を調節する能力を判定するために、ラット脂肪細胞の一次培養において実施された実験の結果を示す。この図は、CT−1がグリセロール(脂肪分解測定)の放出を誘起し、またインスリンの抗脂肪分解活性を阻害するが、CNTFはそれができないことを示している。これらのデータは、CT−1が脂肪を集めることができ、上記した筋肉におけるベータ酸化が増加することの他に、このサイトカインが脂肪の堆積を減少させる能力があることを示している。
【0081】
加えて、そして重要なことには、CT−1は、脂肪細胞(脱ヨード酵素ヨードチロニン、Dio−2およびアンカップリングタンパク質−1、UCP−1)における褐色脂肪組織(II型)の典型的な遺伝子を誘起することができるが、CNTFはできなかった(図18)。いくつかの研究から、白色脂肪組織において褐色脂肪組織に特有の遺伝子を誘起させることを目的とする療法は、肥満関連障害の改善に効果的であろうということが明らかになっている(Farmer S. Genes Dev.2008;22:1269−7)。
【0082】
実施例4
CT−1の長期投与は炎症を生じない
長期投与後の炎症を生じさせるCT−1の能力を判定するために、高脂肪食(HFD、60%脂肪)を3カ月間摂取することにより誘起した肥満のC57BL/6マウス(月齢5カ月)におけるIL−6の血清レベルを測定した。食事処置の終わりに、マウスを、6日間連続して(長期処置)、rCT−1(0.2mg/kg/日)を静脈内投与して処置した。結果(図19)は、使用された用量での長期処置では、炎症の兆候がなかったことを示している(肝臓および筋肉などの器官において組織学的に確認されたデータ)。
【0083】
さらに、肝臓の組織学的切断を、炎症の症状の出現を顕微鏡検査により検出するためにおこなった。結果(図20)は、3群のマウス(C57BL/6、月齢4カ月)における肝臓(H&E100X)の組織学的切断の代表であるイメージを示す:対照群:静脈内経路により生理学的血清(rCT−1の投与に使用されたものと同じ容積)が与えられた;rCT−1群:6日間連続して、上記した用量(0.2mg/kg/日)で、静脈内経路によりrCT−1が与えられた;Pair−fed群:rCT−1で処置したマウスが摂取するのと同じ量の食物を毎日与え、同じ実験期間中に、血清を注射した。図から明らかなように、3群のどれにも、炎症性浸潤物の存在が観察されず、また顕著な形態学的変化もなかった。
【0084】
実施例5
脂質代謝に対するCT−1の効果
脂質代謝に対するCT−1の可能性のある役割を判定する目的で、種々の血清脂質のレベルを、rCT−1を6日間長期投与した後の3カ月間、高脂肪食誘起肥満のマウスで測定した。結果は表1に示されるとおりであった。
【0085】
【表1】
【0086】
さらに、脂肪酸およびトリグリセリドの血清レベルを、高脂肪食後の野生マウスで測定した。このために、2群の動物を使用し(n=5)、実験前の3時間の間は絶食状態とした。次に、両方の群の動物に、強制経口投与(体重の1%)により高脂肪食を投与し、血液試料を得て、ベースラインレベルを測定した。食後すぐに、静脈経路により、血清(黒三角)またはrCT−1(10μg/ml)(白三角)を投与した。結果(図21)は、どのようにrCT−1での処置が遊離脂肪酸レベル(2〜5時間後、*P<0.05)(上パネル)およびトリグリセリドレベル(1〜3時間後、*P<0.05)(下パネル)における顕著な減少を生じるかを示す。
【0087】
次に、rCT−1での処置が脂質内注射後の血清における遊離脂肪酸の除去を加速したかどうかを調べた。このために、rCT−1を、脂質内投与の30分間後に2群の動物(n=5)に静脈内投与した。対照動物には、生理食塩水を与えた。血清中の遊離脂肪酸の濃度を、5分後に測定した。次に、異なる時間での遊離脂肪酸の除去値を、脂質内(100%)注射の5分後に、FFA値に関して標準化した。図22に示すように、FFAの無為動力学は、生理食塩水で処置したマウスとCT−1で処置したマウスでは大きく異なった(ボンフェローニ解析事後の二元ANOVAによりP<0.05)。
【0088】
ベータ酸化に対するrCT−1の可能性のある効果を判定するために、生理食塩水またはCT−1(10μg、1時間)で処置したマウスから単離した腓腹筋におけるパルミテートの酸化を測定した。結果(図23)は、rCT−1での急性処置が骨格筋における脂肪酸の酸化を増加することを示している。さらに、筋肉における脂肪酸の酸化に関与する遺伝子の発現レベルを、rCT−1での急性処置(3時間)に応答したRT−PCRにより測定した。結果(図24)は、rCT−1は、PGC−1b、CPT−1、ACD、ACOおよびMCDA遺伝子のmRNAレベルの増加を生じることを示している。転写物の各々を検出するのに必要なサイクル数を、内部対照としてのシクロフィリンに対応する数と比較し、それを生理食塩水で処置した動物における値(1.0)と比較した任意単位で表している(n=5〜6、*P<0.05)。
【0089】
実施例6
骨格筋におけるインスリン作用に対するCT−1の増強効果
骨格筋は、インスリン作用に対して最も感受性のある組織であり、健康な個体では、インスリンにより刺激されたグルコース摂取が90%である。本発明者等は、CT−1が筋肉(「生体外」および「生体内」)におけるインスリン情報伝達を高めることを示した。
【0090】
インビボ試験は、rCT−1での急性(1時間)または長期(24時間)処置後のラット筋管(筋管へ分化したL6E9筋芽細胞)におけるインスリン誘起2−デオキシグルコース摂取およびAKTリン酸化を測定することにより実施した。CT−1は、インスリン誘起2−デオキシグルコース摂取(図25)およびインスリン誘起AKTリン酸化(図26)を刺激することが観察された。これらのデータは、CT−1は筋肉におけるインスリンの作用を高めることを明らかにしている。これらのデータは同じファミリーIL−6からのサイトカインについて公開されたものとは異なる(Nieto−Vazquez、I等、Diabetes 2008、57:3211−3221)。
【0091】
さらに、「生体内」では、インスリン刺激(0.5U/マウスを下洞静脈に注射した)の30分前に、rCT−1(10μg/マウス)を静脈内投与すると、筋肉におけるインスリン誘起AKTリン酸化が増加することが判明した(図27)。さらに、静脈内に0.2mg/kg/日の用量で、6日間連続でrCT−1で長期処置したところ、CT−1で処置し、生理食塩水を注射した(Pair−fed群)、同じ摂取量の動物と比較して筋肉組織におけるインスリンの効果が高まった(図28)。これらの全てのデータは、骨格筋におけるインスリンの存在下でCT−1には促進的役割があることを示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルジオトロフィン1(CT−1)の肥満および関連する障害:高血糖、インスリン抵抗性、2型糖尿病の発生、および異脂肪血症の治療のための使用、並びにその食欲減退機能を利用した、脂肪酸化刺激剤、低血糖、骨格筋レベルに対するインスリンの感作剤、および腸細胞によるグルコースの腸管輸送抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、数多くの先進国において拡大している重大な公衆衛生上の問題である(Bellanger and Bray、2005、J The State Med Soc;157:S42−49;quiz 49)。我々先進国における食料摂取量の増加、不健康な食生活、座ることの多い生活様式は、肥満の急激な増加に疑いなく影響している(SteinおよびColditz等、2004、J. Clin. Endocrinol. Metab.89:2522−5)。数多くの研究により、肥満およびその代謝異常の罹患率の驚くべき増加は、ベータ細胞のインスリン抵抗性、異脂肪血症および膵臓における最終的な破綻と関連しており、いや応なく2型糖尿病を生じ、この疾患が引き起こす全ての結果をともなう(Rana等、2007、Diabetes Obes. Metab.、9:218−232)。
【0003】
肥満についての現在の治療法には以下のようなものがある:i)ゼニカル(Xenical、Orlistat)は、穏やかな体重減少を生じさせる胃腸リパーゼの抑制剤であるが、大腸癌を含む胃腸における副作用という主要な問題を有する。ii)シブトラミン(Sibutramine)は、前述の治療よりも大きな体重減少を生じさせるモノアミン補足抑制剤であるが、血圧の上昇および心拍出量の増加を伴う。iii)最後に、ヨーロッパで承認されている(FDAによっては承認されていないが)リモナバント(Rimonabant)は、内在性カンナビノイド受容体アンタゴニストであるが、鬱病などの情動行動における変化を生じる問題を有するため、市場から撤退した。
【0004】
インスリン抵抗性について現在の治療法では、一般的にチアゾリジンジオン(TZD)が、他の療法と併用して使用される。これらの薬物の問題は、とりわけインスリンとともに投与したときに、体重が増加することである。このことから、体重の減少の他に、インスリンの作用を増感または増加することのできる薬剤が、これらの病理学に対し非常に興味あるものとされるであろうことが分かる。さらに、腸グルコース抑制などの末梢作用を伴う治療が、肥満および真性糖尿病に対して非常に興味あるものとされるであろう。
【0005】
1994年の終わりのレプチンの発見が、エネルギーバランスを調節する際に脂肪細胞により分泌される因子の研究に新しい展望を切り開いた。このタンパク質は、主に脂肪の量に比例して、脂肪細胞により産生および分泌される。このタンパク質は、筋肉による脂肪の酸化およびグルコース補足を増す末梢作用の他に、食欲調節のための中枢神経系モジュレータとして確認された。しかしながら、まもなく、肥満は高レプチンレベルに関連していること、内因性レプチンは効果的ではなく、そのため、肥満体のヒトおよび齧歯類の大部分は耐レプチン性であり、したがって、この治療手段は、レプチン欠損(低割合の肥満人)により生じる疾患を患う個体に限定されることが判明した。
【0006】
レプチンは構造的にgp−130ファミリーのサイトカインと類似しており、またレプチン受容体(LRb)は構造的にgp−130Rbetaとして知られているgp130サイトカイン受容体と類似していることから、gp130サイトカインファミリーの別のメンバー、特にCNTFが、肥満者において観察されるレプチン耐性の問題を克服する肥満治療用治療剤としての能力について研究された。
【0007】
CNTFサイトカインは、肥満、インスリン抵抗性および脂肪肝を患うマウスに対して、これらすべてのパラメータを改善するので、可能性ある治療効果を有するものとして知られている(Sleeman等、2003、Proc Natl Acad. Sci.USA、100:14297−14302)。CNTFの食欲減退能(Stephens TW等、1995)、AMPK活性化能を介してインスリン抵抗性を戻すこのサイトカインの能力(Watt等、2006、Nat. Med.、12:541−548)、さらには筋肉によるグルコース補足を刺激するその能力(Steinberg等、2009、Diabetes、 Epub January、09、2009)が報告され、これによりこのサイトカインが肥満および関連疾患を治療できる可能性があるものとして提案された(Ahima等、2006、Nat.Med.、12:511−512)。それにもかかわらず、このサイトカインを治療剤として使用することは、高CNSによりおよび抗CNTF抗体の産生により、また脂肪および筋肉組織におけるCNTFRα受容体が低発現であることにより制限されている。体重約114キログラムの患者にこのサイトカインを1〜2マイクログラム/kgの用量で84日間投与した臨床試験では、3〜4kgの減少を導いた。これらの結果は有望であると思われるが、高CNTF用量で患者に吐き気が現れ、ついには抗CNTF抗体が生じて体重が増加した(EttingerM.P.等、JAMA、2003、289:1826−32)。
【0008】
したがって、当該技術分野においては、いままで知られているgp130系リガンドの欠点を有していない肥満の治療に有用である薬剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
第一の態様によれば、本発明は、代謝障害治療用のカルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物、さらには代謝障害治療用薬物の調製のためのカルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物の使用に関する。
【0010】
別の態様によれば、本発明は、カルジオトロフィン1活性を誘起する薬学的に活性な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、肥満治療用美容的方法に関する。
【0011】
別の態様によれば、本発明は、カルジオトロフィン活性を誘起する化合物と抗糖尿病化合物とを一緒または別個に含んでなる組成物に関する。引き続く態様によれば、本発明は、前記組成物を、同時、別個または順次投与する、代謝障害治療用の本発明による組成物に関し、さらには、前記組成物を、同時、別個または順次投与する、代謝障害治療用薬物の調製のための、本発明による組成物の使用に関する。
【0012】
別の態様によれば、本発明は、薬学的に活性な量の本発明による組成物を患者に投与することを含んでなる、肥満治療用美容的方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】カルジオトロフィン1は、高脂肪食物由来肥満のマウスの体重を減らす。(S:血清、rCT−1の投与ビヒクル)。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=8匹の動物。**p<0.01;***p<0.001。
【図2】CT−1が介在する高脂肪食物由来肥満のマウスの体重の減少は、少なくとも一部分は、食欲減退効果によるものである。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=8匹の動物。*p<0.05。
【図3】カルジオトロフィン1は、普通の食事(NCD)のマウスの体重を減らす。(S:血清、rCT−1の投与ビヒクル)。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=5匹の動物。**p<0.01;***p<0.001。
【図4】CT−1が介在する体重減少は、食欲減退効果以外の因子によるものである(結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=6匹の動物。*p<0.05)。ペアフィード(PF)群は、CT−1で処置したマウスと同じ日常摂取したマウス群である。
【図5】マウスC57BL/6(月齢3カ月)にrCT−1を単回投与(10μg)で急性静脈投与すると、ベースライン血糖レベルが減少する。血糖レベル、インスリンおよびウエスタンブロット(AKT(P−AKT)活性が筋肉にみられる)を、rCT−1の投与1時間後に測定する。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=5匹の動物。*p<0.05)。
【図6】rCT−1を単回投与(10μg)で急性投与すると、高糖食後の血中グルコースの増加を防止する。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=5匹の動物。*p<0.05)。
【図7】CT−1は、膵臓破壊(ストレプトゾトシンで)のマウスでの直接低血糖効果を有する。CT−1単独で投与すると血糖レベルが減少し、インスリンとともに投与すると効果が増大する。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=5匹の動物。*p<0.05;**p<0.01(対生理食塩水群)。x軸は、種々の処置の実施後の経過時間(分)を示す。
【図8】CT−1の低血糖効果は、少なくとも一部分は、筋肉によるグルコース消費の増加によるものである。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=5匹の動物。*p<0.05;**p<0.01(対生理食塩水群)。
【図9】高脂肪食物由来肥満のマウスにおいて、rCT−1による6日間の長期処置後のグルコースおよびインスリンレベル。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=7匹の動物。*p<0.05。
【図10】1週間のrCT−1による長期処置後またはカロリー制限(PF)後のグルコースおよびインスリンレベル。PF(ペアフィード)群は、CT−1で処置したマウスと同じ日常摂取したマウスである。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりのn=6匹の動物。
【図11】カルジオトロフィン1は、腸のグルコース輸送を抑制する(生体外処置)。結果は、6種のマウスにおいて12回測定での平均±SEで表されている。**p<0.01。
【図12】カルジオトロフィン1は、CNTFよりも腸のグルコース輸送の抑制効果が大きい(生体外処置)。結果は、6種のマウスにおける24〜35回の測定での平均±SEで表されている。***p<0.001。
【図13】カルジオトロフィン1は、腸のグルコース輸送を抑制する(生体内急性処置)。結果は、30回測定での平均±SEで表されている。1実験群当たりのn=5匹のマウス。**p<0.01。
【図14】カルジオトロフィン1は、腸のグルコース輸送を抑制する(生体内長期処置)。結果は、30回測定での平均±SEで表されている。1実験群当たりのn=5匹のマウス。***p<0.01。
【図15】カルジオトロフィン1は、腸のグルコース輸送を抑制する(Caco−2細胞における研究)。結果は、1群当たり42〜44回測定での平均±SEで表されている。
【図16】カルジオトロフィン1は、脂肪細胞(CNTFではない)におけるレプチン放出を抑制する(脂肪細胞の一次培養における生体外実験)。結果は、6つの独立した実験について、平均±SEで表されている。**p<0.01;***p<0.001対対照;bp<0.01;cp<0.001対インスリン。
【図17】油脂分解に対するCT−1とCNTFの効果の差。24時間中のインスリンの有無におけるCT−1またはCNTFにより産生される一次ラット脂肪細胞におけるグリセロール放出(油脂分解の測定)。n=4−8;*P<0.05対対照細胞(100%);#P<0.05対インスリン処置細胞
【図18】典型的に脂肪細胞へ分化した3T3−L1脂肪細胞における褐色脂肪組織からの遺伝子導入に対するCT−1とCNTFの効果の差。細胞を、24時間中CT−1またはCNTF(20ng/ml)で処理した(n=5;*P<0.05対対照細胞)。遺伝子発現を、定量的PCRにより測定した。
【図19】rCT−1による6日間の長期処置後のIL−6の血清レベル。
【図20】血清、CT−1で処置またはCT−1で処置された動物と同じ食事で処置したマウス(C57BL/6、月齢4カ月)の3群における組織学的肝スライス(H&E100X)を表すイメージ。いずれの場合も炎症性浸潤は観察されなかった。
【図21】rCT−1は、高脂肪摂取後の血清およびトリグリセリド(TG)における遊離脂肪酸(FFA)の濃度の減少を生じる。
【図22】脂質内注射後の血清FFAの除去におけるrCT−1の効果。
【図23】骨格筋における単離ミトコンドリアでのベータ酸化に対する、rCT−1の急性投与の効果。データは、平均±SEで表されている(n=***、*P<0.05)。
【図24】定量的PCRにより測定される脂肪酸の酸化に関与する遺伝子の発現レベルに対するrCT−1の効果。
【図25】L6E9細胞(筋管へ分化した筋芽細胞)におけるインスリンによるグルコース(2−デオキシグルコース)摂取に対するrCT−1の効果の増加。CT−1での急性(1時間)および長期(24時間)の処置では、インスリンにより誘起されたグルコース摂取が顕著に増加する。*P<0.05対対照細胞;#P<0.05対インスリン処置細胞。
【図26】L6E9細胞(筋管へ分化した筋芽細胞)におけるインスリンシグナル伝達に対するrCT−1の効果の増加。(A)rCT−1での急性処置(15分間)および(B)rCT−1での長期処置(10時間および24時間)は、インスリンにより誘起されるAKTリン酸化を高める。
【図27】筋肉における「生体内」インスリンシグナル伝達に対するrCT−1(急性処置)の効果の増加。月齢4カ月のC57BL/6マウスに、洞静脈にインスリン注射する30分前にrCT−1(10μg/マウス)を注射した。5分後、腓腹筋を取り出し、均一化した。CT−1は筋肉においてインスリンにより誘起されるAKTリン酸化を高めることが判明した。デンシトメリー分析(n=5;*P<0.05)。
【図28】筋肉における「生体内」インスリンシグナル伝達に対するrCT−1(長期処置)の効果の増加。月齢4カ月のC57BL/6マウスに、6日中rCT−1(0、2mg/kg/日)を注射した。前の群と同じ日常摂取し、6日中生理食塩水血清を注射したマウス(ペアフィード群)を、対照として使用した。絶食16時間後、インスリンを動物の洞静脈に注射し、5分後、腓腹筋を取り出し、均一化した。CT−1は筋肉においてインスリンにより誘起されるAKTリン酸化を高めることが判明した。デンシトメリー分析(n=5;*P<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
CT−1の医学的および美容的用途
本発明者らは、驚くべきことに、CT−1は普通食のマウスおよび高脂肪食のマウスで体重減少を生じさせることを見出した。この効果は、少なくとも一部分は、CT−1の食欲減退効果(図2)、並びに高脂肪食後の血漿脂質の増加を下げる(図20および21)、高糖食後の血糖を減少させる(図5〜6)、筋肉によるグルコース消費の増加を生じさせる(図8)、および腸により補足されるグルコースを減らす(図11〜14)というCT−1の能力によるものである。さらに、本発明者らは、CT−1が脂肪細胞における基礎分泌およびインスリン刺激レプチン分泌を抑制すること、さらにはグリセロールの放出およびインスリンの抗脂肪分解活性の抑制を誘起できることを明らかにした(図16および17)。しかしながら、これらの効果は、CNTFを使用するときには観察されない。特定の理論にこだわるものではないが、前記効果がこの分子の筋肉に対する作用(低血糖を生じるグルコース捕捉の刺激)に加わり、脂肪細胞がトリグリセリドとなるのに利用できるグルコースの減少を生じるので、この効果の差異はCT−1の使用の利点となると思われる。
【0015】
第一の態様によれば、本発明は、代謝障害の治療のためのカルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物に関する。さらに、本発明は、代謝障害治療用薬物の調製のための、カルジオトロフィン1活性を誘起する化合物の使用、さらにはCT−1活性を誘起する化合物を被験者に投与することを含んでなる代謝障害の治療方法に関する。
【0016】
本明細書において使用される用語「カルジオトロフィン1活性を誘起する化合物」は、投与により、既に存在しているCT−1の特異的活性を増加させるか、あるいはカルジオトロフィンと同じ機能を実質的に有するCT−1または類似体の合成の増加によるかを問わず、カルジオトロフィン1活性(CT−1)の増加を生じる化合物である。したがって、好ましい態様によれば、CT−1活性を誘起する化学物質は、CT−1自体である。「CT−1」は、ヒトカルジオトロフィンのアイソフォーム1に対応する、アクセス番号CTF1_HUMANまたはQ16619(バージョン62、2008年12月16日)若しくはヒトカルジオトロフィンのアイソフォーム2に対応するアクセス番号Q5U5Y7(バージョン1、2009年1月20日)によるUniProtKBデータベースに記載の配列により定義されているタンパク質、さらには他の種における相同分子種、例えば、マウス(アクセス番号NP_031821またはQ60753(バージョン50、2008年12月16日)およびNP_942155またはP83714(バージョン42、2008年12月16日)のUniProtKBデータベースに定義されている配列)、ラット(UniProtKBデータベースで定義されている配列(アクセス番号NP_058825またはQ63086(バージョン50、2008年11月4日)およびNP_001129272またはQ6R2R3(バージョン30、2009年1月20日)並びにチンパンジー(アクセス番号NP_001009112またはQ6R2R2(バージョン30、2008年11月4日)のUniProtKBデータベースに定義されている配列)により定義されているタンパク質である。
【0017】
別の態様によれば、CT−1活性を誘起する化学物質は、CT−1の機能的に同等な変異体である。本明細書で使用されている表現「CT−1の機能的に同等の変異体」とは、CT−1と、生体外および生体内の両方で、CT−1と関連する本発明に記載の機能の一つ以上を共有し、アミノ酸配列において最少の同一性を有する分子である。したがって、本発明に使用するのに好適なCT−1の変異体は、一つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失によって上記配列から誘導されたものであり、天然対立遺伝子、代替処理から生じる変異体および自然に現れる分泌および切断型を含む。CT−1の変異体は、好ましくはCT−1と、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示す。同一性度は、当業者に周知の方法を用いて求める。2つのアミノ酸配列間の同一性は、好ましくはBLASTPアルゴリズム[BLASTManual、Altschul、S.等、NCBI NLM NIH Bethesda、Md. 20894、Altschul、S.等、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)]、好ましくはデフォルトパラメータを用いて求める。一方、想定されるCT−1の変異体は、CT−1の機能、例えば、以下の機能(これらには限定されない)、の少なくとも一つを示す:
−普通食を与えられたとき、および高脂肪食で肥満を誘起したときの両方で、マウスにおいて体重減少を生じさせる能力。体重の減少を生じる化合物の能力を測定する方法は、当該技術分野においてにおいて十分に記載されており、本発明の実施例1に記載の方法を含む。高脂肪食が与えられたマウスにおける体重減少を測定する場合において、例えば、脂肪の形態でのキロカロリーの10%であるD12450BまたはLFDと称される食事、脂肪の形態でのキロカロリーの45%であるD12451またはHFDと称される食事または脂肪の形態でのキロカロリー60%であるD12492またはVHFDと称される食事などの当該技術分野において知られている高脂肪食を使用することができる。
−本発明の実施例1に記載の方法またはWO2007093363に記載の方法を用いて求めることができる食欲減退効果を誘起する能力。
−VO2値とVCO2値との比として定義される呼吸率を減少させる能力。このパラメータは、当該技術分野において知られている方法を用いて求めることができる。
−高脂肪食後の脂質血症の増加を防止する能力(トリグリセリドと遊離脂肪酸の両方に関して)。標準的な方法を使用して、好ましくは市販のキットにより、血漿中の脂肪酸およびトリグリセリドの濃度を測定する。
−直接低血糖能、または高糖食後若しくは膵臓破壊後の低血糖能。これは、市販のグルコース検出キットを使用することにより測定できる。膵臓破壊は、本発明の実施例3に記載のストレプトゾトシンによるか、または炎症誘発性サイトカイン(Choi等、Transplant Immunol.、2004、13:43−53に記載のIL−1b、TNF−aおよびIFN−γにより形成されるカクテル)を使用することにより生じさせることができる。
−筋肉により補足されるグルコースの増加を生じさせる能力であって、この活性は、グルコースでマークした類似体を吸収する食筋の能力に基づく本願の実施例3に記載の方法を用いるか、またはUeyama等(Biol.Signals Recept 2000;9:267−274)により記載されているような非同位法を用いて測定される。
−脂肪細胞の一次培養、および脂肪細胞における分化を促進するように処理された線維芽細胞株の両方を使用できる、グルコース補足、および脂肪細胞によるレプチンの放出についてのインスリンの効果を抑制する能力。脂肪細胞によるグルコースの放出は、市販のグルコース検出キットを使用することによりおこなうことができる。レプチンの測定は、市販のキットを用いた免疫測定(ELISA、ラジオイムノアッセイ等)によりおこなうことができる。
【0018】
別の態様によれば、CT−1活性を誘起できる化学物質は、CT−1をコードするポリヌクレオチドまたは機能的に同等の変異体である。
【0019】
本明細書において使用されている用語「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドにより形成されるいずれかの長さの高分子型ヌクレオチドに関する。この用語は、一本鎖および二本鎖ポリヌクレオチドの両方を含むだけでなく、改変ポリヌクレオチド(メチル化ポリヌクレオチド、保護されたポリヌクレオチド等)を含む。
【0020】
CT−1活性を誘起することのできる化学物質として使用するのに好適なポリヌクレオチドには、その配列がヒトカルジオトロフィンの転写物の変異体1に対応するGenEMBLデータベース(アクセス番号BC064416、バージョン9、2008年10月15日)に記載のものに対応するポリヌクレオチド、ヒトカルジオトロフィンの転写物の変異体1に対応するアクセス番号BC036787(バージョン9、2009年8月12日)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(rat)のカルジオトロフィン1をコードするポリヌクレオチドに対応するGenEMBLデータベース(アクセス番号D78591、バージョン4、2009年1月12日)に記載の配列、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(rat)のカルジオトロフィン2をコードするポリヌクレオチドに対応するGenEMBLデータベース(アクセス番号AY518205、バージョン3、2009年1月12日)に記載の配列、ハツカネズミMus musculus(mouse)のカルジオトロフィン1をコードするポリヌクレオチドに対応するGenEMBLデータベース(アクセス番号U18366、バージョン4、2009年1月12日)に記載の配列、ハツカネズミMus musculus (mouse)のカルジオトロフィン2をコードするポリヌクレオチドに対応するGenEMBLデータベース(アクセス番号AB125661、バージョン2、2009年1月12日)に記載の配列などがあるが、これらには限定されない。
【0021】
あるいは、CT−1活性を誘起することができる化学物質には、それらの特異的配列により上記で定義されたポリヌクレオチドの機能的に同等の変異体が含まれる。「機能的に同等の変異体」は、本発明に関連して、上記で定義されたCT−1活性を有するポリペプチドをコードすることができ、上記した配列に対する1つまたはいくつかのヌクレオチドの挿入、欠失または置換により上記のポリヌクレオチドから得られる全てのポリヌクレオチドである。好ましくは、本発明の変異体ポリヌクレオチドは、配列により非常に制限された条件で上記したポリヌクレオチドとハイブリダイズできるポリヌクレオチドである。非常に制限されたハイブリダイゼーションの典型的な条件には、6XSSC(1XSSC:0.15MNaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム)および40%ホルムアミド中42℃で141時間のインキュベーション後、0.5XSSC、0.1%SDSを用いて60℃で1あるいは数サイクルの洗浄が含まれる。あるいは、非常に制限された条件には、6XSSC中概略50〜55℃の温度でのハイブリダイゼーションと、最後に1〜3XSSC中68℃の温度での洗浄を含んでなる。中程度に制限された条件は、0.2または0.3M NaCl中概略50〜65℃の温度でハイブリダイゼーション後、0.2XSSC、0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中概略50〜55℃で洗浄を含んでなる。
【0022】
好ましくは、CT−1活性を誘起することのできる化学物質がポリヌクレオチドであるとき、これは、操作的に発現の調節領域に関連付けられる。本発明に使用される調節配列は、核プロモーター配列またはエンハンサー配列および/または他の調節配列(非相同核酸配列の発現を増加する)であることができる。プロモーターは、構成的でも誘発性でもよい。非相同核酸配列の一定の発現が望まれる場合には、構成的プロモーターが使用される。周知の構成的プロモーターとしては、例えば、サイトメガロ・ウイルス(CMV)前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーターなどが挙げられる。構成的プロモーターの数多くの他の例は、当該技術分野において周知であり、本発明の実施に使用できる。非相同核酸配列の制御された発現が望まれる場合には、誘発性プロモーターを使用する必要がある。非誘発状態では、誘発性プロモーターは、「サイレント」である。「サイレント」は、誘導剤の不存在下で、非相同核酸配列の発現がほとんどまたは全く検出されないが、誘導剤の存在下では、非相同核酸配列の発現が生じる。しばしば、誘導剤濃度を変えることにより発現レベルを制御することができる。発現を制御すること、例えば、誘発性プロモーターをより強くまたはより弱く刺激するように誘導剤の濃度を変えることにより、非相同核酸配列の転写物の濃度に影響を及ぼすことができる。非相同核酸配列が遺伝子をコードする場合には、合成されたタンパク質の量を制御することができる。このように、治療薬の濃度を変化させることができる。周知の誘発性プロモーターとしては、以下のものがある:エストロゲン若しくはアンドロゲンプロモーター、メタロチオネインプロモーターまたはエクジソンに応答するプロモーター。数多くの他の例が、当該技術分野において周知であり、本発明を実施するのに使用できる。構成的および誘発性プロモーター(通常非常に多種多様な細胞または組織で機能する)の他に、特異的組織プロモーターを使用して、細胞または組織において特異的核酸の非相同配列の発現をさせることができる。特異的組織プロモーターの周知な例としては、以下の異なる特異的筋肉プロモーターなどが挙げられる:骨格α−アクチンプロモーター、心臓アクチンプロモーター、骨格トロポニンCプロモーター、心臓トロポニンCプロモーター(および遅収縮)並びにクレアチンキナーゼプロモーター/エンハンサー。当該技術分野において周知であり、本発明を実施するのに使用できる特異的筋肉プロモーターがある(特異的筋肉プロモーターについては、Miller等、(1993)Bioessays15:191−196参照)。
【0023】
別の態様によれば、CT−1活性を誘起することのできる化学物質は、上記で定義したポリヌクレオチドを含んでなるベクター、すなわち、CT−1またはその機能的に同等の変異体をコードするベクターである。前記ポリヌクレオチドの挿入に好適なベクターは、原核生物における発現ベクター、例えば、pUC18、pUC19、pBluescriptおよびそれらの誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCRl、RP4、ファージ、「シャトル」ベクター、例えば、pSA3およびpAT28、酵母発現ベクター、例えば、2ミクロンプラスミド型のベクター、インテグレーションプラスミド、YEPベクター、動源体プラスミド等、昆虫細胞における発現ベクター、例えば、pAC系ベクターおよびpVL系ベクター、植物における発現ベクター、例えば、pIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pORE系のベクター、並びにウイルスベクター(アデノウイルス、アデノウイルス関連ウイルス、さらにはレトロウイルスおよび特にレンチウイルス)に基づく真核生物細胞における発現ベクター、さらには非ウイルスベクター、例えば、pSilencer4.1−CMV(Ambion)、pcDNA3、pcDNA3.1/hygpHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAXl、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV−10、pBPV−1、pML2dおよびpTDT1由来のベクターである。
【0024】
別の態様によれば、CT−1活性の増加を生じさせることができる化学物質は、カルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体を培地に分泌することができる細胞である。カルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体の発現に好適な細胞には、心筋細胞、脂肪細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(BおよびT細胞)、肥満細胞、好酸球、血管内膜の細胞、種々の器官、好ましくはランゲルハンス島から単離した細胞から単離した細胞の一次培養液、肝細胞、単核細胞を含む白血球、間葉、臍帯若しくは成人白血球(皮膚、肺、腎臓および肝臓由来)、破骨細胞、軟骨細胞および他の結合組織細胞などがあげられるが、これらには限定されない。樹立細胞株、例えば、ジャーカットt細胞、NIH−3T3、CHO、Cos、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3細胞、C2C12筋芽細胞およびW138細胞も、好適である。
【0025】
当業者は、カルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体を培地に分泌することができる細胞は、微小粒子またはマイクロカプセルを形成することで、細胞は患者に使用される前、より大きな有用寿命を有するものとなることを理解する。本発明の目的である微小粒子を形成するのに好適な物質には、細胞支持体として作用する治療薬の連続分泌を可能にする生体適合高分子物質などがある。したがって、前記生体適合高分子物質は、例えば、熱可塑性ポリマーまたはヒドロゲルポリマーであることができる。熱可塑性ポリマーには、アクリル酸、アクリルアミド、2−アミノメチルメタクリレート、ポリ(テトラフルオロエチレン−共ヘキサフルオロプロピレン)、メタクリル−(7−クマロキシ)エチルエステル酸、N−イソプロピルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアミドアミン、ポリ(アミノ)−p−キシリレン、ポリ(クロロエチルビニルエーテル)、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリ(カーボネート尿素)ウレタン、ポリ(カーボネート)ウレタン、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体およびアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(乳酸−グリコール酸)、ポリ(L乳酸)、ポリ(ガンマ−メチル、L−グルタメート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリピロール、ポリスチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、超高分子量ポリエチレン、6−(p−ビニルベンズアミド)−ヘキサン酸およびN−p−ビニルベンジル−D−マルトンアミド並びに前記ポリマーの複数を含む共重合体(コポリマー)などがある。ヒドロゲル型ポリマーには、アルギネート、アガロース、コラーゲン、澱粉、ヒアルロン酸、ウシ血清アルブミン、セルロースおよびその誘導体、ペクチン、コンドロイチンスルフェート、フィブリンおよびフィブロイン型の天然物質、さらには合成ヒドロゲル、例えばセファロースおよびセファデックスなどがある。
【0026】
当該技術分野においては、前記ポリマーの一部は不安定であり、比較的多孔性であり、抗体が内部にアクセスする可能性があり細胞を損傷することに加えて、ゲル性を失う傾向がある。このため、任意に、本発明の微小粒子は、粒子を安定にする半透過性膜により包囲して、抗体不透過バリアを形成することもできる。半透過性膜は、細胞生存能力に必要な全ての溶質が入ることができ、微小粒子に含まれる細胞により産生される治療用タンパク質が出ることができるが、抗体が実質的に透過することができず、その結果、細胞が微小粒子を収容している生体により生じる免疫応答から保護される。半透過性膜を形成するのに好適な物質は、生体液に不溶の物質、好ましくはポリアミノ酸、例えば、ポリ−L−リジン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−L−アルギニン、ポリ−L−アスパラギン、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリベンジル−L−アスパーテート、ポリ−S−ベンジル−L−システイン、ポリ−ガンマ−ベンジル−L−グルタメート、ポリ−S−CBZ−L−システイン、ポリ−ε−CBZ−D−リジン、ポリ−δ−CBZ−DL−オルニチン、ポリ−O−CBZ−L−セリン、ポリ−O−CBZ−D−チロシン、ポリ(γ−エチル−L−グルタメート)、ポリ−D−グルタミン酸、ポリグリシン、ポリ−γ−N−ヘキシルL−グルタメート、ポリ−L−ヒスチジン、ポリ(α,β−[N−(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパートアミド])、ポリ−L−ヒドロキシプロリン、ポリ(α、β−[N−(3−ヒドロキシプロピル)−DL−アスパートアミド])、ポリ−L−イソロイシン、ポリ−L−ロイシン、ポリ−D−リジン、ポリ−L−フェニルアラニン、ポリ−L−プロリン、ポリ−L−セリン、ポリ−L−トレオニン、ポリ−DL−トリプトファン、ポリ−D−チロシンまたはそれらの組み合わせである。
【0027】
本明細書において使用されている用語「代謝障害」は、代謝における誤りおよびアンバランスを生じるだけでなく、準最適な形態で起きる代謝過程を生じる全ての種類の障害である。また、この表現は、それ自体の疾患は代謝障害によっては生じなかったかもしれないが、代謝調節により治療できる障害に関する。好ましい態様によれば、代謝障害は、肥満、高血糖、インスリン抵抗性、2型糖尿病および異脂肪血症からなる群から選択されるものである。
【0028】
本発明において使用される用語「肥満」は、ヒトの体重(kg)と身長(m)の二乗との間の比からなる、肥満度指数(BMI)に基づいてWHOにより示された肥満の定義に関する。この基準によれば、BMI18.5kg/m2未満は体重が不足または痩せ気味とみなし、BMI18.5〜24.9kg/m2は正常体重としてみなし、BMI25.0〜29.9kg/m2は過体重グレード1とみなし、BMI30.0〜39.0kg/m2は過体重グレード2とみなし、BMI40.0kg/m2以上は病的肥満とみなす。あるいは、個人の肥満度を定義するのには別の方法、例えば、助骨の下端と骨盤の上端との間の中点で測定したウエストの直径(単位:cm)、皮膚のひだの厚さ、および脂肪のない体は脂肪が多い体よりも電気をよく通すという原理に基づく生体インピーダンスがある。
【0029】
本発明において使用される用語「高血糖」は、空腹時ベースラインレベルに対して異常に高い血糖値となる状態に関する。特に、空腹時の血糖値が常に126mg/dL超であるとき、食後の血糖値が140mg/dL超であるとき、および/または体重の1キログラム当たり1.75グラムのグルコースを投与してから2時間後の静脈血漿の血糖値が200mg/dL超であるときに高血糖が起きる。
【0030】
本発明において使用される用語「インスリン抵抗性」は、細胞がインスリンに対して正しく応答しない障害に関する。その結果、体は、高血糖値に応答してより多くのインスリンを生じる。インスリン抵抗性を患う患者は、高血糖値および高循環インスリンレベルを示すことがしばしばある。インスリン抵抗性は、しばしば肥満、高血圧および脂質異常症と関連づけられている。さらに、インスリン抵抗性は、2型糖尿病を患う患者にしばしば現れる。
【0031】
本発明において使用される用語「2型糖尿病」は、大血管、小血管および神経に影響する慢性合併症を生じる、血糖値の異常な増加により特徴づけられる疾患に関する。この疾患における基礎障害は、インスリン抵抗性と称される、インスリン作用の困難(このホルモンに対する組織感受性の損失の形態)、および膵臓における産生に関与する細胞によるインスリンの不適切な分泌である。グルコース濃度の増加の他に、誤ったインスリン作用がしばしばコレステロールおよび/またはトリグレセリドレベルの増加を生じる。
【0032】
本発明において使用され用語「異脂肪血症」は、脂質代謝における障害でその結果脂質濃度(コレステロール、トリグリセリドなど)および血中リポタンパク質(高密度リポタンパク質)における障害を生じることにより特徴付けられる病的状態に関する。本発明の方法で治療することができる異脂肪血症として、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、I型、IIa型、IIb型、III型、IV型、V型高リポタンパク血症、高カイロミクロン血症、複合脂質異常症などがある。
【0033】
本発明による組成物は、本発明の方法が美容的目的を有する場合には、病的肥満の治療と過体重グレード1またはグレード2の治療の両方に有用である。したがって、別の態様によれば、本発明は、カルジオトロフィン1活性を誘起する化合を患者に投与することを含んでなる、肥満治療のための美容的方法に関する。この態様によれば、脂肪の面での過剰体重であり、本発明の美容的方法により処置されることができる患者は、視覚的または25kg/m2以上のBMI、好ましくは25〜30のBMIにより確認できる。これらの個人は肥満であるとみなされ、美容的理由で体重コントロールを必要とする。
【0034】
カルジオトロフィン1活性を誘起することができる化学物質として本発明による美容的方法の種々の態様は、肥満および他の代謝障害の治療方法に関連して上記されている。
【0035】
本発明による化合物は、急性および長期治療の両方で投与できる。本発明において使用される表現「長期投与」は、化合物を長期間にわたって連続的に患者に投与して前記期間の間、治療形態を維持する投与方法に関する。長期投与形態では、化合物を毎日複数回数、毎日2回、毎日3回程度あるいはその付近の回数程度投与される。長期投与は、1日を通して周期的に種々の静脈注射によりおこなうことができる。あるいは、長期投与は、ボーラスの形態または毎日、2日毎、3〜15日毎、10日以上毎に実施できる連続注入による投与を含む。典型的には長期投与は、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間、少なくとも144時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、少なくとも12週間、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも9カ月、少なくとも1年、少なくとも2年以上維持される。
【0036】
本明細書において使用されている表現「急性投与」は、患者に、化合物の単回投与または数回投与を、時間を減少して、例えば、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間若しくは24時間または2日間、3日間または4日間実施する投与方法に関する。
【0037】
当業者には、活性化合物の治療に有効な量および/または製剤を、投与の種類に応じて実施することが理解されるであろう。ここで使用される「治療に有効な量」は、代謝障害と関連する症状を完全または部分的に軽減するか、症状の進行または悪化を防止するか、疾患を患うリスクがある被験者において疾患の発症を防止するのを可能にする化合物の量である。
【0038】
本発明による化合物の長期投与が望ましい場合には、例えば、US5672659、US5595760、US5821221、US5916883およびWO9938536に開示されているような除放性組成物で投与することができる。このタイプの投与とは関係なく、急性投与が望ましい場合には即時放出での治療が好ましい。投与の種類とは無関係に、用量および間隔は、治療効果を維持するのに十分な化合物の血漿レベルとするために個々に調節できる。当業者は、過度の実験をおこなうことなく、治療に有効な局所用量を最適化することができる。
【0039】
本発明による化合物の投与は、本発明の別の態様を構成する医薬組成物における製剤化を必要とする。本発明の方法を実施するのに有用な医薬組成物は、治療に有効な量の活性剤と薬学的に許容しうる担体を含む。用語「薬学的に許容しうる」は、動物および特にヒトにおける使用のために、連邦政府若しくは州の監督官庁により、または米国薬局方若しくは他の一般的に認識されている薬局方を含めて承認されたことを意味する。用語「担体」は、治療化合物を投与する希釈剤、共アジュバント、賦形剤またはビヒクルに関する。前記医薬担体は、滅菌液、例えば、水および油、石油、動物または植物起源または合成油、例えば、ラッカセイ油、大豆油、鉱油、ごま油などを含む。好適な医薬賦形剤には、澱粉、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、ライス、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、スキムミルク粉、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。所望ならば、組成物は、少量の湿潤剤若しくは乳化剤またはpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、連続放出製剤などの形態をとってもよい。組成物は、結合剤および従来の担体、例えば、トリグリセリドを用いて坐剤として製剤化してもよい。経口製剤は、標準的な担体、例えば、医薬型マンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムを含むことができる。好適な医薬担体は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0040】
組成物は、ヒトに対して静脈、皮下または筋肉内投与するための医薬組成物として通常の手順に準じて製剤化できる。必要に応じて、組成物は、可溶化剤および局部麻酔、例えば、注射部位での痛みを軽減するためのリドカインを含んでいてもよい。組成物を浸潤により投与しようとするとき、薬学的品質の水または食塩水を含む浸潤ボトルで調剤することができる。組成物を注射投与するとき、水バイアルを注射液または無菌食塩水用として用意し、投与前に成分を混合できる。
【0041】
代謝障害の治療に有効である化合物を誘起するCT−1活性の量は、本明細書に記載の標準的な臨床法により求めることができる。さらに、生体外試験は、最適な用量範囲を確認しやすくするのに必要に応じて使用することもできる。製剤に使用するための正確な用量は、投与経路および重症度に依存し、医師の判断および各患者の状況に応じて決定する必要がある。しかしながら、静脈内投与に好適な用量範囲は、一般的に体重1キログラム当たり活性化合物50〜5000マイクログラムである。鼻内投与に好適な用量範囲は、一般的に概略0.01pg/kg(体重)〜1mg/kg(体重)である。有効用量は、生体外アッセイシステムまたは動物におけるモデルから得られた用量に対する一対の応答曲線から推定することができる。
【0042】
全身投与について、治療に有効な用量は、生体外アッセイから最初に推定できる。例えば、用量は、動物モデルにおいて、細胞培養において求めたIC50を含む血中濃度範囲を得ることにより公式化できる。前記情報を使用して、ヒトに有用な用量を正確に求めることができる。また、初期用量も、当該技術分野において周知の手法を用いて、生体内データ、例えば、動物モデルから推定することもできる。当業者は動物におけるデータに基づき、ヒトに対する投与を容易に最適化できる。
【0043】
同様に、本発明は、CT−1活性を誘起することができる化学物質と、食欲減退効果を有するか、または肥満防止効果を有する、生体における栄養の入手を減少することができる1つまたは数種の化合物とを併用することを想定している。したがって、本発明による代謝障害治療法は、CT−1活性を誘起する能力を有する化合物を、アミリン、アミリンアゴニスト、サケカルシトニン、コレシストキニン若しくはそのアゴニスト、レプチン(OBタンパク質)、エクセンジン若しくはエクセンジン類似体、GLP1若しくはそのアゴニスト、ポリペプチド(PYY)若しくはそのアゴニスト、神経伝達物質またはニューロンイオンチャンネルに影響する化学物質、例えば、抗抑鬱剤、ノルアドレナリン補足抑制剤、セロトニン2c受容体アゴニスト、一部のドーパミン作動アンタゴニスト、キャナビノイド1受容体アゴニスト類似体、レプチンを含むCNSにおけるレプチン/インスリンの経路を調節する化学物質、レプチン輸送のプロモーター若しくはレプチン受容体のプロモーター、CNTF、神経ペプチドY、アグチ関連ペプチドのアンタゴニスト、プロオピオメラノコルチン、コカイン、アンフェタミン、アルファメラニン細胞刺激ホルモン、メラノコルチン−4受容体アゴニスト、タンパク質チロシンホスフェート1ベータ阻害剤としてインスリン活性/代謝に影響する化学物質、ペルオキシソーム7増殖剤により活性化される受容体のアンタゴニスト、ブロモクリプチン、ソマトスタチンアゴニスト、安静時の新陳代謝率を増加する化学物質(アンカップリングタンパク質のアゴニスト、甲状腺ホルモン受容体のアゴニスト)およびメラニンなどの異なる種類の他の化学物質、フィトステロールの類似体、機能油、脂肪酸合成阻害剤、カルボキシペプチダーゼ、腸リパーゼ阻害薬などからなる群から選択される1つまたは数種の化合物と同時、順次または別個に投与することを想定している。
【0044】
本発明による組成物
本発明者らは、驚くべきことに、CT−1とインスリンの同時投与は、各成分を別個に投与することにより観察されるよりも高い、1型糖尿病のモデルおよび筋肉によるグルコース補足に対する低血糖効果を有することを見出した。したがって、図7は、どのようにCT−1とインスリンとの組み合わせで、ストレプトゾトシンでのベータ膵臓細胞の実験的破壊を受けたマウスの処置が、成分の各々を別個に投与した後に観察されるよりも高い低血糖効果を生じるかを示す。さらに、図8は、どのようにCT−1とインスリンの組み合わせが、化合物を別個に投与したときに観察されるよりも高い筋肉によるグルコース補足の増加を生じるかを示す。
【0045】
したがって、別の態様によれば、本発明は、カルジオトロフィン活性を誘起する化合物と抗糖尿病化合物を一緒または別個に含んでなる組成物(以下、本発明の組成物)に関する。
【0046】
「カルジオトロフィン活性を誘起する化合物」との表現は、代謝障害の治療法に関連して上記した通りであり、本発明の第一の方法におけるように、化合物が:
(i)カルジオトロフィン1(CT−1)、
(ii)CT−1の機能的に同等の変異体、
(iii)CT−1をコードするポリヌクレオチドまたはその機能的に同等の変異体、
(iv)(iii)のポリヌクレオチドを含んでなるベクター、および
(v)培地にカルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体を分泌することができる細胞からなる群から選択されるものである。ここで、種々の化合物は上記で詳細に述べたとおりである。
【0047】
本発明に用いられる表現「抗糖尿病化合物」は、その作用機構とは無関係に、高血糖を含む糖尿病の症状を少なくとも部分的に補償することができる化学物質である。好ましい態様によれば、抗糖尿病化合物は、インスリン活性を誘起する化合物、またはインスリンの低血糖活性を誘起する化合物、またはインスリン活性に対する感作物質である。
【0048】
インスリン活性を誘起することができる抗糖尿病化合物は、
(i)インスリン、
(ii)インスリンの機能的に同等の変異体、
(iii)インスリンをコードするポリヌクレオチドまたはその機能的に同等の変異体
(iv)(iii)のポリヌクレオチドを含んでなるベクター、および
(v)培地にインスリンまたはその機能的に同等の変異体を分泌することができる細胞
などがあるが、これらには限定されない。
【0049】
本発明において用いられる用語「インスリン」は、いずれかの種(霊長類、齧歯動物類またはウサギ)、好ましくはヒト由来のインスリンおよびより好ましくは天然配列(自然由来のインスリンと同じアミノ酸配列のポリペプチドを含んでなる)のインスリンに関する。自然配列の前記インスリンポリペプチドは、自然から単離できるか、または組み換えおよび/または合成培地により産生される。用語「天然配列インスリン」は、具体的には自然に生じる、切断または分泌形態および対立遺伝子変異体を網羅する。本発明の態様によれば、天然配列ヒトインスリンは、成熟天然配列インスリンまたは完全長型(ヒトプレプロインスリン(アクセス番号P01308、UniProtKBデーターベース、バージョン126、2009年1月20日)の配列のアミノ酸90〜110に対応するアルファまたはA鎖、およびアミノ酸25〜54(アクセス番号P01308、NCBIデーターベース、バージョン126、2009年1月20日)に対応するベータまたはB鎖)である。
【0050】
本発明において用いられる「インスリンの機能的に同等の変異体」は、インスリン配列に対する少なくとも1つのアミノ酸の除去、挿入または修正から生じ、且つ由来するインスリンと実質的に同じ性質を維持する全てのポリペプチドである。インスリン活性は、血清中の正常血糖クランピングまたは血清中のグリコシル化タンパク質の測定などの当業者に広く知られている方法により測定できる(Bunn等、Diabetes、1981、30:613−617)。
【0051】
インスリンの機能的に同等の変異体には、デス−ペンタペプチド(B26−B30)−PheB25−α−カルボキサミド]インスリン、AspB10インスリン(US4992417に開示されている)、LysB28−ProB29インスリンLysB28−ProB29およびその6量体変異体(US5474978およびUS5514646に開示されている)、インスリンおよびプロタミンの製剤(US5650486)、アシル化LysB28−ProB29インスリン(US5922675)、並びにUS5952297、US6034054およびUS6211144に開示されているものなどの安定化インスリンの組成物、インスリンの超活性類似体、単量体インスリン、肝臓特異的インスリン、インスリンリスプロ(Humalog(登録商標))、インスリンリスプロプロタミンで製剤化したインスリンリスプロ(Humalog(登録商標)50/50(商標)、Humalog(登録商標)75/25(商標)として市販されている)、NPHインスリンまたはインスリンイソファンヒト(Humulin(登録商標)で市販されている)、レギュラーインスリン、レギュラーインスリンと併用したNPHインスリン(US5547929)、インスリン亜鉛、インスリングラルギン、グルリシン(APidra)、インスリンアスパルト(Novomix)、インスリンデテミル(levemir)、生物相、LP−100、ノバラピッド、インスリン亜鉛懸濁液(遅および超遅)、GLP−I(1−36)アミド、GLP−I(73−7)(US5614492に開示されているインスリンオトロピン)、LY−315902(Lilly)、GLP−I(7−36)−NH2)、AL−401(自己免疫)、US4579730、US4849405、US4963526、US5642868、US5763396、US5824638、US5843866、US6153632、US6191105およびWO85/05029に開示されているものなどの組成物などがあるが、これらには限定されない。
【0052】
さらに、インスリンの機能的に同等の変異体には、(a)高脂肪食A鎖の残基1〜21と高脂肪食B鎖の残基1〜30との組み合わせ、または(b)前記配列に特異的に由来する別の断片のアミノ酸の配列とのアミノ酸配列同一度が少なくとも約80%であるポリペプチドなどがある。さらに、システイン残基A6〜Al1、A7〜B7およびA20〜B19間ジスルフィド結合により維持されるインスリンの二次構造は、活性に必要であると思われ、そのため、好ましくは機能的に同等の変異体はできるだけ前記二次構造を保存する。
【0053】
インスリンの機能的に同等の変異体には、例えば、インスリンのAおよびB鎖のN末端および/またはC末端で、または内部ドメインの1つ以上内で、1つ以上のアミノ酸残基が付加または欠失されたポリペプチドなどが含まれる。通常、インスリンのポリペプチド変異体は、アミノ酸配列と、高脂肪食のA鎖の残基1〜21と高脂肪食のB鎖の残基1〜30との組み合わせにより形成される配列または前記アミノ酸配列から特異的に由来の別の断片とのアミノ酸概略同一度は、少なくとも80%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である。ポリペプチド変異体の配列長さは、A鎖の少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34残基または35およびB鎖の少なくとも25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、27、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50残基である。
【0054】
インスリンをコードするポリヌクレオチドには、ヒトインスリン、その前駆体(プレプロインスリンおよびプロインスリン)をコードするポリヌクレオチドと、他の種のオルソログをコードするポリヌクレオチドなどがある。
【0055】
「インスリンの機能的に同等の変異体をコードするポリヌクレオチド」は、(a)上記で定義した活性インスリンのポリペプチドをコードし、(a)上記で定義した高脂肪食のA鎖の残基1〜21と上記で定義したヒトインスリンポリペプチドのB鎖の残基1〜30との組み合わせ、または(b)前記配列とアミノ酸配列同一度が少なくとも80%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を示す上記したアミノ酸配列に特異的に由来する別の断片をコードする核酸の1つをコードする核酸配列との核酸配列同一度が少なくとも約80%である核酸を示す。インスリンの変異体をコードするポリヌクレオチドは、少なくとも約45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、81、87、105ヌクレオチドのインスリンのA鎖をコードする核酸および/または少なくとも約75、78、81、84、87、90、93、96、99、102、105、108、111、114、117、120、123、126、129、132、135または150ヌクレオチドのインスリンのB鎖をコードする核酸を含む。
【0056】
ポリヌクレオチドは、単離された形態であるか、ベクターの一部分である。インスリンまたはその機能的に同等の変異体をコードするポリヌクレオチドの発現に好適なベクターは、CT−1により構成される組成物との関係で上記したものと実質的に同じである。
【0057】
あるいは、本発明に関連して使用することができる抗糖尿病化合物は、インスリンの抗血糖活性を有する化合物またはインスリン活性に対する感作物質を含み、インスリンの分泌促進剤、例えば、スルホニル尿素(トルブタミド、クロルプロパミド、グリピシド、グリベンクラミド、グリカジド、グリペンチド、グリメピリド、グリベンクラミド、グリピジド、グリキドン、グリセンチド、グリメピリド等)およびメチグリニド(レパグリニド、ナテグリニド、ミチグリニド等)、肝臓グルコース産生の還元剤(ビグアニドおよび特にメトホルミンおよびブホルミン)、炭水化物減少を生じる化学物質、例えば、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース、ミグリトールまたはボグリボース)、グルコースの末梢使用を増加する化学物質、例えば、チアゾリジンジオン(ロシグリタゾン、ピオグリタゾン等)、GLP−若しくはGLP−1模倣剤(Byetta−Exanatide、Liraglutinide、CJC−1131(ConjuChem、Exanatide−LAR(アミリン)、BIM−51077、ZP−10、WO00/07617に記載されている化合物等))、エクゼンジン、セクレチン、DPP−IV阻害剤(シタグリプチン、サクサグリプチン、デナグリプチン、ビルダグリプチン、ALS−2−0426、ARI−2243、BI−A、BI−B、SYR−322、MP−513、DP−893、RO−0730699等)、SGLT−2阻害剤(ダパグリフロジンおよびセリグリフロジン、AVE2268、T−1095等)、並びにグルコース産生の増加を生じるペプチド(アミリンチド、プラムリンチド、エキセンディン)、GLP−1活性を有する化合物(グルカゴン様ペプチド1)、タンパク質チロシンホスファターゼ1Bの阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤、インスリンの分泌促進物質;脂肪酸酸化阻害剤、A2アンタゴニスト、c−junターミナルキナーゼ阻害剤、インスリン;インスリン模倣剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、VPAC2受容体アゴニスト、グルコキナーゼ阻害剤等)などがあるが、これらには限定されない。
【0058】
本発明による組成物は、低血糖効果および筋肉によるグルコース補足を増加する能力を前提として、代謝障害の治療に使用できる(実施例2)。この組成物は、別の化合物の製剤と、同時、別個または順次投与に使用できる。したがって、別の態様によれば、本発明は、組成物が同時、別個または順次投与される代謝障害の治療のための、本発明による組成物に関する。別の態様によれば、本発明は、組成物が同時、別個または順次投与される代謝障害の治療用薬物の調製のための、本発明による組成物の使用に関する。別の態様によれば、本発明は、本発明による組成物の同時、別個または順次投与を含んでなる、代謝障害の治療方法に関する。
【0059】
本発明による組成物の治療剤、特にCT−1活性誘導剤および抗糖尿病剤は、単一製剤(例えば、成分の各々の一定量を含んでなる錠剤またはカプセルとして)提供してもよく、また別個の製剤として提供して、後で組み合わせて同時、順次または別個投与してもよい。また、本発明による組成物は、成分を別個に製剤化するが、同じ容器にパッケージ化する、キットオブパート(kit−of−parts)としての製剤を含む。当業者は、本発明による組成物の第一および第二成分の剤形は同様でよく、換言すれば、同様に製剤化でき(錠剤または丸薬)、同じ経路で投与することができることを理解できるであろう。本発明の異なる成分を別個に製剤化する場合には、2つの成分はブリスターで提供できる。各ブリスターは、その日の間に消費しなければならない。もし薬物を1日に数回投与しなければならない場合には、各投与に対応する薬物をブリスターの異なる部分に配置することができ、好ましくは投与しなければならない日の時間をブリスターの各部分に記録する。あるいは、本発明による組成物の成分は、異なる成分が異なって投与されるように、異なって製剤化できる。したがって、第一成分は経口投与用錠剤またはカプセルとして製剤化され、第二成分は静脈投与用に製剤化されることができる。
【0060】
本発明による組成物は、静脈内、経口、鼻内、非経口、局所的、経皮、直腸などの当業者に公知の方法により投与されるが、これらには限定されない。
【0061】
本発明による組成物の一部分である成分間の比は、各特定の場合に使用されるCT−1活性誘導剤および抗糖尿病剤、さらには所望の適用に依存する。したがって、本発明によれば、2つの成分の量の間の比が50:1〜1:50、特に20:1〜1:20、1:10〜10:1または5:1〜1:5であることができる組成物を想定できる。
【0062】
本発明の組成物で治療できる代謝障害には、本発明の第一の態様(CT−1の治療および美容用途)に関連して上記したような肥満、インスリン抵抗性、高血糖、異脂肪血症および2型糖尿病などがあるが、これらには限定されない。別の態様によれば、本発明は、純粋に美容的な理由での抗肥満治療の候補患者が本発明の第一態様に記載されたようにして確認される(CT−1の治療および美容用途)、本発明の組成物を患者に投与することを含んでなる、肥満治療のための美容的方法に関する。
【0063】
本発明は、以下の実施例により説明するが、これらの実施例は単に説明の目的のみであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0064】
実施例1
体重に対するCT−1の効果
3カ月の高脂肪食(HFD、60%脂肪)の摂取により、肥満マウスを得た。rCT−1(0.2mg/kg/日)を連続6日間静脈内投与したところ、高脂肪食(HFD)のC57BL/6マウス(月齢:5カ月)の体重が減少した(図1)。この実験で使用される用量は、発熱反応を生じなかった(直腸温度を処置の全ての日で測定した)。
【0065】
(図1に記載したHFDを与え)上記した用量0.2mg/kg/日で6日間連続してrCT−1で処置した肥満マウスにおいて観察された体重の減少は、このサイトカインの食欲減退効果によるものである(図2)。図は、rCT−1で処置した群および生理学的血清(S)で静脈内処置した対応の対照群の処置の6日間に摂取したキロカロリーを示す。
【0066】
同様に、rCT−1(0.2mg/kg/日)を6日間連続して静脈内投与したところ、普通食(NCD)を与えた非肥満C57BL/6マウス(月齢:5カ月)において体重が減少した(図3)。この実験で使用した用量は、発熱反応を生じなかった(直腸温度を処置の全ての日で測定した)。
【0067】
上記用量で且つ上記で述べたrCT−1で処置した間に観察された体重の減少が食欲減退効果によるものなのか、または他の効果が関与しているのかを測定する目的で、月齢4カ月のC57BL/6マウス3群を用いて実験を行った。第一群(生理食塩水群)には、生理学的血清を静脈内投与(rCT−1の投与に使用したのと同じ容積)し;第二群(rCT−1群)には、上記した用量(0.2mg/kg/日)でrCT−1を静脈内投与し、第三群(Pair−fed群)には、rCT−1処置したマウスにより摂取されたのと同じ量の食物を毎日与えるとともに、血清を同じ実験期間の間注射した。図4から明らかなように、rCT−1で処置したマウスは、エネルギー摂取が両方の群で同一であるにもかかわらず、Pair−fed群よりも体重減少が大きかった。このことは、上記で観察された食欲減退効果の他に、rCT−1は体重減少に関与する他の代謝効果を有することを示している。
【0068】
実施例2
CT−1の低血糖効果
rCT−1(10μg)のC57BL/6マウス(月齢3カ月)への急性静脈内投与(1回投与)がベースライン血糖レベルを減少させるかどうか判定する目的で、rCT−1および生理食塩水血清で処置後1時間後に、血中グルコースレベルを測定した。図5Aから明らかなように、rCT−1は、血糖レベルを顕著に減少させた。CT−1または生理食塩水で処置した動物のインスリンレベルにおいて顕著な差が観測されないので、血糖が減少した機構は血中インスリンレベルの増加に起因するとすることはできない(図5Bに示すように)。結果は、平均±SEで表されている。1群当たりn=5匹の動物。*p<0.05。rCT−1での処置は、筋肉におけるAKTのリン酸化を誘起する。これは、このサイトカインの低血糖作用を説明するのに役立つ(図5Cは、代表的なウエスタンを示す)。
【0069】
rCT−1(10μg)を急性単回投与すると、高糖食後の血中グルコースの増加が防止される。rCT−1の食後の血糖に対する効果を検討するためのこの実験は、Fruebis等(Fruebis等、2001、Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、98:2005−2010)により公開されたものに準じて、胃への強制投与(体重の1%容積で)による高糖食を、マウス(C57BL/6、月齢3カ月)に投与することでおこなった。強制投与後、同じ容積の生理食塩水血清を静脈内投与した(生理食塩水)またはrCT−1(10μg)。血液はグラフに示した時間で採取し、血糖を測定したところ、rCT−1で処置した動物では血糖の増加は生じなかった(図6)。
【0070】
次に、rCT−1を単回急性投与でのマウス(C57BL/6、月齢3カ月)における血糖レベルの減少が、ストレプトゾトシンでの処置をおこなったベータ−膵臓細胞の破壊に続発する高血糖を減少させるかどうか判定した。したがって、ストレプトゾトシンを単回投与(200mg/kg)してから64時間後、ベースライン血糖を測定し、マウスの3群に対して種々の処置を実施した。第一群(生理食塩水群)を、生理食塩水血清で処置した。第二群(インスリン群)を、インスリン0.75U/kgで処置した。第三群(rCT−1群)を、rCT−110μgで処置した。第四群(インスリン群+rCT−1)を、インスリン0.75U/kgおよびrCT−110μgで処置した。種々の処置を実施してから、15分、30分、60分および120分後に血糖を測定した。図7から明らかなように、rCT−1は、投与後30分後の血糖を顕著に減少し、分析した全ての血液抽出点においてインスリンの効果を高めた。
【0071】
rCT−1での急性処置から生じる低血糖効果が筋肉によるグルコース捕捉の増加によるものかどうかを判定するために、18FDG(18FluoroDeoxyグルコース)の筋肉捕捉を、種々のマウス群におけるガンマカウンターにより測定した。この実験をおこなうために、マウス(C57BL/6、月齢3カ月)を、以下のように4群にわけた:生理食塩水群(生理食塩水血清で処置);インスリン群(インスリン0.75U/kgで処置)、rCT−1群(rCT−110μgで処置)およびインスリン群+rCT−1(インスリン0.75U/kg+rCT−110μgで処置)。種々の処置投与の15分後、18FDGを投与し、注射10分後、腓腹筋を取り出し、放出された放射活性を、ガンマカウンターにより定量化した。結果(図8)は、rCT−1は筋肉によるグルコース消費を増加および増進するであろう(しかし、インスリンで観察されるものほど著しくはない)ことを示している。
【0072】
次に、rCT−1での長期処置の低血糖および低インスリン血症効果を、3カ月間高脂肪食(HFD、60%脂肪)の摂取により誘起した肥満のC57BL/6マウス(月齢5カ月)で測定した。食事処置の終わりに、マウスを、6日間連続(長期処置)で、rCT−1(0.2mg/kg/日)を静脈内投与することで処置した。図9に示すように、血糖レベル(上パネル)とインスリン血症レベル(下パネル)はrCT−1での処置のため顕著に減少した。
【0073】
次に、rCT−1での長期処置の低血糖および低インスリン血症効果を、対応するPair−fed(PF)群と比較した。rCT−1群には、上記した用量(0.2mg/kg/日)で6日間、静脈内経路によりrCT−1を与えた。Pair−fed群には、rCT−1で処置したマウスにより摂取したのと同じ量の毎日の食物を与え、血清を同じ実験期間にそれらに注射した。図10に示すように、血糖のより大きな低下(上パネル)が、rCT−1で長期処置した動物において、同様のカロリー制限したものに対してみられた。このことは、低血糖効果は、rCT−1により誘起された食欲減退効果によるだけではなく、タンパク質自体の低血糖性によるものと思われる。
【0074】
次に、rCT−1(0〜100ng/ml)での生体外処置が、腸管リングにおける糖の輸送を阻害できるかどうかを判定した。したがって、グルコースの腸輸送を、37℃でのrCT−1の不存在下または存在下で15分間のインキュベーションに関して、反転空腸管リングによるα−メチルグルコシド(1mM)の捕捉を測定することにより判定した。α−メチルグルコシドは、SGLT1ナトリウム−糖コトランスキャリアによる腸細胞の頂端膜を横断するグルコースの類似物質である。このことは、輸送の変化は、前記トランスキャリアの活性の変化に起因するにちがいないことを意味する。図11は、観察される効果は用量依存ではないが、CT−1は、腸におけるグルコースの吸収を阻害することができることを示している。
【0075】
腸管リングにおけるα−メチルグルコシド(1mM)の捕捉に対するCT−1およびCNTFの作用を測定した。図11に示す実験方法に準じて測定したところ、グルコースの腸輸送に対するCT−1の阻害作用は、CNTF(試験した実験条件において顕著な効果が得られなかった)よりも大きいことが判明した。
【0076】
次に、グルコースの腸捕捉に対するCT−1の生体外効果が生体内で再現できるかどうかを判定した。これのために、rCT−1(10μg)を、静脈内に急性的にC57BL/6マウス(月齢2カ月)に投与した。CT−1の投与は、α−メチルグルグルコシド(1mM)の腸輸送における阻害を生じた(図13)。腸管リングの単離と、それによるα−メチルグルグルコシド(1mM)の輸送は、CT−1の投与3時間後におこなった。得られた結果は、CT−1の、動物に全身投与するときにグルコースの腸輸送を阻害する能力を示し、rCT−1が腸グルコースの輸送を阻害する能力を示した生体外においておこなった上記の実験結果を補強するものである。
【0077】
C57BL/6マウス(月齢5カ月)への6日間連続(長期処置)のrCT−1(0.2mg/kg/日)の静脈内投与が、生理食塩水血清で処置したマウスからのものと比較して腸環におけるα−メチルグルコシド(1mM)の腸捕捉を阻害することができたかどうかを次に判定した。結果は図14に示されるとおりであり、図14から、どのようにrCT−1が腸グルコース輸送を阻害することができるかが分かる(生体内長期処置)。
【0078】
次に、CACO−2のヒト細胞株の細胞によって、α−メチルグルコシド(0.1mM)の捕捉について、rCT−1の効果を判定した。結果(図15)から明らかなように、rCT−1での処置は、ヒト腸細胞として機能的に挙動するCACO−2ヒト細胞株におけるa−メチルグルコシド(0.1mM)の捕捉の濃度依存阻害を生じる。CT−1での処置を、1時間(図15A)および24時間(図15B)、頂縁からおこなったところ、検討した2つのプレインキュベーション時間における用量20ng/mlで顕著な差が観察された。結果は、1群当たり42〜44測定の平均±SEで表されている。
【0079】
実施例3
CT−1とCNTFとの効果の差
図16は、脂肪細胞によるレプチン分泌を調節するrCT−1およびCNTFの能力を測定するために、ラット脂肪細胞の一次培養において実施された実験の結果を示す。図16Aは、rCT−1(72時間)での処置が、どのようにレプチンのベースライン分泌とインスリン(1.6nM)により刺激されたものとの両方を阻害するかを示す。しかしながら、これらの効果は、CNTFの同様な濃度では観察されなかった(図16B)。
【0080】
図17は、CT−1およびCNTFの、インスリンの不存在下または存在下での脂肪分解を調節する能力を判定するために、ラット脂肪細胞の一次培養において実施された実験の結果を示す。この図は、CT−1がグリセロール(脂肪分解測定)の放出を誘起し、またインスリンの抗脂肪分解活性を阻害するが、CNTFはそれができないことを示している。これらのデータは、CT−1が脂肪を集めることができ、上記した筋肉におけるベータ酸化が増加することの他に、このサイトカインが脂肪の堆積を減少させる能力があることを示している。
【0081】
加えて、そして重要なことには、CT−1は、脂肪細胞(脱ヨード酵素ヨードチロニン、Dio−2およびアンカップリングタンパク質−1、UCP−1)における褐色脂肪組織(II型)の典型的な遺伝子を誘起することができるが、CNTFはできなかった(図18)。いくつかの研究から、白色脂肪組織において褐色脂肪組織に特有の遺伝子を誘起させることを目的とする療法は、肥満関連障害の改善に効果的であろうということが明らかになっている(Farmer S. Genes Dev.2008;22:1269−7)。
【0082】
実施例4
CT−1の長期投与は炎症を生じない
長期投与後の炎症を生じさせるCT−1の能力を判定するために、高脂肪食(HFD、60%脂肪)を3カ月間摂取することにより誘起した肥満のC57BL/6マウス(月齢5カ月)におけるIL−6の血清レベルを測定した。食事処置の終わりに、マウスを、6日間連続して(長期処置)、rCT−1(0.2mg/kg/日)を静脈内投与して処置した。結果(図19)は、使用された用量での長期処置では、炎症の兆候がなかったことを示している(肝臓および筋肉などの器官において組織学的に確認されたデータ)。
【0083】
さらに、肝臓の組織学的切断を、炎症の症状の出現を顕微鏡検査により検出するためにおこなった。結果(図20)は、3群のマウス(C57BL/6、月齢4カ月)における肝臓(H&E100X)の組織学的切断の代表であるイメージを示す:対照群:静脈内経路により生理学的血清(rCT−1の投与に使用されたものと同じ容積)が与えられた;rCT−1群:6日間連続して、上記した用量(0.2mg/kg/日)で、静脈内経路によりrCT−1が与えられた;Pair−fed群:rCT−1で処置したマウスが摂取するのと同じ量の食物を毎日与え、同じ実験期間中に、血清を注射した。図から明らかなように、3群のどれにも、炎症性浸潤物の存在が観察されず、また顕著な形態学的変化もなかった。
【0084】
実施例5
脂質代謝に対するCT−1の効果
脂質代謝に対するCT−1の可能性のある役割を判定する目的で、種々の血清脂質のレベルを、rCT−1を6日間長期投与した後の3カ月間、高脂肪食誘起肥満のマウスで測定した。結果は表1に示されるとおりであった。
【0085】
【表1】
【0086】
さらに、脂肪酸およびトリグリセリドの血清レベルを、高脂肪食後の野生マウスで測定した。このために、2群の動物を使用し(n=5)、実験前の3時間の間は絶食状態とした。次に、両方の群の動物に、強制経口投与(体重の1%)により高脂肪食を投与し、血液試料を得て、ベースラインレベルを測定した。食後すぐに、静脈経路により、血清(黒三角)またはrCT−1(10μg/ml)(白三角)を投与した。結果(図21)は、どのようにrCT−1での処置が遊離脂肪酸レベル(2〜5時間後、*P<0.05)(上パネル)およびトリグリセリドレベル(1〜3時間後、*P<0.05)(下パネル)における顕著な減少を生じるかを示す。
【0087】
次に、rCT−1での処置が脂質内注射後の血清における遊離脂肪酸の除去を加速したかどうかを調べた。このために、rCT−1を、脂質内投与の30分間後に2群の動物(n=5)に静脈内投与した。対照動物には、生理食塩水を与えた。血清中の遊離脂肪酸の濃度を、5分後に測定した。次に、異なる時間での遊離脂肪酸の除去値を、脂質内(100%)注射の5分後に、FFA値に関して標準化した。図22に示すように、FFAの無為動力学は、生理食塩水で処置したマウスとCT−1で処置したマウスでは大きく異なった(ボンフェローニ解析事後の二元ANOVAによりP<0.05)。
【0088】
ベータ酸化に対するrCT−1の可能性のある効果を判定するために、生理食塩水またはCT−1(10μg、1時間)で処置したマウスから単離した腓腹筋におけるパルミテートの酸化を測定した。結果(図23)は、rCT−1での急性処置が骨格筋における脂肪酸の酸化を増加することを示している。さらに、筋肉における脂肪酸の酸化に関与する遺伝子の発現レベルを、rCT−1での急性処置(3時間)に応答したRT−PCRにより測定した。結果(図24)は、rCT−1は、PGC−1b、CPT−1、ACD、ACOおよびMCDA遺伝子のmRNAレベルの増加を生じることを示している。転写物の各々を検出するのに必要なサイクル数を、内部対照としてのシクロフィリンに対応する数と比較し、それを生理食塩水で処置した動物における値(1.0)と比較した任意単位で表している(n=5〜6、*P<0.05)。
【0089】
実施例6
骨格筋におけるインスリン作用に対するCT−1の増強効果
骨格筋は、インスリン作用に対して最も感受性のある組織であり、健康な個体では、インスリンにより刺激されたグルコース摂取が90%である。本発明者等は、CT−1が筋肉(「生体外」および「生体内」)におけるインスリン情報伝達を高めることを示した。
【0090】
インビボ試験は、rCT−1での急性(1時間)または長期(24時間)処置後のラット筋管(筋管へ分化したL6E9筋芽細胞)におけるインスリン誘起2−デオキシグルコース摂取およびAKTリン酸化を測定することにより実施した。CT−1は、インスリン誘起2−デオキシグルコース摂取(図25)およびインスリン誘起AKTリン酸化(図26)を刺激することが観察された。これらのデータは、CT−1は筋肉におけるインスリンの作用を高めることを明らかにしている。これらのデータは同じファミリーIL−6からのサイトカインについて公開されたものとは異なる(Nieto−Vazquez、I等、Diabetes 2008、57:3211−3221)。
【0091】
さらに、「生体内」では、インスリン刺激(0.5U/マウスを下洞静脈に注射した)の30分前に、rCT−1(10μg/マウス)を静脈内投与すると、筋肉におけるインスリン誘起AKTリン酸化が増加することが判明した(図27)。さらに、静脈内に0.2mg/kg/日の用量で、6日間連続でrCT−1で長期処置したところ、CT−1で処置し、生理食塩水を注射した(Pair−fed群)、同じ摂取量の動物と比較して筋肉組織におけるインスリンの効果が高まった(図28)。これらの全てのデータは、骨格筋におけるインスリンの存在下でCT−1には促進的役割があることを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝障害治療のための、カルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物。
【請求項2】
代謝障害治療用薬物を調製するための、カルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物の使用。
【請求項3】
前記代謝障害が、肥満、高血糖、インスリン抵抗性、2型糖尿病および異脂肪血症からなる群から選択されるものである、請求項1に記載のカルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
カルジオトロフィン1活性を誘起する、薬学的に活性な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、肥満治療用美容的方法。
【請求項5】
前記化合物を、急性または長期治療のために投与する、請求項1若しくは3に記載の化合物、請求項2若しくは3に記載の使用、または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
カルジオトロフィン1活性を誘起する化合物が、
(i)カルジオトロフィン1(CT−1)、
(ii)CT−1の機能的に同等の変異体、
(iii)CT−1をコードするポリヌクレオチドまたはその機能的に同等の変異体、
(iv)(iii)のポリヌクレオチドを含んでなるベクター、および
(v)培地にカルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体を分泌することができる細胞
からなる群から選択されるものである、請求項1若しくは3に記載の化合物、請求項2若しくは3に記載の使用、または請求項4に記載の方法。
【請求項7】
カルジオトロフィン活性を誘起する化合物と抗糖尿病化合物とを、一緒または別個に含んでなる、組成物。
【請求項8】
カルジオトロフィン活性を誘起する化合物が、
(i)カルジオトロフィン1(CT−1)、
(ii)CT−1の機能的に同等の変異体、
(iii)CT−1をコードするポリヌクレオチドまたはその機能的に同等の変異体、
(iv)(iii)のポリヌクレオチドを含んでなるベクター、および
(v)培地にカルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体を分泌することができる細胞
からなる群から選択されるものである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗糖尿病化合物が、インスリン活性を誘起する化合物および低血糖活性を誘起する化合物および/またはインスリン活性感作剤からなる群から選択されるものである、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
インスリン活性を誘起する化合物が、
(i)インスリン、
(ii)インスリンの機能的に同等の変異体、
(iii)インスリンをコードするポリヌクレオチドまたはその機能的に同等の変異体、および
(iv)(iii)のポリヌクレオチドを含んでなるベクター
からなる群から選択されるものである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物を、同時、別個または順次投与する、代謝障害治療用の請求項7〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物を、同時、別個または順次投与する、代謝障害治療用薬物を調製するための、請求項7〜10のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項13】
前記代謝障害が、肥満、インスリン抵抗性、高血糖、異脂肪血症および2型糖尿病からなる群から選択されるものである、請求項7〜10に記載の組成物または請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項7〜10のいずれかに記載の薬学的に活性な量の組成物を患者に投与することを含んでなる、肥満治療用美容的方法。
【請求項15】
前記治療が、急性または長期である、請求項14に記載の方法。
【請求項1】
代謝障害治療のための、カルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物。
【請求項2】
代謝障害治療用薬物を調製するための、カルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物の使用。
【請求項3】
前記代謝障害が、肥満、高血糖、インスリン抵抗性、2型糖尿病および異脂肪血症からなる群から選択されるものである、請求項1に記載のカルジオトロフィン1(CT−1)活性を誘起する化合物または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
カルジオトロフィン1活性を誘起する、薬学的に活性な量の化合物を患者に投与することを含んでなる、肥満治療用美容的方法。
【請求項5】
前記化合物を、急性または長期治療のために投与する、請求項1若しくは3に記載の化合物、請求項2若しくは3に記載の使用、または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
カルジオトロフィン1活性を誘起する化合物が、
(i)カルジオトロフィン1(CT−1)、
(ii)CT−1の機能的に同等の変異体、
(iii)CT−1をコードするポリヌクレオチドまたはその機能的に同等の変異体、
(iv)(iii)のポリヌクレオチドを含んでなるベクター、および
(v)培地にカルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体を分泌することができる細胞
からなる群から選択されるものである、請求項1若しくは3に記載の化合物、請求項2若しくは3に記載の使用、または請求項4に記載の方法。
【請求項7】
カルジオトロフィン活性を誘起する化合物と抗糖尿病化合物とを、一緒または別個に含んでなる、組成物。
【請求項8】
カルジオトロフィン活性を誘起する化合物が、
(i)カルジオトロフィン1(CT−1)、
(ii)CT−1の機能的に同等の変異体、
(iii)CT−1をコードするポリヌクレオチドまたはその機能的に同等の変異体、
(iv)(iii)のポリヌクレオチドを含んでなるベクター、および
(v)培地にカルジオトロフィン1またはその機能的に同等の変異体を分泌することができる細胞
からなる群から選択されるものである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗糖尿病化合物が、インスリン活性を誘起する化合物および低血糖活性を誘起する化合物および/またはインスリン活性感作剤からなる群から選択されるものである、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
インスリン活性を誘起する化合物が、
(i)インスリン、
(ii)インスリンの機能的に同等の変異体、
(iii)インスリンをコードするポリヌクレオチドまたはその機能的に同等の変異体、および
(iv)(iii)のポリヌクレオチドを含んでなるベクター
からなる群から選択されるものである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物を、同時、別個または順次投与する、代謝障害治療用の請求項7〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物を、同時、別個または順次投与する、代謝障害治療用薬物を調製するための、請求項7〜10のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項13】
前記代謝障害が、肥満、インスリン抵抗性、高血糖、異脂肪血症および2型糖尿病からなる群から選択されるものである、請求項7〜10に記載の組成物または請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項7〜10のいずれかに記載の薬学的に活性な量の組成物を患者に投与することを含んでなる、肥満治療用美容的方法。
【請求項15】
前記治療が、急性または長期である、請求項14に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図5】
【図20】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図21】
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【図23】
【図24】
【図25】
【図5】
【図20】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2012−517459(P2012−517459A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549615(P2011−549615)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070072
【国際公開番号】WO2010/092218
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(506061716)プロイェクト、デ、ビオメディシナ、シーマ、ソシエダッド、リミターダ (34)
【氏名又は名称原語表記】PROYECTO DE BIOMEDICINA CIMA, S.L.
【出願人】(500522965)インスティトゥト シエンティフィコ イ テクノロジコ デ ナバッラ,ソシエダ アノニマ (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070072
【国際公開番号】WO2010/092218
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(506061716)プロイェクト、デ、ビオメディシナ、シーマ、ソシエダッド、リミターダ (34)
【氏名又は名称原語表記】PROYECTO DE BIOMEDICINA CIMA, S.L.
【出願人】(500522965)インスティトゥト シエンティフィコ イ テクノロジコ デ ナバッラ,ソシエダ アノニマ (4)
【Fターム(参考)】
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