説明

仮想ディスクライブラリ装置のデータ格納方法およびデータ格納システム

【課題】各格納方式のメリットが生かせるように、状況に応じて格納方法が選択できる、磁気テープへのデータ格納方法を提供する。
【解決手段】ホストを含む一以上の上位装置に接続されたストレージシステムにおいて、磁気テープライブラリ装置と磁気ディスク装置と、前記上位装置からのデータアクセスに応じて前記磁気テープライブラリ装置と前記磁気ディスク装置を制御するコントローラを備え、前記コントローラが磁気ディスク装置をエミュレーションすることで、前記上位装置に対して磁気ディスク装置として振舞う仮想ディスクライブラリを実現し、前記ライブラリコントローラが、シリアライズ形式、ストライピング形式、性能優先非ストライピング形式の三種類からのうちから任意に指定された一種類の形式によりデータを磁気テープに格納する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータと複数のハードディスクドライブと複数の磁気テープライブラリ装置を接続してなるシステムのデータを格納する仮想ディスクライブラリ装置のデータの格納方法およびデータ格納システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大量のデータを扱うコンピュータシステムにおいては、データのバックアップ/アーカイビングをどのように行うかは大きな問題である。
バックアップは、オリジナルデータのコピーを格納したものであり、障害時のオリジナルデータの復旧作業などに用いられるため、高速でリストアできるような形式で格納される必要がある(性能優先)。
アーカイブは、オリジナルデータを長期保存するものであり、膨大なデータ量が格納されることとなるため、できる限り低コストで格納効率が高くなるような形式で格納される必要がある(効率優先)。
上記のバックアップとアーカイビングの違いを考慮して、バックアップデータとアーカイブデータとを、それぞれに最適な形式で格納するのが最も望ましい。
【0003】
バックアップ/アーカイビング用のメディアとしては、従来、磁気テープが用いられることが多かったが、近年では高速なディスク装置が用いられるようになってきた。しかし、磁気ディスク装置だけでは非常に高価なシステムになってしまうため、高速な磁気ディスク装置と低ビットコストの磁気テープライブラリ装置を組み合わせたストレージシステムが望まれ、その一形態として上位システムには磁気ディスク装置をエミュレートする仮想ディスクライブラリ装置がある。
例えば特許文献1では、アクセス速度が非常に速い半導体記憶装置と、アクセス速度が速い磁気ディスク装置と、アクセス速度が遅いが記憶容量が大きい磁気テープドライブとを階層的に位置づけし、使用頻度が高いデータはアクセス速度の非常に速い電子ディスク装置に格納し、使用頻度が中程度のデータは磁気ディスク装置に格納し、使用頻度が低いデータは磁気テープドライブを用いて格納するという方法が提案されている。
【特許文献1】特開平5−40582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によるバックアップ方法は、半導体記憶装置や磁気ディスク装置などの高価な装置を使用するため、ビット当たりのコストが高くつくという問題があった。
また、従来技術においては大量のデータのバックアップを取る場合、バックアップデータが複数の磁気テープにまたがって格納される。格納形式にはストライピング形式やシリアライズ形式など様々なものがあり、それぞれに記録再生速度および記録再生効率の点においてメリット、デメリットがある。従来技術のバックアップ方法においては、例えばストライピング形式によりデータを格納するときに、磁気テープドライブが必要な台数だけ空いているとは限らず、必要な台数を確保できるまで待ちの状態になるなど、これらの格納形式を状況に応じて適宜選択することができなかったため、各格納形式のメリットを充分に生かすことができないという問題があった。
【0005】
さらには、格納されるデータがバックアップデータであるかアーカイブデータであるかは、装置側で判別することが不可能であるため、特許文献1のような複数のメディアを切り替えて格納する技術を用いたとしても、バックアップデータとアーカイブデータとを、それぞれに最適な形式で格納することは自動的には行えないという問題点があった。
【0006】
本願発明は、上記のような問題に鑑み、格納されるデータがバックアップデータであるかアーカイブデータであるかに応じて、また、磁気テープドライブの空き状況に応じて、最適な格納形式が選択され得る磁気テープへのデータ格納方法およびデータ格納システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ホストを含む1以上の上位装置に接続されたストレージシステムにおいて、磁気テープライブラリ装置と、磁気ディスク装置と、前記上位装置からのデータアクセスに応じて前記磁気テープライブラリ装置と前記磁気ディスク装置を制御するコントローラを備え、ホストからの書き込みデータを前記磁気ディスク装置に一時的に格納し、その後前記磁気テープライブラリ装置にバックアップするデータ格納方法であって、前記コントローラが前記磁気ディスク装置をエミュレートすることにより、前記上位装置に対して磁気ディスク装置と同様の振舞いをする仮想ディスクライブラリが実現され、前記仮想ディスクライブラリから、効率優先形式、性能優先ストライピング形式、性能優先非ストライピング形式の三種類からのうちから任意に指定された一種類の形式により、磁気テープにデータバックアップを行う特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の仮想ディスクライブラリのデータ格納方法において、
前記性能優先非ストライピング形式が、磁気テープに格納するデータ量の合計を予め指定された使用テープ本数によって除し、その商に当たる分を各テープへの格納データ量とし、データの先頭から順に磁気テープ上の格納場所を割り当て、この割り当てに従って各磁気テープドライブに並列的に格納データを格納するデータ格納形式であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、ホストを含む1以上の上位装置に接続されたストレージシステムにおいて、磁気テープライブラリ装置と、磁気ディスク装置と、前記上位装置からのデータアクセスに応じて前記磁気テープライブラリ装置と前記磁気ディスク装置を制御するコントローラを備え、ホストからの書き込みデータを前記磁気ディスク装置に一時的に格納し、その後前記磁気テープライブラリ装置にバックアップするデータ格納システムであって、前記コントローラが前記磁気ディスク装置をエミュレートすることにより、前記上位装置に対して磁気ディスク装置と同様の振舞いをする仮想ディスクライブラリが実現され、前記仮想ディスクライブラリから、効率優先形式、性能優先ストライピング形式、性能優先非ストライピング形式の三種類からのうちから任意に指定された一種類の形式により、磁気テープにデータバックアップを行う特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の仮想ディスクライブラリ装置のデータ格納システムにおいて、
前記性能優先非ストライピング形式が、磁気テープに格納するデータ量の合計を予め指定された使用テープ本数によって除し、その商に当たる分を各テープへの格納データ量とし、データの先頭から順に磁気テープ上の格納場所を割り当て、この割り当てに従って各磁気テープドライブに並列的に格納データを格納するデータ格納形式であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の仮想ディスクライブラリ装置のデータ格納方法およびデータ格納システムによれば、三種類の格納形式を備えているため、ユーザーが目的にあった格納形式を任意に選択することできるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の仮想ディスクライブラリ装置のデータ格納方法の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施形態による磁気テープライブラリ装置のデータ格納方法が実施されるシステム表したものである。入出力装置とCPUを備えたホストコンピュータ101にFCスイッチ(ファイバーチャンネルスイッチ)103を介してデータを格納するための複数台のハードディスクドライブによって構成されるディスクアレイ102が接続されている。複数台のハードディスクドライブを使用する場合にはRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)等の手法を用いることもできる。
【0013】
ホストコンピュータ101とディスクアレイ102はFCスイッチ103介して仮想ディスクライブラリ装置104に接続されている。仮想ディスクライブラリ装置104は磁気テープドライブを磁気ディスク装置にエミュレートするライブラリコントローラ105と、ライブラリコントローラ105に接続され、磁気テープドライブをコントロールするテープライブラリ装置107と、テープライブラリ装置107に接続された複数の磁気テープドライブ108とからなり、さらに磁気テープに格納するデータを一時的に格納するキャッシュハードディスクドライブ106が接続されていても良い。
【0014】
ここで、仮想ディスクライブラリ装置は、ライブラリコントローラ105により磁気テープドライブをハードディスクドライブにエミュレートし、ホストコンピュータ101から操作する場合には複数の磁気テープドライブをあたかも1つのハードディスクドライブであるかのように操作できるように構成しても良い。この場合、例えばホストコンピュータ101から複数の磁気テープにまたがるような大量のデータの格納を指示しても、テープ交換などの作業はホストコンピュータ101の操作者は意識しなくて良くなる。また、磁気テープドライブにはデータ圧縮機能があり、1本の磁気テープに格納可能なデータ容量はデータ種別により変化するため、実際にデータ書き込みを行う際に格納可能なデータ容量が判ることとなる。
【0015】
また、本実施形態においては磁気テープへのデータの格納方法を複数採用することができる。その例として、データ格納効率を優先する形式と性能を優先優先する形式とがある。さらに、性能優先形式には、ストライピング形式と非ストライピング形式とがある。
【0016】
<効率優先方式>
図2はデータ格納効率優先方式によって格納された例を模式的に表した図である。ボリュームLU0,LU1,LU2およびLU3は順にデータの先頭から磁気テープに格納される。磁気テープの容量までデータが格納されると、磁気テープを交換し、データの格納を続ける。格納するボリュームが複数ある場合には、一つ目のボリュームを格納し終わってから、次のボリュームを磁気テープに格納する。図2においては2本のテープにまたがって格納されており、1本目の各テープには空き領域が発生しておらず、2本目のテープの空き領域にはさらにデータを格納することができる。
このように、データ格納効率優先方式はデータの格納効率が高いが、一方で、各テープにどれだけデータが書き込めるかが事前に判らない為、複数のテープドライブに対して並列転送を行うことはできず、格納速度が遅いというデメリットがある。
したがって、データ格納効率優先方式は、アーカイブデータを格納する際に最適な格納形式として選択することができる。
【0017】
<性能優先ストライピング形式>
図3は性能優先ストライピング形式によって格納された例を模式的に表した図である。図3では、テープ1からテープ3を3台の磁気テープドライブにそれぞれ装着し、格納するファイルLU0からLU3を3つに分割し、3台の磁気テープドライブによって同時に磁気テープに格納する。各磁気テープには分割されたLU0からLU3が格納される。尚、格納に用いるテープ本数は予め決めておき、各テープの先頭から1LUずつ順に書き込んでいく。但し、LUの数が所定の最大ストライプ数を超える場合には、テープ交換を行いながら格納するものとする。
これにより、磁気テープへの格納速度が1台の磁気テープドライブだけを使用する場合より格段に速くなる。また、格納データの読み出しを並列的に行う(データリストア)ことができる。一方で、各磁気テープに空き領域が生じてしまうため、テープの格納効率はデータ格納効率優先方式よりも劣ることとなる。
したがって、性能優先ストライピング形式は、バックアップデータを格納する際に最適な格納形式として選択することができる。
尚、データ圧縮に関しては、1回試しにバックアップを取る等で、圧縮率を測定し、今後のデータ増加を予想して、安全係数を掛けた圧縮率を設定することで、テープ本数を減らした運用が可能である。
【0018】
<性能優先非ストライピング形式>
図4を用いて性能優先非ストライピング形式を説明する。この格納形式は磁気テープに格納する全データ量を予め指定された使用テープ本数によって除したデータ量を、各テープへの格納データ量と規定し、データの先頭から順に磁気テープ上の格納場所を割り当てる。この割り当てに従って、各磁気テープドライブに格納データを並列転送することによりデータ格納を行う。尚、格納に用いるテープ本数は予め決めておき、各テープの先頭から1LUずつ順に書き込んでいく。但し、LUの数が所定の最大ストライプ数を超える場合には、テープ交換を行いながら格納するものとする。
これにより、磁気テープへの格納速度が1台の磁気テープドライブだけを使用する場合より格段に速くなる。また、格納データの読み出しを並列的に行う(データリストア)ことができる。一方で、各磁気テープに空き領域が生じてしまうため、テープの格納効率はデータ格納効率優先方式よりも劣ることとなる。
さらに、上記した性能優先ストライピング形式では、複数の磁気テープドライブから同一のLUを並列して読み出すこととなるが、この場合には磁気ディスク装置のリード性能上、転送速度の向上には制限がある。そこで本形式のように、同時に異なるLUを並列して読み出すようにすると、上記のような制限を受けず、上記した性能優先ストライピング形式よりもさらに高速でデータ読み出しを行うことが可能となる。但し、各LUのデータ圧縮率の差が大きいと一部のテープのみ容量オーバしてバックアップを取得できないことが発生する。
したがって、性能優先非ストライピング形式は、各LUのデータ種別が同一なバックアップデータを格納する際に最適な格納形式として選択することができる。
尚、データ圧縮に関しては、1回試しにバックアップを取る等で、圧縮率を測定し、今後のデータ増加を予想して、安全係数を掛けた圧縮率を設定することで、テープ本数を減らした運用が可能である。
【0019】
図5は、本発明の磁気テープライブラリ装置のデータ格納方法およびデータ格納システムにおいて、データ格納を行う際の処理の流れを示すフローチャートである。
図5において、まず、選択されたデータ格納形式がデータ格納効率優先形式であるかどうかを判定し、データ格納効率優先形式である場合には、同時実行ドライブ数を1とし、ストライピング数を1とし、データ転送リストを作成する。選択されたデータ格納形式が性能優先形式である場合には、データサイズから必要テープ本数nを算出し、同時実行ドライブ数はnとし、ストライピング数を1(非ストライピング形式の場合)又はn(ストライピング形式の場合)としたデータ転送リストを作成する。
【0020】
続いて、転送ポインタを初期化した後、n個のテープを投入し、データ転送リスト及び転送ポインタを参照して、ディスクから読み出したデータをテープに書き込む処理を行う。ここで、データ格納効率優先形式の場合には、テープ終端までデータを継続的に書き込みテープ終端に達したときにテープ入れ替えを行うが、性能優先形式の場合にはデータ転送リストに規定された当該テープへの書き込みが完了したときにテープ入れ替えを行う。
【0021】
以上、本発明の磁気テープライブラリ装置のデータ格納方法およびデータ格納システムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を実施するためのシステムの構成例を表した図である。
【図2】データ格納効率優先によるデータ格納例を模式的に表した図である。
【図3】性能優先ストライピング形式によるデータ格納例を模式的に表した図である。
【図4】性能優先非ストライピング形式によるデータ格納例を模式的に表した図である。
【図5】図1に示すシステムにおけるデータ格納動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
101:ホストコンピュータ、102:ディスクアレイ、104:仮想ディスクライブラリ装置、105:ライブラリコントローラ、106:キャッシュハードディスクドライブ、107:磁気テープライブラリ装置、108:磁気テープドライブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストを含む1以上の上位装置に接続されたストレージシステムにおいて、
磁気テープライブラリ装置と、
磁気ディスク装置と、
前記上位装置からのデータアクセスに応じて前記磁気テープライブラリ装置と前記磁気ディスク装置を制御するコントローラを備え、
ホストからの書き込みデータを前記磁気ディスク装置に一時的に格納し、その後前記磁気テープライブラリ装置にバックアップするデータ格納方法であって、
前記コントローラが前記磁気ディスク装置をエミュレートすることにより、前記上位装置に対して磁気ディスク装置と同様の振舞いをする仮想ディスクライブラリが実現され、
前記仮想ディスクライブラリから、効率優先形式、性能優先ストライピング形式、性能優先非ストライピング形式の三種類からのうちから任意に指定された一種類の形式により、磁気テープにデータバックアップを行う特徴とする仮想ディスクライブラリのデータ格納方法。
【請求項2】
前記性能優先非ストライピング形式が、磁気テープに格納するデータ量の合計を予め指定された使用テープ本数によって除し、その商に当たる分を各テープへの格納データ量とし、データの先頭から順に磁気テープ上の格納場所を割り当て、この割り当てに従って各磁気テープドライブに並列的に格納データを格納するデータ格納形式である
ことを特徴とする請求項1記載の仮想ディスクライブラリのデータ格納方法。
【請求項3】
ホストを含む1以上の上位装置に接続されたストレージシステムにおいて、
磁気テープライブラリ装置と、
磁気ディスク装置と、
前記上位装置からのデータアクセスに応じて前記磁気テープライブラリ装置と前記磁気ディスク装置を制御するコントローラを備え、
ホストからの書き込みデータを前記磁気ディスク装置に一時的に格納し、その後前記磁気テープライブラリ装置にバックアップするデータ格納システムであって、
前記コントローラが前記磁気ディスク装置をエミュレートすることにより、前記上位装置に対して磁気ディスク装置と同様の振舞いをする仮想ディスクライブラリが実現され、
前記仮想ディスクライブラリから、効率優先形式、性能優先ストライピング形式、性能優先非ストライピング形式の三種類からのうちから任意に指定された一種類の形式により、磁気テープにデータバックアップを行う特徴とする仮想ディスクライブラリのデータ格納システム。
【請求項4】
前記性能優先非ストライピング形式が、磁気テープに格納するデータ量の合計を予め指定された使用テープ本数によって除し、その商に当たる分を各テープへの格納データ量とし、データの先頭から順に磁気テープ上の格納場所を割り当て、この割り当てに従って各磁気テープドライブに並列的に格納データを格納するデータ格納形式であることを特徴とする請求項3記載の仮想ディスクライブラリのデータ格納システム。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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