説明

仮想ネットワーク管理システム、仮想ネットワーク管理方法および仮想ネットワーク管理用プログラム

【課題】物理ノードリソースも含めたネットワークリソースを有効活用できるようにする。
【解決手段】仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ネットワーク管理システムであって、物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数を決定するパラメタ決定部と、物理ノード状態と、物理リンク状態と、パラメタ決定部が決定した重み係数と、仮想ノードの要求位置と、物理ノード位置とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する優先度数算出部と、優先度数算出部が算出した優先度数に基づいて、仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ノード決定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想ネットワーク管理システム、仮想ネットワーク管理方法および仮想ネットワーク管理用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークユーザの多様化にともない、それぞれのユーザ要求に応じた特性を有するネットワークの構築が望まれている。このような多様なネットワークを実現する技術として、物理的なネットワークを利用して複数の論理的なネットワークを構築する仮想ネットワーク技術がある。このような仮想ネットワーク技術では、実際の物理的なノード上に仮想的なノードを作成し、この仮想ノードを接続して仮想ネットワークを構築して提供する。
【0003】
図9は、仮想ネットワークの例を示す説明図である。図9に示すように、物理ネットワークは、スイッチ機能を有するネットワーク装置である物理ノードと、それらを接続する物理リンクとを含む。この物理ネットワークを利用して仮想ネットワークが構築される。仮想ネットワークでは、物理ネットワークを構成する物理ノードから必要なノードを選択し仮想ノードとする。そして、これら仮想ノードを接続して仮想ネットワークを構築する。この場合、どの物理ノードを選択するかはそれぞれの仮想ネットワークに依存する。
【0004】
物理ノードは、ネットワークを伝送するデータの転送先を制御するスイッチと、スイッチを制御するためのソフトウェアに従って動作するCPUとで実現される。CPUは、スイッチを制御できるようにスイッチと接続される。また、仮想化技術などを用いてCPUで複数の仮想ノードを独立に動作させる。例えば、物理ノード内のCPUは、仮想化ソフトウェアに従って動作し、仮想マシンが構築される。さらに各仮想マシン内では各仮想ネットワークにおけるデータ転送処理を制御するためのソフトウェアに従って動作することで、仮想マシンが仮想ネットワークの仮想ノードとして動作する。
【0005】
このように1つの物理ネットワーク上に複数の仮想ネットワークが存在するため、リソースの使用状態の偏りを避けるために負荷分散の仕組みを考える必要がある。このような負荷分散の一例が、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された関連技術では、ノード間のリンク経路を選択する際に、各リンクのリンク利用率を算出し、リンク利用率が高いリンクを利用されにくく設定したリンクコストを用いて経路選択を行うことでリンクの負荷分散を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−4294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたような関連技術における課題は、仮想ノードが集中する物理ノードが生じた場合に、物理ネットワークリソースを有効活用できないことである。その理由は、仮想ネットワークの位置を仮想ネットワークの要求者が指定し、仮想ネットワーク設計者による仮想ノードの物理的な位置に対しての設計の自由度がないためである。
【0008】
上記の課題について、図10を参照して具体的に説明する。図10は、ある時点での物理ネットワークの状態を示す説明図である。図10に示す例では、物理ノードN1〜N12が存在し、物理ノード間を接続する物理リンクが存在している。例えば、物理ノードN1は、物理ノードN2と物理ノードN5との間がそれぞれ物理リンクで接続されている。この物理ノードと物理リンクとをネットワークリソース(ネットワーク資源)として物理ネットワークが構成される。
【0009】
また、ネットワークリソースとしては、ノードリソースとリンクリソースとがある。ノードリソースとしては、例えば、経路計算やアプリケーションに従って処理を実行するCPUの処理能力があり、リンクリソースとしては、例えば、通信帯域がある。図10に示す例では、ノードリソースの残余リソース量が全ての物理ノードにおいて100であるものとしている。また、物理リンクの残余リソース量は、全ての物理リンクにおいて100であるものとしている。
【0010】
図10で示す物理ネットワーク状態に対して、図2で示す仮想ネットワークの作成を新規で要求された場合を考える。図2において、仮想ネットワークVirNW1は、仮想ノードV11を物理ノードN1に作成し、仮想ノードV12を物理ノードN3に作成し、仮想ノードV13を物理ノードN5に作成し、仮想ノードV14を物理ノードN7に作成することを要求する。また、仮想リンクとして、仮想ノードV11と仮想ノードV12とを接続し、仮想ノードV11と仮想ノードV13とを接続し、仮想ノードV12と仮想ノードV14とを接続し、仮想ノードV13と仮想ノードV14とを接続することを要求する。また、仮想ノードのリソース量としてノードリソース量50を要求し、仮想リンクのリソース量としてリンクリソース量30を要求する。
【0011】
また、仮想ネットワークVirNW2は、仮想ノードV21を物理ノードN2に作成し、仮想ノードV22を物理ノードN10に作成し、仮想ノードV23を物理ノードN11に作成し、仮想ノードV24を物理ノードN7に作成することを要求する。また、仮想リンクとして、仮想ノードV21と仮想ノードV22とを接続し、仮想ノードV22と仮想ノードV23とを接続し、仮想ノードV23と仮想ノードV24とを接続し、仮想ノードV24と仮想ノードV21とを接続することを要求する。また、仮想ノードのリソース量としてノードリソース量50を要求し、仮想リンクのリソース量としてリンクリソース量30を要求する。
【0012】
また、仮想ネットワークVirNW3は、仮想ノードV31を物理ノードN7に作成し、仮想ノードV32を物理ノードN11に作成し、仮想ノードV33を物理ノードN12に作成することを要求する。また、仮想リンクとして、仮想ノードV31と仮想ノードV32とを接続し、仮想ノードV32と仮想ノードV33とを接続し、仮想ノードV33と仮想ノードV31とを接続することを要求する。また、仮想ノードのリソース量としてノードリソース量50を要求し、仮想リンクのリソース量としてリンクリソース量30を要求する。
【0013】
次に、図10に示した物理ネットワーク上に、図2で示した仮想ネットワークに関して、VirNW1、VirNW2、およびVirNW3の順に仮想ネットワーク構築要求が届いたとして、どのように物理ネットワークリソースが使用されるかを以下に示す。
【0014】
はじめに仮想ネットワークVirNW1を物理ネットワーク上に作成する。このとき、物理ネットワークは、物理ノードの余剰リソース量および物理リンクの余剰リソース量に関して仮想ネットワークVirNW1が要求するノードリソース量およびリンクリソース量を満足する。そのため、仮想ネットワークVirNW1は、要求通りの物理ノード上に仮想ノードを設置することができる。例えば、仮想ノードV11が物理ノードN1に配置され、物理ノードN1のリソース量50がVirNW1に割当られ、残余ノードリソース量が50となる。また、仮想リンクについても図11で示すように物理リンクを割り当てる。
【0015】
次に、仮想ネットワークVirNW2を作成する。仮想ネットワークVirNW2に対しても、物理ネットワークは、要求するノードリソース量およびリンクリソース量を満足する。そのため、仮想ネットワークVirNW2は、要求通りの物理ノード上に仮想ノードを設置することができる(図11参照)。
【0016】
続いて、仮想ネットワークVirNW3を作成する。VirNW3では、仮想ノードV31の設置ノードとして物理ノードN7が要求されている。しかし、物理ノードN7に関しては、既にVirNW1の仮想ノードV14にノードリソース量50を割り当て、VirNW2の仮想ノードV24にノードリソース量50を割り当てている。そのため、残余ノードリソース量が0となっており、要求されたノードリソースを確保できない。そのため、この物理ネットワーク上には仮想ネットワークVirNW3を作成できない。このように、特許文献1に記載されたような仮想ネットワーク作成システムでは、仮想ノードを配置する物理ノードの位置を完全に指定しまうため、他のノードに空きがあるにも関わらず、その空きリソースを有効活用できないという問題点がある。
【0017】
そこで、本発明は、物理ノードリソースも含めたネットワークリソースを有効活用できる仮想ネットワーク管理システム、仮想ネットワーク管理方法および仮想ネットワーク管理用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明による仮想ネットワーク管理システムは、仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ネットワーク管理システムであって、物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数を決定するパラメタ決定部と、物理ノード状態と、物理リンク状態と、パラメタ決定部が決定した重み係数と、仮想ノードの要求位置と、物理ノード位置とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する優先度数算出部と、優先度数算出部が算出した優先度数に基づいて、仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ノード決定部とを備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明による仮想ネットワーク管理システムの他の態様は、仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ネットワーク管理システムであって、仮想ネットワークの要求を受け付けるごとに仮想ネットワークの仮想ノード間の最短経路の平均値を算出する要求仮想ネットワーク分析部と、仮想ノード間の最短経路の平均値が小さい仮想ネットワークに対して要求された仮想ノード位置からの差異に対する重み係数としてより小さい負の値を決定するパラメタ決定部と、物理ノード状態として物理ノードの残余リソース量を用い、物理リンク状態として物理ノードに接続する物理リンクの残余リソース量を用い、物理ノードおよび物理リンクの残余リソース量に対する重み係数として正の値を用い、要求された仮想ノード位置からの差異とパラメタ決定部が決定した負の値の重み係数とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する優先度数算出部と、優先度数算出部で算出した優先度数が最大値となる物理ノードを仮想ノードの作成位置として決定する仮想ノード決定部とを備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明による仮想ネットワーク管理方法は、仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ネットワーク管理方法であって、物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数を決定し、物理ノード状態と、物理リンク状態と、決定した重み係数と、仮想ノードの要求位置と、物理ノード位置とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出し、算出した優先度数に基づいて、仮想ノードを作成する物理ノードを決定することを特徴とする。
【0021】
本発明による仮想ネットワーク管理用プログラムは、仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定するための仮想ネットワーク管理用プログラムであって、コンピュータに、物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数を決定する処理と、物理ノード状態と、物理リンク状態と、決定した重み係数と、仮想ノードの要求位置と、物理ノード位置とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する処理と、算出した優先度数に基づいて、仮想ノードを作成する物理ノードを決定する処理とを実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、物理ネットワークリソースも含めたネットワークリソースを有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による仮想ネットワーク管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】仮想ネットワーク要求情報の一例を示す説明図である。
【図3】仮想ネットワーク管理システムの位置づけを示す説明図である。
【図4】仮想ネットワーク管理システムが仮想ネットワークを管理する処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】仮想ネットワーク管理システムの動作例を説明するための説明図である。
【図6】第2の実施形態による仮想ネットワーク管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図7】第3の実施形態による仮想ネットワーク管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図8】仮想ネットワーク管理システムの最小の機能構成例を示す機能ブロック図である。
【図9】仮想ネットワークの例を示す説明図である。
【図10】ある時点での物理ネットワークの状態を示す説明図である。
【図11】関連技術で仮想ネットワークが設定できない例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による仮想ネットワーク管理システムは、仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定するものであり、物理ノードおよび物理リンクの有効活用を可能とする。本発明は、物理ノードを運営するインフラ事業者が仮想ネットワークを使用するサービス事業者に仮想ネットワークを提供する際に、インフラ事業者が所有するインフラである物理ネットワークのリソースを有効活用するように仮想ネットワークを設計するといった用途に適用できる。例えば、県内に複数ノードがいくつかの市に分散して存在する物理ネットワーク環境において、サービス事業者が仮想ノードの位置として県を指定するのみで、どの市に存在する物理ノードを利用するかをインフラ事業者が決定するといった仮想ネットワーク設計用途に適用できる。
【0025】
実施形態1.
以下、本発明を実施するための第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明による仮想ネットワーク管理システムの構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、仮想ネットワーク管理システム1は、入力部10、出力部20、記憶部30、および演算部40を有する。なお、仮想ネットワーク管理システム1は、具体的には、プログラムに従って動作するパーソナルコンピュータなどの情報処理装置によって実現される。また、仮想ネットワーク管理システム1は、1つの情報処理装置によって実現されてもよいし、複数の情報処理装置によって実現されてもよい。
【0026】
入力部10は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUおよびキーボードやマウスなどの入力装置によって実現される。なお、入力部10は、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUおよびネットワークインタフェース部によって実現され、ネットワークを介して情報を入力するものであってもよい。入力部10は、仮想ネットワーク要求入力部11を有する。
【0027】
出力部20は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUおよびディスプレイ装置などの出力装置によって実現される。なお、出力部20は、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUおよびネットワークインタフェース部によって実現され、ネットワークを介して情報を出力するものであってもよい。出力部20は、仮想ネットワーク決定情報出力部21を有する。
【0028】
記憶部30は、具体的には、磁気ディスク装置や光ディスク装置によって実現される。記憶部30は、物理ネットワーク状態記憶部31を有する。
【0029】
演算部40は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。演算部40は、仮想ノード選択部50と、仮想リンク選択部60とを有する。さらに、仮想ノード選択部50は、範囲パラメタ決定部51と、ノード優先度数算出部52と、仮想ノード決定部53とを有する。
【0030】
仮想ネットワーク要求入力部11は、新たに作成する仮想ネットワークの要求情報(仮想ネットワーク要求情報ともいう)を入力する機能を備える。例えば、仮想ネットワーク要求入力部11は、要求する仮想ネットワーク要求情報として、仮想ノードを配置する物理ノードや、どの仮想ノード間に仮想リンクを接続するかを示す仮想ノード間の接続関係、仮想ノードに割り当てるリソース量、仮想リンクに割り当てるリソース量を含む情報を入力する。
【0031】
図2は、仮想ネットワーク要求情報の一例を示す説明図である。例えば、図2において、仮想ネットワークVirNW1の仮想ノードについては、仮想ノードV11を物理ノードN1に作成し、仮想ノードV12を物理ノードN3に作成し、仮想ノードV13を物理ノードN5に作成し、仮想ノードV14を物理ノードN7に作成することを要求する。また、仮想リンクとして、仮想ノードV11と仮想ノードV12とを接続し、仮想ノードV11と仮想ノードV13とを接続し、仮想ノードV12と仮想ノードV14とを接続し、仮想ノードV13と仮想ノードV14とを接続することを要求する。また、仮想ノードのリソース量としてノードリソース量50を要求し、仮想リンクのリソース量としてリンクリソース量30を要求する。
【0032】
仮想ネットワーク決定情報出力部21は、仮想ネットワーク要求入力部11に入力された仮想ネットワーク要求情報に対して、仮想ネットワーク管理システム1が割り当てる物理リソースを示す出力情報を出力する機能を備える。仮想ネットワーク決定情報出力部21は、出力する内容として、仮想ノードを配置する物理ノードや、仮想リンクが通る物理リンク経路を示す情報を出力する。なお、仮想ネットワーク決定情報出力部21による出力方法として、文字として仮想ノードを配置する物理ノードの組み合わせと仮想リンクが通る物理リンク経路とをディスプレイ装置などの出力装置に表示する方法がある。また、他の出力方法として、ネットワーク構成図をGUIで表示し、要求された仮想ネットワークの仮想ノードを配置する物理ノードの位置や仮想リンクが通る物理的な経路をGUI上に表示することもできる。
【0033】
物理ネットワーク情報記憶部31は、物理ネットワークの構成要素である物理ノードと物理リンクとを示す情報を記憶する。物理ネットワーク状態記憶部31は、例えば、物理ノードを示す情報として、物理ノードが有するCPUパワーのように物理ノードが処理可能な残余リソース量を記憶する。また、物理ネットワーク状態記憶部31は、例えば、物理リンクの情報として、リンクの接続関係を示すリンク両端の物理ノードや、リンクの長さを表すための距離または伝送遅延、リンク帯域のように物理リンクが処理可能な残余リソース量を記憶する。
【0034】
仮想ノード選択部50は、要求された仮想ノードをどの物理ノードに設置するか選択する機能を備える。具体的には、まず、仮想ノード選択部50の範囲パラメタ決定部51が、要求されたノード位置から遠く離れたノードを選択しないように、ノード優先度数算出部52によりノード優先度数を算出する際の距離に関するパラメタを決定する。例えば、範囲パラメタ決定部51は、範囲パラメタとして予め固定値を与え、要求された仮想ノード位置から与えられた一定距離内の物理ノード内を選択範囲として限定することもできる。また、例えば、範囲パラメタ決定部51は、範囲パラメタとして、物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数を決定する。また、範囲パラメタ決定部51は、範囲パラメタを、要求される仮想ネットワークごとに異なる値として決定し、仮想ネットワークごとに異なる範囲の物理ノードから仮想ノードを選択することもできる。
【0035】
また、ノード優先度数算出部52は、各物理ノードに対して仮想ノードを配置する優先度数(いずれの物理ノードを優先して仮想ノードを作成するかを示す値)を算出する。ノード優先度数算出部52は、優先度数を、物理ネットワーク状態記憶部31に保存されている物理ノードと物理リンクの状態や、範囲パラメタ決定部51が決定した要求位置からの範囲情報(パラメタ)を用いて算出する。例えば、ノード優先度数算出部52は、物理ノード状態と、物理リンク状態と、範囲パラメタ決定部51が決定した重み係数と、仮想ノードの要求位置と、物理ノード位置とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する
【0036】
例えば、ノード優先度数算出部52は、物理ノードの残余リソース量と優先度数算出の対象となる物理ノードに隣接する物理リンクの残余リソース量とのそれぞれと、適当な正の値の重み係数との積を算出する。また、ノード優先度数算出部52は、要求された仮想ノード位置と優先度数算出対象の物理ノードとの間の最短経路長に対し負の値の重み係数との積を算出する。そして、ノード優先度数算出部52は、算出したこれらの値の和を優先度数として求める。この場合、ノードおよび隣接リンクの残余リソース量が大きいと優先度数は大きくなり、要求位置に近い物理ノードほど優先度数が大きくなる。
【0037】
また、仮想ノード決定部53は、先にノード優先度数算出部52が算出した各物理ノードに対する優先度数を参照して、仮想ノードを配置(作成)する物理ノードを決定する。例えば、仮想ノード決定部53は、優先度数が最大である物理ノードを選択する方法を用いて、仮想ノードを配置する物理ノードを決定する。
【0038】
仮想リンク選択部60は、仮想ノード選択部50によって選択された仮想ノードを配置する物理ノード間を接続する仮想リンクの物理ネットワーク上での経路を選択する機能を備える。仮想リンク選択部60は、選択方法として、例えば、要求されたリンクリソース量を満足するリンクのみを経由する経路のうち最短経路を選択する方法を用いて、仮想リンクの物理ネットワーク上での経路を選択する。また、例えば、仮想リンク選択部60は、経路長の短い経路を複数選択し、その中で残余リソースが最大であるものを選択することで、リンクの負荷分散を図る方法を用いて、仮想リンクの物理ネットワーク上での経路を選択してもよい。
【0039】
図1に示す仮想ネットワーク管理システム1は、図3に示すように、物理ネットワークに接続され、物理ネットワークから情報を取得し、仮想ネットワークの設定情報を通知できる状態で運営される。また、物理ネットワークに関する情報をオフラインで仮想ネットワークシステムに通知し、また仮想ネットワークの設定をオフラインで行うことで、仮想ネットワーク管理システム1は、直接物理ネットワークに接続していない場合でも運営可能である。
【0040】
なお、本実施形態において、仮想ネットワーク管理システム1の記憶部30は、仮想ネットワークを管理するための各種プログラムを記憶している。例えば、仮想ネットワーク管理システム1の記憶部30は、コンピュータに、物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数を決定する処理と、物理ノード状態と、物理リンク状態と、決定した重み係数と、仮想ノードの要求位置と、物理ノード位置とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する処理と、算出した優先度数に基づいて、仮想ノードを作成する物理ノードを決定する処理とを実行させるための仮想ネットワーク管理用プログラムを記憶している。
【0041】
次に、図4を参照して第1の実施形態における全体の動作について説明する。図4は、仮想ネットワーク管理システム1が仮想ネットワークを管理する処理の一例を示すフローチャートである。新たな仮想ネットワークを構築する場合、例えば、システム管理者などは、仮想ネットワーク管理システム1を用いて、図2に示すような仮想ネットワーク要求情報の入力操作を行う。すると、仮想ネットワーク管理システム1は、システム管理者などの操作に従って、仮想ネットワーク要求情報を入力する。そして、演算部40の仮想ノード選択部50および仮想リンク選択部60は、入力した仮想ネットワーク要求情報に基づいて、以下の処理を実行する。
【0042】
まず、ステップS101において、範囲パラメタ決定部51は、要求仮想ノードの配置位置からの差異に対する優先度数算出時のパラメタを決定する。例えば、範囲パラメタ決定部51は、範囲パラメタとして予め固定値を与える(決定する)。すなわち、要求された仮想ノード位置から与えられた固定値に対応する一定距離内の物理ノードのみを仮想ノードを設定する物理ノードの選択候補とすることで、仮想ネットワークの要求者側の要求をある程度満足しつつ、インフラ事業者側に仮想ノードの配置場所の自由度を与えることができる。
【0043】
例えば、図2に示す例では、VirNW3の仮想ノードV31を構築するための要求では物理ノードN7を要求している。この場合、範囲パラメタ決定部51は、例えば、範囲パラメタとして物理ノード間の1ホップを範囲パラメタとし、優先度数算出部52が範囲パラメタ内の物理ノードを候補とする方式を採用して優先度数を算出することによって、選択候補となる物理ノードが物理ノードN3、N6、N7、N8およびN11に広がる。
【0044】
次いで、ステップS102において、ノード優先度数算出部52は、物理ネットワーク内の物理ノードの選択優先度数を、要求された仮想ノード位置からの差異やノードリソース容量、リンクリソース容量に基づいて算出する。例えば、ノード優先度数算出部52は、以下の式(1)を用いて、物理ノードNの優先度数(H)を算出する。
【0045】
【数1】

【0046】
ここで、式(1)において、α,βは、重み係数である。また、Cnode,iは、物理ノードNの残余リソース量を表す。また、Clink,jは、物理ノードNに接続する物理リンクの残余リソース量を表す。
【0047】
ノード優先度数算出部52は、式(1)に示すように、接続する物理リンク全てに対して残余リソース量の総和を算出し、重み係数βとの積を求める。この値を用いることで、残余リソース量が大きい物理ノードに対して優先度数が大きな値をとることになる。また、残余リソース量が大きい物理リンクと接続している物理ノードに対して優先度数が大きな値となる。また、接続する物理リンク数が多い物理ノードに対しても優先度数が大きな値となる。このようにリソース量に余裕がある物理ノードに対して優先度数として大きな値を与えることができる。そして、仮想ノード決定部53が優先度数の大きな値の物理ノードを選択することで、負荷分散を図ったリソース割当を実現することができる。
【0048】
例えば、図5に示す例では、ステップS101で範囲パラメタを1ホップと決定し、物理ノードN3、N6、N7、N8およびN11を仮想ノードを設定する物理ノードの候補とする場合を示している。この各ノードについて、ノード優先度数算出部52は、VirNW1とVirNW2とを既に設定した後の優先度数を、例えばα=1およびβ=1として算出し、以下のような値を求める。
【0049】
物理ノードN3:H=(100−50)+100+(100−30×2)×2
=230
物理ノードN6:H=100+(100−30)×4=380
物理ノードN7:H=(100−50×2)+100+(100−30)×2
+(100−30×2)=280
物理ノードN8:H=100+100×3=400
物理ノードN11:H11=(100−50)+100+(100−30)×2
=290
式(2)
【0050】
なお、優先度数の算出方法は、式(1)を用いる方法にかぎらず、例えば、以下の式(3)を用いて、要求された仮想ノードと算出対象とする物理ノードとの位置の差異(D)を用いて優先度数を算出する方法もある。この場合、ノード優先度数算出部52は、仮想ノードと算出対象とする物理ノードの差異として、ホップ数や、地理的距離、接続する経路長、伝送遅延などを用いて、式(3)を用いて優先度数を算出する。
【0051】
【数2】

【0052】
ここで、式(3)において、γは重み係数である。また、重み係数であるα,β,γの関係は、αおよびβを正の値としγを負の値とすることで、残余リソース量が大きく、要求位置から近い物理ノードに対して優先度数として大きな値を与えることができる。このような値を用いることで、残余リソース量が非常に大きいにも関わらず、要求位置から遠く離れた物理ノードを選択することを避けることができる。
【0053】
なお、重み係数の値については、逆にαおよびβを負の値としγを正の値として、優先度数がより小さい値を選択することでも同じ効果が得られる。また、式(3)の算出式におけるγDの項をγ/Dと距離との逆数とすることで、距離が近いほど優先度数を大きくすることもできる。ただし、このように距離の逆数を用いるときには、α,β,γの値の正負の符号は同じことが望ましい。
【0054】
また、物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数であるγの値に関しては、γの値を大きくすることで要求位置からの差異を優先する優先度数とすることもできるし、γの値を小さくすることで要求位置からの差異を優先しない優先度数とすることもできる。なお、このγの値は、範囲パラメタ決定部51によってパラメタの1つとして決定される。
【0055】
また、上記の式(1)および式(3)の算出式ではリソース量として残余量を用いたが、使用中であるリソース量を用いて使用中リソース量が少ない物理ノードを選択する方法を用いてもよい。
【0056】
次いで、ステップS103において、仮想ノード決定部53は、ステップS102で算出した物理ノードに対して与えられた優先度を参照して、仮想ノードを配置する物理ノードを決定する。例えば、上記のステップS102で実行した優先度数算出において、αおよびβを正の値とした場合に、優先度数が最大の物理ノードを選択する方法がある。逆に、αおよびβを負の値とした場合に、優先度数が最小の物理ノードを選択する方法もある。例えば、図5で示すようなVirNW1とVirNW2とが既に存在している場合には、仮想ノード決定部53が優先度数最大の物理ノードを選択する方法を用いて仮想ノードを決定することで、仮想ノードV31の位置を物理ノードN8と選択する(図5参照)。
【0057】
上記のような方法により仮想ノード位置を選択することで、特許文献1に記載されたような関連技術ではリソース不足から割り当て不可能であった仮想ネットワークVirNW3を割り当てることが可能になり、物理ネットワークリソースの使用率を向上させることができる。
【0058】
なお、ステップS102およびステップS103の処理では、要求ノード位置により各物理ノードに対する優先度数が異なるため、ノード優先度数算出部52および仮想ノード決定部53は、仮想ノードごとに計算を行う。
【0059】
次いで、ステップS104において、仮想リンク選択部60は、ステップS103〜ステップS103までの処理において決定した仮想ノードを配置する物理ノード間を接続する物理ネットワーク上での経路を検索する。仮想リンク選択部60は、選択方法として、例えば、要求されたリンクリソース量を満足するリンクのみを経由する経路のうち最短経路を選択する方法を用いて、仮想リンクを選択することができる。また、仮想リンク選択部60は、経路長の短い経路を複数選択し、その中で残余リソースが最大のものを選択することで、リンクの負荷分散を図る方法を用いて、仮想リンクを選択することもできる。
【0060】
そして、出力部20の仮想ネットワーク決定情報出力部21は、仮想ノード選択部50の仮想ノードの選択結果、および仮想リンク選択部60の仮想リンクの選択結果を、ディスプレイ装置などの出力装置に出力する。
【0061】
以上に説明したように、本実施形態によれば、要求仮想ネットワークの仮想ノード要求位置と各物理ノード位置との差異と物理ノードのリソース状態との双方を用いて、物理ノード選択時の優先度数を算出する。そのため、要求された仮想ノード位置の近傍でリソース状態に余裕のある物理リソースを選択することができる。従って、物理ネットワークリソースも含めたネットワークリソースを有効活用することができる。
【0062】
実施形態2.
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図6は、第2の実施形態による仮想ネットワーク管理システムの構成の一例を示すブロック図である。図6に示すように、本実施形態では、図1に示す第1の実施形態で示した仮想ノード選択部50の構成要素に加えて、仮想ノード選択部50が物理ネットワーク分析部54を含む点で、第1の実施形態と異なる。そのため、以下、第1の実施形態と重複する構成要素の説明は省略し、第1の実施形態との差異のみを説明する。
【0063】
物理ネットワーク分析部54は、物理ネットワークの特徴を分析し、分析情報を作成して、範囲パラメタ決定部51およびノード優先度数算出部52に分析情報を出力して通知する機能を備える。範囲パラメタ決定部51やノード優先度数算出部52は、この分析情報に基づいてパラメタや重み係数を決定し、優先度を算出する。
【0064】
例えば、物理ネットワーク分析部54は、物理リンク長の平均値を算出し、分析情報として出力する。そして、この物理リンクの平均長に応じて、範囲パラメタ決定部51は、要求された仮想ノード位置から候補にいれる物理ノードを制限する範囲を決定する。例えば、物理リンクの平均長が長い場合には、候補選択範囲となるパラメタ値を大きく設定する方法がある。
【0065】
また、他の例として、物理ネットワーク分析部54が、物理ネットワーク内における全ての物理ノードの組み合わせにおいて最短経路長を求め、平均値又は最大値を分析情報とする方法もある。この場合、範囲パラメタ決定部51は、最短経路長平均値が小さい値ほど優先度数を算出する際に用いる要求位置からの差異(D)に対する重み係数(γ)の値を大きくする。そのようにすることによって、差異(D)の値が小さい場合でも、リソース残余量に対する項の影響が大きくなりすぎることを防ぐことができる。
【0066】
なお、本実施形態において、仮想ネットワークの割り当てを決める基本的な動作手順は、第1の実施形態で既に説明した図4のフローチャートに従った処理と同じであるが、優先度数の算出時に分析情報の取得結果を用いて優先度数を算出する点で異なっている。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態によれば、物理ネットワーク分析部54による物理ネットワークの分析結果を用いて仮想ノードおよび仮想リンクを決定するので、物理ネットワークの分析結果も加味して、より適切に物理ネットワークリソースも含めたネットワークリソースを有効活用することができる。
【0068】
実施形態3.
次に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。図7は、第3の実施形態による仮想ネットワーク管理システムの構成の一例を示すブロック図である。図7に示すように、本実施形態では、図1に示す第1の実施形態で示した仮想ノード選択部50の構成要素に加えて、仮想ノード選択部50が要求仮想ネットワーク分析部55を含む点で、第1の実施形態と異なる。そのため、以下、第1の実施形態と重複する構成要素の説明は省略し、第1の実施形態との差異のみを説明する。
【0069】
要求仮想ネットワーク分析部55は、新たに要求された仮想ネットワークの構成を分析し、分析情報を作成して、範囲パラメタ決定部51およびノード優先度数算出部52に分析情報を出力して通知する機能を備える。範囲パラメタ決定部51やノード優先度数算出部52は、この分析情報に基づいてパラメタや重み係数を決定し、優先度を算出する。
【0070】
例えば、要求仮想ネットワーク分析部55は、新たに要求された仮想リンク長の平均値を算出し、分析情報として出力する。このとき、仮想リンクの長さとして、要求された物理ノードに仮想ノードが配置されたと仮定して、物理ネットワークにおける最短経路長を用いる。この値は仮想ネットワークの規模を表す値として用いることができる。そして、このリンク平均長に応じて、範囲パラメタ決定部51は、要求された仮想ノード位置から候補にいれる物理ノードを制限する範囲を決定する。例えば、物理リンクの平均長が長いほど、候補選択範囲となるパラメタ値を大きく設定する方法がある。これにより、狭い範囲の仮想ネットワーク要求に対しては、候補範囲を狭くし、広い範囲の仮想ネットワーク要求に対しては物理ノードの選択範囲を広くすることで、仮想ノード間の相対的位置関係の逆転を防ぐことができる。
【0071】
また、他の例として、要求仮想ネットワーク分析部55が、仮想ネットワーク内における全ての仮想ノードの組み合わせにおいて最短経路長を求め、平均値又は最大値を分析情報とする方法もある。この場合、範囲パラメタ決定部51は、最短経路長平均値が小さい値ほど優先度数を算出する際に要求位置からの差異(D)に対する重み係数(γ)の値を大きくする。そのようにすることによって、差異(D)の値が小さい場合でも、リソース残余量に対する項の影響が大きくなりすぎることを防ぐことができる。
【0072】
また、他の例として、範囲パラメタ決定部51は、仮想ネットワークにおいてノードリソース量の要求量が大きく、リンクリソース量の要求量が小さい場合には、ノードリソース量の優先度への影響が大きくなるようにαの値を相対的にβより大きい値に決定する方法がある。逆に、範囲パラメタ決定部51は、仮想ネットワークにおいてリンクリソース量の要求量が大きく、ノードリソース量の要求量が小さい場合には、リンクリソース量の優先度への影響が大きくなるようにβの値を相対的にαより大きい値に決定する方法がある。このαおよびβの値の決定は、仮想ネットワークごとに異なる値を設定することもできる。
【0073】
このように、要求仮想ネットワーク分析部55は、仮想ネットワークの分析を仮想ネットワークごとに実行することで、ノード優先度数算出部52で用いるパラメタや重み係数の値を仮想ネットワークの特徴にあわせて変更することができる。なお、仮想ネットワークの構造的特徴だけでなく、仮想ネットワークの重要度が高い場合に、物理ノードの候補範囲パラメタを小さくすることで、より要求位置に近い物理ノードを選択しやすくする方法もある。
【0074】
なお、本実施形態においても、仮想ネットワークの割り当てを決める基本的な動作手順は、第1の実施形態で既に説明した図4のフローチャートに従った処理と同じであるが、優先度数の算出時に分析情報の取得結果を用いて優先度数を算出する点で異なっている。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態によれば、要求仮想ネットワーク分析部55による仮想ネットワークの分析結果を用いて仮想ノードおよび仮想リンクを決定するので、仮想ネットワークの分析結果も加味して、より適切に物理ネットワークリソースも含めたネットワークリソースを有効活用することができる。
【0076】
なお、第2の実施形態と第3の実施形態とは、それぞれ、第1の実施形態で示した構成に対して新たな構成要素を追加した構成となっているが、第2の実施形態および第3の実施形態の双方の構成要素を追加した構成とすることも可能である。すなわち、仮想ネットワーク管理システム1の仮想ノード選択部50は、第1の実施形態で示した構成要素に加えて、物理ネットワーク分析部54及び要求仮想ネットワーク分析部55の両方を含んでもよい。そのように構成すれば、例えば、物理ネットワーク分析部54の分析結果に基づいて物理ノードの選択範囲を決定しつつ、要求仮想ネットワーク分析部55の分析結果に基づいてノードリソースとリンクリソースとのどちらを優先するかの重み係数を決定することもできる。
【0077】
次に、本発明による仮想ネットワーク管理システム1の最小構成について説明する。図8は、仮想ネットワーク管理システム1の最小の機能構成例を示す機能ブロック図である。図8に示すように、仮想ネットワーク管理システム1は、仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定するものであり、最小の構成要素として、範囲パラメタ決定部51、ノード優先度数算出部52および仮想ノード決定部53を含む。
【0078】
範囲パラメタ決定部51は、物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数を決定する機能を備える。また、ノード優先度数算出部52は、物理ノード状態と、物理リンク状態と、範囲パラメタ決定部51が決定した重み係数と、仮想ノードの要求位置と、物理ノード位置とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する機能を備える。また、仮想ノード決定部53は、ノード優先度数算出部52が算出した優先度数に基づいて、仮想ノードを作成する物理ノードを決定する機能を備える。
【0079】
図8に示す最小構成の仮想ネットワーク管理システム1によれば、物理ネットワークリソースも含めたネットワークリソースを有効活用することができる。
【0080】
なお、上記に示した各実施形態では、以下の(1)〜(7)に示すような仮想ネットワーク管理システムの特徴的構成が示されている。
【0081】
(1)仮想ネットワーク管理システムは、仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ネットワーク管理システム(例えば、仮想ネットワーク管理システム1)であって、物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数を決定するパラメタ決定部(例えば、範囲パラメタ決定部51によって実現される)と、物理ノード状態と、物理リンク状態と、パラメタ決定部が決定した重み係数と、仮想ノードの要求位置と、物理ノード位置とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する優先度数算出部(例えば、ノード優先度数算出部52によって実現される)と、優先度数算出部が算出した優先度数に基づいて、仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ノード決定部(例えば、仮想ノード決定部53によって実現される)とを備えたことを特徴とする。
【0082】
(2)仮想ネットワーク管理システムにおいて、優先度数算出部は、物理ノード状態として物理ノードの残余リソース量を用い、物理リンク状態として物理リンクの残余リソース量を用い、物理ノードおよび物理リンクの残余リソース量が大きいほど仮想ノードとして選択されやすくなるように優先度数を算出し、仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異が小さいほど仮想ノードとして選択されやすくなるように優先度数を算出するように構成されていてもよい。
【0083】
(3)仮想ネットワーク管理システムは、物理ネットワークの特徴を分析して分析情報を作成し、分析情報をパラメタ決定部および優先度数算出部に出力する物理ネットワーク分析部(例えば、物理ネットワーク分析部54によって実現される)を備え、パラメタ決定部または優先度数算出部は、分析情報に基づいて、パラメタまたは重み係数を決定するように構成されていてもよい。
【0084】
(4)仮想ネットワーク管理システムは、要求される仮想ネットワークの特徴を分析して分析情報を作成し、分析情報をパラメタ決定部および優先度数算出部に出力する要求仮想ネットワーク分析部(例えば、要求仮想ネットワーク分析部55によって実現される)を備え、パラメタ決定部または優先度数算出部は、分析情報に基づいて、パラメタまたは重み係数を決定するように構成されていてもよい。
【0085】
(5)仮想ネットワーク管理システムにおいて、要求仮想ネットワーク分析部は、仮想ネットワークの規模を算出し、パラメタ決定部は、仮想ネットワークの規模が小さいほど要求された仮想ノード位置に近い物理ノードに対する優先度を高めるようにパラメタの値を決定するように構成されていてもよい。
【0086】
(6)仮想ネットワーク管理システムにおいて、要求仮想ネットワーク分析部は、要求されるノードリソース量とリンクリソース量とを算出し、優先度数算出部は、要求ノードリソース量と要求リンクリソース量とを比較し、要求リソース量が大きい方を優先するように物理ノード状態と物理リンク状態とのそれぞれに対する優先度数算出時の係数を決定するように構成されていてもよい。
【0087】
(7)仮想ネットワーク管理システムは、仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ネットワーク管理システム(例えば、仮想ネットワーク管理システム1)であって、仮想ネットワークの要求を受け付けるごとに仮想ネットワークの仮想ノード間の最短経路の平均値を算出する要求仮想ネットワーク分析部(例えば、要求仮想ネットワーク分析部55によって実現される)と、仮想ノード間の最短経路の平均値が小さい仮想ネットワークに対して要求された仮想ノード位置からの差異に対する重み係数としてより小さい負の値を決定するパラメタ決定部(例えば、範囲パラメタ決定部51によって実現される)と、物理ノード状態として物理ノードの残余リソース量を用い、物理リンク状態として物理ノードに接続する物理リンクの残余リソース量を用い、物理ノードおよび物理リンクの残余リソース量に対する重み係数として正の値を用い、要求された仮想ノード位置からの差異とパラメタ決定部が決定した負の値の重み係数とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する優先度数算出部(例えば、ノード優先度数算出部52によって実現される)と、優先度数算出部で算出した優先度数が最大値となる物理ノードを仮想ノードの作成位置として決定する仮想ノード決定部(例えば、仮想ノード決定部53によって実現される)とを備えるように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、物理ノードを運営するインフラ事業者が仮想ネットワークを使用するサービス事業者に仮想ネットワークを提供する際に、インフラ事業者が所有するインフラである物理ネットワークのリソースを有効活用するように仮想ネットワークを設計するといった用途に適用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 仮想ネットワーク管理システム
10 入力部
11 仮想ネットワーク要求入力部
20 出力部
21 仮想ネットワーク決定情報出力部
30 記憶部
31 物理ネットワーク状態記憶部
40 演算部
50 仮想ノード選択部
51 範囲パラメタ決定部
52 ノード優先度数算出部
53 仮想ノード決定部
54 物理ネットワーク分析部
55 要求仮想ネットワーク分析部
60 仮想リンク選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ネットワーク管理システムであって、
物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数を決定するパラメタ決定部と、
物理ノード状態と、物理リンク状態と、前記パラメタ決定部が決定した重み係数と、仮想ノードの要求位置と、物理ノード位置とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する優先度数算出部と、
前記優先度数算出部が算出した優先度数に基づいて、仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ノード決定部とを備えた
ことを特徴とする仮想ネットワーク管理システム。
【請求項2】
前記優先度数算出部は、物理ノード状態として物理ノードの残余リソース量を用い、物理リンク状態として物理リンクの残余リソース量を用い、物理ノードおよび物理リンクの残余リソース量が大きいほど仮想ノードとして選択されやすくなるように優先度数を算出し、仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異が小さいほど仮想ノードとして選択されやすくなるように優先度数を算出する
請求項1記載の仮想ネットワーク管理システム。
【請求項3】
物理ネットワークの特徴を分析して分析情報を作成し、前記分析情報をパラメタ決定部および優先度数算出部に出力する物理ネットワーク分析部を備え、
パラメタ決定部または優先度数算出部は、前記分析情報に基づいて、パラメタまたは重み係数を決定する
請求項1または請求項2記載の仮想ネットワーク管理システム。
【請求項4】
要求される仮想ネットワークの特徴を分析して分析情報を作成し、前記分析情報をパラメタ決定部および優先度数算出部に出力する要求仮想ネットワーク分析部を備え、
パラメタ決定部または優先度数算出部は、前記分析情報に基づいて、パラメタまたは重み係数を決定する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の仮想ネットワーク管理システム。
【請求項5】
前記要求仮想ネットワーク分析部は、仮想ネットワークの規模を算出し、
前記パラメタ決定部は、仮想ネットワークの規模が小さいほど要求された仮想ノード位置に近い物理ノードに対する優先度を高めるようにパラメタの値を決定する
請求項4記載の仮想ネットワーク管理システム。
【請求項6】
前記要求仮想ネットワーク分析部は、要求されるノードリソース量とリンクリソース量とを算出し、
前記優先度数算出部は、要求ノードリソース量と要求リンクリソース量とを比較し、要求リソース量が大きい方を優先するように物理ノード状態と物理リンク状態とのそれぞれに対する優先度数算出時の係数を決定する
請求項4または請求項5記載の仮想ネットワーク管理システム。
【請求項7】
仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ネットワーク管理システムであって、
仮想ネットワークの要求を受け付けるごとに仮想ネットワークの仮想ノード間の最短経路の平均値を算出する要求仮想ネットワーク分析部と、
前記仮想ノード間の最短経路の平均値が小さい仮想ネットワークに対して要求された仮想ノード位置からの差異に対する重み係数としてより小さい負の値を決定するパラメタ決定部と、
物理ノード状態として物理ノードの残余リソース量を用い、物理リンク状態として物理ノードに接続する物理リンクの残余リソース量を用い、物理ノードおよび物理リンクの残余リソース量に対する重み係数として正の値を用い、要求された仮想ノード位置からの差異と前記パラメタ決定部が決定した負の値の重み係数とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する優先度数算出部と、
前記優先度数算出部で算出した優先度数が最大値となる物理ノードを仮想ノードの作成位置として決定する仮想ノード決定部とを備えた
ことを特徴とする仮想ネットワーク管理システム。
【請求項8】
仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定する仮想ネットワーク管理方法であって、
物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数を決定し、
物理ノード状態と、物理リンク状態と、決定した重み係数と、仮想ノードの要求位置と、物理ノード位置とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出し、
算出した優先度数に基づいて、仮想ノードを作成する物理ノードを決定する
ことを特徴とする仮想ネットワーク管理方法。
【請求項9】
仮想ネットワークの作成要求に応じて仮想ノードを作成する物理ノードを決定するための仮想ネットワーク管理用プログラムであって、
コンピュータに、
物理ノードの優先度数決定時における仮想ノードの要求位置と物理ノード位置との差異に対する重み係数を決定する処理と、
物理ノード状態と、物理リンク状態と、決定した重み係数と、仮想ノードの要求位置と、物理ノード位置とを用いて、物理ノードに対して優先度数を算出する処理と、
算出した優先度数に基づいて、仮想ノードを作成する物理ノードを決定する処理とを
実行させるための仮想ネットワーク管理用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−199644(P2012−199644A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60949(P2011−60949)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度、独立行政法人情報通信研究機構「ダイナミックネットワーク技術の研究開発」)は産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】