説明

仮接着剤組成物、及びそれを用いた薄型ウエハの製造方法

【課題】耐溶剤性を維持しながら、熱安定性に優れる仮接着剤組成物及びそれを使用した薄型ウエハの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン、
(B)酸化防止剤、
(C)有機溶剤
を含有し、前記(A)成分が100質量部、前記(B)成分が0.5〜5質量部、前記(C)成分が10〜1000質量部であることを特徴とする仮接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮接着剤組成物、及びそれを用いた薄型ウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元半導体実装は、より一層の高集積、大容量化を実現するために必須となってきている。3次元半導体実装技術とは、1つの半導体チップを薄型化し、さらにこれをシリコン貫通電極(TSV;through silicon via)によって結線しながら多層積層していく半導体作製技術である。これを実現するためには、半導体回路を形成した基板を裏面研削によって薄型化し、さらに裏面にTSVを含む電極等を形成する電極形成工程が必要である。従来、電極形成工程前のシリコン基板の裏面研削工程では、研削面の反対側に保護テープを貼り、研削時のウエハ破損を防いでいる。しかしながら、このテープは有機樹脂フィルムを基材に用いており、柔軟性がある反面、強度や耐熱性が不十分であり、裏面での配線層形成プロセスを行うには適さない。
【0003】
そこで半導体基板をシリコン、ガラス等の支持基板に接着剤を介して接合することによって、裏面研削工程、裏面電極形成工程に十分耐えうるシステムが提案されている。この際に重要なのが、両基板を接合する際の接着剤である。この接着剤には基板を隙間なく接合できる接着性と、後のプロセスに耐えるだけの十分な耐久性が必要で、さらに最後に薄型ウエハを支持基板から簡便に剥離できることが必要である。このように、最後に剥離することからこの接着剤を仮接着剤と呼ぶことにする。
【0004】
これまでに公知の仮接着剤とその剥離方法としては、光吸収性物質を含む接着剤に高強度の光を照射し、接着剤層を分解することによって支持基板から接着剤層を剥離する技術(特許文献1)、及び、炭化水素系の熱溶融性の化合物を接着剤に用い、加熱溶融状態で接合・剥離を行う技術(特許文献2)が提案されている。しかし、前者はレーザ等の高価な装置が必要で、かつ基板1枚あたりの処理時間が長くなる等の問題があった。また後者は加熱だけで制御するため簡便である反面、200℃を超える高温での熱安定性が不十分であり、プロセスの適応範囲は狭かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−064040号公報
【特許文献2】特開2006−328104号公報
【特許文献3】米国特許第7541264号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、3次元半導体実装技術を実現するために、シリコーン粘着剤を仮接着剤層に用いる技術が提案されている(特許文献3)。これは基板同士を付加硬化型のシリコーン粘着剤を用いて接合し、剥離の際にはシリコーン樹脂を溶解、或いは分解するような薬剤に浸漬して両基板を分離するものである。そのため剥離に非常に長時間を要し、実際の製造プロセスへの適用は困難である。
【0007】
一方で、これら仮接着剤は、剥離した後は不要になるため、残存する接着層を有機溶剤で洗浄、除去する必要があり、洗浄用有機溶剤(非極性溶剤)に容易に溶解しなければならない。しかしながら、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際に使用される有機溶剤(極性溶剤)に対しては、難溶であることが求められている。このような有機溶剤への溶解性をコントロールすることは、本用途においては大変重要な特性である。
【0008】
従来のオルガノポリシロキサンに用いられる有機基、即ちメチル基、フェニル基を主として有するものは、アセトンやN−メチルピロリドン等の極性溶剤に対し、高い溶解性を有するものが多く、上記の用途では改良が必要であった。
【0009】
一方、オルガノポリシロキサンに非芳香族飽和炭化水素基を導入することで極性溶剤への耐溶剤性を向上できるが、高温(例えば270℃)加熱時に炭化水素基の分解からアウトガスの発生、更にはボイドが発生し熱安定性が不十分であった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、極性溶剤への耐溶剤性を維持しながら、熱安定性に優れる仮接着剤組成物及びそれを使用した薄型ウエハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、
(A)非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン、
(B)酸化防止剤、
(C)有機溶剤
を含有し、前記(A)成分が100質量部、前記(B)成分が0.5〜5質量部、前記(C)成分が10〜1000質量部であることを特徴とする仮接着剤組成物を提供する。
【0012】
このような仮接着剤組成物であれば、耐熱性(熱安定性)に優れる上、洗浄用の非極性有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶とすることができる。
【0013】
また、前記(B)成分の酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、有機リン化合物、及び有機硫黄化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることが好ましい。
このような化合物を酸化防止剤として用いれば、耐熱性をより向上させることができる。
【0014】
また、前記(A)成分の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは、重量平均分子量が2,000〜60,000、SP値が9より大きい極性溶媒に不溶であり、且つ下記(I)〜(III)で示される単位を含むオルガノポリシロキサン(A−1)であるか、又は該オルガノポリシロキサン(A−1)を原料として高分子量化したオルガノポリシロキサン(A−2)であることが好ましい。
(I)RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位):50〜99モル%
(II)RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位):0〜49モル%
(III)RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位):1〜15モル%
(前記R〜Rは一価の有機基であり、R〜Rで示される全有機基中の50〜80モル%は、同一又は異なる、下記環状構造のいずれかを含む非芳香族飽和炭化水素基
【化1】

であり、且つ10〜40モル%は、同一又は異なる、炭素数6〜15の置換又は非置換の一価の非環状飽和炭化水素基である。さらに、前記R〜Rで示される全有機基中の環状、非環状飽和炭化水素基以外は、同一又は異なる、炭素数1〜7の置換又は非置換の一価炭化水素基である。)
【0015】
(A)成分が上記オルガノポリシロキサンであれば、溶解性コントロールに特に優れた仮接着剤組成物となる。
【0016】
また、前記オルガノポリシロキサン(A−2)は、前記オルガノポリシロキサン(A−1)のうち、前記R〜Rで示される全有機基中の2〜10モル%が炭素数2〜7のアルケニル基であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a1)と、下記一般式(1)
【化2】

(式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、アルケニル基を除く炭素数1〜12の一価の炭化水素基を示す。nは0〜100の整数である。)
で示される1種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a1)の総アルケニル基に対して総SiH基が0.4〜1.0倍となる量の前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(a2)とを、白金族金属系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させたものであり、重量平均分子量が30,000〜200,000、且つSP値が9より大きい極性溶媒に不溶であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0017】
(A−2)が、上記オルガノポリシロキサン(A−1)を高分子量化したこのようなオルガノポリシロキサンであれば、接着性や耐熱性により一層優れる仮接着剤組成物となる。
【0018】
また、前記(C)成分の有機溶剤は、沸点が120〜240℃、SP値が9以下の炭化水素溶剤であることが好ましい。
このような有機溶剤であれば、引火点が高いため安全性が高く、かつ有機溶剤を塗工した後の加熱乾燥で揮発しやすく、膜内に留まりにくいため、仮接着剤組成物が基板接合後の加熱プロセスで高温に晒される際にも、接合面での気泡の形成を抑制することができる。
【0019】
また本発明は、回路形成面及び回路非形成面を有するウエハを、支持基板と接合して研削することで薄型ウエハを製造する方法であって、
前記回路形成面上及び前記支持基板表面上の少なくとも一方に前記本発明の仮接着剤組成物により接着層を形成し、該接着層を介して、前記ウエハの回路形成面と前記支持基板とを接合する接合工程、
前記支持基板を接合したウエハの前記回路非形成面を研削する研削工程、
前記研削後のウエハを前記支持基板から剥離する剥離工程、及び
前記剥離したウエハの回路形成面に残存する前記接着層を除去する除去工程を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法を提供する。
【0020】
このような薄型ウエハの製造方法であれば、剥離・除去工程において短時間で支持基板からウエハを剥離することが可能であり、また、薄型ウエハの製造工程中に接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりしたとしてもウエハが支持基板から剥離しないため、高効率の薄型ウエハの生産が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の仮接着剤組成物であれば、耐熱性に優れる上、非極性の有機溶剤には可溶で、短時間で支持基板から剥離することが可能である。また一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶で、かつ仮接着剤とした際の接着性も良好であり、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際に剥離しない仮接着剤組成物を提供することができる。
更に、本発明の仮接着剤組成物を用いた薄型ウエハの製造方法によれば、高効率の薄型ウエハの生産が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。
上述のように、主に3次元半導体実装技術を実現するために最適な、耐溶剤性を維持しつつ、熱安定性に優れる仮接着剤の開発が望まれていた。
【0023】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、後述する組成の仮接着剤組成物が接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶で、かつ、非極性の有機溶剤には可溶となる耐溶剤性を維持したまま、優れた耐熱性(熱安定性)を有することを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0024】
以下、本発明の仮接着剤組成物、それを用いた薄型ウエハの製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
<仮接着剤組成物>
本発明の仮接着剤組成物は、
(A)非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン、
(B)酸化防止剤、
(C)有機溶剤
を含有し、前記(A)成分が100質量部、前記(B)成分が0.5〜5質量部、前記(C)成分が10〜1000質量部であることを特徴とする。
特に、(A)非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン及び(B)酸化防止剤を含むことにより、優れた耐熱性及び耐溶剤性を示すものとなる。
【0026】
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンであり、仮接着剤組成物に含まれるオルガノポリシロキサンは1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。好ましく用いられるものとして、大きく分けて下記(A−1)、(A−2)の二つが挙げられる。以下、順に説明する。
【0027】
オルガノポリシロキサン(A−1)は重量平均分子量(Mw)〔GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算値〕が2,000〜60,000であり、SP値〔溶解度パラメーター(cal/cm1/2〕が9より大きい極性溶媒に不溶且つ下記(I)〜(III)で示される単位を含む非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンである。
(I)RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位):50〜99モル%
(II)RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位):0〜49モル%
(III)RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位):1〜15モル%
【0028】
上記(I)〜(III)で示される単位のR〜Rは、一価の有機基である。
特に溶解性の差を発現させる上で、環状構造を含む非芳香族飽和炭化水素基(非芳香族環状飽和炭化水素基)の含有量が重要であり、前記R〜Rのうち非芳香族環状飽和炭化水素基の含有量は、好ましくは50〜80モル%である。50モル%以上であれば、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤に難溶とすることが容易となる。一方80モル%以下であれば、溶解性の差がある上、適度な硬さとなるためシリコン基板に塗布後クラックが発生することもない。
【0029】
50〜80モル%であればSP値〔溶解度パラメーター(cal/cm1/2〕が9より大きい極性溶媒、例えばアセトン(SP:10.0)、N−メチルピロリドン(SP:11.2)に不溶となり、炭化水素系の非極性溶媒、例えばn−ヘキサン(SP:7.3)、イソドデカン(SP:7.7)に可溶となる。
【0030】
このような非芳香族環状飽和炭化水素基としては、下記環状構造のいずれかを含む非芳香族飽和炭化水素基、
【化3】

例えば、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、ノルボルニルエチル基等が挙げられるが、中でもシクロヘキシル基、ノルボルニル基が好ましい。
【0031】
また、溶解性の差と共にポリシロキサンの接合性を向上させるには、非環状飽和炭化水素基の含有量も重要となる。前記R〜Rのうち炭素数6〜15の置換、非置換の一価の非環状飽和炭化水素基の含有量は好ましくは10〜40モル%である。10モル%以上であれば、接合性の向上が期待でき、40モル%以下であれば、高温時にも粘度が極端に低下することがなく、十分な耐熱性が得られる。
【0032】
このような非環状飽和炭化水素基としては、n−ヘキシル基、オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられるが、より好ましくはn−ヘキシル基、n−ドデシル基である。
【0033】
前記R〜Rで示される全有機基中、上述の環状、非環状飽和炭化水素基以外の基としては、炭素数1〜7の置換又は非置換の一価炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等のアルケニル基等の不飽和炭化水素基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、メチル基、フェニル基、アルケニル基が好ましい。
【0034】
本発明の(A)成分の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンとして好適なオルガノポリシロキサン(A−1)は、上述の通り、T単位を50〜99モル%、D単位を0〜49モル%、M単位を1〜15モル%含む。
【0035】
(A)成分の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンとしては40℃を越えない温度で固体形状を有するものが取り扱い上好ましい。
T単位を50〜99モル%含むことで、(A)成分の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは40℃以下で固体になりやすく、基板間の接合に好適となる。
【0036】
D単位を49モル%以下含むことで、(A)成分の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは40℃以下で固体となりやすく、かつ、仮接着剤組成物に用いた場合にウエハと支持基板を十分に接合できる。
【0037】
また、(A)成分の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン中には、反応性の末端基、即ちシラノールや加水分解性残基が残存しないことが、後述する熱安定性の観点から好ましい。従って末端にM単位を導入する構造が好ましく、M単位の含有量としては1モル%以上含むことが好ましい。より好ましくは、1〜15モル%である。
【0038】
M単位を1〜15モル%含むことで、(A)成分の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは反応性末端基を十分低減した構造となる。1モル%以上であれば、シラノールや加水分解性残基等の反応性末端基を十分低減した構造とすることができる。また15モル%以下であれば、末端基が多くなりすぎることにより相対的に分子量が小さくなるという恐れもなく、好適である。
【0039】
M単位にて封止されていない分子末端基、即ちシラノール基、又はアルコキシシリル基等の加水分解性残基が存在する場合、これら反応性末端基の含有量は可能な限り少ない方が好ましい。シラノール基、及びアルコキシシリル基の末端残基が分子内に少量であれば、熱がかかった際に縮合反応による架橋が生成し、基板の剥離性が大きく変化してしまうことを抑制できるので好ましい。また、シラノール基のOH基、及びアルコキシシリル基(Si−OR:Rは原料として用いたアルコキシシランのアルコキシ基残基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピル基、イソプロピル基等)のOR基の総量が、全樹脂固形分中の5質量%以下、より好ましくは3質量%以下であることが好ましい。M単位の導入により、このような反応性末端基を所望の量まで減じることができる。
【0040】
上記構造のオルガノポリシロキサンは、原料となる加水分解性シランの加水分解、及び縮合反応を制御しながら行うことにより製造できる。
【0041】
原料として用いることができる加水分解性シランとしては、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、イソプロピルトリクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、n−ペンチルトリクロロシラン、イソペンチルトリクロロシラン、n−ヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、n−オクチルトリクロロシラン、n−デシルトリクロロシラン、n−ドデシルトリクロロシラン、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルトリクロロシラン(下記C1)、ビシクロ[2.2.1]ノニルトリクロロシラン(下記C2)、ジメチルジクロロシラン、n−プロピルメチルジクロロシラン、イソプロピルメチルジクロロシラン、n−ブチルメチルジクロロシラン、イソブチルメチルジクロロシラン、n−ヘキシルメチルジクロロシラン、n−オクチルメチルジクロロシラン、n−デシルメチルジクロロシラン、n−ドデシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチルジクロロシラン(下記C3)、ビシクロ[2.2.1]ノニルメチルジクロロシラン(下記C4)及びこれらの加水分解性基がメトキシ基、エトキシ基であるものが挙げられる。
【0042】
特に環状構造を複数有する下記(C1)〜(C4)は、endo体、exo体の立体異性体が存在するが、これらは問わず使用可能である。
【化4】

【0043】
(A)成分の非芳香族飽和炭化水素基含有ポリシロキサンの分子量の分布は非常に重要である。即ちGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて、ポリスチレン標準物質によって作製した検量線にそって得られる重量平均分子量の値で、2,000以上であることが好ましい。非芳香族飽和炭化水素基含有ポリシロキサンの重量平均分子量が2,000以上であれば、極性、非極性溶媒に対する溶解性の差が発現し、60,000以下であれば非芳香族飽和炭化水素基含有ポリシロキサンの分子量が再現性良く安定的に合成できる。より好ましい非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量の範囲としては、3,000〜50,000程度、さらに好ましくは5,000〜30,000程度が好ましい。
【0044】
このような分析、解析が可能なGPC装置としては、東ソー製のHLC−8120GPC、HLC−8220GPC、HLC−8230GPCが使用できる。
【0045】
オルガノポリシロキサン(A−2)は、前記オルガノポリシロキサン(A−1)を原料として高分子量化したものである。
好ましくは、前記(A−1)で示したオルガノポリシロキサンのうち、前記R〜Rで示される全有機基中の2〜10モル%が炭素数2〜7のアルケニル基であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a1)と、下記一般式(1)
【化5】

(式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、アルケニル基を除く炭素数1〜12の一価の炭化水素基を示す。nは0〜100の整数である。)
で示される1種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a1)の総アルケニル基に対して総SiH基が0.4〜1.0倍となる量の前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(a2)とを、白金族金属系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させたものであり、重量平均分子量が30,000〜200,000(GPCによるポリスチレン換算値)、且つSP値〔溶解度パラメーター(cal/cm1/2〕が9より大きい極性溶媒に不溶であるオルガノポリシロキサンである。
【0046】
この際、アルケニル基の含有量は、少なくともR〜Rで示される全有機基の2モル%〜10モル%である。アルケニル基の含有量が2モル%以上であれば、ヒドロシリル化反応による分子量増加が大きくなり、耐熱性等の物性に優れるオルガノポリシロキサンとなるため好ましい。また10モル%以下であれば、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性有機溶剤への溶解性が更に低くなり好ましい。
【0047】
このようなアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基が挙げられるが、反応性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0048】
(a1)成分の総アルケニル基に対する(a2)成分の総SiH量は、0.4〜1.0が好ましい。0.4以上であれば、分子量の増加は十分であり、所望の耐熱性、接合性が得られる。また、1.0以下であれば、樹脂の架橋が適度となりゲル化しにくく、また樹脂内に残存するSiH基も低減でき、接合後の耐熱試験の際に残存SiHに起因した発泡も抑制できるため好ましい。
【0049】
前記R〜Rのアルケニル基を除く炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、具体的にはメチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、デシル基、ドデシル基が例示される。特に好ましくはメチル基、シクロヘキシル基、フェニル基である。
【0050】
上記一般式(1)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの重合度nは好ましくは0〜100の整数であり、特に好ましくは0〜60の整数である。nが100以下であれば、合成の際、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a1)のアルケニル基とのヒドロシリル化反応が進みにくくなる恐れもなく、十分な反応が進行し、また高分子量化したオルガノポリシロキサンとシリコン基板との密着性も良好となる。
また、上記の範囲内であれば異なるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いて付加反応を行うことも可能である。
【0051】
このような高分子量化したオルガノポリシロキサンであれば、非極性の有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶である上、接合性、耐熱性に一層優れるオルガノポリシロキサンとなる。
【0052】
[高分子量化したオルガノポリシロキサンの製造方法]
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a1)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(a2)との反応は、例えばアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a1)を有機溶剤に溶解させ、ヒドロシリル化触媒である白金系の金属触媒を添加後、50〜150℃に加熱しながら、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(a2)を滴下することで、高分子量化したオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0053】
白金触媒はSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として(a1)成分の重量に対して1〜800ppm、特に2〜300ppm程度配合することが好ましい。
【0054】
これらヒドロシリル化付加反応後のオルガノポリシロキサンの分子量は、仮接着剤の特性、特に加熱時の熱変形、接着界面でのボイド発生等に影響する。
【0055】
付加反応後の高分子量化したポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いてポリスチレン標準物質によって作製した検量線に則って得られる重量平均分子量の値で、30,000〜200,000であることが好ましい。上記の重量平均分子量であれば、耐熱性に優れ、且つボイドが発生しないオルガノポリシロキサンとなる。より好ましい重量平均分子量の範囲としては、35,000〜170,000程度、さらに好ましくは40,000〜150,000程度が好ましい。
【0056】
[(B)成分]
本発明の組成物において、(B)成分の酸化防止剤は、特に熱安定性を向上させるために配合される。
本発明で使用される(B)成分の酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、有機リン化合物及び有機硫黄化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0057】
ヒンダードフェノール系化合物;
本発明で用いられるヒンダードフェノール系化合物は、特に限定されるものではないが、以下に挙げるヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
【0058】
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:IRGANOX 1330)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(商品名:Sumilizer BHT)、2,5−ジ−t−ブチル−ハイドロキノン(商品名:Nocrac NS−7)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール(商品名:Nocrac M−17)、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン(商品名:Nocrac DAH)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:Nocrac NS−6)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル(商品名:IRGANOX 1222)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:Nocrac 300)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:Nocrac NS−5)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(アデカスタブ AO−40)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(商品名:Sumilizer GM)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート(商品名:Sumilizer GS)、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−(α−メチル−シクロヘキシル)フェノール]、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)(商品名:シーノックス226M)、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(商品名:IRGANOX 1520L)、2,2’−エチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX 1076)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:アデカスタブ AO−30)、テトラキス[メチレン−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン(商品名:アデカスタブ AO−60)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 245)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(商品名:IRGANOX 565)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(商品名:IRGANOX 1098)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 259)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1035)、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:Sumilizer GA−80)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:IRGANOX 3114)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム/ポリエチレンワックス混合物(50:50)(商品名:IRGANOX 1425WL)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX 1135)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(商品名:Sumilizer WX−R)、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン(商品名:Sumilizer GP)等。
【0059】
ヒンダードアミン系化合物;
本発明で用いられるヒンダードアミン系化合物は、特に限定されるものではないが、以下に挙げるヒンダードアミン系化合物が好ましい。
【0060】
p,p’−ジオクチルジフェニルアミン(商品名:IRGANOX 5057)、フェニル−α−ナフチルアミン(Nocrac PA)、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)(商品名:Nocrac 224,224−S)、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(商品名:Nocrac AW)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(商品名:Nocrac DP)、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン(商品名:Nocrac White)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(商品名:Nocrac 810NA)、N,N’−ジアリル−p−フェニレンジアミン(商品名:Nonflex TP)、4,4’(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名:Nocrac CD)、p,p−トルエンスルフォニルアミノジフェニルアミン(商品名:Nocrac TD)、N−フェニル−N’−(3−メタクロリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン(商品名:Nocrac G1)、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(商品名:Ozonon 35)、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン(商品名:Sumilizer BPA)、N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(商品名: Antigene 6C)、アルキル化ジフェニルアミン(商品名:Sumilizer 9A)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(商品名:Tinuvin 622LD)、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]](商品名:CHIMASSORB 944)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(商品名:CHIMASSORB 119FL)、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:TINUVIN 123)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:TINUVIN 770)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(商品名:TINUVIN 144)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:TINUVIN 765)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:LA−57)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:LA−52)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び1−トリデカノールとの混合エステル化物(商品名:LA−62)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール及び1−トリデカノールとの混合エステル化物(商品名:LA−67)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物(商品名:LA−63P)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物(商品名:LA−68LD)、(2,2,6,6−テトラメチレン−4−ピペリジル)−2−プロピレンカルボキシレート(商品名:アデカスタブ LA−82)、(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−プロピレンカルボキシレート(商品名:アデカスタブ LA−87)等。
【0061】
有機リン化合物;
本発明で用いられる有機リン化合物は、特に限定されるものではないが、以下に挙げる有機リン化合物が好ましい。
【0062】
ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(商品名:SANKO−HCA)、トリエチルホスファイト(商品名:JP302)、トリ−n−ブチルホスファイト(商品名:304)、トリフェニルホスファイト(商品名:アデカスタブ TPP)、ジフェニルモノオクチルホスファイト(商品名:アデカスタブ C)、トリ(p−クレジル)ホスファイト(商品名:Chelex−PC)、ジフェニルモノデシルホスファイト(商品名:アデカスタブ 135A)、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト(商品名:JPM313)、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト(商品名:JP308)、フェニルジデシルホスファイト(アデカスタ 517)、トリデシルホスファイト(商品名:アデカスタブ 3010)、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト(商品名:JPP100)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:アデカスタブ PEP−24G)、トリス(トリデシル)ホスファイト(商品名:JP333E)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:アデカスタブ PEP−4C)、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:アデカスタブ PEP−36)、ビス[2,4−ジ(1−フェニルイソプロピル)フェニル]ペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:アデカスタブ PEP−45)、トリラウリルトリチオホスファイト(商品名:JPS312)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(IRGAFOS 168)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(商品名:アデカスタブ 1178)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:アデカスタブ PEP−8)、トリス(モノ,ジノニルフェニル)ホスファイト(商品名:アデカスタブ 329K)、トリオレイルホスファイト(商品名:Chelex−OL)、トリステアリルホスファイト(商品名:JP318E)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト(商品名:JPH1200)、テトラ(C12−C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト(商品名:アデカスタブ 1500)、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)ジホスファイト(商品名:アデカスタブ 260)、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン−トリホスファイト(商品名:アデカスタブ 522A)、水添ビスフェノールAホスファイトポリマー(HBP)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルオキシ)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフィン(商品名:P−EPQ)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニルオキシ)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフィン(商品名:GSY−101P)、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2,]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン(商品名:IRGAFOS 12)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(商品名:アデカスアブ HP−10)等。
【0063】
有機硫黄化合物;
本発明で用いられる有機硫黄化合物は、特に限定されるものではないが、以下に挙げる有機硫黄化合物が好ましい。
【0064】
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(商品名:Sumilizer TPL−R)、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート(商品名:Sumilizer TPM)、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート(商品名:Sumilizer TPS)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(商品名:Sumilizer TP−D)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート( 商品名:Sumilizer TL)、2−メルカプトベンズイミダゾール(商品名:Sumilizer MB)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート(商品名:アデカスタブAO−503A)、1,3,5−トリス−β−ステアリルチオプロピオニルオキシエチルイソシアヌレート、3,3’−チオビスプロピオン酸ジドデシルエステル(商品名:IRGANOX PS 800FL)、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクデシルエステル(商品名:IRGANOX PS 802FL)等。
【0065】
上記の酸化防止剤の中でも(A)成分の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン及び(C)成分の有機溶剤との相溶性を考慮すると、特に好ましくはアデカスタブ AO−60、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 1520L (以上、商品名)等が挙げられる。
【0066】
(B)成分の添加量としては、(A)成分100質量部に対して0.5〜5質量部、好ましくは1〜3質量部である。これより少ないと十分な耐熱効果が得られず、これ以上入れると(C)成分の有機溶剤を添加したときに相溶性が得られない。
なお、(B)成分は1種類に限定されるものではなく、複数種類を併用しても良い。
【0067】
[(C)成分]
(C)成分の有機溶剤は、SP値〔溶解度パラメーター(cal/cm1/2〕が9以下であることが望ましく、(A)成分の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン及び(B)成分の酸化防止剤を溶解し、スピンコート等、公知の塗膜形成方法によって膜厚1〜200μmの薄膜を形成できるものであれば好ましい。この際、より好ましい膜厚は5〜180μm、さらに好ましくは30〜150μmである。
【0068】
このように、(A)、(B)成分を溶解する(C)有機溶剤としては、ケトン、エステル、アルコール等の極性溶媒以外のものが使用でき、非芳香族炭化水素が好ましい。
【0069】
このような(C)有機溶剤の具体例として、特に限定されないが、ペンタン、へキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、ウンデカン、イソドデカン、リモネン、ピネン等が挙げられる。
【0070】
これらの中でスピンコート可能、かつ安全性も高い仮接着剤組成物を与える(C)有機溶剤としては、沸点が120〜240℃の炭化水素溶剤が好ましい。即ち、この観点からオクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、ドデカン、イソドデカン、リモネンが好ましい。沸点が120℃以上であれば、炭化水素溶剤の引火点も高いため好ましい。また、沸点が240℃以下であれば、炭化水素溶剤を塗工した後の加熱乾燥で揮発しやすく、膜内に留まりにくい。そのため、仮接着剤組成物が基板接合後の加熱プロセスで高温に晒される際にも、接合面での気泡の形成を抑制できるので好ましい。
【0071】
(C)成分の添加量としては、(A)成分100質量部に対して10〜1000質量部、好ましくは20〜200質量部である。これより少ないと仮接着剤組成物の粘度が高くなりすぎてウエハに塗布できず、これ以上入れると塗布後に十分な膜厚が得られない。
なお、(C)成分は1種類に限定されるものではなく、複数種類を併用しても良い。
【0072】
[その他の成分]
上記成分の他、更に本発明の仮接着剤組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の仮接着剤組成物に使用される成分を添加することができる。
例えば、塗布性を向上させるため、本発明の仮接着剤組成物に、公知の界面活性剤を添加してもよい。特に限定されるものではないが、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352(トーケムプロダクツ)、メガファックF171,F172,F173(大日本インキ化学工業)、フロラードFC430,FC431(住友スリーエム)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106、サーフィノールE1004,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40(旭硝子)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社油脂化学工業)が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0073】
<薄型ウエハの製造方法>
また、本発明では、回路形成面及び回路非形成面を有するウエハを、支持基板と接合して研削することで薄型ウエハを製造する方法であって、
前記回路形成面上及び前記支持基板表面上の少なくとも一方に、前記仮接着剤組成物により接着層を形成し、該接着層を介して、前記ウエハの回路形成面と前記支持基板とを接合する接合工程、
前記支持基板を接合したウエハの前記回路非形成面を研削する研削工程、
前記研削後のウエハを前記支持基板から剥離する剥離工程、及び
前記剥離したウエハの回路形成面に残存する前記接着層を除去する除去工程を含む薄型ウエハの製造方法を提供する。
【0074】
本発明の薄型ウエハの製造方法は、半導体回路を有するウエハと該ウエハの厚みを薄くするために用いる支持基板との接着層として、前述の仮接着剤組成物を用いることを特徴とする。本発明の製造方法により得られる薄型ウエハの厚さは、特に限定されないが、典型的には300〜5μm、より典型的には100〜10μmである。
【0075】
[接合工程]
前記接合工程は、回路形成面上及び支持基板表面上の少なくとも一方に、上記本発明のの仮接着剤組成物により接着層を形成し、該接着層を介して、ウエハの回路形成面と支持基板とを接合する工程である。ウエハは、一方の面が回路が形成された回路形成面であり、他方の面が回路非形成面であるウエハである。
【0076】
本発明が適用できるウエハは、特に限定されないが、通常、半導体ウエハである。該ウエハの例としては、シリコンウエハのみならず、ゲルマニウムウエハ、ガリウム−ヒ素ウエハ、ガリウム−リンウエハ、ガリウム−ヒ素−アルミニウムウエハ等が挙げられる。接合工程におけるウエハは研削工程において裏面研削される前のウエハであり、その厚さは、特に制限はないが、典型的には800〜600μm、より典型的には775〜625μmである。
【0077】
支持基板としては、シリコンウエハ、ガラスウエハ、石英ウエハ等が使用可能である。本発明においては、支持基板を通して接着層に放射エネルギー線を照射する必要はなく、支持基板の光線透過性は不要である。
【0078】
接着層は、前述の本発明の仮接着剤組成物を用いて、例えばスピンコート等により形成される。接着層はウエハの回路形成面上及び/又は支持基板上に形成される。このようにして形成された接着層を介してウエハは支持基板と接合される。接着層は、ウエハに形成される場合、該ウエハの回路形成面上に形成される。
【0079】
本発明の仮接着剤組成物により形成される接着層は加熱によって軟化する。接着層中の樹脂が軟化する温度範囲は80〜320℃、好ましくは100〜300℃、より好ましくは120〜260℃であり、この温度にて減圧下で、両基板(即ち、ウエハと支持基板)を均一に圧着することで、ウエハが支持基板と接合した接合基板が形成される。両基板を設置したチャンバー内を、減圧下、上記温度範囲に加熱することで接着層中の樹脂が一部軟化または融解した後、両基板を接触させ、加熱圧着することで、界面に気泡を挟むことなく、一様な接合界面を形成できる。接着層を介してウエハを支持基板と接合するとき、支持基板の温度は上記温度範囲であることが好ましい。これら接合温度にて接着層中の樹脂が十分軟化するため、ウエハの接合される面に存在する凹凸を隙間なく埋め込むことができる。圧着するときの荷重は、例えば8インチウエハ(直径200mm)で20kN以下、好ましくは10kN以下、より好ましくは7kN以下で接合可能である。
【0080】
ウエハ接合装置としては、市販のウエハ接合装置、例えばEVG社のEVG520IS、850TB;SUSS社のXBC300等が挙げられる。
【0081】
[研削工程]
研削工程は、支持基板を接合したウエハの回路非形成面を研削する工程である。即ち、接合工程にて接合した積層基板のウエハ裏面側を研削して、該ウエハの厚みを薄くしていく工程である。ウエハ裏面の研削加工の方式には特に制限はなく、平面研削盤等の公知の研削方式が採用される。研削は、ウエハと砥石に水をかけて冷却しながら行うことが好ましい。ウエハ裏面を研削加工する装置としては、(株)ディスコ製 DAG−810(商品名)等が挙げられる。
【0082】
[加工工程]
本発明の薄型ウエハの製造方法では、研削工程後剥離工程前に加工工程を含めることができる。加工工程は、回路非形成面を研削したウエハ、即ち、裏面研削によって薄型化されたウエハの回路非形成面側に加工を施す工程である。この工程にはウエハレベルで用いられる様々なプロセスが含まれるが、例としては、回路非形成面に対する電極形成、金属配線形成、保護膜形成等が挙げられる。より具体的には、電極等の形成のための金属スパッタリング、金属スパッタリング層をエッチングするウェットエッチング、金属配線形成のマスクとするためのレジストの塗布、露光、及び現像によるパターンの形成、レジストの剥離、ドライエッチング、金属めっきの形成、TSV形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成等、従来公知のプロセスが挙げられる。
【0083】
[剥離工程]
剥離工程は、研削後のウエハを接着層で支持基板から剥離する工程である。即ち、薄型化したウエハに様々な加工を施した後、ダイシングする前に支持基板から剥離する工程である。剥離方法としては、主にウエハと支持基板を、加熱しながら水平反対の方向にスライドさせることにより両基板を分離する方法、積層基板のうち一方の基板を水平に固定しておき、加熱しながらもう一方の基板を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げる方法、及び、研削されたウエハの研削面に保護フィルムを貼り、ウエハと保護フィルムをピール方式で剥離する方法等、多数の提案がなされている。
【0084】
本発明には、これらの剥離方法のいずれも適用可能であるが、水平スライド剥離方式がより適している。
【0085】
ウエハ、接着層、支持基板からなる積層体が加熱され、接着層が融解、或いは軟化した状態で力をかけることでウエハを支持基板から剥離することができる。加熱温度は、本発明で用いる接着層では好ましくは50〜300℃、より好ましくは60〜230℃、更により好ましくは70〜220℃である。
【0086】
これらの剥離を行う装置としては、EVG社のEVG850DB、SUSS社のXBC300等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0087】
[除去工程]
除去工程は、剥離したウエハの回路形成面に残存する接着層を除去する工程である。残存する接着層の除去は、例えば、ウエハを洗浄することにより行うことができる。
【0088】
除去工程には、接着層中の樹脂、特に(A)成分のオルガノポリシロキサンを溶解するような洗浄液であればすべて使用可能であり、具体的には、前述の(C)有機溶剤が使用可能である。これらの溶剤は、1種単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0089】
また、回路形成面に残存する接着層を除去しにくい場合は、上記溶剤に、塩基類、酸類を添加してもよい。塩基類の例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、アンモニア等のアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム塩類が使用可能である。酸類としては、酢酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の有機酸が使用可能である。これら塩基類、酸類の添加量は0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%とすることができる。
また、回路形成面に残存する接着層の除去性を向上させるため、既存の界面活性剤を添加することもできる。
【0090】
洗浄方法としては、上記洗浄液を用いてパドルでの洗浄を行う方法、スプレー噴霧での洗浄方法、洗浄液槽に浸漬する方法が可能である。温度は10〜80℃、好ましくは15〜65℃が適する。
【0091】
このような薄型ウエハの製造方法であれば、剥離工程において短時間で支持基板からウエハを剥離することが可能であり、また、薄型ウエハの製造工程中に接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりしたとしてもウエハが支持基板から剥離しないため、高効率の薄型ウエハの生産が可能となる。
【実施例】
【0092】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
[オルガノポリシロキサンの合成]
(合成例1)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにシクロヘキシルトリクロロシラン108.8g(0.5モル)、n−ヘキシルトリクロロシラン65.9g(0.3モル)、ジメチルジクロロシラン12.9g(0.1モル)、トリメチルクロロシラン10.9g(0.1モル)を仕込み、フラスコ内に攪拌しながら1時間で滴下し、滴下終了後、さらに80℃で1時間攪拌熟成を行った。室温まで冷却しながら静置して、分離してきた水相を除去し、引き続き10%硫酸ナトリウム水溶液を混合して10分間撹拌後、30分間静置し、分離してきた水相を除去する水洗浄操作をトルエン相が中性になるまで繰り返して反応を停止した。エステルアダプターを取り付け、オルガノポリシロキサンを含むトルエン相を加熱還流してトルエン相から水を除去し、内温が110℃に達してから更に1時間続けた後、室温まで冷却した。得られたオルガノポリシロキサン溶液を濾過して不溶物を除去し、引き続き減圧蒸留によりトルエンを除去して、固体のオルガノポリシロキサン(A−I)119.1gを得た。
【0094】
得られたオルガノポリシロキサン(A−I)は、T単位80モル%とD単位10モル%とM単位10モル%を含み、末端はオルガノポリシロキサン(A−I)100gあたりシラノール基を0.06モル含有し、外観は無色透明固体で重量平均分子量は44,000であった。全有機基中のシクロヘキシル基含有量は38モル%、n−ヘキシル基含有量は23モル%であった。また、R〜Rで示される全有機基中の50モル%がシクロヘキシル基、30モル%がn−ヘキシル基であった。
【0095】
(合成例2−1)
合成例1と同様な手法で、2Lフラスコに水468g(26モル)、トルエン70gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにノルボルニルトリクロロシラン275.6g(1.2モル)、n−ヘキシルトリクロロシラン65.8g(0.3モル)、ジメチルジクロロシラン25.8g(0.2モル)、メチルビニルジクロロシラン14.2g(0.1モル)、トリメチルクロロシラン21.8g(0.2モル)を仕込んだ以外は合成例1と同様に調製し、固体のオルガノポリシロキサン228.8gを得た。
【0096】
得られたオルガノポリシロキサンは、T単位75モル%とD単位15モル%とM単位10モル%を含み、100gあたりシラノール基を0.07モル、ビニル基を0.039モル含有する。外観は無色透明固体で重量平均分子量は9,300であった。全有機基中のノルボルニル基含有量は44モル%、n−ヘキシル基含有量は11モル%、ビニル基は3.7モル%であった。また、R〜Rで示される全有機基中の57%がノルボルニル基であり、14%がn−ヘキシル基であった。
【0097】
(合成例2−2)
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとして、合成例2−1で得た固形のオルガノポリシロキサン100gをトルエン100gに溶解し、固形分濃度50%の溶液を調製した。この溶液に、白金触媒を樹脂に対して白金原子で20ppm添加し、60℃に加温した状態で、ヒドロシリル基含有化合物として、下記式(2)で示される化合物(SiH当量 2287g/mol)44.6g(この量は、H/Vi比(総アルケニル基に対するSiH基の比率)で0.5に相当する)を滴下したところ、反応による発熱を観測した。100℃で2時間反応を行い、反応を完結させた。その後、減圧留去にて濃縮し、トルエンを留去して反応生成物を固形化し、オルガノポリシロキサン(A−II)を得た。また、この樹脂をGPCにて重量平均分子量Mwを測定したところ41,000であった。
【化6】

(式中、Meはメチル基を示す。)
【0098】
(合成例3−1)
合成例1と同様に、1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにノルボルニルトリクロロシラン160.7g(0.7モル)、n−ドデシルトリクロロシラン45.6g(0.15モル)、メチルビニルジクロロシラン7.1g(0.05モル)、トリメチルクロロシラン10.9g(0.1モル)を仕込んだ以外は合成例1と同様に調製し、固体のオルガノポリシロキサン143.8gを得た。
【0099】
得られたオルガノポリシロキサンは、T単位85モル%とD単位5モル%とM単位10モル%を含み、100gあたりシラノール基を0.1モル、ビニル基を0.034モル含有する。外観は無色透明固体で重量平均分子量は6,100であった。全有機基中のノルボルニル基含有量は56モル%、n−ドデシル基含有量は12モル%、ビニル基は4.0モル%であった。また、R〜Rで示される全有機基中の74%がノルボルニル基であり、16%がn−ドデシル基であった。
【0100】
(合成例3−2)
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとして、合成例3−1で得た固形のオルガノポリシロキサン100gを用いて、ヒドロシリル基含有化合物として、下記式(3)で示される化合物(SiH当量 1547g/mol)31.6g(この量は、H/Vi比で0.6に相当する)を用いる以外は、合成例2−2と同様な反応を行い、重量平均分子量46,400のオルガノポリシロキサン(A−III)を得た。
【化7】

【0101】
(A)成分として上記合成例にて合成したオルガノポリシロキサンA−I、A−II、A−IIIと、(B)成分及び(C)成分をそれぞれ表1に記載した組成で配合し、その後、撹拌、混合、溶解した後、テフロン(登録商標)製0.2ミクロンフィルターで精密ろ過を行って、実施例1〜3までの本発明の仮接着剤組成物及び比較例1〜3までの仮接着剤組成物を得た。
【0102】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
表1の実施例1〜3及び比較例1〜3に示した組成物を用い、片面に回路を形成した8インチシリコンウエハ(直径:200mm、厚さ:725μm)上にスピンコートにて表1記載の膜厚で接着層を形成した。下記の要領で外観を確認した上で、8インチガラス基板(ガラスウエハ)を支持基板とし、この支持基板と、接着層を有するシリコンウエハを真空接合装置内で表1に示す接着温度にて接合し、ウエハ、接着層、及び支持基板からなる積層体を作製した。その後、下記試験を行った。また、耐溶剤性については、別途実験基板を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
[外観]
スピンコート後の塗膜を、ホットプレート上で150℃、2分乾燥を行い、膜内の溶剤を完全に留去した後、目視による塗膜外観、指触によるタック感を確認した。クラック、タックのないものを良好(○)、クラック、タックが認められるものを不良(×)で示す。
【0104】
[接着性試験]
8インチのウエハ接合は、EVG社のウエハ接合装置520ISを用いて行った。接合温度は表1に記載の値、接合時のチャンバー内圧力は10−3mbar以下、荷重は5kNで実施した。接合後、室温まで冷却した後の界面の接着状況を目視で確認し、界面での気泡等の異常が発生しなかった場合を○、異常が発生した場合を×で示す。
【0105】
[裏面研削耐性試験]
グラインダー(DAG810 DISCO製)を用いてシリコン基板の裏面研削を行った。最終基板厚50μmまでグラインドした後、光学顕微鏡にてクラック、剥離等の異常の有無を調べた。異常が発生しなかった場合を○、異常が発生した場合を×で示す。
【0106】
[耐熱性試験]
シリコン基板を裏面研削した後の積層体を窒素雰囲気下の250℃オーブンに2時間入れた後、270℃のホットプレート上で10分加熱した後の外観異常の有無を調べた。外観異常が発生しなかった場合を○、外観異常が発生した場合を×で示す。
【0107】
[剥離性試験]
EVG社のEVG850DBを用いて、耐熱性試験を行った後の積層基板を再び220℃に加熱しながら、ウエハと支持基板を水平反対の方向にスライドさせて分離した。分離できた場合を良好(○)とし、分離できなかった場合を不良(×)とした。
【0108】
[洗浄性試験]
剥離性試験後のウエハの回路形成面をイソドデカンにより300秒間パドル洗浄した。洗浄後、ウエハの回路形成面を観察し、残存物が認められないものを良好(○)とし、残存物が認められたものを不良(×)とした。
【0109】
[耐溶剤試験]
6インチウエハ(直径:150mm)に、実施例1〜3、比較例1〜3までの組成物をスピンコートにて30μm厚の塗膜を形成し、150℃/2分後、200℃/2分加熱乾燥させた。その後、この塗膜を25℃でN−メチルピロリドン(NMP)溶液に10分浸漬し、溶解の有無を目視でチェックした。樹脂の溶解が認められないものを良好(○)とし、樹脂の溶解が認められたものを不良(×)で示す。
【0110】
【表1】

【0111】
上記表1に示されるように、(B)成分の酸化防止剤を添加していない比較例1〜3では耐熱試験時にボイドが発生するが、実施例1〜3では酸化防止剤の効果により耐熱性に優れる。つまりオルガノポリシロキサン、酸化防止剤を含む本発明の仮接着剤組成物であれば上記の要求特性を満たせることが示された。
【0112】
以上より、本発明の仮接着剤組成物であれば、接着性に優れ、非極性の有機溶剤には可溶で、一方で、接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりする際等に使用する極性の有機溶剤には難溶である上、耐熱性にも優れる仮接着剤組成物となることが示された。さらに、本発明の薄型ウエハの製造方法であれば、剥離工程において短時間で支持基板からウエハを剥離することが可能であり、また、薄型ウエハの製造工程中に接合基板の半導体側にフォトレジストを塗布したり、除去したりしたとしてもウエハが支持基板から剥離しないため、高効率の薄型ウエハの生産が可能となる。
【0113】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサン、
(B)酸化防止剤、
(C)有機溶剤
を含有し、前記(A)成分が100質量部、前記(B)成分が0.5〜5質量部、前記(C)成分が10〜1000質量部であることを特徴とする仮接着剤組成物。
【請求項2】
前記(B)成分の酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、有機リン化合物、及び有機硫黄化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の仮接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の非芳香族飽和炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは、重量平均分子量が2,000〜60,000、SP値が9より大きい極性溶媒に不溶であり、且つ下記(I)〜(III)で示される単位を含むオルガノポリシロキサン(A−1)であるか、又は該オルガノポリシロキサン(A−1)を原料として高分子量化したオルガノポリシロキサン(A−2)であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の仮接着剤組成物。
(I)RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位):50〜99モル%
(II)RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位):0〜49モル%
(III)RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位):1〜15モル%
(前記R〜Rは一価の有機基であり、R〜Rで示される全有機基中の50〜80モル%は、同一又は異なる、下記環状構造のいずれかを含む非芳香族飽和炭化水素基
【化1】

であり、且つ10〜40モル%は、同一又は異なる、炭素数6〜15の置換又は非置換の一価の非環状飽和炭化水素基である。さらに、前記R〜Rで示される全有機基中の環状、非環状飽和炭化水素基以外は、同一又は異なる、炭素数1〜7の置換又は非置換の一価炭化水素基である。)
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサン(A−2)は、前記オルガノポリシロキサン(A−1)のうち、前記R〜Rで示される全有機基中の2〜10モル%が炭素数2〜7のアルケニル基であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a1)と、下記一般式(1)
【化2】

(式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、アルケニル基を除く炭素数1〜12の一価の炭化水素基を示す。nは0〜100の整数である。)
で示される1種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a1)の総アルケニル基に対して総SiH基が0.4〜1.0倍となる量の前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(a2)とを、白金族金属系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させたものであり、重量平均分子量が30,000〜200,000、且つSP値が9より大きい極性溶媒に不溶であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項3に記載の仮接着剤組成物。
【請求項5】
前記(C)成分の有機溶剤は、沸点が120〜240℃、SP値が9以下の炭化水素溶剤であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の仮接着剤組成物。
【請求項6】
回路形成面及び回路非形成面を有するウエハを、支持基板と接合して研削することで薄型ウエハを製造する方法であって、
前記回路形成面上及び前記支持基板表面上の少なくとも一方に、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の仮接着剤組成物により接着層を形成し、該接着層を介して、前記ウエハの回路形成面と前記支持基板とを接合する接合工程、
前記支持基板を接合したウエハの前記回路非形成面を研削する研削工程、
前記研削後のウエハを前記支持基板から剥離する剥離工程、及び
前記剥離したウエハの回路形成面に残存する前記接着層を除去する除去工程を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法。

【公開番号】特開2013−82801(P2013−82801A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223233(P2011−223233)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】