仮眠微生物による水質改善方法
【課題】好気性みろく種菌を仮眠状態で棲息させ、用水中で仮眠を解き活性化させることができる棲息環境を用いて水質改善する。
【解決手段】コアを炭で作り、炭団状のコアに水、酸素、飼、微生物を適時、適切補給制御することが可能な棲息環境とする。紐を付けて装脱容易としたり、雑菌侵入に対しては復帰手段を備える等して、各種用水を効率よく浄化、改善する。
【解決手段】コアを炭で作り、炭団状のコアに水、酸素、飼、微生物を適時、適切補給制御することが可能な棲息環境とする。紐を付けて装脱容易としたり、雑菌侵入に対しては復帰手段を備える等して、各種用水を効率よく浄化、改善する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮眠微生物の応用に係り、例えば海底汚泥の分解浄化や稲作や野菜等の水耕栽培への応用に供する用水を水質浄化等水質改善する仮眠微生物による水質改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤潮の異常発生などに見られる海洋汚染は、魚類に多大の影響を与えている。特に閉鎖水域において生産される養殖漁場等の水産資源に及ぼす影響が深刻であり、閉鎖水域に赤潮が押し寄せてきた場合には、ほとんど全ての養殖魚が死滅してしまう。また、農産物にあっては、連作障害への対策や、化学肥料による土壌汚染等を改善して食の安全性を確保することも緊急課題とされている。これら食物供給基地の環境修復のため微生物活用の研究が進められており、今後は微生物活用への依存度が大きい。
【0003】
微生物の研究結果としては、本願発明者等が既に開発した、例えば特許第3311402号公報に示される廃水浄化剤、液状廃水浄化剤、並びに廃水浄化方法等が知られている。この公報に示される浄化剤の製造方法は、その特許請求の範囲に記載の通り、バチルス・ブレビスの近縁である好熱性C−1菌と、バチルス・ブレビスの近縁の種である好熱性C−3菌と、バチルス・ステアロサーモフィルスか又はその近縁の種である好熱性C−4菌との混合菌であると共に、好気条件下で有機素材の分解能、並びに耐熱性酵素及びシャぺロニンの生産能を有する好熱性みろく種菌を使用する廃水浄化剤の製造方法であって、前記好熱性みろく種菌を有機素材に添加し、好気条件下且つ50乃至90℃で発酵させることを特徴とする。
【0004】
このようにして製造された廃水浄化剤は、好熱性みろく種菌由来の耐熱性酵素やシャぺロニン等の安定性・持続力等に優れた抗酸化機能性成分を多く含んでいる。前記耐熱性酵素の常温下における活性の持続力は、常温菌由来の酵素が1週間以内であるのに対し、1年程度と格別長い。また、この耐熱性酵素は、廃水に含まれる例えば油脂類等の有機物の分解能を有すると共に、エタノール等の有機溶媒等によっても失活しない。シャぺロニンとは、酵素の構造を保持等することによって、酵素が安定な活性を示すことができるように手助けをする蛋白質であるが、常温菌由来のシャぺロニンではATP(アデノシン−5’−三リン酸)のエネルギーが必要であるのに対し、好熱性みろく種菌由来のシャぺロニンではATPのエネルギーがなくても働く性質がある。そのため、この好熱性みろく種菌由来のシャぺロニンは、各種の環境で前記耐熱性酵素等の変性を防止し、その働きを助けることができる。このことから、当該廃水浄化剤は、好熱性みろく種菌が固定化された状態で長期保存が可能であると共に、既に耐熱性酵素やシャぺロニン等の抗酸化機能性成分を多く含んでいるので、好熱性みろく種菌等の好熱性細菌を単体で添加する場合と比べて廃水浄化に対する即効性があるという利点がある。さらに、このシャペロニンは、田の給水中に供給することにより、単なる水質浄化を超えて、稲の生息を格別向上する効果も見出されている。
【0005】
このように、水質浄化のための浄化剤は種々研究され、開発されている。水環境修復目的に微生物の活用を実現化するには、微生物類を有効に固定し、微生物の水中拡散の制御とコントロール技術の向上を図り、微生物の的確で効率的な補給管理が要求される。
【0006】
従来の微生物を固定し、水質浄化する手段としては、特開平5−306183号公報(連続した空隙を有するセメント硬化体とそれを用いた水質浄化システム)、特開平9−285287号公報(担体及びその製造法)、特許公開2002−34384号公報(魚類等の人工保護増殖機能を有する窯業製品)、特開2004−160279号公報(水質浄化用結合型中空ブロック)等の例がある。
【0007】
特開平5−306183号公報に示されるセメント硬化体は、硬化体の表面に凹凸を設け、凹部内に有害物質吸着材料を挿入するというものである。凹部内に有害物質吸着材料を担持させる目的で構成されたものであるため、微生物を担持させたとしても汚泥物質を分解すること等はできない。
【0008】
特開平9−285287号公報に示される担体は、球状体の内部を空洞とし、かつ空洞部と外部とを連通孔によって連通した平均直径数mmの中空球状体(壺型担体)であり、小粒の壺の内外表面に微生物層を形成するというものである。直径数mmの壺型単体は相応の浄化効果が期待されるが、その集合体を如何に海等の水中に配置するか等については何ら示されていない。海や河川或いは農業用水路での応用では、これら微小な微生物担体を如何なる手段で如何に配置するかが重要な課題である。
【0009】
特許公開2002−34384号公報に記載の窯業製品は、窯業素材で成型した略球状のコンクリート擬石内を中空構造として、擬石に複数の貫通穴と開口部を設け、中空部内には炭素材で形成した炭素繊維から成る支持体を配置し、かくして構成される人工藻場により、魚類等の増殖機能を図ったものである。これは、従来コンクリート製であった人工藻場を窯業製品として構成したもので、コンクリート容器に代えて比較的大型の擬石容器を形成したものであると言える。人工藻場としては利用できるが、微生物を積極的に担持させる担体として構成されたものではない。しかも、窯業製品であるので、コンクリート製品に比べ価格が相当高くなる可能性が高い。
【0010】
特開2004−160279号公報に記載の水質浄化用結合型中空ブロックは、複数のブロック要素を組み合わせて中空構造のブロック本体を構成し、各ブロックを相互に結合できるよう、ブロック表面に結合具を設けたものである。ブロック本体には、内部と外部とを通じる開口部が設けられている。ブロック本体の中空部分には、水質浄化機能を発揮させるため、牡蠣殻や木炭、活性炭などの浄化部材を使用できるとされている。しかし、これら浄化部材に微生物を生息させる技術は示されていない。また、中空構造のブロック本体は、ポーラスコンクリートで形成できるとされているが、中空のポーラスコンクリートを形成し、かつ結合具を設ける場合には、構造複雑で成型困難であり、かつ結合具間を相互に締結する鉄筋類を多量に組み合わせねば強度保持できないであろうと懸念される。即ち、コストが高く、海洋や、河川、農業用水路等に安価に設置するのが難しい。
【0011】
水質浄化や水中の汚泥分解に関する微生物の応用技術は、この他過去に幾つかの事例がある。しかし、微生物は海流や波力、河川の流速等の影響を受けて湖沼水中でも浮遊、拡散して分散され希薄状態に陥り、その機能を発揮できない実態にある。このように従来は水中微生物を安定的、且つ長期的に管理状態で目的水域に定着状態で棲息させることが困難であった。
【特許文献1】特許第3311402号公報、第1頁
【特許文献2】特開平5−301618号公報、第1頁、図1
【特許文献3】特開平7−285287号公報、第1頁、図1
【特許文献4】特許公開2002−34384号公報、第1頁、図1
【特許文献5】特開2004−160279号公報、第1頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、仮眠微生物の棲息環境を好適とすることにより、効果的、安価で実用性高く長期安定して水質浄化及び水質改善できる仮眠微生物による水質改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決することができる本発明の仮眠微生物による水質改善方法は、海水や淡水等用水種別に応じて選択された目的微生物を多孔質微生物担持体に先行棲息させ、前記多孔質微生物担持体を乾燥させることにより、前記目的微生物を仮眠させ、前記多孔質担持体をコアとして、これとそれを包囲する外殻とで目的微生物仮眠棲息環境を形成し、前記仮眠棲息環境中の前記多孔質微生物担持体を用水中に浸漬湿潤させて、前記目的微生物の仮眠を解除し、機能実現することを特徴とする。
【0014】
また、目的微生物を担持可能の多孔質微生物担持体をコアとして、これとそれを包囲する外殻とで目的微生物の存在しない微生物棲息環境を形成し、前記棲息環境を前記目的微生物を培養する溶液中に浸すことにより、又はこの水溶液を散布することにより、前記多孔質微生物担持体に目的微生物を担持させ、その後、前記多孔質微生物担持体を乾燥させて、前記目的微生物を仮眠させて、前記棲息環境を目的微生物仮眠棲息環境と為し、前記微生物仮眠棲息環境中の多孔質微生物担持体を用水中に浸漬湿潤させることにより、前記目的微生物の仮眠を解除し、機能実現することを特徴とする。
【0015】
前記コアは炭や炭団で構成することができる。炭、例えばαカーボンは、直径0.01〜0.02mmの多角形格子を組み合わせてなる蜂の巣状の壁面を有して成り、比表面積約600m2/gで、微細な孔部並びにその壁面内の更なる微小な隙間を微生物の棲家とすることができる。単体では、強度上どうしても外殻が必要であるが、外殻は網状のものであってもよく、また炭団の表面に強度保持用の網をかけてまとめあげること等もできる。通常炭団は、木炭、石炭の粉末を糊で固めて球状に仕上げたものの総称であるが、石炭よりも木炭の方が好ましい。形は球状でなくても角でも良い。炭団が大径(例えば直径10cm以上)の場合には、各炭団にはアンカー付の紐を付けておき、外核容器内の出し入れを容易に為し得るようにすることもできる。
【0016】
前記外殻は透水性コンクリートブロックで構成することができる。透水性コンクリートとしては、本発明者等が既に販売しているポラカブル(商品名)を用いるのが好ましい。ポラカブルは、直径数mm〜40mmの栗石又は砕石をバインダー剤を用いて丸く固めたものであるが、この球形内にコアを収納したり、球形を角形としたりすることで対応できる。ポラカブル仕様のコンクリートブロックでは、透水性が高く、内部コアを常時環境水中に開放した形で保持することができる。
【0017】
前記外殻は透水性コンクリートと、水密性コンクリートとの複合物で構成することもできる。外殻は、コアの表皮を形成するだけの他、海水仕様、淡水仕様、或いは循環流仕様等用途に応じて相応に形成されるものであり、場合によっては水密性コンクリートのみで構成することもある。前記コアを固形化し、前記外殻の1部には開口部分を設け、当該固形化物の外表面の1部を前記用水に直接接触させることもできる。
【0018】
前記コア又は及び外殻には、外部からコア内部に通ずる充填パイプを布設し、このパイプを通じて適時酸素又は水或いは微生物を充足制御することができる。充填パイプには補給管を接続し、補給管を通じて酸素(空気)や、水、微生物、微生物の飼等を送ることができる。好気性の微生物では、飼及び酸素供給により、その効能を増幅し、かつ持続させることができる。水の供給では、繁殖した微生物をコア外に排出することができる。従来例で示したシャペロニンは、これを植物等の生物に吸収させることにより、生育を促進できることが知られている。先行棲息の原理により一度棲息させた微生物は半永久的に永住させることができるが、それでも雑菌類の繁殖により効能が途絶える可能性はある。この場合には、水及び酸素、飼並びに新たな微生物の供給により、棲息環境を復帰させることもできる。
【発明の効果】
【0019】
以上の構成により、本発明の仮眠微生物による水質改善方法では、微生物をコアに仮眠させた状態で各用途に提供できる。コアに紐を付けておけば、コアの用水中での出し入れが自在であり、各種用途に対応できる。
【0020】
コアの外に設ける外殻を透水性コンクリートブロックとする場合には、コアを常時用水中に浸した状態にすることができ、しかも透水性コンクリートは高強度に形成できるので、棲息環境を常時安定した状態で海や河川で利用できる。
【0021】
コア内部に充填パイプを設けて、これを陸上等外部と接続される補給パイプと接続する場合には、水、酸素、飼、新たな微生物を適時適切に供給することができ、微生物を最良環境で育成でき、最大効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最適の形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るコア及び外殻から成る棲息環境HE1を示す断面図である。木炭製のコア2を透水性コンクリート製の外殻3で包んで構成している。
【0024】
この棲息環境HE1は、半球形の外殻部品3A、3Bの一方に木炭3を載せ、他のコアを被せ接合して作ることができる。微生物4は、水溶液の形態で、最初からコア2に棲息、仮眠させておいてもよく、成型後水溶液中に浸漬して、乾燥し、棲息させることもできる。透水性コンクリートは、直径数mm〜40mmの栗石又は砕石をバインダー剤で接着して作ることができる。外殻直径は20cm〜2m級のものまで種々作ることができる。転動防止のため、底部を平らに仕上げることもできる。
【0025】
図1に示した棲息環境HE1は、単独又は複数個組み合わせ、目的とする水域、例えば河川や海に沈めておくことができる。水中では、コア2の中の微生物4が活性化し、水質浄化すると共に、余剰微生物の放出により、用水中の生物の育成を図ることができる。
【0026】
図2に示す棲息環境HE2は、図1のものに対し、外殻形状を反台形状とした点が異なる。上部を開放した容器形状を為す角形容器部5内に木炭を入れてコア6を形成し、その上に蓋7を固定して成る。容器部5及び蓋7は透水性コンクリートブロックで成型する。反台形状の例で示すが、これに限定されず、台形状、筒状であっても同じである。図1のものに対し、形状が角であるので安定性が良い。微生物4の導入方法は、図1のものと同様である。主な用途は海水中に浸漬して用いられるので、海底吊下げ又は吊上げのため、蓋7の部分にフックを付属させておくと良い。複数設置するとき、相互の間に隙間を介在させるため、形状を完全箱型にしない方が望ましい。
【0027】
図3に示す棲息環境HE3は、図1に示したものに対し、コア2の中心部へ向けて、充填パイプ8を付設したものである。図1と同一機能を果す部材には同一参照符号を付けて示してある。この充填パイプ8は、外部圧送装置(図示せず)と接続される補給パイプ9と接続されるようになっており、補給パイプ9から水、酸素、微生物の飼、あるいは微生物4等を補充できる。
【0028】
図4に示す棲息環境HE4は、図2に示すものに対しコア6の中心部へ向けて充填パイプ8を付設したものである。図2と同一機能を果す部材には同一参照符号を付け示してある。充填パイプ8の機能については、図3に示したものと同一である。
【0029】
図5に示す棲息環境HE5は、コア10を炭団とし、外殻は省略したものである。但し、強度保持上、外殻に代わる強度保持手段は必要である。湿潤状態で使用するため、糊は樹脂糊など水で溶けないものを使用する。外殻を省略するため、強度は比較的弱いが、用水との接触効率は良く、効能が高い。
【0030】
図6に示す棲息環境HE6は、炭団製のコア11内に透水性コンクリートブロック等による透水体12を設け、かつアンカー13付の紐14を付け、さらに前記透水体12の中央に向けて充填パイプ8を設けている。
【0031】
棲息環境HE6では、透水体12に対し、充填パイプ8を介して酸素、微生物(369)、水、飼を任意に供給できるので、微生物を常時最大効率で繁殖させ、必要に応じて水を多量供給することにより、微生物を外部に吐き出すことまでできる。さらに、紐14を取付けているので、用水からの引出し及び装着を容易に行うことができる。なお、紐14の一端に浮き14Fを設けておけば、これを水上に浮遊させることにより、槽内からの取出しを容易に行うことができる。この場合、補給パイプ9は、柔軟ホースで構成しておくのが好ましい。コア11の表面を、さらに透水性コンクリートブロックで覆うのも構わない。表面の汚れを防止できる。
【0032】
図7は、図3、図4、図6で示した充填パイプ付の棲息環境HE3、HE4、HE6の海水中での応用例を示す説明図である。これら充填パイプ付の棲息環境をHEPと総称する。
【0033】
海15の海水16中には、養殖イカダ等養魚区域17が定められている。この外側に複数の棲息環境HEPを沈めて配置している。この配置の仕方は、一層であっても多層であっても良く、湾の仕切り壁として構成しても良い。海水16が汚染すると、棲息環境中に棲息する微生物が活発に活動し、海水浄化することができる。赤潮等は、直接棲息環境に触れなくとも、棲息環境の周辺には微生物が多量に散乱しているので、棲息環境HEPの量を適切にすることにより、赤潮の養魚区域17への侵入を阻止することができる。
【0034】
前記棲息環境HEPに設けた充填パイプ8を、補給パイプ9を介して陸上18の補給装置19と接続している。補給装置19にはポンプ20を付属し、自動又は手動でポンプ20を作動させることにより、各棲息環境HEPに水、酸素(空気)、飼、微生物を夫々適切に供給することができる。補給パイプ9には、温度センサ、ph検出機、内視鏡等のセンサ類を備えることもできる。また、コア内の水を吸引し、水質検査することもでき、完全なフィードバック制御することもできる。
【0035】
補給の仕方について示すと、第1に酸素(空気)を供給できる。酸素の供給は、必ずしも連続的でなくとも間欠的でも良い。各棲息環境HEPの大きさや、深度等によりその量を変更する。タイマを設け、全自動で行うことができる。第2に飼を送ることができる。飼は海底のヘドロ成分で良いので特別のものを準備する必要はないが、適時タンパク質など栄養成分を供給できる。肥料成分も供給できる。補給し過ぎを防止するため間欠的に行うことを基本とする。第3に、水を送ることができる。この水は酸素供給と共に行うこともできるが、単独とすることもできる。水の供給により棲息環境を洗浄できるのみならず、内部に棲息する微生物を海水中に送り出すこともできる。従って、赤潮等の発生に併せてその浄化機能を最大限に発揮させることができる。第4に、微生物を補充することもできる。例えば、先行棲息が破られ、汚染によって先行棲息させた微生物が死滅してしまったような場合、まずは水を強く流して清掃し切り、次いで、所要の栄養源と共に目的菌を送ることにより、機能復帰できる。海水の場合には、棲息環境HEPを装脱困難であるので、特に有効である。
【0036】
図8は、外殻を為す槽21の内部に、図5で示したようなコア10や単独炭22を入れ、その上部に透水性コンクリートブロック製の蓋23をし、この蓋23を通して充填パイプ8を布設したものである。底部には排水孔24が設けられている。水25を上方から流し込み、排水孔24から排水することにより、水25を浄化することができる。また、排水孔24から排出する水25の中に微生物を含めることができる。
【0037】
図9は、水密性コンクリートブロックで枠26を作り、この枠26に多数の窓27を設けて、内部コア28を各窓27から覗ませることにより、透水性コンクリートと同様の効果を出すようにしたものである。コア28を炭とする場合、炭が大きな窓27から脱出してしまう可能性があるので、その防止のため、少なくとも窓27の付近は糊や網等用いて炭を固定しておくことが必要である。
【0038】
図8及び図9で示した棲息環境HE7、HE8は、田の給水装置等として用いることができる。即ち、田の一画に配置して給水することにより、水質浄化でき、しかも排水中に好気性のみろく種菌等微生物を混入させることができ、稲の生育を促進することができる。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計的変更を行うことができ、各種態様で実施する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る微生物棲息環境を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る微生物棲息環境を示す断面図である。
【図3】図1の棲息環境に充填パイプを備えた実施形態を示す断面図である。
【図4】図2の棲息環境に充填パイプを備えた実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態に係る微生物棲息環境を示す断面図である。
【図6】図5に示す棲息環境にさらに紐及び充填パイプを備えた棲息環境を示す断面図である。
【図7】本発明の棲息環境の海水への応用例を示す説明図である。
【図8】本発明の田給水への応用例に係る棲息環境の断面図である。
【図9】水密性コンクリート製の枠に窓を設けて透水化した実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
HE(HE1〜8) 棲息環境
2、6、10、11、28 コア
3、5、N 外殻
4 微生物
7、23 蓋
8 充填パイプ
9 補給パイプ
12 芯材
13 イカリ
14 紐
14F 浮き
15 海
16 海水
17 養魚域
18 陸
19 補給装置
20 ポンプ
21 槽
22 単独炭
24 排水孔
25 水
26 枠
27 窓
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮眠微生物の応用に係り、例えば海底汚泥の分解浄化や稲作や野菜等の水耕栽培への応用に供する用水を水質浄化等水質改善する仮眠微生物による水質改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤潮の異常発生などに見られる海洋汚染は、魚類に多大の影響を与えている。特に閉鎖水域において生産される養殖漁場等の水産資源に及ぼす影響が深刻であり、閉鎖水域に赤潮が押し寄せてきた場合には、ほとんど全ての養殖魚が死滅してしまう。また、農産物にあっては、連作障害への対策や、化学肥料による土壌汚染等を改善して食の安全性を確保することも緊急課題とされている。これら食物供給基地の環境修復のため微生物活用の研究が進められており、今後は微生物活用への依存度が大きい。
【0003】
微生物の研究結果としては、本願発明者等が既に開発した、例えば特許第3311402号公報に示される廃水浄化剤、液状廃水浄化剤、並びに廃水浄化方法等が知られている。この公報に示される浄化剤の製造方法は、その特許請求の範囲に記載の通り、バチルス・ブレビスの近縁である好熱性C−1菌と、バチルス・ブレビスの近縁の種である好熱性C−3菌と、バチルス・ステアロサーモフィルスか又はその近縁の種である好熱性C−4菌との混合菌であると共に、好気条件下で有機素材の分解能、並びに耐熱性酵素及びシャぺロニンの生産能を有する好熱性みろく種菌を使用する廃水浄化剤の製造方法であって、前記好熱性みろく種菌を有機素材に添加し、好気条件下且つ50乃至90℃で発酵させることを特徴とする。
【0004】
このようにして製造された廃水浄化剤は、好熱性みろく種菌由来の耐熱性酵素やシャぺロニン等の安定性・持続力等に優れた抗酸化機能性成分を多く含んでいる。前記耐熱性酵素の常温下における活性の持続力は、常温菌由来の酵素が1週間以内であるのに対し、1年程度と格別長い。また、この耐熱性酵素は、廃水に含まれる例えば油脂類等の有機物の分解能を有すると共に、エタノール等の有機溶媒等によっても失活しない。シャぺロニンとは、酵素の構造を保持等することによって、酵素が安定な活性を示すことができるように手助けをする蛋白質であるが、常温菌由来のシャぺロニンではATP(アデノシン−5’−三リン酸)のエネルギーが必要であるのに対し、好熱性みろく種菌由来のシャぺロニンではATPのエネルギーがなくても働く性質がある。そのため、この好熱性みろく種菌由来のシャぺロニンは、各種の環境で前記耐熱性酵素等の変性を防止し、その働きを助けることができる。このことから、当該廃水浄化剤は、好熱性みろく種菌が固定化された状態で長期保存が可能であると共に、既に耐熱性酵素やシャぺロニン等の抗酸化機能性成分を多く含んでいるので、好熱性みろく種菌等の好熱性細菌を単体で添加する場合と比べて廃水浄化に対する即効性があるという利点がある。さらに、このシャペロニンは、田の給水中に供給することにより、単なる水質浄化を超えて、稲の生息を格別向上する効果も見出されている。
【0005】
このように、水質浄化のための浄化剤は種々研究され、開発されている。水環境修復目的に微生物の活用を実現化するには、微生物類を有効に固定し、微生物の水中拡散の制御とコントロール技術の向上を図り、微生物の的確で効率的な補給管理が要求される。
【0006】
従来の微生物を固定し、水質浄化する手段としては、特開平5−306183号公報(連続した空隙を有するセメント硬化体とそれを用いた水質浄化システム)、特開平9−285287号公報(担体及びその製造法)、特許公開2002−34384号公報(魚類等の人工保護増殖機能を有する窯業製品)、特開2004−160279号公報(水質浄化用結合型中空ブロック)等の例がある。
【0007】
特開平5−306183号公報に示されるセメント硬化体は、硬化体の表面に凹凸を設け、凹部内に有害物質吸着材料を挿入するというものである。凹部内に有害物質吸着材料を担持させる目的で構成されたものであるため、微生物を担持させたとしても汚泥物質を分解すること等はできない。
【0008】
特開平9−285287号公報に示される担体は、球状体の内部を空洞とし、かつ空洞部と外部とを連通孔によって連通した平均直径数mmの中空球状体(壺型担体)であり、小粒の壺の内外表面に微生物層を形成するというものである。直径数mmの壺型単体は相応の浄化効果が期待されるが、その集合体を如何に海等の水中に配置するか等については何ら示されていない。海や河川或いは農業用水路での応用では、これら微小な微生物担体を如何なる手段で如何に配置するかが重要な課題である。
【0009】
特許公開2002−34384号公報に記載の窯業製品は、窯業素材で成型した略球状のコンクリート擬石内を中空構造として、擬石に複数の貫通穴と開口部を設け、中空部内には炭素材で形成した炭素繊維から成る支持体を配置し、かくして構成される人工藻場により、魚類等の増殖機能を図ったものである。これは、従来コンクリート製であった人工藻場を窯業製品として構成したもので、コンクリート容器に代えて比較的大型の擬石容器を形成したものであると言える。人工藻場としては利用できるが、微生物を積極的に担持させる担体として構成されたものではない。しかも、窯業製品であるので、コンクリート製品に比べ価格が相当高くなる可能性が高い。
【0010】
特開2004−160279号公報に記載の水質浄化用結合型中空ブロックは、複数のブロック要素を組み合わせて中空構造のブロック本体を構成し、各ブロックを相互に結合できるよう、ブロック表面に結合具を設けたものである。ブロック本体には、内部と外部とを通じる開口部が設けられている。ブロック本体の中空部分には、水質浄化機能を発揮させるため、牡蠣殻や木炭、活性炭などの浄化部材を使用できるとされている。しかし、これら浄化部材に微生物を生息させる技術は示されていない。また、中空構造のブロック本体は、ポーラスコンクリートで形成できるとされているが、中空のポーラスコンクリートを形成し、かつ結合具を設ける場合には、構造複雑で成型困難であり、かつ結合具間を相互に締結する鉄筋類を多量に組み合わせねば強度保持できないであろうと懸念される。即ち、コストが高く、海洋や、河川、農業用水路等に安価に設置するのが難しい。
【0011】
水質浄化や水中の汚泥分解に関する微生物の応用技術は、この他過去に幾つかの事例がある。しかし、微生物は海流や波力、河川の流速等の影響を受けて湖沼水中でも浮遊、拡散して分散され希薄状態に陥り、その機能を発揮できない実態にある。このように従来は水中微生物を安定的、且つ長期的に管理状態で目的水域に定着状態で棲息させることが困難であった。
【特許文献1】特許第3311402号公報、第1頁
【特許文献2】特開平5−301618号公報、第1頁、図1
【特許文献3】特開平7−285287号公報、第1頁、図1
【特許文献4】特許公開2002−34384号公報、第1頁、図1
【特許文献5】特開2004−160279号公報、第1頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、仮眠微生物の棲息環境を好適とすることにより、効果的、安価で実用性高く長期安定して水質浄化及び水質改善できる仮眠微生物による水質改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決することができる本発明の仮眠微生物による水質改善方法は、海水や淡水等用水種別に応じて選択された目的微生物を多孔質微生物担持体に先行棲息させ、前記多孔質微生物担持体を乾燥させることにより、前記目的微生物を仮眠させ、前記多孔質担持体をコアとして、これとそれを包囲する外殻とで目的微生物仮眠棲息環境を形成し、前記仮眠棲息環境中の前記多孔質微生物担持体を用水中に浸漬湿潤させて、前記目的微生物の仮眠を解除し、機能実現することを特徴とする。
【0014】
また、目的微生物を担持可能の多孔質微生物担持体をコアとして、これとそれを包囲する外殻とで目的微生物の存在しない微生物棲息環境を形成し、前記棲息環境を前記目的微生物を培養する溶液中に浸すことにより、又はこの水溶液を散布することにより、前記多孔質微生物担持体に目的微生物を担持させ、その後、前記多孔質微生物担持体を乾燥させて、前記目的微生物を仮眠させて、前記棲息環境を目的微生物仮眠棲息環境と為し、前記微生物仮眠棲息環境中の多孔質微生物担持体を用水中に浸漬湿潤させることにより、前記目的微生物の仮眠を解除し、機能実現することを特徴とする。
【0015】
前記コアは炭や炭団で構成することができる。炭、例えばαカーボンは、直径0.01〜0.02mmの多角形格子を組み合わせてなる蜂の巣状の壁面を有して成り、比表面積約600m2/gで、微細な孔部並びにその壁面内の更なる微小な隙間を微生物の棲家とすることができる。単体では、強度上どうしても外殻が必要であるが、外殻は網状のものであってもよく、また炭団の表面に強度保持用の網をかけてまとめあげること等もできる。通常炭団は、木炭、石炭の粉末を糊で固めて球状に仕上げたものの総称であるが、石炭よりも木炭の方が好ましい。形は球状でなくても角でも良い。炭団が大径(例えば直径10cm以上)の場合には、各炭団にはアンカー付の紐を付けておき、外核容器内の出し入れを容易に為し得るようにすることもできる。
【0016】
前記外殻は透水性コンクリートブロックで構成することができる。透水性コンクリートとしては、本発明者等が既に販売しているポラカブル(商品名)を用いるのが好ましい。ポラカブルは、直径数mm〜40mmの栗石又は砕石をバインダー剤を用いて丸く固めたものであるが、この球形内にコアを収納したり、球形を角形としたりすることで対応できる。ポラカブル仕様のコンクリートブロックでは、透水性が高く、内部コアを常時環境水中に開放した形で保持することができる。
【0017】
前記外殻は透水性コンクリートと、水密性コンクリートとの複合物で構成することもできる。外殻は、コアの表皮を形成するだけの他、海水仕様、淡水仕様、或いは循環流仕様等用途に応じて相応に形成されるものであり、場合によっては水密性コンクリートのみで構成することもある。前記コアを固形化し、前記外殻の1部には開口部分を設け、当該固形化物の外表面の1部を前記用水に直接接触させることもできる。
【0018】
前記コア又は及び外殻には、外部からコア内部に通ずる充填パイプを布設し、このパイプを通じて適時酸素又は水或いは微生物を充足制御することができる。充填パイプには補給管を接続し、補給管を通じて酸素(空気)や、水、微生物、微生物の飼等を送ることができる。好気性の微生物では、飼及び酸素供給により、その効能を増幅し、かつ持続させることができる。水の供給では、繁殖した微生物をコア外に排出することができる。従来例で示したシャペロニンは、これを植物等の生物に吸収させることにより、生育を促進できることが知られている。先行棲息の原理により一度棲息させた微生物は半永久的に永住させることができるが、それでも雑菌類の繁殖により効能が途絶える可能性はある。この場合には、水及び酸素、飼並びに新たな微生物の供給により、棲息環境を復帰させることもできる。
【発明の効果】
【0019】
以上の構成により、本発明の仮眠微生物による水質改善方法では、微生物をコアに仮眠させた状態で各用途に提供できる。コアに紐を付けておけば、コアの用水中での出し入れが自在であり、各種用途に対応できる。
【0020】
コアの外に設ける外殻を透水性コンクリートブロックとする場合には、コアを常時用水中に浸した状態にすることができ、しかも透水性コンクリートは高強度に形成できるので、棲息環境を常時安定した状態で海や河川で利用できる。
【0021】
コア内部に充填パイプを設けて、これを陸上等外部と接続される補給パイプと接続する場合には、水、酸素、飼、新たな微生物を適時適切に供給することができ、微生物を最良環境で育成でき、最大効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最適の形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るコア及び外殻から成る棲息環境HE1を示す断面図である。木炭製のコア2を透水性コンクリート製の外殻3で包んで構成している。
【0024】
この棲息環境HE1は、半球形の外殻部品3A、3Bの一方に木炭3を載せ、他のコアを被せ接合して作ることができる。微生物4は、水溶液の形態で、最初からコア2に棲息、仮眠させておいてもよく、成型後水溶液中に浸漬して、乾燥し、棲息させることもできる。透水性コンクリートは、直径数mm〜40mmの栗石又は砕石をバインダー剤で接着して作ることができる。外殻直径は20cm〜2m級のものまで種々作ることができる。転動防止のため、底部を平らに仕上げることもできる。
【0025】
図1に示した棲息環境HE1は、単独又は複数個組み合わせ、目的とする水域、例えば河川や海に沈めておくことができる。水中では、コア2の中の微生物4が活性化し、水質浄化すると共に、余剰微生物の放出により、用水中の生物の育成を図ることができる。
【0026】
図2に示す棲息環境HE2は、図1のものに対し、外殻形状を反台形状とした点が異なる。上部を開放した容器形状を為す角形容器部5内に木炭を入れてコア6を形成し、その上に蓋7を固定して成る。容器部5及び蓋7は透水性コンクリートブロックで成型する。反台形状の例で示すが、これに限定されず、台形状、筒状であっても同じである。図1のものに対し、形状が角であるので安定性が良い。微生物4の導入方法は、図1のものと同様である。主な用途は海水中に浸漬して用いられるので、海底吊下げ又は吊上げのため、蓋7の部分にフックを付属させておくと良い。複数設置するとき、相互の間に隙間を介在させるため、形状を完全箱型にしない方が望ましい。
【0027】
図3に示す棲息環境HE3は、図1に示したものに対し、コア2の中心部へ向けて、充填パイプ8を付設したものである。図1と同一機能を果す部材には同一参照符号を付けて示してある。この充填パイプ8は、外部圧送装置(図示せず)と接続される補給パイプ9と接続されるようになっており、補給パイプ9から水、酸素、微生物の飼、あるいは微生物4等を補充できる。
【0028】
図4に示す棲息環境HE4は、図2に示すものに対しコア6の中心部へ向けて充填パイプ8を付設したものである。図2と同一機能を果す部材には同一参照符号を付け示してある。充填パイプ8の機能については、図3に示したものと同一である。
【0029】
図5に示す棲息環境HE5は、コア10を炭団とし、外殻は省略したものである。但し、強度保持上、外殻に代わる強度保持手段は必要である。湿潤状態で使用するため、糊は樹脂糊など水で溶けないものを使用する。外殻を省略するため、強度は比較的弱いが、用水との接触効率は良く、効能が高い。
【0030】
図6に示す棲息環境HE6は、炭団製のコア11内に透水性コンクリートブロック等による透水体12を設け、かつアンカー13付の紐14を付け、さらに前記透水体12の中央に向けて充填パイプ8を設けている。
【0031】
棲息環境HE6では、透水体12に対し、充填パイプ8を介して酸素、微生物(369)、水、飼を任意に供給できるので、微生物を常時最大効率で繁殖させ、必要に応じて水を多量供給することにより、微生物を外部に吐き出すことまでできる。さらに、紐14を取付けているので、用水からの引出し及び装着を容易に行うことができる。なお、紐14の一端に浮き14Fを設けておけば、これを水上に浮遊させることにより、槽内からの取出しを容易に行うことができる。この場合、補給パイプ9は、柔軟ホースで構成しておくのが好ましい。コア11の表面を、さらに透水性コンクリートブロックで覆うのも構わない。表面の汚れを防止できる。
【0032】
図7は、図3、図4、図6で示した充填パイプ付の棲息環境HE3、HE4、HE6の海水中での応用例を示す説明図である。これら充填パイプ付の棲息環境をHEPと総称する。
【0033】
海15の海水16中には、養殖イカダ等養魚区域17が定められている。この外側に複数の棲息環境HEPを沈めて配置している。この配置の仕方は、一層であっても多層であっても良く、湾の仕切り壁として構成しても良い。海水16が汚染すると、棲息環境中に棲息する微生物が活発に活動し、海水浄化することができる。赤潮等は、直接棲息環境に触れなくとも、棲息環境の周辺には微生物が多量に散乱しているので、棲息環境HEPの量を適切にすることにより、赤潮の養魚区域17への侵入を阻止することができる。
【0034】
前記棲息環境HEPに設けた充填パイプ8を、補給パイプ9を介して陸上18の補給装置19と接続している。補給装置19にはポンプ20を付属し、自動又は手動でポンプ20を作動させることにより、各棲息環境HEPに水、酸素(空気)、飼、微生物を夫々適切に供給することができる。補給パイプ9には、温度センサ、ph検出機、内視鏡等のセンサ類を備えることもできる。また、コア内の水を吸引し、水質検査することもでき、完全なフィードバック制御することもできる。
【0035】
補給の仕方について示すと、第1に酸素(空気)を供給できる。酸素の供給は、必ずしも連続的でなくとも間欠的でも良い。各棲息環境HEPの大きさや、深度等によりその量を変更する。タイマを設け、全自動で行うことができる。第2に飼を送ることができる。飼は海底のヘドロ成分で良いので特別のものを準備する必要はないが、適時タンパク質など栄養成分を供給できる。肥料成分も供給できる。補給し過ぎを防止するため間欠的に行うことを基本とする。第3に、水を送ることができる。この水は酸素供給と共に行うこともできるが、単独とすることもできる。水の供給により棲息環境を洗浄できるのみならず、内部に棲息する微生物を海水中に送り出すこともできる。従って、赤潮等の発生に併せてその浄化機能を最大限に発揮させることができる。第4に、微生物を補充することもできる。例えば、先行棲息が破られ、汚染によって先行棲息させた微生物が死滅してしまったような場合、まずは水を強く流して清掃し切り、次いで、所要の栄養源と共に目的菌を送ることにより、機能復帰できる。海水の場合には、棲息環境HEPを装脱困難であるので、特に有効である。
【0036】
図8は、外殻を為す槽21の内部に、図5で示したようなコア10や単独炭22を入れ、その上部に透水性コンクリートブロック製の蓋23をし、この蓋23を通して充填パイプ8を布設したものである。底部には排水孔24が設けられている。水25を上方から流し込み、排水孔24から排水することにより、水25を浄化することができる。また、排水孔24から排出する水25の中に微生物を含めることができる。
【0037】
図9は、水密性コンクリートブロックで枠26を作り、この枠26に多数の窓27を設けて、内部コア28を各窓27から覗ませることにより、透水性コンクリートと同様の効果を出すようにしたものである。コア28を炭とする場合、炭が大きな窓27から脱出してしまう可能性があるので、その防止のため、少なくとも窓27の付近は糊や網等用いて炭を固定しておくことが必要である。
【0038】
図8及び図9で示した棲息環境HE7、HE8は、田の給水装置等として用いることができる。即ち、田の一画に配置して給水することにより、水質浄化でき、しかも排水中に好気性のみろく種菌等微生物を混入させることができ、稲の生育を促進することができる。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計的変更を行うことができ、各種態様で実施する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る微生物棲息環境を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る微生物棲息環境を示す断面図である。
【図3】図1の棲息環境に充填パイプを備えた実施形態を示す断面図である。
【図4】図2の棲息環境に充填パイプを備えた実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態に係る微生物棲息環境を示す断面図である。
【図6】図5に示す棲息環境にさらに紐及び充填パイプを備えた棲息環境を示す断面図である。
【図7】本発明の棲息環境の海水への応用例を示す説明図である。
【図8】本発明の田給水への応用例に係る棲息環境の断面図である。
【図9】水密性コンクリート製の枠に窓を設けて透水化した実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
HE(HE1〜8) 棲息環境
2、6、10、11、28 コア
3、5、N 外殻
4 微生物
7、23 蓋
8 充填パイプ
9 補給パイプ
12 芯材
13 イカリ
14 紐
14F 浮き
15 海
16 海水
17 養魚域
18 陸
19 補給装置
20 ポンプ
21 槽
22 単独炭
24 排水孔
25 水
26 枠
27 窓
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水や淡水等用水種別に応じて選択された目的微生物を多孔質微生物担持体に先行棲息させ、
前記多孔質微生物担持体を乾燥させることにより、前記目的微生物を仮眠させ、
前記多孔質担持体をコアとして、これとそれを包囲する外殻とで目的微生物仮眠棲息環境を形成し、
前記仮眠棲息環境中の前記多孔質微生物担持体を前記用水中に浸漬湿潤させて、前記目的微生物の仮眠を解除し、機能実現することを特徴とする仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項2】
目的微生物を担持可能の多孔質微生物担持体をコアとして、これとそれを包囲する外殻とで目的微生物の存在しない微生物棲息環境を形成し、
前記棲息環境を前記目的微生物を培養する溶液中に浸すことにより、又はこの水溶液を散布することにより、前記多孔質微生物担持体に目的微生物を担持させ、
その後、前記多孔質微生物担持体を乾燥させて、前記目的微生物を仮眠させて、前記棲息環境を目的微生物仮眠棲息環境と為し、
前記微生物仮眠棲息環境中の多孔質微生物担持体を用水中に浸漬湿潤させることにより、前記目的微生物の仮眠を解除し、機能実現することを特徴とする仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項3】
前記コアを炭団で構成することを特徴とする請求項1、2記載の仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項4】
前記外殻を透水性コンクリートブロックで構成したことを特徴とする請求項1、2記載の仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項5】
前記外殻を透水性コンクリートと、水密性コンクリートとの複合物で構成したことを特徴とする請求項1、2記載の仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項6】
前記コアを固形化し、前記外殻の1部には開口部分を設け、当該固形化物の外表面の1部を前記用水に直接接触させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項7】
前記コア又は及び外殻には、外部からコア内部に通ずる充填パイプを布設し、このパイプを通じて適時酸素又は水或いは微生物を充足制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項1】
海水や淡水等用水種別に応じて選択された目的微生物を多孔質微生物担持体に先行棲息させ、
前記多孔質微生物担持体を乾燥させることにより、前記目的微生物を仮眠させ、
前記多孔質担持体をコアとして、これとそれを包囲する外殻とで目的微生物仮眠棲息環境を形成し、
前記仮眠棲息環境中の前記多孔質微生物担持体を前記用水中に浸漬湿潤させて、前記目的微生物の仮眠を解除し、機能実現することを特徴とする仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項2】
目的微生物を担持可能の多孔質微生物担持体をコアとして、これとそれを包囲する外殻とで目的微生物の存在しない微生物棲息環境を形成し、
前記棲息環境を前記目的微生物を培養する溶液中に浸すことにより、又はこの水溶液を散布することにより、前記多孔質微生物担持体に目的微生物を担持させ、
その後、前記多孔質微生物担持体を乾燥させて、前記目的微生物を仮眠させて、前記棲息環境を目的微生物仮眠棲息環境と為し、
前記微生物仮眠棲息環境中の多孔質微生物担持体を用水中に浸漬湿潤させることにより、前記目的微生物の仮眠を解除し、機能実現することを特徴とする仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項3】
前記コアを炭団で構成することを特徴とする請求項1、2記載の仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項4】
前記外殻を透水性コンクリートブロックで構成したことを特徴とする請求項1、2記載の仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項5】
前記外殻を透水性コンクリートと、水密性コンクリートとの複合物で構成したことを特徴とする請求項1、2記載の仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項6】
前記コアを固形化し、前記外殻の1部には開口部分を設け、当該固形化物の外表面の1部を前記用水に直接接触させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の仮眠微生物による水質改善方法。
【請求項7】
前記コア又は及び外殻には、外部からコア内部に通ずる充填パイプを布設し、このパイプを通じて適時酸素又は水或いは微生物を充足制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の仮眠微生物による水質改善方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2006−136799(P2006−136799A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328088(P2004−328088)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(596160425)和光コンクリート工業株式会社 (8)
【出願人】(597149951)株式会社三六九 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(596160425)和光コンクリート工業株式会社 (8)
【出願人】(597149951)株式会社三六九 (6)
【Fターム(参考)】
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