説明

仮設スロープ

【課題】積荷した台車が滑りにくく、取扱い性が良好で、所望される高さのスロープを容易に構成することのできる仮設スロープを提供することを目的とする。
【解決手段】低床部と高床部との間の段差部に仮設されるスロープであって、予め定められた傾斜角を有する傾斜面と、予め定められた長さ、および幅を備えた傾斜ブロック12と、前記傾斜ブロック12の高さ分だけ高く形成され、上面に前記傾斜角と同じ角度を有する傾斜面を備える継足しブロック14とを前記傾斜面が連続的に形成されるように隣接させて配置して成り、前記段差部の高さに応じて前記継足しブロック14を増設し、隣接配置する継足しブロック14間の高低差を前記傾斜ブロック12の高さ分とし、前記各ブロックを樹脂材料により形成し、隣接して配置されるブロック間に連結機構を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場や製造現場等の作業区域に設けられた段差部分を台車を押して通過する際に好適な仮設スロープに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場や製造現場等の作業区域には、様々な段差がある。これに対し、作業区域では資材等を適宜使用場所へ運搬する際に、台車などを用いるため、段差越えの度に荷崩れの虞が生ずるのである。このような段差は、既設の工場設備内等に存在するものであれば予めスロープを製作し、常設しておくことで、段差越えをスムーズに行うことができ、荷崩れの防止を図ることが可能である。しかし、建設現場での作業は一時的なものが多く、ここでの作業のために常設的なスロープをその都度用意することは現実的でなく作業効率も悪くなる。
【0003】
このため、作業区域では、台車を通過させるためのスロープを角材と鉄板により仮設するということが行われている。具体的には、複数の角材を階段状に積み重ねて段差を小分け状態にし、この階段状に積み重ねた角材の上に鉄板を配置して段差を解消するというものである。このようにして仮設スロープを作成すれば、台車を押しての段差越えをスムーズに行うことができる。また、鉄板の下に角材を階段状に積み重ねることにより、運搬物が重量物であっても鉄板の撓みを抑制することができる。
【0004】
このような仮設スロープの作成は、いわば現場の知恵であり、文献として示されているか否かは不明であるが、角材状のブロックを積み重ねて必要とするものを仮設するという観点では、特許文献1に開示されているような技術が知られている(特許文献1に開示されている技術は、仮設の受台に関するもの)。
【特許文献1】特許第3041336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように仮設スロープを作成すれば、積荷を載せた台車を押して段差部を通過する場合であっても荷崩れを生ずる確率は下がる。しかし、鉄板上を通過する際には「滑り」が生じやすく、この滑りによりバランスを崩した場合には荷崩れが生ずる他、台車を押す作業者にも危険が伴われる。また、鉄板の下に積み重ねる角材は、必ずしも同じ大きさでなく、大きさの選定や積み重ね順序等を思案する必要があり、その準備に時間を費やすこととなる。また、角材自体の重量も重く、大きな角材や複数の角材を用意する場合には、角材用の台車も必要となるなどの不便さがあった。
【0006】
ここで、角材の代用として、特許文献1に開示されているような四角筒状の鋼管部材を用いた場合、部材間の大きさは一定とすることができるが、他の問題点の解決にはならない。
【0007】
そこで本発明では、資材等を積荷した台車が滑りにくく、取扱い性が良好で、所望される高さのスロープを容易に構成することのできる仮設スロープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る仮設スロープは、低床部と高床部との間の段差部に仮設されるスロープであって、予め定められた傾斜角を有する傾斜面と、予め定められた長さ、および幅を備えた傾斜ブロックと、前記傾斜ブロックの高さ分だけ高く形成され、上面に前記傾斜角と同じ角度を有する傾斜面を備える継足しブロックとを前記傾斜面が連続的に形成されるように隣接させて配置して成り、前記段差部の高さに応じて前記継足しブロックを増設し、隣接配置する継足しブロック間の高低差を前記傾斜ブロックの高さ分とし、前記各ブロックを樹脂材料により形成し、隣接して配置されるブロック間に連結機構を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するための本発明に係る仮設スロープは、低床部と高床部との間の段差部に仮設されるスロープであって、樹脂材料により形成され、高さに比べて長さを長く設定した複数の矩形ブロックと、前記矩形ブロックを長さ方向の対角線に沿って切断した傾斜ブロックとを有し、前記矩形ブロックを前記段差部に階段状に積み重ね、並べられた矩形ブロックの上部、および1段の矩形ブロックにより構成されている段の隣りに前記傾斜ブロックを配置し、前記傾斜ブロックにより構成される傾斜面が連続的になるように構成し、隣接して配置されるブロック間、および/または積層されるブロック間に連結機構を備えたことを特徴とする。
【0010】
さらに、上記のような特徴を有する仮設スロープは、前記傾斜面に複数の溝を設けるようにすることが望ましい。このような構成とすることによれば、傾斜面に微小な凹凸が形成されることとなり、滑り止めに対して大きな効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記のような構成の仮設スロープによれば、例えばゴムなどの樹脂により構成されるため、積荷した台車が滑りにくなる。また、鋼製部材や長尺の角材、鉄板等に比べて各構成ブロックの重量を軽くすることができ、取扱い性が良い。また、スロープを構成する複数のブロックをセットとして取り扱うことができるため、準備に要する時間、組合わせに思案する時間等が殆ど無い。また、連結機構を備えることによれば、スロープに対して左右から負荷がかかった場合、例えば作業者の足が引っ掛かったような場合であっても、スロープが倒壊してしまう虞が無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の仮設スロープに係る実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態において仮設スロープは、低床面Aと高床面Bとの間に生ずる段差部Cに配置するものとする。
【0013】
まず、図1を参照して、本発明の仮設スロープに係る第1の実施形態についての基本的構成を説明する。ここで、図1(A)は、スロープの平面形態を示す図であり、図1(B)はスロープの側面形態を示す図である。本実施形態に係る仮設スロープ(スロープ)10は、低床面A上であって段差部Cに近接させて配置された複数の継足しブロック14(14a〜14c)と、傾斜ブロック12とにより構成される。
【0014】
前記傾斜ブロック12は、スロープ10の傾斜角度として予め定められた傾斜角θを有する傾斜面と、1ブロックあたりの長さとして定められた長さl、および所望する幅bを備えたブロックである。なお、傾斜ブロック12の高さhは数式1により必然的に定められる。
【数1】

【0015】
また、前記継足しブロック14において前記傾斜ブロック12に隣接配置されるブロック(傾斜ブロック14a)は、前記傾斜ブロック12の高さhだけブロックの高さを高くしたブロックである。よって、図1(B)からも読み取れるように、傾斜ブロック12と継足しブロック14aとでは、長さl、幅b、および傾斜角θが同一であり、高さhのみが異なることとなる。このため、その側面形状は、傾斜ブロック12が三角形であるのに対し、継足しブロック14aは四角形(台形)となる。
【0016】
継足しブロック14は、次段の高さを有するブロックを継ぎ足していくことにより、スロープ全体の高さを定めることができ、隣接して配置される継足しブロック14の高さは、前段、後段のブロックにてそれぞれhずつ異なることとなる。したがって、X段目の継足しブロック14の高さは、
【数2】

で表すことができる。
【0017】
また、各ブロック(傾斜ブロック12および継足しブロック14)の幅bは、スロープ10を通過する台車の幅よりも狭くし、一対のスロープ10a,10bを持って台車を通過させるようにする。ブロック単体の幅を狭く設定することにより、ブロック単体の重量を軽くすることができ、取扱い性が向上する。また、所定の幅bを有するスロープ10a,10bを対として構成するようにすれば、様々な幅の台車に対応したスロープ10を構成することが可能となる。
【0018】
また、長さlは特に限定するものでは無いが、lを長くしすぎた場合には分割型のスロープ10にする意義を逸してしまうし、lを短くしすぎた場合には隣接配置された継足しブロック14との間で滑りが生じた際にスロープ10全体が倒壊する虞が生ずる。したがって、長さlは、個片ブロックとしての安定性を確保することができる最短の長さに設定することが望ましい。これは、段差部Cの高さにも影響を受けることとなるが、段差部Cの高さを300mm前後とした場合には、長さlは200mm前後に設定すると良い。このような設定であれば、最も高さの高い継足しブロック14(図1では継足しブロック14c)であっても、その重心を下半部に置くことができ、安定性を確保することができるからである。
【0019】
上記のような構成の傾斜ブロック12や、継足しブロック14は、硬質ゴムや硬質プラスチック等の樹脂材料で形成することが望ましい。このような材質で形成することによれば、鉄板等に比べて傾斜面の滑りを抑えることができ、押し進める台車を安定させることができるからである。また、鋼製の角柱部材や無垢の角材等に比べて比重を低くすることができるため、個片のブロックを軽くすることができる。さらに、モールド形成が可能となるため、安価に大量形成することができる。
【0020】
上記のような構成のスロープ10は、まず、段差部Cに対して最も高さの高い継足しブロック14cを近接させて配置する。その後、配置した継足しブロック14cよりも一段低い継足しブロック14bを順次配置し、最後に高さ2hの継足しブロック14aを配置する。そして、継足しブロック14の配置が終了した後、高さ2hの継足しブロック14aに近接させて傾斜ブロック12を配置する。このようなスロープ10a(10b)を一対形成することにより、様々な幅を有する台車に対応したスロープ10を構成することができる。
【0021】
このような構成のスロープ10によれば、押し進める台車に滑りが生じ難く、台車の積荷が荷崩れする虞が少ない。また、個片化されたブロックが軽量で、取扱い性が良い。また、各ブロックを樹脂材料により構成していることより、隣接して配置したブロック間に滑りが生じ難く、配置形態を安定させることができる。
【0022】
次に、図2を参照して本発明の仮設スロープに係る第2の実施形態についての基本的構成を説明する。本実施形態に係るスロープ11の基本的構成は、第1の実施形態に係るスロープ10と同じである。本実施形態に係るスロープ11と第1の実施形態に係るスロープ10との相違点は、本実施形態に係るスロープ11は、2種類のブロックのみを用いて様々な高さの段差部Cに対応することができるようにした点にある。
【0023】
具体的には、複数の傾斜ブロック12と、複数の矩形ブロック16とから構成されるのである。ここで、前記傾斜ブロック12は、上記第1の実施形態に示した傾斜ブロック12と同一であり、矩形ブロック16は次のような構成のブロックである。すなわち、側面形状を矩形とし、その高さをhとしたブロックである。このような構成の矩形ブロック16は、その上面に傾斜ブロック12を載置することにより、第1の実施形態に示した継足しブロック14と同じ形状を形成することができる。
【0024】
このため、段差部Cの高さに応じて複数の矩形ブロック16を階段状に積み重ね、段差部Cを複数の小段差部ΔCに分割し、この小段差部ΔCのそれぞれに傾斜ブロック12を配置することで、第1の実施形態に示したスロープ10と同等なスロープ11を構成することができる。
【0025】
上記のような構成のスロープ11によれば、個々のブロックの重量をさらに軽くすることができる。また、スロープ11を構成するために必要とするブロックの種類は2種類のみであるため、目視によるブロックの種類の判別が容易となると共に、配置するブロックの順番を思案する必要性が無い。さらに、大量生産が可能となり、製造コストを抑えることができる。さらにまた、2つの傾斜ブロック12の傾斜面を当接させるように組合わせると、矩形ブロック16と同じ体積、形態のブロックとみなすことが可能となるため、不使用時における収納形態をコンパクトにすることができる。
【0026】
また、上記基本的構成の説明では第1、第2の実施形態に係るスロープ10,11は、各ブロック間は互いにフリーとする形態である旨記載した。しかしながら、本発明に係る実施形態は具体的には、各ブロック間に図3に示すような連結機構18(18a,18b),20(20a,20b)を備えることを特徴としている。
【0027】
ここで、連結機構18,20とは、その構成を限定するものでは無いが、凹凸構造の嵌め合わせによるものであると良い。具体的には、上下に配置された矩形ブロック16,16間、あるいは矩形ブロック16とその上面に載置される傾斜ブロック12間における連結機構18は、矩形ブロック16の上面に形成した凸部18aと、矩形ブロック16あるいは傾斜ブロック12の下面に形成した凹部18bとを嵌め合わせるものであれば良い(図4参照)。このような連結機構18を備えることにより、上下に重ねたブロックが横方向にズレる虞が無くなる。なお、上下に重ねたブロックに対する連結機構18は少なくとも2つの凹凸部により構成することが望ましい。凹凸部を2つとすることにより、凹凸部が円形で形成されているような場合でも、回転方向のズレを抑えることが可能となるからである。
【0028】
また、隣接して配置される矩形ブロック16,16間、あるいは矩形ブロック16と傾斜ブロック12との間は、凸部の付根にくびれを持たせたハンマーヘッド状の凸部20aとし、凹部は前記ハンマーヘッド状の凸部に対応した形状を有する凹部20bとすると良い。このような形状の凹凸部では、凹部20bを凸部20aの上側からスライドさせることにより嵌め合いが成され、連結状態が構成される。
【0029】
凹凸部を上記のような形態とすることにより、スロープ11に対して長さ方向の引っ張りの力が付与された場合であっても連結状態を確保することが可能となる。なお、隣接して配置されるブロック間における凸部20aは、傾斜ブロック12を配置した側に設けるようにすると良い。このような配置形態とすることにより、ブロックの側面を段差部Cに当接させることが可能となるからである。
【0030】
なお、本実施形態に係る仮設スロープでは図5に示すように、傾斜面に微小な溝12aを形成し、これを連続させることにより、傾斜面に滑り止め効果をもたらすようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上記のような構成の仮設スロープは、既設イベント施設等の一次的なバリアフリー化等にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施形態に係る仮設スロープの構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態に係る仮設スロープの構成を示す図である。
【図3】各ブロックに連結機構を備える構成である。
【図4】連結機構を備えたブロックの構成を示す斜視図である。
【図5】傾斜面に微小な溝を形成した場合の例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10………スロープ(仮設スロープ)、12………傾斜ブロック、14(14a〜14c)………継足しブロック、16………矩形ブロック、18………連結機構、18a………凸部、18b………凹部、20………連結機構、20a………凸部、20b………凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低床部と高床部との間の段差部に仮設されるスロープであって、
予め定められた傾斜角を有する傾斜面と、予め定められた長さ、および幅を備えた傾斜ブロックと、
前記傾斜ブロックの高さ分だけ高く形成され、上面に前記傾斜角と同じ角度を有する傾斜面を備える継足しブロックとを前記傾斜面が連続的に形成されるように隣接させて配置して成り、
前記段差部の高さに応じて前記継足しブロックを増設し、隣接配置する継足しブロック間の高低差を前記傾斜ブロックの高さ分とし、前記各ブロックを樹脂材料により形成し、
隣接して配置されるブロック間に連結機構を備えたことを特徴とする仮設スロープ。
【請求項2】
低床部と高床部との間の段差部に仮設されるスロープであって、
樹脂材料により形成され、高さに比べて長さを長く設定した複数の矩形ブロックと、
前記矩形ブロックを長さ方向の対角線に沿って切断した傾斜ブロックとを有し、
前記矩形ブロックを前記段差部に階段状に積み重ね、並べられた矩形ブロックの上部、および1段の矩形ブロックにより構成されている段の隣りに前記傾斜ブロックを配置し、前記傾斜ブロックにより構成される傾斜面が連続的になるように構成し、
隣接して配置されるブロック間、および/または積層されるブロック間に連結機構を備えたことを特徴とする仮設スロープ。
【請求項3】
前記傾斜面に複数の溝を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の仮設スロープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−248477(P2008−248477A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87121(P2007−87121)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】