説明

仮設設備用エアコン装置

【課題】 テントなどの仮設設備で主として冷房に使用する仮設設備用エアコン装置として最適な構造を提案する。
【解決手段】 室外機2が取り付けられたベース6から固定部材7を立ち上げ、固定部材7の上部には室内機1を室外機2の反対側に向けて取り付け、室内機1と室外機2との連結配管8を取り付けてエアコン装置Aを構成し、ベース6は室外機2を取り付けた上ベース6aと、エアコン装置Aを移動可能にするキャスター9を取り付けた下ベース6bと、上ベース6aと下ベース6bとの間に設けたエアコン装置Aを昇降可能にする伸縮機構10とで構成する。仮設設備Bの壁面11には開閉自在な開口11aを設け、キャスター9と昇降装置10とによって開口11aから仮設設備B内の所定の高さにエアコン装置Aの室内機1を移動し、キャスター9と伸縮機構10をロック手段9aと伸長固定手段10aによって固定して、エアコン装置Aを仮設設備Bに設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はテントなどの仮設設備で主として冷房を行うことができる仮設設備用エアコン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、仮設設備のほぼ密閉された室内空間を冷房暖房するエアコン装置としては、外部に冷暖房機を設置して、仮設設備の空調空気吹き込み口から冷風や温風を吹き込んで冷房や暖房を行う方式が一般的であった。しかしながら、この方式は効率や騒音の面で問題がある。このため出願人は先の提案で仮設設備に適するエアコン装置として、特許文献1に示すように冷房と暖房が兼用できるヒートポンプエアコンで実現したエアコン装置を提案した。
【0003】
このエアコン装置は室内機と室外機を一つのベース上に取り付けて一体に構成し、室内機を仮設設備の内部に位置させることで、通常の室内と同様に室内空気を取り込んで冷却・加熱して冷風・温風を作り出すことができるようにしている。そして、最近の市販のエアコン装置の室内機は、横長の壁掛けタイプが主流となっているから、特許文献1では伸縮する支柱に壁掛けタイプの室内機を取り付け、冷房運転時には支柱を伸ばして室内機を高く配置して、仮設設備の高い位置から床面に向けて冷風・温風を吹出すことで、仮設設備内が快適な空調空間を作り出すことができるエアコン装置を提案した。
【特許文献1】特開2003−139383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエアコン装置は仮設設備の側壁の下端から室内機を差入れる構造であるため、仮設設備の側壁の下端はエアコン装置の差込みができるような形状になっている必要がある。しかしながら、仮設設備は必ずしもエアコン装置の差込みができる形状にはなっていないため全ての仮設設備に利用できるものではなく、エアコン装置が使用できる仮設設備が限定されてしまっており、エアコン装置の汎用性がないものである。
【0005】
この発明はエアコン装置の室内機が仮設設備の側壁に設けられた開口から差込みでき、なおかつ側壁のどこの位置に開口があっても使用できるようにして、仮設設備を選ばない汎用性のあるエアコン装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記の課題を解決するもので、室内機1と室外機2とで構成する主として冷房に使用するエアコン装置Aであって、そのエアコン装置Aの室外機2は後面に空気吸込み口3、前面に空気排出口4を備えており、その後面の空気吸込み口3と間隔5を介して、前記室外機2が取り付けられたベース6から固定部材7を立ち上げ、この固定部材7の上部には前記室内機1を前記室外機2の反対側に向けて取り付け、かつ室内機1と室外機2との連結配管8を前記固定部材7に固定して取り付けて、エアコン装置Aを使用可能状態に設置しており、前記ベース6は前記室外機2を取り付けた上ベース6aと、キャスター9を取り付けた下ベース6bと、この上ベース6aと下ベース6bとの間に介在させた伸縮機構10とで構成し、前記エアコン装置Aは前記キャスター9によって移動可能とすると共に、前記伸縮機構10によって昇降可能になっており、前記室内機1を設置した前記ベース6の後方側には仮設設備Bの壁面11を配置し、この仮設設備Bの壁面11には開閉自在な開口11aを設け、前記キャスター9には仮設設備Bの壁面11a側に移動して固定するロック手段9aを設け、前記伸縮機構10には伸長位置を保持する伸長固定手段10aを設け、前記キャスター9と伸縮機構10によって、前記仮設設備Bの開口11aからその仮設設備B内の所定の高さに移動した室内機1は、前記ロック手段9aと伸長固定手段10aとによってその位置が固定されることを特徴とするものである。
【0007】
また、仮設設備Bには開口11aの上部で壁面11と接続する開閉手段11bを取り付け、この開閉手段11bと開口11aとの間には密着手段11cを設けており、前記開閉手段11bは開口11aから前記室内機1が差込まれた状態で密着手段11cによって開口11aの周縁と接続し、開閉手段11bによって開口11aが固定部材7を挟んで閉止されるので、仮設設備Bの室内と室外を密封することができ、外部からの風の侵入を防止できる。
【0008】
また、室内機1と固定部材7との間には前記連結配管8を貫通させた閉止部材12を取り付け、該閉止部材12と前記開口11aとの間には密着手段11cを設けており、前記閉止部材12は前記室内機1が開口11aに差し込まれた状態で密着手段11cによって開口11aの周縁と接続し、仮設設備B内に室内機1が、仮設設備B外に固定部材7が位置した状態で開口11aが閉止されるので、仮設設備Bの室内と室外を密封することができ、外部からの風の侵入を防止できる。
【0009】
また、伸縮機構10は、上ベース6aと下ベース6bとの間に配置した第1アーム13aと第2アーム13bとをX字状に連結した連結機構13と、該連結機構13を伸縮させる駆動部14とによって構成し、前記第1アーム13aは一端を第1固定軸15によって上ベース6aの下面に回動可能に取付けると共に他端を下ベース6bの上面に沿って移動可能に取付け、かつ、第2アーム13bは一端を第2固定軸16によって下ベース6bの上面に回動可能に取り付けると共に他端を上ベース6aの下面に沿って移動可能に取付け、前記連結機構13が駆動部14によって上下方向に伸縮してエアコン装置Aを昇降させるもので、駆動部14の操作によってエアコン装置Aの昇降が容易にできるものである。
【0010】
また、室外機2は内装する冷媒圧縮機17がベース6の中央よりも連結機構13の第1・第2固定軸15・16側に位置するように設置すると共に、室内機1と室外機2との間の連結配管8を連結機構13の第1・第2固定軸15・16側に配置したから、連結機構13が伸長してエアコン装置Aを上昇したときも、エアコン装置Aは重量バランスを維持できるものであり、転倒の心配はない。
【0011】
また、ベース6には室外機2よりも背が高いコ字状の支持枠18を設け、該支持枠18の上面に他の仮設設備用エアコン装置Aの下ベース6bを載架して、エアコン装置Aを積み上げ保管することができるようにしたから、倉庫に沢山のエアコン装置を積み上げて保管できる。
【0012】
また、固定部材7は前記支持枠18の上面と同じ高さ位置で上下に分割し、固定部材7の上下の接続部分に丁番19を配置し、室内機1を取付けた固定部材7の上部を支持枠18の上面に重なるように折りたたんで保管することができるようにしたから、エアコン装置Aを積み上げたときの高さを低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、ベース6の室外機2の後方に固定部材7を立ち上げ、この固定部材7の上部に室内機1を取付け、この室内機1と室外機2とはあらかじめ配管類や電気配線類の連結配管8の取付けを済ませており、この状態で室外機2に電源を供給すれば直ちに起動できる状態になっている。
【0014】
前記ベース6は室外機2を取付けた上ベース6aと、キャスター9を取付けた下ベース6bと、この上ベース6aと下ベース6bとの間に介在させた伸縮機構10とによって構成しており、エアコン装置Aはキャスター9によって容易に移動させることができると共に、伸縮機構10によって昇降して室内機1の高さを変えることができるようになっている。このため、室内機1と室外機2を取り付けた上ベース6aを最下位置まで下げて背を低くしておけばエアコン装置Aが安定するので保管時や輸送時に転倒する心配がない。
【0015】
一方、仮設設備Bの壁面11には開閉自在な開口11aを設けており、エアコン装置Aはキャスター9によって仮設設備Bの壁面11側に移動し、伸縮機構10によって壁面11の開口11aの高さに室内機1を移動し、開口11aから仮設設備B内に室内機1を位置させて固定できるようにしたから、壁面11に開口11aを備えた仮設設備Bであれば、壁面11のどの位置に開口11aが設けてあってもエアコン装置Aが設置できるようになった。
【0016】
また、仮設設備Bの壁面11の開口11aには開閉手段11bを設け、エアコン装置Aの室内機1を開口11aから仮設設備B内に配置してから、開閉手段11bを開口11aの周縁に接続すると、開口11aが固定部材7を挟んで閉止されるから、効率良く仮設設備Bの室内空間を空気調和できる。
【0017】
また、エアコン装置Aの室内機1と固定部材7との間には閉止部材16を設け、エアコン装置Aは室内機1を開口11aから仮設設備B内に配置し、固定部材7を仮設設備B外に配置し、この状態で閉止部材16を開口11aの周縁に接続すれば開口11aが閉止できるから、効率良く仮設設備Bの室内空間を空気調和できる。
【0018】
また、前記伸縮機構10は、上ベース6aと下ベース6bとの間に配置した第1アーム13aと第2アーム13bとをX字状に連結した連結機構13と、該連結機構13を伸縮させる駆動部14とによって構成しており、この連結機構13は簡単な構造で大きな力を得ることができるので、重量のあるエアコン装置Aであっても容易に昇降でき、コストの増加を抑えて取扱いやすいエアコン装置Aが提供できた。
【0019】
また、室外機2は内装する冷媒圧縮機17がベース6の中央よりも第1・第2固定軸15・16側に位置するように配置し、更に連結配管8を第1・第2固定軸15・16側に配置しているので、エアコン装置Aを上昇時に第1・第2固定軸15・16側に回動する第1・第2アーム13a・13bの上部にエアコン装置Aの重量物が位置しているから、エアコン装置Aを上昇させたときも重量バランスを保って安定しているので、エアコン装置Aは転倒する心配がないものである。
【0020】
また、ベース6には室外機2よりも背が高いコ字状の支持枠18を設け、この支持枠18の上に他のエアコン装置Aを積み重ねて保管できるようにしており、伸縮機構10を備えたエアコン装置Aは保管時には背が低くできたから、積み重ねても高さを低く抑えることができ、倉庫に大量に保管できるようになる。
【0021】
更に、固定部材7を支持枠18の上面と同じ高さで上下に分割し、室内機1を取付けた上部の固定部材7を折りたたんで支持枠18の上面に乗せることができるから、二段積み、三段積みにしたときに、一番上に載せたエアコン装置Aを折りたためば、高さを低く抑えることができ、エアコン装置Aが倉庫に大量に保管できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は使用可能状態で保管できるエアコン装置の設置状態を示す一部切欠断面図であって、Aはエアコン装置、Bはこのエアコン装置Aによって空気調和できる仮設設備、Cは仮設設備Bの室内の空間であり、この種の仮設設備Bは安価な石油ストーブなどでも暖房できるから、仮設設備Bの利用者からは冷房需要を望まれ、エアコン装置Aは冷暖房タイプではなくて冷房専用であってもよい。
【0023】
1は仮設設備Bの内部の空間Cに位置される室内機、2は仮設設備Bの外部に設置される室外機、8は室内機1と室外機2とを連結する冷媒配管や電気配線などの連結配管である。17は室外機2に設置した冷媒圧縮機、20は室外熱交換器、21は吸込み側に室外熱交換器20を配置させた送風ファン、3は室外機2の後面側に設けて室外熱交換器20と対向させた空気吸込み口、4は室外機2の前面側に設けて送風ファン21の空気を室外機2の外へ排出するための空気排出口であり、前記送風ファン21が回転すると室外機2の外の空気は空気吸込み口3から室外熱交換器20を通過して吸込まれて、この室外熱交換器20を冷却した後で、送風ファン21によって空気排出口4から室外機2の外へ排出される。前記冷媒圧縮機17によって加圧されて高温になった冷媒は室外熱交換器20に送られ、送風ファン21によって取り込まれた空気が室外熱交換器20を通過する時に放熱して液体となり、前記連結配管8を経て室内機1に送られる。室内機1ではこの液状の冷媒が気化する時に仮設設備Bの空間Cを冷房しており、この室内機1で気化した冷媒は再び室外機2に送られて冷媒圧縮機17で加圧される循環を行っており、仮設設備Bの空間Cを冷房することができる。
【0024】
6は前記室外機2を設置するための枠で構成したベース、7はベース6の後端部から垂直に立ち上げた固定部材であり、このベース6は室外機2が設置できれば平板状のものや四角枠などで実施でき、図1はこの兼用型であり、設置する室外機2の両側に位置する平行部分のあるベース横枠6cとその上に差し渡された平板で構成され、この平板の上に室外機2が設置されている。また、固定部材7はベース6の後端の両側から立ち上げた縦枠7aとその上端部を連結する上枠もしくは連結枠によって構成されており、この上枠もしくは連結枠には前記室外機2とは反対側に向けて前記室内機1が取付けられている。
【0025】
7bは設置された室外機2の後方で固定部材7の2本の縦枠7aを差し渡すように配置された横部材、5はこの横部材7bと前記室外機2との間に形成される間隔であり、前記室外機2の送風ファン21が作動するときにこの間隔5から室外機2の後面の空気吸込み口3へ空気を吸引することができる。後記するようにこのエアコン装置Aは仮設設備Bのテント生地で作られた側面に接近して設置されるが、この横部材7bによってこのテント生地の動きが止められて、テント生地が室外機2の後面の空気吸込み口3に吸い付いて、空気不足の状態を発生させることを防いでいる。
【0026】
22は室内機1に接続したドレン配管であり、前述の冷媒配管や電気配線類などからなる連結配管8と同様に、ドレン配管22も前記固定部材7の縦枠7aに沿わせて取り付けられ、この2本の縦枠7aの片側に一緒に、もしくは両側の縦枠7aの夫々に固定されている。このドレン配管22は仮設設備B内の空気を冷却したときに除湿された水分が排出されるように室内機1に接続されており、このドレン配管22の他端は室外機2付近に開口してあれば、仮設設備Bの外へ排水することができる。したがって、エアコン装置Aは図2に示すように前記ベース6と固定部材7とによって一体化された状態で、室内機1と室外機2とを連結する連結配管8も固定部材7に固定されているから、電源さえ供給すれば直ちに使用可能な状態になっており、不意に発生する災害時においてもエアコン装置の設置のための業者による工事は不要となり、だれでも直ちに使用することができる。
【0027】
6aはベース6を構成する上ベース、6bは上ベース6aの下部に位置する下ベースであり、ベース6はこの上ベース6aと下ベース6bとによって構成され、室外機2と固定部材7は上ベース6aに設置されている。9は下ベース6bに取り付けたキャスターであり、室内機1と室外機2が一体となって重量があるエアコン装置Aでもこのキャスター9によって簡単に移動できるようになっている。
【0028】
9aはキャスター9に取り付けたロック手段であり、エアコン装置Aを所定の位置に移動させた後、ロック手段9aを操作してキャスター9を固定することでエアコン装置Aが固定でき、エアコン装置Aを使用中に移動することはなく、ロック手段9aを操作してキャスター9の固定を解除すれば、エアコン装置Aが移動できるようになる。
【0029】
10は上ベース6aと下ベース6bとの間に介在させた伸縮機構であり、伸縮機構10を上ベース6aと下ベース6bとの間で伸縮させることによって、上ベース6aが上下に移動するので、この上ベース6aに設置したエアコン装置Aを昇降させることができる。そして、エアコン装置Aは室内機1と室外機2との位置関係が固定されたまま昇降するから、室内機1と室外機2との間に配置した連結配管8は一般の家屋に使用するものと同じものが使用できるので、エアコン装置Aは安価に製造できる。
【0030】
10aは伸縮機構10に取り付けた伸長固定手段であり、伸縮機構10を操作してエアコン装置Aを上昇もしくは下降させた後、伸長固定手段10aによって伸縮機構10を固定することによって、エアコン装置Aが所定高さに保持できる。
【0031】
図1に示す実施例において、23はテント生地や簡易パネルなどで作られた仮設設備Bの屋根部材、11は仮設設備Bの壁面であり、実施例の仮設設備Bはテント生地で屋根部材23や壁面11を構成する一般的なテントの事例を開示しているが、その他の実施例としては簡易パネルを連結して作る仮設設備Bであっても良い。11aはこの仮設設備Bの壁面11に形成した開口、11bは開口11aを開閉するためのテント生地で作られた開閉手段であり、開閉手段11bは開口11aの上部のテント生地に縫い合わせている。また、簡易パネルで構成した壁面11を使うときは、開口11aに着脱自在なパネルを取り付けてもよい。
【0032】
エアコン装置Aを設置するときは開口11aを開き、エアコン装置Aはキャスター9によって移動してエアコン装置Aの室内機1を壁面11に近づけ、次に伸縮機構10によってエアコン装置Aを昇降して室内機1を壁面11の開口11aと同じ高さに位置させ、前記伸長固定手段10aによって室内機1の高さを固定する。この状態でエアコン装置Aを壁面11に向けて更に移動して室内機1を開口11aから差込めば仮設設備B内に位置させることができ、キャスター9をロック手段9aで固定することでエアコン装置Aを設置できる。
【0033】
エアコン装置Aは室内機1を仮設設備Bに差込んだ後でも、キャスター9と伸縮機構10とによって室内機1を移動することができるので、室内機1を最適位置に移動して固定することができ、壁面11に開口11aを備えた仮設設備Bであれば簡単にエアコン装置Aが設置できるものとなり、災害時には直ちに使用することが可能となった。
【0034】
従来のエアコン装置Aでは、設置できる仮設設備Bが特定されており、また、仮設設備Bもエアコン装置Aが設置できるように改造した専用の仮設設備Bが必要となることがあったが、この発明のエアコン装置Aは仮設設備のどこに開口があっても設置できるものであり、ほとんどの仮設設備Bの壁面11には換気のための開口11aが形成されているので、仮設設備Bを選ばない汎用性のあるエアコン装置Aが実現できた。
【0035】
11cは開口11aの周縁と開閉手段11bとの間に設けた面ファスナーで構成する密着手段であり、図2の実施例ではテント生地の開閉手段11bが開口11aの上部で縫い合わされているので、面ファスナーで構成する密着手段11cは開口11aの側方と下方の周縁に取付けられている。エアコン装置Aを設置していないときは、開閉手段11bは開口11aの周縁と密着させて開口11aを閉止しており、仮設設備Bの室内と室外とを密封することができる。
【0036】
一方、エアコン装置Aを設置するときは、エアコン装置Aの室内機1を開口11aから仮設設備B内に位置させた後、開閉手段11bを開口11aの周縁の密着手段11cと密着させ、このとき開閉手段11bは固定部材7の縦枠7aを挟み込んで開口11aを閉止しており、仮設設備Bの室内と室外はほぼ密封することができ、エアコン装置Aを設置したときも外部から隙間風が入るのを防止することができる。
【0037】
また、図3はこの発明の他の実施例に係るものであり、開口11aと開閉手段11bは上部にも密着手段11cを備えており、開閉手段11bは壁面11から取外し可能となっている。この場合の密着手段11cは開口11aと開閉手段11bの周縁の全周にわたって端接続タイプのファスナーを取り付けて構成するとよい。
【0038】
12は室内機1と固定部材7との間に取り付けた閉止部材であり、室内機1と室外機2との間に配置した連結配管8とドレン配管22は閉止部材12を貫通させて取付けられている。この閉止部材12は仮設設備Bの開口11aと同じサイズに設けてあり、閉止部材12の周縁の全周にわたってファスナーが取付けられている。このため、エアコン装置Aを設置するときには仮設設備Bの開口11aから開閉手段11bを取外し後、エアコン装置Aの室内機1を開口11aの高さに合わせて開口11aから仮設設備B内に差込み、室内機1が仮設設備B内に、固定部材7が仮設設備B外に位置した状態でロック部9aでキャスター9を固定し、閉止部材12と開口11aとを密着手段11cであるファスナーによって閉ざすことによって開口11aが閉止され、仮設設備B内の室内を密封することができる。
【0039】
また、図4に示す実施例において、13a・13bは上ベース6aと下ベース6bとの間に配置した第1・第2アーム、15は第1アーム13aを回動可能に支持する上ベース6aの下面に設けた第1固定軸、15aは第1固定軸15とは反対側の第1アーム13aの端部に設けたローラ部、15bは下ベース6bの上面に形成したガイドレールであり、第1アーム13aはローラ部15aがガイドレール15bに嵌合して下ベース6bの上面に沿って移動可能に支持されている。16は第2アーム13bを回動可能に支持する下ベース6bの上面に設けた第2固定軸、16aは第2固定軸16とは反対側の第2アーム13bの端部に設けたローラ部、16bは上ベース6aの下面に形成したガイドレールであり、第2アーム13bのローラ部16aがガイドレール16bに嵌合して上ベース6aの下面に沿って移動可能に支持されている。
【0040】
13cは第1・第2アーム13a・13bの交差部で第1・第2アーム13a・13bを連結する連結軸であり、この連結軸13cによって第1・第2アーム13a・13bがX字状に連結されて連結機構13を構成している。14は連結機構13を駆動する油圧シリンダで構成する駆動部、14aは駆動部14の操作部であり、この操作部14aは油圧シリンダのシリンダロッドを伸ばすためのレバーと、シリンダロッドを縮めるためのバルブとで構成している。前記駆動部14は連結機構13の連結軸13cと接続しており、操作部14aによって駆動部14を伸縮させると、駆動部14が連結軸13cを介して第1・第2アーム13a・13bを回動させ、連結機構13が伸縮するので上ベース6aが昇降するものである。
【0041】
前記操作部14aのレバーを操作すると駆動部14が連結機構13の連結軸13cを駆動し、第1・第2アーム13a・13bはローラ部15a・16aを設けた駆動端がガイドレール15b・16bに沿って固定軸側に移動しながら回動して連結機構13は上下方向に伸びるので上ベース6aが押上げられ、上ベース6aが上昇する。一方、操作部14aのバルブを操作すると第1・第2アーム13a・13bはローラ部15a・16aが固定軸とは反対側に移動しながら回動し、連結機構13は横方向に伸びて上下方向が縮むので上ベース6aが降下する。
【0042】
操作部14aの操作によって上ベース6aを昇降させることができ、連結機構は大きな力を得ることができるから、重量のあるエアコン装置Aであっても上ベース6aの昇降は軽い力で操作できるものであり、駆動部14の操作は操作部14aであるレバー操作とバルブの開閉による簡単な方法であるから、非常に取り扱いやすいエアコン装置Aが提供できるものとなった。
【0043】
また、伸縮機構10を構成する連結機構13は、上ベース6aの上昇と共に第1・第2アーム13a・13bが第1・第2固定軸15・16側に移動し、最上部では第1・第2アーム13a・13bの可動端がベース6の中央付近まで移動し、上ベース6aの片側を支持する構造になっている。
【0044】
一方、室外機1は横長の枠体の片側に空気吸込み口3と空気排出口4が配置され、この空気吸込み口3と空気排出口4との間の枠体内に室外熱交換器20と送風ファン21が配置されており、室外熱交換器20のない側に冷媒圧縮機17が配置されているため、室外機2は重量のある冷媒圧縮機17を設置した側が重くなっている。
【0045】
この発明では、室外機2は内装する冷媒圧縮機17が連結機構13の第1・第2固定軸15・16側に位置するようにベース6に配置し、また、ベース6から立ち上げた2本の固定部材7は室内機1の横幅よりもその寸法を短くし、この固定部材7はベース6の中央よりも連結機構13の第1・第2固定軸15・16側に位置するように取付けている。更に、室内機1と室外機2との間の連結配管8は2本の固定部材7のうちの第1・第2固定軸15・16側に位置する縦枠7aに沿って配置している。
【0046】
このため、エアコン装置Aはベース6の中央部より連結機構13の第1・第2固定軸15・16が取り付けられた側が重くなっており、伸縮機構10によって上ベース6aを上昇させたときに、エアコン装置Aの重量を確実に2本のアームによって支えることができるので、上ベース6aを上昇させたときも重量バランスが保たれてエアコン装置Aは安定するものであり、上ベース6aを上昇させた状態のままエアコン装置Aを移動させたり、仮設設備Bに設置しても転倒する恐れはないものである。
【0047】
また、仮設設備Bの壁面11に設けた開口11aの横幅寸法が室内機1の横幅よりも短いときでも、室内機1を横向きにして室内機1を側板から開口11aに差し込むことができ、エアコン装置Aはキャスター9を備えているから室内機1を開口11aに差込んだ状態でも容易にエアコン装置Aの向きを変えることができ、仮設設備Bの開口11aの幅が狭いときでもエアコン装置Aが簡単に設置できる。
【0048】
また、このエアコン装置Aは伸縮機構10によって上ベース6aを上昇させるのは仮設設備Bへの設置時のみであり、エアコン装置Aの不使用時には上ベース6aを下降位置まで下げて背を低くしておくことができるので、倉庫での保管やコンテナーなどでの輸送時にエアコン装置Aが安定して転倒する心配はなく、仮設設備Bのための最適なエアコン装置Aを提供することができた。
【0049】
18は上ベース6aの両側部から室外機2より高い位置に立ち上げたコ字状の支持枠であり、このコ字状の支持枠18は上ベース6aに前後に2本配置されており、支持枠18の水平部が室外機2の上方に位置して室外機2を保護している。
【0050】
また、上ベース6aの後縁から立ち上げられた固定部材7に取り付けた室内機1が、室外機2よりも高い位置に設置されていても、ベース6aの後縁から立ち上げられた固定部材7に取り付けた室内機1の背の高さを支持枠18の背の高さより低く設定すれば、支持枠18の水平部の上に他のエアコン装置Aの下ベース6bを載架することが可能となり、下に位置するエアコン装置Aの室内機1の上方に、上に載架したエアコン装置Aの室内機1を位置させることができる。このため、この発明のエアコン装置Aは災害時に備えて倉庫内に2段積み、3段積みにして保管できるものであり、限られたスペースの中で多くのエアコン装置Aが保管できる。
【0051】
また、図5に示す実施例において、固定部材7は支持枠18の水平部の上面と同じ高さで上下に分割したものとなっており、19は上下に分割した固定部材7の接続部分に設けた丁番であり、室内機1はこの丁番19より上部の固定部材7に取付けている。19aは上下の固定部材7の間に設けた係合部であり、係合部19aを外すと固定部材7の上部は丁番19を支点にして支持枠18側に向けて折畳むことができるようになっており、折畳んだ固定部材7は支持枠18の上面にのせることができる。このため、2段積み、3段積みしたときには最上段にのせたエアコン装置Aの固定部材7を折畳めば高さを低くすることができ、更に効率良く保管ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明のエアコン装置の使用状態を示す一部切欠断面図である。
【図2】この発明の実施例のエアコン装置を使用できる仮設設備の斜視図である。
【図3】この発明の他の実施例のエアコン装置の使用状態を示す一部切欠断面図である。
【図4】図3に示す実施例のエアコン装置を正面側からみた一部切欠断面図である。
【図5】この発明の実施例のエアコン装置を積み上げた保管状態の説明図である。
【符号の説明】
【0053】
A エアコン装置
B 仮設設備
1 室内機
2 室外機
3 空気吸込み口
4 空気排出口
5 間隔
6 ベース
6a 上ベース
6b 下ベース
7 固定部材
8 連結配管
9 キャスター
9a ロック手段
10 伸縮機構
10a 伸長固定手段
11 壁面
11a 開口
11b 開閉手段
11c 密着手段
12 閉止部材
13 連結機構
13a 第1アーム
13b 第2アーム
14 駆動部
15 第1固定軸
16 第2固定軸
17 冷媒圧縮機
18 支持枠
19 丁番


【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機1と室外機2とで構成する主として冷房に使用するエアコン装置Aであって、そのエアコン装置Aの室外機2は後面に空気吸込み口3、前面に空気排出口4を備えており、
その後面の空気吸込み口3と間隔5を介して、前記室外機2が取り付けられたベース6から固定部材7を立ち上げ、
この固定部材7の上部には前記室内機1を前記室外機2の反対側に向けて取り付け、かつ室内機1と室外機2との連結配管8を前記固定部材7に固定して取り付けて、エアコン装置Aを使用可能状態に設置しており、
前記ベース6は前記室外機2を取り付けた上ベース6aと、キャスター9を取り付けた下ベース6bと、この上ベース6aと下ベース6bとの間に介在させた伸縮機構10とで構成し、前記エアコン装置Aは前記キャスター9によって移動可能とすると共に、前記伸縮機構10によって昇降可能になっており、
前記室内機1を設置した前記ベース6の後方側には仮設設備Bの壁面11を配置し、この仮設設備Bの壁面11には開閉自在な開口11aを設け、
前記キャスター9には仮設設備Bの壁面11a側に移動して固定するロック手段9aを設け、前記伸縮機構10には伸長位置を保持する伸長固定手段10aを設け、
前記キャスター9と伸縮機構10によって、前記仮設設備Bの開口11aからその仮設設備B内の所定の高さに移動した室内機1は、前記ロック手段9aと伸長固定手段10aとによってその位置が固定されることを特徴とする仮設設備用エアコン装置。
【請求項2】
前記仮設設備Bには開口11aの上部で壁面11と接続する開閉手段11bを取り付け、
この開閉手段11bと開口11aとの間には密着手段11cを設けており、
前記開閉手段11bは開口11aから前記室内機1が差込まれた状態で密着手段11cによって開口11aの周縁と接続し、
開閉手段11bによって開口11aが固定部材7を挟んで閉止されることを特徴とする請求項1記載の仮設設備用エアコン装置。
【請求項3】
前記室内機1と固定部材7との間には前記連結配管8を貫通させた閉止部材12を取り付け、
該閉止部材12と前記開口11aとの間には密着手段11cを設けており、
前記閉止部材12は前記室内機1が開口11aに差し込まれた状態で密着手段11cによって開口11aの周縁と接続し、
仮設設備B内に室内機1が、仮設設備B外に固定部材7が位置した状態で開口11aが閉止されることを特徴とする請求項1記載の仮設設備用エアコン装置。
【請求項4】
前記伸縮機構10は、上ベース6aと下ベース6bとの間に配置した第1アーム13aと第2アーム13bとをX字状に連結した連結機構13と、該連結機構13を伸縮させる駆動部14とによって構成し、
前記第1アーム13aは一端を第1固定軸15によって上ベース6aの下面に回動可能に取付けると共に他端を下ベース6bの上面に沿って移動可能に取付け、かつ、第2アーム13bは一端を第2固定軸16によって下ベース6bの上面に回動可能に取り付けると共に他端を上ベース6aの下面に沿って移動可能に取付け、
前記連結機構13が駆動部14によって上下方向に伸縮してエアコン装置Aを昇降させることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の仮設設備用エアコン装置。
【請求項5】
前記室外機2は内装する冷媒圧縮機17がベース6の中央よりも連結機構13の第1・第2固定軸15・16側に位置するように設置すると共に、
室内機1と室外機2との間の連結配管8を連結機構13の第1・第2固定軸15・16側に配置したことを特徴とする請求項4に記載の仮設設備用エアコン装置。
【請求項6】
前記ベース6には室外機2よりも背が高いコ字状の支持枠18を設け、該支持枠18の上面に他の仮設設備用エアコン装置Aの下ベース6bを載架して、エアコン装置Aを積み上げ保管することを特徴とする請求項1から5に記載の仮設設備用エアコン装置。
【請求項7】
前記固定部材7は前記支持枠18の上面と同じ高さ位置で上下に分割し、固定部材7の上下の接続部分に丁番19を配置し、室内機1を取付けた固定部材7の上部を支持枠18の上面に重なるように折りたたんで保管することを特徴とする請求項6記載の仮設設備用エアコン装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−132629(P2007−132629A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328264(P2005−328264)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】