説明

仮設足場の幅木材

【課題】幅木材自体に幅木材と足場板との間に生じた隙間を解消する機能を持たせることによって仮設足場の足場板付近の安全性をより高めることができる仮設足場の幅木材を提供する。
【解決手段】仮設足場に固定され足場板60の側部に配置される幅木材10であって、一定の本体高さ幅(H)を有し、その両側に仮設足場の横柱へのフック部18を設けた幅木板本体11と、幅木板本体の内側12に本体高さ幅(H)より低い幅(M)の補助板材20が足場板側に対して倒置可能に内装しており、幅木板本体が下部に断面コ字状の溝部を有し、補助板材の下部には溝部に収容される突状部が形成され、補助板材の倒置時には該突状部と溝部とを係合するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設足場の幅木材に関し、特に必要により足場板との隙間を埋めることができる幅木材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場等に構築される仮設足場は、支柱と横柱(横架材、腕木、横桟等とも称される)との組み合わせからなる枠組みに足場板が設置されて組み立てられる。足場板は主に横架材上に組み付けられ、仮設足場は出来上がる。このような仮設足場は高所作業を伴うことから、足場の安全性に十分な配慮が必要となる。例えば、作業者による足場板の踏み外し、工具類の落下等を防ぐ必要がある。
【0003】
そこで、仮設足場における足場板付近の安全性を高めるべく、幅木材等が足場板の片側もしくは両側に設置される。このような幅木材は足場板の長さに等しい長尺の板材からなり、その両端にフック形状等の係合部が備えられ、枠組みの支柱や横柱等と固定される(例えば、特許文献1,特許文献2,特許文献3等参照)。幅木材は現場での取り付けが容易なため、現在では広く普及している。
【0004】
足場板の横幅は大抵統一されているものの、資材調達等の都合上、現場においては異なる横幅の足場板が混在して設置される場合がある。そのため、足場板の横幅いかんにより、足場板の横に設置される幅木材と、足場板との隙間が広がってしまうことがある。
【0005】
しかしながら、各特許文献に開示されている幅木材にあっては、幅木材自体に幅木材と足場板との間に生じた隙間を解消する機能を備えたものは無く、幅木材と足場板との隙間の解消を図り安全性をより向上させた構成は未だに存在しなかった。そこで、仮設足場の足場板付近の安全性確保、特に足場板との隙間の解決が課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−227402号公報
【特許文献2】特開2006−169902号公報
【特許文献3】特開2007−92352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、幅木材自体に幅木材と足場板との間に生ずることのある隙間を解消する機能を持たせることによって仮設足場の足場板付近の安全性をより高めることができる仮設足場の幅木材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、仮設足場に固定され足場板の側部に配置される幅木材であって、一定の本体高さ幅(H)を有する幅木板本体と、前記幅木板本体の内側に前記本体高さ幅(H)より低い幅(M)の補助板材が足場板側に対して倒置可能に内装されていることを特徴とする仮設足場の幅木材に係る。
【0009】
請求項2の発明は、前記幅木板本体が下部に断面コ字状の溝部を有し、前記補助板材の下部には前記溝部に収容される突状部が形成され、補助板材の倒置時には該突状部と前記溝部とが係合するようになっている請求項1に記載の仮設足場の幅木材に係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記幅木板本体の両側に仮設足場の横柱へのフック部が設けられている請求項1又は2に記載の仮設足場の幅木材に係る。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明に係る仮設足場の幅木材によると、仮設足場に固定され足場板の側部に配置される幅木材であって、一定高さ幅(H)を有する幅木板本体と、前記幅木板本体の内側に本体高さ幅(H)より低い幅(M)の補助板材が足場板側に対して倒置可能に内装されているため、幅木材自体によって仮設足場の幅木材と足場板との間に生ずることのある隙間を塞ぐことができ、足場板付近の安全性をより高めることが可能となる。また、幅木材と足場板との隙間を塞ぐための他の資材を必要としないことから、作業現場における資材数の抑制が可能となる。
【0012】
請求項2の発明に係る仮設足場の幅木材によると、請求項1の発明において、前記幅木板本体が下部に断面コ字状の溝部を有し、前記補助板材の下部には前記溝部に収容される突状部が形成され、補助板材の倒置時には該突状部と前記溝部とが係合するようになっているため、補助板材の使用時において安易に補助板材が幅木板本体から外れなくなる。
【0013】
請求項3の発明に係る仮設足場の幅木材によると、請求項1又は2の発明において、前記幅木板本体の両側に仮設足場の横柱へのフック部が設けられているため、仮設足場の横柱への取り付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係る仮設足場の幅木材の全体斜視図である。
【図2】仮設足場の幅木材の主要部拡大斜視図である。
【図3】補助板材の収容状態を示す斜視図である。
【図4】補助板材の倒置状態を示す斜視図である。
【図5】幅木材と仮設足場との固定状態を示す斜視図である。
【図6】幅木材の左側面図である。
【図7】図6の連結時の左側部分断面図である。
【図8】他の実施例に係る仮設足場の幅木材の主要部拡大斜視図である。
【図9】さらに他の実施例に係る仮設足場の幅木材の主要部拡大斜視図である。
【図10】図9の幅木材における補助板材の収容状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1の全体斜視図、図2の主要部拡大斜視図と共に、本発明の仮設足場の幅木材を説明する。この幅木材10は長尺の板部材であり、仮設足場の安全措置の一環として仮設足場1に固定された足場板60の側部に配置される。
【0016】
請求項1の発明に規定するように、幅木材10は、一定の本体高さ幅Hの幅木板本体11を有する。幅木板本体11の内側12に該幅木板本体11の高さよりも低い幅Mの補助板材20が内装されている。図1の破線で示した補助板材20のように、足場板60に対して倒置可能となっている。幅木板本体11の長手方向全体を通じて、その下部13に断面「コ」字状の溝部(下部側溝部14)が形成される。図示の例では、幅木板本体11の上部15にも断面コ字状の溝部(上部側溝部16)が形成される。
【0017】
幅木材10にあっては、請求項3の発明に規定するように、幅木板本体11の両側17には、仮設足場1の横柱3へ取り付けるためのフック部18が連結板部材30に接続されて設けられている。図示の実施例では、左端側17aに装着された左側連結板部材31を介して左側フック部18aが設けられ、同様に右端側17bに装着された右側連結板部材32を介して右側フック部18bが設けられている。フック部により、仮設足場1の横柱3への取り付けは容易となる。図2から把握されるように、幅木板本体、左右の連結板部材、及びフック部の固定にはボルト41、ナット42が用いられる。この他に、リベットによる固定、溶接等も用いられる。なお、前記の横柱3は横架材、腕木、横桟等とも称される。
【0018】
連結板部材30の上側には、断面「く」の字状に屈曲した重合板部材35が備えられる。図示の左側連結板部材31の上側には、断面「く」の字状に屈曲した左側重合板部材33が形成され、右側連結板部材32の上側にも、相補的に重なり合うように右側重合板部材34が形成される。また、左側連結板部材31及び右側連結板部材32のそれぞれには、穴部38を有するクリップ受け部39が備えられる。左側連結板部材31、右側連結板部材32等の作用は後述する。
【0019】
図3、図4を用い足場板60に対する補助板材20の倒置の状態を説明する。図示では幅木材10の左端側17aにおいて左側連結板部材31等を取り外し幅木板本体11内部の構造を開示する。請求項2の発明に規定するように、幅木板本体11の下部13に断面コ字状の溝部(下部側溝部14)が設けられる。補助板材20の下部23には下部側溝部14に収容される突状部24が形成される。突状部24も断面コ字状の溝部である。図の符号Hは幅木板本体の本体高さ幅であり、Mは補助板材の幅である。
【0020】
実施例の補助板材20では、1枚の長尺の鋼板を折り曲げることにより、曲げ板部22と前記の突状部24が形成される。補助板材20の突状部24は下部側溝部14に収容されることから、下部側溝部14は突状部24の幅よりも十分に大きく形成される。そのため、図3、図4のとおり、補助板材20を倒置する際の回動が円滑となる。符号21は補助板材の板部、61は足場板の上板部である。
【0021】
図3に示しているように、足場板60の横幅いかんにより、幅木材(幅木板本体11)と足場板60とは、隙間Saの長さ分だけ離れてしまう場合がある。そこで図4のとおり、幅木材(幅木板本体)と足場板との隙間Saを埋め合わせるため、幅木板本体11内に格納されている補助板材20は、突状部24を回動の中心にして足場板60に向けて倒される。この結果、補助板材の板部21、曲げ板部22が、足場板60の上板部61、縁部62に到達する。そこで、幅木材自体によって、幅木材(幅木板本体)と足場板との隙間Saは塞がれる。自明ながら、幅木材と足場板との隙間を塞ぐための他の資材を必要としない。よって、作業現場における資材数の抑制が可能となる。むろん、幅木材(幅木板本体)と足場板との間隔によっては、補助板材20が倒されない場合もある。
【0022】
補助板材20の倒置時においても、突状部24と下部側溝部14とが係合しているため、安易に補助板材20が幅木板本体11から外れないようになっている。実施例にあっては、下部側溝部14の端部に溝縁部14fが設けられ、断面コ字状の突状部24が溝縁部14fに引っかかるため、幅木板本体と足場板との係合状態は維持される。図示しないが、補助板材と幅木板本体との係合に際し、補助板材の端部と幅木板本体の下部とを公知の蝶番により接続して補助板材を回動させることができる。また、幅木板本体の下部に適宜の回動軸を配置し、これに補助板材の端部を接続して双方の回動を容易としてもよい。
【0023】
これより幅木材10と仮設足場1との固定の様子を説明する。図5の斜視図に示した実施例の足場板60では、仮設足場1の横柱3に足場板フック部68を介して設置される。続いて幅木材10を仮設足場1に固定するに際し、幅木板本体11の両側17(左端側17a,右端側17b)にそれぞれ設けられているフック部18(左側フック部18a,右側フック部18b)を介して横柱3に設置される。
【0024】
図示から把握できるように、紙面右側の幅木材10のフック部18(左側フック部18a)に、紙面左側の幅木材10のフック部18(右側フック部18b)が重ね合わされる。同時に、左側フック部18aを備える左側連結板部材31に、右側フック部18bを備える右側連結板部材32が重ね合わされる。すなわち、幅木材10,10の端部同士の接合部位において、互いに差し込まれるようにして連結される。
【0025】
互いの幅木材が仮設足場の所定位置に設置された後、支柱2の背後に該支柱と当接する幅木用クリップ部材50が介装される。幅木用クリップ部材50は2本の脚部51,51を有して折り曲げられたU字状(V字状)の部材である。幅木用クリップ部材50の脚部51,51は、左側連結板部材31のクリップ受け部39及び右側連結板部材32のクリップ受け部39の穴部38にそれぞれ挿入される。こうして、幅木材10,10は仮設足場1の横柱3上に互いに連結し合って配置され、幅木用クリップ部材50を介して支柱2とも固定される。ゆえに、幅木材10,10の仮設足場1への固定は強固となる。
【0026】
次に図6、図7を用い幅木材同士の連結状況を説明する。図6は幅木材10を幅木板本体11の左端側17aから見た際の左側面図であり、まず、一の幅木材10を仮設足場1の横柱3に係合した状況である。幅木材10において、紙面左側から、幅木板本体11の本体高さ幅を構成する側板部19、左側連結板部材31、左側フック部18aの順に適度な間隔を置いて並設される。間隔はボルト41や図示しないワッシャ等により調整される。なお、図示では便宜上、前記のクリップ受け部を省略した。
【0027】
図7は、図6の幅木材10にさらに他の幅木材を仮設足場1の横柱3に係合した状態である。一の幅木材10の左側フック部18aの右横に他の幅木材の右側フック部18bが並置される(図5参照)。そして、他の幅木材の右側連結板部材32が、一の幅木材の左側連結板部材31と左側フック部18aとの間に形成された隙間Sjの中に挿入される。左側連結板部材31に右側連結板部材32が重ね合わされる(図5の別視点のとおりである。)。また、両連結板部材の上部においても、一の幅木材の左側重合板部材33に他の幅木材の右側重合板部材34が重ね合わされる。
【0028】
左側重合板部材33には断面く字状に屈曲形成され正面辺部33pが形成される。また、右側重合板部材34には前記の左側重合板部材33の正面辺部33pと重なり合う断面く字状に屈曲形成された背面辺部34qが形成される。このため、左側重合板部材33と右側重合板部材34との表裏の重なりにより、右側連結板部材32を左側連結板部材31に組み合わせる際の位置決めは容易となる。
【0029】
加えて、左右の重合板部材の辺部同士は断面く字状であることから、いったん左右の重合板部材同士で組み合わさった後は容易に上下に移動し難くなり、左側連結板部材に重なられる右側連結板部材の上下方向の位置ずれを抑制できる。図示から把握されるように、他の幅木材において、右側連結板部材32及び右側フック部18bは、連結対象となる一の幅木材10の側板部19、左側連結板部材31、左側フック部18aと異なる間隔に調整されてなる。なお、幅木材は仮設足場に連続して配置される。そこで、一の幅木材の幅木板本体11の左端側17aと右端側17bにおいて、側板部、連結板部材、フック部は、左右で重なり合って組み合わされる量だけ互いにずらした間隔に形成される。
【0030】
図8の斜視図は他の実施例に係る仮設足場の幅木材10Aの主要部を開示する。幅木材10Aでは、左側連結板部材31に保持片部材45が備えられる。実施例の保持片部材45は、ボルト41、ナット42間に回動可能に介装される。幅木板本体11の内側12に内装された補助板材20が不使用時に幅木板本体から倒れなくするため、保持片部材45(実線表記)は、補助板材と当接しその倒置を防いでいる。なお、補助板材20の使用時、保持片部材45は矢印の向きに回動され(破線表記)、保持片部材と補助板材との当接は解除される。このため、補助板材の不用意な倒置のおそれは解消される。保持片部材45は、左側連結板部材31または右側連結板部材32のいずれかもしくは両方に備えられる。
【0031】
図9及び図10の斜視図はさらに他の実施例に係る仮設足場の幅木材10Bの主要部を開示する。幅木材10Bでは、幅木板本体11の下部13に断面コ字状の溝部(下部側溝部14B)が設けられており、下部側溝部14Bは前掲の実施例の下部側溝部14よりも深く形成されている。つまり、深溝下部側溝部となる。溝部自体を深くすることにより、不使用時の補助板材20(その下部23の突状部24)は、下部側溝部14Bの深さDpに応じて、より深く幅木板本体11の下部側溝部14Bの内部に収容される(図10参照)。
【0032】
図示のとおり、深溝の下部側溝部14Bとしたことにより、幅木板本体11の内側12に内装されている不使用時の補助板材20の重心位置も低くなる。そこで、補助板材20が倒置しようとしても、先に補助板材の板部21が溝壁部14w、図示では溝縁部14fに当接して補助板材の倒置は抑制される。補助板材の収容しているときの補助板材のがたつきを防ぐために、下部側溝部14Bの深さDp、溝縁部14fの長さは最適に設定される。こうして、補助板材の不用意な倒置のおそれは解消される。
【0033】
補助板材20を使用する場合、いったん補助板材は垂直方向に持ち上げられる。補助板材の突状部24が溝縁部14fと接触したところで幅木板本体11の内側12からその外へ向けて倒される。収容時はこの逆である。
【0034】
各実施例に開示の幅木材10,10A,10Bにあっては、単独で構成しても、それぞれを組み合わせても良い。また、幅木板本体の本体高さ幅H、補助板材の幅M等は施工対象となる仮設足場に応じて適宜の寸法となる。各図において、共通する箇所は同一符号とした。
【符号の説明】
【0035】
1 仮設足場
3 横柱
10,10A,10B 幅木材
11 幅木板本体
12 幅木板本体の内側
14 溝部(下部側溝部)
18 フック部
18a 左側フック部
18b 右側フック部
20 補助板材
24 突状部
30 連結板部材
31 左側連結板部材
32 右側連結板部材
33 左側重合板部材
34 右側重合板部材
35 重合板部材
60 足場板
H 本体高さ幅
M 補助板材の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設足場に固定され足場板の側部に配置される幅木材であって、
一定の本体高さ幅(H)を有する幅木板本体と、
前記幅木板本体の内側に前記本体高さ幅(H)より低い幅(M)の補助板材が足場板側に対して倒置可能に内装されていることを特徴とする仮設足場の幅木材。
【請求項2】
前記幅木板本体が下部に断面コ字状の溝部を有し、前記補助板材の下部には前記溝部に収容される突状部が形成され、補助板材の倒置時には該突状部と前記溝部とが係合するようになっている請求項1に記載の仮設足場の幅木材。
【請求項3】
前記幅木板本体の両側に仮設足場の横柱へのフック部が設けられている請求項1又は2に記載の仮設足場の幅木材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−255332(P2010−255332A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107914(P2009−107914)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(503400053)KRH株式会社 (28)
【出願人】(598098984)