仮設配管の設置工法
【課題】仮設配管の撤去作業が容易になる仮設配管の設置工法を提供する。
【解決手段】掘削溝5を掘穿して、掘削溝に仮設配管4を配置して土砂を埋め戻す仮設配管設置工法において、適宜幅の長尺帯状で端部に引上用の係止腕部を突設したシート体1を、土砂7の埋め戻しに際して、仮設配管に添い且つ当該シート体の捲り上げ、或いは持ち上げで仮設配管4の表面が露出するような仮設配管の上方位置に被せると共に、引上用係止部12を上方に突出配置させてなり、仮設配管撤去に際しての掘り起こしは、係止部の露出位置まで機械掘りで行い、前記機械掘り後にシート体を土砂と共に掘削機械で捲り上げ(持ち上げ)、無駄な土砂の掘削を行うことなく仮設配管4を撤去する。
【解決手段】掘削溝5を掘穿して、掘削溝に仮設配管4を配置して土砂を埋め戻す仮設配管設置工法において、適宜幅の長尺帯状で端部に引上用の係止腕部を突設したシート体1を、土砂7の埋め戻しに際して、仮設配管に添い且つ当該シート体の捲り上げ、或いは持ち上げで仮設配管4の表面が露出するような仮設配管の上方位置に被せると共に、引上用係止部12を上方に突出配置させてなり、仮設配管撤去に際しての掘り起こしは、係止部の露出位置まで機械掘りで行い、前記機械掘り後にシート体を土砂と共に掘削機械で捲り上げ(持ち上げ)、無駄な土砂の掘削を行うことなく仮設配管4を撤去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本管の修理や交換工事に先立ち、本管の迂回管となる仮設配管の設置工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス管や水道管工事に際して、ガスや水道等の供給が途絶えないように、当該本管の迂回管(仮設配管)を設置する必要がある。そこで仮設配管を埋設し、本管工事終了後に埋設した仮設配管を掘り起こす仮設配管設置工事が行われている。
【0003】
前記の仮設配管の掘り起こしは、仮設配管埋設深さの近くまでは、機械掘削(ユンボ・パワーショベル)で行い、その後は仮設配管の周囲部分を手掘りで行っているものである。
【0004】
また本管工事においては、工事が数日間にわたる場合には、一日の工事終了後に仮埋め戻しを行い、工事再開時に仮埋め戻し個所を再度掘り起こして工事を続行するが、仮埋め戻し後の掘り起こし作業を簡素化するために、重い土砂の変わりに、合成樹脂製中空球体を多数ネットに入れ、当該ネット体を掘削溝の底方に充填し、掘削溝の上方部分は、一定の仕切り材(透水シート)を介して路盤材を充填して仮埋設する手段が知られている(特許文献1:特開平7−317008号公報)。
【0005】
また特許文献2(特開平8−193304号公報)には、前記の中空球体充填ネット体に替えて、5〜20kgの独立発泡樹脂ブロック体を採用し、前記のブロック体の上方に砂袋を中層仮埋体として採用し、更に上層仮埋体として土砂を採用する工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−317008号公報。
【特許文献2】特開平8−193304号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
仮設配管の掘り起こしに際しては、前記したとおり機械掘りと手掘りの組み合わせで行っており、手掘り作業が煩瑣な作業であることは本管工事と同様である。しかし前記の特許文献1,2に開示されている仮埋体の採用が、仮設配管の埋設工事に適しているとは認められない。
【0008】
本管工事は毎日のように掘り返しが必要であり、樹脂製の仮埋体の変形などは毎日の掘り返し時に確認でき、破損変形を確認すると直ぐに取り換えることが可能であるが、仮設配管の埋設は、本管工事における仮埋め戻しのように直ぐに掘り返すのではなく、ある程度の長期間(数か月)埋設状態が維持されるので、その間に埋設個所上の車両走行などの荷重が絶えず加わることになり、樹脂製の仮埋体が変形した場合に、当該個所が陥没して車両走行に危険性が生じてしまう。
【0009】
また本管は、長期間の安全性確保のために相応の深さに埋設する必要があり、埋め戻し再掘削がある程度の深さを必要とするので、種々の仮埋体を組み合わせるコスト高となる煩雑な作業であっても、総合的にみると種々の仮埋体の使用が効果的であるといえるが、本管より浅く埋設することが可能である仮設配管の設置工事においては、樹脂製仮埋体の採用は過剰品質といえ、コスト的に問題となる。
【0010】
そこで本発明は、仮埋体を使用することなく仮設配管の掘り起こしを容易にする新規な仮設配管の設置工法を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る仮設配管の設置工法は、仮設配管設置用の掘削溝を掘穿して、掘削溝の底面上に仮設配管を配置した後、掘削溝内に土砂を埋め戻してなる仮設配管の設置工法において、適宜幅の長尺帯状のシート本体の端部に引上用の係止部を突設したシート体を、前記の土砂埋め戻しに際して、仮設配管に添い、且つ当該シート本体の捲り上げ、或いは持ち上げで仮設配管の表面が露出するように仮設配管に被せてなることを特徴とするものである。
【0012】
而して前記の仮設配管の設置工法において、仮設配管撤去に際しての掘り起こしは、適宜深さ(後述するシート本体の捲り上げ或いは持ち上げが可能な深さ)までは従前と同様の機械掘りで行い、前記機械掘りの後に、シート本体の引上用の係止部を、ユンボ等の掘削機械、ダンプ等の走行機械、クレーン等の吊り上げ機械に連結して、シート本体の捲り上げ、或いは持ち上げを行うと、仮設配管の表面が露出することになり、そのままで或いは多少の手掘りを行って仮設配管を撤去するものである。
【0013】
また本発明(請求項2)に係る仮設配管の設置工法は、前記の設置工法において、土砂の埋め戻しに際して、係止部の位置が、少なくとも埋め戻した土砂の機械掘削可能な深さ以上の高さとしてなるもので、埋め戻し土砂の機械掘削で係止部が確実に露出するので、当該露出した係止部を所定の機械に連結し、仮設配管を覆う埋め戻し土砂のシート本体による除去が、効率的に行われるものである。
【0014】
更に本発明(請求項4)に係る仮設配管の設置工法は、シート本体の一部又は全部が、ネットその他の透水構造としてなるもので、雨が埋め戻した掘削溝に浸透してもシート体で滞留することがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成は上記のとおりで、特別な樹脂製の仮埋体を採用することなく、従前と同様に掘削溝の掘削土や、埋め戻し用砂を使用して埋め戻しを行うものであるが、仮設配管撤去時の仮設配管掘り起こしに際して、その大部分は機械力による掘削ですみ、仮設配管の撤去に際しても仮設配管使用期間中に車両走行などで固められた埋め戻し土砂のうち、仮設配管の周囲部分(特に上面を覆っている部分)は、シート本体の捲り上げで除去され、仮に残存していたとしても、仮設配管の近傍の周囲の土砂は、前記のシート体の捲り上げによって解されることになり、そのままの状態又は簡単な手掘りで容易に仮設配管を撤去できるもので、仮設配管撤去に際しての掘り起こし土砂量が少なくて済み、簡易な仮設配管設置工法で、仮設配管撤去作業の作業能率を格段に向上させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態工法に使用するシート体の説明図。
【図2】同工法の仮設配管設置工程の説明図。
【図3】同掘り起こし作業の説明図(機械堀りの斜視図)。
【図4】同図(機械掘りの側面図)。
【図5】同図(シート本体捲り上げ時の斜視図)。
【図6】同図(シート本体捲り上げ時の側面図)。
【図7】同図(仮設配管の解体撤去)。
【図8】同仮設配管とシート体配置の別例図。
【図9】本発明の第二実施形態工法に使用するシート本体の説明図。
【図10】同掘り起こし時の説明図(機械掘り終了時の斜視図)。
【図11】同図(シート本体捲り上げ時の斜視図)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施形態工法について説明する。本発明工法は所定のシート体1を使用するものである。またシート体1の形状・構造に合わせてシート体1の捲り上げに必要な連結具2を使用する。
【0018】
シート体1は、シート本体11が土砂を乗せたまま上方に吊上げた際に破損しないような充分に耐久力を有する材質で形成したもので、幅は少なくとも仮設配管の管径と同じかそれ以上で、長さは後述する作業に対応できる適宜なものとし、少なくとも一端側に引上用の係止部12を設けたものである。
【0019】
係止部12は、土砂を乗せたままシート本体11を捲り上げたり、或いは吊り上げたりすることができるように設けたもので、例えば図示しているようにシート本体11に付設した腕帯部13の先端を輪状に形成して設けたもので、当該輪状の係止部12に連結具(棒状体)2を装着し、前記連結具2を引上げ用の機械(ユンボ等の掘削機械3のアーム先端:作用部31や、その他走行機械等)に接続したり、或いは更に連結具2の他にチェーン等の介在具21等を介して接続するものである。勿論連結具2を使用せずにチェーン等の介在具21のみを使用しても良いし、また引き上げ用機械も特に限定されるものではなく、使用する機械に対応して係止部12の構造・形状を定めればよいものである。
【0020】
また係止部12は、特にシート本体11を吊り上げて使用する場合には、四隅部に設けておき、機械による吊り上げを可能とし、また捲り上げて使用するものであれば、連続的に捲り上げることができるように、シート体1の側縁に適宜間隔で設けておくものである。
【0021】
次に本発明工法(仮設配管の設置工法)を、前記のシート体1を使用しての施工手順について説明する。仮設配管4を埋設するために仮設配管設置用の掘削溝5を、ユンボ等の油圧ショベルを備えた所定の掘削機械3で掘穿する。掘削溝5は、仮設配管4同士の連結に必要な個所を除き、仮設配管4を設置すべき深さと一致する深さとする。
【0022】
仮設配管4は、前記掘削溝5の底面51に直接載置し、次にこの仮設配管4にシート本体11を、仮設配管4に密着させて被せ、係止部12を例えば鉤状杆6の様な器具を使用して立ち上げ状態として(図2ロ)、土砂7で掘削溝5の埋め戻しを行う。尚シート本体11の掘削溝5内への配置は、前記の手順に限定されるものではなく、例えば仮設配管4の側方空間に土砂7を投入して一部埋め戻しを行った後に、仮設配管4の上方に被せるようにしても良い。
【0023】
土砂7の埋め戻し工事は、通常掘削溝5の上方部分を残して行い、適宜填圧して表面に砕石71並びに仮舗装72を施したり、或いは被覆マットを敷設して仮設配管4の設置工事を終了する(図2ハ)。
【0024】
そして前記の仮設配管4は、本管工事が終了した後には、掘り起こして撤去する必要がある。本発明は、この撤去作業の効率化を目的としたものである。
【0025】
仮設配管撤去作業は、始めに掘削機械3で仮舗装72を剥がし(被覆マット使用時は不要)、砕石71を除去し、更に必要に応じて係止部12の先端(係止部分)が露出するまで、土砂7を掘削する。勿論仮設配管4の埋設位置が浅い場合には、土砂7の掘削を行わず、単に砕石71の除去を行うのみで、係止部12が露出するようにシート体1の埋設を行うようにしておいても良い。
【0026】
また機械掘りで係止部12が露出しない場合には、手掘りで係止部12を露出させ、後述するシート本体11の捲り上げ、吊り上げを行うものである。
【0027】
次にシート体1の係止部12(腕帯部13の先端)を露出させた後、左右の係止部12に連結具2を挿通して装着し、掘削機械3の作用部(アーム先端のショベル部分)31に、フックチェーン等の介在具21で連結し、掘削機械3でシート本体11を、シート本体11の埋設方向へ折り返すように捲り上げると、シート本体11の上に乗った土砂7は、仮設配管4の周囲(特に上方被覆個所)から取り除かれ、仮設配管4の表面(上面部分)が露出する(図5)。露出の程度が少ない場合には、手掘りで必要分を露出させる。そして前記状態で仮設配管4を掘削溝5内から撤去するものである(図7)。
【0028】
尚前記の仮設配管4の取り出し作業において、必要に応じて手掘りを行っても良く、その場合でも、車両走行等で踏み固められた土砂7は、シート本体11の捲り上げによって仮設配管4の近傍の土砂7は解されるので、容易に手掘り作業も実施出来るものである。
【0029】
また前記のシート本体11の捲り上げに代えて、シート体1全体を土砂7と共に吊り上げるようにしても良く、その際には係止部12の構造・形状も吊り上げ作業に適するものとする。
【0030】
以上のように本発明(第一実施形態)の仮設配管の設置工法を採用すると、仮設配管撤去作業において、掘削溝5内の土砂7の殆ど全てを掘削することなく、必要最小限の土砂7のみを基本的に機械掘削で掘削溝5から除去することで、仮設配管4の取り出しが可能となるものである。
【0031】
このようにシート体1の捲り上げで、仮設配管4を直接、或いは簡易な手掘り作業を付加することでその取り出しを可能とするものであるから、当該仮設配管の埋設深さ、仮設配管4の管径等によって、シート本体11の幅や、撤去作業時の機械掘削深さ(係止部12を設けている帯腕部13の長さ、立ち上げ高さ)が定められる。またシート本体11の吊り上げによって土砂7の除去を行う場合には、シート本体11は、吊り上げ可能な大きさにするものである。
【0032】
また本発明における仮設配管4の配置は、図示したように掘削溝5の底面中央に限ることが無く、掘削溝5の底面51の偏った位置の場合もあり、その際には図8に例示するように、偏った位置の仮設配管4の上面に密着させて配置するものである。
【0033】
また本発明は図9乃至11に示すように、腕帯部13を備えないシート体1aを使用するようにしても良い(第二実施形態工法)。
【0034】
即ち長尺のシート体1aは、シート本体11aが土砂を乗せたまま上方に吊り上げた際に破損しないような充分に耐久力を有する材質で形成され、シート本体11aの隅部に透孔で形成した引き上げ用の係止部12aを設けたものである。
【0035】
而して前記のシート体1aも、前記の第一実形態工法と同様に、掘削溝5の底面51に仮設配管4を設置し、次にこの仮設配管4にシート体1aを、仮設配管4に密着させて被せ、土砂7の埋め戻しを行うものである。特に前記の埋め戻しに際しては、図10に示すように、シート体1aの隅部の透孔部分(係止部)12aが跳ね上がっている状態とするのが好ましい。そして従前通り仮復旧を行って仮設配管4の設置工事を終了する。
【0036】
本管工事が終了した後の仮設配管撤去作業は、第一実施形態工法と同様に、掘削機械3で仮舗装72を剥がし、砕石71を除去し、更に係止部(透孔)12aが露出するまで、或いは適宜深さまで土砂7を掘削し、必要に応じて手掘りによって係止部(透孔)12aを露出させる。
【0037】
露出した係止部(透孔)12aに、適宜な連結具(フックチェーン等)2aを引っ掛けて、掘削機械3やその他の機械(走行機械等)で、シート本体11aを折り返すように捲り上げ、仮設配管4の周囲(特に上方被覆個所)の土砂7を除去し、仮設配管4の表面(上面部分)を露出させる(図11)。
【0038】
従って前記第一実施形態工法と同様に、仮設配管撤去作業に際して、掘削溝5内の土砂7の殆ど全てを掘削することなく、必要最小限の土砂7のみを基本的に機械掘削で掘削溝5から除去することで、仮設配管4の取り出しが可能となるものである。
【0039】
勿論本発明は、前記の第一実施形態及び第二実施形態に限定されるものではなく、仮設配管4の埋め戻しに際して、仮設配管4にシート体を被せ、仮設配管撤去時の埋め戻し土砂の除去を、前記のシート体の捲り上げ又は吊り上げで実施することができれば良いもので、シート体は、前記を実現するものであれば、例えば、シート本体の材質として透水性のものを利用したりその形状・構造は任意である。
【符号の説明】
【0040】
1,1a シート体
11,11a シート本体
12 係止部
12a 係止部(透孔)
13 腕帯部
2 連結具
2a 連結具(フックチェーン)
21 介在具(フックチェーン)
3 掘削機械
31 作用部
4 仮設配管
5 掘削溝
51 底面
6 鉤状杆
7 土砂
71 砕石
72 仮舗装
【技術分野】
【0001】
本発明は、本管の修理や交換工事に先立ち、本管の迂回管となる仮設配管の設置工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス管や水道管工事に際して、ガスや水道等の供給が途絶えないように、当該本管の迂回管(仮設配管)を設置する必要がある。そこで仮設配管を埋設し、本管工事終了後に埋設した仮設配管を掘り起こす仮設配管設置工事が行われている。
【0003】
前記の仮設配管の掘り起こしは、仮設配管埋設深さの近くまでは、機械掘削(ユンボ・パワーショベル)で行い、その後は仮設配管の周囲部分を手掘りで行っているものである。
【0004】
また本管工事においては、工事が数日間にわたる場合には、一日の工事終了後に仮埋め戻しを行い、工事再開時に仮埋め戻し個所を再度掘り起こして工事を続行するが、仮埋め戻し後の掘り起こし作業を簡素化するために、重い土砂の変わりに、合成樹脂製中空球体を多数ネットに入れ、当該ネット体を掘削溝の底方に充填し、掘削溝の上方部分は、一定の仕切り材(透水シート)を介して路盤材を充填して仮埋設する手段が知られている(特許文献1:特開平7−317008号公報)。
【0005】
また特許文献2(特開平8−193304号公報)には、前記の中空球体充填ネット体に替えて、5〜20kgの独立発泡樹脂ブロック体を採用し、前記のブロック体の上方に砂袋を中層仮埋体として採用し、更に上層仮埋体として土砂を採用する工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−317008号公報。
【特許文献2】特開平8−193304号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
仮設配管の掘り起こしに際しては、前記したとおり機械掘りと手掘りの組み合わせで行っており、手掘り作業が煩瑣な作業であることは本管工事と同様である。しかし前記の特許文献1,2に開示されている仮埋体の採用が、仮設配管の埋設工事に適しているとは認められない。
【0008】
本管工事は毎日のように掘り返しが必要であり、樹脂製の仮埋体の変形などは毎日の掘り返し時に確認でき、破損変形を確認すると直ぐに取り換えることが可能であるが、仮設配管の埋設は、本管工事における仮埋め戻しのように直ぐに掘り返すのではなく、ある程度の長期間(数か月)埋設状態が維持されるので、その間に埋設個所上の車両走行などの荷重が絶えず加わることになり、樹脂製の仮埋体が変形した場合に、当該個所が陥没して車両走行に危険性が生じてしまう。
【0009】
また本管は、長期間の安全性確保のために相応の深さに埋設する必要があり、埋め戻し再掘削がある程度の深さを必要とするので、種々の仮埋体を組み合わせるコスト高となる煩雑な作業であっても、総合的にみると種々の仮埋体の使用が効果的であるといえるが、本管より浅く埋設することが可能である仮設配管の設置工事においては、樹脂製仮埋体の採用は過剰品質といえ、コスト的に問題となる。
【0010】
そこで本発明は、仮埋体を使用することなく仮設配管の掘り起こしを容易にする新規な仮設配管の設置工法を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る仮設配管の設置工法は、仮設配管設置用の掘削溝を掘穿して、掘削溝の底面上に仮設配管を配置した後、掘削溝内に土砂を埋め戻してなる仮設配管の設置工法において、適宜幅の長尺帯状のシート本体の端部に引上用の係止部を突設したシート体を、前記の土砂埋め戻しに際して、仮設配管に添い、且つ当該シート本体の捲り上げ、或いは持ち上げで仮設配管の表面が露出するように仮設配管に被せてなることを特徴とするものである。
【0012】
而して前記の仮設配管の設置工法において、仮設配管撤去に際しての掘り起こしは、適宜深さ(後述するシート本体の捲り上げ或いは持ち上げが可能な深さ)までは従前と同様の機械掘りで行い、前記機械掘りの後に、シート本体の引上用の係止部を、ユンボ等の掘削機械、ダンプ等の走行機械、クレーン等の吊り上げ機械に連結して、シート本体の捲り上げ、或いは持ち上げを行うと、仮設配管の表面が露出することになり、そのままで或いは多少の手掘りを行って仮設配管を撤去するものである。
【0013】
また本発明(請求項2)に係る仮設配管の設置工法は、前記の設置工法において、土砂の埋め戻しに際して、係止部の位置が、少なくとも埋め戻した土砂の機械掘削可能な深さ以上の高さとしてなるもので、埋め戻し土砂の機械掘削で係止部が確実に露出するので、当該露出した係止部を所定の機械に連結し、仮設配管を覆う埋め戻し土砂のシート本体による除去が、効率的に行われるものである。
【0014】
更に本発明(請求項4)に係る仮設配管の設置工法は、シート本体の一部又は全部が、ネットその他の透水構造としてなるもので、雨が埋め戻した掘削溝に浸透してもシート体で滞留することがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成は上記のとおりで、特別な樹脂製の仮埋体を採用することなく、従前と同様に掘削溝の掘削土や、埋め戻し用砂を使用して埋め戻しを行うものであるが、仮設配管撤去時の仮設配管掘り起こしに際して、その大部分は機械力による掘削ですみ、仮設配管の撤去に際しても仮設配管使用期間中に車両走行などで固められた埋め戻し土砂のうち、仮設配管の周囲部分(特に上面を覆っている部分)は、シート本体の捲り上げで除去され、仮に残存していたとしても、仮設配管の近傍の周囲の土砂は、前記のシート体の捲り上げによって解されることになり、そのままの状態又は簡単な手掘りで容易に仮設配管を撤去できるもので、仮設配管撤去に際しての掘り起こし土砂量が少なくて済み、簡易な仮設配管設置工法で、仮設配管撤去作業の作業能率を格段に向上させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態工法に使用するシート体の説明図。
【図2】同工法の仮設配管設置工程の説明図。
【図3】同掘り起こし作業の説明図(機械堀りの斜視図)。
【図4】同図(機械掘りの側面図)。
【図5】同図(シート本体捲り上げ時の斜視図)。
【図6】同図(シート本体捲り上げ時の側面図)。
【図7】同図(仮設配管の解体撤去)。
【図8】同仮設配管とシート体配置の別例図。
【図9】本発明の第二実施形態工法に使用するシート本体の説明図。
【図10】同掘り起こし時の説明図(機械掘り終了時の斜視図)。
【図11】同図(シート本体捲り上げ時の斜視図)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施形態工法について説明する。本発明工法は所定のシート体1を使用するものである。またシート体1の形状・構造に合わせてシート体1の捲り上げに必要な連結具2を使用する。
【0018】
シート体1は、シート本体11が土砂を乗せたまま上方に吊上げた際に破損しないような充分に耐久力を有する材質で形成したもので、幅は少なくとも仮設配管の管径と同じかそれ以上で、長さは後述する作業に対応できる適宜なものとし、少なくとも一端側に引上用の係止部12を設けたものである。
【0019】
係止部12は、土砂を乗せたままシート本体11を捲り上げたり、或いは吊り上げたりすることができるように設けたもので、例えば図示しているようにシート本体11に付設した腕帯部13の先端を輪状に形成して設けたもので、当該輪状の係止部12に連結具(棒状体)2を装着し、前記連結具2を引上げ用の機械(ユンボ等の掘削機械3のアーム先端:作用部31や、その他走行機械等)に接続したり、或いは更に連結具2の他にチェーン等の介在具21等を介して接続するものである。勿論連結具2を使用せずにチェーン等の介在具21のみを使用しても良いし、また引き上げ用機械も特に限定されるものではなく、使用する機械に対応して係止部12の構造・形状を定めればよいものである。
【0020】
また係止部12は、特にシート本体11を吊り上げて使用する場合には、四隅部に設けておき、機械による吊り上げを可能とし、また捲り上げて使用するものであれば、連続的に捲り上げることができるように、シート体1の側縁に適宜間隔で設けておくものである。
【0021】
次に本発明工法(仮設配管の設置工法)を、前記のシート体1を使用しての施工手順について説明する。仮設配管4を埋設するために仮設配管設置用の掘削溝5を、ユンボ等の油圧ショベルを備えた所定の掘削機械3で掘穿する。掘削溝5は、仮設配管4同士の連結に必要な個所を除き、仮設配管4を設置すべき深さと一致する深さとする。
【0022】
仮設配管4は、前記掘削溝5の底面51に直接載置し、次にこの仮設配管4にシート本体11を、仮設配管4に密着させて被せ、係止部12を例えば鉤状杆6の様な器具を使用して立ち上げ状態として(図2ロ)、土砂7で掘削溝5の埋め戻しを行う。尚シート本体11の掘削溝5内への配置は、前記の手順に限定されるものではなく、例えば仮設配管4の側方空間に土砂7を投入して一部埋め戻しを行った後に、仮設配管4の上方に被せるようにしても良い。
【0023】
土砂7の埋め戻し工事は、通常掘削溝5の上方部分を残して行い、適宜填圧して表面に砕石71並びに仮舗装72を施したり、或いは被覆マットを敷設して仮設配管4の設置工事を終了する(図2ハ)。
【0024】
そして前記の仮設配管4は、本管工事が終了した後には、掘り起こして撤去する必要がある。本発明は、この撤去作業の効率化を目的としたものである。
【0025】
仮設配管撤去作業は、始めに掘削機械3で仮舗装72を剥がし(被覆マット使用時は不要)、砕石71を除去し、更に必要に応じて係止部12の先端(係止部分)が露出するまで、土砂7を掘削する。勿論仮設配管4の埋設位置が浅い場合には、土砂7の掘削を行わず、単に砕石71の除去を行うのみで、係止部12が露出するようにシート体1の埋設を行うようにしておいても良い。
【0026】
また機械掘りで係止部12が露出しない場合には、手掘りで係止部12を露出させ、後述するシート本体11の捲り上げ、吊り上げを行うものである。
【0027】
次にシート体1の係止部12(腕帯部13の先端)を露出させた後、左右の係止部12に連結具2を挿通して装着し、掘削機械3の作用部(アーム先端のショベル部分)31に、フックチェーン等の介在具21で連結し、掘削機械3でシート本体11を、シート本体11の埋設方向へ折り返すように捲り上げると、シート本体11の上に乗った土砂7は、仮設配管4の周囲(特に上方被覆個所)から取り除かれ、仮設配管4の表面(上面部分)が露出する(図5)。露出の程度が少ない場合には、手掘りで必要分を露出させる。そして前記状態で仮設配管4を掘削溝5内から撤去するものである(図7)。
【0028】
尚前記の仮設配管4の取り出し作業において、必要に応じて手掘りを行っても良く、その場合でも、車両走行等で踏み固められた土砂7は、シート本体11の捲り上げによって仮設配管4の近傍の土砂7は解されるので、容易に手掘り作業も実施出来るものである。
【0029】
また前記のシート本体11の捲り上げに代えて、シート体1全体を土砂7と共に吊り上げるようにしても良く、その際には係止部12の構造・形状も吊り上げ作業に適するものとする。
【0030】
以上のように本発明(第一実施形態)の仮設配管の設置工法を採用すると、仮設配管撤去作業において、掘削溝5内の土砂7の殆ど全てを掘削することなく、必要最小限の土砂7のみを基本的に機械掘削で掘削溝5から除去することで、仮設配管4の取り出しが可能となるものである。
【0031】
このようにシート体1の捲り上げで、仮設配管4を直接、或いは簡易な手掘り作業を付加することでその取り出しを可能とするものであるから、当該仮設配管の埋設深さ、仮設配管4の管径等によって、シート本体11の幅や、撤去作業時の機械掘削深さ(係止部12を設けている帯腕部13の長さ、立ち上げ高さ)が定められる。またシート本体11の吊り上げによって土砂7の除去を行う場合には、シート本体11は、吊り上げ可能な大きさにするものである。
【0032】
また本発明における仮設配管4の配置は、図示したように掘削溝5の底面中央に限ることが無く、掘削溝5の底面51の偏った位置の場合もあり、その際には図8に例示するように、偏った位置の仮設配管4の上面に密着させて配置するものである。
【0033】
また本発明は図9乃至11に示すように、腕帯部13を備えないシート体1aを使用するようにしても良い(第二実施形態工法)。
【0034】
即ち長尺のシート体1aは、シート本体11aが土砂を乗せたまま上方に吊り上げた際に破損しないような充分に耐久力を有する材質で形成され、シート本体11aの隅部に透孔で形成した引き上げ用の係止部12aを設けたものである。
【0035】
而して前記のシート体1aも、前記の第一実形態工法と同様に、掘削溝5の底面51に仮設配管4を設置し、次にこの仮設配管4にシート体1aを、仮設配管4に密着させて被せ、土砂7の埋め戻しを行うものである。特に前記の埋め戻しに際しては、図10に示すように、シート体1aの隅部の透孔部分(係止部)12aが跳ね上がっている状態とするのが好ましい。そして従前通り仮復旧を行って仮設配管4の設置工事を終了する。
【0036】
本管工事が終了した後の仮設配管撤去作業は、第一実施形態工法と同様に、掘削機械3で仮舗装72を剥がし、砕石71を除去し、更に係止部(透孔)12aが露出するまで、或いは適宜深さまで土砂7を掘削し、必要に応じて手掘りによって係止部(透孔)12aを露出させる。
【0037】
露出した係止部(透孔)12aに、適宜な連結具(フックチェーン等)2aを引っ掛けて、掘削機械3やその他の機械(走行機械等)で、シート本体11aを折り返すように捲り上げ、仮設配管4の周囲(特に上方被覆個所)の土砂7を除去し、仮設配管4の表面(上面部分)を露出させる(図11)。
【0038】
従って前記第一実施形態工法と同様に、仮設配管撤去作業に際して、掘削溝5内の土砂7の殆ど全てを掘削することなく、必要最小限の土砂7のみを基本的に機械掘削で掘削溝5から除去することで、仮設配管4の取り出しが可能となるものである。
【0039】
勿論本発明は、前記の第一実施形態及び第二実施形態に限定されるものではなく、仮設配管4の埋め戻しに際して、仮設配管4にシート体を被せ、仮設配管撤去時の埋め戻し土砂の除去を、前記のシート体の捲り上げ又は吊り上げで実施することができれば良いもので、シート体は、前記を実現するものであれば、例えば、シート本体の材質として透水性のものを利用したりその形状・構造は任意である。
【符号の説明】
【0040】
1,1a シート体
11,11a シート本体
12 係止部
12a 係止部(透孔)
13 腕帯部
2 連結具
2a 連結具(フックチェーン)
21 介在具(フックチェーン)
3 掘削機械
31 作用部
4 仮設配管
5 掘削溝
51 底面
6 鉤状杆
7 土砂
71 砕石
72 仮舗装
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設配管設置用の掘削溝を掘穿して、掘削溝の底面上に仮設配管を配置した後、掘削溝内に土砂を埋め戻してなる仮設配管設置工法において、適宜幅の長尺帯状のシート本体の端部に引上用の係止部を設けたシート体を、前記の土砂埋め戻しに際して、仮設配管に添い、且つ当該シート本体の捲り上げ、或いは持ち上げで仮設配管の表面が露出するように仮設配管に被せてなることを特徴とする仮設配管の設置工法。
【請求項2】
土砂の埋め戻しに際して、係止部の位置が、少なくとも埋め戻した土砂の機械掘削可能な深さ以上の高さとしてなる請求項1記載の仮設配管の設置工法。
【請求項3】
係止部を、シート本体に付設した腕帯部の先端部分に設けてなる請求項1又は2記載の仮設配管の設置工法。
【請求項4】
シート本体の一部又は全部が、ネットその他の透水構造としてなる請求項1乃至3記載の何れかの仮設配管の設置工法。
【請求項1】
仮設配管設置用の掘削溝を掘穿して、掘削溝の底面上に仮設配管を配置した後、掘削溝内に土砂を埋め戻してなる仮設配管設置工法において、適宜幅の長尺帯状のシート本体の端部に引上用の係止部を設けたシート体を、前記の土砂埋め戻しに際して、仮設配管に添い、且つ当該シート本体の捲り上げ、或いは持ち上げで仮設配管の表面が露出するように仮設配管に被せてなることを特徴とする仮設配管の設置工法。
【請求項2】
土砂の埋め戻しに際して、係止部の位置が、少なくとも埋め戻した土砂の機械掘削可能な深さ以上の高さとしてなる請求項1記載の仮設配管の設置工法。
【請求項3】
係止部を、シート本体に付設した腕帯部の先端部分に設けてなる請求項1又は2記載の仮設配管の設置工法。
【請求項4】
シート本体の一部又は全部が、ネットその他の透水構造としてなる請求項1乃至3記載の何れかの仮設配管の設置工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−136862(P2012−136862A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289529(P2010−289529)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(591197633)明和工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(591197633)明和工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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