説明

仮設養生体

【課題】仮設屋根の軽量化を図ることができるうえ、建物の解体作業と仮設屋根の盛り替え作業を並行して施工することで、作業効率を向上させることができる。
【解決手段】解体時における建物2の最上階の上方を覆う仮設屋根10と、仮設屋根10に支持され、少なくとも最上階を含む解体施工層Pの側方を覆う仮設側壁20と、解体施工層Pより下層階における建物2の躯体に対して下方に移動するように盛り替え可能に設けられるとともに、仮設屋根10を下方から支持するマスト3とを備え、マスト3は、仮設屋根10から受ける鉛直荷重および水平荷重を建物2の躯体によって支持され、解体の進捗に合わせて漸次下方へ盛り替えられる仮設養生体1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の解体に用いられる仮設養生体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物を解体する場合には、落下物の養生や外部への塵埃の飛散防止、防音等を目的として建物全体を覆うシート等の遮蔽体を取り付けた仮設養生体を用いているのが一般的である。ところで、近年では、高層建物の解体が行われるケースも増えている。このような高層建物にあっては、枠組足場を用いて地上より立設する一般的な形態の仮設養生体では足場の組立・解体に多大な手間とコストがかかるため、解体時における建物の最上階を覆う仮設屋根を設け、その仮設屋根を最上階の解体にとともに順次下方に盛り替えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、鉄骨造の高層建物の解体において、大梁を残して屋上階を解体する工程と、建物の下層階に支持されて前記大梁を支持する仮設柱を設ける工程と、その大梁の梁下に走行クレーンを設け、大梁および仮設柱を覆う仮設屋根と、建物の外壁に支持された外周足場とを設けて作業スペースを形成し、仮設柱を1層分だけ下方に移動し、さらに建物の下層階に支持させることを繰り返しながら解体する方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−69117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の仮設養生体では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1では、本設の大梁の梁下に天井クレーン等の揚重設備を設ける方法であり、仮設屋根が本設の大梁を有し、しかもその大梁の梁下にクレーン走行用のガーターと、クレーン本体とを装備した構成となるので、仮設屋根が大重量となり、仮設屋根を支持する仮設柱の支持荷重の負担が増大する。そのため、解体に伴う仮設屋根の移動、すなわちリフトダウンにかかる作業効率が低下するという問題があった。例えば、複数の仮設柱によって仮設屋根が支持されている場合、リフトダウン時にそれら複数の仮設柱を同調させて降下させる必要があるが、仮設屋根の重量が大きくなると、その同調作業が困難となり、作業に手間と時間がかかっていた。
【0006】
また、特許文献1の場合、本設梁にクレーン等を使用しており、解体作業と仮設屋根の移動作業とを別々に行うことになることから、作業効率が低下することとなり、その点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、仮設屋根の軽量化を図ることができるうえ、建物の解体作業と仮設屋根の盛り替え作業を並行して施工することで、作業効率を向上させることができる仮設養生体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る仮設養生体では、解体中の建物上方の解体施工層を覆うように設けられるとともに、解体の進捗に合わせて漸次下方へ盛り替えられる仮設養生体であって、解体時における建物の最上階の上方を覆う仮設屋根と、仮設屋根に支持され、少なくとも最上階を含む解体施工層の側方を覆う仮設側壁と、解体施工層より下層階における建物の躯体に対して下方に移動するように盛り替え可能に設けられるとともに、仮設屋根を下方から支持するマストとを備え、マストは、仮設屋根から受ける鉛直荷重および水平荷重を建物の躯体によって支持されることを特徴としている。
【0009】
本発明では、仮設屋根と仮設側壁とで建物の最上階の上方、および少なくとも最上階を含む解体施工層の側方を覆った内側で解体作業を行うことができるので、周囲に対して落下物を養生することができ、外部への塵埃の飛散防止機能、防音機能をもたせることができる。そして、マストを下方に移動させることで、仮設屋根および仮設側壁を下方へ盛り替えることができる。
【0010】
そして、解体した資材を吊り下ろすクレーン等を仮設屋根と別体で設けることができるので、仮設屋根の軽量化を図ることができる。そのため、マストが受ける鉛直荷重および水平荷重の支持荷重が仮設屋根と仮設側壁の荷重のみとなることから、解体に伴う仮設屋根の移動、すなわちリフトダウンにかかる作業効率を向上させることができる。つまり、複数のマストによって仮設屋根が支持されている場合において、仮設屋根の軽量化により、リフトダウン時にそれら複数のマストを同調させて降下させることが容易になり、作業にかかる手間と時間を低減することができる。
【0011】
また、上述したようにクレーン等と仮設屋根とが別体で設けられるので、クレーンを用いた解体作業と仮設屋根の下方への盛り替え作業とを並行して施工することが可能となり、従来のように仮設屋根の盛り替え中に解体作業を行えない場合に比べて、工期の短縮を図ることができる。
さらに、仮設屋根および仮設側壁がマストによってのみ支持され、解体する最上階の外壁や外周柱に対して支持されない構成となるので、最上階において部分的に解体できずに残った状態となる不具合がなく、同一フロアを同時に解体することが可能となり、作業効率の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明に係る仮設養生体では、マストは、建物に対して鉛直荷重および水平荷重を支持する第1支持部と、第1支持部より上層階または下層階に設けられ、水平荷重のみを支持する第2支持部と、を有することが好ましい。
【0013】
本発明の仮設養生体では、マストに作用する水平荷重を第1支持部と第2支持部とで受けもたせることができる。また、仮設屋根および仮設側壁の自重による垂直荷重を、マストを介して第1支持部で受けもたせることができる。つまり、第1支持部では、マストの鉛直設置反力を解体前の建物の躯体にもたせることができる。
そして、本マストでは、上下2層に配置される第1支持部と第2支持部のそれぞれで受けたマストにかかる転倒モーメントを水平力で処理することができる。
【0014】
また、本発明に係る仮設養生体では、仮設側壁は、解体前の建物の外周柱に対して連結材によって固定されていてもよい。
【0015】
この場合、高層建物での高層解体時、あるいは強風時における仮設側壁の振れを抑制することができる。この場合、外周柱と仮設側壁とを固定する連結材を取り外しても、仮設屋根はマストによって下方から支持されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の仮設養生体によれば、仮設屋根にクレーン等の揚重機器を備えることがない構成であるので、仮設屋根の軽量化を図ることができ、仮設屋根を支持する複数のマストが負担する支持荷重を低減することが可能となる。そのため、仮設屋根の盛り替え作業時に、複数のマストを同調させることが容易になるという利点がある。
また、仮設屋根にクレーン等の揚重機器を備えられていないので、建物の解体作業と仮設屋根の盛り替え作業を並行して施工することができ、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態による仮設養生体の立断面図である。
【図2】図1に示すA−A線矢視図である。
【図3】(a)〜(b)は、仮設養生体の組立手順を示す図である。
【図4】(a)、(b)は、図3(c)に続く仮設養生体の組立手順を示す図である。
【図5】仮設養生体を用いた解体手順を示す図である。
【図6】図5に続く仮設養生体を用いた解体手順を示す図である。
【図7】図6に続く仮設養生体を用いた解体手順を示す図である。
【図8】図7に続く仮設養生体を用いた解体手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態による仮設養生体について、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態による仮設養生体1は、解体中の建物2の解体フロアとなる最上階RF(解体施工層P)を覆うように設けられるとともに、建物2の解体の進捗に合わせて漸次下方へ盛り替えられる。
【0020】
ここで、本実施の形態による建物2は、例えば平面視で矩形状のビル等の高層建物であって、図1および図2に示すように、鉄骨造の柱2A(必要に応じて外周柱2Aという)、梁2Bと、各階層に位置する床スラブ2Cと、建物2の外壁に設けられたPC版2D(柱用PC版2Da、梁用PC版2Db)と、を備えて構築されており、平面視で中央部分には、解体した資材等を搬送するための昇降ステージ4(後述する)を上下方向Yに移動させるためのエレベータシャフト2Eが設けられている。エレベータシャフト2Eは、各階層の床スラブ2Cを上下方向に連続する開口である。
【0021】
仮設養生体1は、解体時における建物2の最上階RFの上方を覆う仮設屋根10と、仮設屋根10に支持され、少なくとも最上階RFを含む解体施工層Pの側方を覆う仮設側壁20と、解体施工層Pより下層階における建物2の躯体に対して下方に移動するように盛り替え可能に設けられるとともに、仮設屋根10を下方から支持するマスト3と、を備えて概略構成されている。
【0022】
図1および図2に示すように、仮設屋根10は、平面視で縦横方向に間隔をあけて配置され、マスト3の上端に適宜な接続手段によって固定される仮設梁11と、仮設梁11上に沿って設けられる仮設フレーム12と、仮設フレーム12の上方に複数の支持部材14を介して架設される屋根本体13と、からなる。
【0023】
仮設梁11は、建物2の解体施工層Pにおいて、平面視で縦横それぞれに2本ずつ延在して設けられ、それぞれの両端(張出し端11a)が建物2の外壁(PC版2D)よりも外方に突出している。
仮設フレーム12は、仮設用の立体トラス構造により形成され、平面視で建物2の外壁よりも内側に配置されている。そして、仮設フレーム12の支持部材14が立設する位置には受けビーム15が設けられ、この受けビーム15上に支持部材14が上方に向けて突設されている。
屋根本体13は、建物2の最上階の解体施工層Pの上方と、仮設側壁20の上方とを覆う面積をもって形成されており、上述した複数の支持部材14によって下方より支持されている。
【0024】
架設側壁20は、平面視矩形の解体施工層Pの四方を囲むように各側面に間隔をあけて配置されたトラス部材21からなり、上端部が上記架設梁11の張出し端11aに固定されている。そして、トラス部材21の外周面には、全面にわたって養生シート22が張設されている。この養生シート22は、細かい穴が多数形成されたメッシュ状のシート材等からなり、落下養生や外部への塵埃の飛散防止、防音を図るとともに、通風および採光をある程度図れるものが採用される。
また、仮設側壁20は、建物2の外周柱2Aに対して連結材23によって固定されている。この連結材23の外周柱2Aにおける上下方向の位置は、解体施工層Pよりも1フロアだけ下層階の位置となる。
【0025】
図1に示すように、マスト3は、仮設屋根10から受ける鉛直荷重および水平荷重を建物2の床スラブ2C(あるいは梁2B)によって支持する上層支持部30A(第1支持部)と、上層支持部30Aより下層階に設けられ、水平荷重のみを支持する下層支持部30B(第2支持部)と、を有する二層支持方式を構成している。
【0026】
マスト3は、所定長さのマストピース(単体のマスト)を複数(ここでは5ピース)、軸方向に連結させた長さ寸法をなし、タワークレーンのクライミング用の円筒状のマストを使用することができ、平面視で複数本(図2では8本)が設けられている。これらマスト3は、それぞれ複数層の床スラブ2Cを貫通させ、それら階層のうち所定の階層で前記上層支持部30Aと下層支持部30Bによって支持されている。そして、解体施工層Pの解体作業とともに共に、前記上層支持部30Aと下層支持部30Bを設ける支持階を盛り替えることで、仮設屋根10および仮設側壁20を下方に移動させる構成となっている。
ここで、図1において、建物2の最上階RFの1つ下の下層階を第1下層階1Fとし、以下順に第2下層階2F、第3下層階3F、…として、以下説明する。したがって、解体当初の時点において、上述した上層支持部30Aは第1下層階1Fに支持され、下層支持部30Bは第3下層階F3に支持されている。
【0027】
上層支持部30Aは、例えばマスト3の周囲に当接した状態で囲うようにして建物2の躯体に対して着脱自在な水平移動規制梁(図示省略)が設けられ、すなわちマスト3が前記水平移動規制梁に対して上下方向に移動可能に挿通されており、マスト3から径方向の外側に張り出した図示しない支持脚部が前記水平移動規制梁の上面に載置された構成とされる。上層支持部30Aにおいて、マスト3に作用する水平荷重を水平移動規制梁を介して建物2の躯体に伝達し、マスト3に作用する鉛直荷重を支持脚部を介して建物2の躯体に伝達する構成となっている。なお、前記支持脚部は、マスト3に対して径方向に伸縮自在に装備されていてもよい。この場合、マスト3の盛り替え時に、床スラブ2Cに設けたマスト挿通用の開口を容易に通過させることができる。
【0028】
下層支持部30Bは、上述した上層支持部30Aと同様の水平移動規制梁のみが設けられ、前記支持脚部は設けられていない構成となっている。なお、この水平移動規制梁は、上記上層支持部30Aと同様の構成のため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0029】
図1に示すように、マスト3の下部には、マスト3を下方に移動させるための盛替え装置31が設けられている。この盛替え装置31は、下層支持部30Bと同じ階層(第3下層階3F)の躯体に固定されたセンターホールジャッキ32と、マスト3の下端に当接して設けられるマスト受け台33と、マスト受け台33に接続されるとともに、センターホールジャッキ32によってマスト受け台33を上方に引き上げるように緊張されるPC鋼線34と、からなる。つまり、センターホールジャッキ32でPC鋼線34のセンターホールジャッキ32とマスト受け台33との間の間隔を変更することが可能であり、これによりマスト3の高さ位置を調整することができる。すなわち、センターホールジャッキ32を緩めて、前記間隔を長くすることにより、マスト受け台33が下方に移動し、そのマスト受け台33上に載置されているマスト3を降下させて盛り替えることができる構成となっている。
【0030】
図1に示す昇降ステージ4は、エレベータシャフト2Eの上部において、解体施工層Pの床スラブ2Cに設置される門型フレーム41と、その門型フレーム41の上フレーム下に取り付けられる滑車42と、滑車42の回転によりエレベータシャフト2E内を上下方向に昇降するステージ43と、各階層の躯体に対して着脱可能、かつ上下移動可能に設けられた躯体固定部44と、を備えて構成されている。昇降ステージ4は、躯体固定部44を下層階に盛り替えることで、門型フレーム41の位置を順次下方に移動する解体施工層Pの位置に移動させることが可能な構成となっている。
【0031】
次に、上述した構成からなる仮設養生体1を用いて建物2を解体するための施工方法について、図面に基づいて説明する。
【0032】
先ず、図3および図4に示すように、仮設養生体1を建物2の最上階RFに設置する。
具体的には、図3(a)に示すように、建物2の最上階RFにジブクレーンKを設置し、このジブクレーンKを使用してエレベータシャフト2E上に昇降ステージ4を組み立てるとともに、複数のマスト3を設置する。このとき、マスト3は、図1に示すように、上層支持部30Aを最上階RFよりも1階下の第1下層階1Fに設置し、下層支持部30Bを上層支持部30Aよりも2階下の第3下層階3Fに設置し、さらにマスト下端に盛替え装置31を設けておく。なお、昇降ステージ4をマスト3よりも先行して設置しておくことで、マスト3の設置時に必要な資材の搬入を昇降ステージ4を使用して行うことが可能となる。
【0033】
次に、図3(b)に示すように、複数のマスト3の上端に仮設梁11を固定し、さらに仮設梁11上に仮設フレーム12を設け、支持部材14を介して屋根本体14を固定することで、仮設屋根1をマスト3上に組み立てる。このとき、図3(c)に示すように、建物2の地上部において、仮設側壁20のトラス部材21を組み立て、その外周部に養生シート22を張設しておく。その後、図4(a)に示すように、最上階RFに設置されているジブクレーンK等を使用して、地組みした仮設側壁20を最上階RFまで上昇させる。そして、図4(b)に示すように、仮設側壁20の上端を仮設梁11の張出し端11aに固定し、さらに図1に示す連結材23で外周柱2Aとトラス部材21とを連結することで、建物2の解体準備が完了となる。
【0034】
次に、図5乃至図8に基づいて仮設養生体1を用いた建物2の解体方法について説明する。
ここで、本解体方法では、昇降ステージ4の他に、図5、図7に示す移動式吊上げ装置51と、図6、図7に示す高所作業装置52、リフト装置53と、図6に示す切断装置54を使用している。
図5に示すステップS1では、最上階RFの解体施工層PのPC版2D(柱用PC版2Da、梁用PC版2Db)を移動式吊上げ装置51を使って解体する。次いで、図6に示すステップS2において、最上階RFの梁2Bや床スラブ2Cを高所作業装置52、リフト装置53、および切断装置54を用いて解体する。また、このステップS2においては、梁2Bの解体とともに、昇降ステージ4の盛り替え作業を行う(図7参照)。なお、解体したPC版2D、柱2A、梁2B、床スラブ2Cは、昇降ステージ4によって、吊り下ろして地上部へ搬送する。
【0035】
次に、図7に示すステップS3において、最上階RFの1階下の第1下層階1Fの柱2Aを移動式吊上げ装置51や高所作業装置52を使ってすべて解体する。
さらに、図8に示すステップS4では、すべてのマスト3において、上層支持部30Aを第2下層階F2に、下層支持部30Bを第4下層階F4にそれぞれ盛り替え、これにより仮設屋根10と仮設側壁20を下降させる。このとき、マスト3は、盛替え装置31のセンターホールジャッキ32を使用し、PC鋼線34を伸張させてマスト受け台33とともに降下させる。このとき、複数のマスト3のすべてのセンターホールジャッキ32によるPC鋼線34の伸張速度を同調させることで、仮設屋根10を安定させて降下させることができる。
【0036】
次に、上述した仮設養生体の作用について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、仮設屋根10と仮設側壁20とで建物2の最上階RFの上方、および少なくとも最上階RFを含む解体施工層Pの側方を覆った内側で、解体作業を行うことができるので、周囲に対して落下物を養生することができ、外部への塵埃の飛散防止機能、防音機能をもたせることができる。そして、マスト3を下方に移動させることで、仮設屋根10および仮設側壁20を下方へ盛り替えることができる。
【0037】
そして、解体した資材を吊り下ろす昇降ステージ4を仮設屋根10と別体で設けることができるので、仮設屋根10の軽量化を図ることができる。そのため、マスト3が受ける鉛直荷重および水平荷重の支持荷重が仮設屋根10と仮設側壁20の荷重のみとなることから、解体に伴う仮設屋根10の移動、すなわちリフトダウンにかかる作業効率を向上させることができる。つまり、複数のマスト3によって仮設屋根10が支持されている場合において、仮設屋根10の軽量化により、リフトダウン時にそれら複数のマスト3を同調させて降下させることが容易になり、作業にかかる手間と時間を低減することができる。
【0038】
また、上述したように昇降ステージ4と仮設屋根10とが別体で設けられるので、昇降ステージ4を用いた解体作業と仮設屋根10の下方への盛り替え作業とを並行して施工することが可能となり、従来のように仮設屋根の盛り替え中に解体作業を行えない場合に比べて、工期の短縮を図ることができる。
【0039】
さらに、仮設屋根10および仮設側壁20がマスト3によってのみ支持され、解体する最上階RFの外壁や外周柱2Aに対して支持されない構成となるので、最上階RFにおいて部分的に解体できずに残った状態となる不具合がなく、同一フロアを同時に解体することが可能となり、作業効率の向上を図ることができる。
【0040】
また、マスト3に作用する水平荷重を上層支持部30Aと下層支持部30Bとで受けもたせることができる。また、仮設屋根10および仮設側壁20の自重による垂直荷重を、マスト3を介して上層支持部30Aで受けもたせることができる。つまり、上層支持部30Aでは、マスト3の鉛直設置反力を解体前の建物2の躯体にもたせることができる。
そして、本マスト3では、上下2層に配置される上層支持部30Aと下層支持部30Bのそれぞれで受けたマスト3にかかる転倒モーメントを水平力で処理することができる。
【0041】
また、仮設側壁20が解体前の建物2の外周柱2Aに対して連結材23によって固定されているので、高層建物での高層解体時、あるいは強風時における仮設側壁20の振れを抑制することができる。この場合、外周柱2Aと仮設側壁20のトラス部材21とを固定する連結材23を取り外しても、仮設屋根10はマスト3によって下方から支持されている。
【0042】
上述のように本実施の形態による仮設養生体では、仮設屋根10にクレーン等の揚重機器を備えることがない構成であるので、仮設屋根10の軽量化を図ることができ、仮設屋根10を支持する複数のマスト3が負担する支持荷重を低減することが可能となる。そのため、仮設屋根10の盛り替え作業時に、複数のマスト3を同調させることが容易になるという利点がある。
また、仮設屋根10にクレーン等の揚重機器を備えられていないので、建物2の解体作業と仮設屋根10の盛り替え作業を並行して施工することができ、作業効率を向上させることができる。
【0043】
以上、本発明による仮設養生体の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態ではマスト3の上層支持部30Aでマスト3に作用する水平荷重と鉛直荷重を支持させ、下層支持部30Bで水平荷重のみを支持させているが、これに限定されることはなく、上層支持部30Aでマスト3に作用する水平荷重のみを支持させ、下層支持部30Bで水平荷重と鉛直荷重を支持させるようにすることも可能である。また、上層支持部30A、下層支持部30Bの支持構造、支持階の位置などの構成は、適宜変更する変更することができる。例えば、本実施の形態では、上層支持部30Aを解体初期段階において第1下層階1Fとし、下層支持部30Bを第3下層階3Fとしているが、これに制限されず、他の下層階に支持させるようにしてもよい。
また、盛替え装置31の構成は、本実施の形態のようにセンターホールジャッキ32やマスト受け台33を備えたものであることに制限されることはない。
【0044】
また、本実施の形態では仮設側壁20のトラス部材21と外周柱2Aとを連結材23で接続しているが、この連結材23による固定は省略することも可能である。
そして、仮設屋根10、仮設側壁20の構成、長さ寸法、マスト3の本数、長さ寸法等は、建物2の形状、面積等の条件に応じて適宜変更することが可能である。
【0045】
さらにまた、昇降ステージ4の構成についても、本実施の形態に限定されることはなく、他の構成であってもかまわない。また、本実施の形態では昇降ステージ4の資材搬送路として建物2のエレベータシャフト2Eを用いているが、この開口を搬送路とすることに制限されることはない。
【0046】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 仮設養生体
2 建物
2A 柱
2B 梁
2C 床スラブ
2D PC版
2E エレベータシャフト
3 マスト
4 昇降ステージ
10 仮設屋根
20 仮設側壁
22 養生シート
23 連結材
30A 上層支持部(第1支持部)
30B 下層支持部(第2支持部)
31 盛替え装置
P 解体施工層
RF 最上階

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体中の建物上方の解体施工層を覆うように設けられるとともに、解体の進捗に合わせて漸次下方へ盛り替えられる仮設養生体であって、
解体時における前記建物の最上階の上方を覆う仮設屋根と、
該仮設屋根に支持され、少なくとも最上階を含む解体施工層の側方を覆う仮設側壁と、
前記解体施工層より下層階における建物の躯体に対して下方に移動するように盛り替え可能に設けられるとともに、前記仮設屋根を下方から支持するマストと、
を備え、
該マストは、前記仮設屋根から受ける鉛直荷重および水平荷重を前記建物の躯体によって支持されることを特徴とする仮設養生体。
【請求項2】
前記マストは、前記建物に対して鉛直荷重および水平荷重を支持する第1支持部と、該第1支持部より上層階または下層階に設けられ、水平荷重のみを支持する第2支持部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の解体建物に用いる仮設養生体。
【請求項3】
前記仮設側壁は、解体前の建物の外周柱に対して連結材によって固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の解体建物に用いる仮設養生体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104173(P2013−104173A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246606(P2011−246606)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)