説明

仲介固定部材及び衛生陶器の固定構造

【課題】本発明は、衛生陶器本体に付属される専用ビスが螺入される床の範囲に、ビスから受ける力に対抗し得る硬質材料からなる層が存在しない構成であっても、該ビスを用いて衛生陶器を、確実に床に固定することができる仲介固定部材、及び該仲介固定部材を用いた衛生陶器の固定構造を提供することを目的とする。
【解決方法】軟質材料を含む上部層2と硬質材料からなる下部層1とからなり上部層2の所定位置に座ぐり部3が形成された床Aと、筒状部11と筒状部11の上端から外方向に延伸しビス挿通孔13が穿設された平板部12とからなり平板部12の底面が床Aの表面に当接するように床Aの座ぐり部3に埋設された仲介固定部材Bと、床Aに載置された便器(衛生陶器)Cと、便器Cのビス挿通孔22に挿通されて筒状部11に螺入された専用ビス(短ビス)23と、平板部12のビス挿通孔13に挿通され、下部層1に到達するように床Aに螺入される長ビス14と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式便器(腰掛便器)等の衛生陶器を軟質材料からなる上部層を有する床に固定する際に好適に使用することのできる仲介固定部材、及び該仲介固定部材を用いた衛生陶器の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、洋式便器等の床据置き式の衛生陶器を床に固定する場合、衛生陶器に付属される専用の固定ビス(ビス頭部を覆い隠す化粧用のキャップがねじ込めるようにねじ部が突出している)を用い、該ビスを便器の台座部のビス挿通孔に挿通し、床にねじ込むことで固定するのが一般的である。
【0003】
一方、近年は居住性能を向上させるために、床仕上げ材や床の層構成が多様化しつつある。例えば、床の遮音性能を向上させるために、床仕上げ材自体をクッション性のある材料で構成したり、床仕上げ材と合板やALC床パネル等の床下地との間にクッション性のある防音材を介装したりすることがある。また、断熱性能を向上させるために床仕上げ材と床下地との間に板状の断熱材を介装することもある。これらの防音材や断熱材は一般に発泡性の合成樹脂など軟質材料で構成される。
【0004】
このような床に対して、前述した衛生陶器をビス固定すると、ビスが充分に効かず、即ち、ビスの引抜力やビスから作用する水平方向への力に対抗できずにビスが緩んでしまい、衛生陶器にグラつき等が発生してしまうという問題があった。
【0005】
特許文献1には、本発明の仲介固定部材に形状が似通った取付脚体1の記載がある。しかし、本発明とは目的も機能も全く異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−2019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の有する課題を解決するものであり、衛生陶器本体に付属される専用ビスが螺入される床の範囲に、ビスから受ける力に対抗し得る硬質材料からなる層が存在しない構成であっても、該ビスを用いて洋式便器等の床据置き式の衛生陶器を、確実に床に固定することができる仲介固定部材、及び該仲介固定部材を用いた衛生陶器の固定構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為の、本発明に係る仲介固定部材は、軟質材料を含む上部層と硬質材料からなる下部層とからなる床に対し、下部層への充分な貫入長さを持たない短ビスを用いて衛生陶器を固定する際に使用する仲介固定部材であって、短ビスの径に対応した内径を有する筒状部と、筒状部の上端から外方向に鍔状に延伸しビス挿通孔が穿設された平板部と、からなることを特徴としている。
【0009】
ここで、軟質材料とは、ビスが効かない、即ち衛生陶器を固定しているビスの引抜力に対抗しえない材料(低密度の材料)であり、例えば、発泡性あるいは軟質の合成樹脂系材料、コルクなどである。硬質材料とは、ビスの引抜力やせん断力に対抗し得る材料であり、例えば、構造用合板やパーティクルボードなどの木質系材料、コンクリート等の窯業系材料、軽金属系材料などである。
【0010】
前記仲介固定部材の構成において、少なくとも筒状部が下端部の切削により長さ調整自在な材質からなることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る衛生陶器の固定構造の構成は、軟質材料を含む上部層と硬質材料からなる下部層とからなる床に対し、下部層への充分な貫入長さを持たない短ビスを用いた衛生陶器の固定構造であって、上部層の所定位置に座ぐり部が形成された床と、平板部の底面が床面に当接するように床の座ぐり部に埋設された前記構成の仲介固定部材と、仲介固定部材の筒状部と衛生陶器のビス挿通孔を一致させて床面に載置された衛生陶器と、衛生陶器のビス挿通孔に挿通されて筒状部に螺入された短ビスと、平板部のビス挿通孔に挿通され、下部層に到達するように床に螺入される長ビスと、からなることを特徴としている。
【0012】
前記衛生陶器の固定構造の構成において、平板部の底面から筒状部の下端までの寸法が上部層の厚さに一致し、且つ座ぐり部が下部層表面に到達することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る仲介固定部材の構成によれば、仲介固定部材は、短ビスを筒状部にねじ込むことで衛生陶器と一体となり、更に、平板部のビス挿通孔に下層部に充分に貫入しうる長さのビスを挿通しビスを下層部にねじ込みことで仲介固定部材が床に固定され、これによって下部層への充分な貫入長さを持たない短ビスを用いて衛生陶器を床に堅固に固定することができる。
【0014】
更に、少なくとも筒状部が下端部の切削により長さ調整自在な材質で構成されることで、筒状部の長さを上部層の厚さに応じて容易に調整することができ、仲介固定部材の汎用性を高めることができる。
【0015】
また、本発明に係る衛生陶器の固定構造の構成によれば、軟質材料からなる上部層と硬質材料からなる下部層とからなる床に対し、下部層への充分な貫入長さを持たない短ビスを用いる場合であっても、極めて堅固な衛生陶器の固定構造を実現することができる。
【0016】
更に、平板部の底面から筒状部の下端までの寸法が上部層の厚さに一致し、且つ座ぐり部が下部層表面に到達することで、上層部の座ぐり部に埋設された筒状部の下端が下部層表面に到達するので、長ビスをねじ込んだ際に床の上層部が圧縮力を受けて沈み込むことが防止でき、より安定した固定構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】衛生陶器の設置状態を示す図である。
【図2】衛生陶器の固定部の詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図を参照して、本発明に係る仲介固定部材及び衛生陶器の固定構造の一実施形態について説明する。ここでは、図1に示すように、住宅のトイレ内に設置された洋式の便器の固定に使用される仲介固定部材、及びこれを用いた便器の固定構造について例示している。
【0019】
(床Aの構成)
床Aは、材料であるALCパネルからなる下部層1と、モルタル2a、軟質材料であるポリプロピレン硬質発泡板2b、構造用合板2c、塩化ビニール製化粧シート(クッションフロア)2d、という層構成からなる上部層2とで構成されている。上部層2の後述する仲介固定部材B(便器Cの台座部21のビス挿通孔22)に対応する位置には。仲介固定部材Bの外形に対応した円柱状の座ぐり部3が形成されている。
【0020】
(仲介固定部材Bの構成)
仲介固定部材Bは、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン等の硬質の合成樹脂からなり、図2に示すように、筒状部11と筒状部11の上端から外方向に鍔状に延伸した平板部12とを備えている。筒状部11は、固定の対象となる便器Cに付属の専用ビス(短ビス)23に対応した内径(専用ビス23の径よりも若干小さな径)を有しており、専用ビス23を螺入させることで、内面にタップ溝が形成され、専用ビス23の引抜きに耐え得る強度が得られる。平板部12は、矩形であり、仲介固定部材Bを床Aに固定する為の汎用的な長ビス14を挿通する為の複数のビス挿通孔13(本実施形態では2つ)が形成されている。
【0021】
仲介固定部材Bは、平板部12の底面が床A(上層部)表面に当接し、且つ筒状部11の下端が下層部上端面に当接するように、座ぐり部3に埋設され、下部層1に充分に貫入する長さを有する長ビス14を用いて床Aに固定されている。なお、筒状部11は、カッターナイフ等の刃物にて切削加工が可能な材質と厚さを有しており、容易に長さを調整することが可能で、予め上部層2の厚さに合わせて加工がされた上で床Aに固定されている。
【0022】
(衛生陶器の構成)
便器Cは、床Aに据置き固定される洋式(腰掛け式)の便器Cである。図2に示すように、便器Cの両側面には上面が略フラットとなるように台座部21が形成されており、台座部21にはビス挿通孔22が複数穿たれている。便器Cの底部は、全面的にフラットな床Aに当接するのではなく、縁部及び要所のみが床Aに当接するように構成されている。
【0023】
便器Cは、付属品として複数の専用ビス23と専用ビス23の頭部を覆い隠す為の合成樹脂製の化粧キャップ24を備えている。専用ビス23は、化粧キャップ24をねじ込む為に、通常のビスの六角形の頭部からねじ部が突出した特殊な形状のものである。
【0024】
便器Cは、台座部21のビス挿通孔22と仲介固定部材Bの筒状部11の位置を一致させた状態で床Aに据え付けられ、専用ビス23をビス挿通孔22に挿通し更に筒状部11に螺入することで床Aに固定されている。
そして.固定作業が完了したのちに専用ビス23の頭部に化粧キャップ24が装着される。
【0025】
(作用・効果)
上記構成によれば、仲介固定部材Bは、専用ビス23を筒状部11にねじ込むことで便器Cと一体となり、更に、平板部12のビス挿通孔13に下層部に充分に貫入しうる長さを有する長ビスを挿通し下層部にねじ込むことで仲介固定部材Bが床Aに固定される。このように、仲介固定部材Bを介することで下部層1への充分な貫入長さを持たない専用ビス23を用いて便器Cを床Aに堅固に固定することができる。
また、筒状部11が床Aの上部層2の厚さに対応して切削加工されて、その下端部が下層部の上面に到達しており、長ビスをねじ込んだ際に床Aの上層部が圧縮力を受けて沈み込むことが防止できる。
【0026】
(他の構成例)
床の下層部を構成する他の材料としては、ビスが効く(長期間にわたってビスの引抜力やビスから作用する水平方向への力に対抗でき、ビスの周辺部が破壊されビスが抜けたり緩んだりすることがない)コンクリートスラブ、構造用合板等の硬質材料が挙げられる。
また、上層部を構成する材料としては、発泡系の合成樹脂からなるクッション材や断熱材、コルク等の低密度の軟質材料が挙げられる。なお、上層部が複数の材料からなりその一部に硬質材料を含んでいたとしても、その厚さが充分確保されていなければビスが効かない。
【0027】
また、仲介固定部材の平板部は、その底面が床に安定して当接すればよく、形状に関しては特に限定されないが、便器の底部(床と当接する部分)と干渉しないような形状や大きさを有するか、あるいは、形状の異なる複数の便器に汎用的に用いる場合は便器の底部との干渉部分を容易に切削することができるよう構成されていることが好ましい。
【0028】
また、仲介固定部材の筒状部は、工業化住宅等、床の構成に所定の規格を有し、上層部の厚さが共通の建物群を対象とする場合は、予めその厚さに対応した長さで製造しておいてもよい。
【符号の説明】
【0029】
A 床
B 仲介固定部材
C 便器(衛生陶器)
1 下部層
2 上部層
2a モルタル
2b ポリプロピレン硬質発泡板(軟質材料)
2c 構造用合板
2d 塩化ビニール製化粧シート
3 座ぐり部
11 筒状部
12 平板部
13 ビス挿通孔
14 長ビス
21 台座部
22 ビス挿通孔
23 専用ビス(短ビス)
24 化粧キャップ
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、床面に限らず、例えば壁面における各種被固定物の固定に適用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質材料を含む上部層と硬質材料からなる下部層とからなる床に対し、下部層への充分な貫入長さを持たない短ビスを用いて衛生陶器を固定する際に使用する仲介固定部材であって、
短ビスの径に対応した内径を有する筒状部と、
筒状部の上端から外方向に鍔状に延伸しビス挿通孔が穿設された平板部と、からなることを特徴とする仲介固定部材。
【請求項2】
少なくとも筒状部が下端部の切削により長さ調整自在な材質からなることを特徴とする請求項1に記載した仲介固定部材。
【請求項3】
軟質材料を含む上部層と硬質材料からなる下部層とからなる床に対し、下部層への充分な貫入長さを持たない短ビスを用いた衛生陶器の固定構造であって、
上部層の所定位置に座ぐり部が形成された床と、
平板部の底面が床面に当接するように床の座ぐり部に埋設された請求項1または2に記載した仲介固定部材と、
仲介固定部材の筒状部と衛生陶器のビス挿通孔を一致させて床面に載置された衛生陶器と、
衛生陶器のビス挿通孔に挿通されて筒状部に螺入された短ビスと、
平板部のビス挿通孔に挿通され、下部層に到達するように床に螺入される長ビスと、からなることを特徴とする衛生陶器の固定構造。
【請求項4】
平板部の底面から筒状部の下端までの寸法が上部層の厚さに一致し、且つ座ぐり部が下部層表面に到達したことを特徴とする請求項3に記載した衛生陶器の固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−174336(P2011−174336A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40710(P2010−40710)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】