説明

任意のオレフィンの再循環を伴う芳香族化合物の製造のためのバイオマスおよび炭化水素原料の触媒熱分解のための系および工程、ならびに触媒熱分解のための選択された粒径を有している触媒

本発明は、流体の炭化水素生成物についての組成物および方法に関し、特には、触媒熱分解を介した流体の炭化水素生成物についての組成物および方法に関する。いくつかの実施形態は、触媒熱分解を介した特定の芳香族生成物(例えば、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、キシレンなど)の製造方法に関する。いくつかのそのような方法は、固体の炭化水素原料と異種混合の熱分解触媒成分との混合物を含んでいる組成物の使用を含み得る。いくつかの実施形態において、ある生成物の収率および/または選択性を向上させるために、オレフィン成分は反応器へ同時供給され、かつ/あるいは生成物流から分離され、かつ当該反応器に再循環される。また、本書において望ましい方法は、特殊化した触媒の使用を含み得る。例えば、いくつかの場合において、ゼオライト触媒が用いられ得る。いくつかの例において、当該触媒は、ある生成物の収率および/または選択性を向上させ得る、同定されたある範囲における粒径によって特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、全ての目的に関してその全体の内容が参照によって本明細書に援用される、米国仮出願第61/241,018号(出願日:2009年9月9日、発明の名称:Systems and Processes for Catalytic Pyrolysis of Biomass and Hydrocarbonaceous Materials for Production of Aromatics with Optional Olefin Recycle, and Catalysts Having Selected Particle Size for Catalytic Pyrolysis)についての、米国特許法第119条(e)の優先権の利益を主張する。
【0002】
〔政府委託研究または開発に関する陳述〕
米国政府は、本発明における一括払い方式の実施権を有している。また、米国政府は、米国科学財団によって授与された補助金No. CBET-0747996の条項によって約定されたような妥当な条件において他者にライセンスを与えることを特許権者に要求する限定的付帯事項における権利を有している。
【0003】
〔本発明の技術分野〕
本発明は、生化学物質(バイオ燃料、芳香族化合物、およびオレフィン化合物など)の製造のための組成物および方法に関する。特には、本発明は、触媒熱分解を介した生化学物質の製造のための組成物および方法に関する。
【0004】
〔背景〕
その低コストおよび広範な利用可能性に関して、リグノセルロースバイオマスは再生可能な液体バイオ燃料のための供給原料として、世界中で研究されてきた。特に、化石燃料を使用せずに燃料の由来となるバイオマスを製造すれば、CO排出が正味ゼロであるということが、1つの原動力である。しかしながら、リグノセルロースバイオマスは、典型的な現在の変換工程が経済的に実現可能でないと考えられているため、現在のところ、液体燃料源として一般的に用いられていない。固形バイオマスを液体燃料へ変換するために、種々のルートが検討されている。低温(例えば、200〜260℃)において、水溶性の炭化水素溶液の多段階水相処理(APP)(脱水、アルドール縮合および脱水/水素化を含んでいる)によって、ディーゼル燃料の範囲のアルキルを製造し得る(G. W. Huber, J. A. Dumesic, Catalysis Today 2006, 111, 119-132.)。しかしながら、APPは、固体のリグノセルロースバイオマスがまず水溶性の炭水化物へ変換されることを必要とする。高温(〜800℃)において、合成ガスを製造するために、固形バイオマスを、自己熱型充填層反応器の中で触媒による部分的酸化によって改質し得る(P. J. Dauenhauer, J. D. Dreyer, N. J. Degenstein, L. D. Schnudt, Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 5864-5867.)。この反応から製造された合成ガスは、燃料および化学物質を作る第二の工程へ供給され得る。ある応用に関して、固形バイオマスの変換のための理想的な工程として、短い滞留時間における、一段階における、固形バイオマスから現行のインフラに合わせる液体燃料の製造が挙げられ得る。残念なことに、APPおよび合成ガス製法は何れもそのような基準に合っていない。
【0005】
バイオ燃料の製造のための別の方法は高速熱分解であり、例えば、中温(例えば、〜400〜500℃)までバイオマスを急速に加熱し(例えば、〜500℃/s)、続いて急速に冷却すること(例えば、滞留時間1〜2秒)が挙げられ得る(A. V. Bridgwater, Fast Pyrolysis of Biomass: A Handbook Volume 2, CPL Press, Newbury, UK, 2002.を参照)。従来の高速熱分解はしばしば、バイオオイルと呼ばれる熱不安定な液体の生成物(時間と共に劣化する300より多い化合物の、酸性の可燃性液体の混合物)の混合物を生成する。しかしながら、バイオオイルは、既存の液体輸送用燃料(ガソリンおよびディーゼルなど)と相溶性がなく、かつ収率が低い。
【0006】
したがって、固形バイオマスから有用なバイオ燃料および関連する化合物を製造するための、経済的で効率的なルートに関する技術において、存続中の探索が残っている。
【0007】
〔本発明の概要〕
本発明は概して、生化学物質(バイオ燃料、芳香族化合物、およびオレフィン化合物など)の製造のための組成物および方法に関する。本発明の主題は、いくつかの場合において、相互に関係のある生成物、特定の課題に対する代替案、ならびに/または、1または2以上の系および/もしくは物品についての複数の異なる使用に含んでいる。
【0008】
一局面において、炭化水素原料から1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造する方法を提供する。当該方法は、炭化水素原料を反応器へ供給すること、および当該反応器内において、1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、当該炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解すること、を含み得る。いくつかの実施形態において、当該方法は、上記反応器内において、オレフィンおよび芳香族化合物を含んでいる1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造するのに十分な反応条件下で、1または2以上の熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させること、当該流体の炭化水素生成物中のオレフィンの少なくとも一部を分離することによって、少なくとも分離したオレフィンを含んでいる再循環流、および生成物流を生成させること、および当該再循環流の少なくとも一部を当該反応器へ供給すること、を含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記方法は、固体の炭化水素原料を反応器へ供給すること、当該反応器内において、1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、当該固体の炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解すること、および当該反応器内において、オレフィンおよび芳香族化合物を含んでいる1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造するのに十分な反応条件下で、当該1または2以上の熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させること、を含み得る。いくつかの場合において、当該方法は、当該1または2以上の流体の炭化水素生成物中のオレフィンの少なくとも一部を分離することによって、少なくとも分離したオレフィンを含んでいる再循環流、および生成物流を生成させること、および当該再循環流の少なくとも一部を当該反応器へ供給すること、をさらに含み得る。
【0010】
いくつかの例において、上記方法は、炭化水素原料と約1ミクロン未満の最大断面寸法を有している複数の粒子を含んでいる1または2以上の触媒とを供給すること、および1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、当該炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解すること、を含み得る。いくつかの場合において、当該方法は、1または2以上の炭化水素生成物を製造するために、当該触媒を用いて熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させること、をさらに含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記方法は、炭化水素原料とガリウムを含んでいるゼオライト触媒とを供給すること、1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、当該炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解すること、および1または2以上の炭化水素生成物を製造するために、当該触媒を用いて熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させること、を含み得る。
【0012】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付の図面と共に熟考される場合、以下の本発明の種々の限定されない実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書と参照によって援用される文献とが相反する開示および/または矛盾する開示を含んでいる場合において、本明細書が支配することになる。参照によって援用される2以上の文献が互いに相反する開示および/または矛盾する開示を含んでいる場合、より最近の効果的なデータを有している文献が支配することになる。
【0013】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の限定されない実施形態は、添付の図面を参照しつつ実施例として記載され得るが、当該図面は概略的であり基準化するために描かれることを意図していない。図面において、説明されている各々の同一な構成要素または略同一な構成要素は、概して、1つの数字によって表されている。明確にする目的のため、それぞれの図面において全ての構成要素が明示されているわけではなく、当業者が本発明を理解するのに図解が必要でない箇所においては、本発明の各実施形態の全ての構成要素が示されているわけではない。図面の説明は以下のとおりである。
【0014】
図1は、一組の実施形態に係る、触媒熱分解工程の概略図である。
【0015】
図2A〜2Bは、一組の実施形態に係る、(A)バイオマス由来の様々な供給原料(芳香族化合物:横線、CO:白色、CO:斜線、コークス:黒色、および不明:灰色)における炭素収率のプロット、および(B)ベンゼン(Ben.)、トルエン(Tol.)、エチルベンゼンおよびキシレン(E−Ben、Xyl.)、メチルエチルベンゼンおよびトリメチルベンゼン(m,e−Ben.、tmBen.)、インダン(Ind.)ならびにナフタレン(Nap.)の供給物における芳香族選択性のプロットである。
【0016】
図3は、一組の実施形態に係る、ZSM5を用いたグルコースの触媒熱分解に対する名目加熱速度の関数としての、CO(黒四角)、芳香族化合物(黒三角)、CO(白三角)およびコークス(黒丸)の炭素収率のプロットである。
【0017】
図4A〜4Bは、一組の実施形態に係る、(A)触媒とグルコースとの質量比の関数としての、CO(黒四角)、芳香族化合物(黒三角)、CO(白三角)、部分的に脱酸素化した種(白四角)およびコークス(黒丸)の炭素収率のプロット、および(B)部分的に脱酸素化した化学種であるヒドロキシアセチルアルデヒド(H.A.)、酢酸(A.A.)、フラン(Fur.)、フルフラール(Furf)、メチルフラン(M−Fur)、4−メチルフルフラール(4−M−Furf)、およびフラン−2−メタノール(Fur−2−MeoH)の分布のプロットである。
【0018】
図5は、一組の実施形態に係る、様々な触媒を用いてグルコースの触媒熱分解を行った後の炭素収率のプロットである(芳香族化合物:横線、CO:白色、CO:斜線、部分的に脱酸素化した化学種:灰色、およびコークス:黒色)。
【0019】
図6A〜6Bは、一組の実施形態に係る、(A)触媒におけるアルミナに対するシリカの様々なモル比における炭素収率のプロット、および(B)触媒におけるアルミナに対するシリカの様々なモル比における、ベンゼン(Ben.)、トルエン(Tol.)、エチルベンゼンおよびキシレン(E−Ben.、Xyl.)、メチルエチルベンゼンおよびトリメチルベンゼン(m,e−Ben、tmBen.)、インダン(Ind.)ならびにナフタレン(Nap.)の供給物の芳香族選択性のプロットである。
【0020】
図7は、一組の実施形態に係る、2つの反応器の触媒熱分解工程の概略図である。
【0021】
図8A〜8Bは、一実施形態に係る、(A)様々な炭化水素の供給原料における炭素収率のプロット、および(B)様々な炭化水素原材料における、ベンゼン(Ben.)、トルエン(Tol.)、エチルベンゼンおよびキシレン(E−Ben.、Xyl.)、メチルエチルベンゼンおよびトリメチルベンゼン(m,e−Ben、tmBen.)、インダン(Ind.)ならびにナフタレン(Nap.)の供給物における芳香族選択性のプロットである。
【0022】
図9は、一組の実施形態に係る、理論収率の関数としての、単位質量あたりの芳香族化合物の生産量およびエネルギー量のプロットを示している。
【0023】
図10は、一組の実施形態に係る、ZSM5を用いたグルコースの触媒熱分解における反応器温度の関数としての、CO(黒四角)、芳香族化合物(黒三角)、CO(白三角)、およびコークス(黒丸)の炭素収率のプロットである。
【0024】
図11は、一組の実施形態に係る、ZSM−5を用いたグルコースの触媒熱分解におけるアルミナに対するシリカのモル比の関数としての、CO(黒四角)、芳香族化合物(黒三角)、およびCO(白三角)の炭素収率のプロットである。
【0025】
図12は、一組の実施形態に関して、空間速度の関数としての、オレフィンおよび芳香族化合物の炭素収率を略述するグラフである。
【0026】
図13は、一組の実施形態に係る、様々な化合物の炭素収率を説明するグラフである。
【0027】
図14は、流動層反応器を用いる一組の実施形態の概略図である。
【0028】
図15は、一組の実施形態に関して、芳香族化合物およびオレフィンの生成物収率を略述するプロットである。
【0029】
図16A〜16Bは、一実施形態に係る、空間速度の関数としての、それぞれオレフィンおよび芳香族化合物の収率および選択性のグラフを示している。
【0030】
図17は、一組の実施形態に係る、ゼオライト触媒の例示的なNorman半径調整孔径の表を示している。
【0031】
図18は、一組の実施形態に係る、複数の実験的運転についての、様々な反応生成物の炭素収率のグラフを示している。
【0032】
図19は、反応器系の構成の例示的な概略図を示している。
【0033】
図20A〜20Bは、一組の実施形態に係る、様々な反応生成物および反応供給物組成物における炭素収率のプロットを示している。
【0034】
図21A〜21Bは、一組の実施形態に係る、様々な反応生成物および反応供給物組成物における、(A)炭素収率のプロットおよび(B)芳香族選択性のプロットを示している。
【0035】
図22A〜22Fは、触媒の例示的なSEM画像を示している。
【0036】
図23A〜23Bは、一組の実施形態に係る、孔径の関数としての、様々な反応生成物における、(A)炭素収率のプロットおよび(B)芳香族選択性のプロットを示している。
【0037】
図24A〜24Dは、触媒の例示的なSEM画像を示している。
【0038】
図25は、一組の実施形態に係る、いくつかの触媒における様々な反応生成物の炭素収率を示している。
【0039】
図26A〜26Cは、一組の実施形態に係る、様々なZSM−5触媒における粉末X線回折(PXRD)のパターンを示している。
【0040】
図27は、一組の実施形態に係る、触媒熱分解工程の例示的な概略図を示している。
【0041】
図28は、いくつかの実施形態に係る、再循環比の関数としての、芳香族化合物の収率の例示的なプロットを示している。
【0042】
〔詳細な説明〕
本明細書は、生化学物質(バイオ燃料、芳香族化合物、およびオレフィン化合物など)の製造のための発明性のある(inventive)組成物および方法を開示する。特には、本明細書は、触媒熱分解を介した生化学物質の製造のための組成物および方法を開示する。いくつかの実施形態は、触媒熱分解工程(例えば、触媒高速熱分解)を介した、芳香族化合物(例えば、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、キシレンなど)およびオレフィン(例えば、エテン、プロペン、ブテンなど)などの流体(例えば、液体、超臨界流体、および/または気体)の炭化水素生成物の製造方法に関する。ある実施形態において、炭化水素生成物またはその一部は、標準周囲温度および圧力(SATP−すなわち25℃および100kPa絶対圧力)において液体である。いくつかのそのような方法は、炭化水素原料(例えば、液体、気体および/または固体の炭化水素原料)と異種混合の熱分解触媒成分との混合物を含んでいる組成物の使用を含んでいる。いくつかの実施形態において、炭化水素原料は反応器へ供給され、触媒熱分解を受け、生成物流の一部が当該炭化水素原料を含んでいる供給流へ再循環され得る。特定の一実施形態において、生成物流中のオレフィンの一部が選択的に供給流へ再循環される。そのような実施形態は、例えば、基本的に同一の条件下で、再循環(例えば、オレフィンの再循環)をしていない生成物流中に存在し得る芳香族化合物の量と比較して、生成物流中に存在する芳香族化合物の量を増加させることにおいて、有用であり得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、混合物は高温(例えば、500℃〜1000℃)において熱分解され得る。熱分解は、分離していて識別可能な流体の炭化水素生成物の製造に少なくともある程度十分な時間に達するまで行なわれ得る。いくつかの実施形態は、触媒と炭化水素原料との混合物を、比較的速い加熱速度(例えば、1秒あたり400℃〜1000℃)において加熱することを含んでいる。また、本明細書に記載されている方法は、特殊化した触媒の使用を含み得る。例えば、いくつかの場合において、ゼオライト触媒が用いられ;任意に、本明細書において使用されている触媒は、アルミナに対するシリカのモル比が高いものであり得る。いくつかの場合において、当該触媒は、比較的小さい粒子(凝集していてもよい)から形成され得るか、もしくは比較的小さい粒子を含み得る。いくつかの例において、熱分解の反応器へ供給される組成物は、炭化水素原料に対する触媒の質量比が比較的高い(例えば、約5:1〜約20:1)。
【0044】
いくつかの実施形態は、バイオマスの熱分解のための単段階の方法に関し得る。そのような方法は、単段式熱分解装置を用意することまたは使用することを含み得る。単段式熱分解装置は、熱分解およびその後の触媒反応が単一の容器中で行われるものである。いくつかの実施形態において、単段式熱分解装置は流動層反応器を含んでいる。以下により詳細に記載されるように、多段式装置も同様に、流体の炭化水素生成物の製造に用いられ得る。
【0045】
本明細書に使用されるとき、「熱分解」および「熱分解すること」という用語は、当該技術分野におけるそれらの従来の意味で用いられ、ある化合物(例えば、炭化水素原料)が、酸化を伴わずに加熱のみによって、1または2以上の他の物質(例えば、揮発性有機化合物、ガス、およびコークス)に変換(触媒の使用を伴ってか、もしくは触媒の使用を伴わずに起こり得る)されることを指して用いられる。「触媒熱分解」は、触媒の存在下で行われる熱分解を指し、以下により詳細に記載されるような工程を含み得る。触媒熱分解工程の例は、例えば、Huber, G.W. et al, "Synthesis of Transportation Fuels from Biomass: Chemistry, Catalysts, and Engineering," Chem. Rev. 106, (2006), pp. 4044-4098(その全体の内容が参照によって本明細書に援用される)において、略述されている。
【0046】
本明細書に使用されるとき、「バイオマス」という用語は、当該技術分野におけるそれらの従来の意味で用いられ、再生可能なエネルギーまたは化学物質の如何なる有機源をも指して用いられる。その主な成分は、(1)木(木材)および全ての他の植物;(2)農作物および農業廃棄物(トウモロコシ、果物、生ゴミ生牧草など);(3)藻および他の海洋植物;(4)代謝ゴミ(堆肥、下水汚物);および(5)セルロース性都市廃棄物であり得る。バイオマス原料の例は、例えば、Huber, G.W. et al, "Synthesis of Transportation Fuels from Biomass: Chemistry, Catalysts, and Engineering," Chem. Rev. 106, (2006), pp. 4044-4098において記載されている。
【0047】
発明者らは、本発明の関連において、いくつかの反応に関して、反応条件におけるある変更およびそのような変更の組合せが、反応条件における変更がなければ得られないものであり得る好ましい生成物および/もしくは収率、コークスの形態での収率の低減ならびに/またはより制御された生成物の形成(例えば、芳香族化合物および/またはオレフィンの製造量が他の燃料と比較して多い)を生み出し得ることを発見した。例えば、オレフィンを含んでいる再循環流の組み入れは、再循環流の非存在下で製造され得る芳香族化合物および/またはコークスの量と比較して、比較的多い量の芳香族化合物および/または少ない量のコークスを生成物流中に製造し得る。別の例として、高くした温度の利用(例えば、反応器および/または固体分離器における)は、より低い温度において起こり得ない反応から好ましい生成物および/または収率を生み出し得る。また、発明者らは、本発明の関連において、いくつかの場合において、供給流(例えば、気体または液体の炭化水素原料、固体の炭化水素原料、固体の炭化水素原料と固体触媒との混合物など)が反応器に入るにつれて、当該供給流を比較的速い速度において、加熱することが有利であり得ることを発見した。同様に、発明者らは、炭化水素原料に対する触媒の質量比が高い供給物を供給することが、芳香族化合物および/またはオレフィン生成物の望ましい収率を生み出し得ることを見出した。例えば、理論に束縛されるものではないが、速い加熱速度および供給物に対する触媒の高い質量比が、揮発性有機化合物(炭化水素供給物の熱分解から形成された)が熱によって分解する前に、触媒へのそれら揮発性有機化合物の導入を容易にし、それゆえ芳香族化合物および/またはオレフィン化合物の収率を高くし得ると、本発明者らは現在確信している。また、比較的低い正規化質量空間速度(mass-normalized space velocity)は、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物の所望の収率を生み出すことを示してきた。さらに、本発明者らは、系の高温の構成要素(例えば、反応器および/または固体分離器)における炭化水素原料の比較的長い滞留時間が、所望の生成物を形成する追加の化学反応に適切な時間を与え得ることを発見した。
【0048】
また、本発明者らは、本発明の関連において、特異性を有している触媒の使用が、比較的多い量の芳香族化合物および/またはオレフィン生成物を形成するのに有用であり得ることを発見した。例えば、いくつかの場合において、比較的小さいサイズの粒子を含んでいる触媒の使用は、比較的多い量の芳香族化合物および/または比較的少ない量のコークスの製造をもたらし得る。別の例として、ある実施形態において、ZSM−5は、ある反応条件との組合せにおいて、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物を優先的に製造することが見出された。さらに、いくつかの場合において、ブロンステッド酸性点および/または秩序立った細孔構造を含んでいるある触媒が、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物を選択的に製造することが見出された。
【0049】
また、本明細書に記載されている実施形態は、触媒熱分解を行うために用いられる化学工程の設計を含んでいる。いくつかの場合において、当該工程は1または2以上の流動層反応器(例えば、循環式流動層反応器、乱流式流動層反応器、バブリング式流動層反応器など)の使用を含み得る。本明細書に記載されている工程設計は、1または2以上の反応器へ供給される原料の、特殊化した取扱いを任意に含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、供給原料が反応器へ供給される前に、当該原料は乾燥され得、冷却され得、かつ/もしくは粉砕され得る。本発明の他の局面は、本明細書に記載されている工程設計を用いて製造された生成物の組成物に関する。
【0050】
実施の特定の様式、または熱による/触媒による変換プロセス全体の工程の順序に束縛されないが、触媒熱分解は、1または2以上の生成物(例えば、揮発性有機物、ガス、固形コークスなど)を製造するための、炭化水素原料(例えば、セルロースなどの固形バイオマス)の少なくとも部分的な熱分解、および流体の炭化水素生成物を製造するのに十分な反応条件下で触媒を用いる、1または2以上の熱分解生成物の少なくとも一部の触媒反応を含んでいると考えられる。触媒反応は、触媒(例えば、ゼオライト触媒)に入っている揮発性有機物を含み得る。触媒において、当該揮発性有機物は、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、水、およびコークスに加えて、芳香族化合物およびオレフィンなどの炭化水素へ変換される。触媒との接触点の内側または上において、バイオマス由来の化学種は、芳香族化合物、オレフィン、CO、COおよび水に誘導する一連の脱水、脱カルボニル化、脱炭酸、異性化、オリゴマー化および脱水素反応を受け得る。選択的な芳香族化合物および/またはオレフィン生成物に関する課題は、コークス形成を最小限にすることである。例えば、キシリトールおよびグルコースの、トルエン、COおよびHOへの変換に関する全体的な化学量論を、それぞれ方程式1および2に示す。
【0051】
【数1】

【0052】
【数2】

【0053】
これらの方程式に示されるように、芳香族化合物が生成する際、酸素はCO(またはCO)とHOとの組合せとしてバイオマス由来の化学種から除去されなければならない。キシリトールおよびグルコースについてのトルエンの最大理論収率は、それぞれ76%および63%である。図9は、一組の実施形態に係る、理論収率の相関関係として、単位質量あたりの芳香族化合物の生産量およびエネルギー量のプロットを示している。図9において、「生産量」の軸は、当該工程へのバイオマス供給物のメートルトンあたりの当該工程により製造された芳香族化合物のガロンに相当する。「エネルギー」の軸は、当該工程へ供給されたバイオマスのメートルトンあたりの芳香族化合物生成物におけるエネルギー量(燃焼熱を用いて計算した)に相当する。当該図は、製造された芳香族化合物の量を、方程式2から計算された芳香族化合物の量で割ったものを示している(供給バイオマスは75重量%の炭水化物を含んでいると推定される)曲線を記載している。
【0054】
バイオマスの変換に関連する他の課題は、炭化水素生成物における、酸素の除去および水素含有量の高濃度化である。一般に炭素に対する水素の効率的なモル比と呼ばれる因子H/Ceffは、バイオマス由来の酸素含有物の効率的な変換に要求される化学的性質を説明する。
【0055】
【数3】

【0056】
グルコース、ソルビトールおよびグリセロール(全てバイオマス由来の化合物)のH/Ceffモル比は、それぞれ0、1/3および2/3である。比較すると、石油由来の供給物のH/Ceffモル比は、2よりわずかに大きい数値(液状アルキルについて)から1(ベンゼンについて)に分布する。この観点において、バイオマスは石油を基本とする供給原料と比較して、水素欠乏であると考えられ得る。
【0057】
燃料の製造におけるいくつかのそのような問題および他の問題は、本明細書に記載されている方法および工程を利用することが検討され得る。例えば、芳香族化合物および/またはオレフィンは、当該種々の工程パラメータを制御することによって、炭化水素原料の供給物から制御可能に製造され得る。種々の工程パラメータとしては、例えば、触媒の選択(種類および物性(例えば、孔径、粒径、凝集体の存在および程度、粒子/凝集体の形状など))、炭化水素原料の選択、再循環の割合、再循環流の組成、加熱速度、反応温度、触媒と炭化水素との質量比(例えば、供給流中、反応器中など)、触媒のシリカとアルミナとのモル比、正規化質量空間速度、種々の処理部品における滞留時間などが挙げられる。いくつかの実施形態において、コークスの形成速度が比較的遅くなるように、工程パラメータが選択され得る。
【0058】
一局面において、炭化水素原料の反応についての化学工程が記載される。いくつかの実施形態において、当該工程は、反応器(例えば、流動層反応器)内において、1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解することを含み得る。さらに、当該工程は、1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造するのに十分な条件下で、上記1または2以上の熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させることを含み得る。いくつかの実施形態において、1または2以上の流体の炭化水素生成物は、脱水、脱カルボニル化、脱炭酸、異性化、オリゴマー化および脱水素反応によって、上記熱分解生成物から製造され得る。いくつかの場合において、熱分解および触媒反応は、同一の反応器において起こり得る。いくつかの場合において、特定の流体の炭化水素生成物の製造(例えば、芳香族化合物および/またはオレフィン)のために、化学工程が用いられ得る。いくつかの場合において、化学工程によって製造されたオレフィンの一部が、炭化水素原料を反応器(例えば、熱分解反応器)へ供給するための供給流へ再循環され得る。
【0059】
図1は、一組の実施形態に係る、触媒熱分解を行うために用いられる例示的な化学工程の設計の概略図を示している。いくつかの実施形態において、そのような工程が触媒熱分解を行うために用いられ得る。図1の例証的な実施形態に示されるように、供給流10は、反応器20へ供給され得る炭化水素原料を含んでいる供給組成物を含んでいる。炭化水素原料は概して炭素および水素を含み得、質量の点から炭素が最も豊富な成分であり、他の要素(酸素、窒素および硫黄など)は低い割合である。供給組成物中の炭化水素原料は、固体、液体、および/または気体を含み得る。炭化水素原料の具体例は以下に示される。
【0060】
いくつかの実施形態において、供給組成物(例えば、図1の供給流10における)は、炭化水素原料と触媒との混合物を含んでいる。当該混合物は、例えば、固体、液体、および/または気体を含み得る。ある実施形態において、当該混合物は、固体触媒と固体の炭化水素原料との組成物を含み得る。他の実施形態において、触媒は供給組成物とは別々に供給され得る。以下にさらに詳細に記載するように、種々の触媒が用いられ得る。例えば、いくつかの例において、アルミナに対して様々なモル比のシリカおよび/または様々な孔径を有しているゼオライト触媒が用いられ得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、1または2以上のオレフィン化合物が炭化水素原料および/または触媒と共に供給され得る。オレフィンは、任意の適当な相(例えば、固体、液体、または気体)であり得る。炭化水素原料と共に供給され得る適当なオレフィン化合物の例としては、エテン、プロペン、ブテン、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセンなどが挙げられるが、これらに限定されない。オレフィンおよび炭化水素原料は、炭化水素原料および/または触媒と同じ流れの一部として供給され得るか、もしくはオレフィンは、炭化水素原料および/または触媒とは別々に供給され得る。いくつかの実施形態において、オレフィンは、反応器および/または下流の工程(分離工程など)からの1または2以上の生成物流に由来する(すなわち、オレフィンは再循環流の一部であり得る)。オレフィンは任意の適当な量および割合において炭化水素原料と反応し得る。オレフィンに対する炭化水素の望ましい割合は、本発明に従って、例えば、炭化水素原料およびオレフィンの流量を調節することによって、もしくは適切な量の炭化水素原料およびオレフィンを予備混合することによって達成され得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、例えば固体の炭化水素原料が用いられる場合、水分12は、反応器へ供給される前に、例えば任意の乾燥器14によって、供給組成物から任意に除去され得る。供給流からの水分の除去は、いくつかの理由から有利であり得る。例えば、熱分解に達するのに十分に高い温度まで供給物を加熱するために、供給流中の水分は余計なエネルギーの投入を必要とし得る。供給物の含水量における変化は、反応器の温度の制御における困難性を引き起こし得る。さらに、供給物からの水分の除去は、その後の処理工程の間において、水を処理する必要性を低減または排除し得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、供給組成物が約10重量%未満、約5重量%未満、約2重量%未満、または約1重量%未満の水を含むまで、当該供給組成物は乾燥され得る。供給組成物から水を除去できる適当な装置は、当業者に公知である。一例として、一組の実施形態において、乾燥器は、供給組成物が連続的に、半連続的に、または周期的に送られる、特定の温度(例えば、少なくとも約80℃、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、またはそれよりも高い)まで加熱された炉を含み得る。いくつかの場合において、乾燥器は、供給組成物が1回分として処理される真空槽を含み得る。乾燥器の他の具体例において、温度の上昇と真空操作とを組み合わせ得る。乾燥器は反応器と連続的に接続され得る。もしくは、乾燥器は反応器とは別の単位として用意され得る。
【0064】
いくつかの例において、供給組成物の粒径は、供給物を反応器へ送る前に、任意の粉砕システム16において小さくされ得る。いくつかの実施形態において、粉砕システムから出てくる粉砕された供給組成物の平均直径は、粉砕システムへ供給された供給組成物の平均直径の約50%以下、約25%以下、約10%以下、約5%以下、約2%以下を含み得る。大きい粒子の供給原料は、小さい粒子の供給原料よりも、簡単に移送可能であり、かつ散らかっていないものであり得る。一方、いくつかの場合において、(以下で論じるように)小さい粒子を反応器へ供給することが有利であり得る。粉砕システムの使用は、小さい粒子を反応器へ供給することを可能にする一方、大きな粒子の供給物を供給源と工程との間を移送することを可能にする。
【0065】
供給組成物の粉砕を可能にする適当な装置は、当業者に公知である。例えば、粉砕システムは、工業用ミル(例えば、ハンマーミル、ボールミルなど)、刃を備えている装置(たとえば、チッパー、裁断機など)、または他の任意の適当なタイプの粉砕システムを含み得る。いくつかの実施形態において、粉砕システムは、冷却システム(例えば、揚水流式熱交換器などの能動的冷却システム、フィンを含んでいるシステムなどの受動的冷却システムなど)を含み得る。当該冷却システムは、供給組成物を反応器に導入する前に、当該供給組成物を比較的低い温度(例えば、周囲温度)において保つために用いられ得る。粉砕システムは反応器と連続的に接続され得る。もしくは、粉砕システムは反応器とは別の単位として用意され得る。粉砕工程は図1において乾燥工程の後に示されているが、これらの操作の順序は、いくつかの実施形態において逆にされ得る。さらに他の実施形態において、乾燥工程および粉砕工程は、統合された装置を用いて達成され得る。
【0066】
いくつかの場合において、炭化水素原料の粉砕および冷却は、別々の装置を用いて達成され得る。炭化水素原料の冷却は、例えば、供給原料が反応器へ送られる前に、当該供給原料の不要な分解を低減または回避するために望ましい。一組の実施形態において、炭化水素原料は粉砕システムへ送られて、粉砕された炭化水素原料が製造される。次いで、粉砕された炭化水素原料は、粉砕システムから冷却システムへ送られ、冷却される。炭化水素原料が反応器へ導入される前に、炭化水素原料は、約300℃未満、約200℃未満、約100℃未満、約75℃未満、約50℃未満、約35℃未満、または約20℃未満の温度まで冷却され得る。冷却システムの使用を含んでいる実施形態において、当該冷却システムとしては、バイオマスの温度を低下させることが可能な能動的冷却装置(例えば、熱交換器)が挙げられる。いくつかの実施形態において、2以上の乾燥器、粉砕システム、および冷却システムが、1つの単位に一体化され得る。いくつかの実施形態において、冷却システムは1または2以上の反応器と直接結合され得る。
【0067】
図1に例証されているように、供給組成物は反応器20へ移送され得る。いくつかの例において、反応器は炭化水素原料の触媒熱分解を行うために用いられ得る。図1の例証的な実施形態において、当該反応器は当業者に公知の任意の適当な反応器を含んでいる。例えば、いくつかの例において、反応器は連続式攪拌槽型反応器(CSTR)、回分式反応器、半回分式反応器、または固定槽触媒反応器などを含み得る。いくつかの場合において、反応器は流動層反応器(例えば、循環式流動層反応器)を含んでいる。いくつかの場合において、流動層反応器は、熱分解および/またはその後の反応の間、触媒および/または炭化水素原料の改良された混合物を備え得るが、それは形成される反応生成物に対する制御を向上させ得る。また、流動層反応器の使用は、反応器内の熱移動を向上させ得る。さらに、流動層反応器中の改良された混合物は、触媒に付着するコークスの量を減少させ得、いくつかの場合において、触媒の不活性化の低減をもたらし得る。
【0068】
本明細書に使用されるとき、「流動層反応器」という用語は、当該技術分野におけるその従来の意味で用いられ、粒状の固形物(例えば、シリカ粒子、触媒粒子など)を収容し得る容器を含んでいる反応器を指して用いられ、当該反応器において、流体(例えば、気体または液体)は、粒状の固形物を浮遊させて当該粒状の固形物が流体であるかのように振る舞わせるのに十分速い速度において、当該粒状の固形物を通過する。流動層反応器の例は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology (online), Vol. 11, Hoboken, N.J.: Wiley-Interscience, c2001-, pages 791-825(参照によって本明細書に援用される)に記載されている。また、「循環式流動層反応器」という用語は、該技術分野におけるその従来の意味で用いられ、粒状の固形物が反応器外へ送られ、反応器との流体連通(fluid communication)におけるラインを通って循環され、反応器へ戻って再循環される、流動層反応器を指して用いられる。循環式流動層反応器の例は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology (Online), Vol. 11, Hoboken, N.J. : WileyInterscience, c2001-, pages 791-825に記載されている。
【0069】
また、バブリング式流動層反応器および乱流式流動層反応器は、当業者に公知である。バブリング式流動層反応器において、粒状の固形物を流動化するために用いる流体流(fluid stream)は、操作の間に気泡および気空が流動層の容積の範囲内で観察されるような、十分少ない流量において操作される。乱流式流動層反応器において、流動流の流量はバブリング式流動層反応器において用いられる流量よりも多いが、操作の間に気泡および気空は流動層の容積の範囲内で観察されない。バブリング式流動層反応器および乱流式流動層反応器の例は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology (online), Vol. 11, Hoboken, N.J.: WileyInterscience, c2001-, pages 791-825(参照によって本明細書に援用される)に記載されている。
【0070】
反応器は、本明細書に記載されている工程を行うために任意の適当な大きさを有し得る。例えば、反応器は、0.1〜1L、1〜50L、50〜100L、100〜250L、250〜500L、500〜1000L、1000〜5000L、5000〜10,000L、または10,000〜50,000Lの容積を有し得る。いくつかの例において、反応器は約1Lより大きい容積を有している。もしくは他の例において、反応器は、約10L、50L、100L、250L、500L、1,000L、または10,000Lより大きい容積を有している。50,000Lより大きい反応器の容積もあり得る。反応器は、円柱形、球形、または他の任意の適当な形状であり得る。
【0071】
発明者らは、反応条件と系の構成要素との特定の組合せが本明細書に記載されている方法および系において実施される場合に、所望の生成物の製造における収率の向上、コークスの形態での収率の低減、および/またはより制御された生成物の形成(例えば、例えば、芳香族化合物および/またはオレフィンの製造量が他の生成物と比較して多い)が、達成され得ることを発見した。例えば、反応条件(反応器および/または固体分離器の温度、反応器の圧力、供給流の加熱速度、触媒と炭化水素との質量比、炭化水素とオレフィンとの(例えば、再循環流を介した)供給比、正規化質量空間速度、反応器における炭化水素原料の滞留時間、固体分離器における反応生成物の滞留時間、および/または触媒の種類(同様にゼオライト触媒についてはシリカとアルミナとのモル比)など)が、有益な結果を達成するために、下記に記載されるように制御され得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、炭化水素原料が反応する(例えば、触媒熱分解を介して)容器へ、炭化水素原料だけでなくオレフィンも(例えば、再循環流を介して)供給され得る。いくつかの場合において、炭化水素原料と同時供給される(co-feeding)オレフィンは、炭化水素原料の反応によって製造された芳香族化合物の量における増加をもたらし得る。いくつかの実施形態において、反応器へ同時供給されるオレフィンは、オレフィンを同時供給しない場合に製造され得る芳香族化合物の量と比較して、反応生成物中の芳香族化合物を少なくとも約5%、少なくとも約10%、または少なくとも約20%増加させ得る。オレフィンは任意の適当な比において炭化水素原料と反応し得る。いくつかの実施形態において、反応させるつもりの炭化水素原料とオレフィンとの混合物における、炭化水素原料中の炭素の質量とオレフィン中の炭素の質量との比は、約2:1〜約20:1、約3:1〜約10:1、または約4:1〜約5:1である。
【0073】
反応器は、任意の適当な温度において操作され得る。いくつかの例において、比較的高い温度において反応器を操作することが望ましいものであり得る。例えば、反応器は、少なくとも約300℃、少なくとも約400℃、少なくとも約500℃、少なくとも約600℃、少なくとも約700℃、少なくとも約800℃、少なくとも約900℃、または少なくとも約1000℃の温度において操作され得る。いくつかの実施形態において、反応器は、約500℃〜約1000℃、約525℃〜約800℃、約550℃〜約700℃、または約575℃〜約650℃の温度において操作され得る。他の実施形態において、反応器は、約500℃〜約600℃において操作され得る。何か理論に束縛されるものではないが、比較的高い操作温度は、所望の反応生成物が形成されるような形で、および/または望まない生成物の形成が阻害もしくは低減されるような形で、反応の速度に影響を与え得る。図10は、特定の一実施形態における、ZSM−5を用いたグルコースの触媒熱分解に対する反応器の温度の関数として、種々の生成物の炭素収率のプロットを示している。図10の例示的な実施形態において、400℃から800℃まで温度が増加すると共に、芳香族化合物の収率(黒三角によって示されている)は増加することに留意してほしい。さらに、温度が400℃から800℃まで増加するに従って、製造されるコークスの相対量は減少する。しかしながら、他の実施形態において、より低い温度が用いられ得る。
【0074】
また、反応器は任意の適当な圧力において操作され得る。いくつかの実施形態において、反応器は約1〜4atmの圧力において操作され得る。いくつかの実施形態において、反応器は、少なくとも約1atm、少なくとも約2atm、少なくとも約3atm、または少なくとも約4atmの圧力において操作され得る。
【0075】
発明者らは、ある実施形態において、供給流(例えば、気体の炭化水素原料、固体の炭化水素原料、固体の炭化水素原料と任意の追補のオレフィンおよび/または固体触媒との混合物など)が反応器に入るに従って、当該供給流を比較的速い速度において加熱することが有利であることを発見した。速い加熱速度は、多くの理由から有利であり得る。例えば、速い加熱速度は、大量の固形バイオマスから触媒反応物側への反応物の物質移動の速度を促進し得る。このことは、例えば、炭化水素原料が概して望まない生成物(例えば、コークス)へ完全に熱的に分解される前に、炭化水素原料の熱分解の間に形成される揮発性の有機化合物が触媒へ導入されることを促進し得る。さらに、速い加熱速度は、反応物が中間の温度(例えば、供給物の温度と所望の反応温度との間の温度)に曝される時間の総計を減少させ得る。反応物が中間の温度に長く曝されることによって、望まない分解および/または望まない反応経路を介した、望まない生成物の形成が引き起こされ得る。反応器に入る前に供給流を加熱するのに適した加熱速度の例としては、例えば、約50℃/sより速い、約100℃/sより速い、約200℃/sより速い、約300℃/sより速い、約400℃/sより速い、約500℃/sより速い、約600℃/sより速い、約700℃/sより速い、約800℃/sより速い、約900℃/sより速い、約1000℃/sより速い、またはそれ以上であることが挙げられる。いくつかの場合において、供給流は約500℃/s〜約1000℃/sの加熱速度において加熱され得る。いくつかの実施形態において、反応器に入る前に供給流を加熱するための加熱速度は、約50℃/s〜約1000℃/s、または約50℃/s〜約400℃/sであり得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、所望の多数の流体の炭化水素生成物を選択的に製造するために、炭化水素原料の正規化質量空間速度を選択し得る。本明細書に使用されるとき、「正規化質量空間速度」という用語は、炭化水素原料の反応器への質量流量(例えば、g/hrにおいて示される)を、反応器中の触媒の質量(例えば、gにおいて示される)で割ったものとして定義され、逆元の時間を単位としている。反応器における炭化水素原料の正規化質量空間速度は、用いられている反応器の種類に応じて、種々の方法を用いて計算され得る。例えば、回分式反応器または半回分式反応器を用いている系において、炭化水素原料は正規化質量空間速度を有していない。反応の間に触媒が反応器へ供給される、および/または反応器から取り出される系(循環式流動層反応器)に関して、正規化質量空間速度は、操作(例えば、定常状態操作)の期間にわたる反応器の容積の範囲内の平均触媒量を計算することによって決定され得る。
【0077】
任意の適当な正規化質量空間速度が、本明細書に記載されている実施形態において用いられ得る。いくつかの例において、約10hr−1未満、約5hr−1未満、約1hr−1未満、約0.5hr−1未満、約0.1hr−1未満、約0.05hr−1未満、または約0.01hr−1未満の正規化質量空間速度が用いられ得る。いくつかの実施形態において、約0.01hr−1〜約10hr−1、約0.01hr−1〜約5hr−1、約0.01hr−1〜約0.1hr−1、約0.1hr−1〜約1hr−1、または約1hr−1〜約10hr−1の正規化質量空間速度が用いられ得る。また、いくつかの実施形態において、流動層反応器を用いて、約1hr−1未満、約0.5hr−1未満、約0.1hr−1未満、約0.05hr−1未満、約0.01hr−1未満、約0.01hr−1〜約0.1hr−1、または約0.1hr−1〜約1hr−1の正規化質量空間速度を用いることが有利であり得る。
【0078】
いくつかの実施形態は、異なる流体の炭化水素生成物を選択的に製造するために、炭化水素原料の正規化質量空間速度を変化させることを含んでいる。例えば、いくつかの実施形態において、炭化水素原料の正規化質量空間速度を変化させることによって、反応生成物中の芳香族化合物およびオレフィンの相対量を制御し得る。例えば、比較的遅い正規化質量空間速度は、オレフィンよりも比較的多い量の芳香族化合物を製造するために用いられ得る。比較的速い正規化質量空間速度は、芳香族化合物よりも比較的多い量のオレフィンを製造するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、オレフィン化合物を選択的に製造するために、固体の炭化水素原料は、約0.1hr−1〜約10hr−1の正規化質量空間速度において、流動層反応器において供給され得るか、もしくは芳香族化合物を選択的に製造するために、固体の炭化水素原料は、約0.01hr−1〜約0.1hr−1の正規化質量空間速度において、流動層反応器において供給され得る。
【0079】
いくつかの例において、反応器において、および/または確定した一組の反応条件(すなわち、炭化水素原料が所定の反応系において熱分解を受け得る条件)下において、炭化水素原料(例えば、固体の炭化水素原料)の滞留時間を制御することが有益である。連続流システムにおいて、反応器における炭化水素原料の滞留時間は、炭化水素原料およびそこから形成された任意の反応生成物(反応器中に蓄積している生成物(例えば、触媒に堆積したコークスなど)を除く)が反応器中で費やす時間の総計として定義される。反応器における炭化水素原料の滞留時間は、用いられている反応器の種類に応じて、種々の方法を用いて計算され得る。例えば、反応器が、炭化水素原料のみが連続的に供給される(すなわち、担体または流動化している流れが利用されていない)充填層反応器を含んでいる実施形態において、反応器における炭化水素原料の滞留時間は、本明細書に使用されるとき、反応器の容積を、反応器から出てくる生成物気体の体積流量で割ることによって決定され得る。操作の間に質量の流れが制限されている反応器(例えば、回分式反応器)において反応が起こる場合において、そのような反応器における炭化水素原料の滞留時間は、炭化水素原料を含んでいる反応器中の温度が、熱分解反応が開始するのに十分なレベル(例えば、多くの典型的な炭化水素の供給原料に関して、典型的には約300℃〜1000℃)に達する時間と、反応が抑制される(例えば、さらなる熱分解を持続させるのに十分な温度(例えば、多くの典型的な炭化水素の供給原料に関して、典型的には約300℃〜1000℃)未満まで冷却される)時間との間に経過した時間の総計として定義される。
【0080】
いくつかの場合において、例えば、ある流動層反応器に関して、反応器供給流は、付加的な物質(すなわち、炭化水素原料および/またはオレフィン以外の物質)を含んでいる供給流を含み得る。例えば、流動層が反応器として用いられるある場合において、供給流は流動化流体(fluidization fluid)を含み得る。循環式流動層が用いられる場合において、触媒および流動化流体は何れも、反応器へ供給/再循環され得る。いくつかの場合において、付加的な物質は、炭化水素原料中に混入した汚染物質を含み得る。そのような場合において、反応器における炭化水素原料の滞留時間は、反応器の容積を、炭化水素原料および上記の充填層の状態を伴う場合に反応器から出てくる反応生成物気体の体積流量で割ったものとして決定され得る;しかしながら、炭化水素原料および反応器から出てくる反応生成物気体の流量は直接決定するのに不便であるため、炭化水素原料および反応器から出てくる反応生成物気体の体積流量は、反応器から出てくる気体流の総体積流量から、付加的な物質(例えば、流動化流体、触媒、汚染物質など)の反応器への供給体積流量を引き算することによって、概算され得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、反応器における物質(例えば、炭化水素原料または任意の他の適当な供給物質)の滞留時間は、少なくとも約2秒、少なくとも約5秒、少なくとも約10秒、少なくとも約30秒、少なくとも約60秒、少なくとも約120秒、少なくとも約240秒、または少なくとも約480秒である。いくつかの場合において、反応器における物質(例えば、炭化水素原料または任意の他の適当な供給物質)の滞留時間は、約5分未満、約1分〜約4分、または約2秒〜約480秒である。以前の「高速熱分解」の研究では、多くの場合において、供給物質(例えば、炭化水素原料)の滞留時間が非常に短い(例えば、2秒未満)系を用いてきた。しかしながら、発明者らは、いくつかの場合において、比較的長い滞留時間の利用によって、さらなる化学反応が所望の生成物を形成するのに十分な時間を与えられることを発見した。長い滞留時間は、例えば、反応器の容積を大きくすること、または/および炭化水素原料の体積流量を減らすことによって達成し得る。しかしながら、本明細書に記載されているいくつかの実施形態において、供給原料(例えば、炭化水素原料)の滞留時間が比較的短い(例えば、約2秒未満または約1秒未満)ものであり得ることが理解されるはずである。
【0082】
流動層反応器が用いられるある場合において、反応器における供給原料(例えば、固体の炭化水素原料)は、反応器を通って流体流を流れることによって流動化され得る。図1の例示的な実施形態において、流体流44は反応器20において供給原料を流動化するために用いられる。流体は、流体源24から、および/または圧縮器26(以下にさらに詳細に記載するつもりである)を介して反応器の生成物流から、流体流へ供給され得る。本明細書に使用されるとき、「流体」という用語は、概して液体状、臨界状態、または気体状の物質を意味する。しかしながら、流体はまた、固体(例えば、懸濁された粒子またはコロイド粒子など)を含み得る。いくつかの実施形態において、反応器における流動化流体の滞留時間を制御することが有利であり得る。流動化流体の滞留時間は、反応器の容積を流動化流体の体積流量で割ったものとして定義される。いくつかの場合において、流動化流体の滞留時間は、少なくとも約5秒、少なくとも約10秒、少なくとも約20秒、少なくとも約30秒、少なくとも約60秒、少なくとも約120秒、少なくとも約240秒、または少なくとも約480秒であり得る。いくつかの場合において、流動化流体の滞留時間は、約2秒〜約480秒、約5秒〜約480秒、約10秒〜約480秒、約30秒〜約480秒、約60秒〜約480秒、約120秒〜約480秒、または約240秒〜約480秒であり得る。
【0083】
本発明において用いられ得る適当な流動化流体としては、例えば、不活性化ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオンなど)、水素、窒素、一酸化炭素、および二酸化炭素などが挙げられる。
【0084】
図1の例証的な実施形態において示されるように、炭化水素原料の反応の間に形成される生成物(例えば、流体の炭化水素生成物)は、生成物流30を介して反応器から出てくる。いくつかの場合において、生成物流は、反応生成物だけでなく未反応の炭化水素原料、流動化流体、および/または触媒を含み得る。一組の実施形態において、所望の反応生成物(例えば、液体の芳香族炭化水素、オレフィン炭化水素、気体の生成物など)は、反応器の排出流から回収され得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、流体の炭化水素生成物流30中のオレフィンの少なくとも一部は、再循環流100および生成物流31Aを生成させるために、生成物流の残りから分離される。再循環流100は、分離されたオレフィンの少なくとも一部を含んでいる。流体の炭化水素生成物からのオレフィンの分離は、オレフィン再循環器102によって達成され得る。図1において、オレフィン再循環器は反応器20のすぐ下流に配置されているように示されているが、オレフィン再循環器は反応器の下流の任意の地点に配置され得ること、および他の流体の炭化水素生成物からのオレフィンの分離が、流体の炭化水素生成物が製造された後、任意の様々な地点において行われ得ることが理解されるはずである。さらに、再循環流100が図1において、乾燥器14の上流の供給流10と連結されて説明されているが、以下にさらに詳細に記載されるように、再循環流100は代わりに乾燥器14および/または粉砕システム16の下流の供給流10と連結されて、反応器20に直接供給され得、かつ/あるいは触媒流(例えば、34、42、44、46、および/または47)の何れとも連結され得る。
【0086】
オレフィンを他の流体の炭化水素生成物から分離する適当な方法は、当業者に公知である。例えば、オレフィンの沸点と他の流体の炭化水素生成物の沸点との間の温度まで生成物流30を冷却することによって、オレフィンを他の流体の炭化水素生成物から分離し得る。任意に、オレフィン再循環器102は多段式の分離器を含み得る。例えば、オレフィン再循環器は、気体の生成物(オレフィンを包含する)を液体の生成物(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの沸点が高い芳香族化合物)から直接分離する第一の分離器、およびオレフィンの少なくとも一部を他の気体の生成物(例えば、気体の芳香族化合物、CO、COなど)から分離する第二の分離器を含み得る。分離を行うために用いる方法および/または条件は、流体の炭化水素生成物流に存在する化合物の相対量および種類に依存し得、本明細書に提供されている手引きを与えられている所定の分離を達成するのに適切な方法および条件を、当業者は選択することができ得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、任意の生成物反応器104が工程に組み込まれ得る。生成物反応器は、例えば、生成物流31A中の1または2以上の流体の炭化水素生成物(例えば、オレフィン、芳香族化合物など)を1または2以上の他の生成物(図1中の流れ31Bとして排出される)に変換するために用いられ得る。いくつかの場合において、生成物反応器は、1または2以上の触媒反応を行うために用いられ得る触媒(例えば、ゼオライト触媒)を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、生成物反応器は、1または2以上のオレフィン生成物をオリゴマー化して(例えば、触媒の使用を介して)、1または2以上の芳香族生成物を製造するために用いられ得る。別の例として、生成物反応器は、芳香族化合物を含んでいるカルボニル化反応(例えば、一酸化炭素および水の付加を介した、エチレンからアセチレンへのカルボニル化)を行うために用いられ得る。当業者は、そのような反応を行うのに適切な反応器の種類および/または条件を選択することが可能である。任意の生成物反応器104は、図1においてオレフィン再循環器102のすぐ下流に配置されて示されているが、オレフィン再循環器が反応器(例えば、図1中の反応器20)の下流の何れの地点にも配置され得ること、および流体の炭化水素生成物が製造された後に、オレフィン、芳香族化合物または他の流体の炭化水素生成物の反応が、種々の地点の何れにおいても行われ得ることが理解されるはずである。
【0088】
図1の例証的な実施形態に示されるように、生成物流31B(または31A)は任意の固体分離器32へ供給され得る。いくつかの場合において、固体分離器は、生成物流に存在する触媒(例えば、少なくとも部分的に不活性化した触媒)から反応生成物を分離するために用いられ得る。さらに、いくつかの例において、固体分離器は、触媒からコークスおよび/または灰を除去するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、固体分離器は任意のパージ流33を含み得、パージ流33は固体分離器からコークス、灰、および/または触媒をパージするために用いられ得る。
【0089】
固体分離および/またはデコーキング工程を達成するために必要な装置は、当業者によって直ちに設計され得る。例えば、一組の実施形態において、固体分離器は、容器の保持部と透過部とを規定するメッシュ素材を含んでいる容器を含み得る。メッシュは、保持部内に触媒を保持し、反応生成物を透過部へ通過させる働きをし得る。触媒はメッシュの保持側上にある口を通って固体分離器を出て行き、反応生成物はメッシュの透過側にある口を通って出て行き得る。固体分離器および/またはデコーキング器の他の例は、Kirk- Othmer Encyclopedia of Chemical Technology (Online), Vol. 11, Hoboken, N.J.: Wiley-Interscience, c2001-, pages 700734;および、C. D. Cooper and F. C. Alley. Air Pollution Control, A Design Approach. Second Ed. Prospect Heights, Illinois: Waveland Press, Inc. c1994, pages 127-149(参照によって本明細書に援用される)の中にさらに詳細に記載されている。
【0090】
固体分離器は、任意の適当な温度において操作され得る。いくつかの実施形態において、固体分離器は高くした温度において操作され得る。発明者らは、ある反応に関して、固体分離器における高くした温度の利用が、反応器からの化合物のさらなる改質および/または反応を可能にし得ることを発見した。これによって、所望の生成物の形成が増加し得る。何か理論に束縛されるものではないが、固体分離器における高くした温度は、吸熱改質反応を駆動するのに十分なエネルギーを提供し得る。固体分離器は、例えば、約25℃〜約200℃、約200℃〜約500℃、約500℃〜約600℃、または約600℃〜約800℃の温度において操作され得る。いくつかの場合において、固体分離器は、少なくとも約500℃、少なくとも約600℃、少なくとも約700℃、少なくとも約800℃、またはそれよりも高い温度において操作され得る。
【0091】
いくつかの場合において、固体分離器における触媒の滞留時間を制御することが有益であり得る。固体分離器における触媒の滞留時間は、固体分離器の容積を、固体分離器を通った触媒の体積流量で割ったものとして定義される。いくつか場合において、十分量の灰、コークスおよび/または他の望ましくない生成物を触媒から除去することを促進するために、固体分離器における触媒の比較的長い滞留時間が望まれ得る。さらに、発明者らは、固体分離器における触媒の比較的長い滞留時間を利用することによって、熱分解生成物はさらに反応して所望の生成物を製造し得ることを発見した。いくつかの実施形態において、固体分離器における滞留時間および温度は、所望の生成物流が生成するように、共に選択される。いくつかの実施形態において、固体分離器における触媒の滞留時間は、少なくとも約1秒、少なくとも約5秒、少なくとも約10秒、少なくとも約30秒、少なくとも約60秒、少なくとも約120秒、少なくとも約240秒、少なくとも約300秒、少なくとも約600秒、または少なくとも約1200秒である。固体分離器における触媒の滞留時間を制御する方法は、当業者に公知である。例えば、いくつかの場合において、固体分離器の内壁は、固体分離器を通る触媒の流れを制限するために、および/または固体分離器における流体の流れの経路長を増加させるために働くバッフルを含み得る。追加としてまたはその代わりとして、固体分離器を通る触媒の流量を制御することによって(例えば、反応器を通る流動している流体の流量を制御することによって)、固体分離器における触媒の滞留時間を制御し得る。
【0092】
固体分離器は任意の適当な大きさを有し得る。例えば、固体分離器は、0.1〜1L、1〜50L、50〜100L、100〜250L、250〜500L、500〜1000L、1000〜5000L、5000〜10,000L、または10,000〜50,000Lの容積を有し得る。いくつかの例において、固体分離器は約1Lより大きい容積を有し、他の例において、固体分離器は約10Lより大きい、約50Lより大きい、約100Lより大きい、約250Lより大きい、約500Lより大きい、約1,000Lより大きい、または約10,000Lより大きい容積を有している。50,000Lより大きい容積の固体分離器もあり得る。固体分離器は円柱状、球状、または他の任意の形状であり得、循環式または非循環式であり得る。いくつかの実施形態において、固体分離器は、工程において用いられる1または2以上の反応器のために用いられるものと同様の容器または他の単位操作を含み得る。固体分離器における触媒の流れは、任意の適当な形状を含み得る。例えば、流路は実質的に一直線であり得る。いくつかの場合において、固体分離器は、曲がりくねった、蛇行している、螺旋状の、または他の任意の適当な形状を有している流路(flow channel)を含み得る。固体分離器の経路の平均直径に対する固体分離器の流路の長さの比は、任意の適当な比を含み得る。いくつかの場合において、その比は、少なくとも2:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも50:1、少なくとも100:1、またはそれよりも大きいものであり得る。
【0093】
上記に略述したパラメータは、所望の反応生成物(例えば、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物)および/または好ましい収率もしくは特定の成分を生み出すために、任意の適当な組合せにおいて用いられ得る。例えば、長い滞留時間の使用は、固体の炭化水素原料を処理するために、循環式または乱流式流動層反応器の使用と組み合わされ得る。いくつかの実施形態において、反応器において固体の炭化水素原料を熱分解した後、比較高い温度(例えば、少なくとも500℃)および長い滞留時間(例えば、少なくとも約1秒、少なくとも約5秒、少なくとも約10秒、少なくとも約30秒、少なくとも約60秒、少なくとも約120秒、少なくとも約240秒、少なくとも約300秒、少なくとも約600秒、または少なくとも約1200秒など)が、固体分離器において用いられ得る。他の実施形態において、流動層反応器においてオレフィンよりも比較的多い量の芳香族化合物(例えば、少なくとも約6%の芳香族化合物またはそれよりも多い)を製造するために、比較的遅い正規化質量空間速度(例えば、約0.1hr−1未満、約0.05hr−1未満、約0.01hr−1未満など)が用いられ得る。流動層反応器において芳香族化合物よりも比較的多い量のオレフィン(例えば、少なくとも約3重量%、少なくとも約6重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、または少なくとも約20重量%のオレフィン)を製造するために、比較的速い正規化質量空間速度(例えば、少なくとも約0.1hr−1、少なくとも約0.5hr−1未満)が用いられ得る。別の一組の実施形態において、固体の炭化水素原料、およびアルミナに対するシリカのモル比が大きい(例えば、少なくとも約30)ゼオライト触媒は、速い速度(例えば、約500℃/sより速い)において反応器中で加熱され得る。いくつかの場合において、触媒および固体の炭化水素原料は、少なくとも約0.5:1の質量比において反応器へ供給され得、例えば、500℃〜1000℃の温度まで加熱され得る。いくつかの例において、触媒および固体の炭化水素原料は、混合物が比較的長い滞留時間(例えば、少なくとも約5秒)を有するように、少なくとも約0.5:1の質量比において反応器へ供給され得る。さらに別の一組の実施形態において、比較的長い流動化流体の滞留時間(例えば、少なくとも約5秒)および比較的高い反応温度(例えば、約500℃〜約1000℃)が用いられ得る。
【0094】
先に言及したように、固体分離器は全ての実施形態において必要であるわけではない。例えば、触媒固定層反応器が用いられる場合に関して、触媒は反応器内に保持され得、反応生成物は実質的に触媒なしに反応器を出て行き得るため、別個の分離工程を必要としない。
【0095】
図1に例証されている一組の実施形態において、分離された触媒は流れ34を介して固体分離器を出て行き得る。いくつかの場合において、分離器を出て行く触媒は、少なくとも一部が不活性化され得る。いくつかの実施形態において、分離された触媒は、少なくとも一部が不活性化した任意の触媒が再活性化され得る再生器36へ供給され得る。いくつかの実施形態において、再生器は任意のパージ流37を含み得るが、それはコークス、灰、および/または触媒を再生器からパージするために用いられ得る。触媒を活性化する方法は当業者に公知であり、例えば、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology (Online), Vol. 5, Hoboken, N.J. : Wiley-Interscience, c2001-, pages 255-322(参照によって本明細書に援用される)に記載されているとおりである。
【0096】
一組の実施形態において、例えば図1に示されるように、酸化剤が流れ38を介して再生器へ供給される。酸化剤は任意の供給源(例えば、酸素のタンク、大気、蒸気などが挙げられる)に由来し得る。再生器において、触媒と酸化剤とを反応させることによって、触媒が再活性化される。いくつかの場合において、不活性化した触媒は残留した炭素および/またはコークスを含み得、それらは再生器における酸化剤との反応を介して除去され得る。図1中の再生器は、再生反応生成物、残留した酸化剤などを含み得るベント流40を含み得る。
【0097】
再生器は、反応器または固体分離器に関して上述した、任意の適当な大きさであり得る。さらに、いくつかの場合において、再生器は高くした温度(例えば、少なくとも約300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、またはそれよりも高い)において操作され得る。また、再生器における触媒の滞留時間は、当業者に公知の方法(上記で略述したものが挙げられる)を用いて制御され得る。いくつかの例において、系における物質収支を維持するために、反応器を通る触媒の質量流量は、反応器および/または固体分離器における流量と合わされ得る。
【0098】
図1の例証的な実施形態において示されるように、再生された触媒は、流れ42を介して再生器から出て行き得る。再生された触媒は、再循環流47を介して反応器へ戻って再循環され得る。いくつかの場合において、触媒は運転の間に系から失われ得る。いくつかのそのような場合および他の場合において、追加の「補充物(makeup)」触媒が補充物流46を介して系に追加され得る。図1に例証的に示されるように、再生された触媒および補充物の触媒が、再循環流47を介して流動化流体と共に反応器へ供給され得る。他の実施形態において、触媒および流動化流体は別々の流れを介して反応器へ供給され得る。
【0099】
図1において固体分離器32に遡って参照すると、反応生成物(例えば、流体の炭化水素生成物)は流れ48を介して固体分離器を出て行く。いくつかの場合において、流れ48の一部はパージ流60を介してパージされ得る。例えば、そうでなければ系から失われ得るエネルギーを取り戻すために、パージ流の内容物が燃焼器または水性ガス転化反応器へ供給され得る。いくつかの場合において、流れ48中の反応生成物は任意の凝縮器50へ供給され得る。凝縮器は、反応生成物の少なくとも一部を気体から液体に凝縮する熱交換器を含み得る。凝縮器は、反応生成物を気体、液体および固体の画分に分離するために用いられ得る。凝縮器の操作は当業者に公知である。凝縮器の例は、Perry's Chemical Engineers' Handbook, Section 11: "Heat Transfer Equipment." 8th ed. New York: McGraw-Hill, c2008(参照によって本明細書に援用される)にさらに詳細に記載されている。
【0100】
また、いくつかの実施形態において、凝縮器は、生成物流の一部を凝縮するために圧力変化を利用し得る。図1において、流れ54は反応生成物の液体の画分(例えば、水、芳香族化合物、オレフィン化合物など)を含み得、流れ74は反応生成物の気体の画分(例えば、CO、CO、Hなど)を含み得る。いくつかの実施形態において、気体の画分は蒸気回収システム70へ供給され得る。蒸気回収システムは、例えば、流れ74内の任意の所望の蒸気を回収し、流れ72を介してそれらを移送するために用いられ得る。さらに、流れ76はCO、COおよび/または蒸気回収システムから回収不能な他の気体を移送するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、任意の蒸気回収システムは他の位置に配置され得ることに留意すべきである。例えば、いくつかの実施形態において、蒸気回収システムはパージ流54の下流に配置され得る。当業者は蒸気回収システムに適した配置を選択し得る。
【0101】
他の生成物(例えば、余剰ガス)は、流れ56を介して任意の圧縮器26へ移送され得る。圧縮器26において、それらは圧縮され、反応器における流動化気体(流れ22)として用いられ得、かつ/もしくはそれらは炭化水素原料を反応器へ移送するのを助け得る(流れ58)。いくつかの例において、例えば、水相を有機相から分離する、個々の化合物を分離する、などのために、液体の画分はさらに処理され得る。
【0102】
図1に記載されている一組の実施形態は反応器、固体分離器、再生器、凝縮器などを含んでいるが、全ての実施形態がこれらの要素の使用を含んでいるわけではないことが理解されるはずである。例えば、いくつかの実施形態において、供給流は触媒固定層反応器へ供給されて反応し得、反応生成物は反応器から直接回収されて、専用の凝縮器を使用せずに冷却され得る。いくつかの例において、乾燥器、粉砕システム、固体分離器、再生器、凝縮器、および/または圧縮器が工程に一部として用いられ得るが、これら要素の1または2以上は、反応器と流動的におよび/または一体的に連結されていない別個の装置を含み得る。他の実施形態において、乾燥器、粉砕システム、固体分離器、再生器、凝縮器、および/または圧縮器の1または2以上はなくてもよい。いくつかの実施形態において、所望の反応生成物(例えば、液体の芳香族化合物、オレフィン炭化水素、気体の生成物など)は、製造工程における何れの時点において(例えば、反応器を通る移送後、分離後、凝縮後など)も回収され得る。
【0103】
いくつかの実施形態において、本発明の工程は2以上の反応器の使用を含み得る。例えば、図7の例示的な実施形態に示されるように、複数の反応器が、例えば直列および/または並列に操作するために、互いに流体連通において連結され得る。いくつかの実施形態において、当該工程は、第一の反応器において炭化水素原料を供給すること、および第一の反応器内で、1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解することを含み得る。いくつかの実施形態において、触媒が第一の反応器へ供給され得、1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造するのに十分な反応条件下で、当該触媒を用いて、第一の反応器において1または2以上の熱分解生成物の少なくとも一部が触媒的に反応させる。当該工程は、1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造するのに十分な反応条件下で、触媒を用いて、第二の反応器において1または2以上の熱分解生成物の少なくとも一部が触媒的に反応させることをさらに含み得る。いくつかの場合において、第二の反応器において1または2以上の熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させた後、当該工程は、1または2以上の他の炭化水素生成物を製造するために、第二の反応器内において、第一の反応器からの1または2以上の流体の炭化水素生成物の少なくとも一部をさらに反応させる工程を含み得る。
【0104】
図7において、反応器20からの反応生成物は、第二の反応器20’へ移送される。当業者は、有機生成物を製造するために有機物を熱分解するための多重反応器系(multiple-reactor system)の使用に精通しており、そのような系は当該技術分野において公知である。図7は、反応器が互いに流体連通において連結されている一組の実施形態を例証しているが、いくつかの例において、2つの反応器は流体連通されていないものであり得る。例えば、第二の反応器における反応のために別の設備に移送され得る第一の反応生成物を製造するために、第一の反応器が用いられ得る。いくつかの例において、炭化水素原料を含んでいる組成物(触媒を伴っているか、または触媒を伴っていない)は、第一の反応器において加熱され得、炭化水素原料の少なくとも一部が熱分解されて、熱分解生成物(および任意に少なくとも一部が不活性化した触媒)が製造され得る。第一の熱分解生成物は、液体および/または気体の状態であり得る。次いで、第一の熱分解生成物を含んでいる組成物は第二の反応器において加熱され得る。第二の反応器は第一の反応器と流体連通しているものであり得るか、または流体連通していないものであり得る。第二の反応器における加熱工程の後、第二の反応器からの第二の熱分解生成物は回収され得る。第二の熱分解生成物は、液体および/または気体の状態であり得る。いくつかの場合において、第一の反応器へ供給される炭化水素原料を含んでいる組成物は、例えば、固体の炭化水素原料と固体触媒との混合物を含み得る。第一の反応器から製造された第一の熱分解生成物は、第二の熱分解生成物と異なる化学的組成、量、状態(例えば、液体に対して気体)であり得る。例えば、第一の熱分解生成物は実質的に液体を含み得るが、第二の熱分解生成物は実質的に気体を含み得る。別の例において、第一の熱分解生成物は流体の生成物(例えば、バイオオイル、糖)を含んでいるが、第二の熱分解生成物は第一の熱分解生成物と比べて多い量の芳香族化合物を含んでいる。いくつかの例において、第一の熱分解生成物は流体の生成物(例えば、芳香族化合物が挙げられる)を含んでおり、第二の熱分解生成物は第一の熱分解生成物と比べて多い量のオレフィンを含んでいる。さらに別の例において、第一の熱分解生成物は流体の生成物(例えば、バイオオイル、糖)を含んでおり、第二の熱分解生成物は第一の熱分解生成物と比べて多い量の酸化された芳香族化合物を含んでいる。
【0105】
多重反応器の構成における1または2以上の反応器は、流動層反応器(例えば、循環式流動層反応器または乱流式流動層反応器など)を含み得、他の例において、任意の他のタイプの反応器(例えば、上述の反応器の何れか)を含み得る。例えば、一組の実施形態において、第一の反応器は循環式流動層反応器または乱流式流動層反応器を含んでおり、第二の反応器は第一の反応器と流体連通している循環式流動層反応器または乱流式流動層反応器を含んでいる。さらに、多重反応器の構成は、追加の処理工程および/または上述の装置(例えば、固体分離器、再生器、凝縮器など)を何れでも含み得る。反応器および/または追加の処理装置は、上述の処理パラメータ(例えば、温度、滞留時間など)の何れかを用いて操作され得る。
【0106】
本発明において有用な炭化水素原料は、例えば、キシリトール、グルコース(例えば、α−D−グルコース、β−D−グルコース)、セロビオース、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、サトウキビのバガス、グルコース、木材、およびトウモロコシ茎葉などの成分をそれらの熱分解生成物と一緒に、ならびにそのような成分の組合せおよび/またはそれらの熱分解生成物を含み得る。炭化水素原料の他の例としては、例えば、廃棄プラスチック、再利用プラスチック、農業および都市固形廃棄物、食品廃棄物、動物の排泄物、炭水化物、リグノセルロース材料(例えば、木屑またはかんな屑、リグノセルロースバイオマスなど)、またはそれらの組合せなどが挙げられる。図8Aおよび8Bは、サトウキビのバガス、グルコース、木材、およびトウモロコシ茎葉を含んでいる種々の炭化水素供給物についての、生成物の分配のプロットを示している。図8Aに例証されている実施形態において、試験された全ての供給原料が、比較的高い芳香族化合物の収率(例えば、20%より高い炭素収率(約8%より高い重量収率に相当する))を生み出した。一組の実施形態において、グルコース供給物を用いて、40%より高い炭素収率(約18.5%より高い重量収率に相当する)が生み出された。図8Bは、種々の炭化水素の供給原料ついての、芳香族化合物の選択性のプロットを示している。図8Bに含まれている芳香族化合物種は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよびキシレン、メチルエチルベンゼンおよびトリメチルベンゼン、インダン、ならびにナフタレンである。
【0107】
本明細書に示されるように、得られる流体の炭化水素生成物の組成を変えるために、炭化水素原料および触媒成分の選択が用いられ得る。例えば、広範囲の炭化水素原料(例えば、これらに限定されないが、グルコース、セルロース、セロビオース、キシリトールなど)が、ナフタレンの製造のために用いられ得る。別の例において、ある炭化水素原料(例えば、セロビオース)が、トルエンの製造のために用いられ得る。あるいは、これに限定されないが、炭化水素原料がグルコースを含んでいる場合、識別可能な酸素含有化合物(例えば、酸素含有芳香族化合物)の生産量を変えるために、供給組成物における触媒とグルコースとの質量比の調節が用いられ得る。供給組成物における触媒とグルコースとの質量比は、反応器へ供給されるグルコースの量に対する、反応器へ供給される触媒の量を、増加または減少させることによって調節され得る。いくつかのそのような化合物および他の化合物は、さらなる反応のための特別な化学物質として単離され得るか、もしくはその後のバイオ燃料処理に組み込まれ得る。他のある実施形態において、炭化水素原料はリグニン熱分解生成物(例えば、ベンジルフェニルエーテルなど)を含み得る。この化合物および他の化合物の熱分解が、燃料添加物または汎用化学製品としての使用のための種々の芳香族化合物を製造するために用いられ得る。最初の炭化水素原料または得られる熱分解生成物に関係なく、本明細書に記載されている工程は、バイオ燃料として用いられ得る炭化水素生成物またはバイオ燃料の製造の組み込まれ得る炭化水素生成物を製造するために、種々の不飽和化合物および芳香族化合物の水素化を任意に含み得る。
【0108】
上記のように、供給組成物中の炭化水素原料は、固体、液体、および/または気体を含み得る。炭化水素原料が固体を含んでいる場合において、当該固体は任意の適当な大きさであり得る。いくつかの場合において、比較的小さい粒径を有している炭化水素の固体を用いることが有利であり得る。いくつかの例において、小さい粒径の固体は、大きい固体と比較して体積に対する表面積の比が高いため、大きい固体よりも速く反応し得る。さらに、小さい粒径は、各粒子内および/または反応器の容積内において、より効率的な熱伝導を可能にし得る。これは望ましくない反応生成物の形成を回避または低減し得る。さらに、小さい粒径は固体−気体の接触および固体−固体の接触の増加を提供し、熱伝導および物質移動の向上をもたらし得る。いくつかの実施形態において、固体の炭化水素原料の平均的な大きさは、約5mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約500ミクロン未満、約60メッシュ(250ミクロン)未満、約100メッシュ(149ミクロン)未満、約140メッシュ(105ミクロン)未満、約170メッシュ(88ミクロン)未満、約200メッシュ(74ミクロン)未満、約270メッシュ(53ミクロン)未満、もしくは約400メッシュ(37ミクロン)未満、またはそれら未満である。
【0109】
いくつかの場合において、炭化水素供給原料が反応器を通過するのに必要な圧力を低減するために、上記の平均粒径を有している供給原料を最少量用いることが望ましいものであり得る。例えば、いくつかの場合において、少なくとも約400メッシュ(37ミクロン)、少なくとも約270メッシュ(53ミクロン)、少なくとも200メッシュ(74ミクロン)、少なくとも約170メッシュ(88ミクロン)、少なくとも約140メッシュ(105ミクロン)、少なくとも約100メッシュ(149ミクロン)、少なくとも約60メッシュ(250ミクロン)、少なくとも約500ミクロン、少なくとも約1mm、少なくとも約2mm、少なくとも約5mm、またはそれよりも大きい平均粒径を有している固体の炭化水素原料を用いることが望ましいものであり得る。
【0110】
本発明の関連において有用な触媒成分は、本発明を知った当業者によって理解され得るまたは公知である、あらゆる触媒から選択され得る。機能的に、脱水、脱水素、異性化、水素移動、芳香族化、脱カルボニル化、脱カルボキシル化、アルドール縮合および/または炭化水素原料の熱分解に関連したもしくは関係のある他のいかなる反応もしくは工程を促進するおよび/または生じさせる、そのような任意の原料の能力によってのみ、触媒は限定され得る。当業者によって理解され得るように、触媒成分は酸性、中性または塩基性が考えられ得る。
【0111】
いくつかの場合において、本明細書に記載されている触媒粒子は、多結晶の固体(例えば、多結晶の粒子)を含み得る。また、いくつかの実施形態において、触媒粒子は単結晶を含み得る。ある場合において、粒子は別個で(distinct)分離した(separate)独立の(stand-alone)物理的物体であり得る。他の場合において、少なくとも粒子の調製および/または使用におけるある時点において、当該粒子は、互いに密接に接触している、複数の別々の粒子の凝集体を含み得る。
【0112】
本明細書に記載されている実施形態において用いられる触媒(例えば、供給流において、反応器において、など)は、任意の適当な大きさであり得る。いくつかの場合において、比較的小さい触媒粒子を含んでいる触媒を用いることが有利であり得る。上述のように、ある実施形態において、それは複数の凝集した触媒粒子から成り得るより大きな触媒物の形態であり得る。いくつかの実施形態において、例えば、小さい触媒粒子の使用によって、炭化水素原料が触媒の表面側に接触し得る広さを増加し得るが、それは、例えば外側の触媒表面領域の増大および触媒を通じた拡散距離の減少に起因する。いくつかの場合においえ、触媒の大きさおよび/または触媒の粒径は、少なくとも部分的に、例えば所望の流体流の種類および触媒の寿命に基づいて選択され得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、触媒物(ある例において、各々が単一の触媒粒子からなり、他の例において、複数の粒子の凝集体からなる)の平均直径(従来のふるい分析によって測定された場合)は、約5mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約500ミクロン未満、約60メッシュ(250ミクロン)未満、約100メッシュ(149ミクロン)未満、約140メッシュ(105ミクロン)未満、約170メッシュ(88ミクロン)未満、約200メッシュ(74ミクロン)未満、約270メッシュ(53ミクロン)未満、もしくは約400メッシュ(37ミクロン)未満、またはそれら未満であり得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、触媒物は、約5ミクロン未満、約1ミクロン未満、約500nm未満、約100nm未満、約100nm〜約5ミクロン、約500nm〜約5ミクロン、約100nm〜約1ミクロン、または約500nm〜約1ミクロンの最大断面寸法を有している粒子であり得るか、もしくは当該粒子から形成され得る。先に言及したように、ある場合において、直前に言及した範囲内の寸法を有している触媒粒子は凝集して、前の段落において言及した範囲内の寸法を有している別々の触媒物を形成し得る。本明細書に使用されるとき、粒子の「最大断面寸法」は、粒子の2つの境界間の最大の寸法を指す。当業者は、粒子の最大断面寸法を、例えば、触媒調製物の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を解析することによって、測定することが可能であり得る。凝集した粒子を含んでいる実施形態において、当該粒子は最大断面寸法を決定する際に別個に評価されるべきである。そのような場合において、凝集した各粒子間の仮想境界を確定し、そのような確定した境界から得られる仮想の個別化した粒子の最大断面寸法を測定することによって、測定が行われ得る。いくつかの実施形態において、触媒内の比較的多い数の粒子は、所定の範囲内のある最大断面寸法を有している。例えば、いくつかの実施形態において、触媒のうちの少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の粒子が、約5ミクロン未満、約1ミクロン未満、約500nm未満、約100nm未満、約100nm〜約5ミクロン、約500nm〜約5ミクロン、約100nm〜約1ミクロン、または約500nm〜約1ミクロンの最大断面寸法を有している。
【0115】
いくつかの場合において、触媒の体積のうちの比較的高いパーセンテージが、特定の範囲内の最大断面を有している粒子によって占められ得る。例えば、いくつかの実施形態において、用いられる全触媒の体積の合計のうちの少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%が、約5ミクロン未満、約1ミクロン未満、約500nm未満、約100nm未満、約100nm〜約5ミクロン、約500nm〜約5ミクロン、約100nm〜約1ミクロン、または約500nm〜約1ミクロンの最大断面寸法を有している粒子によって占められる。
【0116】
いくつかの実施形態において、触媒内の粒子は実質的に同じ大きさであり得る。例えば、触媒は、粒子の最大断面寸法の標準偏差が、粒子の平均最大断面寸法の約50%以下、約25%以下、約10%以下、約5%以下、約2%以下、または約1%以下であるような寸法の分布を有している粒子を含み得る。標準偏差(小文字のシグマ)は、当該技術分野におけるその通常の意味で用いられ、以下のように計算され得る:
【0117】
【数4】

【0118】
ここで、Dは粒子iの最大断面寸法であり、Davgは全ての粒子の最大断面寸法の平均であり、nは触媒内の粒子の数である。上記に略述した粒子の標準偏差と平均最大断面寸法とのパーセンテージ比較は、標準偏差を平均で割り、100%を乗じることによって求められ得る。
【0119】
上記に示した選択された粒度分布の範囲内の粒子を含んでいる触媒を用いることによって、炭化水素原料の反応によって製造された芳香族化合物の収率および/または選択性を増加させ得る。例えば、いくつかの場合において、所望の大きさの範囲(例えば、上記で略述した大きさの分布の何れか)を有している粒子を含んでいる触媒を用いることによって、所望の範囲外の粒度分布を有している(例えば、1ミクロンよりも大きい、5ミクロンよりも大きいなどの粒子のパーセンテージが高い)粒子を含んでいる触媒を用いて製造され得る芳香族化合物の量と比較して、反応生成物における芳香族化合物の量を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、または少なくとも約20%増加させ得る。
【0120】
あるいは、単独でまたは上述の考慮と共に、触媒は孔径(例えば、典型的にはゼオライトと関連するメソ孔径および孔径)に従って選択し得、例えば、約100Å未満、約50Å未満、約20Å未満、約10Å未満、約5Å未満、またはそれよりも小さい平均孔径であり得る。いくつかの実施形態において、約5Å〜約100Åの平均孔径を有している触媒が用いられ得る。いくつかの実施形態において、約5.5Å〜約6.5Åまたは約5.9Å〜約6.5Åの平均孔径を有している触媒が用いられ得る。いくつかの場合において、約7Å〜約8Åまたは約7.2Å〜約7.8Åの平均孔径を有している触媒が用いられ得る。
【0121】
本明細書に使用されるとき、「孔径」という用語は、細孔の最小の断面径を指して用いられる。細孔の最小の断面径は、細孔の長さに対して垂直に測定された時の最小の断面寸法(例えば、断面径)と一致し得る。いくつかの実施形態において、Xの「平均孔径」または「孔径分布」を有している触媒は、触媒内の細孔の最小の断面径の平均が約Xである触媒を指す。本明細書に使用されるとき、細孔の「孔径」または「最小の断面径」は、当業者に公知のNorman半径調整孔径(Norman radii adjusted pore size)を指すことが理解されるはずである。Norman半径調整孔径の決定法は、例えば、Cook, M.; Conner, W. C., "How big are the pores of zeolites?" Proceedings of the International Zeolite Conference, 12th, Baltimore, July 5-10, 1998; (1999), 1, pp 409-414(その全体の内容が参照によって本明細書に援用される)に記載されている。例示的なNorman半径調整孔径の一覧は、例えば、図17に示されている。特定の例示的な計算として、ZSM−5の細孔についての原子半径は、X線回折によって測定した場合に約5.5Å〜5.6Åである。触媒中の酸素原子間の反発効果について調整するために、CookおよびConnerは、Norman調整した半径が、原子半径より0.7Å大きい(約6.2Å〜6.3Å)ことを示した。
【0122】
当業者は、触媒における孔径(例えば、最小孔径、最小孔径の平均)を決定する方法を理解し得る。例えば、原子座標を決定するために、X線回折(XRD)が用いられ得る。孔径の決定のためのXRD法は、例えば、Pecharsky, V.K. et al, "Fundamentals of Powder Diffraction and Structural Characterization of Materials," Springer Science+Business Media, Inc., New York, 2005(その全体の内容が参照によって本明細書に援用される)に記載されている。孔径(例えば、ゼオライトの孔径)を決定するのに有用であり得る他の方法としては、例えば、ヘリウム比重法または低圧アルゴン吸着法が挙げられる。これらの方法および他の方法は、J.S. et al, "Fluid Catalytic Cracking: Science and Technology," Elsevier Publishing Company, July 1, 1993, pp. 185-195(その全体の内容が参照によって本明細書に援用される)に記載されている。メソ細孔性触媒の孔径は、例えば、Gregg, S. J. at al, "Adsorption, Surface Area and Porosity," 2nd Ed., Academic Press Inc., New York, 1982、およびRouquerol, F. et al, "Adsorption by powders and porous materials. Principles, Methodology and Applications," Academic Press Inc., New York, 1998(その全体の内容が参照によって本明細書に援用される)に記載されているように、窒素吸着法を用いて決定され得る。別段示されない限り、本明細書において言及されている孔径は、Norman半径調整孔径を反映するために上記のように修正された、X線回折によって決定されたものである。
【0123】
いくつかの実施形態において、特定の熱分解生成物分子の変換に適切な孔径を有している触媒を選択するために、選別法が用いられる。選別法は、触媒的に反応するために望まれる熱分解生成物分子の大きさ(例えば、熱分解生成物分子の動的分子径)を決定することを含み得る。当業者は、例えば所定の分子の動的直径を計算し得る。次いで、触媒の細孔(Norman調整最小半径)が、熱分解生成物分子を触媒の中へ拡散させるおよび/または触媒と反応させるのに十分大きいものとなるように、触媒の種類が選択され得る。いくつかの実施形態において、孔径が、反応が望ましくないものであり得る熱分解生成物の進入および/または反応を回避するのに十分小さいものとなるように、触媒が選択される。
【0124】
限定されることなく、いくつかのそのような触媒および他の触媒は、天然ゼオライト、合成ゼオライトおよびそれらの組合せから選択され得る。ある実施形態において、触媒は、当業者に理解され得るような、モルデナイト骨格置換(Mordenite Framework Inverted)(MFI)型ゼオライト触媒(ZSM−5ゼオライト触媒など)であり得る。任意に、そのような触媒は、酸性点を含み得る。他の種類のゼオライト触媒としては、フェリエライト、ゼオライトY、ゼオライトβ、モデルナイト、MCM−22、ZSM−23、ZSM−57、SUZ−4、EU−1、ZSM−11、(S)AIPO−31、SSZ−23などが挙げられる。他の実施形態において、非ゼオライト触媒が用いられ得る。例えば、WO/ZrO、リン酸アルミニウムなど。
【0125】
いくつかの実施形態において、触媒は金属および/または金属酸化物を含み得る。適当な金属および/または金属酸化物としては、例えば、ニッケル、白金、バナジウム、パラジウム、マンガン、コバルト、亜鉛、銅、クロム、ガリウム、および/またはそれらの酸化物の何れかなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、金属および/または金属酸化物は触媒の中(例えば、触媒の格子構造の隙間の中)へ含浸され得る。金属および/または金属酸化物は、触媒の格子構造の中へ組み込まれ得る。例えば、金属および/または金属酸化物は触媒の調製の間に含まれ得、金属および/または金属酸化物は得られた触媒(例えば、ゼオライト触媒)の格子位置を占有し得る。別の例として、金属および/または金属酸化物は、ゼオライトの格子構造内の原子と置換するようにゼオライト触媒と反応するか、そうでなければゼオライト触媒と相互作用し得る。
【0126】
ある実施形態において、ガリウムを含んでいるモルデナイト骨格置換(MFI)ゼオライト触媒が用いられ得る。例えば、ガロアルミノケイ酸塩MFI(GaAlMFI)ゼオライト触媒が用いられ得る。当業者は、GaAlMFIゼオライトに精通し得るが、GaAlMFIゼオライトは、Al原子のいくつかがGa原子と置換されているアルミノケイ酸塩MFIゼオライトであると考えられ得る。いくつかの例において、ゼオライト触媒は水素型(例えば、H−GaAlMFI)であり得る。いくつかの実施形態において、ガロアルミノケイ酸塩MFI触媒は、アルミニウム原子のいくつかがガリウム原子と置換されているZSM−5ゼオライト触媒であり得る。
【0127】
いくつかの例において、ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒中のSiのモルと、ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒中のGaおよびAlのモルの合計との比(すなわち、Si:(Ga+Al)として表されるモル比)は、少なくとも約15:1、少なくとも約20:1、少なくとも約25:1、少なくとも約35:1、少なくとも約50:1、少なくとも約75:1、またはそれ以上であり得る。いくつかの実施形態において、ゼオライト中のSiのモルと、GaおよびAlのモルの合計との比は、約15:1〜約100:1、約15:1〜約75:1、約25:1〜約80:1、または約50:1〜約75:1である触媒を用いることが有益であり得る。いくつかの例において、ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒中のSiのモルと、ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒中のGaのモルとの比は、少なくとも約30:1、少なくとも約60:1、少なくとも約120:1、少なくとも約200:1、約30:1〜約300:1、約30:1〜約200:1、約30:1〜約120:1、または約30:1〜約75:1であり得る。ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒中のSiのモルと、ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒中のAlのモルとの比は、少なくとも約10:1、少なくとも約20:1、少なくとも約30:1、少なくとも約40:1、少なくとも約50:1、少なくとも約75:1、約10:1〜約100:1、約10:1〜約75:1、約10:1〜約50:1、約10:1〜約40:1、または約10:1〜約30:1であり得る。
【0128】
さらに、いくつかの場合において、所望の生成物を選択的に製造するために、触媒の特性(例えば、細孔の構造、種類および/または酸性点の数など)が選択され得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、孔径の双峰分布を確立するために、1または2以上の触媒を用いることが望ましい。いくつかの場合において、孔径の双峰分布を有している単一の触媒が用いられ得る(例えば、主に5.9Å〜6.3Åの細孔および7Å〜8Åの細孔を含んでいる単一の触媒)。他の場合において、2以上の触媒の混合物が双峰分布を確立するために用いられ得る(例えば、2つの触媒の混合物であって、各触媒の種類が、異なる範囲の平均孔径を有している)。いくつかの実施形態において、1または2以上の触媒のうち1つがゼオライト触媒を含んでおり、1または2以上の触媒のうち別の1つが非ゼオライト触媒(例えば、メソ細孔性触媒、金属酸化物触媒など)を含んでいる。
【0130】
例えば、いくつかの実施形態において、1または2以上の触媒(例えば、ゼオライト触媒、メソ細孔性触媒など)の、細孔の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%が、第一の粒度分布または第二の粒度分布の範囲内にある最小断面径を有している。いくつかの場合において、1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約2%、少なくとも約5%、または少なくとも約10%が、第一の粒度分布の範囲内にある最小断面径を有しており;1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約2%、少なくとも約5%、または少なくとも約10%が、第二の粒度分布の範囲内にある最小断面径を有している。いくつかの場合において、第一の粒度分布および第二の粒度分布は、上記の範囲から選択され得る。ある実施形態において、第一の粒度分布および第二の粒度分布は、互いに異なっており、重なっていない。重なっていない範囲の例は5.9Å〜6.3Åと6.9Å〜8.0Åであり、重なっている範囲の例は5.9Å〜6.3Åおよび6.1Å〜6.5Åである。第一の粒度分布および第二の粒度分布は、範囲が互いにすぐ隣り合わない(例えば、5.9Å〜6.3Åおよび6.9Å〜8.0Åの孔径である)ように選択され得る。互いにすぐ隣り合っている範囲の例は、5.9Å〜6.3Åおよび6.3Å〜6.7Åの孔径である。
【0131】
具体例として、いくつかの実施形態において、芳香族化合物およびオレフィン化合物の同時製造のための双峰孔径分布を提供するために、1または2以上の触媒が用いられる。つまり、一方の孔径分布が比較的多い量の芳香族化合物を有利に製造し得、他方の孔径分布が比較的多い量のオレフィンを有利に製造し得る。いくつかの実施形態において、1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%が、約5.9Å〜約6.3Åまたは約7Å〜約8Åの最小断面径を有している。さらに、1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約2%、少なくとも約5%、または少なくとも約10%が、約5.9Å〜約6.3Åの最小断面径を有しており;1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約2%、少なくとも約5%、または少なくとも約10%が、約7〜約8Åの最小断面径を有している。
【0132】
いくつかの実施形態において、1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%が、約5.9Å〜約6.3Åまたは約7Å〜約200Åの最小断面径を有している。さらに、1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約2%、少なくとも約5%、または少なくとも約10%が、約5.9Å〜約6.3Åの最小断面径を有しており;1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約2%、少なくとも約5%、または少なくとも約10%が、約7Å〜約200Åの最小断面径を有している。
【0133】
いくつかの実施形態において、1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%が、第一の分布および第二の分布内にある最小断面径を有しており、第一の分布が約5.9Å〜約6.3Åであり、第二の分布が第一の分布と異なっており重なっていない。いくつかの実施形態において、第二の分布は約7Å〜約200Å、約7Å〜約100Å、約7Å〜約50Å、または約100Å〜約200Åであり得る。いくつかの実施形態において、第二の触媒はメソ細孔性(例えば、約2nm〜約50nmの孔径分布を有している)であり得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、孔径の双峰分布は、2以上の炭化水素供給原料の成分の反応において有益であり得る。例えば、いくつかの実施形態は、反応器において第一の成分および第二の成分を含んでいる固体の炭化水素原料を供給することを含んでおり、第一の成分および第二の成分は異なっている。第一の成分または第二の成分として用いられ得る化合物の例としては、本明細書に記載されている炭化水素原料の何れも(例えば、サトウキビのバガス、グルコース、木材、トウモロコシ茎葉、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなど)が挙げられる。例えば、第一の成分はセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンのうちの1つを含み得、第二の成分はセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンのうちの1つを含んでいる。当該方法は、反応器において第一の触媒および第二の触媒を供給することをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、第一の触媒は第一の孔径分布を有し得、第二の触媒は第二の孔径分布を有し得、第一の孔径分布と第二の孔径分布とは異なっており重なっていない。第一の孔径分布は、例えば、約5.9Å〜約6.3Åであり得る。第二の孔径分布は、例えば、約7Å〜約200Å、約7Å〜約100Å、約7Å〜約50Å、または約100Å〜約200Åであり得る。いくつかの場合において、第二の触媒はメソ細孔性または非細孔性であり得る。
【0135】
第一の触媒は、第一の成分またはその誘導体が酵素的に反応して流体の炭化水素生成物を製造することに対して選択性があり得る。さらに、第二の触媒は、第二の成分またはその誘導体が酵素的に反応して流体の炭化水素生成物を製造することに対して選択性があり得る。当該方法は、1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下において炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解すること、および第一の触媒および第二の触媒を用いて熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させることによって、1または2以上の炭化水素生成物を製造すること、をさらに含み得る。いくつかの例において、少なくとも部分的に不活性化した触媒も生成し得る。
【0136】
ある実施形態において、本明細書に記載されている実施形態と組み合わせて用いられる方法は、識別可能な芳香族化合物の生産量を増加させるために、組成物における炭化水素原料に対する触媒の質量比を増加させることを含んでいる。本明細書に例証されているように、代表的であるが、ある先行の触媒熱分解の方法に対する1つの相違、本明細書に記載されている事項および方法が、ベンゼン、トルエン、プロピルベンゼン、エチルベンゼン、メチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、キシレン、インダン、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、エチルナフタレン、ヒドリンデン、メチルヒドリンデン、およびエチルヒドリンデン、ならびにそれらの組合せ(ただしこれらの限定されない)から選択される別個の識別可能な芳香族系バイオ燃料化合物を製造するために用いられ得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、触媒の反応の化学的性質は、1または2以上の追加の化合物を添加することによって影響を受け得る。例えば、触媒への金属の添加は、特定の化合物の選択的な形成におけるシフトをもたらし得る(例えば、アルミナケイ酸塩触媒への金属の添加は、より多くのCOの生成をもたらし得る)。さらに、流動化流体が水素を含んでいる場合、触媒上に形成されるコークスの量は減少し得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、触媒はシリカおよびアルミナの両方を含み得る(例えば、ゼオライト触媒)。触媒中のシリカおよびアルミナは、任意の適当なモル比において存在し得る。いくつかの実施形態において、アルミナのモル数と比較してシリカのモル数が大きい(すなわち、アルミナに対するシリカのモル比が高い)触媒を用いることは有利であり得る。発明者らは、アルミナに対するシリカの高いモル比が、例えば本明細書に記載されている実施形態と組み合わせて、比較的多い量の芳香族生成物の形成をもたらし得ることを予想外に発見した。例えば、いくつかの場合において、供給組成物は、少なくとも約30:1、少なくとも約40:1、少なくとも約50:1、少なくとも約75:1、少なくとも約100:1、少なくとも約150:1、またはそれ以上の、シリカとアルミナとのモル比を含み得る。いくつかの実施形態において、シリカとアルミナとのモル比が約30:1〜約200:1、約30:1〜約150:1、約50:1〜約160:1、または約100:1〜約150:1である触媒を用いることが有利であり得る。
【0139】
いくつかの実施形態において、触媒および炭化水素原料は任意の適当な比において存在し得る。例えば、供給原料が触媒および炭化水素原料(例えば、触媒および炭化水素原料を含んでいる1または2以上の供給流を通じて、または別個の触媒供給流と炭化水素供給流とを通じて)を含んでいる場合(例えば、循環式流動層反応器)において、触媒および炭化水素原料は任意の適当な質量比において存在し得る。別の例として、反応器に触媒と炭化水素原料の混合物を最初に供給する場合(例えば、回分式反応器)において、触媒および炭化水素原料は任意の適当な質量比において存在し得る。循環式流動層反応器を含んでいるいくつかの実施形態において、供給流における(すなわち、反応器へ供給される固体触媒および固体の炭化水素原料を含んでいる組成物における)触媒と炭化水素との質量比は、少なくとも約0.5:1、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約.5:1、少なくとも約10:1、少なくとも約15:1、少なくとも約20:1、またはそれ以上であり得る。循環式流動層反応器を含んでいるいくつかの実施形態において、供給流における触媒と炭化水素原料との質量比は、約0.5:1未満、約1:1未満、約2:1未満、約5:1未満、約10:1未満、約15:1未満もしくは約20:1未満;または約0.5:1〜約20:1、約1:1〜約20:1もしくは約5:1〜約20:1であり得る。炭化水素原料に対する触媒の質量比を比較的高くすることによって、供給原料の熱分解によって形成される揮発性の有機化合物がコークスへ熱分解する前に、それらが触媒へ導入されることを促進し得る。何か理論に束縛されるものではないが、この効果は少なくとも部分的に、反応器内の触媒部位の化学量論的な過剰の存在に起因し得る。
【0140】
別の局面において、工程生成物が望ましい。一組の実施形態において、生成物(例えば、熱分解生成物)は、固体の炭化水素原料の反応生成物の一部を含んでいる流体組成物を含んでいる。そのような生成物は、特別な化学物質としての使用(例えば、燃料として直接使用されるが、もしくは高オクタン価の燃料添加物として使用される)のために単離され得る。あるいは、そのような生成物は、バイオ燃料としての使用のために水素化され得る。また、生成物は他の有用な化合物を作るためにさらに処理され得る。
【0141】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている事項および方法は、芳香族化合物を選択的に製造するために、例えば単段式熱分解装置あるいは多段式熱分解装置において設計され得る。流体の炭化水素生成物は、例えば、固体の炭化水素原料の全反応生成物の、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約39重量%、約10重量%〜約40重量%、約10重量%〜約35重量%、約15重量%〜約40重量%、約15重量%〜約35重量%、約20重量%〜約40重量%、約20重量%〜約35重量%、約25重量%〜約40重量%、約25重量%〜約35重量%、約30重量%〜約40重量%、または約30重量%〜約35重量%である量の芳香族化合物を含み得る。いくつかの場合において、そのような量の芳香族化合物は、約90より大きいまたは約90と等しい(例えば、少なくとも92、95、または98)オクタン価を有している。固体の炭化水素原料の全反応生成物の重量パーセントをなしている芳香族化合物の量は、固体の炭化水素生成物中に存在する芳香族化合物の重量を、熱分解生成物の形成に用いた炭化水素原料の重量で割って計算される。本明細書に使用されるとき、「芳香族化合物」という用語は、例えば、単環の芳香環式(例えば、ベンジル、フェニルなど)および縮合した多環の芳香環式(例えば、ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチルなど)のような、1または2以上の芳香族基を含んでいる炭化水素化合物を指して使用される。芳香族化合物の例としては、ベンゼン、トルエン、インダン、インデン、2−エチルトルエン、3−エチルトルエン、4−エチルトルエン、トリメチルベンゼン(例えば、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼンなど)、エチルベンゼン、メチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン(例えば、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレンなど)、ナフタレン、メチルナフタレン(例えば、1−メチルナフタレン、アントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、ピレン、フェナントレン、ジメチルナフタレン(例えば、1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレン、2,5−ジメチルナフタレンなど)、エチルナフタレン、ヒドリンデン、メチルヒドリンデン、およびジメチルヒドリンデンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、単環および/または多環の芳香族化合物が製造され得る。芳香族化合物は、例えば、C〜C14、C〜C、C〜C12、C〜C12、C10〜C14からの炭素数を有し得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている事項および方法は、オレフィン化合物を選択的に製造するために、例えば単段式熱分解装置あるいは多段式熱分解装置において、設計され得る。流体組成物(例えば、液体および/または気体の熱分解生成物)は、例えば、固体の炭化水素原料の全反応生成物の、少なくとも約3重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約12.5重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%またはそれ以上をなしている量のオレフィン化合物を含み得る。固体の炭化水素原料の全反応生成物の重量パーセントをなしているオレフィン化合物の量は、流体の炭化水素生成物中に存在しているオレフィン化合物の重量を、熱分解生成物の形成に用いた炭化水素原料の重量で割って計算される。本明細書に使用されるとき、「オレフィン」または「オレフィン化合物」(別名「アルケン」)という用語は、当該技術分野におけるそれらの従来の意味で用いられ、二重結合によって結合している1組または2組以上の炭素原子を含んでいる不飽和炭化水素の何れをも指して用いられる。オレフィンは環式オレフィンおよび非環式(脂肪族の)オレフィンの両方を包含しており、それらは、二重結合がそれぞれ、環状の(閉環)基または開鎖基の一部を形成している炭素原子の間に位置している。さらに、オレフィンは任意の適当な数の二重結合を含み得る(例えば、モノオレフィン、ジオレフィン、トリオレフィンなど)。オレフィン化合物の例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、およびイソプレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。オレフィン化合物は、例えば、C〜C、C〜C、C〜C、またはC〜C12からの炭素数を有し得る。
【0143】
いくつかの場合において、例えば単段式熱分解装置あるいは多段式熱分解装置において、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物が選択的に製造されるように、作業条件が選択され得る。例えば、いくつかの実施形態において、反応器が約600℃(または、いくつかの例において、それよりも高い)の温度において操作される場合、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物が選択的に製造され得る。さらに、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物の選択的な製造を促進するために、ある加熱速度(例えば、少なくとも50℃/s、または少なくとも400℃/s)、高い供給物と触媒との質量比(例えば、少なくとも約5:1)、および/または触媒における高いシリカとアルミナとのモル比(例えば、少なくとも約30:1)が利用され得る。いくつかのそのような作業条件および他の作業条件は、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物を選択的に製造するために、特定の反応器の種類(流動層反応器(例えば、循環式流動層反応器)など)と組み合わされ得る。
【0144】
さらに、いくつかの実施形態において、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物の選択的な製造を促進するために、触媒が選択され得る。例えば、いくつかの場合において、ZSM−5は、比較的多い量の芳香族化合物および/またはオレフィン化合物を好適に製造し得る。いくつかの場合において、ブロンステッド酸性点を含んでいる触媒は、芳香族化合物の選択的な製造を促進し得る。さらに、秩序立った細孔構造を有している触媒は、芳香族化合物の選択的な製造を促進し得る。例えば、いくつかの実施形態において、約5.9Å〜約6.3Åの平均孔径を有している触媒が、芳香族化合物の製造において特に有用であり得る。さらに、約7Å〜約8Åの平均孔径を有している触媒が、オレフィンの製造において有用であり得る。いくつかの実施形態において、1または2以上の上記工程パラメータの組合せが、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物の選択的な製造を促進するために用いられ得る。生成した芳香族生成物と生成したオレフィン生成物との比は、例えば、約0.1:1〜約10:1、約0.2:1〜約5:1、約0.5:1〜約2:1、約0.1:1〜約0.5:1、約0.5:1〜約1:1、約1:1〜約5:1、または約5:1〜約10:1であり得る。
【0145】
いくつかの実施形態において、所望の生成物および/または好ましい収率を生み出すために、供給物における触媒と炭化水素化合物との質量比が調整され得る。いくつかの実施形態において、含酸素化合物(例えば、酢酸、ギ酸、ヒドロキシアセチルアルデヒド、フルフラール、2−メチルフラン、フラン、4−メチルフルフラール、フラン−2−メタノール、およびレボグルコサンなど)が製造され得る。例えば、いくつかの場合において、炭化水素原料に対する触媒の質量比の増加は、非環式カルボニル含酸素化合物の生産量における増加をもたらし得る。具体例として、供給物における原料(例えば、グルコース)に対する触媒の質量比を増加させるが約9未満の質量比を維持する場合、非環式カルボニル含酸素生成物(例えば、ヒドロキシアセトアルデヒド、酢酸など)の相対量は増加し得る。いくつかの場合において、触媒に対する炭化水素原料の質量比の減少は、環状の含酸素化合物の生成における増加をもたらし得る。例えば、いくつかの場合において、供給物における原料(例えば、グルコース)に対する触媒の質量比を減らした(例えば、約19から約1まで)場合、フラン、フルフラール、メチルフラン、および/または4−メチルフルフラール生成物の相対量は減少する。またさらなる実施形態において、供給物における原料(例えば、グルコース)に対する触媒の質量比を減らした(例えば、約19から約2.3まで)場合、フラン−2−メタノール生成物の量は減少し得る;供給物における原料(例えば、グルコース)に対する触媒の質量比をさらに減らした(例えば、約2.3から約1.5まで)場合、フラン−2−メタノール生成物の量は減少し得る。このように、触媒と炭化水素原料との質量比は、例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも約0.5:1、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約5:1、少なくとも約10:1、少なくとも約15:1、少なくとも約20:1、またはそれ以上であり得;別の実施形態において、約0.5:1未満、約1:1未満、約2:1未満、約5:1未満、約10:1未満、約15:1未満、または約20:1未満であり得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、工程生成物はまた、炭化水素のバイオマス原料の熱分解生成物を含んでいる高オクタン価のバイオ燃料組成物を含み得る。熱分解成製物は、単段式熱分解装置あるいは多段式熱分解装置を用いて作られ得る。いくつかの場合において、炭化水素原料は、熱分解反応の間に、触媒(例えば、ゼオライト触媒)と混合され得る。組成物は、例えば別個の識別可能な芳香族化合物を含み、約90より大きいまたは約90と等しい(例えば、少なくとも92、95、または98)オクタン価によって特徴付けられる、1、2以上またはそれぞれのそのような化合物を含み得る。そのような組成物は、先行技術のいくつかの粘着性のタールおよび汚泥と区別できるため、石油由来のガソリン、ディーゼル燃料および/または暖房用燃料に可溶であると特徴付けられ得る。そのような化合物としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、キシレン、インダンナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、エチルナフタレン、ヒドリンデン、メチルヒドリンデン、およびジメチルヒドリンデン、ならびにこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。その正体および/または相対量は、バイオマス組成物の選択、触媒の種類、および/または本明細書に記載されている任意の工程パラメータに応じて変え得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、工程生成物は、既存のガソリンおよびディーゼル燃料系と相溶性のある非酸性バイオ燃料を含み得る。
【0148】
さらに、本明細書に記載されている工程は、ある既存の方法よりもコークスを少なくし得る。例えば、いくつかの実施形態において、熱分解生成物は、当該熱分解生成物の約30重量%未満、約25重量%未満、約20重量%未満、約15重量%未満、または約10重量%未満がコークスである状態で形成され得る。形成されるコークスの量は、系において形成されたコークスの重量を、熱分解生成物の形成において用いられた炭化水素原料の重量で割って評価される。
【0149】
以下の文書は、全ての目的に関してその全体の内容が参照によって本明細書に援用される:米国仮出願第61/068,001号(出願日:2008年3月4日、発明の名称:Catalytic Fast Pyrolysis of Solid Biomass and Related Biofuels and Aromatic Compounds、発明者:Huber, et al.);米国仮出願第61/098,284号(出願日:2008年9月19日、発明の名称:Catalytic Pyrolysis of Solid Biomass and Related Biofuels and Aromatic Compounds、発明者:Huber, et al.);米国特許出願第12/397,303号(出願日:2009年3月3日、発明の名称:Catalytic Pyrolysis of Solid Biomass and Related Biofuels, Aromatic, and Olefin Compounds、発明者:Huber, et al.)。
【0150】
〔実施例〕
以下の実施例およびデータは限定されるものではなく、本発明に係る方法および/または組成物に関する様々な態様および特徴を説明することが意図される。本発明は、様々な芳香族化合物および/または酸素含有化合物(例えば、酸素化した炭化水素)の選択的な製造を含んでおり、本明細書に記載されている熱分解の方法論を介して入手可能であるが、以下の実施例およびデータは、本発明の全範囲を例示するものではない。先行技術と比較して、本発明の方法および組成物は、それと対照的な、予期できない驚くべき結果およびデータを提供する。様々な触媒材料および炭化水素源の使用を通じて本発明の有用性を説明するが、他の様々な触媒材料および/または炭化水素源を用いた場合であっても、本発明の範囲と均等であるため、同等の結果を得ることが可能であることが当業者によって理解され得る。
【0151】
<実施例1>
種々の実施例の代表例として、以下の実施例1〜9に記載されている触媒熱分解実験は、粉末状の触媒および原料(<140メッシュサイズ)を加えて、Pyroprobe 2000 回分式熱分解反応器(CDS Analytical Inc.)において行った。本実施例において別段明記されない限り、実験の反応条件は:原料に対する触媒の質量比、19;触媒、ZSM5(SiO/Al=30);名目加熱速度、1000℃s−1;反応温度、600℃;反応時間(原料の滞留時間)、240sであった。図2A〜2Bは、HZSM−5(すなわち、プロトン化したZSM−5)を用いたキシリトール、グルコース、セロビオースおよびセルロースの触媒熱分解についての、炭素収率および芳香族選択性をそれぞれ示す。芳香族化合物の収率は、炭素収率として計算した。炭素収率は、生成物における炭素のモルを、原料における炭素のモルで割ることによって計算した。選択性は、所定の生成物における炭素のモルを、全ての生成物(CO、COおよびコークス(例えば、触媒に残留する固体コークス)を除く)における炭素のモルで割ることによって計算した。図2Aからわかるように、主生成物は芳香族化合物、CO、COおよびコークスを含んでいた。キシリトールは、他の原料よりも芳香族化合物の収率が高かった。また、キシリトールは他の原料よりも、H/Ceffモル比(2/5)が高かった(セルロース、グルコースおよびセロビオースにおいて0)。一酸化炭素および二酸化炭素は、芳香族化合物が目的物である場合に、生成物としてたいてい存在していた。これら反応の芳香族化合物の収率は、方程式1および方程式2によって定められる理論収率の約半分であった。コークスの収率は、実験した全ての触媒において約30%であり、工業用反応器において、触媒熱分解にプロセス熱を提供するために燃焼され得る。
【0152】
当業者が、重量パーセントと炭素収率との間の変換をし得ることに留意すべきである。炭化水素原料の供給物における炭素量を、例えば、化学分析を介して決定し得る。さらに、各反応生成物の炭素パーセントを、それらの分子式を用いて計算し得る。例えば、1モルのベンゼン(C)は、約72グラムの炭素および約6グラムの水素を含んでおり、炭素の重量パーセントは約92.3%である。その他には、同様に、メチルベンゼンは約91.5重量%の炭素を含んでおり、エチルベンゼンおよびキシレンは約90.5重量%の炭素を含んでいる。特定の生成物流における炭素の質量を、原料における炭素の質量で割ることによって、炭素パーセントを重量パーセントから算出し得る。
【0153】
一つの具体例において、トルエンを木材原料から製造し得る。系に供給される木材の炭素が44質量%(すなわち、原料中の炭素が44%)であることを決定するために、化学分析を用い得る。製造されるトルエンは、91.25質量%の炭素(すなわち、生成物中の炭素が91.25%)を含んでいる。5%の炭素収率(C%)に関して、重量パーセントを以下のように計算し得る:
重量%=(5C%)×(44%)/(91.25%)=2.41重量パーセント収率(トルエン)
生成物の混合物(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびナフタレン)に関しては、個々の生成物の収率の合計が全収率を規定する。
【0154】
当業者は、利用可能な工業技術による供給流において、炭素量を決定し得る。炭素および水素パーセントに換算した原料組成物または炭化水素原料を、例えば、燃焼分析を用いて決定し得る。燃焼分析において、原料サンプルの重さを量り、次に原料サンプルを空気(例えば、過剰空気)中で燃焼し、測定可能な燃焼生成物(例えば、二酸化炭素および水)を生成させる。発生した二酸化炭素および水を、例えば、気体を捕捉して重さを量ることによって、またはガスクロマトグラフィーによって、測定し得る。本実施例において、測定される二酸化炭素(CO)のモルは、原料サンプルにおける炭素(C)のモルと等価であり得る。さらに、測定される水(HO)のモルは、原料サンプルにおける水素(H)のモルの1/2倍に相当し得る。
【0155】
定常状態において反応器が稼動する場合、反応器から出る質量は、反応器へ供給された質量と等しい。しかしながら、いくつかの例において、定常状態を達成し得ない。例えば、反応器内に物質(例えば、コークス)の蓄積があり得る。物質収支の計算を行うために、反応器中に蓄積する物質の量を決定しなければならない。例えば、反応器の稼動前および稼動後の内容物の重さを量ることによって、これを達成し得る。
【0156】
種々の代表的なバイオマス由来の酸素含有物の触媒熱分解による芳香族化合物の分布を図2Bに示す。興味深いことに、本発明の方法を用いると、試験した供給原料は、類似する芳香族生成物の分布をもたらした。芳香族化合物のモーター法オクタン価(MON)は111であると推定された(定量化した全ての芳香族化合物のオクタン価(RONおよびMON)および沸点の完全な表については、以下の実施例を参照)。このような芳香族化合物または他の芳香族化合物は、燃料として直接使用され得、高オクタン価の燃料添加物として使用され得、または、別の化合物を作るためにさらに処理され得る。しかしながら、製造されたナフタレンは、弱い低温フロー特性(すなわち、低い揮発度)およびガソリンにおいて25体積%までの電流変動率限界水準(current regulations limit levels)を有していた。これらの懸念を軽減するために、ナフタレンおよびその他の芳香族化合物を二次プロセスにおいてアルカンまで水素化し、燃料添加剤としての用途を高め得る。
【0157】
図3からわかるように、グルコースの触媒熱分解についての生成物収率は、加熱速度の関数であった。芳香族化合物の収率の最大値およびコークスの収率の最小値は、1000℃s−1の名目加熱速度において得られた。加熱速度を1℃s−1まで3桁小さくすると、芳香族化合物の収率は半分まで減少し、コークスの収率は35%から40%まで増加した。したがって、望ましくない熱分解反応およびコークス形成を避けるために、高い加熱速度を用い得ると判断した。
【0158】
高い加熱速度に加えて、バイオマスに対する触媒の高い質量比を、芳香族化合物の生成に有利に活用し得る。図4A〜4Bは、グルコースに対する触媒の質量比の関数としてのグルコースの触媒熱分解における生成物選択性を示している。グルコースに対する触媒の質量比が減少するにつれて、コークスの収率が増加し、芳香族化合物の収率が減少した。また、グルコースに対する触媒の質量比が減少するにつれて、COおよびCOの収率は減少した。さらに、グルコースに対する触媒の質量比が19よりも小さい場合において、熱安定性を有する酸素含有物が形成された。グルコースに対する触媒の質量比が増加するにつれて、これら酸素含有物の収率は減少した。図4Bに示されるように、形成された酸素含有物としては、フラン、2−メチルフラン、フルフラール、4−メチルフルフラール、フラン−2−メタノール、ヒドロキシアセチルアルデヒド、および酢酸が挙げられる。グルコースに対する触媒の質量比がより高い場合において、主な酸素含有生成物は、ヒドロキシアセトアルデヒドおよび酢酸であった。しかしながら、グルコースに対する触媒の質量比が減少するにつれて、フランの選択性が増加した。これらの結果は、芳香族化合物に加えて、触媒熱分解が酸素含有物を生成させるよう調整され得、当該酸素含有物は特殊な化学物質または燃料の前駆物質として使用され得ることを示すものであった。
【0159】
また、適切な触媒選択は、芳香族化合物を選択的に製造するために用いられ得る。図5は、いくつかの異なる触媒において、グルコースの触媒熱分解による炭素収率を比較している。HZSM−5は、試験したあらゆる触媒の中で芳香族化合物の収率が最も高かった。触媒を使用しなかった場合には、観察された主要生成物はコークスであった。生成物の分布に影響を与えていると思われる2つの触媒パラメータは、細孔構造および酸性点のタイプであった。代表的な触媒であるZSM−5、シリカライトおよび非晶質SiO−Al触媒を用いて、触媒活性における酸性点の役割を調べた。シリカライトおよびZSM−5は同様の細孔構造を有しているが、シリカライトはブレンステッド酸性点を含んでいない。シリカ−アルミナはブレンステッド酸性点を含んでいるが、秩序立った細孔構造を有していない。シリカライトは主にコークスを生成したが、それはブレンステッド酸性点が芳香族化合物の生成に有用であり得ることを示している。また、シリカアルミナは主にコークスを生成するが、それはゼオライトの細孔構造が芳香族化合物を選択的に生成するために活用され得ることを示している。また、β−ゼオライトおよびY−ゼオライト触媒が図5に示されているが、その両方ともが多量のコークスを生成する。図5における結果は、本発明の方法が、触媒、活性部位のタイプおよび細孔の形状によって変更され得ることを示している。
【0160】
モデル2000 pyroprobe分析用熱分解装置(CDS Analytical Inc.)を用いて、実験を行った。プローブ(probe)は、開口型石英管を支える、コンピュータ制御された抵抗過熱素子であった。緩んだ石英ウール充填材を用いて、粉末状のサンプルを管の中に保持した。熱分解の間、蒸気は、ヘリウムキャリアガス流と共に、石英管の開口端からより大きな空洞(熱分解界面)内へと流れた。キャリアガス流を、Hewlett Packard モデル5972A質量分析計と繋いだモデル5890ガスクロマトグラフへと送った。熱分解界面は100℃に保たれており、用いたGC注入器の温度は275℃であった。GCMSシステム用のキャリアガスと同様に、ヘリウムを不活性熱分解ガスとして用いた。0.5ml min−1の一定流量であるプログラムを、GCキャピラリーカラムのために用いた。GCオーブンを以下の温度範囲によってプログラム化した:50℃において1分間保持、10℃min−1において200℃まで上昇、200℃において15分間保持。
【0161】
<実施例2>
粉末状の反応物を、炭化水素原料および触媒を物理的に混合することによって調製した。原料および触媒の両方を、混合前に<140メッシュまでふるい分けをした。試験したグルコースの物理的混合物を、HZSM−5(Si/Al=30、WR Grace)に対するD−グルコース(Fisher)の質量比が19、9、4、2.3および1.5となるように調製した。また、触媒:原料の質量比が19である、キシリトール(Fisher)/ZSM−5、セロビオース(Acros)/ZSM−5、およびセルロース(Whatnam)/ZSM−5を調製した。反応前に、HZSM−5を空気中、500℃において5時間か焼(calcine)した。また、触媒:グルコースの質量比が19であるサンプルを、以下の触媒:シリカライト、O−ゼオライト、Y−ゼオライトおよびメソ細孔性SiO/Al(SiO/Al=35)を用いて調製した。全ての熱分解反応についての反応条件、生成物の収率および生成物選択性を、表1に要約している。全ての反応を、600℃の反応温度を用いて行った。生成物における炭素のモルを反応物質における炭素のモルで割った、モル炭素収率に換算して、収率を記載している。芳香族化合物の収率を、芳香族生成物における炭素のモルを原料における炭素のモルで割ることによって計算した。
【0162】
【表1】

【0163】
<実施例3>
上記の要約された結果に従って、キシリトールおよびキシロースを、重大なコークス形成をすることなく、触媒熱分解によって熱安定性を有する化合物に変換し得る(表2を参照)。熱分解プロセスへの触媒の添加は、コークス形成を顕著に減少させ、熱安定性を有する生成物への変換を顕著に増加させる。5つの異なる触媒を、キシリトールの触媒熱分解について試験した。当該触媒としては、シリカアルミナ(SiO−Al、Grace-Davison 3125)、ジルコニウムタングステン酸塩(WO/ZrO、MEI X201251)、ジルコニウム硫酸塩(SO/ZrO、MEI X20880)、Pt−シリカ−アルミナ(Huber et alに従って調製したPt/SiO−A1)およびZSM−5(アルミナに対するシリカのモル比が35、WR Grace)が挙げられる。触媒構造は生成物の選択性を大きく変化させ、高収率(50%)の芳香族化合物(ガソリン燃料の添加剤として用いられ得る)を、ZSM−5触媒を用いて生成させ得る。用いたシステムは、GC条件下において分解する熱安定性を有しない化合物に対して、熱安定性を有する生成物を感知する。特に、キシロースは、キシリトールが原料である場合よりも高い選択性(55%)を伴ってフルフラールを生成する。
【0164】
表2は、pyroprobe−GCMSシステムにおけるキシリトールの触媒熱分解の結果を略述している。これらの実験における反応条件は、別段注記されない限り、以下の通りであった:温度、600℃;傾斜率、1000℃/s;反応時間、60s;触媒に対するキシリトールの重量比、0.18;60〜120のメッシュサイズまで粉砕した物理的混合物として触媒に添加したキシリトール;不活性ガス、1atmのHe。
【0165】
【表2】

【0166】
<実施例4>
シリカ−アルミナへの金属の添加は選択性をCOの方にシフトさせるが、金属が反応化学に影響を与え得ることを示している。このような結果は、異なる量の金属を触媒に添加することによって、水素生成反応および水素移行反応の比率が増加し得ることを示している。触媒水素熱分解(Heよりもむしろ水素を用いた触媒熱分解)は、触媒におけるコークス形成を減少させた(さらに別の実施形態を説明している)。これら予備段階の肯定的な結果は、触媒熱分解がガソリンまたはジェット混合燃料として用いられ得る芳香族化合物を包含する種々の生成物を製造し得ることを示している。同様の生成物選択性を有しているZSM−5触媒によって、この芳香族混合体を種々の供給原料から製造し得る(例えば、図1A〜1Bを参照)。
【0167】
<実施例5>
本発明に従って、リグニンおよびリグニン由来の化合物も、触媒熱分解によって、流体の芳香族化合物に変換し得る(表3および4)。オルガノソルブリグニンの熱分解は、主にベンジルフェニルエーテル(BPE)、エタノール、メタノール、COおよびCOを生成する。SiO−A1およびZSM−5をそれぞれ用いた触媒熱分解は、熱安定性を有する生成物への変換を(触媒なしの熱分解と比較して)3〜10倍に高める。オルガノソルブリグニンは、オルガノソルブのパルプ化工程からのリグニン生成物であり、リグニンを含有している他の固体の化合物からも同様の結果を期待し得る。これらの実験は、熱分解プロセスにおいて、触媒がどのように、生成物およびリグニン由来の原料の反応性を顕著に変化させ得るかを示している。オルガノソルブリグニンから生成する主な生成物はBPEであり、表3はBPEの触媒熱分解についての結果を示している(ベンゼン、フェノール、トルエンおよび他の芳香族化合物)。触媒熱分解プロセスは、固体リグニン流から直接、ベンゼン、フェノール、トルエン、および他の芳香族化合物を生成するように改良され得る。ベンゼンおよびトルエンはガソリンに直接添加され得、一方、フェノールは有用な汎用化学物質である。
【0168】
表3は、pyroprobe−GCMSシステムにおける、オルガノソルブリグニン(Aldrich)の触媒熱分解の結果を略述している。反応条件は、以下の通りであった:温度、600℃;傾斜率、1000℃/s;反応時間、60秒;触媒に対するリグニンの重量比、0.18;60〜120のメッシュサイズまで粉砕した物理的混合物として触媒に添加したリグニン;不活性ガス、1atmのHe。
【0169】
【表3】

【0170】
表4は、pyroprobe−GCMSシステムにおけるベンジルフェニルエーテル(BPE)の触媒熱分解の結果を略述している。反応条件は、以下の通りであった:温度、600℃;傾斜率、1000℃/s;反応時間、60秒;触媒に対するリグニンの質量比、0.18;60〜120のメッシュサイズまで粉砕した物理的混合物として触媒に添加したリグニン;不活性ガス、1atmのHe。
【0171】
【表4】

【0172】
<実施例6>
ある実施形態に従って、かつ先行技術と比較して、バイオマスを、同様の反応チャンバにおいて、同様の温度において、触媒(in situ)を用いて変換された凝縮性蒸気まで熱分解した。米国特許第7,241,323号および第5,504,259号に記載されているように、第二の段階を工程から除外した。一段階プロセスの恩恵は2倍である:流体の生成物を凝縮して後で品質を高める場合よりも、少ないエネルギーが用いられ(すべての化学反応は同じ温度で行う)、かつ、凝縮性蒸気は重合する機会がないか、そうでなければ第二の品質を高める段階まで移行する間に劣化しない。
【0173】
<実施例7>
概して、先行技術の液体燃料生成物の組成物は、明確に特定されていない。文献には酸素含有量が減少したことが報告されているが、特定の分子の燃料組成物を開示していない。本明細書に記載されている様々な種類の実施形態を説明すると、固定層反応器中のZSM−5触媒は、ほぼ全てが芳香族化合物からなる流体を生成した。酸素は、水、COおよびCOの形態においてバイオマスから水を除去された。特に、燃料における定量化された芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、インダン、メチルインダン、ナフタレン、メチルナフタレン、およびジメチルナフタレンが挙げられる。このような芳香族化合物の混合物は、高オクタン価の燃料添加剤として使用され得る。ナフタレン(90オクタン)を除く全ての芳香族化合物は、100オクタンよりも大きい。以下の表5を参照。
【0174】
【表5】

【0175】
上記のように、高品質の芳香族化合物燃料/添加剤を、短い滞留時間において、1つの触媒反応器における触媒熱分解によって、固形バイオマス供給原料から直接製造し得る。反応化学、触媒および装置/反応器の設計の理解を通じて、種々のリグロセルロースバイオマス資源から流体のバイオ燃料を効率的に生成するために、触媒熱分解を用い得る。
【0176】
<実施例8>
また、触媒のアルミナに対するシリカのモル比を変えることによる影響を調べた。これらの実験の条件は以下の通りであった:原料に対する触媒の質量比、19;触媒、ZSM5;名目加熱速度、1000℃s−1;反応温度、600℃;反応時間(原料の滞留時間)、240秒。これらの実験のための炭化水素原料として、グルコースを用いた。図6A〜6Bは、アルミナに対するシリカのモル比の関数としての、グルコースの触媒熱分解における生成物選択性を示す。図6Aに示されるように、アルミナに対するシリカのモル比が30である触媒を使用することによって、アルミナに対するシリカのモル比が23、55または80である触媒を使用することと比較して、最も多い量の芳香族化合物が生成した。図6Bに示されるように、アルミナに対するシリカのモル比が異なる触媒を使用することによって、より高い収率の選択的な化合物を生成し得る。例えば、より高い収率のナフタレンを生成させるためには、約30または50のアルミナに対するシリカのモル比を利用し得る。
【0177】
<実施例9>
本実施例では、生成物の収率における、触媒への金属含浸の影響を説明する。金属を用いたZSM−5(アルミナに対するシリカのモル比が30、Zeolyst)の細孔の含浸は、COおよびCOの方に生成物の選択性をシフトさせるが、金属が反応化学に影響を与え得ることを示している。何か理論に束縛されるものではないが、金属は脱カルボニル化および/または脱カルボキシル化反応の速度を増加させ得る。以下の金属を試験した:Cu、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、GaおよびPt。表6は、pyroprobe−GCMSシステムにおいて、金属が組み込まれたZSM−5におけるグルコースの触媒熱分解について得られた結果を要約したものである。ZSM−5への金属添加のため、2つの異なる方法(ウェット含浸およびイオン交換)を採用した。イオン交換を用いて含浸した触媒は、ウェット含浸方法を用いて含浸した触媒と比較して、より高収率の芳香族化合物およびより低収率のコークスを生成した。
【0178】
【表6】

【0179】
また、触媒の孔径は、芳香族化合物の収率に影響を与えた。表7は、異なる骨格を有する種々のゼオライトにおいて、グルコースの触媒熱分解から得た炭素収率のデータを示している。何か理論に束縛されるものではないが、酸素を含有する中間体分子(例えば、5.9オングストロームの動的直径を有しているメチルフルフラール)をゼオライト骨格に拡散させることを可能にするに十分大きい孔径を有しているゼオライト触媒を使用することが望ましい。また、選択的に芳香族化合物を生成させるために、十分に小さい孔径(<6.3オングストローム)を有しているゼオライト触媒を用いることが望ましい。表7は、ZK−5が芳香族化合物を生成しなかった一方、Y−ゼオライトが主にコークスを生成したことを示している。ZSM−5の孔径(5.6Å)と最も近い孔径を有する触媒は、最も高い芳香族化合物の収率を生み出した。
【0180】
【表7】

【0181】
また、触媒における酸性点の密度および強度は、芳香族化合物の生成に影響を与えた。図11は、アルミナに対するシリカの異なるモル比(SiO/A1=23、30、50および80、Zeolyst)を有するZSM−5触媒を用いた、グルコースの熱分解による炭素収率のプロットである。ZSM−5(SiO/A1=30)は、1000℃/sの傾斜率、600℃において、最大収率の芳香族化合物を生成した。
【0182】
<実施例10>
また、触媒熱分解によって流体の芳香族化合物を製造するために、いくつかの実験における供給原料として、天然バイオマスを使用した。表8は、pyroprobe−GCMSシステムにおける、天然バイオマスの触媒熱分解の結果を略述するものである。ZSM−5(Si/Al=60 WR Grace)による木材、サトウキビ(ブラジルおよびハワイ)およびトウモウコシ茎葉の熱分解は、芳香族化合物、COおよびCOを生成した。これらの供給原料を用いて生成される芳香族化合物の収率は、グルコースおよびセルロースのものに匹敵した。このような結果は、触媒熱分解に天然バイオマス供給原料が用いられ得ることを示唆している。
【0183】
【表8】

【0184】
<実施例11>
本実施例では、固定層、流通反応器システムの使用について記載している。本実施例において、0.5インチの直径を有する石英管型反応器(約2インチの長さ)を用いた。反応器は、石英ウールおよび石英ビーズによって支持されている固定層を製作するために、50mgのZSM−5触媒(ZEOLYST、CBV 3024E、SiO/A1=30)を搭載していた。石英反応器は、恒温炉(炉:Lindberg,55035A;温度調節器:Omega,CN96211TR)において、600℃において行われた。反応器の温度を、石英の内管から、充填層の頂面まで挿入された熱伝温度計が観測した。
【0185】
本実施例における供給原料は、フラン(Sigma-Aldrich、99%)であった。稼動の間、ヘリウム(超高純度、Airgas)をキャリアガスとして使用し、流量を質量流量制御装置(制御装置:Brooks,SLA5850SIBABI−C2A1、操縦箱:Brooks,0154CFD2B31A)によって制御した。シリンジポンプ(KD Scientific,KDS 100)を用いて、液体の供給原料(フラン)をキャリアガスへ導入し、直ちに気化させた。気化した原料を反応器へ移送した。フランの分圧が5.7トルであるHe雰囲気下において、反応器の温度は600℃であった。
【0186】
生成物は、反応器から、ドライアイス−アセトン槽中に設置された凝縮器に流れ出る。凝縮器を、約−55℃の温度において維持し、比較的沸点が高い生成物を凝縮するために使用した。気体の生成物を、ガスサンプリング袋の中に収集した。液体の生成物および気体の生成物を、GC−FID(Shimadzu 2010)を用いて分析した。
【0187】
触媒の再生の間に、触媒上の炭素量を割り出した。再生の間に、銅用転炉を用いて、COをCOへ変換した。アスカライト(Sigma-Aldrich、5〜20メッシュ)を用いて、COを捕捉した。部分的に不活性化した触媒上の炭素量を、CO捕捉の重量変化を測定することによって計算した。
【0188】
図12に示されるように、オレフィン収率は、フランの正規化質量空間速度(hr−1)の影響を受けた。フランの質量流量(g/hr)を触媒の質量(g)で割って、フランの正規化質量空間速度を計算した。生成物における炭素のモルを反応器へ供給された炭素のモルで割って、炭素収率を計算した。生成したオレフィンの種類としては、エテンおよびプロペンが挙げられ、微量のブテンも検出された。0.35hr−1の空間速度において、オレフィンは検出されなかった。しかしながら、2.79hr−1空間速度において、オレフィンの収率は15%まで上昇した。対照的に、芳香族化合物(2番目に量が多い生成物であった)の収率は、空間速度が増加するにつれて(かつ、滞留時間が減少するにつれて)、減少した。
【0189】
図13は、固定層反応器およびpyroprobeにおける、フランの変換から得られた各芳香族生成物およびオレフィンの炭素収率を比較しているプロットを示している。固定層反応器についての反応条件は:反応温度、600℃;フランの分圧、5.7トル;および空間速度0.89hr−1であった。pyroprobeについての反応条件は:反応温度、600℃;原料に対する触媒の質量比、19;および反応時間、4分であった。固定層反応器およびpyroprobe反応器はどちらも、ZSM−5触媒を用いた。pyroprobeにおいて、オレフィンは相当な程度までは生成しなかった。しかしながら、pyroprobeの実験では、多量のナフタレンおよび比較的多量の芳香族化合物を得た。固定層反応器の実験では,わずかに多い量の価値のある生成物(芳香族化合物に加えてオレフィン)を得た。また、固定層反応器における、ベンゼンおよびトルエンの収率は、pyroprobeにおける収率よりも高かった。また、エチルベンゼンおよびトリメチルベンゼン(図13に示されていない)をpyroprobeの実験において検出したが、流通反応器の実験においては検知できる程度ではなかった。
【0190】
<実施例12>
本実施例において、固形バイオマスを炭化水素に変換するために、流動層を用いた。図14は、流動層システムの概略図を示している。流動層反応器は2インチの直径の316ステンレス鋼管を用いて構成されていた。チューブは長さ10インチであった。積層された316ステンレス鋼メッシュ(300メッシュ)製の分配プレート(distributor plate)が反応器内に取り付けられた。分配プレートは触媒層を支持する役割をしていた。反応器は90グラムのZSM−5触媒(Grace)を搭載していた。稼動前に、触媒を1200mL min−1の気流中、600℃において、反応器において4時間か焼した。
【0191】
質量流量制御装置によって制御されたヘリウムガス流を介した反応器の稼動中に、触媒を流動化した。SATPにおいて流動ガスの流速は1200mL min−1であった。木材である固形バイオマス供給原料を、ステンレス鋼オーガーを用いて、密閉された供給ホッパーから反応器の側面へ投入した。木材の供給速度は6g hr−1であり、正規化質量空間速度は0.07hr−1であった。反応器において不活性雰囲気を維持するために、ヘリウムを用いて、200mL min−1の速度においてホッパーを押し流した。反応器および流動ガスの両方を600℃の反応温度まで抵抗加熱した。
【0192】
稼動中に、生成ガスは反応器の頂点から排出され、450℃において稼動しているサイクロンを通過するが、サイクロンにおいて、混入した固体が除去されて回収された。次いで、蒸気は連続した凝縮器を通過した。最初の3つの凝縮器を氷槽中0℃において稼動させ、次の3つの凝縮器をドライアイス/アセトン槽中−55℃において稼動させた。連続した凝縮器から排出する非凝縮蒸気を、GC/MSおよびGC/FID分析のために、tedlarのガスサンプリング袋中に収集した。凝縮器中に収集される液体を、エタノールとの反応後に適量取り去り、GC/MSおよびGC/FIDを用いて分析した。
【0193】
流動層反応器システムにおける、ZSM−5触媒を用いた木材の熱分解による芳香族化合物の収率を図15に示している。図15中の定量化した生成物としては、ベンゼン(Ben.)、トルエン(Tol.)キシレン(Xyl.)、ナフタレン(Nap.)、エテン(Eth.)およびプロペン(Pro.)が挙げられる。ナフタレンの収率は比較的低く、主生成物は、ベンゼン、トルエンおよびキシレンであった。芳香族化合物に加えて、オレフィン(例えば、エテンおよびプロペン)が、流動層反応器における触媒熱分解の間に生成した。
【0194】
オレフィンおよび芳香族化合物に対する選択性を、バイオマスの正規化質量空間速度を変化させることによって調整した。2つの異なる空間速度を、流動層反応器において、600℃の反応器温度において実験した。30gおよび90gの投入触媒を、それぞれ高いバイオマス空間速度の反応および低いバイオマス空間速度の反応において用いた。乾燥した松材(80〜120メッシュ)原料は、30g hr−1(高いバイオマス空間速度の反応)および6g hr−1(低いバイオマス空間速度の反応)において供給した。流動ガスの温度は600℃であり、SATPにおける流動ガス流速は12mL min−1であった。サイクロンの温度は450℃であり、ZSM−5触媒を使用した。図16A〜16Bに示されるように、反応は、高い空間速度においてオレフィン生成物に対して選択的であり、一方、低い空間速度において芳香族化合物が有利である。定量化したオレフィン生成物としては、エテン、プロペン、ブタンおよびブタジエンが挙げられる。定量化した芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンおよびナフタレンが挙げられる。
【0195】
<実施例13>
本実施例は、炭化水素供給原料の触媒熱分解の間に形成される生成物の種類および量に対するオレフィンを供給することの影響を実験するために、固定層反応器を使用したことを記載している。固定層、流通反応器システムを、バイオマス変換のために構成した。キャリアガスの流速(以下に記載されている)を、質量流量制御装置(制御装置:Brooks,SLA5850SIBABI−C2A1、操縦箱:Brooks,0154CFD2B31A)を用いて制御した。シリンジポンプ(KD Scientific,KDS 100)を用いて液体供給原料をキャリアガスへ導入し、直ちに気化させた。次いで、蒸気供給原料を石英管反応器中へ運んだ。石英反応器は、恒温炉(炉:Lindberg,55035A、温度調節器:Omega,CN96211TR)中に保持されていた。反応器中の固定触媒層は、石英ウールおよび石英ビーズによって支持されていた。反応器の温度を、石英の内管から、充填層の頂面まで挿入された熱伝温度計を用いて観測した。反応器からの生成物を、重液生成物を凝縮するために氷水槽中に設置された凝縮器を通過させた。ガス生成物をガスサンプルリング袋に収集した。液体および気体の生成物を、HP7890およびShimadzu 2014の装置を用いた水素炎イオン化検出器(FID)を利用して、ガスクロマトグラフィー(GC)によって分析した。損失重量は炭素の除去が原因であると仮定し、コークスの収率を熱重量分析(TGA)(TA Instrument,SDT−Q600)を用いて決定した。
【0196】
いくつかの実験を、流通反応器におけるHe雰囲気下においてフラン(Sigma-Aldrich、99%)を反応させて行った。ZSM−5を触媒(ZEOLYST,CBV 3024E、SiO/A1=30)として使用した。エテン(別名エチレン)およびプロペン(別名プロピレン)をオレフィン源として使用し、実験する際には原料ガス中へ混ぜた。以下のキャリアガス組成物を試験した:100%ヘリウム、98%ヘリウム/2%エテン、99.8%ヘリウム/0.2%エテン、98%ヘリウム/2%プロペンおよび99.8%ヘリウム/0.2%プロペン。表9は、各実験の反応条件を略述するものである。各実験の間、反応温度は600℃に保たれ、フランの空間速度(WHSV)は10.5h−1であり、フランの分圧は6トルであり、キャリアガスの流速は200mL/minであった。
【0197】
【表9】

【0198】
図18は、石英管流通反応器において、ZSM−5触媒および表9に示されている反応条件を用いて、バイオマス由来の供給原料の触媒変換から得られる様々な生成物についての炭素収率(パーセントとして表されている)のプロットを示している。図E1中において、以下の略語を使用している:Eene=エテン、Pene=プロペン、Bene=ブテン、B=ベンゼン、T=トルエン、X=キシレン、C=コークス。図18に示されているように、芳香族化合物およびオレフィンが生成し、それらの炭素収率は供給原料組成物の影響を受けていた。生成物における炭素のモルを、フラン原料における炭素のモルで割ったものとして、炭素収率を定義した。エテンおよびプロペンの炭素収率(混合物をキャリアガスとして使用する場合において)は、高い値であるため、図18には示されていない。フラン変換を、表9において説明している。
【0199】
微量生成物(炭素収率への貢献が4%未満)としては、スチレン、ベンゾフラン、インデンおよびナフタレンが挙げられる。キャリアガスにおけるプロペン濃度の増加に伴って、反応は芳香族化合物および軽いオレフィンに対してより選択的であり、特にエテン、ブテン、トルエンおよびキシレンに対して選択的であった。反応2および3に関して、また、プロペンを使用した場合に観察されるほど効果が顕著ではなかったが、キャリアガスにエテンが含有している場合には、芳香族化合物および軽いオレフィン生成物の増加をもたらした。さらに、エテンまたはプロペンの同時供給はフランの変換を増加させ、生成されるコークスの量を減少させた。より高いフランの変換、より高い芳香族選択性およびより低いコークス収率に起因して、供給流におけるオレフィンの混合(例えば、再循環を介して)が、バイオマスの変換を含んでいる工程において、特定の生成物の収率および選択性を増加させることに有益であり得ることは明確である。
【0200】
<実施例14>
本実施例は、炭化水素供給原料の触媒熱分解の間に形成される生成物の種類および量に対するオレフィンを供給することの影響を実験するために、流動層反応器を使用したことを記載している。流動層反応器の構成が図19に例示されている。流動層反応器は、2インチの直径、10インチの高さ、316ステンレス鋼管を備えていた。固形バイオマス供給原料を、ステンレス鋼オーガーを用いて、密閉されたバイオマスホッパーから反応器の側面へ投入した。反応器において不活性雰囲気を維持するために、ヘリウムを用いて、200mL min−1の速度においてホッパーを押し流した。積層された316ステンレス鋼メッシュ(300メッシュ)製の分配プレートによって、触媒層は支持されていた。反応の間、質量流量制御装置によって制御されるヘリウムガス流によって、触媒を流動化した。反応器および不活性ガス流の両方を、反応温度まで抵抗加熱した。
【0201】
稼動の間、生成ガスは反応器の頂点から排出され、サイクロンを通過するが、サイクロンにおいて、混入した固体が除去されて回収された。次いで、蒸気は連続した凝縮器を通過した。最初の3つの凝縮器を氷槽中0℃において稼動させ、次の3つの凝縮器をドライアイス/アセトン槽中−55℃において稼動させた。連続した凝縮器から排出する非凝縮気体を、クロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)およびGC/FID分析のため、Tedlar(登録商標)ガスサンプリング袋中に収集した。凝縮器中に収集される液体を、エタノールとの反応後に適量取り去り、GC/MSおよびGC/FIDを用いて分析した。反応前に、ZSM−5触媒(Grace)を1200mL min−1の気流中、600℃において、反応器において4時間か焼した。
【0202】
オレフィン同時供給実験に関して、二次ガス(図19中のT2)をエチレンまたはプロピレンのどちらかに切り替え、望ましい流速において制御する。ヘリウム流動気体の流速を、全不活性ガス流量が常に1200mLにおいて維持されるように調整した。
【0203】
反応後、触媒を再生するために、二次ガスを空気に切り替えた。再生の間の燃焼排出物は、一酸化炭素を二酸化炭素に変換するために、150℃に保たれた銅触媒上を通過した。次いで、二酸化炭素流は、蒸気を除去するためにドライライト捕捉上を通過した。乾燥した二酸化炭素を、予め重さを量っておいたアスカライトトラップによって収集した。そのトラップ中に収集された二酸化炭素の総モルを、触媒層上のコークスにおける炭素のモルと略等しいと仮定した。
【0204】
オレフィン同時供給実験を、表10に略述されている反応パラメータを用いて行った。全ての反応パラメータは、不活性流動ガスにおけるオレフィンの濃度を除いて一定に保たれた。表10に示されるように、反応器から排出するオレフィンのモルは、プロピレンの場合において、供給量の約半分であった。このことは、反応の間にプロピレンが消費されたことを示していた。エチレンを同時供給物として用いた場合には、反応の間にエチレンが純生産されたが、それは、エチレンが安定な生成物であり、反応性に乏しいことを示唆するものであった。
【0205】
【表10】

【0206】
図20A〜20Bは、A)プロピレンの同時供給、およびB)エチレンの同時供給を伴う木材の触媒熱分解(CP)についての生成物の収率のプロットを示している。定量化した芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、インデン、フェノールおよびナフタレンが挙げられる。定量化したオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテンおよびブタジエンが挙げられる。所定の生成物における炭素量を、原料(木材およびオレフィン)における炭素の全量で割って、炭素収率を計算した。図20Aに示されるように、プロピレンを同時供給物として使用した場合には、芳香族化合物の収率はわずかに増加し、一方、コークスの収率は30%から25%まで大きく減少した。また、二酸化炭素および一酸化炭素の収率は、より高いプロピレン原料の濃度において減少した。エチレンの同時供給に関しては、原料濃度の増加につれて、芳香族化合物の収率が減少した(図20B)。また、エチレン濃度の増加につれて、コークスの収率は減少したが、観察されたこの変化は、プロピレンの同時供給の場合ほど顕著なものではなかった。
【0207】
図21A〜21Bは、A)プロピレンの同時供給、およびB)エチレンの同時供給を伴う木材の触媒熱分解についての生成物選択性のプロットを示している。図21A〜21Bに示されているように、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびナフタレンに対する選択性は、オレフィンの同時供給によって変化した。プロピレンは、ベンゼンおよびキシレンに対する選択性においてほとんど影響を及ぼさなかった。しかしながら、プロピレンは、トルエンおよびナフタレンに対する選択性において影響を及ぼした。トルエンに対する選択性は36%から40%まで増加し、一方では、ナフタレンに対する選択性は17%から13%まで減少した。エチレンは、反対の傾向を示し、それはベンゼンおよびキシレンに対する選択性に影響を及ぼし、トルエンまたはナフタレンにおいては大きな影響を及ぼさなかった。ベンゼンに対する選択性は30%から35%まで増加し、一方では、キシレンに対する選択性は17%から12%まで減少した。
【0208】
<実施例15>
本実施例は、炭水化物原料の熱分解の間に製造される化合物の種類および量における、触媒物質内の粒子(すなわち、触媒粒子凝集体の形態における)の大きさを変化させることの影響を略述するものである。モデル2000 pyroprobe分析用熱分解装置(CDS Analytical Inc.)を用いて、触媒熱分解実験を行った。プローブは、開口型石英管を支える、コンピュータ制御された抵抗過熱素子であった。緩んだ石英ウール充填材を用いて、粉末状のサンプルを管の中に保持した。熱分解の間、蒸気は、ヘリウムキャリアガス流と共に、石英管の開口端からより大きな空洞(熱分解界面)内へと流れた。キャリアガス流を、Hewlett Packard モデル5972A質量分析計と繋いだモデル5890ガスクロマトグラフへと送った。熱分解界面は100℃に保たれており、用いたGC注入器の温度は275℃に保たれていた。GCMSシステム用のキャリアガスと同様に、ヘリウムを不活性熱分解ガスとして用いた。0.5ml min−1の一定流量であるプログラムを、GCキャピラリーカラム(Restek Rtx−5sil MS)のために用いた。GCオーブンを以下の温度範囲によってプログラム化した:50℃において1分間保持、10℃min−1において270℃まで上昇、270℃において15分間保持。GC/MSシステムへ校正標準を導入することによって、生成物を定量化した。全ての収率をモル炭素収率(生成物における炭素のモルを、原料における炭素のモルで割って計算した)に換算して報告した。報告された芳香族選択性は、芳香族種における炭素のモルを、芳香族種の炭素の全モルで割ったものと定義された。
【0209】
D−グルコース(Fisher)原料と触媒とを物理的に混合することによって、粉末状の反応物を調製した。典型的な反応として、約8〜15mgの反応物−触媒混合物を用いた。原料および触媒の両方を、混合前に<140メッシュまでふるい分けした。グルコースに対するZSM−5の比が19となるように、グルコースの物理的混合物を調製した。反応前に、ZSM−5を空気中、500℃において5時間か焼した。全ての実験において、1000℃/sの加熱速度および600℃の反応温度を用いた。
【0210】
触媒活性における孔径の影響を調査するために、3つの異なる孔径を有するZSM−5を調製した。第一のZSM−5触媒サンプル(AG101と称する)を、以下のように調製した。0.93gのNaOHを9mLの脱イオン水に溶解させ、そして12gのLudox AS-40をその溶液に添加し攪拌して、合成混合物を形成させた。ゲルが形成され、攪拌を15分間続けた。0.233gのNaAlOを2mLの脱イオン水に溶解させた。NaAlO溶液を合成混合物に添加し、10分間攪拌した。次に、8.0gのTPAOH溶液(40%)を合成混合物に滴下して添加し、攪拌を1時間継続した。合成混合物の最終pHを測定すると、約13であった。次いで、合成混合物をテフロン(登録商標)加工されたオートクレーブ(Teflon lined autoclave)(内容積45mL)に移した。静的条件において、自己圧力下、170℃において、72時間、水熱合成を行った。オートクレーブの内容物を遠心し、5回洗浄(毎回、50mLの脱イオン水を用いて)し、100℃において一晩乾燥させた。結果物を、空気中、300℃において3時間か焼し、続いて、1℃/minの温度上昇を伴って、550℃において6時間か焼した。図26Aは、AG101触媒物質についてのPXRDパターンを示している。
【0211】
第二のZSM−5触媒サンプル(AG102と称する)を製造するための工程は、TPAOH溶液の滴下による添加の後に1.8mLの脱イオン水における1.8gの酢酸溶液を加えることを除いて、AG101を製造する工程と同様であった。10分間の攪拌後に、合成混合物の最終pHを測定すると、約10であった。次いで、合成混合物をテフロン(登録商標)加工されたオートクレーブに移し、AG101と同様の方法において加工した。図26Bは、AG102触媒物質についてのPXRDパターンを示している。
【0212】
第三のZSM−5触媒サンプル(AG103と称する)を製造するための工程は、水熱合成を、自己圧力下、170℃において168時間行ったこと(AG101およびAG102触媒についての72時間とは対照的である)を除いて、AG102を製造する工程(すなわち、最終pHが約10とするための酢酸溶液の滴下による添加を含んでいる)と同様であった。図26Cは、AG103触媒物質についてのPXRDパターンを示している。
【0213】
触媒の化学組成を、X線蛍光(XRF)を用いて決定した。表11に示されるように、3つの全ての触媒は、SiとAlとの比が約30:1であった(約60:1のシリカとアルミナとの比に相当する)。孔径を、ImageJソフトウエアと組合せた走査電子顕微鏡(SEM、JEOL X-Vision 6320FXV FESEM)を用いて決定した。各SEM画像において、約10〜20の粒子を、平均粒径を計算するために選択した。図22A〜22Fに示されるように、3つの全ての触媒は、異なる粒径を有していた。図22A〜22Bは、AG101触媒のSEM画像を示し、図22C〜22Dは、AG102触媒のSEM画像を示し、図22E〜22Fは、AG103触媒のSEM画像を示している。AG101触媒は約1ミクロンの粒径を含んでおり、AG102触媒は約10ミクロンの粒径を含んでおり、AG103触媒は約20ミクロンの粒径を含んでいた。図23Aは、グルコースの触媒熱分解についての粒径の関数として、芳香族化合物、COおよびCOの炭素収率のプロットを示している。図23Bは、グルコースの熱分解についての粒径の関数として、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンおよび「その他」(エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、インダンおよびインデンが挙げられる)を包含する種々の芳香族化合物の芳香族選択性を略述するものである。概して、芳香族化合物の収率は粒径が減少するにつれて増加した。例えば、AG101を用いた触媒熱分解は、35.2%の芳香族化合物を生成し、一方、AG103を使用することによって、31.9%の芳香族化合物を生成した。
【0214】
さらに、WR GraceおよびZeolystから入手した2つの市販のZSM−5触媒を試験した。市販の触媒は同じ化学組成を有していた(Si/Al=15)が、異なる粒径を有していた。図24A〜24Bは、WR Grace ZSM−5触媒のSEM画像を示しており、当該触媒は、約6ミクロンの粒径を示している。図24C〜24Dは、Zeolyst ZSM−5触媒のSEM画像を示しており、当該触媒は、1ミクロン未満から最大で3ミクロンまでの広範囲の粒径を示している。図25は、Zeolyst ZSM−5およびWR Grace ZSM−5(参照として、AG101 ZSM−5触媒の結果を示している)を用いたグルコースの触媒熱分解についての種々の生成物の炭素収率のプロットを示している。既に述べたように、これらの実験では、原料に対する触媒の比を19、加熱速度を1000℃/s、反応温度を600℃とした。図25から、Zeolyst ZSM−5が、WR Grace ZSM−5よりも約10%多く芳香族化合物を生成したことが明確である。
【0215】
【表11】

【0216】
<実施例16>
本実施例は、炭水化物の供給原料の触媒熱分解の間に形成される生成物の種類および量におけるオレフィン供給の影響を略述する理論計算の説明を示す。オレフィンを反応器へ再循環させることの可能性は、図27において説明されているモデルシステムにおける単純な物質収支を用いて評価され得る。図27に説明されている一連の実施形態において、木材(ストリーム1における標示されたバイオマス)を、オレフィン、COおよびCOを含んでいる再循環流(ストリーム3)と混合する。混合物を、流動層反応器の中へ供給する。反応器の内部において、木材(無水ベース)は、反応式(4)および(5)によって、それぞれ芳香族化合物およびオレフィンを形成するように反応し得る。
【0217】
【数5】

【0218】
【数6】

【0219】
反応器中のオレフィンを、反応式(6)によって、さらなる芳香族化合物に変換し得る。
【0220】
【数7】

【0221】
この例示的な計算について、芳香族化合物またはオレフィンに変換されないバイオマスの収支は、コークスおよび気体に変換されると仮定した。図27に説明されている一連の実施形態において、使用済みのコークス付きの触媒は、次いで再生器に移送され、二次再生反応器においてコークスを燃焼することによって再生する。大抵、反応器および再生器の温度を制御するために、触媒再循環を調整し得る。本実施例に関して、コークスの収率は比較的高く、また再生器における高温を避けるために再生器からの熱除去が不可欠であると仮定した。過剰な熱は、本工程におけるどこかに利用し得る。本実施例において、反応器からの生成物流(ストリーム3)を、凝縮可能な芳香族生成物(ストリーム4)、水および水溶性化合物、ならびに凝縮できないオレフィンおよび気体に分離している。分離システムは、再循環可能な気体から凝縮可能な化合物を除去する凝縮システムを含み得る。液化生成物は、水、芳香族化合物および水溶性化合物の混合物を含み得る。芳香族生成物は、静かに注がれ、さらに精製され得る。水および水溶性生成物は、廃水処理され得る。次いで、再循環(ストリーム6)におけるオレフィンのモルをパージ流(ストリーム5)におけるオレフィンのモルで割ったものとして定義されるモル再循環率を伴って、オレフィンを分離システムから反応器へ再循環する。COおよびCOを除去するために、かつ/もしくは、そのシステムにおける他の任意の非反応種の蓄積を防止するために、パージシステムは用いられ得る。
【0222】
図28は、再循環率の関数としての芳香族化合物の収率の例示的なプロットを示している。実線は、0.1、0.2、0.3、0.4および0.5であるオレフィンの反応進行度(上記の反応式(6)に従っている)を表している。したがって、図28は、芳香族化合物の収率における、オレフィン変換および再循環率の調整の効果を説明している。流動層反応器におけるオレフィン同時供給なしにおけるオレフィンおよび芳香族化合物の実験から得た収率に適合させるために、反応式(4)および(5)についての反応進行度を、両方とも0.17に固定した。図28に示されているように、反応式(6)について、再循環率の増加および反応進行度の増加と共に、芳香族化合物の収率が増加する。再循環流のオレフィンにおける炭素の質量に対する、原料に含まれる炭化水素原料中の炭素の質量として、再循環率を定義する。2:1を超えた(または3:1を超えた、もしくは4:1を超えた)再循環率を利用すること、および反応式(6)についての高い反応進行度を有することによって、当該システムに関して、芳香族化合物の収率における2倍の増加を生み出せた。流動層反応器を用いるいくつかの場合において、20:1未満、10:1未満、または5:1未満の再循環率を利用することが有利であり得、当該再循環率は優れた流動層を保つのに有用であり得る。
【0223】
<実施例17>
本実施例は、流通固定層反応器におけるフランの高速熱分解における、ガリウムを備えた合成ゼオライト触媒(GaAlMFI)の使用を説明している。
【0224】
H−GaAlMFIを、"H-Gallosilicate (MFI) Propane Aromatization Catalyst: Influence of Si/Ga Ratio on Acidity, Activity and Deactivation Due to Coking," J. Catal. 158 (1996) pages 34-50において、Choudharyらによって記載されている方法を用いて合成した。H−GaAlMFI前駆溶液を、N−ブランドのケイ酸塩(SiO/NaO=3.22、PQ Corp.)、Ga−硝酸塩(Sigma-Aldrich)、Al−硝酸塩(BDH)、臭化テトラプロピルアンモニウム(TPA−Br、Aldrich)、脱イオン水、および硫酸(pHを調整するために用いられる)を用いて調製した。酸化物のモル比における最終反応混合物の組成は、2.5Al:0.8Ga:100SiO:12.5TPA−Br:5020HOであった。混合物におけるSi/(Al+Ga)、Si/GaおよびSi/Alの比は、それぞれ15、60および20であった。反応混合物を、オートクレーブ中において、自己圧力下、180℃において72時間かけて結晶化した。合成後に、ゼオライトサンプルを水によって洗浄し、80℃において乾燥させた。次いで、吸蔵された有機分子を除去するために、空気中、550℃において6時間、サンプルをか焼した。ゼオライトサンプルを70℃において0.1M NHNO中で4時間処理することによって、H型にイオン交換し、続いて濾過し、80℃において一晩乾燥させ、空気下、550℃においてか焼した。
【0225】
GaAlMFI型触媒を、SiO、AlおよびGaの混合物を含んでいるMFI構造を有するように合成した。この触媒は、アルミニウム部位の配置においてMFI構造へガリウム原子を加えた従来のZSM−5触媒と類似していた。この種の置換を、しばしば同形置換(例えば、この場合において、AlのGaへの同形置換)と呼ぶ。
【0226】
何か理論に束縛されるものではないが、GaおよびAlはどちらも、ブレンステッド酸性点を生み出すが、当該酸性点は、触媒において負の電荷を相殺し得ると考えられている。GaおよびAlのブレンステッド酸性点は、異なる酸強度を有しており、それゆえ、酸性点の性質は類似しているが、酸性点の強度は異なっていると考えられる。酸性点のタイプのこの混合は、酸性点の混合を含んでいない触媒と比較して、触媒活性における相対的な増加を引き起こし得る。
【0227】
本実施例の目的に関して、Gaがゼオライト骨格の内側にあるか否かを確かめるために、触媒を分析することはなかった。組み込み構造として骨格内にGa種が優先的に位置していることが予期されるが、Gaのいくつかは酸化ガリウムの形態として骨格外に位置し得る。そのような場合において、骨格外のGaは同様に反応を促進し得るが、それは酸性点ほどではない。
【0228】
流通固定層反応器システムを、バイオマス変換のために構成した。反応の間に、ヘリウム(Airgas CO.)をキャリアガスとして使用し、質量流量制御装置(制御装置:Brooks,SLA5850SIBABI−C2A1、操縦箱:Brooks,0154CFD2B31A)によって流速を制御した。シリンジポンプ(KD Scientific,KDS 100)を用いて液体供給原料をキャリアガスへ導入し、当該液体供給原料を直ちに気化させた。次いで、気化した供給原料を石英管反応器に運んだ。石英反応器は、恒温炉(炉:Lindberg,55035A、温度調節器:Omega,CN96211TR)中に保持されていた。反応器中の固定触媒層は、石英ウールおよび石英ビーズによって支持されていた。反応器の温度を、石英の内管から、充填層の頂面まで挿入された熱伝温度計を用いて観測した。反応器からの生成物を、重液生成物を凝縮するために氷水槽中に設置された凝縮器を通過させた(<0.05%の炭素収率)。ガス生成物をガスサンプルリング袋に収集した。液体および気体の生成物を、GC−FID(Shimadzu 2014)によって分析した。反応後、使用済み触媒を、空気中、600℃において加熱することによって再生した。再生の間に、流出物を銅転炉(CuO、Sigma Aldrich)を通過させ、続いてCO捕捉(Ascarite、Sigma Aldrich)を行った。COを、銅転炉においてCOまで酸化した。COをCO捕捉によって捕捉した。CO捕捉の重量における変化を測定することによって、コークス収率を得た。
【0229】
流通反応器中において、ヘリウム雰囲気下においてフラン(Sigma-Aldrich、99%)を反応させるために、ZSM−5(ZEOLYST、CBV 3024E、SiO/A1=30)およびGaAlMFIゼオライト触媒を用いた。反応条件は以下の通りであった:フランの分圧6トル、毎時重量空間速度(WHSV)10.4h−1、および温度600℃。表12は、主生成物の炭素収率および炭素選択性を要約したものであるが、それは90%以上の炭素収率を与えた。表13は、各芳香族生成物の炭素選択性を芳香族化合物に沿って示している。所定の生成物の種類における炭素のモルを、反応器へ供給された炭素のモルで割ったものとして、炭素収率を定義した。生成物における炭素のモルを、全ての生成物における炭素のモルの合計で割ったものとして、炭素選択性を定義した。
【0230】
表12に示されるように、触媒の選択が、生成される芳香族化合物の種類およびそれらの炭素選択性に影響を及ぼした。芳香族化合物の炭素収率は、ZSM−5についての11.84%からGaAlMFIについての18.15%まで増加した。芳香族化合物の炭素選択性は、ZSM−5についての30.30%からGaAlMFIについての39.11%まで増加した。さらに、フラン変換は、ZSM−5についての0.48からGaAlMFIについての0.54まで増加した。オレフィンの炭素収率は著しく変化することはなかったが、生成された芳香族化合物の量が増加したため、炭素選択性は減少した。また、コークスの収率は、触媒としてGaAlMFIを使用した場合に減少した。
【0231】
【表12】

【0232】
様々な種類の芳香族化合物に対する選択性は多様であった。表13に示されるように、ベンゼンに対する選択性は、ZSM−5を触媒として使用した場合の29%からGaAlMFIを触媒として使用した場合の40%まで増加した。芳香族化合物の間における選択性は、29%から41%まで増加した。
【0233】
【表13】

【0234】
本発明に係るいくつかの実施形態が、本明細書に記載および説明されているが、当業者は、本明細書に記載されている機能を実行するために、ならびに/または、結果および/もしくは1または2以上の利益を得るために、様々な他の手段および/または構成を容易に想定し得、かつ、そのような変形および/または変更の各々が、本発明の範囲内であると見なされる。より概していうと、当業者は、本明細書に記載されている全てのパラメータ、寸法、材料および構成は例示的であることが意図されること、および、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は、本発明の教示が用いられる具体的な応用(application or applications)によって決定され得ることを直ちに理解し得る。当業者は、本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態と同等である多くのものを、単なる普通の実験手法を用いて認識し得、また確認し得る。したがって、上記の実施形態は実施例のみによって提示されこと、および添付した特許請求の範囲およびそれの均等の範囲内において、本発明は、具体的に記載され、特許請求の範囲に記載された方法と別の方法で実施され得ることが理解されるはずである。本発明は、本明細書に記載されている個々の特徴、システム、文献、材料、道具および/または方法をそれぞれ対象としている。さらに、上記の特徴、システム、文献、材料、キットおよび/または方法が互いに矛盾しない場合、それらのうちの2以上の任意の組合せが、本発明の範囲内に含まれる。
【0235】
本明細書ならびに特許請求の範囲に使用されるとき、不定冠詞「a」および「an」は、明確に別の意味を指し示していない限り、「少なくとも1つの」を意味することが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1】一組の実施形態に係る、触媒熱分解工程の概略図を示す図である。
【図2A】一組の実施形態に係る、バイオマス由来の様々な供給原料(芳香族化合物:横線、CO:白色、CO:斜線、コークス:黒色、および不明:灰色)における炭素収率のプロットを示す図である。
【図2B】一組の実施形態に係る、ベンゼン(Ben.)、トルエン(Tol.)、エチルベンゼンおよびキシレン(E−Ben、Xyl.)、メチルエチルベンゼンおよびトリメチルベンゼン(m,e−Ben.、tmBen.)、インダン(Ind.)ならびにナフタレン(Nap.)の供給物における芳香族選択性のプロットを示す図である。
【図3】一組の実施形態に係る、ZSM5を用いたグルコースの触媒熱分解に対する名目加熱速度の関数としての、CO(黒四角)、芳香族化合物(黒三角)、CO(白三角)およびコークス(黒丸)の炭素収率のプロットを示す図である。
【図4A】一組の実施形態に係る、触媒とグルコースとの質量比の関数としての、CO(黒四角)、芳香族化合物(黒三角)、CO(白三角)、部分的に脱酸素化した種(白四角)およびコークス(黒丸)の炭素収率のプロットを示す図である。
【図4B】一組の実施形態に係る、部分的に脱酸素化した化学種であるヒドロキシアセチルアルデヒド(H.A.)、酢酸(A.A.)、フラン(Fur.)、フルフラール(Furf)、メチルフラン(M−Fur)、4−メチルフルフラール(4−M−Furf)、およびフラン−2−メタノール(Fur−2−MeoH)の分布のプロットを示す図である。
【図5】一組の実施形態に係る、様々な触媒を用いてグルコースの触媒熱分解を行った後の炭素収率のプロットを示す図である。
【図6A】一組の実施形態に係る、触媒におけるアルミナに対するシリカの様々なモル比における炭素収率のプロットを示す図である。
【図6B】一組の実施形態に係る、触媒におけるアルミナに対するシリカの様々なモル比における、ベンゼン(Ben.)、トルエン(Tol.)、エチルベンゼンおよびキシレン(E−Ben.、Xyl.)、メチルエチルベンゼンおよびトリメチルベンゼン(m,e−Ben、tmBen.)、インダン(Ind.)ならびにナフタレン(Nap.)の供給物の芳香族選択性のプロットを示す図である。
【図7】一組の実施形態に係る、2つの反応器の触媒熱分解工程の概略図を示す図である。
【図8A】一実施形態に係る、様々な炭化水素の供給原料における炭素収率のプロットを示す図である。
【図8B】一実施形態に係る、様々な炭化水素原材料における、ベンゼン(Ben.)、トルエン(Tol.)、エチルベンゼンおよびキシレン(E−Ben.、Xyl.)、メチルエチルベンゼンおよびトリメチルベンゼン(m,e−Ben、tmBen.)、インダン(Ind.)ならびにナフタレン(Nap.)の供給物における芳香族選択性のプロットを示す図である。
【図9】一組の実施形態に係る、理論収率の関数としての、単位質量あたりの芳香族化合物の生産量およびエネルギー量のプロットを示す図である。
【図10】一組の実施形態に係る、ZSM5を用いたグルコースの触媒熱分解における反応器温度の関数としての、CO(黒四角)、芳香族化合物(黒三角)、CO(白三角)、およびコークス(黒丸)の炭素収率のプロットを示す図である。
【図11】一組の実施形態に係る、ZSM−5を用いたグルコースの触媒熱分解におけるアルミナに対するシリカのモル比の関数としての、CO(黒四角)、芳香族化合物(黒三角)、およびCO(白三角)の炭素収率のプロットを示す図である。
【図12】一組の実施形態に関して、空間速度の関数としての、オレフィンおよび芳香族化合物の炭素収率を略述するグラフを示す図である。
【図13】一組の実施形態に係る、様々な化合物の炭素収率を説明するグラフを示す図である。
【図14】流動層反応器を用いる一組の実施形態の概略図を示す図である。
【図15】一組の実施形態に関して、芳香族化合物およびオレフィンの生成物収率を略述するプロットを示す図である。
【図16A】一実施形態に係る、空間速度の関数としての、オレフィンおよび芳香族化合物の収率のグラフを示す図である。
【図16B】一実施形態に係る、空間速度の関数としての、オレフィンおよび芳香族化合物の選択性のグラフを示す図である。
【図17】一組の実施形態に係る、ゼオライト触媒の例示的なNorman半径調整孔径の表を示す図である。
【図18】一組の実施形態に係る、複数の実験的運転についての、様々な反応生成物の炭素収率のグラフを示す図である。
【図19】反応器系の構成の例示的な概略図を示す図である。
【図20A】一組の実施形態に係る、様々な反応生成物および反応供給物組成物における炭素収率のプロットを示す図である。
【図20B】一組の実施形態に係る、様々な反応生成物および反応供給物組成物における炭素収率のプロットを示す図である。
【図21A】一組の実施形態に係る、様々な反応生成物および反応供給物組成物における、炭素収率のプロットを示す図である。
【図21B】一組の実施形態に係る、様々な反応生成物および反応供給物組成物における、芳香族選択性のプロットを示す図である。
【図22A】触媒の例示的なSEM画像を示す図である。
【図22B】触媒の例示的なSEM画像を示す図である。
【図22C】触媒の例示的なSEM画像を示す図である。
【図22D】触媒の例示的なSEM画像を示す図である。
【図22E】触媒の例示的なSEM画像を示す図である。
【図22F】触媒の例示的なSEM画像を示す図である。
【図23A】一組の実施形態に係る、孔径の関数としての、様々な反応生成物における、炭素収率のプロットを示す図である。
【図23B】一組の実施形態に係る、孔径の関数としての、様々な反応生成物における、芳香族選択性のプロットを示す図である。
【図24A】触媒の例示的なSEM画像を示す図である。
【図24B】触媒の例示的なSEM画像を示す図である。
【図24C】触媒の例示的なSEM画像を示す図である。
【図24D】触媒の例示的なSEM画像を示す図である。
【図25】一組の実施形態に係る、いくつかの触媒における様々な反応生成物の炭素収率を示す図である。
【図26A】一組の実施形態に係る、様々なZSM−5触媒における粉末X線回折(PXRD)のパターンを示す図である。
【図26B】一組の実施形態に係る、様々なZSM−5触媒における粉末X線回折(PXRD)のパターンを示す図である。
【図26C】一組の実施形態に係る、様々なZSM−5触媒における粉末X線回折(PXRD)のパターンを示す図である。
【図27】一組の実施形態に係る、触媒熱分解工程の例示的な概略図を示す図である。
【図28】いくつかの実施形態に係る、再循環比の関数としての、芳香族化合物の収率の例示的なプロット示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素原料から1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造する方法であって:
炭化水素原料を反応器へ供給すること;
上記反応器内において、1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、上記炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解すること;
上記反応器内において、オレフィンおよび芳香族化合物を含んでいる1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造するのに十分な反応条件下で、上記1または2以上の熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させること;
上記流体の炭化水素生成物中のオレフィンの少なくとも一部を分離することによって、少なくとも分離したオレフィンを含んでいる再循環流、および生成物流を生成させること;および
上記再循環流の少なくとも一部を上記反応器へ供給することを含んでいる、方法。
【請求項2】
固体の炭化水素原料から1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造する方法であって:
固体の炭化水素原料を反応器へ供給すること;
上記反応器内において、1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、上記固体の炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解すること;
オレフィンおよび芳香族化合物を含んでいる1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造するのに十分な反応条件下で、上記1または2以上の熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させること;
上記1または2以上の流体の炭化水素生成物中のオレフィンの少なくとも一部を分離することによって、少なくとも分離したオレフィンを含んでいる再循環流、および生成物流を生成させること;および
上記再循環流の少なくとも一部を上記反応器へ供給することを含んでいる、方法。
【請求項3】
炭化水素原料から1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造する方法であって:
炭化水素原料と約1ミクロン未満の最大断面寸法を有している複数の粒子を含んでいる1または2以上の触媒とを供給すること;
1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、上記炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解すること;および
1または2以上の炭化水素生成物を製造するために、上記触媒を用いて上記熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させることを含んでいる、方法。
【請求項4】
炭化水素原料から1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造する方法であって:
炭化水素原料とガリウムを含んでいるゼオライト触媒とを供給すること;
1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、上記炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解すること;および
1または2以上の炭化水素生成物を製造するために、上記触媒を用いて上記熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させることを含んでいる、方法。
【請求項5】
触媒反応が複数の触媒粒子を介して触媒され、かつ触媒の全体積の合計の少なくとも約50%が約1ミクロン未満の最大断面寸法を有している粒子によって占められている、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記炭化水素原料内の炭素の質量と、上記再循環流中のオレフィンにおける炭素の質量との比が、約2:1〜約20:1である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
上記炭化水素原料内の炭素の質量と、上記再循環流中のオレフィンにおける炭素の質量との比が、約3:1〜約10:1である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
上記炭化水素原料内の炭素の質量と、上記再循環流中のオレフィンにおける炭素の質量との比が、約4:1〜約5:1である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
上記炭化水素原料は流動層反応器へ供給される、請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記炭化水素原料は、循環式流動層反応器または乱流式流動層反応器へ供給される、請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記炭化水素原料は、約0.01hr−1〜約10hr−1の正規化質量空間速度において反応器へ供給される、請求項1、2、9または10に記載の方法。
【請求項12】
異なる流体の炭化水素生成物を選択的に製造するために、上記炭化水素原料の正規化質量空間速度を変えることをさらに含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記流体の炭化水素生成物は、オレフィン化合物よりも多量の芳香族化合物を含んでいる、請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
上記炭化水素原料は固体を含んでいる、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
上記炭化水素原料がバイオマス原料を含んでいる、請求項1〜14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
上記炭化水素原料は、廃棄プラスチック、再利用プラスチック、農業および都市固形廃棄物、食品廃棄物、動物の排泄物、炭水化物、リグノセルロース材料、またはそれらの組合せを含んでいる、請求項1〜15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
上記炭化水素原料は、キシリトール、グルコース、セロビオース、ヘミセルロース、リグニン、またはそれらの組合せを含んでいる、請求項1〜16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
上記炭化水素原料は、サトウキビのバガス、グルコース、木材、トウモロコシ茎葉、またはそれらの組合せを含んでいる、請求項1〜17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも約1秒の固体分離器滞留時間および約500℃より高い固体分離器温度において、上記触媒および1または2以上の炭化水素生成物を、固体分離器に通すことによって、当該1または2以上の炭化水素生成物を当該触媒から分離することをさらに含んでいる、請求項3〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
流動化流体を上記流動層反応器に導入することをさらに含み、当該流動化流体は当該反応器において少なくとも約1秒の平均流動化流体滞留時間を有している、請求項9または10に記載の方法。
【請求項21】
熱分解する工程が約500℃〜約1000℃の温度において起こる、請求項1〜20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
触媒反応工程が約500℃〜約1000℃の温度において起こる、請求項1〜21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
熱分解する工程および触媒反応工程が同一の反応器において起こる、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
熱分解する工程および触媒反応工程が別々の反応器において起こる、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
上記触媒は、1または2以上の、ゼオライト触媒、非ゼオライト触媒、金属触媒および/または金属酸化物触媒を含んでいる、請求項3〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
上記触媒はゼオライト触媒を含んでいる、請求項3〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
上記触媒はZSM−5を含んでいる、請求項3〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
上記触媒は、約30:1〜約150:1のシリカとアルミナとの比を含んでいる、請求項3〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
上記流体の炭化水素生成物は、上記熱分解生成物の形成において用いられた上記炭化水素原料の全量の少なくとも15重量%である量の芳香族化合物を含んでおり、当該量は、上記流体の炭化水素生成物中に存在する芳香族化合物の重量を、上記熱分解生成物の形成において用いられた上記炭化水素原料の重量で割って計算されている、請求項1〜28の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
熱分解する工程が起こる反応器が少なくとも約1リットルの容積を有している、請求項1〜29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
触媒反応が起こる反応器が少なくとも約1リットルの容積を有している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項32】
1または2以上の供給流における触媒と上記炭化水素原料との質量比が約0.5:1〜約20:1となるように、当該炭化水素原料および当該触媒が上記反応器に当該1または2以上の供給流中から供給される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項33】
上記ゼオライト触媒は約5Å〜約100Åの孔径を有している細孔を含んでいる、請求項25〜28の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
上記ゼオライト触媒は約5.9Å〜約6.3Åの孔径を有している細孔を含んでいる、請求項25〜28および33の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
上記ゼオライト触媒は約7Å〜約8Åの孔径を有している細孔を含んでいる、請求項25〜28、33および34の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
上記ゼオライト触媒は孔径の双峰分布を有している、請求項25〜28、33、34および35の何れか1項に記載の方法。
【請求項37】
上記触媒は複数の細孔を含んでおり;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約95%が、第一の粒度分布内または第二の粒度分布内にある最小断面径を有し;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約5%が、上記第一の粒度分布内にある最小断面径を有し;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約5%が、上記第二の粒度分布内にある最小断面径を有し;かつ
上記第一の粒度分布と上記第二の粒度分布とが重なっていない、請求項3、4、5、19、25〜28、33、34、35および36の何れか1項に記載の方法。
【請求項38】
上記触媒は複数の細孔を含んでおり;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約95%が、第一の粒度分布内または第二の粒度分布内にある最小断面径を有し、上記第一の粒度分布が約5.9Å〜約6.3Åであり、上記第二の粒度分布が上記第一の粒度分布と異なっており重なっておらず;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約5%が、約5.9Å〜約6.3Åの最小断面径を有し;かつ
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約5%が、上記第二の粒度分布内にある最小断面径を有している、請求項3、4、5、19、25〜28、33、34、35および36の何れか1項に記載の方法。
【請求項39】
上記触媒は複数の細孔を含んでおり;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約95%が、約5.9Å〜約6.3Åまたは約7Å〜約200Åの最小断面径を有し;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約5%が、約5.9Å〜約6.3Åの最小断面径を有し;かつ
1または2以上のゼオライト触媒の、細孔の少なくとも約5%が、約7Å〜約200Åの最小断面径を有している、請求項3、4、5、19、25〜28、33、34、35および36の何れか1項に記載の方法。
【請求項40】
上記反応器における上記炭化水素原料の滞留時間が約2秒〜約480秒である、請求項1、2、6〜12、20、23、24、31および32の何れか1項に記載の方法。
【請求項41】
上記炭化水素原料は第一の成分および第二の成分を含んでおり、当該第一の成分と当該第二の成分とが異なっており;かつ
第一および第二の触媒を上記反応器中へ供給することをさらに含んでおり、当該第一の触媒が、流体の炭化水素生成物を製造するために上記第一の成分またはその誘導体を触媒的に反応させることに対して選択的であり、当該第二の触媒が、流体の炭化水素生成物を製造するために上記第二の成分またはその誘導体を触媒的に反応させることに対して選択的である、請求項1、2、6〜12、20、23、24、31、32および40の何れか1項に記載の方法。
【請求項42】
熱分解する工程が起こる反応器の内容物が、約50℃/sよりも速い加熱速度において加熱される、請求項1、2、6〜12、20、23、24、31、32、40および41の何れか1項に記載の方法。
【請求項43】
触媒反応工程が起こる反応器の内容物が、約50℃/sよりも速い加熱速度において加熱される、請求項1、2、6〜12、20、23、24、31、32、40、41および42の何れか1項に記載の方法。
【請求項44】
上記1または2以上の流体の炭化水素生成物は、脱水、脱カルボニル化、脱炭酸、異性化、オリゴマー化および/または脱水素の触媒反応によって、上記熱分解生成物から製造される、請求項1〜43の何れか1項に記載の方法。
【請求項45】
上記触媒は、その中に組み込まれた1または2以上の金属を有している、請求項3、4、5、19、25〜28、33、34、35、36および39の何れか1項に記載の方法。
【請求項46】
炭化水素原料から1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造する方法であって:
炭化水素原料とガロアルミノケイ酸塩モルデナイト骨格置換ゼオライト(galloaluminosilicate Mordenite Framework Inverted zeolite)を含んでいる触媒とを供給すること;
1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、上記炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解すること;および
1または2以上の炭化水素生成物を製造するために、上記触媒を用いて上記熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させることを含んでいる、方法。
【請求項47】
炭化水素原料から1または2以上の流体の炭化水素生成物を製造する方法であって:
炭化水素原料および触媒を反応器へ供給すること;
上記反応器内において、1または2以上の熱分解生成物を製造するのに十分な反応条件下で、上記炭化水素原料の少なくとも一部を熱分解すること;および
上記流体の炭化水素生成物を製造するのに十分な反応条件下で、上記触媒を用いて上記1または2以上の熱分解生成物の少なくとも一部を触媒的に反応させることを含んでおり、
上記流体の炭化水素生成物が、上記熱分解生成物の形成において用いられた上記炭化水素原料の全量の少なくとも35重量%である量の芳香族化合物を含んでおり、当該量が、上記流体の炭化水素生成物中に存在する芳香族化合物の重量を、上記熱分解生成物の形成において用いられた上記炭化水素原料の重量で割って計算されている、方法。
【請求項48】
上記触媒はゼオライト触媒を含んでいる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
上記触媒はガロアルミノケイ酸塩モルデナイト骨格置換ゼオライトを含んでいる、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
上記ガロアルミノケイ酸塩モルデナイト骨格置換ゼオライトは水素型である、請求項46〜49の何れか1項に記載の方法。
【請求項51】
ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒におけるSiのモルと、ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒におけるGaおよびAlのモルの合計との比が、少なくとも約15:1である、請求項46〜50の何れか1項に記載の方法。
【請求項52】
ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒におけるSiのモルと、ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒におけるGaのモルとの比が、少なくとも約30:1である、請求項46〜51の何れか1項に記載の方法。
【請求項53】
ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒におけるSiのモルと、ガロアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒におけるAlのモルとの比が、少なくとも約10:1である、請求項46〜52の何れか1項に記載の方法。
【請求項54】
触媒反応が複数の触媒粒子を介して触媒され、かつ触媒の全体積の合計の少なくとも約50%が約1ミクロン未満の最大断面寸法を有している粒子によって占められている、請求項46〜53の何れか1項に記載の方法。
【請求項55】
上記炭化水素原料は流動層反応器へ供給される、請求項46〜54の何れか1項に記載の方法。
【請求項56】
上記炭化水素原料は循環式流動層反応器または乱流式流動層反応器へ供給される、請求項46〜55の何れか1項に記載の方法。
【請求項57】
上記流体の炭化水素生成物はオレフィン化合物よりも多量の芳香族化合物を含んでいる、請求項46〜56の何れか1項に記載の方法。
【請求項58】
上記炭化水素原料は固体を含んでいる、請求項46〜57の何れか1項に記載の方法。
【請求項59】
上記炭化水素原料はバイオマス原料を含んでいる、請求項46〜58の何れか1項に記載の方法。
【請求項60】
上記炭化水素原料は、廃棄プラスチック、再利用プラスチック、農業および都市固形廃棄物、食品廃棄物、動物の排泄物、炭水化物、リグノセルロース材料、またはそれらの組合せを含んでいる、請求項46〜59の何れか1項に記載の方法。
【請求項61】
上記炭化水素原料は、キシリトール、グルコース、セロビオース、ヘミセルロース、リグニン、またはそれらの組合せを含んでいる、請求項46〜60の何れか1項に記載の方法。
【請求項62】
上記炭化水素原料は、サトウキビのバガス、グルコース、木材、トウモロコシ茎葉、またはそれらの組合せを含んでいる、請求項46〜61の何れか1項に記載の方法。
【請求項63】
熱分解する工程が約500℃〜約1000℃の温度において起こる、請求項46〜62の何れか1項に記載の方法。
【請求項64】
触媒反応工程が約500℃〜約1000℃の温度において起こる、請求項46〜63の何れか1項に記載の方法。
【請求項65】
上記流体の炭化水素生成物は、上記熱分解生成物の形成において用いられた上記炭化水素原料の全量の少なくとも15重量%である量の芳香族化合物を含んでおり、当該量は、上記流体の炭化水素生成物中に存在する芳香族化合物の重量を、上記熱分解生成物の形成において用いられた上記炭化水素原料の重量で割って計算されている、請求項46および48〜63の何れか1項に記載の方法。
【請求項66】
熱分解する工程が起こる反応器が、少なくとも約1リットルの容積を有している、請求項46〜65の何れか1項に記載の方法。
【請求項67】
上記触媒は約5Å〜約100Åの孔径を有している細孔を含んでいる、請求項46〜66の何れか1項に記載の方法。
【請求項68】
上記触媒は約5.9Å〜約6.3Åの孔径を有している細孔を含んでいる、請求項46〜67の何れか1項に記載の方法。
【請求項69】
上記触媒は約7Å〜約8Åの孔径を有している細孔を含んでいる、請求項46〜68の何れか1項に記載の方法。
【請求項70】
上記触媒は孔径の双峰分布を有している、請求項46〜69の何れか1項に記載の方法。
【請求項71】
上記触媒は複数の細孔を含んでおり;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約95%が、第一の粒度分布内または第二の粒度分布内にある最小断面径を有し;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約5%が、上記第一の粒度分布内にある最小断面径を有し;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約5%が、上記第二の粒度分布内にある最小断面径を有し;かつ
上記第一の粒度分布と上記第二の粒度分布とが重なっていない、請求項46〜70の何れか1項に記載の方法。
【請求項72】
上記触媒は複数の細孔を含んでおり;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約95%が、第一の粒度分布内または第二の粒度分布内にある最小断面径を有し、上記第一の粒度分布が約5.9Å〜約6.3Åであり、上記第二の粒度分布が上記第一の粒度分布と異なっており重なっておらず;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約5%が、約5.9Å〜約6.3Åの最小断面径を有し;かつ
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約5%が、上記第二の粒度分布内にある最小断面径を有している、請求項46〜71の何れか1項に記載の方法。
【請求項73】
上記触媒は複数の細孔を含んでおり;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約95%が、約5.9Å〜約6.3Åまたは約7Å〜約200Åの最小断面径を有し;
1または2以上の触媒の、細孔の少なくとも約5%が、約5.9Å〜約6.3Åの最小断面径を有し;かつ
1または2以上のゼオライト触媒の、細孔の少なくとも約5%が、約7Å〜約200Åの最小断面径を有している、請求項46〜72の何れか1項に記載の方法。
【請求項74】
上記流体の炭化水素生成物は、上記熱分解生成物の形成において用いられた上記炭化水素原料の全量の少なくとも39重量%である量の芳香族化合物を含んでおり、当該量は、上記流体の炭化水素生成物中に存在する芳香族化合物の重量を、上記熱分解生成物の形成において用いられた上記炭化水素原料の重量で割って計算されている、請求項46〜73の何れか1項に記載の方法。
【請求項75】
上記流体の炭化水素生成物は、上記熱分解生成物の形成において用いられた上記炭化水素原料の全量の約35重量%〜約40重量%である量の芳香族化合物を含んでおり、当該量は、上記流体の炭化水素生成物中に存在する芳香族化合物の重量を、上記熱分解生成物の形成において用いられた上記炭化水素原料の重量で割って計算されている、請求項46〜74の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図22E】
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【図22F】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2013−504651(P2013−504651A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528792(P2012−528792)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/002472
【国際公開番号】WO2011/031320
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(507088266)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ (4)
【出願人】(512059969)アネッロテック インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ANELLOTECH,INC.
【住所又は居所原語表記】160 Varick Street 12th Floor New York,NY 10013,United States of America
【Fターム(参考)】