説明

伝動ベルトおよび搬送ベルト

【課題】より長期間にわたり、高い動的特性を発現できる、伝動ベルト、及びより長期間にわたり、高い動的特性を発現できる、搬送ベルトを提供することを課題とする。
【解決手段】心線が埋設された接着ゴム層と圧縮ゴム層との少なくとも2種のゴム層が積層された積層体と、該積層体の上面、下面又は全周面に接着された布材料とを備え、該心線及び該布材料の少なくとも一方が、ポリエステル繊維等の繊維で構成され、かつ
2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスを含有し、かつラテックス成分の固形成分中における該共重合体ラテックスの含有量が少なくとも50質量%であるRFL接着剤組成物を含浸させたものである伝動ベルト、並びにポリエステル繊維などの繊維で構成され、かつ該共重合体ラテックスをラテックス成分として含有したRFL接着剤組成物を含浸させた繊維材料により、補強されたものである、搬送ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトおよび搬送ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
工業用ベルト、例えば、伝動ベルト、搬送ベルトなどは、高速回転、高負荷、高温などの厳しい条件下で用いられている。
【0003】
前記伝動ベルトおよび搬送ベルトには、一般的に、例えば、クロロプレンゴム、水素化ニトリルゴムとクロロスルホン化ポリエチレンゴムとの混合物などのゴム材料と、繊維との接着物が用いられている。前記接着物としては、ゴム材料と、帆布などとを、例えば、エチレン−α−オレフィンゴム−ジエン共重合体ゴムラテックスからなるレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス液に加硫促進剤を添加したRFL処理液などにより接着された接着物が知られている(特許文献1を参照のこと)。しかしながら、前記特許文献1に記載の接着物を用いたベルトは、長期間にわたって使用することが困難な場合があるという欠点がある。
【特許文献1】特開2003−27376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の欠点に鑑みてなされたものであり、より長期間にわたり、高い動的特性を発現できる、伝動ベルトを提供することを1つの課題とする。また、本発明は、より長期間にわたり、高い動的特性を発現できる、搬送ベルトを提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、心線が埋設された接着ゴム層と圧縮ゴム層との少なくとも2種のゴム層が積層された積層体と、該積層体の上面、下面または全周面に接着された布材料とを備え、
該心線および該布材料の少なくとも一方が、
ポリエステル繊維、綿繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維で構成され、かつ
2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスを含有し、かつラテックス成分の固形成分中における該2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスの含有量が少なくとも50質量%であるレゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤組成物
を含浸させたものである、伝動ベルトに関する。
【0006】
また、本発明は、ポリエステル繊維、綿繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維で構成され、かつ2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスをラテックス成分として含有したレゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤組成物を含浸させた繊維材料により、補強されたものである、搬送ベルトに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の伝導ベルトによれば、より長期間にわたり、高い動的特性を発現できるという優れた効果を奏する。また、本発明の搬送ベルトによれば、より長期間にわたり、高い動的特性を発現できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の伝動ベルトは、心線が埋設された接着ゴム層と圧縮ゴム層との少なくとも2種のゴム層が積層された積層体と、該積層体の上面、下面または全周面に接着された布材料とを備え、
該心線および該布材料の少なくとも一方が、
ポリエステル繊維、綿繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維で構成され、かつ
2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスを含有し、かつラテックス成分の固形成分中における該2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスの含有量が少なくとも50質量%であるレゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤組成物
を含浸させたものである、伝動ベルトである。
【0009】
なお、本明細書において、「伝動ベルト」には、Vベルト(Vリブドベルトなど)、平ベルト、歯付ベルトなども包含される。
【0010】
本発明の伝動ベルトにおいて、前記圧縮ゴム層と前記接着ゴム層とは、積層体を形成している。かかる積層体は、前記圧縮ゴム層および接着ゴム層それぞれの形成に用いられるゴム材料が、加硫接着されて、積層されたものである。なお、前記接着ゴム層には、心線が、接着埋設されうる。前記積層体には、その上面、下面、または側面を含む全周面に布材料が接着されうる。
【0011】
本発明の伝動ベルトは、前記心線および布材料の少なくとも一方が、ポリエステル繊維、綿繊維、ポリアミド繊維〔例えば、ナイロン(商品名)繊維〕、ビニロン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維で構成されていることに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の伝動ベルトによれば、前記繊維と、前記圧縮ゴム層および接着ゴム層それぞれの形成に用いられるゴム材料との密着力が増大するため、経時劣化、磨耗性劣化などに対して高い耐久性などを発揮するという優れた効果を発揮する。
【0012】
本発明においては、前記繊維と前記ゴム材料との密着力をより向上させる観点から、布材料と接着したゴム層、すなわち、前記圧縮ゴム層および接着ゴム層の少なくとも一方が、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物で形成されていることが好ましい。このように、心線などがエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物からなる接着ゴム層内に加硫接着されている伝動ベルトは、高いベルト寿命を示すという優れた効果を発揮する。
【0013】
前記圧縮ゴム層および接着ゴム層を形成させる際に用いられるエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物は、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを、適切な有機溶媒に、溶解させて得られた溶液であってもよい。
【0014】
前記エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンを除くα−オレフィンと、エチレンと、非共役ジエンとの共重合体からなるゴム、それらの一部ハロゲン置換物、またはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。前記エチレンを除くα−オレフィンとしては、より具体的には、例えば、得られる伝動ベルトの耐熱性、動的特性などを十分に発現させる観点から、好ましくは、プロピレン、ブテン、ヘキセンおよびオクテンからなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。かかるエチレンを除くα−オレフィンは、単独であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。なかでも、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムとしては、好ましくは、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、これらの一部ハロゲン置換物、特に、一部塩素置換物、またはそれらの2種以上の混合物が望ましい。
【0015】
特に、本発明において、前記エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムとしては、物性を安定的に発揮させる観点から、好ましくは、例えば、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとの共重合体(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)であって、エラストマーのヨウ素価として50以下、好ましくは、4〜40、ムーニー粘度ML1+4(100)が20〜120程度であり、共重合体中のエチレン量 49〜80質量%と、プロピレン量 19〜50質量%と、非共役ジエン量 残部のものが挙げられる。
【0016】
前記ジエン成分としては、特に限定されないが、例えば、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又エチリデンノルボルネンなどの非共役ジエンが挙げられる。
【0017】
前記エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物には、必要に応じて、カーボンブラック、シリカ、ガラス繊維、セラミックス繊維などの増強剤、炭酸カルシウム、タルクなどの充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤などの通常のゴム工業で用いられる種々の薬剤をさらに含有していてもよい。圧縮ゴム層や接着ゴム層を形成させるためのエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物は、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを、必要に応じて、上述したような薬剤と共に、ロール、バンバリーなど、通常の混合手段を用いて均一に混合することにより、得られうる。
【0018】
本発明の伝動ベルトにおいて、前記心線および前記布材料の少なくとも一方は、ポリエステル繊維、綿繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維で構成される。かかる繊維は、単独であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。具体的には、布材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル綿混紡帆布により構成された布材料などが挙げられる。また、心線としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル繊維からなる心線(ポリエステル心線ともいう)などが挙げられる。なかでも、使用に十分な強度を得る観点から、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維などが望ましい。
【0019】
また、本発明の伝動ベルトは、前記心線および前記布材料の少なくとも一方が、2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスをラテックス成分として含有したレゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤組成物(以下、「RFL接着剤組成物」ともいう)を含浸させたものであることにも1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の伝動ベルトにおいて、前記心線および前記布材料の少なくとも一方が、圧縮ゴム層および接着ゴム層との接着性を向上させるに適した状態になるという優れた効果を発揮する。
【0020】
さらに、本発明の伝動ベルトは、前記心線および前記布材料の少なくとも一方が、前記繊維で構成され、かつ前記RFL接着剤組成物を含浸させたものであるため、前記心線および前記布材料と、圧縮ゴム層および接着ゴム層との間に高い接着力を発現させることができる。それにより、本発明の伝動ベルトによれば、高い動的特性が発現され、かつより長い寿命を達成するという優れた効果を発揮する。
【0021】
本発明の伝動ベルトに用いられるRFL接着剤組成物は、2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスを、該RFL接着剤組成物のラテックス成分中の固形成分のうち、十分な接着性を得る観点から、少なくとも50質量%、好ましくは、60質量%以上含有するものが望ましい。ここで、前記RFL接着剤組成物中のラテックス成分中の固形成分の濃度は、特に限定されないが、通常、10〜50質量%の範囲である。
【0022】
前記RFL接着剤組成物は、例えば、レゾルシンとホルマリンとを、レゾルシン/ホルマリン(モル比) 1/3〜3/1となるように、塩基性触媒存在下に縮合させて、5〜80質量% レゾルシン−ホルマリン樹脂(レゾルシン−ホルマリン初期縮合物、以下、「RF」という)を含有した水溶液を調製し、ついで、該水溶液と、ゴムラテックスとを混合することにより、調製されうる。
【0023】
また、前記RFL接着剤組成物には、クロルフェノール化合物の縮合物などが配合されていてもよい。
【0024】
前記RFL接着物組成物には、架橋剤として機能を発揮する金属酸化物と含硫黄加硫促進剤とがさらに配合されていてもよい。本発明の伝動ベルトが、金属酸化物と含硫黄加硫促進剤とが配合されたRFL接着剤組成物を含浸させた心線および布材料を有する場合、該心線と接着ゴム層のゴム材料との間の動的接着が一層向上するという優れた効果を発揮する。また、本発明の伝動ベルトの製造に際して、前記金属酸化物と含硫黄加硫促進剤とが配合されたRFL接着剤組成物を、例えば、ポリエステル心線に含浸させる場合、含浸後の心線を200℃を超える温度に加熱し、乾燥させることにより、ポリエステル心線と接着ゴムとの間の動的接着を一層高めると共に、ポリエステル心線の接着処理のための時間を短縮することができるという優れた効果を発揮する。
【0025】
前記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。前記金属酸化物のなかでは、十分な反応性および密着性を得る観点から、好ましくは、酸化亜鉛が望ましい。RFL接着剤組成物への前記金属酸化物の配合割合は、RFL接着剤組成物中のラテックス成分の固形成分 100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲であることが望ましい。
【0026】
また、前記含硫黄加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、チアゾール化合物、スルフェンアミド化合物、チウラム化合物、ジチオカルバミン酸塩、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。前記チアゾール化合物としては、特に限定されないが、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾールまたはその塩(例えば、亜鉛塩、ナトリウム塩、シクロヘキシルアミン塩など)、ジベンゾチアジルジスルフィドなどが挙げられる。前記スルフェンアミド化合物としては、特に限定されないが、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどが挙げられる。前記チウラム化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどが挙げられる。前記ジチオカルバミン酸塩化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛などが挙げられる。RFL接着剤組成物への前記含硫黄加硫促進剤の配合割合は、RFL接着剤組成物のラテックス成分中の固形成分 100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲であることが望ましい。
【0027】
本発明の伝動ベルトの製造は、例えば、心線に、前記2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスをラテックス成分として含有したRFL接着剤組成物を含浸させ、該心線を、接着ゴム層を形成する未加硫ゴムシート間に挟み、得られた産物を、圧縮ゴム層を形成する未加硫ゴムシートと積層し、加熱加圧し、一体として加硫することにより行なわれうる。
【0028】
心線への前記RFL接着剤組成物の含浸は、例えば、心線をRFL接着剤組成物に浸漬させ、ついで、200〜240℃、好ましくは、210〜235℃の温度に加熱(ベーキング)し、乾燥して、RFL接着剤組成物を心線に定着させることにより行なわれうる。
【0029】
前記心線に前記RFL接着剤組成物を含浸させるに際しては、例えば、RFL接着剤組成物への心線の浸漬と該心線の乾燥処理とからなる一連の工程を少なくとも2回行なってもよい。具体的には、例えば、心線を第1のRFL接着剤組成物に浸漬させ、加熱乾燥することにより第1のRFL処理を行ない、ついで、第2のRFL接着剤組成物に浸漬し、加熱乾燥することにより第2のRFL処理を行なうことにより、心線に前記RFL接着剤組成物を含浸させることができる。このような場合、第1のRFL接着剤組成物と第2のRFL接着剤組成物とは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。また、必要に応じて、RFL接着剤組成物への心線の浸漬と該心線の乾燥処理とからなる一連の工程を3回以上行なってもよい。
【0030】
本発明の伝動ベルトの製造に用いられるRFL接着剤組成物は、2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスに加え、他のラテックスを含んでもよい。かかる他のラテックスとしては、好ましくは、クロロスルホン化ポリエチレンラテックスが望ましい。
【0031】
本発明の伝動ベルトを製造するに際して、心線、例えば、ポリエステル心線にRFL接着剤組成物を含浸させるに先立ち、該心線を、イソシアネート処理またはエポキシ処理してもよい。すなわち、イソシアネート化合物を含有した溶液またはエポキシ化合物を含有した溶液に、心線、例えば、ポリエステル心線を浸漬させた後、必要に応じて、加熱し、乾燥させることによって、心線に前処理を行なってもよい。
【0032】
前記イソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどが好ましく用いられる。また、このようなイソシアネート化合物に、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのように分子内に2つ以上の活性水素を有する化合物を反応させて得られる多価アルコール付加ポリイソシアネートや、上記イソシアネート化合物にフェノール化合物、第3級アルコール化合物、第2級アミン化合物などのブロック化剤を反応させて、イソシアネート化合物のイノシアネート基をブロックしたブロック化ポリイソシアネートも、イソシアネート化合物として好ましく用いることができる。
【0033】
前記エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールと、エピクロロヒドリンなどのハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物;レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルエタン、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂などの多価フェノール化合物、フェノール樹脂と、エピクロロヒドリンなどのハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物が好適である。
【0034】
前記イソシアネート化合物の溶液またはエポキシ化合物の溶液を形成させるための溶媒は、特に限定されないが、用いられるイソシアネート化合物およびエポキシ化合物に応じて、水や適宜選択された有機溶媒が用いられる。なお、イソシアネート化合物は、化学的に非常に活性であるので、通常、非水系溶液として用いられるが、例えば、フェノール化合物などにより、前記イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロックしたものは、水溶液としても用いられうる。前記有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン;酢酸エチル、酢酸アミルなどの脂肪族カルボン酸アルキルエステルなどが挙げられる。前記イソシアネート化合物の溶液におけるイソシアネート化合物またはエポキシ化合物の溶液におけるイソシアネート化合物やエポキシ化合物の濃度は、十分な接着性を発揮させる観点から、5〜50質量%の範囲である。
【0035】
さらに、本発明の伝動ベルトを製造するに際して、心線、例えば、ポリエステル心線を、RFL接着剤組成物で処理し、その後、該心線をゴム糊で処理してもよい。前記ゴム糊としては、圧縮ゴム層および接着ゴム層を形成するためのゴム材料、例えば、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを適切な有機溶媒に溶解して得られた溶液(前記エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物)などが挙げられる。この場合、心線を、前記溶液に浸漬させた後、加熱乾燥させればよい。
【0036】
以下、本発明の伝動ベルトの一実施態様を、図を参照して説明するが、本発明は、かかる図により何ら限定されるものではない。
【0037】
図1は、本発明の伝動ベルト(Vリブドベルト)の一例の横断面図を示す。図1に示されるVリブドベルトは、ゴム組成物を構成部材とする接着ゴム層3と、該接着ゴム層3の上面側に配された上面帆布層1と、該接着ゴム層3の下面側に配された圧縮ゴム層5とを有し、該上面帆布層1と該接着ゴム層3と該圧縮ゴム層5とは、一体として形成されている。上面帆布層1は、単層または複数層のゴム引き帆布1から形成されており、これに隣接して、接着ゴム層3が積層されている。この接着ゴム層には、例えば、ポリエステル繊維からなる複数の低伸度の心線2が間隔を置いてベルト長手方向に延びるように埋設されている。さらに、この接着ゴム層に隣接して、圧縮ゴム層5が積層されている。この圧縮ゴム層には、ベルト長手方向に延びるように相互に間隔を有するリブ部4を有する。
【0038】
前記圧縮ゴム層5の底面側には、それぞれベルト長さ方向に延在させるように設けられた3つのリブ部4がベルト幅方向に所定のピッチで形成されている。また、前記接着ゴム層3のベルト厚さ方向中心領域には、略ベルト長さ方向に伸びかつベルト幅方向に所定ピッチをおいて螺旋状に設けられた複数本の心線2が一定の間隔を設けて埋設されている。多くの場合、圧縮ゴム層5には、その耐側圧性を高めるために、ベルトの幅方向に短繊維6が配向して分散されていてもよい。前記短繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド繊維〔ナイロン(商品名)繊維〕、アラミド繊維、綿、ビニロン繊維などが挙げられる。
【0039】
また、本発明の伝動ベルトは、例えば、Vリブドベルトの場合は、例えば、以下のように製造されうる。すなわち、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周面に1枚または複数枚のゴムコート帆布と、接着ゴム層のための未加硫ゴムシートとを巻き付け、さらに、ポリエステル心線を螺旋状にスピニングし、さらに、その上に接着ゴム層のための未加硫ゴムシートを巻き付けた後、圧縮ゴム層のための未加硫ゴムシートを巻き積層体とし、これを加硫缶中で加熱加圧し、加硫して、環状物を得る。次に、前記環状物を駆動ロールと従動ロールとの間に掛け渡して、所定の張力の下で走行させながら、これに研削ホイールにて表面に複数のリブを形成させる。この後、この環状物を更に別の駆動ロールと従動ロールとの間に掛け渡して走行させながら、所定の幅に裁断すれば、製品としてのVリブドベルトを得ることができる。
【0040】
図2は、Vベルトの一例の横断面図を示す。図2に示されるVベルトの上面は、上記と同様に、単層または複数層のゴム引き帆布により形成されており、必要に応じて、上ゴム層7が積層され、これに隣接して、上記と同様に心線2が埋設された接着ゴム層3が積層され、さらに、これに隣接して、圧縮ゴム層5が積層されている。多くの場合、圧縮ゴム層5には、その耐側圧性を高めるために、ベルトの幅方向に短繊維6が配向して分散されている。圧縮ゴム層は、通常、単層または複数層のゴム引き帆布1により被覆されている。
【0041】
本発明は、別の側面では、ポリエステル繊維、綿繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維で構成され、かつ2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスをラテックス成分として含有したレゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤組成物を含浸した繊維材料により、補強された、搬送ベルトに関する。
【0042】
本発明の搬送ベルトは、前記繊維材料により、補強されているため、より長期間にわたり、高い動的特性を発現するという優れた効果を発揮する。また、本発明の搬送ベルトは、優れた耐久性を発現する。
【0043】
本発明の搬送ベルトとしては、例えば、ゴム層と前記繊維材料とを積層させることにより補強された搬送ベルトなどが挙げられる。
【0044】
以下、本発明を実施例などにより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
(製造例1)
(1) 接着ゴム層用組成物の作製
エチレン−プロピレン−ジエンゴム〔組成:エチレン 56質量%、プロピレン 36.1質量%、エチリデンノルボルネン 5.5質量%、ジシクロペンタジエン 2.4質量%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)=60〕 100質量部に対して、HAFカーボン(三菱化学株式会社製) 50質量部と、シリカ〔株式会社トクヤマ製、商品名:トクシールGu〕 20質量部と、パラフィンオイル〔日本サン化学株式会社製、商品名:サンフレックス2280〕 20質量部と、加硫剤〔細井化学株式会社製、オイル硫黄〕 3質量部と、加硫促進剤〔大内新興化学株式会社製、商品名:EP−150、ジベンゾチアスルフィドとテトラメチルチウラムジスルフィドとジエチルジチオカルバミン酸亜鉛との混合物〕 2.5質量部と、加硫助剤〔花王株式会社製、ステアリン酸〕 1質量部、加硫助剤〔堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛〕 5質量部と、老化防止剤〔大内新興化学株式会社製、商品名:224、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン〕 2質量部と、老化防止剤〔大内新興化学株式会社製、商品名:MB、2−メルカプトベンツイミダゾール〕 1質量部と、粘着付与剤〔日本ゼオン株式会社製、商品名:石油樹脂クイントンA−100〕 5質量部と、短繊維(綿粉) 2質量部とを配合し、接着ゴム用組成物を得た。
【0046】
(2) 圧縮ゴム層用組成物の作製
エチレン−プロピレン−ジエンゴム〔組成:エチレン 56質量%、プロピレン 36.1質量%、エチリデンノルボルネン 5.5質量%、ジシクロペンタジエン 2.4質量%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)=60〕 100質量部に対して、HAFカーボン(三菱化学株式会社製) 70質量部と、パラフィンオイル〔日本サン化学株式会社製、商品名:サンフレックス2280〕 20質量部と、加硫剤〔細井化学株式会社製、オイル硫黄〕 1.6質量部と、加硫促進剤〔大内新興化学株式会社製、商品名:EP−150、ジベンゾチアスルフィドとテトラメチルチウラムジスルフィドとジエチルジチオカルバミン酸亜鉛との混合物〕 2.8質量部と、加硫促進剤〔大内新興化学株式会社製、商品名:MSA、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド〕 1.2質量部と、加硫助剤〔花王株式会社製、ステアリン酸〕 1質量部、加硫助剤〔堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛〕 5質量部と、老化防止剤〔大内新興化学株式会社製、商品名:224、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン〕 2質量部と、老化防止剤〔大内新興化学株式会社製、商品名:MB4〕 1質量部と、短繊維〔商品名:66ナイロン(商品名)繊維、6de×1mm〕 22質量部とを配合し、圧縮ゴム層用組成物を得た。
【0047】
(実施例1)
(1)RFL接着剤組成物の作製
レゾルシンとホルマリン(37質量%濃度)と水酸化ナトリウムと水とを、質量比5.6:6.0:0.6:115.6となるように配合し、レゾルシン・ホルマリン樹脂(レゾルシン−ホルマリン初期縮合物)(RFともいう)水溶液aを得た。具体的には、レゾルシンとホルマリン(37質量%濃度)とを混合して、撹拌し、得られた混合物に、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、撹拌し、さらに、水を添加し、2時間熟成させ、固形成分濃度:6.57質量%のRF水溶液aを得た。
【0048】
ついで、得られたRF水溶液aと、2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体(DCB)ラテックス〔東ソー株式会社製、商品名:LH430、固形成分:32質量%〕と、ナトリウムジオクチルスルホサクシネートと水とを、質量比8.4:50.4(固形成分):5.0:239となるように配合し、表1に示す組成のレゾルシン−ホルマリン−テックス(RFL)接着剤組成物Aを得た。具体的には、前記RF水溶液aと、2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体(DCB)ラテックスとを混合して、得られた混合物を、24時間熟成させ、その後、得られた産物に、ナトリウムジオクチルスルホサクシネートおよび水を添加し、RFL接着剤組成物Aを得た。
【0049】
(2)剥離試験用試料(ベルト)の作製
未処理のポリエステル綿帆布〔(広角に加工した時点での特性)糸の材質:ポリエステルと綿との混紡帆布;ポリエステルと綿との質量比 50:50;糸構成 経糸:20 S/2(20番手を2本よりあわせたものの意味)、緯糸:20 S/2(20番手を2本よりあわせたものの意味);撚り数:経糸S撚り 59回/10cm、緯糸:59回/10cm;織り方:平織り物を、経糸と緯糸との交差角度が、120°になるように加工(90°でも可);糸密度 経糸:85本/5cm、緯糸:85本/5cm〕を、前記RFL接着組成物Aに浸漬させ、ついで、150℃で3分間加熱乾燥させた。得られたポリエステル綿帆布を、接着溶液〔前記接着ゴム層用組成物で用いたものと同じエチレン−プロピレン−ジエンゴムをトルエンに溶解させたもの〕に浸漬させた。その後、得られたポリエステル綿帆布を、60℃で10分間加熱乾燥させ、接着処理ポリエステル綿帆布を得た。
【0050】
前記接着ゴム層用組成物からなる厚さ5mmの未加硫ゴムシートの上に、接着処理ポリエステル綿帆布を並べ、得られた産物に、プレス盤で0.2MPaの圧力を負荷し、160℃、30分間維持して加硫し、剥離試験用試料を得た。
【0051】
(実施例2)
実施例1で調製したRF水溶液aと、DCB/VP混合物1〔2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体(DCB)ラテックス:ビニルピリジンスチレンブタジエンラテックス(VP)(日本エイアンドエル株式会社、固形成分40質量%、商品名:JSR0650)=6:4(質量比)〕と、ナトリウムジオクチルスルホサクシネートと、水とを、質量比8.4:50.4(固形成分):5.0:239となるように配合したことを除き、実施例1と同様に、表1に示す組成のレゾルシン−ホルマリン−テックス(RFL)接着剤組成物Bを得た。
【0052】
ついで、未処理のポリエステル綿帆布をRFL接着組成物Bに浸漬させたことを除き、実施例1と同様に、剥離試験用試料を得た。
【0053】
(比較例1)
実施例1で調製したRF水溶液aと、DCB/VP混合物2〔2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックス:ビニルピリジンスチレンブタジエンラテックス(JSR株式会社、商品番号:0650)=4:6(質量比)〕と、ナトリウムジオクチルスルホサクシネートと、水とを、質量比8.4:50.4(固形成分):5.0:239となるように配合したことを除き、実施例1と同様に、表1に示す組成のレゾルシン−ホルマリン−テックス(RFL)接着剤組成物Cを得た。
【0054】
ついで、未処理のポリエステル綿帆布をRFL接着組成物Cに浸漬させたことを除き、実施例1と同様に、剥離試験用試料を得た。
【0055】
(比較例2)
実施例1で調製したRF水溶液aと、ビニルピリジンスチレンブタジエンラテックス(VP)(JSR株式会社、商品番号:0650)と、ナトリウムジオクチルスルホサクシネートと、水とを質量比8.4:50.4(固形成分):5.0:239となるように配合したことを除き、実施例1と同様に、表1に示す組成のレゾルシン−ホルマリン−テックス(RFL)接着剤組成物Dを得た。
【0056】
ついで、未処理のポリエステル綿帆布をRFL接着組成物Dに浸漬させたことを除き、実施例1と同様に、剥離試験用試料を得た。
【0057】
【表1】

【0058】
(試験例1)
前記実施例1〜2および比較例1〜2の各試料について、JIS K 6256(1999)に準じて、接着力を測定した。具体的には、各剥離試験用試料を、それぞれ、幅2.540cmに切断し、得られた産物を、剥離試験機に入れ、ゴムシート部分とポリエステル綿帆布部分とを、180°になるようにしながら、50mm/分の引張速度で剥離させることにより、接着力を測定した。その結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
その結果、表2に示されるように、布材料が、ポリエステル繊維で構成され、2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスをラテックス成分として含有し、該ラテックス成分の固形成分中における該2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスの含有量が少なくとも50質量%(実施例1:100質量%、実施例2:60質量%)であるレゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤組成物を含浸させたポリエステル綿帆布である場合、該ポリエステル綿帆布と接着ゴム層との間の接着力が高くなることがわかる示すことがわかる。
【0061】
(実施例3および4)
(1)RFL接着剤組成物の調製
レゾルシンとホルマリン(37質量%濃度)と水酸化ナトリウムと水とを、質量比7.31:10.77:0.33(固形成分):160.91となるように配合し、RF水溶液bを得た。具体的には、レゾルシンとホルマリン(37質量%濃度)とを混合して、撹拌し、得られた混合物に、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、撹拌し、さらに、水を添加し、得られた混合物を、5時間熟成させ、固形成分濃度:6.40質量%のRF水溶液bを得た。
【0062】
ついで、得られたRF水溶液bと、2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体(DCB)ラテックス〔東ソー株式会社製、商品名:LH430、固形成分:32質量%〕とを、固形成分の質量比1.39:13.49となるように配合し、得られた混合物を、12時間熟成させて、RFL接着剤組成物E(実施例3)を得た。
【0063】
また、前記RF水溶液bと、DCB/VP混合物1〔2−クロロ1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックス:ビニルピリジンスチレンブタジエンラテックス=質量比6:4〕とを、固形成分の質量比1.39:13.49となるように配合したことを除き、前記実施例3と同様に、RFL接着剤組成物F(実施例4)を得た。
【0064】
(2)ポリエステル心線の調製
ポリエステルフィラメントを下撚りしてストランドとし、これを上撚りしてポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)心線を得た。得られたポリエステル心線を、イソシアネートのトルエン溶液(イソシアネート固形分20質量%)に浸漬させた。その後、得られたポリエステル心線を、240℃で40秒間維持して、乾燥させることにより、該ポリエステル心線の前処理を行なった。
【0065】
得られた前処理ポリエステル心線を、表3に示すRFL接着剤組成物に浸漬させ、その後、200℃で80秒間維持して乾燥させることにより、最初のRFL処理を行なった。ついで、得られたポリエステル心線を、表3に示すRFL接着剤組成物に浸漬させ、その後、200℃で80秒間維持して乾燥させることにより、最終のRFL処理を行なった。ついで、処理後のポリエステル心線を、接着溶液〔前記製造例1の接着ゴム層用組成物で用いたものと同じエチレン−プロピレン−ジエンゴムをトルエンに溶解させたもの〕に浸漬させた。その後、得られたポリエステル綿帆布を、接着溶液に浸漬させた。その後、得られたポリエステル心線を、60℃で40秒間維持して、乾燥させて、接着処理ポリエステル心線を得た。
【0066】
(3)ポリエステル心線と接着ゴム層との接着物の調製
接着処理ポリエステル心線を、前記接着ゴム層用組成物からなる未加硫ゴムシート(厚さ:5mm)の間に挟み、得られた産物を、面圧3920kPa、温度160℃で35分間維持して、プレス加硫し、接着物を得た。
【0067】
(4)Vリブドベルトの製造
表面が平滑な円筒状の成形ドラム(周長1200mm)の周面に、ゴムコート帆布を巻きつけ、該ゴムコートの上に、前記接着ゴム層用組成物からなる未加硫ゴムシートを巻きつけた。その後、前記未加硫ゴムシートの上に、前記ポリエステル心線を螺旋状にスピニングした。なおこの時、帆布を、ベルト長手方向に向けたとき経糸と緯糸との交差角度が120°になるようなバイヤス方向に貼着させた。
【0068】
さらに、前記ポリエステル心線の上に前記接着ゴム層用組成物からなる未加硫ゴムシートを巻きつけた。その後、前記接着ゴム層用組成物からなる未加硫ゴムシートの上に、圧縮ゴム層用組成物を巻き付けて積層体とした。かかる積層体を、内圧5.922×105Pa、外圧8.8263×105Pa下、165℃で35分間の条件または170℃で50分の条件で、加硫缶中にて維持して、蒸気加硫して、環状物を得た。
【0069】
ついで、前記環状物を、駆動ロールと従動ロールとからなる第1の駆動システムに取り付けた。前記第1の駆動システムを、所定の張力(1.17×103N)下で走行させながら、研削ホイールにより該環状物の表面に複数のリブを形成させた。その後、得られた環状物を、さらに別の駆動ロールと従動ロールとからなる第2の駆動システムに取りつけて、走行させながら、所定の幅に裁断して、リブ数3、周長さ1000mmの製品としてのVリブドベルトを得た。
【0070】
【表3】

【0071】
(比較例3および4)
前記実施例3および4で得られたRF水溶液bと、ビニルピリジンスチレンブタジエンラテックス(JSR株式会社製、商品番号:0650)とを、固形成分の質量比1.39:13.49となるように配合し、得られた混合物を、12時間熟成させて、RFL接着剤組成物G(比較例3)を得た。
【0072】
また、前記RF水溶液bと、DCB/VP混合物2〔2−クロロ1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックス:ビニルピリジンスチレンブタジエンラテックス=質量比4:6)とを、固形成分の質量比1.39:13.49となるように配合したことを除き、前記実施例3と同様に、RFL接着剤組成物H(比較例4)を得た。
【0073】
前記実施例3および4の前処理ポリエステル心線について、前記RFL接着剤組成物GまたはHを用いてRFL処理を行なったことを除き、実施例3および4と同様に、接着処理ポリエステル心線を得た。
【0074】
得られたポリエステル心線を前記接着ゴム層用組成物からなる未加硫ゴムシート中に埋め込み、実施例3および4と同様に加硫し、接着物を得た。さらに、実施例3および4と同様にして、Vリブドベルトを製造した。
【0075】
(試験例2)
実施例3〜4および比較例3〜4の接着物に埋設されたポリエステル心線のうち、1本おきに選択した3本のポリエステル心線を、上下のチャックで挟み、チャック間:40mm、剥離速度:100mm/分、剥離距離:80mmの剥離条件下で同時に剥離させ、接着力を測定した。また、同時に、前記接着力を測定した際の接着物における破壊の態様を観察した。結果を表4に示す。
【0076】
また、実施例3〜4および比較例3〜4のVリブドベルトを、図3に示すように駆動プーリ11(直径120mm)と従動プーリ12(直径120mm)とこれらのプーリの問に配置したアイドラープーリ13(直径70mm)とテンションプーリ14(直径55mm)とからなるベルト駆動システム(図3)に取り付けた。なお、アイドラープーリ13には、実施例3〜4および比較例3〜4のVリブドベルトのベルト背面を係合させた。
【0077】
温度130℃の雰囲気温度の下で、従動プーリの負荷を16馬力とし、テンションプーリの初張力を8.33×102Nとし、駆動プーリを回転数4900rpmで駆動して、ベルトを走行させ、ベルトから心線が露出するかまたはゴム層に割れを生じるまでの走行時間をベルトの動的寿命とした。結果を表4に示す。
【0078】
【表4】

【0079】
その結果、表4に示されるように、心線を、ラテックス成分の固形成分の50質量%以上が2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ゴムであるRFL接着剤組成物を含浸させた場合、心線と、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム系ゴムとの間の高い接着力が生じるため、動的寿命が改善された伝動ベルトが得られることがわかる。
【0080】
(比較例5)
2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体(DCB)ラテックス〔東ソー株式会社製、商品名:LH430、固形成分:32質量%〕の代わりに、EPDMゴムラテックス〔住友精化株式会社製、商品名:セポレックスEP125(固形成分51.5質量%)〕を用いたことを除き、実施例1と同様に、RFL接着剤組成物I(固形成分15質量%)を得た。
【0081】
ついで、未処理のポリエステル綿帆布をRFL接着組成物Iに浸漬させたことを除き、実施例1と同様に、剥離試験用試料を得た。得られた剥離試験用試料を用いて、試験例1と同様に、接着力を測定した。
【0082】
その結果、接着力は、1968.5N/mであり、前記実施例1および2に比べ、接着力に劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、耐久性の高い伝動ベルトおよび搬送ベルトが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、伝動ベルトの一例であるVリブドベルトの横断面図を示す。
【図2】図1は、伝動ベルトの一例であるVベルトの横断面図を示す。
【図3】図2は、伝動ベルトの試験に用いるためのベルト駆動システムの概略図を示す。
【符号の説明】
【0085】
1 上面帆布層
2 心線
3 接着ゴム層
4 リブ部
5 圧縮ゴム層
6 短繊維
7 上ゴム層
11 駆動プーリ
12 従動プーリ
13 アイドラープーリ
14 テンションプーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心線が埋設された接着ゴム層と圧縮ゴム層との少なくとも2種のゴム層が積層された積層体と、該積層体の上面、下面または全周面に接着された布材料とを備えてなり、
該心線および該布材料の少なくとも一方が、
ポリエステル繊維、綿繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維で構成され、かつ
2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスを含有し、かつラテックス成分の固形成分中における該2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスの含有量が少なくとも50質量%であるレゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤組成物
を含浸させたものである、伝動ベルト。
【請求項2】
少なくとも該布材料と接着したゴム層が、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物で形成されたものである、請求項1記載の伝動ベルト。
【請求項3】
ポリエステル繊維、綿繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種の繊維で構成され、かつ2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスをラテックス成分として含有したレゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤組成物を含浸した繊維材料により、補強されてなる、搬送ベルト。
【請求項4】
レゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤組成物のラテックス成分中の固形成分の少なくとも50質量%が、2−クロロ−1,3−ブタジエン−2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体ラテックスである、請求項3記載の搬送ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−270583(P2009−270583A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225474(P2006−225474)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】