説明

伝動ベルト心線用補強繊維コード並びに該コードで補強された伝動ベルト

【課題】特にホツレ性を改善した伝動ベルト心線用補強繊維コード並びに該コードで補強された伝動ベルトを提供する。
【解決手段】繰り返し単位の95モル%以上が下記式で示されるポリケトンで構成される繊維の紡績糸で構成された伝動ベルト心線用補強繊維コードであって、この紡績糸の平均繊維長が300〜2000mmである伝動ベルト心線用補強繊維コード。紡績糸が牽切紡績糸であることが好ましい。またポリケトン繊維を芯部に配した芯鞘構造糸であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝動ベルト心線用補強繊維コード並びに該コードで補強された伝動ベルトに関するものであり、特にホツレ性を改善した伝動ベルト心線用補強繊維コード並びに該コードで補強された伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に特許文献1において、ポリケトンで構成される繊維(以下「ポリケトン繊維」という。)の紡績糸を提案しており、高強度で、優れた外観と風合を有し、工程通過性等の加工性に優れた紡績糸であり、その一例として、平均繊維長が10〜200mmの牽切紡績糸を開示している。この紡績糸の用途として、伝動ベルト等のゴム補強材に有用としているが、伝動ベルト心線の特にホツレ性、即ち、ベルト両側面を露出した伝動ベルトにおいて、心線に用いた補強繊維コードの断面が側面に露出した場合に、そのコードを構成する繊維がホツレやすさ、の改善については、何ら検討されていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−082542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特にホツレ性を改善した伝動ベルト心線用補強繊維コード並びに該コードで補強された伝動ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)繰り返し単位の95モル%以上が下記式(1)で示されるポリケトンで構成される繊維の紡績糸で構成された伝動ベルト心線用補強繊維コードであって、この紡績糸の平均繊維長が300〜2000mmであることを特徴とする伝動ベルト心線用補強繊維コード。
【化1】

(2)紡績糸が、牽切紡績糸であることを特徴とする上記(1)記載の伝動ベルト心線用補強繊維コード。
(3)上記(1)又は(2)記載の伝動ベルト心線用補強繊維コードで補強されたことを特徴とする伝動ベルト。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特に特にホツレ性を改善した伝動ベルト心線用補強繊維コード並びに該コードで補強された伝動ベルトが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について以下に具体的に説明する。
本発明のポリケトン繊維を構成するポリケトンは、繰り返し単位の95モル%以上、好ましくは98モル%以上、特に99.6モル%以上が、上記式(1)で示されるものである。上記ポリケトンには、5モル%未満の範囲で、上記式(1)以外の繰り返し単位、例えば、下記式(2)に示すもの等を含有していても良い。
【化2】

但し式中、Rは、エチレン以外の炭素数1〜30の有機基であり、例えば、プロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等の基であり、Rの水素原子の一部または全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル基で置換されていてもよい。もちろん、Rは二種以上であってもよく、例えば、プロピレン基と1−フェニルエチレン基が混在していてもよい。
【0008】
ポリケトンの固有粘度[η]は、好ましくは1dl/g以上、より好ましくは2dl/g以上、特に好ましくは4dl/g以上であり、20dl/g以下、より好ましくは15dl/g以下、特に好ましくは10dl/g以下である。
尚、固有粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値である。
【数1】

式中のt及びTは、それぞれヘキサフルオロイソプロパノール(セントラル硝子(株)社製)及び該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記希釈溶液の濃度であり、ヘキサフルオロイソプロパノール100ml中のポリケトンの質量(g)である。
ポリケトンには必要に応じて、酸化防止剤、ラジカル抑制剤、他のポリマー、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属石鹸等の添加剤を含有させてもよい。
ポリケトン繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、扁平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブーメラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある。)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0009】
次に、ポリケトン繊維の好ましい特性としては、引張強度は5cN/dtex以上、より好ましくは10cN/dtex以上、特に好ましくは15cN/dtex以上であり、30cN/dtex以下であり、引張伸度は3%以上、より好ましくは3.5%以上、特に好ましくは4%以上であり、15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下、特に好ましくは6%以下であり、引張弾性率は100cN/dtex以上、より好ましくは200cN/dtex以上、特に好ましくは300cN/dtex以上であり、1000cN/dtex以下である。
ポリケトン繊維の好ましい単糸繊度は、0.01〜10dtex、より好ましくは0.1〜3dtex、特に好ましくは0.5〜3dtexである。
【0010】
本発明は、かかるポリケトン繊維の紡績糸を用いた伝動ベルト心線用補強繊維コードであって、この紡績糸の平均繊維長が300〜2000mmであることが必要があり、好ましくは350mm以上、さらに好ましくは400mm以上、特に好ましくは450mm以上であり、好ましくは1700mm以下、さらに好ましくは1500mm以下、、特に好ましくは1200mm以下である。平均繊維長が300mm未満では補強繊維コードの強度が不足し、2000mm超では、ホツレ性が改善されない。
本発明では、紡績糸としては、牽切紡績糸が好ましく、特に平均繊維長をLとした時に、1.5L以上の長さの短繊維が10〜25%の割合で有することが好ましく、特に、1.5L以上の長さの短繊維は12%以上、特に15%以上、23%以下、特に20%以下の割合で有することが好ましい。
【0011】
ここで、平均繊維長Lとは、ステープルダイヤグラムにおける繊維長と繊維本数を掛け合わせた数を全繊維本数で除した値であり、1.5L以上の長さの短繊維が10〜25%の割合で有するとは、1.5L以上の長さの短繊維の繊維本数を全繊維本数で除した値が10〜25%であることを意味する。
1.5L以上の長さの短繊維の割合が10%未満では強度が不足することがあり、25%超ではホツレ性が低下(ホツレやすくなる)することがある。
さらには、0.5L以下の長さの短繊維が10%以上、特に15%以上、25%以下、特に20%以下の割合で有することが好ましく、10%未満では、ホツレ性が低下(ホツレやすくなる)することがあり、25%超では高強度が得られにくいことがある。
【0012】
紡績糸の総繊度は、30〜1100dtex、特に55〜800dtexが好ましい。
又、紡績糸は追撚して用いてもよく、追撚や、下撚数や上撚数の撚係数(K)としては1000〜10000が好ましく、より好ましくは1500以上、3000以下、特に好ましくは2500以下の範囲で選定すればよい。追撚の撚係数(K)としては1000〜10000の範囲で選定すればよい。又、常法によって、例えば、下撚次いで上撚により双糸や三子にしたり、又、2本以上の紡績糸を合糸し、次いで、旋回性抱合ノズルによって抱合して用いてよく、これらの組み合わせも利用できる。ここで、撚係数(K)は下記式で得られる値である。
撚係数(K)=追撚数×紡績糸の総繊度(dtex)1/2
【0013】
本発明で用いる紡績糸は、精紡後の紡績糸に加えて、サイロスパンやサイロフィル、コアヤーン等の複合紡績糸を含むものであり、特にポリケトン繊維を芯部に配置した芯鞘構造糸(鞘部は、下記の混用する繊維として例示したものがある。)が好ましい。
又、本発明で用いる紡績糸は、ポリケトン繊維100%でもよいが、必要に応じて、好ましくは50質量%以下の範囲で、ポリケトン繊維以外の繊維、例えば、綿、羊毛等の天然繊維、レーヨン繊維、ライオセル繊維等のセルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維(パラ系、メタ系)、ポリビニルアルコール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、超高分子量ポリオレフィン繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、金属繊維等公知の各種繊維(長繊維でも短繊維でも良く、これらを組み合わせて用いても良い。)と交撚、混繊等により混用しても良い。又、融点が例えば200℃以下、好ましくは120〜160℃のポリアミド系やポリエステル系低融点融着糸と交撚等により混用して、熱処理してもよく、例えば、低融点融着糸を所定本数引き揃えて芯糸とし、本発明の紡績糸でその外周を所定本数カバリングし、熱処理する方法が挙げられる。
【0014】
本発明で用いる紡績糸を製造する好適な方法としては、図1に例示したものが挙げられ、ポリケトン繊維のトウ又はマルチフィラメントAを、供給ニップローラー1の前で引き揃え重ね合わされながら、供給ニップローラー1を通過した後、シューター2の中で牽切ニップローラー3により同時に引きちぎられ、ドラフトされながら均一に牽切され短繊維束を得る。次いで、吸引性空気ノズル4で牽切ニップローラー3から引きちぎられ、さらに、旋回性抱合ノズル5によって、絡みの付与とともに短繊維の毛羽を巻き付けて結束部を付与させた後、デリベリローラー6により引き取られ、短繊維の毛羽がランダムに巻きついた糸条7となる。
又、図1に例示した工程を2系列設けて、各々、旋回性抱合ノズル5によって、絡みの付与とともに短繊維の毛羽を巻き付けて結束部を付与された後、両者を合糸し、さらに別の旋回性抱合ノズル(図示せず)によって、抱合してからデリベリローラー6により引き取ってもよい。
【0015】
このようにして得られた紡績糸を、常法によって、例えば、下撚次いで上撚により双糸や三子にしたり、又、2本以上の紡績糸を合糸し、次いで、旋回性抱合ノズルによって抱合して用いてよく、これらの組み合わせも利用できる。
さらに、牽切して得られた短繊維束を、別途、常法に従って、一般的な練条、粗紡、精紡工程を通して紡績糸としてもよく、特にリング精紡糸は、よりソフト風合のものとなり好ましいものである。
又、牽切するに際しては、従前のパーロック式、ターボ式を利用してもよい。
【0016】
本発明において、1.5L以上の長さの短繊維を10〜25%の割合にする方法としては、例えば、牽切時のドラフトを低く設定する方法や、供給ニップローラー1と牽切ニップローラー3の間に正多角形のミドルローラーを設ける方法等が挙げられる。
尚、この方法は、0.5L以下の長さの短繊維を10〜25%の割合にする方法としても適したものである。
本発明の伝動ベルト心線用補強繊維コードは、かかるポリケトン繊維の紡績糸で構成されているものであるが、伝動ベルト心線用補強繊維コードとして用いるに際しては、RFL処理されていてもよい。
RFL処理とは、レゾルシンとホルマリンとラテックスを含む混合液で処理することをいい、RFL樹脂の好ましい付着量は、繊維に対して1〜10質量%、特に2〜7質量%の範囲がよい。
【0017】
好ましいホルマリン(F)とレゾルシン(R)とのモル比(F/R)は1.0〜2.2、特に好ましくは1.0〜1.9、全ラテックスの固形分質量(L)に対するレゾルシンおよびホルマリン総質量(RF)の割合(RF/L)は5〜25質量%、特に5〜17質量%が好ましく、さらに、水酸化ナトリウムおよび水酸化アンモニウムの総量とレゾルシン(R)とのモル比(NaOH+NH4OH/R)は、0.21以下が好ましい。
ラテックスの種類は、伝動ベルトに用いられるゴム組成物に対応したラテックスが好ましく、例えば、スチレンブタジエンビニルピリジン三元共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン(CSM)、アルキル化クロルスルホン化ポリエチレン(ACSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(HNBR)、エピクロルヒドリン、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、オレフィンビニルエステル共重合体、エチレンプロピレンジエン系ゴム(EPDM)等のラテックスが挙げられる。
又、RFL処理に先立って、エポキシやイソシアネート化合物で前処理してもよい。
【0018】
RFL処理の方法としては、ポリケトン繊維の紡績糸に施してもよいし、又、ポリケトン繊維の長繊維を必要に応じて撚糸した状態でRFL処理し、次いで、カットして短繊維を得て紡績糸となすのもよい。撚数は、下記式で示される撚係数(K1)で100〜700が好ましいが、30000程度でもよい。
T1=K1/D1/2
T1=撚数(T/m)、D=RFL処理に供給する糸条の繊度(dtex)
心線は、本発明の伝動ベルト心線用補強繊維コード100%で構成するのが好ましいが、必要に応じて、50質量%以下の範囲で、他の補強繊維コード(上記した本発明の紡績糸に混用する繊維で構成された補強繊維コード)と混用してもよく、例えば、1〜数本交互に引き揃えて混用してもよい。
【0019】
本発明において、伝動ベルトとしては、Vベルト、平ベルト、歯付ベルトが好適であり、Vベルトは、Vリブドベルト、ローエッジタイプVベルト、ラップドタイプVベルト、が好ましい。又、圧縮ゴム層を有する摩擦伝動ベルトでもよく、さらに、摩擦伝動ベルトは、接着ゴム層を有するものでもよい。例えば、圧縮ゴム層と、圧縮ゴム層に接する接着ゴム層と、接着ゴム層に接するゴム付帆布(補強布をRFL処理後、ゴム組成物をフリクション・コーチングしたもの)とから構成され、さらに、接着ゴム層中にベルト長手方向に沿って芯線が埋設されたものがある。
又、ローエッジタイプVベルトは、芯線が埋設された接着ゴム層と、その下部に圧縮ゴム層が、その上部に伸張ゴム層が設けられており、圧縮ゴム層の底面及び又は伸張ゴム層の表面には、ゴム付帆布が積層(1〜6プライ)されている。
【0020】
ここで、圧縮ゴム層を形成するためのゴム組成物と、接着ゴム層を形成するためのゴム組成物は同様のものを用いてもよく、又、圧縮ゴム層及び又は接着ゴム層にポリケトン短繊維を含有させてもよく、カレンダー列理方向をベルトの長さ方向する場合やベルトの幅方向する場合に応じて、ゴム100質量部あたりのポリケトン短繊維の含有量を適宜選定すればよいが、好ましくは、ゴム組成物におけるポリケトン短繊維の好ましい含有量は、ゴム100質量部あたり、3〜50質量部、より好ましくは5〜40質量部、特に5〜30質量部がよい。
ポリケトン短繊維の繊維長は、0.5〜10mmが好ましく、1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、特に2mm以上であり、9mm以下、より好ましくは8mm以下、特に7mm以下がよく、好ましい繊維長Lと繊維径Dの比L/Dは、30以上、より好ましくは50以上、特に100以上であり、1670以下、より好ましくは1500以下、特に1000以下がよい。又、好ましい単糸繊度は、0.01〜10dtex、より好ましくは0.1〜10dtex、特に好ましくは0.5〜5dtexの範囲である。
【0021】
さらに、補強布としては、例えば、ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド系繊維(ナイロン6、66等)、ポリビニルアルコール系繊維、アラミド繊維(パラ系、メタ系)、全芳香族ポリエステル繊維、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、超高分子量ポリオレフィン繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、金属繊維、ポリケトン繊維(本発明の補強繊維コードでもよい)等公知の繊維マルチフィラメント糸やモノフィラメント糸の一種以上を用いて平織、綾織、朱子織等に製織したものであり、補強布は、経糸と緯糸の交差角が90〜120°程度の広角度のものでもよい。
【0022】
ゴム組成物としては、例えば、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アルキル化クロルスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、アクリルゴム、ウレタンゴム、水素添加アクリロニトリルゴム(HNBR)、エチレンαオレフィンエラストマーを主体とする組成物、例えば、エチレンプロピレンジエン系ゴム(EPDM)、エチレンプロピレンコポリマー(EPM)、エチレンブテンコポリマー(EBM)、エチレンオクテンコポリマー(EOM)、これらのハロゲン置換物(特に塩素置換物)、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。エチレンαオレフィンエラストマーを主体とする組成物は、水素添加アクリロニトリルゴム(HNBR)を含んでも良く、又、必要に応じて、カーボンブラック、シリカ等の増強剤、炭酸カルシウム、タルク等の充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤等を含有させてもよい。
【0023】
本発明の伝動用ベルトは、従来公知の製法により製造できるものであり、例えば、Vリブドベルトの場合、成形ドラムの周面にゴム付帆布と、接着ゴム層用のゴム組成物未加硫シートを巻きつけ、その上に芯線をスピニングし、さらに、その上に、接着ゴム層用のゴム組成物未加硫シートを巻きつけた後、圧縮ゴム層用のゴム組成物未加硫シートを巻きつけて積層体とする。ついで、この積層体を加硫して得られた環状物を切削砥石にて表面にリブを形成し、所定幅に裁断すればよい。
尚、例えば屋外で強い紫外線を受けることによってポリケトン繊維の引張強度等の低下を抑制する目的で、繊維又は紡績糸の形態で紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系の一種又は二種以上の組み合わせがある。)及び/又は紫外線遮蔽剤(例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム等の微粒子があり、平均粒径は0.01〜0.6μmが好ましい。)を含有させることが好ましい。含有させる方法としては、例えば、繊維又は紡績糸に紫外線吸収剤及び/又は紫外線遮蔽剤を含有した樹脂やフィルムを付与又は被覆する方法があり、紫外線吸収材及び/又は紫外線遮蔽剤の含有量は、樹脂やフィルムの質量に対して0.001〜10質量%が好ましい。
【実施例】
【0024】
本発明を実施例などに基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。

本発明における測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)繊維の引張強度、引張伸度、引張弾性率
JIS−L−1013に準じて測定する。
サンプル長:20cm、引張速度:20cm/分で測定し、20回測定した時の平均値を求める。
(2)紡績糸の引張強度
撚係数5450で撚糸した糸条を測定する。
撚係数(K)=撚数×紡績糸の総繊度(dtex)1/2
【0025】
(3)補強繊維コードのコード強度
JIS−L−1017に準じて処理コードを測定した。
(4)ホツレ性テスト
平ベルトを幅2cmにカットし、カット面に露出したカットされたコードのホツレ程度を目視により評価した。
◎;コードのホツレが全く無し
○;カット面にコードのホツレが若干見られる
△;カット面にコードのホツレが見られる
×;カット面の全面にコードのホツレが見られる
【0026】
(5)平ベルトの作製
円筒状の成形ドラムの周面に下記に示すゴム組成物のゴムシート(圧縮ゴム層)を巻き付けた後、その上から実施例で得られた処理コードを螺旋状に巻き付け、さらに同じゴムシート(伸張ゴム層)を巻き付け、これを加硫し、所定幅にカットして平ベルトを作製した。
<ゴム組成物>
水素化ニトリルゴム 100質量部
亜鉛華 5質量部
ステアリン酸 1質量部
老化防止剤 2質量部
カーボンブラック 40質量部
可塑剤 5質量部
促進剤 3質量部
硫黄 0.5質量部
【0027】
[実施例1]
図1に示す装置を用いて、1670dtex/1250fのポリケトン繊維マルチフィラメント糸(旭化成せんい(株)社製;商標サイバロン;引張強度18cN/dtex、引張伸度5%、引張弾性率350cN/dtex)を、供給ニップローラー1とシューター2と牽切ニップローラー3との間(牽切長120cm)で、約3.3倍(牽切時のドラフト)で300m/分の速度で引きちぎり短繊維束を得、引き続いて、吸引性空気ノズル4と旋回性抱合ノズル5に通して、絡みの付与とともに短繊維の毛羽を巻き付けて結束部が付与された500dtexの紡績糸を得た。
得られた紡績糸は、強度13.7cN/dtex、平均繊維長(L)450mm、1.5L以上並びに0.5L以下の割合は16〜18%であった。
【0028】
得られた紡績糸6本を引き揃えて撚糸(15.7回/10cm)し、200℃で2分間、10Nの張力で熱処理した。引き続き、下記のRFL液に10Nの張力で3秒間浸漬した後、100℃で1分間の乾燥、200℃で2分間の熱処理を行い、処理コード(コード強度13cN/dtex)を得た。
該補強繊維コードを用いた伝動ベルトの上記のホツレ性テストの結果は、ホツレ程度◎と優れたものであった。
<RFL液>
H−NBRラテックス 100質量部
レゾルシン 14.6質量部
ホルマリン 9.2質量部
苛性ソーダ 1.5質量部
水 262.5質量部
【0029】
[実施例2〜4、比較例1〜2]
実施例1において、牽切長を変化させて、平均繊維長(L)が変化した短繊維束を得、得られた短繊維束を用いて実施例1と同様にして補強繊維コードを得た。該補強繊維コードを用いた伝動ベルトの上記のホツレ性テストの結果は、平均繊維長(L)が300mmのもの(実施例2)は、紡績糸強度13.6cN/dtex、コード強度13cN/dtex、ホツレ程度◎〜○であり、平均繊維長(L)が1200mmのもの(実施例3)は、紡績糸強度13.8cN/dtex、コード強度13cN/dtex、ホツレ程度◎であり、平均繊維長(L)が2000mmのもの(実施例4)は、紡績糸強度13.8cN/dtex、コード強度13cN/dtex、ホツレ程度◎〜○といずれも優れたものであった。
平均繊維長(L)が250mmのもの(比較例1)は、紡績糸強度13.4cN/dtex、コード強度11cN/dtex、ホツレ程度○〜△とコード強度及びホツレ性ともに実施例に対比して劣ったものであった。又、平均繊維長(L)が2200mmのもの(比較例2)は、紡績糸強度13.8cN/dtex、コード強度13cN/dtex、ホツレ程度△〜×と実施例に対比して劣ったものであった。
【0030】
[実施例5]
実施例1で得られた短繊維束を、常法に従い、リング精紡して得られたリング紡績糸は、強度13.5cN/dtexであった。得られた紡績糸を用いて実施例1と同様にして補強繊維コードを得、該補強繊維コードを用いた伝動ベルトの上記のホツレ性テストの結果は、ホツレ程度◎と実施例1と同様に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、特にホツレ性を改善した伝動ベルト心線用補強繊維コード並びに該コードで補強された伝動ベルトを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の紡績糸を製造する方法の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0033】
A:トウ又はマルチフィラメント
1:供給ニップローラー
2:シューター
3:牽切ニップローラー
4:吸引性空気ノズル
5:旋回性抱合ノズル
6:デリベリローラー
7:糸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位の95モル%以上が下記式(1)で示されるポリケトンで構成される繊維の紡績糸で構成された伝動ベルト心線用補強繊維コードであって、この紡績糸の平均繊維長が300〜2000mmであることを特徴とする伝動ベルト心線用補強繊維コード。
【化1】

【請求項2】
紡績糸が、牽切紡績糸であることを特徴とする請求項1に記載の伝動ベルト心線用補強繊維コード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の伝動ベルト心線用補強繊維コードで補強されたことを特徴とする伝動ベルト。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−102766(P2009−102766A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274867(P2007−274867)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】