説明

伝動ベルト

【課題】薄型化が可能であり、走行前後でのベルト張力の低下が少なく、耐屈曲疲労性に優れ、自動車や電機機器用として好適に用いることができる伝動ベルトを提供する。
【解決手段】ゴム中に埋設した心線を有する伝動ベルトであって、該心線が主たる繰返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレートまたはエチレン2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルからなり、幅(W)が0.1〜5mm、厚み(H)が0.01〜0.5mm、幅と厚みの比(W/H)が3〜20である横断面を有するポリエステルスリットヤーンからなることを特徴とする伝動ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝動ベルトに関し、さらに詳しくは薄型化が可能であり、耐屈曲疲労性に優れ、自動車や電機機器用として好適に用いられる伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境破壊、石油資源枯渇といった課題に対し、自動車、電機機器をはじめ省エネルギー化、エネルギー代替化が非常に注目され、特に省エネルギー、省燃費のために自動車、電機機器のコンパクト化、軽量化が進められているのは周知の通りである。この取組みの中で、自動車のエンジン補機駆動や電機機器の駆動ギア等に用いられている伝動ベルトにおいても、コンパクト化、軽量化に伴う薄型化、軽量化が求められている。こういった伝動ベルトにはベルト補強心線として一般的にポリエステル、アラミド等の繊維コードが用いられており、その中でも補強繊維としては強力、弾性率、耐疲労性のバランスが良く、最も汎用性のあるポリエチレンテレフタレート(PET)繊維が多く用いられている。
【0003】
こうした背景のもと、ベルトを薄型化する技術としては例えば、特許文献1(特開平9−236156号公報)や特許文献2(特開2000−320616号公報)、特許文献3(特開2002−227051号公報)、特許文献4(特開2005−256961号公報)のように、PETよりも弾性率の高いポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)繊維や、PETとアラミド繊維の混撚コードを伝動ベルト心線に用いる技術が開示されている。上記のように、弾性率の高いPENを用いることによって補強層を薄型化し、かつ撚構成によって耐屈曲疲労性を向上せしめているが、近年の大幅な自動車、電機機器のコンパクト化に対しては尚やや不足しており、更なる伝動ベルトの薄型化、耐屈曲疲労性向上ができる伝動ベルトの改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−236156号公報
【特許文献2】特開2000−320616号公報
【特許文献3】特開2002−227051号公報
【特許文献4】特開2005−256961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、薄型化が可能であり、走行前後でのベルト張力の低下が少なく、耐屈曲疲労性に優れ、自動車や電機機器用として好適に用いることができる伝動ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ゴム中に埋設した心線を有する伝動ベルトにおいて、該心線が、主たる繰返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレートまたはエチレン2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルからなり、幅(W)が0.1〜5mm、厚み(H)が0.01〜0.5mm、幅と厚みの比(W/H)が3〜20である横断面を有するポリエステルスリットヤーンからなることを特徴とする伝動ベルトが提供される。
また、上記ポリエステルスリットヤーンは、引張強度が190〜700MPa、引張伸度が10〜80%、150℃乾熱収縮率が0.1〜8%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の伝動ベルトは、特定形状のスリットヤーンを用いていることによって、公知の繊維心線に比べ、ベルト厚みに垂直な方向における心線の径(厚み)が非常に小さく、ベルト運転時の繰返し屈曲に対して心線が受ける伸長−圧縮比を小さくすることができるため、ベルトの大幅な薄型化が可能であるとともに、走行前後でのベルト張力の低下が少なく、優れた耐屈曲疲労性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るVベルトの断面斜視図である。
【図2】本発明においてベルト張力維持率の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の伝動ベルトは、ゴム中に埋設した心線を有する伝動ベルトであり、図1では、該伝動ベルトの一実施例としてのVリブドベルトの断面図を示している。図1に示すVリブドベルト1は、カバー帆布2からなる伸張部と、心線3を埋設したクッションゴム層4と、その下側に弾性体層である圧縮部からなっている。この圧縮部は、ベルト長手方向に延びる断面略三角形である台形の複数のリブ5を有している。
【0010】
上記カバー帆布2は、通常、綿、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アラミド繊維等からなる糸を用いて、平織、綾織、朱子織等に製織した布であり、クッションゴム層4に一体に接着されている。このゴム層4とこれに一体に形成されている上記リブ5は、特に限定されるものではないが、好ましくは、例えば、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロプレンゴム、天然ゴム、CSM、ACSM、SBR、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムが使用される。これらのリブを形成するゴムには、アラミド、ナイロン、ポリビニルアルコール等からなる短繊維で補強しても良く、その他、安定化剤、酸化防止剤、架橋剤、加硫促進剤、カーボン、シリカ等の粒子成分等、適宜添加しても良いのは言うまでも無い。
【0011】
本発明においては、伝動ベルトの心線3にポリエステルスリットヤーン(単に、スリットヤーンと称することがある)を用いるが、該ポリエステルスリットヤーンは、ポリエステルフィルムを特定の幅にスリットし、フィラメント状としたものである。
【0012】
上記ポリエステルスリットヤーンを構成するポリエステルとしては、主たる繰返し単位の90モル%以上、好ましくは95モル%以上がエチレンテレフタレートまたはエチレン2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルであり、10モル%未満、好ましくは5モル%未満の割合で他の共重合成分を含んでも差し支えない。このような共重合成分としては例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、オキシ安息香酸、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメリット酸、ペンタエリスリトール等が挙げられる。又これらのポリエステルには安定剤、着色剤等の添加剤を含んでも差し支えない。また、末端カルボキシル基濃度や分子量等のポリマー性状は何等限定されるものではない。
【0013】
上記ポリエステルスリットヤーンの横断面における厚み(H)が0.01〜0.5mmである。厚みが0.01mm未満の場合は、実用上に耐えうる強度が得られず、一方、0.5mmを越える場合は曲げに対して非常に硬くなるため、ベルトが硬くなるだけでなく、屈曲疲労性が著しく低下してしまう恐れがあり、走行前後でのベルト張力の低下が大きくなりやすい。上記厚みは0.05〜0.3mmであることがより好ましい。
【0014】
また、上記ポリエステルスリットヤーンの横断面における幅(W)が0.1〜5mmである。この範囲であれば、既存ポリエステル繊維の処理コードのディップ処理工程に充分適用できるため工業的な観点から望ましい。幅が0.1mm未満では実用上に耐えうる強度が得られず、一方、幅が5mm以上ではディップ処理工程における腰折れ等の欠点が生じやすくという問題がある。該ポリエステルスリットヤーンの幅としては0.5〜3mmであることがより好ましい。
【0015】
さらに、上記ポリエステルスリットヤーンの横断面において、厚み(H)に対する幅(W)の比(W/H)が2〜30である。該ポリエステルスリットヤーンの横断面の厚み(H)に対する幅(W)の比(W/H)が2未満であると曲げに対する伸長圧縮歪みが大きくなるため耐屈曲疲労性が低下し、走行前後でのベルト張力の低下が大きくなり、一方、30を越えると垂直方向からの歪み入力に対してポリエステルスリットヤーンが折れたりすることによって耐久性が著しく低下してしまう恐れがある。該ポリエステルスリットヤーンは厚みに対する幅の比は5〜20であることがより好ましい。
【0016】
上記ポリエステルスリットヤーンの厚み、幅の調整は、ポリエステルフィルムの厚みやスリットでカットする際のスリット幅で調整できるとともに、さらに後述するディップ処理工程での延伸によっても目的のサイズに調整することができる。
【0017】
また、上記ポリエステルスリットヤーンの引張強度は190〜700MPaであることが好ましく、240〜600MPaであることがさらに好ましい。引張強度が190MPa未満の場合、実用上耐え得るベルトの強度が得難くなる傾向にあり、一方、700MPaを越えるものはポリエステルスリットヤーン製造時に切断しやすく生産が難しくなる傾向にある。
【0018】
さらに、上記ポリエステルスリットヤーンの引張伸度は10〜80%であることが好ましく、15〜70%であることがさらに好ましい。引張伸度が80%を超える場合は、伝動ベルトに応力負荷を受けた際に変形しすぎるため伝動ベルトとして実用性が低くなる傾向にあり、一方、10%未満の場合は伝動ベルトが伸び難いためベルトの柔軟性が劣り、耐屈曲疲労性が低下する恐れがある。
【0019】
また、本発明で用いるポリエステルスリットヤーンの150℃乾熱収縮率は0.1〜8%であることが好ましく、0.5〜7%であることがさらに好ましい。150℃乾熱収縮率が0.1%未満ではベルトの張力維持するのに必要な熱収縮応力が不足するため伝動効率が低下する恐れがあり、一方、8%を超える場合は、ベルトの寸法安定性が低下する傾向にある。
【0020】
上記ポリエステルスリットヤーンの弾性率としては1〜30GPaであることが好ましく、より好ましくは3〜20GPaである。弾性率が1GPa未満であるとベルト高負荷時に伸びてしまう恐れがあり、一方、30GPaを超えると硬すぎるために耐屈曲疲労性が低下する傾向にある。
【0021】
上記ポリエステルスリットヤーンからなる心線のディップ処理工程は、まず未処理コード(心線)をエポキシ化合物やイソシアネート化合物から選ばれた処理液を付与した後、100〜250℃に温度設定した炉に30〜600秒間通して乾燥、熱延伸セットし、続いてRFL液からなる接着液を付与し、150〜250℃に温度設定した炉に30〜600秒間通して乾燥、熱延伸セットし処理コードとする。この間、総延伸倍率として0〜2倍で、2段以上の延伸を行うことが、強力、弾性率を高める観点から好ましい。このような加熱延伸はフィルム製造工程でタテ方向に高倍率延伸を行う二軸延伸したのちに得られたフィルムをスリット加工しても良いし、フィルムをスリット加工したのちに次いで公知のポリエステルディップ処理工程で1浴、2浴ディップ処理時に行っても構わない。延伸は上記熱処理と同時に熱処理炉前後のローラー速度を変更することによって行うことができ、延伸倍率を向上することによって、強度・弾性率を高める、伸度を低下させる、繊度・幅・厚みを低下させるなどポリエステルスリットヤーンの形状や物性を任意に調整することが可能である。
【0022】
上記ポリエステルスリットヤーンには、ベルトを構成するゴムとポリエステルとの接着のために接着剤が付与される。付与される接着剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ハロゲン化フェノール化合物及びレゾシンポリサルファイド化合物などを含む接着剤が挙げられ、具体的には、第1処理液としてエポキシ化合物、ブロックイソシアネ−ト、ラテックスの混合液を付与し、上記熱処理後に第2処理液としてレゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物およびゴムラテックスからなる液(RFL液)を付与し、さらに熱処理する方法が好ましい。ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBR、CSM等である。接着剤を付与する方法としては公知のディップ工程を活用できるが、ローラーとの接触、ドクターナイフによるコーティング、若しくは、ノズルからの噴霧による塗布、又は、溶液への浸漬などの手段が採用できる。また、該スリットヤーンに対する固形分付着量は、0.1〜10重量%が好ましく、1.0〜5.0重量%がより好ましい。該スリットヤーンに対する固形分付着量を制御するためには、前記と同様に、圧接ローラーによる絞り、スクレーパー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引等の手段により行うことができ、付着量を多くするためには複数回付着させてもよい。
【0023】
Vリブドベルトの製造方法の一例は以下の通りである。まず、円筒状の成形ドラムの周面に1〜複数枚のカバー帆布2と接着ゴム層4とを巻き付けた後、この上に本発明のポリエステルスリットヤーンからなる心線3を螺旋状に巻き付け、更に圧縮ゴム層を順次巻き付けて積層体を得た後、これを加硫して加硫スリーブを得る。次に、加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架され所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の加硫スリーブに当接するように移動して加硫スリーブの圧縮ゴム層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研磨する。このようにして得られた加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該加硫スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定に幅に切断して個々のVリブドベルト1を得ることができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、実施例は説明のためのものであって、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本発明の実施例における評価は下記の測定法で行った。
【0025】
(1)引張強度、引張伸度、初期弾性率、150℃乾熱収縮率
JIS L1017に準じて測定を行い、それぞれ求めた。
(2)Vベルト張力維持率
図2に示すように、直径100mmのプーリー6、7間にVベルトを架設し、初期の取り付け張力を900Nとし、走行中のプーリー回転数を3600r.p.m.として室温にて走行試験を行った。そして、4時間走行後ストップさせ、更に24時間放冷させた後の張力を測定し、初期の取り付け張力(900N)に対する張力維持率を算出した。
(3)Vベルトの耐屈曲疲労性
上記(2)のVベルト走行試験後のベルトから心線を取り出し、その強力を測定して、ベルト走行試験前のベルトから取り出した心線の強力に対する強力維持率を算出した。
(4)Vベルト重量比
作成後のベルト重量を、比較例を100として指数化し、ベルト重量を比較評価した。
【0026】
[実施例1]
厚さ0.13mmのポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製テオネックスフィルム)を2mm幅に裁断したスリットヤーンを使用し、これをコンピュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製、ディップ処理機)を用いて、11m/分の速度でエポキシとブロックドイソシアネートからなる水分散体のプライマーに浸漬した後、200℃2分間で1%の伸張し、次いで240℃1分間で20%の伸張を行い、引き続いて、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)水分散体に浸漬した後に170℃2分間で1%の伸張し、次いで240℃1分間で70%の伸張を行い、23m/分の速度で巻き取り、引張強度270MPa、引張伸度18%、弾性率10GPa、150℃乾熱収縮率3.5%、厚み0.15mm、幅1.0mmのポリエステルスリットヤーン処理コードを得た。得られた処理コードを心線として用いて、図1に示すVベルト1を前述の方法により作成した。得られたVベルトのベルト張力維持率、耐屈曲疲労性、ベルト重量比の結果を表1にまとめて示す。
【0027】
[実施例2]
厚さ0.10mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製 テトロンフィルム)を2mm幅に裁断したスリットヤーンを使用し、これをコンピュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製、ディップ処理機)を用いて、12m/分の速度でエポキシとブロックドイソシアネートからなる水分散体のプライマーに浸漬した後、130℃2分間で1%の伸張し、次いで240℃1分間で20%の伸張を行い、引き続いて、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)水分散体に浸漬した後に170℃2分間で1%の伸張し、次いで240℃1分間で60%の伸張を行い、23m/分の速度で巻き取り、引張強度340MPa、引張伸度25%、弾性率5GPa、150℃乾熱収縮率5.0%、厚み0.15mm、幅1.1mmのポリエステルスリットヤーン処理コードを得た。得られた処理コードを心線として用いて、図1に示すVベルト1を前述の方法により作成した。得られたVベルトのベルト張力維持率、耐屈曲疲労性、ベルト重量比の結果を表1にまとめて示す。
【0028】
[比較例1]
繊度1100dtex/249フィラメントのポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)繊維(帝人ファイバー(株)製 テオネックス繊維、丸断面)を2本合糸して撚数200T/mで下撚し、さらにこれを3本引き揃え撚数120T/mで上撚して、1100dtex/2×3の撚糸コードを得た。該撚糸コードを用い、これをコンピュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製、ディップ処理機)を用いて、22m/分の速度でエポキシとブロックドイソシアネートからなる水分散体のプライマーに浸漬した後、130℃2分間定長で乾燥し、次いで240℃1分間で3%の伸張を行い、引き続いて、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)水分散体に浸漬した後に170℃2分間、次いで240℃1分間それぞれ定長熱処理を行って巻き取り、ポリエチレンナフタレート処理コードを得た。得られた処理コードを心線として用いて、図1に示すVベルト1を前述の方法により作成した。得られたVベルトのベルト張力維持率、耐屈曲疲労性、ベルト重量比の結果を表1にまとめて示す。
【0029】
[比較例2]
繊度1100dtex/249フィラメントのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(帝人ファイバー(株)製 テトロン繊維、丸断面)を2本合糸して撚数200T/mで下撚し、さらにこれを3本引き揃え撚数120T/mで上撚して、1100dtex/2×3の撚糸コードを得た。該撚糸コードを用い、これをコンピュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製、ディップ処理機)を用いて、22m/分の速度でエポキシとブロックドイソシアネートからなる水分散体のプライマーに浸漬した後、130℃2分間定長で乾燥し、次いで240℃1分間で3%の伸張を行い、引き続いて、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)水分散体に浸漬した後に170℃2分間、次いで240℃1分間それぞれ定長熱処理を行って巻き取り、ポリエチレンナフタレート処理コードを得た。得られた処理コードを心線として用いて、図1に示すVベルト1を前述の方法により作成した。得られたVベルトのベルト張力維持率、耐屈曲疲労性、ベルト重量比の結果を表1にまとめて示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1から明らかな通り、実施例では薄膜状のスリットヤーンを心線に用いることにより比較例に比べて心線およびクッションゴム量を低減できるためベルト重量が大幅に低減するとともに、プーリー通過時の曲げに対して心線が受ける伸長圧縮比が低減できるため、耐屈曲疲労性、ベルト張力維持率を著しく向上できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、ベルトを薄型化しつつ耐屈曲疲労性に優れ、走行前後でのベルト張力の低下が少なく、自動車や電機機器用として好適に用いられる伝動ベルトを提供でき、自動車、電機機器の小型化、軽量化等、環境負荷低減に大いに効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 Vリブドベルト
2 カバー帆布
3 心線
4 クッションゴム層
5 リブ
6,7 プーリー
W ポリエステルスリットヤーン心線の横断面の幅
H ポリエステルスリットヤーン心線の横断面の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム中に埋設した心線を有する伝動ベルトであって、該心線が、主たる繰返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレートまたはエチレン2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルからなり、幅(W)が0.1〜5mm、厚み(H)が0.01〜0.5mm、幅と厚みの比(W/H)が3〜20である横断面を有するポリエステルスリットヤーンからなることを特徴とする伝動ベルト。
【請求項2】
ポリエステルスリットヤーンが以下を満足する請求項1記載の伝動ベルト。
(1)引張強度:190〜700MPa
(2)引張伸度:10〜80%
(3)150℃乾熱収縮率:0.1〜8%

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−167711(P2012−167711A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27638(P2011−27638)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】