説明

伝導性熱可塑性組成物およびそのアンテナ

絶縁体ではなく伝導性熱可塑性組成物を得るためにミクロン伝導性繊維および/またはミクロン伝導性粉末が充填された樹脂系構造材料を含む伝導性ポリマー材料が開示される。本発明の伝導性熱可塑性組成物を含むアンテナおよびその製造方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝導性熱可塑性組成物を得るためにミクロンサイズの伝導性繊維が充填された樹脂系構造材料を含む伝導性ポリマー材料に関する。本発明は、この材料を含むアンテナにも関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナは、無線リンクを含む電子通信システムの重要な部品である。通信およびナビゲーションとしてのこのような用途では、信頼性があり高感度のアンテナが必要である。アンテナは電気信号および電流を伝導し、それによって電磁エネルギーが伝送され、および/または受信される。このためには、アンテナ、特にアンテナ素子の材料が導電性であることが必要であり、このため従来これらが金属からできていることが必要であった。典型的にはアンテナは、多種多様な構成の伝導性金属アンテナ素子から製造されている。アンテナ材料の費用またはアンテナの製造費を削減することは、アンテナを利用するあらゆる用途において非常に有益となる。
【0003】
典型的には金属は、成形技術によって物品を製造するために高温が必要であり、および/またはそれらの硬度のために物品の機械加工がより困難となるため、製造費が高くなる。金属は、特にボートまたは船の上などの海洋環境におかれた場合に、腐食またはその他の環境による損傷が生じることもある。したがって、アンテナを製造するための金属以外の伝導性材料が開発されることが望ましい。金属部品をより軽量の構成要素で置き換えることによって多種多様の装置の重量が減少することも望ましい。熱可塑性ポリマー材料は、製造が容易であり軽量であるため、金属部品の代わりに使用されることが多い。しかし、典型的な熱可塑性ポリマーは非伝導性であることが分かっており、そのためアンテナ用途には適していない。静電気放電およびシールド線、ケーブル、ならびに電磁干渉からの電子デバイスなどの用途に使用するための半導体組成物を得るために、カーボンブラック、伝導性ガラス繊維、あるいは金属粉末または繊維などの伝導性材料の熱可塑性ポリマーへの充填が行われている(たとえば、米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、および米国特許公報(特許文献4)を参照されたい)。
【0004】
(特許文献5)には、繊維または粒子の形態の伝導性材料が会合した、または充填されたポリマー材料を主成分とする主要構造部材を含むテレスコピックアンテナが記載されている。(特許文献6)には、導電性プラスチックで構成されるバーアンテナアンテナが記載されている。(特許文献7)には、伝導性材料を充填した熱可塑性材料を含むアンテナが記載されている。米国特許公報(特許文献8)には、伝導性材料が充填された樹脂を主成分とする材料で形成されるアンテナが開示されている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,169,816号明細書
【特許文献2】米国特許第4,286,023号明細書
【特許文献3】米国特許第5,004,561号明細書
【特許文献4】米国特許第6,409,942号明細書
【特許文献5】国際公開第93/26013号パンフレット
【特許文献6】国際公開第00/33418号パンフレット
【特許文献7】仏国特許出願公開第2660116号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第20020109634号明細書
【特許文献9】米国特許第4,076,698号明細書
【特許文献10】米国特許第3,645,992号明細書
【特許文献11】米国特許第5,198,401号明細書
【特許文献12】米国特許第5,405,922号明細書
【非特許文献1】アプライド・サイエンス・パブリッシャーズ・リミテッド(Applied Science Publishers Ltd)より1973年に出版されたD.C.オルポート(Allport)およびW.H.ジェーンズ(Janes)編著の文献「ブロックコポリマー」(Block Copolymers)、の4.4章および4.7章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主目的は、軽量で、製造が容易であり、費用が少なく、および/または腐食やその他の環境による損傷に対して抵抗性であるアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、伝導性熱可塑性組成物からアンテナ素子および接地面を製造することによって実現される。これらの伝導性熱可塑性組成物は、絶縁体ではなく導体となる樹脂系材料を得るために伝導性材料が充填された熱可塑性樹脂である。これらの樹脂は構造マトリックスとなり、ミクロンサイズの伝導性繊維が充填されると、絶縁体ではなく導体となる複合材料になる。
【0008】
したがって、本発明は、1キロヘルツにおいて約5.0未満の誘電率を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含む構造マトリックス中に分散した15〜70重量%の伝導性繊維を含む伝導性熱可塑性組成物を含むアンテナであって;
(i)前記組成物がポリアミド樹脂またはエポキシド樹脂を含む場合、追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要があり;
(ii)前記組成物がポリエステル樹脂を含む場合、アクリロニトリル/スチレン/アクリレート樹脂以外の追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要がある、アンテナを提供する。
【0009】
本発明の別の主目的は、本発明の伝導性熱可塑性組成物からアンテナを形成する方法を提供することである。本発明は、
(a)1キロヘルツにおいて約5.0未満の誘電率を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含む構造マトリックス中に約15〜70重量%の伝導性繊維を分散させて伝導性熱可塑性組成物を形成するステップと;
(b)前記伝導性熱可塑性組成物を、アンテナに望ましい形状に成形するステップとを含み;
(i)前記組成物がポリアミド樹脂またはエポキシド樹脂を含む場合、追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要があり;
(ii)前記組成物がポリエステル樹脂を含む場合、アクリロニトリル/スチレン/アクリレート樹脂以外の追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要がある、アンテナの製造方法を提供する。
【0010】
本発明の別の主目的は、アンテナの製造に有用な伝導性熱可塑性組成物を提供することである。
【0011】
したがって、本発明は、アイオノマー樹脂を含む構造マトリックス中に分散した15〜70重量%の伝導性繊維を含む伝導性熱可塑性組成物を提供する。
【0012】
本発明の伝導性熱可塑性組成物、およびそのアンテナの好ましい一実施態様は、
1つまたは複数のE/X/Yコポリマーを含むアイオノマー樹脂を含み、式中、Eはエチレンであり、XはC〜Cのα,βエチレン性不飽和カルボン酸から誘導され、Yはアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルから誘導され、このアルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%で存在し、YはE/X/Yコポリマーの0〜約40重量%で存在し、E/X/Yコポリマーは、80,000〜500,000の重量平均分子量を有し、1つまたは複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオンで少なくとも部分的に中和されている。
【0013】
本発明は、ポリオレフィン樹脂を含む構造マトリックス中に分散した15〜70重量%の伝導性繊維を含む伝導性熱可塑性組成物も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
「コポリマー」とは、2つ以上の異なるモノマーを含有するポリマーを意味する。用語「ジポリマー」(dipolymer)および「ターポリマー」は、それぞれ2つおよび3つの異なるモノマーのみを含有するポリマーを意味する。表現「種々のモノマーのコポリマー」は、その単位が種々のモノマーから誘導されるコポリマーを意味する。
【0015】
熱可塑性樹脂は、加圧下で加熱した場合に流動することができるポリマー材料である。メルトインデックス(MI)は、温度および圧力が制御された条件下で特定のキャピラリーを通過するポリマーの質量流量である。本明細書において報告されているメルトインデックスは、ASTM 1238に準拠し190℃において2,160gの重りを使用して測定している。
【0016】
誘電体は、比較的低い導電率を有する材料、すなわち絶縁体、あるいは、自由電子をほとんどまたは全く含有せず、静電圧力を維持することができる物質である。誘電体の2つの重要な性質は、その誘電率(真空中の電界強度が、同じ電荷分布の場合の誘電体の電界強度を超える程度を表す係数である)である。したがって誘電率は、誘電体として所与の物質を有するコンデンサの容量の、誘電体として真空を有する同じコンデンサの容量に対する比率である。これは、所与の物質が所与の電界強度に耐えることができる電荷量の尺度となる。材料の誘電率(ε)は、温度および周波数の関数であり、ASTM方法D150に準拠して測定することができる。絶縁耐力は、強い電界の影響下での絶縁破壊に対する誘電体の抵抗性の尺度である。破壊電圧と呼ばれる場合もある。通常はボルト/センチメートルまたはボルト/ミルの単位で表される。たとえば、ASTM D149に準拠して2.286cm(90ミル)の厚さにおいて測定することができる。
【0017】
前述したように、本発明は、1キロヘルツにおいて約5.0未満の誘電率を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含む構造マトリックス中に分散した15〜70重量%の伝導性繊維を含む伝導性熱可塑性組成物を含むアンテナであって;
(i)前記組成物がポリアミド樹脂またはエポキシド樹脂を含む場合、追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要があり;
(ii)前記組成物がポリエステル樹脂を含む場合、アクリロニトリル/スチレン/アクリレート樹脂以外の追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要がある、アンテナを提供する。
【0018】
1キロヘルツにおいて約3.0未満の誘電率を有する熱可塑性構造樹脂を含む伝導性熱可塑性組成物およびアンテナが好ましい。このような樹脂としては、ポリオレフィン、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、およびポリメチルペンテン;ポリフェニレンオキシド;フッ素化ポリマー、たとえばテフロン(Teflon)(登録商標)およびテフゼル(Tefzel)(登録商標);ならびにアイオノマー樹脂が挙げられる。1キロヘルツにおいて約2.0〜約2.8の誘電率を有する熱可塑性樹脂がより好ましい。ポリエチレン、ポリプロピレン、およびアイオノマー樹脂がより好ましい。1つまたは複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオンで少なくとも部分的に中和したエチレン酸コポリマーであるアイオノマー樹脂が特に好ましい。ポリエチレンも特に好ましく、ポリプロピレンも特に好ましい。
【0019】
特に注目すべきは、約450V/0.0254cm(450V/ミル)を超える絶縁耐力を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含む構造マトリックス中に分散した15〜70重量%の伝導性繊維を含む伝導性熱可塑性組成物を含むアンテナである。約450V/0.0254cm(450V/ミル)を超える絶縁耐力を有する好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンおよび、ポリメチルペンテン;ポリフェニレンオキシド;フッ素化ポリマー、たとえばテフロン(Teflon)(登録商標)およびテフゼル(Tefzel)(登録商標);ならびにアイオノマー樹脂が挙げられる。さらに、絶縁耐力が約500V/0.0254cmを超え、特に約600〜約1,300V/0.0254cmであり、さらに特に約800〜約1,200V/0.025cmである少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含む構造マトリックス中に分散した15〜70重量%の伝導性繊維を含む伝導性熱可塑性組成物を含むアンテナであって、この構造樹脂が、1つまたは複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオンで少なくとも部分的に中和したエチレン酸コポリマーを含むアイオノマー樹脂を含むアンテナも注目すべきである。
【0020】
アイオノマー樹脂(「アイオノマー」)は、エチレンなどのオレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸、またはマレイン酸などの不飽和カルボン酸の金属塩と、任意選択的に軟化性コモノマーとのコポリマーである。リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、または亜鉛などの少なくとも1つのアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオン、あるいはそのような陽イオンの組み合わせが、コポリマー中の酸性基の一部の中和に使用されることで、優れた性質を示す熱可塑性樹脂が得られる。たとえば、「エチレン/(メタ)アクリル酸(E/(M)AAと略記される)」は、エチレン(Eと略記される)/アクリル酸(AAと略記される)および/またはエチレン/メタクリル酸(MAAと略記される)のコポリマーを意味し、これを次に1つまたは複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオンで少なくとも部分的に中和させてアイオノマーを得ることができる。エチレンなどのオレフィン、不飽和カルボン酸、および(メタ)アクリル酸アルキル他のコモノマーからターポリマーを製造することもでき、これによって「より軟質の」樹脂が得られ、これを中和することによって、より軟質のアイオノマーを形成することができる。アイオノマーは、有機酸またはその塩を混入することによって改質することもできる。
【0021】
本発明において有用なアイオノマーとしては、約2〜約30重量%の(M)AAを有し、約80,000〜約500,000の重量平均分子量を有し、1つまたは複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオンで少なくとも部分的に中和されたE/(M)AAジポリマーが挙げられる。伝導性熱可塑性組成物、およびそのアンテナの製造に好ましいものは、約7〜約20重量%の(M)AA(メタクリル酸が特に好ましい)を有し、1つまたは複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオンで少なくとも部分的に中和したエチレンコポリマーである。
【0022】
中和は、最初にE/(M)AAコポリマーを製造し、そのコポリマーを、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属の陽イオンを有する無機塩基で処理することによって行うことができる。広範囲の陽イオンが、酸コポリマーの酸部分を中和することが知られている。典型的な陽イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、鉛、スズ、亜鉛、アルミニウム、およびそれらの陽イオンの組み合わせが挙げられる。注目すべきは遷移金属陽イオンで中和したアイオノマーである。特に注目すべきは、中和陽イオンとして亜鉛を含むアイオノマーである。中和の程度は、広範囲で変動できることが知られている。好ましくは中和の程度は、約10〜約70%であり、より好ましくは約15〜約60%である。コポリマーからアイオノマーを調製する方法は当技術分野で公知である。
【0023】
前述したように、(メタ)アクリル酸アルキルなどのコモノマーをE/(M)AAコポリマーに含めることで、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または遷移金属の陽イオンで中和可能なターポリマーを得ることができる。アルキル基が1〜8個の炭素原子を有するアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択されるコモノマーが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸n−ブチルから選択されるコモノマーがより好ましい。好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルは、0〜約30重量%の(メタ)アクリル酸アルキルの量、およびより好ましくは0〜15重量%の量で含まれる。
【0024】
前述したように、エチレン酸アイオノマーは、他のアイオノマーまたはポリマーとの溶融混合、および/または他の成分の混入による改質が可能である。たとえば、アイオノマー組成物は、ポリウレタン;ポリウレア;ポリアミド;ポリエステル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アクリル;コポリ−エーテル−エステル;コポリ−エーテル−アミド;コポリ−エーテル−ウレタン;コポリ−エーテル−ウレア;ポリオレフィン;エラストマー性ポリオレフィン;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレンと、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸アルキル、一酸化炭素、およびエポキシ含有コモノマーからなる群より選択される極性コモノマーとの共重合から誘導されるエチレンコポリマー;無水マレイン酸で改質されたポリマー;ならびにスチレン−ブタジエンブロックコポリマーを主成分とする熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1つの追加の非アイオノマー熱可塑性樹脂と溶融混合することができる。具体例として、E/X/Yコポリマーが、約1重量%の無水マレイン酸コモノマーを含有するポリエチレンと混合される。したがって、特に、本発明の伝導性熱可塑性組成物は、ミクロン伝導性金属繊維が充填される上記コポリマーおよびそれらの混合物に関する。
【0025】
本発明に有用な特に好ましいアイオノマーとしては、亜鉛(II)陽イオンを使用して酸の51%(モル基準)が中和された(すなわちカルボン酸基が塩に転化された)、エチレンと、9重量%のメタクリル酸と、24重量%のアクリル酸n−ブチルとのコポリマー;亜鉛(II)陽イオンを使用して酸の58%が中和された、エチレンと15重量%のメタクリル酸とのコポリマー;亜鉛(II)陽イオンを使用して酸の18%が中和された、エチレンと9重量%のメタクリル酸とのコポリマーからなる群より選択されるE/X/Yコポリマーが挙げられる。
【0026】
さらに、本発明に有用な特に好ましいアイオノマーとしては、亜鉛(II)陽イオンを使用してモル基準で36%のカルボン酸基が中和された、エチレンと19重量%のメタクリル酸とのコポリマーも挙げられる。
【0027】
本発明における使用に好適なポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリエチレンポリマーおよびコポリマーから選択される。本発明における使用に有用なポリエチレンは、公知のチーグラー−ナッタ(Ziegler−Natta)触媒重合(たとえば米国特許公報(特許文献9)および米国特許公報(特許文献10)を参照されたい)、メタロセン触媒重合(たとえば米国特許公報(特許文献11)および米国特許公報(特許文献12)を参照されたい)、およびフリーラジカル重合などの種々の方法によって調製することができる。本発明において有用なポリエチレンポリマーとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度または極密度ポリエチレン(VLDPEまたはULDPE)などの線状ポリエチレン、および低密度ポリエチレン(LDPE)などの分岐ポリエチレンを挙げることができる。本発明における使用に適したポリエチレンの密度は、0.865g/cc〜0.970g/ccの範囲である。本発明で使用するための線状ポリエチレンは、所望の密度範囲内に密度を低下させるために、ブテン、ヘキセン、またはオクテンなどのα−オレフィンコモノマーを混入することができる。
【0028】
本発明の実施において有用なポリプロピレン(PPと略記される)ポリマーとしては、プロピレンのホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、およびプロピレンのターポリマー、衝撃改質ポリプロピレン、ならびにプロピレンとα−オレフィンとのコポリマーが挙げられる。プロピレンのコポリマーとしては、プロピレンと、エチレン、1−ブテン、2−ブテン、および種々のペンテン異性体などの他のオレフィンなどとのコポリマーが挙げられ、好ましくはプロピレンとエチレンとのコポリマーが挙げられる。プロピレンのターポリマーとしては、プロピレンと、エチレンおよび1つの他のオレフィンとのコポリマーが挙げられる。統計コポリマーとも呼ばれるランダムコポリマーは、プロピレンおよびコモノマーが、プロピレンのコモノマーに対する供給比に対応した比率でポリマー鎖全体に不規則に分布しているポリマーである。ブロックコポリマーは、プロピレンホモポリマーからなる鎖セグメントと、プロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーなどからなる鎖セグメントとで構成される。本明細書で使用される場合、用語「ポリプロピレン」は、前述のプロピレンを含むあらゆるポリマーまたはすべてのポリマーを総称して呼ぶために使用される。
【0029】
ポリプロピレンのホモポリマーまたはランダムコポリマーは、あらゆる公知の方法によって製造することができる。たとえば、ポリプロピレンポリマーは、有機金属化合物と三塩化チタン(+4)を含有する固体とを主成分とするチーグラー−ナッタとして知られる種類の触媒系の存在下で調製することができる。
【0030】
一般に、第1段階でプロピレンが単独で重合され、続いて、第1段階中に得られたポリマーの存在下で、第2段階でプロピレンとエチレンなどの追加のコモノマーとが重合されることを除けば、ブロックコポリマーも同様に製造することができる。これらの段階のそれぞれは、たとえば、炭化水素希釈剤中の懸濁液中、液体プロピレン中の懸濁液中、または気相中で、連続的または非連続的に、同じ反応器中または別の反応器中で行うことができる。
【0031】
ブロックコポリマーおよびそれらの製造に関するさらなる情報は、特に、(非特許文献1)に見ることができる。
【0032】
前述したように、本発明の伝導性熱可塑性組成物は、構造樹脂中に充填されたミクロンサイズの伝導性繊維を含む。このミクロンサイズの伝導性繊維は、ニッケル、銅、銀、ステンレス鋼などの金属から製造することができる。ミクロン伝導性繊維は、ニッケルめっきされた炭素(ニッケルコーティングされた黒鉛とも呼ばれる)繊維、ステンレス鋼繊維、銅繊維、銀繊維、炭素繊維、などであってよい。注目すべきはステンレス鋼を含む伝導性繊維である。特に注目すべきは、ステンレス鋼の特殊304合金のステンレス鋼繊維である。注目すべきは、直径が約5〜約25μm、特に約8〜約11μmのステンレス鋼繊維である。注目すべきは、初期の加工前の長さが約2〜約10mmである、特に約4〜約6mmであるこのような繊維である。このような繊維は、ベカルト・ファイバー・テクノロジーズ(Bekaert Fibre Technologies)より商品名ベキ−シールド(Beki−Shield)(登録商標)で入手することができる。伝導性炭素繊維も注目すべきである。
【0033】
伝導性繊維と伝導性粉末とのポリマー構造マトリックス中の混合物も注目すべきである。たとえば、伝導性炭素繊維と伝導性炭素粉末とのポリマー構造マトリックス中の混合物から、アンテナとしての使用に適した伝導性組成物が得られる。このポリマー構造マトリックスは、たとえばアイオノマー、またはポリエチレンなどのポリオレフィンを含むことができる。
【0034】
本発明のアンテナの製造に適した好ましい伝導性熱可塑性組成物は、ステンレス鋼繊維が約18重量%〜約60重量%の量、より好ましくは約25重量%〜約50重量%の量、さらにより好ましくは約28重量%〜約42重量%の量で存在する伝導性熱可塑性組成物である。
【0035】
本発明の伝導性熱可塑性組成物は、排他的なものではなく典型的には、直径が約3.81cm(0.15インチ)〜約1.27cm(0.5インチ)であり長さが14.47cm(5.5インチ)であるほぼ円筒形の体積の末端間で測定した場合の体積電気抵抗が100オーム未満である。本発明の伝導性熱可塑性組成物は、好ましくは、ジーメンス/メートルの単位の伝導率が100S/m〜100,000S/mの間である(すなわち、抵抗率が1Ω・cm〜0.001Ω・cmの間となる)。
【0036】
本発明の伝導性熱可塑性組成物は、たとえば、射出成形(すなわち、溶融組成物をある構造の型の中に押し出して所望の形状の伝導性熱可塑性組成物を含む物品を製造した後に冷却する)によってある形状に成形することもできる。層状ダイを通した押出成形し、その組成物をたとえば、ポリマー加工技術分野で公知のキャストシート、押出コーティング、または積層技術によって加工することによって、伝導性熱可塑性組成物のシートを製造することもできる。
【0037】
本発明の伝導性熱可塑性組成物を他の熱可塑性ポリマーと同時押出して多層材料を形成することもできる。伝導性熱可塑性組成物は、押出コーティングまたは積層技術によって多層フィルムまたはシートに成形することもできる。
【0038】
アンテナの形成に使用されるアンテナ素子は、本発明の伝導性熱可塑性組成物から形成され、射出成形、圧縮成形、オーバーモールド、または押出成形などの方法を使用して形成することができる。アンテナ素子は、打ち抜きによって所望の形状にすることもできる。伝導性熱可塑性組成物のアンテナ素子は、希望通りに切断または研磨することができる。この複合材料の組成がアンテナ特性に影響を与えることがあり、適切に制御する必要がある。伝導性熱可塑性組成物は、薄膜またはシートに成形して布状材料を得ることができ、これは、金属含有率および形状が適切に計画されると、非常に高性能の布アンテナを実現するために使用することができる。このような布アンテナは、人の衣類中、およびゴムまたはプラスチックなどの絶縁材料中に組み込むことができる。この伝導性の布を、テフロン(Teflon)(登録商標)フルオロポリマー(本願特許出願人より入手可能)または不織繊維材料(本願特許出願人のタイベック(Tyvek)(登録商標)スパンボンドオレフィンなど)の材料と積層して、多層布状材料を得ることもできる。伝導性熱可塑性組成物は、伝導性熱可塑性組成物から実質的になる剛性物品の形成に使用することができるが、FR−4銅、またはあらゆる樹脂系硬質材料などの他の剛性材料に積層、接着、または取り付けることによって、剛性物品を形成することもできる。
【0039】
場合によっては、本発明の伝導性熱可塑性組成物を含む物品をさらに加工することができる。たとえば、組成物の一部(ペレット、小塊、棒、ひも、シート、および成形物品などが挙げられるが、これらに限定されるものではない)に対して熱変形作業を行い、組成物に熱、圧力、および/またはその他の機械的応力を加えることによって、成形物品を製造することができる。さらなる加工の例は圧縮成形である。
【0040】
(アンテナ)
本発明は、
(a)1キロヘルツにおいて約5.0未満の誘電率を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含む構造マトリックス中に約15〜70重量%の伝導性繊維を分散させて伝導性熱可塑性組成物を形成するステップと;
(b)前記伝導性熱可塑性組成物を、アンテナに望ましい形状に成形するステップとを含み;
(i)前記組成物がポリアミド樹脂またはエポキシド樹脂を含む場合、追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要があり;
(ii)前記組成物がポリエステル樹脂を含む場合、アクリロニトリル/スチレン/アクリレート樹脂以外の追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要がある、アンテナの製造方法を提供する。
【0041】
構造マトリックスが、1キロヘルツにおいて約3.0未満の誘電率を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含む、上記アンテナの製造方法が好ましい。
【0042】
ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、コンフォーマルアンテナ、平面アンテナ、アレーアンテナ、方向探知アンテナなどのほとんどあらゆる種類のアンテナを、本発明の伝導性熱可塑性組成物から製造することができる。本発明の伝導性熱可塑性組成物を成形または押出成形して、アンテナに望まれる形状である物品を得ることができる。本発明の伝導性熱可塑性組成物の、切断、射出成形、圧縮成形、オーバーモールド、積層、押出成形、研磨などによって、所望のアンテナ形状および寸法を得ることができる。アンテナの特性は伝導性熱可塑性組成物の組成に依存し、所望のアンテナ特性が得られるように組成を調整することができる。これらのアンテナは、所望の周波数範囲に同調させることができる。
【0043】
以下の実施態様は、本発明の伝導性熱可塑性組成物を使用して製造されるアンテナの例である。好ましいアンテナは、本発明の好ましい伝導性熱可塑性組成物を含む。一部の例では、接地面も使用されており、これらの接地面は伝導性熱可塑性組成物または金属のいずれかで形成することができる。これらの伝導性熱可塑性組成物をアンテナ製造に使用することで、アンテナの組立に使用される材料および製造工程の費用が大きく削減され、これらの材料の所望の形状への成形が容易になる。これらの材料は、受信アンテナまたは送信アンテナのいずれの形成にも使用することができる。アンテナおよび/または接地面は、伝導性熱可塑性組成物の射出成形、圧縮成形、オーバーモールド、または押出成形などの方法を使用して形成することができる。
【0044】
伝導性熱可塑性組成物を含むアンテナの例としては、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、コンフォーマルアンテナ、平面アンテナ、アレーアンテナ、および方向探知アンテナが挙げられる。意図する機能に依存するが、本発明のアンテナは、接地面、絶縁材料、増幅器、全地球測位システム成分、コネクタなどの追加の要素とともに製造して、機能的アンテナを製造することができる。ラジオ、無線通信装置などの機能のための無線周波数の電磁放射線の送信および/または受信に依拠する装置に、本発明のアンテナを他の成分とともに組み込むことができる。
【0045】
熱可塑性アンテナ素子、または熱可塑性接地面への電気的接続は、通常、金属へ、または金属から熱可塑性材料への電気信号の転送を伴う。この接続は好ましくは比較的広い表面積を有し、好ましくは電気信号の良好な転送を行うためにある程度の圧力を伴う。熱可塑性樹脂への金属片の挿入が、これを実現するための実際的な方法である。アンテナ素子への取り付けに有用な金属インサートは銅または他の金属であってよく、アンテナ素子のセグメント中に形成することができる。たとえば、伝導性熱可塑性要素を金属インサート周囲に成形することができる。あるいは、金属インサートを適合させることが可能な凹部または空隙を有する形状で伝導性熱可塑性要素を製造することができる。あるいは、広い表面積を有する良好な圧接点を形成しやすいのでタッピンねじなどのねじを金属インサートとして使用することができる。金属と比較すると熱可塑性樹脂の融点は低いため、熱可塑性樹脂に熱い金属インサートを挿入することがもう1つの方法となる。電気的接続を形成しやすくするため、金属インサート中にねじを使用することができる。はんだ付けまたはその他の電気的接続方法を使用することもできる。
【0046】
本発明のダイポールアンテナの一例は、伝導性熱可塑性組成物から形成され同じ軸を実質的に共有する2つの同一のアンテナ素子を含む。これらのアンテナ素子はそれぞれ長さと、長さ方向に対して垂直の断面とを有する。たとえば、上記長さは、断面積の平方根の3倍よりも大きく、棒状の形態を有するアンテナを形成することができる。伝送信号または受信信号のいずれかを伝達する電気的接続が、ダイポールの素子に接続される。多くの場合、この接続は、バラン(平衡不平衡変成器)を使用することで、系統接地に対して電気的に対称となる。
【0047】
本発明のダイポールアンテナの一例が図1に示されている。図1において、全体が番号(1)で示されているアンテナは、アンテナ素子(3および4)と実質的に平行であり絶縁材料(5)によってアンテナ素子から分離されている任意選択の接地面(2)を含む。絶縁材料は、所定位置にアンテナを機械的に維持するために使用することができる。伝導性接地面が使用される場合、誘電絶縁材料(5)の厚さは、好ましくはアンテナの動作波長の8分の1を超える。アンテナ素子(3および4)中に挿入された金属インサート(それぞれ6および7)は、信号リード(それぞれ8および9)に接続される。これらの金属インサートは、前述したようにしてアンテナ素子に取り付けることができる。信号リードは、ケーブル(11)を介して接地面(2)中の開口部(10)を通ってアンテナに入ることができる。前述したように、接地面(2)は任意選択である。接地面が使用される場合、それを本発明の伝導性の熱可塑性要素で形成することもできる。ケーブル(11)は、接地面中の金属インサート(図示せず)でケーブル遮蔽を伝導性接地面に接続することによってアンテナに取り付けることができる。
【0048】
本発明のモノポールアンテナの一例が図2に示されている。図2において、全体が番号(15)で示されているアンテナは、絶縁材料(18)によってアンテナ素子(17)から分離されている任意選択の接地面(16)を含む。アンテナ素子(17)は本発明の伝導性熱可塑性組成物で形成されており、接地面(16)は伝導性熱可塑性組成物で形成することができる。絶縁材料は、所定位置にアンテナを機械的に維持するために使用することができる。場合によっては(図示せず)、放射アンテナ素子(17)が、接地面に対して垂直に配列され、これを棒、シート、成形素子などとして形成することができる。好ましくは、放射素子の高さは放射アンテナ素子の断面積の平方根の3倍を超える。高さが1.17インチであるこのアンテナの一例は、約1.5GHzのGPS周波数において十分に機能する。アンテナ素子(17)中に挿入された金属インサート(19)は信号リード(20)と接続される。この金属インサートは、前述したようにしてアンテナ素子に取り付けることができる。信号リード(20)は、ケーブル(22)を介して接地面中の開口部(21)を通ってアンテナに入ることができる。たとえば、ケーブル(22)は同軸ケーブルであってよく、その同軸ケーブル中心導体(20)は、金属インサート(19)によってアンテナ素子(17)に接続することができる。接地線(たとえば同軸ケーブル中の遮蔽)は、接地面中の金属インサート(図示せず)によって接地面(16)に接続することができるし、非接地面モノポールの場合には接続しないままにすることもできる。
【0049】
本発明のコンフォーマルアンテナの一例は、伝導性熱可塑性組成物から形成される放射アンテナ素子および接地面を含む。「薄型」アンテナ、または電磁気装置の本体と一体となることができるアンテナが望ましい場合には、コンフォーマルアンテナが適している。コンフォーマルアンテナは、放射アンテナ素子および接地面を含み、それぞれがある厚さの薄板の形状を有し、さらに隔離碍子によってこれらの板の間に形成されたセパレーションを含むアンテナである。たとえば、放射アンテナ素子の形成する板の面積の平方根は、厚さの3倍を超えることができる。
【0050】
同軸ケーブルは、接地面中の開口部を通ってコンフォーマルアンテナに入ることができる。同軸ケーブル遮蔽は、接地面中の金属インサートによって接地面に接続される。同軸ケーブル中心導体は、放射アンテナ素子中の金属インサートによって放射アンテナ素子に接続される。あるいは、同軸ケーブルは、放射アンテナ素子と接地面との間でアンテナに入ることができる。同軸ケーブル遮蔽は、接地面中の金属インサートによって接地面に接続される。同軸ケーブル中心導体は、放射アンテナ素子中の金属インサートによって放射アンテナ素子に接続される。
【0051】
伝導性熱可塑性組成物を含む本発明のアンテナ構造において、絶縁材料が、伝導性ミクロン繊維の充填されていない熱可塑性ポリマー材料を含むことが好ましい。注目すべきは、絶縁材料が、伝導性熱可塑性組成物のマトリックスを形成する同じポリマー材料を含むアンテナ構造である。放射要素および接地面の伝導層、ならびに絶縁層を独立に形成した後、互いに接着剤で取り付けてアンテナを形成した後、このアンテナは、基材上に一部またはすべての層を押出コーティングまたは積層することによって製造することもできる。この基材は、たとえば接地面であってもよい。
【0052】
アンテナの構成要素の一部は、それらの構成要素が比較的同一平面上にある場合には特に、同時押出によって互いに形成することができる。たとえば、本発明のコンフォーマルアンテナは、多層同時押出シート中に伝導性熱可塑性組成物層、絶縁性熱可塑性材料層、および伝導性熱可塑性組成物の別の層を含むことができる。任意選択的に、追加の層をアンテナ構成要素と同時押出することができる。たとえば、アンテナ構造の保護または外観の改善のための表面層を形成するために、熱可塑性樹脂の追加層を加えることができる。注目すべきは、伝導層、絶縁層、および表面層中にアイオノマー材料を含む多層構造である。この多層構造は、そのシートを熱成形によってさらに加工して成形物品にすることができる。たとえば、多層構造シートは、携帯型通信装置のケーシング要素に成形することができるし、バンパー、フェンダー、またはパネルなどの自動車部品中に組み込むことが可能な成形部品に成形することもできる。
【0053】
装置中に本発明のアンテナを使用すると、組立の単純化(たとえば、ハウジング構成材へのアンテナ材料の組み込みによるパーツ点数の減少)によって、より低コストの装置を得ることができる。装置中に本発明のアンテナを使用すると、従来の金属アンテナが取り付けられた装置より改善された性能を得ることもできる。
【0054】
本発明のアンテナは、多数の用途を有する。たとえば、伝導性熱可塑性組成物から形成されたダイポールアンテナまたはモノポールアンテナは、絶縁材料で形成された自動車のバンパーに組み込むことができる。
【0055】
本発明のアンテナは、さらなる多数の用途に使用することができる。たとえば、自動車または飛行機などの乗り物の窓の成形物は、本発明のアンテナを含むことができ、この場合、伝導性熱可塑性組成物を含むアンテナがこの成形物中に埋め込まれる、または、成形物の少なくとも一部が伝導性熱可塑性組成物で形成される。本発明のアンテナは、携帯電話、パーソナルコンピュータなどの携帯型電子装置のプラスチックハウジング中に組み込んだり、プラスチックシェル自体の一部を構成したりすることができる。本発明のアンテナを有するこのような装置の一例が図3に示されている。図3において、携帯型電子装置(30)は、種々の電子部品(32)が取り付けられる回路基板(31)を含む。これらの部品は、意図する目的で電子装置を機能させるために有用であるが、本発明のアンテナの機能には含まれず、本明細書では詳細には説明しない。回路基板(31)は、典型的には非伝導性熱可塑性材料で製造されるハウジングまたはケース(33)内に収容される。モノポールアンテナ素子(34)はハウジング(33)中に埋め込まれ、信号リード(35)を介して回路基板(31)に取り付けられる。信号リードは、金属インサート(36)によってアンテナ素子(34)に接続される。
【0056】
好ましい実施態様を参照しながら本発明を詳細に示し説明してきたが、本発明の意図および範囲から逸脱することなく形態および詳細を様々に変化させることができることは当業者であれば理解できるであろう。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は単に説明的なものであり、本明細書において記載および/または請求される本発明の範囲を限定するように構成されたものではない。
【0058】
(伝導性熱可塑性組成物)
(材料の加工および試験の説明)
本発明の伝導性熱可塑性組成物の実施例は、ポリマーマトリックス中に分散したステンレス鋼繊維を含む。具体例は以下の表1を参照されたい。ステンレス鋼繊維と樹脂ペレットとを30mm二軸スクリュー押出機中で、(a)繊維およびポリマー樹脂の両方をともに押出機の後部(すなわち、第1ゾーンの入口)で加えること、または(b)押出機の後部で樹脂を加えた後、押出機バレルに沿った中間点で独立して繊維を供給することのいずれかによって混合することで、これらの組成物を調製した。混合後、伝導性熱可塑性組成物をダイから押し出し、冷却して、押出成形された繊維−ポリマー複合ひもを製造した。押出機スクリュー速度は、50〜150回転/分(RPM)の範囲で変動させ、押出機バレルに沿った温度設定点は180℃〜260℃の間に維持した。押出機ダイ温度は300℃に維持し、溶融温度は配合およびスクリュー速度に依存して230℃〜310℃の範囲であった。実施例の組成物の調製に使用したポリマー材料およびステンレス鋼繊維は、以下の材料の項で説明する。
【0059】
前述したように、最初に形成された組成物は、圧縮成形または射出成形などによってさらに加工することができる。たとえば、前述したように押し出されたひもからある長さを切断し、これらの長さのひもを直径0.5インチおよび長さ5.5インチの円筒形の型に入れて圧縮成形することによって、長さ5.5インチの数個の試料を作製した。充填した型を180℃に加熱し、20トンの力を約10〜20分間加えた。プレス中で冷水を流すことによって複合試料および型を冷却しながら、型に20トンの力を維持した。冷却後、複合試料を型から取りだした。
【0060】
典型的には以下の温度分布および条件を使用する一軸スクリュー射出成形機を使用して射出成形によっても試験試料を作製した:
後部(入口):180℃
中央:180℃
前部(出口):180℃
ノズル:180℃
型:60℃
ラム速度:高速
スクリュー速度:60RPM
射出時間:30秒
保持時間:20秒
全サイクル時間:60秒
背圧:6,895パスカル(50psig)
【0061】
最終試料のステンレス鋼含有率は、最初に圧縮成形した複合材料の重量を測定し、続いてその複合材料を750℃で1.5時間加熱して有機ポリマーマトリックスを焼失させることによる標準的な灰分法によって測定した。室温に冷却した後、残留した鋼の重量を測定し、元の試料中の鋼のパーセント値を計算した。表2を参照されたい。
【0062】
また、14.47cm(5.5インチ)棒状試料の長さに沿った電気抵抗を、棒の両端に0.3175cm(1/8インチ)の深さの孔を開け、フルーク(Fluke)マルチメーター(モデル73−3(Model 73−3))からそれぞれの端にプローブを挿入することによって調べた。さらに、押出成形したひも試料の電気抵抗も、押出成形したひもの5.5インチの長さ部分に沿って測定した。表2に報告される電気抵抗はフルーク(Fluke)マルチメータに示される最小値である。これらのひも試料は一般に、両端にプローブ孔を開けるには直径が小さすぎたので、単に各切断面にプローブを接触させることによって抵抗測定を行った。
【0063】
ASTM方法D790に記載の方法を使用して、組成物の曲げ弾性率を求めた。前述のように押し出された長さ15.24cm(6インチ)の数本のひもを、180℃において圧縮成形して、7.62cm(3インチ)×15.24cm(6インチ)×0.3175cm(1/8インチ)の板にすることで試料を作製した。次にこれらの板を、屈曲棒試料に打ち抜いて、12.5cm×1.27cm×0.3175cm(5インチ×1/2インチ×1/8インチ)の曲げ弾性率試験に適切な寸法に適合させ、これらの結果は表2に示している。
【0064】
(材料)
A−亜鉛(II)陽イオンを使用してモル基準で酸の51%が中和された、エチレンと、9重量%のメタクリル酸と、24重量%のアクリル酸n−ブチルとのコポリマーであり、結果として得られるアイオノマーは、MIが0.6であり、298°Kにおける曲げ弾性率が3.1×10パスカル(4,500psi)。
【0065】
B−亜鉛(II)陽イオンを使用してモル基準で酸の58%が中和された、エチレンと15重量%のメタクリル酸とのコポリマーであり、結果として得られるアイオノマーは、MIが0.7であり、298°Kにおける曲げ弾性率が3.4×10(50,000psi)である。
【0066】
C−亜鉛(II)陽イオンを使用してモル基準で酸の18%が中和された、エチレンと9重量%のメタクリル酸とのコポリマーであり、結果として得られるアイオノマーは、MIが5.0であり、298°Kにおける曲げ弾性率が1.5×10(22,000psi)である。
【0067】
D−アイオノマーサイジングで覆われたステンレス鋼繊維であり、ベカルト・ファイバー・テクノロジーズ(Bekaert Fibre Technologies)から入手したままの状態で使用した。試料は商品名ベキ−シールド(Beki−Shield)(登録商標)GR75/C12−Eで販売されている。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
マトリックス内の伝導性繊維の完全性を維持するために、均一な複合材料を製造することが可能な、厳格性が最も低い加工履歴を使用して伝導性熱可塑性組成物を調製することが望ましい。2つの最も伝導性の高い実施例(実施例8および10)は、バレルの中間点で混合押出機の側面にステンレス鋼繊維(材料D)を入れ、スクリュー速度をわずか50RPMにすることで作製した。これらの実施例は、マルチメーター測定装置の下限未満(すなわち2オーム未満)の抵抗を示した。ステンレス鋼含有率を測定するための灰分法による伝導性組成物の評価では、繊維状の形態を有する鋼の灰が生成した。
【0071】
混合物が過度に加工されると、機械的研削による伝導性繊維の繊維の性質が低下することがあり、伝導性があまり高くない材料が得られる場合がある(実施例3)。この実施例では、実施例10と同じ処方を使用したが、ステンレス鋼繊維は、スクリュー速度100RPMで二軸スクリューバレル全体にさらされた。これによって、フルーク(Fluke)マルチメーターによって測定可能な最大値の32,000,000オームを超える電気抵抗を有する材料が得られた。実施例3は、灰分法によって評価した場合に粉末形態の鋼の灰が生成した唯一の試料であった。
【0072】
(従来のアンテナと比較するための電気試験)
長さ130mm(5.125インチ)、および断面直径12.7mm(0.5インチ)を有する円筒形からなる実施例8に従って調製した伝導性熱可塑性組成物(CTC)を含むモノポールアンテナを、圧縮成形によって測定した。この材料のDCバルク伝導率を測定すると1,272S/mであった(抵抗率0.078Ω・cm)。このCTCモノポールを、30.48cm×30.48cm(12インチ×12インチ)の寸法の正方形の銅接地面の中央に置き、大地から絶縁した(実施例11)。比較のアンテナは、長さが130mm(5.125インチ)および直径が0.8mm(0.032インチ)の銅線でできていた。この金属アンテナの形状は、無線通信システムで一般に使用されている。この銅アンテナも、CTCアンテナの場合と同様の接地面上に置いた。2つの連続した試験において、CTCアンテナおよび銅アンテナを送信アンテナとして使用し、標準的な広帯域受信アンテナ(ポララド(Polarad)製造、モデルCA−B(Model CA−B))を受信アンテナとして使用した。信号発生器の出力を、利得が13dBの増幅器に送り、100MHzの間隔で300MHz〜1,000MHzの周波数を使用した。送信アンテナと受信アンテナとは5メートル(15フィート)離した。スペクトラムアナライザーを使用して、試験周波数における受信信号強度を測定した。結果を表3に報告する。
【0073】
【表3】

【0074】
130mmにおいて両方のアンテナが、周波数576MHzにおける4分の1波長長さとなる。アンテナの理論および実践によると、4分の1波長がモノポールアンテナの最適動作条件であり、この場合に供給伝送線に適合した最良のインピーダンスが得られる。約300MHz〜約1,000MHzで動作する本発明のCTCアンテナに注目すべきである。表3で報告される結果から、576MHzに近い周波数範囲において、2つのモノポールは非常に類似した性能を示し、アンテナが4分の1波長とならないこの範囲外では、CTCアンテナの方がはるかに強い信号を出力していることが分かる。たとえば、アンテナが1/8(0.125)波長となる300MHzにおいては、CTCアンテナは金属アンテナの2.4倍の信号強度を出力する。注目すべきは、1/4波長未満で動作する本発明のCTCアンテナである。これは、体積および質量の厳しい要求によって、必要なより短いアンテナが使用される場合、商業用および携帯型の無線用において特に重要である。最適よりも長いアンテナにも多くの用途が存在し、これらの条件においても、1,000MHzにおける銅アンテナと比較すると、CTCアンテナが優れた性能を示す。1/4波長を超えて動作する本発明のCTCアンテナに注目すべきである。既存のアンテナ技術に対する上記の改善は、従来のアンテナの実施では予測できず、予期せぬ利点が得られる。
【0075】
両者のアンテナの性能がほぼ等しくなる最適の4分の1波長の状態では、CTCアンテナは、前述したような金属アンテナに対する機械的な利点を有する。
【0076】
(実施例12〜51)
実施例1〜10で記載した技術と同様の技術により、押出機中で材料を混合することによって、表4に記載される組成物を調製した。実施例1〜10で記載した技術と同様の技術により、これらの組成物を射出成形または圧縮成形して、長さ約5.588cm±0.254cm(2.2±0.1インチ)、幅1.27cm±0.254cm(0.5±0.05インチ)、および厚さ0.3429cm±0.254cm(0.135±0.01インチ)厚さの板を得た。これらの板の伝導性、体積抵抗率、およびアンテナ性能を前述の手順に従って測定し、同じ寸法の銅ブロック(伝導率5.8×10S/m)と比較し、表6に報告した。
【0077】
(材料)
F−ポリプロピレンホモポリマー、密度0.909、MIは3.5、フィリップス・スミカ(Phillips Sumika)よりマルレックスHGX−030(Marlex HGX−030)として入手可能。
【0078】
G−炭素短繊維、炭素含有率95%、繊維長さ6mm(0.25インチ)、パネックス35(Panex 35)グレード、ゾルテック(Zoltek)より入手可能。
【0079】
H−約1.1重量%の無水マレイン酸コモノマーを含有する高密度ポリエチレン、MIは1.5〜2.5、フサボンド(Fusabond)(登録商標)E MB−100Dとして入手可能。
【0080】
I−亜鉛(II)陽イオン(2.57重量%)を使用して酸部分の36%を中和したエチレンと19重量%のメタクリル酸とのコポリマーであり、結果として得られるアイオノマーはMIが1.0である。
【0081】
J−粉砕炭素粉末、炭素含有率99.5%、標準平均長さ約150μm(6ミル)、パネックス30(Panex 30)グレード、ゾルテック(Zoltek)より入手可能。
【0082】
K−低密度ポリエチレン、密度0.930、MIは1.5、ハンツマン(Huntsman)より入手可能なグレード1078。
【0083】
L−アイオノマーサイジングで覆われた4mmステンレス鋼繊維であり、ベカルト・ファイバー・テクノロジーズ(Bekaert Fibre Technologies)から入手したままの状態で使用した。試料は商品名ベキ−シールド(Beki−Shield)(登録商標)GR75/C12−E/4で販売されている。
【0084】
M−アイオノマーサイジングで覆われた5mmステンレス鋼繊維であり、ベカルト・ファイバー・テクノロジーズ(Bekaert Fibre Technologies)から入手したままの状態で使用した。試料は商品名ベキ−シールド(Beki−Shield)(登録商標)GR75/C12−E/5で販売されている。
【0085】
表4〜6において、「NA」は「適用しなかった」ことを示している。「ND」は「測定しなかった」ことを示している。異なる方法で試験試料が調製される場合、「CM」は圧縮成形で作製した試料を示しており、「IM」は射出成形で作製した試料を示している。
【0086】
【表4】

【0087】
【表5】

【0088】
材料のブロックを以下の寸法:長さ57.15mm×幅12.7mm×厚さ3.18mm(2.25インチ×幅0.5インチ×0.12インチ)を有するブロックに機械加工することによって、実施例12〜51の材料から試験アンテナを製造した。これらのアンテナを、30.48cm×30.48cm(12インチ×12インチ)の寸法の銅接地面上のモノポールとして使用した。試験アンテナの長手方向6.65cm(2.25インチ)を接地面に対して垂直に配置し、厚さ0.254cm(0.1インチ)のPTFE絶縁層をアンテナと接地面との間に配置した。試験アンテナを使用して、広帯域ポララド(Polarad)コーンアンテナ(モデルC−AB(Model C−AB))であり60.96cm(2フィート)の距離でコンパクトレンジ内に配置した送信アンテナから送信した1.0GHz信号を受信した。モノポールアンテナの長さ(57.15mm)は1GHzにおける波長約20%であり、これは最適な4分の1波長モノポールに近い。すべての試験アンテナを、試験アンテナと同じ寸法で作製した銅ブロックアンテナと比較した。それぞれの場合で受信した信号を、銅ブロックアンテナが受信した信号とdBの単位で比較し、指数式:
[10**(0.10(銅より小さいdB信号))]100
を使用して、銅より小さい%振幅に変換した(すなわち、表5の「Cuブロックより小さいdB信号」は「銅の%振幅」に数学的に変換される)。
【0089】
これらの試験で使用した銅アンテナと比較される性質は、表3中のデータに使用されるものとは異なることに注意されたい。前出の試験では、比較は銅線アンテナに対して行っており、これは典型的な無線システムに使用されるものと類似している。表3中のデータは、広い周波数範囲にわたって試験アンテナ性能を銅線アンテナと比較している一連の広帯域のデータである。しかし、表5のデータは、1つの周波数において異なる組成物のアンテナと対応する銅ブロックアンテナとの間の信号強度を比較している。
【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0092】
以上より、構造マトリックス中に分散した15〜70重量%の伝導性繊維を含む伝導性熱可塑性組成物を含むアンテナであって、この構造マトリックスが、1キロヘルツにおいて5.0未満の誘電率を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂、たとえばE/X/Yコポリマー(式中、Eはエチレンであり、XはC〜Cのα,βエチレン性不飽和カルボン酸から誘導され、Yはアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルから誘導され、このアルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、XはE/X/Yコポリマーの2〜30重量%で存在し、YはE/X/Yコポリマーの0〜40重量%で存在し、このE/X/Yコポリマーは、80,000〜500,000の重量平均分子量を有し、1つまたは複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオンで少なくとも部分的に中和されている)を含むアンテナは、経済的に製造することができ、銅アンテナよりも好都合に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明のダイポールアンテナの断面図である。
【図2】本発明のモノポールアンテナの断面図である。
【図3】本発明のモノポールアンテナが組み込まれた携帯型電子デバイスの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造マトリックス中に分散した15〜70重量%の伝導性繊維を含む伝導性熱可塑性組成物を含むアンテナであって、前記構造マトリックスが、1キロヘルツにおいて5.0未満の誘電率を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含み、
(i)前記組成物がポリアミド樹脂またはエポキシド樹脂を含む場合、追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要があり;
(ii)前記組成物がポリエステル樹脂を含む場合、アクリロニトリル/スチレン/アクリレート樹脂以外の追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要があることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記伝導性熱可塑性組成物が、1キロヘルツにおいて3.0未満の誘電率を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記伝導性熱可塑性組成物が、1キロヘルツにおいて2.0〜2.8の誘電率を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記伝導性熱可塑性組成物が、ポリオレフィン、ポリフェニレンオキシド、フッ素化ポリマー、およびアイオノマー樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記伝導性熱可塑性組成物がアイオノマー樹脂を含むことを特徴とする請求項4に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記伝導性熱可塑性組成物が、1つまたは複数のE/X/Yコポリマーを含むアイオノマー樹脂を含み、式中、Eはエチレンであり、XはC〜Cのα,βエチレン性不飽和カルボン酸から誘導され、Yはアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルから誘導され、前記アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、Xは前記E/X/Yコポリマーの2〜30重量%で存在し、Yは前記E/X/Yコポリマーの0〜40重量%で存在し、前記E/X/Yコポリマーは、80,000〜500,000の重量平均分子量を有し、1つまたは複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオンで少なくとも部分的に中和されていることを特徴とする請求項5に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記E/X/Yコポリマーが、Xとして7〜20重量%のアクリル酸またはメタクリル酸を有し、Yとして0〜30重量%の(メタ)アクリル酸アルキルを有するエチレンコポリマーであることを特徴とする請求項6に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記E/X/Yコポリマーが、Yとして0〜15重量%の(メタ)アクリル酸アルキルを有することを特徴とする請求項7に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記E/X/Yコポリマーが、亜鉛(II)陽イオンを使用してカルボン酸基の51%が中和された、エチレンと、9重量%のメタクリル酸と、24重量%のアクリル酸n−ブチルとのコポリマー;亜鉛(II)陽イオンを使用してカルボン酸基の58%が中和された、エチレンと15重量%のメタクリル酸とのコポリマー;亜鉛(II)陽イオンを使用して酸の18%が中和された、エチレンと9重量%のメタクリル酸とのコポリマー;および亜鉛(II)陽イオンを使用して36%のカルボン酸基が中和された、エチレンと19重量%のメタクリル酸とのコポリマーからなるコポリマーの群より選択されることを特徴とする請求項7に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記E/X/Yコポリマーが、亜鉛(II)陽イオンを使用して酸の51%が中和された、エチレンと、9重量%のメタクリル酸と、24重量%のアクリル酸n−ブチルとのコポリマー;亜鉛(II)陽イオンを使用して酸の58%が中和された、エチレンと15重量%のメタクリル酸とのコポリマー;亜鉛(II)陽イオンを使用して酸の18%が中和された、エチレンと9重量%のメタクリル酸とのコポリマーからなるコポリマーの群より選択されることを特徴とする請求項9に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記E/X/Yコポリマーが、ポリウレタン;ポリウレア;ポリアミド;ポリエステル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アクリル;コポリ−エーテル−エステル;コポリ−エーテル−アミド;コポリ−エーテル−ウレタン;コポリ−エーテル−ウレア;ポリオレフィン;エラストマー性ポリオレフィン;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレンと、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸アルキル、一酸化炭素、およびエポキシ含有コモノマーからなる群より選択される極性コモノマーとの共重合から誘導されるエチレンコポリマー;無水マレイン酸で改質されたポリマー;ならびにスチレン−ブタジエンブロックコポリマーを主成分とする熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1つの追加の非アイオノマー熱可塑性樹脂と混合されることを特徴とする請求項7に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記E/X/Yコポリマーが、約1重量%の無水マレイン酸コモノマーを含有するポリエチレンと混合されることを特徴とする請求項11に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記伝導性熱可塑性組成物がポリエチレン樹脂を含むことを特徴とする請求項4に記載のアンテナ。
【請求項14】
前記伝導性熱可塑性組成物がポリプロピレン樹脂を含むことを特徴とする請求項4に記載のアンテナ。
【請求項15】
前記伝導性熱可塑性組成物が、前記伝導性繊維としてステンレス鋼繊維を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項16】
前記伝導性熱可塑性組成物が18重量%〜60重量%のステンレス鋼繊維を含むことを特徴とする請求項15に記載のアンテナ。
【請求項17】
前記伝導性熱可塑性組成物が25重量%〜50重量%のステンレス鋼繊維を含むことを特徴とする請求項16に記載のアンテナ。
【請求項18】
前記伝導性熱可塑性組成物が28重量%〜42重量%のステンレス鋼繊維を含むことを特徴とする請求項17に記載のアンテナ。
【請求項19】
前記伝導性熱可塑性組成物が、前記伝導性繊維として炭素繊維を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項20】
アイオノマー樹脂を含む構造マトリックス中に分散した15〜70重量%の伝導性繊維を含むことを特徴とする伝導性熱可塑性組成物。
【請求項21】
前記アイオノマー樹脂が、1つまたは複数のE/X/Yコポリマーを含み、式中、Eはエチレンであり、XはC〜Cのα,βエチレン性不飽和カルボン酸から誘導され、Yはアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルから誘導され、前記アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、Xは前記E/X/Yコポリマーの2〜30重量%で存在し、Yは前記E/X/Yコポリマーの0〜40重量%で存在し、前記E/X/Yコポリマーは、80,000〜500,000の重量平均分子量を有し、1つまたは複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオンで少なくとも部分的に中和されていることを特徴とする請求項20に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項22】
前記E/X/Yコポリマーが、Xとして7〜20重量%のアクリル酸またはメタクリル酸を有し、Yとして0〜30重量%の(メタ)アクリル酸アルキルを有するエチレンコポリマーであることを特徴とする請求項21に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項23】
前記E/X/Yコポリマーが、Yとして0〜15重量%の(メタ)アクリル酸アルキルを有することを特徴とする請求項22に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項24】
前記E/X/Yコポリマーが、亜鉛(II)陽イオンを使用してカルボン酸基の51%が中和された、エチレンと、9重量%のメタクリル酸と、24重量%のアクリル酸n−ブチルとのコポリマー;亜鉛(II)陽イオンを使用してカルボン酸基の58%が中和された、エチレンと15重量%のメタクリル酸とのコポリマー;亜鉛(II)陽イオンを使用して酸の18%が中和された、エチレンと9重量%のメタクリル酸とのコポリマー;および亜鉛(II)陽イオンを使用して36%のカルボン酸基が中和された、エチレンと19重量%のメタクリル酸とのコポリマーからなるコポリマーの群より選択されることを特徴とする請求項21に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項25】
前記E/X/Yコポリマーが、亜鉛(II)陽イオンを使用して酸の51%が中和された、エチレンと、9重量%のメタクリル酸と、24重量%のアクリル酸n−ブチルとのコポリマー;亜鉛(II)陽イオンを使用して酸の58%が中和された、エチレンと15重量%のメタクリル酸とのコポリマー;亜鉛(II)陽イオンを使用して酸の18%が中和された、エチレンと9重量%のメタクリル酸とのコポリマーからなるコポリマーの群より選択されることを特徴とする請求項24に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項26】
前記伝導性繊維としてステンレス鋼繊維を含むことを特徴とする請求項20〜25のいずれか1項に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項27】
18重量%〜60重量%のステンレス鋼繊維を含むことを特徴とする請求項26に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項28】
25重量%〜50重量%のステンレス鋼繊維を含むことを特徴とする請求項27に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項29】
28重量%〜42重量%のステンレス鋼繊維を含むことを特徴とする請求項28に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項30】
ポリオレフィン樹脂を含む構造マトリックス中に分散した15〜70重量%の伝導性繊維を含むことを特徴とする伝導性熱可塑性組成物。
【請求項31】
ポリエチレン樹脂を含む構造マトリックスを含むことを特徴とする請求項30に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項32】
18重量%〜60重量%のステンレス鋼繊維を含むことを特徴とする請求項31に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項33】
ポリプロピレン樹脂を含む構造マトリックスを含むことを特徴とする請求項30に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項34】
18重量%〜60重量%のステンレス鋼繊維を含むことを特徴とする請求項33に記載の伝導性熱可塑性組成物。
【請求項35】
(a)1キロヘルツにおいて5.0未満の誘電率を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含む構造マトリックス中に15〜70重量%の伝導性繊維を分散させて伝導性熱可塑性組成物を形成するステップと;
(b)前記伝導性熱可塑性組成物を、アンテナに望ましい形状に成形するステップとを含み;
(i)前記組成物がポリアミド樹脂またはエポキシド樹脂を含む場合、追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要があり;
(ii)前記組成物がポリエステル樹脂を含む場合、アクリロニトリル/スチレン/アクリレート樹脂以外の追加の熱可塑性構造樹脂も存在する必要があることを特徴とするアンテナの製造方法。
【請求項36】
前記構造マトリックスが、1キロヘルツにおいて3.0未満の誘電率を有する少なくとも1つの熱可塑性構造樹脂を含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
分散した伝導性繊維を含有する構造マトリックスを含むアンテナ素子において、前記構造マトリックスとして、1つまたは複数のE/X/Yコポリマーを含むアイオノマー樹脂の使用を含み、式中、Eはエチレンであり、XはC〜Cのα,βエチレン性不飽和カルボン酸から誘導され、Yはアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルから誘導され、前記アルキル基は1〜8個の炭素原子を有し、Xは前記E/X/Yコポリマーの2〜30重量%で存在し、Yは前記E/X/Yコポリマーの0〜40重量%で存在し、前記E/X/Yコポリマーは、80,000〜500,000の重量平均分子量を有し、1つまたは複数のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオンで少なくとも部分的に中和されていることを特徴とするアンテナ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−519558(P2006−519558A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503532(P2006−503532)
【出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/004172
【国際公開番号】WO2004/073106
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】