説明

伝導性高分子組成物の製造方法およびこれを用いた伝導性フィルムの製造方法

【課題】PSSを代替して、ドーパントとしてFTS(Ferric p-toluene sulfonate)を用いて伝導性高分子モノマーを重合する、伝導性高分子組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の伝導性高分子組成物の製造方法は、(A)伝導性高分子モノマー、FTS(Ferric p-toluene sulfonate)、バインダーおよび溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を提供する段階と、(B)前記伝導性高分子モノマー溶液を重合させる段階とを含んでなる。本発明によれば、伝導性高分子モノマーの重合の前に、FTSをドーパントとして伝導性高分子モノマーと混合して重合することにより、伝導性高分子組成物の濃度調節が容易であり、伝導性高分子組成物の電気伝導度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝導性高分子組成物の製造方法およびこれを用いた伝導性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル技術を用いるコンピュータの発達に伴い、コンピュータの補助装置も一緒に開発されており、パーソナルコンピュータや携帯用転送装置、その他の個人専用情報処理装置などは、キーボードやマウスなどの様々な入力装置(Input Device)を用いてテキスト処理およびグラフィック処理を行う。
【0003】
ところが、情報化社会の急速な進行に伴ってコンピュータの用途が益々拡大する趨勢にあるので、現在、入力装置の役割を担当するキーボードおよびマウスのみでは効率的な製品の駆動が難しいという問題点がある。よって、簡単で誤操作が少ないうえ、誰でも容易に情報の入力が可能な機器の必要性が高まっている。
【0004】
また、入力装置に関する技術は、一般な機能を充足させるという水準を超え、高信頼性、耐久性、革新性、設計および加工関連技術などに関心が移っている。このような目的を達成するために、テキストやグラフィックなどの情報の入力が可能な入力装置としてタッチパネル(Touch Panel)が開発された。
【0005】
このようなタッチパネルは、電子手帳、液晶表示装置(LCD、Liquid Crystal Display Device)、PDP(Plasma Display Panel)、El(Electroluminescence)などの平板ディスプレイ装置、およびCRT(Cathode Ray Tube)といった画像表示装置の表示面に設置され、ユーザーが画像表示装置を見ながら所望の情報を選択するようにするのに用いられる道具である。
【0006】
タッチパネルの種類は、抵抗膜方式(Resistive Type)、静電容量方式(Capacitive Type)、電磁気方式(Electro-Magnetic Type)、SAW方式(Surface Acoustic Wave Type)、およびインフラレッド方式(Infrared Type)に区分される。このような各種方式のタッチパネルは、信号増幅の問題、解像度の差異、設計および加工技術の難易度、光学的特性、電気的特性、機械的特性、耐環境特性、入力特性、耐久性および経済性を考慮して電子製品に採用されるが、現在最も広範囲な分野で使用する方式は抵抗膜方式のタッチパネルと静電容量方式のタッチパネルである。
【0007】
抵抗膜方式のタッチパネルの場合は、上/下部透明電極膜がスペーサによって離隔し、押圧によって互いに接触できるように配置された形態である。上部透明膜の形成されている上部伝導性フィルムが手指やペンなどの入力手段によって押圧されるときに上/下部透明電極膜が通電し、その位置の抵抗値変化による電圧変化を制御部で認知して接触座標を認識する方式として、デジタル抵抗膜方式とアナログ抵抗膜方式がある。
【0008】
静電容量方式のタッチパネルの場合は、第1透明電極の形成された上部伝導性フィルムと第2透明電極の形成された下部伝導性フィルムとが互いに離隔し、第1透明電極と第2透明電極とが接触しないように絶縁材が挿入される。また、上部伝導性フィルムと下部伝導性フィルムには、透明電極に連結された電極配線が形成される。電極配線は、入力手段がタッチスクリーンに接触することにより、第1透明電極と第2透明電極における静電容量の変化を制御部へ伝達する。
【0009】
従来では、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用いて透明電極を形成したが、現在、これを代替するための物質として伝導性高分子に関する研究が盛んに行われている。伝導性高分子は、ITOに比べて柔軟性に優れるうえ、コーティング工程が単純であるという利点がある。このような利点により、伝導性高分子は、タッチパネルだけでなく、次世代技術であるフレキシブルディスプレイ(Flexible display)の核心的要素として注目を浴びている。
【0010】
伝導性高分子のうち、PEDOT/PSSは、電気伝導度特性に優れて現在広く市販されている。PEDOT/PSSを含む伝導性高分子は、まず、伝導性高分子モノマーを重合してPEDOT/PSSを形成した後、その他の添加剤、例えばバインダー、分散安定剤、追加ドーパントなどを追加してなる。ところが、既存のPEDOT/PSSを水に分散させるためにはPSS、PEDOTおよび溶媒間の濃度を調節しなければならない、製造工程が複雑であった。また、タッチスクリーン、ディスプレイなどの小型化の趨勢において透明電極の電気伝導度は重要な要素であるが、PEDOT/PSSは透明電極の電気伝導度を満たしていないので、ITOを代替するには十分ではないという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、その目的は、PSSを代替して、ドーパントとしてFTS(Ferric p-toluene sulfonate)を用いて伝導性高分子モノマーを重合する、伝導性高分子組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のある観点によれば、(A)伝導性高分子モノマー、FTS(Ferric p-toluene sulfonate)、バインダーおよび溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を提供する段階と、(B)前記伝導性高分子モノマー溶液を重合させる段階と、を含んでなる、伝導性高分子組成物の製造方法を提供する。
【0013】
ここで、前記FTSは伝導性高分子モノマーに対して1:0.5〜1:3.5のモル比で含まれることを特徴とする。
また、前記FTSは伝導性高分子モノマーに対して1:2〜1:3のモル比で含まれることを特徴とする。
【0014】
また、前記伝導性高分子モノマー溶液は、伝導性高分子モノマー100重量部に対してバインダー10〜200重量部、溶媒5000〜50000重量部を含むことを特徴とする。
また、前記重合は酸化重合であることを特徴とする。
【0015】
また、前記バインダーは、セルロース系バインダー、ゼラチン、アクリル系バインダー、エポキシ系バインダー、エステル系バインダー、ウレタン系バインダー、エーテル系バインダー、カルボキシル系バインダーおよびアミド系バインダーの中から選ばれた少なくとも1種の混合物であることを特徴とする。
【0016】
また、前記伝導性高分子モノマーは、チオフェン、アニリン、ピロール、アセチレン、フェニレンおよびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる伝導性高分子モノマーであることを特徴とする。
また、前記伝導性高分子モノマーは3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)であることを特徴とする。
また、前記溶媒は、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸アミド、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセトニトリル、脂肪族スルホキシド、水またはこれらの混合物であることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の観点によれば、(A)伝導性高分子モノマー、FTS、バインダーおよび溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を提供する段階と、(B)前記伝導性高分子モノマー溶液を重合させて伝導性高分子組成物を製造する段階と、(C)前記伝導性高分子組成物をベース部材にコートする段階と、(D)前記ベース部材を乾燥させる段階とを含んでなる、伝導性フィルムの製造方法を提供する。
【0018】
ここで、前記FTSは、伝導性高分子モノマーに対して1:0.5〜1:3.5のモル比で含まれることを特徴とする。
また、前記FTSは伝導性高分子モノマーに対して1:2〜1:3のモル比で含まれることを特徴とする。
【0019】
また、前記伝導性高分子モノマー溶液は、伝導性高分子モノマー100重量部に対してバインダー10〜200重量部、溶媒5000〜50000重量部を含むことを特徴とする。
また、前記重合は酸化重合であることを特徴とする。
【0020】
また、前記バインダーは、セルロース系バインダー、ゼラチン、アクリル系バインダー、エポキシ系バインダー、エステル系バインダー、ウレタン系バインダー、エーテル系バインダー、カルボキシル系バインダーおよびアミド系バインダーの中から選ばれた少なくとも1種の混合物であることを特徴とする。
【0021】
また、前記伝導性高分子モノマーは、チオフェン、アニリン、ピロール、アセチレン、フェニレンおよびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる伝導性高分子モノマーであることを特徴とする。
また、前記伝導性高分子モノマーは3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)であることを特徴とする。
【0022】
また、前記溶媒は、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸アミド、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセトニトリル、脂肪族スルホキシド、水またはこれらの混合物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、伝導性高分子モノマーの重合の前に、FTS(Ferric p-toluene sulfonate)をドーパントとして伝導性高分子モノマーと混合して伝導性高分子を重合することにより、濃度調節が容易であり、伝導性高分子組成物の電気伝導度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は実施例1〜実施例4によって得た伝導性フィルムの電気伝導度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の目的、特定の利点および新規の特徴は添付図面に連関する以下の詳細な説明と好適な実施例からさらに明白になるであろう。
これに先立ち、本明細書および請求の範囲に使用された用語または単語は、通常的かつ辞典的な意味で解釈されてはならず、発明者が自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づき、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。なお、本発明を説明するにおいて、関連した公知の技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を無駄に乱すおそれがあると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0026】
以下、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
本発明に係る伝導性高分子組成物の製造方法は、(A)伝導性高分子モノマー、FTS(Ferric p-toluene sulfonate)、バインダーおよび溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を提供する段階と、(B)前記伝導性高分子モノマー溶液を重合させる段階と、を含んでなる。本発明は、伝導性高分子モノマーの重合の前に、ドーパントとしてFTSを用いて伝導性高分子モノマーと混合して重合することにより、伝導性高分子組成物の製造が容易であり、伝導性高分子組成物の電気伝導度に優れる。次に、伝導性高分子組成物の製造方法の工程順に詳細に説明する。
【0027】
まず、伝導性高分子モノマー、バインダーおよび溶媒を混合した伝導性高分子モノマー溶液を製造する。溶媒に伝導性高分子モノマーとバインダーを入れて攪拌および超音波処理によって混合することにより、伝導性高分子モノマー溶液を得ることができる。次に、伝導性高分子モノマー溶液の構成要素別に分けて説明する。
伝導性高分子モノマーは、 炭素原子一つ当たり一つのπ電子を有する電気伝導性を帯びる高分子であって、一般に約10,000以上の分子量を有する。伝導性高分子は、既存の透明電極として一般に採用されているITO(Indium Tin Oxide)に比べて軽量であると同時に柔軟性が高い薄膜を得ることができるという利点がある。
【0028】
伝導性高分子モノマーは、チオフェン、アニリン、ピロール、アセチレン、フェニレンおよびこれらの誘導体よりなる群から選ばれるモノマーであってもよい。前記伝導性高分子モノマーは高分子への重合が容易であり、電気伝導度に優れるという利点がある。
この際、好ましくは、伝導性高分子モノマーは、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)であってもよい。前記3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を重合して形成したポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)は電気伝導度および熱的安定性に非常に優れる。
【0029】
FTSは、ドーパントおよび酸化剤であって、伝導性高分子モノマー溶液に添加される。炭素原子一つ当たり一つのπ電子を有する伝導性高分子は、電気伝導性を帯びるためには、π軌道関数の一部に対して電荷を添加し或いは除去して電荷キャリアの役割を果たす物質が必要であるが、このような物質をドーパントという。ドーパントとして一般に用いられるポリスチレンスルホネート(PSS)の場合、水に分散させるためにPSS、PEDOTおよび溶媒間の濃度を調節しなければならないので、伝導性高分子組成物の製造工程が複雑であるという欠点があった。FTSは広い濃度範囲でアルコールなどの溶媒および伝導性高分子モノマーとよく混合される。よって、FTSをドーパントとして用いて伝導性高分子組成物を製造する際に濃度調節が容易である。また、FTSをドーパントとして用いて伝導性高分子を重合する場合、下記試験例のように伝導性フィルムの電気伝導度に優れることを示した。
【0030】
また、FTSは、ドーパントとして伝導性高分子モノマーの重合に用いられると同時に、酸化剤として機能し、重合された伝導性高分子のエネルギー準位を低めて電子が高エネルギー状態へ容易に移動するようにすることにより、伝導性高分子組成物の電気伝導度が向上する。
FTSは、伝導性高分子モノマーに対して1:0.5〜1:3.5のモル比で含まれる。好ましくは、伝導性高分子モノマーに対して1:2〜1:3のモル比で含まれる。伝導性高分子モノマーに対して1:0.5以下で含まれる場合、FTS添加による電気伝導度向上効果が微弱であり、伝導性高分子モノマーに比べて1:3.5以上で含まれる場合、FTSの追加添加による電気伝導度向上効果がない。
【0031】
バインダーは、基材との接着力向上のために添加される。バインダーは、セルロース系バインダー、ゼラチン、アクリル系バインダー、エポキシ系バインダー、エステル系バインダー、ウレタン系バインダー、エーテル系バインダー、カルボキシル系バインダーおよびアミド系バインダーより群から選ばれた少なくとも1種であってもよい。但し、これは一つの例示に過ぎず、これに限定されない。
【0032】
この際、バインダーは、伝導性高分子モノマー100重量部に対して10〜200重量部の範囲で含まれ、好ましくは40〜60重量部の範囲で含まれる。バインダーの含量が10重量部未満であれば、接着力向上効果が低下し、バインダーの含量が200重量部超過であれば、伝導性高分子モノマーに比べて相対的に比率が高くなって伝導性高分子組成物の電気伝導度が減少する。
【0033】
溶媒は、伝導性高分子モノマーを溶液上に分散させるために添加される。溶媒は、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸アミド、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセトニトリル、脂肪族スルホキシド、水またはこれらの混合物であってもよい。但し、これは一つの例示に過ぎず、溶媒はこれらの例に限定されない。
【0034】
この際、溶媒は、伝導性高分子モノマー100重量部に対して5000〜50000重量部の範囲で含み、好ましくは7000〜30000重量部の範囲で含む。溶媒の含量が5000重量部未満であれば、伝導性高分子の分散性が低下し、溶媒の含量が50000重量部超過であれば、伝導性高分子組成物の電気伝導度が減少する。
【0035】
本発明の伝導性高分子モノマー溶液は、分散安定剤、界面活性剤、消泡剤などをさらに含むことができる。
次に、前述した伝導性高分子モノマー溶液を重合させて伝導性高分子組成物を製造する。本発明は、一般に用いられるPSSの代わりにFTSを伝導性高分子モノマーと混合して重合することにより、電気伝導性を高めることができる。また、PSS、伝導性高分子モノマーおよび溶媒間の濃度を調節しなければならない厄介なことがないため、伝導性高分子組成物の製造が容易であるという利点がある。
【0036】
伝導性高分子モノマー溶液を重合させる方法として、化学的重合、電気化学的重合、熱重合、光重合などが採用されてもよい。
この際、化学的重合法のうち酸化重合を用いて伝導性高分子を重合することが好ましい。酸化重合は、低い費用で高分子重合が可能であり、その方法が簡単であるという利点がある。酸化重合は、ルイス酸(Lewis acid)などの酸化剤を用いてモノマーを酸化させて伝導性高分子に重合する。
【0037】
本発明の好適な実施例に係る伝導性フィルムの製造方法は、(A)伝導性高分子モノマー、FTS(Ferric p-toluene sulfonate)、バインダーおよび溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を提供する段階と、(B)前記伝導性高分子モノマー溶液を重合させて伝導性高分子組成物を製造する段階と、(C)前記伝導性高分子組成物をベース部材にコートする段階と、(D)前記ベース部材を乾燥させる段階とを含んでなる。
【0038】
以下、伝導性フィルムの製造工程別に分けて説明する。前述した部分と重複する部分は省略し或いは簡略に言及する。
まず、伝導性高分子モノマー、FTS、バインダーおよび溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を製造する。
【0039】
この際、FTSは、伝導性高分子モノマーに比べて1:0.5〜1:3.5のモル比で、好ましくは1:2〜1:3のモル比で含まれる。本発明に係る伝導性フィルムの製造方法は、ドーパントとしてFTSを用いて伝導性高分子を重合することにより、伝導性フィルムの電気伝導度に優れるうえ、製造工程が簡単であるという利点がある。
【0040】
また、伝導性高分子モノマー溶液は、伝導性高分子モノマー100重量部に対してバインダー10〜200重量部および溶媒5000〜50000重量部を含む。
次に、前記伝導性高分子モノマー溶液を重合させて伝導性高分子組成物を製造する。この際、伝導性高分子モノマー溶液を重合させる方法として、費用が低く重合方法が簡単な酸化重合を用いることが好ましい。
【0041】
その後、前記伝導性高分子組成物をベース部材にコートする。伝導性高分子組成物を乾式工程または湿式工程によってパターニングしてコートすることができる。乾式工程としてはスパッタリング(Sputtering)や蒸着(Evaporation)などがあり、湿式工程としてはディップコーティング(Dip coating)、スピンコーティング(Spin Coating)、ロールコーティング(Roll coating)、スプレーコーティング(Spray coating)などを挙げることができる。
【0042】
ベース部材としては、透明な部材であって、ガラス基板、フィルム基板、繊維基板または紙基板が使用できる。それらの中でも、フィルム基板はポリエチレンテレフタレート(PET)やポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリビニルアルコール(PVA)、環状オレフィン共重合体(COC)、スチレン重合体などで構成でき、特に限定されない。
【0043】
次に、伝導性高分子組成物のコートされたベース部材を乾燥させる。コートされた伝導性高分子組成物が乾燥することにより、固定された形態の透明電極が形成される。乾燥方法としては熱風乾燥や赤外線(IR)乾燥などを用いることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0044】
(実施例1)
100mLの丸底反応容器に溶媒としてのn−ブタノール0.4moL(3g)、アクリル系バインダー0.12g、伝導性高分子モノマーとしての3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)0.422mmoL(0.06g)、およびFTS(Ferric p-toluene sulfonate)1.26mmoL(854g、伝導性高分子モノマーとFTSとのモル比は1:2.98)を入れ、30分間攪拌および超音波処理して伝導性高分子モノマー溶液を製造した。その後、伝導性高分子モノマー溶液に酸化剤を添加して25℃で3時間酸化重合させ、PEDOT/FTS伝導性高分子組成物を製造した。伝導性高分子組成物をベース部材上にスピンコートし、70℃で30分間オーブンを用いて乾燥させて伝導性フィルムを製造した。
【0045】
(実施例2)
実施例1と同様にして行うが、FTSを0.844mmoL(0.572g)入れて伝導性高分子モノマーとFTSとのモル比を1:2にした。
伝導性高分子組成物をベース部材上にスピンコートし、70℃で30分間オーブンを用いて乾燥させて伝導性フィルムを製造した。
【0046】
(実施例3)
実施例1と同様にして行うが、FTSを0.422mmoL(0.286g)入れて伝導性高分子モノマーとFTSとのモル比を1:1にした。
伝導性高分子組成物をベース部材上にスピンコートし、70℃で30分間オーブンを用いて乾燥させて伝導性フィルムを製造した。
【0047】
(実施例4)
実施例1と同様にして行うが、FTSを1.477mmoL(1g)入れて伝導性高分子モノマーとFTSとのモル比を1:3.5にした。
伝導性高分子組成物をベース部材上にスピンコートし、70℃で30分間オーブンを用いて乾燥させて伝導性フィルムを製造した。
【0048】
(比較例)
実施例1と同様にして行うが、ドーパントとしてFTSの代わりにポリスチレンスルホネート(PSS)1.26mmoL(伝導性高分子モノマーとPSSとのモル比は1:2.98)を添加して伝導性高分子組成物を製造した。
伝導性高分子組成物をベース部材上にスピンコートし、70℃で30分間オーブンを用いて乾燥させて伝導性フィルムを製造した。
【0049】
(試験例)
実施例1〜実施例4および比較例の伝導性高分子組成物で製造された伝導性フィルムの電気伝導度を評価した。電気伝導度の測定は三菱化学株式会社のLoresta EP MCP−T360を使用した。図1は実施例1〜実施例4で得た伝導性フィルムの電気伝導度を示すグラフである。
【0050】
【表1】

【0051】
表1の実験データ結果値から分かるように、ドーパントとしてFTSを用いた場合、PSS(比較例)に比べて電気伝導度に優れた。この際、FTSが伝導性高分子モノマーに対して1:2〜1:3のモル比で添加されたとき、伝導性フィルムの電気伝導度向上効果が最も大きかった。
【0052】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものに過ぎず、本発明による伝導性高分子組成物の製造方法およびこれを用いた伝導性フィルムの製造方法はこれに限定されないのは言うまでもない。本発明の技術的思想内で、当該分野における通常の知識を有する者によって多様な変形及び改良が可能であることは明白であろう。本発明の単純な変形ないし変更はいずれも本発明の範疇内に属するもので、本発明の具体的な保護範囲は特許請求の範囲によって明らかになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)伝導性高分子モノマー、FTS(Ferric p-toluene sulfonate)、バインダーおよび溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を提供する段階と、
(B)前記伝導性高分子モノマー溶液を重合させる段階と、を含んでなることを特徴とする、伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項2】
前記FTSが伝導性高分子モノマーに対して1:0.5〜1:3.5のモル比で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項3】
前記FTSが伝導性高分子モノマーに対して1:2〜1:3のモル比で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項4】
前記伝導性高分子モノマー溶液が伝導性高分子モノマー100重量部に対してバインダー10〜200重量部および溶媒5000〜50000重量部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項5】
前記重合が酸化重合であることを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項6】
前記バインダーが、セルロース系バインダー、ゼラチン、アクリル系バインダー、エポキシ系バインダー、エステル系バインダー、ウレタン系バインダー、エーテル系バインダー、カルボキシル系バインダーおよびアミド系バインダーよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項7】
前記伝導性高分子モノマーが、チオフェン、アニリン、ピロール、アセチレン、フェニレンおよびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる伝導性高分子モノマーであることを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項8】
前記伝導性高分子モノマーが3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)であることを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項9】
前記溶媒が、脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸アミド、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセトニトリル、脂肪族スルホキシド、水またはこれらの混合物のいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の伝導性高分子組成物の製造方法。
【請求項10】
(A)伝導性高分子モノマー、FTS(Ferric p-toluene sulfonate)、バインダーおよび溶媒を含む伝導性高分子モノマー溶液を提供する段階と、
(B)前記伝導性高分子モノマー溶液を重合させて伝導性高分子組成物を製造する段階と、
(C)前記伝導性高分子組成物をベース部材にコートする段階と、
(D)前記ベース部材を乾燥させる段階と、を含んでなることを特徴とする、伝導性フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記FTSが伝導性高分子モノマーに対して1:0.5〜1:3.5のモル比で含まれることを特徴とする、請求項10に記載の伝導性フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記FTSが伝導性高分子モノマーに対して1:2〜1:3のモル比で含まれることを特徴とする、請求項10に記載の伝導性フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記伝導性高分子モノマー溶液が伝導性高分子モノマー100重量部に対してバインダー10〜200重量部および溶媒5000〜50000重量部を含むことを特徴とする、請求項10に記載の伝導性フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記重合が酸化重合であることを特徴とする、請求項10に記載の伝導性フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記バインダーが、セルロース系バインダー、ゼラチン、アクリル系バインダー、エポキシ系バインダー、エステル系バインダー、ウレタン系バインダー、エーテル系バインダー、カルボキシル系バインダーおよびアミド系バインダーよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項10に記載の伝導性フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記伝導性高分子モノマーが、チオフェン、アニリン、ピロール、アセチレン、フェニレンおよびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる伝導性高分子モノマーであることを特徴とする、請求項10に記載の伝導性フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記伝導性高分子モノマーが3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)であることを特徴とする、請求項10に記載の伝導性フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記溶媒が脂肪族アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸アミド、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセトニトリル、脂肪族スルホキシド、水またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項10に記載の伝導性フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−140577(P2012−140577A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77659(P2011−77659)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】