説明

伝熱シートの製造方法

【課題】熱伝導性に優れる伝熱シートを製造する製造方法を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂を含む硬化性組成物と磁性体を含む粒子とを含有するシート成形材料に交流磁場を印加する磁場印加工程と、前記磁場印加工程によって交流磁場が印加された前記シート成形材料を硬化させる硬化工程と、を含む、伝熱シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱シートの製造方法に関する。更に詳しくは、電子機器における電子部品または照明装置における光源から生じる熱を放熱するために供される伝熱シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CPU(Central Processing Unit)などの電子部品を備えた電子機器においては、その使用時に、CPUなどの電子部品から生じる熱を電子機器の外部に放熱することが行われている。
【0003】
電子機器における放熱手段としては、高分子材料からなるシート基体中に、高い熱伝導性を有する材料(金属やセラミック材料など)からなる粒子が含有された伝熱シートを、電子部品と放熱板(ヒートシンク)との間に狭圧された状態で配置することによって、電子部品に生ずる熱を伝熱シートを介して放熱板に伝導させる手段がある。
このような伝熱シートとしては、基体粒子の表面が微粒子で被覆された複合粒子を用いて、当該複合粒子がシート基体中にその厚さ方向に配向された状態で含有された伝熱シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ほかに、電子機器における放熱手段として、炭化珪素粒子の表面がアルミニウム微粒子で被覆された複合粒子粉末と、アルミニウム粒子からなるマトリックス形成粉末とを含む混合粉末の焼結体からなる電子機器用放熱部材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
他方、電子部品用ガスケットの技術分野においては、様々なガスケット形成材料が開発されている。
例えば、空気中に存在するシロキサンの溶解度が低いガスケットを提供する目的で、光硬化性官能基を含有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体、(メタ)アクリレートモノマー及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、ハードディスク装置におけるカバープレート及びベースプレートのリワーク性を良好なものにし得るガスケットを提供する目的で、重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化性ウレタン液状オリゴマーと、ガラス転移温度(Tg)が−70〜20℃である一官能(メタ)アクリレートモノマーとを含むガスケット形成材料が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−35221号公報
【特許文献2】特開2009−242899号公報
【特許文献3】特開2008−291127号公報
【特許文献4】特開2009−43295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子機器の高密度化および薄型化に伴って、電子部品から発生する熱の影響がこれまで以上に深刻なものとなっており、しかも電子機器の高性能化および高密度化が発熱量の増加をもたらしていることから、電子部品の熱をより高い効率で伝熱することのできる伝熱シートが求められている。
さらに、電子機器の高密度化、小型化、高性能化に伴い、伝熱シート自体に、環境から電子機器を保護する性能が求められている。そして、伝熱シートには、絶縁性が必要とされる場合が多い。
【0008】
本発明は、上記状況のもとになされたものである。上記状況のもと、本発明の課題は、熱伝導性に優れる伝熱シートを製造する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は、以下のとおりである。
<1> 硬化性樹脂を含む硬化性組成物と磁性体を含む粒子とを含有するシート成形材料に交流磁場を印加する磁場印加工程と、前記磁場印加工程によって交流磁場が印加された前記シート成形材料を硬化させる硬化工程と、を含む、伝熱シートの製造方法。
<2> 前記磁性体は、軟磁性体である、前記<1>に記載の伝熱シートの製造方法。
<3> 前記粒子は、基体粒子の表面の少なくとも一部が該基体粒子よりも粒子径の小さい微粒子で被覆された複合粒子である、前記<1>又は<2>に記載の伝熱シートの製造方法。
<4> 前記硬化性組成物は、さらに(メタ)アクリレートモノマーと重合開始剤とを含む、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の伝熱シートの製造方法。
<5> 前記硬化性樹脂は、重合性不飽和基を有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体及び重合性不飽和基を有するウレタン液状オリゴマーから選ばれる少なくとも1種を含む、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の伝熱シートの製造方法。
<6> 前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体が有する重合性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基である、前記<5>に記載の伝熱シートの製造方法。
<7> 前記(メタ)アクリレートモノマーは、炭素数8〜18のアルキル基、イソボルニル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニルオキシエチル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基、ノニルフェノキシポリエチレングリコール残基又はノニルフェノキシポリプロピレングリコール残基を有する、前記<4>〜<6>のいずれか1項に記載の伝熱シートの製造方法。
<8> 前記(メタ)アクリレートモノマーは、ガラス転移温度が−70℃以上20℃以下である一官能(メタ)アクリレートモノマーを含む、前記<4>〜<7>のいずれか1項に記載の伝熱シートの製造方法。
<9> 前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の伝熱シートの製造方法によって製造され、硬化性樹脂を含む硬化性組成物からなるシート基体中に、磁性体を含む粒子が配向された状態で含有された、伝熱シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱伝導性に優れる伝熱シートを製造する製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の製造方法によって製造された伝熱シートの一つの構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の製造方法によって製造された伝熱シートの他の構成例を示す断面図である。
【図3】本発明の製造方法に用いられる型枠の一例を示す断面図である。
【図4】図3に示す型枠内にシート成形材料層が形成された状態を示す断面図である。
【図5】本発明の製造方法に用いられる装置の一例を示す断面図である。
【図6】図5に示す装置によってシート形成材料層が硬化された状態を示す断面図である。
【図7】図2に示す構成の伝熱シートを製造するために用いられる型枠の一例を示す断面図である。
【図8】本発明の実施例に用いられた装置の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について順次説明する。なお、これらの説明および実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と同時に実施される場合であっても、その工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において、(メタ)アクリレートモノマーとは、アクリレートモノマー及び/又はメタクリレートモノマーをいい、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートをいい、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基をいう。
【0013】
≪伝熱シートの製造方法≫
本発明の伝熱シートの製造方法は、シート成形材料に交流磁場を印加する磁場印加工程と、前記磁場印加工程によって交流磁場が印加された前記シート成形材料を硬化させる硬化工程とを含む。
前記シート成形材料は、硬化性樹脂を含む硬化性組成物と、磁性体を含む粒子(以下「磁性粒子」とも称する。)との混合物であり、少なくとも、前記硬化性組成物と前記磁性粒子とを含有する。
係る構成の製造方法によって、前記硬化性組成物が硬化してなるシート基体中に、前記磁性粒子が配向された状態で含有された、伝熱シートを得ることができる。
前記製造方法によって製造される伝熱シートは、シート基体中に磁性粒子が配向された状態で含有されているため、該磁性粒子の連鎖によってその配向方向に伸びる伝熱経路が形成され、該磁性粒子の配向方向に高い熱伝導率が得られる。
【0014】
本発明の伝熱シートの製造方法は、少なくとも、前記磁場印加工程と前記硬化工程とを含むが、必要に応じてその他の工程を含んでもよい。前記製造方法は、前記シート成形材料をシート状に成形するシート成形工程を含むことが好ましい。また、前記製造方法は、前記シート成形材料中に含有される揮発成分を除去する目的で、前記シート成形材料の硬化後に加熱処理を行うポストベーキング工程を設けてもよい。
【0015】
<磁場印加工程>
前記磁場印加工程は、硬化性樹脂を含む硬化性組成物と磁性体を含む粒子とを含有するシート成形材料に、交流磁場を印加する工程である。係る工程によって、シート成形材料中に分散していた磁性粒子が、シート成形材料中において移動し、印加された交流磁場の方向に配向する。
【0016】
印加する交流磁場の強度や周波数、交流磁場を印加する時間などの具体的な処理条件は、磁性粒子の移動に要する時間などを考慮して適宜選定される。
印加する交流磁場の強度は、磁性粒子の粒子径や硬化性組成物の粘度等によって選定されるが、20ミリテスラ以上であることが好ましい。
印加する交流磁場の周波数は、例えば50Hzでも60Hzでもよく、それ以外の周波数を選択してもよい。
【0017】
交流磁場を印加する方向は、特に制限されず、前記磁性粒子を配向させたい方向にすればよい。例えば、前記磁性粒子を伝熱シートの厚さ方向に配向させたい場合、シート成形材料をシート状に成形し、その厚さ方向に磁場を作用させればよい。
【0018】
<硬化工程>
前記硬化工程は、前記磁場印加工程によって交流磁場が印加された前記シート成形材料を硬化させる工程である。前記硬化工程によって、前記硬化性組成物は硬化してシート基体となり、前記磁性粒子は、前記磁場印加工程によって配向した配向方向を保持した状態でシート基体中に含有される。
前記硬化工程は、シート成形材料に交流磁場を印加しながら行ってもよく、交流磁場の印加を停止した後に行ってもよい。
硬化処理の方法は、使用される硬化性組成物によって適宜選定されるが、通常、エネルギー線の照射によって行われ、加熱によっても行われ得る。
【0019】
硬化処理に用いられるエネルギー線とは、紫外線及び電子線、α線、β線、γ線をいい、本発明ではこれらのうち、特に紫外線が好ましい。紫外線は、装置が簡便で使いやすく、硬化度も高い。紫外線を照射する雰囲気としては、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気あるいは酸素濃度を低下させた雰囲気が好ましいが、通常の空気雰囲気でも十分に硬化させることができる。
エネルギー線による硬化処理の具体的な処理条件は、硬化性組成物に含まれる材料の種類などを考慮して適宜選定される。
【0020】
硬化処理を加熱によって行う場合、加熱条件は特に制限されず、硬化性組成物に含まれる材料の種類などを考慮して適宜選定される。例えば、50℃〜200℃の温度で10分〜3時間保持することで、シート成形材料層を硬化させることができる。
【0021】
<シート成形工程>
本発明の伝熱シートの製造方法は、前記シート成形材料をシート状に成形するシート成形工程を含み、シート状に成形された前記シート成形材料に交流磁場を印加することが好ましい。
シート状に成形する方法は、特に制限されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂からなるシート上に前記シート成形材料を塗布する方法や、前記シート成形材料を押出成形する方法を採用してよい。
【0022】
以下に、本発明の伝熱シートの製造方法の具体例、及び、前記製造方法によって製造された伝熱シートの具体例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0023】
図1は、前記伝熱シートの一つの構成例を示す断面図である。図1に示す伝熱シート10は、両面が平坦なシート基体11中に、磁性粒子12が含有されている。シート基体11は、硬化性樹脂を含む硬化性組成物が硬化してなる。磁性粒子12は、シート基体11の厚さ方向に複数個が並ぶように配向されており、複数個の磁性粒子12の連鎖によって伝熱経路が形成される。図示の伝熱シート10においては、磁性粒子12がシート基体11の面方向全体にわたって均一に、シート基体11の厚さ方向に並ぶよう配向された状態で含有されている。
図2は、前記伝熱シートの他の構成例を示す断面図である。図2に示す伝熱シート30は、磁性粒子がシート基体31中にその厚さ方向に配向した状態で密に充填された高密度部分32と、磁性粒子が全くあるいは殆ど存在しない低密度部分33とからなる。
【0024】
本発明の伝熱シートの製造方法では、下記のように、シート成形材料層形成用シートを用いる手法が適用できる。
先ず、前記硬化性組成物と前記磁性粒子とを混合し、撹拌などによって、シート成形材料を調製する。シート成形材料は、シート成形を容易にする観点から、流動性を有することが好ましい。シート成形材料における磁性粒子の含有量は、シート成形材料の流動性や硬化効率、シートに付与する熱伝導率などを考慮して選定すればよい。
【0025】
次いで、上記のシート成形材料を、予め用意した2枚のシート成形材料層形成用シート(以下「材料層形成用シート」ともいう。)のいずれか一方または両方の表面に塗布し、これらのシートを重ね合わせることによって、2枚のシートの間にシート成形材料層を形成する。ここに、材料層形成用シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂からなるシートを用いることができる。
さらに、取扱い性の観点から、材料層形成用シートの外側に、ガラス板などを支持体として積層してもよい。また、材料層形成用シートにシート成形材料を塗布する際には、樹脂製スペーサーを用いると厚さを定めやすい。
【0026】
次いで、2枚の材料層形成用シートの間にシート成形材料層が形成されてなる積層体に対して、所望の方向(例えば、厚さ方向)に交流磁場を印加する磁場印加処理を交流磁場発生装置を用いて行う。そして、磁場印加処理を行いながら、または磁場印加処理を停止した後に、硬化処理(エネルギー線照射または加熱)を行う。その後、積層体から材料層形成用シートを剥がし取り、好ましくはさらに加熱処理(ポストベーキング工程)を行う。
その結果、シート成形材料層においては、その中に分散されている磁性粒子が所望の方向(例えば、厚さ方向)に並ぶよう配向し、この状態においてシート成形材料層が硬化処理によって硬化してシート基体が形成され、以て、図1に示すような構成の伝熱シートが製造される。
【0027】
上記の磁場印加処理に用いられる交流磁場発生装置は、少なくとも1個の電磁石を備え、当該電磁石に交流電源から交流電流が供給されることで交流磁場を発生する。
磁場印加処理においては、シート成形材料層に対し所望の方向に磁場が印加されるように、交流磁場発生装置が備える電磁石とシート成形材料層との配置位置を選定する。このとき、シート成形材料層に印加される磁場の方向を揃えるためには、磁場の中でも磁力線が平行に並んだ部分にシート成形材料層が配置されるように、前記電磁石とシート成形材料層との配置位置を選定することが好ましい。
交流磁場発生装置に供給される交流電流の周波数は特に制限されず、50Hzでも60Hzでもよく、それ以外の周波数を選択してもよい。
印加する交流磁場の強度は、磁性粒子の粒子径、硬化性組成物の粘度、シート成形材料層の厚さ等によって選定されるが、20ミリテスラ以上であることが好ましい。
【0028】
上記の硬化処理に用いられるエネルギー線としては、紫外線が好ましい。紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波方式エキシマランプ等を挙げることができる。紫外線の照射雰囲気温度は、通常10℃〜200℃とすることができる。また、硬化後にポストベーキング工程を設ける場合、ベーキング温度は100℃〜160℃が好ましい。
上記の硬化処理を加熱によって行う場合、例えば50℃〜200℃の温度で10分〜3時間保持することで、シート成形材料層を硬化させることができる。この場合、ポストベーキング工程は、硬化処理時の加熱温度よりも高い加熱温度によって行う。
【0029】
ほかに、図3に示すような型枠を用いる手法も適用できる。図3は、本発明の伝熱シートの製造方法に用いられる型枠の一例を示す断面図である。図3の型枠20は、上型21及びこれと対になる下型22が枠状のスペーサー23を介して互いに対向するよう配置されて構成されている。上型21及び下型22の材料組成は問わない。
【0030】
図3に示すような型枠を用い、次のようにして伝熱シートが製造される。
先ず、前記硬化性組成物中に前記磁性粒子を分散させて流動性のシート成形材料を調製する。そして、このシート成形材料を、上型21および下型22のいずれか一方または両方の表面に塗布する。次に、上型21および下型22を重ね合わせることによって、図4に示すように、シート成形材料層11Aを形成する。
【0031】
次いで、図5に示すように、シート成形材料層11Aを型枠20ごと交流磁場発生装置25に配置する。交流磁場発生装置25は、一対の電磁石25A、25Bを備え、交流電源から交流電流が供給されることで交流磁場を発生させる。交流磁場発生装置25を作動させることによって、シート成形材料層11Aに対して、その厚さ方向に交流磁場MFを作用させる。その結果、シート成形材料層11Aにおいては、シート成形材料層11A中に分散されていた磁性粒子12が、図6に示すように厚さ方向に並ぶよう配向する。そして、この状態において、シート成形材料層11Aを硬化処理することによって、シート基体11が形成され、以て、図1に示す構成の伝熱シートが製造される。
【0032】
図2に示すような伝熱シート30は、例えば図7に示す型枠を用いて製造することができる。
図7は、本発明の伝熱シートの製造方法に用いられる型枠の一例を示す断面図である。図7の型枠は、上型40及びこれと対になる下型45が枠状のスペーサー44を介して互いに対向するよう配置されて構成されている。
上型40は、強磁性体基板41の下面に、図2に示す伝熱シート30の高密度部分32に対掌なパターンに従って強磁性体部分42が形成され、この強磁性体部分42以外の個所に非磁性体部分43が形成されている。強磁性体部分42および非磁性体部分43は、実質的に同一の厚さを有し、上型40の下面、すなわち成形面は、平坦面とされている。
一方、下型45は、強磁性体基板46の上面に、図2に示す伝熱シート30の高密度部分32に対掌なパターンに従って強磁性体部分47が形成され、この強磁性体部分47以外の個所に非磁性体部分48が形成されている。強磁性体部分42および非磁性体部分43は、実質的に同一の厚さを有し、上型40の下面、すなわち成形面は、平坦面とされている。
強磁性体基板41及び46並びに強磁性体部分42及び47を構成する材料としては、鉄、ニッケル、コバルトまたはこれらの合金などを用いることができる。また、非磁性体部分43及び48を構成する材料としては、銅などの非磁性金属、ポリイミドなどの耐熱性樹脂などを用いることができる。
【0033】
このような型枠を用い、交流磁場発生装置(不図示)を作動させることによって、上型40における強磁性体部分42と下型45における強磁性体部分47との間に位置する部分に大きい強度を有する交流磁場を作用させる。これによって、該シート成形材料層中に分散されている磁性粒子が、上型40における強磁性体部分42と下型45における強磁性体部分47との間に位置する部分に集合すると共に、厚さ方向に並ぶよう配向する。そして、この状態において、シート成形材料層を硬化処理することによってシート基体31が形成され、以て、図2に示す構成の伝熱シート30が製造される。
【0034】
以下、本発明の製造方法によって製造される伝熱シートを説明しながら、前記硬化性組成物、前記磁性粒子を説明する。
≪伝熱シート≫
本発明の製造方法によって製造される伝熱シートは、硬化性樹脂を含む硬化性組成物からなるシート基体中に、磁性体を含む粒子が配向された状態で含有された伝熱シートである。
前記伝熱シートは、磁性粒子がシート基体に配向された状態で含有されているため、該磁性粒子の連鎖によってその配向方向に伸びる伝熱経路が形成され、該磁性粒子の配向方向に高い熱伝導率が得られる。
【0035】
前記伝熱シートは、例えば、発熱体と受熱体との間に挟まれた状態、または発熱体に接触した状態で使用される。具体的には、CPU、RIMM(Rambus Inline Memory Module)等のメモリーモジュールなどの電子部品;ランプ、白熱灯、蛍光灯などの照明装置;LED(Light Emitting Diode)素子および有機EL(Electro Luminescence)素子を光源とする装置などに生じる熱を放熱するための伝熱シートとして有用である。特に、LED素子および有機EL素子において用いる場合、発熱体(LED素子あるいは有機EL素子)の熱を放熱板(ヒートシンク)に伝導するための部材として用いることの他、ヒートシンクとしても用いることができる。
【0036】
前記伝熱シートは、磁性粒子がシート基体に配向された状態で含有されている。前記シート基体中での前記磁性粒子の配向方向に制限はなく、前記磁性粒子は所望の方向に配向していてよい。前記伝熱シートが発熱体と受熱体との間に挟まれた状態で使用されるのであれば、発熱体と受熱体とを結ぶ線方向に前記磁性粒子が配向しているのが好ましい。前記伝熱シートが発熱体に接触しつつ外気にさらされた状態で使用されるのであれば、発熱体から外気へと向かう線方向に前記磁性粒子が配向しているのが好ましい。いずれの使用状態でも、前記磁性粒子が、例えば前記シート基体の厚さ方向に配向していてよい。
【0037】
図1に図示するような伝熱シート、即ち、磁性粒子が、シート基体の面方向全体にわたって、シート基体の厚さ方向に並ぶよう配向された状態で含有されている構成の伝熱シートは、シート基体中に磁性粒子が体積分率で5〜50%含有されていることが好ましい。前記体積分率が5%以上であると、シート基体の厚さ方向に形成される伝熱経路における熱抵抗が小さく、熱伝導性が高い伝熱シートを得られる。一方、前記体積分率が50%以下であると、シートの柔軟性が高い。このため、発熱体や受熱体の表面形状に追従して変形しやすく、シール性能に優れる。前記体積分率は、7〜40%であることがより好ましく、10〜30%であることが更に好ましい。
【0038】
図2に図示するような伝熱シート、即ち、磁性粒子がシート基体中にその厚さ方向に配向した状態で密に充填された高密度部分と、磁性粒子が全くあるいは殆ど存在しない低密度部分とからなる構成の伝熱シートにおいては、高密度部分32における磁性粒子の含有割合が、体積分率で5〜60%であることが好ましく、より好ましくは7〜50%である。前記体積分率が5%以上であると、シート基体の厚さ方向に形成される伝熱経路における熱抵抗が十分に小さくなる。一方、前記体積分率が60%以下であると、シートの柔軟性が高く、発熱体や受熱体の表面形状に追従して変形しやすく、したがって、シール性能に優れる。
【0039】
[シート基体]
前記シート基体は、硬化性樹脂を含む硬化性組成物が硬化してなる。
前記シート基体は、その厚さに特に制限はないが、0.3mm〜5mmであることが好ましい。より好ましくは0.5mm〜3mm、更に好ましくは0.7mm〜2mmである。シート基体の厚さが0.3mm以上であると、発熱体と受熱体との間に狭圧された状態で用いる際に、伝熱シートに発熱体および受熱体の両方を密着させやすい。一方、シート基体の厚さが5mm以下であると、シート基体の厚さ方向に磁性粒子を配向させたときに形成される伝熱経路における熱抵抗が小さく、熱伝導性が更に高い伝熱シートを得られる。
【0040】
前記シート基体は、その両面が平坦なものであることが好ましい。具体的には、シート基体の表と裏の各表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)が50μm以下であることが好ましく、特に好ましくは5μm以下である。シート基体の算術平均粗さ(Ra)が50μm以下であると、発熱体と受熱体との間に狭圧された状態で用いる際に、発熱体と受熱体とによって狭圧されたときに、発熱体と伝熱シートとの間、または伝熱シートと受熱体との間に空隙が形成されにくく、伝熱シートを発熱体および受熱体の各々に密着させやすい。
【0041】
[硬化性組成物]
前記シート基体は、硬化性樹脂の少なくとも1種を含む硬化性組成物が硬化してなる。前記硬化性組成物は、硬化性を向上させる観点から、(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、重合開始剤の少なくとも1種とを、さらに含有することが好ましい。前記硬化性組成物は、必要に応じてさらに他の成分を含んでもよい。
以下に、前記硬化性組成物に含まれる各成分を説明する。
【0042】
〔硬化性樹脂〕
硬化性樹脂は、エネルギー線の照射あるいは加熱によって硬化する樹脂であれば特に制限されない。硬化性樹脂としては、重合性不飽和基を有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体及び重合性不飽和基を有するウレタン液状オリゴマーから選ばれる少なくとも1種が好ましい。水蒸気バリア性の観点からは、前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体が好ましく、シロキサンの吸着を抑制する観点からは、前記ウレタン液状オリゴマーが好ましい。
【0043】
前記伝熱シートは、前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を含むことによって水蒸気バリア性に優れ、前記ウレタン液状オリゴマーを含むことによって空気中に存在するシロキサンが吸着しにくい。
また、前記伝熱シートは、優れた熱伝導性を得るためにフィラー充填率を高くすることを要しないため、シートの柔軟性が高く、シール性能に優れる。
したがって、前記伝熱シートは、電子部品等の品質を守る保護性能に優れる。
【0044】
−重合性不飽和基を有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体−
前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体が有する重合性不飽和基は、特に制限されないが、(メタ)アクリロイル基であることが特に好ましい。
【0045】
前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を構成する共役ジエン単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中では、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンが硬化後のゴムの弾性確保の観点から好ましく、1,3−ブタジエンであることが特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を構成する芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン又はパラメチルスチレンが硬化後のゴムの物性の点で好ましく、スチレンであることが特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体は、共役ジエン単量体に由来する構成単位の含量が、10〜40質量%であることが好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。また、前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体は、数平均分子量が、10000〜20000であることが好ましく、15000〜18000であることがより好ましい。
前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体としては、1,3−ブタジエンに由来する構成単位とスチレンに由来する構成単位を含む共重合体が好ましく、アクリロイル基含有水添スチレン−ブタジエン共重合体が最も好ましい。
【0046】
前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体は、以下の方法によって製造されることが好ましい。
(i)飽和炭化水素系溶媒中で、ジリチウム開始剤によって共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体を重合して、重量平均分子量5,000〜40,000及び分子量分布3.0以下を有する共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を製造する段階と、
(ii)前記共役ジエン−芳香族ビニル共重合体とアルキレンオキシドとを反応させて、共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールを製造する段階と、
(iii)前記共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールに水素添加反応し、水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールを製造する段階と、
(iv)前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールと重合性不飽和基含有化合物とを反応させる段階と、
を含む製造方法である。
【0047】
第一の段階(i)として、飽和炭化水素系溶媒中で、ジリチウム開始剤によって共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体を重合して、共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を製造する。本重合はリビングアニオン重合であるために、分子量及び分子量分布を制御して重合できる。分子量は、ジリチウム開始剤と上記単量体の量によって所定の分子量の重合体を重合することが可能であり、特に重量平均分子量が5,000以上では、分子量分布が2以下の狭い重合体を得やすい。また、所望によっては、ランダマイザーの存在下にアニオン重合をさせてもよい。
次に、第二の段階(ii)として、上記の共役ジエン−芳香族ビニル共重合体の、リビングアニオンである共重合体末端とアルキレンオキシドとを当量反応させることによって両末端に水酸基を有する共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールを得ることができる。
さらに、第三の段階(iii)として、主鎖に二重結合を有する上記の共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールに水素添加反応(以下、水添反応という。)を行うことによって、主鎖に不飽和二重結合を持たないか又は主鎖の不飽和二重結合が少ない水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールを得ることができる。
第四の段階(iv)として、上記の水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールに、重合性不飽和基含有化合物を反応させて、重合性不飽和基を有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体が得られる。
【0048】
第一の段階(i)で使用するジリチウム開始剤としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。例えば、特公平1−53681号公報には、モノリチウム化合物を第3級アミンの存在下に、二置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素と反応させてジリチウム開始剤を製造する方法が記載されている。
ジリチウム開始剤を製造するときに用いられるモノリチウム化合物としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム等が挙げられるが、これらの中で、sec−ブチルリチウムが好ましい。
ジリチウム開始剤を製造するときに用いられる第3級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等の低級脂肪族アミンやN,N−ジフェニルメチルアミン等が挙げられるが、特にトリエチルアミンが好ましい。
また、上記二置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素としては、例えば、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,4−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,3−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン、1,4−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン等が好ましく挙げられる。
【0049】
上記ジリチウム開始剤の調製、及び共重合体の製造において用いられる溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、脂肪族,脂環族,芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶媒が用いられ、例えば、n−ブタン、l−ブタン、n−ペンタン、l−ペンタン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、l−ブテン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、l−オクタン、メチルシクロペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ペンテン、2−ペンテン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等から1種あるいは2種選んで使用される。これらのうち、n−ヘキサン、シクロヘキサンが通常用いられる。
【0050】
第二の段階(ii)で使用するアルキレンオキシドとして、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド等が挙げられる。このポリオール化反応は、重合反応直後に行うのが好ましい。
【0051】
第二の段階(ii)のポリオール化反応によって得られた、両末端に水酸基を有する共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールの重量平均分子量が5,000以上であれば架橋点間分子量を大きくすることができ、光硬化反応後、弾性率を低くかつ伸び大きくできるためゴム材料として好ましく、一方、重量平均分子量が40,000以下であれば、ジリチウム触媒で重合を行う際に、重合粘度が高くなりすぎず、重合プロセスとして固形分濃度を下げる必要がないので、低コストとなり好ましい。
また、分子量分布が3.0以下であると、低分子量成分や高分子量成分によるさまざまな影響を抑制することができる。特に、粘度は分子量の影響を大きく受けるため、分子量のわずかなブレは粘度バラツキとなる。狭い分子量分布の共重合体を合成できる本発明では、再現性よく同じ分子量の共重合体を得ることができるため、粘度を安定化させる効果が期待できる。本発明のような液状の材料は、ディスペンサー塗布を行う場合が多く、この場合、材料粘度のバラツキは塗布後の寸法にバラツキを生じるので、粘度の安定化は重要であり、分子量分布が3.0以下であることが好ましい。
【0052】
第三の段階(iii)の水添反応は、有機溶媒中、水素加圧下で水添触媒の存在下で、上記の共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ポリオールに水素添加して行われる。この水添反応で用いる水添触媒は、パラジウム−カーボン、還元ニッケル、ロジウム系等不均一系触媒;または、ナフテン酸ニッケル、オクタン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物あるいはナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト等の有機コバルト化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物もしくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムのような有機リチウム化合物を組合せた均一触媒が使用できる。共触媒として、テトラハイドロフラン、エチレグリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物を用いてもよい。また、他の水添反応方法としては、例えば水添前の共重合体を、ジシクロペンタジエニルチタンハライド、有機カルボン酸ニッケル、有機カルボン酸ニッケルと周期律表第I〜III族の有機金属化合物からなる水素化触媒、カーボン、シリカ、ケイソウ土等で担持されたニッケル、白金、バラジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム金属触媒やコバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム錯体等を触媒として、0.1MPa〜10MPa程度に加圧された水素下、あるいはリチウムアルミニウムハイドライド、p−トルエンスルホニルヒドラジドの存在下、もしくはZr−Ti−Fe−V−Cr合金、Zr−Ti−Nb−Fe−V−Cr合金、LaNi合金等の水素貯蔵合金の存在下、あるいは0.1MPa〜10MPa程度に加圧された水素下で、水素化する方法、また、ジ−p−トリル−ビス(1−シクロペンタジエニル)チタニウム/シクロヘキサン溶液とn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液を水素下で混合して得られる水素化触媒を用いて、0.1MPa〜10MPa程度に加圧された水素下で、水素添加する方法等を挙げることができる。
【0053】
上述の各種水添触媒の中で、遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物の組み合わせからなるチーグラー系水添触媒又はパラジウム−カーボン系水添触媒が好ましい。
かかる遷移金属化合物としては、トリス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル 、トリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(アセチルアセトナート)クロム、トリス(アセチルアセトナート)マンガン、ビス(アセチルアセトナート)マンガン、トリス(アセチルアセトナート)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタン、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)コバルトジクロライド、ビス(2−ヘキサノエート)ニッケル 、ビス(2−ヘキサノエート)コバルト、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド等が挙げられる。これらのなかでも、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、トリス(アセチルアセトナート)コバルトが高い水添活性の面から好ましい。
【0054】
また、チーグラー系水添触媒に用いられるアルキルアルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。これらの中でも、トリイソブチルアルミニウム 、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが水添活性の面から好ましく、トリイソブチルアルミニウムが最も好ましい。
【0055】
水添反応におけるチーグラー系水添触媒の使用形態に特に制限はないが、予め遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物とを反応させた触媒溶液を調製し、それを重合溶液に添加する方法を好ましく挙げることができる。かかる際に用いるアルキルアルミニウム化合物の量は、遷移金属化合物1molに対して0.2mol〜5molが好ましい。上記の触媒調製の反応は、−40℃〜100℃程度、好ましくは0℃〜80℃の温度範囲で行われ、反応時間は、通常1分から3時間の範囲である。
【0056】
また、水添反応は通常50℃〜180℃、好ましくは70℃〜150℃の温度で、0.5MPa〜10MPa程度、好ましくは1MPa〜5MPaの水素圧で行われる。水添温度が50℃以上であると、また水素圧が0.5MPa以上であると、触媒活性が良好である。水添温度が180℃以下であると、触媒の失活、副反応等が起こりにくい。また通常、チーグラー系水添触媒は水添活性の極めて高い触媒であり、水素圧は10MPa以下でよく、10MPa以下であれば装置上の負担も小さい。
【0057】
第四の段階(iv)では、水添共重合体ポリオールに、重合性不飽和基含有化合物、特に好ましくは(メタ)アクリロイル基含有化合物を反応させる。ここで、(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、アクリロイルオキシアルキルイソシアネートやメタクリロイルオキシアルキルイソシアネートが好ましく、これらとの反応によって、水添共重合体ポリオールは(メタ)アクリレート化される。
アクリロイルオキシアルキルイソシアネートとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられ、メタクリロイルオキシアルキルイソシアネートとしては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0058】
本発明においては、前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
−重合性不飽和基を有するウレタン液状オリゴマー−
前記ウレタン液状オリゴマーとは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち紫外線、α線、β線、γ線及び電子線などを照射することによって、或いは熱することによって、架橋するウレタン液状オリゴマーを指す。
前記ウレタン液状オリゴマーとしては、下記の一般式(I)で表される構造を有する、数平均分子量が5×10〜5×10である不飽和基含有ウレタンオリゴマーが好ましい。
【0060】
【化1】



【0061】
一般式(I)において、Rは、(メタ)アクリロイル基及びビニル基の少なくともいずれかの不飽和基を含有するモノオール化合物の脱水酸基残基である。
モノオール化合物としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートやヒドロキシアルキルビニルが好ましく挙げられ、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばヒドロキシエチルアクリレートなど)及びヒドロキシアルキルビニルエーテル(例えばヒドロキシメチルビニールエーテルなど)のいずれかの脱水酸基残基であることが好ましい。
【0062】
一般式(I)において、Rは、有機ジイソシアナート化合物の脱イソシアナート残基である。例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基などのアルキレン基、シクロヘキシレン基などのシクロアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基などのアリレン基、キシリレン基などが含まれる。ここで、アルキル基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよい。有機ジイソシアナート化合物としては、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ノルボルナンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシレンジイソシアナート、トリメチルへキサメチレンジソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、水添キシリレンジイソシアナート、水添ジフェニルメタンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナートなどが好ましく挙げられる。
【0063】
一般式(I)において、Rは、数平均分子量1×10〜1×10で環状基又は分岐鎖状基を含有するポリエステルジオール化合物の脱水酸基残基である。
これらの中でRは、環状基含有ジカルボン酸とジオールとが縮合した前記ポリエステルジオール化合物の脱水素残基、又は環状基含有ジカルボン酸無水物がジオールに反応して変性したポリエステルジオール化合物の脱水酸基残基が好ましい。
【0064】
一般式(I)において、Rを構成する環状基含有ジカルボン酸又はその酸無水物としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。また、これらは複数種混合して用いてもよい。
一般式(I)において、Rを構成するジオールとして、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3−プロパンジオール、ビスフェノールA、2,2−チオジエタノール、アセチレン型ジオール、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ノルボルニレングリコール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、2,4−ジメチル−2−エチレンヘキサン−1,3−ジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0065】
一般式(I)において、Aはジアミン化合物の脱水素残基又はジオール化合物の脱水素残基である。このような脱水素残基としては特に限定されるものではないが、例えばジアミノプロパン、ジアミノブタン、ノナンジアミン、イソホロンジアミン、へキサメチレンジアミン、水添ジフェニルメタンジアミン、ビスアミノプロピルエーテル、ビスアミノプロピルエタン、ビスアミノプロピルジエチレングリコールエーテル、ビスアミノプロピルポリエチレングリコールエーテル、ビスアミノプロポキシネオペンチルグリコール、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、トリレンジアミン、及び両末端アミノ基変性シリコーンから選ばれるジアミン化合物の脱水素残基;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、両末端水酸基変性シリコーン、及びカルボキシル基含有ジオールから選ばれるジオール化合物の脱水素残基が好ましい。
一般式(I)において、p及びrの各々は0〜7であり、qは0〜3である。ただし、q=0のとき、1≦p+r≦10である。
【0066】
前記ウレタン液状オリゴマーは、好ましくは下記方法によって製造することができる。
一般式(I)においてq=0の場合の不飽和基含有ウレタンオリゴマーは、前記ポリエステルジオール化合物と、前記有機ジイソシアナート化合物とを重付加反応させてイソシアナート基を両末端に有する付加物を形成した後、該イソシアナート基に、前記モノオール化合物を付加して得ることができる。
また、一般式(I)においてq≠0の場合の不飽和基含有ウレタンオリゴマーは、前記ポリエステルジオール化合物と、前記有機ジイソシアナート化合物とを重付加反応させてイソシアナート基を両末端に有する付加物を形成した後、前記ジアミン化合物または前記ジオール化合物の末端の各々を、該付加物の片端のイソシアナート基に付加させ、該付加物の他の片端のイソシアナート基に、前記モノオール化合物を付加して得ることができる。
【0067】
前記ウレタン液状オリゴマーは、硬化性組成物をエネルギー線照射、或いは熱によって硬化させてシート基体を作製する場合に、シート基体に適度のゴム弾性を付与し、シート基体のシール性を向上させる効果を発揮する。この効果や成形性などの観点から、ウレタン液状オリゴマーの数平均分子量は、その構造にもよるが、通常5×10〜5×10程度であることが好ましい。
本発明においては、前記ウレタン液状オリゴマーを1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
前記硬化性樹脂としては、ほかにジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等のシリコーンゴムが挙げられる。
シリコーンゴムとして、付加型シリコーンゴムやフロロシリコーンゴムなどを用いてよく、例えば信越化学工業株式会社から市販されている「X−32−1342」、「X−31−7006」、「KE1051」、「KE110Gel」、「KE104Gel」、「FE53」、「KE−2000−60A」、「KE−2000−60B」、「KE−1204」等を用いることができる。
【0069】
〔(メタ)アクリレートモノマー〕
前記硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリレートモノマーは、エステル残基が、炭素数8〜18のアルキル基、イソボルニル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニルオキシエチル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基又はノニルフェノキシポリアルキレングリコール残基であることが好ましい。ここで、ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールであることが好ましい。なお、(メタ)アクリレートモノマーのエステル残基とは、(メタ)アクリレートモノマーを構成する(メタ)アクリル酸と水酸基含有化合物の内、水酸基含有化合物の水酸基を1つ除いた残基をいう。
硬化性液状樹脂と上記の(メタ)アクリレートモノマーと組み合わせることによって良好な相溶性が得られ、空気中に存在するシロキサンを吸着することが少なく、且つ優れた低透湿性を有する硬化性組成物を得ることができる。
【0070】
前記(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的には、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
前記(メタ)アクリレートモノマーの配合量は、硬化性液状樹脂と(メタ)アクリレートモノマーとを合わせて100質量部としたとき、質量部の比率(硬化性液状樹脂/(メタ)アクリレートモノマー)が、(20/80)〜(100/0)であることが好ましく、(30/70)〜(90/10)であることが更に好ましい。(メタ)アクリレートモノマーが10質量部以上であれば、硬化性組成物の粘度低減効果を享受でき、押出し、吐出等をしやすくなり、形成しやすくなる。また、70質量部以下であれば、組成物の粘度が低くなり過ぎず、形成直後のシート基体が流下しにくくなる。さらに、硬化後のシート基体の弾性も確保される。
【0072】
本発明においては、上記(メタ)アクリレートモノマーに加えて、所望によっては末端(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することができる。この末端(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することによって、硬化性組成物の粘度を調節することができ、また、物理的には、硬度の低下、Eb(伸び)及びTb(破断強度)の向上等を図ることができる。なお、末端(メタ)アクリレートオリゴマーとは、片末端又は両末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するオリゴマーをいう。
【0073】
末端(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリオール(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することによって、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することによって得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することによって得ることができる。または、イソシアネートと変性させ、末端の水酸基をアクリル酸でエステル化することもできる。ポリオール(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することによって得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することによって得ることができる。
【0074】
−一官能(メタ)アクリレートモノマー−
(メタ)アクリレートモノマーの中でも、ホモポリマーの硬化物のガラス転移温度(Tg)が−70℃〜20℃である一官能(メタ)アクリレートモノマー(以下、「低Tg一官能(メタ)アクリレートモノマー」ということがある。)が好ましい。低Tg一官能(メタ)アクリレートモノマーを用いると、伝熱シートに適度な柔軟性、粘着性を付与し、伝熱シートと発熱体や受熱体との熱抵抗を下げることができる点で有利である。上記転移温度(Tg)は、より好ましくは、−70℃〜0℃である。
なお、上記転移温度(Tg)は、通常のラジカル重合法によって重合させて得られたポリマーを、示差走査熱量計(DSC)で通常の条件で測定した値である。
【0075】
前記低Tg一官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば下記の一般式(II)及び一般式(III)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物の中からTgが上記範囲にあるものを適宜選択することができる。
【0076】
【化2】



【0077】
【化3】



【0078】
一般式(II)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数8〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。Rで示されるアルキル基の例としては各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基などを挙げることができる。
【0079】
一般式(III)において、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示す。このアルキレン基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1−メチルプロピレン基などを挙げることができるが、これらの中でエチレン基及びプロピレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数6〜20のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を示す。
上記Rのうちの炭素数6〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、具体的には各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基などが挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基は、芳香環上に炭素数1〜15程度の直鎖状又は分岐状のアルキル基が導入されていてもよく、具体的にはベンジル基、アルキルベンジル基、フェネチル基、アルキルフェネチル基、ナフチルメチル基、アルキルナフチルメチル基などが挙げられる。また、炭素数6〜20のアリール基は、芳香環上に炭素数1〜15程度の直鎖状又は分岐状のアルキル基が導入されていてもよく、具体的にはフェニル基、アルキルフェニル基、ナフチル基、アルキルナフチル基などが挙げられる。
nは平均で1〜7の数であり、nが大きくなると、硬化時に酸素阻害を受けにくく、その結果、表面のタックが小さくなるが、硬化物の透湿性が低下する傾向がある。nとしては、平均で1〜4程度がタック及び透湿性のバランスの観点から好ましい。
【0080】
前記一官能(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
〔重合開始剤〕
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられ、付与するエネルギーの種類に応じて任意に選択できる。
【0082】
光重合開始剤としては、分子内開裂型、水素引き抜き型のいずれでもよく、分子内開裂型と水素引き抜き型を併用してもよい。
分子内開裂型としては、アミノアセトフェノン類、ベンゾイン誘導体類、ベンジルケタール類、ヒドロキシアセトフェノン類、アミノアセトフェノン類とチオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン)との併用、アシルホスフィンオキサイド類等が挙げられ、水素引き抜き型としては、ベンゾフェノン類とアミンの併用、チオキサントンとアミンの併用等が挙げられる。
【0083】
アミノアセトフェノン類としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア369]、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア379]等が挙げられる。アミノアセトフェノン類は単独で使用されてもよいし、他の光重合開始剤との併用でもよい。
アミノアセトフェノン類は光重合開始剤として反応活性が高く、窒素原子の存在によって硬化性組成物の表面の酸素阻害を受けにくくするため、硬化性組成物の硬化性を高めると共に、硬化後の成形物の粘着性(タッキネス)を小さくし、且つ圧縮永久歪を小さくすることができる。
【0084】
ベンゾイン誘導体類としては、例えばベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル(アルキルの炭素数1〜6)、具体的にはベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどを挙げることができる。ベンジルケタール類としては、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア651]等が挙げられ、ヒドロキシアセトフェノン類としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:ダロキュア1173]、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア184]、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア127]挙げられる。そして、アミノアセトフェノン類とチオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン)との併用、アシルホスフィンオキサイド類{例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア819]}等が挙げられ、オリゴマー化したα−ヒドロキシアセトフェノン{具体的には、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、例えば、Lamberti S.p.A製、商品名:ESACURE KIP150等]}やアクリレート化したベンゾフェノン類[具体的には、アクリル化ベンゾフェノン、例えば、ダイセル・ユー・シー・ビー(株)製、商品名:Ebecryl P136等]等が挙げられる。
【0085】
さらに、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、ベンゾイルブチルエーテル、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマーと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンの混合物、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン及びイミドアクリレート等も挙げられる。
【0086】
熱重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤のいずれでもよい。
熱ラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、ケトンパーオキサイド系開始剤、パーオキシケタール系開始剤、ヒドロパーオキサイド系開始剤、ジアルキルパーオキサイド系開始剤、ジアシルパーオキサイド系開始剤、パーオキシエステル系開始剤、パーオキシカルボン酸系開始剤、パーオキシジカーボネート系開始剤などが挙げられる。
前記熱カチオン重合開始剤としては、市販品である、サンエイドSI−45、SI−47、SI−60、SI−60L、SI−80、SI−80L、SI−100、SI−100L、SI−145、SI−150、SI−160、SI−110L、SI−180L(以上、三新化学工業(株)製の商品名)、CI−2920、CI−2921、CI−2946、CI−3128、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)製の商品名)、CP−66、CP−77(以上、旭電化工業(株)製の商品名)、FC−520(3M(株)製の商品名)、カヤエステルO−50(化薬アクゾ(株)製の商品名)等が挙げられる。
【0087】
重合開始剤の種類は、硬化性液状樹脂や(メタ)アクリレートモノマーとの混合性、硬化条件などに応じて選択できる。
前記硬化性組成物に配合される重合開始剤の量は、硬化性液状樹脂及び(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜6質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部、更に好ましくは1〜4質量部である。
【0088】
〔その他の成分〕
前記硬化性組成物は、加工性の観点から、更にチクソ性付与剤を含有していてもよい。チクソ性付与剤を用いることによって、チクソトロピー性が効果的に向上し、押出し形状を精度よく制御して加工することが可能となる。チクソ性付与剤としては、無機充填剤および有機増粘剤のいずれも用いることができる。
無機充填剤としては、湿式シリカや乾式シリカの表面処理微粉シリカや、有機化ベントナイトなどの天然鉱物系のものが挙げられる。具体的には、乾式法によって微粉化したシリカ微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300など]、このシリカ微粉末をトリメチルジシラザンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRX300など]及び上記シリカ微粉末をポリジメチルシロキサンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRY300など]などが挙げられる。無機充填剤の平均粒径は、増粘性の観点から、5μm〜50μmが好ましく、5μm〜12μmがより好ましい。
【0089】
有機増粘剤としては、アマイドワックス、水添ひまし油系又はこれらの混合物などが挙げられる。具体的には、ひまし油(主成分がリシノール酸の不乾性油)の水添品である水添ひまし油[例えば、ズードケミー触媒(株)製、商品名:ADVITROL 100、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン305など]及びアンモニアの水素をアシル基で置換した化合物である高級アマイドワックス[例えば、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6500など]などが挙げられる。
【0090】
本発明において、チクソ性付与剤としては、有機増粘剤が好ましい。天然鉱物系の無機充填剤は重金属等の不純物が避けられず、また、表面処理微粉シリカは、表面の濡れ性が変わり組成物の粘度が変化することがあり、また表面処理剤の種類によっては、使用中に器具に有害なガスを発生することがある。
有機増粘剤の中でも、アマイドワックスは、原料に由来するアミンの存在によって架橋密度を高めて硬度が大きくなることがあるので、特に水添ひまし油が好ましい。
【0091】
チクソ性付与剤は、硬化性液状樹脂100質量部に対して、0.5〜10質量部を含有させることが好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0092】
前記硬化性組成物は、更に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、有機パーオキサイドが好適に挙げられ、具体的には、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−へキサン;2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)−へキサン;t−ブチルパーオキシベンゾエート;ジクミルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;ジイソプロピルベンゾハイドロパーオキサイド;1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)−ベンゼン;ベンゾイルパーオキサイド;1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0093】
前記硬化性組成物は、更に安定化剤等を含有していてもよい。安定化剤としては、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート][例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:IRGANOX245、旭電化工業(株)製、商品名:アデカスタブAO−70等]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン[例えば、旭電化工業(株)製、商品名:アデカスタブAO−80等]等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
前記硬化性組成物に配合される安定化剤量は、硬化性液状樹脂及び(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部、更に好ましくは0.5〜2質量部である。
【0094】
前記硬化性組成物は、本発明の目的が損なわれない範囲で必要に応じ、他のモノマー例えば(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどを含有していてもよい。
また、チクソ性付与剤の他に、クレー、珪藻土、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウムなどのりん片状無機系添加剤、各種の金属粉、ガラス粉、セラミックス粉、粒状あるいは粉末ポリマー等の粒状あるいは粉末状固体充填剤、その他の各種の天然または人工の短繊維、長繊維(例えば、ガラスファイバー、金属ファイバー、その他各種のポリマーファイバー等)などを配合することができる。
さらに、中空フィラー、例えば、ガラスバルーンなどの無機中空フィラー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体などからなる有機中空フィラーを配合することによって、軽量化を図ることができる。また、軽量化などの各種物性の改善のために、各種発泡剤を混入することも可能であり、混合時等に機械的に気体を混ぜ込むことも可能である。
【0095】
さらに、必要に応じて、光増感剤、熱重合禁止剤、硬化促進剤、難燃剤、抗菌剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、チタンブラック等の着色剤、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、フェノールテルペン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体などの各種粘着付与剤(タッキファイヤー)、レオストマーB(商品名:理研ビニル社製)などの各種接着剤性エラストマー、ハイブラー(商品名:クラレ社製、ビニル−ポリイソプレンブロックの両末端にポリスチレンブロックが連結したブロック共重合体)、ノーレックス(商品名:日本ゼオン社製、ノルボルネンを開環重合して得られるポリノルボルネン)などの他の熱可塑性エラストマー又は樹脂などを併用することができる。
【0096】
前記硬化性組成物は、硬化したときに柔軟性を有するものであることが好ましい。具体的には、伝熱シートのJIS Aゴム硬度が、50以下であることが好ましく、特に好ましくは30以下である。ここで、伝熱シートのJIS Aゴム硬度は、JIS K 6253に基づいて、タイプAデュロメーターによって測定することができる。
【0097】
前記硬化性組成物は、25℃での粘度が、0.1mPa・s〜100mPa・sであることが好ましい。前記粘度が100mPa・s以下であると、前記磁場印加工程においてシート成形材料中で磁性粒子が配向し易い。他方、前記粘度が0.1mPa・s以上であると、前記磁場印加工程及び前記硬化工程において磁性粒子がシート成形材料中で沈降し難い。前記粘度は、上記の理由により、より好ましくは2mPa・s〜50mPa・sである。なお、硬化性組成物の粘度は、RS600(HAAKE製)を用い、25℃の条件下で測定される。
【0098】
〔硬化性組成物の製造方法〕
前記硬化性組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、各成分及び所望によって、用いられる添加剤成分を温度調節可能な混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、プラネリーミキサー、二軸ミキサー、高剪断型ミキサー、攪拌脱泡装置等を用いて混練することによって、製造することができる。
【0099】
[磁性粒子]
前記磁性粒子は、少なくとも一部に磁性体を含む。前記磁性粒子は、前記磁場印加工程によって、シート成形材料中で磁場の向きに配向する。
前記磁性体は、強磁性体でもよく常磁性体でもよいが、前記磁場印加工程においてシート成形材料中で配向し易い観点から強磁性体が好ましい。強磁性体としては、軟磁性体でも硬磁性体でもよいが、得られる伝熱シートの熱伝導性が優れる観点から、軟磁性体であることが好ましい。
【0100】
前記磁性粒子は、得られる伝熱シートの熱伝導性が優れる観点から、少なくとも一部に軟磁性体を含む粒子であることが好ましい。前記磁性粒子が軟磁性体を含むことによって、得られる伝熱シートの熱伝導性が優れる理由は必ずしも明らかではないが、交流磁場の磁場方向が繰り返し反転するのに伴って軟磁性体の磁極が繰り返し反転することが、磁性粒子の配列状態を良好にするものと推測される。
【0101】
前記磁性粒子としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト及びこれらを含む合金などの軟磁性材料からなる粒子が挙げられる。ほかに、化学式:MO・Fe〔Mは、Mn、Fe、Ni、Cu、Mg、Znなどから選択される金属〕で表されるフェライトなどの金属酸化物などの硬磁性材料からなる粒子が挙げられる。
前記磁性粒子としては、得られる伝熱シートの熱伝導性が優れる観点から、上記の軟磁性材料からなる粒子が好ましく、鉄及び鉄を含む合金からなる軟磁性粒子がより好ましい。
【0102】
前記磁性粒子の形状は、特に制限されず、真球状でもよく、扁平に変形した球状でもよく、棒状でもよい。
前記磁性粒子の平均粒子径は、10μm〜500μmであることが好ましい。前記平均粒子径が500μm以下であると、前記磁場印加工程においてシート成形材料中で磁性粒子が配向し易い。他方、前記平均粒子径が10μm以上であると、一つの伝熱経路に含まれる磁性粒子の数が多すぎることがなく、粒子間のパス数が多すぎることがないため熱伝導率が高い。前記平均粒子径は、より好ましくは20μm〜200μm、更に好ましくは20μm〜150μmである。
ここに「粒子径」とは、平均粒子径を表し、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
【0103】
〔複合粒子〕
前記磁性粒子は、基体粒子の表面の少なくとも一部が、該基体粒子よりも粒子径の小さい微粒子で被覆された複合粒子であることが好ましい。
前記磁性粒子としては、具体的には、前記基体粒子が磁性体からなり、前記微粒子が絶縁性を有し且つ高熱伝導性の材料からなる複合粒子が好ましい。磁性体からなる前記基体粒子は、磁性粒子を磁場中で配向させる。絶縁性を有し且つ高熱伝導性の材料からなる前記微粒子は、磁性粒子に熱伝導性と絶縁性を発現させる。したがって、前記磁性粒子として上記の複合粒子を用いると、磁性粒子の配向方向に高い熱伝導率が得られると共に、シートに絶縁性を付与できる。
【0104】
前記基体粒子を構成する磁性体からなる粒子としては、例えば、前述した軟磁性材料からなる粒子、及び、前述した硬磁性材料からなる粒子が挙げられる。
前記基体粒子は、得られる伝熱シートの熱伝導性が優れる観点から、軟磁性体であることが好ましく、前記の軟磁性材料からなる粒子が好ましく、鉄及び鉄を含む合金からなる軟磁性粒子がより好ましい。
【0105】
前記微粒子を構成する絶縁性を有する高熱伝導性材料としては、セラミック材料及びダイアモンドから選ばれる少なくとも1種の材料が好ましい。セラミック材料としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化硼素(ボロンナイトライド)、窒化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素などが挙げられる。
【0106】
前記微粒子の構成材料として、前述の材料の他、例えば水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を用いることができる。
【0107】
前記微粒子として、セラミック材料、ダイアモンドおよび金属水酸化物からなる微粒子を用いると、微粒子が絶縁性を有することから、前記基体粒子として導電性を有する材料からなる粒子を用いた場合においても、微粒子による基体粒子の表面の被覆率を調整することなどによって、伝熱シートを絶縁性を有するものとすることができる。
【0108】
前記微粒子は、前記基体粒子よりも小径のものである。具体的には、前記基体粒子の粒子径と前記微粒子の粒子径の比(基体粒子/微粒子)が、30〜500であることが好ましく、50〜300であることがより好ましい。上記範囲であると、前記基体粒子および他の前記微粒子との接触面積が大きくなり、粒子間における熱伝導がスムーズに行われ、伝熱シートの熱伝導性が良好である。
ここに「粒子径」とは、平均粒子径を表し、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
【0109】
前記基体粒子及び前記微粒子の形状は、真球状でもよく、扁平に変形した球状でもよい。
前記基体粒子の平均粒子径は、具体的には、10μm〜500μmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜200μm、更に好ましくは20μm〜150μmである。一方、前記微粒子の平均粒子径は、0.1μm〜10μmであることが好ましい。
前記基体粒子及び前記微粒子の平均粒子径が上記の範囲であると、前記磁場印加工程においてシート成形材料中で複合粒子が配向し易く、また、一つの伝熱経路に含まれる複合粒子の数が多すぎることがなく、粒子間のパス数が多すぎることがないため熱伝導率が高い。
【0110】
前記複合粒子においては、前記基体粒子に対する前記微粒子の質量比が、基体粒子100質量部に対して、0.1〜70質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましい。
【0111】
前記複合粒子においては、基体粒子の表面における微粒子の被覆率(基体粒子の表面積に対する微粒子の被覆面積の割合)が10%以上であることが好ましい。被覆率が10%以上であることによって、伝熱シートに優れた熱伝導性を得ることができる。
上記の被覆率は、電子顕微鏡(SEM)を用いることによって測定することができる。
【0112】
前記複合粒子は、前記基体粒子の表面の少なくとも一部が前記微粒子で被覆された粒子である。前記微粒子は、前記基体粒子の表面に吸着されることによって固定される。前記基体粒子の表面における前記微粒子の吸着は、物理的吸着および化学的吸着のいずれであってもよい。
【0113】
前記複合粒子を製造する方法としては、機械的な力によって粒子の複合化を行うメカノケミカル法を用いることができる。具体的には、基体粒子および微粒子とされる粒子を用意し、これらの粒子を、製造すべき複合粒子に応じた所定の混合比(質量比)で混合し、その後、ハイブリダイザー装置を用い、必要に応じて予備混合処理(OM処理(精密混合処理))を行った後、複合化処理(カプセル化処理)を施す手法が好適に用いられる。複合化処理(カプセル化処理)は、基体粒子および微粒子の材質、粒子径およびそれらの混合比(質量比)などに応じた適宜の条件によって行われ、例えば回転数13000rpm、処理時間5分間である。
このような手法によって得られる複合粒子は、物理的吸着によって基体粒子表面に微粒子が付着されてなるものである。
【0114】
前記伝熱シートにおいて、シート基体中には、前記磁性粒子の他に、非磁性粒子が含有されていてもよい。
ここで、非磁性粒子の具体例としては、酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化硼素(BN)、窒化ケイ素(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、カーボンブラック、銅、アルミニウム、金、銀、カーボン、ケイ素などからなる粒子が挙げられる。
シート基体中に非磁性粒子が含まれる場合、非磁性粒子が体積分率で5〜75%含有されていることが好ましく、10〜70%がより好ましく、30〜50%が更に好ましい。このような伝熱シートによれば、磁性粒子の連鎖によって形成された伝熱経路による熱伝導に加え、非磁性粒子によって形成される伝熱経路によっても熱伝導が行われる。したがって、磁性粒子を例えばシート基体の厚さ方向に配向させたとき、シートの厚さ方向により一層高い熱伝導性が得られると共に、シートの面方向にも熱伝導性が得られる。
【0115】
前記伝熱シートは、磁性粒子をシート基体の厚さ方向に配向させる場合、伝熱シートの作業性あるいは伝熱シートの面方向の熱伝導性を良好にする観点から、シートの厚さ方向に配向する磁性粒子による伝熱経路の形成の妨げにならない範囲で、シート基体中にナイロンメッシュ、金属メッシュなどからなる補強シートが含有されていてもよい。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0117】
〔複合粒子(1)〜(5)の調製〕
平均粒子径50μmのスチールビーズ(ニッチュー製、#300)と、下記の各種セラミックス粒子を用意した。
−セラミックス粒子−
・炭化ケイ素(SiC):平均粒子径0.6μm、信濃電気製錬製、SER−A06
・アルミナ:平均粒子径0.32μm、昭和電工製、WA#30000
・窒化ケイ素(SiN):平均粒子径2.4μm、電気化学工業製、SN−9 FWS
・窒化硼素(BN):平均粒子径0.7μm、電気化学工業製、SP3−7
・窒化アルミニウム(AlN):平均粒子径1μm、トクヤマ製
【0118】
スチールビーズと、セラミックス粒子のいずれか1種とを、質量比(スチールビーズ:セラミックス粒子)が100:6となるように混合した。次いで、スチールビーズとセラミックス粒子との混合系に対して、ハイブリダイザー装置を用い、回転数13,000rpmの条件で5分間かけて複合化処理(カプセル化処理)を施すことによって、スチールビーズからなる基体粒子の表面がセラミックス粒子からなる微粒子で被覆された複合粒子(1)〜(5)を得た。複合粒子(1)〜(5)の構成を表1に示す。
【0119】
【表1】



【0120】
〔水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体の調製〕
以下の方法によって、アクリロイル基含有水添スチレン−ブタジエン共重合体を調製した。
【0121】
充分に脱水精製したシクロヘキサン溶媒中に、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン1モルを添加した後、トリエチルアミン2モル、sec−ブチルリチウム2モルを順次添加し、50℃で2時間撹拌して、ジリチウム重合開始剤を調製した。
アルゴン置換した7リットルの重合リアクターに、脱水精製したシクロヘキサンを1.90kg、22.9質量%の1,3ブタジエンモノマーのヘキサン溶液を2.00kg、20.0質量%のスチレンモノマーのシクロヘキサン溶液を0.765kg、1.6モル/リットルの2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンのヘキサン溶液を130.4ml添加した後、0.5モル/リットルのジリチウム重合開始剤を108.0ml添加して重合を開始させた。
重合リアクターを50℃に昇温しながら、1.5時間重合を行った後、1モル/リットルのエチレンオキシドのシクロヘキサン溶液を108.0ml添加し、さらに2時間撹拌した後、50mlのイソプロピルアルコールを添加した。共重合体のヘキサン溶液をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、十分に乾燥させて共重合体ポリオールを得た。この共重合体ポリオールは両末端OH基スチレン−ブタジエン共重合体であり、スチレン分は25質量%であり、重量平均分子量は14,500、分子量分布は1.20であった。
【0122】
次に、共重合体ポリオール120gを、十分に脱水精製したヘキサン1リットルに溶解した後、予め別容器で調整したナフテン酸ニッケル、トリエチルアルミニウム、ブタジエンが1:3:3(モル比)の触媒液を共重合体溶液中のブタジエン部1,000モルに対してニッケル1モルになるように仕込んだ。密閉反応容器に水素を27,580hPa(400psi)に加圧添加して、110℃にて4時間水添反応を行った。その後、3規定濃度の塩酸で触媒残渣を抽出分離し、さらに遠心分離をして触媒残渣を沈降分離した。その後、水添共重合体ポリオールをイソプロピルアルコール中に沈殿させ、更に十分に乾燥を行った。
十分に乾燥した水添共重合体ポリオール100gを、シクロヘキサンに溶解させ、40℃に保ち十分に撹拌しながら2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズAOI)をゆっくり滴下した後、さらに4時間撹拌を行い、イソプロピルアルコールに沈殿させ乾燥させた。2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの添加量は、2.49gであった。以上のようにして、アクリロイル基含有水添スチレン−ブタジエン共重合体(以下「H−SBR(1)」という。)を得た。
【0123】
〔ウレタン液状オリゴマーの調製〕
以下の方法によって、重合性不飽和基を有するウレタン液状オリゴマーを調製した。
【0124】
2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールと無水フタル酸とから得られるポリエステルジオール化合物(数平均分子量2000)400g、ノルボルナンジイソシアナート82.4g、及び、酸化防止剤である2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.10gを、攪拌機、冷却管、温度計を備えた1リットル四つ口フラスコに加え、80℃で2時間反応させた。次いで、2−ヒドロキシエチルアクリレート46.2g、重合禁止剤であるp−メトキシフェノール0.10g、及び、付加反応触媒としてチタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノエート)0.06gを加え、85℃で6時間反応させた。反応液の一部を取り出し赤外線吸収スペクトルで2280cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが消失したことによって反応の終点を確認し、ウレタンオリゴマー(以下「ウレタンオリゴマー(1)」という。)を得た。
上記で得たウレタンオリゴマーについて数平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、ポリスチレン換算値で求めたところ、18000であった。
【0125】
<実施例1>
〔伝熱シートの製造〕
樹脂製容器に、H−SBR(1)を50g、イソミリスチルアクリレート(共栄社化学製、ライトアクリレートIM−A、硬化物のガラス転移温度(Tg)−56℃)を50g、光重合開始剤(BASF社製、Irugacure1173)を0.5g、及びスチールビーズ(平均粒子径50μm、ニッチュー製、#300)を50g仕込み、室温において撹拌し、ペースト状のシート成形材料を得た。
【0126】
ガラス板(厚さ3mm)の上に、PET樹脂シート(厚さ50μm)を敷き、ABS樹脂製スペーサー(厚さ0.6mm)で厚みを定め、シート成形材料をPET樹脂シートの上に流し置いた。別のPET樹脂シート(厚さ50μm)をシート成形材料の上に気泡が入らないように載せ、更にその上にガラス板(厚さ3mm)を置き、上から加圧して所定の厚さとした。これによって、ガラス板、PET樹脂シート、シート成形材料層、PET樹脂シート、ガラス板がこの順に積層されてなる積層体を得た。
【0127】
図8は、本実施例に用いた交流磁場発生装置(電子磁気工業製Um−5BF)の概略を示す断面図である。
得られた積層体を、上記交流磁場発生装置に、図8に図示するように設置し、積層体の厚さ方向に、室温にて30秒間、交流磁場(100ミリテスラ、50Hz)を印加した。
続いて、紫外線照射装置(浜松ホトニクス製LC8)を用いて、積層体の露出している方の面に紫外線を照射した。このとき、交流磁場を印加しながら30秒間、紫外線を照射し、さらに、交流磁場を印加しないで1分間、紫外線を照射した。紫外線の積算照射量は、9000mJ/cmであった。
その後、交流磁場発生装置から積層体をはずし、積層体の両面からガラス板及びPET樹脂シートを剥がした。
こうして、図1のような構造を有する、実施例1に係る厚さ0.5mmの伝熱シートを製造した。
【0128】
<実施例2>
〔伝熱シートの製造〕
実施例1において、スチールビーズの量を90gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る厚さ0.5mmの伝熱シートを製造した。
【0129】
<比較例1>
〔伝熱シートの製造〕
実施例1と同様にして、比較例1に係るシート成形材料を得た。
そして、実施例1と同様にして、ガラス板、PET樹脂シート、シート成形材料層、PET樹脂シート、ガラス板がこの順に積層されてなる積層体を得た。
【0130】
得られた積層体に対して、その厚さ方向にフェライト磁石(380ミリテスラ)2つで両面から直流磁場を印加しながら室温にて1分間保持し、片面のフェライト磁石をはずした後すぐに当該片面に紫外線を9000mJ/cm照射し、光硬化処理を行った。
その後、もう一方の面からフェライト磁石をはずし、積層体の両面からガラス板及びPET樹脂シートを剥がした。
こうして、比較例1に係る厚さ0.5mmの伝熱シートを製造した。
【0131】
<比較例2>
〔伝熱シートの製造〕
比較例1において、スチールビーズの量を90gに変更したこと以外は比較例1と同様にして、比較例2に係る厚さ0.5mmの伝熱シートを製造した。
【0132】
<比較例3>
〔伝熱シートの製造〕
実施例1と同様にして、比較例3に係るペースト状のシート成形材料を得た。
そして、実施例1と同様にして、ガラス板、PET樹脂シート、シート成形材料層、PET樹脂シート、ガラス板がこの順に積層されてなる積層体を得た。
【0133】
得られた積層体に対し、磁場を印加しないで、紫外線を9000mJ/cm照射し、光硬化処理を行った。その後、積層体の両面からガラス板及びPET樹脂シートを剥がした。
こうして、比較例3に係る厚さ0.5mmの伝熱シートを製造した。
【0134】
<比較例4>
〔伝熱シートの製造〕
比較例3において、スチールビーズの量を90gに変更したこと以外は比較例3と同様にして、比較例4に係る厚さ0.5mmの伝熱シートを製造した。
【0135】
<実施例3〜7>
〔伝熱シートの製造〕
実施例1において、スチールビーズに代え複合粒子(1)〜(5)のいずれかを用い、実施例1と同様にして、実施例3〜7に係る厚さ0.5mmの伝熱シートを製造した。
ここで、実施例3には複合粒子(1)を用い、実施例4には複合粒子(2)を用い、実施例5には複合粒子(3)を用い、実施例6には複合粒子(4)を用い、実施例7には複合粒子(5)を用いた。
【0136】
<実施例8>
〔伝熱シートの製造〕
実施例1において、H−SBR(1)をウレタンオリゴマー(1)に代えたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8に係る厚さ0.5mmの伝熱シートを製造した。
【0137】
<実施例9>
〔伝熱シートの製造〕
実施例1において、光重合開始剤を熱重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製、カヤエステルO−50E)に代えたこと以外は実施例1と同様にして、実施例9に係るシート成形材料を得た。
そして、実施例1と同様にして、ガラス板、PET樹脂シート、シート成形材料層、PET樹脂シート、ガラス板がこの順に積層されてなる積層体を得た。
【0138】
得られた積層体を、交流磁場発生装置(電子磁気工業製Um−5BF)に、図8に図示するように設置し、交流磁場発生装置ごとオーブンに入れ、積層体の厚さ方向に交流磁場(100ミリテスラ、50Hz)を印加しながら100℃に昇温し、交流磁場を印加しながら加熱温度100℃、加熱時間2時間の条件で熱硬化処理を行った。
その後、交流磁場発生装置から積層体をはずし、積層体の両面からガラス板及びPET樹脂シートを剥がした。
こうして、図1のような構造を有する、実施例9に係る厚さ0.5mmの伝熱シートを製造した。
【0139】
<実施例10>
〔伝熱シートの製造〕
実施例9において、H−SBR(1)をウレタンオリゴマー(1)に代えたこと以外は実施例9と同様にして、実施例10に係る厚さ0.5mmの伝熱シートを製造した。
【0140】
<評価>
実施例1〜10及び比較例1〜4に係る各伝熱シートについて、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0141】
〔熱伝導性〕
熱源(50℃に設定したホットプレート)の上に、ガラス板(厚さ1mm)、伝熱シート及びヒートシンク(銅メッキしたアルミプレート、Ainex製HM−17)をこの順に重ねて設置し、サーモグラフィー(NEC/Avio製tvs−500ex)を用いてヒートシンクの放射熱の温度(℃)を測定した。
そして、設置直後の上記温度と、設置から30秒後の上記温度との差ΔT(℃)を求めた。ΔT(℃)が大きい方が、熱伝導性が良好である。
【0142】
【表2】



【0143】
表2から、実施例1〜10に係る伝熱シートは、熱伝導性に優れることがわかる。
【符号の説明】
【0144】
10 伝熱シート
11 シート基体
11A シート成形材料層
12 磁性粒子
20 型枠
21 上型
22 下型
23 スペーサー
25 交流磁場発生装置
25A 電磁石
25B 電磁石
MF 磁場
30 伝熱シート
31 シート基体
32 高密度部分
33 低密度部分
40 上型
41 強磁性体基板
42 強磁性体部分
43 非磁性体部分
44 スペーサー
45 下型
46 強磁性体基板
47 強磁性体部分
48 非磁性体部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂を含む硬化性組成物と磁性体を含む粒子とを含有するシート成形材料に交流磁場を印加する磁場印加工程と、
前記磁場印加工程によって交流磁場が印加された前記シート成形材料を硬化させる硬化工程と、
を含む、伝熱シートの製造方法。
【請求項2】
前記磁性体は、軟磁性体である、請求項1に記載の伝熱シートの製造方法。
【請求項3】
前記粒子は、基体粒子の表面の少なくとも一部が該基体粒子よりも粒子径の小さい微粒子で被覆された複合粒子である、請求項1又は請求項2に記載の伝熱シートの製造方法。
【請求項4】
前記硬化性組成物は、さらに(メタ)アクリレートモノマーと重合開始剤とを含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の伝熱シートの製造方法。
【請求項5】
前記硬化性樹脂は、重合性不飽和基を有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体及び重合性不飽和基を有するウレタン液状オリゴマーから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の伝熱シートの製造方法。
【請求項6】
前記水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体が有する重合性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基である、請求項5に記載の伝熱シートの製造方法。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、炭素数8〜18のアルキル基、イソボルニル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニルオキシエチル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基、ノニルフェノキシポリエチレングリコール残基又はノニルフェノキシポリプロピレングリコール残基を有する、請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の伝熱シートの製造方法。
【請求項8】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、ガラス転移温度が−70℃以上20℃以下である一官能(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載の伝熱シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の伝熱シートの製造方法によって製造され、
硬化性樹脂を含む硬化性組成物からなるシート基体中に、磁性体を含む粒子が配向された状態で含有された、伝熱シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−103955(P2013−103955A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246811(P2011−246811)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】