説明

伝熱プレートユニット及びプレート式熱交換器の製造方法

【課題】伝熱プレートと伝熱プレートとの間の伝熱部にろう材が浸透しないようにした伝熱プレートユニット及びこの伝熱プレートユニットを備えたプレート式熱交換器の製造方法を提供する。
【解決手段】伝熱プレートユニット10は、2枚の伝熱プレート11,11を重ね合わせたものであり、両伝熱プレート11,11とも隅に開口部12が形成され、中央部に伝熱部が設けられ、一方の伝熱プレート11の少なくとも伝熱部上に接合防止層16が設け、そして、開口部12を連通し、少なくとも開口部12の周囲をろう付けしたものとされている。そして、2枚の伝熱プレート11,11が接合防止層16を隙間なく挟むように、その間隔を維持させる係止部20が開口部12の周囲に設けられている。係止部20は、一方の伝熱プレート11の開口部12の周縁から他方の伝熱プレート11の開口部12の周囲に重なるように折り返された折返部21によって設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の伝熱プレートを重ね合わせたダブルウォール式と呼ばれる伝熱プレートユニット、及びこの伝熱プレートユニットを備えたプレート式熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレート式熱交換器は、波形の伝熱部などを形成した伝熱プレートを、一定の間隔をもって多層に重ね合わせ、伝熱プレートと伝熱プレートとの間に第1の空間と第2の空間を交互に形成したものであり、第1の空間に熱湯や蒸気などの加熱媒体が流通し、第2の空間に水や湯などの被加熱媒体媒体が流通し、伝熱プレートを介して加熱媒体と被加熱媒体との間で熱交換を行う装置である。
【0003】
このようなプレート式熱交換器にあっては、腐食や材料欠陥などが原因で、伝熱プレートに穿孔が形成されたり、割れが生じたりすることがあり、そうすると、この穿孔や割れを通して加熱媒体と被加熱媒体とが混合してしまう。そこで、このような不具合を解消すべく、加熱媒体と被加熱媒体とが混合しないようにしたダブルウォール式のプレート式熱交換器が特許文献1に開示されている。
【0004】
このダブルウォール式のプレート式熱交換器は、図6(a)(b)に示すように、2枚の伝熱プレート111,111を重ね合わせた伝熱プレートユニット110を使用するものであり、伝熱プレートユニット110は、一定の間隔をもって複数ユニット重ね合わせられ、伝熱プレートユニット110と伝熱プレートユニット110との間に第1の空間101と第2の空間102が交互に形成されている。
【0005】
ところで、伝熱プレート111は、ステンレス鋼などによって長方形状に成形され、四隅に開口部112,112,…が形成され、中間部に凹状部113aと凸状部113bとを交互に連続させた伝熱部113が形成され、周縁にリム部114が形成されている。そして、伝熱プレートユニット110は、2枚の伝熱プレート111,111を、凹状部113aと凸状部113bとを同じ向きに重ね合わせたものであり、開口部112の周囲とリム部114とをろう材115によってろう付けすることにより、2枚の伝熱プレート111,111が一体化されている。
【0006】
ただし、一方の伝熱プレート111の少なくとも伝熱部113であって他方の伝熱プレート111に重ね合わされる内面には、セラミック粉末などからなる接合防止層(図6において図示せず)が設けられている。この接合防止層によって、2枚の伝熱プレート111,111は、不離一体化されていない。
【0007】
そして、最も外側の伝熱プレートユニット110に示すように耐圧フレーム120に重ね合わされ、両者110,120もろう付けされている。この耐圧フレーム120には、前記伝熱プレートの開口部112,112に連通する開口部122,122が形成され、この開口部122,122にノズル131,132が装着されている。一方のノズル131が第1の空間101に連通し、他方のノズル132が第2の空間102に連通している。
【0008】
したがって、一方のノズル131から第1の空間101内に加熱媒体Aが流通し、他方のノズル132から第2の空間102内に被加熱媒体Bが流通することにより、伝熱プレートユニット110を介して熱交換が行われる。そして、一方の伝熱プレート111に穿孔が形成されたり、割れが生じたりしても、重ね合わされている他方の伝熱プレート111によって、第1の空間101と第2の空間102とが遮断された状態を維持し、加熱媒体Aと被加熱媒体Bとが混合しないようにされている。
【0009】
【特許文献1】特開2002−107089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ダブルウォール式のプレート式熱交換器は、図7(a)に示すように、伝熱プレートユニット110と伝熱プレートユニット110との間に銅などをシート状に、かつ、伝熱プレートの開口部112に対応して開口部115aを形成したろう材115を挟み、錘などを掛けたうえで、開口部112の周囲、伝熱部113の当接している凸状部113b,113b同士、リム部114,114同士をろう付けすることによって製造される。
【0011】
しかし、ろう付けに際して、伝熱プレート111,111に熱歪みが生じ、図7(b)に示すように、伝熱プレートユニット110を構成している伝熱プレート111と伝熱プレート111の開口部112の部分の間隔が広がり、ろう材115が両伝熱プレート111,111間であって、接合防止層116を設けていない方の伝熱プレート111の伝熱部113上まで伝うことがある。
【0012】
すると、図7(c)に示すように、2枚の伝熱プレート111,111が不離一体にろう付けされることがある。その結果、伝熱プレートユニット110は、加熱媒体Aと被加熱媒体Bとを混合させないという機能を発揮できなくなる。
【0013】
そこで、本発明は、伝熱プレートと伝熱プレートとの間の伝熱部にろう材が浸透しないようにした伝熱プレートユニット及びこの伝熱プレートユニットを備えたプレート式熱交換器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る伝熱プレートユニットは、隅に開口部を形成し、中央部に伝熱部を設けた伝熱プレートと、隅に開口部を形成し、中央部に伝熱部を設け、少なくとも伝熱部上に接合防止層を設けた伝熱プレートとが、開口部を連通させ、かつ、接合防止層を他方の少なくとも伝熱部に接合させて重ね合わされ、少なくとも開口部の周囲がろう付けされた伝熱プレートユニットであって、2枚の伝熱プレートが接合防止層を隙間なく挟むように、両伝熱プレートの間隔を一定に維持させる係止部が開口部の周囲に設けられていることを特徴としている。
【0015】
この伝熱プレートユニットによれば、伝熱プレートの開口部の周囲に係止部が設けられていることにより、ろう付けに際して熱歪みが生じたとしても、係止部によって2枚の伝熱プレートが接合防止層を隙間なく挟む状態を維持するため、溶融したろう材は、開口部の周囲に浸透しても、接合防止層に堰き止められる。したがって、溶融したろう材は、伝熱部まで浸透せず、重ね合わされている伝熱プレートと伝熱プレートとが伝熱部において、ろう付けされないようにすることができる。
【0016】
前記本発明に係る伝熱プレートユニットにおいて、前記係止部は、一方の伝熱プレートの開口部の周縁から他方の伝熱プレートの開口部の周囲に重なるように折り返された折返部によって設けられていることが好ましい。
【0017】
この伝熱プレートユニットによれば、係止部が一方の伝熱プレートの開口部の周縁から他方の伝熱プレートの開口部の周囲に重なるように折り返された折返部によって設けられることにより、ろう付けに際して熱歪みが生じたとしても、折返部が他方の伝熱プレートの開口部の周囲を押さえる状態となり、2枚の伝熱プレートが接合防止層を隙間なく挟む間隔を維持することができる。
【0018】
また、前記本発明に係る伝熱プレートユニットにおいて、前記係止部は、両伝熱プレートの開口部の周囲を複数箇所で溶融した融着部によって設けられていてもよい。
【0019】
この伝熱プレートユニットによれば、係止部が両伝熱プレートの開口部の周囲を複数箇所で溶融した融着部によって設けられることにより、ろう付けに際して熱歪みが生じたとしても、2枚の伝熱プレートは、その間隔が広がることなく、接合防止層を隙間なく挟む間隔を維持することができる。
【0020】
また、前記と異なる本発明に係る伝熱プレートユニットは、隅に開口部を形成し、中央部に伝熱部を設けた2枚の伝熱プレートが、開口部を連通させて重ね合わされ、少なくとも開口部の周囲がろう付けされた伝熱プレートユニットであって、前記開口部の周囲を環状に溶融する融着部を2枚の伝熱プレート間に設けたことを特徴としている。
【0021】
この伝熱プレートユニットによれば、開口部の周囲を環状に溶融する融着部が2枚の伝熱プレート間に設けられていることにより、ろう付けに際して熱歪みが生じたとしても、2枚の伝熱プレートは一定の間隔を維持し、さらに、溶融したろう材は、融着部に堰き止められ、伝熱部まで浸透しないようにすることができる。なお、この伝熱プレートユニットには、接合防止層が設けなくてもよい。
【0022】
また、本発明に係るプレート式熱交換器の製造方法は、係止部を折返部によって設けた前記の伝熱プレートユニットを多層に重ね合わせたプレート式熱交換器の製造方法であって、一方の伝熱プレートユニットの係止部と他方の伝熱プレートユニットの係止部とが対峙するように開口部を連通し、かつ、伝熱プレートユニットと伝熱プレートユニットとの間にシート状のろう材を挟んで伝熱プレートユニットを重ね合わせ、シート状のろう材を溶融させることにより、重なり合っている伝熱プレートの開口部の周囲及び一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けすることを特徴としている。
【0023】
このプレート式熱交換器の製造方法によれば、伝熱プレートユニットと伝熱プレートユニットとの間に挟まれたシート状のろう材によってろう付けするに際して、溶融したろう材は、一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けするとともに、各伝熱プレートユニットにおける伝熱プレートと伝熱プレートの開口部の周囲をろう付けする。すなわち、対峙する折返部によって設けられた係止部により、2枚の伝熱プレートが接合防止層を隙間なく挟む状態とされるため、溶融したろう材は、両伝熱プレート間を浸透すると、接合防止層に堰き止められ、各伝熱プレートユニットの伝熱プレートと伝熱プレートの伝熱部にまで浸透することがなく、したがって、伝熱プレートと伝熱プレートとが伝熱部において、ろう付けされていないプレート式熱交換器を製造することができる。
【0024】
また、本発明に係る前記と異なるプレート式熱交換器の製造方法は、係止部を折返部によって設けた前記の伝熱プレートユニットを多層に重ね合わせたプレート式熱交換器の製造方法であって、一方又は両方の伝熱プレートユニットの係止部を対峙しない外向きにして開口部を連通し、外向きとされた係止部の先端に環状ないし塊状のろう材をセットし、かつ、伝熱プレートユニット間にシート状のろう材を挟んで伝熱プレートユニットを重ね合わせ、シート状及び環状ないし塊状のろう材を溶融させることにより、重なり合っている伝熱プレートの開口部の周囲及び一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けすることを特徴としている。
【0025】
このプレート式熱交換器の製造方法によれば、伝熱プレートユニットと伝熱プレートユニットとの間に挟まれたシート状のろう材によってろう付けするに際して、溶融したろう材は、一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けするとともに、各伝熱プレートユニットの伝熱プレートと伝熱プレートとを開口部の周囲においてろう付けする。この開口部の周囲は、折返部によって設けられた係止部が対峙することにより、ろう材が伝熱プレートユニットの両伝熱プレート間の伝熱部まで浸透しない。そして、折返部によって設けられた係止部が外向きとされた開口部の周囲は、シート状のろう材によってろう付けされないが、環状ないし塊状のろう材が溶融し、一方の伝熱プレートの外向きの係止部と他方の伝熱プレートの開口部の周囲との間に浸透する。ただし、折返部からなる係止部により、2枚の伝熱プレートが接合防止層を隙間なく挟む状態を維持するため、溶融したろう材は、両伝熱プレート間を浸透すると、接合防止層に堰き止められ、各伝熱プレートユニットの伝熱プレートと伝熱プレートの伝熱部にまで浸透することがない。したがって、伝熱プレートと伝熱プレートとが伝熱部において、ろう付けされていないプレート式熱交換器を製造することができる。
【0026】
また、本発明に係る前記と異なるプレート式熱交換器の製造方法は、係止部が両伝熱プレートの開口部の周囲を複数箇所で溶融した融着部によって設けられた伝熱プレートユニットを多層に重ね合わせたプレート式熱交換器の製造方法であって、各伝熱プレートユニットの開口部を連通し、かつ、伝熱プレートユニット間にシート状のろう材を挟んで伝熱プレートユニットを重ね合わせ、シート状のろう材を溶融させることにより、重なり合っている伝熱プレートの開口部の周囲及び一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けすることを特徴としている。
【0027】
このプレート式熱交換器の製造方法によれば、伝熱プレートユニットと伝熱プレートユニットとの間に挟まれたシート状のろう材によってろう付けするに際して、溶融したろう材は、一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けするとともに、各伝熱プレートユニットにおける伝熱プレートと伝熱プレートの開口部の周囲をろう付けする。すなわち、両伝熱プレートの開口部の周囲を複数箇所で溶融した溶融部により、2枚の伝熱プレートが接合防止層を隙間なく挟む状態を維持するため、溶融したろう材は、両伝熱プレート間を浸透すると、接合防止層に堰き止められ、各伝熱プレートユニットの伝熱プレートと伝熱プレートの伝熱部にまで浸透することがなく、したがって、伝熱プレートと伝熱プレートとが伝熱部において、ろう付けされていないプレート式熱交換器を製造することができる。
【0028】
また、本発明に係る前記と異なるプレート式熱交換器の製造方法は、両伝熱プレートの開口部の周囲を環状に溶融した融着部を設けた伝熱プレートユニットを多層に重ね合わせたプレート式熱交換器の製造方法であって、各伝熱プレートユニットの開口部を連通し、かつ、伝熱プレートユニット間にシート状のろう材を挟んで伝熱プレートユニットを重ね合わせ、シート状のろう材を溶融させることにより、一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けすることを特徴としている。
【0029】
このプレート式熱交換器の製造方法によれば、伝熱プレートユニットと伝熱プレートユニットとの間に挟まれたシート状のろう材が溶融することにより、一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けする。このとき、溶融したろう材は、各伝熱プレートユニットの伝熱プレートと伝熱プレートの開口部の周囲に回り込んでも、環状の融着部によって堰き止められ、各伝熱プレートユニットの伝熱プレートと伝熱プレートの伝熱部まで浸透せず、伝熱部においてろう付けされていないプレート式熱交換器を製造することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、伝熱プレートユニットが2枚の伝熱プレートが接合防止層を隙間なく挟む状態を維持させる係止部を開口部の周囲に設けたものとしたことにより、また、開口部の周囲を環状に溶融する融着部を2枚の伝熱プレート間に設けたことにより、溶融したろう材が伝熱プレートユニットにおける2枚の伝熱プレートの伝熱部まで浸透しないことから、この伝熱部がろう付けされない。したがって、この伝熱プレートユニットを備えたダブルウォール式のプレート熱交換器は、一方の伝熱プレートに穿孔が形成されたり、割れが生じたりしても、加熱媒体と被加熱媒体とを混合させないという機能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明に係る伝熱プレートユニット及びこの伝熱プレートユニットを備えたプレート式熱交換器の製造方法の実施形態について図1ないし図5を参照しながら説明する。なお、各図面においては見やすくするため、実際よりも大きな隙間をもって描いてあり、また、伝熱プレートユニット10,10を2ユニットのみ描いてあるが、実際は、多数ユニットが重ね合わされている。
【0032】
そして、伝熱プレートユニット10は、開口部12を形成した伝熱プレート11を2枚重ね合わせたダブルウォール式と呼ばれるもので、開口部12が連通するように重ね合わされ、この開口部12の周囲がろう材15によってろう付けされている。なお、伝熱プレート11には、開口部12よりも奥側において凹状部と凸状部とを交互に形成した伝熱部(図示せず)が形成され、周縁においてリム部(図示せず)が形成されている。また、一方の伝熱プレート11の少なくとも伝熱部であって、他方の伝熱プレート11の少なくとも伝熱部に重なり合う内面には、接合防止層16が設けられている。
【0033】
そして、この伝熱プレートユニット10は、溶融したろう材15が開口部12の周囲に浸透し、伝熱部まで浸透しないようにすべく、接合防止層16が2枚の伝熱プレート11,11に隙間なく挟まれる状態を維持するための係止部20を設け、又は溶融したろう材15を堰き止めるための環状の融着部32を開口部12の周囲に設けたことを特徴としている。
【0034】
係止部20としては、図1ないし図4に示すような異なる形態に設けることができる。すなわち、図1、図2、図3に示した係止部20は、いずれも、一方の伝熱プレート11の開口部12の周縁から他方の伝熱プレート11の開口部12の周囲に重なるように折り返された折返部21,22,23によって設けられている。なお、折返部21,22,23は、バーリングカシメ加工などによって設けることができる。
【0035】
そして、図1に示した係止部(以下、「第1の係止部」という。)20は、一方の伝熱プレートユニット10の折返部21と他方の伝熱プレートユニット10の折返部21とが対峙する内向きとされている。また、図2に示した係止部(以下、「第2の係止部」という。)20は、両方の折返部22,22が他方の伝熱プレートユニット10と反対方向の外向きとされている。また、図3に示した係止部(以下、「第3の係止部」という。)20は、一方の折返部23が他方の伝熱プレートユニット10の方に向く内向きとされ、他方の折返部23が一方の伝熱プレートユニット10と反対方向の外向きとされている。
【0036】
そして、図4に示した係止部(以下、「第1の融着部」という。)20は、両伝熱プレート11,11の開口部12,12の周囲を複数箇所でプロジェクション溶接などの溶接によって溶融した点状の融着部24によって設けたものとされている。
【0037】
また、図5に示した融着部32は、点状のものを複数箇所に設けるのではなく、環状に設けたものとされている(以下、「第2の融着部」という。)。この第2の融着部を設けた伝熱プレートユニット10は、2枚の伝熱プレート11,11の間に接合防止層16が挟まれなくてもよいものとされている。
【0038】
ここで、各係止部20を備えた伝熱プレートユニット10と伝熱プレートユニット10とをろう材15によってろう付けする方法について説明する。なお、シート状のろう材15には、伝熱プレート11の開口部12に対応して開口部15aが形成されている。
【0039】
第1の係止部20を備えた伝熱プレートユニット10,10同士をろう付けするには、図1(a)に示すように、一方の伝熱プレートユニット10の折返部21と他方の伝熱プレートユニット10の折返部21とが対峙しているため、伝熱プレートユニット10と伝熱プレートユニット10との間にシート状のろう材15を挟んだ状態とする。
【0040】
そして、シート状のろう材15を溶融させると、ろう材15は、図1(b)に示すように、一方の伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と他方の伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11の間に浸透する状態となりつつ、各伝熱プレートユニット10において、一方の伝熱プレート11の折返部21と他方の伝熱プレート11の開口部12付近との間に浸透する。
【0041】
しかし、第1の係止部20は、折返部21によって設けられていることにより、各伝熱プレートユニット10の一方の伝熱プレート11と他方の伝熱プレート11は、接合防止層16を隙間なく挟んだ状態を維持していることから、溶融したろう材15は、この接合防止層16によって堰き止められ、各伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11,11間の伝熱部まで浸透しない。
【0042】
したがって、一方の伝熱プレートユニット10と他方の伝熱プレートユニット10とは、図1(c)に示すように、対峙している伝熱プレート11の伝熱部の凸状部(図示せず)が当接している部分においてろう付けされ、また、各伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と伝熱プレート11とは、開口部12の周囲がろう付けされ、伝熱部がろう付けされない。
【0043】
次に、第2の係止部20を備えた伝熱プレートユニット10,10同士をろう材15によってろう付けする方法について説明する。両伝熱プレートユニット10,10の第2の係止部20は、折返部22が外向きとされ、対峙していないため、図2(a)に示すように、伝熱プレートユニット10と伝熱プレートユニット10との間にシート状のろう材15を挟んだ状態とし、さらに、折返部22の先端に環状ないし塊状のろう材15をセットする。
【0044】
そして、シート状のろう材15が溶融することにより、図2(b)に示すように、ろう材15が一方の伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と他方の伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11の間に浸透する状態となる。しかし、このろう材15は、折返部21が外向きとされていることから、各伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と伝熱プレート11の開口部12の周囲をろう付けしない。
【0045】
しかし、環状ないし塊状のろう材15が溶融し、このろう材15が各伝熱プレートユニット10において、図2(b)に示すように、一方の伝熱プレート11の折返部21と他方の伝熱プレート11の開口部12の周囲との隙間に浸透する。溶融したろう材15は、係止部20が外向きとされ、両伝熱プレート11,11が接合防止層16を隙間なく挟んだ状態を維持していることから、接合防止層16に堰き止められ、伝熱部まで浸透しない。
【0046】
このようにして、伝熱プレートユニット10と伝熱プレートユニット10とは、図2(c)に示すように、対峙している伝熱プレート11,11同士の伝熱部の凸状部(図示せず)が当接している部分がろう付けされるとともに、各伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と伝熱プレート11とが開口部12の周囲でろう付けされ、伝熱部でろう付けされない。
【0047】
次に、第3の係止部20を備えた伝熱プレートユニット10同士をろう材15によってろう付けする方法について説明する。第3の係止部20は、一方の折返部23が他方の伝熱プレートユニット10の方向に向く内向きとされ、他方の折返部23が一方の伝熱プレートユニット10と反対方向の外向きとされている。したがって、図3(a)に示すように、伝熱プレートユニット10と伝熱プレートユニット10との間にシート状のろう材15を挟んだ状態とし、さらに、外向きとされた折返部23の先端に環状ないし塊状のろう材15をセットする。
【0048】
そして、シート状のろう材15を溶融させることにより、図3(b)に示すように、ろう材15が一方の伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と他方の伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11の間に浸透する状態となりつつ、一方の伝熱プレート11の内向きの折返部23と他方の伝熱プレート11の開口部12付近との間に浸透する状態とする。
【0049】
この内向きの折返部23によって、両伝熱プレート11,11が接合防止層16を隙間なく挟んだ状態を維持していることにより、溶融したろう材15は、接合防止層16に堰き止められ、伝熱部まで浸透しない。
【0050】
一方、折返部23が外向きとされた一方の伝熱プレート11と他方の伝熱プレート11との隙間には、シート状のろう材15が溶融して浸透せず、環状ないし塊状のろう材15が溶融し、浸透する。このろう材15は、両伝熱プレート11,11が接合防止層16を隙間なく挟んでいることから、接合防止層16に堰き止められ、伝熱部まで浸透しない。
【0051】
このようにして、伝熱プレートユニット10と伝熱プレートユニット10とは、図3(c)に示すように、対峙している伝熱プレート11,11同士の伝熱部の凸状部(図示せず)が当接している部分がろう付けされ、各伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と伝熱プレート11とが開口部12の周囲でろう付けされ、伝熱部でろう付けされない。
【0052】
次に、第1の融着部24を備えた伝熱プレートユニット10,10同士をろう材15によってろう付けする方法について説明する。第1の融着部24は、両伝熱プレート11,11の開口部12の周囲を複数箇所で溶融した点状の融着部24によって設けられるものであり、図4(a)に示すように、伝熱プレートユニット10の一方の伝熱プレート11の開口部12の周囲を他方の伝熱プレート11の方に複数箇所で突出した突起部17が設けられ、この突起部17が他方の伝熱プレートユニット10の平坦な伝熱プレート11に当接する状態とされる。
【0053】
そして、一方の伝熱プレート11の突起部17と他方の伝熱プレート11とは、プロジェクション溶接その他の溶接により、突起部17を溶融させ、図4(b)に示すように伝熱プレートユニット10に融着部24を設けることにより、両伝熱プレート11,11が接合防止層16を隙間なく挟んだ状態とする。この伝熱プレートユニット10と伝熱プレートユニット10との間に、シート状のろう材15が挟まれる。
【0054】
そして、シート状のろう材15を溶融させることにより、一方の伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と他方の伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11との間に溶融したろう材15を浸透させる。また、溶融したろう材15は、各伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と伝熱プレート11との間の開口部12の周囲にも浸透するが、接合防止層16に堰き止められる状態となり、伝熱部まで浸透しない。
【0055】
そして、一方の伝熱プレートユニット10と他方の伝熱プレートユニット10とは、図4(c)に示すように、対峙している伝熱プレート11,11の伝熱部の凸状部(図示せず)が当接している部分においてろう付けされ、各伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と伝熱プレート11との間の伝熱部でろう付けされない。
【0056】
次に、第2の融着部32を備えた伝熱プレートユニット10,10同士をろう材15によってろう付けする方法について説明する。この伝熱プレートユニット10は、一方の伝熱プレート11の開口部12の周囲を他方の伝熱プレート11の方に環状に突出させた突条部18が設けられ、この突条部18が他方の伝熱プレートユニット10の平坦な伝熱プレート11に当接する状態とされる。
【0057】
そして、一方の伝熱プレート11の突条部18と他方の伝熱プレート11は、プロジェクション溶接その他の溶接により、突条部18を溶融させ、図5(b)に示すように伝熱プレートユニット10に環状の融着部32を設ける。この伝熱プレートユニット10は、両伝熱プレートユニット11,11が接合防止層16を挟んでいない
【0058】
そして、伝熱プレートユニット10と伝熱プレートユニット10との間にシート状のろう材15を挟み、このろう材15を溶融させることにより、一方の伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と他方の伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11との間に溶融したろう材15を浸透させる。また、溶融したろう材15は、各伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と伝熱プレート11との間の開口部12の周囲にも浸透するが、環状の溶融部32に堰き止められ、伝熱部まで浸透しない。
【0059】
そして、一方の伝熱プレートユニット10と他方の伝熱プレートユニット10とは、図5(c)に示すように、対峙している伝熱プレート11,11の伝熱部の凸状部(図示せず)が当接している部分においてろう付けされ、各伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と伝熱プレート11との間の伝熱部ではろう付けされない。
【0060】
このように、第1ないし第4のいずれの係止部20及び溶融部32を設けた伝熱プレートユニット10も、多層に重ね合わされ、最も外側の伝熱プレートユニット10が耐圧フレーム(図1ないし図4において図示せず)にろう付けされ、耐圧フレームの開口部にノズル(図1ないし図4において図示せず)が装着されることによって、プレート式熱交換器が完成する。
【0061】
このプレート式熱交換器は、溶融したろう材15が各伝熱プレートユニット10の伝熱プレート11と伝熱プレート11の間の伝熱部をろう付けしていないため、ダブルウォール式の機能が果たされる。すなわち、一方の伝熱プレート11に穿孔が形成され、あるいは割れが生じても、他方の伝熱プレート11によって、2つの空間が隔絶され、加熱媒体と被加熱媒体とが混合することなく熱交換を行うことができるようにされている。
【0062】
なお、本発明は、前記の実施形態に限定することなく種々変更することができる。例えば、第2の係止部20や第3の係止部20を設けた伝熱プレート10,10同士をろう付けするに際して、環状の融着部32を設けることにより、環状ないし塊状のろう材15をセットしなくてもよいようにすることができる。また、第2の融着部32を設けた伝熱プレートユニット10においても、接合防止層16を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態における伝熱プレートユニットの要部及びこの伝熱プレートユニットを使用するプレート式熱交換器の製造方法を示し、(a)は最初の段階の要部断面図、(b)は中間の段階の要部断面図、(c)は最終の段階の要部断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態における伝熱プレートユニットの要部及びこの伝熱プレートユニットを使用するプレート式熱交換器の製造方法を示し、(a)は最初の段階の要部断面図、(b)は中間の段階の要部断面図、(c)は最終の段階の要部断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態における伝熱プレートユニットの要部及びこの伝熱プレートユニットを使用するプレート式熱交換器の製造方法を示し、(a)は最初の段階の要部断面図、(b)は中間の段階の要部断面図、(c)は最終の段階の要部断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態における伝熱プレートユニットの要部及びこの伝熱プレートユニットを使用するプレート式熱交換器の製造方法を示し、(a)は最初の段階の要部断面図、(b)は中間の段階の要部断面図、(c)は最終の段階の要部断面図である。
【図5】本発明の第5の実施形態における伝熱プレートユニットの要部及びこの伝熱プレートユニットを使用するプレート式熱交換器の製造方法を示し、(a)は最初の段階の要部断面図、(b)は中間の段階の要部断面図、(c)は最終の段階の要部断面図である。
【図6】従来のダブルウォール式のプレート式熱交換器であって、(a)は要部断面図、(b)は一部拡大断面図である。
【図7】従来のダブルウォール式の伝熱プレートユニットの要部及びこの伝熱プレートユニットを使用するプレート式熱交換器の製造方法を示し、(a)は最初の段階の要部断面図、(b)は中間の段階の要部断面図、(c)は最終の段階の要部断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10…伝熱プレートユニット
11…伝熱プレート
12…開口部
15…ろう材
20…係止部
21…折返部
22…折返部
23…折返部
24…融着部
32…融着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隅に開口部を形成し、中央部に伝熱部を設けた伝熱プレートと、隅に開口部を形成し、中央部に伝熱部を設け、少なくとも伝熱部上に接合防止層を設けた伝熱プレートとが、開口部を連通させ、かつ、接合防止層を他方の少なくとも伝熱部に接合させて重ね合わされ、少なくとも開口部の周囲がろう付けされた伝熱プレートユニットであって、
2枚の伝熱プレートが接合防止層を隙間なく挟むように、両伝熱プレートの間隔を一定に維持させる係止部が開口部の周囲に設けられていることを特徴とする伝熱プレートユニット。
【請求項2】
前記係止部は、一方の伝熱プレートの開口部の周縁から他方の伝熱プレートの開口部の周囲に重なるように折り返された折返部によって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の伝熱プレートユニット。
【請求項3】
前記係止部は、両伝熱プレートの開口部の周囲を複数箇所で溶融した融着部によって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の伝熱プレートユニット。
【請求項4】
隅に開口部を形成し、中央部に伝熱部を設けた2枚の伝熱プレートが、開口部を連通させて重ね合わされ、少なくとも開口部の周囲がろう付けされた伝熱プレートユニットであって、
前記開口部の周囲を環状に溶融する融着部が2枚の伝熱プレート間に設けられていることを特徴とする伝熱プレートユニット。
【請求項5】
請求項2に記載された伝熱プレートユニットを多層に重ね合わせたプレート式熱交換器の製造方法であって、
一方の伝熱プレートユニットの係止部と他方の伝熱プレートユニットの係止部とが対峙するように開口部を連通し、かつ、伝熱プレートユニットと伝熱プレートユニットとの間にシート状のろう材を挟んで伝熱プレートユニットを重ね合わせ、シート状のろう材を溶融させることにより、重なり合っている伝熱プレートの開口部の周囲及び一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けすることを特徴とするプレート式熱交換器の製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載された伝熱プレートユニットを多層に重ね合わせたプレート式熱交換器の製造方法であって、
一方又は両方の伝熱プレートユニットの係止部を対峙しない外向きにして開口部を連通し、外向きとされた係止部の先端に環状ないし塊状のろう材をセットし、かつ、伝熱プレートユニット間にシート状のろう材を挟んで伝熱プレートユニットを重ね合わせ、シート状及び環状ないし塊状のろう材を溶融させることにより、重なり合っている伝熱プレートの開口部の周囲及び一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けすることを特徴とするプレート式熱交換器の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載された伝熱プレートユニットを多層に重ね合わせたプレート式熱交換器の製造方法であって、
各伝熱プレートユニットの開口部を連通し、かつ、伝熱プレートユニット間にシート状のろう材を挟んで伝熱プレートユニットを重ね合わせ、シート状のろう材を溶融させることにより、重なり合っている伝熱プレートの開口部の周囲及び一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けすることを特徴とするプレート式熱交換器の製造方法。
【請求項8】
請求項4に記載された伝熱プレートユニットを多層に重ね合わせたプレート式熱交換器の製造方法であって、
各伝熱プレートユニットの開口部を連通し、かつ、伝熱プレートユニット間にシート状のろう材を挟んで伝熱プレートユニットを重ね合わせ、シート状のろう材を溶融させることにより、一方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートと他方の伝熱プレートユニットの伝熱プレートとを所定の部位でろう付けすることを特徴とするプレート式熱交換器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−127554(P2010−127554A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303750(P2008−303750)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)