説明

伝熱複合材、関連するデバイス及び方法

【課題】伝熱複合材を提供する。
【解決手段】本伝熱複合材は、該伝熱複合材の約50容積%よりも大きい量で存在する複数の熱分解グラファイト部片と、熱分解グラファイト部片を固化集合体の形態で保持する非炭素質マトリックスとを含む。1つの実施形態では、本伝熱複合材は、非炭素質マトリックス内にランダムに分布した多数の熱分解グラファイト部片を含む。別の実施形態では、本伝熱複合材は、非炭素質材料を含むシートの層間内に配置された熱分解グラファイト部片の個別の層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱複合材、伝熱デバイス、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクス技術の進歩により、かってない程の高速で信号及びデータを処理する電子デバイスがもたらされた。例えばマイクロプロセッサ、メモリデバイス等のような電子及び/又は集積回路(「IC」)デバイスがより小さくなり、その一方で熱放散の要求はますます大きくなってきている。システムが不安定となる或いは損傷するのを回避するためには、熱が半導体から効果的に除去されなければならない。多くの場合、電子部品の表面から通常は周囲空気であるより低温の環境に熱を放散させるために、ヒートスプレッダ及び/又はヒートシンクが使用される。
【0003】
ヒートスプレッダ及び/又はヒートシンクのような伝熱デバイスを使用して伝導によって電子デバイスから熱を除去することは、当業界における研究の継続的領域である。特許文献1には、アルミニウムのマトリックス内に70〜90容積%のグラファイトを含有する、システムから熱を放散させるためのグラファイト−金属マトリックス複合材部材を含む電子部品ハウジングパッケージが開示されている。特許文献2には、グラファイト層間に埋込まれたダイアモンドグリットを含む複合材ヒートスプレッダが開示されており、ここでは、アルミニウムの金属マトリックスが固化集合体の形態でグラファイト及びダイアモンドグリットを保持している。この参考文献におけるダイアモンドグリットの使用は、「異方性材料であるグラファイトを、等方性熱伝導をもたらすように設計したヒートスプレッダに利用するのを可能にする」ためのものである。
【0004】
ダイアモンドグリットは、多くの方向において1300W/m/Kを超える優れた熱伝導率特性を有する。しかしながら、ダイアモンドは、非常に高価でありまた粉末の形態として使用しなければならず、従って熱管理デバイスに使用する選択は現実的なものではない。ダイアモンドはまた、多くの小さい粒子又は粉末として複合材に組み込まなければならないので、大きい境界面積を有する。この莫大な数のダイアモンド粒子はまた、熱が通過するより多くの境界面を生じ、このことは、熱障壁を形成し、また最終バルク熱伝導率を低下させる。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,998,733号
【特許文献2】米国特許公開第20050189647号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、等方性特性を有する熱管理材料に対する必要性が依然として存在している。本発明は、あらゆる方向に比較的均一な熱伝導率を有しかつダイアモンドの熱伝導率に近い熱伝導率(最大1000W/m/Kまでの)を有する低密度熱管理デバイスを得るように構成した、本質的に金属マトリックス内の超伝熱性媒体の熱分解グラファイトからなる伝熱複合材に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱除去を必要とする電子デバイス又は同様なシステムから熱エネルギーを放散させるための伝熱複合材を提供する。1つの実施形態では、本伝熱複合材は、非炭素質マトリックス内に固化集合体の形態で保持された複数の熱分解グラファイト部片を含む。1つの実施形態では、本伝熱複合材は、非炭素質マトリックス内にランダムに分布した多数の熱分解グラファイト部片を含む。別の実施形態では、本伝熱複合材は、非炭素質材料を含むシートの層間内に配置された熱分解グラファイト部片の個別の層を含む。
【0008】
本発明はさらに、伝熱複合材を構成する方法に関し、本方法は、非炭素質等方性材料を含むマトリックス内に複数の熱分解グラファイト部片を配置して集合体又はバルク材料を形成する段階と、非炭素質等方性マトリックス内の熱分解グラファイトの集合体を、熱分解グラファイト部片を該非炭素質マトリックス内に埋込むのに十分な温度及び圧力に加熱する段階とを含む。1つの実施形態では、非炭素質材料マトリックスはアルミニウムシートの層の形態であり、また熱分解グラファイト部片は、アルミニウムシートの層間内に分布する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書で用いる場合、関連する基本的な機能を変更せずに変化させることができるあらゆる定量的表現を修正するために近似言語を用いることができる。従って、「実質的に」のような1つ又は複数の用語によって修飾された値は、場合によっては、特定した正確な値に限定されないものとすることができる。本明細書及び特許請求の範囲における全ての範囲は、端点を含みかつ独立して組合せ可能である。本明細書及び特許請求の範囲における数値は、特定の値に限定されるものではなく、その特定の値と異なる値を含むことができる。数値は、その記述した値に近似する値を含むのに十分なほどに曖昧であり、当技術分野において公知の測定法及び/又はその値を測定するのに使用した機器の精度による実験誤差が許容されると理解されたい。
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる場合、数詞のない形式の指示表現は、文脈によりそうでないことを明記していない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば「熱分解グラファイト部片」又は「熱分解グラファイト粒子」という表現は、そのようなグラファイト部片又は粒子の1つ又はそれ以上を含む。
【0011】
本明細書で用いる場合、「部片(part)」という用語は、伝熱複合材内の超伝熱性媒体として使用するPG粒子に言及する際に「粒子」と互換的に用いる。本明細書で用いる場合、超伝熱性媒体という用語は、a−b方向において300〜1850W/m−K(又は、理論熱伝導率)の範囲の熱伝導特性を有する熱分解グラファイト部片を意味する。
【0012】
伝熱複合材
本明細書で用いる場合、「熱分解グラファイト」という用語は、「熱分解グラファイト」(「TPG」)、「高配向性熱分解グラファイト」(「HOPG」)又は「圧縮焼鈍熱分解グラファイト」(「CAPG」)と互換的に用いることができ、熱分解グラファイトについての300W/m−KからTPG、HOPG又はCAPGについての1800W/m−Kまでの範囲にある面内(a−b方向)熱伝導率を有するグラファイト材料を意味する。
【0013】
熱分解グラファイト(PG)は、真空炉内で非常な高温で炭化水素を分解することによって製造された独特の形態のグラファイトである。得られたものは、a−b方向における300W/m−K及びc方向における3.5W/mKの面内熱伝導率を有し、理論値に近い密度であり、かつ極めて異方性である超高純度生成物である。TPG、HOPG又はCAPGというのは、大きなサイズの結晶子からなり、結晶子が互いに高度に整列又は配向し、かつ良好に配列されたカーボン層又は高度の好ましい結晶配向を有する特殊な形態の熱分解グラファイトを意味する。1つの実施形態では、TPGは、c方向において1,500W/m−Kよりも大きくかつ20W/m−Kよりも小さい(<20W/m−K)面内熱伝導率を有する。別の実施形態では、TPGは、その(a−b)平面において1,700W/m−Kよりも大きい熱伝導率を有する。
【0014】
熱分解グラファイト(「PG」)は、オハイオ州ストロングスビル所在のGE Advanced Ceramicsから市販されている。熱分解グラファイト材料は、標準又はカスタム寸法で、及び/或いは断熱材、ロケットノズル、イオンビームグリッド等にわたる用途に合わせた形態で商品化されている。熱分解グラファイト部片の製造においては、加工処理における寸法誤差及び/又は損傷による不合格PG部片の小片及び断片が存在する。機械加工/穿孔加工による残物のPG部片が存在する。また、層間剥離した或いは使用不能な寸法のPG部片も存在する。それらの部片は通常、破棄され、またランダムな寸法及び形状のものである。本明細書で用いる場合、通常は破棄される部片は、総括的に「回収PG部片」と呼ぶことにする。回収PG部片は、ランダムな配向の数ミクロンから10インチ(最大寸法での)までの範囲にある寸法を有する。回収部片は、ランダムな塊又は断片から立方体、円筒体、半円筒体、長方体、長円体、半長円体、楔状体等の特定の幾何学形状にわたる形状を有する。
【0015】
1つの実施形態では、本発明の伝熱複合材は、超伝熱性媒体として回収PG部片を用いる。別の実施形態では、市販の又は「未使用の」PG材料が、超伝熱性媒体として使用することができる。第3の実施形態では、回収及び未使用PG材料の混合物が使用される。回収部片を使用する1つの実施形態では、部片は、断片に破壊し、例えば最大寸法において0.5cm未満のPG部片、最小寸法において少なくとも1インチの全体的塊サイズのPG部片、全体的に細長いサイズ(ストリップのような)のPG部片等のような適切な寸法及び形状の範疇に選別することができる。この選別/サイジングは、手作業で行うことができ、或いは当技術分野で公知の分級機を用いて行うことができる。1つの実施形態では、異なる寸法及び形状の分布を有するPG部片の混合物を使用して、伝熱複合材の等方性を最大にすることができる。
【0016】
1つの実施形態では、熱分解グラファイト部片は、伝熱複合材の約50容積%よりも大きい量で存在する。幾つかの実施形態では、熱分解グラファイトは、約30容積%〜約95容積%の量で存在することができる。さらに他の実施形態では、熱分解グラファイトは、約40容積%〜約60容積%の量で存在することができる。
【0017】
熱分解グラファイト部片は、例えば様々な金属及び合金或いは拡散結合することができる他の材料を含む金属マトリックスのような非炭素性等方性材料を含む固化集合体内に組み込まれる。本明細書で用いる場合、拡散結合又は拡散接合というのは、それによって2つの境界面又は2つの材料、例えば熱分解グラファイト部片とマトリックス材料とが、数分〜数時間の範囲にわたる時間での加圧を用いて高温で結合し、従って複数の熱分解グラファイト部片を固化集合体内に保持することができる方法を意味する。1つの実施形態では、高温とは、マトリックス材料の絶対温度での融点の約50%〜90%の温度を意味する。
【0018】
1つの実施形態では、非炭素質等方性材料は、少なくとも50容積%のアルミニウムを含有する金属マトリックスを含む。別の実施形態では、金属マトリックスは、本質的にアルミニウムからなり、アルミニウムは、熱分解グラファイトを濡らすその優れた能力のため金属マトリックスとして用いるのに有効であると実証されている。溶融アルミニウムが熱分解グラファイト元素の周りに浸透すると、アルミニウムは、熱分解グラファイトを濡らし、熱分解グラファイトと化学的に結合しながら炭化アルミニウム形成する。その結果、伝熱複合材内のあらゆる空隙又はエアポケットは、完全には排除されないとしても著しく最小化されることになる。伝熱複合材内部のエアポケット又は空隙の最小化は、伝熱複合材内部の非常に小さい孔の存在でさえ該伝熱複合材の全体熱伝導率を著しく低下させる可能性があるという点で、重要な考慮事項である。従って、1つの実施形態では、本発明の伝熱複合材では、熱分解グラファイト粒子間に実質的に空隙又は未充填間質スペースがない。
【0019】
アルミニウムは、一般的に本発明の伝熱複合材を作る工程で用いるのに十分低い約660℃の融点を有する。幾つかの実施形態では、その融点をさらに低下させるために、アルミニウム合金が、伝熱複合材のマトリックスとして使用される。1つの実施形態では、金属マトリックスは、約450℃の融点(約36重量%のMgを有する共晶組成での)を有するAl‐Mg合金のようなアルミニウム合金を含む。第2の実施形態では、金属マトリックスは、約577℃の融点(約12.6重量%のSiを有する共晶組成での)を有するAl‐Si合金を含む。
【0020】
1つの実施形態では、さらにアルミニウムバインダにおける銅の使用により、伝熱複合材の全体熱伝導率を増大させることができ、言うまでもなく、そのことにより、熱源から熱を除去する際に伝熱複合材の効率を高めることができる。別の実施形態では、マトリックスは、約548℃の融点の場合には、32重量%のCuを有するAl−Cu合金を含む。他の金属もまた、伝熱複合材の全体熱伝導率を高めるために使用することができる。例えば、約26重量%のAgを有するAl−Agの金属マトリックスは、約567℃で溶融し、熱伝導率を増大させる。他の実例は、約7重量%のLiを有するAl−Liであり、598℃で溶融する。
【0021】
比較的低い融点を有するアルミニウム合金を使用することに加えて、1つの実施形態では、金属マトリックスはまた、そのマトリックスの全体融点を低下させる様々な元素を含むことができる。マトリックスの融点を低下させるための好適な元素としては、Mn、Ni、Sn及びZnが挙げられる。別の実施形態では、本発明の複合材に使用することができる関心のある他の材料としては、それに限定されないが、Fe、Cu、その合金等が挙げられる。
【0022】
伝熱複合材を作る工程
図1A〜図1Cに示すような1つの実施形態では、複合材の非炭素質等方性材料、例えば金属マトリックス内に、ランダムな寸法及び/又はランダムな形状の熱分解グラファイト粒子をランダムに分布させる。公知のように、熱分解グラファイトは、その熱分解グラファイト平面の長さに沿った方向すなわちヒートスプレッダのグラファイト層又は繊維に平行な方向に、特別に高い、すなわち300W/m−Kから1700W/m−Kを越えるまでの(約1800W/m−Kまでの)熱伝導率を有する。図1A〜図1Cに示すように、熱分解グラファイト粒子は、伝熱複合材内部でランダムな配向を有するものとして示しており、個々の熱分解グラファイト断片のa−b方向は、xy軸に対してランダムな方向になっている。
【0023】
1つの工程の実施形態では、所望の量の熱分解グラファイト部片を、加熱した鋳型内に配置する。次のステップにおいて、溶融金属(アルミニウムのような)/合金(又は、他の好適な非炭素質等方性材料)を熱分解グラファイト部片に加えて、部片間の空隙を実質的に充填し、固化集合体を形成する。さらに別の実施形態では、マトリックス内の熱伝導率勾配を可変にするために、熱分解グラファイト部片及び溶融アルミニウムの付加を段階的に行って、各段階で付加する熱分解グラファイト部片の寸法、形状及び/又は量(濃度)を、伝熱マトリックスの種々のセクションで熱伝導率を変化させるように制御することができる。
【0024】
1つの実施形態では、固化集合体又はマトリックスを形成した後に、次に、出発固化集合体の最終用途及び所望の熱伝導率勾配に応じて、集合体を機械加工し、切断し又は薄く切って所望の厚さ又は形状にする。1つの実施形態では、伝熱マトリックスは、0.5mm〜2mmの範囲の厚さを有するストリップ又はシートに切断される。第2の実施形態では、シートは、1mm〜0.5cmの最終厚さを有する固化伝熱マトリックスから形成される。
【0025】
別の工程の実施形態では、図2に示すような伝熱複合材を形成する。この実施形態では、熱分解グラファイト断片又は部片を非炭素質シートの層間内に配置し、その積層シートをホットプレス内に配置して固化マトリックスを形成する。1つの実施形態では、積層シート(アルミニウムシート間内に熱分解グラファイト部片を配置した)は、ホットプレス内に配置し、少なくとも400℃、例えば450〜500℃の温度に加熱する。次に、少なくとも300psiかつ450〜500℃で静水圧力を加えて、固化集合体又はマトリックスを形成する。1つの実施形態では、静水圧プレス成形は、少なくとも500psiで行われる。
【0026】
アルミニウムのような非炭素質シートの数、シートの厚さ、或いはシート間内の熱分解グラファイト部片のパレット、量、寸法、形状及び分布は、最終用途並びに利用可能な熱分解グラファイト部片の種類に応じて変化させることができる。1つの実施形態では、熱分解グラファイト部片は、アルミニウムシートの各層に対して少なくとも1つの熱分解グラファイト部片が存在するように、シート間で層状化させる。
【0027】
1つの実施形態では、10ミクロン〜2mmの厚さを有するアルミニウム箔のシートを使用する。第2の実施形態では、10〜25ミルの厚さを有するアルミニウムシートを使用する。第3の実施形態では、1mm〜0.5cmの最終厚さを有する最終複合材マトリックスに対して適切な量のアルミニウムシートを使用する。1つの実施形態では、アルミニウムシートは、1/32インチ〜5/18インチの範囲の公称厚さを有する。第2の実施形態では、アルミニウムシートは、0.025インチの厚さである
【0028】
図2に示すように、熱分解グラファイト部片は、熱分解グラファイトの断片がその高伝導率平面がアルミニウム合金シートの平面に平行に位置するように配置された層状化配向で、伝熱複合材内部に分布する。図3Aに示すような1つの実施形態では、PG断片は、その熱伝導率が伝熱複合材の断面にわたって(シートの平面に対して垂直な方向に)比較的均一になるような千鳥状配置の方式で金属のシート間に配置される。図3Bに示すような別の実施形態では、PG断片は、材料の利用可能性に応じて、例えば小さい正方形、断片、大きい塊等のような様々な形状及び幾何学形態のものとする。1つの実施形態(図示せず)では、比較的均一な寸法及び形状の複数の熱分解グラファイトの断片をアルミニウム(又は、アルミニウム合金)のシート間に配置する。
【0029】
図2の積層マトリックスのさらに別の実施形態では、熱源により近接することになると予測される領域にその後使用されるようなアルミニウムシート間内にはより多くの及び/又はより厚いPG断片を配置しまた熱源からより遠い領域にその後使用されるようなアルミニウムシート間内にはより少ない断片又はより薄い/より小さいPG断片を配置することによって、伝熱複合材内に可変熱伝導率勾配を選択的に形成することができる。本発明のこの態様は、非常に局所的な区域(例えば「ホットスポット」)から比較的大きな表面積を有するヒートスプレッダに熱を拡散させることが望ましい場合に、有利なものとすることができる。
【0030】
非炭素質等方性材料マトリックス内に熱分解グラファイト部片がランダムに分布した1つの実施形態では、複合材内の熱分解グラファイト部片の(a−b)平面はランダムである、すなわち熱分解グラファイトを用いる従来技術の熱管理解決法と同様にa−b方向はランダムに分布し、均一に/平行に分布しない。
【0031】
非炭素質等方性材料マトリックス内に熱分解グラファイト部片がランダムに分布した1つの実施形態では、本発明の伝熱複合材は、複合材のあらゆる方向において100〜1000W/m−Kの範囲の比較的均一な熱伝導率を有する。本明細書で用いる場合、「比較的均一」というのは、マトリックス内部のあらゆる2点間での熱伝導率の変動が25%未満であることを意味する。1つの実施形態では、伝熱複合材は、マトリックス内部のあらゆる2点間での熱伝導率変動が10%未満である。
【0032】
熱分解グラファイトの構成(濃度、寸法、形状、分布等)を注意深く制御した1つの実施形態では、複合材内の熱伝導率は、特定の熱源の熱膨張係数に整合させるのに役立つように調整することができる。このことは、ヒートスプレッダと熱源とが同じ比率で膨張及び収縮して、熱源とヒートスプレッダとの間の結合が損なわれるのを回避することができるという利点をもたらすことができる。
【0033】
伝熱マトリックスの用途
本発明の伝熱マトリックスは、様々な熱源(その何れも図に示していないが、そのような熱源の実例としては、CPUに代表されるものが当業者にはよく知られている)に関連して使用することができる。それに限定するのではないが、本発明のヒートスプレッダは、容易に大型の形状に形成できる比較的低コストのヒートスプレッダが望ましいような様々な電気製品からの熱を伝達又は伝導させるのに使用することができる。
【0034】
本明細書に開示した用途に加えて、本発明は、熱源から熱を伝達除去するための冷却システムに関連して使用することができる。
【0035】
伝熱複合材の用途
本発明の伝熱マトリックスは、熱源から熱を伝達除去するためのあらゆるデバイス、システム及び方法に使用することができる。1つの実施形態では、伝熱マトリックスは、マイクロプロセッサ、メモリデバイス等のような電子及び/又は集積回路(「IC」)デバイスに用いるヒートスプレッダを形成するために使用される。
【0036】
実施例
本明細書では、本発明を説明するために実施例を示すが、これら実施例は、本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【0037】
実施例1
オハイオ州ストロングスビル所在のGE Advanced Ceramicsから入手した熱分解グラファイト(TPG)部片を、窒化ホウ素離型剤を噴霧した鋼製金型内に注入する。約577℃の融点を有する溶融Al−Siをその金型内に注入し、同時に加圧しかつ鋼製ミキサによって混合する。溶融合金は、熱分解グラファイト部片と部片間の全ての空隙との両方を濡らしかつ全ての空隙を実質的に充填して、固化集合体ヒートスプレッダを形成した。得られたヒートスプレッダの測定熱伝導率は、約600W/m−Kである。ボードの性能は、超伝熱性媒体の比率を変化させることによって最終バルク又は局所の熱的性能を調整することができるような方法で設計することができることに留意されたい。
【0038】
本発明を好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、本発明の要素に様々な変更を加えることができ、またその要素を均等物で置き換えることができることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の伝熱デバイスを作製するのに使用する複合材ブロックの異なる実施形態の透視図である。
【図2】熱分解グラファイト部片が非炭素質材料の層間内に分布した状態の本発明の伝熱複合材の別の実施形態の断面図である。
【図3】Aは、図2に示した伝熱複合材の別の実施形態の断面図であり、Bは、非炭素質材料の層内に埋込まれた場合の熱分解グラファイト部片の上面図を示す、図2に示した伝熱複合材の実施形態の上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱複合材であって、
非炭素質材料を含有するマトリックス内に固化集合体の形態で保持された複数の熱分解グラファイト部片を含み、
前記複数の熱分解グラファイト部片が各々、a−b方向における300W/m−K及びc方向における3.5W/m−Kの面内熱伝導率を有し、
前記複数の熱分解グラファイト部片のa−b方向が、該複合材内でランダムに分布している、
伝熱複合材。
【請求項2】
前記非炭素質材料を含有するマトリックスが、該伝熱複合材の全体容積を基準にして少なくとも50容積%である、請求項1記載の伝熱複合材。
【請求項3】
前記非炭素質等方性材料が、前記複数の熱分解グラファイト部片と拡散結合することができる材料を含み、
前記熱分解グラファイト部片が、熱分解グラファイト、高配向性熱分解グラファイト、圧縮焼鈍熱分解グラファイト及びその混合物の少なくとも1つを含む、
請求項1及び請求項2のいずれか1項記載の伝熱複合材。
【請求項4】
前記非炭素質等方性材料が、金属マトリックスを含み、
前記金属マトリックスが、アルミニウム並びにAl−Mg、Al−Si、Al−Cu、Al−Ag、Al−Li及びAl−Beの群から選択されたアルミニウム合金の少なくとも1つを含む、
請求項1から請求項3のいずれか1項記載の伝熱複合材。
【請求項5】
前記金属マトリックスが、少なくともMn、Ni、Sn及びZnからなる群から選択された該金属マトリックスの融点を低下させる元素を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項記載の伝熱複合材。
【請求項6】
前記複数の熱分解グラファイト部片が、回収熱分解グラファイト部片である、請求項1から請求項5のいずれか1項記載の伝熱複合材。
【請求項7】
前記熱分解グラファイト部片が、熱分解グラファイト部片、高配向性熱分解グラファイト部片、圧縮焼鈍熱分解グラファイト部片から選択されたグラファイト部片の混合物を含み、
前記熱分解グラファイト部片が、300W/m−K〜1800W/m−Kの範囲の面内(a−b方向)熱伝導率並びにランダムな寸法及び形状を有する、
請求項1から請求項6のいずれか1項記載の伝熱複合材。
【請求項8】
前記非炭素質マトリックスが、複数の非炭素質シート層を含み、
前記複数の熱分解グラファイト部片が、前記非炭素質シート層間内に配置される、
請求項1から請求項7のいずれか1項記載の伝熱複合材。
【請求項9】
前記非炭素質マトリックスが、複数のアルミニウムシート層を含み、
前記複数の熱分解グラファイト部片が、前記アルミニウムシート層間内に配置され、
前記アルミニウムシートの各層に対して少なくとも1つの熱分解グラファイト部片が存在し、
前記積層シートが、少なくとも450℃の温度及び少なくとも300psiでホットプレス成形される、
請求項1から請求項8のいずれか1項記載の伝熱複合材。
【請求項10】
伝熱複合材を製作する方法であって、
その各々がa−b方向における300W/m−K及びc方向における3.5W/m−Kの面内熱伝導率を有する複数の熱分解グラファイト部片を、非炭素質等方性材料のマトリックス内に配置して集合体を形成する段階と、
前記非炭素質等方性マトリックス内の熱分解グラファイト部片の集合体を、該複数の熱分解グラファイト部片のa−b方向が前記複合材内にランダムに分布するように該熱分解グラファイト部片を該非炭素質マトリックス内に埋込むのに十分な温度及び圧力に加熱する段階と、
を含む方法。
【請求項11】
前記非炭素質等方性材料が、金属を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記金属が、Al−Mg、Al−Si、Al−Cu、Al−Ag、Al−Li及びAl−Beからなる群から選択された合金を含み、
前記金属マトリックスが、該金属マトリックスの融点を低下させる元素を含み、
前記元素が、Mn、Ni、Sn及びZnからなる群から選択される、
請求項10及び請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記熱分解グラファイト部片が、300W/m−K〜1800W/m−Kの範囲の面内(a−b方向)熱伝導率を有する、熱分解グラファイト部片、高配向性熱分解グラファイト部片、圧縮焼鈍熱分解グラファイト部片の混合物を含む、
請求項10から請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記複数の熱分解グラファイト部片を前記非炭素質マトリックス内に配置する段階が、非炭素質材料を含む層間内に前記複数の熱分解グラファイト部片を分布させる段階を含む、請求項10から請求項13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項1から請求項9の何れか1項記載の伝熱複合材を含む、伝熱デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−95171(P2008−95171A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−323730(P2006−323730)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】