説明

伝送方式変換装置、交通管制システムおよび伝送方式変換方法

【課題】交通管制システムにおいて、上位装置と下位装置との間の通信フォーマットが完全には一致しないような場合においても、データ変換を効果的に行える技術を提案する。
【解決手段】伝送方式変換装置30は、上位通信部40aと、下位通信部40bと、フォーマット変換部50とを備える。フォーマット変換部50は、変換テーブル52と、新規格−旧規格変換部54と、旧規格−新規格変換部56とを備え、通信データの新旧の規格のフォーマット変換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送方式変換装置、交通管制システム及び伝送方式変換方法に係り、例えば、交通管制システムにおいて、交通管制システムを構成する装置が異なるデータフォーマットを使用するときに、それら装置が通信可能となるようにデータフォーマットを変換する伝送方式変換装置、交通管制システム及び伝送方式変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、円滑な車両の流れつまり交通流を維持し、道路の機能を効果的に発揮させるとともに、安全で快適な走行を確保することを目的として交通管制がなされている。その交通管制を担うシステムが交通管制システムである。
【0003】
図1は、そのような交通管制システム100の一般的なシステム概要を示している。一般に、交通管制システム100は、交通管制センター等に設置される上位装置110と、下位装置120とを有して構成されており、上位装置110は、通信回線を介して下位装置120との間で通信を行う。
【0004】
この交通管制センター(上位装置110)は、一般に都市単位で一つ設置されている。そして、下位装置120が、路側に設置された各種センサー(車両感知器など)から交通量・交通状態、所要時間などの情報を取得し、また交差点の交通信号の制御データ等の情報を取得し、それら情報を交通管制センター(上位装置110)へ送信する。そして、交通管制センター(上位装置110)は、受信した各種情報をもとにコンピュータで分析を行っている。また、交通管制センター(上位装置110)は、分析された結果から、最適な信号制御パラメータを決定し、各交差点の交通信号制御機に対する系統的な制御を行ったり、交通情報板を用いた交通情報の提供を行っている。
【0005】
ところで、交通管制システム100は、上記の各種制御のために高度化が進められ、それに伴い、上位装置110と下位装置120との間のデータフォーマット(伝送フォーマット)にも新たな方式が導入されるようになっている。
【0006】
一方で、上述の通り、交通管制システム100は、都市単位で設置されるような大規模なシステムである。したがって、同時に全てのシステムを更新することは不可能である。特に、一般的なシステムと異なり、まず上位装置110から新たなシステムに更新され、つづいて下位装置120が少しずつ更新されることもある。その結果、交通管制システム100には、新旧の異なる規格が混在することになり、その様な場合であっても、上位装置110と下位装置120とが適正に通信ができる必要があり、新規格だけで構成される交通管制システムと旧規格だけで構成される交通管制システムとを併存させて対応させるケースがあり、システム運用上改善が求められている。そのような状態を改善する技術として様々な技術が提案されている。
【0007】
例えば、UD形の中央装置(下位装置)と路側に配置されたU形端末装置(端末装置)との間の通信を行うために、路側に伝送方式変換装置を配置した技術がある(特許文献1参照)。この技術では、IP技術を取り入れたUD形伝送方式と称される新しい伝送方式と、旧規格の伝送方式間の通信を変換し、IP技術の特徴をそのまま活用して、路側に設定された伝送方式変換装置で端末装置のデータをとりまとめ、伝送方式変換装置と下位装置の間の通信を一本の回線で実現した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−4403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に開示の技術にあっては、開発者が同じ場合や使用されるデータフォーマットが完全に公開されているような場合には有効な技術であるが、異なる開発者のシステムが混在するような場合には、必ずしもそのまま適用できないという課題があった。つまり、交通管制システムにおいて使用される通信データのデータフォーマットは必ずしも完全に公開されているわけではない。基本的な仕様は監督官庁によって開示されているが、一部のデータは、交通管制システムの開発者ごとに任意に使用されていることがある。そのような場合、交通管制システムの基本的な制御は当然可能であるが、規格で定まっていないような使用方法などについては、従来では使用できていた利用方法が使えなくなってしまうおそれもあり、利便性の低下が懸念され、新たな技術が求められていた。これは、同一規格であっても、データの使い方が完全には定められず自由に使用可能な部分がある場合には同様の課題があった。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、交通管制システムにおいて、上位装置と下位装置との間のデータフォーマットが完全には一致しないような場合においても、データの送受信が適正に行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る装置は、伝送方式変換装置に関する。この装置は、上位装置と下位装置とを備えて構成される交通管制システムにおいて、前記上位装置と前記下位装置との通信経路の途上に設けられ、前記上位装置と前記下位装置のデータフォーマットが異なる場合にデータの変換を行う伝送方式変換装置であって、前記上位装置と前記下位装置のいずれか一方の装置にのみ前記データフォーマットに存在しない種類のデータが含まれる場合に、他方の装置に送信するためにデータを変換する際に、その存在しない種類のデータを追加する変換手段を備える。
また、前記上位装置と前記下位装置の各前記データフォーマットにおいて、類似の意味で使用されているデータが含まれる場合に、その類似するデータ同士の変換を行ってもよい。
また、当該伝送方式変換装置は、前記下位装置の近傍に又は前記下位装置と一体で設置されていてもよい。
本発明に係る別の装置は交通管制システムに関し、この交通管制システムは、上記の伝送方式変換装置を備える。
本発明に係る方法は、伝送方式変換方法に関する。この方法は、上位装置と下位装置とを備えて構成される交通管制システムにおいて、前記上位装置と前記下位装置のデータフォーマットが異なる場合におけるデータの伝送方式変換方法であって、前記上位装置又は前記下位装置の一方の装置からデータを取得するデータ取得工程と、取得したデータのデータフォーマットを特定するフォーマット特定工程と、前記取得したデータのデータを解析する解析工程と、前記取得したデータを他方の装置に送信すべきデータのフォーマットに変換するとともに、送信すべきデータのフォーマットに存在するが受信したデータのフォーマットに存在しない種類のデータについて新たにデータを生成すべきか否かを特定し、生成すべきと判断した際に前記新たなデータを生成して送信すべきデータに付与する変換工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によると、交通管制システムにおいて、上位装置と下位装置との間の通信フォーマットが完全には一致しないような場合においても、データ変換を効果的に行える技術を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】背景技術に係る、一般的な交通管制システムを示す機能ブロック図である。
【図2】実施形態に係る、交通管制システムの概要を示す機能ブロック図である。
【図3】実施形態に係る、伝送方式変換装置の概要を示す機能ブロック図である。
【図4】実施形態に係る、変換テーブルの内容を示す機能ブロック図である。
【図5】実施形態に係る、旧規格を新規格へ変換する際に使用されるデータ本体変換テーブルの内容を示す図である。
【図6】実施形態に係る、新規格を旧規格へ変換する際に使用されるデータ本体変換テーブルの内容を示す図である。
【図7】実施形態に係る、設定値テーブルの内容を示す図である。
【図8】実施形態に係る、ロジックテーブルの内容を示す図である。
【図9】実施形態に係る、伝送方式変換装置の変換処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。以下に説明する実施形態の概要は次の通りである。交通管制システムにおいて、上位装置と下位装置とで異なるデータフォーマットで通信を行うものとする。具体的には、異なるデータフォーマットの例示として、上位装置は新規格のデータフォーマット、下位装置は旧規格のデータフォーマットで通信するものとする。そして、異なるデータフォーマットの通信を適正に行うために、上位装置と下位装置の間に伝送方式変換装置を設けて、データフォーマットの変換がなされる。
【0015】
データフォーマットの変換ロジックは次のロジックを基本とする。
(1)新旧規格で同一の意味で使用されているデータはそのままフォーマット変換する。
(2)新旧規格で似たような意味で使用されているデータはアプリケーションでフォーマット変換する。例えば、データ名称は同じだが、データ値の単位が異なる場合などである。
(3)新旧規格のどちらか一方にしか存在しないデータは所定の設定値を設けるか影響のない範囲でデータを生成する。
【0016】
ここで、交通管制システムにおける制御処理の一つである、交通信号機の制御について簡単に説明する。交通信号機の制御は、交通量調査に基づいてあらかじめ幾つかのパラメータパタンを作成しておき、運用時の交通需要に応じて、該当するパタンを選んで実行するいわゆるパタン選択制御によってなされる。使用される設定値(パラメータ)として、信号現示が一巡する時間であるサイクル、隣接する交差点の青信号開始時間に設けられた差であるオフセット、1サイクルの時間のうち各現示に割り当てられる時間であるスプリットなどが知られている。そして、パタン選択制御のための制御信号が上位装置から下位装置に送信され、また、制御状態が下位装置から上位装置に通知される。
【0017】
ここで、例えば、オフセットについては、旧規格では、絶対オフセットであるのに対して新規格では相対オフセットで規定されているものとする。この場合、データが類似の意味で使用されており、上記ロジック(2)による変換が必要となる。
【0018】
また、フォーマットの変換の際に、規格で定められていない使用の仕方、例えば自由な使用が許されているデータ領域での使用や、使用方法にある幅が許容されている仕様ではあるが厳密には定められていないような仕様などがあれば、好ましいと推定されるデータへの変換がなされる。例えば、新規格では、サイクル・スプリット・オフセットを組み合わせたパタンが複数用いられデータに含まれているものとする。しかし、旧規格では、各項目の設定はあってもパタンによる制御はなされていないため、新規格(上位装置)へのデータの送信の際に、データ値を生成する必要がある。したがって、この場合、上記ロジック(3)による変換が必要となる。以下、具体的な構成及び処理について説明する。
【0019】
図2は、本実施形態に係る交通管制システム1の概要を示している。図示のように、交通管制システム1は、交通管制センター等に設置される上位装置10と、下位装置20と、上位装置10と下位装置20の通信経路中に配置される伝送方式変換装置30とを備えている。なお、下位装置20は、上位装置10と同じく新規格の新下位装置20aと旧規格の旧下位装置20bの2種類から構成されており、伝送方式変換装置30は、旧下位装置20bと上位装置10の間に配置される。
【0020】
上述したように上位装置10は、例えば都市単位で一つ設置され、下位装置20は複数設置される。そして、下位装置20は、交差点の交通信号の制御データ等の情報を取得し、上位装置10へ送信する。また、交通管制センターの上位装置10は、受信した各種情報をもとに各種分析を行ったり、最適な信号制御パラメータを決定し、各交差点の交通信号制御機に対する系統的な制御を行ったり、交通情報板を用いた交通情報の提供を行ったりしている。なお、上位装置10や下位装置20(20a、20b)は、一般的な装置であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0021】
つづいて、本実施形態で特徴的な構成である伝送方式変換装置30について説明する。図3に、伝送方式変換装置30の概略構成を示す機能ブロック図を示す。図示のように、伝送方式変換装置30は、上位通信部40aと、下位通信部40bと、フォーマット変換部50とを備える。
【0022】
上位通信部40aは、上位装置10と双方向通信可能に接続されており、上位装置10から新規格の通信データを受信する新規格受信部42と、上位装置10へ新規格の通信データを送信する新規格送信部44とを備えている。
【0023】
また、下位通信部40bは、旧下位装置20bと双方向通信可能に接続されており、旧下位装置20bから旧規格の通信データを受信する旧規格受信部46と、旧下位装置20bへ旧規格の通信データを送信する旧規格送信部48とを備える。
【0024】
さらに、フォーマット変換部50は、変換テーブル52と、新規格−旧規格変換部54と、旧規格−新規格変換部56とを備え、通信データの新旧の規格のフォーマット変換を行う。
【0025】
新規格−旧規格変換部54は、変換テーブル52の後述の所定のテーブルを参照して、上位装置10のデータのフォーマットを確定しデータの内容を特定する新規格解析部62と、下位装置20が受信可能なデータフォーマットに変換する旧規格生成部64とを備えている。また、旧規格−新規格変換部56も同様に、変換テーブル52の後述の所定のテーブルを参照して、下位装置20のデータフォーマットを確定しデータの内容を特定する旧規格解析部66と、上位装置10が受信可能なデータフォーマットに変換する新規格生成部68とを備える。
【0026】
図4に、新旧の規格のフォーマット変換の為に参照されるデータとして、変換テーブル52に含まれるテーブルの内容を示している。図示のように、変換テーブル52は、旧ヘッダテーブル71と、旧アプリケーションテーブル72と、新ヘッダテーブル73と、新アプリケーションテーブル74と、データ本体変換テーブル75と、設定値テーブル76と、ロジックテーブル77とを備えている。
【0027】
旧ヘッダテーブル71は旧規格のヘッダデータのフォーマットを規定している。また、旧アプリケーションテーブル72は、旧規格のアプリケーションデータのフォーマットを規定している。さらに、新ヘッダテーブル73は、新規格のヘッダデータのフォーマットを規定している。さらにまた、新アプリケーションテーブル74は、新規格のアプリケーションデータのフォーマットを規定している。これらのテーブル(71〜74)を参照することで、新規格解析部62や旧規格解析部66は、新旧規格の確定、各種データの内容の特定等を行うことができる。
【0028】
一方、旧規格生成部64及び新規格生成部68において、新旧規格のデータの変換処理に必要となるのが、データ本体変換テーブル75、設定値テーブル76及びロジックテーブル77である。
【0029】
データ本体変換テーブル75は、旧規格生成部64や新規格生成部68の処理における旧規格と新規格のデータ変換元及びデータ変換先を規定する。図5に、旧規格から新規格へ変換する際に参照するデータ本体変換テーブル75aの例を示し、図6に新規格から旧規格へ変換する際に参照するデータ本体変換テーブル75bの例を示している。なお、特に両者を区別しない場合は、単に「データ本体変換テーブル75」という。図示のように、新旧規格のそれぞれの「情報種別」「データ名称」が規定されている。さらに、変換先の「情報種別」「データ名称」に対応する「情報種別」「データ名称」が変換元に無い場合に参照するべき設定値テーブル76と、データを変換して変換先へ格納するときに使用するロジックテーブル77について規定されている。
【0030】
例えば、図5において、新規格で情報種別「W1」データ名称「X1」のデータ領域は、旧規格の情報種別「Y1」データ名称「Z1」に対応しており、対応するデータ領域が存在するため、「設定値テーブル」及び「変換ロジック」の各項目は不要であり、ブランクとなっている。一方、上から3番目に示す、新規格で情報種別「W1」データ名称「X3」のデータ領域は、旧規格に対応するデータ領域が存在せず、旧規格の「情報種別」「データ名称」がブランクとなっている。そして、この領域のデータについては、設定値テーブル76の情報種別「A」データ名称「A2」の値が格納される旨が記載されている。
【0031】
図7は、設定値テーブル76の内容を示している。この設定値テーブル76は、動作するための設定値と、データ変換元が存在しない場合にデータ変換先に格納する値(固定値)が規定されており、変換元において存在しない種類のデータについて、交通管制システム1の管理者が固定値として設定する。この設定値テーブル76は、「情報種別(設定値)」「データ名称」「データ値」の項目について記述されている。例えば、情報種別「A」データ名称「A1」に対応するデータ値は「1」であり、情報種別「B」データ名称「B2」に対応するデータ値は「3」である旨が記載されている。上述の図5の例では、情報種別「A」データ名称「A2」であるので、データ値は「2」である。
【0032】
また、図5において上から5番目の新規格で情報種別「W2」データ名称「X5」のデータ領域も、旧規格には対応するデータ領域が存在せず、旧規格の「情報種別」「データ名称」がブランクとなっている。ただし、この領域のデータについては、変換元に所定のロジックで変換することによって変換先において適正に使用可能なデータがあることから、使用する変換ロジックと変換元のデータの入力位置(「情報種別」「データ名称」)が記載されている。具体的には、情報種別「Y1」データ名称「Z5」のデータを入力として、ロジックαにより変換を行った出力が、変換先である新規格の情報種別「W2」データ名称「X5」に格納される。
【0033】
そして、図8がロジックテーブル77の内容を示しており、複数のロジック(α、β、γ・・・)が含まれ、それぞれの変換対象データに応じた詳細なロジックが設定されている。例えば、ロジックαを用いた場合、入力α_inに対して出力α_outが得られる。これらロジックを用いるケースとして、上述したような相対オフセットと絶対オフセットとの間の変換処理がある。
【0034】
図6も図5と同様であって、例えば旧規格で情報種別「Y2」データ名称「Z3」のデータ領域は、新規格の情報種別「W1」データ名称「X2」に対応しており、対応するデータ領域が存在するため、「設定値テーブル」「変換ロジック」の各項目は不要であり、ブランクとなっている。一方、上から3番目に示す、旧規格で情報種別「Y4」データ名称「Z4」のデータ領域は、新規格に対応するデータ領域が存在せず、新規格の「情報種別」「データ名称」がブランクとなっている。そして、旧規格に対応させるため、設定値テーブル76が参照され、設定値テーブル76の情報種別「B」データ名称「B1」の値、つまり図7において値「2」が、旧規格の情報種別「Y4」データ名称「Z4」のデータ領域に格納される。また、上から4番目に示す、旧規格で情報種別「Y1」データ名称「Z5」のデータ領域は、新規格に対応するデータ領域が存在せず、この領域のデータについては、変換元に所定のロジックで変換することによって変換先において適正に使用可能なデータがあることから、使用する変換ロジックと変換元のデータの入力位置(「情報種別」「データ名称」)が記載されている。具体的には、情報種別「W2」データ名称「X1」のデータを入力として、ロジックβにより変換を行った出力が、変換先である旧規格の情報種別「Y1」データ名称「Z5」に格納される。
【0035】
以上の構成による伝送方式変換装置30の動作について、図9のフローチャートをもとにまとめて説明する。ここでは、旧下位装置20bから上位装置10へのデータを変換する処理について説明し、上位装置10から旧下位装置20bへのデータの変換処理については同様の処理であるので説明を省略する。
【0036】
まず、下位通信部40bの旧規格受信部46は、旧下位装置20bからデータを受信するとそのデータをフォーマット変換部50へ通知する(S10)。フォーマット変換部50は、旧規格解析部66がデータのフォーマットを参照してデータの規格を特定し(S12)、データの内容を特定する(S14)。つづいて、新規格生成部68は、特定されたデータの内容をもとにデータのフォーマット変換処理を行う(S16)。なお、このフォーマット変換処理において、上述の通り、必要に応じてデータの生成がなされる。送信すべきデータの生成が終了すると、上位通信部40aの新規格送信部44が上位装置10に対して生成したデータを送信する(S18)。
【0037】
以上、本実施の形態によると、上位装置10と下位装置20との間に規格の違いがある場合であっても、その違いを吸収して、交通管制システム1をより効果的に運用することができる。また、一方の規格に存在する種類のデータであるが他方の規格に存在しない種類のデータについて、適宜データを生成して送信するため、そのような種類のデータが統計処理に使用される場合に、データの精度を向上させることができる。例えば、旧規格では存在しないが新規格で存在するパラメータのパタンは、渋滞の状況を把握するために使用される。このパタンが旧下位装置20bからも取得できるので、所定の精度で適正に交通状況を把握することができるようになり、交通管制へのフィードバックが効果的にできる。
【0038】
また、制御レベルの判定を行うことができる。制御レベルの判定とは、対象信号機が上位装置10のパラメータで動作しているのか、下位装置20のパラメータで動作しているのかの判定であり、上位装置10のモニタ画面で表示するものである。管制センターの運用管理者がこの内容を参照することで、正しく上位制御ができているかを判断することができる。なお、制御レベルは、下位装置20から上位装置10に返送される。規格上、上位装置10のパラメータが有効なときは上位運用になることが決められているので、上位装置10のパラメータに不整合がなければ無条件で上位運用になる。しかし、旧下位装置20bは、制御レベルの判定機能を有していない。従来は、上位装置10側で旧下位装置20bの制御レベルを判断することができなかった。したがって、仮に上位装置10の設定に問題があっても、それを把握することができなかった。そこで、本実施形態の伝送方式変換装置30を使用することで、旧下位装置20bの代わりに、伝送方式変換装置30が上位指令のパラメータ検定を行うことができる。上位指令の内容に不整合があれば、制御レベルに「下位制御」を返送し、上位指令の内容に不整合がなければ、制御レベルに「上位制御」を返送する。また、伝送方式変換装置30にコンソールディスプレイを接続して検定結果を表示したり、ログ収集機能を付加して検定結果をログとして保存したりすることによって、上位指令のどこに問題があるかが把握可能となる。それによって、上位装置10側の設定間違いによる運用レベルのダウンを回避することができる。
【0039】
また、渋滞情報の精度を向上させることができる。カーナビゲーションシステムで表示される渋滞度(赤、橙、青で表示される矢印)や、道路交通情報センターに配信される渋滞情報は、上位装置10で算出している。この算出には感知器情報を使用しているが、感知器(図示せず)は下位装置20に収容されているので、感知器から下位装置20、さらに下位装置20から上位装置10へと情報が送信される。つまり、従来であれば、旧下位装置に収容されている感知器の情報は旧規格の上位装置に送信され、新下位装置に収容されている感知器の情報は新規格の上位装置に送信される。旧規格の上位装置と新規格の上位装置は独立して運用されている場合には、上位装置1台当たりの感知器情報のサンプル数が少なかった。感知器情報のサンプル数が多くなれば、渋滞情報の精度が上がるので、2台の上位装置が同一のメーカーであれば、お互いの感知器情報を交換することができたが、異なるメーカーの上位装置の間ではほとんど行うことができないという課題があった。しかしながら、本実施形態の伝送方式変換装置30を使用することで、旧下位装置20bに収容されている感知器情報も新規格の上位装置10に送信することができるため、上位装置10が取り扱う感知器のサンプル数が多くなり、渋滞情報の精度が向上する。また、感知器情報から速度の算出を行って、交通情報板に表示する時間(例えば「○○まで△分」)を決定しているので、感知器情報のサンプル数が多くなれば、この時間の精度も向上させることができる。
【0040】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、なお、伝送方式変換装置30が複数の下位装置20の回線をまとめて制御可能に構成されている場合には、新下位装置20aと旧下位装置20bのいずれかの種類の下位装置20とも接続可能として、新旧規格の判断後、新旧異なる規格間のデータ通信の場合のみ変換処理がなされるようにしてもよい。また、本実施形態では、2種類の規格のデータのフォーマット変換について例示したが当然に3種類以上の規格に対応可能であることは、当業者にとって理解されるところである。
【符号の説明】
【0041】
1 交通管制システム
10 上位装置
20 下位装置
20a 新下位装置
20b 旧下位装置
30 伝送方式変換装置
40a 上位通信部
40b 下位通信部
42 新規格受信部
44 新規格送信部
46 旧規格受信部
48 旧規格送信部
50 フォーマット変換部
52 変換テーブル
54 新規格−旧規格変換部
56 旧規格−新規格変換部
62 新規格解析部
64 旧規格生成部
66 旧規格解析部
68 新規格生成部
71 旧ヘッダテーブル
72 旧アプリケーションテーブル
73 新ヘッダテーブル
74 新アプリケーションテーブル
75 データ本体変換テーブル
76 設定値テーブル
77 ロジックテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置と下位装置とを備えて構成される交通管制システムにおいて、前記上位装置と前記下位装置との通信経路の途上に設けられ、前記上位装置と前記下位装置のデータフォーマットが異なる場合にデータの変換を行う伝送方式変換装置であって、
前記上位装置と前記下位装置のいずれか一方の装置にのみ前記データフォーマットに存在しない種類のデータが含まれる場合に、他方の装置に送信するためにデータを変換する際に、その存在しない種類のデータを追加する変換手段を備えることを特徴とする伝送方式変換装置。
【請求項2】
前記上位装置と前記下位装置の各前記データフォーマットにおいて、類似の意味で使用されているデータが含まれる場合に、その類似するデータ同士の変換を行うことを特徴とする請求項1に記載の伝送方式変換装置。
【請求項3】
当該伝送方式変換装置は、前記下位装置の近傍に又は前記下位装置と一体で設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の伝送方式変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3までのいずれかに記載の伝送方式変換装置を備えることを特徴とする交通管制システム。
【請求項5】
上位装置と下位装置とを備えて構成される交通管制システムにおいて、前記上位装置と前記下位装置のデータフォーマットが異なる場合におけるデータの伝送方式変換方法であって、
前記上位装置又は前記下位装置の一方の装置からデータを取得するデータ取得工程と、
取得したデータのデータフォーマットを特定するフォーマット特定工程と、
前記取得したデータのデータを解析する解析工程と、
前記取得したデータを他方の装置に送信すべきデータのフォーマットに変換するとともに、送信すべきデータのフォーマットに存在するが受信したデータのフォーマットに存在しない種類のデータについて新たにデータを生成すべきか否かを特定し、生成すべきと判断した際に前記新たなデータを生成して送信すべきデータに付与する変換工程と、
を備えることを特徴とする伝送方式変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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