説明

伝送状態監視装置及び伝送状態判定方法

【課題】符号が有る場合に振幅一定の搬送波信号が伝送されるメタル通信回線の伝送状態の監視を、通常の伝送を行っている状態で行えるようにすることである。
【解決手段】伝送状態監視装置30では、メタル通信回線20上の信号レベルから復号を試みて、メタル通信回線20上に符号が伝送されている期間(出力期間)を判定する。そして、この出力期間におけるメタル通信回線20上の信号レベル(ピーク値)に基づいて、メタル通信回線20上の伝送状態を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅間に敷設されたメタル通信回線上の伝送状態を判定する伝送状態監視装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の運行管理システムにおいては、各駅に設置された駅装置間のデータの伝送を、駅間に敷設されたメタル通信回線等の通信回線を介して行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−329786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このメタル通信回線を介した駅間の伝送状態を監視するための構成として、例えば図5(a)に示す構成が考えられる。図5(a)に示すように、各駅(A駅及びB駅)には駅装置100(100a,100b)が設置され、これらの駅装置100は、駅間に敷設されたメタル通信回線20によって通信可能に接続されている。
【0005】
図5では、A駅からB駅に向けて伝送が行われる場合を示している。この場合、受信側のB駅には、レベル計400が設置される。このレベル計400は、メタル通信回線20に接続され、メタル通信回線20上の信号レベルの平均値を計測値として出力する。また、送信側のA駅の駅装置100(100a)は、通常符号生成部11と、測定用符号生成部12と、切り替えスイッチ13とを有する。測定用符号生成部12は、伝送状態の監視の際に用いられる測定用符号を生成する。切り替えスイッチ13は、メタル通信回線20への出力を、通常符号生成部11にて生成された通常符号、或いは、測定用符号生成部12にて生成された測定用符号に切り替える。
【0006】
図5(b)に、駅装置100からメタル通信回線20に出力される信号の概要を示す。図5(b)において、上側は通常符号を示し、下側は測定用符号を示している。ここで、メタル通信回線20上を伝送される信号は、送信したい符号(データ)を、所定の変調方式(具体的には、位相変調或いは周波数変調)にて変調した振幅一定の搬送波信号である。通常符号とは、駅装置間で送受信される通常の符号(データ)である。メタル通信回線20上には、符号が伝送される(搬送波信号が伝送される)期間と、符号が伝送されない(搬送波信号が伝送されない)休止期間とがある。一方、測定用符号は、休止期間が無い連続符号である。
【0007】
このような構成において、メタル通信回線20上の伝送状態の監視の際には、先ず、送信側(A駅)の駅装置100を停止させ、切り替えスイッチ13の切り替え操作によって、メタル通信回線20に送出される符号を通常符号から測定用符号に切り替える。そして、停止させていた駅装置100を再稼働させた後、受信側(B駅)のレベル計400による計測値(信号レベルの平均値)をもとに、メタル通信回線20上の伝送状態の正常/異常を判定する。伝送状態の正常/異常の判定は、例えば、計測値が所定の閾値を超えるか否かによって行う。
【0008】
メタル通信回線20に伝送される符号を切り替える必要がある理由は、図5に示したように、通常符号には搬送波信号が無い休止期間があるからである。つまり、レベル計400は、メタル通信回線20上の信号レベルの平均値を計測値として出力するため、通常の伝送状態では、レベル計400による計測値の低下が、メタル通信回線20の異常によるものか、通常符号の休止期間によるものかを判断できない。このため、測定用符号として連続符号を出力する必要がある。
【0009】
このように、伝送状態の判定といっても、通常の伝送状態における判定ができず、測定用符号生成部12や切り替えスイッチ13等の追加回路が必要となる上、測定には手間と時間がかかる。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駅間に敷設されたメタル通信回線の伝送状態の監視を、通常の伝送を行っている状態で行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための第1の形態は、
符号が有る場合に振幅一定の搬送波信号が伝送される駅間に敷設されたメタル通信回線(例えば、図1のメタル通信回線20)に接続して、当該メタル通信回線上の伝送状態を監視する伝送状態監視装置(例えば、図1の伝送状態監視装置30)であって、
前記メタル通信回線上に前記符号が伝送されたか否かを判定する符号判定手段(例えば、図3の符号判定回路32及びCPU33)と、
前記符号判定手段により符号が伝送されたと判定された時の前記メタル通信回線上の信号レベルに基づいて、当該メタル通信回線上の伝送状態を判定する状態判定手段(例えば、図3のレベル検知回路31及びCPU33)と、
を備えた伝送状態監視装置である。
【0012】
また、他の形態として、
符号が有る場合に振幅一定の搬送波信号が伝送される駅間に敷設されたメタル通信回線上の伝送状態を判定するための伝送状態判定方法であって、
前記メタル通信回線上に前記符号が伝送されたか否かを判定する符号判定ステップ(例えば、図4のステップS1,S7)と、
前記符号判定ステップで符号が伝送されたと判定された時の前記メタル通信回線上の信号レベルに基づいて、当該メタル通信回線上の伝送状態を判定する状態判定ステップ(例えば、図4のステップS15)と、
を含む伝送状態判定方法を構成しても良い。
【0013】
この第1の形態等によれば、符号が有る場合に振幅一定の搬送波信号が伝送されるメタル通信回線上の伝送状態の監視として、メタル通信回線上に符号が伝送されたか否かが判定され、符号が伝送されたと判定されたときのメタル通信回線上の信号レベルに基づいて、メタル通信回線上の伝送状態が判定される。これにより、メタル通信回線を介した通常の伝送を行っている状態で、該メタル通信回線上の伝送状態の監視を行うことが可能となる。
【0014】
また、第2の形態として、第1の形態の伝送状態監視装置であって、
前記状態判定手段は、前記符号判定手段により符号が伝送されたと判定された時の前記メタル通信回線上の信号ピーク値に基づいて、当該メタル通信回線上の伝送状態を判定する、
伝送状態監視装置を構成しても良い。
【0015】
この第2の形態によれば、メタル通信回線上の伝送状態の判定は、符号が伝送されたと判定された時のメタル通信回線上の信号ピーク値に基づいてなされる。メタル通信回線上で伝送される搬送波信号は、振幅一定の信号である。従って、搬送波信号のピーク値から搬送波信号が減衰しているか否かを判定することが可能となる。
【0016】
また、第3の形態として、第1又は第2の形態の伝送状態監視装置であって、
前記符号判定手段は、前記搬送波信号から前記符号を復号する復号手段(例えば、図3の符号判定回路32)を有し、この復号手段により復号できたか否かでもって符号の伝送有無を判定する手段である、
伝送状態監視装置を構成しても良い。
【0017】
この第3の形態によれば、メタル通信回線上の符号の伝送有無の判定は、搬送波信号から符号を復号し、搬送波信号から符号を復号できたか否かでもってなされる。
【0018】
また、第4の形態として、第1〜第3の何れかの形態の伝送状態監視装置であって、
前記符号判定手段により符号が伝送されたと判定されている間の信号レベルを記憶部(例えば、図3のメモリ34)に記憶制御する信号記憶制御手段(例えば、図3のCPU33)を更に備え、
前記状態判定手段は、前記記憶部に記憶された信号レベルに基づいて伝送状態を判定する、
伝送状態監視装置を構成しても良い。
【0019】
この第4の形態によれば、符号が伝送されたと判定されている間の信号レベルが記憶され、メタル通信回線上の伝送状態の判定は、記憶された信号レベルに基づいてなされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】伝送状態監視装置の適用例。
【図2】メタル通信回線上の伝送信号の概要。
【図3】伝送状態監視装置の内部構成図。
【図4】伝送状態監視処理のフローチャート。
【図5】伝送状態の監視のための構成例。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。但し、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0022】
[構成]
図1は、本実施形態の伝送状態監視装置(レベル検知装置)30の適用例を示す図である。図1に示すように、各駅(A駅及びB駅)には駅装置10が設置され、これらの駅装置10が、駅間に敷設されたメタル通信回線20にて通信接続されている。また、駅(B駅)には、メタル通信回線20に接続された伝送状態監視装置30が設置されている。
【0023】
伝送状態監視装置30は、メタル通信回線20で伝送される信号レベルに基づいて、このメタル通信回線20上の伝送状態を監視する。この伝送状態監視装置30による伝送状態の監視は、駅装置間の伝送が行われている状態で行われる。例えば、図1に示すように、A駅の駅装置10aからB駅の駅装置10bへの伝送が行われている場合には、B駅の伝送状態監視装置30bが、B駅の駅装置10bの受信信号を取り込み、取り込んだ受信信号のレベルを検知することで、メタル通信回線20上の伝送状態が正常であるか否かを判定する。
【0024】
メタル通信回線20上で伝送される信号は、データの送信開始を示す識別符号(スタートビット)と、送信したいデータの内容を示す符号と、CRC等による誤り検出符号と、データの送信終了を示す識別符号(ストップビット)とを含むフレーム又はパケット等の送信データが、例えばBPSK(Binary Phase Shift Keying)方式等の所定の変調方式によって変調された搬送波信号である。ここで、変調方式は変調された搬送波信号の振幅が一定となる方式であり、例えば、位相変調或いは周波数変調である。
【0025】
図2に、駅装置間で伝送される搬送波信号の概要を示す。図2に示すように、駅装置10からは符号が常時送信されているのではなく、符号が送信されている期間(出力期間)と、送信されていない期間(休止期間)とがある。伝送状態監視装置30は、メタル通信回線20上の信号レベルのうち、出力期間の信号レベルをもとに、メタル通信回線20上の伝送状態の正常/異常を判定する。
【0026】
図3は、伝送状態監視装置30の内部構成図である。図3によれば、伝送状態監視装置30は、レベル検知回路31と、符号判定回路32と、CPU33と、警報出力回路35とを備えて構成される。
【0027】
レベル検知回路31は、ピーク値ホールド回路を有し、受信信号のピーク値を保持(ホールド)する。保持しているピーク値は、CPU33からの、搬送波周波数に応じたリセット信号によってリセットされる。この結果、搬送波信号の各周期のピーク値を検知するように構成される。符号判定回路32は、メタル通信回線20上の信号レベルにもとづいて、搬送波信号に対する変調方式に応じた復号方式で符号を復号する。
【0028】
CPU33は、符号判定回路32による復号の可否にもとづいて、符号の出力期間を判定する。そして、この出力期間の間にレベル検知回路31にて検知された信号レベルをもとに、メタル通信回線20上の伝送状態の正常/異常を判定する伝送状態監視処理(図4参照)を実行する。
【0029】
警報出力回路35は、CPU33による伝送状態の判定結果が異常の場合に、所定の警報信号を、監視モニタ等の外部装置に対して出力する。
【0030】
[処理の流れ]
図4は、CPU33が実行する伝送状態監視処理の流れを説明するフローチャートである。図4によれば、CPU33は、符号判定回路32から入力される符号を監視し、スタートビットを検出すると(ステップS1:YES)、符号の出力期間の開始時点と判断してデータの取り込みを開始する。すなわち、符号判定回路32から入力される符号をメモリ34に蓄積記憶させるとともに(ステップS3)、レベル検知回路31から入力される信号レベルをメモリ34に蓄積記憶させる(ステップS5)。
【0031】
その後、符号に含まれるストップビットを検出すると(ステップS7:YES)、符号の出力期間の終了時点と判断し、データ(符号及び信号レベル)の取り込みを終了する。
【0032】
続いて、メモリ34に蓄積記憶させた符号に付加されている誤り検出符号を用いた誤り検出を行って、符号が正常に受信されたか否かを判定する(ステップS9)。その結果、符号が正常に受信されていないならば(ステップS11:NO)、取り込んだデータ(信号レベル及び符号)を破棄し(ステップS13)、その後、ステップS1に戻る。
【0033】
一方、符号が正常に受信されたならば(ステップS11:YES)、続いて、メモリ34に蓄積記憶させた信号レベルをもとに、メタル通信回線20上の伝送状態の正常/異常を判定する(ステップS15)。すなわち、メモリ34に蓄積記憶させた信号レベルに対して、所定期間(例えば、符号の5ビットに相当する期間)毎に信号レベルの平均値を算出する。そして、算出した平均値それぞれについて、所定の閾値を超えるか否かを判定し、その判定結果に応じて、メタル通信回線20上の伝送状態の正常/異常を判定する。
【0034】
その結果、伝送状態を異常と判定した場合には(ステップS17:NO)、警報出力回路35によって警報信号が外部装置に出力され、警報音の出力や警報ランプの表示といった所定の警報出力がなされる(ステップS19)。その後、CPU33は、ステップS1に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0035】
[作用・効果]
このように、本実施形態の伝送状態監視装置30によれば、CPU33が、符号判定回路32による復号の可否にもとづいて、符号からメタル通信回線20上に符号が伝送された期間(出力期間)を判定し、レベル検知回路31にて検知されたこの出力期間における信号レベル(ピーク値)に基づいて、メタル通信回線20上の伝送状態を判定する。これにより、駅装置間の通常の伝送を行っている状態で、メタル通信回線20上の伝送状態の正常/異常を判定することが可能となる。
【0036】
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0037】
例えば、伝送状態監視装置30を駅に設置するのではなく、駅間等の任意の位置に設置して、その位置におけるメタル通信回線20の伝送状態を判定することにしても良い。
【符号の説明】
【0038】
10 駅装置
20 メタル通信回線
30 伝送状態監視装置
31 レベル検知回路、32 符号判定回路、33 CPU、34 メモリ
35 警報出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号が有る場合に振幅一定の搬送波信号が伝送される駅間に敷設されたメタル通信回線に接続して、当該メタル通信回線上の伝送状態を監視する伝送状態監視装置であって、
前記メタル通信回線上に前記符号が伝送されたか否かを判定する符号判定手段と、
前記符号判定手段により符号が伝送されたと判定された時の前記メタル通信回線上の信号レベルに基づいて、当該メタル通信回線上の伝送状態を判定する状態判定手段と、
を備えた伝送状態監視装置。
【請求項2】
前記状態判定手段は、前記符号判定手段により符号が伝送されたと判定された時の前記メタル通信回線上の信号ピーク値に基づいて、当該メタル通信回線上の伝送状態を判定する、
請求項1に記載の伝送状態監視装置。
【請求項3】
前記符号判定手段は、前記搬送波信号から前記符号を復号する復号手段を有し、この復号手段により復号できたか否かでもって符号の伝送有無を判定する手段である、
請求項1又は2に記載の伝送状態監視装置。
【請求項4】
前記符号判定手段により符号が伝送されたと判定されている間の信号レベルを記憶部に記憶制御する信号記憶制御手段を更に備え、
前記状態判定手段は、前記記憶部に記憶された信号レベルに基づいて伝送状態を判定する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の伝送状態監視装置。
【請求項5】
符号が有る場合に振幅一定の搬送波信号が伝送される駅間に敷設されたメタル通信回線上の伝送状態を判定するための伝送状態判定方法であって、
前記メタル通信回線上に前記符号が伝送されたか否かを判定する符号判定ステップと、
前記符号判定ステップで符号が伝送されたと判定された時の前記メタル通信回線上の信号レベルに基づいて、当該メタル通信回線上の伝送状態を判定する状態判定ステップと、
を含む伝送状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−253608(P2012−253608A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125462(P2011−125462)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】