説明

伝送遅延時間測定方法

【課題】本願発明は、信頼性のよい最小伝送遅延時間を算出することのできる伝送遅延時間測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本願発明の伝送遅延時間測定方法は、周期的な固定長のフレームを利用する通信ネットワークに接続された第一の通信端末から第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定する伝送遅延時間測定方法であって、前記第一の通信端末から前記通信ネットワークを経由して前記第二の通信端末に向けて、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信し、前記複数のパケット信号を、前記第一の通信端末が送信してから前記第二の通信端末が受信するまでの時間に基づいて、前記第一の通信端末から前記第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークの伝送遅延時間、特に最小伝送遅延時間を測定する伝送遅延時間測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝送遅延に敏感な通信サービスの管理や、通信ネットワーク上で仮想地図の作成には、通信ネットワークの最小伝送遅延時間が基本データとなる。従来、伝送遅延時間は、一つの通信端末からパケット信号を送信し、他の通信端末が受信するまでの経過時間を測定することによって取得していた。例えば、送信装置では、時刻情報を含む信号を通信ネットワークに送信し、受信装置では、受信した信号から時刻情報を検出して、受信装置の有する時刻情報との差分から伝送遅延時間を測定していた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−219057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、携帯電話ネットワークの無線アクセス区間では、他のネットワークよりもかなり長いフレームを利用しているため、携帯電話ネットワークの伝送遅延時間は受信するパケット信号のタイミングとフレームとの相対時間位置で大きく変動することになる。図1は、携帯電話ネットワークの無線アクセス区間での伝送遅延時間を測定した例である。送信側では、携帯電話ネットワークを経由して受信側に向けて規則的にパケット信号を送信し、送信側がパケット信号を送信してから受信側でパケット信号を受信するまでの伝送遅延時間を測定した結果である。
【0005】
送信側のパケット信号を送信する時間間隔と携帯電話ネットワークの無線アクセス区間に利用しているフレーム周期が非同期であり、かつ、当該フレーム周期がかなり長いため、伝送遅延時間は当該フレーム周期に大きく依存することになる。図1に示すように、伝送遅延時間が当該フレームとの相対時間位置で大きく変動すると、測定した伝送遅延時間から最小伝送遅延時間を算出しても、最小伝送遅延時間の信頼性が悪くなる。
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、信頼性のよい最小伝送遅延時間を算出することのできる伝送遅延時間測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明の伝送遅延時間測定方法は、時間間隔がランダムなパケット信号を多数送信し、対象とする通信ネットワークを経由して受信するまでの伝送遅延時間を測定することとした。
【0008】
具体的には、本願発明の伝送遅延時間測定方法は、周期的な固定長のフレームを利用する通信ネットワークに接続された第一の通信端末から第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定する伝送遅延時間測定方法であって、前記第一の通信端末から前記通信ネットワークを経由して前記第二の通信端末に向けて、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信し、前記複数のパケット信号を、前記第一の通信端末が送信してから前記第二の通信端末が受信するまでの時間に基づいて、前記第一の通信端末から前記第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定することを特徴とする。
【0009】
本願発明の伝送遅延時間測定方法によれば、対象とする通信ネットワークの利用するフレーム長が長くても、フレーム周期に依存することなく伝送遅延時間を測定することができる。
【0010】
本願発明の伝送遅延時間測定方法は、前記第一の通信端末と前記第二の通信端末が同一であることを特徴とする。
【0011】
本願発明の伝送遅延時間測定方法によれば、同一の通信端末で測定できれば、測定系を簡易な構成とすることができる。
【0012】
本願発明の伝送遅延時間測定方法は、周期的な固定長のフレームを利用する通信ネットワークに接続された第一の通信端末から第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定する伝送遅延時間測定方法であって、前記第一の通信端末から前記通信ネットワークを経由して前記第二の通信端末に向けて、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信し、前記パケット信号を受信するごとに前記第二の通信端末から前記通信ネットワークを経由して前記第一の通信端末に向けて、時間間隔がランダムなパケット信号を送信し、前記複数のパケット信号を、前記第一の通信端末が送信してから再び前記第一の通信端末が受信するまでの時間に基づいて、前記第一の通信端末から前記第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定することを特徴とする。
【0013】
本願発明の伝送遅延時間測定方法によれば、対象とする通信ネットワークの利用するフレーム長が長くても、フレーム周期に依存することなく伝送遅延時間を測定することができる。
【0014】
本願発明の伝送遅延時間測定方法は、周期的な固定長のフレームを利用する通信ネットワークに接続された第一の通信端末から第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定する伝送遅延時間測定方法であって、前記第一の通信端末から前記通信ネットワークを経由して前記第二の通信端末に向けて、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信し、前記パケット信号を受信するごとに前記第二の通信端末から前記通信ネットワークを経由して前記第一の通信端末に向けて、受信して固定時間経過後パケット信号を送信し、前記複数のパケット信号を、前記第一の通信端末が送信してから再び前記第一の通信端末が受信するまでの時間に基づいて、前記第一の通信端末から前記第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定することを特徴とする。
【0015】
本願発明の伝送遅延時間測定方法によれば、対象とする通信ネットワークの利用するフレーム長が長くても、フレーム周期に依存することなく伝送遅延時間を測定することができる。
【0016】
本願発明の伝送遅延時間測定方法は、前記第一の通信端末及び前記第二の通信端末はそれぞれフレーム長が異なり、互いに非同期の通信ネットワークに接続されていることを特徴とする。
【0017】
本願発明の伝送遅延時間測定方法によれば、互いに非同期の通信ネットワークであっても、前述した測定方法であれば、目的を達成することができる。
【0018】
本願発明の伝送遅延時間測定方法は、前記時間間隔がランダムな複数のパケット信号は、一定周期に対してランダムな変動時間を付与して生成することを特徴とする。
【0019】
本願発明の伝送遅延時間測定方法によれば、パケット信号をランダムに生成すると、パケット信号をランダムな時間間隔で送信することができる。
【0020】
本願発明の伝送遅延時間測定方法は、前記時間間隔がランダムな複数のパケット信号は、一定周期で発生させ、ランダムな変動時間だけ遅延させて生成することを特徴とする
【0021】
本願発明の伝送遅延時間測定方法によれば、パケット信号にランダムな遅延を付与すると、パケット信号をランダムな時間間隔で送信することができる。
【0022】
本願発明の伝送遅延時間測定方法は、前記時間間隔がランダムな複数のパケット信号の最大時間間隔が、前記通信ネットワークの利用するフレーム長に相当する時間以上であることを特徴とする
【0023】
本願発明の伝送遅延時間測定方法によれば、第二の通信端末の送信するパケット信号のランダムな時間間隔を維持することができる。
【0024】
本願発明の伝送遅延時間測定方法は、測定した経過時間に対する前記伝送遅延時間の分布から、分布の下側の外縁を伝送遅延時間の最小値とし、密に分布している中心を伝送遅延時間の最頻出値として算出することを特徴とする。
【0025】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0026】
本願発明の伝送遅延時間測定方法によれば、対象とする通信ネットワークの利用するフレーム長が固定長であっても、フレーム周期に依存することなく伝送遅延時間を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】携帯電話ネットワークの無線アクセス区間において従来の伝送遅延時間系で測定した測定例である。
【図2】本実施形態に係る片道の伝送遅延時間を近端で測定する伝送遅延時間測定系を示す。
【図3】本実施形態に係る片道の伝送遅延時間を遠端で測定する伝送遅延時間測定系を示す。
【図4】パケット送信回路の構成例を示す。
【図5】本実施形態に係る往復の伝送遅延時間を近端で測定する伝送遅延時間測定系を示す。
【図6】本実施形態に係る往復の伝送遅延時間を遠端で測定する伝送遅延時間測定系を示す。
【図7】パケット送信回路の構成例を示す。
【図8】測定した伝送遅延時間の例を示す。
【図9】測定した伝送遅延時間の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0029】
(実施形態1)
本実施形態は片道の伝送遅延時間を近端で測定する例である。本実施形態に係る伝送遅延時間測定系を図2に示す。図2において、11は第一の通信端末、12は第二の通信端末、21はパケット送信回路、22はパケット受信回路、31は遅延時間測定回路、51は伝送遅延時間の測定対象である通信ネットワークである。
【0030】
通信ネットワーク51は、周期的な固定長のフレームを利用してパケットを伝送する。パケット送信回路21は、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を生成し、第一の通信端末11に出力する。パケット信号が入力された第一の通信端末11は、通信ネットワーク51を経由して第二の通信端末12に向けて、パケット信号を送信する。パケット送信回路21は、パケット信号を出力すると同時に遅延時間測定回路31に送信トリガを出力する。第二の通信端末12は、通信ネットワークを経由してきたパケット信号を受信し、パケット受信回路22に出力する。パケット受信回路22は、パケット信号を解読して遅延時間測定回路31に受信トリガを出力する。
【0031】
遅延時間測定回路31は、送信トリガが入力されてから受信トリガが入力されるまでの時間を第一の通信端末11が送信してから第二の通信端末12が受信するまでの時間として、伝送遅延時間を測定する。第一の通信端末11、第二の通信端末12、パケット送信回路21又はパケット受信回路22内での遅延が伝送遅延時間に比較して無視できない場合は、予めこれらの遅延を測定しておき、測定した伝送遅延時間を校正すればよい。
【0032】
第一の通信端末11がパケット信号を送信しても、通信ネットワーク51が固定長のフレームを利用すると、フレームに依存した伝送遅延時間が発生する。フレームの終わり頃にパケット信号が送信されると、待ち時間は短いが、フレームの始まった頃にパケット信号が送信されると、待ち時間は長くなる。第一の通信端末11が周期的なタイミングでパケット信号を送信すると、通信ネットワーク51のフレーム周期に依存して規則的な伝送遅延時間となってしまう。しかし、第一の通信端末11が、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信すると、それぞれのパケット信号の伝送遅延時間はランダムになる。
【0033】
第一の通信端末11と第二の通信端末12が同一端末であってもよい。この場合は、自己に向けたパケット信号を、通信ネットワーク51を経由して自己で受信することになる。パケット信号を自己で受信するため、伝送遅延時間の測定が容易になる。
【0034】
片道の伝送遅延時間を遠端で測定する例を説明する。伝送遅延時間測定系を図3に示す。図3において、32−1は時刻記録装置1、32−2は時刻記録装置2である。図2の実施形態との違いは、第一の通信端末11と第二の通信端末12が遠端に設置されていることである。そのため、パケット信号の伝送遅延時間は、パケット送信回路21の送信トリガを利用して、パケット信号を出力したときの時刻を時刻記録装置1で記録し、パケット受信回路22の受信トリガを利用して、パケット信号が入力されたときの時刻を時刻記録装置2で記録する。時刻記録装置1と時刻記録装置2の時刻を校正しておけば、時刻記録装置1と時刻記録装置2との時刻差からパケット信号の伝送遅延時間を測定することができる。この場合でも、第一の通信端末11が、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信すると、それぞれのパケット信号の伝送遅延時間はランダムになる。
【0035】
従って、対象とする通信ネットワークの利用するフレーム長が固定長であっても、フレーム周期に依存することなくランダムに発生する伝送遅延時間を測定することができる。
【0036】
第一の通信端末11及び第二の通信端末12はそれぞれフレーム長が異なり、非同期の通信ネットワークに接続されていてもよい。第一の通信端末11が、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信すると、それぞれのパケット信号の伝送遅延時間はランダムになるからである。
【0037】
時間間隔がランダムな複数のパケット信号の最大時間間隔は、通信ネットワーク51の利用するフレーム長に相当する時間以上であることが望ましい。ランダムな複数のパケット信号の最大時間間隔が通信ネットワーク51の利用するフレーム長に相当する時間より短いと、伝送遅延時間の分布がフレーム周期の影響を受けてしまうからである。
【0038】
パケット送信回路の構成例を図4に示す。図4において、211、213はパケット発生回路、212、214は遅延変動回路、215はパケット検出回路である。図4(a)において、パケット発生回路211はパケット信号を生成し、遅延変動回路212に出力する。遅延変動回路212は、入力されたパケット信号に遅延変動を付与して出力する。このパケット発生回路211は、遅延変動回路212の付与する遅延量を予め知っているので、遅延変動回路212がパケット信号を出力するタイミングを見計らって、送信トリガを出力する。
【0039】
図4(b)において、パケット発生回路213はパケット信号を生成し、遅延変動回路214に出力する。遅延変動回路214は、入力されたパケット信号に遅延変動を付与して出力する。パケット検出回路215は、遅延変動回路214からのパケット信号を検出して送信トリガを出力する。パケット検出回路215は、遅延変動回路212によって付与された遅延量を知ることなく、パケット信号の検出によって、送信トリガを出力する。
【0040】
パケット発生回路211、213は、一定周期に対してランダムな時間間隔で複数のパケット信号を生成して、パケット信号の時間間隔をランダムにしてもよい。また、複数のパケット信号を一定周期で発生させ、ランダムな時間だけ遅延させて、パケット信号の時間間隔をランダムにしてもよい。パケット信号をランダムな時間間隔で送信することができる。
【0041】
(実施形態2)
本実施形態は往復の伝送遅延時間を近端で測定する例である。本実施形態に係る伝送遅延時間測定系を図5に示す。図5において、11は第一の通信端末、12は第二の通信端末、21、23はパケット送信回路、22−1、22−2はパケット受信回路、33は遅延時間測定回路、51は伝送遅延時間の測定対象である通信ネットワークである。
【0042】
通信ネットワーク51は、周期的な固定長のフレームを利用してパケットを伝送する。パケット送信回路21は、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を生成し、第一の通信端末11に出力する。パケット信号が入力された第一の通信端末11は、通信ネットワーク51を経由して第二の通信端末12に向けて、パケット信号を送信する。パケット送信回路21は、パケット信号を出力すると同時に遅延時間測定回路33に送信トリガを出力する。第二の通信端末12は、通信ネットワークを経由してきたパケット信号を受信し、パケット受信回路22−2に出力する。パケット受信回路22−2は、パケット信号を解読して遅延時間測定回路33に受信トリガを出力する。
【0043】
パケット受信回路22−2は、パケット送信回路23にも受信トリガを出力する。受信トリガが入力されたパケット送信回路23は、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を生成し、第二の通信端末12に出力する。パケット信号が入力された第二の通信端末12は、通信ネットワーク51を経由して第一の通信端末11に向けて、パケット信号を送信する。パケット送信回路23は、パケット信号を出力すると同時に遅延時間測定回路33に送信トリガを出力する。第一の通信端末11は、通信ネットワークを経由してきたパケット信号を受信し、パケット受信回路22−1に出力する。パケット受信回路22−1は、パケット信号を解読して遅延時間測定回路33に受信トリガを出力する。
【0044】
遅延時間測定回路33は、パケット送信回路21の出力する送信トリガからパケット受信回路22−2の出力する受信トリガまでの時間を第一の通信端末11が送信してから第二の通信端末12が受信するまでの時間とし、パケット送信回路23の出力する送信トリガからパケット受信回路22−1の出力する受信トリガまでの時間を第二の通信端末12が送信してから第一の通信端末11が受信するまでの時間として、それぞれ伝送遅延時間を測定する。それぞれの伝送遅延時間の和が往復の伝送遅延時間となる。第一の通信端末11、第二の通信端末12、パケット送信回路21、23又はパケット受信回路22−1、22−2内での遅延が伝送遅延時間に比較して無視できない場合は、予めこれらの遅延を測定しておき、測定した伝送遅延時間を校正すればよい。
【0045】
第一の通信端末11及び第二の通信端末12が周期的なタイミングでパケット信号を送信すると、通信ネットワークのフレーム周期に依存して規則的な伝送遅延時間となってしまう。しかし、第一の通信端末11及び第二の通信端末12が、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信すると、それぞれのパケット信号の伝送遅延時間はランダムになる。
【0046】
往復の伝送遅延時間を近端で測定する場合、第一の通信端末11が、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信するだけでなく、第二の通信端末12も、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信する必要がある。第二の通信端末12が、周期的にパケット信号を送信すると、伝送遅延時間が通信ネットワークの利用するフレームとの相対時間位置で大きく変動するため、測定した伝送遅延時間から最小伝送遅延時間を算出しても、最小伝送遅延時間の信頼性が悪くなる。
【0047】
第二の通信端末12は、上述のように時間間隔がランダムなパケット信号を送信してもよいし、パケット信号を受信して固定時間経過後パケット信号を送信してもよい。即ち、パケット受信回路22−2が受信トリガを出力する時間間隔はランダムになっている。パケット送信回路23は、パケット受信回路22−2の出力する受信トリガが入力されてから固定時間経過後にパケット信号を出力すると、第二の通信端末は、結果として、時間間隔がランダムなパケット信号を送信することになる。
【0048】
往復の伝送遅延時間を遠端で測定する例を説明する。伝送遅延時間測定系を図6に示す。図6において、34は遅延時間測定回路である。図5の実施形態との違いは、第一の通信端末11と第二の通信端末12が遠端に設置されていることである。そのため、パケット信号の伝送遅延時間は、パケット送信回路21の出力する送信トリガからパケット受信回路22−1の出力する受信トリガまでの時間だけでなく、パケット受信回路22−2の出力する受信トリガがパケット送信回路23に入力されてから、パケット送信回路23がパケット信号を出力するまでの時間を考慮して算出する必要がある。
【0049】
往復の伝送遅延時間を遠端で測定する場合も、第一の通信端末11が、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信するだけでなく、第二の通信端末12も、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信する必要がある。第二の通信端末12が、周期的にパケット信号を送信すると、伝送遅延時間が通信ネットワークの利用するフレームとの相対時間位置で大きく変動するため、測定した伝送遅延時間から最小伝送遅延時間を算出しても、最小伝送遅延時間の信頼性が悪くなる。
【0050】
第二の通信端末12は、上述のように時間間隔がランダムなパケット信号を送信してもよいし、パケット信号を受信して固定時間経過後パケット信号を送信してもよい。即ち、パケット受信回路22−2が受信トリガを出力する時間間隔はランダムになっている。パケット送信回路23は、パケット受信回路22−2の出力する受信トリガが入力されてから固定時間経過後にパケット信号を出力すると、第二の通信端末は、結果として、時間間隔がランダムなパケット信号を送信することになる。
【0051】
パケット送信回路の構成例を図7に示す。図7において、216はパケット発生回路、217は遅延変動回路、218は固定遅延回路である。図7(a)において、パケット発生回路216は、受信トリガが入力されるとパケット信号を生成し、遅延変動回路217に出力する。遅延変動回路217は、入力されたパケット信号に遅延変動を付与して出力する。この結果、パケット送信回路は、周期的にパケット信号を出力することなく、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信することになる。
【0052】
図7(b)において、パケット発生回路216は、受信トリガが入力されるとパケット信号を生成し、固定遅延回路218に出力する。固定遅延回路218は、入力されたパケット信号に固定遅延を付与して出力する。この結果、パケット送信回路は、周期的にパケット信号を出力することなく、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信することになる。固定時間経過後であれば、パケット信号の送信の時間間隔のランダム性が維持されるからである。
【0053】
従って、対象とする通信ネットワークの利用するフレーム長が固定長であっても、フレーム周期に依存することなくランダムに発生する伝送遅延時間を測定することができる。
【0054】
第一の通信端末11及び第二の通信端末12はそれぞれフレーム長が異なり、非同期の通信ネットワークに接続されていてもよい。第一の通信端末11が、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信すると、それぞれのパケット信号の伝送遅延時間はランダムになるからである。
【0055】
時間間隔がランダムな複数のパケット信号の最大時間間隔が、通信ネットワーク51の利用するフレーム長に相当する時間以上であることが望ましい。ランダムな複数のパケット信号の最大時間間隔が通信ネットワーク51の利用するフレーム長に相当する時間より短いと、伝送遅延時間の分布がフレーム周期の影響を受けてしまうからである。
【0056】
図6に示す伝送遅延時間測定系で測定した伝送遅延時間の例を図8に示す。図8において、経過時間に対する伝送遅延時間の下側の外縁を伝送遅延時間の最小値とする。図1と異なり、本実施形態の伝送遅延時間測定系では、伝送遅延時間が十分にランダムになり、その結果、測定した伝送遅延時間の分布から伝送遅延時間の最小値を算出することが容易となる。
【0057】
図6に示す伝送遅延時間測定系で測定した他の伝送遅延時間の例を図9に示す。図8において、経過時間に対する伝送遅延時間の分布の下側の外縁を伝送遅延時間の最小値とし、経過時間に対して、密に分布している伝送遅延時間を最頻出値とする。図1と異なり、本実施形態の伝送遅延時間測定系では、伝送遅延時間が十分にランダムになり、その結果、測定した伝送遅延時間の分布から最小値又は最頻出値を算出することが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の伝送遅延時間測定方法は、伝送遅延に敏感な通信サービスの管理や、通信ネットワーク上で仮想地図の作成に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
11:第一の通信端末
12:第二の通信端末
21、23:パケット送信回路
22、22−1、22−2:パケット受信回路
211、213、216:パケット発生回路
212、214、217は遅延変動回路
215:パケット検出回路
218:固定遅延回路
31、33、34:遅延時間測定回路
32−1、32−2:時刻記録装置
51:通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的な固定長のフレームを利用する通信ネットワークに接続された第一の通信端末から第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定する伝送遅延時間測定方法であって、
前記第一の通信端末から前記通信ネットワークを経由して前記第二の通信端末に向けて、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信し、
前記複数のパケット信号を、前記第一の通信端末が送信してから前記第二の通信端末が受信するまでの時間に基づいて、前記第一の通信端末から前記第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定する伝送遅延時間測定方法。
【請求項2】
前記第一の通信端末と前記第二の通信端末が同一であることを特徴とする請求項1に記載の伝送遅延時間測定方法。
【請求項3】
周期的な固定長のフレームを利用する通信ネットワークに接続された第一の通信端末から第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定する伝送遅延時間測定方法であって、
前記第一の通信端末から前記通信ネットワークを経由して前記第二の通信端末に向けて、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信し、
前記パケット信号を受信するごとに前記第二の通信端末から前記通信ネットワークを経由して前記第一の通信端末に向けて、時間間隔がランダムなパケット信号を送信し、
前記複数のパケット信号を、前記第一の通信端末が送信してから再び前記第一の通信端末が受信するまでの時間に基づいて、前記第一の通信端末から前記第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定する伝送遅延時間測定方法。
【請求項4】
周期的な固定長のフレームを利用する通信ネットワークに接続された第一の通信端末から第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定する伝送遅延時間測定方法であって、
前記第一の通信端末から前記通信ネットワークを経由して前記第二の通信端末に向けて、時間間隔がランダムな複数のパケット信号を送信し、
前記パケット信号を受信するごとに前記第二の通信端末から前記通信ネットワークを経由して前記第一の通信端末に向けて、受信して固定時間経過後パケット信号を送信し、
前記複数のパケット信号を、前記第一の通信端末が送信してから再び前記第一の通信端末が受信するまでの時間に基づいて、前記第一の通信端末から前記第二の通信端末までの伝送遅延時間を測定する伝送遅延時間測定方法。
【請求項5】
前記第一の通信端末及び前記第二の通信端末はそれぞれフレーム長が異なり、互いに非同期の通信ネットワークに接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の伝送遅延時間測定方法。
【請求項6】
前記時間間隔がランダムな複数のパケット信号は、一定周期に対してランダムな変動時間を付与して生成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の伝送遅延時間測定方法。
【請求項7】
前記時間間隔がランダムな複数のパケット信号は、一定周期で発生させ、ランダムな変動時間だけ遅延させて生成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の伝送遅延時間測定方法。
【請求項8】
前記時間間隔がランダムな複数のパケット信号の最大時間間隔が、前記通信ネットワークの利用するフレーム長に相当する時間以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の伝送遅延時間測定方法。
【請求項9】
測定した経過時間に対する前記伝送遅延時間の分布から、分布の下側の外縁を伝送遅延時間の最小値とし、密に分布している中心を伝送遅延時間の最頻出値として算出することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の伝送遅延時間測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−199641(P2010−199641A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38643(P2009−38643)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】