説明

伸展刺激介在メラニン生成の制御物質の評価方法

【課題】伸展刺激介在メラニン生成に関する被験物質による効果を評価することができる手段を提供すること。
【解決手段】被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下におけるメラノサイトの培養を行なうステップ、生成したメラニンの量を測定するステップ、および測定されたメラニンの量と、被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に培養されたメラノサイトにより生成されたメラニンの量とを比較するステップ、を含む、伸展刺激介在メラニン生成の制御物質の評価方法;ならびに被験物質を、該評価方法に供し、該被験物質をシミ形成阻害物質として選別する、シミ形成阻害物質のスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸展刺激介在メラニン生成の制御物質の評価方法およびシミ形成阻害物質のスクリーニング方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、伸展刺激がかかる部位でのメラニン生成の制御物質の単離などに有用な、伸展刺激介在メラニン生成の制御物質の評価方法、および伸展刺激がかかる部位でのシミ形成の抑制に有用な、シミ形成阻害物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚における色素異常には、しみ(肝斑)、そばかす(雀卵斑)、老人性色素斑などの色素増加症;尋常性白斑、脱色素性母斑、白皮症などの色素脱失症などが知られている。
【0003】
前記色素異常は、例えば、皮膚の表皮基底層などに存在するメラノサイトで生成される色素であるメラニンの沈着により生じることが知られている。また、前記メラニンは、例えば、紫外線の曝露により生成されることが知られている。
【0004】
現在、色素異常の予防または改善には、L−アスコルビン酸誘導体(例えば、特許文献1などを参照のこと)、グルタチオン(例えば、特許文献2などを参照のこと)などのメラニン生成抑制物質などが用いられている。
【0005】
しかしながら、前記L−アスコルビン酸誘導体およびグルタチオンは、メラニン生成の抑制効果を十分に発揮できない場合があるという欠点がある。
【特許文献1】特開2003−104864号公報
【特許文献2】特開平11−269058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、伸展刺激介在メラニン生成に対する被験物質による効果を評価することができ、伸展刺激介在メラニン生成に対して抑制効果を発揮する物質を選別することができる、伸展刺激介在メラニン生成の制御物質の評価方法を提供することに関する。また、本発明は、伸展刺激がかかる部位でのシミ形成の抑制に有用な物質を選別することができる、シミ形成阻害物質のスクリーニング方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 (I)被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下におけるメラノサイトの培養を行なうステップ、
(II)前記ステップ(I)で生成したメラニンの量を測定するステップ、および
(III)前記ステップ(II)で測定されたメラニンの量と、被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に培養されたメラノサイトにより生成されたメラニンの量とを比較するステップ、
を含む、伸展刺激介在メラニン生成の制御物質の評価方法、
〔2〕 前記ステップ(I)と並行して、(I’)被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下におけるメラノサイトの培養を行なうステップを行なう、前記〔1〕記載の評価方法、
〔3〕 前記メラノサイトの培養を、ケラチノサイトの共存下に行なう、前記〔1〕または〔2〕記載の評価方法、
〔4〕 前記ステップ(II)において、被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量と、被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量とを、さらに測定する、前記〔3〕記載の評価方法、
〔5〕 被験物質を、前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の評価方法に供し、それにより、該被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量よりも、該被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量が減少することを指標として、該被験物質をシミ形成阻害物質として選別する、シミ形成阻害物質のスクリーニング方法、ならびに
〔6〕 被験物質を、前記〔4〕記載の評価方法に供し、それにより、
(a) 該被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量よりも、該被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量が減少すること、または
(b) 該被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量よりも、該被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量が減少すること、または
(c) 前記(a)および(b)の両方の事象、
を指標として、該被験物質をシミ形成阻害物質として選別する、シミ形成阻害物質のスクリーンニング方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の伸展刺激介在メラニン生成の制御物質の評価方法によれば、伸展刺激介在メラニン生成に対する被験物質による効果を評価することができ、伸展刺激介在メラニン生成に対して抑制効果を発揮する物質を選別することができるという優れた効果を奏する。また、本発明のシミ形成阻害物質のスクリーニング方法によれば、伸展刺激がかかる部位でのシミ形成の抑制に有用な物質を選別することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の伸展刺激介在メラニン生成の制御物質の評価方法は、
(I)被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下におけるメラノサイトの培養を行なうステップ、
(II)前記ステップ(I)で生成したメラニンの量を測定するステップ、および
(III)前記(II)で測定されたメラニンの量と、被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に培養されたメラノサイトにより生成されたメラニンの量とを比較するステップ、
を含む方法である。
【0010】
本発明の評価方法は、従来、一般的にメラニンの生成の原因として考えられている紫外線の曝露とは異なる、伸展刺激によるメラニン生成に影響を与える物質を評価できる方法である。
【0011】
前記「伸展刺激介在メラニン生成」とは、伸展刺激の負荷に起因するメラノサイトによるメラニンの生成をいう。かかる伸展刺激介在メラニン生成には、メラノサイト以外の細胞への伸展刺激の負荷を介してメラノサイトに作用し、メラニンを生成する概念をも包含する。
【0012】
前記被験物質としては、特に限定されないが、例えば、植物などの抽出物、天然化合物、合成化合物などが挙げられる。
【0013】
前記ステップ(I)では、前記被験物質の存在下に、伸展刺激をメラノサイトに負荷しながら、該メラノサイトを培養する。本発明の評価方法では、かかるステップ(I)が行なわれているため、メラノサイトに伸展刺激介在メラニン生成を促すことができる。
【0014】
本発明の評価方法では、目尻、額、口元などの皮膚の収縮が生じやすい部位におけるシミの形成などの原因となるメラニンの生成に影響を与える物質を評価することができる。
【0015】
前記伸展刺激は、細胞を所定間隔で伸展させることができる手段、例えば、培養細胞伸展装置などにより行なわれうる。前記伸展刺激は、皮膚における伸縮の方向性と頻度の観点から、好ましくは、周期的に1軸方向に細胞を伸展させる刺激であることが望ましい。前記伸展の度合いは、皮膚における伸縮割合の観点から、通常の培養条件(伸展刺激を負荷しない条件)での培養容器の大きさに対して、1.01〜1.40倍、好ましくは、1.04〜1.20倍となる条件が望ましい。
【0016】
前記伸展刺激を、培養細胞伸展装置の1つである商品名:ST−140、ストレックス株式会社製を用いて行なう場合、例えば、前記伸展刺激の条件としては、1分間に2回、1軸方向に10%の伸展刺激を16時間行なう条件などが挙げられる。
【0017】
前記ステップ(I)は、例えば、伸展刺激負荷下におけるメラノサイトの培養を行なうに際して、前記被験物質を含有した培地を用いて、該メラノサイトを培養することなどにより行なわれうる。
【0018】
前記メラノサイトとしては、特に限定されないが、例えば、マウスのメラノサイト、ヒトのメラノサイト、B16メラノーマ細胞、ヒトメラノーマ細胞などが挙げられる。なかでも、試験の簡便性やコストの観点から、前記メラノサイトは、好ましくは、株化細胞が望ましい。前記株化細胞としては、例えば、B16メラノーマ細胞、ヒトメラノーマ細胞などが挙げられる。
【0019】
前記培地としては、用いられる細胞の培養に適した培地が挙げられる。前記培地は、起源などに応じて、適宜選択されうる。具体的には、前記培地としては、特に限定されないが、例えば、ウシ胎仔血清を含有したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ウシ胎仔血清を含有したイーグル培地、線維芽細胞成長因子(FGF)など各種成長因子を含むメディウム153培地などが挙げられる。なかでも、株化細胞を用いる場合、ウシ胎仔血清を含有したダルベッコ改変イーグル培地またはウシ胎仔血清を含有したイーグル培地が望ましい。
【0020】
前記ステップ(I)において、培養に用いられる培養容器としては、伸展刺激の負荷を行なうことができる容器であればよく、例えば、タイプI コラーゲンで被覆したシリコーンゴム容器、ニトリルゴム容器、天然ゴム容器などが挙げられる。前記伸展刺激が伸展刺激である場合、培養に用いられる培養容器は、伸展刺激を効率よく負荷できる観点から、好ましくは、シリコーンゴム容器が望ましい。
【0021】
ついで、前記ステップ(I)で生成したメラニンの量を測定する〔ステップ(II)〕。
【0022】
メラニンの量の定量方法としては、例えば、培養容器中のメラノサイトを、トリプシンとエチレンジアミン四酢酸(EDTA)との混合物(1:1)、EDTAなどにより、該培養容器から剥離させ、回収し、回収されたメラノサイトを、3N 水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、得られた溶解液の吸光度(405nm)を測定する方法などが挙げられる。なお、前記405nmの吸光度を測定する方法では、既知濃度のメラニンを3N 水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、得られた試料の吸光度を測定することにより得られた検量線に基づき、メラニン量を算出する。
【0023】
その後、前記ステップ(II)で測定されたメラニンの量と、被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に培養されたメラノサイトにより生成されたメラニンの量とを比較する〔ステップ(III)〕。
【0024】
被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に培養されたメラノサイトにより生成されたメラニンの量は、被験物質を含有しない培地を用いることを除き、前記ステップ(I)と同様の手法により、メラノサイトの培養を行ない、ついで、前記メラニンの量の定量方法を行なうことにより決定されうる。かかるメラニンの量は、予め決定されていてもよく、前記ステップ(I)と並行して、ステップ(I’)被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下におけるメラノサイトの培養を行ない、被験物質の存在下の場合のメラニンの量の定量と同時に決定されてもよい。
【0025】
本発明の評価方法は、被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下に、メラノサイトの培養を行なうことにより生成したメラニンの量(以下、「メラニン生成量X1」ともいう)と、被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に、メラノサイトの培養を行なうことにより生成したメラニンの量(以下、「メラニン生成量X0」ともいう)とを比較することに1つの特徴がある。そのため、本発明の評価方法によれば、被験物質が、伸展刺激の負荷を介するメラニン生成を制御しうる物質であるかどうかの評価を行なうことができる。
【0026】
前記ステップ(III)では、前記メラニン生成量X1が、メラニン生成量X0よりも小さい場合、被験物質が、伸展刺激の負荷を介するメラニン生成を減少させる方向に制御しうる物質であることの指標となる。一方、前記メラニン生成量X1が、メラニン生成量X0よりも大きい場合、被験物質が、伸展刺激の負荷を介するメラニン生成を増加させる方向に制御しうる物質であることの指標となる。
【0027】
なお、本発明の評価方法では、前記ステップ(I)において、前記メラノサイトの培養に際して、ケラチノサイトを共存させることができる。前記ステップ(I)において、メラノサイトとケラチノサイトとを共存させることにより、本発明の評価方法によれば、伸展刺激の負荷による生じたケラチノサイトの動態に基づくメラノサイトにおけるメラニンの生成に影響を与える物質を評価することができる。
【0028】
前記ステップ(I)において、メラノサイトとケラチノサイトとを共存させる場合、前記培地は、メラノサイトおよびケラチノサイトの両方の培養に適した培地であればよい。
【0029】
また、前記ステップ(I)において、メラノサイトとケラチノサイトとを共存させる場合、該メラノサイトに対するケラチノサイトの細胞数の割合が、ケラチノサイトの影響を検出する観点から、1/1〜99/1であり、ヒトの皮膚におけるメラノサイトとケラチノサイトの比率の観点から、9/1〜19/1であることが望ましい。
【0030】
なお、前記ステップ(I)において、メラノサイトとケラチノサイトとを共存させる場合、ステップ(II)におけるメラニン生成量X1およびメラニン生成量X0それぞれの測定は、メラノサイトをEDTAで処理することにより選択的に得、得られたメラノサイトを、3N 水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、得られた溶解液の吸光度(405nm)を測定する方法などにより行なわれうる。
【0031】
前記ステップ(I)において、メラノサイトとケラチノサイトとを共存させる場合、前記ステップ(II)において、被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量(以下、「GM−CSF生成量x1」ともいう)と、被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量(以下、「GM−CSF生成量x0」ともいう)とを、さらに測定することができる。本発明の評価方法によれば、このように、前記GM−CSF生成量x1およびGM−CSF生成量x0を測定した場合、被験物質が、伸展刺激の負荷によりケラチノサイトで生成する顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を介するメラニン生成を制御しうる物質であるかどうかの評価を行なうことができる。
【0032】
前記ステップ(I)において、メラノサイトとケラチノサイトとを共存させる場合、前記ステップ(III)で、前記GM−CSF生成量x1とGM−CSF生成量x0とを比較して、前記GM−CSF生成量x1が、GM−CSF生成量x0よりも小さい場合、被験物質が、伸展刺激の負荷によりケラチノサイトで生成するGM−CSFを介するメラニン生成を減少させる方向に制御しうる物質であることの指標となる。一方、前記GM−CSF生成量x1が、GM−CSF生成量x0よりも大きい場合、被験物質が、伸展刺激の負荷によりケラチノサイトで生成するGM−CSFを介するメラニン生成を増加させる方向に制御しうる物質であることの指標となる。
【0033】
生成したGM−CSFの量は、例えば、培養後の培地上清を回収し、該培地上清に含まれるGM−CSFを、GM−CSFに対するモノクローナル抗体を用いたELISAにより定量化する方法;培養後の培地上清を回収し、該培地上清に含まれるGM−CSFを、該抗体を用いたウエスタンブロット法により半定量的に調べる方法などにより測定されうる。
【0034】
本発明の評価方法によれば、例えば、伸展刺激がかかる部位におけるメラニン生成を制御、例えば、抑制することなどに用いうる、伸展刺激介在メラニン生成の制御物質の選別、該物質の単離、該物質の候補物質の評価などが可能になる。
【0035】
本発明の評価方法により、被験物質が、伸展刺激の負荷を介するメラニン生成を減少させる方向に制御しうる物質、または伸展刺激の負荷によりケラチノサイトで生成するGM−CSFを介するメラニン生成を減少させる方向に制御しうる物質であると評価された場合、当該被験物質は、シミ形成阻害物質の候補物質の1つとなる。したがって、本発明には、前記評価方法に基づく、シミ形成阻害物質のスクリーニング方法も包含される。
【0036】
本発明のスクリーニング方法によれば、伸展刺激の負荷により生成するメラニンおよび/またはGM−CSFの量の変動が指標とされているため、本発明のスクリーニング方法により得られるシミ形成阻害物質は、伸展刺激に起因するシミの形成を効果的に阻害することが期待される。
【0037】
また、本発明のスクリーニング方法によれば、例えば、伸展刺激がかかる部位におけるメラニン生成を抑制し、シミ形成を抑制することができるシミ形成阻害物質の選別、該シミ形成阻害物質の単離、該シミ形成阻害物質の候補物質の評価などが可能になる。
【0038】
前記評価方法のステップ(I)において、メラノサイトを単独で用いる場合、本発明のシミ形成阻害物質のスクリーニング方法は、1つの実施態様では、
被験物質を、前記評価方法に供し、それにより、該被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量よりも、該被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量が減少することを指標として、該被験物質をシミ形成阻害物質として選別することを特徴とする方法(以下、「実施態様1の方法」ともいう)、
である。
【0039】
前記実施態様1の方法により選別されるシミ形成阻害物質は、メラノサイトに直接作用して伸展刺激存在下で増加するメラニン量を減少させる効果を発揮することが期待されうる。
【0040】
また、前記評価方法のステップ(I)において、メラノサイトの培養を、ケラチノサイトの共存下に行なう場合、本発明のシミ形成阻害物質のスクリーニング方法は、他の実施態様では、被験物質を、前記評価方法に供し、それにより、
(a) 該被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量よりも、該被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量が減少すること、または
(b) 該被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量よりも、該被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量が減少すること、または
(c) 前記(a)および(b)の両方の事象、
を指標として、該被験物質をシミ形成阻害物質として選別することを特徴とする方法(以下、「実施態様2の方法」ともいう)、
である。
【0041】
前記実施態様2の方法は、ケラチノサイトの共存下でメラノサイトの培養を行なわれているため、該実施態様2の方法により選別されるシミ形成阻害物質は、メラノサイトへの直接的作用もしくはケラチノサイトを介したメラノサイトへの間接的作用、またはそれらの両者により、伸展刺激存在下で増加するメラニン量を減少させる効果を発揮することが期待されうる。
【0042】
本発明のスクリーニング方法によれば、特に限定されないが、例えば、リョウヨウイリョウサイ抽出物、エイジツ抽出物なども、シミ形成阻害物質として選別される。
【0043】
本発明のスクリーニング方法により選別されたシミ形成阻害物質は、シミ形成を抑制することによる美白効果などが期待されるため、化粧料の美白成分としての使用が可能である。
【0044】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
〔調製例1〕
リョウヨウイリョウサイ(Potentilla fulgens)の全草の粗破砕物 10gに、50体積% エタノール水溶液 100mlを添加し、得られた混合物を室温(約25℃)で5日間維持して、エタノール抽出物を得た。得られたエタノール抽出物を、ろ紙で濾過した。その後、得られた濾液を、40℃で減圧下にて濃縮し、さらに減圧乾燥機で乾燥して、リョウヨウイリョウサイ抽出物を得た。また、エイジツ(Rosa multiflora Thunberg)の果実の粗破砕物 10gを用いたことを除き、リョウヨウイリョウサイ抽出物の場合と同様の手法により、エイジツ抽出物を得た。
【0046】
〔実施例1〕
(1) B16メラノーマ細胞に対する影響の評価系
タイプIコラーゲン被覆シリコーンチャンバーに、B16メラノーマ細胞 1×105細胞を播種し、培地として、10質量% ウシ胎仔血清を含有したダルベッコ改変イーグル培地(以下、「ウシ胎仔血清含有DMEM」という) 5mlを用いて、該B16メラノーマ細胞を、5体積% CO2、37℃の条件で24時間培養した。前記シリコーンチャンバー中の培地を除去し、その後、前記シリコーンチャンバーを、培養細胞伸展装置〔商品名:ST−140、ストレックス株式会社製〕にセットした。
【0047】
一方、前記調製例1で得られたリョウヨウイリョウサイ抽出物を、終濃度5μg/ml、10μg/mlまたは20μg/mlとなるように、前記ウシ胎仔血清含有DMEMに添加し、培地を得た。同様に、前記調製例1で得られたエイジツ抽出物を、終濃度5μg/ml、10μg/mlまたは20μg/mlとなるように、前記ウシ胎仔血清含有DMEMに添加し、培地を得た。
【0048】
前記培地を、前記培養細胞伸展装置にセットしたシリコーンチャンバーに添加し、1分間に2回、1軸方向に10%の伸展刺激を16時間加えた(実験番号:1〜6)。ここで、前記「10%の伸展刺激」とは、左右にシリコーンチャンバーを伸展させることにより、培養面積が1.10倍になることをいう。また、前記ウシ胎仔血清含有DMEM単独(実験番号:7)を、前記培養細胞伸展装置にセットしたシリコーンチャンバーに添加し、同様に伸展刺激を加えた。その後、トリプシンとEDTAとの混合液(1:1)を用いて、細胞を、シリコーンチャンバーから剥離させ、回収した。回収された細胞を、3N 水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、得られた溶解液の吸光度(405nm)を測定することによりメラニン量を定量した。なお、前記405nmの吸光度が、1.0である場合を、メラニン量として150μg/mlと定義した。また、伸展刺激なしで培養した場合(実験番号:8)のメラニン量を100として、メラニン生成率を算出した。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
その結果、表1に示されるように、伸展刺激を加えることによりB16メラノーマ細胞のメラニン生成は顕著に増加することがわかる。また、リョウヨウイリョウサイ抽出物を含有した培地およびエイジツ抽出物を含有した培地それぞれを用いた場合、リョウヨウイリョウサイ抽出物およびエイジツ抽出物のいずれも含有しない培地を用いた場合に比べ、伸展刺激を行なったB16メラノーマ細胞におけるメラニン生成率が低くなることがわかる。
【0051】
(2) B16メラノーマ細胞とHaCaT細胞との混合培養系による検討
タイプI コラーゲンで被覆したシリコーンチャンバーに、B16メラノーマ細胞とHaCaT細胞とを、1:9の割合になるように、合計1×105細胞を播種し、10質量% ウシ胎仔血清含有DMEMで24時間、混合培養を行なった。ついで、前記シリコーンチャンバー中の培地を、0.5質量% ウシ胎仔血清含有DMEM培地に交換し、B16メラノーマ細胞とHaCaT細胞とを、さらに24時間培養した。前記シリコーンチャンバーから、培地を除去し、その後、前記シリコーンチャンバーを、培養細胞伸展装置〔商品名:ST−140、ストレックス株式会社製〕にセットした。ついで、0.5質量% ウシ胎仔血清含有DMEM培地 5mlを、前記培養細胞伸展装置にセットしたシリコーンチャンバーに添加し、1分間に2回、1軸方向に10%の伸展刺激を16時間加えた(実験番号:9)。また、終濃度5μg/ml(実験番号:10)、10μg/ml(実験番号:11)もしくは20μg/ml(実験番号:12)でリョウヨウイリョウサイ抽出物を含有したウシ胎仔血清含有DMEM、または終濃度5μg/ml(実験番号:13)、10μg/ml(実験番号:14)もしくは20μg/ml(実験番号:15)でエイジツ抽出物を含有したウシ胎仔血清含有DMEM 5mlを、前記培養細胞伸展装置にセットしたシリコーンチャンバーに添加し、同様に伸展刺激を加えた。
【0052】
その後、EDTAを用いて、B16メラノーマ細胞を、シリコーンチャンバーから剥離させ、回収した。回収された細胞を、3N 水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、得られた溶解液の吸光度(405nm)を測定することによりメラニン量を定量した。なお、前記405nmの吸光度が、1.0である場合を、メラニン量として150μg/mlと定義した。また、伸展刺激なしでB16メラノーマ細胞とHaCaT細胞の混合培養を行なった場合のメラニン量(実験番号:16)を100として、メラニン生成率を算出した。結果を、表2に示す。
【0053】
また同時に、シリコーンチャンバーから培地を回収し、該培地に含まれる因子を解析した。その結果、伸展刺激により、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)の生成量が上昇することがわかった。
【0054】
そこで、終濃度1μg/mlの抗GM−CSF抗体〔アール アンド ディー システムズ(R&D Systems)社製〕を含有したウシ胎仔血清含有DMEM 5mlを、前記培養細胞伸展装置にセットしたシリコーンチャンバーに添加し、前記と同様に伸展刺激を加えた(実験番号:17)。
【0055】
GM−CSF量の測定は、Immunoassayキット〔アール アンド ディー システムズ(R&D Systems)社製〕を用いて、添付の説明書に記載の方法に準じて行なった。伸展刺激なしで培養した場合のGM−CSF量を100として、GM−CSF生成率を算出した。結果を、表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
その結果、B16メラノーマ細胞の単独培養の場合、伸展刺激によるメラニン生成率が161%であるのに対し(実験番号:7)、表2に示されるように、B16メラノーマ細胞とHaCaT細胞との混合培養の場合、メラニン生成率が204%であることがわかる。このように、伸展刺激によるB16メラノーマ細胞のメラニン生成促進作用が、HaCaT細胞の共存により、さらに高まることがわかる。したがって、伸展刺激により、HaCaT細胞がB16メラノーマ細胞のメラニン生成を高める何らかの因子を産生していることが示唆される。さらに、B16メラノーマ細胞とHaCaT細胞との混合培養の場合、伸展刺激により、GM−CSF生成率が増加した。また、抗GM−CSF抗体により、メラニン生成率が、163%となり、ほぼB16メラノーマ細胞の単独培養の場合と同等まで低下した。したがって、HaCaT細胞が産生するB16メラノーマ細胞のメラニン生成を高める因子は、GM?CSFであることが示唆される。
【0058】
また、B16メラノーマ細胞とHaCaT細胞とを混合培養した場合の伸展刺激存在下でのGM−CSF生成は、リョウヨウイリョウサイ抽出物またはエイジツ抽出物非存在下の場合に比べ、リョウヨウイリョウサイ抽出物またはエイジツ抽出物の存在下で減少し、さらに、メラニン生成率も低くなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明により、伸展刺激によるメラニン形成を制御する手段を開発することが可能になる。また、本発明により、伸展刺激によるシミの形成を抑制する手段を開発することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下におけるメラノサイトの培養を行なうステップ、
(II)前記ステップ(I)で生成したメラニンの量を測定するステップ、および
(III)前記ステップ(II)で測定されたメラニンの量と、被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に培養されたメラノサイトにより生成されたメラニンの量とを比較するステップ、
を含む、伸展刺激介在メラニン生成の制御物質の評価方法。
【請求項2】
前記ステップ(I)と並行して、(I’)被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下におけるメラノサイトの培養を行なうステップを行なう、請求項1記載の評価方法。
【請求項3】
前記メラノサイトの培養を、ケラチノサイトの共存下に行なう、請求項1または2記載の評価方法。
【請求項4】
前記ステップ(II)において、被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量と、被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量とを、さらに測定する、請求項3記載の評価方法。
【請求項5】
被験物質を、請求項1〜3いずれか1項に記載の評価方法に供し、それにより、該被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量よりも、該被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量が減少することを指標として、該被験物質をシミ形成阻害物質として選別する、シミ形成阻害物質のスクリーニング方法。
【請求項6】
被験物質を、請求項4記載の評価方法に供し、それにより、
(a) 該被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量よりも、該被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下に生成したメラニンの量が減少すること、または
(b) 該被験物質の非存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量よりも、該被験物質の存在下かつ伸展刺激負荷下にケラチノサイトで生成した顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子の量が減少すること、または
(c) 前記(a)および(b)の両方の事象、
を指標として、該被験物質をシミ形成阻害物質として選別する、シミ形成阻害物質のスクリーンニング方法。

【公開番号】特開2008−29215(P2008−29215A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203324(P2006−203324)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000112266)ピアス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】