説明

伸張性不織布を用いた複合体

【課題】比較的安価であり、肌衣や、防塵マスク、使い捨て紙おむつ等の衛生用品のような製品の材料に最適な、加工が容易で、伸張性、通気性、柔軟性に優れ、肌ざわりのよいシート材料である複合体を提供する。
【解決手段】低融点成分と高融点成分からなる複合繊維で構成され、複合繊維同士が部分的に熱圧着され、且つ熱圧着部がCD(不織布製造時の幅方向)に沿って山部と谷部が繰り返された微細な折り畳み構造を有し、前記折り畳み構造の隣り合う山部同士の距離の平均値が100〜400μmの範囲であって、その微細な折り畳み構造を伸展することによって伸張性を発現する、5%伸長時のCD強度が0.1N/5cm幅以下であり、5%伸長時のMD/CD強度比(「不織布製造時長手方向/同幅方向」の強度比)が200以上である複合スパンボンド不織布と、伸縮性層を積層した複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの方向に低応力伸張性を有する不織布と伸縮性層を積層一体化した複合体に関する。特定の低応力伸張性不織布が伸縮性層に積層一体化されて、肌衣や、防塵マスク、使い捨て紙おむつ等の衛生用品のような製品の材料に最適な、加工が容易で、伸張性または伸縮性、通気性、柔軟性に優れ、肌ざわりが良く、且つ破れ難い(または破断・引き裂き強力が大きい)シート材料を構成するために有利に使用される。
【背景技術】
【0002】
一般的なスパンボンド不織布やサーマルボンド不織布は安価であり、使い勝手の良い汎用品不織布として多く利用されているが、本発明で言う低応力伸張性はほとんど有していない。また、低応力伸張性を発現する汎用不織布としてスパンレース不織布が存在するが、本発明で言う低応力伸張性には及ばず、製法の特徴から、相対的に高価である。尚、低応力伸張性の不織布として、パラレルなフィラメント束に近いトウ開繊不織布、溶融押出法で得られた発泡ネット等があるが、これらはCD(Cross Direction、不織布製造時の幅方向)の強度が極端に小さく、本発明の目的には適さない。これを解決する方法を記載した文献として、以下の特許文献が知られている。
特許文献1には、両層の収縮差によって一方の面に皺を形成させた積層体が記載されているが、張力によっても皺は伸びないとある。
【0003】
特許文献2には、ネック伸張した不織ウェブが記載されているが、この不織ウェブの表面は「平ら」と記載されている。皺は、この不織ウェブに積層されたフィルムの表面に、不織ウェブのCDの縮み(このような縮みを以下「幅入り」という)に伴って形成されると記載されている。
【0004】
特許文献3では、ギアロールを用いて不織布に凹凸形状を付与しているが、この凹凸構造は不織布全面に形成され、且つ高さが2〜30mm、波長が2〜50mmと比較的大きいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−54256
【特許文献2】特開2004−521775
【特許文献3】特開2004−76178
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前述のような方法では、複数層で構成された場合には柔軟性が得られなかったり、十分な伸張性または伸縮性が得られなかったりし、肌衣あるいは衛生用品等の製品の素材として最適なものを提供することができない。本発明は、比較的安価で使い勝手が良い低応力伸張性不織布を積層した複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明には、低融点成分と高融点成分からなる複合繊維で構成され、かつ部分的に適度な熱圧着加工を施した複合スパンボンド原反不織布が必要である。さらにこの原反不織布を、不織布製造時の長手方向(Machine Direction、以下MD)に所定の条件下で延伸することにより、不織布製造時の幅方向(以下CD)に向かって、山部と谷部が繰り返された微細な折り畳み構造を、熱圧着部に形成させることができ、この微細な折り畳み構造を伸展することにより伸張性を発現し、もって、伸縮性層と積層一体化してなる本発明の複合体が、十分な伸縮性を有する複合体となる。
【0008】
本発明の構成は、次のようなものである。
(1)複合スパンボンド不織布と伸縮性層が積層一体化された複合体であって、複合スパンボンド不織布が、融点差のある少なくとも2種類の樹脂成分(融点の低い方を低融点成分、融点の高い方を高融点成分とする)からなる複合繊維で構成され、複合繊維同士が部分的に熱圧着され、且つ熱圧着部がCD(不織布製造時の幅方向)に沿って山部と谷部が繰り返された微細な折り畳み構造を有し、前記折り畳み構造の隣り合う山部同士の距離の平均値が100〜400μmの範囲であって、その微細な折り畳み構造を伸展することによって伸張性を発現することを特徴とする、複合体。
(2)複合化するスパンボンド不織布の、5%伸長時のCD強度が0.1N/5cm幅以下であり、5%伸長時のMD/CD強度比(「不織布製造時長手方向/同幅方向」の強度比)が200以上である、前記(1)に記載の複合体。
(3)複合化するスパンボンド不織布の、50%伸長時のCD強度が5N/5cm幅以下である、前記(1)に記載の複合体。
(4)伸縮性層が、エラストマー樹脂を含む長繊維層である、前記(1)〜(3)のいずれか1に記載の複合体。
(5)長繊維層がメルトブロー繊維層である、前記(4)に記載の複合体。
(6)積層一体化が、スパンボンド不織布と伸縮性層を部分的に熱圧着することによって行われている、前記(1)〜(5)のいずれか1に記載の複合体。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、比較的安価であり、肌衣や、防塵マスク、使い捨て紙おむつ等の衛生用品のような製品の材料に最適な、加工が容易で、伸張性、通気性、柔軟性に優れ、肌ざわりのよいシート材料である複合体を提供し、これらの複合体を用いた物品を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に用いるスパンボンド不織布における熱圧着部の微細な折り畳み構造を示す図。
【図2】本発明に用いるスパンボンド原反不織布の熱圧着部パターンの例(碁盤配列)およびそのCD占有率を示す図。
【図3】本発明に用いるスパンボンド原反不織布の熱圧着部パターンの例(碁盤配列をα°回転)およびそのCD占有率を示す図。
【図4】本発明に用いるスパンボンド原反不織布の熱圧着部パターンの例(千鳥配列)およびそのCD占有率を示す図。
【図5】本発明に用いるスパンボンド原反不織布の熱圧着部パターンの例(不規則な形状)およびそのCD占有率を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の複合体に適応可能な優れた低応力伸張性を有するスパンボンド不織布を製造するには、熱圧着部が折り畳み構造を形成する前の原反不織布は、適度なMD乾熱収縮率を保有し、かつ熱圧着部において高融点成分の繊維構造が残存している複合スパンボンド不織布であることが好ましい。この場合、熱圧着部において高融点成分が繊維の形状を保っていれば、低融点成分は熱溶融によって熱圧着部全体にわたって一体化することを妨げない。この原反不織布をMDに加熱延伸することにより(このような延伸が可能な点で原反不織布として複合スパンボンド不織布を用いることが好ましい)、非熱圧着部に存在するランダムに配された複合フィラメントは、MDに沿って配向するように動くが、この反動で不織布はCDの内側に沿って応力がかかり、CDに幅入りしようとする。この時、熱圧着部はMDに沿って伸びようとする応力はかかるが、非熱圧着部のフィラメントのMD配向の方が勝り、熱圧着部は延伸しようとする倍率までは伸びることなく、また破壊されることはない。さらにこの熱圧着部にも同様にCDの内側に沿って応力がかかるが、MDに沿って左程引き伸ばされること無く残っている歪応力は、CDに沿って折り畳み構造を発現しようとする応力解消現象が発生する。さらに且つ、熱圧着部は熱収縮性を保持する高融点成分が繊維状に残存しているため、その収縮機能との相乗効果により容易に微細な折り畳み構造を形成できる。
【0012】
これに対し、原反不織布が単一成分繊維で構成されたスパンボンド不織布であった場合、十分な強度を保持するには、熱圧着部の繊維がほぼ完全に溶融固化した状態にする必要がある。これを用いて延伸しても、非熱圧着部は上記同様に作用するが、熱圧着部は、本発明のような熱圧着部と比較して硬く、十分な折り畳み構造を得ることができない。また、複合スパンボンド不織布原反であっても、熱圧着部の高融点成分までもが溶融固化した状態であっては同様である。
【0013】
本発明の複合体を形成する複合スパンボンド不織布における熱圧着部の微細な折り畳み構造を図1に示す。この熱圧着部の微細な折り畳み構造は、隣り合う折り畳み構造が、接触していても良いし、離れていても良い。隣り合う折り畳み構造の隣り合う山々間あるいは谷々間の距離は、原反不織布の物性や繊維の構成および延伸条件等に依存し、特に不織布の熱圧着部の状態に大きく依存する。本発明が目的とする熱圧着部の折り畳み構造における隣り合う山々間の距離は、100〜400μmであり、特に100〜300μmの範囲が好ましい。隣り合う山々間の距離が100〜400μmの場合、十分な伸長度が得られ、また、必要以上に低目付の原反不織布を使用しなくても得ることができ、熱延伸を均一に行うことが容易で、均質な低応力伸張性を保持することができる。
【0014】
本発明に用いる複合スパンボンド不織布は、CDに沿って極めて低応力での伸張性を有する。その指標は、5%伸長時のCD強度が、0.1N/5cm幅以下、好ましくは0.100N/5cm幅以下、さらに好ましくは0.050N/5cm幅以下であり、特に好ましいのは0.010N/5cm幅以下である。且つ5%伸長時のMD/CD強度比が200以上であり、好ましくは300以上であり、さらに好ましくは400以上である。MD/CD強度比の上限は、CD強度が引張試験機の測定限界(0.001N/5cm)以下となることもあるので、限定する意味はあまりない。しかしながら、MD/CD強度比の上限は、MD強度の最大値が本発明の実施例で100N/5cm程度であることを勘案すると100000程度、MD強度がさらに高くなる(200N/5cm程度が上限と仮定できる)ことを勘案すれば200000程度と試算することができる。本発明の効果をより明らかにするために、50%伸長時のCD強度が5N/5cm幅以下、好ましくは5.000N/5cm幅以下である。さらに好ましくは3.000N/5cm幅以下であり、特に好ましいのは1.000N/5cm幅以下である。下限値は引張試験機の測定限界(0.001N/5cm)である。
【0015】
複合スパンボンド不織布の樹脂成分の組み合わせについて説明する。本発明の不織布は、融点差のある少なくとも2種類の樹脂成分(融点の低い方を低融点成分、融点の高い方を高融点成分とする)からなる複合繊維で構成される。低融点成分と高融点成分の融点差は、10℃以上であることが好ましい。低融点および高融点成分には、例えば、一般的な熱可塑性樹脂であるPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ポリエステル(たとえばPET)、ナイロンを、組み合わせて使用することができる。PEとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンを使用することができる。複合繊維の形態としては、鞘側に低融点成分、芯側に高融点成分を配した鞘芯型複合繊維が挙げられるが、高融点成分の一部が50%以下の表面積で繊維表面に露出する複合形態でも使用することができる。単一成分の場合には、延伸に耐えうるMD強度を持たせるためには、熱圧着加工条件を過酷にする必要があるため、熱圧着部に繊維自体が有する熱収縮性の性質を残存する程度に繊維構造を残すことが出来ず、本発明の不織布を得ることが困難となる。鞘側に高融点、芯側に低融点成分を配した鞘芯型複合繊維の場合も同様である。本発明の複合スパンボンド不織布の具体的な熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、低融点/高融点成分が、PE/PP、PE/ナイロン、PE/PET、PP/ナイロン、PP/PET、ナイロン/PETであるのが好ましく、熱圧着部に繊維自体が有する熱収縮性の性質を残存する程度に繊維構造を残すためには、融点差が大きいほど加工条件の制約が少なく、特に好ましくはPE/PETの組み合わせである。
【0016】
本発明の更なる特徴は、折り畳み構造形成前の原反不織布における熱圧着部の総面積率が7〜60%であることが好ましく、特に、10〜50%であることが好ましい。総面積率が上記範囲であることにより不織布の柔軟性、通気性を損なわず、微細な折り畳み構造を発現するべき熱圧着部の面積を十分に確保することができる。
【0017】
また本発明に用いる原反不織布は、MDに連続して点在する熱圧着部のCD全幅に対する占有率が50%以上であることが好ましい。より好ましくは70%以上である。このMDに連続して点在する熱圧着部のCD全幅に対する占有率(以下「CD占有率」という)について以下説明する。
本発明に用いる原反不織布は、その原反不織布に付与されてなる熱圧着部のパターンによってCD占有率が変化し、本発明の効果に関係する。そこで、まず熱圧着部パターンについて説明する。
【0018】
図2(A)の熱圧着部パターンは、CDに沿った熱圧着部の並びであるCD行とMDに沿った熱圧着部の並びであるMD列が直行する碁盤配列である。各CD行および各MD列は各々等間隔に並んでいる。各CD行の間隔と、各MD列の間隔は同じであっても良く、異なっていても良い。CD占有率は、全ての熱圧着部をCD軸に投影して求めることができる。図2(A)のパターンにおけるCD占有率は、CD軸と各CD行が平行であるため、CD行1行分に配置された熱圧着部の幅(W1〜Wn)の総和がCD全幅に対して占める割合と同等である。
【0019】
図3(A)は図2の熱圧着部パターンを反時計回りにα角(α°)回転させており、各CD行は、実際のCDに対してα°の角度を持っている。この場合の1行分のCD占有率は、図3(B)に示すように、1行における各熱圧着部の幅をCD軸に投影したときのW1〜Wnの総和がCD全幅に対して占める割合である。
【0020】
しかし、このパターンは角度を持っているため、CD行2行分のCD占有率は、図3(C)に示すように2W〜2Wの総和がCD全幅に対して占める割合となる。実質的には、CD行は第1行、第2行、第3行、・・・、と規則的に徐々にずれるので、多数のCD行をCD軸に投影したときのCD占有率は100%となる。
【0021】
図4(A)は熱圧着部のパターンが千鳥配列の例である(このように各CD行の熱圧着部が交互に配列しているパターンを千鳥配列と呼ぶ)。各CD行間および各MD列間の距離は等しいが、各連続する2行および2列単位で熱圧着部が繰り返し配列されている。尚、各CD行の間隔と各MD列の間隔は同じであっても良く、異なっていても良い。図4(A)のパターンにおけるCD占有率はCD軸とCD行が平行であるため、図4(B)に示すように、連続するCD2行分の各熱圧着部の幅をCD軸に投影したときのW〜Wの総和がCD全幅に対して占める割合と同等である。
【0022】
図示していないが、この千鳥配列の場合も図3に示した碁盤目配列と同様にα°回転させても良い。この場合は、連続する2行の単位でCD行が規則的に徐々にずれ、前記同様に多数のCD行をCD軸に投影したときのCD占有率は100%となる。
【0023】
また、図3(A)および図4(A)の各々のCD行とMD列の間隔が同じ場合、CD行とMD列で形成する四角形は正方形になるため、図3(A)を45°傾けると図4(A)と相似パターンになり、逆に図4(A)を45°傾けると図3(A)と相似パターンになる。
【0024】
図5(A)は、熱圧着部の形状と配列が不規則な例である。この場合のCD占有率は、図5(B)に示すように、図5(A)の底辺に近い圧着部から一つひとつ、CD軸に投影したときの各熱圧着部の幅をW1、W2、W3、・・・Wとして、W1〜Wnの総和がCD全幅に対して占める割合である。
また図5(A)のパターンをα°回転しても、元々不規則な配列であるため、CD占有率は前記と同様に求めることができる。
【0025】
さらにまた本発明に用いる原反不織布は、MD乾熱収縮率が3.5〜23%であることが好ましく、特に4〜20%であるのが好ましい。繊維の熱収縮は微細な折り畳み構造の形成を助長する上で重要である。特に、熱圧着部に残存する高融点成分の繊維の収縮率を適当な範囲で保持する必要がある。3.5〜23%の場合、折り畳み構造を容易に形成させることができ、折りたたみの山々間の距離も400μm以下に保つのに十分であり、出来上がった不織布に局所的な引きつりや密集部(だま)が発生するなどの問題を考慮せずに本発明を実施することができる。また、不織布の地合も良好に保たれる。
【0026】
前述のようなMD乾熱収縮率を持った不織布を得るためには、紡糸速度や紡糸温度といった紡糸条件を適切に選択することが重要である。このような紡糸条件は、高融点成分側の結晶化度や分子配向を幾分抑制することによって容易に設定することができる。たとえばPE/PETの組み合わせからなるものでは、紡糸速度を2000〜3000m/分の範囲に、紡糸温度を300〜350℃の範囲に設定することで、MD乾熱収縮率が3.5〜23%の範囲の原反不織布が好適に得られる。
【0027】
前述のような適度な原反不織布を適度に延伸して得られる不織布の幅入りは、延伸後のCD幅が延伸前のCD幅に対して、その比が0.1〜0.7であることが好ましい。より好ましくは0.2〜0.6である。0.1〜0.7の場合、本発明で言う低応力伸張性を十分に保つことができ、上記MD乾熱収縮率の場合と同様に、出来上がった不織布に局所的な引きつりや密集部(だま)が発生するなどの問題を考慮せずに本発明を実施することができる。また、不織布の地合も良好に保たれる。
【0028】
本発明では、原反不織布に熱圧着部を設けるための熱圧着加工条件を特に限定していないが、熱圧着部は高融点成分の繊維構造が残存するような条件に設定することが重要である。熱圧着部において高融点成分が繊維の形状を保てるような加工条件であれば、低融点成分が熱溶融によって熱圧着部全体にわたって一体化しても構わない。高融点成分の繊維構造を保つためには、特に、熱圧着加工時の温度、線圧等の条件を適切に選択することが重要である。このような方法としては公知の方法を利用することができ、この技術分野で一般に使用されている表面に凹凸部を持った熱エンボスロールによる熱圧着方法が代表的なものである。上記のような熱圧着部を設けるための熱エンボスロールの圧着条件(温度、線圧等)は、使用する樹脂の種類に応じて異なるが、熱圧着部の状態を観察しながら実施すれば一般に行われている範囲で容易に設定することができる。
【0029】
たとえばPE/PETまたはPE/PPの組み合わせからなるスパンボンド不織布原反製造時の熱圧着条件は、たとえばキュースター社製エンボスロール/スイミングロール熱圧着機を使用した場合、ロール温度は115〜140℃の範囲、線圧は20〜70N/mmの範囲が望ましい。
【0030】
また本発明では、延伸条件も特に限定するものではない。延伸とは、原反不織布をMDの一方向に延伸するものであり、ロール延伸装置やピンテンター延伸装置が選ばれる。延伸後の不織布幅は、延伸前の原反不織布の幅に比して0.1〜0.7に幅入りするため、幅入りに抵抗が生じない装置であることが望ましい。ロール延伸装置の場合は、送りロールと引っ張りロールとの間隔を調整することによって所定の幅まで幅入りさせることができ、ピンテンター延伸装置の場合は、ピンテンター部が延伸とともに所定の幅まで幅入りできるように調整することができる。
【0031】
さらに、熱圧着部に所定の微細な折り畳み構造を発現させるための温度、倍率等の延伸条件について説明する。
【0032】
ロール延伸の場合の加熱方式は、一般的な加熱ロール方式や、送りロールと引っ張りロールとの間に配した乾燥熱風、スチーム、熱水チャンバー方式、加熱スチームチャンバー方式等の何れでも良く、複数の加熱方式を組み合わせても良い。ピンテンター延伸の場合の加熱方式は、乾燥熱風、遠赤外加熱方式等が選ばれる。
【0033】
延伸温度は、原反不織布を構成している鞘側である低融点成分が溶融せず、低融点成分および高融点成分が可塑化し、適度な熱収縮を発揮する温度で延伸することが望ましい。たとえばPE/PETの組み合わせからなるものでは、低融点成分であるPEの可塑化温度と溶融温度、および高融点成分であるPETの可塑化温度等の兼ね合いから50〜120℃が好ましく、延伸性の確保と不織布の風合いや低応力伸長性等の物性の安定化を図る上から、より好ましくは80〜100℃の範囲である。
【0034】
延伸倍率は、非熱圧着部の複合繊維がMDに沿って配向し、さらに引き伸ばされても破断せず、かつ原反不織布の熱圧着部が破壊しない適切な倍率に設定することが望ましい。本発明で言う熱圧着部に微細な折り畳み構造を得るためには、破断、破壊が起こらない範囲で延伸倍率を高く設定するほど、CDに沿ってかかる反作用応力が大きくなり、効果的である。たとえばPE/PETの組み合わせからなるものでは、その原反不織布の圧着面積率、繊維径、目付、さらには延伸温度等で異なるが、1.3〜2.0倍の範囲が選ばれる。
【0035】
本発明に用いる伸縮性層は、エラストマー樹脂で構成された繊維またはエラストマー樹脂を含む複合体からなるウェブ、不織布、フィルム、および積層物の構造的特徴から伸縮性能を有するもの、例えば捲縮繊維からなるウェブ、乾式不織布,スパンレース不織布、網目状織物,及び編み物等が例示できる。中でもエラストマー樹脂で構成された繊維またはエラストマー樹脂を含む複合体を原料としたスパンボンド繊維、メルトブロー繊維で構成された繊維層およびフィルムが高い伸縮性能を発揮しやすい。伸縮性層は、80%伸長時の伸長回復率が60%以上であるのが、積層体の伸縮性を良好にする点で好ましく、特に75%以上であるのが好ましい。伸縮性層は、エラストマー樹脂を構成成分として含んでいるのが好ましく、伸縮性層の重量基準で20重量%以上であるのが好ましい。伸縮性層が、繊維層である場合、伸長回復率が良好となる点で、構成繊維が長繊維であることが好ましく、スパンボンド繊維やフラッシュ繊維、メルトブロー繊維、エレクトロスピニング繊維などを例示できるが、繊維製造の難度や経済性の点でメルトブロー繊維であるのが好ましい。繊維の形態は、単一成分繊維であってもよいし、2成分以上の樹脂成分を含む混合樹脂からなる繊維であってもよいし、2成分以上の樹脂成分が、繊維断面のそれぞれ一部を形成する複合繊維であってもよい。複合繊維の複合形態は制限されず、鞘芯型や偏心鞘芯型、並列型、パイセグメント、中空鞘芯型、中空偏心鞘芯型、中空並列型、中空パイセグメントなどが例示できる。また、これらの繊維が混合(混繊)されていてもよい。
【0036】
エラストマー樹脂としては、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。中でも、リサイクル可能の点からポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーが好ましい。
伸縮性層が、エラストマー樹脂を含む繊維で構成される場合、エラストマー樹脂が、斯かる伸縮性層の重量基準で、20重量%以上を占めているのが好ましく、50重量%以上であるのが更に好ましい。エラストマー樹脂以外の樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン系共重合体、ポリエチレン系共重合体、ポリエステル系共重合体等の非エラストマー樹脂が例示できる。これらの非エラストマー樹脂は、エラストマー樹脂との樹脂混合、複合繊維を構成する複合成分として、或いは、混合繊維中の1繊維を構成する樹脂成分として、繊維中に包含されうる。特に、エラストマー繊維と非エラストマー繊維が混合された混繊の形態をとることで、それぞれの繊維の混合量や、繊維径を調整することなどにより、風合いや伸縮性を所望に調整することが可能となる。また、異なるエラストマー樹脂同士の混繊とすることで、より伸縮性の高いレベルで、風合いや伸縮性の調整が可能となる。これら異なるエラストマー樹脂同士の組み合わせとして、例えば、ポリスチレンエラストマーと別のポリスチレンエラストマー、ポリスチレンエラストマーとポリオレフィンエラストマー、ポリスチレンエラストマーとポリエステルエラストマー、ポリスチレンエラストマーとポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマーとポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマーと別のポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンエラストマーとポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマーとポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマーとポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーと別のポリエステルエラストマー、ポリエステルエラストマーとポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーとポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマーと別のポリアミドエラストマー、ポリアミドエラストマーとポリウレタンエラストマー、ポリウレタンエラストマーと別のポリウレタンエラストマーを挙げることができる。
【0037】
本発明の複合体では、少なくとも1つの複合スパンボンド不織布と、少なくとも1つの伸縮性層が積層一体化されている。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに別の層が積層されていてもよい。それぞれの層は、交互に積層されていても良いし、任意の順序で積層されていてもよい。伸縮性層を中間層とし、複合体の両表面層を複合スパンボンド不織布が形成する形態も、本発明の複合体の好ましい形態の一つである。
積層一体化(複合化)の方法は、特に限定されないが、押圧法、熱圧着法、熱風貫通法、超音波法、糊着法およびホットメルト樹脂固着法等が挙げられる。本発明の低応力伸張性や伸縮性を有効に発揮するには、特に、複合スパンボンド不織布の折り畳み構造部にできるだけダメージを与えない方法が良く、部分的な熱圧着、超音波接着およびホットメルト接着等が望ましい。
柔軟性を得やすい事や比較的安価に製造しうる点で、部分的な熱圧着を行うことが好ましい。部分的な熱圧着を行う条件としては、以下のような条件を採用することが好ましい。温度の選定は、使用する素材によって選択するが、伸縮性層と複合スパンボンド不織布が容易に剥離せず本発明の複合体を繰り返し伸長回復してもその部分的な熱圧着が破壊されないようにすることが好ましい。部分的熱圧着時の押圧は、10〜100N/mmの範囲が好ましい。圧着面積率は、4〜12%が好ましい。部分的熱圧着部のCDのピッチは、本発明の複合体の部分的な熱圧着部をCDに投影したときの隣り合う熱圧着部間距離が0.6mm以上であることが好ましい。MD方向のピッチは、特別に制限するものではない。形状は、特に限定するものではないが、真円や楕円、真四角、長方形、ラウンド処理した長方形などを例示することができる。複合化時に行う熱圧着は、スパンボンド不織布について行う熱圧着に対して、その熱圧着部が完全に一致するパターンを選択しない限り、なんら特に制限されることはないが、熱圧着部が一致しないほど好ましい。
また、伸縮性層として、メルトブロー不織布を使用する場合は、メルトブロー不織布の生産工程の中で、直接、エラストマー樹脂等を用いて得られたメルトブロー繊維を本発明の複合スパンボンド不織布に積層することでも一体化可能である。 本発明の複合体は、複合後、少なくとも一方向に延伸されていてもよい。斯かる延伸によって、複合スパンボンド不織布と伸縮性層との熱圧着点間で、複合スパンボンド不織布が、伸縮性層の伸長回復性に追随できずに、複合スパンボンド不織布の表面側に凸状に突き出た表面構造を形成することもできる。斯かる構造を有することによって、厚み感が向上し、より布に近い感触となり、また意匠性が優れる点で好ましいものとなる。
【0038】
本発明の製造設備は、原反不織布製造ラインおよび不織布延伸ラインからなり、また積層ラインを含む場合がある。これらのラインは各々個別のラインいわゆるオフラインとしても良く、全てが一貫して配置されたラインいわゆるインラインとしても良い。また、二つのラインをインライン、一つをオフラインとしても良い。
【0039】
尚、本発明に用いる複合スパンボンド不織布の特徴は、5%伸長時のMD強度を原反不織布からほとんど変化させることなく維持しているため、積層体や物品の加工において、MDに沿って繰出し搬送すれば、CDに沿って形成している微細な折り畳み構造を破壊することなく取り扱うことが可能である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例によって本発明をさらに説明する。
なお、実施例及び比較例の測定法、評価方法は下記の通りである。
(1)5%伸張時の引張強度
JIS L 1906「一般長繊維不織布試験方法」の引張強さ試験方法に準拠し、オートグラフ装置(引張試験機)を使用して、試験片のつかみ長100mmに対し、5mm引っ張ったときの強度をMD及びCDについて測定した。
(2)50%伸張時の引張強度
試験片を50mm引っ張った以外は、前記5%伸張時の引張強度と同じ方法で測定した。
(3)乾熱収縮率
JIS L 1906「一般長繊維不織布試験方法」の乾熱収縮率試験方法に準拠し、MDの収縮率を求めた。
(4)熱圧着部における微細な折り畳み構造の隣り合う山々間の距離
KEYENCE社製デジタルマイクロスコープ VHX−900を使用し、不織布から無作為に選択した20個の熱接着点を200倍に拡大して撮影し、それら20個の熱接着点における隣り合う山々間の距離をそれぞれ計測してそれらの平均値を求めた。
【0041】
(実施例1)
鞘側に融点129℃、密度0.958g/cm3、190℃で測定したメルトマスフローレート38dg/minの高密度ポリエチレン、芯側に固有粘度0.640、融点254℃のポリエステルを配し、速度2075m/min、紡糸温度がポリエチレン240℃、ポリエステル320℃で紡糸し、線圧45N/mm、温度125℃で熱圧着加工した、CD幅1100mm、目付17g/m2の複合スパンボンド不織布を準備した。この不織布は、熱圧着部の総面積率が不織布の21%、CD占有率が90%であった。この複合スパンボンド不織布を、約20m/minのスピードで、加熱ロール間にスチームチャンバーを配した装置を通して、MD方向に1.5倍に延伸した。この時のロール及びスチーム温度は100℃であった。幅572mm、目付32g/m2であった。この複合スパンボンド不織布は、柔軟で、極めてCD伸張性に富んだものであった。その物性は下記の通りであった。
【0042】
・熱圧着部における微細な折り畳み構造の隣り合う山々間の距離
233μm
・5%伸張時の引張強度
MD:42.8N/5cm
CD:0.089N/5cm
MD/CD比 :481
・50%伸張時の引張強度
MD:破断
CD:2.89N/5cm
・CD幅の比
延伸後/延伸前 :0.52
この結果から、得られた不織布は、熱圧着部に微細な折り畳み構造が発現し、原反不織布と比較して、CD方向の5%及び50%伸張時の引張強度が大幅に低下し、低応力伸張性が得られていることが分かる。
【0043】
この熱圧着部に微細な折り畳み構造が発現している複合スパンボンド不織布の上に、混繊用紡糸ノズルを使用して、水添スチレン系熱可塑性エラストマーであるスチレンエラストマー(旭化成ケミカルズ社製タフテックH1031)からなる繊維と、エチレン−オクテンランダムコポリマーであるポリエチレンエラストマー(ダウ・ケミカル社製Engage8402)からなる繊維を混繊したメルトブロー不織布を紡糸すると共に不織布化し、複合スパンボンド不織布と混繊メルトブロー不織布の複合体とした。H1031を用いた繊維の平均直径は10μm、Engage8402を用いた繊維の平均直径は11μm、混繊率は重量比で各々50%であり、この混繊メルトブロー不織布の目付は29gsmであった。混繊メルトブロー不織布の紡糸温度は250℃とし、熱風温度400℃とし、熱風圧力を調整して製造した。
さらに、この複合スパンボンド不織布と混繊メルトブロー不織布の複合体の混繊メルトブロー不織布側に、さらに、上記熱圧着部に微細な折り畳み構造が発現した複合スパンボンド不織布を積層し、115℃でエンボス処理して複合スパンボンド不織布と混繊メルトブロー不織布と複合スパンボンド不織布からなる3層の複合体とした。なお、エンボスロールは、φ0.65mmの突起が、MD方向に2.8mm、CD方向に2.84mmのピッチで千鳥配列した面積率8.3%の彫刻柄を用いた。複合スパンボンド不織布と混繊メルトブロー不織布と複合スパンボンド不織布からなる3層の複合体の目付は、93gsmであった。その物性は下記の通りであった。
【0044】
・80%伸長時のCD引張強度
9.55N/5cm
・80%伸長後の伸長回復率
72%
【0045】
なお、80%伸長後の回復率は、オートグラフ装置(引張試験機)を使用して試験片のつかみ長100mmに対し、80mm伸長した後に100mmのつかみ長に戻す際、応力がゼロになる点を読み取り算出した。
また、伸長後の複合スパンボンド不織布と混繊メルトブロー不織布と複合スパンボンド不織布からなる3層の複合体の表面には積層時のエンボス点を凹部とした凸状に突き出た表面構造を形成し、意匠性に優れかつ布の様な肌触りを示した。
【0046】
(参考例1)
線圧25N/mmで熱圧着加工した以外は、実施例1と同様にして、原反不織布を作成し、延伸して幅274mm、目付56g/m2の不織布を得た。その物性は下記の通りであった。
・熱圧着部における微細な折り畳み構造の隣り合う山々間の距離
108μm
・5%伸張時の引張強度
MD:97.6N/5cm
CD:0.002N/5cm
MD/CD比 :48800
・50%伸張時の引張強度
MD:破断
CD:0.006N/5cm
・CD幅の比
延伸後/延伸前 :0.25
【0047】
(参考例2)
鞘側に実施例1で使用したポリエチレン、芯側に融点162℃、密度0.961g/cm3、230℃で測定したメルトマスフローレート42dg/minのポリプロピレンを配し、温度240℃で紡糸し、線圧60N/mm、温度135℃で熱圧着加工した以外は、実施例1と同様にして、原反不織布を作成し、延伸して幅318mm、目付38g/m2の不織布を得た。その物性は下記の通りであった。
・熱圧着部における微細な折り畳み構造の隣り合う山々間の距離
243μm
・5%伸張時の引張強度
MD:19.1N/5cm
CD:0.084N/5cm
MD/CD比 :227
・50%伸張時の引張強度
MD:破断
CD:4.33N/5cm
・CD幅の比
延伸後/延伸前 :0.51
【0048】
(参考例3)
熱圧着部の総面積率が不織布の10%、CD占有率が54%である以外は、実施例1と同様にして、原反不織布を作成し、延伸して幅421mm、目付28g/m2の不織布を得た。その物性は下記の通りであった。
・熱圧着部における微細な折り畳み構造の隣り合う山々間の距離
122μm
・5%伸張時の引張強度
MD:13.5N/5cm
CD:0.002N/5cm
MD/CD比 :6750
・50%伸張時の引張強度
MD:破断
CD:0.016N/5cm
・CD幅の比
延伸後/延伸前 :0.57
【0049】
(参考例4)
熱圧着部の総面積率が不織布の47%、CD占有率が100%である以外は、実施例1と同様にして、原反不織布を作成し、延伸して幅205mm、目付32g/m2の不織布を得た。その物性は下記の通りであった。
・熱圧着部における微細な折り畳み構造の隣り合う山々間の距離
136μm
・5%伸張時の引張強度
MD:69.1N/5cm
CD:0.003N/5cm
MD/CD比 :23033
・50%伸張時の引張強度
MD:破断
CD:0.133N/5cm
・CD幅の比
延伸後/延伸前 :0.28
(比較例1)
実施例1で用いた、熱圧着部に微細な折り畳み構造が発現してなる複合スパンボンド不織布の単層を比較例1とし、この80%伸長時のCD引張強度と80%伸長後の伸長回復率を評価した。その物性は下記の通りであった。
・80%伸長時のCD引張強度
2.48N/5cm
・80%伸長後の伸長回復率
51%
このように、延伸した複合スパンボンド不織布だけでは、低応力で高伸長ではあるものの、伸長後の回復性はあまり優れていないが、この延伸した複合スパンボンド不織布に伸縮層を積層することで、優れた伸長回復率を発揮し、また、伸長後の意匠性や肌触りに優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明で用いる複合スパンボンド不織布は、伸張性、柔軟性に優れているため、伸縮性のある伸縮性層と積層することにより、使い捨てオムツ用伸縮性部材、オムツ用伸縮性部材、生理用品用伸縮性部材、オムツカバー用伸縮性部材等の衛生材料の伸縮性部材、伸縮性テープ、絆創膏、衣服用伸縮性部材、衣料用芯地、衣料用絶縁材や保温材、防護服、帽子、マスク、手袋、サポーター、伸縮性包帯、湿布材の基布、プラスター材の基布、スベリ止め基布、振動吸収材、指サック、クリーンルーム用エアフィルター、血液フィルター、油水分離フィルター等の各種フィルター、エレクトレット加工をほどこしたエレクトレットフィルター、セパレーター、断熱材、コーヒーバッグ、食品包装材料、自動車用天井表皮材、防音材、基材、クッション材、スピーカー防塵材、エア・クリーナー材、インシュレーター表皮、バッキング材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材、複写機のクリーニング材等の各種クリーニング材、カーペットの表材・裏材、農業捲布、木材ドレーン材、スポーツシューズ表皮等の靴用部材、カバン用部材、工業用シール材、ワイピング材、シーツ等の物品に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合スパンボンド不織布と伸縮性層が積層一体化された複合体であって、複合スパンボンド不織布が、融点差のある少なくとも2種類の樹脂成分(融点の低い方を低融点成分、融点の高い方を高融点成分とする)からなる複合繊維で構成され、複合繊維同士が部分的に熱圧着され、且つ熱圧着部がCD(不織布製造時の幅方向)に沿って山部と谷部が繰り返された微細な折り畳み構造を有し、前記折り畳み構造の隣り合う山部同士の距離の平均値が100〜400μmの範囲であって、その微細な折り畳み構造を伸展することによって伸張性を発現することを特徴とする、複合体。
【請求項2】
複合化するスパンボンド不織布の、5%伸長時のCD強度が0.1N/5cm幅以下であり、5%伸長時のMD/CD強度比(「不織布製造時長手方向/同幅方向」の強度比)が200以上である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
複合化するスパンボンド不織布の、50%伸長時のCD強度が5N/5cm幅以下である、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
伸縮性層が、エラストマー樹脂を含む長繊維層である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項5】
長繊維層がメルトブロー繊維層である、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
積層一体化が、スパンボンド不織布と伸縮性層を部分的に熱圧着することによって行われている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231444(P2011−231444A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76032(P2011−76032)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(399120660)JNCファイバーズ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】