説明

伸張性電極の製造方法

本発明は、電気導電性カーボン粒子、特にカーボンナノチューブを、エラストマーを含む被覆物中へ導入する伸張性電極を製造するための方法に関する。前記方法では、≧0.3nm〜≦3000nmの範囲の平均粒径を有する非凝集化カーボン粒子の溶媒中における調製物を、エラストマーを含む被覆物上へ作用させる。作用の時間は、エラストマーを溶解させるのに十分ではないように計算される。必要に応じて、他の電気導電性層を適用する。また、本発明は、前記方法により得られる伸張性電極、およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸張性電極の製造方法に関する。本発明では、電気伝導性カーボン粒子を、エラストマーを含む表面層中へ導入する。これらの炭素粒子は、とりわけカーボンナノチューブであってよい。さらに、本発明は、本発明により得られる伸張性電極および該電極の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)は、その驚くべき特性について知られている。従って、例えばその強度は、鋼の約100倍であり、その熱伝導性は、ダイヤモンドの約2倍であり、その熱安定性は、減圧下で2800℃まで拡大され、およびその電気伝導性は、銅の伝導性の数倍であり得る。しかしながら、これらの構造関連の特性は、カーボンナノチューブを均質に首尾良く分散することができ、該チューブと媒体との間の極めて広い接触面積を確立することができる場合、すなわちナノチューブが媒体と相溶性であり、従って安定に分散することができる場合にのみ分子レベルで得られる。電気伝導性については、任意の均質なチューブのネットワークを形成することも必要とされ、これらは理想的な場合に末端において互いに接触する。ここでは、カーボンナノチューブは、理想的には、分離した個々のナノチューブ、すなわち、凝集物不含として存在し、整列せず、および上記ネットワークを形成することができる、カーボンナノチューブの濃度に応じて電気伝導性の段階的増加に反映される濃度において存在するべきである(浸透限界)。
【0003】
伝導性が、機械応力下で、変化する場合でもほんの僅かにのみ変化する電気伝導性材料は、例えば、標語「知的衣料品」の下、軟質表示要素、伸張性電気回路、インプラント、プロテーゼ、微小電気機械システム(MEMS)および誘電エラストマー作動装置に用いることができる。このような用途では、機械伸長は、5%未満〜200%を越える範囲である。
【0004】
伸長性電極を製造するために従来行われた取り組みは、要求される機械応力および引き続きの電気伝導性材料による処理に耐えるエラストマーの選択に限られる。該材料は、例えば液体マトリックスに組み込まれ、およびエラストマー表面上へ塗布される導電性カーボンブラックまたは金属粉末であってよい。溶媒の蒸発後、導電性材料の薄層が電極上に残る。種々の方法の議論は、S.R.Ghaffarian等による出版物、Journal of Optoelectronics and Advanced Materials 2007、第9巻、第3585頁〜第3591頁に見出し得る。
【0005】
上記方法に関する問題は自明である。電極は、機械応力により劣化することがあり、担体エラストマーと比べて基本的に異なった機械伸長性を有する。その異なった機械伸長性により、より早期に機械応力下で断裂するあまり弾性ではない電極がもたらされる。このようなクラックは、伝導性の破壊を表し、このような伸張性2層電極の機能の損失を全体にもたらすことがある。電気伝導性材料を予備伸張エラストマーへ塗布する変法は、数パーセントの電極の伸びを、伝導性を損なわない予備伸張の範囲で得ることを可能とするが、エラストマーの導電性銀のような電極材料による被覆は、E弾性率の望ましくない上昇を引き起こし、伸張性電極の機械特性の低下をもたらす。これは、用途および材料に応じて、許容差範囲を越える担体エラストマーの硬化を、電極材料の浸透限界に達する前でさえもたらすことがある。
【0006】
より最近の研究では、E.Smela等は、出版物において、Advanced Materials 2007、第19巻、第2629〜2633頁において、例えば伸張性電極は、金属塩と放射線硬化性電極前駆体化合物との混合、硬化および還元溶液による還元により得られることを報告している。
【0007】
例えば材料をその使用により電気伝導性とする場合、2つの局面が、カーボンナノチューブの首尾良い処理のために考慮されなければならない:カーボンナノチューブ凝集体の完全な崩壊および脱結束(EntBuendeln)およびカーボンナノチューブの強い傾向の再凝集の抑制(エージング工程中または完成材料を与える上記分散体の処理中に1つの同じ媒体中において)。このカーボンナノチューブの処理に関する困難さは、カーボンナノチューブ表面の疎水特性およびこの疑似1次元構造の高アスペクト比に起因する。
【0008】
カーボンナノチューブは、最小エネルギーを、結束および/または凝集体の形態で別の配置に見出すことが妨げられる場合、周囲の媒体との相溶性が増加されなければならない。ここで、カーボンナノチューブの共有結合的化学官能基化により、ポリマー媒体との相溶性を現実に向上させることができることに注目すべきである。これは、例えば向上した(熱)長期安定性および再凝集の欠如に反映される。しかしながら、この表面変性はまた、チューブの非局在化π電子系を中断し、従って官能基化度に応じてそれぞれ個々のチューブの電気伝導性を低下させる。
【0009】
例えば添加剤の分散によるカーボンナノチューブの非共有結合的官能基化は、共有結合的化学変性に対する代替法を示し、媒体と相溶性であるチューブを製造する。しかしながら、この取り組みは、それぞれの新しい媒体についてそれぞれの分散性添加剤の化学的性質および濃度について新しい最適化を、それがエラストマー原料またはエラストマー処方物であるか否かに拘わらず必要とし、および普遍的溶液を提供することができないことが考慮されなければならない。
【0010】
最後に、カーボンナノチューブを含むフィラーの任意の処理性は、新規な特性、例えば電気伝導性を恐らく達成することができるが、同時に他の、例えば機械的な多くの特性を悪化させ得る危険性をも発生させることに注目すべきである。このことは、カーボンナノチューブを圧縮および/または弾性未発泡系へ組み込む場合に特に重要である。分散中に完全に細分化することができなかった残存凝集体は、例えば圧縮成型部品中に選択的破断点を示す。機械特性、例えば衝撃靱性および破断強度等は、上記凝集体により低下することがある。先行技術によれば、圧縮材料を、カーボンナノチューブの添加により電気伝導性とすることは、浸透限界を越え、同時に残存凝集体を存在させないように、材料の全容積にわたって均質に分散されるカーボンナノチューブを必要とする。
【0011】
この手順は、必要なカーボンナノチューブ濃度による浸透限界を超えるために要求される動的粘度上昇により失敗することが極めて多い。さらに、エラストマー処理中に均質に分散されたカーボンナノチューブの再凝集は、この方法により除外することができず、容易に防ぐことができない。
【0012】
カーボンナノチューブを(熱可塑性)ポリウレタン中へ組み込むことの主題について、該文献は、まず完成ポリマーを有機溶媒中に完全に溶解させ、次いでナノチューブをこのポリマー溶液中へ分散させ、ポリウレタン/溶媒に基づく得られるナノチューブ分散体を塗布してフィルムを形成するか、または金型中へ注入する多くの研究を含む。この方法では、最後の工程は常に、時間のかかる多量の溶媒の蒸発である。
【0013】
可能な代替法は、ポリマーマトリックス全体だけでなく、表面を粒子と直接隣接させる材料層をも提供する。このような方法は、溶媒消費、上昇粘度およびポリマーマトリックスの力学への悪影響の上記欠点を防ぐために望ましい。
【0014】
WO2008/150867A2は、粒子を基材に埋め込むための方法を開示する。この方法では、少なくとも1つの特性寸法を約0.1nmから約1cmの範囲で有する粒子の母集団を有する流体を、基材の少なくとも一部へ塗布する。塗布は、基材を、多くの粒子を基材の軟化領域に少なくとも部分的に組み込む程度に軟化するように行う。次いで基材の少なくとも1部を、少なくとも1つの粒子を基材にしっかりと組み込むように硬化する。加熱は、粒子の組み込みを補助することができることが記載される。カーボンナノチューブのようなカーボン粒子のエラストマー中の組み込みは、特に記載されない。この特許出願における実施例は、銀ナノ粒子のポリ塩化ビニル中での組み込みに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2008/150867号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】S.R.Ghaffarian、「Journal of Optoelectronics and Advanced Materials 2007」、第9巻、第3585頁〜第3591頁
【非特許文献2】E.Smela、「Advanced Materials 2007」、第19巻、第2629〜2633頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
その結果、エラストマー表面中へ組み込まれた導電性カーボン粒子を有する伸張性電極を製造するための向上した方法についての必要性が引き続き存在する。また、電気伝導性を、繰り返される伸長および脱応力により完全に失わない官能基化エラストマー表面についての製造方法を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明は、以下の工程:
(A)≧−130℃〜≦0℃のガラス転移温度Tを有し、応力σが伸びの増加を伴って減少しないエラストマーの供給、
(B)前記エラストマーの表面層の膨潤を引き起こすことができる溶媒中における≧0.3nm〜≦3000nmの平均粒径を有する非凝集化カーボン粒子の調製物の供給、
(C)前記エラストマーの表面層とカーボン粒子の調製物とを接触させる工程、
(D)前記カーボン粒子の調製物を、エラストマーの表面層上へ、エラストマーが溶液中へ入り込むのに不十分な時間、作用させる工程、および
(E)前記カーボン粒子の調製物のエラストマーの表面層上への作用を終了する工程
を含む、電気伝導性カーボン粒子を含む表面層を有する伸張性電極を製造するための方法を提案する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、多層構造を有する電極配置を示す。
【図2−4】図2、3および4は、伸張中の伝導性測定を種々の試料について示す。
【図5a−7b】図5a、5b、6a、6b、7aおよび7bは、種々のエラストマー試料の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、電気伝導性粒子は、本発明の目的のために、絶縁体ではない物質から構成される全ての粒子である。10−8S/m未満の電気伝導性を有する物質は、典型的には、絶縁体と称される。該粒子は、エラストマーを含む表面層中へ導入されるが、これは、必ずしも表面自体に粒子を付与するだけでなく、表面の真下にある物質もまた、粒子を取り込むことを意味する。その結果、用語表面層は、本発明の目的のために用いられるように、2次元表面とは対照的に、表面を境界の1つとして有する物質の3次元層を意味する。表面層は、少なくとも上記電気伝導性粒子を含有する点で、関連する物体の内部と区別される。
【0021】
工程(A)では、エラストマーを供給する。本発明の目的のために、エラストマーは、安定性形状を有するが、弾性的に変形することができるポリマーである。本発明によれば、エラストマーは、≧130℃〜≦0℃のガラス転移温度Tを有する。ガラス転移温度は、標準DIN EN ISO 6721−1に従って決定してよいが、≧−80℃〜≦−10℃または≧−78℃〜≦−30℃の範囲であってもよい。さらに、本発明は、伸びの増加を伴って減少しないエラストマーにおける応力σを付与する。これは、目的とする電極の使用温度における応力σの挙動のことである。これは、電極の目的とする使用温度における応力σの挙動を参照する。とりわけ、これは、応力−歪みグラフにおいて、応力σについての曲線が極大を有さないことを意味する。すなわち、エラストマーは、応力−歪み曲線において降伏点を示さない。特に適当なエラストマーは、降伏点を応力−歪み曲線に示さずに伸びの増加を伴って徐々に増加する応力σを有する。好ましいのは、エラストマーにおける伸びの増加を伴って減少しない応力σである。
【0022】
適当なエラストマーは、≧20〜≦100のISO 868に従うショアA硬度を有することができるが、これに制限されない。ポリマーは、引張応力および圧縮応力下で弾性的に変形し、および≧10kPa〜≦60MPaの範囲でのDIN53504に従う引張強度を有することができる。応力を与えた後、これらは、その元の未変形形状にほぼ復元する。良好なエラストマーは、長期間の機械荷重下で、ほんの僅かな残存伸びだけを示し、クリープをほとんど示さない。DIN EN 10291に従うクリープ傾向は、好ましくは≦20%、より好ましくは≦5%である。
【0023】
工程(B)は、非凝集化粒子の調製物の供給を含む。これは、粒子が分離した個々の粒子として溶媒中に存在するかまたは調製物が安定性となる低い凝集度を少なくとも有することを意味する。安定性調製物では、カーボン粒子の軟凝集または沈殿が、室温において少なくとも1日、好ましくは1週間または4週間の貯蔵中に起こらない。このような調製物を製造するために、存在するカーボン粒子の凝集体は、エネルギーの入力により、例えば超音波、製粉プロセスまたは高剪断力により細分化することができる。最後に、溶媒は、カーボン粒子の調製物を製造し、エラストマー表面を膨潤することができるように選択する。
【0024】
平均粒径は、≧1nm〜≦1000nm、または≧3nm〜≦100nmの範囲であってよい。例えば、走査型電子顕微鏡法または動的光散乱法により決定することができる。
【0025】
溶媒は、水性溶媒または非水性溶媒であってよい。非水性溶媒の場合には、好ましいのは、非プロトン性極性溶媒である。このように、溶媒は、エラストマー中における軟質セグメントドメインと容易に相互作用することができる。用語「非水性」は、更なる水を溶媒に添加しないことを意味するが、工業的に避けられない微量、例えば≦5重量%、好ましくは≦3重量%、より好ましくは1重量%の水を含む。
【0026】
溶媒が水性溶媒である場合には、カーボン粒子は、脱凝集化され、界面活性剤または表面活性物質の添加により懸濁液中に保つことができる。
【0027】
カーボン粒子は、例えば≧0.01重量%〜≦20重量%、0.1重量%〜≦15重量%または≧0.04重量%〜5重量%の濃度で溶媒中に存在させることができる。
【0028】
エラストマーを含む表面層とカーボン粒子の調製物との工程C)における接触は、エラストマーの表面上で自然に行われる。
【0029】
引き続きの工程D)では、カーボン粒子の調製物は、表面層上で作用させる。理論に縛られることなく、エラストマーの表面は、溶媒により膨潤し、細孔が表面層に形成され、およびカーボン粒子は、これらの細孔中へ移行することができると想定される。水性溶媒または水含有溶媒の場合には、エラストマーの膨潤は、親水性ドメインがポリマー中に存在する場合に促進される。該粒子は、例えば表面層中へ≦10μm、≦1μmまたは≦0.3μmの深度にまで浸透することができる。
【0030】
カーボン粒子の調製物が表面層上で作用する時間は、表面層のエラストマーが溶液中へ入り込まないように選択する。本発明では、≦1重量%、≦0.1重量%または≦0.01重量%のエラストマーが溶液中へ入り込む、工業的に避けられない溶解工程が含まれる。しかしながら、本発明の方法は、ポリマーがまず均質に溶解し、次いで完成粒子が、マトリックス中でナノ粒子を有するポリマーの溶液からの溶媒の除去により得られる方法ではない。むしろ、カーボン粒子の調製物が作用する時間は、ポリマー表面の膨潤が起こり得るように選択する。作用の適当な時間の例は、≧1秒〜≦360分、好ましくは≧1分〜≦90分、より好ましくは≧3分〜≦10分である。
【0031】
最後に、工程(E)は、カーボン粒子の調製物の表面層上での作用の終わりを含む。従って、カーボン粒子の調製物を、表面層から再び分離する。次いで表面層を洗い流して接着性調製物を除去する。とりわけ、これは、変性すべき表面層を有するエラストマー物体を浸漬槽から取り出すことにより行うことができる。
【0032】
工程(E)の後に、有利には、膨潤表面層に存在する溶媒を除去する乾燥工程を行うが、これにより、エラストマー中の細孔を閉じ、カーボン粒子をポリマー中に封入する。
【0033】
本発明の方法は、エラストマー物体の表面層に電気伝導性表面を、目的の方法により、伸張性電極を製造するために付与することを可能とする。また、本発明に従って選択される方法により官能基化されるエラストマーにより、電極は、繰り返し応力に適している。本発明の方法では、該物体の形状は、溶解により破壊されず、完成成形部品を処理することもできる。粒子は、物体の表面に近い領域に集中するので、より少ない全体の量が、電気伝導性エラストマー表面を得るために要求される。最後に、溶解系法に対して、必ずしも、多量の溶媒を、完成変性ポリマーを得るために除去する必要はない。また、カーボン粒子の濃度を、工業的に避けられない粘度の上昇が起こらない範囲で保つことも可能である。
【0034】
伸張性電極を製造するための本発明の方法の更なる有利な態様は、静電粉体被覆法により表面被覆する、または電気めっきするエラストマー成形品の処理である。本発明では、電気伝導性粒子は、表面層において、向上した静電粉体塗布を確保する。更なる使用は、電気泳動被覆物の製造のためのエラストマー成形品の処理に関する。導電性電極材料または弾性コンデンサーを得ることも可能である。さらに、電子部品またはケーブル被覆に、帯電防止被覆物を付与することができる。
【0035】
本発明の方法の1つの実施態様では、該方法は、以下の工程を更に含む:
(F)工程(B)〜(E)において得られる電気伝導性カーボン粒子を含む表面層への付加的な電気伝導性層の適用、ここで、得られる付加的な電気伝導性層は、断裂する前に表面層の伸びにより破壊または断裂する。
【0036】
工程(F)における更なる電気伝導性層は、例えば導電性表面被覆物、導電性ペースト、金属層または電気伝導性ポリマーの層であってよい。金属の例は、金、銀、銅および/または錫である。電気伝導性ポリマーの例は、ポリチオフェン、特にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であり、これは通常PEDOTまたはPEDTと称される。金属は、例えば気相からの化学蒸着、気相からの物理蒸着またはスパッタ法により適用することができる。本発明では、好ましいのは、金のスパッタ法である。電気伝導性ポリマーの適用は、ポリマー溶液を用いて行い、次いで溶媒の蒸発を行うことができる。付加的な層のためのさらに可能性のある物質は、インジウム−錫酸化物(ITO)、フッ素ドープト酸化錫(IV)、アルミニウムドープト酸化亜鉛(AZO)および/またはアンチモンドープト酸化錫(IV)(ATO)である。
【0037】
付加的な電気層は、≧10nm〜≦10μmまたは≧20nm〜≦1μmの厚みを有することができるが、これに制限されない。
【0038】
付加的な電気伝導性層の材料は、付加的な層が表面層の伸びにより破壊または断裂するように選択する。本発明では、系全体の電気伝導性は、破壊または断裂した被覆物とカーボン粒子を含む表面層との接触により突然破壊されないが、その代わり、特定の程度に維持されることが利点である。この挙動は、エラストマーが繰り返される伸びおよび脱応力へ曝され、電気伝導性が時間全体にわたって要求される場合に特に有利である。
【0039】
本発明の方法の好ましい実施態様では、カーボン粒子のエラストマーの表面層上での作用は、工程(D)において、超音波および/または熱を用いて行う。超音波および/または加熱により引き起こされるエネルギー入力は、粒子凝集体の形成に対抗し、従って、溶液中により高い粒子濃度を得ることを可能とする。さらに、粒子のエラストマー表面層への導入を促進させる。超音波の場合、周波数は、有利には≧20kHz〜≦20MHzであり、これとは独立して、溶媒中の電力密度は、≧1W/l〜≦200W/lである。カーボン粒子の調製物の表面層上への作用中に加熱する場合、温度は、例えば≧30℃〜≦200℃、好ましくは≧40℃〜≦150℃であってよい。
【0040】
カーボン粒子は、その製造後に、表面上で更に共有結合的官能基化させないことが可能である。これは、粒子が、更なる反応工程によりその表面上に共有結合的に付加した付加的な官能基を有さないことを意味する。とりわけ、酸化剤、例えば硝酸、過酸化水素、過マンガン酸カリウムおよび硫酸またはこれらの剤の可能な混合物の、カーボン粒子の官能基化のための使用は避けられる。非共有的官能基化粒子の使用の優位性は、表面のπ電子系が中断されず、従って電気伝導性へ継続して寄与することができることである。
【0041】
本発明の方法の更なる実施態様では、カーボン粒子は、カーボンナノチューブ、単壁カーボンナノチューブ、多壁カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノオニオン、フラーレン、黒鉛、グラフェン、炭素繊維、カーボンブラックおよび導電性カーボンブラックからなる群から選択される。これらの粒子は、電気伝導性を増大させるだけでなく、表面層の機械特性、例えば弾性および衝撃靱性を向上させることもできる。
【0042】
本発明の目的のために、カーボンナノチューブとしては、円筒型、スクロール型、マルチスクロール型の、またはオニオン状構造を有する全ての単壁または多壁カーボンナノチューブが挙げられる。好ましいのは、円筒型、スクロール型、マルチスクロール型のまたはこれらが混合した多壁カーボンナノチューブを用いることである。カーボンナノチューブが、≧5、好ましくは≧100の外径に対する長さの割合を有することが有利である。
【0043】
上記の既知の1つだけの連続または中断グラフェン層を有するスクロール型のカーボンナノチューブに対して、組み合わさって積層および巻き上がった構造を形成する複数のグラフェン層からなるカーボンナノチューブ構造も存在する。これは、マルチスクロール型と称される。このカーボンナノチューブは、DE102007044031A1に記載され、これは参照により完全に組み込まれる。この構造は、円筒型多壁カーボンナノチューブ(円筒型MWNT)の構造が、円筒型単壁カーボンナノチューブ(円筒型SWNT)の構造に関連するのと同様に単一スクロール型のカーボンナノチューブに関連する。
【0044】
オニオン状構造の場合とは異なり、断面から見た場合、個々のグラフェン層または黒鉛層は、カーボンナノチューブの中心から中断することなく外縁に連続的に明らかに続く。これは、例えば、単一スクロール構造を有するカーボンナノチューブ(Carbon 1996、第34巻、第1301〜1303頁)またはオニオン型構造を有するカーボンナノチューブ(Science 1994、第263巻、第1744〜1747頁)と比較して、より開放した端が挿入のための入り口帯として利用可能であるので、他の物質を管状骨格中へ、向上した、より速い挿入を可能とすることができる。
【0045】
カーボン粒子は、好ましくは、≧3nm〜≦100nmの直径を有し、共有結合的に官能基化されていない多壁カーボンナノチューブである。本発明では、直径は、ナノチューブの平均系に基づく。直径は、≧5nm〜≦80nm、有利には≧6nm〜≦60nmの範囲であってよい。ナノチューブの長さは、最初は制限されない。しかしながら、例えば、直径は、≧1μm〜≦100μm、有利には≧10μm〜≦30μmの範囲であってよい。
【0046】
本発明の方法の更なる実施態様では、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、ヒドロキノン、アセトン、酢酸エチル、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロメタン、塩化メチレン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、スチレン、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、上記溶媒の互いの混合物および上記溶媒と水との混合物からなる群から選択される。
【0047】
上記溶媒は、特定の方法により、カーボン粒子を有する低凝集物溶液または凝集物不含溶液を形成すると同時に、ポリマーを適切に選択する場合、エラストマー表面の膨潤をもたらす可能性を組み合わせる。上記溶媒の混合物は、溶媒が質量による所望の割合で水に可溶性である場合も含む。
【0048】
エラストマーを含む表面層のカーボン粒子の調製物との接触は、とりわけ、浸漬、塗布、印刷、塗装、噴霧および/または注入により行うことができる。物体は、例えば浸漬層に浸漬することにより容易に処理することができる。こうして処理されたポリマーフィルムを製造するための連続法は、容易に実現することもできる。エラストマー物体上への印刷法は、例えばスクリーン印刷により、電気伝導性構造、例えばエラストマー物体上の導体トラック等の製造を可能とする。
【0049】
本発明の方法の更なる実施態様では、エラストマーは、ポリアクリレート、アクリル酸エステルゴム、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン−コ−スチレン)、ポリ(アクリロニトリル−コ−メチルメタクリレート)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエステル、ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、フルオロシリコン、パーフルオロアルコキシポリマー、(天然)ゴム、ポリ(メチルメタクリレート−コ−アクリロニトリル−コ−ブタジエン−コ−スチレン)、ポリ(メチルメタクリレート−コ−ブタジエン−コ−スチレン)、ニトリル、オレフィン、ポリホスファゼン、ポリプロピレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライドおよびシリコーンからなる群から選択される。
【0050】
本発明の方法の更なる実施態様では、エラストマーの表面層は、マスクにより少なくとも工程(D)において部分的に被覆される。該マスクは、表面の小区域を覆うが、他の領域は覆わない。こうして、電気伝導性構造、例えば導体トラック等を、エラストマー表面上で製造することができる。
【0051】
例えば、本発明により得られるエラストマー表面は、≧10−3オームcm〜≦10オームcmの表面層の比抵抗を有することができる。該比抵抗は、標準ASTM D 257に従って決定することができる。この抵抗は、好ましくは1オームcm〜≦1000000オームcm、より好ましくは≧10オームcm〜≦100000オームcmの範囲である。比抵抗ρを計算するのに必要な層厚みは、試料断面の顕微鏡写真から得られる。
【0052】
また、本発明は、電気伝導性カーボン粒子を含み、および本発明の方法により得られる表面層を有するエラストマーを含み、該エラストマーが≧−130℃〜≦0℃のガラス転移温度Tを有し、応力σがエラストマーにおいて伸びの増加を伴って減少しない伸張性電極を提供する。エラストマーおよび可能性のあるエラストマーの実施態様に関して、本発明の方法に関して前述したものを、繰り返しを避けるために参照する。
【0053】
本発明による伸張性電極は、例えば、後に、静電粉体被覆または電気泳動被覆により被覆されるかまたは電気めっきされるエラストマー成形品に有用である。他の例は、一般に電子部品または帯電防止被覆物を有するケーブル被覆である。特に好ましいのは、さらに以下に示す。
【0054】
本発明の電極の実施態様では、カーボン粒子は、表面層において、表面より≦10μm下の深度にまで存在させる。
【0055】
浸透深度の計算では、付加的な電気伝導性層は考慮しない。上述の通り、表面層は、エラストマーを含む。この表面層における粒子は、有利には、電気伝導性が生じるようにネットワークを形成する。粒子は、表面より≦5μmまたは≦1μm下の深度にまで存在させてもよい。本発明によれば、カーボン粒子が付与されたエラストマー表面層を含み、および更なる物質を付加的に有する物体も含まれる。これらは、例えば、エラストマー表面を少なくとも部分的に含み、電気伝導性カーボン粒子が、この表面またはエラストマー表面層中へ導入された消費者物品であってよい。
【0056】
本発明の電極の更なる実施態様では、カーボン粒子は、≧0.1重量%〜≦10重量%の割合で、これらを取り囲む表面層のエラストマー材料内に存在する。該割合は、≧0.5重量%〜≦4重量%、または≧1重量%〜≦5重量%の範囲であってもよい。それにより、表面層中のカーボン粒子の含有量が最終的に示される。エラストマー材料が考慮されなくなる物体の内部における表面層の境界は、カーボン粒子がエラストマー領域に生じる最下(最も内側の)線により形成される。示された範囲内では、カーボン粒子のための浸透限界を、電気伝導性が著しく向上するように越えさせることができる。
【0057】
本発明の電極の更なる実施態様では、電極は、≧10−3オームcm〜≦10オームcmの表面層の比抵抗を有する。比抵抗は、標準ASTM D 257に従って決定することができる。この抵抗は、≧1オームcm〜≦1000000オームcm、より好ましくは≧10オームcm〜≦100000オームcmの範囲である。
【0058】
本発明の電極の更なる実施態様では、カーボン粒子は、≧3nm〜≦100nmの直径を有する非官能基化多壁カーボンナノチューブである。ここで、直径は、ナノチューブの平均系に基づく。これは、≧5nm〜≦80nm、有利には≧6nm〜≦60nmの範囲であってよい。まず、ナノチューブの長さは制限されない。しかしながら、例えば≧1μm〜≦100μm、有利には≧10μm〜≦30μmの範囲であってよい。
【0059】
本発明の電極の更なる実施態様では、電極は、電気伝導性カーボン粒子を含む第1表面層および第2表面層を有し、前記第1表面層および第2表面層は、互いに反対側に配置され、エラストマー層により互いに分離される。製造方法に起因して、第1表面層および第2表面層は、分離電気絶縁エラストマーに一体的に接合する。弾性コンデンサーは、誘電体により分離された2つの電気伝導性層の上記構造により実現される。次いで、上記の付加的な電気伝導性層は、第1表面層および/または第2表面層上に直接配置する。
【0060】
本発明の電極の更なる実施態様では、これは、電気伝導性カーボン粒子を含む表面層に配置された付加的な電気伝導性層を含み、該付加的な電気伝導性層は、断裂する前の表面層の伸びにより破壊または断裂する。
【0061】
付加的な電気層は、例えば導電性表面被覆物、導電性ペースト、金属層または電気伝導性ポリマーの層であってよい。金属の例は、貴金属、銅および/または錫である。付加的な電気層は、≧10nm〜≦50μmまたは≧20nm〜≦10μmの厚みを有することができる。付加的な電気伝導性層の物質は、該付加的な層がまず、表面層の伸びにより破壊または断裂するように選択される。ここで、系全体の電気伝導性が、破壊または断裂した被覆物とカーボン粒子を含む表面層との接触により急に破壊されないが、その代わり特定の程度に維持されることが有利である。言い換えれば、伸張性電極の電力密度は、応力の結果、時間で減少するが、これは完全には終わらない。この挙動は、エラストマーが繰り返される伸びおよび脱応力に曝され、電気伝導性が、時間全体にわたって要求される場合に特に有利である。
【0062】
付加的な電気電送性層は、好ましくは金、銀、銅、インジウム−錫酸化物、フッ素ドープト酸化錫(IV)、アルミニウムドープト酸化亜鉛、アンチモンドープト酸化錫(IV)および/またはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む。金は、例えばスパッタリングにより適用することができる。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、通常PEDOTまたはPEDTと称され、ポリマーの調製物から適用することができる。
【0063】
本発明によるエラストマー物体は、電気伝導性カーボン粒子を含むエラストマー表面層を有する担体材料の複合材料の形態であることが可能である。担体材料の例は、セラミック、金属、およびポリマー、例えばポリカーボネートまたはポリオレフィン等である。従って、例えば成形金属部を、まずエラストマーで被覆し、次いでエラストマー表面層に、カーボン粒子および付加的な電気伝導性層を付与することができる。
【0064】
さらに、本発明は、本発明による電極の、電気機械変換器としての、電気機械作動装置としてのおよび/または電気機械センサーとしての使用を提供する。この場合、電極におけるエラストマーは、電気活性ポリマー、特に誘電エラストマーである。
【0065】
本発明を、図と併せて以下の例により説明する。図では:
図1は、多層構造を有する電極配置を示し、
図2、3および4は、伸張中の伝導性測定を種々の試料について示し、
図5a、5b、6a、6b、7aおよび7bは、種々のエラストマー試料の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0066】
図1は、多層構造を有する本発明による電極配置を示す。エラストマー作業片から出発して、カーボンナノチューブのようなカーボン粒子は、エラストマーの上部表面層(1)および下部表面層(2)中へ導入した。これらの粒子は、短い線または点により個々の層(1、2)に示される。粒子が表面層中への制限浸透深度を有することが分かる。付加的な電気伝導性層(4、5)は、表面層(1、2)のそれぞれに存在する。表面層(1、2)は、粒子不含エラストマー層(3)により互いに分離する。製造方法に起因して、電極は常に、表面層(1、2)についてワンピース構造を有し、表面層は、粒子不含層(3)へ一体的に接合される。示される電極は、適当な寸法の場合、例えばフィルム状コンデンサーとしてまたは電気活性ポリマー(EAP)として働くことができる。
【実施例】
【0067】
実施例は、2つのエラストマーE1およびE2の官能基化に関する。エラストマーE1は、ISO 868に従う80のショアA硬度および−35℃のガラス転移温度Tを有する熱可塑性ポリウレタン(DESMOPAN登録商標 3380A、Bayer MaterialScience AGから)であった。エラストマーE2は、PO系ポリエーテルポリオール(Acclaim(登録商標) 6300、Bayer MaterialScience AGから)のジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(Desmodur(登録商標) 44 M Flakes、Bayer MaterialScience AGから)による予備伸張により得られたプレポリマーから調製されたポリウレタンであり、これは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(M=2000g/モル)により最後に架橋した。エラストマーE2のガラス転移温度Tは、−65℃であった。
【0068】
実施例に記載のカーボン粒子は、1つの場合には、Bayer MaterialScience AGからの商品名BAYTUBES(登録商標) C 150 Pを有する多壁カーボンナノチューブの形態でのカーボンナノチューブ(CNT)であった。カーボン粒子の他の種類は、導電性カーボンブラックの形態でのカーボンブラック(Ketjenblack 600)であった。
【0069】
被覆剤として用いるPEDOTは、HCStarckからの商品名Clevios P(登録商標)を有するポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェンであった。これは、脱イオン水中に0.3重量%含有する調製物の形態であった。
【0070】
浸漬溶液は、超音波プローブによる溶媒中での所定量のカーボン粒子の超音波処理により製造し、直ぐに用いた。ここで、超音波の周波数は、20kHzであり、電力密度は、300W/kgであった。
【0071】
エラストマー表面を官能基化するために、試料を、浸漬調製物中に完全に浸し、超音波槽中で所定の時間、超音波で処理する。試料を、該槽から取り出した後、表面を、アセトンで簡単に洗い流し、室温において完全に乾燥させ、次いで水性石鹸溶液でこすった。
【0072】
こうしてCNT官能基化されたエラストマーの任意の被覆を、第2段階において金の蒸着(CressingtonからのSputter Coater 108auto)または上記PEDOT含有溶液中への20秒間浸漬することにより行った。適用された金層は、不透明であり、金属光沢を有した。従って、10nmを越える層厚みが想定された。
【0073】
表面および体積抵抗は、こうして処理したエラストマーについて標準ASTM D 257に従って計測した。さらに、表面抵抗は、機械伸張に応じて測定した。試料を横切る抵抗は、Keithleyからの従来使用されるマルチメーター、型2400により、低速運転引張試験の間、歪み速度1mm/分、連続的に測定し、第2工程において、力−変形曲線を、個々の測定のタイムスタンプにより抵抗測定と同期化した。
【0074】
実験条件および得られた結果を以下の表に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
これらの実験の結果を、図2、3および4に示す。
【0078】
図2は、エラストマーE1eの種々の変形に対する伸びE(X軸)についての力F(左手軸)または試料の引張棒の抵抗R(右手軸)の依存を示す。
【0079】
測定曲線100および110は、変形中の力に関する。曲線100は、実質的には同一である2つの曲線の重ね合わせである。これらの曲線の1つは、更なる被覆物を有さないエラストマー試料E1eに関し、他方は、金層を有するエラストマー試料E1eに関する。金被覆試料E1eについての計測は、約275%の伸びにおいて停止し、この伸びを越えた曲線100の減少した厚みから分かる。この曲線の形状は、更なる金層が、エラストマーの機械特性について影響を有さないことを示す。測定曲線110は、付加的なPEDOT層を有するエラストマーE1eの試料に関する。
【0080】
曲線120、130および140は、変形Dに応じた抵抗Rを、エラストマーE1eの種々の試料について示す。曲線120は、金被覆試料に関する。ここでも、測定は、約275%の伸びにおいて停止した。曲線130は、更なる被覆物を有するエラストマーE1eに関する。最後に、曲線140は、エラストマーE1eのPEDOT被覆試料に関する。エラストマーE1eは、変形下で消失せず、および付加的な導電性表面層により特定の変形範囲で更に著しく向上させることができる伝導性を有することが明らかに分かる。
【0081】
図3は、エラストマーE1eについての力F(左手y軸)の依存を測定曲線210において再び示す。概算では、抵抗が、約230%の測定伸び範囲で約10の2乗増加することを示す。
【0082】
図4は、アセトンに浸漬しなかったエラストマーE1のカーボン粒子で官能基化されなかった未処理試料に関する(E1aとして示された試料についての場合である)。図は、金で両側にスパッタされたエラストマーE1の試料に対する伸びE(x軸)について、測定曲線310において力F(左手y軸)または測定曲線300において抵抗R(右手y軸)の依存を示す。CNT層をエラストマー中へ導入しない場合、金スパッタ試料の伝導性は、少しの変形でさえ変形により破壊される。
【0083】
図5a、5b、6a、6bおよび7aおよび7bは、本発明による種々の試料の走査型電子顕微鏡(SEM)を示す。これらは、FEIからのSEM型ESEM Quanta 400により作製した。
【0084】
図5aは、エラストマーE2bの試料の表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。この試料の拡大顕微鏡写真を図5bに示す。図6aは、エラストマーE2cの試料の表面の走査型電子顕微鏡写真を示し、図6bは、この試料の拡大顕微鏡写真を示す。対応して、図7aは、エラストマーE2dの試料の表面の走査型電子顕微鏡写真を示し、図7bは、この試料の拡大顕微鏡写真を示す。
【0085】
走査型電子顕微鏡写真において、粒子、すなわちカーボンナノチューブおよび/またはカーボンブラック粒子が、ポリマーマトリックス中に組み込まれ、その中に封入されていることが分かる。表面は、大きくとも、粒子により生じた浮き彫り構造を示す。緩いナノチューブ端だけがポリマーマトリックスから突出することがある。従って、全体的に、粒子がポリマー表面中へ強く組み込まれた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気伝導性カーボン粒子を含む表面層を有する伸張性電極の製造方法であって、以下の工程:
(A)≧−130℃〜≦0℃のガラス転移温度Tを有し、応力σが伸びの増加を伴って減少しないエラストマーの供給、
(B)前記エラストマーの表面層の膨潤を引き起こすことができる溶媒中における≧0.3nm〜≦3000nmの平均粒径を有する非凝集化カーボン粒子の調製物の供給、
(C)前記エラストマーの表面層とカーボン粒子の調製物とを接触させる工程、
(D)前記カーボン粒子の調製物を、エラストマーの表面層上へ、エラストマーが溶液中へ入り込むのに不十分な時間、作用させる工程、および
(E)前記カーボン粒子の調製物のエラストマーの表面層上への作用を終了する工程
を含む方法。
【請求項2】
以下の工程:
(F)付加的な電気伝導性層を、工程(B)〜(E)において得られる電気伝導性カーボン粒子を含む表面層へ適用し、得られる付加的な電気伝導性層は、断裂する前に表面層の伸びにより破壊または断裂する、工程
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カーボン粒子の調製物のエラストマーの表面層上での作用は、工程(D)において、超音波および/または熱を用いて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カーボン粒子は、カーボンナノチューブ、単壁カーボンナノチューブ、多壁カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノオニオン、フラーレン、黒鉛、グラフェン、炭素繊維、カーボンブラックおよび/または導電性カーボンブラックからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、ヒドロキノン、アセトン、酢酸エチル、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロメタン、塩化メチレン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、スチレン、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、上記溶媒の互いの混合物および上記溶媒と水との混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
エラストマーは、ポリアクリレート、アクリル酸エステルゴム、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン−コ−スチレン)、ポリ(アクリロニトリル−コ−メチルメタクリレート)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエステル、ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、フルオロシリコン、パーフルオロアルコキシポリマー、(天然)ゴム、ポリ(メチルメタクリレート−コ−アクリロニトリル−コ−ブタジエン−コ−スチレン)、ポリ(メチルメタクリレート−コ−ブタジエン−コ−スチレン)、ニトリル、オレフィン、ポリホスファゼン、ポリプロピレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライドおよびシリコーンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エラストマーの表面層は、マスクにより、少なくとも工程(D)において、部分的に被覆される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
電気伝導性カーボン粒子を含みおよび請求項1〜7のいずれかに記載の方法により得られる表面層(1)を有するエラストマーを含み、該エラストマーは、≧−130℃〜≦0℃のガラス転移温度Tを有し、さらに、応力σは、エラストマー中において伸びの増加を伴って減少しない、伸張性電極。
【請求項9】
カーボン粒子は、表面層(1)において、表面より≦10μm下の深度にまで存在させる、請求項8に記載の電極。
【請求項10】
カーボン粒子は、≧0.1重量%〜≦10重量%の割合で、これらを取り囲む表面層(1)のエラストマー材料内に存在する、請求項8に記載の電極。
【請求項11】
≧10−3オームcm〜≦10オームcmの表面層(1)への比抵抗を有する、請求項8に記載の電極。
【請求項12】
電気伝導性カーボン粒子を含む第1表面層(1)および第2表面層(2)を有し、前記第1表面層(1)および第2表面層(2)は、互いに反対側に配置され、エラストマー層(3)により互いに分離される、請求項8に記載の電極。
【請求項13】
電気伝導性カーボン粒子を含む表面層(1)に配置された付加的な電気伝導性層(4)を更に含み、該付加的な電気伝導性層(4)は、断裂する前に表面層(1)の伸びにより破壊または断裂する、請求項8に記載の電極。
【請求項14】
付加的な電気伝導性層(4)は、金、銀、銅、インジウム−錫酸化物、フッ素ドープト酸化錫(IV)、アルミニウムドープト酸化亜鉛、アンチモンドープト酸化錫(IV)および/またはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む、請求項13に記載の電極。
【請求項15】
電気機械変換器としての、電気機械作動装置としてのおよび/または電気機械センサーとしての、請求項8に記載の電極の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2012−533857(P2012−533857A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520929(P2012−520929)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004283
【国際公開番号】WO2011/009549
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】