説明

伸縮パワー強化部ないし非伸縮性付与部からなる補強部を有する経編衣料

【課題】所望の部分に、弾性糸及び/又は非弾性糸による伸縮パワー強化部が一体編成により所望のパターンで形成されている経編衣料を提供する。
【解決手段】非弾性糸と弾性糸とが編みこまれている筒状のダブルラッシェル編地から形成された衣料であって、衣料を構成する地編基布の伸縮パワーを強めたい所望の部分又は非伸縮性を付与したい所望の部分に、弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸が挿入及び/又は編目形成して編みこまれることにより一体編成により形成されている補強部を有する経編衣料であり、補強部として経編地の縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を少なくとも有するパターンの補強部を有し、直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみを経編地横方向のX軸に投影した時のX軸上の長さが3cm以上である衣料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性糸及び/又は非弾性糸からなる糸による補強部を有する経編衣料に関するものである。特に本発明は、衣料を構成する地編基布の伸縮パワーを強めたい又は非伸縮性機能を強化したい所望の部分に所望のパターン状に、弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸が挿入及び/又は編目形成されて当該補強部のパターンを形成し、補強部が一体編成により形成されている伸縮パワー強化部又は非伸縮性機能付与部からなる補強部を有するダブルラッシェル編みによる経編衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、伸縮性有する経編地からなる衣料は、各種下着類、ガードル、ショーツ、ボディスーツ、ウェストニッパー、各種ランジェリー類、スパッツ、スポーツ用衣料などとして用いられている。
【0003】
特開平7−300749号公報(特許文献1)や特開平7−70893号公報(特許文献2)などには、縦、横に伸縮性を付与するために、第1の弾性糸と第2の弾性糸を用い、横方向の伸縮性を出すために、3ウェール間を横切るような組織の弾性糸も使用(特許文献1では、第2弾性糸、特許文献2では第1弾性糸3)されているが、糸の太さや、編密度にもよるが、3ウェール間を横切っても、仕上加工処理(加熱処理や染色処理)後におけるその幅は衣料では約1.5mm程度であり、特にダブルラッセル編地から形成される筒状部分を有する衣料においては、仕上げ加熱加工処理時に、拡張処理がなされないので、編みあがり時の幅に比べて、目安としておよそ約50%程度縮むので、上記の様に3ウェール間を横切っても、その幅は衣料では約1.5mm程度の変化に過ぎない。しかも、上記特許文献1や2に記載された編組織図からも明らかなように、3ウェール振られた糸も元のウェエールに戻る繰り返しの編組織になるので現実に巨視的に見れば、この弾性糸は、経編地の縦方向(編地が編まれて編機から出て来る方向、コース方向)にほぼ平行に、しかも、編地全体に挿入されている。従って、これらの弾性糸は編地全体の伸縮性を付与するための弾性糸であり、地編基布の伸縮パワーを強めたい所望の部分の伸縮パワーを特に強化するためのものではない。仮に、編地全体にこの弾性糸を挿入するのではなく、ある特定部分のみ集中させて挿入したとしても、巨視的に見れば、経編地の縦方向に平行に略直線帯状パターンに弾性糸挿入部分のパターンが形成されるに過ぎず、所望の部分に所望のパターン状に弾性糸による伸縮パワー強化部を形成することは出来ない。
【0004】
一方、伸縮パワーを強めたい所望の部分の伸縮パワーを強化するために、パワーを強化したい部分の非弾性糸の編組織をパワーが強くなるような編組織、例えば、ウェール方向への振りが大きい組織とし(下記特許文献3参照)、また、必要に応じて、更に経編地の縦方向(編地が編まれて編機から出て来る方向、コース方向)にほぼ平行に弾性糸によるパワー強化帯状帯域を設けて、これらの組合せで、伸縮パワー強化部を形成した衣料も提案されている(下記特許文献4参照)。
【0005】
編組織を変化させて組織の変化で伸縮パワー強化部を所望のパターン状(この例ではパターンが“<”のパターン)に設ける方法を、より簡易に図21と図22を用いて説明すると、通常の基布となる部分をある所定の編組織(例えば、特許文献3の図2のL1)で編み、パワーを強くすべき部分を、よりパワーが強くなるような編組織(例えば、特許文献3の図2のL3)で編むのである。すなわち図21のAの糸に注目すると、コースa1からa2までは、例えば、特許文献3の図2のL1に示された通常パワーの組織で編み、コースa2からa3までは、例えば、特許文献3の図2のL3に示された様なよりパワーが強くなるような編組織で編み、コースa3からa4においては、コースa1からa2と同様の特許文献3の図2のL1に示された通常パワーの組織で編む、同様に、Bの糸に注目すると、コースb1からb2までは、例えば、特許文献3の図2のL1に示された通常パワーの組織で編み、コースb2からb3までは、例えば、特許文献3の図2のL3に示された様なよりパワーが強くなるような編組織で編み、コースb3からb4においては、コースb1からb2と同様の特許文献3の図2のL1に示された通常パワーの組織で編む、同様に、Cの糸に注目すると、コースc1からc2までは、例えば、特許文献3の図2のL1に示された通常パワーの組織で編み、コースc2からc3までは、例えば、特許文献3の図2のL3に示された様なよりパワーが強くなるような編組織で編み、コースc3からc4においては、コースc1からc2と同様の特許文献3の図2のL1に示された通常パワーの組織で編む、以下、他のウェールにおいても同様に、パワー強化部のみパワーが強くなるような編組織で編み、それ以外の部分は、通常パワーの組織で編むことにより、編組織の変化により“<”のパターン210の伸縮パワー強化部を形成している。(尚、この図は、概念を説明するための図であるから、コースの数やウェールの数は、大幅に現実のものより少ないコース数、ウェール数で描いている。以下、本発明の編組織を描いた図も同様である。すなわち、パワー強化部のウェール方向の幅を、例にとって説明すると、上述した目安を基準にすると、パワー強化部のウェール方向の幅は、図示したものは5ウェール程度であるから、現実の生地ではおよそ2.5mm程度の幅であり、本来、パワー強化部のウェール方向の幅を仮に2cmにするには、およそ40ウェール程度必要であり、これだけの数のウェールを図で示すと、図が膨大になるのでウェール数を少なくして描いている。コース数についても略同様である。)。
【0006】
次に、図22は、図21で示した編組織を変化させて組織の変化で伸縮パワー強化部を所望のパターン状(この例ではパターンが“<”のパターン)に設け、かつ、更に経編地の縦方向(編地が編まれて編機から出て来る方向、コース方向)にほぼ平行に弾性糸によるパワー強化帯状帯域を設けて、これらの組合せで、伸縮パワー強化部を形成した場合(下記特許文献4に開示の方法)の説明用概念図である。
【0007】
編組織を変化させて組織の変化で伸縮パワー強化部を所望のパターン状(この例ではパターンが“<”のパターン210)を設ける方法は、図21と同様である。図22に示した例では、更に、伸縮パワー強化用の弾性糸212が挿入されて、略縦方向にまっすぐに伸びる帯状のパターンの強化部211を形成している(下記特許文献4の図11〜13の符号7,8,9の糸参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−300749号公報
【特許文献2】特開平7−70893号公報
【特許文献3】実用新案登録第3008737号公報
【特許文献4】特許第3023354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これらの特許文献3や4に示された衣料においては、ジャカード制御機構により編組織変更によるパワー強化部分は、所望の部分に所望の形状で形成し得るが、通常、編組織変更によるパワー強化部分は、あまり大きな伸縮パワーの強化を達成できないので、特許文献4に示されるように、編組織変更によるパワー強化部分に更に弾性糸を挿入して形成したパワー強化帯状帯域を設けることも提案されている。しかしこの方法による弾性糸の挿入帯域のパターンは、巨視的に見て、上述したように、経編地の縦方向(編地が編まれて編機から出て来る方向、コース方向)にほぼ平行にしか設けることが出来ない。すなわち所望の部分に別途弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸を挿入及び/又は編目形成して所望のパターンになる様に編み込んで補強部のパターンを補強糸の挿入及び/又は編目形成により設けた衣料は製造されていない。
【0010】
本発明は、非弾性糸と弾性糸とが編みこまれているダブルラッシェル編みからなる衣料であって、衣料を構成する地編基布の伸縮パワーを強めたい又は非伸縮性機能を強化したい所望の部分に所望のパターン状に、弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸が挿入及び/又は編目形成されて当該補強部のパターンを形成し、補強部が一体編成により形成されているパワー強化補強部を有するダブルラッシェル編みによる経編衣料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の弾性糸による伸縮パワー強化部を有する経編衣料は、次のものである。
【0012】
(1)非弾性糸と弾性糸とが編みこまれている筒状のダブルラッシェル編地から形成された衣料であって、衣料を構成する地編基布の伸縮パワーを強めたい所望の部分又は非伸縮性を付与したい所望の部分に、弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸が挿入及び/又は編目形成して編みこまれることにより一体編成により形成されている補強部を有する経編衣料であり、
前記補強部は、当該経編衣料を構成する経編地の縦方向をY軸、横方向をX軸とした場合に、前記補強部の縁部分の形状の一部又は全部として、当該経編地の縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を少なくとも有するパターンの補強部であり、当該補強部のいずれか一つのガイドバーを通して形成された補強部について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが3cm以上であり、
前記補強部のパターンは、補強部を構成するための1本又は複数本の補強糸が左右ウェール方向に折り返しながらコース方向に編成されて形成されたパターンであり、
前記補強部のパターンの左右の縁に近接する前記補強部を構成する当該糸のそれぞれ左右のいずれか一方づつの又は両方の折り返し部分で巨視的に補強部のパターンの縁が形成されていることを特徴とする衣料。
【0013】
(2)前記(1)項に記載の衣料においては、前記補強部のパターンが略帯状パターン部分ないしはその組合せからなり、前記略帯状パターン部分の幅に応じた複数のウェールにそれぞれ供給された補強糸から形成されており、当該複数のウェールに供給された補強糸の挿入及び/又は編目形成の組織が各コースにおいて互いに同一である組織から形成されていることが好ましい。
【0014】
(3)また、前記(1)〜(2)項のいずれか1項に記載の衣料においては、当該補強部のいずれか一つのガイドバーを通して形成された部分について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが5cm以上であることが好ましい。
【0015】
(4)また、前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の衣料においては、前記補強部の当該経編地の縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を有するパターンの部分における補強糸が1つのコースからウェール方向が反対向きの次の折り返しを行うために、次の目的のコース分移る際に、左右いずれかのウェール方向に2ウェール以上振られ、さらに次の目的のコース分移る際に、前記ウェール方向と反対向きのウェール方向に振られる繰り返しであってウェール方向に振られるウェール数を直前の反対方向に振られたウェール数と異ならせることにより、巨視的に経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を有するパターンの部分を形成していることが好ましい。
【0016】
(5)また、前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の衣料においては、前記地編基布がフロント側基布及びバック側基布のいずれも、弾性糸と非弾性糸の交編であるダブルラッシェル編物からなることが好ましい。
【0017】
(6)また、前記(5)項に記載の衣料においては、前記地編基布を構成する前記非弾性糸が、フロント側基布及びバック側基布とも全ウェール総詰で、鎖編組織で編まれ、前記地編基布を構成する前記弾性糸が、フロント側基布及びバック側基布とも全ウェール総詰で、デンビー組織で編まれていることが好ましい。
【0018】
(7)また、前記(2)項に記載の衣料においては、前記補強部の略帯状パターン部分のX軸方向の幅が、1cm以上であることが好ましい。
【0019】
(8)また、前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載の衣料においては、衣料のフロント側基布とバック側基布の連結が必要な部分が、フロント側とバック側を連結する連結編みで連結されていることが好ましい。
【0020】
(9)また、前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載の衣料においては、衣料のフロント側基布とバック側基布の両脇側がフロント側とバック側を連結する連結編みで連結されていることが好ましい。
【0021】
(10)また、前記(1)〜(9)項のいずれか1項に記載の衣料においては、衣料が、その補強糸のガイドバーが、サーボモーターによりウェール方向に20cm以上移動可能にされたガイドバーを備えたジャカードダブルラッシェル経編機により形成された衣料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
(1)本発明の前記(1)〜(10)項に記載の衣料は、非弾性糸と弾性糸とが編みこまれている筒状のダブルラッシェル編地から形成された衣料であって、衣料を構成する地編基布の伸縮パワーを強めたい所望の部分又は非伸縮性を付与したい所望の部分に、弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸が挿入及び/又は編目形成して編みこまれることにより一体編成により形成されている補強部を有する経編衣料であり、
前記補強部は、当該経編衣料を構成する経編地の縦方向をY軸、横方向をX軸とした場合に、前記補強部の縁部分の形状の一部又は全部として、当該経編地の縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を少なくとも有するパターンの補強部であり、当該補強部のいずれか一つのガイドバーを通して形成された補強部について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが3cm以上であり、
前記補強部のパターンは、補強部を構成するための1本又は複数本の補強糸が左右ウェール方向に折り返しながらコース方向に編成されて形成されたパターンであり、前記補強部のパターンの左右の縁に近接する前記補強部を構成する当該糸のそれぞれ左右のいずれか一方づつの又は両方の折り返し部分で巨視的に補強部のパターンの縁が形成されていることを特徴とする衣料であるので、前記補強糸による伸縮パワー強化部又は非伸縮性付与部である補強部のパターンが、従来のように実質上経編地の縦方向に平行に略直線帯状パターンしか形成できない場合と異なり、補強が不要な部位に伸縮パワー或いは伸びを止めるパワーがかかったり、必要な部位に伸縮パワー或いは伸びを止めるパワーがかからないなどの問題がなく、伸縮パワー或いは伸びを止めるパワーを強化したい所望の部分に所望のパターン状に弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸による補強部を形成しているので、伸縮パワー或いは伸びを止めるパワー強化機能を効率よく衣料に形成した補強部が一体編成により所望のパターンで形成されている補強部を有する経編衣料を提供できる。
【0023】
(2)前記(1)項に記載の衣料において、前記補強部のパターンが略帯状パターン部分ないしはその組合せからなり、前記略帯状パターン部分の幅に応じた複数のウェールにそれぞれ供給された補強糸から形成されており、当該複数のウェールに供給された伸縮パワー強化用の糸の挿入及び/又は編目形成の組織が各コースにおいて互いに同一である組織から形成されている本発明の好ましい態様とすることにより、製造が容易で、伸縮パワー或いは伸びを止めるパワー強化機能を効率よく衣料に形成した補強部が一体編成により所望のパターンで形成されている補強部を有する経編衣料を提供できる。
【0024】
(3)前記(1)〜(2)項のいずれか1項に記載の衣料において、当該補強部のいずれか一つのガイドバーを通して形成された部分について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが5cm以上である本発明の好ましい態様とすることにより、衣料着用者の身体で補強部があてがわれることが所望される部位は身体上下方向で、X軸方向(身体幅方向)に5cm以上変化して形成されることが要求される部位もあり、より広範囲の補強要求部位により適確に補強パワー強化部(補強部)を形成した衣料を提供でき好ましい。
【0025】
(4)また、前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の衣料において、前記補強部の当該経編地の縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を有するパターンの部分における補強糸が1つのコースからウェール方向が反対向きの次の折り返しを行うために目的のコース分移る際に、左右いずれかのウェール方向に2ウェール以上振られ、さらに次の目的のコース分移る際に、前記ウェール方向と反対向きのウェール方向に振られる繰り返しであってウェール方向に振られるウェール数を直前の反対方向に振られたウェール数と異ならせることにより、巨視的に経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を有するパターンの部分を形成している本発明の好ましい態様とすることにより、衣料の補強部においてその縦・横方向に伸縮パワーを強化又は非伸縮性を付与する機能が十分効果的に発揮され好ましい。
【0026】
(5)また、前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の衣料において、前記地編基布がフロント側基布及びバック側基布のいずれも、弾性糸と非弾性糸の交編であるダブルラッシェル編物からなる本発明の好ましい態様とすることにより、衣料全体が伸縮性で、且つ、伸縮パワーを強化又は非伸縮性を付与したい所望の部分に所望のパターン状にパワー強化補強部を有する経編衣料を提供でき好ましい。
【0027】
(6)また、前記(5)項に記載の衣料において、前記地編基布を構成する前記非弾性糸が、フロント側基布及びバック側基布とも全ウェール総詰で、鎖編組織で編まれ、前記地編基布を構成する前記弾性糸が、フロント側基布及びバック側基布とも全ウェール総詰で、デンビー組織で編まれている本発明の好ましい態様とすることにより、衣料全体の伸縮性が一層良好で、且つ、伸縮パワーを強化又は非伸縮性を付与したい所望の部分に所望のパターン状にパワー強化補強部を有する経編衣料を提供でき好ましい。
【0028】
(7)また、前記(2)項に記載の衣料において、前記補強部の略帯状パターン部分のX軸方向の幅が、1cm以上である本発明の好ましい態様とすることにより、補強部の必要なパワーが十分に発揮され好ましい。
【0029】
(8)また、前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載の衣料において、衣料のフロント側基布とバック側基布の連結が必要な部分が、フロント側とバック側を連結する連結編みで連結されている本発明の好ましい態様とすることにより、衣料を形成する際に、衣料の少なくともフロント側基布とバック側基布の両脇側や、フロント側とバック側を連結する必要のある部分の縫合作業の一部ないし全部を省略でき、当該縫合による縫合部(縫合糸や縫合しろの部分)がなく、縫製コストを少なく出来、縫合部がないので美感が向上し、縫合しろの部分などによる着心地の低下もなく、コストを削減し、美感が優れ、着用感がよく、且つ、必要部位に補強糸によるパワー強化補強部を形成した経編衣料を提供でき好ましい。
【0030】
(9)また、前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載の衣料において、衣料のフロント側基布とバック側基布の両脇側がフロント側とバック側を連結する連結編みで連結されている本発明の好ましい態様とすることにより、衣料を形成する際に、衣料の少なくともフロント側基布とバック側基布の両脇側の縫合作業の一部ないし全部を省略でき、当該縫合による縫合部(縫合糸や縫合しろの部分)がなく、縫製コストを少なく出来、縫合部がないので美感が向上し、縫合しろの部分などによる着心地の低下もなく、コストを削減し、美感が優れ、着用感がよく、且つ、必要部位に補強糸によるパワー強化補強部を形成した経編衣料を提供でき好ましい。
【0031】
(10)また、前記(1)〜(9)項のいずれか1項に記載の衣料において、衣料が、その補強糸のガイドバーが、サーボモーターによりウェール方向に20cm以上移動可能にされたガイドバーを備えたジャカードダブルラッシェル経編機により形成された衣料である本発明の好ましい態様とすることにより、ほとんどの着用者に要求される必要な大きさの補強部が一体編成により所望のパターンで形成されている補強部を有する経編衣料を提供でき好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)が本発明の補強部を有する経編衣料の一実施形態例の肌着シャツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図。
【図2】(a)が本発明の補強部を有する経編衣料の一実施形態例のスパッツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図。
【図3】本発明の図1の(b)に示したような形状の補強部2のパターンを形成する場合の一例の編組織の部分的概念図。
【図4】本発明の図1の(b)に示したような形状の補強部2のパターンを形成する場合の別の一例の編組織の部分的概念図。
【図5】本発明の図1の(a)に示したような形状の補強部3のパターンを形成する場合の一例の編組織の概念図。
【図6】本発明の図2(a)に示したような形状の補強部13のパターンを形成する場合の編組織の一例の部分的概念図。
【図7】補強部を構成する補強糸の組織を説明するための概念図。
【図8】本発明で地編基布を編む場合に用いる各糸の組織を示した図。
【図9】フロント側とバック側を連結している編み組織を、基布の脇側から見たと仮定した場合の概念図。
【図10】補強部のパターンを示す概念図。
【図11】図10の補強部パターンを形成する場合のパターン形成方向の概念を説明するための概念図。
【図12】別の補強部のパターンを示す概念図。
【図13】図12の補強部パターンを形成する場合のパターン形成方向の概念を説明するための概念図。
【図14】補強部のパターンを形成する場合のパターン形成方向の概念を説明するための概念図。
【図15】図14と同一パターンの補強部パターンを形成する場合の別のパターン形成方向の概念を説明するための概念図。
【図16】図14の補強パターンを2つに離して表示した概念図。
【図17】図15の補強パターンを2つに離して表示した概念図。
【図18】図2(a)に示された補強パターンのX軸上に投影したときの長さを説明するための拡大概念図。
【図19】別の補強パターンのX軸上に投影したときの長さを説明するための概念図。
【図20】更に別の補強パターンのX軸上に投影したときの長さを説明するための概念図。
【図21】編組織を変化させて組織の変化で伸縮パワー強化部を所望のパターン状に設ける従来の方法を説明するための概念図。
【図22】図21の従来の編組織に、更に弾性糸が挿入されて、略縦方向にまっすぐに伸びる帯状のパターンの強化部211を形成している従来の方法を説明するための概念図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の理解を容易にするため具体的実施形態例(概念例)を用いて、その図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、以下に取り上げる具体的実施形態例は、本発明の理解を容易にするために例示した概念図であり、本発明は、これらの具体的実施形態例のみに限定されるものではない。原則として全ての図において矢印Pの方向が、経編地の縦方向(コース方向、編方向、Y軸方向)を示している。X軸方向は、Y軸方向と直角方向である。
【0034】
図1に、本発明の補強部を有する経編衣料の一実施形態例の肌着シャツを示した。図1(a)が本発明の補強部を有する経編衣料の一実施形態例の肌着シャツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図である。この肌着シャツは着用した場合に腹部、臀部から太もも略上部までカバーする長さの肌着シャツ1である。
【0035】
肌着シャツ1の背面側には、左右の肩甲骨の一部を押さえ、背骨を押えるための補強部2が形成されている。これにより姿勢を整える補助的パワーを付与するためである。また、肌着シャツ1の正面側には、腹部略中央にお腹押さえ用の補強部3が形成されている。4はフロント側の地編で形成された部分(フロント側基布)、5はバック側の地編で形成された部分(バック側基布)を示している。
【0036】
図2は、本発明の補強部を有する経編衣料の別の一実施形態例のスパッツを示している。図2(a)が本発明の補強部を有する経編衣料の一実施形態例のスパッツのフロント側から見た正面図、(b)がバック側の背面図である。このスパッツは6部丈のスパッツ11である。
【0037】
スパッツ11の正面側には、脇腹部(13a)から太もも脇部(13b)更に膝脇部(13c)までをカバーする脚部筋肉をサポートするための補強部13が形成されている。これにより姿勢を整える補助的パワーを付与するためである。このスパッツ11の背面側には、補強部が形成されていない態様を示したが、勿論、背面側にも必要に応じて、適宜の補強部が形成されていてもよい。14はフロント側の地編で形成された部分(フロント側基布)、15はバック側の地編で形成された部分(バック側基布)を示している。
【0038】
図8は、本発明で地編基布を編む場合に用いる各糸の組織を示した図であるが、図1の肌着シャツ1の地編部分(フロント側基布4、バック側基布5)は、特に限定されるものではないが、例えば、フロント側基布及びバック側基布とも全ウェール総詰で、非弾性糸が鎖編組織で編まれ(図8の(c)、(d))、フロント側基布及びバック側基布とも全ウェール総詰で、弾性糸が、後述する肩の連結部分の連結編みで編まれている部分を除き、デンビー組織(図8の(a)、(b))で編まれている。地編は、フロント側が図8の(a)と(c)、バック側が図8の(b)と(d)、の組合せとしたが、特にこれに限定されるものではなく、地編に適する組織であれば、編地が形成できる他の経編組織でもよく、例えば、弾性糸のデンビー組織(a)、(b)の代わりに、図8の(i)と(j)のようなコード組織など適宜変更してよい。
【0039】
かくして、フロント側基布4とバック側基布5を編みながら、同時にこれらの基布の両外脇側部分6をフロント側とバック側を連結する連結編みで連結して編むことにより、筒状とする。
【0040】
フロント側とバック側の両外脇側部分6を連結する連結編みの編み組織の一例を図8の(e)と(f)に示した。図8の(e)が左右の両外脇側6a、6bのうち図1の肌着シャツの図に向かって左側(着用者基準では右側)の方の脇側6aのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織であり、図8の(f)が左右の両外脇側のうち図1の肌着シャツの図に向かって右側(着用者基準では左側)の方の脇側6bのフロント側とバック側の脇部を連結する連結編みの編み組織である。ガイドバー(筬)は(a)、(b)で用いたと同じL4,L5が用いられるが、連結編み組織に変えるには、ジャカード制御機構を有するガイドバーL4,L5を用い、連結編みをする部分のみ図8の(e)と(f)に示した組織(これもデンビー組織ではあるが)とすればよい。
【0041】
図8においてFはフロント側の編目位置を示し、Bはバック側の編目位置を示している。図8の(e)、(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織は、表裏同じウェールに通っており(言い換えれば、図8の(a)、(b)のように左右方向に振れていない編み方)、したがって、フロント側とバック側を連結するだけなので、そのつなぎ目が目視では全くわからないようにフロント側基布4とバック側基布5をこれらの基布の両外脇側部分6a、6bでそれぞれ連結し筒状とすることができる。図9は、フロント側とバック側を連結している編み組織を、例えば、ちょうど基布の脇側6側から見たと仮定した場合の概念図である。91がフロント側とバック側を連結している糸である。
【0042】
そして、フロント側基布の肩の部分7a、7bとバック側基布の肩の部分7a、7bは、連結せずに、編み終わった後、それぞれ7a同士と7b同士を縫製で連結してもよいし、この部分を編んで連結する場合には、L4とL5に通糸されている弾性糸をこの部分を編む時のみ、この連結すべき部分を、それぞれ前記ジャカード制御機構を使用し、例えば図8の(g)と(h)に示した連結編み組織とすればよい。
【0043】
図2のスパッツについても地編はほぼ同様である。スパッツ11の両外脇部16a、16bを、図8の(e)、(f)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織とするだけでなく、脚部内側の脇部17a、17bもそれぞれ図8の(f)、(e)に示したフロント側とバック側を連結する連結編みの編み組織とする。主たる地編部分(フロント側基布14、バック側基布15)は、全ウェール総詰で、非弾性糸が鎖編組織で編まれ(図8の(c)、(d))、フロント側基布及びバック側基布とも全ウェール総詰で、弾性糸が前記連結編みの部分を除いて、デンビー組織(図8の(a)、(b))で編まれている。地編は、フロント側が図8の(a)と(c)、バック側が図8の(b)と(d)、の組合せとしたが、特にこれに限定されるものではなく、地編に適する組織であれば、編地が形成できる他の経編組織でもよく、例えば、弾性糸のデンビー組織(a)、(b)の代わりに、図8の(i)と(j)のようなコード組織など適宜変更してよい。尚、従来と同様、編模様(柄)を付与する場合は、ジャカード制御機構により図8の(a)、(b)、(c)又は(d)などの編組織を変えて、編模様(柄)を付与してもよい。
【0044】
以上、地編部分について説明したが、次に、本発明の特徴的部分である補強部について説明する。
【0045】
補強部は、伸縮パワーを強めたい又は非伸縮性機能を強化したい所望の部分に所望のパターン状に、弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸が挿入及び/又は編目形成されて一体編成により当該補強部のパターンを形成している。補強部のパターンは、その縁部形状が、当該経編地の縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を少なくとも有するパターンの補強部であり、前記補強部のパターンは、補強部を構成するための1本又は複数本の補強糸が左右ウェール方向に折り返しながらコース方向に編成されて形成されたパターンであり、前記補強部のパターンの左右の縁に近接する前記補強部を構成する当該糸のそれぞれ左右のいずれか一方づつの又は両方の折り返し部分で巨視的に補強部のパターンの縁が形成されている。しかも、当該補強部のいずれか一つのガイドバーを通して形成された補強部について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが3cm以上、好ましくは5cm以上であるパターンを有している。
【0046】
図3に図1の(b)に示したような形状の補強部2のパターンを形成する場合の編組織の部分的概念図を示した。
【0047】
1〜anの複数本の補強糸で、所望のパターン部分以外のところ21、22、23,24などの部分は、図示したように、1針間の挿入組織とするか、挿入せずに基布より浮かせて(図示せず)その後カットして除去する。カット除去しない場合には、上述の様に1針間の挿入組織とすることにより、補強パワーを最小限にすることができる。また、所望の補強部パターン部分は、図示した補強糸は挿入組織であるが、図7を用いて後述するように、補強糸は挿入されるか、編目形成されるか、或いは、この両者を併用する組織で編まれて形成される(以下、挿入も編目形成もいずれの場合も「編みこまれる」とか「編まれる」と表現することがある。従って「挿入により編みこまれる」と言う表現も用いている。)。この図3では挿入による場合で説明する。
【0048】
この補強部を編成するには、サーボモーターによりウェール方向に好ましくは20cm以上、より好ましくは40cm以上移動可能にされた2つのガイドバー(筬)L1,L2に補強糸をそれぞれ通糸してそれぞれのガイドバーを、編組織に応じウェール方向に動かしながら補強糸を挿入していく。この補強部を編成する補強糸が通糸されるガイドバーが、サーボモーターによりウェール方向に好ましくは20cm以上移動可能にされたガイドバーを用いることが好ましいのは、例えば、おおよそダブルラッシェル編機のニードルバーの編針と編針の間(編機上でのウェール間)の長さを平均的に1mmとすると、20cm以上移動可能ということは、1つのガイドバーで200÷1=200ウェール分ほど経編地横方向に移動可能ということであり、200ウェール分は、糸の太さや編密度、仕上加熱処理などの条件にもよるが、完成品の衣料では横方向の幅がおおよそ半分になるので、1つのガイドバーで完成品の衣料換算で、おおよそ横方向に(後述するX軸投影分長さで)10cmほどの補強部パターンを形成でき、2つのガイドバーでほぼほとんどの各種衣料で要求される大きさを満たす補強部を形成可能になる。もし、要求される大きさの補強部の後述するX軸投影分長さで上記より小さいものしか編む必要がない場合には、このガイドバーのウェール方向移動可能距離の最高値は20cmよりも小さいものでもよい。尚、「サーボモーターによりウェール方向に20cm以上移動可能にされたガイドバー」とは、20cm未満の移動が不可能と言う意味ではない。サーボモーターによりそれより小さい距離、例えば1ウェール分ずつ移動させることが可能であり、20cm以上移動可能にされたガイドバーを用いれば、通常の衣料で要求されるほとんどの寸法(横方向の寸法:後述するX軸投影分長さ)の補強部パターンを形成できるので好ましいという意味である。
【0049】
図14〜図17を用いて2つのガイドバーで補強部のパターンを形成する場合のパターン形成方向の概念を説明する。
【0050】
図14に図1(b)に示した補強パターン2を形成する場合に、補強糸で補強パターン2を形成していく方向を示した概念図の一つを示した。図14に示した場合は、ある1つのガイドバー(L1)に通糸した補強糸でAからBの方向に補強パターン2aを形成し、他の1つのガイドバー(L2)に通糸した補強糸でA´からB´の方向に補強パターン2bを形成していく方法である。この補強パターンを2a、2bを離して表示した概念図が図16である。
【0051】
別の方法として図15にこの補強パターン2を形成する場合に、補強糸で補強パターン2を形成していく方向を示した別の概念図の一つを示した。図15に示した場合は、ある1つのガイドバー(L1)に通糸した補強糸でA→B→C→D→Eの方向に補強パターン2aを形成し、他の1つのガイドバー(L2)に通糸した補強糸でA´→B´→C´→D´→E´の方向に補強パターン2bを形成していく方法である。この補強パターンを2a、2bを離して表示した概念図が図17である。
【0052】
少し、わき道に逸れるが、例えば、図10に示したような補強部のパターンを形成するには、1つのガイドバーに通糸した補強糸でA→B→C→Dの順に補強パターンを形成することはできない。編方向は矢印Pの方向なのでAからBに編み進むことはできても、BからC→Dのように編方向Pと反対向きに戻って編みこむことはできないからである。従って、図10に示したような補強部のパターンを形成するには、図11に示すように、ある1つのガイドバーに通糸した補強糸を用いて図10の補強部パターンの左半分をAからBの方向に形成し、右半分の補強部パターンは他の1つのガイドバーに通糸した補強糸を用いてA´からB´の方向に形成していくことにより形成することができる。図11では、理解を容易にするため左右の補強部パターンを離して記載しているが、本来の形状は、この両者がAとA´、BとB´の部分で重なりあっている。
【0053】
更に、例えば、図12示したような補強部のパターンを形成する場合も同様である。すなわち、1つのガイドバーに通糸した補強糸でA→B→C→D→E→Fの順に補強パターンを形成することはできない。従って、図12に示したような補強部のパターンを形成するには、図13に示すように、ある1つのガイドバーに通糸した補強糸を用いて図12の補強部パターンの左半分をA→B→C→Dの方向に形成し、右半分の補強部パターンは他の1つのガイドバーに通糸した補強糸を用いてA´→B´→C´→D´の方向に形成していくことにより形成することができる。図13では、理解を容易にするため左右の補強部パターンを離して記載しているが、本来の形状は、この両者がAとA´、DとD´の部分で重なりあっている。尚、本発明において「補強部のいずれか一つのガイドバーを通して形成された補強部について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが3cm以上であり」の補強部形成用のいずれか一つのガイドバーとは、上記で説明したようないずれか1つのガイドバーであり、いずれか1つのガイドバーを通して形成された補強部について「経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが3cm以上」であればよい。「いずれか1つのガイドバー」と規定したのは、補強部のパターンが左右線対称でないパターンの場合を想定して規定したものであり、一つのガイドバーを通して形成された補強部経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが3cm以上であれば他のガイドバーを通して形成された補強部経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さは3cm未満であってもよいことを意味している。補強部について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが3cm以上としたのは、従来の方法では、補強部経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターンを形成することも事実上困難で、ましてや、現実的に要求される経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分をX軸に投影した時のX軸上の長さは3cm以上となる場合が多いからである。
【0054】
ところで、図3は、図15で説明した方向で補強部パターン2aと2bを形成する場合の補強糸の挿入組織の一部を示している。補強部パターン2aに相当する部分は、補強糸a1の左の折り返し部分で巨視的にこの補強部2aのパターンの左側の縁が形成されている。補強糸anの右の折り返し部分で巨視的に補強部2aのパターンの右側の縁が形成されている。補強糸a1と補強糸anの間には、この補強部2aのパターンのX軸方向(矢印Pの方向に直角の方向)の幅が所望の幅になるように、複数本の補強糸(この図では更に8本)が補強糸a1やanと全く同一の組織で挿入されている(これらの挿入されている部分の補強糸は図示省略)。前述したように、この補強部2aのパターンのX軸方向の幅を仮に衣料仕上加工終了状態で2cmとするには、用いる糸の太さや、編密度によっても変るが、目安として、平均的に補強糸a1〜補強糸anまでの合計本数で、40本程度必要である。これらの補強糸は、全てa1やanと同じ平行した組織で挿入される。これが[課題を解決するための手段](2)項で言う「前記補強部のパターンが略帯状パターン部分ないしはその組合せからなり、前記略帯状パターン部分の幅に応じた複数のウェールにそれぞれ供給された補強糸から形成されており、当該複数のウェールに供給された補強糸の挿入及び/又は編目形成の組織が各コースにおいて互いに同一である組織から形成されている」という意味の説明の一つとなろう。尚、補強糸a1〜anまでこの例では全てのウェールに補強糸が挿入されているが、要求されるパワーに応じて、例えば、1ウェ−ルおきとか、2ウェールおきとか、適宜の間隔で挿入すればよく、他の例においても同様である。なお、本実施形態例では、補強部は、地編基布に弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸が挿入及び/又は編目形成して(本実施形態例では挿入による例を示した)編みこまれることにより形成しているが、この補強糸の太さ、糸の材質、挿入及び/又は編目形成の密度、組織などを変えて、補強部の伸縮パワー又は非伸縮性の程度をほぼ要求に応じるようにできるので、図21で示したような、地編の一部の編組織を変えることにより、伸縮パワー又は非伸縮性の程度をかえる必要はないが、必要なら、補強部と同様のパターンを地編基布にも図21で示したような、地編の一部の編組織を変えることにより伸縮パワー又は非伸縮性の程度を強化した部分を形成する方法と、更に弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸が挿入及び/又は編目形成する本発明の補強部を形成する方法とを併用して補強部を形成することを妨げるものではない。他の実施形態例についてもこの点は同様である。
【0055】
一方、補強パターン2bに相当する部分は、補強糸b1の右の折り返し部分で巨視的にこの補強部2bのパターンの右側の縁が形成されている。補強糸bnの左の折り返し部分で巨視的に補強部のパターン2bの左側の縁が形成されている。補強部のパターン2bの補強糸の編組織は、補強部2aの組織と、パターン2の縦方向仮想中心線を対称軸に左右線対称となる。
【0056】
[課題を解決するための手段](1)項で言う「前記補強部は、当該経編衣料を構成する経編地の縦方向をY軸、横方向をX軸とした場合に、前記補強部の縁部分の形状の一部又は全部として、当該経編地の縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を少なくとも有するパターンの補強部であり、当該補強部のいずれか一つのガイドバーを通して形成された補強部について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが3cm以上であり」との点は、まず、この図3で説明した態様の場合、補強部2aも2bも左右線対称の同一寸法の補強部であるので、「いずれか一つのガイドバーを通して形成された補強部」は、補強部2aでも2bでもどちらを採用しても同一になるので、仮に補強部2aを対象にして説明すると、図15や図17を参照すると、補強部について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部(曲線状の縁部は、この態様では存在しない)のパターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さとは、X1である。X2やX3も経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部のパターンX軸に投影した時のそれぞれのX軸上の長さになるが、この図15や図17のように、X1上に投影されてX1の中に入ってしまうものは、X軸上に投影したときにX1上に重なって含まれてしまうので、X1、X2及びX3の合計を言うのではない。正に、Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上に投影された状態での長さを言う。図2(a)に示されたパターンの場合も、図18にそのパターンの拡大図を示したように、この場合、経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部を持つパターンの部分13aと、曲線状の縁部を持つパターンの部分13cがあるが、これらの個別のX軸状に投影したときのパターンの部分13aの斜めに直線状の縁部の長さはX1であり、曲線状の縁部を持つパターンの部分13cをX軸状に投影したときの縁部の長さはX2であるが、この図2や図18のように、X2の部分はX1上に投影されてX1の中に入ってしまう。X2はX軸上に投影したときにX1上に重なって含まれてしまうので、X1及びX2の合計を言うのではなく、X1が本発明で言う、Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さである。仮にこのパターンが、図19のように、斜めに直線状の縁部を持つパターンの部分13aと、曲線状の縁部を持つパターンの部分13cのような場合には、X2が本発明で言う、Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さと言うことになる。また、図20のように、斜めに直線状の縁部を持つパターンの部分13aと、曲線状の縁部を持つパターンの部分13cのような場合には、X3が本発明で言う、Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さと言うことになる。
【0057】
また、もし、全体として同じ形、同じ大きさのパターンを形成しても、「当該補強部のいずれか一つのガイドバーを通して形成された補強部について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが3cm以上で」あるから、図3、図15、図17に示した補強パターン2を形成していく方向とは異なる方向、すなわち、図14、図16に示した補強パターン2を形成していく方向で補強パターンを形成した場合には、「当該補強部のいずれか一つのガイドバーを通して形成された補強部」は、図14、図16の2a又は2bであるから、X1が本発明で言う、Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さと言うことになり、仮に、全体の補強部2のパターンの形、大きさが同一であっても、いずれか一つのガイドバーを通して形成された補強部のY軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さは、図3、図15、図17に示した補強パターン2を形成していく場合の方が短くなる。
【0058】
尚、図3の補強糸の編組織は、1コース進むごとに折り返して左右いずれかのウェール方向に2ウェール以上振られ、さらに次の目的のコース分移る際に(図3の態様では次の目的コース分が1コース分の場合)、前記ウェール方向と反対向きのウェール方向に振られる繰り返しであってウェール方向に振られるウェール数を直前の反対方向に振られたウェール数と異ならせることにより、巨視的に経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状(図3の態様ではY軸に対し斜めに直線状の縁部形状のみ)を有するパターンの部分を形成している編組織の例である。
【0059】
図4に図1の(b)に示したような形状の補強部2のパターンを形成する場合の図3とは別の編組織(挿入)の部分的概念図を示した。図4においては、補強部2のパターンの左半分の補強パターン2aの部分を形成する挿入組織と右半分の補強パターン2bの部分を形成する挿入組織とを異なる挿入組織で描いているが、これは、説明のための図面数を省略するためであって、通常の場合は、挿入組織は左右線対称にするのが一般的である。
【0060】
図4の左半分の補強部パターン2aの部分を形成する補強糸の挿入組織は、1本の補強糸40で補強部パターン2aを形成する場合の一態様である。但し「1本の補強糸」と言う表現には、2本以上の糸を引きそろえて1本にまとめて使用する場合も含む意味である。1本の補強糸40の左の折り返し部分で巨視的にこの補強部2aのパターンの左側の縁が形成されている。同補強糸の右の折り返し部分で巨視的に補強部のパターン2aの右側の縁が形成されている。本発明で言う「補強部のパターンの左右の縁に近接する前記補強部を構成する当該糸のそれぞれ左右のいずれか一方づつの又は両方の折り返し部分で巨視的に補強部のパターンの縁が形成されている」のうち「補強部のパターンの左右の縁に近接する前記補強部を構成する当該糸のそれぞれ左右両方の折り返し部分で巨視的に補強部のパターンの縁が形成されている」に該当する態様である。尚、この図では、ほぼ12ウェール横方向に振られて折り返す繰り返しであるが、これは概念図であり、前述したように、仮に補強部のパターン2aのウェール方向の幅を仮に2cmにするには、およそ40ウェール程度ウェール方向に振られて折り返すことになる。どの程度ウェール方向に振られて折り返すかは、補強部のパターン2aのウェール方向の幅に応じて決めればよい。また、この補強糸40の挿入組織は、補強糸が1つのコースから次の目的のコース分移る際に、左右いずれかのウェール方向に2ウェール以上振られ、さらに次の目的のコース分移る際に(図4の補強糸40の態様では次の目的コース分がそれぞれ2コース分の場合)、前記ウェール方向と反対向きのウェール方向に振られる繰り返しであり、ただし、ウェール方向に振られる中間部で1コース下がっている態様である。
【0061】
次に図4の右半分の補強部パターン2bの部分を形成する補強糸の挿入組織は、2本の補強糸41a、41bで補強部パターン2bを形成する場合の一態様である。補強部パターン2bに相当する部分は、補強糸41aの左の折り返し部分で巨視的にこの補強部2bのパターンの左側の縁が形成されている。補強糸41bの右の折り返し部分で巨視的に補強部のパターン2bの右側の縁が形成されている。
【0062】
図4のように、補強糸を1本とか2本のように少なくすることにより、図4の補強部パターンの下端の縁形状を図3とは異なるウェール方向に平行な縁形状でない形状とすることもできる。
【0063】
尚、所望のパターン部分以外のところの補強糸の21、22、23,24などの部分は、図示したように、1針間の挿入組織とするか、挿入せずに基布より浮かせて(図示せず)その後カットして除去する。カット除去しない場合には、上述の様に1針間の挿入組織とすることにより、補強パワーを最小限にすることができる。
【0064】
次に、図1の(a)に示したような形状の補強部3のパターンを形成する場合の編組織の一態様の概念図を図5に示した。図5の補強部パターン3を形成する補強糸の挿入組織は、2本の補強糸50、51で補強部3のパターンを形成した場合の一態様である。補強部3のパターンのほぼ左半分に相当する部分は、補強糸50の左の折り返し部分で巨視的にこの補強部3のパターンの左側の縁が形成されている。また補強糸51の右の折り返し部分で巨視的に補強部3のパターンの右側の縁が形成されている。補強糸50は一つのガイドバーに通糸されており、補強糸51は別のガイドバーに通糸されている。
【0065】
この図5では、補強部3のパターンの上下方向のほぼ中央部では、ほぼ16ウェール横方向に振られて折り返しているが、これは概念図であり、前述したように、仮に補強部3のパターンの上下方向のほぼ中央部でのウェール方向の幅を仮に16cm(左8cm、右8cm)にするには、およそ左右それぞれ160ウェール程度ウェール方向に振られて折り返すことになる。このように、大きな横振りを入れるには、前述したようにその補強糸が通糸されている各ガイドバーが、ウェール方向に大幅に且つ位置をコントロールできるように動かせる必要があり、このためには、好ましくはその補強糸の通糸されるガイドバーがサーボモーターにより、好ましくは20cm以上、より好ましくは40cm以上移動可能にされたガイドバーを備えたジャカードダブルラッシェル経編機を用いることが好ましい。サーボモーターは、位置情報を電気信号で指令を受けることにより、指令に応じてサーボモーターに連結されたガイドバーを左右方向の所定の位置に正確にコントロールできる。尚、上記説明では、補強部3のパターンの上下方向のほぼ中央部でのウェール方向の幅を仮に16cm(左8cm、右8cm)としたが、どの程度ウェール方向に振られて折り返すかは、補強部3のパターンのウェール方向の幅に応じて決めればよい。また、この補強糸50や51の挿入組織は、補強糸が1つのコースからウェール方向が反対向きの次の折り返しを行うコース分移る際に(次の折り返しを行うコース分とは、あるコースから次に反対向きに振られるまでのコース数で、1コース毎に折り返す場合も、適宜複数コース毎に折り返す場合も、これらの併用の場合も含む。複数コース毎に折り返す場合、ウェール方向に振られる糸が、適宜、同じ方向への振りの途中でコースを移る場合も含む)、左右いずれかのウェール方向に2ウェール以上振られ、さらに次の目的のコース分移る際に(図5の補強糸50,51の態様では次の目的コース分が図5のお腹押さえの上方部分と下方部分がそれぞれ1コース分の場合、上下の中間部分が2ないし3コース分で折り返す場合である)、前記ウェール方向と反対向きのウェール方向に振られる繰り返しである。図5のお腹押さえの上下部分の中間部分の補強糸は、ウェール方向に振られる糸が、上述した、振りの途中でコースを移る態様であり、この場合、ウェール方向に振られる糸が同じ方向への振りの途中で1コース次のコースに移る態様である。
【0066】
また、前記[課題を解決するための手段]の(4)にける、「前記補強部の当該経編地の縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部形状を有するパターンの部分における補強糸が1つのコースからウェール方向が反対向きの次の折り返しを行うために目的のコース分移る際に、左右いずれかのウェール方向に2ウェール以上振られ、さらに次の目的のコース分移る際に、前記ウェール方向と反対向きのウェール方向に振られる繰り返しであってウェール方向に振られるウェール数を直前の反対方向に振られたウェール数と異ならせる」についても、上記で説明したと同様の趣旨である。
【0067】
尚、図5において、所望のパターン部分以外のところの補強糸の21、22、23,24などの部分は、図示したように、1針間の挿入組織とするか、挿入せずに基布より浮かせて(図示せず)その後カットして除去する。カット除去しない場合には、図示した様に、1針間の挿入組織とすることにより、補強パワーを最小限にすることができる。
【0068】
次に、図2の(a)に示したような形状の補強部13のパターンを形成する場合の編組織の一態様の概念図を図6に示した。図6は図2の(a)の左側の補強部のパターンについて示したもので、右側の補強部のパターンを形成する場合の編組織の図示は省略しているが、右側の補強部のパターンを形成する場合の編組織は、左右線対称であり、左側の補強部のパターンを挿入により形成する補強糸が通糸されるガイドバーと、右側の補強部のパターンを挿入により形成する補強糸が通糸されるガイドバーとは別のガイドバーで、それぞれ動き方向が左右線対称方向になる。
【0069】
補強部13のパターンを形成する場合の編組織の基本的概念は、補強部13bのウェール方向に垂直な帯状パターン部分を除いて、図3で説明したような挿入様式を応用すればよい。
【0070】
図6は、衣料左側の補強部13のパターンを形成する場合の補強糸の挿入組織の一部を示している。補強部13のパターンに相当する部分は、補強糸a1の左の折り返し部分で巨視的にこの補強部3のパターンの左側の縁が形成されている。補強糸anの右の折り返し部分で巨視的に補強部3のパターンの右側の縁が形成されている。補強糸a1の補強糸anの間には、この補強部3のパターンのX軸方向(矢印Pの方向に直角の方向)の幅が所望の幅になるように、複数本の補強糸(この図では更に10本)が補強糸a1やanと全く同一の組織で挿入されている(これらの挿入されている部分の補強糸は図示省略)。前述したように、この補強部3のパターンのX軸方向の幅を仮に衣料仕上加工終了状態で2cmとするには、用いる糸の太さや、編密度によっても変るが、目安として、平均的に補強糸a1〜補強糸anまでの合計本数で、40本程度必要である。これらの補強糸は、全て同一の平行した組織で挿入される。
【0071】
尚、図6の補強糸の編組織は、補強部13の補強部13aの斜めのパターン部分は1コース進むごとに折り返して左右いずれかのウェール方向に2ウェール以上振られ、さらに次の目的のコース分移る際に(図6の態様では次の目的コース分が1コース分の場合)、前記ウェール方向と反対向きのウェール方向に振られる繰り返しであってウェール方向に振られるウェール数を直前の反対方向に振られたウェール数と異ならせることにより、巨視的に経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状を有するパターンの部分を形成している。
【0072】
補強部13の補強部13bの経編地縦方向Y軸に平行な直線状の帯状のパターン部分は、1コース進むごとに折り返して左右いずれかのウェール方向に3ウェール振られ、さらに次の目的のコース分移る際に(図6の態様では次の目的コース分が1コース分の場合)、前記ウェール方向と反対向きのウェール方向に3ウェール振られる繰り返しであってウェール方向に振られるウェール数を直前の反対方向に振られたウェール数と同一とすることにより、巨視的に経編地縦方向Y軸に対し平行な直線状の縁部形状を有するパターンの部分を形成している。
【0073】
補強部13の補強部13cの曲線帯状のパターン部分は1コース進むごとに折り返して左右いずれかのウェール方向に2ウェール以上振られ、さらに次の目的のコース分移る際に(図6の態様では次の目的コース分が1コース分の場合)、前記ウェール方向と反対向きのウェール方向に振られる繰り返しであってウェール方向に振られるウェール数を直前の反対方向に振られたウェール数と異ならせ、曲線の上下方向中間部ではウェール方向に振られるウェール数を直前の反対方向に振られたウェール数と同一にし、その後は、ウェール方向に振られるウェール数を直前の反対方向に振られたウェール数と異ならせることにより、折り返し点で、巨視的に曲線状の縁部形状を有するパターンの部分を形成している。
【0074】
尚、所望のパターン部分以外のところの補強糸の21、23などの部分は、図示したように、1針間の挿入組織とするか、挿入せずに基布より浮かせて(図示せず)その後カットして除去する。カット除去しない場合には、図示したように1針間の挿入組織とすることにより、補強パワーを最小限にすることができる。
【0075】
以上、図3〜図6においては補強部を構成する補強糸の組織を挿入による組織で編みこむ場合を取り上げて説明したが、補強糸の組織は、挿入だけでなく、編目形成による組織としてもよいし、挿入と編目形成の併用組織としてもよい。図7にこれを説明するための、補強部の補強糸の組織を示す概念図を図示した。いずれも、補強部のパターンが“<”の帯状パターンの例で表示した。
【0076】
図7(a)が補強部を構成する補強糸の組織を挿入による組織で編みこむ場合であり、図7(b)が補強部を構成する補強糸の組織を挿入と編目形成の併用組織(図示した例は挿入と編目形成を交互に繰り返した場合)で編みこむ場合であり、図7(c)が補強部を構成する補強糸の組織を編目形成による組織で編みこむ場合である。これらは一態様を示したものであり、それぞれの挿入組織の態様、編目形成の組織の態様は図示したものに限られるものではなく、本発明の目的が達成できる限り、他の組織の態様としてもよいことは勿論である。但し、補強部の補強糸の組織としていずれの組織を採用しても、補強部のパターン部分以外のところの補強糸の21、23などの部分は、図示したように、1針間の挿入組織とするか、挿入せずに基布より浮かせて(図示せず)その後カットして除去する。カット除去しない場合には、図示したように1針間の挿入組織とすることが必要で、それによりこの部分の補強パワーを最小限にすることができる。ただ、図2の補強部13の13aの部分は、13aの上方部分は地編部分のみの部分がないので、このように、地編地編部分のみの部分がなく、直接補強部が形成される場合で連続して複数着分編方向につなげて連続して製造しないような場合には、必ずしも上記のようにしなくてもよい。
【0077】
次に、通糸する糸とガイドバーの関係の態様の一態様を説明する。これは一態様であり、この態様に限定されるものではない。仮に図1に示したような衣料フロント側にも、バック側にもそれぞれ補強部を形成する場合、通常8枚のガイドバー(L1〜L8)を使用する。L1とL2(図8には図示せず)が、衣料フロント側の補強部を形成するための補強糸が通糸されるガイドバーで、いずれもガイドバーがサーボモーターにより、好ましくは20cm以上、より好ましくは40cm以上移動可能にされたガイドバーである。L3がフロント側の地編形成用の非弾性糸が通糸されるジャカード制御機構を有していてもよいガイドバー、L4がフロント側の地編形成用の弾性糸が通糸されるガイドバーで、ジャカード制御機構を有し、連結編を必要とする部分で連結編に編み組織を変更できるガイドバーである。L5がバック側の地編形成用の弾性糸が通糸されるガイドバーで、ジャカード制御機構を有し、連結編を必要とする部分で連結編に編み組織を変更できるガイドバーである。L6がバック側の地編形成用の非弾性糸が通糸されるジャカード制御機構を有していてもよいガイドバーである。L7とL8(図8には図示せず)が、衣料バック側の補強部を形成するための補強糸が通糸されるガイドバーで、いずれもガイドバーがサーボモーターにより、好ましくは20cm以上、より好ましくは40cm以上移動可能にされたガイドバーである。もし、例えば、図2に示す衣料のように衣料のバック側に補強部が存在しない衣料を製造する場合には、L7とL8のガイドバーは不要になる。補強部の形状がより複雑で、補強糸を通糸するガイドバーが更に必要な場合には、サーボモーターにより、好ましくは20cm以上、より好ましくは40cm以上移動可能にされたガイドバーを増設して用いてもよい。尚、具体的には、例えば、マイヤー製“RDPJ6/2”と言うジャカード制御機構つきのダブルラッシェル経編機のガイドバーを増設し、且つ、サーボモーターとの接続が必要なガイドバーはサーボモーターと接続することにより編み機を本発明の衣料の製造用に適用できる。
【0078】
尚、上記したガイドバーと通糸する糸との関係は一例を示したものであり、本発明の目的が達成される限り、上述した組合せに限定されるものではない。
【0079】
特に限定されるものではないが、地編を形成する非弾性糸としては、44〜154dtex(40〜140d)、地編を形成する弾性糸としては、22〜154dtex(20〜140d)、補強糸としては、弾性糸を用いる場合には44〜462dtex(40〜420d)、非弾性糸を用いる場合には44〜154dtex(40〜140d)の範囲のものから、衣料の要求特性に応じて選定することが好ましい。
【0080】
いずれの場合も、非弾性糸としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維糸、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド繊維糸、アクリル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、ビニロン繊維糸、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維糸、レーヨン、キュプラなどの再生繊維糸、アセテートなどの半合成繊維糸などで、紡績糸(混紡糸も含む)、マルチフィラメント糸(混繊糸も含む。嵩高加工糸などの加工糸も含む)などがあげられ、弾性糸としては、ポリウレタン弾性糸、ポリエーテルエステル弾性糸などがあげられ、他の繊維で弾性糸をカバリングしたカバードヤーンもあげられる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば衣料を構成する地編基布の伸縮パワーを強めたい又は非伸縮性機能を強化したい所望の部分に所望のパターン状に、弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸が挿入及び/又は編目形成されて当該補強部のパターンを形成し、補強部が一体編成により形成されているパワー強化補強部を有するダブルラッシェル編みによる経編衣料を提供できるので、各種下着類、ガードル、ショーツ、ボディスーツ、ウェストニッパー、各種ランジェリー類、スパッツ、スポーツ用衣料などとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0082】
1 肌着シャツ
2 左右の肩甲骨の一部を押さえ、背骨を押えるための補強部
3 お腹押さえ用の補強部
4 フロント側の地編で形成された部分(フロント側基布)
5 バック側の地編で形成された部分(バック側基布)
6a、6b 肌着シャツの外脇側部分
7a、7b 肩の部分
11 スパッツ
13 補強部
14 フロント側の地編で形成された部分(フロント側基布)
15 バック側の地編で形成された部分(バック側基布)
16a、16b スパッツの外脇部
17a、17b 脚部内側の脇部
21,22,23,24 所望の補強部パターン部分以外のところの補強糸
40 補強糸
41a、41b 補強糸
50、51 補強糸
91 フロント側とバック側を連結している糸
210 編組織を変化させて組織の変化で伸縮パワーを強化した部分
211 帯状のパターンの強化部
212 伸縮パワー強化用の弾性糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非弾性糸と弾性糸とが編みこまれている筒状のダブルラッシェル編地から形成された衣料であって、衣料を構成する地編基布の伸縮パワーを強めたい所望の部分又は非伸縮性を付与したい所望の部分に、弾性糸及び/又は非弾性糸からなる補強糸が挿入及び/又は編目形成して編みこまれることにより一体編成により形成されている補強部を有する経編衣料であり、
前記補強部は、当該経編衣料を構成する経編地の縦方向をY軸、横方向をX軸とした場合に、前記補強部の縁部分の形状の一部又は全部として、当該経編地の縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を少なくとも有するパターンの補強部であり、当該補強部のいずれか一つのガイドバーを通して形成された補強部について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが3cm以上であり、
前記補強部のパターンは、補強部を構成するための1本又は複数本の補強糸が左右ウェール方向に折り返しながらコース方向に編成されて形成されたパターンであり、
前記補強部のパターンの左右の縁に近接する前記補強部を構成する当該糸のそれぞれ左右のいずれか一方づつの又は両方の折り返し部分で巨視的に補強部のパターンの縁が形成されていることを特徴とする衣料。
【請求項2】
前記補強部のパターンが略帯状パターン部分ないしはその組合せからなり、前記略帯状パターン部分の幅に応じた複数のウェールにそれぞれ供給された補強糸から形成されており、当該複数のウェールに供給された補強糸の挿入及び/又は編目形成の組織が各コースにおいて互いに同一である組織から形成されている請求項1に記載の衣料。
【請求項3】
当該補強部のいずれか一つのガイドバーを通して形成された部分について経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状及び/又は曲線状の縁部パターン部分のみをX軸に投影した時のX軸上の長さが5cm以上である請求項1又は2のいずれか1項に記載の衣料。
【請求項4】
前記補強部の当該経編地の縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を有するパターンの部分における補強糸が1つのコースからウェール方向が反対向きの次の折り返しを行うために目的のコース分移る際に、左右いずれかのウェール方向に2ウェール以上振られ、さらに次の目的のコース分移る際に、前記ウェール方向と反対向きのウェール方向に振られる繰り返しであってウェール方向に振られるウェール数を直前の反対方向に振られたウェール数と異ならせることにより、巨視的に経編地縦方向Y軸に対し斜めに直線状の縁部形状及び/又は曲線状の縁部形状を有するパターンの部分を形成している請求項1〜3のいずれか1項に記載の衣料。
【請求項5】
前記地編基布がフロント側基布及びバック側基布のいずれも、弾性糸と非弾性糸の交編であるダブルラッシェル編物からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の衣料。
【請求項6】
前記地編基布を構成する前記非弾性糸が、フロント側基布及びバック側基布とも全ウェール総詰で、鎖編組織で編まれ、前記地編基布を構成する前記弾性糸が、フロント側基布及びバック側基布とも全ウェール総詰で、デンビー組織で編まれている請求項5に記載の衣料。
【請求項7】
前記補強部の略帯状パターン部分のX軸方向の幅が、1cm以上である請求項2に記載の衣料。
【請求項8】
衣料のフロント側基布とバック側基布の連結が必要な部分が、フロント側とバック側を連結する連結編みで連結されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の衣料。
【請求項9】
衣料のフロント側基布とバック側基布の両脇側がフロント側とバック側を連結する連結編みで連結されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の衣料。
【請求項10】
衣料が、その補強糸のガイドバーが、サーボモーターによりウェール方向に20cm以上移動可能にされたガイドバーを備えたジャカードダブルラッシェル経編機により形成された衣料である請求項1〜9のいずれか1項に記載の衣料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−136813(P2012−136813A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12068(P2011−12068)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(396021645)吉田産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】