説明

伸縮可能センサ及び該センサを用いた体調管理装置

【課題】検出対象である生体に対する密着性に優れ、かつ装着の負担感がなく、精度の高い計測が可能な伸縮可能センサ及び該センサを用いた体調管理装置を得る。
【解決手段】生体情報を検出するための伸縮可能センサであって、伸縮可能な基体と、基体上に設けられ、検出対象である生体に光を照射するための有機エレクトロルミネッセント素子からなる光源と、基体上に設けられ、検出対象で反射された光源からの光を検出するための有機光電変換素子からなる検出手段とを備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮可能センサ及び該センサを用いた体調管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療費の急激な増大に伴い、予防医療の重要性が広く認識されている。また、いわゆる生活習慣病と総称される糖尿病、高脂血症、高血圧、高尿酸血症など、生活習慣が主な発症原因であると考えられている疾患のリスクが高まっているため、その対策として、日常の体調管理の重要性が増大している。
【0003】
特許文献1には、腕測定型の脈派測定機器において、バンドの長手方向にスライドする機構を備え、とう骨部にアジャストしやすくするとともに、バンドの弾性を利用して、隙間を生じることなく装着できるようにすることが提案されている。
【0004】
特許文献2においては、体温及び/または皮膚の導電度等、運動状態や生理学的状態に基づいて、人の体調を個別に観察する手首装着式モニタ装置が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの従来技術に開示されたセンサは、センサ部の可とう性に乏しいため、生体との密着を得るためにはバンド等をきつく締めつけて、強く拘束する必要があった。このため、血行不良や、皮膚炎のおそれがあるとともに、装着の負担感が大きいという問題があった。また、バンド等がゆるいと、生体の動きと、センサの動きの不調和によって、センサと生体との間に隙間ができたり、あるいは隙間がなくなったりするため、センサの出力が大きく変動し、精度の高い計測が困難になるという問題があった。
【特許文献1】特開平4−129527号公報
【特許文献2】特公平7−504102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、検出対象である生体に対する密着性に優れ、かつ装着の負担感がなく、精度の高い計測が可能な伸縮可能センサ及び該センサを用いた体調管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の伸縮可能センサは、生体情報を検出するための伸縮可能センサであって、伸縮可能な基体と、基体上に設けられ、検出対象である生体に光を照射するための有機エレクトロルミネッセント素子からなる光源と、基体上に設けられ、検出対象で反射された光源からの光を検出するための有機光電変換素子からなる検出手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の伸縮可能センサにおいては、有機エレクトロルミネッセンス素子からなる光源と、有機光電変換素子からなる検出手段とを用いている。有機エレクトロルミネッセント素子及び有機光電変換素子は、いずれも有機材料から形成されるものであるため、伸縮可能な基体の上に形成し、センサ全体を伸縮可能にすることができる。このため、検出対象である生体に対する密着性に優れ、かつ装着の負担感が少なく、精度の高い計測が可能な伸縮可能センサとすることができる。なお、本発明において、伸縮可能とは、20%程度の伸縮が可能であることを意味している。
【0009】
本発明の伸縮可能センサにおいて検出する生体情報としては、心臓の鼓動、呼吸、及び生体組織の酸素飽和度、並びに血液中における血糖値、乳酸濃度、コレステロール濃度、及びアルコール濃度の内の少なくとも1つが挙げられる。また、本発明の伸縮可能センサにおいては、生体組織の電位を測定するための電極をさらに備えていてもよい。このような電極をさらに備えることにより、生体組織の電位を測定することができる。
【0010】
また、本発明の伸縮可能センサにおいては、例えば、有機半導体材料を用いた歪みを検出する検出手段を備えることにより、嚥下、消化器の運動、筋肉の伸縮、皮膚の伸縮、生体組織の弾性などを検出することができる。また、上記以外の生体情報として、上記以外の生理活性物質の濃度、血球の泳動速度などの生体情報を検出可能としてもよい。
【0011】
本発明の伸縮可能センサにおいては、検出手段が複数設けられ、複数の検出手段からの出力信号を相関させて、検出精度を高める手段がさらに備えられていてもよい。検出手段は、同じ種類の検出手段を複数設けてもよいし、異なる種類の検出手段を複数設けてもよい。検出精度を高める手段としては、例えば、差動増幅回路、加算回路、多数決回路などが挙げられる。これらの手段を設けることにより、検出精度を高めることができる。また、生体組織の電位を測定するための電極から得られる出力信号を検出手段の出力信号と相関させて、検出精度を高めることもできる。
【0012】
また、本発明の伸縮可能センサにおいては、他の伸縮可能センサとの間で、検出手段からの出力信号を送信及び/または受信するための通信手段がさらに備えられていることが好ましい。このような通信手段を備えることにより、複数の伸縮可能センサを互いに離れた箇所に設置することができる。また、伸縮可能センサ間の接続ケーブル等が不要となり、装着の負担感をさらに軽減することができる。
【0013】
通信手段としては、例えば、スペクトラム拡散方式などの無線通信や、ISO/IEC 18000−2〜18000−3(電磁誘導方式のRFIDデータ伝送方式)、ISO/IEC 18000−4、18000−6、18000−7(電波方式のRFIDデータ伝送方式)、IEEE802.15.4(ZigBee)、Wibree、Bluetooth、IEEE 802.11(無線LAN)、IEEE 802.16(WiMAX)等の通信規格に準拠する無線通信や、IrDA等の光学的通信、音響通信等が利用できる。電磁誘導方式においては、特に135kHz帯、13.56MHz帯の電磁波を用いた通信を好適に利用できる。また、電波方式においては、特に433MHz帯、900MHz、2.45GHz帯、5.8GHz帯の電磁波を用いた通信を好適に利用できる。光学的通信においては、特に波長850nm〜900nmの赤外線を使用した光学的通信を好適に利用できる。
【0014】
本発明の体調管理装置は、上記本発明の伸縮可能センサと、伸縮可能センサの出力信号から体調を判定する手段と、体調判定手段からの出力信号により体調を表示する手段とを備えることを特徴としている。
【0015】
本発明の体調管理装置は、上記本発明の伸縮可能センサを備えているので、検出対象である生体に対する密着性に優れ、かつ装着の負担感がなく、精度の高い計測が可能となる。
【0016】
また、本発明の体調管理装置においては、伸縮可能センサが複数備えられ、体調判定手段が、複数の伸縮可能センサの出力信号を相関させて体調を判定してもよい。これにより、より精度の高い体調管理を行うことができる。
【0017】
また、本発明の体調管理装置においては、伸縮可能センサからの出力信号を格納する記憶手段をさらに備え、体調判定手段が、記憶手段に格納された伸縮可能センサからの過去の出力信号と、伸縮可能センサからの現在の出力信号とを比較して体調を判定するものであってもよい。
【0018】
本発明における体調判定手段としては、例えば、伸縮可能センサの出力信号と、体調の表示内容との対照表等が利用できる。
【0019】
また、体調表示手段としては、例えば、電子ペーパーや、有機エレクトロルミネッセンス、液晶等を利用する表示器や、音声による案内等が挙げられる。
【0020】
伸縮可能センサからの出力信号を格納する記憶手段としては、例えば、出力信号を電圧値として格納するキャパシタや、フリップフロップ等の順序回路を用いてデータを論理的に記憶するStatic Random Access Memoryや、NOR型不揮発性半導体メモリなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の伸縮可能センサにおいては、有機エレクトロルミネッセント素子からなる光源と、有機光電変換素子からなる検出手段とが設けられており、いずれも有機材料から形成されるものであるため、伸縮可能な基体の上に形成し、センサ全体を伸縮可能にすることができる。このため、検出対象である生体に対する密着性に優れ、かつ装着の負担感が少なく、精度の高い計測が可能となる。
【0022】
本発明の体調管理装置においては、上記本発明の伸縮可能センサを用いているので、装着の負担感を軽減した状態で、常時生体情報を検出することができるため、高い精度で体調を管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体的な実施形態により説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明に従う一実施形態の伸縮可能センサを示す図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は平面図を示す。
【0025】
図1(a)に示すように、シリコーンゴムからなる伸縮可能な基体1の上に、複数の光源10及び検出手段20が設けられている。光源10は、有機エレクトロルミネッセント素子(有機EL素子)から構成されており、検出手段20は、有機光電変換素子から構成されている。
【0026】
本実施例において、基体1は、シリコーンゴムから形成されているが、天然ゴムなどの各種エラストマーや、共重合体、オリゴマー、デンドリマーなどの各種分子性物質等を用いることができる。
【0027】
光源10から出射されるプローブ光の出射範囲31は、光分離体15によって調節され、直接検出手段20に光が入射しないように設計されている。光源10から出射された光は、フィルタ14により、波長や、偏光特性及び可干渉性などが選択される。検出対象50で反射した光32は、フィルタ26を通り、検出手段20に入射し、電気信号に変換される。フィルタ26により、波長や、偏光特性、可干渉性が再度選択される。
【0028】
光源10は、基体1上に電極11を、例えば金の蒸着膜で形成し、その上に発光層12、電極13を積層することにより形成することができる。電極13は、発光層12で発光したプローブ光の所定波長を透過する電極であり、電極24を透過したプローブ光は、フィルタ14を通り出射される。
【0029】
発光層12は、単層であってもよいし、複数の層を積層した構造を有していてもよい。発光層12を複数の積層構造とする場合、例えば、電極11の上に、正孔注入層、発光層、正孔阻止層、及び電子輸送層を順次積層した構造のものが挙げられる。電極11は、例えば、厚さ200nmの金の蒸着膜から形成することができる。電極13は、例えば厚さ30nmの金の蒸着膜から形成することができる。
【0030】
正孔阻止層は、2,9-dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline (BCP)等を用いて形成することができる。電子輸送層は、tris(8-quinolato)aluminum (Alq)等を用いて形成することができる。発光層は、例えば、4,4‘-bis(carbazol-9-yl)-biphenyl (CBP)をホスト材料とし、例えば金属錯体などからなる発光ドーパントを8質量%〜10質量%混合したものから形成することができる。
【0031】
発光ドーパントとしては、以下のものを挙げることができる。
【0032】
【化1】

【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
【化15】

【0047】
【化16】

【0048】
【化17】

【0049】
【化18】

【0050】
【化19】

【0051】
【化20】

【0052】
【化21】

【0053】
【化22】

【0054】
光分離体15は、光源10からのプローブ光に対して遮光性を有する材料から構成される。光分離体15の幅及び高さは、検出対象50との距離を考慮し、さらに隣接する検出手段20以外の検出手段に反射した光が入射しないように設定される。
【0055】
さらに、基体1が伸縮した際においても、光源10からのプローブ光の反射光が、隣接する検出手段20以外の検出手段に入射しないように基体1の伸縮量に応じたマージンを光分離体15の幅及び高さに設定しておくことが好ましい。例えば、想定される基体1の伸縮量がX倍である場合、光源10からのプローブ光の出射範囲31は、Xに応じて広めに設定することが好ましい。例えば、光分離体15の高さを(1/X)に設定してもよい。想定される基体の伸縮量Xとしては、上述のように、1.2倍程度の値を考慮する。
【0056】
光分離体15の幅及び高さは、例えば、0.1μm〜500μmの範囲から選ばれる。
【0057】
検出手段20は、上述のように有機光電変換素子から構成される。具体的には、基体1の上に、電極21、第1の半導体層22、第2の半導体層23、及び第3の半導体層24を形成し、その上に電極25を形成することにより構成される。第1の半導体層22、第2の半導体層23、及び第3の半導体層24からなる半導体領域において、np接合を形成することにより光電変換層とすることができる。
【0058】
第1の半導体層22、第2の半導体層23、及び第3の半導体層24を形成する材料としては、電子受容性機能を有する材料と、電子供与性機能を有する材料のいずれも用いることができ、例えば、以下に例示するような材料が利用される。
【0059】
上記電子受容性機能を有する材料としては、例えば、ピリジンやピリミジン及びそれらの誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、キノリンやキノキサリン及びそれらの誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、シアノ−ポリフェニレンビニレンなどの高分子、ベンゾフェナントロリン類及びその誘導体によるラダーポリマー、フッ素化無金属フタロシアニン、フッ素化金属フタロシアニン類及びそれらの誘導体、無金属ペリレンや金属ペリレン及びそれらの誘導体(金CDA、金CDIなど)、ナフタレン誘導体(NTCDA、NTCDIなど)、バソクプロイン(BCP)及びその誘導体などの低分子有機化合物が利用される。
【0060】
また、電子供与性機能を有する材料としては、トリフェニルアミンなどの芳香族第3級アミン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、カルバゾール及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ビニルカルバゾール及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ピロール及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、チオフェン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、フルオレン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、フェニレン−ビニレン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、チエニレン−ビニレン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、イソチアナフェン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ベンゾフラン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、ヘプタジエン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマーなどの高分子、アセチレン及びその誘導体を骨格にもつオリゴマーやポリマー、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン類及びそれらの誘導体、ジアミン類、フェニルジアミン類及びそれらの誘導体、ペンタセンなどのアセン類及びその誘導体、ポルフィリン、テトラメチルポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、テトラベンズポルフィリン、モノアゾテトラベンズポルフィリン、ジアゾテトラベンズポルフィン、トリアゾテトラベンズポルフィリン、オクタエチルポルフィリン、オクタアルキルチオポルフィラジン、オクタアルキルアミノポルフィラジン、ヘミポルフィラジン、クロロフィル等の無金属ポルフィリンや金属ポルフィリン及びそれらの誘導体、シアニン色素、メロシアニン色素、スクアリリウム色素、キナクリドン色素、アゾ色素、アントラキノン、ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン系色素などの低分子有機化合物が利用される。金属フタロシアニンや金属ポルフィリンの中心金属としては、マグネシウム、亜鉛、銅、銀、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、金、鉛などの金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物などを用いる。
【0061】
各半導体層の形成材料としては、上記の材料を単独で用いてもよいが、上記の材料を適当なバインダ材料に分散混合したものを用いてもよい。また、適当な高分子有機化合物の主鎖や側鎖に、上記低分子有機化合物を組み込んだ材料を用いてもよい。
【0062】
検出手段20を構成する有機光電変換素子の具体例としては、以下のようにして形成することができる。
【0063】
基体1の上に、電極21を形成し、その上に第1の半導体層22として、正孔阻止性の電子輸送性材料バソクプロイン(BCP)の蒸着膜(厚さ10nm)を形成し、その上に、第2の半導体層23として、n型導電性の電子輸送性材料フラーレンC60の蒸着膜(厚さ20nm)を形成し、その上に、第3の半導体層24として、p型導電性の正孔輸送性材料ルブレンの蒸着膜(厚さ50nm)を形成し、その上に電極25を形成する。
【0064】
また、基体1の上には、生体組織の電位を検出するための電極51及び電極52が設けられている。電極51及び電極52は、生体の表面に直接接触するように設けられていることが好ましい。図1に示す実施形態においては、検出対象50は、生体内の血管を想定しており、生体の表面から所定距離内側に位置した箇所が検出対象50の箇所になっている。電極51と電極52との間には、図示しないバイアス回路によって、例えば1.2V〜9V程度の低い電圧が印加されており、電極51と電極52との間のインピーダンスまたはコンダクタンスを、図示しない測定回路で測定し、生体の皮膚電気反射を計測することができる。
【0065】
また、電極51と電極52の間に、電圧を印加せず、電極51と電極52との間の電圧を、図示しない測定回路で測定することにより、筋電図または心電図を計測することができる。
【0066】
検出手段20及び光源10の上には、生体の表面と接触する支持体2が設けられている。支持体2としては、生体に密着しやすく、プローブ光を透過する材質を選択することが好ましい。支持体2としては、セルロース樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル型ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などや、これらの共重合体などが用いられる。
【0067】
支持体2は、検出手段20及び光源10の上に設けられているが、電極51及び52は、支持体2を貫通するように設けられており、生体表面と接触するように設けられている。
【0068】
図1(b)に示すように、光源10のフィルタ14の周りに設けられている光分離体15は、円筒状の形状を有するものである。また、検出手段20におけるフィルタ26の周りには、環状の電極25が設けられている。また、電極51と電極52は、測定すべき対象項目に応じて、所定の距離を隔てて設けられている。
【0069】
図1に示す本実施形態の伸縮可能センサは、上述のように、有機EL素子からなる光源10と、有機光電変換素子からなる検出手段20を有するものであり、いずれも有機材料から形成されているものであるので、基体1の伸縮に伴い変形することが可能である。従って、伸縮可能センサ全体が測定対象である生体の表面などに沿って密着して変形することができる。従って、本実施形態の伸縮可能センサは、検出対象である生体に対する密着性に優れ、かつ装着の負担感がなく、精度の高い計測が可能である。
【0070】
また、光源10から出射された光31は、検出対象50で反射され、反射光32は検出手段20に入射する。出射する光及び入射する光をフィルタなどにより選択することにより、所定の生体情報を精度良く検出することができる。
【0071】
例えば、光源10から、プローブ光31として波長760nm近辺の光を照射すると、検出対象50の位置に存在する還元型ヘモグロビンの濃度を計測することができる。還元型ヘモグロビンの濃度は、時系列データとして変動するが、心臓の鼓動、呼吸、筋肉の伸縮、皮膚の伸縮、組織の酸素飽和度、血球の泳動速度などと相関している。従って、生体の複数の部位からの出力信号を相関させることにより、精度を高め、ノイズを除去することができ、目的とする体調の指標データを精度良く検出できる。
【0072】
(実施例1)
ここでは、図1に示す伸縮可能センサをシール状に形成し、生体の静脈上に貼り付けて、還元型ヘモグロビンの濃度を計測する場合について説明する。この場合、還元型ヘモグロビンの濃度の時系列データは、心臓の鼓動に支配され、呼吸、筋肉の伸縮、皮膚の伸縮、組織の酸素飽和度、血球の泳動速度などとの相関は弱くなる。光源10、検出手段20の中心が、生体の静脈の走行方向と略平行に設定された同一直線上に並ぶように配置すると、一方の検出手段20からの出力信号と、他方の検出手段20からの出力信号とは、検出手段20の間の距離Lと、生体の静脈内における脈波の伝搬速度vとから求められる遅延時間t=L/vに対応した時間差で相関するようになる。距離Lが30cm以下の場合、遅延時間は実用上無視することができるので、一方の検出手段20からの出力信号と、他方の検出手段20からの出力信号とを平均することにより、ノイズを除去し、目的とする心臓の鼓動を精度良く検出することができる。
【0073】
(実施例2)
ここでは、本発明の伸縮可能センサをシール状に形成し、胸部に貼り付けて、還元型ヘモグロビンの濃度と、心電図とを計測する場合について説明する。この場合、還元型ヘモグロビンの濃度の時系列データは、心臓の鼓動に最も大きく支配され、次いで呼吸によっても支配される。四肢の筋肉の伸縮、皮膚の伸縮、組織の酸素飽和度、血球の泳動速度などとの相関は弱くなる。
【0074】
電極51〜電極52間の距離Mを15cm〜25cm程度に設定し、電極51と電極52との間の電圧を図示しない周知の測定回路で測定すると、心電図を計測することができる。ここで、電極51、電極52は、心臓を挟むように、右半身と左半身とに装着されることが好ましい。
【0075】
検出手段20からの出力信号と、心電図のパルス信号とは、心臓の鼓動に対応する周波数領域において、遅延時間に対応した時間差で相関するようになる。従って、検出手段20からの出力信号と、心電図のパルス信号とを相関させることにより、ノイズを除去できる。距離L、Mが30cm以下の場合、遅延時間は実用上無視できるので、検出手段20からの出力信号と心電図のパルス信号とを規格化して平均することにより、ノイズを除去し、第1の目的とする心臓の鼓動を精度良く検出できる。
【0076】
検出手段20からの出力信号と、心電図のパルス信号との差分は、呼吸に対応する周波数領域において、遅延時間に対応した時間差で相関するようになる。従って、検出手段20からの出力信号と、心電図のパルス信号との差分信号をローパスフィルタ特性を示す周知の伝達回路を通過させることにより、ノイズを除去し、第2の目的とする呼吸を精度良く検出できる。
【0077】
(実施例3)
ここでは、本発明の伸縮可能センサを手首と足首とに取り付けて、還元型ヘモグロビンの濃度と、酸化型ヘモグロビンの濃度とを計測する場合について説明する。酸素飽和度sは、s=(酸化型ヘモグロビンの濃度)/{(酸化型ヘモグロビンの濃度)+(還元型ヘモグロビンの濃度)}によって求められる。
【0078】
例えば、手首で計測した酸素飽和度s1と、足首で計測した酸素飽和度s2とは、健康な生体の安静時には相関する。しかし、血行不良や、上肢と下肢の運動量にアンバランスがあるとs1とs2との差が大きくなる。従って、s1とs2との差をモニターする事により、血行不良や、上肢と下肢の運動量のアンバランスを検出でき、投薬や休憩のガイダンスが可能になり、腱鞘炎や、末梢血行障害を予防することができる。
【0079】
光源10からプローブ光として、第1の波長760nm近辺の光を照射すると、検出対象50の位置に存在する還元型ヘモグロビンの濃度を計測できる。また、光源10からプローブ光として第2の波長940nm近辺の光を照射すると、検出対象50の位置に存在する酸化型ヘモグロビンの濃度を計測できる。従って、後述する図2に示す実施形態のように、第1の波長と、第2の波長のプローブ光を選択的に照射できるように、第1の波長のプローブ光を照射する光源10と、第2の波長のプローブ光を照射する光源30とを対で設け、これらに対応する共通の検出手段20を設けるようにすることが好ましい。
【0080】
(実施例4)
実施例3と同様に、還元型ヘモグロビンの濃度と、酸化型ヘモグロビンの濃度とを計測する場合において、後述する図4に示す実施形態のように、第1の波長と、第2の波長のプローブ光を光源10から同時に照射し、検出対象50で反射した光のうち、第1の波長の信号光を受信する検出手段20と、第2の波長の信号光を受信する検出手段40とを設けるようにする。光源10としては、第1の波長の発光部と、第2の波長の発光部とを積層した光源を用いるようにする。
【0081】
<伸縮可能センサの他の実施形態>
図2は、本発明に従う他の実施形態の伸縮可能センサを示す図である。図2(a)は断面図を示しており、図2(b)は平面図を示している。
【0082】
本実施形態においては、1つの検出手段20に対して、2つの光源10及び30をそれぞれ検出手段20に隣接させて設けている。
【0083】
光源30は、光源10と同様の構成を有しており、基板1上に電極36、発光層37、電極38を積層し、その周りを光分離体35で囲み、光出射側にフィルタ34が設けられている。
【0084】
基体1の下方には、電源供給部3が設けられている。この電源供給部3は、光源10及び30並びにその他の回路を駆動するための電流を供給するものであり、例えば、ポリマー電池や、リチウム二次電池などを用いて構成することができる。なお、図1に示す実施形態においても、図示していないが、同様の電源供給部を有している。
【0085】
本実施形態では、光源が2つ設けられているので、例えば、異なる波長の光を光源10及び光源30から出射し、1つの検出手段20で検出することができる。例えば、所定のタイミングで、光源10から光31を出射し、その反射光32を検出手段20で検出した後、次のタイミングにおいて光源30から光33を出射し、その発射光32を検出手段20で測定することができる。
【0086】
図3は、本発明に従うさらに他の実施形態の伸縮可能センサを示す図である。図3(a)は断面図であり、図3(b)は平面図である。
【0087】
本実施形態においては、図3(a)及び(b)に示すように、光検出手段20の周りに、光源10を設けている。従って、光源10は環状の形態を有している。光源10から環状の光31を出射し、検出対象50で反射された反射光32を中心にする検出手段20で検出することができる。
【0088】
図4は、本発明に従うさらに他の実施形態の伸縮可能センサを示す図である。図4(a)は断面図を示し、図4(b)は平面図を示している。
【0089】
本実施形態においては、光源10の両側に2つの検出手段20及び40を設けている。検出手段40は、検出手段20と同様に有機光電変換素子から構成されている。
【0090】
基板1上に、電極41を形成し、その上に第1の半導体層42、第2の半導体層43、及び第3の半導体層44を形成した後、その上に電極45を形成している。また、出射側の中央部分にはフィルタ46が設けられている。
【0091】
本実施形態では、1つの光源から出射された光を2つの検出手段20及び40で検出することができる。
【0092】
図5は、本発明に従うさらに他の実施形態の伸縮可能センサを示す図であり、図5(a)は断面図を示しており、図5(b)は平面図を示している。
【0093】
本実施形態では、図5(a)及び(b)に示すように、光源10の周りに、環状の検出手段20が設けられている。検出手段20が環状に設けられているので、光源10を出射した光31が、検出対象50に反射され、反射した反射光32を効率良く検出手段20で検出することができる。
【0094】
図6は、本発明に従う体調管理装置の構成を示す概略図である。検出対象である生体50の表面に密着させて本発明の伸縮可能センサ60を取り付け、検出手段61で検出された出力信号を、ノイズ除去手段62に送る。ノイズ除去手段62には、複数の検出手段61からの出力信号が与えられ、これらの出力信号を相関させて、検出精度を高めることができる。ノイズ除去手段62からの信号は、体調判定手段64に与えられる。体調判定手段64が、別のセンサに設けられている場合には、ノイズ除去手段62の出力信号を通信手段63を介して体調判定手段64に与える。体調判定手段64においては、各伸縮可能センサからの出力信号に基づいて体調を判定し、出力信号を体調表示手段65に与える。体調表示手段65においては、体調判定手段64から与えられた信号に基づき、体調を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に従う実施形態の伸縮可能センサを示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図。
【図2】本発明に従う実施形態の伸縮可能センサを示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図。
【図3】本発明に従う実施形態の伸縮可能センサを示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図。
【図4】本発明に従う実施形態の伸縮可能センサを示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図。
【図5】本発明に従う実施形態の伸縮可能センサを示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図。
【図6】本発明に従う体調管理装置の構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0096】
1…基体
2…支持体
3…電源供給部
10…光源
11…電極
12…発光層
13…電極
14…フィルタ
15…光分離体
20…検出手段
21…電極
22…第1の半導体層
23…第2の半導体層
24…第3の半導体層
25…電極
26…フィルタ
30…光源
31…出射光
32…反射光
34…光分離体
35…フィルタ
36…電極
37…発光層
38…電極
40…検出手段
41…電極
42…第1の半導体層
43…第2の半導体層
44…第3の半導体層
45…電極
46…フィルタ
50…検出対象
60…伸縮可能センサ
61…検出手段
62…ノイズ除去手段
63…通信手段
64…体調判定手段
65…体調表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報を検出するための伸縮可能センサであって、
伸縮可能な基体と、前記基体上に設けられ、検出対象である生体に光を照射するための有機エレクトロルミネッセント素子からなる光源と、前記基体上に設けられ、前記検出対象で反射された前記光源からの光を検出するための有機光電変換素子からなる検出手段とを備えることを特徴とする伸縮可能センサ。
【請求項2】
前記生体情報が、心臓の鼓動、呼吸、及び生体組織の酸素飽和度、並びに血液中における血糖値、乳酸濃度、コレステロール濃度、及びアルコール濃度の内の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の伸縮可能センサ。
【請求項3】
生体組織の電位を測定するための電極をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮可能センサ。
【請求項4】
前記検出手段が複数設けられており、複数の検出手段からの出力信号を相関させて、検出精度を高める手段がさらに備えられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸縮可能センサ。
【請求項5】
他の伸縮可能センサとの間で、前記検出手段及び/または前記電極からの出力信号を送信及び/または受信するための通信手段がさらに備えられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸縮可能センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の伸縮可能センサと、前記伸縮可能センサの出力信号から体調を判定する手段と、前記体調判定手段からの出力信号により体調を表示する手段とを備えることを特徴とする体調管理装置。
【請求項7】
前記伸縮可能センサが複数備えられており、前記体調判定手段が、複数の伸縮可能センサの出力信号を相関させて体調を判定することを特徴とする請求項6に記載の体調管理装置。
【請求項8】
前記伸縮可能センサからの出力信号を格納する記憶手段をさらに備え、前記体調判定手段が、前記記憶手段に格納された前記伸縮可能センサからの過去の出力信号と、前記伸縮可能センサからの現在の出力信号とを比較して体調を判定することを特徴とする請求項6または7に記載の体調管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−237686(P2008−237686A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84495(P2007−84495)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】