説明

伸縮性を備えた細幅織物

【課題】伸縮性を備えた細幅織物に関し、緯糸や経糸にウレタン糸を用いた細幅織物の切断辺のほつれの問題や経割れの問題を解決する。
【解決手段】緯糸と経糸の所定本数毎に熱融着ウレタン糸13、23を配置して製織し、得られた織物を加熱処理することにより、経緯の熱融着ウレタン糸13、23の表面相互がそれらの糸の交点3で融着している。熱融着ウレタン糸13、23は、融点の低いポリウレタンフィラメントの芯糸に粗くカバーリングした糸である。製織したあと加熱処理を施すことにより、経緯の低融点ポリウレタンフィラメント相互がそれらの交点で熱融着して、緯糸のほつれや経割れが防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウレタン糸(ポリウレタンフィラメントの芯糸にレーヨン、綿、ウーリーナイロンなどの糸を巻き付けたカバーリング糸を言う。以下同じ。)を緯糸及び経糸に含ませることにより、幅方向に伸縮性を付与した細幅織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経糸にウレタン糸を用いて長手方向の伸縮性を付与した細幅織物(以下「ゴム織テープ」と言う。)は、衣服、特に下着類の縁や下着類に取付ける紐として広く用いられている。この種のゴム織テープは、通常、経糸としてレーヨン、綿、ウーリーナイロン糸などの非伸縮性の糸にウレタン糸を本数割合で数%〜十数%混ぜたものを用い、緯糸としてレーヨン、綿、ウーリーナイロン糸などの非伸縮性の糸を用いて、経糸に含まれているウレタン糸を引き延ばした状態で製織することにより、製造されている。
【0003】
このようにして得られるゴム織テープは、シャツ、スラックス、ブラジャー、ガードルなどの下着類の縁や紐の部分に縫い付けて、当該縁や紐に伸縮性を付与するのに使われている。
【0004】
このようなゴム織テープは、短く切って使われることもある。例えば、着脱時のフックの掛け外しを容易にする目的で、スカートの胴回りを止めるフックをその掛け外し方向に伸縮性のある布片を介して取付けることがある。このような場合に使用する長さの短い布片は、従来、ゴム織テープを短く切断し、その切断辺をほつれ止めのかがり糸でかがって使用している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような長さの短いゴム織テープが必要なとき、経糸に伸縮性のない糸を用い、緯糸にウレタン糸を用いて、幅方向に伸縮性のある細幅織物を製造し、これを所望長さに切断して用いることもできる。この方法は、伸縮方向の長さは一定であるが種々の幅のものが必要な場合、例えば前の例で、フックの掛け外しを容易にするために必要な布片の伸縮方向の長さは一定であるが、スカートの胴回りに縫い付ける縁布の幅寸法に種々の寸法のものがあるため、それに合わせてフックを取付ける布片に種々の幅寸法のものが必要な場合などである。
【0006】
このような場合、経方向に伸縮性のあるゴム織テープを用いると、幅の異なる多種類のゴム織テープが必要である。しかし幅方向に伸縮性がある細幅織物であれば、切断長さを変えるだけで幅寸法の相違に対処できる。
【0007】
更に、経糸と緯糸にウレタン糸を用いることにより、経緯斜めに伸縮性を備えた細幅織物を製織することも可能である。このような細幅織物は、経方向にのみ伸縮性を有するゴム織テープに比べて、伸縮率を大きくすることができる。例えば、経糸にのみウレタン糸を用いたものでは2倍程度の伸縮率が限度であるが、経糸と緯糸の両方にウレタン糸を用いたものでは、2.5倍の伸縮率のものが得られる。例えば腰回りを通して着脱する女性用の下着の胴回りに取付ける伸縮テープば、2.5倍の伸縮率が必要である。
【0008】
本願発明の発明者は、衣服に使用する細幅織物として、ウレタン糸を緯糸として用いた細幅織物及びウレタン糸を経糸及び緯糸として用いた細幅織物を製織した。
【0009】
ところが、緯糸にウレタン糸を用いた細幅織物は、所定長さに切断したとき、その切断辺から緯糸がほつれてしまい、切断辺をかがり糸でかがっても、よほど大きくかがらない限り、かがりごとほつれてしまうという問題があった。
【0010】
また、経緯及び緯糸にウレタン糸を用いた経緯斜めに伸びる細幅織物では、織物を爪で幅方向にひっかいたときなどに、経糸の間に隙間ができる経割れと呼ばれる現象を生じやすく、これも実用化する上で問題があることが分かった。
【0011】
この発明は、緯糸に、又は経糸及び緯糸にウレタン糸を用いた細幅織物の上記問題を解決することを目的として為されたもので、緯糸にウレタン糸を用いた細幅織物の切断辺のほつれの問題、及び、ウレタン糸を経糸及び緯糸に用いた細幅織物の切断辺のほつれの問題と経割れの問題を解決することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、緯糸と経糸の所定本数毎に熱融着ウレタン糸13、23を配置して製織し、得られた織物を加熱処理することにより、経緯の熱融着ウレタン糸13、23の表面相互がそれらの糸の交点3で融着していることを特徴とする伸縮性を備えた細幅織物を提供することにより、上記課題を解決したものである。
【0013】
熱融着ウレタン糸13、23は、織物に伸縮性を付与するのに従来から用いられているウレタン糸と同様にポリウレタンフィラメントを芯糸とするカバーリング糸であるが、融点の低いポリウレタンフィラメントを用い、かつカバーリングを粗くして、低融点のポリウレタンフィラメントが糸表面に露出している糸である。
【0014】
このような熱融着ウレタン糸13、23を経緯に配置すれば、その交点3で低融点ポリウレタンフィラメントの表面相互が接触することとなり、製織したあと加熱処理を施すことにより、接触している部分の経緯の低融点ポリウレタンフィラメント相互が熱融着して、切断辺の緯糸がほつれたり経割れが生ずるのを防止できる。
【0015】
この発明の細幅織物は、経糸及び緯糸の総てを熱融着ウレタン糸13、23としたもの、緯糸の総てを熱融着ウレタン糸23にすると共に経糸には1本又は複数本の高被覆ウレタン糸12毎に1本の熱融着ウレタン糸13を配置したもの、緯糸として高被覆ウレタン糸22の1本と熱融着ウレタン糸23の1本とを対にして同時に緯入れしたもの、経糸として非伸縮性の経糸11の数本〜十数本毎に熱融着ウレタン糸の経糸13を配置したものなど、種々の糸使いのものが可能である。
【0016】
経糸及び緯糸の全てを熱融着ウレタン糸とすれば、経緯両方向に伸びる薄地の細幅織物がえられる。この出願の請求項2の発明に係る細幅織物は、上記の構成を備えた、細幅織物において、経糸及び緯糸の全てが熱融着ウレタン糸13、23であることを特徴とするものである。
【0017】
またこの出願の請求項3の発明に係る細幅織物は、上記構成を備えた細幅織物において、緯糸が全て熱融着ウレタン糸23であり、経糸に熱融着ウレタン糸13の1本毎に1本又は複数本の高被覆ウレタン糸12が含まれていることを特徴とするものである。
【0018】
ここで高被覆ウレタン糸12、22は、従来ゴム糸として一般に用いられているウレタン糸、すなわち、ポリウレタンフィラメントの芯糸にレーヨン、綿、ウーリーナイロンなどのカバーリング糸を、糸表面に芯糸が露出しないようにS及びZ方向に充分に巻回して芯糸表面を被覆した糸である。
【0019】
織組織は、縦横の熱融着ウレタン糸13、23については、1本毎に交絡する平織ないしむしろ織として、熱融着される交点3の数が多くなるようにする。一方、得られる細幅織物に良好な染色性や肌触りを付与したいときは、例えば、経糸に含ませた非伸縮糸11や高被覆ウレタン糸12を緯糸2本毎に交絡するハカタ(二越し)や表側三越し裏側一越しの綾織とする。また、緯糸については、ニードル1本のニードル織機で織るときは、高被覆ウレタン糸22と熱融着ウレタン糸23とを並べて用い、両者を同時に緯入れする。この場合は、緯方向の高被覆ウレタン糸22は、熱融着ウレタン糸23の1本毎に1本挿入されることになる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、緯糸としてウレタン糸を用いた細幅織物を所望長さに切断して使用するときの、切断辺における緯糸のほつれを有効に防止することができる。すなわち、切断辺部分の緯糸が離脱しようとしても、経糸に含ませた経方向の熱融着ウレタン糸13に融着している緯方向の熱融着ウレタン糸23が、その離脱を阻止して、緯糸のほつれを防止する。
【0021】
また、ウレタン糸を経糸と緯糸とに用いて経緯斜めに伸縮性を付与した細幅織物においては、上記のように切断辺における緯糸のほつれが防止されると共に、織物を幅方向にひっかいたときなどに生ずる経割れを防止することができる。すなわち、経方向の熱融着ウレタン糸13が緯方向に細かいピッチで挿通されている熱融着ウレタン糸23との交点3で融着していることにより、経糸相互の離隔が緯方向の熱融着ウレタン糸23により防止される。
【0022】
従って、緯糸又は経緯の糸にウレタン糸を用いて製織した細幅織物の上述した問題点が解消され、幅方向に伸縮性を備えた細幅織物や経緯斜めに伸縮性を備えた細幅織物を衣服の縁や紐として用いることができ、細幅織物の用途や衣服の機能を向上させることができるという効果がある。
【0023】
また、ポリウレタンフィラメントは熱融着しても融着点が硬化しないので、肌触りや風合いの良好な細幅織物が得られ、経糸に非伸縮糸11や高被覆ウレタン糸12を混ぜて製織することにより、得られる細幅織物の肌触りや風合い、染色性などを調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1及び2は、この発明の伸縮性を備えた細幅織物の第1例を模式的に示す図で、11はウーリーナイロンの経糸、13は熱融着ウレタン糸の経糸、22は高被覆ウレタン糸の緯糸、23は熱融着ウレタン糸の緯糸である。
【0025】
経方向の熱融着ウレタン糸13は、非伸縮糸であるウーリーナイロン糸11の5〜15本に1本の割合で挿入する。一方、緯糸については、高被覆ウレタン糸22と熱融着ウレタン糸23とが揃えて同時に緯入れされており、熱融着ウレタン糸1本ごとに高被覆ウレタン糸1本が挿入されている。経糸には高被覆ウレタン糸は含まれておらず、緯糸には非伸縮糸は含まれていない。
【0026】
熱融着ウレタン糸13、23は、130℃〜160℃の熱処理で融着する低温融着ウレタン糸で、210デニールのポリウレタンフィラメントに12デニールのウーリーナイロン1本を粗くカバーリングした糸である。また、緯糸に使っている高被覆ウレタン糸22は、140デニールのウレタンフィラメントに50デニールのウーリーナイロン糸2本をS方向とZ方向にカバーリングした糸である。
【0027】
上記の経糸及び緯糸をニードル織機で細幅織物に製織する。熱融着ウレタン糸の緯糸23と高被覆ウレタン糸の緯糸22は、1本のニードルで同時に緯入れされている。すなわち、熱融着ウレタン糸と高被覆ウレタン糸との一対が1本の緯糸となって経糸と交織されている。熱融着ウレタン糸の経糸13は緯糸1本(一対)毎に緯糸と交絡しており、非伸縮性の経糸11は緯糸2本毎に緯糸と交絡するハカタ織となっている。
【0028】
上記のようにして細幅織物を製織したあと、得られた織物を加熱釜で130℃に均一に加熱し、経緯の熱融着ウレタン糸13、23をその交点3で融着し、この発明の細幅織物を得る。
【0029】
図3に示す第2例は、経糸及び緯糸の総てを熱融着ウレタン糸13、23として縦横斜めに伸縮性を備えた細幅織物とした例で、経糸及び緯糸として細い糸を用いて粗く織ることにより、縦横斜めの大きな伸縮性を有する細幅織物とした例である。熱融着ウレタン糸13、23としては、40デニールのポリウレタンフィラメントに12デニールのウーリーナイロンをシングルカバーリングした糸を用い、織組織は平織りである。この例では、製織した細幅織物を加熱処理することにより、経糸と緯糸の総ての交絡点が熱融着される。
【0030】
図4及び図5は、図2の縦横斜めに伸びる細幅織物について、染色性や肌触りを改善した第3例を示したものである。この例では、緯糸は総て熱融着ウレタン糸23とし、経糸として高被覆ウレタン糸12二本毎に1本の熱融着ウレタン糸13を配置している。織組織は、経の熱融着ウレタン糸13はむしろ織、経の高被覆ウレタン糸12は綾織である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の細幅織物の第1例の織組織を示す平面図
【図2】図1の織組織の側面図
【図3】この発明の細幅織物の第2例の織組織を示す平面図
【図4】この発明の細幅織物の第3例の織組織を示す平面図
【図5】図4の織組織の側面図
【符号の説明】
【0032】
3 経緯の熱融着ウレタン糸の交点
11 非伸縮性の経糸
12 経方向の高被覆ウレタン糸
13 経方向の熱融着ウレタン糸
22 緯方向の高被覆ウレタン糸
23 緯方向の熱融着ウレタン糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯糸と経糸の所定本数毎に熱融着ウレタン糸(13,23)を配置して製織し、得られた織物を加熱処理することにより、経緯の熱融着ウレタン糸(13,23)の表面相互がそれらの糸の交点(3)で融着していることを特徴とする、伸縮性を備えた細幅織物。
【請求項2】
経糸及び緯糸の全てが熱融着ウレタン糸(13,23)であることを特徴とする、請求項1記載の細幅織物。
【請求項3】
緯糸が全て熱融着ウレタン糸(23)であり、経糸に熱融着ウレタン糸(13)の1本毎に1本又は複数本の高被覆ウレタン糸(12)が含まれていることを特徴とする、請求項1記載の細幅織物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−75230(P2008−75230A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259230(P2006−259230)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(598114491)有限会社マルマツ繊維 (3)
【Fターム(参考)】