説明

伸縮性を有する光反射性経編地

【課題】大きな伸縮性を有する光反射性経編地を提供する。
【解決手段】鎖編の糸L1と挿入組織の挿入糸L3,L5、弾性糸L2とで構成される経編地に、光反射性糸L4がコース方向に挿入されている光反射性経編地であって、挿入糸L5,L3のうち光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の夫々一つL5a,L3aが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸からなり、非弾性糸が熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で光反射性糸に接着されており、コース方向に2コース連続した鎖編組織単位(e1)と2コース連続した挿入組織単位(e2)との交互の繰返しからなる組織の弾性糸L2が全ウェールに総詰で編みこまれていて、ウェール方向に平行な方向が長手方向である畝と溝が交互に繰返し形成されている伸縮性を有する光反射性経編地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポーツウェアーその他の外衣などの上着の袖口や、衿、裾部分、ズボンの裾回り、手袋のなどの手首部分、サポーターなどに用いられる、光反射性糸が部分的に挿入された伸縮性を有する光反射性経編地に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、夜間の歩行、道路工事などの際に、自動車等のヘッドライトの光が当った時に、それを反射するなど、光反射性糸(細長い光反射性フィルムも含めて、光反射性糸と表現しています)が部分的に挿入されている編地が、スポーツウェアー、作業服を含むその他の外衣などの上着の袖口や、衿、裾部分、ズボンの裾回り、手袋のなどの手首部分、サポーターなどに用いられ、着用者の安全性向上に貢献する適用がなされている。
【0003】
従来提案されているこれらの編地は、伸びがなく、伸縮性が要求される部位の編地には適用しがたいという問題がある。
【0004】
そこで、近年、伸縮性も有すると記載されている編地も提案されている(下記特許文献1、2参照)。
【0005】
しかし、編物は引っ張られた際に一般的に編組織の編目が伸びるので、織物に比べて伸縮性があることは知られているが、これら特許文献記載の編地は、織物に比べて編組織の編目が伸びる程度の本来の編物がその編組織上有する程度の伸縮性しかなく、しかも、光反射性糸は、伸縮性はないので、光反射性糸もその長さ方向への編物の伸縮性を阻害するので、例えば、光反射性糸の長さ方向へ元の長さの150%や200%程度も伸びる大きな伸縮性を有する光反射性経編地は得られていない。
【0006】
スポーツウェアーや作業服、手袋のなどの手首部分、サポーターなどは、比較的大きな伸縮性を要求されるので、伸縮性は大きいことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−226949号
【特許文献2】特開2004−60109号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術では、達成できていない大きな伸縮性を有する光反射性経編地で、伸ばしても光反射性糸が編組織からずれたり、抜け出たりすることのない伸縮性を有する光反射性経編地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)前記課題を達成するため、本発明の伸縮性を有する光反射性経編地は、ループ組織を構成する糸(A)と挿入組織を構成する少なくとも2種類の非弾性糸からなる挿入糸(B1)、(B2)と弾性糸(E)とを含んで構成される経編地に、更に光反射性糸(C)が1本又は複数本コース方向に挿入されていて、前記光反射性糸(C)は、前記挿入糸(B1)と(B2)の間に挟まれて挿入されている光反射性経編地であって、
前記挿入糸(B1)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)からなり、前記挿入糸(D1)の非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で光反射性糸の光反射面側に接着されており、
前記挿入糸(B2)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)からなり、前記挿入糸(D2)の前記非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で(D1)とは反対側面で当該光反射性糸に接着されており、
前記弾性糸(E)は、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と単数ないし複数の挿入組織単位(e2)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)、又は、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)が全ウェールに総詰で編みこまれていて、前記弾性糸(E)の伸縮力により、ウェール方向に平行な方向が長手方向である畝と溝が交互に繰返し形成されている伸縮性を有する光反射性経編地からなる。
【0010】
(2)前記(1)項記載の伸縮性を有する光反射性経編地においては、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位と単数ないし複数の挿入組織単位の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)が、コース方向に2〜4コース連続したループ組織単位(e1)と2〜4コース連続した挿入組織単位(e2)との交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)からなることが好ましい。
【0011】
(3)前記(1)項記載の伸縮性を有する光反射性経編地においては、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)がコース方向に2〜4コース連続したループ組織単位(e1)と2〜4コース連続した当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)との交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)からなることが好ましい。
【0012】
(4)また、前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地においては、 前記弾性糸(E1)又は(E2)において、前記ループ組織単位が、鎖編からなるループ組織単位であることが好ましい。
【0013】
(5)また、前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地においては、前記ループ組織を構成する糸(A)のループ組織が、全ウェール総詰の非弾性糸からなる鎖編組織からなり、前記挿入組織を構成する非弾性糸からなる2種類の挿入糸(B1)、(B2)が振りの方向が各コースで互いに反対向きの振り方向の2種類の挿入糸(B1)と(B2)とからなる全ウェール総詰の挿入糸であり、前記挿入糸(B1)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)からなり、前記挿入糸(B2)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)からなることが好ましい。
【0014】
(6)また、本発明の伸縮性を有する光反射性経編地においては、
ループ組織を構成する糸(A)と挿入組織を構成する少なくとも2種類の非弾性糸からなる挿入糸(B1)、(B2)と弾性糸(E)とを含んで構成される経編地に、更に光反射性糸(C)が1本又は複数本コース方向に挿入されていて、前記光反射性糸(C)は、前記挿入糸(B1)と(B2)の間に挟まれて挿入されている光反射性経編地であって、
前記ループ組織を構成する糸(A)のループ組織が、全ウェール総詰の非弾性糸からなる鎖編組織からなり、
前記挿入組織を構成する非弾性糸からなる挿入糸が、振りの方向が各コースで互いに反対向きの振り方向の2種類の挿入糸(B1)と(B2)とからなり、前記挿入糸(B1)と(B2)は全ウェール総詰であり、
前記挿入糸(B1)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)からなり、前記挿入糸(D1)の非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で(D1)とは反対面で光反射性糸に接着されており、
前記挿入糸(B2)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)からなり、前記挿入糸(D2)の非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で光反射性糸に接着されており、
前記弾性糸(E)は、コース方向に2〜4コース連続したループ組織単位(e1)と2〜4コース連続した挿入組織単位(e2)との交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)又は、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)が全ウェールに総詰で編みこまれていて、前記弾性糸(E)の伸縮力により、ウェール方向に平行な方向が長手方向である畝と溝が交互に繰返し形成されている伸縮性を有する光反射性経編地であることが好ましい。
【0015】
(7)また、前記(1)〜(6)項のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地においては、前記ループ組織を構成する糸(A)のループ組織が鎖編組織でその鎖編組織を構成する全ウェール総詰の非弾性糸、及び、2種類の挿入糸(B1)又は(B2)が、
(B1)の挿入糸のうち前記非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)の熱接着糸と、前記挿入糸(B2)のうち非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)の熱接着糸を除いて、
ポリエステル繊維糸、ナイロン繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、アクリル繊維糸、ビニロン繊維糸から選ばれる糸からなることが好ましい。
【0016】
(8)また、前記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地においては、前記非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)を構成する非弾性糸が、透明なモノフィラメント糸であることが好ましい。
【0017】
(9)また、前記(8)項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地においては、透明なモノフィラメント糸が、ナイロンモノフィラメント糸、ポリエステルモノフィラメント糸、ポリプロピレンモノフィラメント糸、ポリエチレンモノフィラメント糸から選ばれたモノフィラメント糸であることが好ましい。
【0018】
(10)また、前記(1)〜(9)項のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地においては、挿入糸(B1)が構成する挿入組織が、チェーン番号で、0−0/4−4/0−0/4−4であり、挿入糸(B2)が構成する挿入組織が、チェーン番号で、6−6/0−0/6−6/0−0であることが好ましい。
【0019】
(11)また、前記(1)〜(10)項のいずれかに記載の伸縮性を有する光反射性経編地においては、弾性糸(E1)の組織が、チェーン番号で、2−0/0−2/2−2/0−0の組織からなることが好ましい。
【0020】
(12)また、前記(1)〜(10)項のいずれかに記載の伸縮性を有する光反射性経編地においては、弾性糸(E2)の組織が、チェーン番号で、2−0/0−2/2−2/2−2の組織からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光反射性経編地は、編方向に大きな伸縮性を有する光反射性経編地で、コース方向(編地の縦方向)に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と単数ないし複数の挿入組織単位(e2)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)、又は、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)の伸縮力により、ウェール方向に平行な方向に長手方向を有する畝と溝が交互に繰返し形成され、光反射性糸も、畝と溝を直角方向に横切る方向に挿入されていて畝と溝の形に応じて畳まれた形で挿入されていることになるので、コース方向に編地を伸ばしても畝と溝が平たくなりながら伸びるし、弾性糸による伸縮性もあるので、光反射性糸それ自体は伸縮性の素材から形成されていなくても、編地の伸びに応じて畝と溝が平たくなりながら伸びることが出来、また、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)の非弾性糸が前記熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で光反射性糸の光反射面側に接着され、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)の非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で(D1)とは反対側面で当該光反射性糸に接着されているので、光反射性糸が編組織からずれたり、抜け出たりすることがなく、いわゆる蛇腹状に縮まった編地を伸ばすような原理で伸縮できるので、コース方向(編地の縦方向)に極めて大きく伸ばせる伸縮性を有する光反射性経編地を提供できる。また、特に、光反射性糸を横切る交点で光反射性糸の光反射面側に接着されて光反射性糸を保持している糸として透明なモノフィラメント糸を用いた場合には、光反射性糸の反射面からの反射光をさえぎる率が非常に少なくなるので、光反射力の低下も非常に少なくできる伸縮性を有する光反射性経編地を提供でき好ましい。
【0022】
従って、本発明の光反射性経編地は、スポーツウェアーや作業服、ジャンパーなどの上着の袖口や、衿、裾部分、ズボンの裾回り、手袋のなどの手首部分、サポーターなど、動きがかなりあり、比較的大きな伸縮性を要求される部位に好適に適用できる光反射性経編地として、極めて有用な伸縮性を有する光反射性経編地を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態例の伸縮性を有する光反射性経編地のループ側(編裏)から見た実態的編組織図。
【図2】ガイドバーの動きから示される図1に示した伸縮性を有する光反射性経編地の編組織図。
【図3】図1に示した実態的編組織に使用されている各糸の組織を、糸ごとにそれぞれ個別に並べて示した実態的分解組織図。
【図4】光反射性糸L4とこれを繰返し横切る挿入糸の一つL5aのみを表示したループ側(編裏)から見た実態的編組織図。
【図5】光反射性糸L4と挿入糸L5およびL3のみを表示したループ側(編裏)から見た実態的部分組織図。
【図6】光反射性糸L4a、L4bとこれらの各光反射性糸L4a、L4bそれぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の各一つL5a、L5bその近隣の挿入糸L5のみを表示したループ側(編裏)から見た実態的編組織図。
【図7】光反射性糸L4と挿入糸L5およびL3のみを表示したループ側(編裏)から見た別の態様の実態的部分組織図。
【図8】ループ組織を構成する糸(A)の別の態様のデンビー組織を示す編組織図。
【図9】ループ組織を構成する糸(A)の更に別の態様のコード組織を示す編組織図。
【図10】図3において、弾性糸が弾性糸(E2)の態様に置き換えられた、図3と同様の表現形式の糸ごとにそれぞれ個別に並べて示した実態的分解組織図。
【図11】弾性糸(E)の別の態様の編組織を示す組織図。
【図12】弾性糸(E)の更に別の態様の編組織を示す組織図。
【図13】本発明の経編地をコース方向に切断した場合の切断面の断面形状の概略図。
【図14】本発明の経編地の概略斜視図。
【図15】本発明の別の態様の経編地をコース方向に切断した場合の切断面の断面形状の概略図。
【図16】スポーツウェアーの上着を示す図。
【図17】スポーツウェアーのズボンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の理解を容易にするために具体的な実施の形態例を参照しながら、本発明を説明するが、本発明は、これらの具体的実施形態例のみに限定されるものではない。なお、本発明の経編地においては、通常の当業界の用語の意味のとおり、コース方向とは、編方向(経編機から、経編地が編まれて排出される方向、いわゆる経編地の経方向)を意味し、ウェール方向とは、コース方向と直角の方向、経編地の横方向を意味している。
【0025】
図1は本発明の一実施形態例の伸縮性を有する光反射性経編地のループ側(編裏、テクニカルフェースとも言う)から見た実態的編組織図を示す。図2はガイドバーの動きから示される図1に示した伸縮性を有する光反射性経編地の編組織図であり、編組織について別の表示形式を用いて示した編組織図であり、図1と図2は同一の編組織を示している。図3は、図1に示した編組織に使用されている各糸の組織を、糸ごとにそれぞれ個別に並べて示した実態的分解組織図である。
【0026】
この実施の形態例では、ループ組織を構成する糸(A)が、L1で示されている。L1は、非弾性糸からなり全ウェール総詰である。この例ではL1は鎖編組織であり、チェーン番号で表示すると、0−2/ 2-0/0−2/ 2-0で示される。ループ組織としては、この実施形態例に示したように、鎖編組織が好ましいが、ループ組織であれば、例えば図8に示されるデンビー組織とか、図9に示されるコード組織など本発明の機能が発揮される限り他のループ組織であってもよい。
【0027】
挿入組織を構成する挿入糸(B1)と(B2)は、この実施の形態例では、L5とL3の2種類を用いている例である。この実施の形態例では、L5は、2つのウェールを斜めに交互に渡って挿入されているいわゆる2針間挿入の挿入組織で、チェーン番号で表示すると、0−0/4−4/0−0/4−4の挿入組織となる。この組織が好ましいが、本発明の経編地の機能を阻害しない限り、例えば0−0/6−6/0−0/6−6の挿入組織とか、0−0/4−4/0−0/6−6などの他の挿入組織であってもよい。
【0028】
また、本実施の形態例では、挿入組織を構成する挿入糸として、更にL3が挿入されている。この実施の形態例では、L3は、3つのウェール間を斜めに交互に渡って挿入されているいわゆる3針間挿入の挿入組織で、チェーン番号で表示すると、6−6/0−0/6−6/0−0の挿入組織となる。この組織が好ましいが、本発明の経編地の機能を阻害しない限り、例えば6−6/0−0/4−4/0−0や4−4/0−0/4−4/0−0の挿入組織などの他の挿入組織であってもよい。
【0029】
特に、L3とL5が図1〜3で示される態様のように、各コースで互いに左右反対向きに斜め方向に伸びていることが好ましく、このことを、本願請求項5においては「2種類の挿入糸(B1)、(B2)が振りの方向が各コースで互いに反対向きの振り方向の2種類の挿入糸(B1)と(B2)とからなる」と表現している。このように、挿入糸(B1)と(B2)が振りの方向が各コースで互いに反対向きの振り方向の2種類の挿入糸(B1)と(B2)を用いることにより(B1)単独使用の場合に比べて、得られる経編地の斜行がなく、安定した生地が得られる。また、図1に示した態様では、この例では、L5は、2つのウェールを斜めに交互に渡って挿入されているいわゆる2針間挿入の挿入組織、L3は、3つのウェール間を斜めに交互に渡って挿入されているいわゆる3針間挿入の挿入組織としたが、例えば、L5もL3も同じ数針間挿入としてもよいし、2針間挿入、3針間挿入に限定されるものではないが、図1に示した態様は、一方を3針間挿入としているので、得られる経編地の厚みを少し厚くする意味で好ましい。但し、あまり厚くしすぎると伸縮性の点で低下する傾向になるので、極端に厚みを厚くする設計はあまり好適ではない。
【0030】
尚、L3とL5も非弾性糸からなり、いずれも全ウェール総詰である。尚、必要に応じて、L3とL5の少なくとも1つは、ループ組織としてもよいが、伸縮性が低下する傾向になるので、挿入組織とすることが好ましい。
【0031】
このように、L1とL5、L3で構成された編組織の所望の箇所に光反射性糸(C)が1本又は複数本コース方向(縦方向)に挿入される。この図1〜5に示した実施の形態例では、光反射性糸(C)としてL4が1本所定のウェールにおいてコース方向に挿入されている。チェーン番号で表示すると、0−0/0−0/0−0/0−0の挿入組織で示される。上述したように、挿入する光反射性糸(C)は、複数本でもよく、任意の複数の箇所にコース方向に挿入し得る。
【0032】
ここで、挿入組織を構成する挿入糸(B1)と(B2)[本実施形態例では、L5とL3]のうち、光反射性糸L4を繰返し横切る挿入糸の一つL5aが、非弾性糸(この実施形態例では透明なモノフィラメント糸)と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)からなり、前記非弾性糸(この実施形態例では透明なモノフィラメント糸)が当該熱接着糸により光反射性糸L4を横切る交点で光反射性糸L4の光反射面側に接着されている。尚、光反射性糸の光反射面が、光反射性糸の両面とか糸の全面に形成されている光反射性糸を用いる場合には、(D1)、(D2)の非弾性糸が接着される光反射性糸の面は(D1)、(D2)が互いに光反射性糸の反対面に接着されるのであれば、光反射性糸のどの面に接着されてもよいことになる。光反射性糸L4とこれを繰返し横切る挿入糸の一つL5aのみを表示したループ側(編裏)から見た実態的組織図が図4である(図4では理解しやすくするため、L3は図示していない。L3も図示した図面は、図5、図1、図2などである)。L5aは非弾性糸(この実施形態例では透明なモノフィラメント糸)と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)からなり、前記非弾性糸(この実施形態例では透明なモノフィラメント糸)が当該熱接着糸により光反射性糸L4を横切る交点1で光反射性糸L4に接着されている。他の挿入糸L5(図4では理解しやすくするため、L3は図示していないのでL3については、図5の説明など参照。)は、熱接着糸などを含まない通常の非弾性糸からなる。
【0033】
更に、光反射性糸L4が1本挿入されている上記と同様な状態で光反射性糸L4と挿入糸L5およびL3のみを表示したループ側(編裏)から見た実態的部分組織図で図5に示した。1本の光反射性糸L4を繰返し横切る挿入糸は、挿入糸L3においてはL3aとL3bの2本とL5においてはL5aのみであり、ここでは、これら光反射性糸L4を繰返し横切る挿入糸3本のうち、L5a一つを非弾性糸(この実施形態例では透明なモノフィラメント糸)と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)とし、前記挿入糸L3においてはL3aとL3bのうち少なくとも1本(この例ではコストの点からL3aのみにしたが、L3aとL3b両方でもよい。勿論、L3b単独でもよい)を非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)を用い、前記挿入糸(B2)の前記非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で(D1)とは反対側面で当該光反射性糸に接着されたものである。この場合、L5aは光反射性糸L4の表側を横切り、L3aとL3bは光反射性糸L4の裏側を横切るようにして、L5aとL3aおよびL3bで光反射性糸L4を表裏から挟む態様にする。このように、光反射性糸L4を挿入糸L5とL3で挟むようにするには、それぞれの糸のガイドバーをL3、L4、L5のように光反射性糸L4のガイドバーをL3とL5のガイドバーで挟む位置に設定して編めばよい。尚、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)、(D2)を用いた部分を除いて、他の挿入糸L3やL5は、熱接着糸などを含まない通常の非弾性糸からなる。
【0034】
光反射性糸L4が2本の場合の光反射性糸L4a、L4bとこれらの各光反射性糸L4a、L4bそれぞれを繰返し横切る挿入糸の一つL5a、L5bその近隣の挿入糸L5のみを表示したループ側(編裏)から見た実態的編組織図が図6である(図6では理解しやすくするため、L3は図示していない。)。L5a、L5bは非弾性糸(この実施形態例では透明なモノフィラメント糸)と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)からなり、前記非弾性糸(この実施形態例では透明なモノフィラメント糸)が当該熱接着糸により光反射性糸L4(L4a、L4b)を横切る交点1で各光反射性糸L4(L4a、L4b)の光反射面側に接着されている。他の挿入糸L5は、熱接着糸などを含まない通常の非弾性糸からなる。すなわち複数本(この例では2本)の各光反射性糸L4a、L4bのそれぞれを繰返し横切る挿入糸のうちのそれぞれ一つL5a、L5bが、非弾性糸(この実施形態例では透明なモノフィラメント糸)と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)からなり、前記透明なモノフィラメント糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切るそれぞれの交点1、1でそれぞれの光反射性糸L4a、L4bの光反射面側にそれぞれ接着されている。他の挿入糸L5は、熱接着糸などを含まない通常の非弾性糸からなる。
【0035】
図6とは、2本の光反射性糸L4a、L4bの挿入位置が少し異なる点を除いて、これと同様の状態を、光反射性糸L4と挿入糸L5およびL3のみを表示したループ側(編裏)から見た実態的部分組織図を図7に示した。2本の各光反射性糸L4a、L4bそれぞれを繰返し横切る挿入糸は、挿入糸L3のうち、光反射性糸L4aに対してはL3aとL3b、光反射性糸L4bに対してはL3bとL3cであり、L5においては光反射性糸L4aに対してはL5aのみ、光反射性糸L4bに対してはL5bのみであり、ここでは、これらそれぞれの光反射性糸L4a、L4bを繰返し横切るいくつかの挿入糸のうち、それぞれの光反射性糸L4a、L4bに対し、それぞれL5a、L5b一つを非弾性糸(この実施形態例では透明なモノフィラメント糸)と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)としたものである。この場合、L5aは光反射性糸L4aの反射面側を横切り、同様にL5bは光反射性糸L4bの反射面側を横切り、また、光反射性糸L4a、L4bを横切る挿入糸L3a、L3b、L3cは光反射性糸L4a、L4bの裏側[(D1)とは反対側面]を横切るようにして、L5aやL5bとL3a、L3b、L3cなどで光反射性糸L4a、L4bをそれぞれ表裏から挟む態様にし、且つ、この態様では、光反射性糸L4a、L4bを横切る挿入糸L3a、L3b、L3cのうち少なくとも1本(この例ではコストの点からL3bのみにしたが、L3aとL3cの2つ、L3aとL3bの2つ、L3bとL3cの2つ、L3a、L3b、L3cの3つでもよい。)を非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)を用い、前記挿入糸(D2)の前記非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で(D1)とは反対側面で当該光反射性糸に接着されたものである。尚、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)、(D2)を用いた部分を除いて、他の挿入糸L3やL5は、熱接着糸などを含まない通常の非弾性糸からなる。
【0036】
なお、同様にして、光反射性糸は、3本以上用いる態様としてもよい。
【0037】
そして、本発明でもう一つ重要な要件は、さらにコース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と単数ないし複数の挿入組織単位(e2)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)又は、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)が全ウェールに総詰で編みこまれていることである。
【0038】
図1〜3に示した実施態様例においては、コース方向に2コース連続したループ組織単位の一つである鎖編組織と2コース連続した挿入組織単位の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)L2(チェーン番号で表示すると2−0/0−2/2−2/0−0)が全ウェールに総詰で編みこまれている。但し、図1においては、弾性糸L2を全ウェールに総詰で記載すると、図面が複雑になり、わかりにくくなるので、2つのウェールのみ図示し、他のウェールにおいては図示を省略している。この弾性糸(E)L2の伸縮力により、ウェール方向に平行な方向が長手方向である畝と溝が交互に繰返し形成されている伸縮性を有する光反射性経編地が形成される。
【0039】
弾性糸(E1)の代わりに、前述したコース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)を用いてもよい。図10に、図3において、弾性糸(E1)が弾性糸(E2)の態様に置き換えられた、図3と同様の表現形式である糸ごとにそれぞれ個別に並べて示した実態的分解組織図を示した。図10に示した弾性糸(E2)L2´をチェーン番号で表示すると2−0/0−2/2−2/2−2である。L2を除いてL1,L3,L4,L5はこの態様では図3と同様である。
【0040】
前記弾性糸(E)の編組織は、図1から3で示した弾性糸(E1)に属する態様のものが、弾性糸が経編地中に一体的に組み込まれているので弾性糸が顕著には見えにくいと言う点で好ましいが、図10に示した弾性糸L2´のような弾性糸(E2)に属する態様のものも編地の裏側から弾性糸の一部(後述する図15で説明する経編地の溝4と溝4[裏側面基準では裏側面に凸の部分4´と4´]をつなぐ部分に現れる裏側面を通る弾性糸2が若干見えると言う点を除いて、弾性糸(E1)の態様とほぼ同等の機能が発揮され好ましい態様の一つである。
【0041】
弾性糸(E)としては、本発明の目的を阻害しない限り、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位と単数ないし複数の挿入組織単位の交互の繰返しからなる組織のものであれば例えば、図11や図12で示されるようなループ組織単位と挿入組織単位の交互の繰返しからなるようなものでもよい。図11に示した弾性糸は(E1)に属するタイプの弾性糸でその編組織はチェーン番号で表示すると2−0/2−4/0−0/4−4の組織の繰り返しであり、図12に示した弾性糸も(E1)に属するタイプの弾性糸でその編組織はチェーン番号で表示すると2−0/2−4/2−2/2−2の組織の繰り返しである。
【0042】
尚、「コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)」の「挿入なしで浮かして連結している」ことを業界用語で「遊ばせる」とも言うこともある。「(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)」の部分は、ループに挿入されていないので、経編地に一体的に組み込まれているのではなく、後述する図15で説明する経編地の溝4と溝4[裏側面基準では裏側面に凸の部分4´と4´]をつなぐ部分の経編地裏側面にその一部が現れる(弾性糸2)構造となる。
【0043】
一般的に、本発明の編地を表面側から見た場合、弾性糸(E1)に注目すると、通常、畝部分が弾性糸(E1)の挿入組織単位(e2)の部分であり、溝部分が弾性糸(E1)のループ組織単位(e1)の部分となるので、弾性糸(E1)のループ組織単位(e1)が連続する単位数と挿入組織単位(e2)が連続する単位数のそれぞれの単位数を調整することにより、畝部分の幅や溝部部分の幅を所望の幅に調整することができる。通常、弾性糸(E1)のループ組織単位(e1)が連続する単位数が大きくなるほど溝部分の幅が広くなり、挿入組織単位(e2)が連続する単位数が大きくなるほど畝部分の幅が広くなる。その逆にすれば、それぞれの幅が小さくなる。
【0044】
同様に弾性糸(E2)の組織にした場合は、通常、弾性糸(E2)の組織単位(e3)は上述したように「単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している」言い換えれば「遊ばせ」ているので挿入組織単位(e2)のごとく畝部分に入らずに畝部分から抜け出た構造になり、溝部分が弾性糸(E2)のループ組織単位(e1)の部分となるので、弾性糸(E2)の組織単位(e3)の部分は、上述したように、後述する図15で説明する経編地の溝4と溝4[裏側面基準では裏側面に凸の部分4´と4´]をつなぐ部分の経編地裏側面に(e3)の部分が現れる構造となる。この場合も、弾性糸(E2)のループ組織単位(e1)が連続する単位数と単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)が連続する単位数のそれぞれの単位数を調整することにより、畝部分の幅や溝部部分の幅を所望の幅に調整することができる。通常、弾性糸(E2)のループ組織単位(e1)が連続する単位数が大きくなるほど溝部分の幅が広くなり、組織単位(e3)が連続する単位数が大きくなるほど畝部分の幅が広くなる。その逆にすれば、それぞれの幅が小さくなる。
【0045】
以上のように、要求に応じて、畝部分の幅と溝部分の幅を適宜設定することができる。特に限定するものではないが、弾性糸(E)は、コース方向に2〜4コース連続したループ組織単位と2〜4コース連続した挿入組織単位、又はコース方向に2〜4コース連続したループ組織単位と2〜4コース連続した前述の挿入なしで浮かして連結している組織単位の範囲で調整するのが、スポーツウェアー、作業服を含むその他の外衣などの袖口、衿、裾や、ズボンの裾回り、手袋のなどの手首部分、サポーターなどに用いる場合には好ましい。
【0046】
特に限定するものではないが、前記ループ組織を構成する非弾性糸(A)[実施の形態例ではL1に相当]としては、例えば、ポリエステル繊維糸、ポリアミド繊維糸、アクリル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、ビニロン繊維糸、木綿その他の天然繊維糸などで、紡績糸(混紡糸も含む)、マルチフィラメント糸(混繊糸も含む。嵩高加工糸などの加工糸が好ましい。)などがあげられる。特にこのうち、ポリエステル嵩高加工糸が好ましい。用いるこれらの糸の太さも、特に限定するものではないが、通常、55〜220dtex程度(天然繊維糸の場合、ポリエステル繊維糸基準で、これに相当する太さのもの)が好ましい。
【0047】
また、特に限定するものではないが、前記弾性糸(E)[実施の形態例ではL2に相当]としては、例えば、ポリウレタン弾性糸、ポリエーテルエステル弾性糸などがあげられる。通常、カバリングなどのない、ベアータイプのポリウレタン弾性糸が好ましい。用いるこれらの糸の太さも、特に限定するものではないが、通常、55〜220dtex程度が好ましい。
【0048】
また、特に限定するものではないが、前記挿入組織を構成する挿入糸(B1)、(B2)[本実施形態例ではL5、L3に相当]としては、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)、(D2)のうちの熱接着糸の部分を除いて、例えば、ポリエステル繊維糸、ポリアミド繊維糸、アクリル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、ビニロン繊維糸、木綿その他の天然繊維糸などで、紡績糸(混紡糸も含む)、マルチフィラメント糸(混繊糸も含む。嵩高加工糸などの加工糸が好ましい。)などがあげられる。特にこのうち、ポリエステル嵩高加工糸が好ましい。用いるこれらの糸の太さも、特に限定するものではないが、通常、55〜220dtex程度(天然繊維糸の場合、ポリエステル繊維糸基準で、これに相当する太さのもの)が好ましい。
【0049】
非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)の非弾性糸として透明なモノフィラメント糸を用いる場合には、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの各種モノフィラメント糸が挙げられ、糸の太さも、特に限定するものではないが、通常、55〜220dtex程度が好ましい。この中でも、ナイロンモノフィラメント糸が好ましい。
【0050】
また、熱接着糸は、熱融着性繊維糸とも表現され、熱接着糸としては、(D1)ないしは(D2)において使用する非弾性糸と光反射性糸(C)とを熱接着糸が熱溶融して接着し得るものであれば特に限定されず、低融点共重合ナイロン系熱接着糸、低融点共重合ポリエステル系熱接着糸、低融点共重合ポリオレフィン系熱接着糸など、公知の各種の熱接着糸から上記非弾性糸と光反射性糸(C)とを熱接着糸の熱溶融接着で接着し得るものを選定して用いればよい。
【0051】
また、特に限定するものではないが、前記光反射性糸(C)としては、通常、幅0.5〜3mm程度の偏平フィルムをベースとした偏平糸が用いられ、例えば、特開平10−295416号公報[0022]〜[0025]や 特開平10−295417号公報[0029]〜[0033]などに記載されているような、公知の再帰反射性フィルム糸、蓄光反射性フィルム糸、アルミニウム、金、銀、銅などの金色ないし銀色を形成できる金属ないし合金をポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムに蒸着して細幅にスリットされたいわゆる金銀糸など、公知の各種のものが使用できる。光反射面が片面にのみ形成された光反射性フィルム糸、光反射面が両面に形成された光反射性フィルム糸、これらのフィルム糸で芯糸の回りを巻いた金糸、銀糸などいずれでもよい。最も好ましいのは、再帰反射性フィルム糸である。
【0052】
かくして得られた本発明の経編地は、ウェール方向に平行な方向が長手方向となる畝と溝が交互に繰返し形成されている伸縮性を有する光反射性経編地であるが、本発明の経編地をコース方向(経方向)に切断した場合の切断面の断面形状の概略の一態様[弾性糸(E1)の組織の弾性糸を用いた場合]を図13に、当該編地の概略斜視図を図14に示した。また、弾性糸(E2)の組織の弾性糸を用いた場合の本発明の経編地をコース方向(経方向)に切断した場合の切断面の断面形状の概略を図15に示した。
【0053】
上側面を本発明の経編地の表側面とすると、「畝と溝」とは、表側面から見た表面側に凸の部分が畝3を示しており、表側面から見て凹んでいる部分が溝4を示している。なお、これを裏側面から見ると、表側面から見た表面側に凸の部分である畝3は、裏側面を基準にすると表面側に凹んでいる部分3´となり、表側面から見た溝4の部分は裏面側に凸の部分4´となるような断面構造の経編地であり、言わばコース方向(経方向)に切断した場合の切断面の断面形状が、蛇腹状、或いは、ジグザグ状に近似の形状の伸縮性経編地である。このような形状の編地を「ウェール方向に平行な方向が長手方向である畝と溝が交互に繰返し形成されている伸縮性を有する光反射性経編地」と本発明では表現したものである。図14において、5は光反射性糸(C)を示す。図13〜図15において、矢印Yは、コース方向(編方向、縦方向)を示している。図15においては、弾性糸を、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)を用いた場合の、図13と同様な、本発明の経編地をコース方向(経方向)に切断した場合の切断面の断面形状の概略の態様]を示している。前述したように、(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の部分は、ループに挿入されていないので、経編地に一体的に組み込まれているのではなく、経編地の溝4と溝4[裏側面基準では裏側面に凸の部分4´と4´]をつなぐ部分の経編地裏側面に(E2)の一部である(e3)の部分が現れる構造となる。2は裏面に現れた弾性糸を示している。(E2)においても、この態様の経編地の斜視図は、裏側面に弾性糸2が若干見えるということを除いて、その形状や機能は図14で示した斜視図に示した経編地と同様であるので、斜視図は省略し、特に断らない限り、図14を代用して参照すればよい。
【0054】
本発明の光反射性経編地は、上記で説明したように、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と単数ないし複数の挿入組織単位(e2)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)ないしは、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)の伸縮力により、ウェール方向に平行な方向に長手方向を有する畝と溝が交互に繰返し形成され、光反射性糸5も、畝と溝を直角方向に横切る方向に挿入されていて畝と溝の形に応じて畳まれた形で挿入されていることになるので、コース方向に編地を伸ばしても畝と溝が平たくなりながら伸びるし、弾性糸による伸縮性もあるので、光反射性糸それ自体は伸縮性の素材から形成されていなくても、編地の伸びに応じて畝と溝が平たくなりながら伸びることが出来、また、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)の非弾性糸が熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で光反射性糸の光反射面側に接着され、また、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)の非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で(D1)とは反対側面で当該光反射性糸に接着されているので、光反射性糸が編組織からずれたり、抜け出たりすることもなく、いわゆる蛇腹状に縮まった編地を伸ばすような原理で伸縮できるので、コース方向に極めて大きく伸ばせる伸縮性を有する光反射性経編地を提供できるのである。しかも、光反射性糸を横切る交点で光反射性糸の光反射面側に接着されて光反射性糸を保持している糸は、上記実施形態例ではL5a一本のみ(図7で示した態様も、夫々L5a、L5b一本づつ)と、光反射性糸の光反射面側をさえぎる糸が少なく、光反射性糸の反射面からの反射光をさえぎらないようにしているので、光反射力の低下も少なくできる伸縮性を有する光反射性経編地を提供できる。更に、上記実施形態例のように、(D1)の非弾性糸として透明なモノフィラメント糸を用いると、光反射性糸の反射面からの反射光をさえぎらない機能が一層優れており好適である。
【0055】
本発明の伸縮性を有する光反射性経編地は、特に限定するものではないが、通常、シングルラッシェル経編機やダブルラッシェル経編機を使用して編むことができる。なお、必要に応じて、編組織の設計をダブルラッシェル経編地にモディファイして、ダブルラッシェル経編地とすることも可能であるが、やや厚手になり、伸縮性もやや減少する傾向になるので、シングルラッシェル経編地とすることが好ましい。
【0056】
なお、一実施例として、図1〜3で示した実施態様の編地において、L1として、167dtexのポリエステル嵩高加工糸、L2として155dtexのポリウレタン糸(ベアータイプ)、L3及びL5として167dtexのポリエステル嵩高加工糸、L5aとして155dtexの透明なナイロンモノフィラメント糸(L5a、L3aに使用される熱接着性糸は低融点ナイロン糸 東レ株式会社製“エルダー”)、L4として、幅1mmのポリエステルフィルムベースの再帰反射性フィルム糸(株式会社丸仁製「再帰反射テープ」)を用いて編成し、120〜130℃、5分の加熱仕上処理して得た経編地は、編み方向(コース方向)に手で引っ張って伸ばしたところ、元のこの編地編み方向の長さを100%とすると手で簡単に約200%程度伸ばすことができ、元に戻しても光反射性糸が編組織からずれたり、抜け出たりすることもなかった。
【0057】
本発明の伸縮性を有する光反射性経編地は、スポーツウェアー、ジャンパー、作業服を含むその他の外衣などの上着の袖口や、衿、裾部分、ズボンの裾回り、手袋のなどの手首部分、サポーターなど、伸縮性を要求される部分に用いることができる。その一例として、図16に示すように、スポーツウェアーの上着の袖口7の部分に、本発明の伸縮性を有する光反射性経編地を円筒状にして用いた態様を示した。なお、図16においては、スポーツウェアーの上着の衿8や裾部分9にも、伸縮方向が、光反射性糸5の長手方向となるように、本発明の伸縮性を有する光反射性経編地を用いている。更に、図17は、スポーツウェアーのズボンの裾回り8の部分に本発明の伸縮性を有する光反射性経編地を円筒状にして用いた態様を示した。いずれにおいても、光反射性糸5が袖口7や裾回り8を回るような方向で(この方向が編方向で、伸縮性が大きい方向)、着用時などにこの部分を拡げて着用しても、容易に伸縮して着用でき、この部分を伸ばして着用しても、光反射性糸が編組織からずれたり、抜け出たりすることもない。あまり伸びのない編組織を採用した場合には、光反射性糸は伸縮性が無いので、光反射性糸5が袖口7や裾回り8を回るような方向で用いることはできなくなり、例えば、特開平10−226940号公報の図5や図6の光反射性偏平糸3のように、光反射性偏平糸3の向きは、脚部長手方向に沿った方向とか、袖の長手方向に沿った方向のように伸縮性をあまり要求されない方向にしか使用できず、本発明はこの点でより優れた伸縮性を有する光反射性経編地が提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の伸縮性を有する光反射性経編地は、きわめて伸縮性が優れ、伸縮後においても、光反射性糸が編組織からずれたり、抜け出たりすることのなく伸縮可能であり、従って、本発明の伸縮性を有する光反射性経編地は、スポーツウェアー、ジャンパー、作業服を含むその他の外衣などの上着の袖口や、衿、裾部分、ズボンの裾回り、手袋のなどの手首部分、サポーターなど、伸縮性を要求される部分などに有効に適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 非弾性糸(B1)が光反射性糸を横切る交点
2 編地裏側面を通る弾性糸
3 畝
3´ 編地裏側面を基準にした場合の表面側に凹んでいる部分
4 溝
4´ 編地裏面側に凸の部分
5 光反射性糸
7 スポーツウェアーの上着の袖口の部分
8 スポーツウェアーの上着の衿の部分
9 スポーツウェアーの上着の裾の部分
10 スポーツウェアーのズボンの裾回りの部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ組織を構成する糸(A)と挿入組織を構成する少なくとも2種類の非弾性糸からなる挿入糸(B1)、(B2)と弾性糸(E)とを含んで構成される経編地に、更に光反射性糸(C)が1本又は複数本コース方向に挿入されていて、前記光反射性糸(C)は、前記挿入糸(B1)と(B2)の間に挟まれて挿入されている光反射性経編地であって、
前記挿入糸(B1)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)からなり、前記挿入糸(D1)の非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で光反射性糸の光反射面側に接着されており、
前記挿入糸(B2)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)からなり、前記挿入糸(D2)の前記非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で(D1)とは反対側面で当該光反射性糸に接着されており、
前記弾性糸(E)は、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と単数ないし複数の挿入組織単位(e2)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)、又は、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)が全ウェールに総詰で編みこまれていて、前記弾性糸(E)の伸縮力により、ウェール方向に平行な方向が長手方向である畝と溝が交互に繰返し形成されている伸縮性を有する光反射性経編地。
【請求項2】
コース方向に単数ないし複数のループ組織単位と単数ないし複数の挿入組織単位の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)が、コース方向に2〜4コース連続したループ組織単位(e1)と2〜4コース連続した挿入組織単位(e2)との交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)からなる請求項1に記載の伸縮性を有する光反射性経編地。
【請求項3】
コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)がコース方向に2〜4コース連続したループ組織単位(e1)と2〜4コース連続した当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)との交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)からなる請求項1に記載の伸縮性を有する光反射性経編地。
【請求項4】
前記弾性糸(E1)又は(E2)において、前記ループ組織単位が、鎖編からなるループ組織単位である請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地。
【請求項5】
前記ループ組織を構成する糸(A)のループ組織が、全ウェール総詰の非弾性糸からなる鎖編組織からなり、前記挿入組織を構成する非弾性糸からなる2種類の挿入糸(B1)、(B2)が振りの方向が各コースで互いに反対向きの振り方向の2種類の挿入糸(B1)と(B2)とからなる全ウェール総詰の挿入糸であり、前記挿入糸(B1)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)からなり、前記挿入糸(B2)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地。
【請求項6】
ループ組織を構成する糸(A)と挿入組織を構成する少なくとも2種類の非弾性糸からなる挿入糸(B1)、(B2)と弾性糸(E)とを含んで構成される経編地に、更に光反射性糸(C)が1本又は複数本コース方向に挿入されていて、前記光反射性糸(C)は、前記挿入糸(B1)と(B2)の間に挟まれて挿入されている光反射性経編地であって、
前記ループ組織を構成する糸(A)のループ組織が、全ウェール総詰の非弾性糸からなる鎖編組織からなり、
前記挿入組織を構成する非弾性糸からなる挿入糸が、振りの方向が各コースで互いに反対向きの振り方向の2種類の挿入糸(B1)と(B2)とからなり、前記挿入糸(B1)と(B2)は全ウェール総詰であり、
前記挿入糸(B1)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)からなり、前記挿入糸(D1)の非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で光反射性糸の光反射面側に接着されており、
前記挿入糸(B2)のうち、各光反射性糸それぞれについて、当該光反射性糸を繰返し横切る挿入糸の少なくとも一つが、非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)からなり、前記挿入糸(D2)の非弾性糸が当該熱接着糸により光反射性糸を横切る交点で(D1)とは反対側面で当該光反射性糸に接着されており、
前記弾性糸(E)は、コース方向に2〜4コース連続したループ組織単位(e1)と2〜4コース連続した挿入組織単位(e2)との交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E1)又は、コース方向に単数ないし複数のループ組織単位(e1)と当該単数ないし複数のループ組織単位(e1)同士間を挿入なしで浮かして連結している組織単位(e3)の交互の繰返しからなる組織の弾性糸(E2)が全ウェールに総詰で編みこまれていて、前記弾性糸(E)の伸縮力により、ウェール方向に平行な方向が長手方向である畝と溝が交互に繰返し形成されている伸縮性を有する光反射性経編地。
【請求項7】
前記ループ組織を構成する糸(A)のループ組織が鎖編組織でその鎖編組織を構成する全ウェール総詰の非弾性糸、及び、2種類の挿入糸(B1)又は(B2)が、
(B1)の挿入糸のうち前記非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)の熱接着糸と、前記挿入糸(B2)のうち非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D2)の熱接着糸を除いて、
ポリエステル繊維糸、ナイロン繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、アクリル繊維糸、ビニロン繊維糸から選ばれる糸からなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地。
【請求項8】
前記非弾性糸と熱接着糸の引きそろえ糸(D1)を構成する非弾性糸が、透明なモノフィラメント糸である請求項1〜7のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地。
【請求項9】
透明なモノフィラメント糸が、ナイロンモノフィラメント糸、ポリエステルモノフィラメント糸、ポリプロピレンモノフィラメント糸、ポリエチレンモノフィラメント糸から選ばれたモノフィラメント糸である請求項8に記載の伸縮性を有する光反射性経編地。
【請求項10】
挿入糸(B1)が構成する挿入組織が、チェーン番号で、0−0/4−4/0−0/4−4であり、挿入糸(B2)が構成する挿入組織が、チェーン番号で、6−6/0−0/6−6/0−0である請求項1〜9のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地。
【請求項11】
弾性糸(E1)の組織が、チェーン番号で、2−0/0−2/2−2/0−0の組織からなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地。
【請求項12】
弾性糸(E2)の組織が、チェーン番号で、2−0/0−2/2−2/2−2の組織からなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の伸縮性を有する光反射性経編地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−87441(P2012−87441A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237648(P2010−237648)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(309015835)テクノワープ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】