説明

伸縮性インク組成物

【課題】変形可能な基材の上に印または画像を印刷するのに適した伸縮性インクであって、かつ光、化学薬品、水、酸化性気体のような環境因子に対して良好な耐性を示す画像を作成し、屋外の用途に適した伸縮性インクの提供。
【解決手段】インク組成物であって、(a)水と、(b)共溶媒と、(c)着色剤と、(d)界面活性剤と、(e)フルオロエラストマーとを含み、このインクが、印刷温度で約20センチポイズ以下の粘度を有する、インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、変形可能な基材の上に印または画像を印刷するのに適したインク組成物が開示されている。さらに詳細には、本明細書には、伸縮性インク組成物が開示されている。
【背景技術】
【0002】
変形可能な基材の上に印または画像を印刷することは、例えば、可とう性の医療用デバイス(手術道具および移植可能な医療デバイスを含む)、ロボットの皮膚、布地(例えば、伸縮性水着用)、ゴム製品(例えば、タイヤ、管、ケーブル)などの多くの用途にとって望ましい。ゴムおよびある種の布地に由来する消耗品も伸縮性である。基材が大きく変形可能な特徴を有するため、このような基材に印刷し、堅牢性に優れ、寿命の長い画像を得るには、伸縮性インクが望ましい。
【0003】
したがって、上に示した目的のために既知の組成物およびプロセスが適しているものの、改良インク組成物が依然として必要である。それに加え、変形可能な基材または伸縮性基材に印刷するのに適したインク組成物も依然として必要である。さらに、伸縮性インクも依然として必要である。さらに、何度も伸ばして緩めることが可能な、堅牢性の高い画像を作成する伸縮性インクも依然として必要である。また、色安定性が良好な伸縮性インクも依然として必要である。それに加え、光、化学薬品、水、酸化性気体のような環境因子へ良好な耐性を示す伸縮性インクが必要である。さらに、屋外の用途に適した伸縮性インクが必要である。さらに、疎水性画像および耐水性画像を作り出す伸縮性インクが必要である。また、デジタル方式に適用可能な伸縮性インクも依然として必要である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書には、インク組成物が開示されており、このインク組成物は、(a)水と、(b)共溶媒と、(c)着色剤と、(d)界面活性剤と、(e)フルオロエラストマーとを含み、このインクが、印刷温度で約20センチポイズ以下の粘度を有する。また、本明細書には、(1)変形可能な基材と、(2)この変形可能な基材の上にある画像を形成するような模様とを含み、この画像を形成するような模様が、(a)着色剤と、(b)界面活性剤と、(c)フルオロエラストマーとを含む、模様がついた物品も開示されている。さらに、本明細書には、(a)水と、(b)着色剤と、(c)界面活性剤と、(d)フルオロエラストマーとを含むインクを、画像を形成するような模様になるように基材に塗布することを含むプロセスが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書に開示されているインクは、水性液体媒剤を含有する。液体媒剤は、水のみから構成されていてもよく、または、水と、水溶性または水混和性の有機要素(共溶媒、湿潤剤などとも呼ばれる(以下、共溶媒))との混合物を含んでいてもよく、共溶媒は、例えば、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジオール、グリコールエーテル、ポリグリコールエーテル、長鎖アルコール、一級脂肪族アルコール、二級脂肪族アルコール、1,2−アルコール、1,3−アルコール、1,5−アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、これより高級なポリエチレングリコールアルキルエーテル同族体などを含むアルコールおよびアルコール誘導体であり、特定の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3,−プロパンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、3−メトキシブタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,4−ヘプタンジオールなどが挙げられ、また、アミド、エーテル、尿素、置換尿素(例えば、チオ尿素、エチレン尿素、アルキル尿素、アルキルチオ尿素、ジアルキル尿素、ジアルキルチオ尿素)、カルボン酸およびカルボン酸塩、例えば、2−メチルペンタン酸、2−エチル−3−プロピルアクリル酸、2−エチル−ヘキサン酸、3−エトキシプロピオン酸など、エステル、有機スルフィド、有機スルホキシド、スルホン(例えば、スルホラン)、カルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブ、エーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エーテル誘導体、ヒドロキシエーテル、アミノアルコール、ケトン、N−メチルピロリジノン、2−ピロリジノン、シクロヘキシルピロリドン、アミド、スルホキシド、ラクトン、高分子電解質、メチルスルホニルエタノール、イミダゾール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ベタイン、糖類、例えば、1−デオキシ−D−ガラクチトール、マンニトール、イノシトールなど、置換および非置換のホルムアミド、置換および非置換のアセトアミド、他の水溶性または水混和性の物質、およびこれらの混合物も適している。水と水溶性または水混和性の有機液体との混合物が液体媒剤として選択される場合、水と有機物の比率は、一実施形態では、約100:0〜約30:70、別の実施形態では、約97:3〜約40:60、さらに別の実施形態では、約95:5〜約60:40の範囲であるが、この比率は、この範囲からはずれていてもよい。液体媒剤の非水要素は、一般的に、水(100℃)よりも高い沸点をもつ湿潤剤または共溶媒としてはたらく。インク媒剤の有機要素も、インクの表面張力を変え、インクの粘度を変え、着色剤を溶解または分散させ、および/またはインクの乾燥特性に影響を与えるようにはたらく場合がある。本明細書に開示したインク組成物では、液体媒剤は、一実施形態では、インクの約70〜約99.9重量%、別の実施形態では、インクの約80〜約99.5重量%、さらに別の実施形態では、インクの約90〜約99重量%の量で存在していてもよいが、この量は、この範囲からはずれていてもよい。
【0006】
本明細書に開示されているインクは、着色剤も含有している。着色剤は、染料、顔料、またはこれらの混合物であってもよい。適切な染料の例としては、アニオン系染料、カチオン系染料、非イオン系染料、両性イオン系染料などが挙げられる。適切な染料の特定例としては、食品用染料が挙げられ、例えば、Food Black No.1、Food Black No.2、Food Red No.40、Food Blue No.1、Food Yellow No.7など、FD & C染料、Acid Black染料(No.1、7、9、24、26、48、52、58、60、61、63、92、107、109、118、119、131、140、155、156、172、194など)、Acid Red染料(No.1、8、32、35、37、52、57、92、115、119、154、249、254、256など)、Acid Blue染料(No.1、7、9、25、40、45、62、78、80、92、102、104、113、117、127、158、175、183、193、209など)、Acid Yellow染料(No.3、7、17、19、23、25、29、38、42、49、59、61、72、73、114、128、151など)、Direct Black染料(No.4、14、17、22、27、38、51、112、117、154、168など)、Direct Blue染料(No.1、6、8、14、15、25、71、76、78、80、86、90、106、108、123、163、165、199、226など)、Direct Red染料(No.1、2,16、23、24、28、39、62、72、236など)、Direct Yellow染料(No.4、11、12、27、28、33、34、39、50、58、86、100、106、107、118、127、132、142、157など)、Reactive Dyes、例えば、Reactive Red Dye(No.4、31、56、180など)、Reactive Black染料(No.31など)、Reactive Yellow染料(No.37など);アントラキノン染料、モノアゾ染料、ジスアゾ染料、フタロシアニン誘導体(種々のフタロシアニンスルホン酸塩を含む)、アザ(18)アヌレン、ホルマザン銅錯体、トリフェノジオキサジンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。染料は、インク組成物中に任意の望ましい量または有効な量で存在し、一実施形態では、インクの約0.05〜約15重量%、別の実施形態では、インクの約0.1〜約10重量%、さらに別の実施形態では、インクの約1〜約5重量%の量で存在さするが、この量は、この範囲からはずれていてもよい。
【0007】
適切な顔料の例としては、黒色顔料、白色顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料などが挙げられる。さらに、顔料は、有機粒子であっても無機粒子であってもよい。適切な無機顔料としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。しかし、例えば、酸化チタン、コバルトブルー(CoO−Al)、クロムイエロー(PbCrO)、酸化鉄のような他の無機顔料が適切な場合もある。適切な有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(ジアゾ顔料およびモノアゾ顔料を含む)、多環顔料(例えば、フタロシアニン顔料、例えば、フタロシアニンブルーおよびフタロシアニングリーン)、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、ピラントロン顔料、キノフタロン顔料)、不溶性染料キレート(例えば、塩基性染料型キレートおよび酸性染料型キレート)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アントアントロン顔料(例えば、PR168など)が挙げられる。フタロシアニンブルーおよびフタロシアニングリーンの代表例としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、およびこれらの誘導体(Pigment Blue 15、Pigment Green 7およびPigment Green 36)が挙げられる。キナクリドンの代表例としては、Pigment Orange 48、Pigment Orange 49、Pigment Red 122、Pigment Red 192、Pigment Red 202、Pigment Red 206、Pigment Red 207、Pigment Red 209、Pigment Violet 19およびPigment Violet 42が挙げられる。アントラキノンの代表例としては、Pigment Red 43、Pigment Red 194、Pigment Red 177、Pigment Red 216およびPigment Red 226が挙げられる。ペリレンの代表例としては、Pigment Red 123、Pigment Red 149、Pigment Red 179、Pigment Red 190、Pigment Red 189およびPigment Red 224が挙げられる。チオインジゴイドの代表例としては、Pigment Red 86、Pigment Red 87、Pigment Red 88、Pigment Red 181、Pigment Red 198、Pigment Violet 36およびPigment Violet 38が挙げられる。ヘテロ環イエローの代表例としては、Pigment Yellow 1、Pigment Yellow 3、Pigment Yellow 12、Pigment Yellow 13、Pigment Yellow 14、Pigment Yellow 17、Pigment Yellow 65、Pigment Yellow 73、Pigment Yellow 74、Pigment Yellow 90、Pigment Yellow 110、Pigment Yellow 117、Pigment Yellow 120、Pigment Yellow 128、Pigment Yellow 138、Pigment Yellow 150、Pigment Yellow 151、Pigment Yellow 155およびPigment Yellow 213が挙げられる。このような顔料は、BASF Corporation、Engelhard CorporationおよびSun Chemical Corporationを含め、多くの供給元から粉末形態またはプレスケーキの形態で市販されている。使用可能な黒色顔料の例としては、炭素顔料が挙げられる。炭素顔料は、ほとんどが、条件を満たす光学密度および印刷特性を与える任意の市販炭素顔料であってもよい。本発明のシステムおよび方法で使用するのに適した炭素顔料としては、限定されないが、カーボンブラック、グラファイト、ガラス状炭素、木炭、およびこれらの組み合わせが挙げられる。このような炭素顔料は、例えば、チャンネル法、接触法、ファーネス法、アセチレン法またはサーマル法を含む種々の既知の方法によって製造することができ、Cabot Corporation、Columbian Chemicals Company、Evonik、E.I. DuPont de Nemours and Companyのような業者から市販されている。適切なカーボンブラック顔料としては、限定されないが、Cabot顔料、例えば、MONARCH 1400、MONARCH 1300、MONARCH 1100、MONARCH 1000、MONARCH 900、MONARCH 880、MONARCH 800、MONARCH 700、CAB−O−JET 200、CAB−O−JET 300、REGAL、BLACK PEARLS、ELFTEX、MOGUL、VULCAN顔料;Columbian顔料、例えば、RAVEN 5000、RAVEN 3500;Evonik顔料、例えば、Color Black FW 200、FW 2、FW 2V、FW 1、FW 18、FW S160、FW S170、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4、PRINTEX U、PRINTEX 140U、PRINTEX V、PRINTEX 140Vが挙げられる。上の顔料リストには、改質されていない顔料粒状物、低分子が接続した顔料粒状物、ポリマーに分散した顔料粒状物も含まれる。また、他の顔料およびこれらの混合物を選択してもよい。顔料の粒径は、液体媒剤中で安定なコロイド状粒子懸濁物を得ることができるように、また、サーマルインクジェットプリンタまたは圧電式インクジェットプリンタでインクを使用する場合、インク経路の詰まりを防ぐために、できる限り小さいことが望ましい。粒子の平均径は、一実施形態では、約0.001〜約5ミクロン、別の実施形態では、約0.01〜約1ミクロン、さらに別の実施形態では、約0.01〜約0.5ミクロンであるが、粒径は、これらの範囲からはずれていてもよい。本明細書に開示されているインク組成物の中で、顔料は、望ましい着色度を得るのに有効な任意の量で存在し、一実施形態では、インクの約0.1〜約15重量%、別の実施形態では、インクの約1〜約10重量%、さらに別の実施形態では、インクの約2〜約7重量%の量で存在するが、この量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0008】
本明細書に開示されているインクは、界面活性剤も含有する。インク中でフルオロエラストマーのエマルションを形成する任意の界面活性剤を使用してもよい。適切な界面活性剤の例としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤など、およびこれらの混合物が挙げられる。適切な界面活性剤の例としては、アルキルポリエチレンオキシド、アルキルフェニルポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、アセチルレン系ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド(ジ)エステル、ポリエチレンオキシドアミン、プロトン化ポリエチレンオキシドアミン、プロトン化ポリエチレンオキシドアミド、ジメチコーンコポリオール、置換アミンオキシドなどが挙げられ、特定の例としては、一級、二級、三級アミン塩化合物、例えば、ラウリルアミン、ココナツアミン、ステアリルアミン、ロジンアミンの塩酸塩、酢酸塩;四級アンモニウム塩型化合物、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリドなど;ピリジニウム塩型化合物、例えば、セチルピリジニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミドなど;非イオン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アセチレンアルコール、アセチレングリコール;他の界面活性剤、例えば、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン;フルオロ界面活性剤など、およびこれらの混合物が挙げられる。非イオン系界面活性剤のさらなる例としては、ポリアクリル酸、メタロース、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、Rhone−PoulencからIGEPAL CA−210(商標)、IGEPAL CA−520(商標)、IGEPAL CA−720(商標)、IGEPAL CO−890(商標)、IGEPAL CO−720(商標)、IGEPAL CO−290(商標)、IGEPAL CA−210(商標)、ANTAROX 890(商標)、ANTAROX 897(商標)として入手可能なものが挙げられる。適切な非イオン系界面活性剤の他の例としては、SYNPERONIC PE/F、例えば、SYNPERONIC PE/F 108として市販されるものを含む、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロックコポリマーが挙げられる。適切なアニオン系界面活性剤の他の例としては、硫酸塩およびスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキル硫酸塩およびスルホン酸塩、Aldrichから入手可能なアビエチン酸のような酸、第一工業製薬から入手可能なNEOGEN R(商標)、NEOGEN SC(商標)、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。適切なアニオン系界面活性剤の他の例としては、Dow Chemical Company製のアルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩であるDOWFAX(商標)2A1、および/またはテイカ株式会社(日本)製の分岐型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであるTAYCA POWER BN2060が挙げられる。通常は正に帯電している適切なカチオン系界面活性剤の他の例としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、ベンザルコニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミド、C12、C15、C17トリメチルアンモニウムブロミド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化塩、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、Alkaril Chemical Companyから入手可能なMIRAPOL(商標)およびALKAQUAT(商標)、Kao Chemicalsから入手可能なSANIZOL(商標)(ベンザルコニウムクロリド)など、およびこれらの混合物が挙げられる。任意の2種類以上の界面活性剤の混合物を使用してもよい。界面活性剤は、任意の望ましい量または有効な量で、一実施形態では、インクの少なくとも約0.01重量%、一実施形態では、インクの約5重量%以下の量で存在するが、この量は、この範囲からはずれていてもよい。
【0009】
本明細書に開示されているインクは、フルオロエラストマーも含有する。エラストマーは、Collins English Dictionaryによって、変形させる力が取り除かれると元々の形状に戻ることが可能な天然ゴムまたは合成ゴムのような任意の材料であると定義される。フルオロエラストマーは、本開示の目的のために、エラストマーのこの定義に従って挙動するフルオロポリマーである。
【0010】
エラストマー性フルオロポリマーは、ペルフルオロポリマーであってもよく、炭素およびフッ素以外の元素、例えば、水素、塩素および他のハロゲン、酸素、窒素、硫黄、ケイ素など、およびこれらの混合物を含んでいてもよい。用語「フルオロポリマー」は、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(以下、フッ素化モノマー)から誘導される繰り返しモノマー単位を25重量%より多く含む任意のポリマーを示すことを意図している。フッ素化モノマーが水素原子を含まず、他のハロゲン原子を含む場合、ペル(ハロ)フルオロモノマーと呼ばれる。フッ素化モノマーが水素原子を含む場合、水素を含有するフッ素化モノマーと呼ばれる。一般的なフッ素化モノマーの例としては、限定されないが、テトラフルオロエチレン;C〜Cペルフルオロオレフィン、例えば、ヘキサフルオロプロペン;C〜C水素化モノフルオロオレフィン、例えば、フッ化ビニル;フッ化ビニリデン;1,2−ジフルオロエチレンおよびトリフルオロエチレン;式CH=CH−Rf0を満たすペルフルオロアルキルエチレン(式中、Rf0は、C〜Cペルフルオロアルキル、クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C〜Cフルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレンである);式CF=CFORf1を満たす(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(式中、Rf1は、C〜Cフルオロ−またはペルフルオロアルキル、例えば、CF、C、Cである);CF=CFOX(ペル)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル(式中、Xは、C〜C12アルキル、またはC〜C12オキシアルキル、または1個以上のエーテル基を有するC〜C12(ペル)フルオロオキシアルキル、例えばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである);式CF=CFOCFORf2を満たす(ペル)フルオロメトキシアルキルビニルエーテル(式中、Rf2は、C〜Cフルオロ−またはペルフルオロアルキル、例えば、CF、C、Cまたは1個以上のエーテル基を有するC〜C(ペル)フルオロオキシアルキル、例えば−C−O−CFである);式CF=CFOYを満たす官能化(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(式中、Yは、C〜C12アルキルまたは(ペル)フルオロアルキル、またはC〜C12オキシアルキル、または1個以上のエーテル基を有するC〜C12(ペル)フルオロオキシアルキルであり、Yは、酸、酸ハロゲン化物または塩の形態中にカルボン酸基またはスルホン酸基を含む);フルオロジオキソール、特に、ペルフルオロジオキソールなどが挙げられる。2種類以上のフッ素化モノマーのコポリマーも可能である。
【0011】
フルオロポリマーは、フッ素化モノマーおよび水素化モノマー(本開示の目的のために、フッ素原子を含まないモノマーを指す用語)を含むコポリマーであってもよい。適切な水素化モノマーの例としては、限定されないが、エチレン、プロピレン、ビニルモノマー、例えば、酢酸ビニル、アクリルモノマー、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸(ヒドロキシ)エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチルなど、スチレンモノマー、例えばスチレンおよびp−メチルスチレン、ビニルエーテル、例えば、プロピルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ビニル−4−ヒドロキシブチルエーテル、不飽和カルボン酸、例えばビニル酢酸など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
適切なフルオロエラストマーのいくつかの特定の例としては、(限定されないが)、フッ化ビニリデンをコモノマーとして用い、ポリマー鎖にフルオロ基、アルキル基、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基を置換基として有し、キュアサイトモノマーを含むか、または含まないポリメチレン型フルオロゴム、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー;フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとのターポリマー;フッ化ビニリデンと(ペル)フルオロメトキシアルキルビニルエーテルとのコポリマー;フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとポリペルフルオロメチルビニルエーテルとのターポリマー;フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとフッ素化ビニルエーテルとのターポリマー;フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとプロピレンとのターポリマー;フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとポリペルフルオロメチルビニルエーテルとのテトラポリマー;テトラフルオロエチレンとプロピレンとフッ化ビニリデンとのターポリマー;テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとエチレンとポリペルフルオロメチルビニルエーテルとのペンタポリマー;ポリマー鎖上のすべての置換基に、フルオロ基、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシル基を有するポリメチレン型ペルフルオロゴム;モノマー性アルキル基、ペルフルオロアルキル基および/またはペルフルオロアルコキシ基のうち1個以上を含み、キュアサイトモノマーを含んでいるか、または含んでいないポリメチレン型フルオロゴムなど、およびこれらの混合物が挙げられる。適切なフルオロエラストマーの特定例のひとつは、TECNOFLON(登録商標)TNラテックスとしてSolvay Solexisから市販されている。他の市販フルオロエラストマー、例えば、DuPont製のVITON(登録商標)、3M製のDYNEON(商標)、AFLAS(登録商標)、Daikin製DAI−EL(商標)などを同様に使用することができる。
【0013】
一実施形態では、フルオロエラストマーは、フッ素含有量が少なくとも約5重量%、別の実施形態では、少なくとも約10重量%、さらに別の実施形態では、少なくとも約30重量%、一実施形態では、約76重量%以下(ペルフルオロエラストマー)、別の実施形態では、約70重量%以下、さらに別の実施形態では、約68重量%以下であるが、フッ素含有量は、この範囲からはずれていてもよい。
【0014】
一実施形態では、フルオロエラストマーは、引張強さが、ASTM D412Cによって測定する場合、少なくとも約3MPa、別の実施形態では、少なくとも約4MPa、さらに別の実施形態では、少なくとも約7MPa、一実施形態では、約25MPa以下、別の実施形態では、約20MPa以下、さらに別の実施形態では、約18MPa以下であるが、引張強さは、この範囲からはずれていてもよい。
【0015】
一実施形態では、フルオロエラストマーは、破断点伸度が、ASTM D412Cによって測定する場合、少なくとも約150%、別の実施形態では、少なくとも約200%、さらに別の実施形態では、少なくとも約400%、一実施形態では、約1100%以下、別の実施形態では、約1000%以下、さらに別の実施形態では、約800%以下であるが、破断点伸度は、この範囲からはずれていてもよい。
【0016】
一実施形態では、フルオロエラストマーは、硬度(ショアA)値が、ASTM 2240によって測定する場合、少なくとも約20、別の実施形態では、少なくとも約30、さらに別の実施形態では、少なくとも約40、一実施形態では、約90以下、別の実施形態では、約85以下、さらに別の実施形態では、約80以下であるが、硬度は、この範囲からはずれていてもよい。
【0017】
一実施形態では、フルオロエラストマーは、ガラス転移温度が、少なくとも約−70℃、別の実施形態では、少なくとも約−50℃、さらに別の実施形態では、少なくとも約−40℃、一実施形態では、約25℃以下、別の実施形態では、約0℃以下、さらに別の実施形態では、約−10℃以下であるが、Tgは、この範囲からはずれていてもよい。
【0018】
フルオロエラストマーは、インク中に任意の望ましい量または有効な量で存在し、一実施形態では、インクの少なくとも約0.1重量%、別の実施形態では、インクの少なくとも約1重量%、さらに別の実施形態では、インクの少なくとも約2重量%、一実施形態では、インクの約25重量%以下、別の実施形態では、インクの約20重量%以下、さらに別の実施形態では、インクの約15重量%以下で存在するが、この量は、この範囲からはずれていてもよい。
【0019】
インク組成物は、そのほかに架橋剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、架橋剤は、有機アミン、ジヒドロキシ芳香族化合物、ペルオキシド、金属酸化物など、およびこれらの混合物である。架橋によって、インク組成物から作られる画像の物理的性質をさらに高めることができる。架橋剤は、任意の望ましい量または有効な量で、一実施形態では、インクの少なくとも約0.1重量%、別の実施形態では、インクの少なくとも約1重量%、さらに別の実施形態では、インクの少なくとも約5重量%、一実施形態では、インクの約20重量%以下、別の実施形態では、インクの約15重量%以下、さらに別の実施形態では、インクの約10重量%以下の量で存在してもよいが、この量は、この範囲からはずれていてもよい。
【0020】
インクに対する他の任意の添加剤としては、殺生物剤、殺菌剤、pH制御剤(例えば、酸または塩基)、リン酸塩、カルボン酸塩、亜硫酸塩、アミン塩、緩衝溶液など、金属イオン封鎖剤、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、粘度調整剤、レベリング剤など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
一実施形態では、インク組成物は、低粘度組成物である。用語「低粘度」は、スクリーン印刷インクのような、粘度が少なくとも1,000cpであるような傾向を有する従来の高粘度インクとの比較で用いられる。特定の実施形態では、本明細書に開示されているインクは、粘度が、一実施形態では、約100cp以下、別の実施形態では、約50cp以下、さらに別の実施形態では、約20cp以下であるが、粘度は、この範囲からはずれていてもよい。インクジェット印刷用途で使用される場合、インク組成物は、一般的に、上のインクジェット印刷プロセスで使用するのに適した粘度を有する。例えば、サーマルインクジェット印刷用途では、室温(すなわち、約25℃)で、インク粘度は、一実施形態では、少なくとも約1センチポイズ、一実施形態では、約10センチポイズ以下、別の実施形態では、約7センチポイズ以下、さらに別の実施形態では、約5センチポイズ以下であるが、粘度は、この範囲からはずれていてもよい。例えば、圧電式インクジェット印刷の場合、吐出温度で、インク粘度は、一実施形態では、少なくとも約2センチポイズ、別の実施形態では、少なくとも約3センチポイズ、一実施形態では、約20センチポイズ以下、別の実施形態では、約15センチポイズ以下、さらに別の実施形態では、約10センチポイズ以下であるが、粘度は、この範囲からはずれていてもよい。吐出温度は、約20〜25℃と低くてもよく、一実施形態では、約90℃、別の実施形態では、約60℃、さらに別の実施形態では、約40℃の高さであってもよいが、吐出温度は、この範囲からはずれていてもよい。
【0022】
インク組成物は、任意の適切なpHまたは望ましいpHを有していてもよい。サーマルインクジェット印刷プロセスのような実施形態では、pH値は、一実施形態では、少なくとも約2、別の実施形態では、少なくとも約3、さらに別の実施形態では、少なくとも約5、一実施形態では、約11まで、別の実施形態では、約10まで、さらに別の実施形態では、約9までであるが、pHは、この範囲からはずれていてもよい。
【0023】
インク組成物は、一実施形態では、表面張力が、少なくとも約22ダイン/cm、別の実施形態では、少なくとも約25ダイン/cm、さらに別の実施形態では、少なくとも約28ダイン/cm、一実施形態では、約40ダイン/cm以下、別の実施形態では、約38ダイン/cm以下、さらに別の実施形態では、約35ダイン/cm以下であるが、表面張力は、この範囲からはずれていてもよい。
【0024】
インク組成物は、一実施形態では、平均粒径が約5μm以下、別の実施形態では、約2μm以下、さらに別の実施形態では、約1μm以下、さらになお別の実施形態では約0.5μm以下の粒状物を含有しているが、この粒状物の粒径は、この範囲からはずれていてもよい。特定の実施形態では、フルオロエラストマーは、インク中でエマルションの形態であり、平均粒径が、一実施形態では、約2μm以下、別の実施形態では、約1μm以下、さらに別の実施形態では、約0.5μm以下であるが、粒状物の粒径は、この範囲からはずれていてもよい。
【0025】
インク組成物は、任意の適切なプロセスによって、例えば、成分を単純に混合することによって調製することができる。あるプロセスは、インクの全成分を一緒に混合することと、この混合物を濾過してインクを得ることとを伴う。インクは、成分を混合し、所望な場合、加熱し、濾過した後、この混合物に任意の望ましいさらなる添加剤を加え、均質な混合物が得られるまで、一実施形態では、約5〜約10分間、室温で穏やかに撹拌して混合することによって調製することができる。または、任意のインク添加剤を、インク調製プロセス(任意の望ましい手順、例えば、全成分を混合し、所望な場合、加熱し、濾過することによって行われる)中に他のインク成分と混合することができる。
【0026】
特定の実施形態では、インクを以下のように調製する。(1)第1の界面活性剤で安定化されたフルオロエラストマーエマルションを調製;(2)第2の界面活性剤で安定化された着色剤分散物を調製;(3)フルオロエラストマーエマルションと着色剤分散物とを混合;(4)場合により、この混合物を濾過;(5)共溶媒のような他の添加物を加える;(6)場合により、組成物を濾過。特定の実施形態では、第1の界面活性剤は、第2の界面活性剤と適合性である。さらなる実施形態では、第1の界面活性剤は、第2の界面活性剤と同じである。句「適合性」は、両者間で中和(pHまたは電荷)または反応が起こらないことを意味する。このことを最もよく示す指標は、フルオロエラストマーエマルションと着色剤分散物とを混合した後に巨大凝集物も大きな凝集物も生成しないことである。このことは、粒径測定によって特性決定することができる。例えば、混合物の粒径は、混合前と実質的に同じである。
【0027】
また、本明細書には、本明細書に開示されているようなインク組成物を、画像を形成するような模様になるように基材に塗布することを含むプロセスも開示される。
【0028】
インク組成物をインクジェット印刷装置に組み込むことと、インクの液滴を、基材の上に画像を形成するような模様になるように吐出することとを伴うプロセスで、このインク組成物を使用することができる。特定の実施形態では、印刷装置は、サーマルインクジェットプロセスを使用し、この場合、ノズル内のインクは、画像を形成するような模様になるように選択的に加熱され、それによって、インク液滴が画像を形成するような模様になるように吐出される。別の実施形態では、印刷装置は、音響インクジェットプロセスを使用し、この場合、インク液滴は、音響ビームによって画像を形成するような模様になるように吐出される。さらに別の実施形態では、印刷装置は、圧電式インクジェットプロセスを使用し、この場合、インク液滴は、圧電振動要素の振幅によって、画像を形成するような模様になるように吐出される。任意の適切な基材を使用してもよい。
【0029】
特定の実施形態では、このプロセスは、インクを変形可能な基材(例えば、布地、ゴムシート、プラスチックシートなど)に印刷することを伴う。ある実施形態では、基材は、伸縮性基材、例えば、布地またはゴムシートである。他の実施形態では、基材は、例えば、成形して3次元物体にするプロセスにおいて、自身のガラス転移温度よりも高い高温で変形可能なプラスチックである。本明細書に開示されているインクを用いる場合、画像を形成するような模様は、成形時に損傷しないだろう。画像を形成するような模様がついたゴムシートを、例えば、3次元物体の包みとして使用してもよい。
【0030】
一実施形態では、本明細書に開示されているインクを、ゴム基材(例えば、天然ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ネオプレンゴム、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー)、スチレン−ブタジエンゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマーである)、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリルゴム、エチレン−酢酸ビニル、ポリエーテルブロックアミド、ポリスルフィドゴム、Hypalonとしてクロロスルホン酸化ポリエチレンなど)に印刷してもよい。特定の実施形態では、本明細書に開示されているインクを、シリコンゴム、ポリアクリルゴム、ブチルゴム、またはネオプレンゴム基材に印刷してもよく、一実施形態では、元々の長さ寸法の少なくとも110%まで、別の実施形態では、少なくとも150%まで、さらに別の実施形態では、少なくとも200%まで、一実施形態では、少なくとも約50倍、別の実施形態では、少なくとも約100倍、さらに別の実施形態では、少なくとも約500倍まで割れまたは層間剥離を示すことなく画像のついた基材を1つの軸方向に伸縮することができる(すなわち、x軸およびy軸の両方に対し、x軸に沿って)。
【0031】
一実施形態では、本明細書に開示されているインクを、シリコンゴム基材、ポリアクリルゴム基材、ブチルゴム基材またはネオプレンゴム基材に印刷してもよく、画像がついた基材を、画像を形成するような模様への損傷を示すことなく、一実施形態では、水中に少なくとも約1日間、別の実施形態では、少なくとも約1週間、さらに別の実施形態では、少なくとも約1ヶ月間浸すことができる。
【0032】
特定の実施形態では、本明細書に開示されているインクを用いて作成された画像は、きわめて耐水性である。一実施形態では、このインクを用いて作成された画像は、少なくとも約80°、別の実施形態では、少なくとも約90°、さらに別の実施形態では、少なくとも約95°の水滴接触角を示すが、接触角は、この範囲からはずれていてもよい。耐水性の特徴によって、本明細書に開示されているインクが、水に関連する製品、例えば、媒剤の包み、水着などの屋外での用途または印刷に適するものになる。
【0033】
特定の実施形態では、本明細書に開示されているインクを用いて作成された画像は、良好な耐化学薬品性をもつ。例えば、この画像は、アルコール、酢酸、アセトアミド、臭化アリル、塩化アリル、塩化ベンゾイル、エーテル、エステル、炭化水素、血液、塩溶液などに対し、良好〜優れた耐性を示すことができる。
【0034】
一実施形態では、本明細書に開示されているインクを用いて作成された画像は、引張強さが、ASTM D412Cによって測定する場合、少なくとも約3MPa、別の実施形態では、少なくとも約4MPa、さらに別の実施形態では、少なくとも約8MPa、一実施形態では、約25MPa以下、別の実施形態では、約20MPa以下、さらに別の実施形態では、約18MPa以下であるが、引張強さは、この範囲からはずれていてもよい。
【0035】
一実施形態では、本明細書に開示されているインクを用いて作成された画像は、ASTM D412Cによって測定する場合、破断点伸度が、少なくとも約150%、別の実施形態では、少なくとも約200%、さらに別の実施形態では、少なくとも約400%、一実施形態では、約1000%以下、別の実施形態では、約800%以下、さらに別の実施形態では、約700%以下であるが、破断点伸度は、この範囲からはずれていてもよい。一般的に、画像は、変形可能な基材よりも大きな破断点伸度をもつ。
【0036】
一実施形態では、本明細書に開示されているインクを用いて作成された画像は、硬度(ショアA)値が、ASTM 2240によって測定する場合、少なくとも約20、別の実施形態では、少なくとも約30、さらに別の実施形態では、少なくとも約40、一実施形態では、約100以下、別の実施形態では、約90以下、さらに別の実施形態では、約85以下であるが、硬度は、この範囲からはずれていてもよい。
【実施例】
【0037】
(実施例I)
フルオロエラストマーエマルション(TECNOFLON(登録商標)TNラテックス、Solvay Solexis Inc.(ウエストデプトフォード、NJ)、固体含有量64.91wt%)をPigment Green 7顔料分散物(固体含有量19.96%、2wt%の量でドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム界面活性剤も含む)と混合し、固体含有量が5wt%の顔料を含む均一な分散物を形成した。粒径をNanotracTM 252(Microtrac、モンゴメリービル、PA)を用いて室温で測定し、これら2種類の分散物の適合性を確認した。TECNOFLON(登録商標)TNラテックスは、平均粒径が約230nmであり、Pigment Green 7顔料分散物は、平均粒径が約100nmであった。この2種類の分散物を、凝集物を生じることなく、きわめて十分に混合した。混合した後、この混合物は、約40nm〜約300nmの粒度分布を示し、平均粒径は約120nmであった。
【0038】
堅牢性の高い印刷した画像であることを示すために、まず、上の混合物を蒸留水でインクジェット印刷に適切な粘度(約5cp)に達するまで希釈した。次いで、ノズル内で分散物が乾燥するのを防ぐために、この希釈した混合物にエチレングリコールを比率1:9で加えた(混合物9重量部あたり、エチレングリコール1重量部)。10pLカートリッジ(DMC−11610)を取り付けたDMP−2800インクジェットプリンタ(Fuji Film Dimatix、サンタクララ、CA)を用い、この吐出可能なインクを天然ラテックスゴム基材(ラテックス手袋)に印刷した。印刷した後、インクの溶媒を60℃で約5分間乾燥させた。画像は、両方向に500%まで伸びた(基材の限界であった)。数百回の伸び−緩めサイクルの後、画像は、割れまたは層間剥離のような損傷なく、基材の上にしっかりと留まっていた。また、印刷した画像を水中で擦ることによって、水にさらされることに対し試験した。目に見える損傷はみられなかった。
【0039】
(実施例II)
ポリジメチルシロキサン(PDMS)シリコンゴム基材を用いる以外は、実施例Iのプロセスを繰り返した。Dow Corning SYLGARD 184キットを用い、PDMS基材を実験室で作成した。同様の結果が得られた。印刷した画像は、眼に見える損傷なく、数百サイクルにわたって200%まで伸ばすことができた(PDMS基材の限界)。
【0040】
(実施例III)
平均粒径が120nmのTiO顔料分散物をPigment Green 7の代わりに用いる以外は、実施例Iのプロセスを繰り返した。まずNanophase Technologies Corporation(バーリッジ、IL)から購入したTiOナノ粒子を、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム界面活性剤(2wt%)を用いて水に分散させ、固体含有量が20wt%の安定な分散物を得た。この分散物を、顔料の保持量が10wt%になるように、フルオロエラストマーTECNOFLON(登録商標)TNラテックスと混合した。この伸縮性インクは、実施例Iと同様の印刷能力および伸縮能力を示した。
【0041】
(実施例IV)
別のフルオロエラストマーであるDYNEON(商標) FX 10180フルオロエラストマー(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとのターポリマーラテックス)をTECNOFLON(登録商標)TNの代わりに用いる以外は、実施例Iのプロセスを繰り返す。同様の結果がみられるだろうと考えられる。
【0042】
(実施例V)
水溶性染料であるBasacid Black X38液体(BASF)をPigment Green 7分散物の代わりに用いる以外は、実施例Iのプロセスを繰り返す。同様の結果がみられるだろうと考えられるが、例外として耐水挙動だけは実施例Iの画像よりも低いと思われる。
【0043】
(比較例A)
比較のために、従来のインク(DMP型の液、#MFL001、Fuji Film Dimatix)を、実施例Iと同じゴム基材に印刷し、乾燥させた。新しい印刷物は基材の上に十分にとどまっていたが、画像は、伸び−緩めサイクルを数回行った後、簡単にはがすことができた。この結果は、伸び条件下で、従来のインクが伸縮性でもなく堅牢性でもないことを示していた。数回の伸び−緩めサイクルの後、局所的な層間剥離と、多くの微細な割れが広がっており、画像は、基材から簡単にはがすことができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク組成物であって、
(a)水と、
(b)共溶媒と、
(c)着色剤と、
(d)界面活性剤と、
(e)フルオロエラストマーとを含み、
このインクが、印刷温度で約20センチポイズ以下の粘度を有する、インク組成物。
【請求項2】
前記着色剤が顔料である、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記フルオロエラストマーが、(a)フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー;(b)フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとのターポリマー;(c)フッ化ビニリデンと(ペル)フルオロメトキシアルキルビニルエーテルとのコポリマー;(d)フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとポリペルフルオロメチルビニルエーテルとのターポリマー;(e)フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとフッ素化ビニルエーテルとのターポリマー;(f)フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとプロピレンとのターポリマー;(g)フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとポリペルフルオロメチルビニルエーテルとのテトラポリマー;(h)テトラフルオロエチレンとプロピレンとフッ化ビニリデンとのターポリマー;(i)テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとエチレンとポリペルフルオロメチルビニルエーテルとのペンタポリマー;または(j)これらの混合物である、請求項1に記載のインク。
【請求項4】
前記フルオロエラストマーの引張強さが約3〜約25MPaである、請求項1に記載のインク。
【請求項5】
(1)変形可能な基材と、
(2)この変形可能な基材の上にある画像を形成するような模様とを含み、この画像を形成するような模様が、
(a)着色剤と、
(b)界面活性剤と、
(c)フルオロエラストマーとを含む、模様がついた物品。
【請求項6】
前記変形可能な基材が、プラスチック、ゴムまたは布地である、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記画像を形成するような模様が、前記基材から割れたり層間剥離したりすることなく、ある軸方向に沿って、元々の長さ寸法の少なくとも110%まで、少なくとも約50倍伸びることが可能な、請求項5に記載の物品。
【請求項8】
前記画像を形成するような模様が、少なくとも約80°の水接触角を示す、請求項5に記載の物品。
【請求項9】
(a)水と、
(b)着色剤と、
(c)界面活性剤と、
(d)フルオロエラストマーとを含むインクを、画像を形成するような模様になるように基材に塗布することを含むプロセス。
【請求項10】
前記プロセスが、前記インクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、このインクの液滴を前記基材の上に画像を形成するような模様になるように吐出させることとを含む、請求項9に記載のプロセス。