説明

伸縮性シート

【課題】 伸縮性、伸張回復率、柔軟性、耐湿熱性、耐光性、熱成型性、防水性に優れた
伸縮性シートを提供する。
【解決手段】 伸縮性不織布基材と接着剤層と表皮材とが順次積層してなる伸縮性シート
であって、伸縮性シートの破断伸度が200%以上、100%伸長回復率が70%以上で
あることを特徴とする伸縮性シート。70℃×93%RH×10週間の耐湿熱性テストに
おける強度保持率が70%以上、耐光性試験が3級以上である上記伸縮性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐湿熱性、耐光性に優れ、また、熱成型が可能な伸縮性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、織物、編物、不織布等の繊維質基材にポリウレタン樹脂を充填させたシート状物
は、靴、鞄、袋物、衣料、家具、インテリア材料、自動車内装材、自動二輪車のシート材
等として、多方面で使用されているが、そのほとんどが伸縮性のないものである。一方、
伸縮性を付与するために伸度50〜150%の伸縮性布帛を積層する試み(特許文献1参
照)などがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−31862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の合成皮革は、十分な伸縮性や伸長回復率がないため、
成型加工時にシワやたるみを発生することが多い。また、使い捨て用途ではないために耐
湿熱性、耐光性等の耐久性に優れた基材が要望されているが、十分な耐久性を保持できる
ものがなかった。
本発明はかかる従来の欠陥を解消し、伸縮性、伸長回復率、柔軟性、耐湿熱性、耐光性、
熱成型性、防水性に優れた伸縮性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、伸縮性不織布基材と接着剤層と表皮材とが順次積層してなる伸縮性シー
トであって、伸縮性シートの破断伸度が200%以上、100%伸長回復率が70%以上
であることを特徴とする伸縮性シートによって達成される。
【0006】
また、本発明の伸縮性シートは、70℃×93%RH×10週間の耐湿熱性テストにおけ
る強度保持率が70%以上であることが好適である。
また、本発明の伸縮性シートは、耐光性試験が3級以上であることが好適である。
【0007】
また、本発明は、伸縮性不織布基材がポリカーボネート系ポリウレタン樹脂からなること
が好適である。
【0008】
また、本発明は、表皮材がポリカーボネート系ポリウレタン樹脂からなることが好適であ
る。
【0009】
また、本発明は、接着剤層の接着剤がポリカーボネート系ポリウレタン樹脂からなること
が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、伸縮性、伸長回復率、柔軟性、耐湿熱性、耐光性、熱成型性、防水性に優
れた伸縮性シートが提供される。
従って、本発明の伸縮性シートは、自動車内装材、自動二輪車のシート材、靴、インテリ
ア材料等に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いる基材の不織布を構成する繊維としては、例えば、ポリウレタン繊維が挙げ
られる。溶融紡糸可能な熱可塑性ポリウレタン弾性体は、通常分子量500〜6000の
低融点ポリオール、例えば、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエーテル
等と、分子量500以下の有機ジイソシアネート、例えば、P,P’−ジフェニルメタン
ジイソシアネート、トリレンジイソシアネ一ト、イソホロンジイソシアネート、水素化ジ
フェニ−ルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソシア
ネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等と、分子量500以下の
鎖伸長剤、例えば、グリコール、アミノアルコ一ル或はトリオールとの反応により得られ
るポリマーである。
これらのポリマーのうち、特に良好なものはポリオールとしてジヒドロキシポリカーボネ
ートを用いたポリウレタン弾性体である。
また、有機ジイソシアネートとしてはP,P’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好
適である。また鎖伸長剤としては、1,4−ビスヒドロキシエトキシべンゼンおよび1,
4−ブタンジオールが好適である。
【0012】
ポリウレタン弾性体は上記の如くポリオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤とから
合成されるものであるが、本発明に於いて好適に使用されるためはポリオール成分が全体
の65重量%以上であり、特に好ましいのは68重量%以上である。ポリオール成分の含
有量が少ない場合は、得られる不織布の伸度および伸長回復率が低いものとなる傾向にあ
る。これらのポリウレタン弾性体が可塑剤、安定剤等を含有することは差支えない。
ここでいう繊維としては、もちろんポリウレタン繊維以外の繊維形成性の熱可塑性弾性
体であってもよく、スチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィ
ン系エラストマー等が挙げられる。
【0013】
本発明に用いる不織布は、構成する弾性体フィラメントが実質的に糸条の全長に亘って
接合することなく開繊して積層されたものである。モノフィラメントが開繊されずに集束
された状態で接合されていると、不織布の柔軟性が著しく損なわれる。このような不織布
は、メルトブロー法、スパンボンド法等により製造される。
また上記モノフィラメントの直径はバラツキがあることが考えられるが、50μm以下で
あり、好ましくは平均30μm以下であることが好適である。
【0014】
本発明に用いる不織布は、目付けは50〜300g/mであることが望ましく、更に
好ましくは70〜180g/mである。目付けが50g/m未満では不織布が柔らかく
なりすぎ、成型保持性が悪くなる傾向にある。一方、目付けが300g/mを超えると
、不織布自体が硬くなり、成型しづらくなる傾向にある。
厚みは、0.2mm〜1.5mmが好ましく、更に好ましくは0.3mm〜1.0mm
である。厚みが0.2mm未満では成型時に破れが生じる傾向にあり、厚みが1.5mm
を超えると、応力が低く成型時しわが入りやすい。
強度は、1200cN/25mm以上が好適あり、1200cN/25mm未満では成型時
のひっぱりで破れが生じやすい。
本発明に用いる不織布は、充分な伸縮性及び柔軟性を得るために、破断伸度が200%以
上、100%伸長回復率が70%以上の伸縮性を備えた不織布であることが好適である。
破断伸度が200%未満であれば、鋭角な曲線の成型時に充分な伸びが得られない傾向に
ある。100%伸長回復率が70%未満であれば成型品の装着性が悪くなる傾向にある。
【0015】
本発明の伸縮性シートを構成する接着剤は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シ
リコーン系樹脂、ポリビニールアルコール系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂
、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等
を任意に使用することができるが、好ましくはポリウレタン系樹脂、特に好ましくはポリ
カーボネート系ポリウレタン樹脂が適している。
【0016】
接着剤層の厚みは、接着性及び風合いの観点から10〜100μmであることが好まし
い。10μmより少ないと十分な接着性が得られない傾向にあり、100μmを越えると
風合いが硬く、鋭角な曲線を有する成型品としては不適となる傾向にある。接着用樹脂の
固形分及び粘度は製造可能な条件であればいかなるものでもよい。
【0017】
本発明の伸縮性シートを構成する表皮材は、例えば、ポリウレタン樹脂等が挙げられる
。このポリウレタン樹脂は、分子量500〜6000の低融点ポリオール、有機ジイソシ
アネート及び鎖伸長剤から得られる。ポリオールとしては、分子量が500〜5000の
脂肪族系のポリカーボネートジオールが好ましい。分子量500以下の有機ジイソシアネ
ートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネ一ト
、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニ−ルメタンジイソシアネート、キシリレ
ンジイソシアネート、2.6一ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジ
イソシアネート等が挙げられる。分子量500以下の鎖伸長剤としては、例えば、グリコ
ール、アミノアルコ一ル或はトリオール等が挙げられる。
【0018】
表皮材を得るための製造方法は、特に限定されるものではないが、ロールコーター、ナ
イフオーバーコーター等を用いて行うことができる。塗布の回数を複数回とし、積層する
ことも可能である。得られた樹脂を溶解するために使用する有機溶媒としては、例えば、
ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジエチルスルホキシド、メチルエチルケ
トンジオキサン、シクロヘキサン、トルエン等およびそれらの2種類以上の混合物が挙げ
られる。
【0019】
本発明に使用する表皮材としては、厚さ10〜100μmが好ましくは、より好ましく
は15〜80μmである。10μm未満では穴空きの問題が発生する可能性があり、10
0μmを超えると表皮が硬くなりすぎる傾向にある。
伸縮性シートを構成する表皮材は上記接着剤を介して伸縮性不織布基材の表面に積層され
る。
【0020】
本発明に用いる基材、接着剤、表皮材には、樹脂に通常使用されている各種添加剤が含
有されていてもよい。かかる添加剤は、例えば、増粘剤、硬化剤、架橋剤、顔料、光沢付
与剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、難燃剤等である。
【0021】
本発明の伸縮性シートの目付けは、100〜500g/mが好ましく、更に好ましく
は100〜400g/mである。目付けが100g/m未満では成型後の成型保持性が
悪くなる傾向にあり、目付けが500g/mを超えると成型しづらくなる傾向にある。
厚みは、0.2mm〜1.5mmが好ましく、更に好ましくは0.3mm〜1.0mmで
ある。厚みが0.2mm未満では成型時に破れが生じる傾向があり、厚みが1.5mmを
超えると応力が低く成型時にしわが入りやすい。
強度は、1200cN/25mm以上が好適であり、1200cN/25mm未満の強度では
、使用に耐えられない傾向にある。
破断伸度は、200%以上が必要であり、200%未満では鋭角な曲線の成型時に充分な
伸びが得られない。100%伸長回復率に関しては、70%以上が必要であり、70%未
満では成型品の装着性が悪い。
【0022】
また、本発明の伸縮性シートは、70℃×93%RHの恒湿恒温槽での10週間の耐湿熱
性テスト(ジャングルテスト)における強度保持率が70%以上であることが好適である
。強度保持率が70%未満であれば、耐久性に劣り、破れ等が発生する傾向にある。
耐光性試験においては3級以上であることが好適であり、3級未満では使用に耐え難いも
のとなる。
【0023】
本発明においては、更にクッション性を良くするために、伸縮性不織布基材と表皮層との
間に伸縮性のある発泡層を設けても良い。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されな
い。なお、実施例における評価は下記に示す方法により測定を実施した。
【0025】
不織布の平均繊維径:走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織布表面の500倍拡大
写真を撮影し、50本の繊維の直径を測定し平均値を平均繊維径とした。
【0026】
目付:JIS L1906に準拠して測定した。目付は100×100mmの試験片を
採取し、重量を測定して1mあたりに換算した。
【0027】
強度及び伸度:JIS L1906に準拠して測定した。幅25mm、長さ200mm
の試験片を採取し、引張試験機(オリエンテック製)を用いて、チャック間を100mm
に設定し試験片を固定した。引張速度300mm/minで伸長させ、試験片が破断した
時の強度(25mm幅)及び伸度を測定した。
【0028】
伸長回復率:JIS L1096に準拠して測定した。ただし、本発明における評価は
伸度100%での回復率とし、幅25mm、長さ200mmの試験片を採取し、引張試験
機(オリエンテック製)を用いて、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。
引張速度300mm/minで100%まで伸長させた後、クロスヘッドを伸長時と同じ
速度で元の位置に戻し、不織布にかかる応力を0とした。再び同じ速度で100%まで伸
長させ、応力負荷が再び始まる時の不織布の伸びた長さをLmmとした。伸長回復率は次
式に従って求めた。
伸長回復率(%)=((100−L)/100)×100
【0029】
厚み:JIS L−1098に準じて測定した。測定器:定圧厚さ測定器 TYPE
PF−11(ラフロック社製)。
【0030】
耐湿熱性テスト:試験片を70℃×93%RHの恒温恒湿槽に10週間放置後、上記の
不織布強度及び伸度の測定法と同様にしてJIS L1906に準拠して測定した。
また、強度保持率を次式に従って求めた。
強度保持率(%)=(A/B)×100
A:試験片を90℃×80%RHの恒温恒湿槽に10週間放置後の強度
B:恒温恒湿槽放置前の強度
【0031】
耐光性試験:JIS L−0842に準じてフェードメーター(スガ試験機製)で測定
した。
【0032】
[実施例1]
分子量2000のポリカーボネートジオール(PC)、P,P’−ジフェニルメタンジ
イソシアネート(MDI)及び1,4−ブタンジオール(BD)を重合比率がPC/MD
I/BD=80/59/17.5となるように混合し、2軸押出機連続重合装置を用いて
ワンショット方式で塊状重合することにより、ショアーA硬度が95の熱可塑性ポリウレ
タンを得た。この熱可塑性ポリウレタンを温度90℃で24時間真空乾燥した。この熱可
塑性ポリウレタンの水分率をカールフィッシャー法で測定すると50ppmであった。
【0033】
この熱可塑性ポリウレタンを230℃の押出機で溶融混練し、ギアポンプで計量し、直
径0.5mmの孔を2mmピッチで一列に配したメルトブローノズルから吐出させ、ノズ
ルの1ホール当り0.35g/分の吐出条件でポリマーを押出し、ノズルの両側から吹き
出す加熱エアー(240℃、9NI/cm/分)にて細化・固化することによって、平均
繊維径が25μmのフィラメントを形成し、このフィラメントをノズルから20cm離れ
た位置にある移動コンベアネット上に吹きつけることで、目付100g/mのポリウレ
タン弾性繊維不織布を得た。
この不織布の物性値は次のごとくであった。
目付:100g/m
厚み:0.42mm
平均繊径:25μm
破断強度:1515cN/25mm
破断伸度:400%
100%伸長回復率:90%
【0034】
続いて、離型紙に粘着された厚さ30μmの乾式ポリカーボネート系ポリウレタンフィ
ルム(黒色着色剤含有)からなる表皮材の上に、C−4010(DIC株式会社製)10
0重量部、コロネートL(日本ポリウレタン工業株式会社製)8重量部、アクセルS(D
IC株式会社製)5重量部、溶剤(メチルエチルケトン/トルエン)40重量部(20/2
0重量部)からなるウレタン系接着剤を85g/m塗布し、次いで、80℃で連続乾燥
して溶剤を除去し、次いで、基材として前記の目付け100g/mのポリウレタン弾性
繊維不織布を重ね合わせ、圧着ローラーでニップして接着剤を適度に不織布に押し込んだ
後、60℃で24時間熱処理し、最後に離型紙を剥して伸縮性シートを得た。
得られた伸縮性シートの物性値は次のごとくであった。
目付:175.4g/m
厚み:0.42mm
破断強度:4343cN/25mm
破断伸度:406%
100%伸長回復率:90%
【0035】
得られた伸縮性シートを恒温恒湿槽に放置した。恒温恒湿槽から伸縮性シートを取り出
し、物性測定を行ったところ次のごとくであった。
目付:174.3g/m
厚み:0.42mm
破断強度:4078cN/25mm
破断伸度:382%
強度保持率:93.9%
【0036】
伸縮性シートの耐光性試験を行ったところ、4級であった。
【0037】
次に、伸縮性シートの成型性を確認した。伸縮性シートの表面温度が130〜140℃
になるように加熱し雄型成形型を用いて真空成型法により成型評価を実施した。
この結果、表皮材のひび割れや表皮材と不織布基材の剥離がなく良好な成型品が得られた

【0038】
[比較例1]
分子量2000のポリブチレンアジペート(PBA)、P,P’−ジフェニルメタンジ
イソシアネート(MDI)及び1,4−ブタンジオール(BD)をPBA/MDI/BD
=80/59/17.5で混合した以外は実施例1と同様の方法で重合を実施し、ショア
ーA硬度が90の熱可塑性ポリウレタンを得た。この熱可塑性ポリウレタンを温度90℃
で24時間真空乾燥した。この熱可塑性ポリウレタンの水分率をカールフィッシャー法で
測定すると50ppmであった。
【0039】
この熱可塑性ポリウレタンを実施例1と同様に230℃の押出機で溶融混練し、ギアポ
ンプで計量し、直径0.5mmの孔を2mmピッチで一列に配したメルトブローノズルか
ら吐出させ、ノズルの1ホール当り0.35g/分の吐出条件でポリマーを押出し、ノズ
ルの両側から吹き出す加熱エアー(240℃、9NI/cm/分)にて細化・固化するこ
とによって、平均繊維径が25μmのフィラメントを形成し、このフィラメントをノズル
から20cm離れた位置にある移動コンベアネット上に吹きつけることで、目付100g
/mのポリウレタン弾性繊維不織布を得た。
この不織布の物性値は次のごとくであった。
目付:100g/m
厚み:0.42mm
平均繊径:25μm
破断強度:2070cN/25mm
破断伸度:435%
100%伸長回復率:90%
【0040】
続いて、実施例1の乾式ポリカーボネート系ポリウレタンフィルムからなる表皮材の上
に、C−4010(DIC株式会社製)100重量部、コロネートL(日本ポリウレタン
工業株式会社製)8重量部、アクセルS(DIC株式会社製)5重量部、溶剤(メチルエ
チルケトン/トルエン)40重量部(20/20重量部)からなるウレタン系接着剤を8
5g/m塗布し、次いで、80℃で連続乾燥して溶剤を除去し、次いで、基材として前
記の目付け100g/mのポリウレタン弾性繊維不織布を重ね合わせ、圧着ローラーで
ニップして接着剤を適度に不織布に押し込んだ後、60℃で24時間熱処理し、最後に離
型紙を剥して伸縮性シートを得た。
得られた伸縮性シートの物性値は次のごとくであった。
目付:178.4g/m
厚み:0.48mm
破断強度:4598cN/25mm
破断伸度:424%
100%伸長回復率:92%
【0041】
得られた伸縮性シートを実施例1と同様に恒温恒湿槽に放置した。
恒温恒湿槽から伸縮性シートを取り出し、物性測定を行おうと試みたが基材の不織布部分
が劣化して測定できなかった。
【0042】
伸縮性シートの耐光性試験を行ったところ、3級であった。
【0043】
伸縮性シートの表面温度が120〜130℃になるように加熱した以外は実施例1と同
じ方法で成型した。
この結果、表皮材のひび割れや表皮材と不織布基材の剥離がなく良好な成型品が得られた

【0044】
[比較例2]
分子量2000のポリカーボネートジオール(PC)、P,P’−ジフェニルメタンジイ
ソシアネート(MDI)及び1,4−ブタンジオール(BD)を重合比率がPC/MDI
/BD=80/59/17.5で混合し、2軸押出機連続重合装置を用いてワンショット
方式で塊状重合することにより、ショアーA硬度が95の熱可塑性ポリウレタンを得た。
この熱可塑性ポリウレタンを温度90℃で24時間真空乾燥した。この熱可塑性ポリウレ
タンの水分率をカールフィッシャー法で測定すると50PPMであった。
【0045】
この熱可塑性ポリウレタンを230℃の押出機で溶融混練し、ギアポンプで計量し、直
径0.5mmの孔を2mmピッチで一列に配したメルトブローノズルから吐出させ、ノズ
ルの1ホール当り0.35g/分の吐出条件でポリマーを押出し、ノズルの両側から吹き
出す加熱エアー(240℃、9NI/cm/分)にて細化・固化することによって、平均
繊維径が25μmのフィラメントを形成し、このフィラメントをノズルから20cm離れ
た位置にある移動コンベアネット上に吹きつけることで、目付100g/mのポリウレ
タン弾性繊維不織布を得た。
この不織布の物性値は次のごとくであった。
目付:100g/m
厚み:0.42mm
平均繊径:25μm
破断強度:1515cN/25mm
破断伸度:400%
100%伸長回復率:90%
【0046】
続いて、離型紙に粘着された厚さ30μmの乾式エステル系ポリウレタンフィルム(黒
色着色剤含有)からなる表皮材の上に、C−4010(DIC株式会社製)100重量部
、コロネートL(日本ポリウレタン工業株式会社製)8重量部、アクセルS(DIC株式
会社製)5重量部、溶剤(メチルエチルケトン/トルエン)40重量部(20/20重量部
)からなるウレタン系接着剤を85g/m塗布し、次いで、80℃で連続乾燥して溶剤
を除去し、次いで、基材として前記の目付け100g/mのポリウレタン弾性繊維不織
布を重ね合わせ、圧着ローラーでニップして接着剤を適度に不織布に押し込んだ後、60
℃で24時間熱処理し、最後に離型紙を剥して伸縮性シートを得た。
得られた伸縮性シートの物性値は次のごとくであった。
目付:180.2g/m
厚み:0.44mm
破断強度:4239cN/25mm
破断伸度:428%
100%伸長回復率:91%
【0047】
得られた伸縮性シートを恒温恒湿槽に放置した。恒温恒湿槽から伸縮性シートを取り出
し、物性測定を行ったところ次のごとくであったが、表皮材がひび割れを起こし使用に耐
えないものであった。
目付:178.3g/m
厚み:0.46mm
破断強度:3535cN/25mm
破断伸度:380%
強度保持率:83%
【0048】
次に得られた伸縮性シートの成型性を確認した。伸縮性シートの表面温度が120〜1
30℃になるように加熱した以外は実施例1と同じ方法で成型した。
この結果、表皮材のひび割れや表皮材と不織布基材の剥離がなく良好な成型品が得られた

【0049】
[比較例3]
ポリエステル編物に実施例1と同じ接着剤及び表皮層を張り合わせシートを得た。
得られたシートの物性値は次のごとくであった。
目付:180.4g/m
厚み:0.45mm
破断強度:5780cN/25mm
破断伸度:130.4%
100%伸長回復率:20%
【0050】
得られたシートを恒温恒湿槽に放置した。恒温恒湿槽から伸縮性シートを取り出し、物性
測定を行おうと試みたが基材の編物部分が劣化して測定できなかった。
【0051】
次に得られたシートの成型性を確認した。シートの表面温度が160℃になるように加熱
した以外は実施例1と同じ方法で成型した。
この結果、表皮材のひび割れや表皮材と編物基材の剥離がなかったが、成型品はしわが発
生し鋭角な曲線の成型時は硬いものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性不織布基材と接着剤層と表皮材とが順次積層してなる伸縮性シートであって、伸縮
性シートの破断伸度が200%以上、100%伸長回復率が70%以上であることを特徴
とする伸縮性シート。
【請求項2】
70℃×93%RH×10週間の耐湿熱性テストにおける強度保持率が70%以上である
請求項1に記載の伸縮性シート。
【請求項3】
耐光性試験が3級以上である請求項1に記載の伸縮性シート。
【請求項4】
伸縮性不織布基材がポリカーボネート系ポリウレタン樹脂からなる請求項1に記載の伸縮
性シート。
【請求項5】
表皮材がポリカーボネート系ポリウレタン樹脂からなる請求項1に記載の伸縮性シート。
【請求項6】
接着剤層の接着剤がポリカーボネート系ポリウレタン樹脂からなる請求項1に記載の伸縮
性シート。

【公開番号】特開2011−721(P2011−721A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143108(P2009−143108)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】