説明

伸縮性ポリオレフィン繊維を含有する伸縮性製品

伸縮性製品であって、基質材料を含有して成る基質およびプロピレンが基になった弾性重合体を含有して成る少なくとも1種の伸縮性ヤーンを含有して成っていて、前記伸縮性ヤーンが前記基質と結合しておりかつ前記伸縮性ヤーンが前記基質の表面と機械的に直接結合可能である伸縮性製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、接着剤の使用なしに基質と直接結合可能なプロピレンが基になった弾性重合体繊維の伸縮性ヤーンを含有する伸縮性製品および前記伸縮性繊維を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
様々な使い捨ておよび耐久性のある伸縮性製品、例えば失禁用パッド、使い捨て可能おむつ、トレーニングパンツ、スポーツ用衣服、一般用衣服および家具に張る材料などの製造で優れた引き伸ばし性および伸縮性を示す材料が必要とされている。
【0003】
使い捨て可能製品は典型的に重合体フィルム、繊維、シートおよび吸収性材料の組み合わせばかりでなく加工技術の組み合わせを用いて作られた伸縮性複合材料である。そのような繊維の製造は良く知られた押出し加工/紡績工程、例えばスパンボンディング、メルトフローイング、溶融紡績および連続フィラメント巻き取り技術などで実施されている一方、フィルムおよびシート成形工程は典型的に公知のバルク押出し加工および共押出し加工技術、例えばブローンフィルム、キャストフィルム、プロファイル押出し加工、射出成形、押出し被覆および押出しシート成形などを伴う。
【0004】
様々な伸縮性複合材料が伸縮性製品に関連して用いられることが知られており、そのような製品には、これらに限定するものでないが、吸収性製品、例えば幼児用おむつ、トレーニングパンツ、成人失禁用製品などが含まれる。そのような伸縮性複合材料は一般に吸収性製品、例えばおむつなどの縦方向横縁または側端縁に沿って用いられる。そのような伸縮性複合材料は一般に吸収性製品の適合性および封じ込めを向上させるに特によく適していると考えられている。おむつが落下しないようにし[例えば特許文献1(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に示されているように]かつレッグカフ(leg cuff)部分から漏れが生じないようにする目的で典型的に伸縮性部分がおむつのウエストバンド部分の中に構築されている。しばしば、そのような伸縮性部分は心地よさと信頼性の組み合わせが良好になるように適合および/または固定方式の形態をより良好にするのを助長する。
【0005】
伸縮性複合材料または伸縮性製品の様々な構造が知られている。一般に、伸縮性材料、例えば伸縮性ヤーンなどは2個の相対するウエブの間に含まれている。そのウエブを一緒にすることで伸縮性材料を含有する管または通路を生じさせる。更に、その伸縮性材料をある様式で相対するウエブの片方または両方に付着させることで前記伸縮性材料によって伸縮性複合材料にギャザーを付ける。
【0006】
そのような伸縮性材料で伸縮性複合材料にギャザーを付けようとする時には、一般に、その伸縮性材料を伸縮性複合材料に接着剤で付着させることが行われている。前記伸縮性材料を伸縮性複合材料に接着剤で付着させると結果として前記伸縮性材料が示す伸縮性がある程度壊れてしまう。特に、前記伸縮性材料を前記伸縮性複合材料に接着剤で接着させた地点の伸縮性材料がもはや引き伸ばし不能になる。即ち、それはもはや「伸縮性」ではなくなる。その上、伸縮性材料を付着させる目的でか或は材料の2層を一緒にしようとする時に接着剤を用いることは高価で、時間を消費し、面倒くさい可能性がありかつある場合には当該伸縮性複合材料が示す剛性に好ましくない影響を与えることを確認した。
【0007】
伸縮性製品、例えばこの上に記述した如き製品などを製造する時に典型的に用いられる弾性材料、即ち伸縮性ヤーンはスパンデックスまたはゴムいずれかの糸を用いて作られる。そのような材料は典型的に製造時に相対的に高価な糊付け工程および高価な伸縮性接着剤を必要とする。加うるに、スパンデックスおよびゴムのヤーンは典型的に基質材料と容易には結合しないことから、糊/接着剤を相対的に多量に用いる必要がありかつ糊付け工程中に製品を使用している時に起こるクリープ(伸縮性糸と基質材料の間の分離)の度合を低くする注意を払う必要がある。クリープの度合が低くなるようにヤーンと基質の間の結合を向上させようとする時には典型的に高い融点と迅速な凝固を示す伸縮性のある付着用接着剤が用いられる。本産業では各々がコストおよびクリープ性能に関連したそれ自身の利点を有する異なる数種の糊付け塗布が用いられている。
【0008】
伸縮性材料を当該製品の相対する層にしっかりと固定させる(例えば封じ込めによって)ような様式で製品の層を一緒に結合させる用途ではいくつかの超音波技術が提案されている。そのような1つの技術では、当該伸縮性材料の上に完全に結合するばかりでなく前記伸縮性材料の両面に位置する相対するウエブと完全に結合する材料の固体状棒材が用いられている。2番目の技術では、当該伸縮性材料を細長くすることでそれを細くした後に相対するウエブを一緒に結合させることで前記細くした伸縮性材料よりも若干大きな管を生じさせている。その伸縮性材料を弛緩させると、それが膨潤して前記管の中に「封じ込め」られる。3番目の技術では、幅が相対的に広い伸縮性「帯」を用いており、その場合、その伸縮性「帯」を用いて相対するウエブを一緒に結合させている。
【0009】
この上に示した技術は各々が当該複合材料の加工性、使用可能な伸縮性材料の種類または完成伸縮性複合材料が示す属性のいずれかに欠点を示す。そのような技術のいずれも弾性材料を当該製品の基質材料と結合させることを伴わず、従って、その弾性もしくは伸縮性ヤーンは基質材料の隣接して位置する層に関してまだいくらか動き得ることで、クリープが起こる危険性が大きい。その結果として、伸縮性ヤーンを伸縮性製品、例えばこの上に記述した使い捨て可能パーソナルケア製品などの基質材料と結合させるに適した改良方法を提供する必要性が存在しているままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,381,781号(Sciaraffa)
【発明の概要】
【0011】
要約
簡単に記述すると、本開示の態様は、とりわけ、基質材料と結合しているプロピレンが基になった弾性重合体の伸縮性ヤーンを含有する伸縮性製品、前記伸縮性製品を含有する製造品(例えば、これらに限定するものでないが、繊維を含有する積層品、布、衣類および繊維製品)およびそのような伸縮性製品を製造する方法を包含する。
【0012】
本開示に従う1つの典型的な伸縮性製品は、プロピレンが基になった重合体で出来ている少なくとも1種の伸縮性ヤーンおよび基質を含有し、ここでは、前記伸縮性ヤーンを前記基質と結合させかつ前記伸縮性ヤーンは前記基質の表面に機械的に直接結合可能である。典型的な態様における前記伸縮性ヤーンを含有する伸縮性製品は、これらに限定するものでないが、おむつ、失禁用製品および個人衛生用製品を包含する群から選択した着用可能使い捨て製品である。典型的な態様における伸縮性ヤーンの断面形状は細長くそして/または平らである。
【0013】
プロピレンが基になった弾性重合体繊維を製造するに適した1つの典型的な方法は、とりわけ、基質材料を準備し、プロピレンが基になった弾性重合体を含有して成る伸縮性ヤ
ーンを準備しそして前記伸縮性ヤーンと前記基質材料の結合を前記伸縮性ヤーンの少なくとも一部が前記基質材料と機械的に直接結合するように起こさせることを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な説明
以下の図を参照することで本開示の様々な面をより良好に理解することができるであろう。本図に示す構成要素は必ずしも正確な縮尺ではない。
【図1】図1に、本開示の典型的な伸縮性製品をおむつとして例示し、これは、本開示の伸縮性ヤーンがおむつのレッグカフおよびベリーバンドの中に位置することを示している。
【図2】図2に、本開示の伸縮性製品を生じさせかつ本開示の典型的な伸縮性製品の層の間に伸縮性ヤーンを結合させる方法を実施する時に用いる典型的な装置を例示する。
【0015】
詳細な説明
本開示をより詳細に説明する前に、本開示を記述する個々の態様に限定するものでなく、それ自体は勿論多様であり得ると理解されるべきである。また、本明細書で用いる用語は単に個々の態様を記述する目的であり、限定を意図するものでないことも理解されるべきである、と言うのは、本開示の範囲を添付請求項によってのみ限定するからである。
【0016】
特に明記しない限り、本明細書で用いる技術的および科学的用語は全部本開示が属する技術分野の通常の技術者が一般に理解するであろう意味と同じ意味を有する。また、本明細書に記述する方法および材料と同様または相当する方法および材料のいずれも本開示の実施または試験で用いることは可能ではあるが、ここに好適な方法および材料を記述する。
【0017】
本明細書に引用する公開および特許は全部あたかも個々の公開または特許の各々を具体的かつ個別に引用することによって組み込むと示すかのように引用することによって本明細書に組み込まれ、かつ本明細書で引用することによって本開示に組み込まれ、それらには、引用する公開に関連した方法および/または材料が記述されている。如何なる公開の引用もそれの開示は本出願日以前であり、先行する開示によって本開示にそのような公開に先行する日付が与えられる権利がないことを認めると解釈されるべきではない。その上、示されている公開日付は、実際の公開日付とは異なる可能性があり、それを個別に立証する必要もあり得る。
【0018】
本開示を読んだ後の当業者に明らかになるであろうように、本明細書に記述および例示する個々の態様は各々が本開示の範囲からも精神からも逸脱することのない他のいくつかの態様のいずれかが有する特徴から容易に区別可能であるか或はそれと組み合わせることができる個別の構成要素および特徴を有する。示す如何なる方法も示す出来事の順でか或は論理的に可能な他のいずれかの順で実施可能である。
【0019】
本開示の態様では、特に明記しない限り、当該技術分野の技術の範囲内である化学、繊維技術、繊維製品などの技術を用いる。そのような技術は文献の中に詳細に説明されている。
【0020】
以下に示す実施例は、本明細書に開示および請求する方法をどのように実施しかつ本明細書に開示および請求する組成物および化合物をどのように用いるかに関する完全な開示および説明を通常の当業者に示す目的で提示するものである。数値(例えば量、温度など)に関して正確さを確保するように努力したが、いくらかの誤差および偏差を考慮すべきである。特に明記しない限り、部は重量部であり、温度を℃で表しそして圧力を気圧で表
す。標準的温度および圧力は25℃および1気圧であると定義する。
【0021】
本開示の態様を詳細に説明する前に、特に明記しない限り、本開示を個々の材料、反応体、反応材料、製造方法などに限定するものでなく、それら自体は多様であり得ると理解されるべきである。また、本明細書で用いる用語は単に個々の態様を説明する目的であり、限定を意図するものでないことも理解されるべきである。また、本開示に示す段階は論理的に可能な様々な順で実施可能である。
【0022】
本明細書および添付請求項で用いる如き単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で明らかに他であると示さない限り、複数の指示対照を包含する。このように、例えば「ある担体」の言及は複数の担体を包含する。本明細書および以下の請求項では数多くの用語を言及するが、反対の意思が明らかでない限り、それらは下記の意味を持つと定義する。
【0023】
定義
本明細書で用いる如き用語「伸縮性製品」は、伸縮性部分を含有する製品および/または伸縮性部分を含有する製品の伸縮性部分を指す。例えば、おむつには、おむつのレッグカフおよび/またはベリーバンドを形成する伸縮性製品(例えば弾性複合材料)が入っているが、しかしながら、ある場合には、そのおむつ自身を伸縮性製品と呼ぶこともあり得る。本明細書で用いる如き伸縮性製品としてそれを本明細書で用いる場合、それは、本明細書に記述する結合した伸縮性ヤーンを含有する一般に弾性のある製造品のいずれかを指す。
【0024】
本明細書で用いる如き用語「繊維」は、布およびヤーンばかりでなく繊維製品の製造で使用可能なフィラメント系材料を指す。1種以上の繊維を用いて布またはヤーンを生じさせることができる。当該技術分野で公知の方法に従ってヤーンに完全な延伸を受けさせるか或は質感を持たせることができる。本明細書で用いる如き用語「伸縮性ヤーン」は、本開示に記述する伸縮性製品の伸縮性部分を製造する時に用いる1種以上の弾性繊維を指す。いくつかの態様では、プロピレンが基になった弾性重合体繊維を用いて伸縮性ヤーンを生じさせる。
【0025】
本明細書で用いる如き用語「基質材料」は、伸縮性ヤーンを結合させる本明細書に記述する如き伸縮性製品の製造で用いる材料を指す。そのような基質材料は材料の層を1層以上含有している可能性があり、それらの層は同じまたは異なる材料で出来ていてもよい。そのような基質材料は典型的に伸縮性製品、例えばおむつまたは他の吸収性使い捨て可能製品の製造で用いられる布もしくは不織布の層である。
【0026】
化学品を言及する時に本明細書で用いる如き用語「実質的に含有しない」は、当該化学品を物体(例えば繊維)から排除することを意図することを示すが、しかしながら、混入、不純物、共用装置を用いた処理などが理由で前記物体の中/上に前記化学品が痕跡量で存在する可能性はある。1つの態様における用語「実質的に含有しない」は、当該物体が含有する当該化学品の量が前記物体中約0.001重量%未満、約0.01重量%未満、約0.05重量%未満、約0.1重量%未満、約0.5重量%未満、約1重量%未満または約2重量%未満であることを指す。特に、接着剤(例えば伸縮性製品の製造で用いられるホットメルトグルーまたは他の接着剤)を言及する時の用語「実質的に含有しない」は、接着剤を物体(例えば伸縮性ヤーン)から排除するか或はそれに接触させないことを意図することを示すが、しかしながら、混入、不純物、共用装置を用いた処理、オーバースプレーなどが理由で前記物体の中/上に前記接着剤が痕跡量で存在する可能性はある。
【0027】
化学品を言及する時に本明細書で用いる如き用語「実質的に少量の」は、当該化学品の
量が匹敵する工程で用いられる前記化学品(例えば接着剤)の典型的な量よりもずっと少ないことを指すことを示す。特に、接着剤を言及する時の用語「実質的に少量の」は、その言及する接着剤の量が匹敵する工程で用いられる接着剤の典型的な量よりもずっと少ないことを示す。1つの態様における用語「実質的に少量の」は、当該物体が含有する当該化学品(例えば接着剤)の量が匹敵する工程で用いられるそれの量の約0.001重量%未満、約0.01重量%未満、約0.05重量%未満、約0.1重量%未満、約0.5重量%未満、約1重量%未満または約2重量%未満であることを指す。
【0028】
本明細書で用いる如き「プロピレンが基になった弾性重合体」は、以下により詳細に記述するように、プロピレンバックボーンを含有する弾性重合体組成物を指す。プロピレンが基になった典型的な重合体は、US2004/0236042およびWO05/049672および米国特許第6,881,800号(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。本開示の弾性繊維および製品の製造で用いるに有用な典型的な市販のプロピレンが基になった弾性重合体には、ExxonMobilによるVistamaxx(商標)1100およびVistamaxx(商標)2100が含まれる。いくつかの態様では、プロピレンが基になった弾性重合体にはまた追加的成分、例えば、これらに限定するものでないが、任意のジエンおよび架橋剤(また共作用剤とも呼ぶ)も入っている可能性があり、それによって、米国特許出願公開番号2009/0298964(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されておりかつ以下により詳細に記述する如き架橋可能なプロピレンが基になった弾性重合体がもたらされる。本明細書で用いる如き用語「プロピレンが基になった弾性重合体」は両方の種類の配合物を指す。プロピレンが基になった弾性重合体から生じさせた合成繊維を筒状コアに巻き付けることで供給パッケージを生じさせることができる。そのような繊維の調製は溶融紡績または乾式紡績工程で実施可能であり、それらに持たせる断面は様々な断面のいずれであってもよく、例えば円形の断面または平らな「テープ様」断面などであってもよい。
【0029】
考察
本開示の態様では、基質およびこの基質の材料に結合している少なくとも1種の伸縮性ヤーンを含有する伸縮性製品を提供し、ここで、前記伸縮性ヤーンはプロピレンが基になった弾性重合体を含有しかつ前記伸縮性ヤーンは前記基質の表面に機械的に直接結合可能である。いくつかの態様の基質は、基質材料の層を少なくとも2層含有して成りかつ前記伸縮性ヤーンが基質材料の2層の間に位置していて前記2層の各々と結合している。本開示の伸縮性製品は、製造品、例えば繊維を含有する積層品、布、衣類および繊維製品の弾性部分を生じさせようとする時に有用である。特定の態様における本開示の伸縮性製品は、着用可能使い捨て製品、例えばこれらに限定するものでないが、おむつ、失禁用製品および個人衛生用製品などの弾性部分を生じさせようとする時に用いるに有用である。
【0030】
いくつかの態様における基質は、基質材料の層を1層以上含有しかつ積層品を形成していて、伸縮性ヤーンが積層品の層の間に位置する。そのような基質材料は多様な材料、特に様々な重合体材料を含有する不織もしくは押出し加工シートで出来ていてもよい。特定の態様における基質材料はプロピレンが基になった材料、特にポリプロピレンが基になった不織材料であり、それは当該伸縮性ヤーンのプロピレンが基になった重合体と非常に相性が良い。
【0031】
本開示の伸縮性製品と結合させるに適した伸縮性ヤーンの断面形状は多様であり得る。1つの態様における伸縮性ヤーンの断面は伝統的な円形/球形またはそのような断面の変形であってもよい。他の態様における伸縮性ヤーンの形状は平らまたはリボン様の形状であり、その結果として、その断面形状は細長くそして/または楕円形であることに加えて長方形もしくは卵形断面またはこれらの変形である。いくつかの態様における伸縮性ヤー
ンの断面形状は細長く、高さ寸法より大きい幅寸法を有する。
【0032】
本開示の伸縮性製品で用いる伸縮性ヤーンには、プロピレンが基になった弾性重合体繊維が含まれ、それは場合により架橋可能であってもよい。
【0033】
プロピレンが基になった弾性重合体
本開示の弾性繊維は、この上で定義した如きプロピレンが基になった弾性重合体で出来ている。そのプロピレンが基になった弾性重合体は、メタロセン触媒を用いたプロピレンが基になった弾性重合体であってもよい。本開示の繊維の製造で用いるに適した典型的な市販のプロピレンが基になった弾性重合体には、Exxon Mobil CorporationによるVistamaxx(商標)1100およびVistamaxx(商標)2100が含まれる。追加的プロピレンが基になった弾性重合体およびそのようなポリプロピレンが基になった繊維が含有する組成物を以下に記述する。
【0034】
いくつかの面における弾性ヤーン、フィラメントおよび繊維は、プロピレンが基になった1種以上の弾性重合体と1種以上の抗酸化剤と1種以上の架橋剤(また共作用剤とも呼ぶ)の混合物を含有する組成物から製造可能である。
【0035】
用語「プロピレンが基になった弾性重合体」、「プロピレンが基になった重合体」および「プロピレン重合体」を互換的に用い、それには、プロピレンが基になった1種以上の弾性重合体、1種以上のプロピレン−α−オレフィン共重合体、1種以上のプロピレン−α−オレフィン−ジエン三元重合体および1種以上のプロピレン−ジエン共重合体が含まれる。また、そのような重合体、共重合体および/または三元重合体の中の2種以上の混合物も包含させる。
【0036】
用語「プロピレンが基になった弾性重合体組成物」は、プロピレンが基になった少なくとも1種の弾性重合体に加えて溶融紡績フィラメントもしくはヤーンを生じさせる目的で使用可能ないずれかの添加剤を含有する組成物を指す。
【0037】
プロピレンが基になった重合体の製造はプロピレンと1種以上のジエンを重合させることで実施可能である。他の少なくとも1つの具体的態様として、そのようなプロピレンが基になった重合体の製造はプロピレンをエチレンおよび/または少なくとも1種のC−C20α−オレフィンと一緒にか或はエチレンと少なくとも1種のC−C20α−オレフィンと1種以上のジエンの組み合わせと一緒に重合させることで実施可能である。そのような1種以上のジエンは共役もしくは非共役であってもよい。その1種以上のジエンは好適には非共役である。
【0038】
そのような共重合用単量体は直鎖もしくは分枝していてもよい。直鎖の共重合用単量体には、エチレンまたはC−Cα−オレフィン、例えばエチレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンなどが含まれる。分枝している共重合用単量体には、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンおよび3,5,5−トリメチル−1−ヘキセンが含まれる。1つ以上の態様として、そのような共重合用単量体にスチレンを含めることも可能である。
【0039】
例示ジエンには、これらに限定するものでないが、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ビニルノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)およびこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0040】
プロピレンが基になった重合体の製造で用いるに適した方法および触媒が公開US2004/0236042およびWO05/049672および米国特許第6,881,800号(これらは全部引用することによって本明細書に組み入れられる)に見られる。また、ピリジンアミン錯体、例えばWO03/040201に記述されている錯体なども本明細書で用いるに有用なプロピレンが基になった重合体の製造で用いるに有用である。そのような触媒は流動錯体を伴う可能性があり、それは、米国特許第6,559,262号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に示されているように、立体規則性が好ましく妨害されるように周期的な分子内再配列を起こす。そのような触媒は、プロピレンの挿入に入り交じった影響を与える立体剛性錯体であり得る[RiegerのEP1070087(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)を参照]。また、EP1614699(これは引用することによって本明細書に組み入れら)に記述されている触媒も本開示のいくつかの態様で用いるに適したバックボーンを生じさせる目的で使用可能である。
【0041】
プロピレンが基になった弾性重合体を生じさせるに適した重合方法には、高圧、スラリー、気体、塊状、液相およびこれらの組み合わせが含まれる。使用可能な触媒系には、伝統的なチーグラー・ナッタ触媒およびシングルサイトメタロセン触媒系が含まれる。その使用する触媒は高いイソ特異性を示し得る。重合は連続もしくはバッチ方法で実施可能であり、それに連鎖移動剤、捕捉剤または当業者に良く知られた他のそのような添加剤の使用を含めてもよい。また、当該重合体に樹脂および/またはヤーンの特性を向上または保持させる目的で通常添加される添加剤、例えば流動向上剤、核形成剤および抗酸化剤などを含有させることも可能である。
【0042】
1つの適切な触媒は、嵩高い配位子を有する遷移金属触媒である。そのような嵩高い配位子は、ある基(これは1個以上の任意のヘテロ原子と一緒に環を形成していてもよい)を形成する複数の結合した原子、例えば炭素原子などを含有する。そのような嵩高い配位子は、メタロセン型のシクロペンタジエニル誘導体であってもよく、その誘導体は単核もしくは多核であってもよい。1個以上の嵩高い配位子が遷移金属原子と結合していてもよい。そのような嵩高い配位子は、広く行き渡った科学理論に従い、重合過程中、均一重合効果をもたらす位置に存在したままであると仮定されている。他の配位子が前記遷移金属に結合または配位していてもよく、場合により共触媒または活性化剤、例えばヒドロカルビルまたはハロゲン脱離基などによって脱離可能であってもよい。そのような配位子のいずれかが脱離を起こすとオレフィン単量体が重合体鎖の中に挿入することを可能にする配位部位が生じると仮定されている。そのような遷移金属原子は、元素周期律表のIV、VまたはVI族の遷移金属である。他の適切な遷移金属原子はIVB族の原子である。
【0043】
適切な触媒には、シングルサイト触媒(SSC)が含まれる。それらは一般に周期律表の3から10族の遷移金属および重合中に前記遷移金属と結合したままである補助配位子を少なくとも1個含有する。そのような遷移金属はカチオン状態で使用可能であり、それに共触媒または活性化剤による安定化を受けさせてもよい。例には、周期律表の4族、例えばチタン、ハフニウムまたはジルコニウムなどのメタロセンが含まれ、本明細書の以下により詳細に記述するように、重合中にそれらをd一価カチオン状態で用いかつそれらは補助配位子を1または2個有する。配位重合で用いるに有用なそのような触媒が示すいくつかの特徴には、配位子が引き抜かれ得ることおよび配位子の中にエチレン(オレフィン)基が挿入し得ることが含まれる。
【0044】
そのようなメタロセンを共触媒と一緒に用いてもよく、そのような共触媒は、アルモキサン、例えば蒸気圧浸透圧方法で測定した時の平均オリゴマー度が4から30のメチルアルモキサンなどであってもよい。アルモキサンが直鎖アルカンに溶解するようにそれに修
飾を受けさせてもよいか、或はそれをスラリーとして用いることも可能であるが、その場合には一般にトルエン溶液で用いる。そのような溶液には未反応のトリアルキルアルミニウムが入っている可能性があり、アルモキサンの濃度を一般に1リットル当たりのAlのモルとして示し、その数値にはいくらか存在するトリアルキルアルミニウムも含まれているが、それはオリゴマーの生成でそれほど反応することはない。アルモキサンを共触媒として用いる場合、それを当該遷移金属を基準にして一般にモル比が約50以上のモル過剰量で用い、それには約100以上、約1000以下および約500以下が含まれる。
【0045】
そのようなSSCは、製造すべき重合体の種類およびその重合体が工程条件下1グラムのSSC(例えばメタロセン)当たり少なくとも約40,000グラムの重合体、例えば少なくとも約60,000(1グラムのSSC当たり約100,000グラム以上の重合体を包含)の活性でもたらされるようなそれに関連した加工ウインドに適する幅広い範囲の入手可能SSCの中から選択可能である。触媒の選択を最適に行うと様々な重合体の製造をいろいろな操作ウインドで実施することが可能になることで、当該SSCおよびいずれかの補助触媒成分の使用量を少なくすることが可能になるばかりでなくまた場合により捕捉剤の使用量も少なくすることが可能になる。相当して触媒キラーの使用量を少なくすることも可能であり、その後、非極性溶媒を再循環させて重合反応槽1基または2基以上で再使用する前に極性汚染物を除去するための処理をそれに受けさせることを可能にする様々な費用効果的方法を導入することが可能になる。
【0046】
そのようなメタロセンをまた非配位または弱配位アニオンである共触媒と一緒に用いることも可能である(本明細書で用いる如き用語「非配位アニオン」は弱配位アニオンを包含する)。そのような配位は、重合の進み具合で明らかになるように、如何なる場合にも不飽和単量体成分の挿入が可能なほど弱くあるべきである。そのような非配位アニオンを当該技術分野に記述されている様式のいずれかで供給して当該メタロセンと反応させてもよい。
【0047】
そのような非配位アニオンの前駆体を低い結合価状態で供給するメタロセンと一緒に用いることも可能である。そのような前駆体は酸化還元反応を起こし得る。その前駆体はイオン対であってもよく、それの前駆体カチオンがある様式で中和および/または除去される。そのような前駆体カチオンはアンモニウム塩であってもよい。その前駆体カチオンはトリフェニルカルボニウム誘導体であってもよい。
【0048】
前記非配位アニオンは炭素ではない10−14族の元素が基になったテトラアリール置換ハロゲン化アニオン、特にアリール基またはアリール基上のアルキル置換基が有する水素原子がフッ素基に置き換わっているアニオンであってもよい。
【0049】
10−14族の元素を有する有効な共触媒錯体は、10−14族の元素を有する4配位アニオン錯体を含有するイオン塩から誘導可能であり、ここでは、A
[(M)Q...Q
として表すことができ、ここで、Mは、10−14族の1種以上の半金属または金属、例えばホウ素またはアルミニウムなどであり、そして各Qは、当該技術分野で理解されるように、非配位アニオンとして適切な[(M’)Q...Qの状態にする電子もしくは立体効果をもたらすに有効な配位子であるか、或は[(M’)Q...Qが全体として有効な非配位もしくは弱配位アニオンであるに充分な数のQが存在する。典型的なQ置換基には、特に、フッ素置換アリール基、例えば完全フッ素置換アリール基などが含まれ、かつフッ素置換基に加えてフッ素置換ヒドロカルビル基などの如き置換基を有する置換Q基が含まれる。典型的なフッ素置換アリール基には、フェニル、ビフェニル、ナフチルおよびこれらの誘導体が含まれる。
【0050】
そのような非配位アニオンを当該遷移金属成分を基準にしてほぼ等モル量、例えば少なくとも約0.25(約0.5および約0.8、および約4以下または約2以下または約1.5以下を包含)のモル量で用いてもよい。
【0051】
代表的なメタロセン化合物は式:
MDE
[式中、Lは、Mとπ結合している置換シクロペンタジエニルもしくはヘテロシクロペンタジエニル補助配位子であり、Lは、Lに関して定義した種類の補助配位子の一員であるか或はJ、即ちMとσ結合しているヘテロ原子補助配位子であり、前記LとL配位子は、14族の元素を有する連結基を通して一緒に共有結合的に橋渡しされていてもよく、Lは、Mと配位結合している任意の中性非酸化配位子(iは0から3に相当する)であり、Mは4または5族の遷移金属であり、そしてDおよびEは、独立して、各々がMとa結合していて場合により互いにか或はLもしくはLと橋渡しされていてもよい不安定なモノアニオン配位子である]で表され得る。前記モノアニオン配位子は、適切な活性化剤によって追い出され、それによって重合性単量体の挿入が可能になるか、或は巨大単量体が遷移金属成分の空の配位部位に挿入することが可能になることで配位重合が起こり得る。
【0052】
SSCとして使用可能な代表的非メタロセン系遷移金属化合物には、また、テトラベンジルジルコニウム、テトラビス(トリメチルシリルメチル)ジルコニウム、オキソトリス(トリメチルシリルメチル)バナジウム、テトラベンジルハフニウム、テトラベンジルチタン、ビス(ヘキサメチルジシラジド)ジメチルチタン、トリス(トリメチルシリルメチル)ニオブジクロライドおよびトリス(トリメチルシリルメチル)タンタルジクロライドも含まれる。
【0053】
本開示に従ってオレフィン重合用触媒として用いるに適した追加的有機金属遷移金属化合物は、オレフィン系不飽和単量体、例えばエチレンなどによって追い出されるに充分なほど不安定な非配位もしくは弱配位アニオンによる配位子引き抜きによって触媒活性カチオンに変化しかつそのような活性電子状態で安定であり得る3−10族の金属の化合物のいずれかである。
【0054】
他の有用な触媒には、IV族の遷移金属、例えばジルコニウムまたはハフニウムなどのビスシクロペンタジエニル誘導体であるメタロセンが含まれる。それらは、単一の炭素およびケイ素原子で連結しているフルオレニル配位子とシクロペンタジエニル配位子を含有する誘導体であり得る。そのCp環は、PCT公開出願WO00/24792およびWO00/24793(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されているそれらの如きメタロセンがアルカンに溶解するのを補助するように、置換されていなくてもよくそして/またはブリッジはアルキル置換基、適切にはアルキルシリル置換基を含有する。他の可能なメタロセンには、PCT公開出願WO01/58912(これは引用することによって本明細書に組み入れら)に示されているメタロセンが含まれる。
【0055】
他の適切なメタロセンは、ビスフルオレニル誘導体または橋渡しされていないインデニル誘導体であり得、それらは縮合環上の1つ以上の位置が分子量を高くする効果を有することで間接的に重合をより高い温度で起こさせることを可能にする部分で置換されていてもよい。
【0056】
触媒系全体に追加的に1種以上の有機金属化合物を捕捉剤として含有させてもよい。そのような化合物に反応の環境から極性不純物を除去しかつ触媒の活性を向上させるに有効な化合物を包含させることを意味する。不純物はいずれかの重合反応成分、特に溶媒、単
量体および触媒供給材料と一緒に不注意に入り込んで触媒の活性および安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。その結果として、特にイオン化するアニオンである前駆体を用いて触媒系を活性化させる時に触媒の活性が低下するか或はなくなることさえ起こり得る。そのような不純物、即ち触媒毒には、水、酸素、極性有機化合物、金属不純物などが含まれる。そのような毒が反応槽の中に入り込む前にそれらを例えば様々な成分を合成もしくは調製した後または合成もしくは調製している間に化学的処理または注意深い分離技術などで除去する段階を設けることができるが、それでも、通常は、重合工程自身で用いられる有機金属化合物の量はいくらか少量である。
【0057】
典型的な有機金属化合物には、米国特許第5,153,157号および5,241,025号およびPCT公開WO91/09882、WO94/03506、WO93/14132およびWO95/07941(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されている13族の有機金属化合物が含まれ得る。適切な化合物には、トリエチルアルミニウム、トリエチルボラン、トリ−イソブチルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、メチルアルモキサンおよびイソブチルアルモキサンが含まれる。アルモキサンをまた他の活性化手段と一緒に捕捉量で用いることも可能であり、例えばメチルアルモキサンおよびトリ−イソブチルアルミノキサンをホウ素が基になった活性化剤と一緒に用いることも可能である。重合反応中に触媒化合物と一緒に用いるべきそのような化合物の量を、活性を向上させるに有効な量(およびそのような触媒化合物を二重の役割で用いる場合にはそれらの活性化に必要な量)ではあるが最小限にする、と言うのは、余分な量は触媒毒として作用する可能性があるからである。
【0058】
当該プロピレンが基になった重合体の平均プロピレン含有量を重合体の重量を基準にした重量パーセントベースで約60重量%から約99.7重量%にしてもよく、それには約60重量%から約99.5重量%、約60重量%から約97重量%および約60重量%から約95重量%が含まれる。1つの面として、その残りに他の1種以上のα−オレフィンまたは1種以上のジエンを含めてもよい。他の態様では、当該重合体の重量を基準にした含有量を約80重量%から約95重量%のプロピレン含有量、約83重量%から約95重量%のプロピレン含有量、約84重量%から約95重量%のプロピレン含有量、および約84重量%から約94重量%のプロピレン含有量にしてもよい。そのプロピレンが基になった重合体の残りに場合によりジエンおよび/または1種以上のα−オレフィンを含めてもよい。そのようなα−オレフィンには、エチレン、ブテン、ヘキセンまたはオクテンが含まれ得る。2種類のα−オレフィンを存在させる場合、それらにはブテン、ヘキセンまたはオクテンの中の1つとエチレンの如き任意組み合わせが含まれ得る。そのプロピレンが基になった重合体に非共役ジエンを重合体の重量を基準にして約0.2重量%から約24重量%含有させるが、それには約0.5重量%から約12重量%、約0.6重量%から約8重量%および約0.7重量%から約5重量%が含まれる。他の態様では、重合体の重量を基準にしたジエン含有量を約0.2重量%から約10重量%にしてもよく、それには約0.2から約5重量%、約0.2重量%から約4重量%、約0.2重量%から約3.5重量%、約0.2重量%から約3.0重量%および約0.2重量%から約2.5重量%が含まれる。本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様では、そのようなプロピレンが基になった重合体にENBを約0.5から約4重量%の量で含有させるが、それには約0.5から約2.5重量%および約0.5から約2.0重量%が含まれる。
【0059】
他の態様では、プロピレンが基になった重合体にプロピレンおよびジエンをこの上に記述した範囲の中の1つ以上の範囲で含有させて、その残りに1種以上のCおよび/またはC−C20α−オレフィンを含める。一般に、それによって結局は1種以上のCおよび/またはC−C20α−オレフィンを重合体の重量を基準にして約5から約40重量%含有するプロピレンが基になった重合体がもたらされるであろう。Cおよび/またはC−C20α−オレフィンを存在させる場合、当該重合体中の前記オレフィンを一緒
にした量を約5重量%以上にしてもよいが、それが本明細書に記述する範囲内に入るようにする。1種以上のα−オレフィンに適した他の範囲には約5重量%から約35重量%が含まれ、それには約5重量%から約30重量%、約5重量%から約25重量%、約5重量%から約20重量%、約5から約17重量%および約5重量%から約16重量%が含まれる。
【0060】
そのようなプロピレンが基になった重合体が示す重量平均分子量(Mw)は約5,000,000以下であり得、数平均分子量(Mn)は約3,000,000以下であり得、z平均分子量(Mz)は約10,000,000以下であり得、かつイソタクティックポリプロピレンをベースラインとして用いて重合体の重量平均分子量(Mw)で測定したg’指数は約0.95以上であり得るが、それらは全部本明細書に記述する如きサイズエクスクルージョンクロマトグラフィー、例えば3D SEC(またGPC−3Dとも呼ぶ)などで測定可能である。
【0061】
本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示すMwは約5,000から約5,000,000g/モルであり得、それには約10,000から約1,000,000のMw、約20,000から約500,000のMwおよび約50,000から約400,000のMwが含まれ、ここに示したMwは本明細書に記述するようにして測定したMwである。
【0062】
本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示すMnは約2,500から約2,500,000g/モルであり得、それには約5,000から約500,000のMn、約10,000から約250,000のMnおよび約25,000から約200,000のMnが含まれ、ここに示したMnは本明細書に記述するようにして測定したMnである。
【0063】
本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示すMzは約10,000から約7,000,000g/モルであり得、それには約50,000から約1,000,000のMz、約80,000から約700,000のMzおよび約100,000から約500,000のMzが含まれ、ここに示したMzは本明細書に記述するようにして測定したMzである。
【0064】
そのようなプロピレンが基になった重合体が示す分子量分布指数(MWD=(Mw/Mn))[時には「多分散指数」(PDI)とも呼ぶ]は約1.5から40であり得る。MWDの上限は約40または約20または約10または約5または約4.5であり得かつ下限は約1.5または約1.8または約2.0であり得る。前記プロピレンが基になった重合体が示すMWDは約1.8から約5であり得、それには約1.8から約3が含まれる。分子量(MnおよびMw)および分子量分布(MWD)を測定する技術は当該技術分野で良く知られていて、米国特許第4,540,753号(これは米国における実施の目的で引用することによって本明細書に組み入れられる)およびそれに引用されている文献、Macromolecules、1988、21巻、3360頁(Verstrate他)に見ることができ、かつ米国特許第6,525,157号のコラム5の1−44行に開示されている手順に従う(それらは全部引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)。
【0065】
そのようなプロピレンが基になった重合体が示すg’指数値は約0.95以上であり得、それには約0.98以上または約0.99以上が含まれ、ここに示すg’は、イソタクティックポリプロピレンが示す固有粘度をベースラインとして用いて当該重合体が示すMwで測定した値である。本明細書で用いる場合のg’指数は下記:
g’=η/η
[ここで、ηは、プロピレンが基になった重合体が示す固有粘度であり、そしてηは、前記プロピレンが基になった重合体と同じ粘度平均分子量(Mv)を有する線状重合体が示す固有粘度である]
であるとして定義する。η=KMα、Kおよびαは、線状重合体が示した測定値であり、これをg’指数測定で用いた装置と同じ装置を用いて得るべきである。
【0066】
前記プロピレンが基になった重合体をASTM D−1505試験方法に従ってほぼ室温で測定した時にそれが示す密度は約0.85g/cmから約0.92g/cmであり得、それには約0.87g/cmから0.90g/cmおよび約0.88g/cmから約0.89g/cmが含まれる。
【0067】
前記プロピレンが基になった重合体をASTM D−1238(A)試験方法に修飾(以下に記述)を受けさせた如き方法に従って約2.16kgの荷重(230℃)を用いて測定した時にそれが示すメルトフロー率MFRは0.2g/10分に等しいか或はそれ以上であり得る。そのMFR(2.16kg(230℃))は約0.5g/10分から約200g/10分であってもよく、それには約1g/10分から約100g/10分が含まれる。前記プロピレンが基になった重合体が示すMFRは約0.5g/10分から約200g/10分であり得、それには約2g/10分から約30g/10分、約5g/10分から約30g/10分、約10g/10分から約30g/10分、約10g/10分から約25g/10分および約2g/10分から約10g/10分が含まれる。
【0068】
前記プロピレンが基になった重合体をASTM D1646に従って125℃で測定した時にそれが示すムーニー粘度ML(1+4)は約100未満、例えば約75未満であり得、それには約60未満および約30未満が含まれる。
【0069】
前記プロピレンが基になった重合体を以下に記述するDSC手順に従って測定した時にそれが示す融解熱(Hf)は1グラム当たり約0.5ジュール(J/g)に等しいか或はそれ以上、約80J/gであり得、それには約75J/g、約70J/g、約60J/g、約50J/gおよび約35J/gが含まれる。前記プロピレンが基になった重合体が示す融解熱は約1J/gに等しいか或はそれ以上であり、それには約5J/gに等しいか或はそれ以上が含まれる。別の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示す融解熱(Hf)は約0.5J/gから約75J/gであり得、それには約1J/gから約75J/gおよび約0.5J/gから約35J/gが含まれる。
【0070】
適切なプロピレンが基になった重合体および組成物は、それらが示す融点(Tm)および融解熱の両方で特徴づけ可能であり、そのような特性は、重合体鎖による結晶子の生成を妨害する共重合用単量体または立体不規則性の存在によって影響を受け得る。1つ以上の態様における融解熱の下限は約1.0J/gまたは1.5J/gまたは約3.0J/gまたは約4.0J/gまたは約6.0J/gまたは約7.0J/gであり得かつ上限は約30J/gまたは約35J/gまたは約40J/gまたは約50J/gまたは約60J/gまたは約70J/gまたは約75J/gまたは約80J/gであり得る。
【0071】
前記プロピレンが基になった重合体が示す結晶化度をまた結晶化度のパーセント(即ち結晶化度%)で表すことも可能である。本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示す結晶化度%は約0.5%から40%であり、それには約1%から30%および約5%から25%が含まれ、ここに示した結晶化度%は以下に記述するDSC手順に従って測定した結晶化度%である。別の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示す結晶化度は約40%未満であり得、それには約0.25%から約25%、約0.5%から約22%、約0.5%から約20%が含まれる。この上に開示したように、最高次数のポリプロピレンが示す熱エネルギーは約189J/gで
あると推定されている(即ち100%の結晶化度は209J/gに相当する)。
【0072】
前記プロピレンが基になった重合体は、そのようなレベルの結晶化度を示すことに加えて、単一の幅広い融解転移も示し得る。また、前記プロピレンが基になった重合体は主ピークに隣接した二次溶融ピークも示す可能性があるが、本明細書における目的で、そのような二次溶融ピークは単一の融点として一緒に考慮し、それらのピークの中の最も高いピーク(本明細書に記述する如きベースラインに比べて)を当該プロピレンが基になった重合体が示す融点であると見なす。
【0073】
前記プロピレンが基になった重合体が示す融点(DSCで測定)は約100℃に等しいか或はそれ以下であり得、それには約90℃未満、約80℃未満および約75℃に等しいか或はそれ以下が含まれ、それには約25℃から約80℃、約25℃から約75℃および約30℃から約65℃の範囲が含まれる。
【0074】
当該プロピレンが基になった重合体が示す融解熱および溶融温度を測定する目的で示差走査熱量測定(DSC)手順を用いることができる。この方法は下記の通りである:重合体を約0.5グラム計り取った後、「DSC鋳型」およびマイラー(Mylar)を裏紙として用いて約140℃−150℃でプレスして厚みを約15−20ミル(約381−508ミクロン)にする。そのプレスしたパッドを空気中に吊るす(マイラーを取り除かないで)ことで周囲温度になるまで冷却する。そのプレスしたパッドにアニーリングを室温(約23−25℃)で約8日間受けさせる。その期間が終了した時点で前記プレスしたパッドから約15−20mgのディスクをパンチダイスを用いて取り出した後、10ミクロリットルのアルミニウム製サンプル用鍋に入れる。そのサンプルを示差走査熱量計(Perkin Elmer Pyris 1 Thermal Analysis System)に入れて、約−100℃に冷却する。そのサンプルを約10℃/分で加熱することで約165℃の最終温度に到達させる。そのサンプルが示す溶融ピークの下の面積として記録した熱出力が融解熱の尺度であり、それを重合体1グラム当たりのジュールとして表すことができかつそれをPerkin Elmer Systemを用いて自動的に計算する。融点をベースライン測定値を基準にして当該サンプルが示す溶融範囲内で最大の熱吸収が起こる温度として記録する、と言うのは、重合体が示す熱容量は温度の関数として高くなるからである。
【0075】
前記プロピレンが基になった重合体を13C NMRで測定した時にそれが示す3プロピレン単位のトリアド立体規則性は約75%以上、約80%以上、約82%以上、約85%以上または約90%以上であり得る。1つの態様におけるトリアド立体規則性は約50から約99%、約60から約99%、約75から約99%、約80から約99%であり得、他の態様におけるそれは約60から約97%であり得る。トリアド立体規則性は当該技術分野で良く知られていて、米国特許出願公開番号2004/0236042(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている方法を用いて測定可能である。
【0076】
プロピレンが基になった弾性重合体には、オレフィン含有量、ジエン含有量または両方が異なる2種類のプロピレンが基になった重合体の混合物が含まれ得る。
【0077】
本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様におけるプロピレンが基になった重合体には、立体規則的プロピレン生長反応中にランダムに分布した不規則性を有する重合体をもたらすランダム重合方法によって生じさせたプロピレンが基になった弾性重合体が含まれ得る。それは、同じ重合体鎖の構成部分を個別かつ逐次的に重合させるブロック共重合体とは対照的である。
【0078】
プロピレンが基になった重合体には、また、WO 02/36651(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に示されている手順に従って生じさせた共重合体も含まれ得る。同様に、プロピレンが基になった重合体には、WO 03/040201、WO 03/040202、WO 03/040095、WO 03/040201、WO 03/040233および/またはWO 03/040442(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れら)に記述されている重合体に一致した重合体も含まれ得る。加うるに、プロピレンが基になった重合体には、EP 1 233 191および米国特許第6,525,157号に記述されている重合体に一致した重合体ばかりでなく米国特許第6,770,713号および米国特許出願公開2005/215964(これらは全部引用することによって本明細書に組み入れら)に記述されている適切なプロピレンホモおよび共重合体に一致した重合体も含まれ得る。プロピレンが基になった重合体には、また、EP 1 614 699またはEP 1 017 729(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れら)に記述されている重合体に一致した1種以上の重合体も含まれ得る。
【0079】
グラフト化(官能化)バックボーン
1つ以上の態様では、プロピレンが基になった重合体にグラフト化(即ち「官能化」)を1種以上のグラフト化用単量体を用いて受けさせてもよい。本明細書で用いる如き用語「グラフト化」は、プロピレンが基になった重合体の重合体鎖にグラフト化用単量体を共有結合させることを示す。
【0080】
そのようなグラフト化用単量体は、少なくとも1種のエチレン系不飽和カルボン酸もしくは酸誘導体、例えばとりわけ酸無水物、エステル、塩、アミド、イミドおよびアクリレートなどであるか或はそれらを包含し得る。例示単量体には、これらに限定するものでないが、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水4−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水ビシクロ(2,2,2)オクテン−2,3−ジカルボン酸、無水1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸、2−オキサ−1,3−ジケトスピロ(4,4)ノネン、無水ビシクロ(2,2,1)ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、マレオピマル酸(Maleopimaric acid)、無水テトラヒドロフタル酸、無水ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、無水ナド酸、無水メチルナド酸、無水ヒム酸(himic anhydride)、無水メチルヒム酸および無水5−メチルビシクロ(2,2,1)ヘプテン−2,3−ジカルボン酸が含まれる。他の適切なグラフト化用単量体には、アクリル酸メチルおよびアクリル酸高級アルキル、メタアクリル酸メチルおよびメタアクリル酸高級アルキル、アクリル酸、メタアクリル酸、メタアクリル酸ヒドロキシメチル、メタアクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタアクリル酸高級ヒドロキシアルキルおよびメタアクリル酸グリシジルが含まれる。無水マレイン酸が好適なグラフト化用単量体である。
【0081】
1つ以上の態様におけるプロピレンが基になったグラフト化重合体は、エチレン系不飽和カルボン酸もしくは酸誘導体を約0.5から約10重量%含有して成り、それには約0.5から約6重量%、約0.5から約3重量%、他の態様では約1から約6重量%および約1から約3重量%が含まれる。グラフト用単量体が無水マレイン酸の場合、グラフト化重合体中の無水マレイン酸濃度を約1から約6重量%にしてもよく、それには最低限としての約0.5重量%または約1.5重量%が含まれる。
【0082】
スチレンおよびこれの誘導体、例えばパラメチルスチレンまたは他の高級アルキル置換スチレン、例えばt−ブチルスチレンなどを電荷移動剤としてグラフト化用単量体の存在下で用いることで鎖切断を抑制してもよい。それによってベータ切断反応が更に最小限になりかつ分子量がより高いグラフト化重合体が生じ得る(MFR=1.5)。
【0083】
プロピレンが基になったグラフト化重合体の製造
プロピレンが基になったグラフト化重合体の製造は通常の技術を用いて実施可能である。例えば、グラフト化重合体を溶液中、流動床反応槽内または溶融グラフト化で生じさせることができる。グラフト化重合体の調製は溶融混合をせん断を与える反応槽、例えば押出し加工機反応槽内で起こさせることで実施可能である。1軸または2軸押出し加工機反応槽、例えば互いに噛み合う同方向回転押出し加工機または噛み合わない異方向回転押出し加工機などばかりでなくまたコニーダー、例えばBussが販売しているそれらなどがその目的で用いるに有用である。
【0084】
グラフト化重合体の調製は、プロピレンが基になった未グラフト化重合体とフリーラジカルを発生する触媒、例えば過酸化物開始剤などをグラフト化用単量体の存在下で溶融混合することで実施可能である。グラフト化反応に適切な1つの順序は、プロピレンが基になった重合体を溶融させ、グラフト化用単量体を添加して分散させ、過酸化物を導入しそして未反応の単量体および過酸化物の分解の結果として生じた副生成物を排出させることを包含する。他の順序は、単量体を供給しそして過酸化物を溶媒に前以て溶解させておくことを包含し得る。
【0085】
例示過酸化物開始剤には、これらに限定するものでないが、とりわけジアシルパーオキサイド、例えばベンゾイルパーオキサイドなど、パーオキシエステル、例えば過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル、O,O−t−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネートなど、パーオキシケタール、例えば吉草酸n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)など、およびジアルキルパーオキサイド、例えば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル−(2))ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド(DTBP)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、3,3,5,7,7−ペンタメチル1,2,4−トリオキセパンおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0086】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂
本明細書で用いる如き用語「ポリオレフィン系熱可塑性樹脂」は、「ゴム」ではなくかつ70℃以上の融点を示す重合体もしくは重合体混合物である材料のいずれかを指し、当業者はそれを実際に熱可塑性プラスチック、例えば熱にさらされると柔らかくなりそして室温に冷却すると元の状態に戻る重合体であると見なす。そのようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂は1種以上のポリオレフィンを含有している可能性があり、それにはポリオレフィンホモ重合体およびポリオレフィン共重合体が含まれる。そうでないと述べる場合を除き、用語「共重合体」は、2種以上の単量体から生じさせた重合体(三元重合体、四元重合体などを包含)を意味し、そして用語「重合体」は、1種以上の様々な単量体に由来する繰り返し単位を有する炭素含有化合物のいずれかを指す。
【0087】
例示ポリオレフィンの製造はモノオレフィン単量体を用いて実施可能であり、それには、これらに限定するものでないが、炭素原子数が2から7の単量体、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、それらの混合物など、およびそれらと(メタ)アクリレートおよび/または酢酸ビニルの共重合体が含まれる。そのようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分は加硫も架橋も受けていない。
【0088】
そのようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂はポリプロピレンを含有していてもよい。本明細書で用いる如き用語「ポリプロピレン」は、幅広い意味で、当業者が「ポリプロピレン」であると見なす重合体のいずれかを意味し、それにはプロピレンのホモ、耐衝撃性およびランダム共重合体が含まれる。本明細書に記述する組成物で用いるポリプロピレンは、約110℃以上の融点を示し、プロピレン単位を少なくとも90重量%含有しかつ前記単位のイソタクティック配列を含有する。そのポリプロピレンはまたアタクティック配列またはシンジオタクテック配列または両方を含有している可能性もある。そのポリプロピレンはまた本質的にシンジオタクテックの配列を含有している可能性もあり、その結果として、そのポリプロピレンの融点は約110℃以上である。そのポリプロピレンは排他的にプロピレン単量体に由来する(即ちプロピレン単位のみを有する)か或は主にプロピレン(プロピレンを80%以上)に由来し得、その残りはオレフィン、例えばエチレンおよび/またはC−C10α−オレフィンなどに由来し得る。特定のポリプロピレンは高いMFR(例えば約10または約15または約20g/10分の低い値から約25または約30g/10分の高い値を有する)を示す。他はより低いMFRを示し、例えば「分別」ポリプロピレンが示すMFRは約1.0未満である。高いMFRを示すポリプロピレンは加工またはコンパウンド化が容易であることで有用であり得る。
【0089】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂はイソタクティックポリプロピレンであってもよいか或はそれを包含し得る。そのようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂は、DSCで測定した時に約105℃以上の溶融温度を示す1種以上の結晶性プロピレンホモ重合体もしくはプロピレン共重合体を含有している可能性がある。プロピレンの典型的な共重合体には、これらに限定するものでないが、プロピレンの三元重合体、プロピレンの耐衝撃性共重合体、ランダムポリプロピレンおよびこれらの混合物が含まれる。共重合用単量体の炭素原子数は2または炭素原子数は4から12であってもよく、それは例えばエチレンなどであってもよい。そのようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂およびそれの製造方法が米国特許第6,342,565号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。本明細書で用いる如き用語「ランダムポリプロピレン」は、幅広い意味で、共重合用α−オレフィン単量体の量が約9重量%以下、例えば約2重量%から8重量%のプロピレン共重合体を意味する。共重合用α−オレフィンの炭素原子数は2または炭素原子数は4から12であってもよい。
【0090】
ランダムポリプロピレンをASTM D790Aに従って測定した時にそれが示す1%割線係数は約100kPsiから約200kPsiであり得る。ASTM D790Aに従って測定した時の1%割線係数は約140kPsiから170kPsiであってもよく、それには約140kPsiから160kPsiが含まれるか、或はそれはASTM D790Aに従って測定した時に約100、約110または約125kPsiの低い値から約145、約160または約175kPsiの高い値を示す。
【0091】
ランダムポリプロピレンをASTM D79に従って測定した時にそれが示す密度は約0.85から約0.95g/cmであり得、それにはASTM D792に従って測定した時の約0.89g/cmから0.92g/cmの密度が含まれるか、或はそれは約0.85、0.87または0.89g/cmの低い値から約0.90、0.91、0.92g/cmの高い値を有する。
【0092】
追加的エラストマー成分
ポリプロピレンが基になった弾性重合体組成物に場合により1種以上の追加的エラストマー成分を含有させることも可能である。そのような追加的エラストマー成分は1種以上のエチレン−プロピレン共重合体(EP)であってもよいか或はそれを包含し得る。そのようなエチレン−プロピレン重合体(EP)は非結晶性、例えばアタクティックまたは非晶質などであるが、そのEPは結晶性であってもよい(「半結晶性」を包含)。EPが示
す結晶化度はエチレンに由来する可能性があり、それは公開された数多くの方法、手順および技術を用いて測定可能である。EPが示す結晶化度は、EPを当該組成物から除去した後に残存するプロピレンが基になった重合体が示す結晶化度を測定することで、プロピレンが基になった重合体が示す結晶化度から区別可能である。そのようにして測定する結晶化度に通常はポリエチレンが示す結晶化度を用いた較正を受けさせ、それを単量体含有量と関連付ける。そのような場合には、結晶化度パーセントをポリエチレンがし目の結晶化度のパーセントとして測定し、このようにしてエチレンに由来する元々の結晶化度を確かめる。
【0093】
1つ以上の態様におけるEPは、1種以上の任意のポリエンを含有していてもよく、それには特にジエンが含まれ、従って、そのようなEPはエチレン−プロピレン−ジエン(通常「EPDM」と呼ぶ)であり得る。その任意のポリエンは、不飽和結合を少なくとも2個有していて不飽和結合の中の少なくとも1個が既に重合体の中に組み込まれている炭化水素構造物のいずれかであると見なす。2番目の結合が重合中にある程度の役割を果たすことで長鎖分枝が生じる可能性があるが、好適には、それは重合後工程中に後で硬化または加硫を受ける適切な不飽和結合を少なくともある程度与えるものである。EPもしくはEPDM共重合体の例には、ExxonMobil Chemicalsから商標名VISTALONの下で商業的に入手可能なV722、V3708P、MDV 91−9、V878が含まれる。いくつかの商業的EPDMをDOWから商標名Nordel IPおよびMGグレードの下で入手することができる。他のゴム成分(例えばEPDM、例えばVISTALON 3666など)には添加剤油が入っており、それは当該ゴム成分を熱可塑性プラスチックと一緒にする前に前以て混合されたものである。使用されている種類の添加剤油は、個々のゴム成分と一緒に通常用いられる添加剤油である。
【0094】
任意のポリエンの例には、これらに限定するものでないが、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン(例えば1,4−ヘキサジエン)、ヘプタジエン(例えば1,6−ヘプタジエン)、オクタジエン(例えば1,7−オクタジエン)、ノナジエン(例えば1,8−ノナジエン)、デカジエン(例えば1,9−デカジエン)、ウンデカジエン(例えば1,10−ウンデカジエン)、ドデカジエン(例えば1,11−ドデカジエン)、トリデカジエン(例えば1,12−トリデカジエン)、テトラデカジエン(例えば1,13−テトラデカジエン)、ペンタデカジエン、ヘキサデカジエン、ヘプタデカジエン、オクタデカジエン、ノナデカジエン、イコサジエン、ヘネイコサジエン、ドコサジエン、トリコサジエン、テトラコサジエン、ペンタコサジエン、ヘキサコサジエン、ヘプタコサジエン、オクタコサジエン、ノナコサジエン、トリアコンタジエン、および分子量(Mw)が1000g/モル未満のポリブタジエンが含まれる。非環式直鎖ジエンの例には、これらに限定するものでないが、1,4−ヘキサジエンおよび1,6−オクタジエンが含まれる。非環式分枝鎖ジエンの例には、これらに限定するものでないが、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエンおよび3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンが含まれる。脂環式単環ジエンの例には、これらに限定するものでないが、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンおよび1,7−シクロドデカジエンが含まれる。脂環式多環縮合および橋状環ジエンの例には、これらに限定するものでないが、テトラヒドロインデン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ(2,2,1)ヘプタ−2,5−ジエン、およびアルケニル−、アルキリデン−、シクロアルケニル−およびシクロアルキリエンノルボルネン[例えば5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンを包含]が含まれる。シクロアルケニル置換アルケンの例には、これらに限定するものでないが、ビニルシクロヘキセン、アリルシクロヘキセン、ビニルシクロオクテン、4−ビニルシクロヘキセン、アリルシクロデセン、ビニルシクロドデセ
ンおよびテトラシクロドデカジエンが含まれる。
【0095】
別の態様における追加的エラストマー成分には、これらに限定するものでないが、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、スチレン/イソプレンゴム(SIR)、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム(SIBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水添スチレンブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−イソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)、水添スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレン−エチレンブロック共重合体(SEBE)、スチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体(SES)、エチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(EEB)、エチレン−エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(水添BR−SBRブロック共重合体)、スチレン−エチレン/ブチレン−エチレンブロック共重合体(SEBE)、エチレン−エチレン/ブチレン−エチレンブロック共重合体(EEBE)、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、イソプレンブタジエンゴム(IBR)、ポリスルフィド、ニトリルゴム、プロピレンオキサイド重合体、星形分枝ブチルゴムおよびハロゲン化星形分枝ブチルゴム、臭化ブチルゴム、塩化ブチルゴム、星形分枝ポリイソブチレンゴム、星形分枝臭化ブチル(ポリイソブチレン/イソプレン共重合体)ゴム、ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)、適切なイソブチレン/メチルスチレン共重合体、例えばイソブチレン/メタ−ブロモメチルスチレン、イソブチレン/ブロモメチルスチレン、イソブチレン/クロロメチルスチレン、ハロゲン化イソブチレンシクロペンタジエンおよびイソブチレン/クロロメチルスチレンおよびこれらの混合物が含まれ得る。追加的エラストマー成分には、水添スチレン−ブタジエンスチレンブロック共重合体(SEBS)および水添スチレンイソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が含まれる。
【0096】
追加的エラストマー成分はまた天然ゴムであってもよいか或はそれを包含し得る。天然ゴムはSubramaniamのRUBBER TECHNOLOGY 179−208(1995)に詳述されている。適切な天然ゴムはマレーシアゴム、例えばSMR CV、SMR 5、SMR 10、SMR 20およびSMR 50およびこれらの混合物などから成る群より選択可能であり、そのような天然ゴムが約100℃で示すムーニー粘度(ML 1+4)は約30から120であり、それには約40から65が含まれる。本明細書に示すムーニー粘度試験はASTM D−1646に従う。
【0097】
追加的エラストマー成分はまた1種以上の合成ゴムであってもよいか或はそれを包含し得る。適切な市販合成ゴムには、NATSYN(商標)(Goodyear Chemical Company)およびBUDENE(商標)1207またはBR 1207(Goodyear Chemical Company)が含まれる。適切なゴムは高シス−ポリブタジエン(シス−BR)である。「シス−ポリブタジエン」または「高シス−ポリブタジエン」は、1,4−シスポリブタジエンの使用を意味し、ここで、シス成分の量は少なくとも約95%である。用いる商業的高シス−ポリブタジエン製品の一例は組成物BUDENE(商標)1207である。
【0098】
そのような追加的エラストマー成分を約50phr以下、約40phr以下または約30phr以下の量で存在させてもよい。1つ以上の態様では、そのような追加的ゴム成分の量に約1、約7または約17または約20phrの低い値から約25、約35または約50phrの高い値を持たせてもよい。
【0099】
添加剤油
当該プロピレンが基になった弾性重合体組成物に場合により1種以上の添加剤油を含有させることも可能である。そのような「添加剤油」を本開示で用いる如き「仕上げ用油」と混同すべきではない。本明細書で用いる如き「添加剤油」は、この上で定義したように成形繊維の表面に加える仕上げ用油とは対照的に、プロピレンが基になった弾性重合体を製造している時に添加されるそのような油を指す。用語「添加剤油」には「加工油」および「エキステンダー油」の両方が含まれる。例えば、「添加剤油」には、炭化水素油および可塑剤、例えば有機エステルおよび合成可塑剤などが含まれ得る。数多くの添加剤油は石油溜分に由来し、それらがパラフィン系、ナフテン系または芳香族油の種類に入るか否かに応じて、それらを個々のASTM表示で示す。他の種類の添加剤油には、鉱油、アルファオレフィン系合成油、例えば液状ポリブチレン、例えば商標Parapol(商標)の下で販売されている製品などが含まれる。また、石油が基になった油以外の添加剤油、例えば石炭タールおよびパインタールに由来する油などばかりでなく合成油、例えばポリオレフィン材料(例えばSpectaSyn(商標)およびElevast(商標)、両方ともExxonMobil Chemical Companyが供給)などを用いることも可能である。
【0100】
個々のゴムと一緒にどの種類の油を用いるべきかばかりでなく油の適切な量(分量)は当該技術分野で良く知られている。そのような添加剤油をゴムと熱可塑性成分の混合物100重量部当たり約5から約300重量部の量で存在させてもよい。また、添加剤油の量をゴム成分100重量部当たり約30から250重量部または約70から200重量部として表すことも可能である。別法として、添加剤油の分量を全ゴム含有量を基準にすることも可能であり、それをゴム総量に対する添加剤油の重量比として定義しそしてその量は特定の場合には加工油とエキステンダー油を一緒にした量であってもよい。その比率を例えば約0から約4.0/1にしてもよい。また、下記の下限と上限のいずれかを有する他の範囲を用いることも可能である:約0.1/1または約0.6/1または約0.8/1または約1.0/1または約1.2/1または約1.5/1または約1.8/1または約2.0/1または約2.5/1の下限および約4.0/1または約3.8/1または約3.5/1または約3.2/1または約3.0/1または約2.8/1の上限(これをこの上に示した下限のいずれかと組み合わせてもよい)。添加剤油をより多い量で用いることも可能ではあるが、当該組成物の物理的強度の低下または油浸出または両方の欠点がしばしば生じる。
【0101】
ポリブテン油が適切である。典型的なポリブテン油が示すMnは約15,000未満であり、それには炭素原子数が3から8、より好適には炭素原子数が4から6のオレフィン由来単位を有するホモ重合体または共重合体が含まれる。そのポリブテンはCラフィネートのホモ重合体または共重合体であってもよい。「ポリブテン」重合体と呼ばれる典型的な低分子量重合体が例えばSYNTHETIC LUBRICANTS AND HIGH−PERFORMANCE FUNCTIONAL FLUIDS 357−392(Leslie R.RudnickおよびRonald L.Shubkin編集、Marcel Dekker 1999)などに記述されている(本明細書では以降「ポリブテン加工油」または「ポリブテン」)。
【0102】
そのようなポリブテン加工油は、少なくともイソブチレン由来単位および場合により1−ブテン由来単位および/または2−ブテン由来単位を有する共重合体であり得る。そのポリブテンは、イソブチレンの場合にはホモ重合体であり得るか、或はイソブチレンと1−ブテンもしくは2−ブテンの共重合体、またはイソブチレンと1−ブテンと2−ブテンの三元重合体であり得、その場合、イソブチレン由来単位は当該共重合体の約40から100重量%であり、1−ブテン由来単位は当該共重合体の約0から40重量%でありそして2−ブテン由来単位は当該共重合体の約0から40重量%である。そのポリブテンは共重合体または三元重合体であってもよく、それに存在するイソブチレン由来単位は当該重合体の約40から99重量%であり、1−ブテン由来単位は当該共重合体の約2から40重量%でありそして2−ブテン由来単位は当該共重合体の約0から30重量%であり。また、そのポリブテンは3種類の単位を有する三元重合体であってもよく、その中に存在するイソブチレン由来単位は当該重合体の約40から96重量%であり、1−ブテン由来単位は当該共重合体の約2から40重量%でありそして2−ブテン由来単位は当該共重合体の約2から20重量%である。別の適切なポリブテンはイソブチレンおよび1−ブテンのホモ重合体もしくは共重合体であり、その中に存在するイソブチレン由来単位は当該ホモ重合体もしくは共重合体の約65から100重量%でありそして1−ブテン由来単位は当該共重合体の約0から35重量%である。適切な加工油の商業的例には、PARAPOL(商標)シリーズの加工油またはポリブテングレードまたはSoltex Synthetic OilsのIndopol(商標)およびBP/InnoveneのLubricantsが含まれる。
【0103】
そのような加工油1種または2種以上を約1から60phr存在させてもよく、それには約2から40phr、約4から35phrおよび更に別の態様では約5から30phrが含まれる。
【0104】
架橋剤/共作用剤
プロピレンが基になった弾性重合体組成物に場合により1種以上の架橋剤(また共作用剤とも呼ぶ)を含有させることも可能である。適切な共作用剤には、液状および金属の多官能アクリル酸塩およびメタアクリル酸塩、官能化ポリブタジエン樹脂、官能化シアヌレートおよびイソシアヌル酸アリルが含まれ得る。より詳細には、適切な共作用剤には、これらに限定するものでないが、多官能ビニルもしくはアリル化合物、例えばシアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジプロパルギル、シアヌル酸ジプロパルギルモノアリル、アゾビスイソブチロニトリルなどおよびこれらの組み合わせが含まれ得る。市販の架橋剤/共作用剤をSartomerから購入することができる。
【0105】
プロピレンが基になった弾性重合体組成物に含有させる共作用剤の量は重合体組成物の総重量を基準にして約0.1重量%以上であってもよい。共作用剤1種または2種以上の量を重合体組成物の総重量を基準にして約0.1重量%から約15重量%にしてもよい。1つ以上の態様では、共作用剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.1重量%、約1.5重量%または約3.0重量%の低い値から約4.0重量%、約7.0重量%または約15重量%の高い値にしてもよい。1つ以上の態様では、共作用剤1種または2種以上の量に重合体組成物の総重量を基準にして約2.0重量%、約3.0重量%または約5.0重量%の低い値から約7.0重量%、約9.5重量%または約12.5重量%の高い値を持たせてもよい。
【0106】
抗酸化剤
プロピレンが基になった弾性重合体組成物に場合により1種以上の抗酸化剤を含有させることも可能である。適切な抗酸化剤には、Ciba Geigy Corp.が製造しているヒンダードフェノール、ホスファイト、ヒンダードアミン、Irgafos 168、Irganox 1010、Irganox 3790、Irganox B225、Irganox 1035、Irgafos 126、Irgastab 410、Chimassorb 944などが含まれ得る。それらを当該エラストマー組成物を成形もしくは加工している時に起こる劣化に対して保護しそして/または鎖分解の度合の制御をより良好にする目的で添加してもよく、このことは、特に、プロピレンが基になった弾性重合体組成物を電子ビームにさらす場合に有用であり得る。
【0107】
プロピレンが基になったエラストマー組成物に含有させる抗酸化剤の量を混合物の総重
量を基準にして少なくとも約0.1重量%にしてもよい。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.1重量%から約5重量%にしてもよい。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量に混合物の総重量を基準にして約0.1重量%、約0.2重量%または約0.3重量%の低い値から約1重量%、約2.5重量%または約5重量%の高い値を持たせてもよい。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.1重量%にする。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.2重量%にする。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.3重量%にする。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.4重量%にする。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.5重量%にする。
【0108】
混合および添加剤
1つ以上の態様では、個々の材料および成分、例えばプロピレンが基になった重合体および場合により1種以上のポリオレフィン系熱可塑性樹脂、追加的エラストマー成分、添加剤油、共作用剤および抗酸化剤を溶融混合で混合することで混合物を生じさせる。せん断および混合を生じさせる能力を有する機械の例には、混練りもしくは混合要素に加えて1個以上の混合用チップまたはフライトが備わっている押出し加工機、1個以上のスクリューが備わっている押出し加工機、同方向もしくは異方向回転型の押出し加工機、バンバリーミキサー、ファレル連続ミキサーおよびBussニーダーが含まれる。この上に示した機械の中の1つを選択することに加えて混練りもしくは混合要素、スクリューのデザインおよびスクリューの速度(<3000RPM)を選択することで、必要な混合、温度および滞留時間の種類および強さを達成することができる。
【0109】
1つ以上の態様では、そのような混合物にプロピレンが基になった重合体を約60、約70または約75重量%の低い値から約80、約90または約95重量%の高い値を有する量で含有させてもよい。1つ以上の態様では、そのような混合物に1種以上のポリオレフィン系熱可塑性成分を約5、約10または約20重量%の低い値から約25、約30または約75重量%の高い値を有する量で含有させてもよい。1つ以上の態様では、そのような混合物に追加的エラストマー成分を約5、約10または約15重量%の低い値から約20、約35または約50重量%の高い値を有する量で含有させてもよい。
【0110】
1つ以上の態様において、前記共作用剤、抗酸化剤および/または他の添加剤を導入する時期は他の重合体成分と同じ時期であってもよいか或は押出し加工機またはBussニーダーを用いる場合にはそれらを後に下流で導入してもよいか或は時間的に少し後であってもよい。その記述した共作用剤および抗酸化剤に加えて、他の添加剤には、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、紫外線安定剤、発泡剤および加工助剤が含まれ得る。そのような添加剤を高純度形態またはマスターバッチとして当該混合物に添加してもよい。
【0111】
硬化生成物
成形品(例えば押出し加工品)は繊維、ヤーンまたはフィルムであり得、それらに架橋もしくは硬化を少なくともある程度受けさせてもよい。架橋によって耐熱性のある製品がもたらされ、それは本製品、例えば繊維またはヤーンなどが高温にさらされると思われる時に有用である。本明細書で用いる如き用語「耐熱」は、重合体組成物または重合体組成物から生じさせた製品が本明細書に記述する高温熱処理および染色試験に合格する能力を指す。
【0112】
本明細書で用いる用語「硬化」、「架橋」、「少なくともある程度硬化」および「少なくともある程度架橋」は、不溶物の量が当該組成物の総重量を基準にして少なくとも2重量%である組成物を指す。本明細書に記述するポリプロピレンが基になったエラストマー
組成物に硬化をキシレンを溶媒として用いたソックスレー抽出によって不溶物の量が少なくとも約3重量%または少なくとも約5重量%または少なくとも約10重量%または少なくとも約20重量%または少なくとも約35重量%または少なくとも約45重量%または少なくとも約65重量%または少なくとも約75重量%または少なくとも約85重量%または約95重量%未満になるような度合まで受けさせてもよい。
【0113】
特別な態様では、本製品の成形または押出し加工を行った後に架橋を電子ビームまたは単に「eビーム」で達成する。適切な電子ビーム装置をE−BEAM Service,Inc.から入手することができる。特別な態様では、電子を約100kGy以下の線量で用いて暴露を複数回実施する。その源は如何なる電子ビーム発生装置であってもよく、それを所望線量を供給し得るパワー出力になるように約150Kevから約12メガ−エレクトロンボルト(MeV)の範囲内で操作する。電子電圧を適切なレベルに調整してもよく、そのような適切なレベルは例えば約100,000、約300,000、約1,000,000、約2,000,000、約3,000,000、約6,000,000であり得る。重合体および重合体製品に照射を受けさせるに適した幅広い範囲の装置を入手することができる。
【0114】
有効な照射を一般的には約10kGy(Kilogray)から約350kGy、好適には約20から約350kGyまたは約30から約250kGyまたは約40から約200kGyの線量で実施する。この態様の特別な面では照射を室温で実施する。
【0115】
別の態様では、電子ビームによる硬化に加えて1種以上の化学作用剤への接触を用いて架橋を達成することができる。例示化学作用剤には、これらに限定するものでないが、過酸化物および他のフリーラジカル発生剤、硫黄化合物、フェノール樹脂および水素化ケイ素が含まれる。この態様の特別な面における架橋剤は流体であるか或は流体に変化し、その結果として、それを本製品に均一に塗布することができる。流動性架橋剤には、気体(例えば二塩化硫黄)、液体(例えばAkzo Nobelから入手可能なTrigonox C)、溶液(例えばジクミルパーオキサイドがアセトンに入っている溶液)またはそれの懸濁液(例えばジクミルパーオキサイドが水に入っている懸濁液もしくは乳液、またはパーオキサイドが基になった酸化還元系)である化合物が含まれる。
【0116】
例示過酸化物には、これらに限定するものでないが、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、過安息香酸t−ブチル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、過オクタン酸t−ブチル、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ラウリルパーオキサイド、過酢酸t−ブチルが含まれる。過酸化物である硬化剤を用いる場合、それを一般的には有機過酸化物から選択する。有機過酸化物の例には、これらに限定するものでないが、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5ジメチル2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、吉草酸ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン−3およびこれらの混合物が含まれる。また、ジアリールパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ヒドロパーオキサイド、パーオキシケタールおよびこれらの混合物を用いることも可能である。
【0117】
1つ以上の態様では、ヒドロシリル化技術を用いて架橋を起こさせてもよい。
【0118】
1つ以上の態様では、酸素が制限されているか或は不活性な雰囲気下で架橋を起こさせ
てもよい。ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素、キセノンおよび/または真空を用いることで適切な雰囲気を生じさせることができる。
【0119】
化学作用剤または照射のいずれかを用いた架橋を架橋用触媒、例えば有機塩基、カルボン酸および有機金属化合物などで助長することも可能であり、そのような有機化合物には、有機チタン酸塩および鉛、コバルト、鉄、ニッケル、亜鉛および錫の錯体またはカルボン酸塩(例えばジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルトなど)が含まれる。
【0120】
伸縮性製品
本開示の態様は、少なくとも一部が基質材料で作られた基質およびこの上に記述した如きプロピレンが基になった弾性重合体が含有する少なくとも1種の伸縮性ヤーンを含有する伸縮性製品を包含する。本開示の伸縮性製品では、前記伸縮性ヤーンを前記基質と結合させてもよくかつ前記伸縮性ヤーンは前記基質の表面に機械的に直接結合可能である。いくつかの態様では、前記伸縮性ヤーンと基質材料の機械的結合を接着剤の使用なしに起こさせることができる。いくつかの態様では、実質的に少量の接着剤を用いて前記伸縮性ヤーンが前記基質材料に関して位置する場所の維持に役立たせることができる。いくつかの態様では、前記伸縮性ヤーンの少なくとも一部を前記基質の表面に機械的に直接結合させ、接着剤を実質的に含有させない。
【0121】
この上の考察において、本開示の伸縮性製品の製造で用いる伸縮性ヤーンの断面形状は様々であり得、それには、これらに限定するものでないが、円形、平ら、楕円形または「テープ様」が含まれる。1つの態様における伸縮性ヤーンの断面は伝統的な円形/球形またはそのような断面の変形であってもよい。他の態様における伸縮性ヤーンの形状は平らまたはリボン様の形状であり、その結果として、その断面形状は細長くそして/または楕円形であることに加えて長方形もしくは卵形断面またはこれらの変形である。いくつかの態様における伸縮性ヤーンの断面形状は細長く、高さ寸法より大きい幅寸法を有する。
【0122】
この上に記述したように、いくつかの典型的な態様では、エチレン−プロピレンが基になった弾性重合体を架橋させてもよい。従って、この上により詳細に記述したように、いくつかの態様では、エチレン−プロピレンが基になった重合体にまたジエンおよび/または架橋剤も含有させる。いくつかの態様では、そのようなジエンを下記:5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ビニルノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)およびこれらの組み合わせから選択する。いくつかの態様では、前記架橋剤を下記:多官能アクリレート、多官能メタアクリレート、官能化ポリブタジエン樹脂、官能化シアヌレート、イソシアヌル酸アリルおよびこれらの組み合わせから選択する。
【0123】
ジエンおよび/または架橋剤を含有させたことで弾性重合体が架橋可能である態様では、本開示の伸縮性製品を生じさせる方法に、更に、繊維の架橋を当該伸縮性ヤーンを本伸縮性製品に組み込む前または後のある時点で起こさせることも含めてもよい。繊維製造工程中、繊維を紡績した後であるがパッケージに巻き取る前に繊維を架橋させてもよいか或は繊維成形の下流のある時点、例えば本開示の伸縮性製品に組み込む前または繊維を最終使用製品の中に組み込んだ後などに繊維を架橋させることも可能である。架橋は当業者に公知の様々な方法を用いて達成可能であり、そのような方法には、これらに限定するものでないが、熱、化学的触媒作用、電子ビームなど、例えばこの上に記述した如きそれらが含まれる。1つの態様では、本開示の繊維を電子ビーム放射線に暴露させることで架橋を
達成する。他の架橋方法には、ガンマ放射線、熱、紫外光、化学的触媒作用またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0124】
いくつかの態様では、ヤーンが基質材料の層の間で動き回らないようにする目的で接着剤を実質的に少量用いてもよく、従って、そのような態様ではヤーンを実質的に少量の接着剤と接触させる。
【0125】
他の態様では、ヤーンが基質材料の層の間を横方向に動かないようにする目的で様々な方法を用い、従って、接着剤は不必要である。そのような態様では、伸縮性ヤーンに接着剤を実質的に含有させない。そのような態様では、超音波技術を用いることで伸縮性ヤーンに沿って超音波溶着点または粘着点を作り出してもよく、そして/または伸縮性ヤーンに隣接した地点で基質材料の層を互いに超音波で結合させることによって、前記ヤーンが多少とも包み込まれることで前記ヤーンの動きが保持される「トラック」または「トンネル」を作り出すことも可能である。
【0126】
典型的な態様では、プロピレンが基になった弾性重合体の伸縮性ヤーンを本伸縮性製品に組み込んで結合させる前に前記ヤーンを架橋させておく。その架橋によって、より高い融点と向上した安定性を示すことで加工段階、例えば熱溶融/熱可塑性結合または超音波結合段階により耐え得る弾性重合体がもたらされる。従って、そのように架橋させた伸縮性ヤーンを用いる態様では接着剤を用いなくてもよい、と言うのは、溶融する温度が低い弾性重合体を用いた時に起こり得る如きかけた熱によってヤーンが破断すると言った潜在的問題なしにより高い温度の熱可塑性結合を用いることができるからである。
【0127】
加うるに、架橋させていないプロピレンが基になった弾性重合体ヤーンを用いる時には、一般に、超音波で結合させている時にヤーンが起こし得る破断が回避されるように超音波結合工程中にヤーンにかかる張力を低下させるか或は取り除く注意を払うことが推奨される。しかしながら、伸縮性製品、例えば使い捨て可能おむつなどを製造している時には典型的に伸縮性ヤーンを実質的に引き伸ばした状態にしながら伸縮性ヤーンを基質材料と結合させ、その結果として、伸縮性製品を生じさせる目的で基質材料のギャザーを前記伸縮性ヤーンの結合の間に付けるのは結合を起こさせた後になるであろう。従って、いくつかの態様では、超音波結合または他の結合方法を実施している時、結合点の両側に「指」を置いて結合中にヤーンにかかる張力をその「指」の間で低下させることによって、前記伸縮性ヤーンにかかる張力を低下させるか或は取り除くことができる。結合後に指を取り除くとヤーンに張力が戻る。いくつかの態様でプロピレンが基になった弾性重合体を架橋させたヤーンを用いる場合、そのような「指を用いる」工程をなくすことができる、と言うのは、その架橋させたヤーンが示す強度が向上していることで実質的に引き伸ばした状態にしながら破断なしにそれを超音波で結合させることが可能になるからである。いくつかの態様では、その架橋させた伸縮性ヤーンを用いることができかつ熱可塑性結合および/または超音波結合を当該ヤーンの長さ方向に沿って行うことができ、その結果として強力な機械的結合を生じさせることができる。そのようないくつかの態様では、当該伸縮性ヤーンに接着剤を実質的に含有させなくてもよい。
【0128】
架橋不能なプロピレンが基になった弾性重合体ヤーンを用いる態様では、熱可塑性および/または超音波結合を当該ヤーンの各端に起こさせることができそして/または前記ヤーンの長さ方向に沿って間隔を置いて結合させることでヤーンを基質材料と機械的に直接結合させることができる。しかしながら、いくつかの態様では、そのようなヤーンはまだ結合と結合の間の領域に存在する基質材料に関して動き回る可能性があり得る。従って、いくつかの態様では、当該ヤーンが基質材料に関して動く/滑る(例えばクリープ)ことがないようにする目的で熱可塑性および/または超音波結合に加えて相対的に少量の接着剤を用いることも可能である。そのような接着剤の相対的に少量は、その接着剤が伸縮性
ヤーンを伸縮性製品に付着させる時に用いられるただ1つまたは主な結合方法である時に伸縮性ヤーンを積層品に結合させようとする時に典型的に用いられる量よりもずっと少ない。
【0129】
本開示の態様では、本開示の伸縮性製品を製造品、例えばこれらに限定するものでないが、使い捨て可能吸収性衣類、例えば乳児用おむつまたはトレーニングパンツ、成人失禁用製品および当該技術分野で良く知られている他のそのような製品などに成形することができる。そのような製品の構造は当業者に公知ではあるが、ここに簡単に説明する。そのような衣類の胴体には典型的には基質材料の層が少なくとも2層、即ち体に接触していて液体が透過し得るライナーシート(または「トップシート」)、液体が透過しない支持シート(または「バックシート」)(集合的に「シート」)および水分を吸収するコア繊維(または「吸収性コア」)[これは通常はランダムに配列した繊維の不織マットで出来ていて一般に前記トップシートとバックシートの間に位置する]が含まれている。そのような衣類には典型的に更にその衣類の使用を容易にするための様々な伸縮性構成要素および固定方式が含まれおり、かつそれらにはしばしば追加的シートが含まれている。
【0130】
本開示の伸縮性製品を生じさせようとする時に用いる基質材料(例えば伸縮性ヤーンを結合させる基質材料の1番目および2番目の層として用いるに適した材料)には、これらに限定するものでないが、不織材料、例えばスパンボンドもしくはメルトブローン熱可塑性重合体、例えばポリオレフィンなど、結合させたカードウエブ、フィルム材料、例えばポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル、メタアクリル酸エチルおよびポリエステルフィルムなど、発泡材料、例えばポリオレフィンフォームなど、織り材料、例えば織りポリプロピレン、ポリエチレンもしくはポリエステル布など、およびこの上に示した不織、フィルム、発泡および織り材料の複合材料および積層品などが含まれる。本開示の典型的な態様では、基質材料の1番目と2番目の層を一体的には生じさせない。即ち、基質材料の1番目および2番目の層は、熱、接着剤または同様な付着技術以外の技術では接続しない個別の要素を表し、それらの層は、材料の一体型片から折り畳み工程で生じさせたものではない。本開示の別の特定態様では、そのような1番目および2番目の基質材料層を材料の単一の一体型片から折り畳み工程で一体的に生じさせる。
【0131】
本伸縮性製品の1番目の層および/または2番目の層は弾性もしくは伸縮性のいずれかで引き伸ばし可能であり得る。特定の態様では、その1番目の層および2番目の層のいずれかまたは両方が伸縮性伸びを示してもよく、それは約20%以上、または約60%以上、最後に約100%以上である。特定の態様では、前記1番目の層または2番目の層を250g/インチで測定した時にそれが示し得る伸縮性伸びは約120%以下、または約100%以下、最後に約50%以下である。このように、前記1番目の層または2番目の層を250g/インチで測定した時にそれが示し得る伸縮性伸びは典型的に約20%以上から約120%以下であるが、そのおおよそのパーセントは本伸縮性製品の一般的デザインおよび意図した使用に応じて多様であり得る。その上、前記1番目の層が示す伸縮性伸びと前記2番目の層が示す伸縮性伸びは異なってもよい。
【0132】
特定の態様では、不織材料、例えばスパンボンドまたはメルトブローンポリエチレンもしくはポリプロピレン材料などから基質材料を生じさせる。一般に液体を通す伸縮性複合材料を生じさせることが望まれる場合には、スパンボンド材料を界面活性剤で適切に処理することでそれを一般的に親水性にすることができる。一般に液体を通さない伸縮性複合材料を生じさせることが望まれる場合には、基質材料または基質材料の1番目もしくは2番目の層の一方に液体を透過しないフィルム、例えばポリオレフィンフィルムなどを含めてもよいか、或は可融材料の1番目もしくは2番目の層にスパンボンド−メルトブローン−スパンボンドまたは他の適切に液体を透過しない不織材料を含めてもよい。
【0133】
本開示の伸縮性製品を製造する方法の1つの態様は下記の段階を包含する:基質材料を準備し、プロピレンが基になった弾性重合体を含有して成る伸縮性ヤーンを準備し、そして前記伸縮性ヤーンと前記基質材料の結合を前記伸縮性ヤーンの少なくとも一部が前記基質材料と機械的に直接結合するように起こさせる。図2に、伸縮性ヤーンを基質材料の2層の間に結合させて伸縮性製品を生じさせる方法の1つの態様を例示する。
【0134】
図2に示すように、本開示の方法を用いて伸縮性製品または構成要素(40)を生じさせるが、この方法では、プロピレンが基になった弾性ヤーンの多数のストランド(30)を基質材料の2枚の平らなシート(22および24)(例えば不織または押出し加工材料など)の間に挟み込む。別法として、1枚の不織シートを折り畳むことで弾性ヤーンのストランドを包み込むことも可能である。
【0135】
その一緒にしたヤーンと基質材料を場合により加熱されていてもよいニップロール(36および38)の表面の間に一緒に通すことで伸縮性製品(40)を生じさせることができる。前記弾性ヤーンの付近のロール間隙もしくはロールの表面圧力および温度を1)ヤーンと基質の結合が増大しかつ起こり得るヤーンのクリープの度合が低下するようにヤーンストランドの表面が基質材料の表面によって改質または「鋳込み」を受けるに充分なほど柔らかくなるか或は2)結合強度が増大しかつヤーンがクリープを起こす可能性が低下するようにヤーンストランドの表面が若干溶融して基質材料と直接結合するように制御する。
【0136】
1つの態様では、接着剤(34)を相対的に少ない量でヤーンストランドに直接にか、基質材料の表面にか或は一緒にした材料をロール表面の間に一緒に通して伸縮性製品(40)を生じさせる直前のロール(36および38)のロール間隙点に加えてもよい。
【0137】
1つの態様では、結合が最大限になるように、その結合させた伸縮性製品(40)を別の2番目の組の場合により加熱されていてもよいロール(42および44)に通してもよく、これらのロール間隙の圧力および表面温度を制御することで機械的結合が同じ機構によって更に増大するようにしてもよい。
【0138】
別法として、前記2番目の組の加熱ロールの代わりに超音波溶接装置(示していない)を用いることも可能であり、それを、ヤーンストランドと基質の超音波による溶着が規則的な間隔または好ましい間隔で起こるように調節してもよい。図2では、積極的な供給材料巻き戻し装置を用いたヤーンの供給を単に例として示す。また、弾性ヤーンを供給する目的でオーバーエンドテイクオフ(over end take off)方法を用いることも可能である。
【0139】
本開示の伸縮性製品を生じさせる別の典型的な方法では、熱と圧力による機械的結合の代わりに超音波溶着を用いる。1つの典型的な方法では、サンプルの一方の末端を超音波溶着装置に通してもよい。次に、その伸縮性ヤーンを細長くし(例えば拡張、引き伸ばし)そしてもう一方の末端を超音波溶着装置に通す。場合により、その挟み込む基質層の間に少量の接着剤を前記伸縮性ヤーンの上または付近に加えることでその挟み込んだ材料を上述した様式と同じ様式で一緒に更に結合させることも可能である。図1に、おむつ(10)の中の伸縮性製品の構造を例示する。示すように、本開示の伸縮性製品を内部のレッグカフ/スタンディングカフ(12)と一般に呼ばれる領域および/または外側のレッグカフ(14)と呼ばれる領域の中に組み込んでもよい。また、ウエストまたはベリーバンド(16)を付着させる時にも同じ方法を用いることができる。
【実施例】
【0140】
実施例
本開示の態様を一般的に説明してきたが、以下の実施例では本開示のいくつかの追加的態様を記述する。本開示の態様を以下の実施例および相当する本文および図に関連させて説明するが、本開示の態様をそのような説明に限定することを意図するものでない。対照的に、本開示の態様の精神および範囲の範囲内に含まれる代替物、修飾物および相当物の全部を包含させることを意図する。
【0141】
以下の実施例では、プロピレンが基になった多数の弾性重合体ヤーンを軽量不織布の層の間に挟み込んだ。その伸縮性のある弾性ヤーンと基質材料の層の結合を以下に記述する方法を用いて起こさせた。このようなサンプルは、この上に記述した内部のレッグカフ/スタンディングカフまたは外側のレッグカフと一般に呼ばれるおむつ内の構造物の構造を模擬したものであり、それらを図1に例示するおむつ(10)の内部レッグカフ(12)および外側レッグカフ(14)として示す。
【0142】
実施例1
この実施例では、図2に例示する方法を用いて、おむつ内の構造物、例えばレッグカフまたはベリーバンドなどの構造を模擬する伸縮性製品を構築した。図2に例示する装置(20)を言及することで、この実施例の説明を行う。最初に、基質材料の2枚の平らなシート(1番目の層22および2番目の層24)を大型ロール(それぞれ26および28)から供給した。プロピレンが基になった多数の弾性重合体ヤーン(30)をパッケージ(32)から供給した。前記伸縮性ヤーンを前記基質材料の1番目と2番目の層の間に前記ヤーンが前記基質材料の2層の間に「挟み込まれる」ように通した。前記ヤーンと基質材料を一緒にして加熱ニップロール(36および38)の表面の間に一緒に通す前に少量の接着剤(34)を前記ヤーンのストランドに塗布した。その温度および圧力を前記ヤーンの表面が溶融して前記基質材料と直接結合しそして/または前記ヤーンストランドの表面が前記基質材料の表面によって改質または鋳込みを受けてヤーンと基質の結合が増大するに充分なほど柔らかくなるような温度および圧力にした。結合を増大させる目的で、前記伸縮性製品(40)を更に2番目の組の加熱ロール(42および44)にも前記伸縮性ヤーンと基質材料の間の機械的結合が更に増大するように制御したロール間隙圧力および表面温度で通す。別法(示していない)として、その2番目の組の加熱ニップロールの代わりに超音波溶着装置を用いることで前記ヤーンストランドと基質の溶着を超音波で起こさせることも可能である。
【0143】
実施例2
この実施例では、熱と圧力による結合の代わりに超音波溶着を用いる。この実施例では、サンプル(基質材料の2層の間に挟み込まれたヤーンを伴う)を超音波溶着装置に通すことで前記伸縮性ヤーンと基質材料の結合を伸縮性ヤーンの一方の末端の所で起こさせた。次に、その伸縮性ヤーンを細長くした(例えば引き伸ばした)後にもう一方の末端を超音波溶着装置に前記伸縮性ヤーンがこの伸縮性ヤーンの各末端の所の超音波溶着点によって基質材料と機械的に結合するように通した。次に、前記基質材料の層を少量の接着剤でか或は超音波溶着点で一緒に結合させることで、その結合させた伸縮性ヤーンを製品の中に封入した。
【0144】
本明細書では比率、濃度、量および他の数値データを範囲形式で表すことがあり得ることを注目すべきである。そのような範囲形式は便利さおよび簡潔さの目的で用いるものであり、従って、その範囲の限界として明確に示した数値を包含するばかりでなくまたその範囲内に含まれる数値および小領域の各々をあたかも明確に示す如く個々の数値または小領域の全部も包含するとして柔軟な様式で解釈されるべきであると理解されるべきである。例示として、「約0.1%から約5%」の濃度範囲は明確に示した約0.1重量%から約5重量%の濃度を包含するばかりでなくまたその示した範囲内に入る個々の濃度(例えば1%、2%、3%および4%)および小領域(例えば0.5%、1.1%、2.2%、
3.3%および4.4%)も包含すると解釈されるべきである。用語“約”はその修飾を受けさせる数値1種または2種以上の±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±8%または±10%を包含し得る。加うるに、語句「約‘x’から‘y’」は「約‘x’から約‘y’」を包含する。
【0145】
上述した態様に対して様々な変更および修飾を行うことができる。本明細書ではそのような修飾形および変形の全部を本開示の範囲内に含めて以下の請求項で保護することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性製品であって、
基質材料を含有して成る基質、および
プロピレンが基になった弾性重合体を含有して成る少なくとも1種の伸縮性ヤーン、
を含有して成っていて前記伸縮性ヤーンが前記基質と結合しておりかつ前記伸縮性ヤーンが前記基質の表面と機械的に直接結合可能である伸縮性製品。
【請求項2】
更に前記伸縮性ヤーンおよび前記基質材料と接触している接着剤も実質的に少量含有して成る請求項1記載の伸縮性製品。
【請求項3】
前記伸縮性ヤーンが接着剤を実質的に含有しない請求項1記載の伸縮性製品。
【請求項4】
前記基質が基質材料の層を少なくとも2層含有して成りかつ前記伸縮性ヤーンが基質材料の2層の間に位置していて前記2層の各々と結合している請求項1記載の伸縮性製品。
【請求項5】
前記基質材料が不織布または押出し加工ポリプロピレンが基になった布を含有して成る請求項1記載の伸縮性製品。
【請求項6】
前記プロピレンが基になった弾性重合体が更にジエンおよび架橋剤も含有して成りかつ前記プロピレンが基になった弾性重合体が架橋可能である請求項1記載の伸縮性製品。
【請求項7】
前記ヤーンが少なくともある程度架橋している請求項6記載の伸縮性製品。
【請求項8】
前記ジエンが5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ビニルノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)およびこれらの組み合わせから成る群より選択され、そして
前記架橋剤が多官能アクリレート、多官能メタアクリレート、官能化ポリブタジエン樹脂、官能化シアヌレート、イソシアヌル酸アリルおよびこれらの組み合わせから成る群より選択される、
請求項6記載の伸縮性製品。
【請求項9】
おむつ、失禁用製品および個人衛生用製品から成る群より選択される着用可能使い捨て製品である請求項1記載の伸縮性製品。
【請求項10】
前記伸縮性繊維が前記着用可能使い捨て製品のレッグカフ部分、ウエストバンド部分または両方の一部を形成している請求項9記載の伸縮性製品。
【請求項11】
前記伸縮性ヤーンが幅と高さを有する実質的に細長い断面形状を有する伸縮性リボンを構成していて前記幅の方が前記高さより大きい請求項1記載の伸縮性製品。
【請求項12】
伸縮性製品を製造する方法であって、
基質材料を準備し、
プロピレンが基になった弾性重合体を含有して成る伸縮性ヤーンを準備し、そして
前記伸縮性ヤーンと前記基質材料の結合を前記伸縮性ヤーンの少なくとも一部が前記基質材料と機械的に直接結合するように起こさせる、
ことを含んで成る方法。
【請求項13】
前記伸縮性ヤーンと前記基質材料を結合させる接着剤を用いない請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記伸縮性ヤーンに接着剤を実質的に含有させない請求項12記載の方法。
【請求項15】
更に前記基質材料と前記伸縮性ヤーンを結合させる前にそれらの中の1つ以上を実質的に少量の接着剤と接触させることも含んで成る請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記基質材料が基質材料の層を少なくとも2層含有して成りそして前記伸縮性ヤーンを基質材料の2層の間に位置させて前記2層の各々と結合させる請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記結合が機械的結合を含んで成る請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記結合が熱可塑性結合、超音波結合またはこれらの組み合わせを含んで成る請求項12記載の方法。
【請求項19】
更に前記基質材料と伸縮性ヤーンを超音波溶着装置に通すことで前記ヤーンの少なくとも一部と前記基質材料の溶着を超音波で起こさせることも含んで成る請求項12記載の方法。
【請求項20】
更に前記基質材料と前記伸縮性ヤーンを加熱されているニップロールに通すことで前記伸縮性ヤーンと前記基質材料を少なくともある程度結合させることも含んで成る請求項12記載の方法。
【請求項21】
更に前記基質材料と前記伸縮性ヤーンを2番目の組の加熱されているニップロールに通すことで前記伸縮性ヤーンと前記基質材料を更に結合させることも含んで成る請求項20記載の方法。
【請求項22】
更に前記基質材料と前記伸縮性ヤーンを超音波溶着装置に通すことで前記ヤーンストランドと前記基質を超音波で少なくともある程度溶着させることも含んで成る請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記プロピレンが基になった弾性重合体が更にジエンおよび架橋剤も含有して成りかつ前記プロピレンが基になった弾性重合体が架橋可能である請求項12記載の方法。
【請求項24】
前記ジエンを5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ビニルノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)およびこれらの組み合わせから成る群より選択する請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記架橋剤を多官能アクリレート、多官能メタアクリレート、官能化ポリブタジエン樹脂、官能化シアヌレート、イソシアヌル酸アリルおよびこれらの組み合わせから成る群より選択する請求項23記載の方法。
【請求項26】
更に前記伸縮性製品に電子ビーム放射を受けさせることで前記伸縮性繊維を少なくともある程度架橋させることも含んで成る請求項23記載の方法。
【請求項27】
更に前記伸縮性繊維を少なくともある程度架橋させることも含んで成りかつ前記繊維の
架橋が前記繊維に電子ビームエネルギー、ガンマ放射線、x線エネルギー、熱、紫外光およびこれらの組み合わせから成る群より選択したエネルギーを与えることを含んで成る請求項23記載の方法。
【請求項28】
前記伸縮性製品がおむつ、失禁用製品および個人衛生用製品から成る群より選択した着用可能使い捨て製品である請求項12記載の方法。
【請求項29】
前記伸縮性繊維が前記着用可能使い捨て製品のレッグカフ部分、ウエストバンド部分または両方の一部を形成している請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記伸縮性ヤーンが幅と高さを有する実質的に細長い断面形状を有する伸縮性リボンを構成していて前記幅の方が前記高さより大きい請求項12記載の方法。
【請求項31】
伸縮性製品であって、
基質材料、および
プロピレンが基になった弾性重合体を含有して成る少なくとも1種の伸縮性ヤーン、
を含有して成っていて前記伸縮性ヤーンが前記基質と結合しかつ前記伸縮性ヤーンの少なくとも一部が前記基質の表面と機械的に直接結合しておりかつ接着剤を実質的に含有しない伸縮性製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−515631(P2013−515631A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546042(P2012−546042)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060487
【国際公開番号】WO2011/087692
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(309028329)インビスタ テクノロジーズ エス エイ アール エル (80)
【Fターム(参考)】