説明

伸縮性ポリオレフィン繊維を含有する布

プロピレンが基になった弾性重合体組成物を含有するヤーンを含有して成る布もしくは衣類である製品であって、前記重合体組成物がプロピレンが基になった少なくとも1種の弾性重合体を含有して成りかつ前記ヤーンが示すドラフトが200%以上である製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は弾性繊維、特に伸縮性を示す衣服用布で用いるに適した破断伸びを示す伸縮性ポリオレフィン繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
伸縮性および弾性を示す繊維およびヤーンは公知である。例にはスパンデックスおよびゴムが含まれる。しかしながら、そのような典型的伸縮性ヤーンは数多くの欠点に苦しんでいる。天然ゴムは、デニールが大きい時のみに利用可能であることおよびラテックスアレルギーの可能性があることが理由で衣服適合性が制限されていることなどの如き制限を有する。
【0003】
スパンデックスヤーンは優れた伸縮性および回復力を示しはするが、製造に費用がかかる。また、スパンデックスは、化学および環境条件、例えばとりわけ塩素、窒素酸化物(NO[ここで、xは1または2である])、煙、紫外線およびオゾンなどにさらされるとそれらの攻撃を受け易い。
【0004】
現在入手可能なポリオレフィンエラストマーは低い伸び/伸縮性、非常に低い回復力および高い残留歪み(グロース)を示すことで典型的な衣服用伸縮性布用途には適さない。
【0005】
ヤーンに紡績するポリオレフィン組成物が特許文献1に開示されているが、しかしながら、そのようなヤーンは到達する最大伸びが195%であると言った制限された伸びを示すことが理由で衣服用布には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開2009/0298964
【発明の概要】
【0007】
要約
いくつかの面として、プロピレンが基になった1種以上の弾性重合体と1種以上の抗酸化剤と1種以上の架橋剤(また共作用剤とも呼ぶ)の混合物を含有させた組成物を用いて弾性を示すヤーン、フィラメントおよび繊維を製造することができる。
【0008】
本開示の1つの態様は、プロピレンが基になった弾性重合体組成物を含有するヤーンを含有する製品、例えば布または衣類などを包含する。その重合体組成物はプロピレンが基になった少なくとも1種の弾性重合体を含有し、かつ前記ヤーンが示すドラフトは200%以上または約200%以上である。
【0009】
また、プロピレンが基になった弾性重合体ヤーンを含有する布を製造する方法も開示し、この方法は、
(a)プロピレンが基になった弾性重合体組成物を準備し、
(b)前記プロピレンが基になった弾性重合体組成物を約220℃から約300℃の温度に加熱し、
(c)前記組成物を毛細管に通して押し出すことでヤーンを生じさせ、
(d)場合により前記ヤーンをパッケージに巻き取ってもよく、そして
(e)前記ヤーンを含有する布を調製する、
ことを包含する。
【0010】
別の態様では、プロピレンが基になった弾性重合体ヤーンを含有する布を製造する方法を開示し、この方法は、
(a)プロピレンが基になった弾性重合体組成物を準備し、
(b)前記プロピレンが基になった弾性重合体組成物を約220℃から約300℃の温度に加熱し、
(c)前記組成物を毛細管に通して押し出すことでヤーンを生じさせ、
(d)場合により前記ヤーンをパッケージに巻き取ってもよく、
(e)前記ヤーンを複数含有して成る縦糸を生じさせ、
(f)前記ヤーンを電子ビームに暴露させることで前記ヤーンを架橋させ、
(g)前記ヤーンをビームに取り上げ、そして
(h)布を縦編みする、
ことを包含する。
【0011】
詳細な説明
本開示をより詳細に説明する前に、本開示を記述する個々の態様に限定するものでなく、それ自体は勿論多様であり得ると理解されるべきである。また、本明細書で用いる用語は単に個々の態様を記述する目的であり、限定を意図するものでないことも理解されるべきである、と言うのは、本開示の範囲を添付請求項によってのみ限定するからである。特に明記しない限り、本明細書で用いる技術的および科学的用語は全部本開示が属する技術分野の通常の技術者が一般に理解するであろう意味と同じ意味を有する。また、本明細書に記述する方法および材料と同様または相当する方法および材料のいずれも本開示の実施または試験で用いることは可能ではあるが、ここに好適な方法および材料を記述する。
【0012】
本明細書に引用する公開および特許は全部あたかも個々の公開または特許の各々を具体的かつ個別に引用することによって組み込むと示すかのように引用することによって本明細書に組み込まれ、かつ本明細書で引用することによって本開示に組み込まれ、それらには、引用する公開に関連した方法および/または材料が記述されている。如何なる公開の引用もそれの開示は本出願日以前であり、先行する開示によって本開示にそのような公開に先行する日付が与えられる権利がないことを認めると解釈されるべきではない。その上、示されている公開日付は、実際の公開日付とは異なる可能性があり、それを個別に立証する必要もあり得る。
【0013】
本開示を読んだ後の当業者に明らかになるであろうように、本明細書に記述および例示する個々の態様は各々が本開示の範囲からも精神からも逸脱することのない他のいくつかの態様のいずれかが有する特徴から容易に区別可能であるか或はそれと組み合わせることができる個別の構成要素および特徴を有する。示す如何なる方法も示す出来事の順でか或は論理的に可能な他のいずれかの順で実施可能である。
【0014】
本開示の態様では、特に明記しない限り、当該技術分野の技術の範囲内である化学、繊維技術、繊維製品などの技術を用いる。そのような技術は文献の中に詳細に説明されている。
【0015】
以下に示す実施例は、本明細書に開示および請求する方法をどのように実施しかつ本明細書に開示および請求する組成物および化合物をどのように用いるかに関する完全な開示および説明を通常の当業者に示す目的で提示するものである。数値(例えば量、温度など)に関して正確さを確保するように努力したが、いくらかの誤差および偏差を考慮すべきである。特に明記しない限り、部は重量部であり、温度を℃で表しそして圧力を気圧で表
す。標準的温度および圧力は25℃および1気圧であると定義する。
【0016】
本開示の態様を詳細に説明する前に、特に明記しない限り、本開示を個々の材料、反応体、反応材料、製造方法などに限定するものでなく、それら自体は多様であり得ると理解されるべきである。また、本明細書で用いる用語は単に個々の態様を説明する目的であり、限定を意図するものでないことも理解されるべきである。また、本開示に示す段階は論理的に可能な様々な順で実施可能である。
【0017】
本明細書および添付請求項で用いる如き単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で明らかに他であると示さない限り、複数の指示対照を包含する。このように、例えば「ある担体」の言及は複数の担体を包含する。本明細書および以下の請求項では数多くの用語を言及するが、反対の意思が明らかでない限り、それらは下記の意味を持つと定義する。
【0018】
定義
本明細書で用いる如き用語「繊維」は、布およびヤーンばかりでなく繊維製品の製造で使用可能なフィラメント系材料を指す。1本以上の繊維またはフィラメントを用いてヤーンを生じさせることができる。当該技術分野で公知の方法に従ってヤーンに完全な延伸を受けさせるか或は質感を持たせることができる。用語「ヤーン」、「繊維」および「フィラメント」を互換的に用いる、と言うのは、ヤーンは1本の繊維もしくはフィラメントまたは繊維もしくはフィラメントの組み合わせを含有している可能性があるからである。1つの態様では、プロピレンが基になった弾性重合体繊維を用いて伸縮性ヤーンを製造する。
【0019】
本明細書で用いる如き用語「伸び」は、引き伸ばされた配向状態の繊維もしくはヤーンを指す。これを元々の長さに対する引き伸ばされた長さの比率であるパーセントとして記述する。「破断伸び」は、ヤーンが破断した時の伸びである。
【0020】
プロピレンが基になった弾性重合体
用語「プロピレンが基になった弾性重合体」、「プロピレンが基になった重合体」および「プロピレン重合体」を互換的に用い、それには、プロピレンが基になった1種以上の弾性重合体、1種以上のプロピレン−α−オレフィン共重合体、1種以上のプロピレン−α−オレフィン−ジエン三元重合体および1種以上のプロピレン−ジエン共重合体が含まれる。また、そのような重合体、共重合体および/または三元重合体の中の2種以上の混合物も包含させる。
【0021】
用語「プロピレンが基になった弾性重合体組成物」は、プロピレンが基になった少なくとも1種の弾性重合体に加えて溶融紡績フィラメントもしくはヤーンを生じさせる目的で使用可能ないずれかの添加剤を含有する組成物を指す。
【0022】
プロピレンが基になった重合体の製造はプロピレンと1種以上のジエンを重合させることで実施可能である。他の少なくとも1つの具体的態様として、そのようなプロピレンが基になった重合体の製造はプロピレンをエチレンおよび/または少なくとも1種のC−C20α−オレフィンと一緒にか或はエチレンと少なくとも1種のC−C20α−オレフィンと1種以上のジエンの組み合わせと一緒に重合させることで実施可能である。そのような1種以上のジエンは共役もしくは非共役であってもよい。その1種以上のジエンは好適には非共役である。
【0023】
そのような共重合用単量体は直鎖もしくは分枝していてもよい。直鎖の共重合用単量体には、エチレンまたはC−Cα−オレフィン、例えばエチレン、1−ブテン、1−ヘ
キセンおよび1−オクテンなどが含まれる。分枝している共重合用単量体には、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンおよび3,5,5−トリメチル−1−ヘキセンが含まれる。1つ以上の態様として、そのような共重合用単量体にスチレンを含めることも可能である。
【0024】
例示ジエンには、これらに限定するものでないが、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1、6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ビニルノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)およびこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0025】
プロピレンが基になった重合体の製造で用いるに適した方法および触媒が公開US2004/0236042およびWO05/049672および米国特許第6,881,800号(これらは全部引用することによって本明細書に組み入れられる)に見られる。また、ピリジンアミン錯体、例えばWO03/040201(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている錯体なども本明細書で用いるに有用なプロピレンが基になった重合体の製造で用いるに有用である。そのような触媒は流動錯体を伴う可能性があり、それは、米国特許第6,559,262号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に示されているように、立体規則性が好ましく妨害されるように周期的な分子内再配列を起こす。そのような触媒は、プロピレンの挿入に入り交じった影響を与える立体剛性錯体であり得る[RiegerのEP1070087(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)を参照]。また、EP1614699(これは引用することによって本明細書に組み入れら)に記述されている触媒も本開示のいくつかの態様で用いるに適したバックボーンを生じさせる目的で使用可能である。
【0026】
プロピレンが基になった弾性重合体を生じさせるに適した重合方法には、高圧、スラリー、気体、塊状、液相およびこれらの組み合わせが含まれる。使用可能な触媒系には、伝統的なチーグラー・ナッタ触媒およびシングルサイトメタロセン触媒系が含まれる。その使用する触媒は高いイソ特異性を示し得る。重合は連続もしくはバッチ方法で実施可能であり、それに連鎖移動剤、捕捉剤または当業者に良く知られた他のそのような添加剤の使用を含めてもよい。また、当該重合体に樹脂および/またはヤーンの特性を向上または保持させる目的で通常添加される添加剤、例えば流動向上剤、核形成剤および抗酸化剤などを含有させることも可能である。
【0027】
1つの適切な触媒は、嵩高い配位子を有する遷移金属触媒である。そのような嵩高い配位子は、ある基(これは1個以上の任意のヘテロ原子と一緒に環を形成していてもよい)を形成する複数の結合した原子、例えば炭素原子などを含有する。そのような嵩高い配位子は、メタロセン型のシクロペンタジエニル誘導体であってもよく、その誘導体は単核もしくは多核であってもよい。1個以上の嵩高い配位子が遷移金属原子と結合していてもよい。そのような嵩高い配位子は、広く行き渡った科学理論に従い、重合過程中、均一重合効果をもたらす位置に存在したままであると仮定されている。他の配位子が前記遷移金属に結合または配位していてもよく、場合により共触媒または活性化剤、例えばヒドロカルビルまたはハロゲン脱離基などによって脱離可能であってもよい。そのような配位子のいずれかが脱離を起こすとオレフィン単量体が重合体鎖の中に挿入することを可能にする配位部位が生じると仮定されている。そのような遷移金属原子は、元素周期律表のIV、VまたはVI族の遷移金属である。他の適切な遷移金属原子はIVB族の原子である。
【0028】
適切な触媒には、シングルサイト触媒(SSC)が含まれる。それらは一般に周期律表の3から10族の遷移金属および重合中に前記遷移金属と結合したままである補助配位子
を少なくとも1個含有する。そのような遷移金属はカチオン状態で使用可能であり、それに共触媒または活性化剤による安定化を受けさせてもよい。例には、周期律表の4族、例えばチタン、ハフニウムまたはジルコニウムなどのメタロセンが含まれ、本明細書の以下により詳細に記述するように、重合中にそれらをd一価カチオン状態で用いかつそれらは補助配位子を1または2個有する。そのような触媒が配位重合で示すいくつかの特徴には、配位子が引き抜かれ得ることおよび配位子の中にエチレン(オレフィン)基が挿入し得ることが含まれる。
【0029】
そのようなメタロセンを共触媒と一緒に用いてもよく、そのような共触媒は、アルモキサン、例えば蒸気圧浸透圧方法で測定した時の平均オリゴマー度が4から30のメチルアルモキサンなどであってもよい。アルモキサンが直鎖アルカンに溶解するようにそれに修飾を受けさせてもよいか、或はそれをスラリーとして用いることも可能であるが、その場合には一般にトルエン溶液で用いる。そのような溶液には未反応のトリアルキルアルミニウムが入っている可能性があり、アルモキサンの濃度を一般に1リットル当たりのAlのモルとして示し、その数値にはいくらか存在するトリアルキルアルミニウムも含まれているが、それはオリゴマーの生成でそれほど反応することはない。アルモキサンを共触媒として用いる場合、それを当該遷移金属を基準にして一般にモル比が約50以上のモル過剰量で用い、それには約100以上、約1000以下および約500以下が含まれる。
【0030】
そのようなSSCは、製造すべき重合体の種類およびその重合体が工程条件下1グラムのSSC(例えばメタロセン)当たり少なくとも約40,000グラムの重合体、例えば少なくとも約60,000(1グラムのSSC当たり約100,000グラム以上の重合体を包含)の活性でもたらされるようなそれに関連した加工ウインドに適する幅広い範囲の入手可能SSCの中から選択可能である。触媒の選択を最適に行うと様々な重合体の製造をいろいろな操作ウインドで実施することが可能になることで、当該SSCおよびいずれかの補助触媒成分の使用量を少なくすることが可能になるばかりでなくまた場合により捕捉剤の使用量も少なくすることが可能になる。相当して触媒キラーの使用量を少なくすることも可能であり、その後、非極性溶媒を再循環させて重合反応槽1基または2基以上で再使用する前に極性汚染物を除去するための処理をそれに受けさせることを可能にする様々な費用効果的方法を導入することが可能になる。
【0031】
そのようなメタロセンをまた非配位または弱配位アニオンである共触媒と一緒に用いることも可能である(本明細書で用いる如き用語「非配位アニオン」は弱配位アニオンを包含する)。そのような配位は、重合の進み具合で明らかになるように、如何なる場合にも不飽和単量体成分の挿入が可能なほど弱くあるべきである。そのような非配位アニオンを当該技術分野に記述されている様式のいずれかで供給して当該メタロセンと反応させてもよい。
【0032】
そのような非配位アニオンの前駆体を低い結合価状態で供給するメタロセンと一緒に用いることも可能である。そのような前駆体は酸化還元反応を起こし得る。その前駆体はイオン対であってもよく、それの前駆体カチオンがある様式で中和および/または除去される。そのような前駆体カチオンはアンモニウム塩であってもよい。その前駆体カチオンはトリフェニルカルボニウム誘導体であってもよい。
【0033】
前記非配位アニオンは炭素ではない10−14族の元素が基になったテトラアリール置換ハロゲン化アニオン、特にアリール基またはアリール基上のアルキル置換基が有する水素原子がフッ素基に置き換わっているアニオンであってもよい。
【0034】
10−14族の元素を有する有効な共触媒錯体は、10−14族の元素を有する4配位アニオン錯体を含有するイオン塩から誘導可能であり、ここでは、A
[(M)Q...Q
として表すことができ、ここで、Mは、10−14族の1種以上の半金属または金属、例えばホウ素またはアルミニウムなどであり、そして各Qは、当該技術分野で理解されるように、非配位アニオンとして適切な[(M’)Q...Qの状態にする電子もしくは立体効果をもたらすに有効な配位子であるか、或は[(M’)Q...QQが全体として有効な非配位もしくは弱配位アニオンであるに充分な数のQが存在する。典型的なQ置換基には、特に、フッ素置換アリール基、例えば完全フッ素置換アリール基などが含まれ、かつフッ素置換基に加えてフッ素置換ヒドロカルビル基などの如き置換基を有する置換Q基が含まれる。典型的なフッ素置換アリール基には、フェニル、ビフェニル、ナフチルおよびこれらの誘導体が含まれる。
【0035】
そのような非配位アニオンを当該遷移金属成分を基準にしてほぼ等モル量、例えば少なくとも約0.25(約0.5および約0.8、および約4以下または約2以下または約1.5以下を包含)のモル量で用いてもよい。
【0036】
代表的なメタロセン化合物は式:
MDE
[式中、Lは、Mとπ結合している置換シクロペンタジエニルもしくはヘテロシクロペンタジエニル補助配位子であり、Lは、Lに関して定義した種類の補助配位子の一員であるか或はJ、即ちMとσ結合しているヘテロ原子補助配位子であり、前記LとL配位子は、14族の元素を有する連結基を通して一緒に共有結合的に橋渡しされていてもよく、Lは、Mと配位結合している任意の中性非酸化配位子(iは0から3に相当する)であり、Mは4または5族の遷移金属であり、そしてDおよびEは、独立して、各々がMとα結合していて場合により互いにか或はLもしくはLと橋渡しされていてもよい不安定なモノアニオン配位子である]で表され得る。前記モノアニオン配位子は、適切な活性化剤によって追い出され、それによって重合性単量体の挿入が可能になるか、或は巨大単量体が遷移金属成分の空の配位部位に挿入することが可能になることで配位重合が起こり得る。
【0037】
SSCとして使用可能な代表的非メタロセン系遷移金属化合物には、また、テトラベンジルジルコニウム、テトラビス(トリメチルシリルメチル)ジルコニウム、オキソトリス(トリメチルシリルメチル)バナジウム、テトラベンジルハフニウム、テトラベンジルチタン、ビス(ヘキサメチルジシラジド)ジメチルチタン、トリス(トリメチルシリルメチル)ニオブジクロライドおよびトリス(トリメチルシリルメチル)タンタルジクロライドも含まれる。
【0038】
本開示に従ってオレフィン重合用触媒として用いるに適した追加的有機金属遷移金属化合物は、オレフィン系不飽和単量体、例えばエチレンなどによって追い出されるに充分なほど不安定な非配位もしくは弱配位アニオンによる配位子引き抜きによって触媒活性カチオンに変化しかつそのような活性電子状態で安定であり得る3−10族の金属の化合物のいずれかである。
【0039】
他の有用な触媒には、IV族の遷移金属、例えばジルコニウムまたはハフニウムなどのビスシクロペンタジエニル誘導体であるメタロセンが含まれる。それらは、単一の炭素およびケイ素原子で連結しているフルオレニル配位子とシクロペンタジエニル配位子を含有する誘導体であり得る。そのCp環は、PCT公開出願WO00/24792およびWO00/24793(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されているそれらの如きメタロセンがアルカンに溶解するのを補助するように、置換されていなくてもよくそして/またはブリッジはアルキル置換基、適切にはアルキルシリル置換基を含有する。他の可能なメタロセンには、PCT公開出願WO01/58912(これは引用することによって本明細書に組み入れら)に示されているメタロセンが含まれる。
【0040】
他の適切なメタロセンは、ビスフルオレニル誘導体または橋渡しされていないインデニル誘導体であり得、それらは縮合環上の1つ以上の位置が分子量を高くする効果を有することで間接的に重合をより高い温度で起こさせることを可能にする部分で置換されていてもよい。
【0041】
触媒系全体に追加的に1種以上の有機金属化合物を捕捉剤として含有させてもよい。そのような化合物に反応の環境から極性不純物を除去しかつ触媒の活性を向上させるに有効な化合物を包含させることを意味する。不純物はいずれかの重合反応成分、特に溶媒、単量体および触媒供給材料と一緒に不注意に入り込んで触媒の活性および安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。その結果として、特にイオン化するアニオンである前駆体を用いて触媒系を活性化させる時に触媒の活性が低下するか或はなくなることさえ起こり得る。そのような不純物、即ち触媒毒には、水、酸素、極性有機化合物、金属不純物などが含まれる。そのような毒が反応槽の中に入り込む前にそれらを例えば様々な成分を合成もしくは調製した後または合成もしくは調製している間に化学的処理または注意深い分離技術などで除去する段階を設けることができるが、それでも、通常は、重合工程自身で用いられる有機金属化合物の量はいくらか少量である。
【0042】
典型的な有機金属化合物には、米国特許第5,153,157号および5,241,025号およびPCT公開WO91/09882、WO94/03506、WO93/14132およびWO95/07941(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されている13族の有機金属化合物が含まれ得る。適切な化合物には、トリエチルアルミニウム、トリエチルボラン、トリ−イソブチルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、メチルアルモキサンおよびイソブチルアルモキサンが含まれる。アルモキサンをまた他の活性化手段と一緒に捕捉量で用いることも可能であり、例えばメチルアルモキサンおよびトリ−イソブチルアルモキサンをホウ素が基になった活性化剤と一緒に用いることも可能である。重合反応中に触媒化合物と一緒に用いるべきそのような化合物の量を、活性を向上させるに有効な量(およびそのような触媒化合物を二重の役割で用いる場合にはそれらの活性化に必要な量)ではあるが最小限にする、と言うのは、余分な量は触媒毒として作用する可能性があるからである。
【0043】
当該プロピレンが基になった重合体の平均プロピレン含有量を重合体の重量を基準にした重量パーセントベースで約60重量%から約99.7重量%にしてもよく、それには約60重量%から約99.5重量%、約60重量%から約97重量%および約60重量%から約95重量%が含まれる。1つの面として、その残りに他の1種以上のα−オレフィンまたは1種以上のジエンを含めてもよい。他の態様では、当該重合体の重量を基準にした含有量を約80重量%から約95重量%のプロピレン含有量、約83重量%から約95重量%のプロピレン含有量、約84重量%から約95重量%のプロピレン含有量、および約84重量%から約94重量%のプロピレン含有量にしてもよい。そのプロピレンが基になった重合体の残りに場合によりジエンおよび/または1種以上のα−オレフィンを含めてもよい。そのようなα−オレフィンには、エチレン、ブテン、ヘキセンまたはオクテンが含まれ得る。2種類のα−オレフィンを存在させる場合、それらにはブテン、ヘキセンまたはオクテンの中の1つとエチレンの如き任意組み合わせが含まれ得る。そのプロピレンが基になった重合体に非共役ジエンを重合体の重量を基準にして約0.2重量%から約24重量%含有させるが、それには約0.5重量%から約12重量%、約0.6重量%から約8重量%および約0.7重量%から約5重量%が含まれる。他の態様では、重合体の重量を基準にしたジエン含有量を約0.2重量%から約10重量%にしてもよく、それには約0.2から約5重量%、約0.2重量%から約4重量%、約0.2重量%から約3.5
重量%、約0.2重量%から約3.0重量%および約0.2重量%から約2.5重量%が含まれる。本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様では、そのようなプロピレンが基になった重合体にENBを約0.5から約4重量%の量で含有させるが、それには約0.5から約2.5重量%および約0.5から約2.0重量%が含まれる。
【0044】
他の態様では、プロピレンが基になった重合体にプロピレンおよびジエンをこの上に記述した量の中の1つ以上の量で含有させて、その残りに1種以上のCおよび/またはC−C20α−オレフィンを含める。一般に、それによって結局は1種以上のCおよび/またはC−C20α−オレフィンを重合体の重量を基準にして約5から約40重量%含有するプロピレンが基になった重合体がもたらされるであろう。Cおよび/またはC−C20α−オレフィンを存在させる場合、当該重合体中の前記オレフィンを一緒にした量を約5重量%以上にしてもよいが、それが本明細書に記述する量の範囲内に入るようにする。1種以上のα−オレフィンに適した他の量には約5重量%から約35重量%が含まれ、それには約5重量%から約30重量%、約5重量%から約25重量%、約5重量%から約20重量%、約5から約17重量%および約5重量%から約16重量%が含まれる。
【0045】
そのようなプロピレンが基になった重合体が示す重量平均分子量(Mw)は約5,000,000以下であり得、数平均分子量(Mn)は約3,000,000以下であり得、z平均分子量(Mz)は約10,000,000以下であり得、かつイソタクティックポリプロピレンをベースラインとして用いて重合体の重量平均分子量(Mw)で測定したg’指数は約0.95以上であり得るが、それらは全部本明細書に記述する如きサイズエクスクルージョンクロマトグラフィー、例えば3D SEC(またGPC−3Dとも呼ぶ)などで測定可能である。
【0046】
本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示すMwは約5,000から約5,000,000g/モルであり得、それには約10,000から約1,000,000のMw、約20,000から約500,000のMwおよび約50,000から約400,000のMwが含まれ、ここに示したMwは本明細書に記述するようにして測定したMwである。
【0047】
本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示すMnは約2,500から約2,500,000g/モルであり得、それには約5,000から約500,000のMn、約10,000から約250,000のMnおよび約25,000から約200,000のMnが含まれ、ここに示したMnは本明細書に記述するようにして測定したMnである。
【0048】
本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示すMzは約10,000から約7,000,000g/モルであり得、それには約50,000から約1,000,000のMz、約80,000から約700,000のMzおよび約100,000から約500,000のMzが含まれ、ここに示したMzは本明細書に記述するようにして測定したMzである。
【0049】
そのようなプロピレンが基になった重合体が示す分子量分布指数(MWD=(Mw/Mn))[時には「多分散指数」(PDI)とも呼ぶ]は約1.5から約40であり得る。MWDの上限は約40または約20または約10または約5または約4.5であり得かつ下限は約1.5または約1.8または約2.0であり得る。前記プロピレンが基になった重合体が示すMWDは約1.8から約5であり得、それには約1.8から約3が含まれる。分子量(MnおよびMw)および分子量分布(MWD)を測定する技術は当該技術分野で良く知られていて、米国特許第4,540,753号(これは米国における実施の目的
で引用することによって本明細書に組み入れられる)およびそれに引用されている文献、Macromolecules、1988、21巻、3360頁(Verstrate他)に見ることができ、かつ米国特許第6,525,157号のコラム5の1−44行に開示されている手順に従う(それらは全部引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)。
【0050】
そのようなプロピレンが基になった重合体が示すg’指数値は約0.95以上であり得、それには約0.98以上または約0.99以上が含まれ、ここに示すg’は、イソタクティックポリプロピレンが示す固有粘度をベースラインとして用いて当該重合体が示すMwで測定した値である。本明細書で用いる場合のg’指数は下記:
g’=η/η
[ここで、ηは、プロピレンが基になった重合体が示す固有粘度であり、そしてηは、前記プロピレンが基になった重合体と同じ粘度平均分子量(Mv)を有する線状重合体が示す固有粘度である]
であるとして定義する。η=KMα、Kおよびαは、線状重合体が示した測定値であり、これをg’指数測定で用いた装置と同じ装置を用いて得るべきである。
【0051】
前記プロピレンが基になった重合体をASTM D−1505試験方法に従ってほぼ室温で測定した時にそれが示す密度は約0.85g/cmから約0.92g/cmであり得、それには約0.87g/cmから0.90g/cmおよび約0.88g/cmから約0.89g/cmが含まれる。
【0052】
前記プロピレンが基になった重合体をASTM D−1238(A)試験方法に修飾(以下に記述)を受けさせた如き方法に従って約2.16kgの荷重(230℃)を用いて測定した時にそれが示すメルトフロー率MFRは0.2g/10分に等しいか或はそれ以上であり得る。そのMFR(約2.16kg(230℃))は約0.5g/10分から約200g/10分であってもよく、それには約1g/10分から約100g/10分が含まれる。前記プロピレンが基になった重合体が示すMFRは約0.5g/10分から約200g/10分であり得、それには約2g/10分から約30g/10分、約5g/10分から約30g/10分、約10g/10分から約30g/10分、約10g/10分から約25g/10分および約2g/10分から約10g/10分が含まれる。
【0053】
前記プロピレンが基になった重合体をASTM D1646に従って125℃で測定した時にそれが示すムーニー粘度ML(1+4)は約100未満、例えば約75未満であり得、それには約60未満および約30未満が含まれる。
【0054】
前記プロピレンが基になった重合体を以下に記述するDSC手順に従って測定した時にそれが示す融解熱(Hf)は1グラム当たり約0.5ジュール(J/g)に等しいか或はそれ以上、約80J/gであり得、それには約75J/g、約70J/g、約60J/g、約50J/gおよび約35J/gが含まれる。前記プロピレンが基になった重合体が示す融解熱は約1J/gに等しいか或はそれ以上であり、それには約5J/gに等しいか或はそれ以上が含まれる。別の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示す融解熱(Hf)は約0.5J/gから約75J/gであり得、それには約1J/gから約75J/gおよび約0.5J/gから約35J/gが含まれる。
【0055】
適切なプロピレンが基になった重合体および組成物は、それらが示す融点(Tm)および融解熱の両方で特徴づけ可能であり、そのような特性は、重合体鎖による結晶子の生成を妨害する共重合用単量体または立体不規則性の存在によって影響を受け得る。1つ以上の態様における融解熱の下限は約1.0J/gまたは約1.5J/gまたは約3.0J/gまたは約4.0J/gまたは約6.0J/gまたは約7.0J/gであり得かつ上限は
約30J/gまたは約35J/gまたは約40J/gまたは約50J/gまたは約60J/gまたは約70J/gまたは約75J/gまたは約80J/gであり得る。
【0056】
前記プロピレンが基になった重合体が示す結晶化度をまた結晶化度のパーセント(即ち結晶化度%)で表すことも可能である。本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示す結晶化度%は約0.5%から40%であり、それには約1%から30%および約5%から25%が含まれ、ここに示した結晶化度%は以下に記述するDSC手順に従って測定した結晶化度%である。別の態様におけるプロピレンが基になった重合体が示す結晶化度は約40%未満であり得、それには約0.25%から約25%、約0.5%から約22%、約0.5%から約20%が含まれる。この上に開示したように、最高次数のポリプロピレンが示す熱エネルギーは約189J/gであると推定されている(即ち100%の結晶化度は209J/gに相当する)。
【0057】
前記プロピレンが基になった重合体は、そのようなレベルの結晶化度を示すことに加えて、単一の幅広い融解転移も示し得る。また、前記プロピレンが基になった重合体は主ピークに隣接した二次溶融ピークも示す可能性があるが、本明細書における目的で、そのような二次溶融ピークは単一の融点として一緒に考慮し、それらのピークの中の最も高いピーク(本明細書に記述する如きベースラインに比べて)を当該プロピレンが基になった重合体が示す融点であると見なす。
【0058】
前記プロピレンが基になった重合体が示す融点(DSCで測定)は約100℃に等しいか或はそれ以下であり得、それには約90℃未満、約80℃未満および約75℃に等しいか或はそれ以下が含まれ、それには約25℃から約80℃、約25℃から約75℃および約30℃から約65℃の範囲が含まれる。
【0059】
当該プロピレンが基になった重合体が示す融解熱および溶融温度を測定する目的で示差走査熱量測定(DSC)手順を用いることができる。この方法は下記の通りである:重合体を約0.5グラム計り取った後、「DSC鋳型」およびマイラー(Mylar)を裏紙として用いて約140℃−150℃でプレスして厚みを約15−20ミル(約381−508ミクロン)にする。そのプレスしたパッドを空気中に吊るす(マイラーを取り除かないで)ことで周囲温度になるまで冷却する。そのプレスしたパッドにアニーリングを室温(約23−25℃)で約8日間受けさせる。その期間が終了した時点で前記プレスしたパッドから約15−20mgのディスクをパンチダイスを用いて取り出した後、10ミクロリットルのアルミニウム製サンプル用鍋に入れる。そのサンプルを示差走査熱量計(Perkin Elmer Pyris 1 Thermal Analysis System)に入れて、約−100℃に冷却する。そのサンプルを約10℃/分で加熱することで約165℃の最終温度に到達させる。そのサンプルが示す溶融ピークの下の面積として記録した熱出力が融解熱の尺度であり、それを重合体1グラム当たりのジュールとして表すことができかつそれをPerkin Elmer Systemを用いて自動的に計算する。融点をベースライン測定値を基準にして当該サンプルが示す溶融範囲内で最大の熱吸収が起こる温度として記録する、と言うのは、重合体が示す熱容量は温度の関数として高くなるからである。
【0060】
前記プロピレンが基になった重合体を13C NMRで測定した時にそれが示す3プロピレン単位のトリアド立体規則性は約75%以上、約80%以上、約82%以上、約85%以上または約90%以上であり得る。1つの態様におけるトリアド立体規則性は約50から約99%、約60から約99%、約75から約99%、約80から約99%であり得、他の態様におけるそれは約60から約97%であり得る。トリアド立体規則性は当該技術分野で良く知られていて、米国特許出願公開番号2004/0236042(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている方法を用いて測定可能
である。
【0061】
プロピレンが基になった弾性重合体には、オレフィン含有量、ジエン含有量または両方が異なる2種類のプロピレンが基になった重合体の混合物が含まれ得る。
【0062】
本明細書の上または他の場所に示す1つ以上の態様におけるプロピレンが基になった重合体には、立体規則的プロピレン生長反応中にランダムに分布した不規則性を有する重合体をもたらすランダム重合方法によって生じさせたプロピレンが基になった弾性重合体が含まれ得る。それは、同じ重合体鎖の構成部分を個別かつ逐次的に重合させるブロック共重合体とは対照的である。
【0063】
プロピレンが基になった重合体には、また、WO 02/36651(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に示されている手順に従って生じさせた共重合体も含まれ得る。同様に、プロピレンが基になった重合体には、WO 03/040201、WO 03/040202、WO 03/040095、WO 03/040201、WO 03/040233および/またはWO 03/040442(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れら)に記述されている重合体に一致した重合体も含まれ得る。加うるに、プロピレンが基になった重合体には、EP 1 233 191および米国特許第6,525,157号に記述されている重合体に一致した重合体ばかりでなく米国特許第6,770,713号および米国特許出願公開2005/215964(これらは全部引用することによって本明細書に組み入れら)に記述されている適切なプロピレンホモおよび共重合体に一致した重合体も含まれ得る。プロピレンが基になった重合体には、また、EP 1 614 699またはEP 1 017 729(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れら)に記述されている重合体に一致した1種以上の重合体も含まれ得る。
【0064】
グラフト化(官能化)バックボーン
1つ以上の態様では、プロピレンが基になった重合体にグラフト化(即ち「官能化」)を1種以上のグラフト化用単量体を用いて受けさせてもよい。本明細書で用いる如き用語「グラフト化」は、プロピレンが基になった重合体の重合体鎖にグラフト化用単量体を共有結合させることを示す。
【0065】
そのようなグラフト化用単量体は、少なくとも1種のエチレン系不飽和カルボン酸もしくは酸誘導体、例えばとりわけ酸無水物、エステル、塩、アミド、イミドおよびアクリレートなどであるか或はそれらを包含し得る。例示単量体には、これらに限定するものでないが、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水4−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水ビシクロ(2,2,2)オクテン−2,3−ジカルボン酸、無水1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸、2−オキサ−1,3−ジケトスピロ(4,4)ノネン、無水ビシクロ(2,2,1)ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、マレオピマル酸(Maleopimaric acid)、無水テトラヒドロフタル酸、無水ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、無水ナド酸、無水メチルナド酸、無水ヒム酸(himic anhydride)、無水メチルヒム酸および無水5−メチルビシクロ(2,2,1)ヘプテン−2,3−ジカルボン酸が含まれる。他の適切なグラフト化用単量体には、アクリル酸メチルおよびアクリル酸高級アルキル、メタアクリル酸メチルおよびメタアクリル酸高級アルキル、アクリル酸、メタアクリル酸、メタアクリル酸ヒドロキシメチル、メタアクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタアクリル酸高級ヒドロキシアルキルおよびメタアクリル酸グリシジルが含まれる。無水マレイン酸が好適なグラフト化用単量体である。
【0066】
1つ以上の態様におけるプロピレンが基になったグラフト化重合体は、エチレン系不飽和カルボン酸もしくは酸誘導体を約0.5から約10重量%含有して成り、それには約0.5から約6重量%、約0.5から約3重量%、他の態様では約1から約6重量%および約1から約3重量%が含まれる。グラフト用単量体が無水マレイン酸の場合、グラフト化重合体中の無水マレイン酸濃度を約1から約6重量%にしてもよく、それには最低限としての約0.5重量%または約1.5重量%が含まれる。
【0067】
スチレンおよびこれの誘導体、例えばパラメチルスチレンまたは他の高級アルキル置換スチレン、例えばt−ブチルスチレンなどを電荷移動剤としてグラフト化用単量体の存在下で用いることで鎖切断を抑制してもよい。それによってベータ切断反応が更に最小限になりかつ分子量がより高いグラフト化重合体が生じ得る(MFR=1.5)。
【0068】
プロピレンが基になったグラフト化重合体の製造
プロピレンが基になったグラフト化重合体の製造は通常の技術を用いて実施可能である。例えば、グラフト化重合体を溶液中、流動床反応槽内または溶融グラフト化で生じさせることができる。グラフト化重合体の調製は溶融混合をせん断を与える反応槽、例えば押出し加工機反応槽内で起こさせることで実施可能である。1軸または2軸押出し加工機反応槽、例えば互いに噛み合う同方向回転押出し加工機または噛み合わない異方向回転押出し加工機などばかりでなくまたコニーダー、例えばBussが販売しているそれらなどがその目的で用いるに有用である。
【0069】
グラフト化重合体の調製は、プロピレンが基になった未グラフト化重合体とフリーラジカルを発生する触媒、例えば過酸化物開始剤などをグラフト化用単量体の存在下で溶融混合することで実施可能である。グラフト化反応に適切な1つの順序は、プロピレンが基になった重合体を溶融させ、グラフト化用単量体を添加して分散させ、過酸化物を導入しそして未反応の単量体および過酸化物の分解の結果として生じた副生成物を排出させることを包含する。他の順序は、単量体を供給しそして過酸化物を溶媒に前以て溶解させておくことを包含し得る。
【0070】
例示過酸化物開始剤には、これらに限定するものでないが、とりわけジアシルパーオキサイド、例えばベンゾイルパーオキサイドなど、パーオキシエステル、例えば過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル、O,O−t−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネートなど、パーオキシケタール、例えば吉草酸n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)など、およびジアルキルパーオキサイド、例えば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル−(2))ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド(DTBP)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、3,3,5,7,7−ペンタメチル1,2,4−トリオキセパンおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0071】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂
本明細書で用いる如き用語「ポリオレフィン系熱可塑性樹脂」は、「ゴム」ではなくかつ70℃以上の融点を示す重合体もしくは重合体混合物である材料のいずれかを指し、当業者はそれを実際に熱可塑性プラスチック、例えば熱にさらされると柔らかくなりそして室温に冷却すると元の状態に戻る重合体であると見なす。そのようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂は1種以上のポリオレフィンを含有している可能性があり、それにはポリオレフィンホモ重合体およびポリオレフィン共重合体が含まれる。そうでないと述べる場合を除き、用語「共重合体」は、2種以上の単量体から生じさせた重合体(三元重合体、四元
重合体などを包含)を意味し、そして用語「重合体」は、1種以上の様々な単量体に由来する繰り返し単位を有する炭素含有化合物のいずれかを指す。
【0072】
例示ポリオレフィンの製造はモノオレフィン単量体を用いて実施可能であり、それには、これらに限定するものでないが、炭素原子数が2から7の単量体、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、それらの混合物など、およびそれらと(メタ)アクリレートおよび/または酢酸ビニルの共重合体が含まれる。そのようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂成分は加硫も架橋も受けていない。
【0073】
そのようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂はポリプロピレンを含有していてもよい。本明細書で用いる如き用語「ポリプロピレン」は、幅広い意味で、当業者が「ポリプロピレン」であると見なす重合体のいずれかを意味し、それにはプロピレンのホモ、耐衝撃性およびランダム共重合体が含まれる。本明細書に記述する組成物で用いるポリプロピレンは、約110℃以上の融点を示し、プロピレン単位を少なくとも90重量%含有しかつ前記単位のイソタクティック配列を含有する。そのポリプロピレンはまたアタクティック配列またはシンジオタクテック配列または両方を含有している可能性もある。そのポリプロピレンはまた本質的にシンジオタクテックの配列を含有している可能性もあり、その結果として、そのポリプロピレンの融点は約110℃以上である。そのポリプロピレンは排他的にプロピレン単量体に由来する(即ちプロピレン単位のみを有する)か或は主にプロピレン(プロピレンを80%以上)に由来し得、その残りはオレフィン、例えばエチレンおよび/またはC−C10α−オレフィンなどに由来し得る。特定のポリプロピレンは高いMFR(例えば約10または約15または約20g/10分の低い値から約25または約30g/10分の高い値を有する)を示す。他はより低いMFRを示し、例えば「分別」ポリプロピレンが示すMFRは約1.0未満である。高いMFRを示すポリプロピレンは加工またはコンパウンド化が容易であることで有用であり得る。
【0074】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂はイソタクティックポリプロピレンであってもよいか或はそれを包含し得る。そのようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂は、DSCで測定した時に約105℃以上の溶融温度を示す1種以上の結晶性プロピレンホモ重合体もしくはプロピレン共重合体を含有している可能性がある。プロピレンの典型的な共重合体には、これらに限定するものでないが、プロピレンの三元重合体、プロピレンの耐衝撃性共重合体、ランダムポリプロピレンおよびこれらの混合物が含まれる。共重合用単量体の炭素原子数は2または炭素原子数は4から12であってもよく、それは例えばエチレンなどであってもよい。そのようなポリオレフィン系熱可塑性樹脂およびそれの製造方法が米国特許第6,342,565号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0075】
本明細書で用いる如き用語「ランダムポリプロピレン」は、幅広い意味で、共重合用α−オレフィン単量体の量が約9重量%以下、例えば約2重量%から8重量%のプロピレン共重合体を意味する。共重合用α−オレフィンの炭素原子数は2または炭素原子数は4から12であってもよい。
【0076】
ランダムポリプロピレンをASTM D790Aに従って測定した時にそれが示す1%割線係数は約100kPsiから約200kPsiであり得る。ASTM D790Aに従って測定した時の1%割線係数は約140kPsiから170kPsiであってもよく、それには約140kPsiから160kPsi、またはASTM D790Aに従って測定した時の約100、約110または約125kPsiの低い値から約145、約160または約175kPsiの高い値が含まれる。
【0077】
ランダムポリプロピレンをASTM D79に従って測定した時にそれが示す密度は約0.85から約0.95g/cmであり得、それにはASTM D792に従って測定した時の約0.89g/cmから約0.92g/cmの密度が含まれるか、或はそれは約0.85、約0.87または約0.89g/cmの低い値から約0.90、約0.91、約0.92g/cmの高い値を有する。
【0078】
追加的エラストマー成分
ポリプロピレンが基になった弾性重合体組成物に場合により1種以上の追加的エラストマー成分を含有させることも可能である。そのような追加的エラストマー成分は1種以上のエチレン−プロピレン共重合体(EP)であってもよいか或はそれを包含し得る。そのようなエチレン−プロピレン重合体(EP)は非結晶性、例えばアタクティックまたは非晶質などであるが、そのEPは結晶性であってもよい(「半結晶性」を包含)。EPが示す結晶化度はエチレンに由来する可能性があり、それは公開された数多くの方法、手順および技術を用いて測定可能である。EPが示す結晶化度は、EPを当該組成物から除去した後に残存するプロピレンが基になった重合体が示す結晶化度を測定することで、プロピレンが基になった重合体が示す結晶化度から区別可能である。そのようにして測定する結晶化度に通常はポリエチレンが示す結晶化度を用いた較正を受けさせ、それを単量体含有量と関連付ける。そのような場合には、結晶化度パーセントをポリエチレンがし目の結晶化度のパーセントとして測定し、このようにしてエチレンに由来する元々の結晶化度を確かめる。
【0079】
1つ以上の態様におけるEPは、1種以上の任意のポリエンを含有していてもよく、それには特にジエンが含まれ、従って、そのようなEPはエチレン−プロピレン−ジエン(通常「EPDM」と呼ぶ)であり得る。その任意のポリエンは、不飽和結合を少なくとも2個有していて不飽和結合の中の少なくとも1個が既に重合体の中に組み込まれている炭化水素構造物のいずれかであると見なす。2番目の結合が重合中にある程度の役割を果たすことで長鎖分枝が生じる可能性があるが、好適には、それは重合後工程中に後で硬化または加硫を受ける適切な不飽和結合を少なくともある程度与えるものである。EPもしくはEPDM共重合体の例には、ExxonMobil Chemicalsから商標名VISTALONの下で商業的に入手可能なV722、V3708P、MDV 91−9、V878が含まれる。いくつかの商業的EPDMをDOWから商標名Nordel IPおよびMGグレードの下で入手することができる。他のゴム成分(例えばEPDM、例えばVISTALON 3666など)には添加剤油が入っており、それは当該ゴム成分を熱可塑性プラスチックと一緒にする前に前以て混合されたものである。使用されている種類の添加剤油は、個々のゴム成分と一緒に通常用いられる添加剤油である。
【0080】
任意のポリエンの例には、これらに限定するものでないが、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン(例えば1,4−ヘキサジエン)、ヘプタジエン(例えば1,6−ヘプタジエン)、オクタジエン(例えば1,7−オクタジエン)、ノナジエン(例えば1,8−ノナジエン)、デカジエン(例えば1,9−デカジエン)、ウンデカジエン(例えば1,10−ウンデカジエン)、ドデカジエン(例えば1,11−ドデカジエン)、トリデカジエン(例えば1,12−トリデカジエン)、テトラデカジエン(例えば1,13−テトラデカジエン)、ペンタデカジエン、ヘキサデカジエン、ヘプタデカジエン、オクタデカジエン、ノナデカジエン、イコサジエン、ヘネイコサジエン、ドコサジエン、トリコサジエン、テトラコサジエン、ペンタコサジエン、ヘキサコサジエン、ヘプタコサジエン、オクタコサジエン、ノナコサジエン、トリアコンタジエン、および分子量(Mw)が約1000g/モル未満のポリブタジエンが含まれる。非環式直鎖ジエンの例には、これらに限定するものでないが、1,4−ヘキサジエンおよび1,6−オクタジエンが含まれる。非環式分枝鎖ジエンの例には、これらに限定するものでないが、5−メチル−1,4−ヘキサ
ジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエンおよび3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンが含まれる。脂環式単環ジエンの例には、これらに限定するものでないが、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンおよび1,7−シクロドデカジエンが含まれる。脂環式多環縮合および橋状環ジエンの例には、これらに限定するものでないが、テトラヒドロインデン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ(2,2,1)ヘプタ−2,5−ジエン、およびアルケニル−、アルキリデン−、シクロアルケニル−およびシクロアルキリエンノルボルネン[例えば5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンを包含]が含まれる。シクロアルケニル置換アルケンの例には、これらに限定するものでないが、ビニルシクロヘキセン、アリルシクロヘキセン、ビニルシクロオクテン、4−ビニルシクロヘキセン、アリルシクロデセン、ビニルシクロドデセンおよびテトラシクロドデカジエンが含まれる。
【0081】
別の態様における追加的エラストマー成分には、これらに限定するものでないが、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、スチレン/イソプレンゴム(SIR)、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム(SIBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水添スチレンブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−イソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)、水添スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレン−エチレンブロック共重合体(SEBE)、スチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体(SES)、エチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(EEB)、エチレン−エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(水添BR−SBRブロック共重合体)、スチレン−エチレン/ブチレン−エチレンブロック共重合体(SEBE)、エチレン−エチレン/ブチレン−エチレンブロック共重合体(EEBE)、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、イソプレンブタジエンゴム(IBR)、ポリスルフィド、ニトリルゴム、プロピレンオキサイド重合体、星形分枝ブチルゴムおよびハロゲン化星形分枝ブチルゴム、臭化ブチルゴム、塩化ブチルゴム、星形分枝ポリイソブチレンゴム、星形分枝臭化ブチル(ポリイソブチレン/イソプレン共重合体)ゴム、ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)、適切なイソブチレン/メチルスチレン共重合体、例えばイソブチレン/メタ−ブロモメチルスチレン、イソブチレン/ブロモメチルスチレン、イソブチレン/クロロメチルスチレン、ハロゲン化イソブチレンシクロペンタジエンおよびイソブチレン/クロロメチルスチレンおよびこれらの混合物が含まれ得る。追加的エラストマー成分には、水添スチレン−ブタジエンスチレンブロック共重合体(SEBS)および水添スチレンイソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が含まれる。
【0082】
追加的エラストマー成分はまた天然ゴムであってもよいか或はそれを包含し得る。天然ゴムはSubramaniamのRUBBER TECHNOLOGY 179−208(1995)に詳述されている。適切な天然ゴムはマレーシアゴム、例えばSMR CV、SMR 5、SMR 10、SMR 20およびSMR 50およびこれらの混合物などから成る群より選択可能であり、そのような天然ゴムが約100℃で示すムーニー粘度(ML 1+4)は約30から120であり、それには約40から65が含まれる。本明細書に示すムーニー粘度試験はASTM D−1646に従う。
【0083】
追加的エラストマー成分はまた1種以上の合成ゴムであってもよいか或はそれを包含し得る。適切な市販合成ゴムには、NATSYN(商標)(Goodyear Chemical Company)およびBUDENE(商標)1207またはBR 1207(
Goodyear Chemical Company)が含まれる。適切なゴムは高シス−ポリブタジエン(シス−BR)である。「シス−ポリブタジエン」または「高シス−ポリブタジエン」は、1,4−シスポリブタジエンの使用を意味し、ここで、シス成分の量は少なくとも約95%である。用いる商業的高シス−ポリブタジエン製品の一例は組成物BUDENE(商標)1207である。
【0084】
そのような追加的エラストマー成分を約50phr以下、約40phr以下または約30phr以下の量で存在させてもよい。1つ以上の態様では、そのような追加的ゴム成分の量に約1、約7または約20phrの低い値から約25、約35または約50phrの高い値を持たせてもよい。
【0085】
添加剤油
当該エラストマー組成物に場合により1種以上の添加剤油を含有させることも可能である。用語「添加剤油」には「加工油」および「エキステンダー油」の両方が含まれる。例えば、「添加剤油」には、炭化水素油および可塑剤、例えば有機エステルおよび合成可塑剤などが含まれ得る。数多くの添加剤油は石油溜分に由来し、それらがパラフィン系、ナフテン系または芳香族油の種類に入るか否かに応じて、それらを個々のASTM表示で示す。他の種類の添加剤油には、鉱油、アルファオレフィン系合成油、例えば液状ポリブチレン、例えば商標Parapol(商標)の下で販売されている製品などが含まれる。また、石油が基になった油以外の添加剤油、例えば石炭タールおよびパインタールに由来する油などばかりでなく合成油、例えばポリオレフィン材料(例えばSpectaSyn(商標)およびElevast(商標)、両方ともExxonMobil Chemical Companyが供給)などを用いることも可能である。
【0086】
個々のゴムと一緒にどの種類の油を用いるべきかばかりでなく油の適切な量(分量)は当該技術分野で良く知られている。そのような添加剤油をゴムと熱可塑性成分の混合物100重量部当たり約5から約300重量部の量で存在させてもよい。また、添加剤油の量をゴム成分100重量部当たり約30から250重量部または約70から200重量部として表すことも可能である。別法として、添加剤油の分量を全ゴム含有量を基準にすることも可能であり、それをゴム総量に対する添加剤油の重量比として定義しそしてその量は特定の場合には加工油とエキステンダー油を一緒にした量であってもよい。その比率を例えば約0から約4.0/1の範囲にしてもよい。また、下記の下限と上限のいずれかを有する他の範囲を用いることも可能である:約0.1/1または約0.6/1または約0.8/1または約1.0/1または約1.2/1または約1.5/1または約1.8/1または約2.0/1または約2.5/1の下限および約4.0/1または約3.8/1または約3.5/1または約3.2/1または約3.0/1または約2.8/1の上限(これをこの上に示した下限のいずれかと組み合わせてもよい)。添加剤油をより多い量で用いることも可能ではあるが、当該組成物の物理的強度の低下または油浸出または両方の欠点がしばしば生じる。
【0087】
ポリブテン油が適切である。典型的なポリブテン油が示すMnは15,000未満であり、それには炭素原子数が3から8、より好適には炭素原子数が4から6のオレフィン由来単位を有するホモ重合体または共重合体が含まれる。そのポリブテンはCラフィネートのホモ重合体または共重合体であってもよい。「ポリブテン」重合体と呼ばれる典型的な低分子量重合体が例えばSYNTHETIC LUBRICANTS AND HIGH−PERFORMANCE FUNCTIONAL FLUIDS 357−392(Leslie R.RudnickおよびRonald L.Shubkin編集、Marcel Dekker 1999)などに記述されている(本明細書では以降「ポリブテン加工油」または「ポリブテン」)。
【0088】
そのようなポリブテン加工油は、少なくともイソブチレン由来単位および場合により1−ブテン由来単位および/または2−ブテン由来単位を有する共重合体であり得る。そのポリブテンは、イソブチレンの場合にはホモ重合体であり得るか、或はイソブチレンと1−ブテンもしくは2−ブテンの共重合体、またはイソブチレンと1−ブテンと2−ブテンの三元重合体であり得、その場合、イソブチレン由来単位は当該共重合体の約40から100重量%であり、1−ブテン由来単位は当該共重合体の約0から40重量%でありそして2−ブテン由来単位は当該共重合体の約0から40重量%である。そのポリブテンは共重合体または三元重合体であってもよく、それに存在するイソブチレン由来単位は当該重合体の約40から99重量%であり、1−ブテン由来単位は当該共重合体の約2から40重量%でありそして2−ブテン由来単位は当該共重合体の約0から30重量%であり。また、そのポリブテンは3種類の単位を有する三元重合体であってもよく、その中に存在するイソブチレン由来単位は当該重合体の約40から96重量%であり、1−ブテン由来単位は当該共重合体の約2から40重量%でありそして2−ブテン由来単位は当該共重合体の約2から20重量%である。別の適切なポリブテンはイソブチレンおよび1−ブテンのホモ重合体もしくは共重合体であり、その中に存在するイソブチレン由来単位は当該ホモ重合体もしくは共重合体の約65から100重量%でありそして1−ブテン由来単位は当該共重合体の約0から35重量%である。適切な加工油の商業的例には、PARAPOL(商標)シリーズの加工油またはポリブテングレードまたはSoltex Synthetic OilsのIndopol(商標)およびBP/InnoveneのLubricantsが含まれる。
【0089】
そのような加工油1種または2種以上を約1から60phr存在させてもよく、それには約2から40phr、約4から35phrおよび更に別の態様では約5から30phrが含まれる。
【0090】
架橋剤/共作用剤
プロピレンが基になった弾性重合体組成物に場合により1種以上の架橋剤(また共作用剤とも呼ぶ)を含有させることも可能である。適切な共作用剤には、液状および金属の多官能アクリル酸塩およびメタアクリル酸塩、官能化ポリブタジエン樹脂、官能化シアヌレートおよびイソシアヌル酸アリルが含まれ得る。より詳細には、適切な共作用剤には、これらに限定するものでないが、多官能ビニルもしくはアリル化合物、例えばシアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジプロパルギル、シアヌル酸ジプロパルギルモノアリル、アゾビスイソブチロニトリルなどおよびこれらの組み合わせが含まれ得る。市販の架橋剤/共作用剤をSartomerから購入することができる。
【0091】
プロピレンが基になった弾性重合体組成物に含有させる共作用剤の量は重合体組成物の総重量を基準にして約0.1重量%以上であってもよい。共作用剤1種または2種以上の量を重合体組成物の総重量を基準にして約0.1重量%から約15重量%にしてもよい。1つ以上の態様では、共作用剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.1重量%、約1.5重量%または約3.0重量%の低い値から約4.0重量%、約7.0重量%または約15重量%の高い値にしてもよい。1つ以上の態様では、共作用剤1種または2種以上の量に重合体組成物の総重量を基準にして約2.0重量%、約3.0重量%または約5.0重量%の低い値から約7.0重量%、約9.5重量%または約12.5重量%の高い値を持たせてもよい。
【0092】
抗酸化剤
プロピレンが基になった弾性重合体組成物に場合により1種以上の抗酸化剤を含有させることも可能である。適切な抗酸化剤には、Ciba Geigy Corp.が製造しているヒンダードフェノール、ホスファイト、ヒンダードアミン、Irgafos 168、Irganox 1010、Irganox 3790、Irganox B225、Irganox 1035、Irgafos 126、Irgastab 410、Chimassorb 944などが含まれ得る。それらを当該エラストマー組成物を成形もしくは加工している時に起こる劣化に対して保護しそして/または鎖分解の度合の制御をより良好にする目的で添加してもよく、このことは、特に、プロピレンが基になった弾性重合体組成物を電子ビームにさらす場合に有用であり得る。
【0093】
プロピレンが基になったエラストマー組成物に含有させる抗酸化剤の量は混合物の総重量を基準にして少なくとも約0.1重量%である。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.1重量%から約5重量%にしてもよい。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量に混合物の総重量を基準にして約0.1重量%、約0.2重量%または約0.3重量%の低い値から約1重量%、約2.5重量%または約5重量%の高い値を持たせてもよい。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.1重量%にする。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.2重量%にする。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.3重量%にする。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.4重量%にする。1つ以上の態様では、抗酸化剤1種または2種以上の量を混合物の総重量を基準にして約0.5重量%にする。
【0094】
混合および添加剤
1つ以上の態様では、個々の材料および成分、例えばプロピレンが基になった重合体および場合により1種以上のポリオレフィン系熱可塑性樹脂、追加的エラストマー成分、添加剤油、共作用剤および抗酸化剤を溶融混合で混合することで混合物を生じさせる。せん断および混合を生じさせる能力を有する機械の例には、混練りもしくは混合要素に加えて1個以上の混合用チップまたはフライトが備わっている押出し加工機、1個以上のスクリューが備わっている押出し加工機、同方向もしくは異方向回転型の押出し加工機、バンバリーミキサー、ファレル連続ミキサーおよびBussニーダーが含まれる。この上に示した機械の中の1つを選択することに加えて混練りもしくは混合要素、スクリューのデザインおよびスクリューの速度(<3000RPM)を選択することで、必要な混合、温度および滞留時間の種類および強さを達成することができる。
【0095】
1つ以上の態様では、そのような混合物にプロピレンが基になった重合体を約60、約70または約75重量%の低い値から約80、約90または約95重量%の高い値を有する量で含有させてもよい。1つ以上の態様では、そのような混合物に1種以上のポリオレフィン系熱可塑性成分を約5、約10または約20重量%の低い値から約25、約30または約75重量%の高い値を有する量で含有させてもよい。1つ以上の態様では、そのような混合物に追加的エラストマー成分を約5、約10または約15重量%の低い値から約20、約35または約50重量%の高い値の範囲の量で含有させてもよい。
【0096】
1つ以上の態様において、前記共作用剤、抗酸化剤および/または他の添加剤を導入する時期は他の重合体成分と同じ時期であってもよいか或は押出し加工機またはBussニーダーを用いる場合にはそれらを後に下流で導入してもよいか或は時間的に少し後であってもよい。その記述した共作用剤および抗酸化剤に加えて、他の添加剤には、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、紫外線安定剤、発泡剤および加工助剤が含まれ得る。そのような添加剤を高純度形態またはマスターバッチとして当該混合物に添加してもよい。
【0097】
硬化生成物
成形品(例えば押出し加工品)は繊維、ヤーンまたはフィルムであり得、それらに架橋
もしくは硬化を少なくともある程度受けさせてもよい。架橋によって耐熱性のある製品がもたらされ、それは本製品、例えば繊維またはヤーンなどが高温にさらされると思われる時に有用である。本明細書で用いる如き用語「耐熱」は、重合体組成物または重合体組成物から生じさせた製品が本明細書に記述する高温熱処理および染色試験に合格する能力を指す。
【0098】
本明細書で用いる用語「硬化」、「架橋」、「少なくともある程度硬化」および「少なくともある程度架橋」は、不溶物の量が当該組成物の総重量を基準にして少なくとも2重量%である組成物を指す。本明細書に記述するポリプロピレンが基になったエラストマー組成物に硬化をキシレンを溶媒として用いたソックスレー抽出によって不溶物の量が少なくとも約3重量%または少なくとも約5重量%または少なくとも約10重量%または少なくとも約20重量%または少なくとも約35重量%または少なくとも約45重量%または少なくとも約65重量%または少なくとも約75重量%または少なくとも約85重量%または約95重量%未満になるような度合まで受けさせてもよい。
【0099】
特別な態様では、本製品の成形または押出し加工を行った後に架橋を電子ビームまたは単に「eビーム」で達成する。適切な電子ビーム装置をE−BEAM Service,Inc.から入手することができる。特別な態様では、電子を約100kGy以下の線量で用いて暴露を複数回実施する。その源は如何なる電子ビーム発生装置であってもよく、それを所望線量を供給し得るパワー出力になるように約150Kevから約12メガ−エレクトロンボルト(MeV)の範囲内で操作する。電子電圧を適切なレベルに調整してもよく、そのような適切なレベルは例えば約100,000、約300,000、約1,000,000、約2,000,000、約3,000,000、約6,000,000であり得る。重合体および重合体製品に照射を受けさせるに適した幅広い範囲の装置を入手することができる。
【0100】
有効な照射を一般的には約10kGy(Kilogray)(1Mrad(メガラド))から約350kGy(35Mrad)の線量で実施するが、それには約20から約350kGy(2から35Mrad)または約30から約250kGy(3から25Mrad)または約40から約200kGy(4から20Mrad)または約40から約80kGy(4から8Mrad)が含まれる。この態様の1つの面では照射を室温で実施する。
【0101】
別の態様では、電子ビームによる硬化に加えて1種以上の化学作用剤への接触を用いて架橋を達成することができる。例示化学作用剤には、これらに限定するものでないが、過酸化物および他のフリーラジカル発生剤、硫黄化合物、フェノール樹脂および水素化ケイ素が含まれる。この態様の特別な面における架橋剤は流体であるか或は流体に変化し、その結果として、それを本製品に均一に塗布することができる。流動性架橋剤には、気体(例えば二塩化硫黄)、液体(例えばAkzo Nobelから入手可能なTrigonox C)、溶液(例えばジクミルパーオキサイドがアセトンに入っている溶液)またはそれの懸濁液(例えばジクミルパーオキサイドが水に入っている懸濁液もしくは乳液、またはパーオキサイドが基になった酸化還元系)である化合物が含まれる。
【0102】
例示過酸化物には、これらに限定するものでないが、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、過安息香酸t−ブチル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、過オクタン酸t−ブチル、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ラウリルパーオキサイド、過酢酸t−ブチルが含まれる。過酸化物である硬化剤を用いる場合、それを一般的には有機過酸化物から選択する。有機過酸化物の例には、これらに限定するものでないが、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5ジメチル
2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、吉草酸ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン−3およびこれらの混合物が含まれる。また、ジアリールパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ヒドロパーオキサイド、パーオキシケタールおよびこれらの混合物を用いることも可能である。
【0103】
1つ以上の態様では、ヒドロシリル化技術を用いて架橋を起こさせてもよい。
【0104】
1つ以上の態様では、酸素が制限されているか或は不活性な雰囲気下で架橋を起こさせてもよい。ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素、キセノンおよび/または真空を用いることで適切な雰囲気を生じさせることができる。
【0105】
化学作用剤または照射のいずれかを用いた架橋を架橋用触媒、例えば有機塩基、カルボン酸および有機金属化合物などで助長することも可能であり、そのような有機化合物には、有機チタン酸塩および鉛、コバルト、鉄、ニッケル、亜鉛および錫の錯体またはカルボン酸塩(例えばジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルトなど)が含まれる。
【0106】
プロピレンが基になった弾性重合体組成物の架橋を起こさせようとする時、電子ビームの使用に加えて、他の形態の放射線も適切である。電子ビームに加えて適切な形態の放射線には、これらに限定するものでないが、ガンマ放射線、x線、熱、光子、紫外線、可視光およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0107】
電子ビームへのヤーンの暴露は当該ヤーンをパッケージに巻き取る前(即ち紡績工程中)にか、当該ヤーンを縦編みする前か、当該ヤーンをパッケージに巻き取った後にか、或はそれらの任意組み合わせで達成可能である。当該ヤーンをパッケージに巻き取った後、単一のパッケージを電子ビームに暴露させてもよいか、或は複数のパッケージを同時に処理することも可能である。2個以上のパッケージを同時に処理する場合には、ヤーンのパッケージを輸送用箱の如き容器内に一緒に入れてもよい。
【0108】
ポリプロピレンが基になった弾性重合体組成物から生じさせるヤーンの製造は適切な溶融紡績方法のいずれかを用いて実施可能である。典型的には、そのようなプロピレンが基になった弾性重合体組成物を約220℃から約300℃の温度に加熱するが、それには約250℃から約300℃、約250℃から約280℃、約260℃から約275℃および約260℃から約270℃が含まれる。次に、その重合体組成物を毛細管に通して押出すことでフィラメントまたはヤーンを生じさせた後、それをパッケージに巻き取る。そのようなヤーンはフィラメントをいずれかの適切な数、例えば1から8本含有していてもよいが、それにはデニールが微細なヤーンの場合の1−約20または1−約10からデニールが大きいヤーンの場合の約80本以上のフィラメントが含まれる。典型的な衣服用布のヤーンのデニールは10から約300デニールであり得、それには約10、約20、約40、約70および約100から約300が含まれる。ヤーンのデニールは当該布の所望重量を基に選択可能である。プロピレンが基になった弾性エラストマーヤーンに有用な他のデニールには、約500または約1000から約2000または約3000デニールが含まれる。パーソナルケア/衛生用伸縮性製品の場合には、より重いデニールの繊維およびヤーンが有用である。
【0109】
ポリプロピレンが基になった弾性重合体組成物から生じさせるヤーンの加工条件の結果
として衣服用布に適するばかりでなく他の様々な最終使用、例えばパーソナルケア/衛生用の伸縮性製品(例えばおむつなど)などに適した弾性ヤーンがもたらされる。そのようなヤーンの1つの好ましい特性は破断伸びが高いことである。伸縮性/弾性を示す衣服用布の場合には典型的に弾性ヤーンにドラフトを当該ヤーンのデニールに応じて伸びが200%以上になるように受けさせる。ポリプロピレンが基になった弾性ヤーンが示す伸びは200%以上であり得、それには約200%から約800%以上が含まれ、それには約200%から約600%および約300%から約500%が含まれる。
【0110】
ポリプロピレンが基になった弾性ヤーンの別の好ましい特性は、破断応力を表すじん性であり、これをグラム/デニールで測定する。弾性ヤーンの場合、一般に、巻き取り速度を速くすると結果としてヤーンの配向度合が高くなりかつ伸びを犠牲にしてじん性が向上する。対照的に、いくつかの態様のプロピレンが基になった弾性ヤーンの場合、紡績速度を速くするとまた結果として当該ヤーンの伸びも向上する。適切な紡績速度には約400m/分以上が含まれ、それには約400m/分から約800m/分、約425m/分から約700m/分および約450m/分から約650m/分が含まれる。
【0111】
プロピレンが基になった弾性ヤーンの場合に前記ヤーンの特性の向上に寄与する紡績条件には、紡績速度を速くすることばかりでなくまた上述したように紡績前の温度を高くすることも含まれる。いくつかの態様の弾性ヤーンが示すじん性は約0.5から約1.5グラム/デニールであり得、200%伸び時の負荷力は約0.05から約0.35グラム/デニールであり得、200%伸び時の無負荷力は約0.007から約0.035グラム/デニールであり得る。
【0112】
巻き取る前のヤーンに仕上げ剤を塗布してもよい。そのような仕上げ剤は、当該技術分野で用いられている仕上げ剤のいずれであってもよく、例えばシリコーンが基になった仕上げ剤、炭化水素油、ステアリン酸塩またはこれらの組み合わせなどであってもよく、これらは典型的にスパンデックスで用いられている。
【0113】
プロピレンが基になった弾性ヤーンは特に環境にさらされる可能性があることで衣服用ヤーンとして用いるに有用である。ポリオレフィンの化学的組成は、他の弾性ヤーン、例えばスパンデックスなどとは異なり、塩素、オゾン、紫外線、NOなどに抵抗を示す。加うるに、そのようなヤーンを架橋させると、それらはまた熱にも抵抗を示すことで典型的な布加工温度に耐え得る。例えば、そのようなヤーンは、洗濯機による洗濯および乾燥温度(これは約55℃から約70℃に及び得る)ばかりでなく熱処理および他の布調製温度(これは約100℃から約195℃の如く高い可能性がある)で伸縮性を維持し得る。追加的布処理工程は、ポリプロピレンが基になった弾性ヤーンと組み合わせるヤーンに依存するであろう。それらには、精練、漂白、染色、熱処理およびこれらの任意組み合わせが含まれ得る。
【0114】
熱処理によって長い形態の弾性ヤーンを「整える」。これはヤーン自身に関してか或は弾性ヤーンを編みまたは織りで布にした場合の布に関して達成可能である。これはまた再デニール化としても知られていて、その場合、より高いデニールを有する伸縮性ヤーンにドラフトまたは引き伸ばしを受けさせてより低いデニールにした後、そのより低いデニールのヤーンを安定化させるに充分なほど高い温度に充分な時間加熱する。従って、熱処理は、その引き伸ばされた状態のヤーンが示す回復張力がほとんど解放されかつそのヤーンが新しい低い方のデニールで安定になるように当該ヤーンが分子レベルで永久的に変化することを意味する。
【0115】
いくつかの態様のヤーンは布に直接(裸のヤーンとして)使用可能であるか或は硬質ヤーンで被覆可能である。代表的な硬質ヤーンには、天然および合成繊維から作られたヤー
ンが含まれる。天然繊維は綿、絹または羊毛であってもよい。合成繊維はナイロン、ポリエステル、またはナイロンもしくはポリエステルと天然繊維の混合物であってもよい。
【0116】
「被覆」弾性繊維は、硬質ヤーンと一緒に撚るか或は混ぜ合わせることによって取り囲まれた繊維である。そのような硬質ヤーンで被覆することは弾性ヤーンを織りまたは編み工程中に摩耗から保護するに役立つ。そのような摩耗が起こると弾性繊維の破断が起こる可能性があり、その結果して工程の中断が起こりかつ好ましくなく布が不均一になってしまう。その上、被覆は弾性繊維が示す伸縮挙動を安定させるにも役立ち、その結果として、織り工程中に複合ヤーンの伸びを裸の弾性繊維を用いた時に可能なよりも均一に制御することが可能になる。複合ヤーンは多種存在し、それには、(a)弾性繊維を硬質ヤーンで一重に包み込んだ複合ヤーン、(b)弾性繊維を硬質ヤーンで二重に包み込んだ複合ヤーン、(c)弾性繊維をステープル繊維で連続的に被覆(即ちコア紡績)した後に巻き取り中に撚った複合ヤーン(d)エラストマーと硬質ヤーンをエアジェットで混ざり合わせて絡ませた複合ヤーン、および(e)エラストマー繊維と硬質ヤーンを一緒に撚った複合ヤーンが含まれる。最も幅広く用いられている複合ヤーンは綿/スパンデックスのコア紡績ヤーンである。「コア紡績ヤーン」は、分離可能なコアを紡績繊維鞘で取り囲むことから成る。コア紡績弾性ヤーンの製造は、スパンデックスフィラメントを紡績フレームの前部ドラフティングローラーに導入してそれをステープル繊維で被覆することで行われる。
【0117】
弾性ヤーン、例えばプロピレンが基になった弾性ヤーンを布に含めることで伸縮性を示す布(または布を含有する衣類)を生じさせる。その弾性ヤーンを通常は200%以上(約200%から約600%またはそれ以上を包含)のドラフト(または伸び)の張力下で編むか或は織ることで布を生じさせる。当該ヤーンが示す破断伸びが約200%未満であると、それはそのような目的には適さないであろう。
【0118】
以下の実施例で本開示の特徴および利点をより詳細に示すが、本実施例は例示の目的で示すものであり、決して本開示を限定するとして解釈されるべきでない。
【0119】
試験方法
伸縮性繊維が示す強度および伸縮性の測定をASTM D 2731−72の一般的方法に従って実施した。測定の各々でゲージ長が2インチ(5cm)の糸を3本用いかつ0−300%の伸びサイクルを用いた。サンプルに1分当たり50センチメートルの一定した伸び速度で5回サイクルを受けさせた。負荷力(TP2)、即ち初期引き伸ばし中にスパンデックスにかかる応力の測定を1番目のサイクルで200%伸ばした状態で測定し、それをグラム/デニールとして報告する。無負荷力(TM2)は、5回目の無負荷サイクルで200%伸ばした時の応力であり、これもまたグラム/デニールで報告する。破断時の伸びパーセント(ELO)およびじん性(TEN)を6回目の引き伸ばしサイクル時に測定した。また、0−300%の伸び/弛緩サイクルを5回受けさせたサンプルが示す残留歪みパーセントも測定した。残留歪みパーセント、即ち残留歪み%を下記のように計算する:
残留歪み%=100(L−L)/L
ここで、LoおよびLfはそれぞれ伸び/弛緩サイクルを5回受けさせる前および後に張力をかけないで真っすぐに保持した時のフィラメント(ヤーン)の長さである。
【0120】
加うるに、0−300%引き伸ばしサイクルの代わりに、140デニールの伸縮性糸に固定した張力、例えば15グラムの力に引き伸ばすサイクルを受けさせた。負荷力、無負荷力および残留歪み%を包含する応力−歪み特性を測定して記録した。
【0121】
別法として、伸縮性繊維が示す引張り特性の測定をTextechnoグリップが備わっているInstron引張り試験機を用いて1番目のサイクルで破断点に至るまで実施
した。200%引き伸ばした時の負荷力(TT2)、破断伸び(TEL)および破断じん性(TTN)を記録した。
【実施例】
【0122】
実施例
以下の実施例では、良好な機械的強度を有する高伸縮性ヤーンの製造を紡績装置を用いて実施した。ポリオレフィン樹脂を重合体チップの形態で押出し加工機に送り込んだ。その樹脂は押出し加工機の中で完全に溶融した後、加熱されている絶縁トランスファーラインの中を計量用ポンプ(これは重合体を正確な速度で計量する)に向かって移動してスピンパック(spin pack)[これはスピンブロック(別名「スピンヘッド」)の中に装備されている]の中の紡糸口金に至る。前記計量用ポンプは絶縁されており、そしてポンプブロック(pump block)は電気で加熱されていてかつまた絶縁されていることで一定の温度を維持する。
【0123】
以下の実施例では、1軸押出し加工機を用いて溶融した重合体を2個の計量用ポンプに供給する。各計量用ポンプには入り口が1個と出口流れが4個備わっており、従って、全体で8個の重合体流れを同時に計量して8個の個々の紡糸口金に送る。前記スピンブロックの中には全体で4個のスピンパックが装備されていて、各スピンパックには個々の紡糸口金が2個およびスクリーンフィルターアセンブリが入っている。実際には、スピンパック1個当たりに如何なる組み合わせの紡糸口金も満足される様式で用いることができる。各紡糸口金には円形毛細管が1個入っているが、しかしながら、また、毛細管が複数備わっている紡糸口金を用いることでも連続ヤーンを生じさせることができる。
【0124】
紡糸口金の毛細管から押出された後のまだ溶融している状態の重合体を冷風で急冷することで固体状の繊維を生じさせた。以下の実施例では、ヤーン(特に高いdpfを示すヤーン)の完全な急冷が可能になりかつヤーンの均一性が最適になるように急冷用空気流プロファイルをいくらか制御することができるように2個の個別のクエンチゾーンを用いた。各々のクエンチゾーンにはブロアー(Q1、Q2)、気体流量の制御を可能にする手動制御ダンパーが備わっているダクトおよび繊維を効率良く均一に急冷することができるように空気流を導いて拡散させるためのクエンチスクリーン(S1、S2)が備わっていた。
【0125】
繊維を急冷して固化させた後、それらを次に2個の駆動ロールで取り上げそしてワインダーで巻き上げた。ロールの速度をヤーンの張力がヤーンをパッケージに巻き付けるに最適になりかつまた所望のヤーン特性進展が起こるように制御した。ロールと巻き取り速度の間の典型的な関係を表1に示す。この実施例では、仕上げ剤をヤーンに1番目と2番目のロールの間でロールアプリケーターを用いて塗布する。しかしながら、また、他の種類の仕上げ剤塗布装置、例えば計量仕上げ剤チップなどを用いることも可能である。
【0126】
実施例1−4
プロピレンが基になった弾性重合体樹脂、即ちExxonMobilからVistamaxx(商標)1100として商業的に入手可能な樹脂を以下の実施例で用いることで25、40、55および70Dの単フィラメントの伸縮性ヤーンを生じさせたが、それらは表1に示すように驚くべきほど高い伸びと優れたヤーン強度を示した(実施例1−4)。温度を全部℃で表す。その結果は、樹脂が非常に高い固有粘度および溶融粘度を示すことで一般にフィラメントヤーンに紡績するには適切でないと考えられていた点で直感に反しかつ驚くべき結果であった。この重合体の溶融および維持を極めて高い温度範囲で行うと、それを驚くべきほど優れた紡績持続性およびヤーン特性を有する連続フィラメントヤーンに押出し加工することができる。また、20から100そして恐らくはそれより高い広範囲のフィラメント当たりのデニール(dpf)で適切な特性を示す繊維を紡績すること
ができることも驚くべきことであった(一方で、スパンデックスヤーンが好ましい特性を維持するようにするには典型的に10dpf以下に制限される)。ジエンおよび架橋剤を含有させたヤーンに関しても同様な特性が期待される。
【0127】
【表1】

【0128】
実施例5−8
以下の実施例の調製を表2に示すように市販のプロピレンが基になったエラストマー樹
脂、即ちExxonMobilからVistamaxx(商標)2100として商業的に入手可能な樹脂を用いて実施した。ジエンおよび架橋剤を含有させたヤーンに関しても同様な特性が期待される。
【0129】
【表2】

【0130】
本開示の好適な態様であると現在考えている事項を記述してきたが、当業者は、それに関して本開示の精神から逸脱しない限り変更および修飾を行うことができることを認識すると思われ、本開示の真の範囲内に入る如きそのような変形および修飾形の全部を包含させることを意図する。
【0131】
本明細書では比率、濃度、量および他の数値データを範囲形式で表すことがあり得ることを注目すべきである。そのような範囲形式は便利さおよび簡潔さの目的で用いるものであり、従って、その範囲の限界として明確に示した数値を包含するばかりでなくまたその範囲内に含まれる数値および小領域の各々をあたかも明確に示す如く個々の数値または小領域の全部も包含するとして柔軟な様式で解釈されるべきであると理解されるべきである。例示として、「約0.1%から約5%」の濃度範囲は明確に示した約0.1重量%から約5重量%の濃度を包含するばかりでなくまたその示した範囲内に入る個々の濃度(例えば1%、2%、3%および4%)および小領域(例えば0.5%、1.1%、2.2%、3.3%および4.4%)も包含すると解釈されるべきである。用語“約”はその修飾を受けさせる数値1種または2種以上の±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±8%または±10%を包含し得る。加うるに、語句「約‘x’から‘y’」は「約‘x’から約‘y’」を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンが基になった弾性重合体組成物を含有するヤーンを含有して成る布もしくは衣類である製品であって、前記重合体組成物がプロピレンが基になった少なくとも1種の弾性重合体を含有して成りかつ前記ヤーンが示すドラフトが200%以上である製品。
【請求項2】
前記プロピレンが基になった弾性重合体がジエンを含有して成る請求項1記載の製品。
【請求項3】
前記プロピレンが基になった弾性重合体組成物が架橋剤を含有して成る請求項1記載の製品。
【請求項4】
前記プロピレンが基になった弾性重合体がプロピレンが基になった2種以上の弾性重合体の混合物を含んで成る請求項1記載の製品。
【請求項5】
前記ヤーンが多数のフィラメントを含有して成りかつその数が1から約80である請求項1記載の製品。
【請求項6】
前記ヤーンのデニールが約10から約300である請求項1記載の製品。
【請求項7】
前記ヤーンが架橋している請求項3記載の製品。
【請求項8】
前記ヤーンが示す伸びが200%から約600%である請求項1記載の製品。
【請求項9】
プロピレンが基になった弾性重合体ヤーンを含有する布を製造する方法であって、
(a)プロピレンが基になった弾性重合体組成物を準備し、
(b)前記プロピレンが基になった弾性重合体組成物を約220℃から約300℃の温度に加熱し、
(c)前記組成物を毛細管に通して押し出すことでヤーンを生じさせ、そして
(d)場合により前記ヤーンをパッケージに巻き取ってもよく、そして
(e)前記ヤーンを含有する布を調製する、
ことを含んで成る方法。
【請求項10】
前記巻き取りの速度を約400m/分以上にする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記巻き取りの速度を約425m/分以上にする請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記巻き取りの速度を約500m/分以上にする請求項9記載の方法。
【請求項13】
更に、
(f)前記ヤーンを架橋させる、
ことも含んで成る請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記架橋を前記ヤーンを電子ビームに暴露させることで起こさせる請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ヤーンを、前記パッケージに巻き取る前に、電子ビームに暴露させる請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記パッケージを電子ビームに単一のパッケージとしてか或は容器に入っている複数のパッケージとして暴露させる請求項13記載の方法。
【請求項17】
プロピレンが基になった弾性重合体ヤーンを含有する布を製造する方法であって、
(a)プロピレンが基になった弾性重合体組成物を準備し、
(b)前記プロピレンが基になった弾性重合体組成物を約220℃から約300℃の温度に加熱し、
(c)前記組成物を毛細管に通して押し出すことでヤーンを生じさせ、
(d)場合により前記ヤーンをパッケージに巻き取ってもよく、
(e)前記ヤーンを複数含有して成る縦糸を生じさせ、
(f)前記ヤーンを電子ビームに暴露させることで前記ヤーンを架橋させ、
(g)前記ヤーンをビームに取り上げ、そして
(h)布を縦編みする、
ことを含んで成る方法。

【公表番号】特表2013−515872(P2013−515872A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546044(P2012−546044)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060494
【国際公開番号】WO2011/087694
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(309028329)インビスタ テクノロジーズ エス エイ アール エル (80)
【Fターム(参考)】