説明

伸縮性嵩高不織布およびその製造方法

【課題】嵩が高く風合いのよい伸縮性嵩高不織布を提供する。
【解決手段】本発明は、繊維(1)を含む第1繊維層と、熱融着性の繊維(2)を含み且つ第1繊維層よりMD収縮率が5%以上低い第2繊維層とが積層され、第1繊維層に含まれる繊維(1)と第2繊維層に含まれる繊維(2)との交絡によって一体化されており、第1繊維層が収縮して第2繊維層が厚み方向に隆起した構造を有しており、第2繊維層側から部分的にソニックボンド加工が施された伸縮性嵩高不織布を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性嵩高不織布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮性を有する不織布を得る手法としては、エラストマー樹脂をメルトブロー法にて紡糸し、紡糸によって得られた繊維をコンベアー上に堆積させた後、熱ロールにて繊維間を接着して得られたシートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、立体捲縮した繊維を30質量%以上含む第1繊維層と該繊維と同種又は異種の立体捲縮した繊維を含む第2繊維層とが積層されており、両繊維層は多数の接合部において部分的に接合されて厚み方向に一体化されており、各接合部の間において第1繊維層が突出して該第1繊維層側に多数の凸部を形成している立体シート素材なども知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−256856号公報
【特許文献2】特開2004−202890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているシートは、嵩が非常に低いため、通気性が悪く風合いも損なわれていた。また、エラストマー樹脂特有の摩擦により表面平滑性が悪いという問題もある。
【0006】
また、特許文献2に記載されているシート素材は、予め熱エンボス加工によって両層を部分的に接合した後に、第2繊維層の熱収縮により接合部間を突出させるため、嵩が十分に高い不織布を得ることはできなかった。
【0007】
従って、本発明の課題は、嵩が高く風合いのよい伸縮性嵩高不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、収縮性を有する繊維(1)を含む第1ウェブと、熱融着性の繊維(2)を含み且つ第1ウェブよりMD収縮率が低い第2ウェブとを積層し、加工処理を施すことにより嵩が高く風合いのよい伸縮性嵩高不織布が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]繊維(1)を含む第1繊維層と、熱融着性の繊維(2)を含み且つ第1繊維層よりMD収縮率が5%以上低い第2繊維層とが積層され、第1繊維層に含まれる繊維(1)と第2繊維層に含まれる繊維(2)との交絡によって一体化されており、第1繊維層が収縮して第2繊維層が厚み方向に隆起した構造を有しており、第2繊維層側から部分的にソニックボンド加工が施された伸縮性嵩高不織布。
[2]第1繊維層に含まれる繊維(1)と第2繊維層に含まれる繊維(2)とが、不織布の厚み方向において、両層の界面で部分的に交絡している、[1]記載の伸縮性嵩高不織布。
[3]ソニックボンド加工によって形成された凹部と、ソニックボンド加工が施されてない部位により形成された凸部とを含む、[1]または[2]記載の伸縮性嵩高不織布。
[4]前記凸部の厚みが1.0〜5.0mmの範囲である、[3]記載の伸縮性嵩高不織布。
[5]前記凹部の厚みを形成している部位の除去により得られる開孔を含む、[3]または[4]記載の伸縮性嵩高不織布。
[6]繊維(1)を含む第1繊維層と、熱融着性の繊維(2)を含み且つ第1繊維層よりMD収縮率が5%以上低い第2繊維層とを積層し、第1繊維層に含まれる繊維(1)と第2繊維層に含まれる繊維(2)との交絡によって一体化し、第1繊維層を収縮させて第2繊維層が厚み方向に隆起した構造を形成し、第2繊維層側から部分的にソニックボンド加工を施す、伸縮性嵩高不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の不織布は、伸縮性に優れるとともに、嵩が高く表面凹凸構造を有しており、風合いに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、「MD」は、Machine Directionの略であり、機械方向を意味する。また、「CD」は、Cross Machine Directionの略であり、機械方向に対して、垂直方向を意味する。
【0012】
なお、本発明において、MD収縮率とは、繊維から、目付100g/mのウェブを作製し、該ウェブを120℃オーブン内で5分間の熱処理をしたときに、捲縮の発現によって生じるMDにおける収縮の比率(以下、MD収縮率ともいう)をいう。
【0013】
本発明の伸縮性嵩高不織布は繊維(1)を含む第1繊維層と、熱融着性の繊維(2)を含み且つ第1繊維層よりMD収縮率が5%以上低い第2繊維層とが積層され、第1繊維層に含まれる繊維(1)と第2繊維層に含まれる繊維(2)との交絡によって一体化されており、第1繊維層が収縮して第2繊維層が厚み方向に隆起した構造を有しており、第2繊維層側から部分的にソニックボンド加工が施された伸縮性嵩高不織布である。
【0014】
〔第1繊維層〕
第1繊維層に含まれる繊維(1)は、加熱加工機等を用いる収縮加工工程において、捲縮の発現によって高い収縮率を示し、且つ当該繊維の熱融着による繊維同士の接着が起こらない繊維であることが好ましい。
【0015】
繊維(1)は、MD収縮率が、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、65%以上であることが更に好ましい。
【0016】
前記MD収縮率が40%以上であると、最終的に得られる凹凸伸縮不織布に十分な伸縮性を付与でき、充分な凸部の発生が得られやすい。また、この収縮加工温度下では繊維(1)の繊維同士は互いに接着しない。
【0017】
仮に、繊維(1)が、潜在捲縮性複合繊維であり、本来高い収縮率を示すものであったとしても、繊維同士の接着が同時に起きた場合、接着により繊維が固定されるために、収縮の動き、つまり、潜在捲縮の発現が阻害されて、十分な収縮が得られず、第1繊維層は、伸縮可能幅が狭いものとなる。また、繊維間が固定されてしまうために、伸張の際には高い応力が必要となるなど、結果として、高い伸縮性能が得られずに、風合いが低下する。
【0018】
繊維(1)としては、例えば、並列型複合繊維または偏心鞘芯型複合繊維が挙げられる。
【0019】
並列型複合繊維は、高融点成分としてポリプロピレンまたはポリエステルを用いることが好ましい。また、低融点成分としてエチレン−プロピレン二元共重合体、プロピレン−ブテン−1二元共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1三元共重合体、プロピレン−ヘキセン−1二元共重合体もしくはプロピレン−オクテン−1二元共重合体等またはこれらの混合物等からなる樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
また、偏心鞘芯型複合繊維は、前記低融点成分を鞘側に、前記高融点成分を芯側に用いることが好ましい。
【0021】
低温熱収縮性およびコストの点で、エチレン−プロピレン二元共重合体は、エチレン含有量4〜10質量%、プロピレン含有量90〜96質量%からなることが好ましい。また、エチレン−プロピレン−ブテン−1三元共重合としては、エチレン含有量1〜7質量%、プロピレン含有量88〜98質量%、1−ブテン含有量1〜5質量%からなることが好ましい。
【0022】
繊維(1)の低融点成分の融点としては、128℃〜160℃の範囲が好ましく、より好ましくは130℃〜150℃である。融点が128℃以上であると、収縮加工温度下で低融点成分側の樹脂が溶融することなく、繊維同士の接着による伸縮性能の低下をきたすことがない。
【0023】
低融点成分のメルトマスフローレイト[JIS K7210(1999年)の試験条件Mで測定した値]は、紡糸性および加工性の点から、0.1〜80g/10minが好ましく、3〜40g/10minが更に好ましい。
【0024】
高融点成分としては、プロピレン単独重合体またはプロピレンと少量の、通常は2質量%以下のエチレンもしくはα−オレフィンとの共重合体などの結晶性ポリプロピレンが利用できる。このような結晶性ポリプロピレンとしては、例えば、汎用のチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒から得られる結晶性ポリプロピレンが挙げられる。
【0025】
高融点成分の融点としては、150〜165℃の範囲が好ましく、155〜160℃の範囲がより好ましい。融点が150℃以上であると、低融点成分との融点差が十分に確保され、収縮加工時の加工温度幅が大きくなる。
【0026】
高融点成分のメルトマスフローレイト[JIS K7210(1999年)の試験条件Mで測定した値]は、紡糸性および加工性の点から、0.1〜80g/10minが好ましく、3〜40g/10minが更に好ましい。
【0027】
より、低融点成分との融点差を設けるために、高融点成分として、ポリエステルを用いてもよい。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレートまたはそれらの共重合体が挙げられる。
【0028】
繊維(1)の繊度は、1.0〜20dtexが好ましく、より好ましくは1.5〜10dtex、更に好ましくは2.2〜7.0dtexである。1.0dtex以上であると、例えば、カード工程を経る場合に、ネップの発生や地合の乱れが生じず、更には加工速度の低下を生じない。20dtex以下であると、繊維(1)は、捲縮発現性が良好に維持され、40%以上の収縮率を得られやすい。
【0029】
繊維の繊度は、例えば、電子顕微鏡または光学顕微鏡で繊維直径を測定した後に密度勾配管や密度測定用の天秤を用いて繊維の密度を測定し、[直径(μm)]÷4×π×[密度(g/cm)]÷100=[繊度(dtex)]で算出することができる。また、JIS L0104(2000年)を用いて、10000×[L(m)の時の繊維の重量]÷L(m)=[繊度(dtex)]で算出することもでき、従来公知の方法により測定することができる。
【0030】
また、繊維(1)の実繊維長は10mm〜150mmであることが好ましく、25mm〜65mmであることがより好ましい。繊維(1)の実繊維長を150mm以上とすることにより、カード機内でのネップの発生が起こり、地合が低下する。また、繊維(1)の実繊維長を10mm以下とすることにより、カード機内での綿脱落が発生し生産性が低下する。
【0031】
「繊維の実繊維長」とは、捲縮を有した繊維の実際の長さであり、繊維に応力を掛けずに捲縮を伸ばした時の長さに相当する。繊維の実繊維長は、市販されている装置(例えば、キーエンス製デジタルマイクロスコープなどの画像解析機能を持った顕微鏡)を用いて、繊維一本の末端から末端までを繊維に沿って計測することで測定することができる。
【0032】
但し、収縮率が維持できる範囲内であれば、上記繊度の範囲外の別の収縮性を有する繊維を混綿して、使用してもよい。また、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、第1繊維層に、繊維(1)以外の繊維を混綿してもよい。
【0033】
繊維(1)は、短繊維であっても、スパンボンド法またはメルトブロー法で得られるような長繊維であってもよい。短繊維の場合、繊維長は特に制限されないが、20〜100mmの範囲であることが好ましい。
【0034】
第1繊維層の最大の収縮率を示す温度は135〜160℃の範囲であることが好ましい。
【0035】
第1繊維層の目付は、構成繊維の繊維径にもよるが、5〜50g/mであることが好ましく、10〜30g/mであることがより好ましい。
【0036】
〔第2繊維層〕
第2繊維層には、熱融着性の繊維(2)が含まれる。熱融着性の繊維(2)は、第1繊維層に含まれる繊維(1)よりMD収縮率が低い値を示すことが好ましい。
【0037】
但し、第2繊維層の強度が低下しない範囲内であれば、パルプなどの熱接着性のない繊維を混綿して、使用してもよい。第2繊維層に熱接着性のない繊維を混綿させる場合、第2繊維層全体に対する熱接着性のない繊維の比率を10〜80質量%の割合とすることが好ましく、30〜70質量%の割合とすることがより好ましい。
【0038】
熱融着性の繊維(2)は、MD収縮率が35%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましい。
【0039】
MD収縮率が35%以下であると、第1繊維層との収縮差を大きく確保できるため、収縮処理工程において凸状突起が形成されやすい。本発明においては、特に、MD収縮率が5%以下の熱融着性繊維(2)を、非収縮性繊維(2B)とし、MD収縮率が5%超の熱融着性繊維(2)を繊維(2A)とする。
【0040】
熱融着性の繊維(2)としては、例えば、第1成分と第2成分とからなり、第2成分は、第1成分よりも低い融点を有するか、または第1成分よりも低い軟化点を有する複合繊維が利用できる。複合繊維の複合形態としては、並列型、偏心鞘芯型または同心鞘芯型複合繊維が利用できる。並列型複合繊維は、第1成分と第2成分の両方が、繊維の長さ方向の表面の少なくとも一部を構成する複合繊維である。偏心鞘芯型複合繊維は、第2成分を鞘成分とし、第1成分を芯成分とし、鞘成分と芯成分とが偏心して配置される複合繊維である。同心鞘芯型複合繊維は、第2成分を鞘成分とし、第1成分を芯成分とし、鞘成分と芯成分とが同心円上に配置される複合繊維である。第1成分としては、ポリプロピレンまたはポリエステルを用いることができる。また、第2成分としては、LDPE、LLDPEおよび熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0041】
熱融着性の繊維(2)の繊度は、1.0dtex〜20dtexであることが好ましく、より好ましくは1.5dtex〜10dtexであり、更に好ましくは2.2dtex〜7.0dtexである。
【0042】
非収縮性繊維(2B)は、非収縮性繊維(2B)から目付100g/mのウェブを作製し、該ウェブを、120℃のオーブン内で5分間、熱処理をしたときに、MD収縮率が実質的に0であり、熱融着性を有していれば、ポリオレフィンまたはポリエステルなどからなる単一成分繊維であってもよい。
【0043】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、水添スチレン系エラストマー(SEBS)または熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられる。また、相溶性の点で、オレフィン系エラストマーを使用することが好ましい。
【0044】
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)またはエチレン−オクテン−1共重合体(ダウケミカル社製 Engage8402等)が挙げられる。
【0045】
これら熱可塑性エラストマーの1種または2種以上の混合物を使用でき、また、これらを、LDPEまたはLLDPEと混合して使用することもできる。なお、効果を阻害しない範囲で、さらに他の樹脂、または滑材、顔料炭酸カルシウムもしくは酸化チタンなどの無機物などの添加剤を含ませてもよい。
【0046】
熱融着性の繊維(2)が複合繊維である場合、熱融着性の繊維(2)はその複合成分である第2成分の熱溶融または軟化によりもたらされる熱融着性能を有する。
【0047】
特に第2繊維層の繊維に熱可塑性エラストマーを使用すると、その粘着効果によって、繊維間の接着がより一層強化されるとともに、接着後の接着点自体がゴム弾性挙動を帯びることにより、不織布の伸縮性が向上し好ましい。
【0048】
第2成分の融点または軟化点は、70℃以上130℃以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは95℃以上125℃以下である。第2成分の融点または軟化点が70℃以上であると、例えば、ウェブを作製するカード工程においてメタリックワイヤーのカーディング摩擦による、ネップの発生(繊維融着)などを引き起こさず、地合いが乱れない。また、130℃以下であると、第1繊維層に用いられる繊維(1)の低融点側が溶融せず繊維同士が接着しないため、風合いが柔らかく、伸縮性が保たれる。
【0049】
本発明において、熱融着性の繊維(2)の融点が、繊維(1)の融点より低いことが、収縮および風合いの点で好ましい。具体的には、熱融着性の繊維(2)を構成する最も低融点成分の融点が、繊維(1)を構成する最も低融点成分の融点より低いことが好ましく、5〜50℃低いことがより好ましく、15〜35℃低いことがより好ましい。
【0050】
熱融着性の繊維(2)のメルトマスフローレイト[JIS K7210(1999年)の試験条件Mで測定した値]は、紡糸性および加工性の点から、0.1〜80g/10minが好ましく、3〜40g/10minが更に好ましい。
【0051】
熱融着性の繊維(2)の第1成分としては、プロピレン単独重合体またはプロピレンと少量の、通常は2質量%以下のエチレンもしくはα−オレフィンとの共重合体などの結晶性ポリプロピレンが利用できる。このような結晶性ポリプロピレンとしては、汎用のチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒から得られる結晶性ポリプロピレンを例示することができる。
【0052】
第1成分の融点としては、150〜165℃の範囲が好ましく、155〜160℃の範囲がより好ましい。融点が150℃以上であると、第2成分との融点差が大きく、収縮加工時の加工温度幅が大きくとれる。
【0053】
第1成分のメルトマスフローレイト[JIS K7210(1999年)の条件Mで測定した値]は、紡糸性および加工性の点から、0.1〜80g/10minが好ましく、3〜40g/10minが更に好ましい。
【0054】
第2成分との融点差をさらに設けるために、第1成分として、ポリエステルを用いてもよい。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレートまたはそれらの共重合体を例示できる。
【0055】
熱融着性の繊維(2)は、短繊維であってもよく、スパンボンド法またはメルトブロー法で得られるような長繊維であってもよい。短繊維の場合、実繊維長は特に制限されないが、20〜100mmの範囲であることが好ましい。
【0056】
第2繊維層の目付は、構成繊維の繊維径にもよるが、7〜50g/mであることが好ましく、10〜30g/mであることがより好ましい。
【0057】
〔製造方法〕
本発明の伸縮性嵩高不織布は、繊維(1)を含む第1繊維層と、熱融着性の繊維(2)を含み且つ第1繊維層よりMD収縮率が5%以上低い第2繊維層とを積層し、第1繊維層に含まれる繊維(1)と第2繊維層に含まれる繊維(2)との交絡によって一体化し、第1繊維層が収縮させて第2繊維層が厚み方向に隆起した構造を形成し、第2繊維層側から部分的にソニックボンド加工を施すことにより製造することができる。
【0058】
具体的には、例えば、繊維(1)を含む第1ウェブと熱融着性の繊維(2)を含む第2ウェブを一体化(不織布化)および第1繊維層を収縮(収縮加工)させた後に、第2繊維層側から部分的にソニックボンド加工することにより得られる。
【0059】
(不織布化および収縮加工)
本発明の伸縮性嵩高不織布は、第1繊維層と第2繊維層が両層の繊維の交絡によって一体化されており、第1繊維層が収縮して第2繊維層が厚み方向に隆起した構造を有する伸縮性嵩高不織布をソニックボンド加工に供することにより得られる。
【0060】
第1繊維層と第2繊維層との一体化(不織布化)および第1繊維層を収縮させる(収縮加工)にあたり、両層を、両層の繊維の交絡によって一体化させた後に、第1繊維層を収縮させて、第2繊維層を厚み方向に隆起させてもよいし、不織布化と収縮加工とを同時に行ってもよい。
【0061】
具体的には、例えば、繊維を、目付100g/mのウェブとし、これを、120℃のオーブン内で5分間の熱処理をしたときに、螺旋捲縮の発現によって、MD収縮率が40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは65%以上である繊維を、第1繊維層の繊維(1)として使用し、この繊維(1)が螺旋状の捲縮を発現する温度以上にすることで収縮加工を行えば、第2繊維層との界面付近に存在する繊維(1)が、螺旋捲縮を発現して、同じ界面付近に存在する第2繊維層の繊維を巻き込むように収縮するため、両層の接触界面付近での部分的な繊維間の交絡が、効果的に達成される。つまり、この方法では、不織布化と収縮とが同時に達成されるため、それら個々の処理を個別に行う必要がなく、作業工程を大幅に簡素化することが可能となる。
【0062】
このように、第1繊維層と第2繊維層とは、両層の繊維の交絡によって積層一体化されるが、両層の層間剥離を特に防止する観点からは、その交絡部分において、第2繊維層に含まれる熱融着性繊維の熱融着によって両層の繊維の接触点が接着されることが好ましい。このためには、上記収縮加工を、第1繊維層の繊維(1)が螺旋状の捲縮を発現する温度以上であって、かつ、第2繊維層の繊維が融着を生じる温度で行えばよい。
【0063】
また、繊維(1)を含む第1ウェブを下層とし、熱融着性の繊維(2)を含む第2ウェブを上層とし、積層して加熱することで、下層の収縮と上層および下層の不織布化とを同時に実施することができ、好ましい。
【0064】
ここで、繊維(2)を含む第2ウェブを上層とすることにより、繊維(2)を含む第2ウェブをドライヤー等の加熱加工機のコンベアーに接しない面とすることでき、良好に収縮加工することができるからである。上下層の界面では、加熱による収縮加工時に上層が下層とランダムに接着しながら下層が大きく収縮し、界面が交絡し、不織布となる。
【0065】
収縮加工には、例えば、ピンターテンター式ドライヤー、タオルもしくは生地の乾燥などに用いられるシュリンクドライヤー、フローティングドライヤー、ドラム式ドライヤー、コネア式ドライヤーまたはコンベクションドライヤー(オーブン)などを用いることができる。中でも、カード法不織布に広く使用されているコンベアー式のドライヤーが好適に使用できる。加熱方式には、一般的に加熱空気が用いられるが、蒸気、赤外線、マイクロウェーブまたはヒートロール接触であってもよい。
【0066】
加熱方式として、加熱空気を用いる場合、加熱時間は通常3〜10秒とすることが好ましく、風速は通常0.8〜1.4m/秒とすることができるが、これに限定されない。
【0067】
第1繊維層と第2繊維層との一体化(不織布化)および第1繊維層を収縮させる(収縮加工)ことにより得られる伸縮性嵩高不織布は、第1繊維層の収縮によって、前記交絡間で、第2繊維層が厚み方向に隆起した構造を有する不織布となる。
【0068】
前記隆起は、繊維(1)の螺旋捲縮の発現に起因して、緻密で不規則に発現しており、特許文献2に記載の、非収縮性繊維ウェブと収縮性レギュラー繊維ウェブとをエンボスロール(規則的な彫刻パターンを持っている)によって部分的に加熱加圧接合した後に、当該エンボス部間を熱収縮させて得られる隆起とは異なっている。
【0069】
この隆起した部分において、第2繊維層は、カード法による不織布と異なり、不織布の厚み方向への繊維の配列が高まっており、嵩が高く優れたものとなる。
【0070】
(ソニックボンド加工)
本発明の伸縮性嵩高不織布は、前記第2繊維層が隆起した構造を有する不織布に、第2繊維層側から、部分的にソニックボンド加工を施して得られる。
【0071】
ソニックボンド加工は、超音波溶着加工ともいい、15〜50キロヘルツ程度の超音波振動を圧力とともに部材に加え、生じる摩擦熱で接合する加工方法である。本発明の伸縮性嵩高不織布の製造においては、繊維層の接着目的に通常使用される公知の装置および条件を適宜採用すればよく、特に限定されない。
【0072】
ソニックボンド加工には、ハンディータイプの超音波溶着機を用いてもよく、工業的には、パターンロールと超音波ホーンとの一対からなる装置を用いてもよい。パターンロールと超音波ホーンとの一対からなる装置は、超音波ホーンから発する超音波振動により不織布が溶融し接着するものである。超音波ホーンの超音波は、対となるパターンロールの凸部分のみに共鳴し不織布に強く超音波振動を与えるため、逆にパターンロールの凹部の不織布は溶融することなく嵩高なまま保持することができる。
【0073】
ソニックボンド加工では、その加工法ゆえに、熱エンボス加工に比べて、熱接着部と非熱接着部との境界が明瞭に形成される。本発明の伸縮性嵩高不織布の製造工程においては、第1繊維層と第2繊維層との接触界面における繊維間の交絡のみで両層が一体化され、その交絡間で、第2繊維層が第2繊維層側へ隆起することで、その隆起した第2繊維層内の繊維は、不織布厚み方向に向かって配列性が高まっている。
【0074】
このため、前記交絡間で第2繊維層が厚み方向に隆起した構造を有する不織布に、第2繊維層上方から、部分的にソニックボンド加工を施せば、溶融して不織布の厚みが減じる超音波照射部位と、非照射部位との境界は、繊維が不織布の“長さ”方向に配列している場合に比べて、より鮮やかに発現する。つまり、接着部および非接着部のパターンによる紋様が鮮やかに際立った伸縮性嵩高不織布を得ることができるのである。
【0075】
一方、予め、熱エンボス加工した後、非エンボス加工部位を収縮させて隆起させたのでは、非エンボス部位は、エンボス部との境界から徐々に隆起してドーム状の隆起を形成することになる。接着部と非接着部が醸しだす紋様は、本発明の不織布ほど、紋様の形状を精度良く再現することはできず、また、輪郭が際立った鮮やかさを生じることもない。
【0076】
ソニックボンド加工におけるパターンロールの柄(凸部)は、特に限定されず、例えば、丸型、菱形、長方形または絵柄などが挙げられる。これらの中でも、伸縮性および嵩高性を得るためには、丸型、菱形などドット柄が好ましい。また、ソニックボンド加工におけるパターンロールの柄(凸部)の配列は、千鳥配列が好ましい。
【0077】
パターンロールの柄(凸部)は、伸縮性嵩高不織布の凹部、即ち接着部分となるため、接着部分が多いと伸縮性を低下させる傾向がある。このため、伸縮性嵩高不織布全体に占める凹部(接着部)の面積率は3〜60%が好ましく、更に好ましくは10〜30%である。凹部面積率が3%〜60%であれば、伸縮性が良好になり好ましい。
【0078】
なお、「部分的にソニックボンド加工を施す」とは、前記凹部の面積率が100%未満であることを示しており、好ましくは3〜60%であり、より好ましくは10〜30%である。
【0079】
ソニックボンド加工は、超音波ホーンから発せられる超音波出力によって伸縮性嵩高不織布に与える超音波振動量を制御できる。このため、高出力で超音波振動を与えることによって、伸縮性嵩高不織布の凹部を過剰に溶融させて、溶融し去り、その凹部に該当する部位を開孔することも可能である。これにより、伸縮性に優れた風合いがよく、嵩が高い開孔を有する伸縮性嵩高不織布を効率的に製造することができる。
【0080】
〔伸縮性嵩高不織布〕
本発明の伸縮性嵩高不織布は、第1繊維層に含まれる繊維と第2繊維層に含まれる繊維との交絡によって一体化している。ここで、「交絡によって一体化」とは、第1繊維層に含まれる繊維と第2繊維層に含まれる繊維とが互いに絡みあって両層が一体化されている状態をいう。熱エンボス加工等の熱圧着加工によって一体化されている態様などは含まない。
【0081】
本発明の伸縮性嵩高不織布においては、第1繊維層に含まれる繊維(1)と第2繊維層に含まれる繊維(2)とが、不織布の厚み方向において、両層の界面で、部分的に交絡していることが好ましい。即ち、不織布の厚み全体に渡って、第1繊維層に含まれる繊維と第2繊維層に含まれる繊維とが交絡しているよりも、両層の界面で部分的に両層に含まれる繊維が交絡していることが好ましい。
【0082】
これにより、他層の繊維による影響が各層内において部分的なものに留まることとなり、それぞれの層において、各層を本来構成している繊維由来の性能が発現しやすくなる。
【0083】
なお、前記界面とは、第1繊維層と第2繊維層とが接している境界のことをいう。ここで、界面という用語を用いたのは、第1繊維層と第2繊維層とは、お互いがそれぞれを構成する繊維の交絡によって一体化しているが、完全に混ざり合うことがないことを表している。
【0084】
本発明の伸縮性嵩高不織布は、第2繊維層は第1繊維層よりもMD収縮率が5%以上低く、第1繊維層が収縮して第2繊維層が厚み方向に隆起した構造を有している。第1繊維層と第2繊維層とのMD収縮率の差が5%未満であると、各交絡部の間において第2繊維層が第2繊維層側に隆起して不織布の概走行方向に折り畳まれた不規則なヒダ状の構造が得られないからである。
【0085】
本発明の伸縮性嵩高不織布は、第1繊維層と第2繊維層との接触界面における繊維間の交絡のみで両層が一体化され、第1繊維層が収縮して、その交絡間で、第2繊維層が第2繊維層側へ隆起することで、その隆起した第2繊維層内の繊維は、不織布厚み方向に向かって配列性が高まっている。
【0086】
このため、第2繊維層側から部分的にソニックボンド加工が施されていることにより、熱エンボス加工に比べて、熱接着部と非熱接着部との境界が明瞭に形成され、接着部および非接着部のパターンによる紋様が鮮やかに際立った伸縮性嵩高不織布となる。
【0087】
本発明の伸縮性嵩高不織布は、部分的にソニックボンド加工が施され、好ましくはソニックボンド加工によって形成された凹部と、ソニックボンド加工が施されていない部位により形成された部位とを含む。なお、該凹部の面積率は100%未満であり、好ましくは3〜60%であり、より好ましくは10〜30%である。
【0088】
ソニックボンド加工により形成される凸部の厚みは、1.0〜5.0mmであることが好ましく、1.5〜3.5mmであることがより好ましい。凸部の厚みが1.0mm以上であることにより、嵩高で風合に優れる。また、凸部の厚みが5.0mm以下であることにより、柔軟性に優れる。
【0089】
ソニックボンド加工により形成された凹部を過剰に溶融させて除去し、該凹部の厚みを形成している部位を除去して開孔することが好ましい。これにより、嵩が高く、伸縮性に優れた風合いに優れるとともに、開孔を有する伸縮性嵩高不織布とすることができる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0091】
<樹脂>
(1)ポリプロピレンホモポリマー:融点160℃、メルトマスフローレイト[JIS K7210(1999年)、試験条件M]15g/10min
(2)エチレン−プロピレン共重合体:エチレン含有量 4質量%、融点130℃、メルトマスフローレイト[JIS K7210(1999年)、試験条件M]16g/10min
(3)LDPE:東ソー(株)製ペトロセン350(商品名)、融点105℃、メルトマスフローレイト[JIS K7210(1999年)、試験条件D]23g/10min
(4)オレフィン系エラストマー:The Dow Chemical Company製ENGAGE8402(商品名)、融点100℃、メルトマスフローレイト[JIS K7210(1999年)、試験条件D]20g/10min
(5)HDPE:京葉ポリエチレン(株)製S6900、融点130℃、メルトマスフローレイト[JIS K7210[1999年]、試験条件D]16g/10min
【0092】
<繊維>
・繊維(1)は、樹脂(2)のエチレン−プロピレン共重合体と、樹脂(1)のポリプロピレンホモポリマーとからなる、並列型断面(質量比比50/50)の繊度2.2dtex、繊維長51mmである潜在捲縮性熱融着性複合繊維である。繊維(1)のMD収縮率は73.5%であった。
【0093】
・繊維(2A)は、樹脂(3)のLDPEと、樹脂(1)のポリプロピレンホモポリマーとからなる並列型断面(質量比50/50)の繊度2.2dtex、繊維長51mmである潜在捲縮性熱融着性複合繊維である。繊維(2A)のMD収縮率は20.5%であった。
【0094】
・非収縮性繊維(2B−1)は、樹脂(4)のオレフィン系エラストマー樹脂を鞘、樹脂(1)のポリプロピレンホモポリマーを芯に配した同心鞘芯型断面(質量比50/50)の繊度2.2dtex、繊維長51mmである熱融着性複合繊維である。非収縮性繊維(2B−1)のMD収縮率は1.3%であった。
【0095】
・非収縮性繊維(2B−2)は、樹脂(5)のHDPEを鞘、樹脂(1)のポリプロピレンホモポリマーを芯に配した同心鞘芯型断面(成分比50/50)の繊度2.2dtex、繊維長51mmである熱融着性複合繊維である。非収縮性繊維(2B−2)の繊維のMD収縮率は0.3%であった。
【0096】
<2層ウェブ作製>
上記<繊維>の欄で記述した繊維から大和機工製ミニチュアカード機を用い、目付10g/mのウェブを作製した。次いで繊維(1)を含む第1繊維層の上に繊維(2A)または非収縮性繊維(2B)を重ね、目付20g/mの2層ウェブとした。
【0097】
<収縮加工および不織布化>
熱風循環式熱処理機に、熱風温度125℃、風速0.5m/s、コンベアー速度12.5m/min、3秒の加工条件にて、上記<ウェブ作製>で得られた2層ウェブを通し、不織布を得た。
【0098】
<ソニックボンド加工>
精電舎電子工業株式会社製 超音波溶着機(Sonopet−150K)を用い、超音波ホーン出力15%(最大出力150W 発振周波数48.5KHz)で0.4秒間不織布に当てソニックボンド加工を行った。
【0099】
<熱エンボス加工>
加工温度115℃、加工速度6m/min、線圧20kg/cm、クリアランス0.01mmの加工条件にて熱エンボス加工を行った。
【0100】
<厚み測定>
15cm角に切断した不織布に対し、直径35mmの圧力子(荷重)によって、343.2Pa(3.5g/cm)の圧力を掛け、その時の厚みを、東洋精機社製デジシックネステスターを用いて測定した。
【0101】
<繊維層(単層ウェブ)の収縮率測定>
大和機工製ミニチュアカード機を用い、カード機の導入コンベアー中央部30cmに100gの開繊した使用原綿を導入し、ドッファー速度7.0±0.2m/分、周長145cmの巻き取りドラム速度7.3±0.2m/分で全量を巻き取り、鋏などで切断し約25cm角のウェブを採取した。
【0102】
この約25cm角のウェブをクラフト紙ではさみ、120℃に設定した三洋電機製のコンベクションドライヤーで5分間処理した後に取り出し、MDの長さを測定し、下記式により、繊維層のMD収縮率を算出した。
繊維層のMD収縮率=[{熱処理前の長さ(cm)}−{熱処理後の長さ(cm)}]/{熱処理前の長さ(cm)}×100(%)
【0103】
<積層ウェブの収縮率測定>
上記の<ウェブ作製>で得られた2層の積層ウェブをMDに1000mm、CDに300mmに切り出し、<収縮加工および不織布化>で記述した条件下で熱処理を行い、MDの長さ(a)と、CDの長さ(b)を測定し、以下の式により収縮率を求めた。
MD収縮率(%)=[1000−(a)]/1000×100
CD収縮率(%)=[300−(b)]/300×100
【0104】
<伸張強度測定>
島津製作所製「オートグラフAG500D」を用いて、試験速度100m/minの速度で試料長100mmから50%伸張後、試料長の長さまで戻し、再度50%伸張時の荷重を、初回(1回目)と再開(2回目)の2点で、10%、20%、30%、40%および50%の強度を測定し、強度を縦軸に歪を横軸にとったグラフ(S−Sカーブ)とした。
【0105】
初回の荷重と再開の荷重の差が大きい程、伸縮性が低いと判断した。また、伸張および加重のグラフにおいて、傾きが高いほど柔軟性が低く、風合いが劣ると判断した。
【0106】
<不織布の構造観察>
不織布を略垂直に切断し、その断面をKEYENCE社製デジタルマイクロスコープ(VHX−900)によって、各構成繊維層の状態、繊維間の交絡状況や熱接着状況等を観察した。
【0107】
実施例1
上記<繊維>に記述した繊維(1)からなるウェブと繊維(2A)からなるウェブを作製し、積層させて2層ウェブを作製し、<収縮加工および不織布化>に記述した条件で不織布を作製した。繊維(1)は、螺旋捲縮を発現して大きく収縮し、繊維(2A)は螺旋捲縮を発現して小さく収縮した。
【0108】
2層ウェブを構成する繊維は、不織布の厚み方向において、両層の積層界面で部分的に交絡しており、交絡間で、繊維(2A)からなる第2繊維層が、第2繊維層側に隆起していた。用いた繊維(1)の繊維同士は熱接着しておらず、用いた繊維(2A)の繊維同士および繊維(2A)と繊維(1)との接触点は、繊維(2A)の熱融着によって接着していた。この不織布の厚みは3.2mmであった。
【0109】
上記<ソニックボンド加工>に記述した条件で、パターン柄を、直径3mmの丸型とし、5mmピッチの千鳥状に超音波溶着を行い、伸縮性嵩高不織布を得た。
【0110】
実施例2
上記<繊維>に記述した繊維(1)からなるウェブと非収縮性繊維(2B−1)からなるウェブをそれぞれ作製し、積層させて2層ウェブを作製し、<収縮加工および不織布化>に記述した条件で不織布を作製した。繊維(1)は、螺旋捲縮を発現して大きく収縮し、非収縮性繊維(2B−1)は殆ど収縮しなかった。
【0111】
2層ウェブを構成する繊維は、不織布の厚み方向において、両層の積層界面で部分的に交絡しており、交絡間で、非収縮性繊維(2B−1)からなる第2繊維層が、第2繊維層側に隆起していた。用いた繊維(1)の繊維同士は熱接着しておらず、用いた非収縮性繊維(2B−1)の繊維同士および非収縮性繊維(2B−1)と繊維(1)との接触点は、非収縮性繊維(2B−1)の熱融着によって接着していた。この不織布の厚みは2.6mmであった。
【0112】
上記<ソニックボンド加工>に記述した条件で、パターン柄を、直径3mmの丸型とし、5mmピッチの千鳥状に超音波溶着を行い、伸縮性嵩高不織布を得た。
【0113】
実施例3
上記<繊維>に記述した繊維(1)からなるウェブと繊維(2A)からなるウェブを作製し、積層させて2層ウェブを作製し、<収縮加工および不織布化>に記述した条件で不織布を作製した。繊維(1)は、螺旋捲縮を発現して大きく収縮し、繊維(2A)は螺旋捲縮を発現して弱く収縮していた。
【0114】
2層ウェブを構成する繊維は、不織布の厚み方向において、両層の積層界面で部分的に交絡しており、交絡間で、繊維(2A)からなる第2繊維層が、第2繊維層側に隆起していた。用いた繊維(1)の繊維同士は熱接着しておらず、用いた繊維(2A)の繊維同士の接触点および繊維(2A)と繊維(1)との接触点は、繊維(2A)の熱融着によって接着していた。この不織布の厚みは3.2mmであった。
【0115】
上記<ソニックボンド加工>に記述した条件において、超音波出力時間を1秒に変更し、パターン柄を、直径3mmの丸型とし、5mmピッチの千鳥状に超音波溶着を行って、パターン柄部位を過剰に溶融して溶融し去って開孔し、伸縮性嵩高開孔不織布を得た。
【0116】
比較例1
上記<繊維>に記述した繊維(1)からなるウェブと繊維(2A)からなるウェブを作製し、積層させて2層ウェブを作製し、<収縮加工および不織布化>に記述した条件で不織布を作製した。この不織布の厚みは3.2mmであった。
【0117】
次に、上記<熱エンボス加工>に記述した条件で、パターン柄を、直径0.8mmの丸型、突起部高さを一般的な0.5mmとし、5mmピッチの千鳥状に熱エンボス加工を行い、不織布を得た。
【0118】
比較例2
上記<繊維>に記述した繊維(1)からなるウェブと非収縮性繊維(2B−2)からなるウェブを作製し、積層させて2層ウェブを作製した。
【0119】
次に、上記<熱エンボス加工>に記述した条件において、加工温度を124℃に変更し、パターン柄を、直径0.8mmの丸型、その突起部高さを一般的な0.5mmとし、5mmピッチの千鳥状に熱エンボス加工を行い、不織布を得た。
【0120】
そして、<収縮加工および不織布化>に記述した条件で収縮加工を行った。得られた不織布の厚みは1.3mmであった。
【0121】
各実施例、比較例における、積層ウェブの収縮率、不織布の伸張強度および厚みの結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
表1に示すように、収縮加工および不織布化並びにソニックボンド加工により得られた実施例1〜3の不織布は、それぞれ厚みが3.0mm、2.3mmおよび2.8mmであり、比較例1および2の不織布と比較して厚みが高いことから、嵩が高いとともに、風合いがよく、良好な伸縮性を示した。
【0124】
特に実施例1の不織布は、第2繊維層に潜在捲縮性熱融着性複合繊維を用いたことで、高い収縮率となり、嵩が高かった。また、実施例2の不織布は、第2繊維層にエラスマー樹脂を用いたことにより、伸長強度に優れた柔軟な不織布であった。
【0125】
一方、不織布化および熱エンボス加工により得られた比較例1の不織布は、厚みが0.4mmと低く、エンボスロールの温度の影響によって、繊維が全体的に接着してしまい、伸縮性を示さなかった。
【0126】
また、熱エンボス加工および収縮加工により得られた比較例2の不織布は、エンボス接合部間の収縮によって接合間部が突出しており、十分な嵩高性は得られず、また、エンボスロールの温度の影響によって、繊維間が全体的に接着してしまい、非常に低い伸縮性となった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の伸縮性嵩高不織布は、伸縮性に優れ、嵩高で風合いがよいことから、例えば、吸収性物品等の表面材やセカンド層などの衛材分野、面ファスナーのメス材などの産業資材分野などに利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維(1)を含む第1繊維層と、熱融着性の繊維(2)を含み且つ第1繊維層よりMD収縮率が5%以上低い第2繊維層とが積層され、第1繊維層に含まれる繊維(1)と第2繊維層に含まれる繊維(2)との交絡によって一体化されており、第1繊維層が収縮して第2繊維層が厚み方向に隆起した構造を有しており、第2繊維層側から部分的にソニックボンド加工が施された伸縮性嵩高不織布。
【請求項2】
第1繊維層に含まれる繊維(1)と第2繊維層に含まれる繊維(2)とが、不織布の厚み方向において、両層の界面で部分的に交絡している、請求項1記載の伸縮性嵩高不織布。
【請求項3】
ソニックボンド加工によって形成された凹部と、ソニックボンド加工が施されてない部位により形成された凸部とを含む、請求項1または2記載の伸縮性嵩高不織布。
【請求項4】
前記凸部の厚みが1.0〜5.0mmの範囲である、請求項3記載の伸縮性嵩高不織布。
【請求項5】
前記凹部の厚みを形成している部位の除去により得られる開孔を含む、請求項3または4記載の伸縮性嵩高不織布。
【請求項6】
繊維(1)を含む第1繊維層と、熱融着性の繊維(2)を含み且つ第1繊維層よりMD収縮率が5%以上低い第2繊維層とを積層し、第1繊維層に含まれる繊維(1)と第2繊維層に含まれる繊維(2)との交絡によって一体化し、第1繊維層を収縮させて第2繊維層が厚み方向に隆起した構造を形成し、第2繊維層側から部分的にソニックボンド加工を施す、伸縮性嵩高不織布の製造方法。

【公開番号】特開2013−83025(P2013−83025A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225230(P2011−225230)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(399120660)JNCファイバーズ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】