説明

伸縮性救命ロープ

【課題】いろいろな建設または産業現場で作業者の安全を最大に確保するための安全装備である個人保護具に関し、より詳細には、高いところで作業する作業者の墜落防止及び/または墜落したときに命を助けることができる伸縮性救命ロープを提供する。
【解決手段】繊維糸からなり、伸縮可能な心材と、この心材の外周面に備えられ、心材を伸縮させる弾性チューブとを含み、前記心材は、繊維糸を織成(weaved)して形成され、前記弾性チューブは、弾性糸を編成(knitted)して形成される伸縮性救命ロープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いろいろな建設または産業現場で作業者の安全を最大に確保するための安全装備である個人保護具に関し、より詳細には、高いところで作業する高所作業者の墜落防止及び/または墜落したときに命を助けることができる救命ロープに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ビルや橋梁のような高い構造物を施工する建設現場、大型の船舶を建造する造船所、電信柱や鉄塔の保守作業などのような電気設備を設置する工事現場では、地上より高いところに設置された様々な足場や構造物に作業者がぶら下がった状態で作業を行なうようになるが、このように高いところで作業する場合、不意に墜落してしまうという危険から作業者を保護するために、作業者は、安全ベルトまたはロープブランコのような保護具を着用することを、労働部の告示として、保護具性能の検証規定及び安全規則に従うように義務化している。
【0003】
さらに、保護具は、安全救命ロープを媒介として足場や構造物に連結されて作業者の墜落を防止し、この安全救命ロープは、一般的に天然繊維または合成繊維などをねじれたりして織造されたもので、この救命ロープの一端は、作業の保護装備側にカラビナ(carabiner)を媒介として固定され、救命ロープの他端は、フック(hook)を媒介として足場や構造物に固定される。
【0004】
しかしながら、このような従来の救命ロープは、安全規格に従って1.5〜3m程度の長さに特定され、このため、作業者が救命ロープを連結せずに着用した状態の場合、作業途中に構造物等に救命ロープが引っかかり作業者の作業を妨害する可能性があり、そのロープの長さがほぼ1.5〜2m程度であるので、歩くときに足にぶつかり易い。また、座って作業するときには、救命ロープが地に接触して異物がつく等の不便がある。また、救命ロープは、それ自体が弾性を持たないため、救命ロープに連結された状態で作業者が墜落した場合、衝撃を吸収することができないという欠点がある。
【0005】
このため、救命ロープ自体に弾性力を付与することができる“高所作業用衝撃吸収安全ベルト”が韓国登録特許第10−626420号(以下、先登録特許という。)に開示されている。
【0006】
このような先登録特許による救命ロープは、織物チューブの中央に弾性体を備える構成を有しており、この救命ロープは、その長手方向に弾性力(伸縮力)を付与することができ、救命ロープを使用しない場合(つまり、救命ロープに外力が作用しない場合)には、弾性体の復元力によってその長さが少し収縮し、作業者の作業便宜性を向上することができるというメリットがある。
【0007】
しかし、前記先登録特許において、救命ロープを使用しない場合、弾性体の復元力によって織物のチューブが収縮したとき、該直径が大きくなって作業効率が低下し、また、その長さは、約1.5mのものが約1m程度に縮むだけであって、作業者の作業便宜性の向上効果が疑問視される。また、弾性体の弾性力によって織物のチューブが収縮したとき、その外形がデコボコして外観が美しくないという問題点もある。
【0008】
なお、前記先登録特許は、救命ロープの収縮長さが作業の便宜性を向上させるための最小限の収縮長さを満たしていないという短所がある。
【特許文献1】韓国登録特許第10−626420号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、いろいろな建設または産業現場で作業者の安全を最大に確保するための安全装備である個人保護具に関し、より詳細には、高いところで作業する作業者の墜落防止及び/または墜落したときに命を助けることができる伸縮性救命ロープを提供することを目的にしている。
【0010】
すなわち、本発明は、救命ロープを使用しない場合でもその直径及び収縮長さを最小化すると同時に、その重量も大きく減少させることで、作業者の作業便宜性を大きく向上させることができる伸縮性救命ロープを提供することを目的にしている。
【0011】
更に、本発明は、カラビナやフック装置側に救命ロープを分離したり結合することを容易にすることによって、救命ロープの交換を容易に行うことができる伸縮性救命ロープを提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明の伸縮性救命ロープは、繊維糸からなり、伸縮可能な心材と、この心材の外周面に備えられ、心材を伸縮させる弾性チューブとを含む。
【0013】
前記心材は、繊維糸を織成(weaved)して形成されるものとすることができる。
【0014】
前記弾性チューブは、弾性糸を編成(knitted)して形成することができる。
【0015】
前記心材は、その幅方向に折り畳まれるものとすることができる。
【0016】
前記心材は、その両端部にループ(loop)が形成されるように縫製されているものとすることができる。
【0017】
前記心材の両端部の少なくともいずれか一端部は、ねじれた状態でループ(loop)を形成するように縫製されているものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明によれば、救命ロープを使用しない場合、その直径及び収縮した長さを最小化し、かつその重量も大きく減少させることにより、作業者の作業便宜性を大きく向上させることができるという効果がある。
【0019】
また、本発明は、カラビナまたはフックと救命ロープとの分離及び結合を容易にすることにより、救命ロープの交換を容易に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0021】
図1〜図6は、本発明の一実施形態に係る伸縮性救命ロープを示す。
【0022】
図示するように、本発明の伸縮性救命ロープ10(以下、単に「救命ロープ10」と表すことがある)には、一方の端部にフック(hook)30のループ31、他方の端部にカラビナ20を固定的に連結することができる。
【0023】
フック30は、足場または構造物に取り付け、取り外し可能に固定され、カラビナ20は、作業者が着用した安全ベルトまたはロープブランコのような保護装備側に取り付け、取り外し可能に固定される。
【0024】
本発明の救命ロープ10は、心材11及び、心材11の外周面に備えられる弾性チューブ12を含む。
【0025】
心材11は、安全規格で定める引張強度を耐えることができる種々の合成繊維や天然繊維を織成(weaved)したり、編成(knitted)して形成することができ、これにより、心材11は、その長手方向に伸張及び収縮する、すなわち、伸縮可能になっている。
【0026】
好ましくは、心材11は、図4及び図5に示すように、多数の繊維糸を織成(weaved)して形成することにより、その長手方向への伸縮性を向上させることができるとともに、心材11の製造をより容易に行なうことができる。
【0027】
さらに、心材11は、図2及び図3に示すように、その幅方向に折り畳まれることが可能になっている。そして、このように、心材11は、図2及び図3に示すように、その幅方向に折り畳まれて、弾性体からなる弾性チューブ12内の中心部に収容される。これにより心材11は、その長手方向にもつれ、ねじれることを防止することができる。
【0028】
心材11を構成する繊維糸としては、1デニールあたり22g程度の引張強度を有するアラミド糸、ケブラ糸のような高強力糸などが用いられ、このような高強力糸は、その太さが細くて高い引張強度を有する材質である。すなわち、本発明の救命ロープ10の心材11に高強力糸を適用することで、救命ロープ10の直径を大幅に減らすことができる。
【0029】
弾性チューブ12は、人造ゴム、天然ゴムのような弾性力を有する弾性糸で織成(weaved)したり、編成(knitted)することによって形成することができる。これにより、弾性チューブ12は、その長手方向に容易に弾性力及び復元力を発揮するとができる。
【0030】
好ましくは、弾性チューブ12は、図4及び図5に示すように、ゴム材質の弾性糸を8字状の編成組織で編んで(knitted)形成することにより、その長手方向への弾性力及び復元力を大幅に向上させることができるとともに、弾性糸による弾性チューブ12の製造をより容易に行なうことができる。
【0031】
そして、弾性チューブ12の各端部は、心材11の各端部から所定の間隔で離隔した位置で、図6に符号13aで示すように、裁縫処理され、これにより、弾性チューブ12の弾性力によって心材11の伸張及び収縮が行われる。
【0032】
心材11の両端部は、ループ11aの形態で、図6に符号13bで示す位置にて裁縫処理されてもよく、これによってフック30及びカラビナ20側に容易に結合されることができる。
【0033】
特に、本発明は、フック30、カラビナ20、救命ロープ10のうちのいずれか一つ以上が破損しその交替が要求される場合、心材11の両端部に形成されたループ11aによってその分離及び結合が容易になることから部分的な交替が容易になり、その結果本発明では、救命ロープ10のみならずフック30及び/またはカラビナ20の再活用などを非常に容易に行うことができるという長所がある。
【0034】
また、弾性チューブ12及び心材11の間の、図6に符号13aで示されている裁縫処理されている部分及び、図6に符号13bで示されている位置にて裁縫処理され、心材11のループ11aを形成する部分を隠すために、キャップ14をした後で仕上げ処理をすることもできる。
【0035】
そして、心材11の両端部に形成されるループ11aは、フック30及びカラビナ20側にシンブル(thimble)35を介して嵌め込んで結合してもよい。これにより、心材11のループ11a側に発生し得る摩耗を防止することができる。
【0036】
さらに、心材11の両端部のうちの少なくとも一側端部に形成されるループ11aは、図6に示すように、その一部の地点11cがねじれた後で縫製処理することも可能である。
【0037】
このように、心材11のループ11aを予めねじれた後で縫製処理することで、心材11のループ11aがフック30及びカラビナ20側に嵌め込むとき発生し得るねじれをあらかじめ防止し、そのときの摩耗を最小に抑制することができる。
【0038】
以下、このような構成を有する本発明の作用について説明する。
【0039】
墜落の危険が伴う作業現場で、安全な作業を行なうために、救命ロープ10の一端に連結されたフック30を足場や構造物に結合し、その後、救命ロープ10の他端に連結されたカラビナ20を作業者が着用した安全ベルトまたはロープブランコのような保護装備と結合する。
【0040】
このように救命ロープ10を媒介として作業者は、足場や構造物と結合されることにより、墜落の危険があっても該当作業を安全に行なうことができるようになる。
【0041】
前記救命ロープ10に外力が作用する場合、つまり、作業者が救命ロープ10にぶら下がった状態で墜落した場合には、救命ロープ10の弾性チューブ12及び心材11は、その墜落する方向に伸張力が印加され、図3及び図5に示すように、心材11及び弾性体12が伸張する。
【0042】
これに対し、救命ロープ10に外力が作用しない場合、つまり、救命ロープ10を使用しない場合には、図2及び図4に示すように、弾性体12に復元力が作用して心材11が収縮する。
【0043】
このような本発明は、弾性チューブ12が心材11の外側をカバーする構造を有することにより、救命ロープ10の全体直径を大幅に減らすことができ、また、救命ロープ10の最大の伸張長さに対する最大の収縮長さを1/3以下に縮小することができるので、救命ロープ10を使用しない場合にも、作業者の作業を妨害する要因を最小化することができる。
【0044】
また、本発明は、弾性チューブ12を8字状の編成組織で偏織し、伸縮の程度を最大化することにより、作業者の安全性を損なうことなく、作業便宜性を大きく向上させることができるというメリットがある。
【0045】
また、本発明の救命ロープ10は、弾性チューブ12が心材11の外側をカバーする構造を有することにより、フック30及びカラビナ20のそれぞれが構造物及び作業者の安全ベルトなどと結合された状態で作業を行なう場合、救命ロープ10によって引っ張られる感じを最小化し、救命ロープ10の伸縮が極めて滑らかであり、作業者の活動範囲を広めることができるというメリットがある。
【0046】
一方、従来の救命ロープは、フック及び/またはカラビナ側に縫製処理して一体化した構造を有しているため、フック、カラビナ、救命ロープなどに損傷が発生したとき部分的な交替を図ることが不可能であった。しかし、本発明の救命ロープは、その両端部のループ11aにより、部分的な交替を容易に行なうことができるというメリットがある。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る伸縮性救命ロープを示した斜視図。
【図2】図1のA-A線に沿った断面図で、本発明の弾性体及び心材が収縮した状態を示した図。
【図3】図1のA-A線に沿った断面図で、本発明の弾性体及び心材が伸張した状態を示した図。
【図4】本発明の弾性体及び心材の一部を示した部分平面図で、弾性体及び心材が収縮した状態を示した図。
【図5】本発明の弾性体及び心材の一部を示した部分平面図で、弾性体及び心材が伸張した状態を示した図。
【図6】本発明の救命ロープの一端部を詳細に示した部分斜視図。
【符号の説明】
【0049】
10 伸縮性救命ロープ
11 心材
12 弾性チューブ
20 カラビナ
30 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維糸からなり、伸縮可能な心材と、
この心材の外周面に備えられ、心材を伸縮させる弾性チューブとを含むことを特徴とする伸縮性救命ロープ。
【請求項2】
前記心材は、繊維糸を織成して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の伸縮性救命ロープ。
【請求項3】
前記弾性チューブは、弾性糸を編成して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の伸縮性救命ロープ。
【請求項4】
前記心材は、その幅方向に折り畳まれることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性救命ロープ。
【請求項5】
前記心材は、その両端部にループが形成されるように縫製されたことを特徴とする請求項1に記載の伸縮性救命ロープ。
【請求項6】
前記心材の両端部の少なくともいずれか一端部は、ねじれた状態でループを形成するように縫製されたことを特徴とする請求項5に記載の伸縮性救命ロープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−144337(P2008−144337A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148104(P2007−148104)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(505333148)
【Fターム(参考)】