説明

伸縮性積層シート

【課題】 伸縮を繰り返しても破断し難く、衛生用品等の本体部に取り付けた場合も、実用上十分な保持力を発揮する伸縮性積層シートを提供すること。
【解決手段】 エラストマー層、及び当該エラストマー層の少なくとも一方の面上に設けられた不織布を含む積層体からなる伸縮性積層シートであって、伸縮性積層シートは、積層体を構成する、低伸縮性積層部及び高伸縮性積層部が一方向に交互に配置されてなり、低伸縮性積層部及び高伸縮性積層部には、いずれも、エラストマー層と不織布とが接合した第1の接合領域と、当該第1の接合領域よりも弱くエラストマー層と不織布とが接合した第2の接合領域が存在し、低伸縮性積層部における、第1の接合領域の総面積が、高伸縮性積層部における、第1の接合領域の総面積より大きく、高伸縮性積層部の弾性率に対する低伸縮性積層部の弾性率の比が、1を超え7.5以下である、伸縮性積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
おむつやその他の衛生用品で使用するための種々の伸縮性部材が提案されている。特許文献1〜4においては、エラストマーを含む層と不織布とを積層した伸縮性部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−252762号公報
【特許文献2】特開2007−230180号公報
【特許文献3】特開2009−132081号公報
【特許文献4】特表2003−520146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の伸縮性部材は、ある構造においては、繰り返し使用の際に亀裂が生じる場合があり、耐久性について更なる改善が必要である場合がある。また、伸縮性部材は衛生用品等の本体部に固定された場合に、十分に保持されている必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エラストマー層、及び当該エラストマー層の少なくとも一方の面上に設けられた不織布を含む積層体からなる伸縮性積層シートであって、積層体を構成する、低伸縮性積層部及び高伸縮性積層部が一方向に交互に配置されてなり、低伸縮性積層部及び高伸縮性積層部には、いずれも、エラストマー層と不織布とが接合した第1の接合領域と、当該第1の接合領域よりも弱くエラストマー層と不織布とが接合した第2の接合領域が存在し、低伸縮性積層部における、第1の接合領域の総面積が、高伸縮性積層部における、第1の接合領域の総面積より大きく、高伸縮性積層部の弾性率に対する低伸縮性積層部の弾性率の比が、1を超え7.5以下である、伸縮性積層シートである。
【0006】
また、本発明の伸縮性積層シートは、エラストマー層、及び当該エラストマー層の両面上に設けられた不織布を含む積層体からなっていてもよい。
【0007】
さらに本発明は、上記伸縮性積層シートを含む物品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、伸縮を繰り返しても破断し難く、衛生用品等の本体部に取り付けた場合も、本体部に対して実用上十分な程度に保持される伸縮性積層シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施形態に係る伸縮性積層シートの斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)切断線I−Iに沿った断面図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る伸縮性積層シートの斜視図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)切断線III−IIIに沿った断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)断面図である。
【図6】本発明の第四実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)断面図である。
【図7】本発明の第五実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)断面図である。
【図8】本発明の第六実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)断面図である。
【図9】本実施形態に係る伸縮性積層シートの製造方法の一例である。
【図10】従来の伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明の伸縮性積層シートは、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、第一実施形態に係る伸縮性積層シートの斜視図であり、図2は、第一実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)切断線I−Iに沿った断面図である。図1及び2に示す、第一実施形態に係る伸縮性積層シート1は、エラストマー層3、及び当該エラストマー層3の少なくとも一方の面上に設けられた不織布2を含む積層体からなっている。そして、伸縮性積層シート1は、上記積層体を構成する低伸縮性積層部A1及び高伸縮性積層部A2からなり、低伸縮性積層部A1及び高伸縮性積層部A2は一方向に交互に配置されている。
例えば、高伸縮性積層部A2及び低伸縮性積層部A1が、シート製造時におけるシートの流れ方向(MD:Machine Direction)に並行な帯状の領域として形成される場合、高伸縮性積層部A2と低伸縮性積層部A1とは、MDに垂直な幅方向(CD:Cross Machine Direction)に隣り合う。また、高伸縮性積層部A2及び低伸縮性積層部A1が、シート製造時におけるシートの流れ方向(MD)に垂直な方向(CD)に並行な帯状の領域として形成される場合には、高伸縮性積層部A2と低伸縮性積層部A1とは、MDに沿って隣り合う。
【0012】
図2に示すように、低伸縮性積層部A1及び高伸縮性積層部A2には、それぞれ、エラストマー層3と不織布2とが接合した第1の接合領域5a、6aと、かかる第1の接合領域5a、6aよりも弱くエラストマー層3と不織布2とが接合した第2の接合領域5b、6bとが存在している。すなわち、低伸縮性積層部A1は、第1の接合領域6aと、第2の接合領域6bとを有しており、前者においてエラストマー層3と不織布2とがより強く接合している。同様に、高伸縮性積層部A2は、第1の接合領域5aと第2の接合領域5bを有しており、前者においてエラストマー層3と不織布2とがより強く接合している。ここで、第1の接合領域5a、6aにおける単位面積あたりの接合強度は、低伸縮性積層部A1が、高伸縮性積層部A2に比して低い伸縮性を有する限り、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、いずれも、第2の接合領域5b、6bにおける単位面積あたりの接合強度より大きい。また、第2の接合領域5b、6bにおける単位面積あたりの接合強度についても、低伸縮性積層部A1が、高伸縮性積層部A2に比して低い伸縮性を有する限り、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。さらに、低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの総面積は、高伸縮性積層部A2における第1の接合領域5aの総面積より大きくなっている。
【0013】
高伸縮性積層部A2の弾性率に対する低伸縮性積層部A1の弾性率の比([低伸縮性積層部A1の弾性率]/[高伸縮性積層部A2の弾性率])は、1を超え7.5以下である。高伸縮性積層部A2の弾性率に対する低伸縮性積層部A1の弾性率の比が、上記範囲内の値であると、伸縮性積層シート1、又は、伸縮性積層シート1から所定の形状及び大きさに切り出した伸縮性部材において、低伸縮性積層部A1を他の衛生用品等の本体部への固定部に使用した場合に、低伸縮性積層部A1を本体部に実用上十分な程度に保持することが可能(以下、「保持性」という場合もある)となる。また、高伸縮性積層部A2の弾性率に対する低伸縮性積層部A1の弾性率の比が、上記範囲内の値であると、伸縮を繰り返した場合における、高伸縮性積層部A2と低伸縮性積層部A1との界面付近における破断を低減することができる。上記効果をより一層効果的に得る観点から、高伸縮性積層部A2の弾性率に対する低伸縮性積層部A1の弾性率の比の上限は、7.0以下であることが好ましい。なお、「低伸縮性積層部」は、典型的には10MPa以上の弾性率を有する。
【0014】
低伸縮性積層部A1の弾性率、及び高伸縮性積層部A2の弾性率は、テンサイル試験機を用いて測定することができる。例えば、低伸縮性積層部A1の弾性率は、以下の方法で測定できる。まず、伸縮性積層シートにおける低伸縮性積層部A1から、長手方向(MD)10mm幅×幅方向(CD)20mm幅の短冊状試料を切り出す。次に、得られた試料をテンサイル試験機(オリエンテック社製、型番RTG−1225)にチャック間距離が15mmとなるよう無張力で且つ試料のCD方向が引張方向となるように固定し、CD方向に100mm/minで試料を変形させて応力歪み曲線を求める。そして、得られた応力歪み曲線における応力が立ち上がる直線部分の傾きから弾性率を求める。なお、高伸縮性積層部A2の弾性率についても同様に測定することができる。
【0015】
なお、低伸縮性積層部及び高伸縮性積層部の伸縮性は、エラストマー層3と不織布2との接合強度、エラストマー層3及び不織布2の材質、或いはエラストマー層3及び不織布2の厚さ等に依存しており、伸縮性積層シート全体の伸縮性は、これらに加え、低伸縮性積層部と高伸縮性積層部の存在量に依存する。
【0016】
伸縮性積層シート1の形状は任意であり、矩形、円形等いずれの形状であってもよい。矩形の場合、例えば、高伸縮性積層部A2の幅に対する低伸縮性積層部A1の幅の比([低伸縮性積層部A1の幅]/[高伸縮性積層部A2の幅])は、0.05〜10であることが一般的である。また、ある態様においては、高伸縮性積層部A2の幅に対する低伸縮性積層部A1の幅の比を、0.1〜5とすることができる。これにより、伸縮性、耐久性、保持性に優れた伸縮性積層シートを得ることができる。
【0017】
まず、伸縮性積層シート1に含まれるエラストマー層3について説明する。エラストマー層3は、伸縮性を有し、加熱により溶融して接着性を発現するものであれば特に限定されない。エラストマー層3の原料としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(以下、「SIS共重合体」という。)と、タッキファイヤー(粘着性付与剤)等の添加剤とを含む組成物が挙げられる。
【0018】
SIS共重合体は、エラストマー層3の耐久性の観点から、エラストマー層3の原料組成物全量を基準にして、96質量%以上とすることができる。
【0019】
SIS共重合体としては、フィルムの強度及び伸縮柔軟性の観点から、スチレン含有率が15〜45%のものが好ましい。
【0020】
SIS共重合体のメルトフローレート(200℃、5.0kg)は、流動性(加工性)及びエラストマー組成物を層状にした際のフィルム安定性の点から高い方が好ましく、ある態様においては10〜45とすることができる。また、ある態様においては、SIS共重合体のメルトフローレートの下限を20、上限を40とすることができる。
【0021】
SIS共重合体としては、未変性タイプのものも、変性タイプのものも使用できる。変性SIS共重合体は、例えばSIS共重合体に不飽和カルボン酸もしくはその誘導体を付加反応(例えばグラフト化)させることにより得ることができる。具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、クロトン酸、エンド−ビ−シクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸およびそれらの無水物、イミド化物などが挙げられる。また、3個以上の分岐骨格を有するSIS共重合体を使用することもでき、2種以上のSIS共重合体を組み合わせて使用してもよい。例えば、クレイトンD1114P、クレイトンD1117P(クレイトンポリマー・ジャパン株式会社製)、Vector 4111(DexcoPolymer社製)等の市販品が挙げられる。
【0022】
エラストマー層3の原料組成物は、SIS共重合体と、ポリウレタンエラストマーとの混合物であってもよい。この場合、ポリウレタンエラストマーは、SIS共重合体とポリウレタンエラストマーとの合計量を基準として、75〜99.9質量%含まれることが好ましい。
【0023】
ポリウレタンエラストマーは、長鎖ポリオール又は短鎖ポリオール等のポリオール成分と、ジイソシアネート等のイソシアネートとを重付加反応することにより得られ、分子内にウレタン結合を有している。ポリオールとしては、ポリエステル系、アジペート系、ポリエーテル系、ポリカプロラクトン系等のポリオールが使用可能である。
【0024】
長鎖ポリオールとしては、ポリエーテルジオール(例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール)、又はポリエステルジオール(例えば、ポリ(エチレンアジペート)グリコール、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)グリコール、ポリ(1,6−ヘキシレンアジペート)グリコール、ポリ(ヘキサンジオール−1,6−カーボネート)グリコール)などが挙げられる。短鎖ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,4−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0025】
ジイソシアネートとしては4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0026】
ポリウレタンエラストマーのショアーA硬度(JIS A硬度)は、例えば、60〜95にすることができる。ポリウレタンエラストマーのショアーA硬度(JIS A硬度)が60〜95の範囲にあると、エラストマー層3の原料組成物を溶融してフィルムに製膜する際の膜安定性を高めることができ、また、良好な伸縮柔軟性を有するフィルムを得ることができる。また、2種以上のポリウレタンエラストマーを組み合わせて使用してもよい。
【0027】
ポリウレタンエラストマーとして、例えば、PANDEX(商標)T−1575N(DIC・バイエルポリマー株式会社製)、エラストラン(商標)ET−680(BASFジャパン株式会社製)、ミラクトラン(商標)E675(日本ポリウレタン株式会社製)等の市販品が挙げられる。
【0028】
タッキファイヤーとしては、SIS共重合体との相溶性の良いものが好ましい。ロジン系、テルペン系、石油系のもの等を使用することができる。2種以上のタッキファイヤーを組み合わせて使用してもよい。
【0029】
例えば、ロジン系タッキファイヤーとしてパインクリスタル(商標)(荒川化学工業株式会社);テルペン系タッキファイヤーとしてYSポリスター(商標)(ヤスハラケミカル);石油系タッキファイヤーであるウイングタックプラス(商標)(CRAY VALLEY社製)及び、アルコン(商標)(荒川化学工業株式会社社製)等の市販品が使用可能である。
【0030】
タッキファイヤーの量は、エラストマー層3の原料組成物の全量を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましい。タッキファイヤーを上記量の範囲で原料組成物に添加した場合、エラストマー層を作製する際の生産性と、得られる層の耐久性とが改善される。
【0031】
エラストマー層3の原料組成物は、更に、各種の添加剤(酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、着色剤、無機充填材、オイル等)を含むこともできる。
【0032】
エラストマー層3の厚さは、約5〜約100μmとすることができ、一層構造であっても、複数層構造であってもよい。複数層構造の場合、各層は異なるエラストマー含有組成物から構成することができる。
【0033】
続いて、伸縮性積層シート1に含まれる不織布2について説明する。不織布2を構成する繊維材料について、特に制限はなく、従来から知られている種々の繊維材料から形成することができる。伸縮性積層シート1の伸縮性及び強度の点から、ポリエステル繊維とポリオレフィン繊維を混紡したものが好ましい。混紡比については、特に制限はないが、ポリエステル繊維を主体とし、これにポリオレフィン繊維を混紡したものが、伸縮性及び強度の点から好ましい。
【0034】
不織布の製造方法に関しても、制限はない。上記材料を使用して、従来より知られる製法に基づき製造することができる。伸縮性積層シート1に良好な伸長性を与えるという観点から、スパンボンド法、スパンレース法、サーマルボンド法などが好適である。スパンレース法は、得られる不織布に対して良好な肌触りを与えることができる。
【0035】
不織布2としては、約30μm〜約1mmの厚さのものを使用することができる。また、一般的に、不織布は、約15〜50gsmの目付けで使用することができる。なお、伸縮性積層シート1全体の厚さとしては、その使途などに応じて広い範囲で変更することができるが、一般的には約50μm〜約2mmの範囲で用いられる。なお、低伸縮性積層部A1における厚みと高伸縮性積層部A2における厚みは、必ずしも均一である必要はなく、両者の厚みの平均値が上記範囲内にあればよい。また、伸縮性積層シート1が、エラストマー層3の両面に不織布2、4が設けられた積層体である場合、不織布2と不織布4は、同一のものであっても異なる種類のものであってもよい。
【0036】
第一実施形態に係る伸縮性積層シート1おいては、低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの形状は、伸縮性積層シート1の流れ方向(MD:Machine Direction)に対して垂直な方向であるCD(Cross Machine Direction)に沿った帯状である。帯状の第1の接合領域6aは、一定の間隔でMDに沿って配列されている。
【0037】
帯状の第1の接合領域6aの長手方向は、MDと交差しており、帯状の第1の接合領域6aの対称軸のうち最も長い軸と、帯状の高伸縮性積層部A2及び低伸縮性積層部A1の配列方向(MD)となす角は、0°を超え90°以下であることが好ましく、10°以上90°以下であることがより好ましい。帯状の第1の接合領域6aの幅、及び、帯状の第1の接合領域6a同士の間隔は特に限定されないが、低伸縮性積層部A1に占める第1の接合領域6aの割合は、低伸縮性積層部A1と高伸縮性積層部A2との間の耐裂け性(耐久性)の観点から、85%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下が特に好ましい。帯状の第1の接合領域6aにおいて、MDに沿う帯の長さ6hが短いと、低伸縮性積層部A1と高伸縮性積層部A2との界面における耐裂け性(耐久性)が向上する傾向がある。
一方、保持性の観点から、2%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上が特に好ましい。
【0038】
高伸縮性積層部A2における第1の接合領域5aの形状は、特に制限はなく、例えば、低伸縮性積層部A1に形成された第1の接合領域6aの形状が有する面積よりも小さな面積を有するドット形状であることが好ましい。また、高伸縮性積層部A2において、第1の接合領域5aは、一様に分散していることが好ましい。
【0039】
伸縮性部材の保持性を維持しつつ、低伸縮性積層部A1と高伸縮性積層部A2との間の耐裂け性(耐久性)を向上させる観点から、低伸縮性積層部A1全体に占める第1の接合領域6aの面積の割合は、好ましくは10%以上70%以下であり、高伸縮性積層部A2全体に占める第1の接合領域5aの面積の割合は、好ましくは0.4%以上10%未満である。
【0040】
図3は、第二実施形態に係る伸縮性積層シートの斜視図であり、図4は、第二実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)切断線III−IIIに沿った断面図である。図3及び4に示す、第二実施形態に係る伸縮性積層シート1は、エラストマー層3、及び当該エラストマー層3の両面上に設けられた不織布2、4を含む3層の積層体からなっている。そして、伸縮性積層シート1は、上記積層体を構成する低伸縮性積層部A1及び高伸縮性積層部A2からなり、低伸縮性積層部A1及び高伸縮性積層部A2は一方向に交互に配置されている。
【0041】
第二実施形態においても、図4に示すように、低伸縮性積層部A1及び高伸縮性積層部A2には、それぞれ、エラストマー層3と不織布2又は4とが接合した第1の接合領域5a、6aと、かかる第1の接合領域5a、6aよりも弱くエラストマー層3と不織布2又は4とが接合した第2の接合領域5b、6bとが存在している。すなわち、低伸縮性積層部A1は、第1の接合領域6aと、第2の接合領域6bとを有しており、前者においてエラストマー層3と不織布2又は4とがより強く接合している。同様に、高伸縮性積層部A2は、第1の接合領域5aと第2の接合領域5bを有しており、前者においてエラストマー層3と不織布2又は4とがより強く接合している。ここで、第1の接合領域5a、6aにおける単位面積あたりの接合強度は、低伸縮性積層部A1が、高伸縮性積層部A2に比して低い伸縮性を有する限り、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、いずれも、第2の接合領域5b、6bにおける単位面積あたりの接合強度より大きい。また、第2の接合領域5b、6bにおける単位面積あたりの接合強度についても、低伸縮性積層部A1が、高伸縮性積層部A2に比して低い伸縮性を有する限り、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。さらに、第1の接合領域5a、6a、及び第2の接合領域5b、6bにおいて、エラストマー層3と不織布2との接合強度と、エラストマー層3と不織布4との接合強度とは、低伸縮性積層部A1が、高伸縮性積層部A2に比して低い伸縮性を有する限り、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
図5は、第三実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)断面図である。第三実施形態においては、伸縮性積層シート1は、エラストマー層3、及び当該エラストマー層3の両面上に設けられた不織布2、4を含む積層体からなっており、低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの形状が、楕円状である。第1の接合領域6aの長手方向は、MDと交差しており、楕円状の第1の接合領域6aの長軸と、帯状の高伸縮性積層部A2及び低伸縮性積層部A1の配列方向(MD)となす角は、0°を超え90°以下であることが好ましく、10°以上90°以下であることがより好ましい。
【0043】
図6は、第四実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)断面図である。第四実施形態においては、伸縮性積層シート1は、エラストマー層3、及び当該エラストマー層3の両面上に設けられた不織布2、4を含む積層体からなっており、第1の接合領域6aの形状が、その両端に丸みを帯びた楕円柱状である。第1の接合領域6aの長手方向は、MDと交差しており、楕円柱状の第1の接合領域6aの対称軸のうち最も長い軸と、帯状の高伸縮性積層部A2及び低伸縮性積層部A1の配列方向(MD)となす角は、0°を超え90°以下であることが好ましく、10°以上90°以下であることがより好ましい。図4に示すように、複数の第1の接合領域6aは、その長手方向がMDに対して異なる傾斜角度を有するように存在してもよい。
【0044】
図7は、第五実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)断面図である。第五実施形態においては、伸縮性積層シート1は、エラストマー層3、及び当該エラストマー層の両面上に設けられた不織布2、4を含む積層体からなっており、低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの形状が、棒状である。第1の接合領域6aの長手方向は、MDと交差しており、楕円柱状の第1の接合領域6aの対称軸のうち最も長い軸と、帯状の高伸縮性積層部A2及び低伸縮性積層部A1の配列方向(MD)となす角は、0°を超え90°以下であることが好ましく、10°以上90°以下であることがより好ましい。第1の接合領域6aの形状が棒状であることにより、低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aを、第一〜四実施形態よりも緻密に形成することができる。
【0045】
図8は、第六実施形態に係る伸縮性積層シートの(a)上面図及び(b)断面図である。第六実施形態においては、伸縮性積層シート1は、エラストマー層3、及び当該エラストマー層の両面上に設けられた不織布2、4を含む積層体からなっており、低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの形状が、ドット形状である。
【0046】
以上、第一〜六実施形態に係る伸縮性積層シートについて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、低伸縮性積層部A1において、第1の接合領域6aの形状は1種類である必要はなく、帯状、楕円状、楕円柱状、棒状、ドット形状が混在してもよい。また、高伸縮性積層部A2においても、低伸縮性積層部A1に比して伸縮性が高くなっている限り、第1の接合領域6aの形状は1種類である必要はなく、上述のドット形状の他に、楕円状、楕円柱状、棒状等の形状が混在してもよい。低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの分散状態、および、高伸縮性積層部A2における第1の接合領域5aの分散状態を制御することにより、低伸縮性積層部A1と高伸縮性積層部A2との間の耐裂け性を向上することができるものと推察される。
【0047】
ここで、図9を参照し、エラストマー層3の両面に不織布2、4を設けた構造、すなわち、第1の不織布4、エラストマー層3、及び第2の不織布2からなる3層構造の積層体を例にとって、伸縮性積層シート1の製造方法について説明する。
【0048】
伸縮性積層シート1は、エラストマー層、及び不織布を別々に作製し、その後に積層するという工程により製造することができる。また、エラストマー層、及び不織布を同時溶融押出ラミネート法によって一体的に成形することにより製造することもできる。エラストマー層3及び不織布2からなる2層構造の積層体も、第1の不織布4、エラストマー層3及び第2の不織布2からなる3層構造の積層体も、同時溶融押出ラミネート法にて作製可能である。
【0049】
同時溶融押出しラミネート法については、いろいろなプロセスがあるが、例えば図9に示すような一連のプロセスによって、伸縮性積層シート1を製造することができる。供給ロール21には第1の不織布4が巻き取られており、矢印で示すように、一対のラミネート用のロール24及び25の間に送り出される。一方、供給ロール22には第2の不織布2が巻き取られており、矢印で示すように、冷却ロール25及びニップロール24の間に送り出される。冷却ロール25及びニップロール24は、何れか一方又は両方に、凸パターンが設けられている(凸パターンが設けられていないロールは、ほぼ平滑な表面を有する)カレンダーロール及びゴムロールとすることができる。エラストマー層3は、押出機(図示せず)に接続されたダイ(通常、Tダイ)23から溶融流の形で送り出され、第1の不織布4と第2の不織布2の間に案内され、ここで冷却され、固化される。なお、エラストマー層3が多層構造である場合には、2個もしくはそれ以上の押出機を使用して、ダイ23からエラストマー層3の溶融流を多層の溶融流の形で送り出すことができる。
【0050】
第1の不織布4、エラストマー層3、及び第2の不織布2は、図示される通り、冷却ロール25及びニップロール24により積層され、一体化される。得られたシート状の積層体は、引張りロール26によって引張り応力を与えられるので、冷却ロール25の外周を矢印の方向に案内される。このようにして製造された伸縮性積層シート10は、引張りロール26のところで方向転換させられた後、矢印の方向に案内され、巻き取りロール(図示せず)に巻き取られる。
【0051】
このようにして得られる伸縮性積層シート10は、エラストマーフィルムの製造工程と、エラストマーフィルムと第1の不織布及び第2の不織布とのラミネート工程とを同時に行うことで製造できるので、コストパフォーマンスにすぐれている。
【0052】
なお、上記のようにして同時溶融押出しラミネート法によって伸縮性積層シート1、10を製造する場合、伸縮性積層シート1、10は、エラストマー層3と不織布2、4との接合部として、上記所定の形状となって、高伸縮性積層部A2及び低伸縮性積層部A1において、相対的に強く接合する部分(第1の接合領域5a及び6a)と、エラストマー層3と不織布2、4とが、第1の接合領域5a及び6aよりも相対的に弱く接合する部分(第2の接合領域5b及び6b)とが形成される。その手段としては、溶融押出しによってTダイから押し出されたエラストマー組成物の溶融流(溶融ポリマー)を第1及び第2の不織布で挟み込み積層体とし、かかる積層体を、冷却ロール25及びニップロール24の一方又は両方に設けられた所定の形状の凸パターンで押さえ(ニップし)、溶融ポリマーを冷却固化させる方法を用いることができる。
【0053】
低伸縮性積層部A1となる部分に対して与える凸パターンの形状としては、帯状、楕円状、楕円柱状、棒状、ドット形状等が挙げられる。低伸縮性積層部A1の領域内において、凸パターン部によってニップされた領域は、凸パターンが形成されていない部分によってニップされた領域よりも不織布とエラストマーフィルムが強く結合されることにより、第1の接合領域6aが形成される。
また、高伸縮性積層部A2となる部分に対して与える凸パターンの形状としては、例えば、ドット形状等が挙げられる。低伸縮性積層部A1と同様に、高伸縮性積層部A2の領域内において、凸パターン部によってニップされた領域は、凸パターンが形成されていない部分によってニップされた領域よりも不織布とエラストマーフィルムが強く結合され、第1の接合領域5aが形成される。
なお、ニップロールとしては、高伸縮性積層部A2及び低伸縮性積層部A1が、シート製造時におけるシートの流れ方向(MD:Machine Direction)に並行な帯状の領域として形成される場合、または、高伸縮性積層部A2及び低伸縮性積層部A1が、シート製造時におけるシートの流れ方向(MD)に垂直な方向(CD)に並行な帯状の領域として形成される場合等、高伸縮性積層部A2及び低伸縮性積層部A1を形成する方向に応じて、ロール表面に、低伸縮性積層部A1となる部分に対して与える凸パターンと、高伸縮性積層部A2となる部分に対して与える凸パターンとが形成されたものを用いることができる。
【0054】
低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの総面積は、高伸縮性積層部A2における第1の接合領域5aの総面積よりも大きくなるように凸パターンによってニップされる。また、形成された伸縮性積層シートは、使用前にあらかじめ幅方向に一旦伸ばして、再度戻す加工を施しておいてもよい。
【0055】
また、水蒸気透過性を付与するため、得られた伸縮性積層シート1、10に対してヒートニードル加工を施し、水蒸気透過に適度の細孔を伸縮性積層シート1、10付与することもできる(パーフォレーション)。
【0056】
このようにして製造された伸縮性積層シート10によれば、伸縮性積層シート10又はこれ所定の大きさに切り出した伸縮性部材における低伸縮性積層部A1を他の衛生用品等の本体部に固定した場合に、本体部との保持性を維持しつつ、また、低伸縮性積層部A1と高伸縮性積層部A2との間の耐裂け性を向上することができる。
【0057】
本発明による伸縮性積層シート1は、所定の形状及び大きさに切り出すことで伸縮性部材として使用することができる。かかる伸縮性部材は、低伸縮性積層部A1と高伸縮性積層部A2を少なくともそれぞれ1つずつ有していればよい。また、ある態様においては、伸縮性部材は、高伸縮性積層部A2の両端に低伸縮性積層部A1が存在するような形状を有する。伸縮性部材は、例えば、下着等の衣類、使い捨ておむつ等の衛生用品(例えば、使い捨ておむつにおけるメカニカルファスナーを取付けるイヤ部)、伸縮性のサポーター、マスクの耳かけ部等に使用することが可能である。
【0058】
以上、本発明における伸縮性積層シート及びその製造方法について好適な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1〜13、及び比較例1〜5)
Tダイ1軸溶融押出機とチルロールからなる、フィルム製造装置を用いて、エラストマーフィルム(エラストマー層3)を作成した。エラストマーフィルムの原料として、熱可塑性ポリウレタン樹脂エラストマー(TPU)、スチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー(SIS)、及び水素化石油樹脂(添加剤)の混合物を用いた。TPUとしては、DIC・バイエル社製、PANDEX(商標)T−1575X(A硬度75)を、SISとしては、クレイトンポリマージャパン社製、商品名:クレイトンD1117Pを、添加剤としては、荒川化学社製、商品名:アルコンP−125を用いた。TPU:SIS:添加剤の配合比を、88−99.2:0.7−8.8:0.1−3.2の範囲でドライブレンドし、200℃に加熱されたTダイ1軸溶融押出機に投入した。押出回転数は20rpm、引取り速度は3mpmの条件にて、Tダイ1軸溶融押出機から押出したフィルム状溶融体を、不織布2、4(南六企業社製、商品名:TPA−032)で両側から挟みながら、20℃にコントロールしたチルロールとニップロールの間に導入し、溶着、冷却固化された厚み目標値40μmの伸縮性積層シート10を得た。
この際、ニップロール表面に、さまざまな凸パターンを彫刻したものを用い、伸縮性積層シート10を形成した。
すなわち、低伸縮性積層部A1中の第1の接合領域6aが下記A−1〜A−3型、B型、C型、D型、E型に分類される所定の形状となるように、実施例1〜13、及び比較例1〜5の伸縮性積層シート10を形成した。
また、高伸縮性積層部A2中の第1の接合領域5aの形状は、低伸縮性積層部A1に形成された第1の接合領域6aの面積よりも小さな面積を有するドット形状となるようにし、高伸縮性積層部A2に占める第1の接合領域5aの割合が下記F−1〜F−5型に分類されるように、実施例1〜13、及び比較例1〜5の伸縮性積層シート10を形成した。
低伸縮性積層部A1は、伸縮性積層シートのMDに平行な帯状のものであり、その幅は30mmであった。また、高伸縮性積層部A2も、伸縮性積層シートのMDに平行な帯状のものであり、その幅は40mmであった。
低伸縮性積層部A1と高伸縮性積層部A2とは、伸縮性積層シートにおいてCDに沿って交互に形成された。
なお、実施例1〜13、及び比較例1〜5で得られた伸縮性積層シートについては、CDに沿って予め115%延伸し、戻すという加工を施した。
【0061】
[低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの形状]
A−1型:低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの形状は、図2に示すような形状である。(ただし、MDに沿う帯の長さ:10mm、帯の間隔:5mmであり、低伸縮性積層部A1に占める第1の接合領域6aの割合:67%である。)
A−2型:低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの形状は、図2に示すような形状である。(ただし、MDに沿う帯の長さ:5mm、帯の間隔:5mmであり、低伸縮性積層部A1に占める第1の接合領域6aの割合:50%である。)
A−3型:低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの形状は、図2に示すような形状である。(ただし、MDに沿う帯の長さ:5mm、帯の間隔:10mmであり、低伸縮性積層部A1に占める第1の接合領域6aの割合:33%である。)
B型:低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの形状は、図3に示すような形状である。(低伸縮性積層部A1に占める第1の接合領域6a部の割合:41%)
C型:低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの形状は、図6に示すような形状である。(低伸縮性積層部A1に占める第1の接合領域6aの割合:10.56%)
D型:低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aの形状は、図5に示すような形状である。(低伸縮性積層部A1に占める第1の接合領域6aの割合:10.3%)
E型:低伸縮性積層部A1における第1の接合領域6aは、低伸縮性積層部A1全体である。(低伸縮性積層部A1に占める第1の接合領域6aの割合:100%)
【0062】
[高伸縮性積層部A2における第1の接合領域5aの形状]
F−1型:高伸縮性積層部A2における第1の接合領域5aの形状は、図2〜6に示すのと同様の形状である。(ただし、高伸縮性積層部A2に占める第1の接合領域5aの割合:0.39%である。)
F−2型:低伸縮性積層部A1における第1の接合領域5aの形状は、図2〜6に示すような形状である。(ただし、高伸縮性積層部A2に占める第1の接合領域5aの割合:0.57%である。)
F−3型:低伸縮性積層部A1における第1の接合領域5aの形状は、図2〜6に示すような形状である。(ただし、高伸縮性積層部A2に占める第1の接合領域5aの割合:0.88%である。)
F−4型:低伸縮性積層部A1における第1の接合領域5aの形状は、図2〜6に示すような形状である。(ただし、高伸縮性積層部A2に占める第1の接合領域5aの割合:1.57%である。)
【0063】
得られた伸縮性積層シートに対して、高伸縮性積層部A2の弾性率及び低伸縮性積層部A1の弾性率を測定した。そして、測定された各弾性率の値から、高伸縮性積層部A2の弾性率に対する低伸縮性積層部A1の弾性率の比([低伸縮性積層部A1の弾性率]/[高伸縮性積層部A2の弾性率])を算出した。
[高伸縮性積層部A2の弾性率及び低伸縮性積層部A1の弾性率の測定]
低伸縮性積層部A1の弾性率、及び高伸縮性積層部A2の弾性率は、以下の方法により測定した。低伸縮性積層部A1の弾性率は、まず、得られた伸縮性積層シートにおける低伸縮性積層部A1から、長手方向(MD)10mm幅×幅方向(CD)20mm幅の短冊状サンプルを切り出した。次に、得られたサンプルをテンサイル試験機(オリエンテック社製、型番RTG−1225)にチャック間距離が15mmとなるよう無張力で且つサンプルのCD方向が引張方向となるように固定し、CD方向に100mm/minでサンプルを変形させて応力歪み曲線を求めた。そして、得られた応力歪み曲線における応力が立ち上がる直線部分の傾きから弾性率を求めた。高伸縮性積層部A2の弾性率についても同様にして弾性率を測定した。
【0064】
得られた伸縮性積層シートの耐久性(耐裂け性)及び保持力を下記条件にて評価した。結果を表1に示す。
【0065】
[耐久性(耐裂け性)の評価]
伸縮性積層シートから長手方向(MD)25mm幅×幅方向(CD)70mm幅のサンプルを切り出した。この際、CDに沿って両端から15mmは低伸縮性積層部A1となるようにした。切り出したサンプルを、チャック間隔を50mmに設定したテンシロン試験機(オリエンテック社製、型番RTG−1225)に固定し、試験速度1000mm/minにてCDに沿って10Nまで伸張させるサイクルを繰り返す試験を行い、エラストマー層が破断するまでの回数を記録した。
【0066】
[保持力の評価]
スパンボンド不織布(ユニチカ製、SB02)を50mm角に切り取った。切り取った不織布を半分に折り、長手方向(MD)25mm幅×幅方向(CD)70mm幅に切り取った伸縮性積層シートサンプルのCD方向の一端を、半分に折った不織布の間にはさんだ。なお、伸縮性積層シートサンプルは、CD方向の両端に低伸縮性積層部A1が15mmずつ存在し、また、かかる両端の低伸縮性積層部A1の間に40mmの高伸縮性積層部A2が存在するように、調製した。半分に折った不織布に伸縮性積層シートサンプルをはさむ際、不織布端が伸縮性積層シートサンプルの高伸縮性積層部A2及び低伸縮性積層部A1との境界と重なるようにし、境界から5mm離れた低伸縮性積層部A1上の位置で、不織布と伸縮性積層シートサンプルをClip Sealer Z−1(株式会社テクノインパルス社製)を用いて、ヒートシールした。
上記ヒートシールしたサンプルをチャック間を65mmに設定したテンシロン試験機(オリエンテック社製、型番RTG−1225)に固定した。なお、サンプルを固定する際、上側は不織布のみの部分をつかんで固定し、下側は低伸縮性積層部A1のみの部分(不織布が存在しない)をつかんで固定するようにした。固定した後に、300mm/minの速度で引っ張った。
サンプルが破断した場合をGOOD、サンプルが破断する前に不織布から外れた場合をNGとして、保持力を判定した。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例1〜13においては、高伸縮性積層部A2の弾性率に対する低伸縮性積層部A1の弾性率の比が特定の範囲となるように、第1の接合領域6a及び第1の接合領域5aが存在しているため、比較例1〜5に比して、破断に至るまでの回数が多く、耐久性(耐裂け性)に優れることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0069】
1、10…伸縮性積層シート、2、4…不織布、3…エラストマー層、5a…高伸縮性積層部における第1の接合領域、5b…高伸縮性積層部における第2の接合領域、6a…低伸縮性積層部における第1の接合領域、6b…低伸縮性積層部における第2の接合領域、A1…低伸縮性積層部、A2…高伸縮性積層部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー層、及び当該エラストマー層の少なくとも一方の面上に設けられた不織布を含む積層体からなる伸縮性積層シートであって、
前記伸縮性積層シートは、前記積層体を構成する、低伸縮性積層部及び高伸縮性積層部が一方向に交互に配置されてなり、
前記低伸縮性積層部及び高伸縮性積層部には、いずれも、前記エラストマー層と前記不織布とが接合した第1の接合領域と、当該第1の接合領域よりも弱く前記エラストマー層と前記不織布とが接合した第2の接合領域が存在し、
前記低伸縮性積層部における、前記第1の接合領域の総面積が、前記高伸縮性積層部における、前記第1の接合領域の総面積より大きく、
前記高伸縮性積層部の弾性率に対する前記低伸縮性積層部の弾性率の比が、1を超え7.5以下である、伸縮性積層シート。
【請求項2】
エラストマー層、及び当該エラストマー層の両面上に設けられた不織布を含む積層体からなる、請求項1に記載の伸縮性積層シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の伸縮性積層シートを含む物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−51301(P2012−51301A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197176(P2010−197176)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】