説明

伸縮性経編地とその用途

【課題】筋力強化、姿勢矯正、疲労軽減などのための衣類などとして用いることにより、スポーツトレーニングにおける筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などの場において平衡感に優れた筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などを図ることが可能となる、伸縮性経編地とその用途を提供する。
【解決手段】本発明にかかる伸縮性経編地は、生地部において伸張抑制力が他の部分よりも強い伸張抑制部を部分的に備える伸縮性経編地において、前記伸張抑制部が、伸張抑制力を強化するための強化伸縮糸のターン幅を70針以上とすることで編成されている、ことを特徴とし、本発明にかかる衣類は、前記伸縮性経編地が用いられてなる、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋力強化、姿勢矯正、疲労軽減などのための衣類などを作るための伸縮性経編地とその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筋力強化、姿勢矯正、疲労軽減などの目的で用いられる衣類など、そして、これらを作るための伸縮性経編地については、これまで、種々の提案や商品提供もなされており、実用もされている(例えば、特許文献1,2参照)。
この伸縮性経編地は、伸張抑制部を部分的に備える伸縮性経編地であって、前記伸張抑制部が、生地中に、強化伸縮糸を挿入・編み込みすることで構成されている。このように、強化伸縮糸を挿入・編み込みすることで伸張抑制部を設けるようにすると、伸張抑制力を備えた当て布を縫い合わせたりする場合と比べて、縫い目のごろつき、上着への影響といった不利益がなく、また、縫い合わせを必要としてない点で工程の簡素化・効率化が図られる。
【0003】
この伸縮性経編地やこれを用いて作られたスポーツ衣類について、本発明者は、その働きと効果について詳しく検証してみた。その中で、従来は、伸縮性経編地における伸張抑制部を作り出すために用いられている強化伸縮糸の太さや伸縮力にのみ目を向けていて、筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などの場における平衡感の必要性について目を向けてはいないことが分かった。
筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などを効果的にする上では、単に、伸張抑制力を強くするだけでは不十分であって、身体の筋肉の種類や配置を考え、かつ、着用者の現在の身体状態を考慮してのバランスの取れた筋力強化や姿勢制御をすることが重要である。
【0004】
たとえば、身体のA点とB点の間での筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などを図る上で、伸張抑制は、当該A点とB点の間で図るのみでなく、A点とB点から遠く離れた三角点に当たるC点との間でも図ることが必要な場合がある。その場合には、伸張抑制部の屈曲は極めて大きくする必要があるが、従来は、このC点との間での伸張抑制に目を向けることがなかったので、強化伸縮糸のターン幅は、せいぜい、50針程度であって、それ以上にすることはなかった。
また、たとえば、これらA点とB点の間に相当する部位の伸張抑制部に筋状にカーブを描く場合においても、従来は、生地にせいぜい10本程度の強化伸縮糸を挿入して当該伸張抑制部を構成していたが、これでは、A点とB点の間で「線状」に伸張抑制するだけであるため、その伸張抑制は周囲筋肉にまで働き掛けることがなく、平衡感に乏しいものであった。筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などを効果的に達成する上では、伸張抑制は、当該部位の筋肉のみでなく、その周囲の筋肉にも働き掛けてゆくことが必要である。そのためには、強化伸縮糸の本数を大幅に増やし、伸張抑制部の幅を大きくしてゆくことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−303414号公報
【特許文献2】特開2007−23427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであって、筋力強化、姿勢矯正、疲労軽減などのための衣類などとして用いることにより、スポーツトレーニングにおける筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などの場において平衡感に優れた筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などを図ることが可能となる、伸縮性経編地とその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる伸縮性経編地は、生地部において伸張抑制力が他の部分よりも強い伸張抑制部を部分的に備える伸縮性経編地において、前記伸張抑制部が、伸張抑制力を強化するための強化伸縮糸のターン幅を70針以上とすることで編成されている、ことを特徴とする。
本発明にかかる衣類は、本発明にかかる上記の伸縮性経編地が用いられてなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる伸縮性経編地は、伸張抑制部が、伸張抑制力を強化するための強化伸縮糸のターン幅を70針以上とすることで編成されており、このような高度位置決め技術を用いた伸縮性経編地を生地として用いて衣類を作れば、例えば、平衡感を供えた筋力強化、姿勢矯正、疲労軽減などが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明にかかる伸縮性経編地の編成形態を表す平面図
【図2】本発明にかかる伸縮性経編地と従来技術との違いを説明するための模式図
【図3】本発明にかかる伸縮性経編地の一部の編成形態を表す編組織図
【図4】本発明にかかる伸縮性経編地の一部の編成形態を表す編組織図
【図5】本発明にかかる伸縮性経編地の一部の編成形態を表す編組織図
【図6】本発明にかかる伸縮性経編地の一部の編成形態を表す編組織図
【図7】本発明にかかる伸縮性経編地の一部の編成形態を表す編組織図
【図8】本発明にかかる伸縮性経編地の別の実施形態における一部の編成形態を表す編組織図
【図9】本発明にかかる伸縮性経編地の一部の編成形態を各筬ごとに分解して表す編組織図
【図10】本発明にかかる伸縮性経編地を適用してなる衣類を表す正面図
【図11】実施例で評価した測定部位を示すための伸縮性経編地の平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかる伸縮性経編地およびその用途について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明の伸縮性経編地は、伸張抑制部を部分的に備えるものであり、この伸張抑制部が、筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などを促す部分となる。この伸張抑制部を部分的に備えるものである点以外は、通常の伸縮性経編地と共通のものであって良い。
例えば、鎖編糸と挿入糸によるサテン編、プレーンコード編、デンビ編、チュール編、メッシュ調などの組織において、ポリウレタン繊維などのスパンデックス糸その他の伸縮糸を挿入して編成することにより、編地全体に伸縮性を付与したものが一般的である。
【0011】
また、必要に応じて、非伸縮糸あるいは伸縮糸による柄や模様となる編成組織を組み合わせるなどしても良い。
前記伸張抑制部は、生地部において伸張抑制力が他の部分よりも強い部分であり、強化伸縮糸のターン幅を70針以上とすることで編成されている。このような高度位置決め技術を用いることにより、スポーツトレーニングにおける筋力強化や姿勢矯正、運動を補助することによる疲労軽減などの場において平衡感に優れた筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などを図ることが可能となるのである。伸張抑制部のターン幅は100針以上であることが好ましい。
【0012】
地組織を形成するための非伸縮糸および伸縮糸、ならびに、伸張抑制部を形成するための強化伸縮糸について説明すると、以下のとおりである。
非伸縮糸としては伸度100%未満の糸が好ましく使用でき、綿などの天然繊維、ナイロンなどの合成繊維、さらには半合成繊維や再生繊維などが使用できる。これらの繊維からなるフィラメント糸、紡績糸、交撚糸などの何れの形態でもよい。非伸縮糸の太さは、例えば、17〜117dtexとする。
地組織を形成するための伸縮糸、伸張抑制部を形成するための強化伸縮糸のいずれも、伸度200%以上の糸が好ましく使用でき、例えば、ポリウレタン伸縮糸が使用できる。スパンデックスとして知られる高伸縮ポリウレタン糸や伸縮糸に非伸縮糸を被覆した被覆伸縮糸も使用できる。これらの伸縮糸の太さは、例えば、22〜620dtexとする。
【0013】
次に、伸張抑制部を部分的に備える伸縮性経編地の具体例について、図面を参照しながら説明する。
例えば、図1に示す例では、伸縮性経編地10において、2パターンの伸張抑制部11a,11bが示されている。
図1に示すように、伸張抑制部は1つの編地において複数パターン設けることが可能であり、それらが相互に重なりをもっていても良い。伸張抑制部を複数パターン設ける場合は、複数の筬を用い、それぞれにおいて所望のパターンを形成するよう制御すればよい。
また、図1に示す例において、強化伸縮糸の本数は、伸張抑制部11a、伸張抑制部11bのいずれにおいても92本となっている。このように、伸縮抑制部における強化伸縮糸の本数を比較的多くすることで、筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などが必要とされる部位の筋肉のみでなく、その周囲の筋肉にも伸長抑制力を働き掛けることができ、筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などを効果的に達成させることができる。伸縮抑制部における強化伸縮糸の本数は5本以上であることが好ましく、20本以上がより好ましい。この場合、例えば、強化伸縮糸5本以上を1組として複数組が1針以上(例えば、1〜5針)の間隔を空けて互いに添うよう配置されている形態などとしても良い。このように、伸張抑制部の数や配置は目的に応じて適宜決定することができる。
【0014】
そして、本発明にかかる伸縮性経編地は、部分的に伸張抑制部が形成され、この伸張抑制部は、図1に見るように、強化伸縮糸のターン幅を70針以上とすることで編成されている。より詳しくは、強化伸縮糸のターン幅は、伸張抑制部11a、伸張抑制部11bのいずれにおいても170針となっている。上記における強化伸縮糸のターン幅とは、図1において符号L1、L2で示す幅のことである。
ここで、強化伸縮糸のターン幅について、本発明と従来技術との違いを図2を用いて説明する。
図2において、点線部は従来技術における伸張抑制部11を模式的に表したものであり、実線部は本発明における伸張抑制部11を模式的に表したものである。
【0015】
図2に見るように、従来は、A点とB点の他にC’点との間で伸張抑制を図る程度で十分と考えられていた。しかし、筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などの場における平衡感の必要性にまで目を向けたとき、実際には、A点とB点の他に、これらの点から大きく離れたC点との間で伸張抑制を図る必要のある場合があり、本発明は、このような場合に、図2に示すように、十分な屈曲をもたせることで、平衡感に優れた筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などを実現している。このようなC点としては、骨盤、特にその大転子などがある。
図1に示す伸縮性経編地の編組織の一部を拡大した図が図3〜7である。
【0016】
図3は、図1に示す伸縮性経編地10のうちの10aで示す部分の編組織を拡大したものであり、同様に、図4は10b、図5は10c、図6は10d、図7は10eで示す部分の編組織を拡大したものである。なお、図3〜7では、地組織を形成するための非伸縮糸21および伸縮糸22と、強化伸縮糸23の糸の太さを変えて図示しているが、これは明瞭化のためであり、実際の糸の太さを表す趣旨ではない。
図3〜7を見ると、伸張抑制部11a,11bにおける強化伸縮糸23の本数が従来よりも格段に多く(具体的には、上述のとおり、92本)、極めて広範囲にわたって伸張抑制力が付与されていることが明確に理解できる。
【0017】
本発明にかかる伸縮性経編地は、また、上述のように、強化伸縮糸5本以上を1組として複数組が1針以上(例えば、1〜5針)の間隔を空けて互いに添うよう配置されている形態であってもよいのであるが、例えば、92本の強化伸縮糸が間隔を空けずに配置されている図3の実施形態において、強化伸縮糸5本以上を1組として複数組が1針以上の間隔を空けて互いに添うよう配置する形態に変更した場合、図8に示す編組織図となる。図8に示す編組織図では、強化伸縮糸23が、15本を1組として複数組が3針の間隔12を空けて互いに添うよう配置されている。
さらに、図3〜7に示す伸縮性経編地10の編組織を各筬ごとに分離して示したのが図9である。
【0018】
図9(a)は地組織を形成するための非伸縮糸21、図9(b)は地組織を形成するための伸縮糸22の動きを表している。図9(c)は伸縮性経編地10のうちの10aで示す部分における強化伸縮糸23aの動きを表し、同様に、図9(d)は10bで示す部分における強化伸縮糸23bの動きを表し、図9(e)は10cで示す部分における強化伸縮糸23cの動きを表し、図9(f)は10dで示す部分における強化伸縮糸23dの動きを表し、図9(g)は10eで示す部分における強化伸縮糸23eの動きを表している。
図3〜7や図9に示す例では、生地部では、地組織を形成するための編成組織として、12/12/12/10/10/10//からなる繰り返し単位を有する非伸縮糸21による編成組織に、伸縮糸22が22/11/33/11/22/00//からなる繰り返し単位で挿入されている。いずれもフルセットで導糸されている。
【0019】
生地部の地組織を形成するための編成組織は図3〜7や図9に示すものに限られず、例えば、地組織を、12/21/23/21/12/10//からなる繰り返し単位を有する非伸縮糸による編成組織と、21/12/10/12/21/23//からなる繰り返し単位を有する非伸縮糸による編成組織に、11/00//からなる繰り返し単位を有する伸縮糸と、00/11//からなる繰り返し単位を有する伸縮糸とが挿入されてなるものとすることができる。また、地組織を、21/12/10/12/21/23//からなる繰り返し単位を有する非伸縮糸による編成組織に、11/00/11/00/11//からなる繰り返し単位を有する伸縮糸と、11/00/33/22/33/00//からなる繰り返し単位を有する伸縮糸とが挿入されてなるものとすることができる。
【0020】
生地部における伸張抑制部11a、11bでは、図9に示すように、地組織を形成するための伸縮糸22とは別に、強化伸縮糸23が複数本挿入され、伸張抑制部11a、11bの形状に合わせて糸の動きが制御されている。図9に示す例では、同一ウェール上での挿入と、隣接ウェールへの移行を適宜行うことで制御しており、例えば、大きなカーブを描く部分では、同一ウェール上での挿入部分を少なくしたり、隣接ウェールへの移行幅を大きくしたりしている。
上記図1,図3〜7や、図9に示す伸縮性経編地10を、衣類に適用したのが図10である。
【0021】
図10から分かるように、伸張抑制部11a、11bが大きくカーブしており、A点、B点の間のみでなく、C点との間での伸張抑制をも実現されており、平衡感に優れた筋力強化や姿勢矯正、疲労軽減などを図ることが可能となっている。また、伸張抑制部11aと伸張抑制部11bが重なり部分Bをもっていることで、互いに影響し合い、D点、E点を含めた複雑な伸張抑制をも可能としている。
例えば、図10に示すように伸張抑制部を設けるようにすれば、伸張抑制部11aと伸張抑制部11bとの重なり部分Bで強い伸張抑制力が掛かるのであるが、本発明者の知見によれば、この重なり部分Bでの強い伸張抑制力により、着用者30は、自然と小指で地面を蹴り上げる理想的な歩行運動を促される。また、骨盤Eを覆う伸張抑制部11aが大きく湾曲するようになっていることで、着用者30の背筋を伸ばす姿勢矯正作用が働くようになっている。そして、さらに、前記伸張抑制部11aが前記重なり部分Bと連設していることで、重なり部分Bから骨盤Eにかけての広い範囲でバランスよく伸張抑制力が掛かるようになっている。
【0022】
このようにして、伸張抑制部を広範囲にわたって配置したり、2以上の伸張抑制部を重ね合わせることにより特に伸張抑制力の強い部分を配置したりすることができ、このような伸張抑制部を利用することで、筋力強化作用、姿勢矯正作用、疲労軽減作用などの様々な作用をもたせた衣類を作製することができる。例えば、メンズ、レディースを問わず、インナー衣類として好適に利用することができる。
なお、本発明にかかる衣類は、当て布の縫い合わせのように別生地を用いることなく、強化伸縮糸の挿入により伸張抑制部を形成しているので、当て布を配した場合のごとき縫い目や厚みの違いによる段差がなく、着用者に違和感を感じさせたり、上着に段差が現れて外観を損なうといったこともない。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下のようにして、図1,図3〜7や図9に示す伸縮性経編地を作製した。
編成装置としては、カールマイヤー社製のRSE−6ELを用いた。
非伸縮糸21を編成するための筬G1、伸縮糸22を編成するための筬G2、伸張抑制部21における伸縮糸23を編成するための筬G3、伸張抑制部22における伸縮糸23を編成するための筬G4の糸使いは以下のとおりとした。
<糸使い>
筬G1:ナイロン66 44T−34ブライト(東レ社製)
筬G2:ライクラ 78T−127C(東レ・オペロンテックス社製)
筬G3:ライクラ 285T−127C(東レ・オペロンテックス社製)
筬G4:ライクラ 78T−127C(東レ・オペロンテックス社製)
<性能試験>
(パワー)
図11に示す各部位X〜Z、X’〜Z’において、以下のようにして、パワーを測定した。
【0024】
すなわち、2.5cm×16.0cmの試験片を、タテ、ヨコ方向にそれぞれ採取して、これらの試験片を、上部つかみ2.5cm、下部つかみ3.5cm、つかみ間隔10.0cmとして、定速伸長型引張試験機に取り付け、30±2cm/minの速度で試験片に負荷をかけて80%伸長させた後、試験片に対する負荷を緩めながら30±2cm/minの速度で伸長を戻す操作を3サイクル繰返し、試験の間、パワー(試験片に生じる応力)を自動的に測定し記録した。
なお、上述の試験片を80%伸長させるとは、伸ばす前の試験片の長さ(掴み間隔)eと、伸ばした状態における試験片の伸び方向の長さdとから、(d−e)/e×100で求められる値が80%であることを意味する。
【0025】
上のようにして測定された3サイクル目(3rd)における80%伸長時のパワーは、
X部分: 734cN、X’部分:162cN、
Y部分:1108cN、Y’部分:166cN、
Z部分: 612cN、Z’部分:186cN
であった。
上記結果から、伸張抑制部の一部であるX,Y,Zのいずれにおいても、伸張抑制部の形成されていない部分であるX’,Y’,Z’と比較したとき、筋力強化、姿勢矯正、疲労軽減などの作用を与えるのに十分な伸張抑制力が付与されていることが分かる。
【0026】
(衣服圧)
伸張抑制部の重なり部分であり、特に強い伸張抑制力が発揮されると期待されるY部分について、以下のようにして衣服圧を測定するとともに、Y’部分でも同様に測定して、Y部分、Y’部分で実際に衣服圧に顕著な差が見られることを確認した。
エイエムアイ社製のエアパック式衣服圧測定器「AMI3037型」を用い、エアパックを一定の厚みの自然膨らみ状態にし、測定部位に取り付け、このエアパックにかかる内圧をチューブを通じて本体内の微圧センサで計測し、大気圧との差圧として算出される値を衣服圧とした。
【0027】
上のようにして測定された衣服圧は、
Y部分:53gf/cm、Y’部分:45gf/cm
であった。
上記結果から、伸張抑制部の重なり部分Yでは、高い衣服圧が生じており、筋力強化、姿勢矯正、疲労軽減などの作用を与える伸張抑制力が非常に高いことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の伸縮性経編地は、例えば、筋力強化、姿勢矯正、疲労軽減などが付与された衣類などの生地として有効に用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
10 伸縮性経編地
11a,11b 伸張抑制部
21 地組織を形成するための非伸縮糸
22 地組織を形成するための伸縮糸
23 強化伸縮糸
30 着用者
L1,L2 強化伸縮糸のターン幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地部において伸張抑制力が他の部分よりも強い伸張抑制部を部分的に備える伸縮性経編地において、前記伸張抑制部が、伸張抑制力を強化するための強化伸縮糸のターン幅を70針以上とすることで編成されている、ことを特徴とする、伸縮性経編地。
【請求項2】
前記伸張抑制部が強化伸縮糸5本以上を1組として複数組が1針以上の間隔を空けて互いに添うよう配置されている、請求項1に記載の伸縮性経編地。
【請求項3】
請求項1または2に記載の伸縮性経編地が用いられてなる、衣類。
【請求項4】
前記伸張抑制部により筋力強化作用をもたせるようにしてなる、請求項3に記載の衣類。
【請求項5】
前記伸張抑制部により姿勢矯正作用をもたせるようにしてなる、請求項3または4に記載の衣類。
【請求項6】
前記伸張抑制部により疲労軽減作用をもたせるようにしてなる、請求項3から5までのいずれかに記載の衣類。
【請求項7】
インナー衣類である、請求項3から6までのいずれかに記載の衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−168925(P2011−168925A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35176(P2010−35176)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(592117623)ウラベ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】