説明

伸縮性飾り紐

【課題】水引、ゴム紐、ゴムバンド、アクセサリーを通す紐などとして使用できる伸縮性飾り紐において、伸縮に伴って外観が損なわれないようにするとともに、装飾効果を向上する。
【解決手段】伸縮性を有するゴム紐からなる芯材21と、芯材21の表面に巻回される一次カバーリング材31と、一次カバーリング材31の上に芯材21の長さ方向に沿って延びるよう添付される熱溶着糸41と、熱溶着糸41の上に巻回される二次カバーリング材51とを有し、二次カバーリング材51の巻回後に、加熱されて熱溶着糸41が溶融された伸縮性飾り紐11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば水引などとして使用できる飾り紐に関し、より詳しくは、伸縮性を有し、着脱が容易でありバンドとしても使用できるような伸縮性飾り紐に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮性を有する水引として、下記特許文献1に開示されているようなものが提案されていた。
これは、弾性を有する芯の外周に糸条を巻回してなる紐状物を、複数本並列に引き揃えた伸縮性水引である。芯に対する糸条の巻回は、接着剤を用いて一体化することはせず、単に巻回するだけにして伸縮を可能にしている。
【0003】
しかし、このような構造の伸縮性水引では、伸縮に伴って芯の横断面積が変化する変形が起るので、糸条がずれたり、もどけたりして、外観を損なうことがある。
【0004】
また、ネックレスやブレスレッドに使用されるアクセサリーコードとして、下記特許文献2のようなものが開示されている。
【0005】
このアクセサリーコードは、弾性糸からなる芯糸に、熱可塑性合成繊維からなる鞘糸を巻きつけたもので、熱溶着によりほつれ防止がなされているものである。
【0006】
このような構成のアクセサリーコードでは、ほつれ防止がなされているため、上述した伸縮性水引の場合のようなずれなどの不都合は回避し得るが、特殊な鞘糸を使用しなければならないので、ビーズなどのような装飾部材(アクセサリー)を通すためのアクセサリーコードにはよいが、水引などとして使用するには装飾性に欠ける。また、特殊な糸を使用するためコストも掛かる。
【0007】
【特許文献1】実開昭61−133587号公報
【特許文献2】特開2003−79411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、伸縮に伴って外観が損なわれることがなく、装飾効果も高く、様々に使用され得るような伸縮性飾り紐の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段は、伸縮性を有する芯材と、該芯材の表面に巻回される一次カバーリング材と、該一次カバーリング材の上に添付される熱溶着糸と、該熱溶着糸の上に巻回される二次カバーリング材とを有し、二次カバーリング材の巻回後に、加熱されて上記熱溶着糸が溶融された伸縮性飾り紐である。
【0010】
上記の熱溶着糸は、たとえば芯材の長さ方向に沿って伸びるように沿わして添付する。
【0011】
熱溶着糸の溶着により、一次カバーリング材と熱溶着糸と二次カバーリング材との交点において、一体化が行われる。
【0012】
このため、カバーリング材の独立性が高く、芯材が伸縮してもその影響を受けることが少ない。また、芯材の伸縮に伴う変形も可能である。したがって、伸縮性飾り紐が伸縮して、芯材の横断面の面積が変化するような変形が起っても、カバーリング材同士の基本的な位置関係は保持される。
【0013】
この結果、カバーリング材のずれやもどけは抑制され、外観が維持できる。
【0014】
別の手段は、伸縮性を有する芯材の表面に、一次カバーリング材を巻回する一次巻回工程と、一次カバーリング材の上に熱溶着糸を添付する熱溶着糸添付工程と、熱溶着糸の上に二次カバーリング材を巻回する二次巻回工程と、二次巻回工程後に、熱溶着糸が溶融する温度に加熱する加熱溶融工程とを有する伸縮性飾り紐の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、一次カバーリング材の上に二次カバーリング材が巻回され、これらの間が熱溶着糸によって、部分的に結合一体化されているので、芯材が伸縮しても、カバーリング材のずれなどにより外観を損なうことがなく、良好な外観を維持できる。外周側の部分を編んで製造したものに劣らない良好な外観が得られる。
【0016】
また、カバーリング材には、綿糸、合成繊維、合成樹脂フィルム、紙、水引、組紐など適宜の材料のものを使用できるので、所望の外観を有する装飾性の高いものとすることができる。
【0017】
さらに、製造に当たって接着剤を不要にすることができるので、製造が容易に行える。しかも、仕上がり状態において接着剤のはみ出しなどもなく、この点からも外観を損なうことを阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、伸縮性飾り紐11(以下、「飾り紐」という。)の一例を示す斜視図であり、この図に示すように、飾り紐11は長さ方向に伸縮自在である。水引、ゴム紐、ゴムバンド、飾り、アクセサリーを通す紐などとして好適に使用される。
【0019】
この飾り紐11は、図2に示したように、伸縮性を有するゴム紐からなる芯材21と、該芯材21の表面に巻回される一次カバーリング材31と、該一次カバーリング材31の上に添付される熱溶着糸41と、該熱溶着糸41の上に巻回される二次カバーリング材51とを有し、上記の熱溶着糸41により、一次カバーリング材31と二次カバーリング材51とが部分的に一体化した構造である。
【0020】
芯材21には、用途に応じて適宜太さのものが使用され、その断面形状は図2に示したように四角形のものであるも、その他の形状、たとえば図3に示したように円形であるもよい。
【0021】
一次カバーリング材31と二次カバーリング材51については、撚糸、無撚糸、紙撚り紐、金属蒸着テープのような光沢や色彩を有する装飾テープ、水引、組紐など、適宜のものを用いることができる。上記の「水引」とは、紙縒りや合成樹脂製などからなる芯を着色したものや、芯に糸やテープなどを巻回した構造のものである。
【0022】
熱溶着糸41は、その融点以上に加熱されると溶けて、接触している部分を接着するもので、芯材21等の太さなどの条件に応じて適宜のものが使用される。
【0023】
まず、図2、図3に例示した飾り紐11について説明してから、図4、図5、図6、図7に示した飾り紐11について説明する。
【0024】
図2、図3に示した飾り紐11は、一次カバーリング材31に、1種類1本の撚糸32を用い、二次カバーリング材51として、撚糸52と、この上から巻回する装飾テープ53の、2種類2本のカバーリング材を用いた例である。
【0025】
すなわち、芯材21の表面に一次カバーリング材31としての撚糸32を巻回した(一次巻回工程)後、この上に熱溶着糸41を添付し(熱溶着糸添付工程)、さらにこの上に、二次カバーリング材51として、撚糸52と装飾テープ53を順に巻回して(二次巻回工程)から、熱溶着糸41が溶融しカバーリング材等を損傷しない温度(たとえば、150度程度)に加熱(加熱溶融工程)して製造される。
【0026】
上記の熱溶着糸41は、たとえば粗く巻回するなど適宜の添付の仕方をするとよいが、図示したように、芯材21の長さ方向に延びるように沿わせるだけで、所望の効果が得られる。沿わせるだけであれば、製造も容易であるのでこの点でも好ましい。
【0027】
また、二次カバーリング材51は、一次カバーリング材31の巻回方向とは逆の方向に巻回する。これによって、捩れのない、真っ直ぐな飾り紐11が得られる。
【0028】
つぎに、図4に例示した飾り紐11について説明する。
図4に示した飾り紐11は、一次カバーリング材31として、2種類2本のカバーリング材を用い、二次カバーリング材51として、1種類1本のカバーリング材を用いた例である。一次カバーリング材31には、紙撚り紐33と無撚糸34を用い、この順に巻回している。二次カバーリング材51には、金属蒸着テープなどの装飾テープ53を用い、隙間を開けて巻回している。
【0029】
すなわち、芯材21の表面に一次カバーリング材31としての紙撚り紐33を巻回してから無撚糸34を巻回する(一次巻回工程)。この後、一次カバーリング材31の上に熱溶着糸41を添付し(熱溶着糸添付工程)、さらにこの上に、二次カバーリング材51としての装飾テープ53を巻回する(二次巻回工程)。続いて、熱溶着糸41が溶融する温度に加熱(加熱溶融工程)して製造する。
【0030】
この場合も、上記の熱溶着糸41は、適宜の添付の仕方をするとよいが、図示したように、芯材21の長さ方向に延びるように沿わせるのが好ましい。
【0031】
また、二次カバーリング材51は、一次カバーリング材31の巻回方向とは逆の方向に巻回する。
【0032】
続いて、図5に例示した飾り紐11について説明する。
図5に示した飾り紐11は、一次カバーリング材31として、2種類2本のカバーリング材を用い、二次カバーリング材51として、2種類2本のカバーリング材を用いた例である。一次カバーリング材31には、紙撚り紐33と撚糸32を用い、この順に巻回している。二次カバーリング材51には、無撚糸54と金属蒸着テープなどの装飾テープ53を用いて、この順に巻回している。
【0033】
すなわち、芯材21の表面に一次カバーリング材31としての紙撚り紐33を巻回してから撚糸32を巻回する(一次巻回工程)。この後、一次カバーリング材31の上に熱溶着糸41を添付し(熱溶着糸添付工程)、さらにこの上に、二次カバーリング材51としての無撚糸54と装飾テープ53を、この順で巻回する(二次巻回工程)。続いて、熱溶着糸41が溶融する温度に加熱(加熱溶融工程)して製造する。
【0034】
この場合も、上記の熱溶着糸41は、適宜の添付の仕方をするとよいが、図示したように、芯材21の長さ方向に延びるように沿わせるのが好ましい。
【0035】
また、二次カバーリング材51は、一次カバーリング材31の巻回方向とは逆の方向に巻回する。
【0036】
この場合も、上記の熱溶着糸41は、適宜の添付の仕方をするとよいが、図示したように、芯材21の長さ方向に延びるように沿わせるのが好ましい。
【0037】
また、二次カバーリング材51は、一次カバーリング材31の巻回方向とは逆の方向に巻回する。
【0038】
図6に例示した飾り紐11は、一次カバーリング材31として、1種類1本のカバーリング材を用い、二次カバーリング材51として、1種類1本のカバーリング材を用いたものである。一次カバーリング材31には無撚糸34を用いる。二次カバーリング材51には水引55を用いている。水引55には、既存のものが使用でき、たとえば紙縒り等に着色を施したもの、テープ等を巻回したものであるとよい。テープを巻回したものである場合には、図6(a)のように一色のテープを巻回したものであるもよいが、図6(b)のように光沢を有する色のテープ55aがあらわれるように巻回したものであると、美麗な外観を得られるのでよい。
【0039】
すなわち、まず、芯材21の表面に一次カバーリング材31としての無撚糸34を密に巻回する(一次巻回工程)。この後、一次カバーリング材31の上に熱溶着糸41を添付し(熱溶着糸添付工程)、さらにこの上に、二次カバーリング材51としての水引55を、粗く巻回する(二次巻回工程)。密に巻回するもよい。続いて、熱溶着糸41が溶融する温度に加熱(加熱溶融工程)して製造する。
【0040】
この場合も、上記の熱溶着糸41は、適宜の添付の仕方をするとよいが、図示したように、芯材21の長さ方向に延びるように沿わせるのが好ましい。
【0041】
また、二次カバーリング材51は、一次カバーリング材31の巻回方向とは逆の方向に巻回する。
【0042】
この場合も、上記の熱溶着糸41は、適宜の添付の仕方をするとよいが、図示したように、芯材21の長さ方向に延びるように沿わせるのが好ましい。
【0043】
また、二次カバーリング材51は、一次カバーリング材31の巻回方向とは逆の方向に巻回する。
【0044】
図7に例示した飾り紐11は、一次カバーリング材31として、2種類2本のカバーリング材を用い、二次カバーリング材51として、2種類2本のカバーリング材を用いた例である。一次カバーリング材31には、水引35と無撚糸34を用い、この順に巻回している。二次カバーリング材51には、無撚糸54と金属蒸着テープなどの装飾テープ53を用いて、この順に巻回している。
【0045】
すなわち、芯材21の表面に一次カバーリング材31としての水引35を密に巻回してから無撚糸34を巻回する(一次巻回工程)。この後、一次カバーリング材31の上に熱溶着糸41を添付し(熱溶着糸添付工程)、さらにこの上に、二次カバーリング材51としての無撚糸54を粗く巻回してから、この無撚糸54の幅方向の中間位置に乗せるように装飾テープ53を巻回する(二次巻回工程)。続いて、熱溶着糸41が溶融する温度に加熱(加熱溶融工程)して製造する。二次カバーリング材51の無撚糸54は粗く巻回し、その上に装飾テープ53が乗るようにしているので、一次カバーリング材31の表面は無撚糸54の間から視認でき、水引35等の外観によっては、伸縮性と相俟って斬新な意匠感を得られる。
【0046】
この場合も、上記の熱溶着糸41は、適宜の添付の仕方をするとよいが、図示したように、芯材21の長さ方向に延びるように沿わせるのが好ましい。
【0047】
また、二次カバーリング材51は、一次カバーリング材31の巻回方向とは逆の方向に巻回する。
【0048】
この場合も、上記の熱溶着糸41は、適宜の添付の仕方をするとよいが、図示したように、芯材21の長さ方向に延びるように沿わせるのが好ましい。
【0049】
また、二次カバーリング材51は、一次カバーリング材31の巻回方向とは逆の方向に巻回する。
【0050】
上記のような工程を有する飾り紐は、適宜の装置を用いて製造される。
【0051】
このようにして構成された飾り紐11では、図8に模式的に示したように、一次カバーリング材31と二次カバーリング材51との間に、芯材21の長さ方向に延びるように介装された熱溶着糸41が溶融し接着を行うので、これら三者が重合する部分で、部分的な接着が行われる。図中、42が接着部分である。
【0052】
全体が接着されているわけではないので、芯材21の伸縮に伴って一次カバーリング材31と二次カバーリング材51が適宜変形するため、伸縮に支障はない。このため、自由な伸縮が可能である。しかも、一度伸長した後に縮まった場合でも、カバーリング材同士が部分的に接着されており、カバーリング材相互間の適度な一体性、芯材21からの独立性などにより、カバーリング材の位置ずれは起りにくく、もどけもない。この結果、外観を損なうことがなく、所望の装飾性を維持できる。
【0053】
また、製造において接着剤を使用しないので、適宜の装置によって製造が容易に行える。しかも、仕上がり状態において接着剤のはみ出しなどもなく、この点からも外観を損なうことを阻止できる。
【0054】
さらに、カバーリング材には、綿糸、合成繊維、合成樹脂フィルム、紙、水引、組紐など適宜の材料のものを使用できるので、所望の外観を有する装飾性の高いものとすることができる。また、一次カバーリング材31、二次カバーリング材51の本数や種類も自由に設定できるので、外周側を編んで製造したものに比して、バラエティーに富んだ様々な飾り紐を得ることができる。上側に位置するカバーリング材の巻回を粗く行って、下側のカバーリング材を露出させたり透けさせたりすることによっても、上記の効果が高まる。
【0055】
また、一次カバーリング材31に、紙撚り紐33や水引35を用いると、図9に模式的に示したように、芯材を硬くすることができるためか、また、適度な摩擦抵抗となるためか、より一層もどけにくい飾り紐11を得ることができる。さらに、紙撚り紐33の存在により、芯材21を隠蔽することができる効果も有する。
【0056】
上記の構成はこの発明を実施するための一形態であって、その他の構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】伸縮性飾り紐の斜視図。
【図2】伸縮性飾り紐の構造を示す斜視図。
【図3】伸縮性飾り紐の構造を示す斜視図。
【図4】伸縮性飾り紐の構造を示す斜視図。
【図5】伸縮性飾り紐の構造を示す斜視図。
【図6】伸縮性飾り紐の構造を示す斜視図。
【図7】伸縮性飾り紐の構造を示す斜視図。
【図8】溶着部分を示す模式図。
【図9】紙撚り紐部分を示す模式図。
【符号の説明】
【0058】
11…伸縮性飾り紐
21…芯材
31…一次カバーリング材
32…撚糸
33…紙撚り紐
34…無撚糸
35…水引
41…熱溶着糸
51…二次カバーリング材
52…撚糸
53…装飾テープ
54…無撚糸
55…水引

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する芯材と、
該芯材の表面に巻回される一次カバーリング材と、
該一次カバーリング材の上に添付される熱溶着糸と、
該熱溶着糸の上に巻回される二次カバーリング材とを有し、
二次カバーリング材の巻回後に、加熱されて上記熱溶着糸が溶融された
伸縮性飾り紐。
【請求項2】
二次カバーリング材が、一次カバーリング材の巻回方向と反対方向に巻回された
請求項1に記載の伸縮性飾り紐。
【請求項3】
前記一次カバーリング材に、紙撚り紐または水引が用いられた
請求項1または請求項2に記載の伸縮性飾り紐。
【請求項4】
前記一次カバーリング材および/または二次カバーリング材が、2本以上のカバーリング材からなる
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の伸縮性飾り紐。
【請求項5】
伸縮性を有する芯材の表面に、一次カバーリング材を巻回する一次巻回工程と、
一次カバーリング材の上に熱溶着糸を添付する熱溶着糸添付工程と、
熱溶着糸の上に二次カバーリング材を巻回する二次巻回工程と、
二次巻回工程後に、熱溶着糸が溶融する温度に加熱する加熱溶融工程とを有する
伸縮性飾り紐の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−30195(P2009−30195A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194263(P2007−194263)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000153982)株式会社さん・おいけ (5)
【Fターム(参考)】