説明

伸縮目地材

【課題】温度差や湿度の変動あるいは床暖房等による床材の縦横の伸縮を吸収し、施工性に優れ、外観性よく床材を接合する伸縮目地材を提供することである。
【解決手段】床材2の突き合わせ面に取着され、隣り合う床材2の端面に各々取着される左側の床材取付け部11と右側の床材取付け部12と、これら左右の床材取付け部11、12間に配設される伸縮自在な目地部13とからなり、上記左右の床材取付け部11、12は各々断面略コ字状体とされ、該コ字状体部で床材2の端面の表裏両面を挟持するように固着し、上記目地部13は、左右の床材取付け部11、12の各背面11a、12aの上端部11b、12b間に断面略V字型に架設されるとともに、隣り合う床材の接合端面の距離に応じて目地部13の幅が変動することを特徴とする伸縮目地材A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は隣接する床材を接合する目地材に関する。さらに詳しくは、実結合部のない長辺や短辺を有する床材の端部どうしを接合しフローリング施工するとき、温度や湿度の変動によって生じる床材の伸縮を吸収するための伸縮目地材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フローリング施工する場合は、多数の床材を相互に接合しながら敷設するのが一般的であり、通常、1枚の床材の一方の接合端面に雄実を形成するとともに、他方の接合端面に雌実を形成し、隣り合う床材の雄実と雌実とを相互に嵌合させる実結合によって複数の隣接する床材どうしを接合し、床面が形成される。
【0003】
上記した実結合を用いた床材の接合構造では、一方の床材の接合端面と他方の床材の接合端面とは相互に突き合わすことになるので、実結合を用いて多数の床材を接合しながらフローリング施工すると、温度や湿度の変動によって接合部分に線状の突き上げや目隙が生じる。
【0004】
すなわち、夏季や高湿のときは床材が縦横に伸長し、床材どうしの接合部分に線状の突き上げ部が発生し、冬季や乾燥時には床材が縦横に収縮し、接合部分に目隙が生じる。そのため、多数の床材を相互に接合して形成された床面はその外観性が損なわれるという問題が起きる。
【0005】
一方、近年、床暖房が普及しつつあり、この床暖房は、電熱式等の加熱方法により床下面から暖房する方法が一般的であるため、暖房使用時と不使用時との床材の縦横の伸縮によっても上記と同様な問題が発生する。
【0006】
上記した床材の接合部分における突き上げや目隙の発生を防ぐためには、余裕を持たせて隣接する床材どうしを接合する方法も考えられるが外観性が損なわれ、また、余裕部分としての隙間にチリやほこりが溜まるという問題がある。そこで、上記実結合を用いない床材の接合方法が提案されている。
【0007】
例えば、特開2001−207554号公報には、同公報の図2に示されるように、床板の接合方向に伸縮自在の本体部と、該本体部に突設された左右一対の凸部と、上記本体部の圧縮状態を規制する規制部とを備えてなる板材の接合構造が開示されている。
【0008】
そして、上記接合部材の本体部は、規制部によって所定の圧縮状態に保持された状態で、上記左右一対の凸部が隣接する床板の接合端面に形成された凹部にそれぞれ嵌合されるので、板材の伸長量や収縮量を効果的に吸収して隣接する床板を確実に接合でき、しかも、板材の接合部分に目地溝を形成することができる、とその効果が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−207554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特開2001−207554号公報に記載の接合構造においては、本体部と左右一体の凸部と規制部との三つの要素から構成され、さらに接合される板材の対向する端面に上記左右一対の凸部がそれぞれ嵌合する凹部を設ける必要があり、構造が複雑で、フローリング施工時の作業性もよいとはいえない。
【0011】
本願発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、夏季と冬季との気温の差や室内の湿度の変動、あるいは床暖房等によって床材が縦横に伸長したとき、あるいは収縮したとき、それらの伸縮を吸収し、床材の接合面に突き上げや目隙を生じさせることなく床材の接合が可能な伸縮目地材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る伸縮目地材は、床材の突き合わせ面に取着され、隣り合う床材の端面に各々取着される左側の床材取付け部と右側の床材取付け部と、これら左右の床材取付け部間に配設される伸縮自在な目地部とからなり、上記左右の床材取付け部は各々断面略コ字状体とされ、該コ字状体部で床材の端面の表裏両面を挟持するように固着し、上記目地部は、左右の床材取付け部の各背面の上端部間に断面略V字型に架設されるとともに、隣り合う床材の接合端面の距離に応じて目地部の幅が変動することを特徴とする。
【0013】
上記床材としては、とくに限定されるものではなく、天然木、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード等の種々の木質基材に表面化粧材を貼着した一般的な床材をあげることができる。また、上記表面化粧材としては、マツ、スギ、ケヤキ、ヒノキ等、天然木の木目を印刷した合成樹脂シートや強力紙をあげることができる。あるいは、丸太材をロータリーレース等を用いて、かつら剥きのようにして薄くスライスした突き板を用いることもできる。
【0014】
上記表面化粧材は、例えば、SBR系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、メラミン系接着剤、ユリア樹脂系接着剤等の公知のエマルジョン系接着剤が塗布された木質基材に、通常、加熱、加圧下に貼着される。
【0015】
上記伸縮目地材の目地部としては、伸縮自在な材料、通常、熱可塑性樹脂成形品が用いられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂等公知のものが用いられる。あるいは熱可塑性エラストマー等も用いることができる。
【0016】
上記目地部は、通常、上記熱可塑性樹脂を溶融して押出す押出し成形法によって、左右の床材取付け部と一体的に製造される。
【発明の効果】
【0017】
本願請求項1記載の発明に係る伸縮目地材においては、隣り合う床材の端面に取着される左右の床材取付け部とこれらの床材取付け部間に配設される伸縮自在な目地部とからなるとともに、上記左右の床材取付け部は、断面略コ字状体とされているため、このコ字状体部が床材の長さ方向、幅方向の端面の表裏両面を挟持して、しっかりと固着する。
【0018】
また、上記目地部は、断面略コ字状体の左右の床材取付け部の背面の上端部間に断面略V字型に架設され、隣り合う床材の接合端面間の距離に応じてV字の角度が変動して目地部の幅が伸縮するため、夏季と冬季との気温の差や室内の湿度の変動や床暖房等による床材の縦方向や幅方向の伸縮を吸収することができる。
【0019】
そして、夏季や梅雨時等、高温多湿の際に床材の接合部分に線状の突き上げが発生することを防ぎ、冬季や乾燥期に床材が収縮して目隙を生じるという問題を防止することができる。
【0020】
また、フローリング施工は、隣り合う床材の端面を挟持するように本願発明の伸縮目地材の左右の床材取付け部を固着して多数の床材を接合すればよいため、施工性に優れ、簡単な作業で効率よく床材を敷設することができる。このとき、床材の側端部に何らかの欠けや変形があっても、上記左右のコ字状体を構成する取着片が欠けや変形を覆うため、露出することがなく、外観性よく仕上げることができる。
【0021】
さらに、床材の長辺と短辺とのそれぞれ端面に取着された伸縮目地材は、床材の縦横の伸縮を吸収するとともに、基材に貼着された表面化粧材のデザイン、例えば木目模様と調和して縦、横の目地部を構成し、違和感なくフローリング仕上げをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明に係る伸縮目地材の構成を示す部分断面斜視図。
【図2】(a)は床材の伸長を目地部が吸収して該目地部のV字幅が縮んだ状態を模式的に示す断面図、(b)は床材が収縮を目地部が吸収して該目地部のV字幅が伸びた状態を模式的に示す断面図。
【図3】床材の長辺と短辺の端面に本願発明に係る伸縮目地材を取着してフローリング施工した状態を模式的に示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願発明に係る伸縮目地材の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、上記伸縮目地材Aの構成を示す部分断面斜視図である。図1に示すように、上記伸縮目地材Aは、隣り合う床材2の基材21の長手方向の長辺の端面に各々取着される断面コ字状体の左側の床材取付け部11と右側の床材取付け部12とこれら左側の床材取付け部11と右側の床材取付け部12との間に配設される目地部13とから構成されている。
【0024】
図1に示すように、上記目地部13は、左側の床材取付け部11の背面11aの上端部11bと右側の床材取付け部12の背面12aの上端部12bとの間に架設され、その横断面形状は略V字型とされている。ここで、上記床材2の基材21の端面に各々取着される左側の床材取付け部11の取着片111と右側の床材取付け部12の取着片121とは、床材2の表面化粧材22と面一に固着されている。
【0025】
上記のように構成された伸縮目地材Aを用いて多数の床材2を接合敷設する場合、隣り合う床材2のそれぞれの長辺の端部を、上記左側の床材取付け部11と右側の床材取付け部12とのそれぞれのコ字状体部で嵌合挟持するように固着するのみでよい。
【0026】
同様に、隣り合う床材2のそれぞれの短辺の端部を、伸縮目地材Aの左側の床材取付け部11と右側の床材取付け部12とのそれぞれのコ字状体部で嵌合挟持するように固着するのみでよく、簡単に施工性よく多数の床材を接合、敷設してフローリング仕上げをすることができる。
【0027】
図1においては、左右の床材取付け部11、12のコ字状体部は床材2の基材21の端面に各々取着されているが、必要に応じて該コ字状体部で表面化粧材22の端部を同時に挟持してもよい。
【0028】
図2(a)は、厚さdが6mm〜12mmの床材2を多数接合してフローリング施工したとき、夏季と冬季との気温の差や室内の湿度の変動等によって床材2が伸長した場合に、床材2の伸長を上記目地部13が吸収し、目地部13のV字幅が縮んだ状態を模式的に示す断面図である。図2(b)は、室内が低温、乾燥等の条件となって床材2が収縮し、それが原因で生じた目隙拡大を目地部13のV字幅が伸びてカバーした状態を模式的に示す断面図である。
【0029】
このように、上記伸縮目地材Aの目地部13のV字幅が伸縮することによって、夏季と冬季との気温の差や室内の湿度の変動等による床材2の伸縮を吸収することが可能となり、床材2の接合部分に線状の突き上げが発生する、あるいは目隙を生じるという問題を防ぐことができる。
【0030】
図3は、上記床材2の長辺と短辺の端面に本願発明に係る伸縮目地材Aを取着してフローリング施工した状態を模式的に示す部分斜視図である。図3に示されているように、床材2の長辺と短辺とのそれぞれ端面に取着された伸縮目地材Aは、床材2の縦横の伸縮を吸収するとともに、表面化粧材22のデザインと調和して目地部13が床面に縦、横の目地溝を構成し、違和感なくフローリング仕上げをすることができる。また、床材2の側端部に何らかの欠けや変形があっても、左右のコ字状体の取着片111と121とがそれらを覆うため、露出することがなく、外観性よく仕上げることができる。
【0031】
上記実施形態は、隣接する床材の接合に本願発明に係る伸縮目地材を用いた場合について述べたが、床材に限られず、例えば、リビングルームの腰壁の施工等に適用してもよい。また、木目模様にデザインされた表面化粧材を用いた場合について説明したが、木目模様に限られず大理石調、御影石等の天然石調、あるいは幾何模様等種々にデザインされた表面化粧材を用いた場合についても適用可能である。
【0032】
さらに、伸縮目地材自体に着色等のデザインを施してもよい。このように本願発明は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
A 本願発明に係る伸縮目地材
d 床材の厚さ
11 左側の床材取付け部
11a 背面
11b 背面の上端部
111 取着片
12 右側の床材取付け部
12a 背面
12b 背面の上端部
121 取着片
13 目地部
2 床材
21 基材
22 表面化粧材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材の突き合わせ面に取着され、隣り合う床材の端面に各々取着される左側の床材取付け部と右側の床材取付け部と、これら左右の床材取付け部間に配設される伸縮自在な目地部とからなり、上記左右の床材取付け部は各々断面略コ字状体とされ、該コ字状体部で床材の端面の表裏両面を挟持するように固着し、上記目地部は、左右の床材取付け部の各背面の上端部間に断面略V字型に架設されるとともに、隣り合う床材の接合端面の距離に応じて目地部の幅が変動することを特徴とする伸縮目地材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−108277(P2013−108277A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253986(P2011−253986)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】