説明

伸縮装置

【課題】剛性が高くかつ伸縮方向のスペースが狭い場所に設置可能な伸縮装置を提供する。
【解決手段】伸縮装置1Aは、一対のチェーン3A,3Bと本体2を備えている。各チェーン3A,3Bの第1リンク31には突出部34が設けられており、双方のチェーン3A,3B同士が噛み合って棒状体30が形成されるようになっている。本体2は、格納部22とガイド部21を有している。そして、スプロケット3の回転によって、チェーン3A,3Bが格納部22から引き出されて棒状体30が形成されるとともに、形成された棒状体30がガイド部21から送り出されたりガイド部21に引き戻されたりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の伸縮装置が知られている。例えば、電動または流体シリンダでは、ロッドが可動することで装置の全長が変わるようになっており、リンク式のマジックハンドでは、リンク機構により装置が全体的に伸縮するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、リンク式のマジックハンドでは、交差するリンク部材が一点でピン結合された構造となっているので、ピンの軸方向における剛性が低く、先端がピンの軸方向に大きく変位することがある。一方、シリンダでは、少なくともロッドの長さ分の全長が必要になるため、伸縮方向のスペースが狭い場所に設置することができない。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑み、剛性が高くかつ伸縮方向のスペースが狭い場所に設置可能な伸縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、交互に連結された第1リンクと第2リンクをそれぞれ有する一対のチェーンであって、前記第1リンクには当該チェーンの可動側に突出する突出部が設けられていて、一方のチェーンの突出部が他方のチェーンの突出部の間に入り込むことによりチェーン同士が噛み合って棒状体を形成するチェーンと、前記チェーンを格納する格納部、およびこの格納部から引き出されたチェーンによって形成される前記棒状体をガイドするガイド部を有する本体と、前記一対のチェーンの少なくとも一方を駆動して、前記棒状体を前記ガイド部から送り出すまたは前記ガイド部に引き戻すスプロケットと、を備える伸縮装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、一対のチェーンを噛み合わせて棒状体を形成しているので、高剛性の棒状体を得ることができる。そして、この棒状体をガイド部によってガイドしながら伸縮させることで、棒状体の先端の変位量を小さく抑えることができる。また、棒状体を形成する前のチェーンは格納部に格納されているので、例えば格納部をガイド部を挟んで両側に配置すれば、伸縮方向における全長の小さな装置とすることができ、伸縮方向のスペースが狭い場所に設置できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る伸縮装置1Aは、一対のチェーン3A,3Bと、これらのチェーン3A,3Bを収容する筐体として構成された本体2とを備えている。なお、伸縮装置1Aは、左右対称であるので、図1においては左側部分を省略している。
【0009】
各チェーン3A,3Bは、交互に連結された外リンク(本発明の第1リンクに相当)31と内リンク(本発明の第2リンクに相当)35を有している。内リンク35は、図2に示すように、一対の内リンクプレート(本発明の第2リンクプレートに相当)36と、これらの内リンクプレート36を連結する一対のブッシュ37とからなる。外リンク31は、隣り合う内リンク35の内リンクプレート36を外側から挟み込む一対の外リンクプレート(本発明の第1リンクプレートに相当)32と、隣り合う内リンク35のブッシュ37に挿通されて、一対の外リンクプレートを連結するピン33とからなる。なお、ブッシュ37の外周面にはローラが回転自在に装着されていてもよい。
【0010】
各外リンクプレート32は、略T字状に形成されていて、各外リンクプレート32にはチェーン3A,3Bの可動側に、換言すればピン33の軸方向と直交する方向に突出する突出部34が一体に設けられている。すなわち、外リンク31は、ピン33の軸方向で互いに離間する一対の突出部34を有しており、各突出部34は、一対のピン33同士が離間する方向と直交する方向に延びている。
【0011】
より詳しくは、各突出部34の両側辺は略S字状に形成されており、突出部34の先端部分の幅が根元部分の幅よりも大きくなっている。突出部34の先端部分の幅は、チェーン3A,3Bを直線状に伸ばしたときの隣り合う外リンク31の突出部34の根元部分の間の距離と略同一に設定され、突出部34の根元部分の幅は、チェーン3A,3Bを直線状に伸ばしたときの隣り合う外リンク31の突出部34の先端部分の間の距離と略同一に設定されている。このため、一方のチェーン3A(または3B)の突出部34を他方のチェーン3B(または3A)の突出部34の間に入り込ませると、チェーン3A,3B同士が隙間なく噛み合って棒状体30を形成するようになる。
【0012】
本体2は、チェーン3A,3Bをそれぞれ格納する格納部22と、この格納部22から引き出されたチェーン3A,3Bによって形成される棒状体30をガイドするガイド部21と、このガイド部21と格納部22とを接続する通路部23とを有している。ガイド部21は、矩形筒状の形状を有しており、棒状体30を所定長だけ周囲から保持してガイドする。格納部22は、ガイド部21を挟んで両側に配置されており、通路部23は、ガイド部21が延びる方向と直交する方向に延びている。格納部22には、チェーン3A,3Bを自動的に巻き取る巻き取り部7が設けられており、チェーン3A,3Bは巻き取り部7に巻き取られることにより格納部22に格納されるようになっている。
【0013】
通路部23には、チェーン3A,3Bを駆動するためのスプロケット4がそれぞれ設けられている。これらのスプロケット4は、ガイド部21が延びる方向と直交する線上であって、チェーン3A,3Bを真っ直ぐにガイド部21に送り込むことができる位置に配置されており、チェーン3A,3Bはスプロケット4に巻き付けられて略90度折り曲げられている。このため、スプロケット4がチェーン3A,3Bをガイド部21に送り込む方向に回転(以下、「正回転」という。)すると、双方のチェーン3A,3Bが格納部22から引き出され、スプロケット4で屈曲させられる間に突出部34同士の間隔が一旦広げられるため、一対のスプロケット4の間で互いに噛み合って棒状体30が形状されるようになる。そして、形成された棒状体30は、スプロケット4の回転により、ガイド部21から送り出される。逆に、スプロケット4がチェーン3A,3Bを格納部22に戻す方向に回転(以下、「逆回転」という。)すると、棒状体30がガイド部21に引き戻されるとともに、一対のスプロケット4の間でチェーン3A,3B同士の噛み合い状態が解除されて、チェーン3A,3Bが巻き取り部7に巻き取られるようになる。このようにして棒状体30のガイド部21からの伸縮が行われる。
【0014】
なお、スプロケット4は、モータで回転させてもよいし、手動で回転させてもよい。モータで回転させる場合は、ブレーキ付のモータを用いることが好ましく、手動で回転させる場合は、固定機構または荷重のかかり具合によってはラチェット機構を設けることが好ましい。
【0015】
棒状体30の先端を構成する一対のチェーン3A,3Bの一端同士は、棒状体30の先端に装着される図略のアタッチメントを取り付けるための連結具5によって連結されている。この連結具5は、棒状体30がガイド部21に引き戻されたときにガイド部21に当接してストッパーとしても機能する。アタッチメントとしては、例えばハンドや工作機器などの作業機器あるいは測定機器など各種のものを採用することができる。
【0016】
また、棒状体30内には、一対の外リンクプレート32のそれぞれに設けられた突出部34に挟まれて当該棒状体30の軸方向に解放される空間Sが形成されている。すなわち、双方のチェーン3A,3Bの突出部34は、棒状体30が形成されたときには、当該棒状体30の軸方向に連続する一対の連続壁を構成する。そして、空間S内には、アタッチメントに接続されるケーブル6が配設されている。このケーブル6は、本体2内に配設された図略のケーブルリールにより棒状体30の伸縮に合わせて繰り出されたり巻き取られたりする。なお、本実施形態では、アタッチメントに電力を供給することを想定して棒状体30内にケーブル6を配設したが、アタッチメントが例えば流体作動式のものであれば、ケーブル6に代えて、流体流通用チューブを配設し、これをアタッチメントに接続してもよい。また、空間S内に、例えばテレスコピック式の伸縮菅を配設し、この伸縮菅の内部にケーブル6や流体流通用チューブを通すようにしてもよい。
【0017】
以上説明したように、本実施形態の伸縮装置1Aでは、一対のチェーン3A,3Bを噛み合わせて棒状体30を形成しているので、高剛性の棒状体30を得ることができる。そして、この棒状体30をガイド部21によってガイドしながら伸縮させることで、棒状体30の先端の変位量を小さく抑えることができる。また、棒状体30を形成する前のチェーン3A,3Bを格納する格納部21がガイド部21の両側に配置されているので、伸縮方向における全長の小さな装置となっている。このため、伸縮装置1Aを伸縮方向のスペースが狭い場所に設置することができる。
【0018】
さらに、突出部34は外リンクプレート32に一体に設けられているので、シンプルな構成で一対のチェーン3A,3B同士を噛み合わせることができる。また、このような突出部34を設けることで、棒状体30を形成したときに当該棒状体30内に軸方向に開放される空間Sが形成される。そして、この空間S内にケーブル6または流体流通用チューブを配設することで、当該空間Sを合理的に利用してケーブル6などの保護を図ることができる。
【0019】
このように構成された伸縮装置1Aは、各種の用途に使用することができる。例えば、宇宙船に装備してロボットアームとして使用することもできるし、あるいは地震などで崩れた瓦礫を持ち上げる際にジャッキとして使用することもできる。ジャッキとして使用する場合は、連結具5に対象物を持ち上げるためのプレートなどを取り付けてもよいし、あるいは連結具5自体をその上に対象物を載置可能な形状にしてもよい。
【0020】
なお、スプロケット3は、一対のチェーン3A,3Bの少なくとも一方を駆動させれば棒状体30を伸縮させることができるので、どちらか一方のスプロケット3を例えば円盤状のローラや固定式の円弧状のガイドなどに変更してもよい。
【0021】
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態に係る伸縮装置1Bを説明する。この伸縮装置1Bは、第1実施形態の伸縮装置1Aと略同じ構成であるが、内リンク35の各内リンクプレート36の一辺が円弧状に形成されていて、各内リンクプレート36に張り出し部38が一体に設けられている点で異なる。この張り出し部38は、隣り合う突出部34の間から露出するように突出部34と同方向に張り出していて、棒状体30の形成時には他方のチェーン3A(または3B)の突出部34と重合可能となっている。
【0022】
このような構成であれば、棒状体30が形成されたときに、一方のチェーン3A(または3B)の一対の突出部34の間に他方のチェーン3B(または3A)の一対の張り出し部38が入り込んで、突出部34の先端が張り出し部38に内側からガイドされるようになるため、棒状体30の剛性をより高くすることができる。
【0023】
なお、前記各実施形態では、チェーン3A,3Bをスプロケット4に巻き付けるようにしたが、スプロケット4は、チェーン3A,3Bに動力を与えるものであればよく、チェーン3A,3Bがスプロケット4に巻き付けられていなくてもよい。例えば、図4に示すように、棒状体30を形成した後のチェーン3A,3Bがスプロケット4によって駆動されるようになっていてもよい。この場合は、スプロケット4の上流側に、一対のチェーン3A,3B同士を噛み合わせるまたはチェーン3A,3B同士の噛み合い状態を解除させるための機構8を設ける。例えば、この機構8は、チェーン3A,3Bを斜め方向にガイドする三角形状あるいはV字状の分岐部81と、チェーン3A,3Bを引き寄せるようにガイドする一対のガイド板82とによって構成することができる。ただし、前記各実施形態で示したように、チェーン3A,3Bを一対のスプロケット4のそれぞれに巻き付けて、その間で噛み合わせるようにすれば、シンプルな構成とすることができる。
【0024】
また、格納部22は、筒状のものであって、チェーン3A,3Bを巻き取らずに伸びたままの状態で格納するものであってもよい。あるいは、収容部22は、チェーン3A,3Bをガイドするレール状のものであってもよく、必ずしもチェーン3A,3Bを覆い隠すものである必要はない。さらに、格納部22の形状は、適宜変更可能であり、例えば、宇宙船などの外面に沿わせるようにしてもよく、このようにすれば嵩張らせずに伸縮装置を宇宙船などに装備することができる。
【0025】
また、突出部34は、内リンクプレート36に一体に設けられていてもよい。すなわち、本発明の第1リンクは、内リンク35であってもよい。
【0026】
さらに、本体2は、箱状の筐体である必要はなく、フレーム体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る伸縮装置の概略構成図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る伸縮装置の概略構成図である。
【図4】変形例の伸縮装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1A,1B 伸縮装置
2 筐体
21 ガイド部
22 格納部
3A,3B チェーン
30 棒状体
31 外リンク
32 外リンクプレート
34 突出部
35 内リンク
36 内リンクプレート
38 張り出し部
4 スプロケット
5 連結具
6 ケーブル
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に連結された第1リンクと第2リンクをそれぞれ有する一対のチェーンであって、前記第1リンクには当該チェーンの可動側に突出する突出部が設けられていて、一方のチェーンの突出部が他方のチェーンの突出部の間に入り込むことによりチェーン同士が噛み合って棒状体を形成するチェーンと、
前記チェーンを格納する格納部、およびこの格納部から引き出されたチェーンによって形成される前記棒状体をガイドするガイド部を有する本体と、
前記一対のチェーンの少なくとも一方を駆動して、前記棒状体を前記ガイド部から送り出すまたは前記ガイド部に引き戻すスプロケットと、を備える伸縮装置。
【請求項2】
前記スプロケットは、前記一対のチェーンの双方を駆動するように一対設けられ、各スプロケットには前記チェーンが巻き付けられており、前記一対のスプロケット間で前記一対のチェーンが噛み合って前記棒状体が形状される請求項1に記載の伸縮装置。
【請求項3】
前記第1リンクは、一対の第1リンクプレートを有しており、前記突出部は前記第1リンクプレートのそれぞれに一体に設けられている請求項1または2に記載の伸縮装置。
【請求項4】
前記棒状体の先端を構成する前記一対のチェーンの一端同士を連結する連結具をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の伸縮装置。
【請求項5】
前記連結具は、前記棒状体の先端に装着されるアタッチメントを取り付けるためのものであり、
前記棒状体内には、前記一対の第1リンクプレートのそれぞれに設けられた前記突出部に挟まれて当該棒状体の軸方向に解放される空間が形成されており、この空間内には前記アタッチメントに接続されるケーブルまたは流体流通用チューブが配設されている請求項4に記載の伸縮装置。
【請求項6】
前記第2リンクは、一対の第2リンクプレートを有しており、各第2リンクプレートには、隣り合う前記突出部の間から露出するように前記突出部と同方向に張り出す張り出し部が一体に設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の伸縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−256202(P2008−256202A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216192(P2007−216192)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(395020656)